JPH108068A - 重油基材の製造方法 - Google Patents

重油基材の製造方法

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JPH108068A
JPH108068A JP8163378A JP16337896A JPH108068A JP H108068 A JPH108068 A JP H108068A JP 8163378 A JP8163378 A JP 8163378A JP 16337896 A JP16337896 A JP 16337896A JP H108068 A JPH108068 A JP H108068A
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oil
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JP8163378A
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English (en)
Inventor
Yasuhiro Kubota
泰宏 久保田
Yuichiro Fujiyama
優一郎 藤山
Wataru Sawara
渉 佐原
Masaru Ushio
賢 牛尾
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Eneos Corp
Original Assignee
Nippon Oil Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硫黄含有量の比較的高い原料油を苛酷な水素
化処理条件下で処理して、硫黄含有量、ドライスラッジ
量及びトルエン不溶分含有量が低く、貯蔵安定性に優れ
た重油基材を製造する方法を開発する。 【解決手段】 硫黄などを特定量含む石油蒸留残渣物
を、水素化触媒床中の温度が390〜450℃の第1段
階で特定の水素化処理した該処理油を、次いで水素化触
媒床中の温度が300〜400℃、水素化触媒床中の最
高温度が第1段階の最高温度より10℃以上低い第2段
階で特定の水素化処理した該処理油を得、これをさらに
水素化触媒床中の温度が150〜300℃未満の第3段
階で特定の水素化処理を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重油基材の製造法
に関し、詳しくは硫黄含有量およびドライスラッジ量が
低く、貯蔵安定性に優れた重油基材を製造する方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、我国における重油は硫黄含有量の
少ない原油を常圧蒸留装置で処理しナフサ、灯油、軽油
といった軽質炭化水素を除去することにより得られる硫
黄含有量の低い常圧蒸留残査物や、この低硫黄常圧蒸留
残査物を更に減圧蒸留装置で処理して減圧軽油を除去す
ることにより得られる低硫黄減圧蒸留残査物を主な基材
とし、これにさらに粘度等の調整に灯油、軽油などを混
合することで製造されてきた。
【0003】一方、低硫黄原油の供給不足や硫黄含有量
の多い原油から得られる常圧または減圧蒸留残査物の有
効利用、更に粘度調整用の灯油、軽油等の中間留分の増
産といった観点から、硫黄含有量の多い原油から得られ
る常圧または減圧蒸留残査物を高温高水素分圧下で水素
化触媒と接触させて脱硫、脱窒素、分解反応を進めるこ
とで、低硫黄かつ低粘度の重油基材を製造する水素化処
理プロセスが開発され、商業運転されている。この水素
化処理プロセスの代表的な運転条件は、反応温度350
〜450℃、反応塔入口の水素分圧9.8〜19.6M
Pa、液空間速度0.1〜5.0h-1、反応塔入口の水
素/油比250〜1700Nm3 /m3である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらの水素化処理プ
ロセスは上述したとおり、低硫黄原油の供給不足や硫黄
含有量の多い原油から得られる常圧または減圧蒸留残査
物の有効利用、更に粘度調整用の灯油、軽油等の中間留
分の増産といった観点から、非常に有意義なものである
が、反応温度を高くする等の苛酷度の高い運転条件で蒸
留残査物を水素化処理すると生成物中にドライスラッジ
が析出してしまう。なお、ドライスラッジとは、一般に
1.0μm以上の径を持つアスファルテン分子を主体と
した粒子である。
【0005】ドライスラッジを多く含有する基材を重油
の基材として使用すると、燃料油フィルターや遠心式油
清浄機の閉塞、燃料油加熱器のファウリング、および燃
焼機関の重油噴射ノズル閉塞等のトラブルが発生する懸
念がある。
【0006】重油基材は生産後、輸送、タンク貯蔵など
を経て使用されるので、生産から使用まで一定期間がす
ぎてしまうのが普通である。その間空気との接触などの
影響で生産直後はドライスラッジを含まない生成油でも
貯蔵中にドライスラッジが生成することがある。このよ
うな水素化処理生成油は重油基材としては不適当であ
る。
【0007】また生成油中のドライスラッジ量が問題に
ならないレベルであっても、過酷度の高い運転条件下で
は反応塔下流の熱交換器などで圧力損失の増加が発生す
ることがある。圧力損失が増加すると管の清掃のために
装置全体を停止しなければならないため多大な損失をも
たらす。
【0008】本発明者等が圧力損失の増加を引き起こす
原因物質についてさらに研究したところ、次に述べるト
ルエン不溶分含有量と管の圧力損失上昇によい相関があ
ることを見いだした。
【0009】このトルエン不溶分はアスファルテンのよ
うな多環芳香族が高温の過酷な水素化処理により脂肪族
側鎖が失われ芳香族性がドライスラッジよりもさらに増
したものと考えられる。このような物質は反応器の熱交
換器などで処理油の温度が300℃以下になると熱交換
器などの管表面に付着し、圧力損失の上昇を引き起こ
す。
【0010】ドライスラッジが生成油中に0.05〜数
%発生すると重油基材として問題になるのに対し、トル
エン不溶分は数十〜数百ppmの濃度であっても反応器
下流の熱交換器などの管表面に付着することにより圧力
損失の増加、ひいては管閉塞を引き起こす場合がある。
【0011】したがってこれまでは、水素化処理プロセ
スの運転において、生成油中のドライスラッジ量が増加
せず、この生成油を貯蔵したときでも発生するドライス
ラッジ量が許容範囲であり、なおかつトルエン不溶分が
圧力損失上昇を引き起こさないような反応温度を上限と
する運転条件の制約を受けざるを得なかった。
【0012】また、蒸留残査物の水素化処理で用いられ
る水素化触媒は通常運転時間と共に脱硫、脱窒素、分解
反応の活性が低下するため、運転中の触媒活性の低下を
補償するための反応温度の昇温を考慮して運転初期の反
応温度を決めるが、運転期間中の原油タイプに代表され
る原料油種の変更や生成油硫黄含有量の目標値の変更等
により触媒活性の低下が予想以上に進み、運転の途中で
運転末期の設計反応温度に到達してしまうことがある。
したがってたとえ運転初期の反応温度をドライスラッジ
の発生や、下流の管の圧力損失上昇などを引き起こさな
い温度以下に設定しても、運転途中に運転末期の設計反
応温度に到達すると生成油中にドライスラッジが発生し
たり、下流の管の圧力損失上昇が発生する。このため、
それ以降は脱硫、脱窒素、分解反応の転化率を下げる、
厳しい反応条件が要求される減圧蒸留残査物の処理比率
を下げる、または反応条件の緩やかな常圧蒸留残査物の
みを処理する、あるいはその処理量を下げるといった制
限を受けていた。
【0013】ドライスラッジの増加をさける手段として
特開平8−12978号公報には原料油を385〜50
0℃で処理した後、385℃未満の温度で処理すること
により原料油の硫黄分を十分取り除きつつ生成油中のド
ライスラッジ量を0.1質量%未満とする方法が述べら
れている。
【0014】しかし二段目の温度が300〜385℃の
場合は確かに生成直後のドライスラッジ量は低下する
が、生成油の貯蔵安定性が低く、タンクなどで一定期間
貯蔵すると再びドライスラッジが発生するため重油基材
としては不適当であり、生成油の貯蔵安定性まで含めて
改善するためには二段目の反応温度をもっと低くする必
要がある。
【0015】一段目で高温処理を行った後、処理油を二
段目で必要とされる温度まで冷却する方法としては水素
などの気体、液体または気体と液体の混合物を注入する
方法と熱交換器を用いる方法がある。気体、液体または
気体と液体の混合物を注入して冷却する方法の場合、処
理油を300℃以下に冷却するためには温度差が85℃
以上にもなり、膨大な量の注入物が必要となる。このた
め経済的にも不利であり、反応塔の圧力損失の面からも
現実的ではない。
【0016】また、熱交換器を用いる方法の場合は前述
したように処理油の温度が熱交換器により300℃以下
に下がった時点で熱交換器の管表面に付着物が付着し圧
力損失が増加し運転不能になってしまう。このため熱交
換器における圧力損失の上昇を回避しつつ、十分に低い
温度で水素化処理を行うことにより処理油中のドライス
ラッジを低減し、なおかつ処理油の貯蔵安定性を改善し
て貯蔵時にもドライスラッジが発生しにくい生成油を得
る方法が求められている。
【0017】本発明は、硫黄含有量の比較的高い原料油
を苛酷な水素化処理条件下で処理し、硫黄含有量および
ドライスラッジ量が低く、貯蔵安定性に優れた重油基材
を製造する方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは硫黄含有量
の比較的多い石油蒸留残査物を苛酷な水素化処理して低
硫黄含有量の重油基材を得る際に起こる上記問題点を解
決すべく研究を重ねた結果、特定された条件で、原料油
を水素化処理することにより、硫黄含有量およびドライ
スラッジ量が低く、貯蔵安定性に優れた重油基材が得ら
れることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0019】すなわち、本発明は原料油としてドライス
ラッジ含有量が0〜5.0質量%、トルエン不溶分量が
0〜500質量ppm、硫黄含有量が1.0〜10質量
%である石油蒸留残渣物を、水素化触媒床中の温度が3
90〜450℃である第1段階において水素化処理する
ことによりドライスラッジ量およびトルエン不溶分含有
量が原料油より増加し硫黄含有量が原料油の30%以下
となった該処理油を、引き続き水素化触媒床中の温度が
300〜400℃であり、かつ水素化触媒床中の最高温
度が第1段階の最高温度より10℃以上低く保持された
第2段階において水素化処理することによりトルエン不
溶分含有量が第1段階出口でのトルエン不溶分含有量の
50%以下である該処理油を得、これをさらに水素化触
媒床中の温度が150〜300℃未満に保持された第3
段階において水素化処理することによりドライスラッジ
含有量が0.1質量%以下、トルエン不溶分含有量が第
1段階出口でのトルエン不溶分含有量の50%以下、硫
黄含有量が原料油の30%以下で、かつ貯蔵安定性試験
時のドライスラッジ含有量が0.2質量%以下である生
成油を得ることを特徴とする重油基材の製造方法を提供
する。以下、本発明の内容について詳細に説明する。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明に用いる原料油は、ドライ
スラッジ含有量が0〜5.0質量%、トルエン不溶分量
が0〜500質量ppm、硫黄含有量が1.0〜10質
量%である石油蒸留残渣物である。
【0021】石油蒸留残査物としては、具体的には例え
ば、常圧蒸留装置より得られる、通常、蒸留温度300
℃以上の留分を70質量%以上、好ましくは90質量%
以上、より好ましくは95質量%以上含む常圧蒸留残査
物;減圧蒸留装置より得られる、通常、蒸留温度400
℃以上の留分を70質量%以上、好ましくは90質量%
以上、より好ましくは95質量%以上含む減圧蒸留残査
物;これら常圧蒸留残査物と減圧蒸留残査物を任意の割
合で混合した残査油;これら常圧蒸留残査物、減圧蒸留
残査物またはそれらの混合物を水素化処理して得られる
硫黄分や窒素分等が減少した生成油;またはこれらの混
合物などが挙げられる。
【0022】なお、本発明でいう蒸留温度とは、JIS
K 2254に規定する「石油製品−蒸留試験方法」
の「6.減圧法蒸留試験方法」に準拠して測定される温
度を意味する。以降、本発明における石油留分の蒸留温
度とは、すべて上記方法により測定される値を意味す
る。
【0023】また本発明の原料油としては、これら石油
蒸留残査物100重量部に対して、接触分解装置(FC
C)から得られる分解重質軽油(ヘビーサイクル油)や
スラリー油を40重量部以下、好ましくは20重量部以
下配合したような混合油なども好ましく用いることがで
きる。
【0024】さらに本発明の原料油としては、後述する
第2、第3段階の水素化処理工程における出口油の一部
をリサイクルして、上記の石油蒸留残査物や混合油10
0重量部に対してこのリサイクル油を50重量部以下、
好ましくは30重量部以下配合した混合油なども、また
好ましく用いることができる。
【0025】本発明における原料油のドライスラッジ含
有量の下限値は0質量%であり、一方、その上限値は
5.0質量%、好ましくは1.0質量%である。ドライ
スラッジ含有量の上限値が5.0質量%を超える場合
は、水素化処理工程における原料油供給系統でのストレ
ーナーやバルブの閉塞、熱交換器や加熱炉のファウリン
グによる伝熱効率の低下等の問題を生じる恐れがあるた
め好ましくない。
【0026】なお本発明におけるドライスラッジ含有量
とは、ISO−10307−1に規定する“Petroleum
products - Total sediment in residual fuel oils -
Part1:Determination by hot filtration”に準拠して
測定される全沈降物量を意味する。以降、本発明におけ
るドライスラッジ含有量とは、すべてこの方法により測
定される値を意味する。
【0027】本発明でいうトルエン不溶分とは試料中の
トルエンに不溶な成分を指し、トルエン不溶分含有量は
試料中のトルエンに不溶な成分と試料の質量比で表され
る。トルエン不溶分含有量の測定方法としては試料適量
を十分なトルエンに溶解した後、十分目の細かいフィル
ターでろ過し、フィルター上のろ滓の質量を測定する方
法が挙げられる。この方法においては通常50〜150
gの試料が用いられ、これをトルエンに溶解して全量を
500〜1500ccにした後、フィルターでろ過す
る。フィルターの孔径としては0.2μmまたはそれ以
下のものが好ましい。またフィルターの材質は試料、ト
ルエンによって変質しないものであれば任意であり、メ
ンブレンフィルターなどが用いられる。
【0028】トルエン不溶分含有量の下限値は0質量p
pmであり、一方、その上限値は500質量ppm、好
ましくは250質量ppm、より好ましくは100質量
ppmである。トルエン不溶分含有量が500質量pp
mを超える場合は、水素化処理工程における原料油供給
系統でのストレーナーやバルブの閉塞、熱交換器や加熱
炉のファウリングによる伝熱効率の低下等の問題を生じ
る恐れがあるため好ましくない。
【0029】本発明において硫黄含有量の下限値は1.
0質量%、好ましくは2.0質量%であり、一方、その
上限値は10質量%、好ましくは6.0質量%である。
硫黄含有量が1.0質量%未満の場合は本発明のような
2段階の工程での水素化処理を要さずとも重油基材を製
造することが可能であり、エネルギーコスト的に不利で
ある。また硫黄含有量が10質量%を超える場合は、得
られる重油基材の硫黄含有量が高くなり、ボイラー燃料
として用いた場合に燃焼排ガス中の硫黄酸化物量の増大
をもたらしてしまう。また得られる重油基材の硫黄含有
量をより低下させるためには、反応塔や周辺機器等の建
設費が急激に上昇したり、多量のカッター材を必要とす
るため、それぞれ好ましくない。なお、硫黄含有量は、
JIS K 2541−1992に規定する「原油及び
石油製品−硫黄分試験方法」の「6.放射線式励起法」
に準拠して測定される。
【0030】本発明において、第1段階の水素化触媒床
中の温度は390℃以上、好ましくは400℃以上であ
り、一方、その上限値は450℃、好ましくは430℃
である。第1段階での水素化処理温度が390℃未満の
場合は触媒活性が十分に発揮されないため脱硫、脱窒素
および分解反応が実用の領域まで進まず、一方、その水
素化処理温度が450℃を超える場合はコーキング反応
が激しくなり、触媒上にコークが堆積して触媒活性が急
速に低下し、触媒寿命が短くなるため、それぞれ好まし
くない。
【0031】第1段階の水素化処理工程における温度以
外の他の条件は任意である。例えば第1段階の入口の水
素分圧は、通常、下限値が8. 0MPa、好ましくは
9.8MPaであり、一方、上限値が25.0MPa、
好ましくは19.6MPaの範囲で行うことができる。
入口の水素分圧が8.0MPa未満の場合は触媒上のコ
ーク生成が激しくなり触媒寿命が極端に短くなる懸念が
あり、一方、その水素分圧が25.0MPaを越える場
合は反応塔や周辺機器等の建設費が急激に上昇し、経済
的に実用性が失われる懸念がある。
【0032】また、第1段階での原料油の液空間速度
(LHSV)は、通常、下限値が0.05h-1、好まし
くは0.1h-1であり、一方、上限値が5.0h-1、好
ましくは2.0h-1の範囲で行うことができる。液空間
速度(LHSV)が0.05h-1未満の場合は、反応塔
の建設費が莫大になり経済的に実用性が失われる懸念が
あり、一方、液空間速度(LHSV)が5.0h-1を越
える場合は触媒活性が十分に発揮されず、脱硫、脱窒素
および分解反応が実用の領域まで進まない懸念がある。
【0033】また、第1段階の入口の水素/油比は、通
常、下限値が250Nm3 /m3 、好ましくは600N
3 /m3 であり、一方、上限値が1700Nm3 /m
3 、好ましくは1500Nm3 /m3 の範囲で行うこと
ができる。水素/油比が250Nm3 /m3 未満の場合
は触媒上のコーク生成が激しくなり触媒寿命が極端に短
くなる懸念があり、一方、水素/油比が1700Nm3
/m3 を超える場合は、反応塔や周辺機器等の建設費が
急激に上昇し、経済的に実用性が失われる懸念がある。
【0034】また、第1段階での水素化処理の操作は、
油とガスを並行で下降流または上昇流で行うことがで
き、また、油とガスを向流で行うこともできる。また、
第1段階の水素化処理として触媒を充填して使用される
反応塔は、単独の反応塔または連続した複数の反応塔の
どちらで構成されていてもよい。更に反応塔内は、単独
の触媒床または複数の触媒床のどちらで構成されていて
もよい。
【0035】また第1段階の水素化処理における各反応
塔の間や各触媒床の間に、後続の反応塔や触媒床の入口
の反応温度を調節する目的で、気体、液体または液体と
気体の混合物を注入することも可能である。
【0036】前記気体としては、例えば、水素やメタ
ン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等
の炭素数1〜6のパラフィン系炭化水素およびこれらの
混合物など、注入する温度、圧力で気体として存在でき
る炭化水素、または水素とこれら炭化水素との混合物;
が好ましく用いられる。また硫化水素、アンモニア、窒
素など、注入する温度、圧力で気体として存在できる他
の物質を含んでいてもよい。
【0037】前記液体としては、例えば、灯油、直留軽
油、減圧軽油などの石油蒸留物、該石油蒸留物や石油蒸
留残査物などの水素化処理油、石油蒸留物や石油蒸留残
査物などの熱分解油、石油蒸留物や石油蒸留残査物など
の接触分解油、またはこれらの混合物など、注入する温
度、圧力で液体として存在できる炭化水素が好ましく用
いられる。また第2段階の水素化処理工程における出口
油の一部をリサイクルして使用するのが更に好ましい。
【0038】第1段階において各反応塔の間や各触媒床
の間に気体や液体を注入する場合、それらの注入量は任
意であるが、通常、気体を注入する場合は注入量が気体
/油比で1700Nm3 /m3 以下の範囲で行うことが
でき、液体を注入する場合は注入量が液体/油比で1m
3 /m3 以下の範囲で行うことができる。
【0039】なお、第1段階の水素化処理工程におい
て、複数の反応塔または複数の触媒床を使用する場合、
本発明における第1段階の水素化処理温度は、各反応塔
の間や各触媒床の間への気体、液体または液体と気体の
混合物の注入の有無にかかわらず、またさらに反応塔の
数に関係なく、第1段階のすべての触媒床を対象にし
て、各触媒床の入口温度と出口温度を平均した温度に各
触媒床の触媒充填重量比率を乗じて加えた触媒重量平均
温度(WABT)で定義される。
【0040】第1段階の水素化処理工程における水素化
処理触媒としては、従来公知の任意の水素化処理触媒が
使用可能である。具体的には例えば、アルミナ、シリ
カ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、アルミナ−シ
リカ、アルミナ−ボリア、アルミナ−チタニア、アルミ
ナ−ジルコニア、アルミナ−マグネシア、アルミナ−シ
リカ−ジルコニア、アルミナ−シリカ−チタニア、各種
ゼオライト、セピオライト、モンモリロナイト等の各種
粘土鉱物などの多孔性無機酸化物を担体とし、これに水
素化活性金属を担持した物を好ましく用いることができ
る。
【0041】該担持金属としては、通常、周期律表第V
IA、VA、VB、およびVIII族の金属から選ばれ
る少なくとも1種の水素化活性金属種が好ましく用いら
れ、特にコバルト、モリブデン、ニッケルをそれぞれ単
独で、または、コバルト、モリブデン、ニッケルを2種
あるいは3種組み合わせて多孔性無機酸化物に担持した
触媒がより好ましく用いられる。なお、本発明の第1段
階の水素化処理工程で用いる水素化処理触媒は、通常市
販されている水素化処理触媒でも十分目的が達成可能で
あり、本発明は触媒の種類によって何ら制限されるもの
ではない。
【0042】第1段階の水素化処理により処理油中のド
ライスラッジ量およびトルエン不溶含有分が増加する。
一般的にはドライスラッジ量が0.1質量%以上、トル
エン不溶分含有量が10質量ppm以上となる。より一
般的には、ドライスラッジ量0.2質量%以上、トルエ
ン不溶分量20質量ppm以上となる。
【0043】第1段階の水素化処理工程により、通常、
実質的に原料油の脱硫反応、脱窒素反応および分解反応
の大部分が達成される。第1段階の水素化処理で得られ
る水素化処理油の硫黄含有量は原料油の硫黄含有量の3
0%以下であり、通常、その下限値は0.01質量%、
好ましくは0.1質量%であり、一方、その上限値は
2.0質量%、好ましくは1.0質量%である。また、
第1段階の水素化処理工程で得られる水素化処理油の窒
素含有量も何ら規定されるものではないが、通常、その
下限値は0.01質量%、好ましくは0.1質量%であ
り、一方、その上限値は1.0質量%、好ましくは0.
5質量%が一般的である。
【0044】なお、本発明における窒素含有量は、JI
S K 2609−1990に規定する「原油及び石油
製品−窒素分試験方法」の「7.化学発光法」に準拠し
て測定される。
【0045】本発明において、第2段階の水素化処理温
度の下限値は300℃、好ましくは320℃であり、一
方、その上限値は400℃、好ましくは380℃であ
る。第2段階での水素化処理温度が400℃を超える場
合はドライスラッジ、トルエン不溶分の水素化が進まず
に、逆にドライスラッジ、トルエン不溶分が増加してし
しまうため好ましくない。
【0046】さらに本発明では第2段階の水素化工程に
おいて、その最高温度を第1段階の最高温度より低い値
に設定して水素化処理を実施することが重要である。第
2段階の水素化処理工程における最高温度は、第1段階
における最高温度より10℃以上低く、より好ましくは
20℃以上低く保たれている必要がある。本発明におい
て、第2段階の最高温度が第1段階の最高温度と同一ま
たは第1段階の水素化処理温度より高い場合は、ドライ
スラッジ、トルエン不溶分の水素化が進まずに、逆にド
ライスラッジ、トルエン不溶分が増加してしまうため好
ましくない。
【0047】本発明における触媒床中の最高温度とは、
触媒床が原料油の流通方向に対して温度勾配を持つ場合
は触媒床中で温度が最も高い点の温度を指し、触媒床が
等温系の場合は触媒床の平均温度を指す。水素化反応は
発熱反応であるため通常反応器の後段ほど温度が高く、
反応温度を調節する目的て気体、液体または気体と液体
の混合物を注入している場合はジクザクの温度分布とな
る。
【0048】なお、本発明の第1段階の水素化処理工程
において複数の反応塔または複数の触媒床を使用する場
合、触媒床中の最高温度とは、各反応塔の間や触媒床の
間への気体、液体または液体と気体の混合物の注入の有
無にかかわらず、またさらに反応塔の数に関係なく、第
1段階のすべての触媒床を対象にして、温度が最も高い
点の温度を指す。
【0049】従来のように第2段階での水素化処理温度
を300℃未満にするために気体、液体または気体と液
体の混合物を注入して冷却する方法をとった場合、処理
油を300℃以下に冷却するためには冷却前後の温度差
が90℃以上にもなり、膨大な量の注入物が必要とな
る。このため経済的にも不利であり、反応塔の圧力損失
の面からも現実的ではない。
【0050】また、熱交換器を用いる方法の場合は処理
油の温度が熱交換器により300℃以下に下がった時点
で熱交換器の管表面に処理油中のトルエン不溶分が付着
し圧力損失が増加するため好ましくない。第2段階の水
素化処理油のトルエン不溶分含有量は、第1段階出口で
のトルエン不溶分含有量の50%以下、一般的には40
%以下となる。またドライスラッジ含有量は一般的には
0.5質量%以下、より一般的には0.3質量%以下と
なる。
【0051】本発明において、第3段階の水素化処理温
度の下限値は150℃、好ましくは180℃であり、一
方、その上限値は300℃、好ましくは250℃であ
る。第3段階での水素化処理温度が150℃未満の場合
は触媒活性が十分に発揮されないため水素化反応が実用
の領域まで進まず、一方、第3段階の水素化処理温度が
300℃を超える場合は処理直後の生成油のドライスラ
ッジ量は減少するが、処理油への貯蔵安定性改善効果が
低く、該生成油をタンクなどに一定期間貯蔵すると再び
ドライスラッジが発生するため、それぞれ好ましくな
い。具体的には貯蔵安定性試験時のドライスラッジ含有
量が0.2質量%を超えてしまうため好ましくない。
【0052】本発明における貯蔵安定性試験時のドライ
スラッジ含有量とは、ISO−10307−2に規定す
る“Petroleum products - Total sediment in residua
l fuel oils - Part 2:Determination using standard
procedures for ageing ”のProcedure A および Proce
dure Bに準拠して測定される全沈降物量を意味する。以
降、本発明におけるドライスラッジ含有量とは、すべて
この方法により測定される値を意味する。なお本発明に
おいては Precedure A および Procedure Bのどちらか
一方、または両方で測定された数値のうち小さい方を採
用することができる。
【0053】第3段階の水素化処理工程で得られる水素
化処理油のドライスラッジ含有量は0.1質量%以下、
一般的には0.05質量%以下となる。また、トルエン
不溶分含有量は第1段階出口でのトルエン不溶分含有量
の50%以下、一般的には40%以下となる。さらに貯
蔵安定性試験後のドライスラッジ含有量が0.2質量%
以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは
0.05質量%以下となる。
【0054】本発明において、第2、第3段階の水素化
処理工程における温度以外の他の条件は任意である。例
えば、第2、第3段位の入口の水素分圧は、下限値が
1.0MPaであり、一方、上限値が25.0MPa、
好ましくは19.6MPaの範囲で行うことができる。
入口の水素分圧が1.0MPa未満の場合は触媒活性が
十分に発揮されず、トルエン不溶分の水素化反応が実用
の領域まで進まない懸念があり、一方、その水素分圧が
25.0MPaを越える場合は反応塔や周辺機器等の建
設費が急激に上昇し、経済的に実用性が失われる懸念が
ある。
【0055】また、第2、第3段階での第1段階の水素
化処理を経た水素化処理油の液空間速度(LHSV)
は、通常、下限値が0.1h-1、好ましくは0.2h-1
であり、一方、上限値が10h-1、好ましくは4.0h
-1の範囲で行うことができる。液空間速度(LHSV)
が0.1h-1未満の場合は、反応塔の建設費が莫大にな
り経済的に実用性が失われる懸念があり、一方、液空間
速度(LHSV)が10h-1を越える場合は触媒活性が
十分に発揮されず、トルエン不溶分の水素化反応が実用
の領域まで進まない懸念がある。
【0056】また、第2、第3段階の入口の水素/油比
は、好ましくは下限値が250Nm3 /m3 、より好ま
しくは600Nm3 /m3 であり、一方、上限値が好ま
しくは1700Nm3 /m3 、より好ましくは1500
Nm3 /m3 の範囲で行うことができる。水素/油比が
250Nm3 /m3 未満の場合は、触媒上のコーク生成
が激しくなり触媒寿命が極端に短くなる懸念があり、一
方、水素/油比が1700Nm3 /m3 を超える場合
は、反応塔や周辺機器等の建設費が急激に上昇し、経済
的に実用性が失われる懸念がある。
【0057】また、第2、第3段階での水素化処理工程
の操作は、油とガスを並行で下降流または上昇流で行う
ことができ、また、油とガスを向流で行うこともでき
る。また、第2、第3段階の水素化処理工程として触媒
を充填して使用される反応塔は、単独の反応塔または連
続した複数の反応塔のどちらで構成されていてもよい。
更に、反応塔内は、単独の触媒床または複数の触媒床の
どちらで構成されていてもよい。
【0058】また、第2、第3段階の水素化処理工程に
おける各反応塔の間や各触媒床の間に、後続の反応塔や
触媒床の入口の反応温度を調節する目的で、気体、液体
または液体と気体の混合物を注入することも可能であ
る。
【0059】前記気体としては、例えば水素やメタン、
エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭
素数1〜6のパラフィン系炭化水素およびこれらの混合
物など、注入する温度、圧力で気体として存在できる炭
化水素または水素とこれら炭化水素との混合物が好まし
く用いられる。硫化水素、アンモニア、窒素など、注入
する温度、圧力で気体として存在できる他の物質を含ん
でいてもよい。また、前記液体としては、例えば、灯
油、直留軽油、減圧軽油などの石油蒸留物、石油蒸留物
や石油蒸留残査物などの水素化処理油、石油蒸留物や石
油蒸留残査物などの熱分解油、石油蒸留物や石油蒸留残
査物などの接触分解油、またはこれらの混合物など、注
入する温度、圧力で液体として存在できる炭化水素が好
ましく用いられるが、第2、第3段階の水素化処理工程
における出口油の一部をリサイクルして使用するのが更
に好ましい。
【0060】第2、第3段階において各反応塔の間や各
触媒床の間に気体や液体を注入する場合、それらの注入
量は任意であるが、通常、気体を注入する場合は注入量
が気体/油比で1700Nm3 /m3 以下の範囲で行う
ことができ、液体を注入する場合は注入量が液体/油比
で1m3 /m3 以下の範囲で行うことができる。
【0061】なお、第2段階の水素化処理工程において
複数の反応塔または複数の触媒床を使用する場合、本発
明における第2段階の水素化処理温度は、各反応塔の間
や各触媒床の間への気体、液体または液体と気体の混合
物の注入の有無にかかわらず、またさらに反応塔の数に
関係なく、第2段階のすべての触媒床を対象にして、各
触媒床の入口温度と出口温度を平均した温度に各触媒床
の触媒充填重量比率を乗じて加えた触媒重量平均温度
(WABT)で定義される。また第3段階の水素化処理
工程において複数の反応塔または複数の触媒床を使用す
る場合も本発明における第3段階の水素化処理温度は同
様に定義される。
【0062】また、第2、第3段階の水素化処理工程に
おける水素化処理触媒としては、従来公知の任意の水素
化処理触媒が使用可能である。具体的には例えば、アル
ミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ア
ルミナ−シリカ、アルミナ−ボリア、アルミナ−チタニ
ア、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−マグネシア、ア
ルミナ−シリカ−ジルコニア、アルミナ−シリカ−チタ
ニア、各種ゼオライト、セピオライト、モンモリロナイ
ト等の各種粘土鉱物などの多孔性無機酸化物を担体と
し、これに水素化活性金属を担持した物を好ましく用い
ることができる。
【0063】該担持金属としては、通常、周期律表第V
IA、VA、VB、およびVIII族の金属から選ばれ
る少なくとも1種の水素化活性金属種が好ましく用いら
れ、特にコバルト、モリブデン、ニッケルをそれぞれ単
独で、または、コバルト、モリブデン、ニッケルを2種
あるいは3種組み合わせて多孔性無機酸化物に担持した
触媒がより好ましく用いられる。なお、本発明の第2、
第3段階の水素化処理工程で用いる水素化処理触媒は、
通常市販されている水素化処理触媒でも十分目的が達成
可能であり、本発明は触媒の種類によって何ら制限され
るものではない。
【0064】なお、本発明においては、第1段階、第2
段階および第3段階の水素化処理を、一つの反応塔の中
で行ってもよく、あるいは分離した2基以上の反応塔を
用いて行ってもよい。また反応塔の中は複数個の触媒床
に分かれていても良い。
【0065】また、本発明において、第2段階の水素化
処理温度を第1段階の水素化処理温度より下げる方法お
よび第3段階の水素化処理温度を第2段階の水素化処理
温度より下げる方法は特に限定されるものではなく、任
意の方法を採用することができる。具体的には従来公知
の方法、例えば、低温の気体、液体、あるいは気体と液
体の両方を注入する方法、または熱交換器による低温流
体との熱交換の方法などを用いることができる。
【0066】前記気体としては、水素や例えば、メタ
ン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等
の炭素数1〜6のパラフィン系炭化水素およびこれらの
混合物など、注入する温度、圧力で気体として存在でき
る炭化水素または水素とこれら炭化水素との混合物が好
ましく用いられるが、例えば硫化水素、アンモニア、窒
素など、注入する温度、圧力で気体として存在できる他
の物質を含んでいてもよい。また、前記液体としては、
例えば、灯油、直留軽油、減圧軽油などの石油蒸留物、
石油蒸留物や石油蒸留残査物などの水素化処理油、石油
蒸留物や石油蒸留残査物などの熱分解油、石油蒸留物や
石油蒸留残査物などの接触分解油、またはこれらの混合
物など、注入する温度、圧力で液体として存在できる炭
化水素が好ましく用いられるが、第2段階または第3段
階の水素化処理工程における出口油の一部をリサイクル
して使用するのが更に好ましい。
【0067】また、本発明における第1段階と第2段階
と第3段階の水素化処理は連続的操作に限定されるわけ
ではなく、各段階の操作を個別に実施してもよい。なお
両段階の操作を個別に実施する場合、各段階の間の条件
は特に限定されるものではない。
【0068】本発明においては、以上の3段階の水素化
処理により、第1段階の高温処理にもかかわらず熱交換
器などの圧力損失上昇を回避しつつ、ドライスラッジ含
有量が0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以
下であり、なおかつ該生成油を10ccあたり1.5〜
2.5cm2 の部分を空気中に露出した状態で100℃
で24時間保持した後のドライスラッジ含有量が0.2
質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好まし
くは0.05質量%以下であり、かつ硫黄含有量が原料
油の30%以下、好ましくは20%以下に低められた重
油基材が得られる。
【0069】なお、本発明における脱硫反応の達成率は
次式で示される値を意味する。以降、本発明における脱
硫反応の達成率とは、すべてこの式により計算される値
を意味する。
【0070】
【数1】
【0071】また得られる重油基材の窒素含有量も何ら
規定されるものではないが、通常、原料油に対する脱窒
素反応の達成率が10%以上、好ましくは30%以上で
あるのが一般的である。なお、本発明における脱窒素反
応の達成率は次式で示される値を意味する。以降、本発
明における脱窒素反応の達成率とは、すべてこの式によ
り計算される値を意味する。
【0072】
【数2】
【0073】また本発明における2段階の水素化処理に
よる全体での分解反応達成率は任意であるが、通常20
%以上、好ましくは40%以上であるのが一般的であ
る。なお、本発明における分解反応の達成率は次式で示
される値を意味する。以降、本発明における分解反応の
達成率とは、すべてこの式により計算される値を意味す
る。
【0074】
【数3】
【0075】また本発明においては、通常、第1段階の
水素化処理での脱硫反応達成率が、第2段階および第3
段階の水素化処理工程も含めた全体の水素化処理での脱
硫反応達成率の80%以上、好ましくは90%以上、よ
り好ましくは95%以上を占めることが望ましい。また
本発明においては、通常、第1段階の水素化処理での脱
窒素反応達成率が、第2段階および第3段階の水素化処
理工程も含めた全体の水素化処理での脱窒素反応達成率
の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは
90%以上を占めることが望ましい。
【0076】さらに本発明においては、通常、第1段階
の水素化処理工程での分解反応達成率が、第2段階およ
び第3段階の水素化処理工程も含めた全体の水素化処理
での分解反応達成率の75%以上、好ましくは85%以
上、より好ましくは90%以上を占めることが望まし
い。
【0077】本発明により得られる重油基材は、単独で
も製品重油として使用可能である。また、具体的には例
えば、石油蒸留残査物;灯油;直留軽油;減圧軽油;石
油蒸留残査物を熱分解して得られる軽油や残油およびこ
れらの水素化処理油;接触分解装置より得られる軽質軽
油(ライトサイクル油)、重質軽油(ヘビーサイクル
油)、スラリー油;等の他の重油基材を適宜配合して、
製品重油とすることもできる。
【0078】
【実施例】次に実施例および比較例により本発明をさら
に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら
限定されるものではない。
【0079】(実施例1)アルミナ担体にNiO 3質
量%とMoO3 11質量%を含有する市販脱硫触媒を、
直列に配した第1段階の水素化処理用ステンレス製反応
塔および第2段階の水素化処理用のステンレス製反応塔
および第3段階の水素化処理用のステンレス製反応塔に
それぞれ充填後、触媒を予備硫化した。次いで表1の性
状を有する減圧蒸留残渣油を原料油とし、この反応塔を
用いて表2に示す反応条件で連続的に水素化処理を行っ
た。第1段階、第2段階および第3段階の反応塔出口よ
り得られた水素化処理油の性状を表2に併記した。
【0080】(比較例1)第2、第3段階の反応塔の低
温処理効果を明確化にするため、実施例1と同一の原料
油および脱硫触媒を使用し、第2、第3段階の水素化処
理温度を第1段階の反応温度と等しく設定した以外は実
施例1と同一の条件で水素化処理を行い、その結果を表
2に併記した。またこのとき運転開始1000時間以
降、第3段階出口からセパレーターにかけて、圧力損失
が急激に上昇し、運転に支障をきたした。
【0081】(比較例2)第2、第3段階の反応塔の低
温処理効果を明確化するため、実施例1と同一の原料油
および脱硫触媒を使用し、最終的に得られる水素化処理
油の硫黄含有量が実施例1で得られた水素化処理油の硫
黄含有量と同一となるように、第1、第2および第3段
階の水素化処理温度を407℃に設定した以外は実施例
1と同一の条件で水素化処理を行い、その結果も表2に
併記した。
【0082】(比較例3)貯蔵後もドライスラッジが発
生しない生成油を得るためには300℃以下の低温で処
理する必要があることを明確化するため、実施例1と同
一の原料油および脱硫触媒を使用し、第3段階での水素
化処理温度を実施例1の第2段階の水素化処理温度を同
一となるように設定した以外は実施例1と同一の条件で
水素化処理を行い、その結果も表2に併記した。
【0083】(比較例4)装置の圧力損失上昇をさけて
長時間運転を継続するためには第3段階において処理油
の温度を300℃以下に降温する前に第2段階において
300〜400℃の水素化処理温度で水素化処理する必
要があることを明確化するため、実施例1と同一の原料
油および脱硫触媒を使用し、第2段階での水素化処理温
度を実施例1の第3段階の水素化処理温度を同一となる
ように設定した以外は実施例1と同一の条件で水素化処
理を行い、その結果も表2に併記した。ただしこの例に
おいては第1段階の反応塔出口から第2段階の反応塔に
かけて圧力損失が急激に上昇し約2000時間で装置の
停止を余儀なくされた。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】表2の結果から明らかなとおり、本発明の
方法によれば、硫黄含有量の比較的高い石油蒸留残査物
を原料油として用いた場合でも、苛酷な水素化処理条件
によって硫黄含有量が原料油の30%以下まで低めら
れ、かつドライスラッジ含有量が0.1質量%以下、貯
蔵安定性試験後のドライスラッジ含有量が0.2質量%
以下の重油基材を得ることが可能である。
【0087】それに対して第2、第3段階で低温水素化
処理を行わない比較例1、最終的に得られる水素化処理
油が実施例1で得られた油と同じ硫黄含有量となるよう
に第1、第2、第3段階の反応塔温度を407℃に設定
した比較例2では、実施例1と同程度に硫黄含有量が低
められているものの、それぞれドライスラッジ含有量が
0.87質量%、0.26質量%と実施例1と比較して
非常に高く、重油基材としては不適当である。
【0088】また、第2、第3段階の水素化処理温度を
両方とも340℃に設定した比較例3では生成油のドラ
イスラッジ含有量は実施例1と同程度であるものの、貯
蔵安定性試験後のドライスラッジ含有量が0.21質量
%と非常に大きく、重油基材としては不適当である。
【0089】一方、第2、第3段階の水素化処理温度を
両方とも200℃に設定した比較例4では、硫黄含有
量、ドライスラッジ含有量、トルエン不溶分含有量、貯
蔵安定性試験後のドライスラッジ含有量が実施例1と同
程度に低められている。
【0090】しかし、第1段階の反応塔出口より得られ
た水素処理油のトルエン不溶分含有量が128質量pp
mであり、この処理油の温度を200℃に低下させたた
めにトルエン不溶分が配管、触媒表面、その他に付着し
て圧力損失の上昇を引き起こし、運転開始後約2000
時間で装置の停止を余儀なくされた。従って通常半年か
ら1年間の連続運転が要求される商業装置においてこの
ような運転方法は不適当である。
【0091】
【発明の効果】本発明の方法によれば、比較的硫黄含有
量の多い石油蒸留残査物を原料油とした場合でも、水素
化処理を特定条件のもとで3段階で行うことにより、装
置の圧力損失上昇を回避しつつ、最終的にドライスラッ
ジ含有量が0.1質量%以下、硫黄含有量が原料油の3
0%以下であり、なおかつ該生成油を10ccあたり
1.5〜2.5cm2 の部分を空気中に露出した状態で
100℃で24時間保持した後のドライスラッジ含有量
が0.2質量%以下である重油基材を長期間に亙って得
ることができる。このため、通常行われる水素化処理で
受ける運転条件の制約、例えばドライスラッジが析出し
ない反応温度の上限や、貯蔵安定性の悪化しない反応温
度の上限といった運転条件の制約を大幅に緩和でき、装
置建設の経済性を大幅に向上できる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10G 65/12 9547−4H C10G 65/12 (72)発明者 牛尾 賢 神奈川県横浜市中区千鳥町8番地 日本石 油株式会社中央技術研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料油としてドライスラッジ含有量が0
    〜5.0質量%、トルエン不溶分量が0〜500質量p
    pm、硫黄含有量が1.0〜10質量%である石油蒸留
    残渣物を、水素化触媒床中の温度が390〜450℃で
    ある第1段階において水素化処理することによりドライ
    スラッジ量およびトルエン不溶分含有量が原料油より増
    加し硫黄含有量が原料油の30%以下となった該処理油
    を、引き続き水素化触媒床中の温度が300〜400℃
    であり、かつ水素化触媒床中の最高温度が第1段階の最
    高温度より10℃以上低く保持された第2段階において
    水素化処理することによりトルエン不溶分含有量が第1
    段階出口でのトルエン不溶分含有量の50%以下である
    該処理油を得、これをさらに水素化触媒床中の温度が1
    50〜300℃未満に保持された第3段階において水素
    化処理することによりドライスラッジ含有量が0.1質
    量%以下、トルエン不溶分含有量が第1段階出口でのト
    ルエン不溶分含有量の50%以下、硫黄含有量が原料油
    の30%以下で、かつ貯蔵安定性試験時のドライスラッ
    ジ含有量が0.2質量%以下である生成油を得ることを
    特徴とする重油基材の製造方法。
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