JPH1084964A - 染色体dnaにおけるテロメア領域の伸長方法、テロメア伸長用発現ベクター、及び前記発現ベクターを用いた生物の寿命延長方法 - Google Patents

染色体dnaにおけるテロメア領域の伸長方法、テロメア伸長用発現ベクター、及び前記発現ベクターを用いた生物の寿命延長方法

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JPH1084964A
JPH1084964A JP8243210A JP24321096A JPH1084964A JP H1084964 A JPH1084964 A JP H1084964A JP 8243210 A JP8243210 A JP 8243210A JP 24321096 A JP24321096 A JP 24321096A JP H1084964 A JPH1084964 A JP H1084964A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生物の寿命を決定すると考えられている染色
体DNAの末端に存在するテロメアDNAを人為的に伸
長させる方法を提供する。 【解決手段】 マウスの分割前の受精卵の前核の中へマ
イクロインジェクション法によりセルモコッカス・リト
ラリス(Thermococcus litrali
)のDNAポリメラーゼの構造遺伝子を発現ベクター
に組み込んだ形として挿入する。これにより、発現後、
このDNAポリメラーゼは受精卵の中において、その染
色体DNAの末端に、新規DNA合成を、主として(T
AGATATC)なる塩基配列の形にて行う。その結
果、このマウスにおいては、全ての体細胞の染色体DN
A末端にこの新規合成DNAが付加されたこととなり、
かつこの部分がテロメアDNAとして機能することとな
り、よってこのマウスの寿命が延びる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、染色体DNAにお
けるテロメア領域の伸長方法、及びこの方法を用いた寿
命延長法に関し、詳しくは、蛋白質、とりわけDNAポ
リメラーゼという酵素が、鋳型の遺伝情報を読み取る
「複製」ではなく、「創造的に」、つまり新たな遺伝情
報としてのDNAを、細胞内における既存の染色体DN
Aの末端から伸長するように合成することができ、すな
わち染色体DNAを伸長させることができ、しかも、当
該伸長部分が、短い(4〜15塩基対程度の)繰り返し
配列を持つDNAであるという発見に基づきなされた、
染色体DNAにおけるテロメア領域の伸長方法、及びこ
の方法を用いた寿命延長法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】周知の通
り、生物はそれぞれの種においてほぼ決まった長さの寿
命を持っている。例えばヒトは約80年、イヌは約10
年、マウスは約2年、……などある。この寿命の長さは
各生物種において多少のばらつきはあるものの、遺伝的
にほぼ決定されている。換言すれば、例えば、乳を大量
に出す牛がいたとしても、通常より10倍長生きする牛
は存在しない。また、イヌが100年間生き続けるとい
うことも期待できない。そして、これらを可能にする技
術、すなわち生物の寿命を延長させるという技術が従来
において全くないというのも実情である。
【0003】ところで、生物の持つ染色体は二本鎖直鎖
状DNA(染色体DNA)と、ヒストンなどの蛋白質と
からなる。前記染色体DNAには、染色体として機能す
るための3つの領域を必須要素として持つ。その3つの
領域とは、セントロメア領域、テロメア領域、及び
複製開始領域(ARS)であり、いずれの領域が欠け
ても当該染色体DNAは不安定となり細胞分裂の過程に
おいて消失していく。そのうち、第2番目に挙げた「テ
ロメア領域」は、当該染色体DNAにおける末端部分を
構成しており、生体の老化や寿命に関与する。この点に
ついて以下に詳述する。すなわち、テロメア領域におい
ては、種によって異なるが、4〜15塩基対の特定の塩
基配列が同じ向きに繰り返し並んでいる。例えば、ヒト
の場合(5′)TTAGGG(3′)の6塩基対が同じ
向きに約2,000個繰り返す。つまり、(TTAGG
G)、(n=2,000)の形を持ち、この部分をテ
ロメアと呼ぶ。そしてこの構造テロメアは染色体の両端
に存在する。多くの細胞においては、テロメアのDNA
は細胞分裂を繰り返す度に次第に短くなり、この長さが
ある程度以下となればもはや分裂しなくなり、ここで寿
命が決まると考えられている。
【0004】そこで、何らかの方法を用いてこのテロメ
アDNAを発生の初期段階、例えば受精卵において、人
為的に予め長くしておけば、その生物は本来よりも長い
寿命を持つこととなる。
【0005】[発明の目的]本発明は上記の実情に鑑み
てなされたものであり、その目的は、生物の発生の初期
段階において、主として受精卵、場合によっては生殖細
胞や培養株細胞に対して遺伝子操作の技術を用いること
によりテロメアDNAを修飾する方法を提供するところ
にあり、延いてはこれにより、各生物種が本来持ってい
る寿命の長さを延長せしめ、よってその生物を産業上あ
るいは他の目的に対し、より長く利用する方法を提供す
るところにある。
【0006】要するに、本発明の目的は、寿命を決定す
ると考えられている染色体DNAの末端に存在するテロ
メアDNAを人為的に伸長させる方法を提供するところ
にある。
【0007】[発明に至るまでの経緯]本発明者らは、
上記の目的を達成すべく、蛋白質によるDNA(遺伝
子)合成法に着目し、鋭意検討を重ねた。そして、その
結果、従来の常識を根底から覆すような画期的な発明を
見い出した。以下、この点について説明する。
【0008】すなわち、蛋白質、とりわけDNAポリメ
ラーゼは、以前よりDNAを複製的に合成することが知
られている。「複製的」とは、つまり既存の一本鎖DN
Aを鋳型(テンプレート)として、それに相補的な塩基
配列を持つDNAを合成し、最終的に二本鎖とすること
である。したがって、この反応においては、合成される
塩基配列は、前記した鋳型により機械的に(一義的に)
決定されることから、全く新規な塩基配列をもつDNA
を「創造」することは不可能である。しかしながら、そ
のようなDNAポリメラーゼであっても、鋳型を全く必
要とせずに非常に長い(100〜50,000塩基対程
度)二本鎖直線状DNAを作れることを発見した。
【0009】しかも驚くべきことに、鋳型非依存系で合
成されたDNAは、4〜15塩基対程度の短かい塩基配
列が幾度にも繰り返されてなる「繰り返し配列」を含有
し、さらには、上記した鋳型非依存系のDNA合成が細
胞内において行なわれた場合には、前記「繰り返し配
列」が細胞内における既存の染色体DNAの末端(即ち
テロメアDNAの末端)に付加されることが確認され
た。つまり、染色体DNAが、DNAポリメラーゼによ
る鋳型非依存合成で伸長されることが確認された。さら
に本発明者らは、染色体DNAを伸長させれば当該生物
の寿命が延長するのではないかと考え、またその寿命の
延長が、染色体DNAの伸長の長さに比例して起こるの
ではないかと考え、これらを確認すべく実験を行なった
結果、実に見事に、これらを裏付けるデータが得られ、
そして本発明に至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の染色体D
NAにおけるテロメア領域の伸長方法は、細胞内(生物
より取り出した細胞、直接導入する場合は非ヒト)に蛋
白質を導入することからなり、これによって染色体DN
Aの端部を合成起点としてデオキシリボヌクレオチドを
重合させることを特徴とする染色体DNAにおけるテロ
メア領域の伸長方法である。
【0011】請求項2記載の染色体DNAにおけるテロ
メア領域の伸長方法は、蛋白質をコードする遺伝子であ
る蛋白質構造遺伝子とプロモーター領域の遺伝子と転写
終了領域の遺伝子とが各々挿入されてなる発現ベクター
を細胞(生物より取り出した細胞、直接導入する場合は
非ヒト)に導入することからなり、ステロイドホルモン
などのプロモーター誘導物質を投与して前記プロモータ
ー領域を活性化し、これにより発現した前記蛋白質の存
在下にて、デオキシリボヌクレオチドを染色体DNAの
端部を合成起点として重合させることを特徴とする染色
体DNAにおけるテロメア領域の伸長方法である。
【0012】請求項3記載の染色体DNAにおけるテロ
メア領域の伸長方法は、請求項1、又は2記載の伸長方
法において、前記蛋白質がDNAポリメラーゼであるこ
とを特徴とする方法である。
【0013】請求項4記載の染色体DNAにおけるテロ
メア領域の伸長方法は、請求項3記載の伸長方法におい
て、前記DNAポリメラーゼがセルモコッカス属、セル
マス属に属する細菌のDNAポリメラーゼからなる群よ
り選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする方法
である。
【0014】請求項5記載のテロメア伸長用発現ベクタ
ーは、染色体DNAのテロメア領域を伸長させるために
働く蛋白質が、プロモーター領域の活性化により細胞内
にて発現するように設計された発現ベクターであり、蛋
白質をコードする遺伝子である蛋白質構造遺伝子、プロ
モーター領域の遺伝子及び転写終了領域の遺伝子が各々
挿入されてなる発現ベクターである。
【0015】請求項6記載の発現ベクターは、請求項5
記載のテロメア伸長用発現ベクターにおいて、前記蛋白
質が、セルモコッカス属、セルマス属に属する細菌のD
NAポリメラーゼからなる群より選ばれた少なくとも1
種である発現ベクター。
【0016】請求項7記載の生物の寿命延長方法は、蛋
白質をコードする遺伝子である蛋白質構造遺伝子を生物
Aの細胞(生物より取り出した細胞、直接精製する場合
は非ヒト)より精製するとともに、前記遺伝子に対して
プロモーター領域の遺伝子を配置し、のちこの融合遺伝
子を他の生物B(生物より取り出した細胞、直接導入す
る場合は非ヒト)の細胞に導入し、この細胞を偽妊娠状
態の仮親(非ヒト)の卵管内あるいは子宮内に移植する
か、または桑実胚あるいは胚盤胞にまで体外で培養し発
育させたのち子宮内に移植し、移植後に得られたF1ト
ランスジェニック生物に対し、あるいは少なくとも片方
をF1トランスジェニック生物とする掛け合わせによっ
て得たF2トランスジェニック生物に対し、ステロイド
ホルモンなどのプロモーター誘導物質を投与して前記プ
ロモーター領域を活性化し、これによって当該細胞内に
て前記蛋白質を発現せしめ、これとともに前記蛋白質の
存在下にてデオキシリボヌクレオチドを重合させて細胞
内における既存染色体DNAのテロメア領域を伸長させ
ることからなる生物(非ヒト)の寿命延長方法である。
【0017】請求項8記載の寿命延長方法は、請求項7
記載の生物の寿命延長方法において、前記蛋白質が、セ
ルモコッカス属、セルマス属に属する細菌のDNAポリ
メラーゼからなる群より選ばれた少なくとも1種である
寿命延長方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明で使用できる蛋白質として
は、上掲したように、例えば、DNAポリメラーゼが挙
げられる。DNAポリメラーゼは、約20℃以上、好ま
しくは約60℃以上、さらに好ましくは約70℃以上の
温度でも失活しないものが好ましい。その一例として
は、セルモコッカス・リトラリス(Thermococ
cuslitoralis)、セルモコッカス・セレル
Thermococcusceler)等のセルモコ
ッカス属、セルマス・アクアティクス(Thermus
aquaticus)、同セルモフィルス(th
ermophilus)などのセルマス属に属する細菌
のDNAポリメラーゼの少なくとも1種が挙げられる。
【0019】上記DNAポリメラーゼは1種を単独で使
用してもよいし、2種以上(2種、3種、……)を併用
した混合系として用いることもできる。なお2種以上を
併用する場合、同じ属に属する細菌のDNAポリメラー
ゼ同士の併用でも良いし、異なる属に属する細菌のDN
Aポリメラーゼ同士の併用でも良い。
【0020】デオキシリボヌクレオチドとしてはdAT
P、dTTP、dGTP、dCTPが用いられ、それら
の4種類または3種類を反応系に存在させれば反応は進
行する。デオキシリボヌクレオチドとDNAポリメラー
ゼとの反応における反応温度と時間は、DNAポリメラ
ーゼが失活しない範囲で選ぶことができ、約20℃以上
でポリメラーゼ活性を示す範囲の温度条件下で反応させ
ることにより、反応を速やかに進行させることができ
る。たとえば、74℃で数時間反応させてもよく、また
通常のPCR反応の条件、たとえば、(1)95℃で1
分間保持、(2)45℃で2分間保持、(3)74℃で
3分間保持のサイクルを反復してもよい。反応は初期に
若干の遅延時間を経たのち開始され、やがて最大速度に
達する。本発明の方法により合成されるDNAは鋳型に
依存せず、反応系に存在するDNAポリメラーゼの情報
に依存して合成されると考えられる。
【0021】なお、DNAポリメラーゼを用いたデオキ
シリボヌクレオチドの重合において、反応温度が20℃
未満の場合には反応速度が低下し、また90℃を超える
場合には酵素の安定性が低下するので好ましくない。ま
た、pH約7または10以下の弱アルカリ性条件から外
れる条件、すなわち酸性下条件及び強アルカリ性条件下
でも反応速度が低下するのでやはり好ましくない。上記
の反応温度、及び反応系の液性(pH)に関しては、蛋
白質の反応特性に依存する(Kong,H.et
.,BiolChem.268,1965−1
975(1993)参照)。
【0022】この新規DNAの合成は、使用するDNA
ポリメラーゼによっては、たとえば8塩基対、(5′)
TAGATATC(3′)の同方向繰り返し配列を何千
と作ることができ、この構造はテロメアのDNAと類似
し、よってテロメアの機能を果たし生物の寿命を延長す
る。この新規DNA合成は全体細胞においてその効果が
出ることを期待されるため、本例では受精卵における新
規DNA合成を主として検討したが本発明は決して受精
卵に限られるものではない。受精卵以外に使用可能な細
胞としては、培養細胞、例えばマウスのES細胞などが
挙げられる。
【0023】マウスの受精卵を例にとって述べると、ま
ず、分割前の受精卵の前核の中へマイクロインジェクシ
ョン法[分子遺伝学実験法、小関治男ら著、共立出版
(株)、1983年発行]によりセルモコッカス・リトラリ
ス(Thermococcuslitralis)のD
NAポリメラーゼ(商品名:Vent(ベント) DN
Aポリメラーゼ、ニューイングランド・バイオレイブ
ス、以下、「Tli DNA ポリメラーゼ」と略称)
またはその遺伝子を発現ベクターに組み込んだ形として
挿入する。これにより、このDNAポリメラーゼは、受
精卵の中において、その染色体DNAの末端に、新規D
NA合成を、主として(TAGATATC)なる塩基
配列の形にて行う。
【0024】その結果、このマウスにおいては、全ての
体細胞の染色体DNA末端にこの新規合成DNAが付加
されたこととなり、かつこの部分がテロメアDNAとし
て機能することとなり、よってこのマウスの寿命が延び
る。
【0025】DNAポリメラーゼの遺伝子を発現ベクタ
ーに組み込む方法(上掲)に関し、詳しく述べる。ま
ず、DNAポリメラーゼのゲノムDNAまたはcDNA
を生物より遺伝子クローニングの常法技術[分子遺伝学
実験法,小関治男ら著,共立出版(株),1983年発
行]により得る。このとき、その生物は、導入しようと
する生物とは異なる生物のものが好ましい。なぜなら
ば、同じ生物のものであれば、DNAポリメラーゼ遺伝
子の発現等に関する調節がDNAを導入された細胞、つ
まり宿主により完全に制御される可能性がかなりあるか
らである。例えば、Tli DNAポリメラーゼのゲノ
ムDNAを例にとって説明する。
【0026】このDNAの構造をその転写の方向より上
流から、プロモーター領域、構造遺伝子、転写終了領域
と呼ぶことにする。そして、マウスの細胞にDNAを導
入することを例として考える。まず、プロモーター領域
は、転写開始点(一般に、キャップサイトと呼ぶ)ぎり
ぎりの上流部位までを取り除き、常時発現プロモーター
または誘導可プロモーター、例えば、マウス乳腺腫瘍ウ
イルス(MMTV)のLTR(long termin
al repeat)と置換し、その内部に存在するス
テロイドホルモン(例えば、デキサメタゾン)依存性プ
ロモーターにより、導入された遺伝子、つまりTli
DNAポリメラーゼの発現を調節することができる。次
に、この遺伝子の下流に関しては、その翻訳停止コドン
の下流直後を宿主または宿主関連生物から得られた転写
停止信号を含むDNA断片を挿入するとよい。例えば、
サルのウイルスであるシミアンウイルス40(simi
an virus 40,SV40)の早期遺伝子(e
arly gene)の翻訳停止コドン下流直後から2
00〜500塩基対のDNAを用いれば十分である。な
お、ある種の細胞においては、DNAポリメラーゼ遺伝
子本体にあるイントロン1は取り除いておいた方がよく
発現することがある。
【0027】以上の構造を持つ一つながりのDNAを燐
酸カルシウム法やエレクトロポレーション法等の方法に
て細胞に導入する。このとき、この遺伝子が導入された
細胞のみを拾い出すために、同時にネオマイシン耐性遺
伝子を発現ベクターに挿入したものを混ぜておく。その
後、G418を入れた細胞培養培地にてしばらく培養す
れば、当該遺伝子が導入された細胞のみを選択的に得る
ことができる。このような細胞(例えば、マウスのES
細胞)を偽妊娠状態の仮親の卵管内あるいは子宮内に移
植するか、または桑実胚あるいは胚盤胞にまで体外で培
養し発育させたのち子宮内に移植し、所定の妊娠期間を
経て産み出されたマウス個体においては、当該遺伝子を
持つ細胞はその個体の体細胞と生殖細胞においてキメラ
の形で分布しているわけであるから、適切な交配によ
り、個体の全細胞において当該遺伝子をヘテロ接合体の
形で持つ動物が得られるから、ヘテロ接合体同士をかけ
合わせてホモ接合体の形を持つ動物が得られる。無論、
前述のキメラのままで次の段階へ行ってもよい。
【0028】次に、導入された遺伝子の誘導を行う。例
えば、MMTVのLTRを持つ場合、当該遺伝子を持つ
生物個体にステロイドホルモン(例えばデキサメタゾ
ン)を経口、筋肉注射等の方法にて投与する。これによ
り、この遺伝子はLTR内のDNA要素によりその発現
のスイッチが入り、LTRよりmRNAの転写が開始さ
れ、最終的に、導入されたDNAポリメラーゼ蛋白質が
細胞内に蓄積する。この蛋白質が宿主のDNAポリメラ
ーゼとある程度異なっていれば、それは宿主の調節をさ
ほど受けることなくDNA合成を開始する。この時、
li DNAポリメラーゼは、細胞内における既存の染
色体DNAの末端に対し、該末端を合成起点として4〜
15塩基対程度の短かい塩基配列を幾度にも繰り返しな
がら付加していく。つまり、幾度にも繰り返される4〜
15塩基対程度の短かい塩基配列により、テロメア領域
が伸長していく。なお、本発明におけるテロメア領域の
伸長は、大きく分けて次のような2つの形態をとる。す
なわち、細胞内の既存テロメア領域の塩基配列を仮に、
……(AGGGT)(以下、「AGGGT」なる配列
を「X」と略称する)とする場合、本発明の方法によ
り、 当該テロメアDNAと同じ繰返し配列(X)で以てテ
ロメアが伸長される場合 テロメアDNAとは異なる繰返し配列(Y)で以てテ
ロメアが伸長される場合とがある。いずれの場合も寿命
の延長が起こると考えられる。
【0029】ある生物の寿命を延長させることにより、
その生物をより長い期間にわたって産業的、工業的に、
あるいはその他の目的に利用することができる。具体的
にいえば、次に記載する期間の延長等が挙げられる。す
なわち、牛、馬、ヒトなどの労働可能期間の延長、牛の
搾乳可能期間の延長、鶏の産卵可能期間の延長、犬、猫
小鳥等の愛玩動物への愛玩期間の延長、羊の羊毛刈取り
可能期間の延長等があげられ、さらには、出産可能期間
が延びることから、絶滅の危機に瀕する動物の数を増や
す目的にも利用することができる。
【0030】本発明で用いる耐熱性DNAポリメラーゼ
の製法、あるいはこれをコードする遺伝子の製法として
は今日において公知であり、当業者であれば容易に行う
ことができる。なお、以下に関連公報を列挙する(これ
らによっても得ることができる)。特開平2−6058
5号公報、特公平8−24570号公報(特開平2−4
34号公報)、特開平5−68547号公報、特公平7
−59195号公報(特開平5−130871号公
報)、特開平5−328969号公報、特開平7−51
061号公報、特開平6−339373号公報、特開平
6−7160号公報
【0031】
【実施例】以下、本発明の一実施例を挙げて具体的に説
明するが、本発明はこれによって限定されるものではな
い。
【0032】実施例1 真核細胞プロモーターとしてマウス乳腺腫ウイルスLT
Rを持つ遺伝子発現用プラスミドベクターpN224
(図1参照)に対し、Tli DNAポリメラーゼの構
造遺伝子を挿入した。このベクターには、後で挿入した
遺伝子を取り除けるようにするためloxP配列が挿入
されている。すなわち、全体の構造は、上流よりlox
P配列、プロモーター配列、DNAポリメラーゼ遺伝
子、ターミネーター配列、loxP配列とする。また、
プラスミド本体には選択マーカーとしてネオマイシン耐
性遺伝子(neo遺伝子)が挿入されている。完成した
プラスミドをpN554とした(図2参照)。
【0033】マウス培養細胞(ES細胞)の中に、制限
酵素(NdeI)によって直線化したプラスミドpN5
54を0.2μg/mlの濃度にて導入した。この導入
は、エレクトロポレーション(ジーンパルサー、バイオ
・ラッド社製、500μF、200V)を用いて行なっ
た。その後、G418を150μg/ml含む培地にて
約7日間培養を継続し、G418耐性のコロニーを入手
した。この細胞より、集合キメラ法[A. Nagg, Product
ion of completely ES cell-deriued fetusesin gene t
argeting. A. L. Joyner 著、pp147-179, IRL Press, 1
993年発行]を用いた方法によりトランスジェニックマ
ウスを得た。得られたトランスジェニックマウス同士の
交配によりマウスの産仔を得、その産仔マウス同士の交
配により導入遺伝子をホモ接合体の形として持つマウス
を非キメラの個体として得た。
【0034】途中の遺伝子の態様はサザン・ブロット法
[分子遺伝学実験法、小関治男ら著、共立出版(株)、
1983年発行]を用いて尾から得られたDNAにて確認し
た。導入遺伝子をホモ接合体として持つ成体マウスにお
いて、デキサメサゾンを経口投与することにより、この
導入遺伝子のプロモーターを活性化し、DNAポリメラ
ーゼ遺伝子を発現させた。この過程によりマウスの生殖
前駆細胞において、染色体末端にテロメア様DNA配列
が付加されるが、このことを確認すべく次のような実験
を行なった。すなわち、サザン・ブロット法により、染
色体末端部のDNA断片の延長を見た。つまり、全40
個ある染色体のDNAのその全てに、しかもその両末端
に、(TAGATATC)からなる8塩基対の繰返し
配列が約5000塩基対の長さに亙って伸びていること
をサザン・ブロット法により確認できた。
【0035】次に、このマウスより得られた子供同士を
交配することにより、染色体末端にテロメア様DNA配
列を持つ状態が全細胞に存在するような個体(マウス)
を得た。このマウス(M1)においてはテロメアが伸長
されているため(一般的に、マウスの場合、通常のテロ
メアの長さは約4,000塩基対であり、本実施例で伸
長させたテロメア様DNA配列の長さは、前述したよう
に5,000塩基対であるから、結局、このマウスの塩
基配列の全長は、約9,000塩基対となってい
る。)、本来約2年の寿命であるべきマウスにおいて約
1年の寿命延長が生じた。すなわち約3年間生きた。
【0036】このマウスの老衰死後において、尾よりD
NAを得て、サザン・ブロット法によりテロメア領域の
長さを調べた結果、当初約9,000塩基対の長さに亙
って伸びていた繰り返し配列が約100塩基対に減少し
ていることが分かった。
【0037】実施例2 実施例1と同様にして、繰返し塩基配列の種類、及び長
さが、上記実施例1の場合と異なるテロメアを備えたマ
ウス(M2、M3)を得た。伸長部分の長さ、及び伸長
に係わった繰返し塩基配列を、サザン・ブロット法によ
り各々調べた。これにより、次のような結果が得られ
た。
【0038】 (M2)繰返し単位;(TTGGGG)、伸長部分の長さ;約1,000塩基対 (M3)繰返し単位;(TTGGGG)、伸長部分の長さ;約2,500塩基対 繰返し単位(TTGGGG)を持つマウス(M2)と
(M3)は、次のようにして得たマウスである。すなわ
ち、Tli DNAポリメラーゼの構造遺伝子をプラス
ミドに挿入する代わりに、セルモコッカス・セレル(
hermococcus celer)のDNAポリメ
ラーゼ構造遺伝子をプラスミドに挿入し、それ以外は実
施例1と同様にして得たマウスである。
【0039】なお、同じDNAポリメラーゼの構造遺伝
子を使用したにもかかわらず、M2とM3との間でテロ
メアの伸長部分の長さが互いに相違しているのは、当該
構造遺伝子を挿入したプラスミドの染色体上における位
置の違いによるものであり、これによるDNAポリメラ
ーゼの発現量の違いによるものである。
【0040】実施例1と実施例2で得られた各マウス
(M1〜M3)の、「新たに伸長されたテロメア様DN
Aの長さ」と「寿命の延長」との関係を探るべく、グラ
フを作成した(図3参照)。この図より、寿命の延長の
程度(長さ)は、新たに伸長されたテロメア様DNAの
長さに比例していることが分かる。
【0041】
【発明の効果】本発明により、生物の発生の初期段階に
おいて、テロメアDNAを修飾することができた(すな
わち、染色体DNAの末端に存在するテロメアDNAを
人為的に伸長させることができた)。これにより、各生
物種が本来持っている寿命の長さが延長され、その生物
を産業上あるいは他の目的に対し、より長く利用するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】構造遺伝子を挿入したベクターを示す図であ
る。
【図2】プラスミドの構造を示す図である。
【図3】「新たに伸長されたテロメア様DNAの長さ」
と「寿命の延長」との関係を表した図表である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】細胞内に蛋白質を導入することからなり、 これによって染色体DNAの端部を合成起点としてデオ
    キシリボヌクレオチドを重合させることを特徴とする染
    色体DNAにおけるテロメア領域の伸長方法。
  2. 【請求項2】蛋白質をコードする遺伝子である蛋白質構
    造遺伝子とプロモーター領域の遺伝子と転写終了領域の
    遺伝子とが各々挿入されてなる発現ベクターを細胞に導
    入することからなり、 ステロイドホルモンなどのプロモーター誘導物質を投与
    して前記プロモーター領域を活性化し、これにより発現
    した前記蛋白質の存在下にて、デオキシリボヌクレオチ
    ドを染色体DNAの端部を合成起点として重合させるこ
    とを特徴とする染色体DNAにおけるテロメア領域の伸
    長方法。
  3. 【請求項3】前記蛋白質がDNAポリメラーゼであるこ
    とを特徴とする請求項1又は2記載の伸長方法。
  4. 【請求項4】前記DNAポリメラーゼがセルモコッカス
    属、セルマス属に属する細菌のDNAポリメラーゼから
    なる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴と
    する請求項3記載の伸長方法。
  5. 【請求項5】染色体DNAのテロメア領域を伸長させる
    ために働く蛋白質が、プロモーター領域の活性化により
    細胞内にて発現するように設計された発現ベクターであ
    り、蛋白質をコードする遺伝子である蛋白質構造遺伝
    子、プロモーター領域の遺伝子及び転写終了領域の遺伝
    子が各々挿入されてなることを特徴とするテロメア伸長
    用発現ベクター。
  6. 【請求項6】前記蛋白質が、セルモコッカス属、セルマ
    ス属に属する細菌のDNAポリメラーゼからなる群より
    選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項
    5記載のテロメア伸長用発現ベクター。
  7. 【請求項7】蛋白質をコードする遺伝子である蛋白質構
    造遺伝子を生物Aの細胞より精製するとともに、前記遺
    伝子に対してプロモーター領域の遺伝子を配置し、のち
    この融合遺伝子を他の生物Bの細胞に導入し、この細胞
    を偽妊娠状態の仮親の卵管内あるいは子宮内に移植する
    か、または桑実胚あるいは胚盤胞にまで体外で培養し発
    育させたのち子宮内に移植し、移植後に得られたF1ト
    ランスジェニック生物に対し、あるいは少なくとも片方
    をF1トランスジェニック生物とする掛け合わせによっ
    て得たF2トランスジェニック生物に対し、ステロイド
    ホルモンなどのプロモーター誘導物質を投与して前記プ
    ロモーター領域を活性化し、これによって当該細胞内に
    て前記蛋白質を発現せしめ、これとともに前記蛋白質の
    存在下にてデオキシリボヌクレオチドを重合させて細胞
    内における既存染色体DNAのテロメア領域を伸長させ
    ることからなる生物の寿命延長方法。
  8. 【請求項8】前記蛋白質が、セルモコッカス属、セルマ
    ス属に属する細菌のDNAポリメラーゼからなる群より
    選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項
    7記載の寿命延長方法。
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