JPH10586A6 - 産業ロボットの関節装置 - Google Patents
産業ロボットの関節装置Info
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Abstract
【目的】最も大きな振動が産業用ロボットに生じるときの周波数ポイントを、通常の作業領域外にシフトできる産業用ロボットの関節装置を提供する。
【構成】減速装置が前段減速装置と後段減速装置とからなり、後段減速装置は遊星歯車装置により構成され、前段減速装置は遊星歯車装置とは型式の異なる装置により構成されており、前段減速装置によって後段減速装置への入力回転数をロボットの固有振動数以下とすることにより、電動モータの通常制御回転数領域において共振を発生しないようにしている。
【選択図】図2
【構成】減速装置が前段減速装置と後段減速装置とからなり、後段減速装置は遊星歯車装置により構成され、前段減速装置は遊星歯車装置とは型式の異なる装置により構成されており、前段減速装置によって後段減速装置への入力回転数をロボットの固有振動数以下とすることにより、電動モータの通常制御回転数領域において共振を発生しないようにしている。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は産業ロボットの関節装置、特にロボットアームの共振振動の発生を防止するものに関する。
【0002】
【従来の技術】産業ロボットにおいては、一般に、作業に適した出力トルクを得るため、アーム等の関節部の駆動系には、高速低トルクの電動サーボモータまたは電動パルスモータと、この出力を低速高トルクに変換する減速装置とを用いている。また、そのような減速装置は、例えば、減速比1/120程度の大減速比を有していること、また、歯車間のガタ、すなわち、いわゆるバックラッシュが小さいこと、さらに、慣性を小さくするため軽量であること等が要求される。
【0003】このような要求を満たす従来の減速装置としては、例えば、特開昭59−175986号公報に開示されているような調和歯車装置(商品名:ハーモニックドライブ)および特開昭59−106744号公報に開示されているような偏心揺動型の遊星歯車減速機がある。前者の減速比は一般に1/80〜1/320程度であり、後者の減速比は一般に1/6〜1/200程度である。また、前者は後者に比し減速比当たりの外径、重量が小さく、かつ、ほとんどのロボットアームの関節部の駆動用減速装置として必要な減速比および機械的強度を満足している。従って、ロボットアームの関節部駆動用減速機のほとんどは調和歯車装置単体が適用され、まれに、調和歯車装置でも得られないほどの大減速比を必要とするもの、すなわち、小容量高速回転(例えば、出力が1000ワット以下で回転数が5000rpm)型のモータをロボットアームの駆動に用いる場合のように1/625程度の減速比を必要とするもの、については特開昭56−152594号公報に開示されているように調和歯車装置に前段減速装置を結合したものが用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した各減速装置をロボットの関節装置に用いた場合、減速装置に入力する電動モータ回転数が低い領域で減速装置とロボットアーム等がねじり共振を起こすという問題点があった。共振現象としては、ロボットアームの関節部近傍にねじり振動が現れることが多く、その結果、ロボットアームの先端位置が定まらなくなる。共振が生じる理由は、電動モータのトルク伝達機構である上記各減速装置の剛性が低いため、そのような減速装置を含む駆動系(電動モータ、減速装置およびロボットアームから構成される系)の固有ねじり振動数f0 が低くなり、従って、歯切の加工誤差等に起因して振動する減速装置の振動周波数が、電動モータの低回転数域で上記固有ねじり振動数f0 と一致するためと考えられていた。
【0005】このような問題点に対し、特開昭58−211881号公報には、発生した振動を打ち消すように電動モータの速度指令信号を変化させる電気的制御方式が提案されている。しかしながら、このような方式においてはフィードバックゲインを大きくすると系が不安定となり、特に剛性の低いロボット駆動系においては、逆に発振し易くなるという問題を生じるため、ゲインを大きくできず、従って、十分な振動打ち消し効果を得られない。また、特開昭59−175986号公報には高張力を与えたタイミングベルトで減速機を駆動し、該ベルトで振動を吸収する方式のものが提案されている。しかしながら、この方式においてはタイミングベルトが破断するという危険がある。また、特開昭59−115189号公報には減速機の主軸にばねとおもりから成る吸振器を取り付ける方式が提案されている。しかし、この方式においては遠心力により吸振器が破損したり、ロボットの負荷荷重に対応しておもり等を調整しなければならないという問題点がある。
【0006】そこで、本発明は、共振現象を実用域から外すことにより振動を防止するロボットアームの関節装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、ロボットアームの関節装置に用いる減速機のばね定数、固有ねじり振動数、トルク変動等と共振現象との関係につき種々研究を行った。先ず、回転ばね定数の高い減速機をロボットアームの関節装置に用いることによりロボットの駆動系の固有ねじり振動数f0 を実用域から外すことが可能か否かについて試算した。しかし、減速機の回転ばね定数K1 (図9参照)は、大きなものでもロボットアーム自体の回転ばね定数K2 の1/10〜1/5であるため、駆動系全体のばね定数K=K1・K2/(K1+K2)は大して大きくできず、その結果、駆動系の固有ねじり振動数f0 =1/2・π・(K/J)1/2 (ここに、Jは駆動系の慣性モーメント)も大して大きくできない。したがって、減速機のばね定数K1 を高めること、すなわち剛性を高めることによっては、駆動系の固有ねじり振動数f0 を実用域から外すことは不可能であるとの結論に達した。
【0008】そこで、発明者等は、振動発生の原因である減速機のトルク変動を無くすことを試みた。具体的には偏心揺動型の遊星歯車減速機を用い、トルク変動を阻止ないし減ずるよう、この減速機の内歯歯車と外歯歯車の歯に高精度の仕上げ加工を施し、かつ、トルク変動が生じてもこれを吸収するよう、偏心入力軸の軸受部やトルク取り出しピンの軸支部等に環状溝を設け、該溝にゴムリングを装着した。しかしながら、このような対策を施しても実用域での共振を防ぐことはできず、しかも、共振が生じるときの電動モータ回転数は、そのような対策を施さない場合とほとんど同じであることがわかった。
【0009】このような実験結果から、一定の機構の減速機であれば、ほぼ一定のトルク変動特性、すなわちロボットの駆動系に対する加振周波数特性を有するとの結論が導かれた。また、斯かる結論から、ロボット駆動系に組み込む減速装置の機構を変更することによりトルク変動特性を実用域外におくことができるとの仮説の下に種々の実験を行った。これらの実験の内容および結果については後述するが、これらの実験結果から仮説は実証され、下記の結論に到達した。
【0010】従来の常識では全く考えられなかった構成、すなわち、偏心揺動型の遊星歯車減速機は、内歯歯車と外歯歯車の歯数差が1であって、単独でも1/200程度の減速比にできるが、この減速比を数十分の一程度とし、これに所定範囲の減速比を有する前段減速比をわざわざ設けて歯車装置を構成し、これをロボットアームの駆動系に組み込むという構成により共振現象の生じる範囲を電動モータの実用域から外すことができる。
【0011】なお、偏心揺動型の遊星歯車減速機に前段減速機を設けた減速装置は、米国特許第4,348,918号明細書に開示されているようにクローラ車両の走行装置等に採用されている。しかしながら、そのような走行装置等は採用する減速機の重量、バックラッシュ等の問題をほとんど考慮しなくともよい。したがって、単に減速機の総減速比の変更を容易にするため、あるいは単に低速大トルクを出力するため、前段減速機を設けているのである。これに対し、高速性、位置精度等を要求され、且つ、全体構造の剛性が低いロボットにおいては、減速機の重量、バックラッシュを小さくすることが重要であるため、関節部に、減速比当たりの重量が調和歯車装置より大きい偏心揺動型の遊星歯車減速機を用い、さらに、重量、バックラッシュを増大させる要素となる前段減速機をわざわざ設けることは従来考えられなかったのである。
【0012】発明者らはさらに種々研究を重ねた結果、下記の構成を有する本発明に到達した。本発明に係る産業ロボットの関節装置は、ロボットの第1部材と、第1部材に回動自在に支持されたロボットの第2部材と、第1部材に一体的に取り付けられた電動モータの回転を減速して第2部材に伝達する歯車減速装置と、を備えた産業ロボットの関節装置において、前記歯車減速装置が、前記電動モータの回転数を減速する前段減速機と、前段減速機の出力の回転数をさらに減速する後段の遊星歯車減速機と、から構成され、前記電動モータが前記電動モータ、歯車減速装置および第2部材を含んで構成される駆動系のねじり発振周波数に対応する回転数を通常制御域内に有し、前記前段減速機が、前記電動モータの通常制御域における毎秒最高回転数を前記ねじり発振周波数以下になるように減速する、減速比を有し、前記遊星歯車減速機が、前記前段減速機の出力が入力される偏心入力軸、偏心入力軸の回転により偏心揺動させられる外歯歯車、外歯歯車と噛み合い外歯歯車の歯数より1つ多い歯数を有する内歯歯車および外歯歯車に係合するキャリアを有することを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の態様】以下、本発明に係る産業ロボットの関節装置を図面に基づいて説明する。
【0014】
【実施例1】図1ないし図3は本発明の第1実施例を示す図である。まず、構成について説明する。図1は本発明に係る産業ロボットの関節装置を用いたロボットの関節部の全体概略図である。1は電動モータであり、電動モータ1のフランジ2は減速装置3の筒体4に固定されている。筒体4は第1部材としての第1アーム5の先端部5aに固定されている。電動モータ一の出力の回転軸7は減速装置3の入力回転軸8に連結され、減速装置3の出力は軸10に伝達され、軸10は円筒体11を貫通して第2部材としての第2アーム12に固定されている。第2アーム12の端部の筒状体13と第1アーム5の先端部5aの下面から下方に突出する円筒型の突出体15との間には一対のベアリング16が介装されている。したがって、減速装置3は電動モータ1の回転数を減速してロボットの被駆動部すなわち第2アーム12を回動させる。また、電動モータ1、減速装置3、第2アーム12および第2アームに接続された負荷は駆動系を構成する。
【0015】減速装置3は図2および図3に示すように、電動モータ1の回転数を減速する前段減速機20と、前段減速機20に連結され、回転数をさらに減速する後段減速機21と、から構成されている。前段減速機20は平行軸型減速機である。後段減速機21は固定している内歯歯車28と内歯歯車28に噛み合う外歯歯車29と、外歯歯車29に係合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての入力クランク軸30と、を有する偏心揺動型の遊星歯車装置によって構成されている。また、内歯歯車28はピン歯31を用いたピン歯車で構成され、且つ外歯歯車29の歯数より一つだけ多い歯数を有している。また、前段減速機20は通常の平行軸型減速機であり平歯歯車により構成されている。
【0016】前段減速機20の減速比i1 と後段減速機21の減速比i2 とは電動モータ1の通常制御回転数の範囲内でロボットすなわち、第1アーム5および第2アーム12と、後段減速機21との共振が起きないように選択している。すなわち、電動モータ1の実用域では、前段減速機20の毎秒当たり回転数が電動モータ1、減速装置3、第2アーム12および第2アーム12に接続された負荷から構成される駆動系のねじり発振周波数(固有ねじり振動数f0 付近の周波数をいう。以下同じ)以下になるよう、前段減速機20の減速比i1 を選択する。この実施例においては、電動モータ1の通常制御回転数が0〜1000rpm、前段減速機20の減速比i1 が1/3および後段減速機21の減速比i2 は1/40であり、減速装置3の全体の減速比iは1/120になるよう選択されている。前記駆動系の固有ねじり振動数f0 は、共振ピーク点における電動モータ1の回転数、前段減速機20の減速比i1 および減速装置3に関して後述するトルク変動特性から逆算でき、この実施例においては約8.4Hzである。
【0017】前段減速機20の減速比i1 が1/5未満(分母が大きくなることを意味する。以下同じ)または後段減速機21の減速比i2 が1/25を超える(分母が小さくなることを意味する。以下同じ)と、前段減速機20に構造の簡単な平行軸減速機を採用して1/120の総減速比iを得ることは困難となるので、設計的経済的に不利となる。また、後段減速機21の減速比i2 が1/60未満または前段減速機20の減速比i1 が1/2を超えて1/120の総減速比iを得る場合は、電動モータ1の実用域において、前段減速機20の毎秒当たり回転数が前記駆動系の固有ねじり振動数f0 (8.4Hz)近辺あるいはそれ以上となるので、共振を防ぐ効果が少ない。
【0018】次に、作用について説明する。電動モータ1を0〜1000rpmの通常回転数で回転させると、減速比i1が1/3の前段減速機20の出力回転数は0〜333rpmとなり、減速比i2が1/40の後段減速機21の出力回転数は0〜8.3rpmとなり、この範囲では共振現象が生じない。共振は実用域外、すなわち電動モータ1の出力回転数が1500rpm近辺(このときの前段減速機20の出力回転数は1500rpm×1/3=500rpm近辺、遊星歯車減速機21の出力回転数は1500rpm×1/3×1/40=12.5rpm近辺)で生じる。このように共振現象が電動モータ1の実用域外で生じる理由は明らかではないが、実験結果から推定すると上記実施例のように内歯歯車と外歯歯車の歯数差が1の遊星差動歯車装置は入力軸(クランク軸30)の1回転当たり1のトルク変動が生じ、したがって、これに減速比i1 が1/3の前段減速機20を取り付けると電動モータ1の回転数が実用域外である1500rpmを中心とした付近で1500×(1/3)×1=500程度の毎分当たりトルク変動が生じ、このトルク変動数が駆動系の固有振動数8.4ヘルツ(500振動/分)にほぼ一致して共振を起こすものと考えられる。
【0019】これに対し、内歯と外歯の歯数差が2の調和歯車装置の場合は、実験結果から推定すると、入力軸(ウェーブジェネレータ)の1回転当たり2のトルク変動が生じ、したがって、これに減速比1/3の前段減速機を取り付けると、電動モータの回転数が750rpm付近で750×1/3×2=500の毎分当たりトルク変動が生じ、駆動系の固有振動数f0 が上記実施例と同様8.4ヘルツ(500振動/毎分)であるならば電動モータの回転数が実用域内である750rpm付近で共振が生じるものと考えられる。この場合、毎分当たり加振数がおおよそ500の時に共振が生じるのであるから、調和歯車減速機に減速比i=1/6程度の前段減速機を設けることにより共振時の電動モータの回転数を実用域外である1500rpmを中心とする付近にまで上げることも考えられる。しかし、調和歯車減速機の減速比i2 は最小でも1/480となり、1〜1000rpmを実用域とする電動モータが一般に必要とする減速比i(1/120程度)を満足できないため、実用できないことになる。
【0020】なお、電動モータ1および前段減速機20の振動は駆動系の発振に影響を及ぼさない。これは、これらの振動は小さいこと、後段部21を介することにより吸収されること等によるものと考えられる。
【0021】(実験例)前述の実施例の減速装置のほかに次表の比較例1〜3に示す減速装置について実施した振動測定試験について説明する。前述の実施例および比較例1、2の偏心揺動型の遊星歯車減速機は、クランク軸および外歯歯車の揺動によるアンバランスを防いで振動の振幅を小さくするため、後述する第2〜第3実施例同様に外歯歯車を2枚としこれらを180度の位相差をもって組み付けたもので、かつ、内歯歯車が外歯歯車の歯数より1つ多い歯数を有するものを用いた。それぞれの減速装置の減速段数、減速比i1、i2、回転ばね定数K1 (図9参照)および慣性モーメントJは次の表1に示してある。
【0022】
【表1】
(注1):遊星歯車減速は偏心揺動型の遊星歯車減速機を、平歯歯車減速は平
行軸型の平歯歯車列減速機を示す。
【0023】実験は図5に示す全体構成図によって実施した。すなわち、電動サーボモータ51の出力軸51aに減速装置52を取り付け、減速装置52の出力軸52aにロボットの被駆動部(第2アーム)の慣性モーメントJに相当する慣性負荷としてフライホイール53が取り付けられた。フライホイール側面53aの半径上の位置に、円周方向の加速度および振幅を測定できる圧電素子を利用した加速度ピックアップ54を取り付けた。この加速度ピックアップ54の出力はインジケータ56に連結されている。モータ51、減速装置52およびフライホイール53から成る駆動系の固有振動数f0 は約8.4ヘルツになるよう調整してある。電動モータの回転数を変化させて、その時のフライホイールの加速度の大きさを測定した。測定結果は図4に示す。横軸は電動サーボモータ51の回転数であり、縦軸は加速度ピックアップ54で検出された円周方向の加速度(単位:G)を示す。
【0024】比較例1、比較例2および比較例3においては、共振のピークはそれぞれ、電動モータ51の回転数が、略750rpm、略500rpmおよび略250rpmのときであり、電動モータ51の通常制御回転数0〜1000rpmの範囲で共振が起こっている。しかしながら、本発明に係る減速装置を用いた実施例の場合には、電動モータの実用域外である1500rpmを中心とする近傍で共振現象が生じる。比較例2と比較例3の対比から、共振時における電動モータ51の回転数は内歯歯車と外歯歯車の歯数差が1の遊星歯車減速機が歯数差2の調和歯車装置の2倍となることが認められる。また、実施例、比較例1および比較例2の対比から、共振時における電動モータ51の回転数は前段減速機の減速比iに比例していることが認められる。
【0025】
【実施例2】次に本発明の第2実施例として、前述した第1実施例の減速装置3を改良した場合について図6、図7に基づいて説明する。なお、第1実施例と同一構成については、第1実施例と同一の符号を用いて説明する。図6、図7において、40は図1に示した電動モータ1によって駆動される減速装置であり、減速装置40は電動モータ1の回転軸7に連結された平行軸型の前段減速機20と、この前段減速機20に連結された後段の遊星歯車減速機21と、から構成されている。
【0026】電動モータ1の回転軸7の先端部7aはテーパ軸であり、先端にねじ7bを有する。ねじ部7bにはモータ出力軸の一部を構成する連絡軸7cが螺合されている。8は入力回転軸であり、先端部8aに前段減速機20のピニオン22が設けられると共にモータ回転軸7を貫通させる孔8bを有し、且つ孔8bは回転軸7のテーパ部と係合するテーパ孔部を有する。入力回転軸8は電動モータ1の回転軸7の先端部7aにナット23によりねじ止めされている。回転軸7の先端部7aは入力回転軸8に半月キー24により固定されている。このような構成により入力回転軸8の先端部8aの軸径はモータ回転軸7の軸径より小さくすることができ、したがって、ピニオン22の歯数はモータ回転軸7に歯数を直接装着させる場合に比べ、少なくすることができ、容量の割に回転軸径の大きい市販電動モータ1を用いる場合であっても、所定の前段減速比を得ることができる。ピニオン22に噛み合う3個の平歯車25は、後述する3本の入力クランク軸30にそれぞれ結合している。
【0027】遊星歯車減速機21は筒体4に固定して設けられた内歯歯車28と、内歯歯車28に噛み合う一対の外歯歯車29と、外歯歯車29に嵌合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての3本の入力クランク軸30と、から構成されている。また、内歯歯車28はピン歯31を用いたピン歯車で構成され、かつ外歯歯車29の歯数より1つだけ多い歯数を有している。33は円板部であり、円板部33は遊星歯車減速機21の前端部を構成し、かつ、入力クランク軸30を円周上に等配しベアリング34を介して軸支している。35はブロック体であり、ブロック体35はその中心部に軸方向の円筒状孔36を有し、入力回転軸8が遊嵌されている。同様に外歯歯車29および円板部33の中心部にも孔が設けられている。ブロック体35はその後端部35aに凹みを有し、軸10のフランジ部39に対向している。凹み36とフランジ部39とによって形成された空洞内には、前段減速機20が収納されている。ブロック体35には入力クランク軸30を円周上に等配しベアリング41を介して軸支している。入力クランク軸30の延在部30aは凹み36内に突出し、平歯車25に固定されている。
【0028】入力クランク軸30は円板部33とブロック体35の中央部に軸支され、入力クランク軸30の中央には180度の位相差をもつ一対のクランク部42を有し、各クランク部42はベアリング43を介して外歯歯車29を偏心揺動させるようにしている。ここで、前述した円板部33と、ブロック体35とは支持体44を構成する。円板部33、ブロック体35およびフランジ部39は複数のボルト46および固定ナット47により互いに固定されている。
【0029】電動モータ1の回転は回転軸7および入力軸8を介して前段減速機20のピニオンに伝達され、前段減速機20で減速される。前段減速機20の出力は平歯車25により遊星歯車減速機21のクランク軸30に入力される。次いで、クランク軸30の回転により偏心揺動させられる外歯歯車29と、この外歯歯車29と噛み合い外歯歯車29より1つ多い歯数を有する内歯歯車28とによりさらに減速され、外歯歯車29のゆっくりした自転運動はキャリアとして作用する支持体44から軸10に伝達されアーム12が回動される。
【0030】本実施例においては、電動モータ1の通常制御回転数は(0〜1000rpm、前段減速機20の減速比i1 は1/3、遊星歯車減速機21の減速比i2 は1/40、減速装置3の総減速比iは1/120、電動モータ1、減速装置3および第2アーム12を含んで構成される駆動系の固有ねじり振動数f0 は約8.4ヘルツである。したがって、電動モータ1は産業ロボットの駆動系の固有ねじり振動数に対応する回転数(8.4ヘルツに相当する500rpm)を通常制御域(0〜1000rpm)内に有している。また、前段減速機20は電動モータ1の通常制御域における毎秒最高回転数(1000rpmに相当する毎秒16.7回転)を、駆動系の固有ねじり振動数f0 以下になるよう(毎秒5.6回転)に減速する減速比i1 (1/3)を有している。減速機40の回転ばね定数K1 は約37.5kg・m/分である。この実施例の場合の作用および振動特性は、前述の第1実施例と同様になる。
【0031】
【実施例3】次に本発明の第3実施例を図面に基づいて説明する。図8において、60は減速装置である。減速装置60は電動モータ1、前段減速機20および遊星歯車減速機21が軸方向に順次配設され、電動モータ1の出力軸7には入力回転軸8が取着されている。入力回転軸8のモータ1側端には前段減速機20の入力歯車22が一体に設けられ、その中間には大歯車61aと小歯車61bを有する第1のアイドルギヤ61が回転自在に支持されている。遊星歯車減速機21のクランク軸30の一端はモータ1側に突出した延在部30aを有する。延在部30aのモータ1側端には第2アイドルギヤ62が回転自在に支持され、その中間には前段減速機20の出力歯車25が固着されている。第2のアイドルギヤ62は入力歯車22と噛み合いこれにより歯数の多い大歯車62aおよび第1アイドルギヤ61の大歯車61aと噛み合いこれにより歯数の少ない小歯車62bを有する。出力歯車25は第1アリドルギヤ61の小歯車61bと噛み合いこれより多い歯数を有する。入力回転軸8、入力歯車22、出力歯車25、延在部30a、および第1、第2のアリドルギヤ61、62は前段減速機20としての平行軸減速機を構成する。アイドルギヤ61、62を入れることにより、容量の割に回転軸径の大きい市販電動モータ1を用いる場合であっても、所定の前段減速比i1 を得ることができる。他の構成および作用は前述した第1および第2の実施例と同じであるので、該実施例の説明に用いた符号を図8に付け、その説明を省略する。
【0032】次に、図10に示す産業ロボット65に用いた本発明に係る産業ロボットの関節装置の実施例を図面を用いて説明する。図10において、産業ロボット65は第1関節66と、第1関節66に連結する第2関節67と、第2関節67に連結する第1アーム83および第2アーム68とから構成されている。第1関節66は支柱71の上側の旋回盤73を矢印P方向に回動し、第2関節67は旋回盤73に固定されたブラケット81の上側の第1アーム83を矢印Q方向に回動し、第2アーム68の先端部68aの3次元的移動を可能にする。
【0033】
【実施例4】図11は本発明の第4実施例を示す図であり、前述の第3実施例と同一構成については、同一符号を用いて説明する。
【0034】図11において、70は減速装置であり、減速装置70は、図10に示す産業ロボットの第1関節66において、第1部材としての筒状の支柱71の内側に内装されている。減速装置70は電動モータ1に連結された平行軸型の前段減速機20と、この前段減速機20に連結された後段の遊星歯車減速機21とから構成されている。電動モータ1のフランジ2は、筒体4を介して支柱71にボルト4bを用いて固定されている。電動モータ1の上側のほぼ垂直な回転軸7は前段減速機20のピニオン22に固定され、ピニオン22に噛み合う3個の平歯車25は、後述する3本の入力クランク軸30の延在部30aにそれぞれ固定されている。遊星歯車減速機21は前段減速機20の上側に配置され、筒体4に固定して設けられた内歯歯車28と、内歯歯車28に噛み合う一対の外歯歯車29a、29b(以下、添字をつけない29で代表する)と、外歯歯車29に嵌合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての3本の入力クランク軸30と、から構成されている。入力クランク軸30は遊星歯車減速機21の下端部を構成する円板部33にベアリング34を介して軸支され、遊星歯車減速機の21の上端部および外歯歯車29の円周上に等配して設けられた貫通孔内を挿通したブロック体35にベアリング41を介して軸支されている。ブロック体35と円板部33とは円周上に等配された3つのボルト46により一体的となり、支持体(キャリア)44を構成し、支柱71の上側に設けられた代2部材としての円筒状体の旋回盤73の底部73aに固定されている。底部73aと支柱71の上部71aとの間にはベアリング74が設けられ、支持体(キャリア)44の自転に伴い、旋回盤73は回転する。前述以外の構成、作用および振動特性は第3実施例と同じであり省略する。
【0035】
【実施例5】図12は本発明の第5実施例を示す図であり、前述の第3実施例と同一構成については、同一符号を用いて説明する。
【0036】図12において、80は減速装置であり、減速装置80は図10に示す産業ロボットの第2関節67に用いたものである。第1部材としての箱形ブラケット81は前述の第1関節66の旋回盤73の上側に一体的に固定されている。減速装置80は電動モータ1に連結された平行軸型の前段減速機20とこの前段減速機20に連結された後段の遊星歯車減速機21とから構成されている。電動モータ1のフランジ2はブラケット81にボルト4bを用いて固定され、電動モータ1の回転軸7は前段減速機20のピニオン22に固定され、ピニオン22に噛合う3個の平歯車25は後述する3本の入力クランク軸30の延在部30aにそれぞれ固定されている。遊星歯車減速機21の入力クランク軸30の前端部はベアリング41を介してブロック体35に軸支され、その後端部はベアリング34を介して円板部33に軸支されている。ブロック体35と円板部33はボルト46で一体的に固定されて支持体44を構成し、さらにボルト82によりブラケット81に固定されている。遊星歯車減速機21の内歯歯車28は支持体44の外周部にベアリング84を介して回動自在に支持されている。内歯歯車28は、第2部材としての第1アーム83の端部83aに一体的に固定されている。
【0037】電動モータ1の回転は回転軸7を介して前段減速機20のピニオン22に伝達され、前段減速機20で減速される。前段減速機20の出力は平歯車25により遊星歯車減速機21の入力クランク軸30に入力される。次いで、入力クランク軸30の回転により偏心揺動させられる一対の外歯歯車29a、29b(以下、29で代表する)と、この外歯歯車29と噛み合い外歯歯車29より一つ多い歯数を有する内歯歯車28とによりさらに減速され、内歯歯車28のゆっくりした自転は第2アーム83を回動させる。前述以外の構成、作用および振動特性は第3実施例と同じであり、同じ符号をつけて説明を省略する。
【0038】
【実施例6】図13は本発明の第6実施例を示す図であり、これは、前述の第5実施例の構成の一部を変更したものであり、第5実施例と同一の構成には同一の符号をつけて説明する。
【0039】図13において、90は減速装置であり、減速装置90は、第5実施例と同様に、図10に示す、産業ロボットの第2関節67に用いたものである。第6実施例では、減速装置90は電動モータ1に連結された前段減速機20と前段減速機20に連結された後段の遊星歯車減速機21とから構成されている。電動モータ1の出力軸の回転軸7は前段減速機20の太陽歯車91に連結され、太陽歯車91に噛合い円周上に等配された3個の遊星歯車92は、ブロック体35の前端部から前方に連結された円筒部35aの内側に設けられた内歯歯車93とも噛合い遊星運動する。遊星歯車減速機21の偏心入力軸としての入力クランク軸30は回転軸7の軸線と同一軸線上でブロック体35の軸芯上に配置され、入力クランク軸30の延在部30aはベアリング94を介してブロック体35に軸支されている。延在部30aの前端部にはフランジ部95が設けられ、フランジ部95の周辺に設けられた孔96に前段減速機20の遊星歯車92の軸92aが嵌合する。入力クランク軸30の後段部は、円板部33にベアリング98を介して軸支されている。ブロック体35および円板部33はボルト82によりブラケット81に一体的に固定されている。
【0040】電動モータ1の回転は回転軸7を介して太陽歯車91に伝達され、太陽歯車91の自動運動に伴い、遊星歯車92は、太陽歯車91の自転運動に伴い、遊星歯車92は、太陽歯車91と内歯歯車93との間を減速されて遊星運動する。遊星歯車92の遊星運動の中公転運動はフランジ部95を介して入力クランク軸30に伝達される。前述以外の構成、作用および振動特性は第5実施例と同じであり、同じ符号をつけて説明を省略する。
【0041】なお、本発明においては、前段減速機の減速比は電動モータの毎秒当たり最高回転数を、共振現象の生じ始めるときの振動数相当(前述した「ねじり発振周波数」付近)、すなわち駆動系の固有振動数より若干小さな振動数相当、に減速する値であればよい。例えば駆動系の固有ねじり振動数f0 が5〜9Hzの場合であって、電動モータの最高回転数が1000rpm、総減速比iが1/60〜1/320のときは前段最小減速比i1 を約1/1.9〜約1/6、後段の減速比i2 を1/25〜1/60とすることにより共振現象を実用域から外すことができる。また駆動系の固有ねじり振動数f0 が5〜9ヘルツの場合であって、電動モータの回転数が最高2000rpm、総減速比iが1/110〜1/320のときは、前段最小減速比i1 を約1/3.7〜約1/6.7、後段減速比i2 を約1/25〜約1/60とすることにより共振現象の起きないロボットの関節装置を得る。同様(f0 =5〜9Hz)の場合であって電動モータ回転数が最高4000rpm、総減速比iが1/210〜1/640のときは、前段最小減速比i1 を約1/7.4〜約1/13.3、後段減速比i2 を約1/30〜約1/60とすればよい。また、駆動系の固有ねじり振動数f0 が10〜15Hzの場合であって、電動モータの最高回転数が1000rpm、総減速比iが1/80〜1/300のときは前段最小減速比i1 を1/1.5〜1/4、後段の減速比i2 を1/25〜1/60とすることにより共振現象を実用域から外すことができる。同様(f0 =10〜15Hz)の場合であって、電動モータの最高回転数が4000rpm、総減速比iが1/125〜1/600のときは、前段減速比i1 を約1/4.5〜約1/10、後段の減速比i2 を約1/30〜1/100とすればよい。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ロボットの駆動系の共振現象を実用域から外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の産業ロボットの関節装置の全体概略説明図である。
【図2】実施例1の減速装置の一部断面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】実施例1および比較例の性能を説明する図である。
【図5】図4に係る実験例の全体構成図である。
【図6】第2実施例の要部断面図である。
【図7】図6のB−B矢視断面図である。
【図8】第3実施例の要部断面図である。
【図9】減速装置一般の回転ばね定数の特性図である。
【図10】本発明に係る産業ロボットの関節装置を用いた産業ロボットの全体概念図である。
【図11】図10の第1関節に用いた本発明の第4実施例の要部断面図である。
【図12】図10の第2関節に用いた本発明の第5実施例の要部断面図である。
【図13】図10の第2関節に用いた本発明の第6実施例の要部断面図である。
【符号の説明】
1 電動モータ
3、40、60、70、80、90 減速装置
5、71、81 第1部材
12、73、83 第2部材
20 前段減速機
21 後段減速機
28 内歯歯車
29 外歯歯車
30 入力クランク軸
【発明の属する技術分野】本発明は産業ロボットの関節装置、特にロボットアームの共振振動の発生を防止するものに関する。
【0002】
【従来の技術】産業ロボットにおいては、一般に、作業に適した出力トルクを得るため、アーム等の関節部の駆動系には、高速低トルクの電動サーボモータまたは電動パルスモータと、この出力を低速高トルクに変換する減速装置とを用いている。また、そのような減速装置は、例えば、減速比1/120程度の大減速比を有していること、また、歯車間のガタ、すなわち、いわゆるバックラッシュが小さいこと、さらに、慣性を小さくするため軽量であること等が要求される。
【0003】このような要求を満たす従来の減速装置としては、例えば、特開昭59−175986号公報に開示されているような調和歯車装置(商品名:ハーモニックドライブ)および特開昭59−106744号公報に開示されているような偏心揺動型の遊星歯車減速機がある。前者の減速比は一般に1/80〜1/320程度であり、後者の減速比は一般に1/6〜1/200程度である。また、前者は後者に比し減速比当たりの外径、重量が小さく、かつ、ほとんどのロボットアームの関節部の駆動用減速装置として必要な減速比および機械的強度を満足している。従って、ロボットアームの関節部駆動用減速機のほとんどは調和歯車装置単体が適用され、まれに、調和歯車装置でも得られないほどの大減速比を必要とするもの、すなわち、小容量高速回転(例えば、出力が1000ワット以下で回転数が5000rpm)型のモータをロボットアームの駆動に用いる場合のように1/625程度の減速比を必要とするもの、については特開昭56−152594号公報に開示されているように調和歯車装置に前段減速装置を結合したものが用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した各減速装置をロボットの関節装置に用いた場合、減速装置に入力する電動モータ回転数が低い領域で減速装置とロボットアーム等がねじり共振を起こすという問題点があった。共振現象としては、ロボットアームの関節部近傍にねじり振動が現れることが多く、その結果、ロボットアームの先端位置が定まらなくなる。共振が生じる理由は、電動モータのトルク伝達機構である上記各減速装置の剛性が低いため、そのような減速装置を含む駆動系(電動モータ、減速装置およびロボットアームから構成される系)の固有ねじり振動数f0 が低くなり、従って、歯切の加工誤差等に起因して振動する減速装置の振動周波数が、電動モータの低回転数域で上記固有ねじり振動数f0 と一致するためと考えられていた。
【0005】このような問題点に対し、特開昭58−211881号公報には、発生した振動を打ち消すように電動モータの速度指令信号を変化させる電気的制御方式が提案されている。しかしながら、このような方式においてはフィードバックゲインを大きくすると系が不安定となり、特に剛性の低いロボット駆動系においては、逆に発振し易くなるという問題を生じるため、ゲインを大きくできず、従って、十分な振動打ち消し効果を得られない。また、特開昭59−175986号公報には高張力を与えたタイミングベルトで減速機を駆動し、該ベルトで振動を吸収する方式のものが提案されている。しかしながら、この方式においてはタイミングベルトが破断するという危険がある。また、特開昭59−115189号公報には減速機の主軸にばねとおもりから成る吸振器を取り付ける方式が提案されている。しかし、この方式においては遠心力により吸振器が破損したり、ロボットの負荷荷重に対応しておもり等を調整しなければならないという問題点がある。
【0006】そこで、本発明は、共振現象を実用域から外すことにより振動を防止するロボットアームの関節装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、ロボットアームの関節装置に用いる減速機のばね定数、固有ねじり振動数、トルク変動等と共振現象との関係につき種々研究を行った。先ず、回転ばね定数の高い減速機をロボットアームの関節装置に用いることによりロボットの駆動系の固有ねじり振動数f0 を実用域から外すことが可能か否かについて試算した。しかし、減速機の回転ばね定数K1 (図9参照)は、大きなものでもロボットアーム自体の回転ばね定数K2 の1/10〜1/5であるため、駆動系全体のばね定数K=K1・K2/(K1+K2)は大して大きくできず、その結果、駆動系の固有ねじり振動数f0 =1/2・π・(K/J)1/2 (ここに、Jは駆動系の慣性モーメント)も大して大きくできない。したがって、減速機のばね定数K1 を高めること、すなわち剛性を高めることによっては、駆動系の固有ねじり振動数f0 を実用域から外すことは不可能であるとの結論に達した。
【0008】そこで、発明者等は、振動発生の原因である減速機のトルク変動を無くすことを試みた。具体的には偏心揺動型の遊星歯車減速機を用い、トルク変動を阻止ないし減ずるよう、この減速機の内歯歯車と外歯歯車の歯に高精度の仕上げ加工を施し、かつ、トルク変動が生じてもこれを吸収するよう、偏心入力軸の軸受部やトルク取り出しピンの軸支部等に環状溝を設け、該溝にゴムリングを装着した。しかしながら、このような対策を施しても実用域での共振を防ぐことはできず、しかも、共振が生じるときの電動モータ回転数は、そのような対策を施さない場合とほとんど同じであることがわかった。
【0009】このような実験結果から、一定の機構の減速機であれば、ほぼ一定のトルク変動特性、すなわちロボットの駆動系に対する加振周波数特性を有するとの結論が導かれた。また、斯かる結論から、ロボット駆動系に組み込む減速装置の機構を変更することによりトルク変動特性を実用域外におくことができるとの仮説の下に種々の実験を行った。これらの実験の内容および結果については後述するが、これらの実験結果から仮説は実証され、下記の結論に到達した。
【0010】従来の常識では全く考えられなかった構成、すなわち、偏心揺動型の遊星歯車減速機は、内歯歯車と外歯歯車の歯数差が1であって、単独でも1/200程度の減速比にできるが、この減速比を数十分の一程度とし、これに所定範囲の減速比を有する前段減速比をわざわざ設けて歯車装置を構成し、これをロボットアームの駆動系に組み込むという構成により共振現象の生じる範囲を電動モータの実用域から外すことができる。
【0011】なお、偏心揺動型の遊星歯車減速機に前段減速機を設けた減速装置は、米国特許第4,348,918号明細書に開示されているようにクローラ車両の走行装置等に採用されている。しかしながら、そのような走行装置等は採用する減速機の重量、バックラッシュ等の問題をほとんど考慮しなくともよい。したがって、単に減速機の総減速比の変更を容易にするため、あるいは単に低速大トルクを出力するため、前段減速機を設けているのである。これに対し、高速性、位置精度等を要求され、且つ、全体構造の剛性が低いロボットにおいては、減速機の重量、バックラッシュを小さくすることが重要であるため、関節部に、減速比当たりの重量が調和歯車装置より大きい偏心揺動型の遊星歯車減速機を用い、さらに、重量、バックラッシュを増大させる要素となる前段減速機をわざわざ設けることは従来考えられなかったのである。
【0012】発明者らはさらに種々研究を重ねた結果、下記の構成を有する本発明に到達した。本発明に係る産業ロボットの関節装置は、ロボットの第1部材と、第1部材に回動自在に支持されたロボットの第2部材と、第1部材に一体的に取り付けられた電動モータの回転を減速して第2部材に伝達する歯車減速装置と、を備えた産業ロボットの関節装置において、前記歯車減速装置が、前記電動モータの回転数を減速する前段減速機と、前段減速機の出力の回転数をさらに減速する後段の遊星歯車減速機と、から構成され、前記電動モータが前記電動モータ、歯車減速装置および第2部材を含んで構成される駆動系のねじり発振周波数に対応する回転数を通常制御域内に有し、前記前段減速機が、前記電動モータの通常制御域における毎秒最高回転数を前記ねじり発振周波数以下になるように減速する、減速比を有し、前記遊星歯車減速機が、前記前段減速機の出力が入力される偏心入力軸、偏心入力軸の回転により偏心揺動させられる外歯歯車、外歯歯車と噛み合い外歯歯車の歯数より1つ多い歯数を有する内歯歯車および外歯歯車に係合するキャリアを有することを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の態様】以下、本発明に係る産業ロボットの関節装置を図面に基づいて説明する。
【0014】
【実施例1】図1ないし図3は本発明の第1実施例を示す図である。まず、構成について説明する。図1は本発明に係る産業ロボットの関節装置を用いたロボットの関節部の全体概略図である。1は電動モータであり、電動モータ1のフランジ2は減速装置3の筒体4に固定されている。筒体4は第1部材としての第1アーム5の先端部5aに固定されている。電動モータ一の出力の回転軸7は減速装置3の入力回転軸8に連結され、減速装置3の出力は軸10に伝達され、軸10は円筒体11を貫通して第2部材としての第2アーム12に固定されている。第2アーム12の端部の筒状体13と第1アーム5の先端部5aの下面から下方に突出する円筒型の突出体15との間には一対のベアリング16が介装されている。したがって、減速装置3は電動モータ1の回転数を減速してロボットの被駆動部すなわち第2アーム12を回動させる。また、電動モータ1、減速装置3、第2アーム12および第2アームに接続された負荷は駆動系を構成する。
【0015】減速装置3は図2および図3に示すように、電動モータ1の回転数を減速する前段減速機20と、前段減速機20に連結され、回転数をさらに減速する後段減速機21と、から構成されている。前段減速機20は平行軸型減速機である。後段減速機21は固定している内歯歯車28と内歯歯車28に噛み合う外歯歯車29と、外歯歯車29に係合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての入力クランク軸30と、を有する偏心揺動型の遊星歯車装置によって構成されている。また、内歯歯車28はピン歯31を用いたピン歯車で構成され、且つ外歯歯車29の歯数より一つだけ多い歯数を有している。また、前段減速機20は通常の平行軸型減速機であり平歯歯車により構成されている。
【0016】前段減速機20の減速比i1 と後段減速機21の減速比i2 とは電動モータ1の通常制御回転数の範囲内でロボットすなわち、第1アーム5および第2アーム12と、後段減速機21との共振が起きないように選択している。すなわち、電動モータ1の実用域では、前段減速機20の毎秒当たり回転数が電動モータ1、減速装置3、第2アーム12および第2アーム12に接続された負荷から構成される駆動系のねじり発振周波数(固有ねじり振動数f0 付近の周波数をいう。以下同じ)以下になるよう、前段減速機20の減速比i1 を選択する。この実施例においては、電動モータ1の通常制御回転数が0〜1000rpm、前段減速機20の減速比i1 が1/3および後段減速機21の減速比i2 は1/40であり、減速装置3の全体の減速比iは1/120になるよう選択されている。前記駆動系の固有ねじり振動数f0 は、共振ピーク点における電動モータ1の回転数、前段減速機20の減速比i1 および減速装置3に関して後述するトルク変動特性から逆算でき、この実施例においては約8.4Hzである。
【0017】前段減速機20の減速比i1 が1/5未満(分母が大きくなることを意味する。以下同じ)または後段減速機21の減速比i2 が1/25を超える(分母が小さくなることを意味する。以下同じ)と、前段減速機20に構造の簡単な平行軸減速機を採用して1/120の総減速比iを得ることは困難となるので、設計的経済的に不利となる。また、後段減速機21の減速比i2 が1/60未満または前段減速機20の減速比i1 が1/2を超えて1/120の総減速比iを得る場合は、電動モータ1の実用域において、前段減速機20の毎秒当たり回転数が前記駆動系の固有ねじり振動数f0 (8.4Hz)近辺あるいはそれ以上となるので、共振を防ぐ効果が少ない。
【0018】次に、作用について説明する。電動モータ1を0〜1000rpmの通常回転数で回転させると、減速比i1が1/3の前段減速機20の出力回転数は0〜333rpmとなり、減速比i2が1/40の後段減速機21の出力回転数は0〜8.3rpmとなり、この範囲では共振現象が生じない。共振は実用域外、すなわち電動モータ1の出力回転数が1500rpm近辺(このときの前段減速機20の出力回転数は1500rpm×1/3=500rpm近辺、遊星歯車減速機21の出力回転数は1500rpm×1/3×1/40=12.5rpm近辺)で生じる。このように共振現象が電動モータ1の実用域外で生じる理由は明らかではないが、実験結果から推定すると上記実施例のように内歯歯車と外歯歯車の歯数差が1の遊星差動歯車装置は入力軸(クランク軸30)の1回転当たり1のトルク変動が生じ、したがって、これに減速比i1 が1/3の前段減速機20を取り付けると電動モータ1の回転数が実用域外である1500rpmを中心とした付近で1500×(1/3)×1=500程度の毎分当たりトルク変動が生じ、このトルク変動数が駆動系の固有振動数8.4ヘルツ(500振動/分)にほぼ一致して共振を起こすものと考えられる。
【0019】これに対し、内歯と外歯の歯数差が2の調和歯車装置の場合は、実験結果から推定すると、入力軸(ウェーブジェネレータ)の1回転当たり2のトルク変動が生じ、したがって、これに減速比1/3の前段減速機を取り付けると、電動モータの回転数が750rpm付近で750×1/3×2=500の毎分当たりトルク変動が生じ、駆動系の固有振動数f0 が上記実施例と同様8.4ヘルツ(500振動/毎分)であるならば電動モータの回転数が実用域内である750rpm付近で共振が生じるものと考えられる。この場合、毎分当たり加振数がおおよそ500の時に共振が生じるのであるから、調和歯車減速機に減速比i=1/6程度の前段減速機を設けることにより共振時の電動モータの回転数を実用域外である1500rpmを中心とする付近にまで上げることも考えられる。しかし、調和歯車減速機の減速比i2 は最小でも1/480となり、1〜1000rpmを実用域とする電動モータが一般に必要とする減速比i(1/120程度)を満足できないため、実用できないことになる。
【0020】なお、電動モータ1および前段減速機20の振動は駆動系の発振に影響を及ぼさない。これは、これらの振動は小さいこと、後段部21を介することにより吸収されること等によるものと考えられる。
【0021】(実験例)前述の実施例の減速装置のほかに次表の比較例1〜3に示す減速装置について実施した振動測定試験について説明する。前述の実施例および比較例1、2の偏心揺動型の遊星歯車減速機は、クランク軸および外歯歯車の揺動によるアンバランスを防いで振動の振幅を小さくするため、後述する第2〜第3実施例同様に外歯歯車を2枚としこれらを180度の位相差をもって組み付けたもので、かつ、内歯歯車が外歯歯車の歯数より1つ多い歯数を有するものを用いた。それぞれの減速装置の減速段数、減速比i1、i2、回転ばね定数K1 (図9参照)および慣性モーメントJは次の表1に示してある。
【0022】
【表1】
(注1):遊星歯車減速は偏心揺動型の遊星歯車減速機を、平歯歯車減速は平
行軸型の平歯歯車列減速機を示す。
【0023】実験は図5に示す全体構成図によって実施した。すなわち、電動サーボモータ51の出力軸51aに減速装置52を取り付け、減速装置52の出力軸52aにロボットの被駆動部(第2アーム)の慣性モーメントJに相当する慣性負荷としてフライホイール53が取り付けられた。フライホイール側面53aの半径上の位置に、円周方向の加速度および振幅を測定できる圧電素子を利用した加速度ピックアップ54を取り付けた。この加速度ピックアップ54の出力はインジケータ56に連結されている。モータ51、減速装置52およびフライホイール53から成る駆動系の固有振動数f0 は約8.4ヘルツになるよう調整してある。電動モータの回転数を変化させて、その時のフライホイールの加速度の大きさを測定した。測定結果は図4に示す。横軸は電動サーボモータ51の回転数であり、縦軸は加速度ピックアップ54で検出された円周方向の加速度(単位:G)を示す。
【0024】比較例1、比較例2および比較例3においては、共振のピークはそれぞれ、電動モータ51の回転数が、略750rpm、略500rpmおよび略250rpmのときであり、電動モータ51の通常制御回転数0〜1000rpmの範囲で共振が起こっている。しかしながら、本発明に係る減速装置を用いた実施例の場合には、電動モータの実用域外である1500rpmを中心とする近傍で共振現象が生じる。比較例2と比較例3の対比から、共振時における電動モータ51の回転数は内歯歯車と外歯歯車の歯数差が1の遊星歯車減速機が歯数差2の調和歯車装置の2倍となることが認められる。また、実施例、比較例1および比較例2の対比から、共振時における電動モータ51の回転数は前段減速機の減速比iに比例していることが認められる。
【0025】
【実施例2】次に本発明の第2実施例として、前述した第1実施例の減速装置3を改良した場合について図6、図7に基づいて説明する。なお、第1実施例と同一構成については、第1実施例と同一の符号を用いて説明する。図6、図7において、40は図1に示した電動モータ1によって駆動される減速装置であり、減速装置40は電動モータ1の回転軸7に連結された平行軸型の前段減速機20と、この前段減速機20に連結された後段の遊星歯車減速機21と、から構成されている。
【0026】電動モータ1の回転軸7の先端部7aはテーパ軸であり、先端にねじ7bを有する。ねじ部7bにはモータ出力軸の一部を構成する連絡軸7cが螺合されている。8は入力回転軸であり、先端部8aに前段減速機20のピニオン22が設けられると共にモータ回転軸7を貫通させる孔8bを有し、且つ孔8bは回転軸7のテーパ部と係合するテーパ孔部を有する。入力回転軸8は電動モータ1の回転軸7の先端部7aにナット23によりねじ止めされている。回転軸7の先端部7aは入力回転軸8に半月キー24により固定されている。このような構成により入力回転軸8の先端部8aの軸径はモータ回転軸7の軸径より小さくすることができ、したがって、ピニオン22の歯数はモータ回転軸7に歯数を直接装着させる場合に比べ、少なくすることができ、容量の割に回転軸径の大きい市販電動モータ1を用いる場合であっても、所定の前段減速比を得ることができる。ピニオン22に噛み合う3個の平歯車25は、後述する3本の入力クランク軸30にそれぞれ結合している。
【0027】遊星歯車減速機21は筒体4に固定して設けられた内歯歯車28と、内歯歯車28に噛み合う一対の外歯歯車29と、外歯歯車29に嵌合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての3本の入力クランク軸30と、から構成されている。また、内歯歯車28はピン歯31を用いたピン歯車で構成され、かつ外歯歯車29の歯数より1つだけ多い歯数を有している。33は円板部であり、円板部33は遊星歯車減速機21の前端部を構成し、かつ、入力クランク軸30を円周上に等配しベアリング34を介して軸支している。35はブロック体であり、ブロック体35はその中心部に軸方向の円筒状孔36を有し、入力回転軸8が遊嵌されている。同様に外歯歯車29および円板部33の中心部にも孔が設けられている。ブロック体35はその後端部35aに凹みを有し、軸10のフランジ部39に対向している。凹み36とフランジ部39とによって形成された空洞内には、前段減速機20が収納されている。ブロック体35には入力クランク軸30を円周上に等配しベアリング41を介して軸支している。入力クランク軸30の延在部30aは凹み36内に突出し、平歯車25に固定されている。
【0028】入力クランク軸30は円板部33とブロック体35の中央部に軸支され、入力クランク軸30の中央には180度の位相差をもつ一対のクランク部42を有し、各クランク部42はベアリング43を介して外歯歯車29を偏心揺動させるようにしている。ここで、前述した円板部33と、ブロック体35とは支持体44を構成する。円板部33、ブロック体35およびフランジ部39は複数のボルト46および固定ナット47により互いに固定されている。
【0029】電動モータ1の回転は回転軸7および入力軸8を介して前段減速機20のピニオンに伝達され、前段減速機20で減速される。前段減速機20の出力は平歯車25により遊星歯車減速機21のクランク軸30に入力される。次いで、クランク軸30の回転により偏心揺動させられる外歯歯車29と、この外歯歯車29と噛み合い外歯歯車29より1つ多い歯数を有する内歯歯車28とによりさらに減速され、外歯歯車29のゆっくりした自転運動はキャリアとして作用する支持体44から軸10に伝達されアーム12が回動される。
【0030】本実施例においては、電動モータ1の通常制御回転数は(0〜1000rpm、前段減速機20の減速比i1 は1/3、遊星歯車減速機21の減速比i2 は1/40、減速装置3の総減速比iは1/120、電動モータ1、減速装置3および第2アーム12を含んで構成される駆動系の固有ねじり振動数f0 は約8.4ヘルツである。したがって、電動モータ1は産業ロボットの駆動系の固有ねじり振動数に対応する回転数(8.4ヘルツに相当する500rpm)を通常制御域(0〜1000rpm)内に有している。また、前段減速機20は電動モータ1の通常制御域における毎秒最高回転数(1000rpmに相当する毎秒16.7回転)を、駆動系の固有ねじり振動数f0 以下になるよう(毎秒5.6回転)に減速する減速比i1 (1/3)を有している。減速機40の回転ばね定数K1 は約37.5kg・m/分である。この実施例の場合の作用および振動特性は、前述の第1実施例と同様になる。
【0031】
【実施例3】次に本発明の第3実施例を図面に基づいて説明する。図8において、60は減速装置である。減速装置60は電動モータ1、前段減速機20および遊星歯車減速機21が軸方向に順次配設され、電動モータ1の出力軸7には入力回転軸8が取着されている。入力回転軸8のモータ1側端には前段減速機20の入力歯車22が一体に設けられ、その中間には大歯車61aと小歯車61bを有する第1のアイドルギヤ61が回転自在に支持されている。遊星歯車減速機21のクランク軸30の一端はモータ1側に突出した延在部30aを有する。延在部30aのモータ1側端には第2アイドルギヤ62が回転自在に支持され、その中間には前段減速機20の出力歯車25が固着されている。第2のアイドルギヤ62は入力歯車22と噛み合いこれにより歯数の多い大歯車62aおよび第1アイドルギヤ61の大歯車61aと噛み合いこれにより歯数の少ない小歯車62bを有する。出力歯車25は第1アリドルギヤ61の小歯車61bと噛み合いこれより多い歯数を有する。入力回転軸8、入力歯車22、出力歯車25、延在部30a、および第1、第2のアリドルギヤ61、62は前段減速機20としての平行軸減速機を構成する。アイドルギヤ61、62を入れることにより、容量の割に回転軸径の大きい市販電動モータ1を用いる場合であっても、所定の前段減速比i1 を得ることができる。他の構成および作用は前述した第1および第2の実施例と同じであるので、該実施例の説明に用いた符号を図8に付け、その説明を省略する。
【0032】次に、図10に示す産業ロボット65に用いた本発明に係る産業ロボットの関節装置の実施例を図面を用いて説明する。図10において、産業ロボット65は第1関節66と、第1関節66に連結する第2関節67と、第2関節67に連結する第1アーム83および第2アーム68とから構成されている。第1関節66は支柱71の上側の旋回盤73を矢印P方向に回動し、第2関節67は旋回盤73に固定されたブラケット81の上側の第1アーム83を矢印Q方向に回動し、第2アーム68の先端部68aの3次元的移動を可能にする。
【0033】
【実施例4】図11は本発明の第4実施例を示す図であり、前述の第3実施例と同一構成については、同一符号を用いて説明する。
【0034】図11において、70は減速装置であり、減速装置70は、図10に示す産業ロボットの第1関節66において、第1部材としての筒状の支柱71の内側に内装されている。減速装置70は電動モータ1に連結された平行軸型の前段減速機20と、この前段減速機20に連結された後段の遊星歯車減速機21とから構成されている。電動モータ1のフランジ2は、筒体4を介して支柱71にボルト4bを用いて固定されている。電動モータ1の上側のほぼ垂直な回転軸7は前段減速機20のピニオン22に固定され、ピニオン22に噛み合う3個の平歯車25は、後述する3本の入力クランク軸30の延在部30aにそれぞれ固定されている。遊星歯車減速機21は前段減速機20の上側に配置され、筒体4に固定して設けられた内歯歯車28と、内歯歯車28に噛み合う一対の外歯歯車29a、29b(以下、添字をつけない29で代表する)と、外歯歯車29に嵌合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての3本の入力クランク軸30と、から構成されている。入力クランク軸30は遊星歯車減速機21の下端部を構成する円板部33にベアリング34を介して軸支され、遊星歯車減速機の21の上端部および外歯歯車29の円周上に等配して設けられた貫通孔内を挿通したブロック体35にベアリング41を介して軸支されている。ブロック体35と円板部33とは円周上に等配された3つのボルト46により一体的となり、支持体(キャリア)44を構成し、支柱71の上側に設けられた代2部材としての円筒状体の旋回盤73の底部73aに固定されている。底部73aと支柱71の上部71aとの間にはベアリング74が設けられ、支持体(キャリア)44の自転に伴い、旋回盤73は回転する。前述以外の構成、作用および振動特性は第3実施例と同じであり省略する。
【0035】
【実施例5】図12は本発明の第5実施例を示す図であり、前述の第3実施例と同一構成については、同一符号を用いて説明する。
【0036】図12において、80は減速装置であり、減速装置80は図10に示す産業ロボットの第2関節67に用いたものである。第1部材としての箱形ブラケット81は前述の第1関節66の旋回盤73の上側に一体的に固定されている。減速装置80は電動モータ1に連結された平行軸型の前段減速機20とこの前段減速機20に連結された後段の遊星歯車減速機21とから構成されている。電動モータ1のフランジ2はブラケット81にボルト4bを用いて固定され、電動モータ1の回転軸7は前段減速機20のピニオン22に固定され、ピニオン22に噛合う3個の平歯車25は後述する3本の入力クランク軸30の延在部30aにそれぞれ固定されている。遊星歯車減速機21の入力クランク軸30の前端部はベアリング41を介してブロック体35に軸支され、その後端部はベアリング34を介して円板部33に軸支されている。ブロック体35と円板部33はボルト46で一体的に固定されて支持体44を構成し、さらにボルト82によりブラケット81に固定されている。遊星歯車減速機21の内歯歯車28は支持体44の外周部にベアリング84を介して回動自在に支持されている。内歯歯車28は、第2部材としての第1アーム83の端部83aに一体的に固定されている。
【0037】電動モータ1の回転は回転軸7を介して前段減速機20のピニオン22に伝達され、前段減速機20で減速される。前段減速機20の出力は平歯車25により遊星歯車減速機21の入力クランク軸30に入力される。次いで、入力クランク軸30の回転により偏心揺動させられる一対の外歯歯車29a、29b(以下、29で代表する)と、この外歯歯車29と噛み合い外歯歯車29より一つ多い歯数を有する内歯歯車28とによりさらに減速され、内歯歯車28のゆっくりした自転は第2アーム83を回動させる。前述以外の構成、作用および振動特性は第3実施例と同じであり、同じ符号をつけて説明を省略する。
【0038】
【実施例6】図13は本発明の第6実施例を示す図であり、これは、前述の第5実施例の構成の一部を変更したものであり、第5実施例と同一の構成には同一の符号をつけて説明する。
【0039】図13において、90は減速装置であり、減速装置90は、第5実施例と同様に、図10に示す、産業ロボットの第2関節67に用いたものである。第6実施例では、減速装置90は電動モータ1に連結された前段減速機20と前段減速機20に連結された後段の遊星歯車減速機21とから構成されている。電動モータ1の出力軸の回転軸7は前段減速機20の太陽歯車91に連結され、太陽歯車91に噛合い円周上に等配された3個の遊星歯車92は、ブロック体35の前端部から前方に連結された円筒部35aの内側に設けられた内歯歯車93とも噛合い遊星運動する。遊星歯車減速機21の偏心入力軸としての入力クランク軸30は回転軸7の軸線と同一軸線上でブロック体35の軸芯上に配置され、入力クランク軸30の延在部30aはベアリング94を介してブロック体35に軸支されている。延在部30aの前端部にはフランジ部95が設けられ、フランジ部95の周辺に設けられた孔96に前段減速機20の遊星歯車92の軸92aが嵌合する。入力クランク軸30の後段部は、円板部33にベアリング98を介して軸支されている。ブロック体35および円板部33はボルト82によりブラケット81に一体的に固定されている。
【0040】電動モータ1の回転は回転軸7を介して太陽歯車91に伝達され、太陽歯車91の自動運動に伴い、遊星歯車92は、太陽歯車91の自転運動に伴い、遊星歯車92は、太陽歯車91と内歯歯車93との間を減速されて遊星運動する。遊星歯車92の遊星運動の中公転運動はフランジ部95を介して入力クランク軸30に伝達される。前述以外の構成、作用および振動特性は第5実施例と同じであり、同じ符号をつけて説明を省略する。
【0041】なお、本発明においては、前段減速機の減速比は電動モータの毎秒当たり最高回転数を、共振現象の生じ始めるときの振動数相当(前述した「ねじり発振周波数」付近)、すなわち駆動系の固有振動数より若干小さな振動数相当、に減速する値であればよい。例えば駆動系の固有ねじり振動数f0 が5〜9Hzの場合であって、電動モータの最高回転数が1000rpm、総減速比iが1/60〜1/320のときは前段最小減速比i1 を約1/1.9〜約1/6、後段の減速比i2 を1/25〜1/60とすることにより共振現象を実用域から外すことができる。また駆動系の固有ねじり振動数f0 が5〜9ヘルツの場合であって、電動モータの回転数が最高2000rpm、総減速比iが1/110〜1/320のときは、前段最小減速比i1 を約1/3.7〜約1/6.7、後段減速比i2 を約1/25〜約1/60とすることにより共振現象の起きないロボットの関節装置を得る。同様(f0 =5〜9Hz)の場合であって電動モータ回転数が最高4000rpm、総減速比iが1/210〜1/640のときは、前段最小減速比i1 を約1/7.4〜約1/13.3、後段減速比i2 を約1/30〜約1/60とすればよい。また、駆動系の固有ねじり振動数f0 が10〜15Hzの場合であって、電動モータの最高回転数が1000rpm、総減速比iが1/80〜1/300のときは前段最小減速比i1 を1/1.5〜1/4、後段の減速比i2 を1/25〜1/60とすることにより共振現象を実用域から外すことができる。同様(f0 =10〜15Hz)の場合であって、電動モータの最高回転数が4000rpm、総減速比iが1/125〜1/600のときは、前段減速比i1 を約1/4.5〜約1/10、後段の減速比i2 を約1/30〜1/100とすればよい。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ロボットの駆動系の共振現象を実用域から外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の産業ロボットの関節装置の全体概略説明図である。
【図2】実施例1の減速装置の一部断面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】実施例1および比較例の性能を説明する図である。
【図5】図4に係る実験例の全体構成図である。
【図6】第2実施例の要部断面図である。
【図7】図6のB−B矢視断面図である。
【図8】第3実施例の要部断面図である。
【図9】減速装置一般の回転ばね定数の特性図である。
【図10】本発明に係る産業ロボットの関節装置を用いた産業ロボットの全体概念図である。
【図11】図10の第1関節に用いた本発明の第4実施例の要部断面図である。
【図12】図10の第2関節に用いた本発明の第5実施例の要部断面図である。
【図13】図10の第2関節に用いた本発明の第6実施例の要部断面図である。
【符号の説明】
1 電動モータ
3、40、60、70、80、90 減速装置
5、71、81 第1部材
12、73、83 第2部材
20 前段減速機
21 後段減速機
28 内歯歯車
29 外歯歯車
30 入力クランク軸
【書類名】明細書
【発明の名称】産業ロボットの関節装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】第1部材と、第1部材に取り付けられ、電 動モータの回転を減速する減速装置と、減速装置の出力 部材に結合された第2部材とを備えた産業ロボットの関 節装置において、
A.前記減速装置が(1)前記電動モータの回転を減速 する前段減速機と、(2)前段減速機の出力回転を減速 する後段減速機と、を有し、
B.前記前段減速機が(1)前記電動モータの回転軸線 と同一軸線上で、電動モータの出力回転軸に結合された 入力歯車と(2)入力歯車に噛み合う複数の出力歯車と を有する平行軸型歯車装置からなり、
C.前記後段減速機が(1)前記出力歯車にそれぞれ結 合され、前記電動モータの回転軸線と平行な回転軸線を 有するクランク軸と、(2)各クランク軸に係合してし て偏心揺動させられる外歯歯車、(3)外歯歯車に噛み 合う内歯歯車を有すると共に前記電動モータの回転軸線 とほぼ直交する、前記第1部材への取付面を有する筒体 と、(4)各クランク軸を回転自在に支持するととも に、前記電動モータの回転軸線とほぼ直交する端面を有 し、外歯歯車の公転運動を被駆動部に伝達する出力部材 としての支持体と、を有する偏心揺動型遊星歯車装置か らなり、
D.前記電動モータの回転軸線と前記偏心揺動型遊星歯 車装置の支持体の回転軸線とを同一軸線上に配し、
E.前記第1部材の延在する方向に対して前記支持体の 回転軸線がほぼ直角になるように、前記筒体の前記取付 面を第1部材の一端部に取り付け、
F.前記支持体の回転軸線に対して前記第2部材の延在 する方向がほぼ直角になるように、第2部材の一端部を 前記支持体の前記端面に取り付けたことを特徴とする産 業ロボットの関節装置。
【請求項2】前記入力歯車および出力歯車を前記外歯 歯車よりも反電動モータ側に配置し、電動モータの回転 数を前記外歯歯車に設けた貫通孔を通して前記入力歯車 に伝達し、前記支持体の前記端面を入力歯車および出力 歯車よりも反電動モータ側に設けたことを特徴とする請 求項1記載の産業ロボットの関節装置。
【請求項3】前記筒体の反電動モータ側端面を筒体の 前記取付面となし、前記支持体の前記端面が筒体の前記 取付面より反電動モータ側に位置していることを特徴と する請求項2記載の産業ロボットの関節装置。
【請求項4】前記減速装置の総減速比が遊星歯車装置 単体で実在する減速比の範囲内に設定されたことを特徴 とする請求項1または2記載の産業ロボットの関節装 置。
【請求項5】前記前段減速機の減速比を1/2〜1/ 5、前記後段減速機の減速比を1/25〜1/60の範 囲内でそれぞれ設定することにより、前記総減速比を満 足するようにしたことを特徴とする請求項4記載の産業 ロボットの関節装置。
【請求項6】前記前段減速機の減速比に前記電動モー タの通常制御回転数領域における毎秒当たりの最高回転 数と前記クランク軸の一回転当たりにおける前記後段減 速機の実質トルク変動数とを乗じた値が電動モータ、減 速装置および第2部材を含んで構成される駆動系の固有 ねじり振動数より小さくなるように、前段減速機の減速 比が設定されていることを特徴とする請求項5記載の産 業ロボットの関節装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は産業ロボットの関節装置、特にロボットアームの共振振動の発生を防止するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
産業ロボットにおいては、一般に、作業に適した出力トルクを得るため、アーム等の関節部の駆動系には、高速低トルクの電動サーボモータまたは電動パルスモータと、この出力を低速高トルクに変換する減速装置とを用いている。また、そのような減速装置は、例えば、減速比1/120程度の大減速比を有していること、また、歯車間のガタ、すなわち、いわゆるバックラッシュが小さいこと、さらに、慣性を小さくするため軽量であること等が要求される。
【0003】
このような要求を満たす従来の減速装置としては、例えば、特開昭59−175986号公報に開示されているような調和歯車装置および特開昭59−106744号公報に開示されているような偏心揺動型遊星歯車減速装置がある。前者の減速比は一般に1/80〜1/320程度であり、後者の減速比は一般に1/6〜1/200程度である。また、前者は後者に比し減速比当たりの外径、重量が小さく、かつ、ほとんどのロボットアームの関節部の駆動用減速装置として必要な減速比および機械的強度を満足している。従って、ロボットアームの関節部駆動用減速装置のほとんどは調和歯車装置単体が適用され、まれに、調和歯車装置でも得られないほどの大減速比を必要とするもの、すなわち、小容量高速回転(例えば、出力が1000ワット以下で回転数が5000rpm)型のモータをロボットアームの駆動に用いる場合のように1/625程度の減速比を必要とするもの、については特開昭56−152594号公報に開示されているように調和歯車装置に前段減速装置を結合したものが用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した各減速装置をロボットの関節装置に用いた場合、減速装置に入力する電動モータ回転数が低い領域で減速装置とロボットアーム等がねじり共振を起こすという問題点があった。共振現象としては、ロボットアームの関節部近傍にねじり振動が現れることが多く、その結果、ロボットアームの先端位置が定まらなくなり、ロボットによる作業のうち溶接、シーリング、組立等、一般に電動モ ータの低回転数領域で行われる作業において、正確な作 業軌跡を得られない等の問題が生じる。共振が生じる理由は、電動モータのトルク伝達機構である上記各減速装置の剛性が低いため、そのような減速装置を含む駆動系(電動モータ、減速装置およびロボットアームから構成される系)の固有ねじり振動数f0が低くなり、従って、歯切の加工誤差などに起因して振動する減速装置の振動周波数が、電動モータの低回転数域で上記固有ねじり振動数f0と一致するためと考えられていた。特に、 第2アームが電動モータの出力回転軸の延長方向に対し て直角方向に延在している産業ロボットの関節装置にお いては、電動モータの回転時、第2アームの先端部が電 動モータの出力回転軸線で中心に振れ回るので、その振 れ回りによる振動が起因し、ロボットによる作業のうち 容接作業のように正確な作業軌跡を要する作業には問題 となっていた。
【0005】
このような問題点に対し、特開昭58−211881号公報には、発生した振動を打ち消すように電動モータの速度指令信号を変化させる電気的制御方式が提案されている。しかしながら、このような方式においてはフィードバックゲインを大きくすると系が不安定となり、特に剛性の低いロボット駆動系においては、逆に発振し易くなるという問題を生じるため、ゲインを大きくできず、従って、十分な振動打ち消し効果を得られない。また、特開昭59−175986号公報には高張力を与えたタイミングベルトで減速装置を駆動し、該ベルトで振動を吸収する方式のものが提案されている。しかしながら、この方式においてはタイミングベルトが破断するという危険がある。また、特開昭59−115189号公報には減速装置の主軸にばねとおもりから成る吸振器を取り付ける方式が提案されている。しかし、この方式においては遠心力により吸振器が破損したり、ロボットの負荷荷重に対応しておもり等を調整しなければならないという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、大きな共振現象の生じる時の電動モータ回数を、所望のモータ回転数領域にシフトさせて、ロボットにその先端部で正確な軌跡を描くことを必要とする作業を行わせる時において大きな振動の発生を防ぐことにより、ロボットの作業性が向上する と共に、ロボットの耐久性を向上させることができる産 業ロボットの関節装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、ロボットアームの関節装置に用いる減速装置のばね定数、固有ねじり振動数、トルク変動等と共振現象との関係につき種々研究を行った。先ず、回転ばね定数の高い減速装置をロボットアームの関節装置に用いることによりロボットの駆動系の固有ねじり振動数f0を実用域から外すことが可能か否かについて試算した。しかし、減速装置の回転ばね定数K1(図9参照)は、大きなものでもロボットアーム自体の回転ばね定数K2の1/10〜1/5であるため、駆動系全体のばね定数K=K1・K2/(K1+K2)は大して大きくできず、その結果、駆動系の固有ねじり振動数f0=1/2・π・(K/J)1/2(ここに、Jは駆動系の慣性モーメント)も大して大きくできない。したがって、減速装置のばね定数K1を高めること、すなわち剛性を高めることによっては、駆動系の固有ねじり振動数f0を実用域から外すことは不可能であるとの結論に達した。
【0008】
そこで、発明者等は、振動発生の原因である減速装置のトルク変動を無くすことを試みた。具体的には偏心揺動型遊星歯車装置を用い、トルク変動を阻止ないし減ずるよう、この減速装置の内歯歯車と外歯歯車の歯に高精度の仕上げ加工を施し、かつ、トルク変動が生じてもこれを吸収するよう、偏心入力軸の軸受部やトルク取り出しピンの軸支部等に環状溝を設け、該溝にゴムリングを装着した。しかしながら、このような対策を施しても実用域での共振を防ぐことはできず、しかも、共振が生じるときの電動モータ回転数は、そのような対策を施さない場合とほとんど同じであることがわかった。
【0009】
このような実験結果から、一定の機構の減速装置であれば、ほぼ一定のトルク変動特性、すなわちロボットの駆動系に対する加振周波数特性を有するとの結論が導かれた。また、斯かる結論から、ロボット駆動系に組み込む減速装置の機構を変更することによりトルク変動特性を実用域外におくことができるとの仮説の下に種々の実験を行った。これらの実験の内容および結果については後述するが、これらの実験結果から仮説は実証され、下記の結論に到達した。
【0010】
従来の常識では全く考えられなかった構成、すなわち、偏心揺動型の遊星歯車減速装置は、内歯歯車と外歯歯車の歯数差が1であって、単独でも1/200程度の減速比にできるが、この減速比を数十分の一程度とし、これに所定範囲の減速比を有する前段減速比をわざわざ設けて歯車装置を構成し、これをロボットアームの駆動系に組み込むという構成により共振現象の生じる範囲を電動モータの実用域から外すことができる。
【0011】
なお、偏心揺動型遊星歯車装置に前段減速機を設けた減速装置は、米国特許第4,348,918号明細書に開示されているようにクローラ車両の走行装置等に採用されている。しかしながら、そのような走行装置等は採用する減速装置の重量、バックラッシュ等の問題をほとんど考慮しなくともよい。したがって、単に減速装置の総減速比の変更を容易にするため、あるいは単に低速大トルクを出力するため、前段減速装置を設けているのである。これに対し、高速性、位置精度等を要求され、且つ、全体構造の剛性が低いロボットにおいては、減速装置の重量、バックラッシュを小さくすることが重要であるため、関節部に、減速比当たりの重量が調和歯車装置より大きい偏心揺動型遊星歯車装置を用い、さらに、重量、バックラッシュを増大させる要素となる前段減速機をわざわざ設けることは従来考えられなかったのである。
【0012】
発明者らはさらに種々研究を重ねた結果、下記の構成を有する本発明に到達した。本発明に係る産業ロボットの関節装置のうち請求項1記載のものは、第1部材と、第1部材に取り付けられ、電動モータの回転を減速する減速装置と、減速装置の出力部材に結合された第2部材とを備えた産業ロボットの関節装置において、前記減速機が前記電動モータの回転を減速する前段減速機と、前段減速機の出力回転を減速する後段減速機とを有し、前記前段減速機が前記電動モータの回転軸線と同一軸線上で、電動モータの出力回転軸に結合された入力歯車と、入力歯車に噛み合う複数の出力歯車とを有する平行軸型歯車装置からなり、前記後段減速機が前記出力歯車にそれぞれ結合され、前記電動モータの回転軸線と平行な回転軸線を有するクランク軸と、各クランク軸に係合してして偏心揺動させられる外歯歯車、外歯歯車に噛み合う内歯歯車を有すると共に前記電動モータの回転軸線とほぼ直交する、前記第1部材への取付面を有する筒体と、各クランク軸を回転自在に支持するとともに、前記電動モータの回転軸線とほぼ直交する端面を有し、外歯歯車の公転運動を被駆動部に伝達する出力部材としての支持体とを有する偏心揺動型遊星歯車装置からなり、前記電動モータの回転軸線と前記偏心揺動型遊星歯車装置の支持体の回転軸線とを同一軸上に配し、前記第1部材の延在する方向に対して前記支持体の回転軸線がほぼ直角になるように、前記筒体の前記取付面を第1部材の一端部に取り付け、前記支持体の回転軸線に対して前記第2部材の延在する方向がほぼ直角になるように、第2部材の一端部を前記支持体の前記端面に取り付けたことを特徴とするものである。請求項2記載の発明に係る産業ロボットの関節装置は、請求項1記載の産業ロボットの関節装置のうち、前記入力歯車および出力歯車を前記外歯歯車よりも反電動モータ側に配置し、電動モータの回転を前記外歯歯車に設けた貫通孔を通して前記入力歯車に伝達し、前記支持体の前記端面を入力歯車および出力歯車よりも反電動モータ側に設けたことを特徴とするものである。請求項3記載の発明に係る産業ロボットの関節装置は、請求項2記載の産業ロボットの関節装置のうち、前記筒体の反電動モータ側端面を筒体の前記取付面となし、前記支持体の前記端面が筒体の前記取付面より反電動モータ側に位置していることを特徴とするものである。請求項4記載の発明に係る産業ロボットの関節装置は、請求項1または2記載の産業ロボット の関節装置のうち、前記減速装置の総減速比が遊星歯車 装置単体で実在する減速比の範囲内に設定されたことを 特徴とするものである。請求項5記載の発明に係る産業 ロボットの関節装置は、請求項4記載の産業ロボットの 関節装置のうち、前記前段減速機の減速比を1/2〜1 /5、前記後段減速機の減速比を1/25〜1/60の 範囲内でそれぞれ設定することにより、前記総減速比を 満足するようにしたことを特徴とするものである。請求 項6記載の発明に係る産業ロボットの関節装置は、請求 項5記載の産業ロボットの関節装置のうち、前記前段減 速機の減速比に前記電動モータの通常制御領域における 毎秒当たりの最高回転数と前記クランク軸の一回転当た りにおける前記後段減速機の実質トルク変動数とを乗じ た値が電動モータ、減速装置および第2部材を含んで構 成される駆動系の固有振動数より小さくなるように、前 段減速機の減速比が設定されていることを特徴とするも のである。そして本発明によれば、特に産業ロボットに おいては重量や累積バックラッシュを小さくして制御性 能を良好にすることを要求されるのに対して、本来、調 和歯車装置等のような単一の遊星歯車装置により必要な 減速比を満足するようにその減速装置部を構成できる産 業ロボットの関節装置において、その減速装置部を偏心 揺動型遊星歯車装置(後段減速機)の入力側にわざわざ 平行軸型歯車装置(前段減速機)を設けて前段減速機と 後段減速機とにより上記必要な減速比を得るようにして いるので、ロボットに共振が生じるとしても、大きな共 振現象の生じる時の電動モータ回転数を、所望のモータ 回転数領域にシフトさせることができる。その結果、ロ ボットにその先端部(工具把持部等)で正確な軌跡を描 くことを必要とする作業を行わせる時において大きな振 動の発生を防ぐことができるので、ロボットの作業性が 向上すると共に、ロボットの耐久性を向上させることが できる。また、電動モータ、前段減速機、後段減速機の 各軸線が同一軸線上に配置され、かつ、それら軸線が第 1部材と第2部材の連結部で、第1、第2部材の軸線と 直角になるよう構成されているので、第1、第2、第3 アームといったように連続したアーム関節装置とするこ とができ、ロボットの作業領域を大きくすることができ る。更に、電動モータから第2部材までの間に設ける伝 動部材が増える構造になると、ばね要素が増えることに なり、その結果、駆動系の固有ねじり振動数が低下する と考えられるのが通常であるが、本発明によれば、電動 モータ、前段減速機、後段減速機の各軸線が同一軸線上 に配置され、かつ、それら軸線が第1部材と第2部材の 連結部で、第1、第2部材の軸線(延在方向)と直角に なるよう構成されているので、電動モータから第2部材 までの動力伝達経路を短くでき、ばね定数が大きく低下 することもない。その結果、駆動系の固有ねじり振動数 が大きく低下することもなく、上述した大きな共振の生 じる時の電動モータ回転数をシフトさせるための前段減 速装置の減速比は平行軸型歯車装置で得られる程度の大 きさでよいことになる。つまり、本発明によれば、構造 が簡単な平行軸型歯車装置で得られる減速比により、電 動モータの通常制御回転数領域が広くても共振が生じる 時の電動モータ回転数をその領域から外すことができ る。
【0013】
【発明の実施の態様】
以下、本発明に係る産業ロボットの関節装置を図面に基づいて説明する。
【0014】
【実施例1】
図1ないし図3は本発明の第1実施例を示す図である。まず、構成について説明する。図1は本発明に係る産業ロボットの関節装置を用いたロボットの関節部の全体概略図である。1は電動モータであり、電動モータ1のフランジ2は減速装置3の筒体4に固定されている。筒体4は第1部材としての第1アーム5の一端 部(先端部)5aに固定されている。電動モータ1の出力回転軸7は減速装置3の入力回転軸8に連結され、減速装置3の出力は軸10に伝達され、軸10は円筒体11を貫通して第2部材としての第2アーム12に固定されている。第2アーム12の一端部の筒状体13と第1アーム5の先端部5aの下面から下方に突出する円筒型の突出体15との間には一対のベアリング16が介装され、第2アーム12は第1アーム5に回動自在に支持されている。突出体15の内周面と円筒体11の中央部の外周面との間には一対のベアリング17が介装されている。円筒体11の上部および下部の内面と軸10との間にはそれぞれ一対のベアリング18が介装されている。したがって、減速装置3は電動モータ1の回転数を減速してロボットの被駆動部すなわち第2アーム12を回動させる。また、電動モータ1、減速装置3、第2アーム12および第2アームに接続された負荷は駆動系を構成する。
【0015】
減速装置3は図2および図3に示すように、電動モータ1の回転数を減速する前段減速機20と、前段減速機20に連結され、回転数をさらに減速する後段減速機21と、から構成されている。前段減速機20は平行軸型歯車装置である。後段減速機21は固定している内歯歯車28と内歯歯車28に噛み合う外歯歯車29と、外歯歯車29に係合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての入力クランク軸30と、を有する偏心揺動型遊星歯車装置によって構成されている。また、内歯歯車28はピン歯31を用いたピン歯車で構成され、例えば、外歯歯車29の歯数より一つだけ多い歯数を有している。また、前段減速機20は通常の平行軸型歯車装置であり平歯車により構成されている。
【0016】
前段減速機20の減速比i1と後段減速機21の減速比i2とは電動モータ1の通常制御回転数(ロボットの通常作業時、例えば溶接ロボットに主たる 溶接作業を行わしめる時、のモータ回転数)の範囲内でロボットすなわち、第1アーム5および第2アーム12と、後段減速機21との共振が起きないように選択している。電動モータ1の通常制御回転数領域あるいはロボ ットによる正確な作業軌跡を要する領域(溶接作業等を 行う作業領域)では、前段減速機20の毎秒当たり最高回転数に前段減速機20の減速比を乗じた値(その値に 更に後述するクランク軸30の一回転当たりのトルク変 動回数である1を乗じた値に相当する)が、電動モータ1、減速装置3、第2アーム12および第2アーム12に接続された負荷から構成される駆動系のねじり発振周波数(固有ねじり振動数f0付近の周波数をいう。以下同じ)より小さくなるよう、前段減速機20の減速比i1を選択する。この実施例においては、電動モータ1の通常制御回転数が0〜1000rpm、前段減速機20の減速比i1が1/3および後段減速機21の減速比i2は1/40であり、減速装置3の全体の減速比iは1/120になるよう選択されている。前記駆動系の固有ねじり振動数f0は、共振ピーク点における電動モータ1の回転数、前段減速機20の減速比i1および減速装置3に関して後述するトルク変動特性から逆算でき、この実施例においては約8.4Hzである。すなわち、減 速装置の総減速比が遊星歯車装置単体で実在する減速比 の範囲内に設定され、前段減速機の減速比を1/2〜1 /5、後段減速機の減速比を1/25〜1/60の範囲 内でそれぞれ設定することにより、総減速比を満足する ようにし、前段減速機の減速比に電動モータの通常制御 回転数領域における毎秒当たりの最高回転数とクランク 軸の一回転当たりにおける後段減速機の実質トルク変動 数とを乗じた値が電動モータ、減速装置および第2部材 を含んで構成される駆動系の固有振動数より小さくなる ように、前段減速機の減速比が設定されているのであ る。
【0017】
前段減速機20の減速比i1が1/5未満(分母が大きくなることを意味する。以下同じ)または後段減速機21の減速比i2が1/25を超える(分母が小さくなることを意味する。以下同じ)と、前段減速機20に構造の簡単な平行軸型歯車装置を採用して1/120の総減速比iを得ることは困難となるので、設計的経済的に不利となる。また、後段減速機21の減速比i2が1/60未満または前段減速機20の減速比i1が1/2を超えて1/120の総減速比iを得る場合は、電動モータ1の実用域において、前段減速機20の毎秒当たり回転数が前記駆動系の固有ねじり振動数f0(8.4Hz)近づきあるいはそれ以上となるので、共振を防止できる範囲が狭くなる。
【0018】
次に、作用について説明する。電動モータ1を0〜1000rpmの通常制御回転数で回転させると、減速比i1が1/3の前段減速機20の出力回転数は0〜333rpmとなり、減速比i2が1/40の後段減速機21の出力回転数は0〜8.3rpmとなり、この範囲では大きな振動は生じない。電動モータ1の出 力回転数が1500rpm近辺(このときの前段減速機20の出力回転数は1500rpm×1/3=500rpm近辺、後段減速機21の出力回転数は1500rpm×1/3×1/40=12.5rpm近辺)で最大共 振現象が生じ、この時の振動が最も大きい。このように共振現象が電動モータ1の実用域外で生じる理由は明らかではないが、実験結果から推定するとそのような共振 現象の主因となるトルク変動が前段減速機20ではなく 後段減速機21に生じ、そのトルク変動が実施例のよう な偏心揺動型遊星歯車装置では入力軸(クランク軸3 0)1回転当たりに1回(一定回数)を生じ、前記駆動 系に対する加振作用をなすためと考えられる。
【0019】
調和歯車装置(撓み噛み合い式遊星歯車装 置)の場合は、実験結果から推定すると、入力軸(ウェーブジェネレータ)の1回転当たり2回(一定回数)のトルク変動が生じ、したがって、これに減速比1/3の前段減速機を取り付けると、電動モータの回転数が750rpm付近で750×1/3×2=500の毎分当たりトルク変動が生じ、駆動系の固有ねじり振動数f0が上記実施例と同様8.4ヘルツ(500振動/毎分)であるならば電動モータの回転数が実用域内である750rpm付近で共振が生じるものと考えられる。この場合、毎分当たり加振数がおおよそ500のときに共振が生じるのであるから、調和歯車装置に減速比i=1/6程度の前段減速機を設けることにより共振時の電動モータの回転数を実用域外である1500rpmを中心とする付近にまで上げることができる。
【0020】
なお、電動モータ1および前段減速機20の振動は駆動系の発振に影響を及ぼさないのは、これらの振動は小さいこと、後段減速機21を介することにより吸収されること等によるものと考えられる。
【0021】
(実験例)前述の実施例の減速装置のほかに次表の比較例1〜3に示す減速装置について実施した振動測定試験について説明する。前述の実施例および比較例1、2の偏心揺動型遊星歯車装置は、クランク軸および外歯歯車の揺動によるアンバランスを防いで振動の振幅を小さくするため、後述する第2〜第3実施例同様に外歯歯車を2枚としこれらを180度の位相差をもって組み付けたもので、かつ、内歯歯車が外歯歯車の歯数より1つ多い歯数を有するものを用いた。また、調和歯車装置は内歯歯車が外歯歯車の歯数より2つ多い歯数を有するものを用いた。それぞれの減速装置の減速段数、減速比i1、i2、回転ばね定数K1(図9参照)および慣性モーメントJは次の表1に示してある。
【0022】
【表1】
【0023】実験は図5に示す全体構成図によって実施した。すなわち、電動サーボモータ51の出力軸51aに減速装置52を取り付け、減速装置52の出力軸52aにロボットの被駆動部(第2アーム)の慣性モーメントJに相当する慣性負荷としてフライホイール53が取り付けられた。フライホイール側面53aの半径上の位置に、円周方向の加速度および振幅を測定できる圧電素子を利用した加速度ピックアップ54を取り付けた。この加速度ピックアップ54の出力はインジケータ56に連結されている。モータ51、減速装置52およびフライホイール53からなる駆動系の固有ねじり振動数f0は約8.4ヘルツになるよう調整してある。電動モータの回転数を変化させて、その時のフライホイールの加速度の大きさを測定した。測定結果は図4に示す。横軸は電動サーボモータ51の回転数であり、縦軸は加速度ピックアップ54で検出された円周方向の加速度(単位:G)を示す。
【0024】比較例1、比較例2および比較例3においては、共振のピークはそれぞれ、電動モータ51の回転数が、略750rpm、略500rpmおよび略250rpmのときであり、電動モータ51の通常制御回転数0〜1000rpmの範囲で最も大きな振動が生じている。しかしながら、本発明に係る減速装置を用いた実施例の場合には、電動モータの実用域外である1500rpmを中心とする近傍で共振ピークが生じ、この時の振 動が最も大きい。また、実施例、比較例1、および比較例2の対比から、共振時における電動モータ51の回転数は前段減速機の減速比i1に反比例していることが認められる。
【0025】
【実施例2】
次に本発明の第2実施例として、前述した第1実施例の減速装置3を改良した場合について図6、図7に基づいて説明する。なお、第1実施例と同一構成については、第1実施例と同一の符号を用いて説明する。図6、図7において、40は図1に示した電動モータ1によって駆動される減速装置であり、減速装置40は電動モータ1の出力回転軸7に連結された平行軸型の前段減速機20と、この前段減速機20に連結された後段の遊星歯車減速装置21と、から構成されている。
【0026】
電動モータ1の出力回転軸7の先端部7aはテーパ軸であり、先端にねじ7bを有する。ねじ部7bには電動モータの出力回転軸の一部を構成する連絡軸7cが螺合されている。8は入力回転軸であり、先端部8aに前段減速機20のピニオン22が設けられると共にモータ回転軸7を貫通させる孔8bを有し、且つ孔8bは電動モータの出力回転軸7のテーパ部と係合するテーパ孔部を有する。入力回転軸8は電動モータ1の回転軸7の先端部7aにナット23によりねじ止めされている。電動モータの出力回転軸7の先端部7aは入力回転軸8に半月キー24により固定されている。このような構成により入力回転軸8の先端部8aの軸径は電動モー タの出力回転軸7の軸径より小さくすることができ、したがって、ピニオン22の歯数はモータ回転軸7に歯数を直接装着させる場合に比べ、少なくすることができ、容量の割に回転軸径の大きい市販電動モータ1を用いる場合であっても、所定の前段減速比を得ることができる。ピニオン22に噛み合う3個の平歯車25は、後述する3本の入力クランク軸30にそれぞれ結合している。
【0027】
偏心揺動型遊星歯車装置21は筒体4に固定して設けられた内歯歯車28と、内歯歯車28に噛み合う一対の外歯歯車29と、外歯歯車29に嵌合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての3本の入力クランク軸30と、から構成されている。また、内歯歯車28はピン歯31を用いたピン歯車で構成され、例えば、外歯歯車29の歯数より1つだけ多い歯数を有している。33は円板部であり、円板部33は遊星歯車減速装置21の前端部を構成し、かつ、入力クランク軸30を円周上に等配しベアリング34を介して軸支している。35はブロック体であり、ブロック体35はその中心部に軸方向の円筒状孔36を有し、入力回転軸8が遊嵌されている。同様に外歯歯車29および円板部33の中心部にも孔が設けられている。ブロック体35はその後端部35aに凹みを有し、軸10のフランジ部39に対向している。凹み36とフランジ部39とによって形成された空洞内には、前段減速機20が収納されている。ブロック体35には入力クランク軸30を円周上に等配しベアリング41を介して軸支している。入力クランク軸30の延在部30aは凹み36内に突出し、平歯車25に固定されている。
【0028】
入力クランク軸30は円板部33とブロック体35の中央部に軸支され、入力クランク軸30の中央には180度の位相差をもつ一対のクランク部42を有し、各クランク部42はベアリング43を介して外歯歯車29を偏心揺動させるようにしている。ここで、前述した円板部33と、ブロック体35とは支持体44を構成する。円板部33、ブロック体35およびフランジ部39は複数のボルト46および固定ナット47により互いに固定されている。すなわち、前段減速機は、電動 モータの回転軸線と同一軸線上で、該電動モータの出力 回転軸に結合された入力歯車8、22と該入力歯車に噛 み合う出力歯車25とを有する平行軸型歯車装置からな っており、後段減速機は、各出力歯車25にそれぞれ結 合され、前記電動モータの回転軸線と平行な回転軸線を 有するクランク軸30と、各クランク軸に係合して偏心 揺動させられる外歯歯車29と、該外歯歯車に噛み合う 内歯歯車28を有すると共に、該電動モータの回転軸線 とほぼ直交する、第1部材への取付面を有する筒体4 と、各クランク軸を回転自在に支持するとともに、該電 動モータの回転軸線とほぼ直交する端面を有し、外歯歯 車の公転運動を被駆動部に伝達する出力部材としての支 持体44とを有する偏心揺動型遊星歯車装置21からな っている。電動モータの回転軸線と前記偏心揺動型遊星 歯車装置の支持体の回転軸線とは同一軸線上に配設さ れ、第1部材の延在する方向に対して支持体の回転軸線 がほぼ直角になるように、筒体の取付面が第1部材の一 端部5aに取り付けられ、支持体の回転軸線に対して第 2部材の延在する方向がほぼ直角になるように、該第2 部材の一端部39が支持体の端面に取り付けられてい る。入力歯車22および出力歯車25を外歯歯車29よ りも反電動モータ側に配置し、支持体の端面は入力歯車 および出力歯車よりも反電動モータに設けられている。 筒体の反電動モータ側端面を筒体の取付面となし、支持 体の端面は筒体の取付面より反電動モータ側に位置させ ている。
【0029】
電動モータ1の回転は出力回転軸7および入力回転軸8を介して前段減速機20のピニオンに伝達され、前段減速機20で減速される。前段減速機20の出力は平歯車25により偏心揺動型遊星歯車装置21のクランク軸30に入力される。次いで、クランク軸30の回転により偏心揺動させられる外歯歯車29と、この外歯歯車29と噛み合い外歯歯車29より1つ多い歯数を有する内歯歯車28とによりさらに減速され、外歯歯車29のゆっくりした公転運動はキャリアとして作用する支持体44から軸10に伝達されアーム12が回動される。
【0030】
本実施例においては、電動モータ1の通常制御回転数(0〜1000rpm、前段減速機20の減速比i1は1/3、偏心揺動型遊星歯車装置21の減速比i2は1/40、減速装置3の総減速比iは1/120、電動モータ1、減速装置3および第2アーム12を含んで構成される駆動系の固有ねじり振動数f0は約8.4ヘルツである。したがって、電動モータ1は産業ロボットの駆動系の固有ねじり振動数に対応する回転数(8.4ヘルツに相当する500rpm)を通常制御回 転数領域(0〜1000rpm)内に有している。また、前段減速機20は電動モータ1の通常制御回転数領域における毎秒最高回転数(1000rpmに相当する毎秒16.7回転)を、駆動系の固有ねじり振動数f0以下になるよう(毎秒5.6回転)に減速する減速比i1(1/3)を有している。減速装置40の回転ばね定数K1は約37.5kg・m/分である。この実施例の場合の作用および振動特性は、前述の第1実施例と同様になる。
【0031】
【実施例3】
次に本発明の第3実施例を図面に基づいて説明する。図8において、60は減速装置である。減速装置60は電動モータ1、前段減速機20および偏心揺 動型遊星歯車装置21が軸方向に順次配設され、電動モータ1の出力回転軸7には入力回転軸8が取着されている。入力回転軸8のモータ1側端には前段減速機20の入力歯車22が一体に設けられ、その中間には大歯車61aと小歯車61bを有する第1のアイドルギヤ61が回転自在に支持されている。遊星歯車減速装置21のクランク軸30の一端はモータ1側に突出した延在部30aを有する。延在部30aのモータ1側端には第2アイドルギヤ62が回転自在に支持され、その中間には前段減速機20の出力歯車25が固着されている。第2のアイドルギヤ62は入力歯車22と噛み合いこれにより歯数の多い大歯車62aおよび第1アイドルギヤ61の大歯車61aと噛み合いこれにより歯数の少ない小歯車62bを有する。出力歯車25は第1アイドルギヤ61の小歯車61bと噛み合いこれより多い歯数を有する。入力回転軸8、入力歯車22、出力歯車25、延在部30a、および第1、第2のアイドルギヤ61、62は前段減速機20としての平行軸型歯車装置を構成する。アイドルギヤ61、62を入れることにより、容量の割に回転軸径の大きい市販電動モータ1を用いる場合であっても、所定の前段減速比i1を得ることができる。他の構成および作用は前述した第1および第2の実施例と同じであるので、該実施例の説明に用いた符号を図8に付け、その説明を省略する。
【0032】
次に、図10に示す産業ロボット65に用いた本発明に係る産業ロボットの関節装置の実施例を図面を用いて説明する。図10において、産業ロボット65は第1関節66と、第1関節66に連結する第2関節67と、第2関節67に連結する第1アーム83および第2アーム68とから構成されている。第1関節66は支柱71の上側の旋回盤73を矢印P方向に回動し、第2関節67は旋回盤73に固定されたブラケット81の上側の第1アーム83を矢印Q方向に回動し、第2アーム68の先端部68aの3次元的移動を可能にする。
【0033】
【実施例4】
図11は本発明の第4実施例を示す図であり、前述の第3実施例と同一構成については、同一符号を用いて説明する。
【0034】
図11において、70は減速装置であり、減速装置70は、図10に示す産業ロボットの第1関節66において、第1部材としての筒状の支柱71の内側に内装されている。減速装置70は電動モータ1に連結された前段減速機としての平行軸型歯車装置20と、この前段減速機20に連結された後段の偏心揺動型遊星歯車装置21とから構成されている。電動モータ1のフランジ2は、筒体4を介して支柱71にボルト4bを用いて固定されている。電動モータ1の上側のほぼ垂直な出 力回転軸7は前段減速機20のピニオン22に固定され、ピニオン22に噛み合う3個の平歯車25は、後述する3本の入力クランク軸30の延在部30aにそれぞれ固定されている。偏心揺動型遊星歯車装置21は平行 軸型歯車装置20の上側に配置され、筒体4に固定して設けられた内歯歯車28と、内歯歯車28に噛み合う一対の外歯歯車29a、29b(以下、添字をつけない29で代表する)と、外歯歯車29に嵌合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての3本の入力クランク軸30と、から構成されている。入力クランク軸30は偏心揺動型遊星歯車装置21の下端部を構成する円板部33にベアリング34を介して軸支され、偏心揺動 型遊星歯車装置21の上端部および外歯歯車29の円周上に等配して設けられた貫通孔内を挿通したブロック体35にべアリング41を介して軸支されている。ブロック体35と円板部33とは円周上に等配された3つのボルト46により一体的となり、支持体(キャリア)44を構成し、支柱71の上側に設けられた第2部材としての円筒状体の旋回盤73の底部73aに固定されている。底部73aと支柱71の上部71aとの間にはベアリング74が設けられ、支持体(キャリア)44の自転に伴い、旋回盤73は回転する。前述以外の構成、作用および振動特性は第3実施例と同じであり省略する。
【0035】
【実施例5】
図12は本発明の第5実施例を示す図であり、前述の第3実施例と同一構成については、同一符号を用いて説明する。
【0036】
図12において、80は減速装置であり、減速装置80は図10に示す産業ロボットの第2関節67に用いたものである。第1部材としての箱形ブラケット81は前述の第1関節66の旋回盤73の上側に一体的に固定されている。減速装置80は電動モータ1に連結された前段減速機としての平行軸型歯車装置20とこの前段減速機20に連結された後段の偏心揺動型遊星歯車装置21とから構成されている。電動モータ1のフランジ2はブラケット81にボルト4bを用いて固定され、電動モータ1の回転軸7は前段減速機20のピニオン22に固定され、ピニオン22に噛み合う3個の平歯車25は後述する3本の入力クランク軸30の延在部30aにそれぞれ固定されている。偏心揺動型遊星歯車装 置21の入力クランク軸30の前端部はベアリング41を介してブロック体35に軸支され、その後端部はベアリング34を介して円板部33に軸支されている。ブロック体35と円板部33はボルト46で一体的に固定されて支持体44を構成し、さらにボルト82によりブラケット81に固定されている。偏心揺動型遊星歯車装置21の内歯歯車28は支持体44の外周部にベアリング84を介して回動自在に支持されている。内歯歯車28は、第2部材としての第1アーム83の端部83aに一体的に固定されている。
【0037】
電動モータ1の回転は出力回転軸7を介して平行軸型歯車装置20のピニオン22に伝達され、平 行軸型歯車装置20で減速される。平行軸型歯車装置20の出力は平歯車25により偏心揺動型遊星歯車装置21の入力クランク軸30に入力される。次いで、入力クランク軸30の回転により偏心揺動させられる一対の外歯歯車29a、29b(以下、29で代表する)と、この外歯歯車29と噛み合い外歯歯車29より一つ多い歯数を有する内歯歯車28とによりさらに減速され、内歯歯車28のゆっくりした自転は第2アーム83を回動させる。前述以外の構成、作用および振動特性は第3実施例と同じであり、同じ符号をつけて説明を省略する。
【0038】
【実施例6】
図13は本発明の第6実施例を示す図であり、これは、前述の第5実施例の構成の一部を変更したものであり、第5実施例と同一の構成には同一の符号をつけて説明する。
【0039】
図13において、90は減速装置であり、減速装置90は、第5実施例と同様に、図10に示す、産業ロボットの第2関節67に用いたものである。第6実施例では、減速装置90は電動モータ1に連結された前段減速機としての平行軸型歯車装置20と平行軸型歯 車装置20に連結された後段の偏心揺動型遊星歯車装置21とから構成されている。電動モータ1の出力回転軸7は平行軸型歯車装置20の太陽歯車91に連結され、太陽歯車91に噛み合い円周上に等配された3個の遊星歯車92は、ブロック体35の前端部から前方に連結された円筒部35aの内側に設けられた内歯歯車93とも噛み合い遊星運動する。偏心揺動型遊星歯車装置21の偏心入力軸としての入力クランク軸30は電動モータの 出力回転軸7の回転軸線と同一軸線上でブロック体35の軸芯上に配置され、入力クランク軸30の延在部30aはベアリング94を介してブロック体35に軸支されている。延在部30aの前端部にはフランジ部95が設けられ、フランジ部95の周辺に設けられた孔96に平 行軸型歯車装置20の遊星歯車92の軸92aが嵌合する。入力クランク軸30の後段部は、円板部33にベアリング98を介して軸支されている。ブロック体35および円板部33はボルト82によりブラケット81に一体的に固定されている。
【0040】
電動モータ1の回転は出力回転軸7を介して太陽歯車91に伝達され、太陽歯車91の自転運動に伴い、遊星歯車92は、太陽歯車91と内歯歯車93との間を減速されて遊星運動する。遊星歯車92の遊星運動の中公転運動はフランジ部95を介して入力クランク軸30に伝達される。前述以外の構成、作用および振動特性は第5実施例と同じであり、同じ符号をつけて説明を省略する。
【0041】
なお、後段に偏心揺動型遊星歯車装置を用 いた場合においては、前段減速機の減速比は電動モータ の毎秒当たり最高回転数を駆動系の固有振動数より若干 小さな値に減じる減速比であることが好ましい。例えば駆動系の固有ねじり振動数f0が5〜9Hz(ヘルツ)の場合であって、電動モータの通常制御回転数領域での最高回転数が1000rpm、総減速比iが1/60〜1/320のときは前段最小減速比i1を約1/1.9〜約1/6、後段減速比i2を1/25〜1/60とするのが好ましい。また駆動系の固有ねじり振動数f0が5〜9ヘルツの場合であって、電動モータの通常制御回 転数領域での最高回転数2000rpm、総減速比iが1/110〜1/320のときは、前段の最小減速比i1を約1/3.7〜約1/6.7、後段減速比i2を約1/25〜約1/60とするのが好ましい。同様(f0=5〜9Hz)の場合であって電動モータの通常制御回転数領域での最高回転数が4000rpm、総減速比iが1/210〜1/640のときは、前段最小減速比i1を約1/7.4〜約1/13.3、後段減速比i2を約1/30〜約1/60とするのが好ましい。また、駆動系の固有ねじり振動数f0が10〜15Hzの場合であって、電動モータの最高回転数が1000rpm、総減速比iが1/80〜1/300のときは前段最小減速比i1を1/1.5〜1/4、後段の減速比i2を1/25〜1/60とするのが好ましい。同様(f0=10〜15Hz)の場合であって、電動モータの通常制御回転数領域での最高回転数が4000rpm、総減速比iが1/125〜1/600のときは、前段減速比i1を約1/4.5〜約1/10、後段減速比i2を約1/30〜1/100とするのが好ましい。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、特に産業ロボットにおいては重量や累積バックラッシュを小さくして制御性能を良好にすることを要求されるのに対して、本来、調和歯車装置等のような単一の遊星歯車装置により必要な減速比を満足するようにその減速装置部を構成できる産業ロボットの関節装置において、その減速装置部を偏心揺動型遊星歯車装置(後段減速機)の入力側にわざわざ平行軸型歯車装置(前段減速機)を設けて前段減速機と後段減速機とにより必要な減速比を得るようにしているので、ロボットに共振が生じるとしても、大きな共振現象の生じる時の電動モータ回転数を、所望のモータ回転数領域にシフトさせることができる。その結果、ロボットにその先端部(工具把持等)で正確な軌跡を描くことを必要とする作業を行わせる時において大きな振動の発生を防ぐことができるので、ロボットの作業性が向上すると共に、ロボットの耐久性を向上させることができる。また、電動モータ、前段減速機、後段減速機の各軸線が同一軸線上に配置され、かつ、それら軸線が第1部材と第2部材の連結部で、第1、第2部材の軸線と直角になるよう構成されているので、第1、第2、第3アームといったように連続したアーム関節装置とすることができ、ロボットの作業領域を大きくすることができる。更に、電動モータから第2部材までの間に設ける伝動部材が増える構造になると、ばね要素が増えることになり、 その結果、駆動系の固有ねじり振動数が低下すると考え られるのが通常であるが、本発明によれば、電動モー タ、前段減速機、後段減速機の各軸線が同一軸線上に配 置され、かつ、それら軸線が第1部材と第2部材の連結 部で、第1、第2部材の軸線(延在方向)と直角になる よう構成されているので、電動モータから第2部材まで の動力伝達経路を短くでき、ばね常数が大きく低下する こともない。その結果、駆動系の固有ねじり振動数が大 きく低下することもなく、上述した大きな共振の生じる 時の電動モータ回転数をシフトさせるための前段減速装 置の減速比は平行軸型歯車装置で得られる程度の大きさ でよいことになる。つまり、本発明によれば、構造が簡 単な平行軸型歯車装置で得られる減速比により、電動モ ータの通常制御回転数領域が広くても共振が生じる時の 電動モータ回転数をその領域から外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の産業ロボットの関節装置の全体概略説明図である。
【図2】実施例1の減速装置の一部断面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】実施例1および比較例の性能を説明する図である。
【図5】図4に係る実験例の全体構成図である。
【図6】第2実施例の要部断面図である。
【図7】図6のB−B矢視断面図である。
【図8】第3実施例の要部断面図である。
【図9】減速装置一般の回転ばね定数の特性図である。
【図10】本発明に係る産業ロボットの関節装置を用いた産業ロボットの全体概念図である。
【図11】図10の第1関節に用いた本発明の第4実施例の要部断面図である。
【図12】図10の第2関節に用いた本発明の第5実施例の要部断面図である。
【図13】図10の第2関節に用いた本発明の第6実施例の要部断面図である。
【符号の説明】
1 電動モータ
3、40、60、70、80、90 減速装置
5、71、81 第1アーム(第1部材)
12、73、83 第2アーム(第2部材)
20 前段減速機
21 後段減速機
28 内歯歯車
29 外歯歯車
30 入力クランク軸(カム軸)
【発明の名称】産業ロボットの関節装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】第1部材と、第1部材に取り付けられ、電 動モータの回転を減速する減速装置と、減速装置の出力 部材に結合された第2部材とを備えた産業ロボットの関 節装置において、
A.前記減速装置が(1)前記電動モータの回転を減速 する前段減速機と、(2)前段減速機の出力回転を減速 する後段減速機と、を有し、
B.前記前段減速機が(1)前記電動モータの回転軸線 と同一軸線上で、電動モータの出力回転軸に結合された 入力歯車と(2)入力歯車に噛み合う複数の出力歯車と を有する平行軸型歯車装置からなり、
C.前記後段減速機が(1)前記出力歯車にそれぞれ結 合され、前記電動モータの回転軸線と平行な回転軸線を 有するクランク軸と、(2)各クランク軸に係合してし て偏心揺動させられる外歯歯車、(3)外歯歯車に噛み 合う内歯歯車を有すると共に前記電動モータの回転軸線 とほぼ直交する、前記第1部材への取付面を有する筒体 と、(4)各クランク軸を回転自在に支持するととも に、前記電動モータの回転軸線とほぼ直交する端面を有 し、外歯歯車の公転運動を被駆動部に伝達する出力部材 としての支持体と、を有する偏心揺動型遊星歯車装置か らなり、
D.前記電動モータの回転軸線と前記偏心揺動型遊星歯 車装置の支持体の回転軸線とを同一軸線上に配し、
E.前記第1部材の延在する方向に対して前記支持体の 回転軸線がほぼ直角になるように、前記筒体の前記取付 面を第1部材の一端部に取り付け、
F.前記支持体の回転軸線に対して前記第2部材の延在 する方向がほぼ直角になるように、第2部材の一端部を 前記支持体の前記端面に取り付けたことを特徴とする産 業ロボットの関節装置。
【請求項2】前記入力歯車および出力歯車を前記外歯 歯車よりも反電動モータ側に配置し、電動モータの回転 数を前記外歯歯車に設けた貫通孔を通して前記入力歯車 に伝達し、前記支持体の前記端面を入力歯車および出力 歯車よりも反電動モータ側に設けたことを特徴とする請 求項1記載の産業ロボットの関節装置。
【請求項3】前記筒体の反電動モータ側端面を筒体の 前記取付面となし、前記支持体の前記端面が筒体の前記 取付面より反電動モータ側に位置していることを特徴と する請求項2記載の産業ロボットの関節装置。
【請求項4】前記減速装置の総減速比が遊星歯車装置 単体で実在する減速比の範囲内に設定されたことを特徴 とする請求項1または2記載の産業ロボットの関節装 置。
【請求項5】前記前段減速機の減速比を1/2〜1/ 5、前記後段減速機の減速比を1/25〜1/60の範 囲内でそれぞれ設定することにより、前記総減速比を満 足するようにしたことを特徴とする請求項4記載の産業 ロボットの関節装置。
【請求項6】前記前段減速機の減速比に前記電動モー タの通常制御回転数領域における毎秒当たりの最高回転 数と前記クランク軸の一回転当たりにおける前記後段減 速機の実質トルク変動数とを乗じた値が電動モータ、減 速装置および第2部材を含んで構成される駆動系の固有 ねじり振動数より小さくなるように、前段減速機の減速 比が設定されていることを特徴とする請求項5記載の産 業ロボットの関節装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は産業ロボットの関節装置、特にロボットアームの共振振動の発生を防止するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
産業ロボットにおいては、一般に、作業に適した出力トルクを得るため、アーム等の関節部の駆動系には、高速低トルクの電動サーボモータまたは電動パルスモータと、この出力を低速高トルクに変換する減速装置とを用いている。また、そのような減速装置は、例えば、減速比1/120程度の大減速比を有していること、また、歯車間のガタ、すなわち、いわゆるバックラッシュが小さいこと、さらに、慣性を小さくするため軽量であること等が要求される。
【0003】
このような要求を満たす従来の減速装置としては、例えば、特開昭59−175986号公報に開示されているような調和歯車装置および特開昭59−106744号公報に開示されているような偏心揺動型遊星歯車減速装置がある。前者の減速比は一般に1/80〜1/320程度であり、後者の減速比は一般に1/6〜1/200程度である。また、前者は後者に比し減速比当たりの外径、重量が小さく、かつ、ほとんどのロボットアームの関節部の駆動用減速装置として必要な減速比および機械的強度を満足している。従って、ロボットアームの関節部駆動用減速装置のほとんどは調和歯車装置単体が適用され、まれに、調和歯車装置でも得られないほどの大減速比を必要とするもの、すなわち、小容量高速回転(例えば、出力が1000ワット以下で回転数が5000rpm)型のモータをロボットアームの駆動に用いる場合のように1/625程度の減速比を必要とするもの、については特開昭56−152594号公報に開示されているように調和歯車装置に前段減速装置を結合したものが用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した各減速装置をロボットの関節装置に用いた場合、減速装置に入力する電動モータ回転数が低い領域で減速装置とロボットアーム等がねじり共振を起こすという問題点があった。共振現象としては、ロボットアームの関節部近傍にねじり振動が現れることが多く、その結果、ロボットアームの先端位置が定まらなくなり、ロボットによる作業のうち溶接、シーリング、組立等、一般に電動モ ータの低回転数領域で行われる作業において、正確な作 業軌跡を得られない等の問題が生じる。共振が生じる理由は、電動モータのトルク伝達機構である上記各減速装置の剛性が低いため、そのような減速装置を含む駆動系(電動モータ、減速装置およびロボットアームから構成される系)の固有ねじり振動数f0が低くなり、従って、歯切の加工誤差などに起因して振動する減速装置の振動周波数が、電動モータの低回転数域で上記固有ねじり振動数f0と一致するためと考えられていた。特に、 第2アームが電動モータの出力回転軸の延長方向に対し て直角方向に延在している産業ロボットの関節装置にお いては、電動モータの回転時、第2アームの先端部が電 動モータの出力回転軸線で中心に振れ回るので、その振 れ回りによる振動が起因し、ロボットによる作業のうち 容接作業のように正確な作業軌跡を要する作業には問題 となっていた。
【0005】
このような問題点に対し、特開昭58−211881号公報には、発生した振動を打ち消すように電動モータの速度指令信号を変化させる電気的制御方式が提案されている。しかしながら、このような方式においてはフィードバックゲインを大きくすると系が不安定となり、特に剛性の低いロボット駆動系においては、逆に発振し易くなるという問題を生じるため、ゲインを大きくできず、従って、十分な振動打ち消し効果を得られない。また、特開昭59−175986号公報には高張力を与えたタイミングベルトで減速装置を駆動し、該ベルトで振動を吸収する方式のものが提案されている。しかしながら、この方式においてはタイミングベルトが破断するという危険がある。また、特開昭59−115189号公報には減速装置の主軸にばねとおもりから成る吸振器を取り付ける方式が提案されている。しかし、この方式においては遠心力により吸振器が破損したり、ロボットの負荷荷重に対応しておもり等を調整しなければならないという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、大きな共振現象の生じる時の電動モータ回数を、所望のモータ回転数領域にシフトさせて、ロボットにその先端部で正確な軌跡を描くことを必要とする作業を行わせる時において大きな振動の発生を防ぐことにより、ロボットの作業性が向上する と共に、ロボットの耐久性を向上させることができる産 業ロボットの関節装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、ロボットアームの関節装置に用いる減速装置のばね定数、固有ねじり振動数、トルク変動等と共振現象との関係につき種々研究を行った。先ず、回転ばね定数の高い減速装置をロボットアームの関節装置に用いることによりロボットの駆動系の固有ねじり振動数f0を実用域から外すことが可能か否かについて試算した。しかし、減速装置の回転ばね定数K1(図9参照)は、大きなものでもロボットアーム自体の回転ばね定数K2の1/10〜1/5であるため、駆動系全体のばね定数K=K1・K2/(K1+K2)は大して大きくできず、その結果、駆動系の固有ねじり振動数f0=1/2・π・(K/J)1/2(ここに、Jは駆動系の慣性モーメント)も大して大きくできない。したがって、減速装置のばね定数K1を高めること、すなわち剛性を高めることによっては、駆動系の固有ねじり振動数f0を実用域から外すことは不可能であるとの結論に達した。
【0008】
そこで、発明者等は、振動発生の原因である減速装置のトルク変動を無くすことを試みた。具体的には偏心揺動型遊星歯車装置を用い、トルク変動を阻止ないし減ずるよう、この減速装置の内歯歯車と外歯歯車の歯に高精度の仕上げ加工を施し、かつ、トルク変動が生じてもこれを吸収するよう、偏心入力軸の軸受部やトルク取り出しピンの軸支部等に環状溝を設け、該溝にゴムリングを装着した。しかしながら、このような対策を施しても実用域での共振を防ぐことはできず、しかも、共振が生じるときの電動モータ回転数は、そのような対策を施さない場合とほとんど同じであることがわかった。
【0009】
このような実験結果から、一定の機構の減速装置であれば、ほぼ一定のトルク変動特性、すなわちロボットの駆動系に対する加振周波数特性を有するとの結論が導かれた。また、斯かる結論から、ロボット駆動系に組み込む減速装置の機構を変更することによりトルク変動特性を実用域外におくことができるとの仮説の下に種々の実験を行った。これらの実験の内容および結果については後述するが、これらの実験結果から仮説は実証され、下記の結論に到達した。
【0010】
従来の常識では全く考えられなかった構成、すなわち、偏心揺動型の遊星歯車減速装置は、内歯歯車と外歯歯車の歯数差が1であって、単独でも1/200程度の減速比にできるが、この減速比を数十分の一程度とし、これに所定範囲の減速比を有する前段減速比をわざわざ設けて歯車装置を構成し、これをロボットアームの駆動系に組み込むという構成により共振現象の生じる範囲を電動モータの実用域から外すことができる。
【0011】
なお、偏心揺動型遊星歯車装置に前段減速機を設けた減速装置は、米国特許第4,348,918号明細書に開示されているようにクローラ車両の走行装置等に採用されている。しかしながら、そのような走行装置等は採用する減速装置の重量、バックラッシュ等の問題をほとんど考慮しなくともよい。したがって、単に減速装置の総減速比の変更を容易にするため、あるいは単に低速大トルクを出力するため、前段減速装置を設けているのである。これに対し、高速性、位置精度等を要求され、且つ、全体構造の剛性が低いロボットにおいては、減速装置の重量、バックラッシュを小さくすることが重要であるため、関節部に、減速比当たりの重量が調和歯車装置より大きい偏心揺動型遊星歯車装置を用い、さらに、重量、バックラッシュを増大させる要素となる前段減速機をわざわざ設けることは従来考えられなかったのである。
【0012】
発明者らはさらに種々研究を重ねた結果、下記の構成を有する本発明に到達した。本発明に係る産業ロボットの関節装置のうち請求項1記載のものは、第1部材と、第1部材に取り付けられ、電動モータの回転を減速する減速装置と、減速装置の出力部材に結合された第2部材とを備えた産業ロボットの関節装置において、前記減速機が前記電動モータの回転を減速する前段減速機と、前段減速機の出力回転を減速する後段減速機とを有し、前記前段減速機が前記電動モータの回転軸線と同一軸線上で、電動モータの出力回転軸に結合された入力歯車と、入力歯車に噛み合う複数の出力歯車とを有する平行軸型歯車装置からなり、前記後段減速機が前記出力歯車にそれぞれ結合され、前記電動モータの回転軸線と平行な回転軸線を有するクランク軸と、各クランク軸に係合してして偏心揺動させられる外歯歯車、外歯歯車に噛み合う内歯歯車を有すると共に前記電動モータの回転軸線とほぼ直交する、前記第1部材への取付面を有する筒体と、各クランク軸を回転自在に支持するとともに、前記電動モータの回転軸線とほぼ直交する端面を有し、外歯歯車の公転運動を被駆動部に伝達する出力部材としての支持体とを有する偏心揺動型遊星歯車装置からなり、前記電動モータの回転軸線と前記偏心揺動型遊星歯車装置の支持体の回転軸線とを同一軸上に配し、前記第1部材の延在する方向に対して前記支持体の回転軸線がほぼ直角になるように、前記筒体の前記取付面を第1部材の一端部に取り付け、前記支持体の回転軸線に対して前記第2部材の延在する方向がほぼ直角になるように、第2部材の一端部を前記支持体の前記端面に取り付けたことを特徴とするものである。請求項2記載の発明に係る産業ロボットの関節装置は、請求項1記載の産業ロボットの関節装置のうち、前記入力歯車および出力歯車を前記外歯歯車よりも反電動モータ側に配置し、電動モータの回転を前記外歯歯車に設けた貫通孔を通して前記入力歯車に伝達し、前記支持体の前記端面を入力歯車および出力歯車よりも反電動モータ側に設けたことを特徴とするものである。請求項3記載の発明に係る産業ロボットの関節装置は、請求項2記載の産業ロボットの関節装置のうち、前記筒体の反電動モータ側端面を筒体の前記取付面となし、前記支持体の前記端面が筒体の前記取付面より反電動モータ側に位置していることを特徴とするものである。請求項4記載の発明に係る産業ロボットの関節装置は、請求項1または2記載の産業ロボット の関節装置のうち、前記減速装置の総減速比が遊星歯車 装置単体で実在する減速比の範囲内に設定されたことを 特徴とするものである。請求項5記載の発明に係る産業 ロボットの関節装置は、請求項4記載の産業ロボットの 関節装置のうち、前記前段減速機の減速比を1/2〜1 /5、前記後段減速機の減速比を1/25〜1/60の 範囲内でそれぞれ設定することにより、前記総減速比を 満足するようにしたことを特徴とするものである。請求 項6記載の発明に係る産業ロボットの関節装置は、請求 項5記載の産業ロボットの関節装置のうち、前記前段減 速機の減速比に前記電動モータの通常制御領域における 毎秒当たりの最高回転数と前記クランク軸の一回転当た りにおける前記後段減速機の実質トルク変動数とを乗じ た値が電動モータ、減速装置および第2部材を含んで構 成される駆動系の固有振動数より小さくなるように、前 段減速機の減速比が設定されていることを特徴とするも のである。そして本発明によれば、特に産業ロボットに おいては重量や累積バックラッシュを小さくして制御性 能を良好にすることを要求されるのに対して、本来、調 和歯車装置等のような単一の遊星歯車装置により必要な 減速比を満足するようにその減速装置部を構成できる産 業ロボットの関節装置において、その減速装置部を偏心 揺動型遊星歯車装置(後段減速機)の入力側にわざわざ 平行軸型歯車装置(前段減速機)を設けて前段減速機と 後段減速機とにより上記必要な減速比を得るようにして いるので、ロボットに共振が生じるとしても、大きな共 振現象の生じる時の電動モータ回転数を、所望のモータ 回転数領域にシフトさせることができる。その結果、ロ ボットにその先端部(工具把持部等)で正確な軌跡を描 くことを必要とする作業を行わせる時において大きな振 動の発生を防ぐことができるので、ロボットの作業性が 向上すると共に、ロボットの耐久性を向上させることが できる。また、電動モータ、前段減速機、後段減速機の 各軸線が同一軸線上に配置され、かつ、それら軸線が第 1部材と第2部材の連結部で、第1、第2部材の軸線と 直角になるよう構成されているので、第1、第2、第3 アームといったように連続したアーム関節装置とするこ とができ、ロボットの作業領域を大きくすることができ る。更に、電動モータから第2部材までの間に設ける伝 動部材が増える構造になると、ばね要素が増えることに なり、その結果、駆動系の固有ねじり振動数が低下する と考えられるのが通常であるが、本発明によれば、電動 モータ、前段減速機、後段減速機の各軸線が同一軸線上 に配置され、かつ、それら軸線が第1部材と第2部材の 連結部で、第1、第2部材の軸線(延在方向)と直角に なるよう構成されているので、電動モータから第2部材 までの動力伝達経路を短くでき、ばね定数が大きく低下 することもない。その結果、駆動系の固有ねじり振動数 が大きく低下することもなく、上述した大きな共振の生 じる時の電動モータ回転数をシフトさせるための前段減 速装置の減速比は平行軸型歯車装置で得られる程度の大 きさでよいことになる。つまり、本発明によれば、構造 が簡単な平行軸型歯車装置で得られる減速比により、電 動モータの通常制御回転数領域が広くても共振が生じる 時の電動モータ回転数をその領域から外すことができ る。
【0013】
【発明の実施の態様】
以下、本発明に係る産業ロボットの関節装置を図面に基づいて説明する。
【0014】
【実施例1】
図1ないし図3は本発明の第1実施例を示す図である。まず、構成について説明する。図1は本発明に係る産業ロボットの関節装置を用いたロボットの関節部の全体概略図である。1は電動モータであり、電動モータ1のフランジ2は減速装置3の筒体4に固定されている。筒体4は第1部材としての第1アーム5の一端 部(先端部)5aに固定されている。電動モータ1の出力回転軸7は減速装置3の入力回転軸8に連結され、減速装置3の出力は軸10に伝達され、軸10は円筒体11を貫通して第2部材としての第2アーム12に固定されている。第2アーム12の一端部の筒状体13と第1アーム5の先端部5aの下面から下方に突出する円筒型の突出体15との間には一対のベアリング16が介装され、第2アーム12は第1アーム5に回動自在に支持されている。突出体15の内周面と円筒体11の中央部の外周面との間には一対のベアリング17が介装されている。円筒体11の上部および下部の内面と軸10との間にはそれぞれ一対のベアリング18が介装されている。したがって、減速装置3は電動モータ1の回転数を減速してロボットの被駆動部すなわち第2アーム12を回動させる。また、電動モータ1、減速装置3、第2アーム12および第2アームに接続された負荷は駆動系を構成する。
【0015】
減速装置3は図2および図3に示すように、電動モータ1の回転数を減速する前段減速機20と、前段減速機20に連結され、回転数をさらに減速する後段減速機21と、から構成されている。前段減速機20は平行軸型歯車装置である。後段減速機21は固定している内歯歯車28と内歯歯車28に噛み合う外歯歯車29と、外歯歯車29に係合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての入力クランク軸30と、を有する偏心揺動型遊星歯車装置によって構成されている。また、内歯歯車28はピン歯31を用いたピン歯車で構成され、例えば、外歯歯車29の歯数より一つだけ多い歯数を有している。また、前段減速機20は通常の平行軸型歯車装置であり平歯車により構成されている。
【0016】
前段減速機20の減速比i1と後段減速機21の減速比i2とは電動モータ1の通常制御回転数(ロボットの通常作業時、例えば溶接ロボットに主たる 溶接作業を行わしめる時、のモータ回転数)の範囲内でロボットすなわち、第1アーム5および第2アーム12と、後段減速機21との共振が起きないように選択している。電動モータ1の通常制御回転数領域あるいはロボ ットによる正確な作業軌跡を要する領域(溶接作業等を 行う作業領域)では、前段減速機20の毎秒当たり最高回転数に前段減速機20の減速比を乗じた値(その値に 更に後述するクランク軸30の一回転当たりのトルク変 動回数である1を乗じた値に相当する)が、電動モータ1、減速装置3、第2アーム12および第2アーム12に接続された負荷から構成される駆動系のねじり発振周波数(固有ねじり振動数f0付近の周波数をいう。以下同じ)より小さくなるよう、前段減速機20の減速比i1を選択する。この実施例においては、電動モータ1の通常制御回転数が0〜1000rpm、前段減速機20の減速比i1が1/3および後段減速機21の減速比i2は1/40であり、減速装置3の全体の減速比iは1/120になるよう選択されている。前記駆動系の固有ねじり振動数f0は、共振ピーク点における電動モータ1の回転数、前段減速機20の減速比i1および減速装置3に関して後述するトルク変動特性から逆算でき、この実施例においては約8.4Hzである。すなわち、減 速装置の総減速比が遊星歯車装置単体で実在する減速比 の範囲内に設定され、前段減速機の減速比を1/2〜1 /5、後段減速機の減速比を1/25〜1/60の範囲 内でそれぞれ設定することにより、総減速比を満足する ようにし、前段減速機の減速比に電動モータの通常制御 回転数領域における毎秒当たりの最高回転数とクランク 軸の一回転当たりにおける後段減速機の実質トルク変動 数とを乗じた値が電動モータ、減速装置および第2部材 を含んで構成される駆動系の固有振動数より小さくなる ように、前段減速機の減速比が設定されているのであ る。
【0017】
前段減速機20の減速比i1が1/5未満(分母が大きくなることを意味する。以下同じ)または後段減速機21の減速比i2が1/25を超える(分母が小さくなることを意味する。以下同じ)と、前段減速機20に構造の簡単な平行軸型歯車装置を採用して1/120の総減速比iを得ることは困難となるので、設計的経済的に不利となる。また、後段減速機21の減速比i2が1/60未満または前段減速機20の減速比i1が1/2を超えて1/120の総減速比iを得る場合は、電動モータ1の実用域において、前段減速機20の毎秒当たり回転数が前記駆動系の固有ねじり振動数f0(8.4Hz)近づきあるいはそれ以上となるので、共振を防止できる範囲が狭くなる。
【0018】
次に、作用について説明する。電動モータ1を0〜1000rpmの通常制御回転数で回転させると、減速比i1が1/3の前段減速機20の出力回転数は0〜333rpmとなり、減速比i2が1/40の後段減速機21の出力回転数は0〜8.3rpmとなり、この範囲では大きな振動は生じない。電動モータ1の出 力回転数が1500rpm近辺(このときの前段減速機20の出力回転数は1500rpm×1/3=500rpm近辺、後段減速機21の出力回転数は1500rpm×1/3×1/40=12.5rpm近辺)で最大共 振現象が生じ、この時の振動が最も大きい。このように共振現象が電動モータ1の実用域外で生じる理由は明らかではないが、実験結果から推定するとそのような共振 現象の主因となるトルク変動が前段減速機20ではなく 後段減速機21に生じ、そのトルク変動が実施例のよう な偏心揺動型遊星歯車装置では入力軸(クランク軸3 0)1回転当たりに1回(一定回数)を生じ、前記駆動 系に対する加振作用をなすためと考えられる。
【0019】
調和歯車装置(撓み噛み合い式遊星歯車装 置)の場合は、実験結果から推定すると、入力軸(ウェーブジェネレータ)の1回転当たり2回(一定回数)のトルク変動が生じ、したがって、これに減速比1/3の前段減速機を取り付けると、電動モータの回転数が750rpm付近で750×1/3×2=500の毎分当たりトルク変動が生じ、駆動系の固有ねじり振動数f0が上記実施例と同様8.4ヘルツ(500振動/毎分)であるならば電動モータの回転数が実用域内である750rpm付近で共振が生じるものと考えられる。この場合、毎分当たり加振数がおおよそ500のときに共振が生じるのであるから、調和歯車装置に減速比i=1/6程度の前段減速機を設けることにより共振時の電動モータの回転数を実用域外である1500rpmを中心とする付近にまで上げることができる。
【0020】
なお、電動モータ1および前段減速機20の振動は駆動系の発振に影響を及ぼさないのは、これらの振動は小さいこと、後段減速機21を介することにより吸収されること等によるものと考えられる。
【0021】
(実験例)前述の実施例の減速装置のほかに次表の比較例1〜3に示す減速装置について実施した振動測定試験について説明する。前述の実施例および比較例1、2の偏心揺動型遊星歯車装置は、クランク軸および外歯歯車の揺動によるアンバランスを防いで振動の振幅を小さくするため、後述する第2〜第3実施例同様に外歯歯車を2枚としこれらを180度の位相差をもって組み付けたもので、かつ、内歯歯車が外歯歯車の歯数より1つ多い歯数を有するものを用いた。また、調和歯車装置は内歯歯車が外歯歯車の歯数より2つ多い歯数を有するものを用いた。それぞれの減速装置の減速段数、減速比i1、i2、回転ばね定数K1(図9参照)および慣性モーメントJは次の表1に示してある。
【0022】
【表1】
【0023】実験は図5に示す全体構成図によって実施した。すなわち、電動サーボモータ51の出力軸51aに減速装置52を取り付け、減速装置52の出力軸52aにロボットの被駆動部(第2アーム)の慣性モーメントJに相当する慣性負荷としてフライホイール53が取り付けられた。フライホイール側面53aの半径上の位置に、円周方向の加速度および振幅を測定できる圧電素子を利用した加速度ピックアップ54を取り付けた。この加速度ピックアップ54の出力はインジケータ56に連結されている。モータ51、減速装置52およびフライホイール53からなる駆動系の固有ねじり振動数f0は約8.4ヘルツになるよう調整してある。電動モータの回転数を変化させて、その時のフライホイールの加速度の大きさを測定した。測定結果は図4に示す。横軸は電動サーボモータ51の回転数であり、縦軸は加速度ピックアップ54で検出された円周方向の加速度(単位:G)を示す。
【0024】比較例1、比較例2および比較例3においては、共振のピークはそれぞれ、電動モータ51の回転数が、略750rpm、略500rpmおよび略250rpmのときであり、電動モータ51の通常制御回転数0〜1000rpmの範囲で最も大きな振動が生じている。しかしながら、本発明に係る減速装置を用いた実施例の場合には、電動モータの実用域外である1500rpmを中心とする近傍で共振ピークが生じ、この時の振 動が最も大きい。また、実施例、比較例1、および比較例2の対比から、共振時における電動モータ51の回転数は前段減速機の減速比i1に反比例していることが認められる。
【0025】
【実施例2】
次に本発明の第2実施例として、前述した第1実施例の減速装置3を改良した場合について図6、図7に基づいて説明する。なお、第1実施例と同一構成については、第1実施例と同一の符号を用いて説明する。図6、図7において、40は図1に示した電動モータ1によって駆動される減速装置であり、減速装置40は電動モータ1の出力回転軸7に連結された平行軸型の前段減速機20と、この前段減速機20に連結された後段の遊星歯車減速装置21と、から構成されている。
【0026】
電動モータ1の出力回転軸7の先端部7aはテーパ軸であり、先端にねじ7bを有する。ねじ部7bには電動モータの出力回転軸の一部を構成する連絡軸7cが螺合されている。8は入力回転軸であり、先端部8aに前段減速機20のピニオン22が設けられると共にモータ回転軸7を貫通させる孔8bを有し、且つ孔8bは電動モータの出力回転軸7のテーパ部と係合するテーパ孔部を有する。入力回転軸8は電動モータ1の回転軸7の先端部7aにナット23によりねじ止めされている。電動モータの出力回転軸7の先端部7aは入力回転軸8に半月キー24により固定されている。このような構成により入力回転軸8の先端部8aの軸径は電動モー タの出力回転軸7の軸径より小さくすることができ、したがって、ピニオン22の歯数はモータ回転軸7に歯数を直接装着させる場合に比べ、少なくすることができ、容量の割に回転軸径の大きい市販電動モータ1を用いる場合であっても、所定の前段減速比を得ることができる。ピニオン22に噛み合う3個の平歯車25は、後述する3本の入力クランク軸30にそれぞれ結合している。
【0027】
偏心揺動型遊星歯車装置21は筒体4に固定して設けられた内歯歯車28と、内歯歯車28に噛み合う一対の外歯歯車29と、外歯歯車29に嵌合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての3本の入力クランク軸30と、から構成されている。また、内歯歯車28はピン歯31を用いたピン歯車で構成され、例えば、外歯歯車29の歯数より1つだけ多い歯数を有している。33は円板部であり、円板部33は遊星歯車減速装置21の前端部を構成し、かつ、入力クランク軸30を円周上に等配しベアリング34を介して軸支している。35はブロック体であり、ブロック体35はその中心部に軸方向の円筒状孔36を有し、入力回転軸8が遊嵌されている。同様に外歯歯車29および円板部33の中心部にも孔が設けられている。ブロック体35はその後端部35aに凹みを有し、軸10のフランジ部39に対向している。凹み36とフランジ部39とによって形成された空洞内には、前段減速機20が収納されている。ブロック体35には入力クランク軸30を円周上に等配しベアリング41を介して軸支している。入力クランク軸30の延在部30aは凹み36内に突出し、平歯車25に固定されている。
【0028】
入力クランク軸30は円板部33とブロック体35の中央部に軸支され、入力クランク軸30の中央には180度の位相差をもつ一対のクランク部42を有し、各クランク部42はベアリング43を介して外歯歯車29を偏心揺動させるようにしている。ここで、前述した円板部33と、ブロック体35とは支持体44を構成する。円板部33、ブロック体35およびフランジ部39は複数のボルト46および固定ナット47により互いに固定されている。すなわち、前段減速機は、電動 モータの回転軸線と同一軸線上で、該電動モータの出力 回転軸に結合された入力歯車8、22と該入力歯車に噛 み合う出力歯車25とを有する平行軸型歯車装置からな っており、後段減速機は、各出力歯車25にそれぞれ結 合され、前記電動モータの回転軸線と平行な回転軸線を 有するクランク軸30と、各クランク軸に係合して偏心 揺動させられる外歯歯車29と、該外歯歯車に噛み合う 内歯歯車28を有すると共に、該電動モータの回転軸線 とほぼ直交する、第1部材への取付面を有する筒体4 と、各クランク軸を回転自在に支持するとともに、該電 動モータの回転軸線とほぼ直交する端面を有し、外歯歯 車の公転運動を被駆動部に伝達する出力部材としての支 持体44とを有する偏心揺動型遊星歯車装置21からな っている。電動モータの回転軸線と前記偏心揺動型遊星 歯車装置の支持体の回転軸線とは同一軸線上に配設さ れ、第1部材の延在する方向に対して支持体の回転軸線 がほぼ直角になるように、筒体の取付面が第1部材の一 端部5aに取り付けられ、支持体の回転軸線に対して第 2部材の延在する方向がほぼ直角になるように、該第2 部材の一端部39が支持体の端面に取り付けられてい る。入力歯車22および出力歯車25を外歯歯車29よ りも反電動モータ側に配置し、支持体の端面は入力歯車 および出力歯車よりも反電動モータに設けられている。 筒体の反電動モータ側端面を筒体の取付面となし、支持 体の端面は筒体の取付面より反電動モータ側に位置させ ている。
【0029】
電動モータ1の回転は出力回転軸7および入力回転軸8を介して前段減速機20のピニオンに伝達され、前段減速機20で減速される。前段減速機20の出力は平歯車25により偏心揺動型遊星歯車装置21のクランク軸30に入力される。次いで、クランク軸30の回転により偏心揺動させられる外歯歯車29と、この外歯歯車29と噛み合い外歯歯車29より1つ多い歯数を有する内歯歯車28とによりさらに減速され、外歯歯車29のゆっくりした公転運動はキャリアとして作用する支持体44から軸10に伝達されアーム12が回動される。
【0030】
本実施例においては、電動モータ1の通常制御回転数(0〜1000rpm、前段減速機20の減速比i1は1/3、偏心揺動型遊星歯車装置21の減速比i2は1/40、減速装置3の総減速比iは1/120、電動モータ1、減速装置3および第2アーム12を含んで構成される駆動系の固有ねじり振動数f0は約8.4ヘルツである。したがって、電動モータ1は産業ロボットの駆動系の固有ねじり振動数に対応する回転数(8.4ヘルツに相当する500rpm)を通常制御回 転数領域(0〜1000rpm)内に有している。また、前段減速機20は電動モータ1の通常制御回転数領域における毎秒最高回転数(1000rpmに相当する毎秒16.7回転)を、駆動系の固有ねじり振動数f0以下になるよう(毎秒5.6回転)に減速する減速比i1(1/3)を有している。減速装置40の回転ばね定数K1は約37.5kg・m/分である。この実施例の場合の作用および振動特性は、前述の第1実施例と同様になる。
【0031】
【実施例3】
次に本発明の第3実施例を図面に基づいて説明する。図8において、60は減速装置である。減速装置60は電動モータ1、前段減速機20および偏心揺 動型遊星歯車装置21が軸方向に順次配設され、電動モータ1の出力回転軸7には入力回転軸8が取着されている。入力回転軸8のモータ1側端には前段減速機20の入力歯車22が一体に設けられ、その中間には大歯車61aと小歯車61bを有する第1のアイドルギヤ61が回転自在に支持されている。遊星歯車減速装置21のクランク軸30の一端はモータ1側に突出した延在部30aを有する。延在部30aのモータ1側端には第2アイドルギヤ62が回転自在に支持され、その中間には前段減速機20の出力歯車25が固着されている。第2のアイドルギヤ62は入力歯車22と噛み合いこれにより歯数の多い大歯車62aおよび第1アイドルギヤ61の大歯車61aと噛み合いこれにより歯数の少ない小歯車62bを有する。出力歯車25は第1アイドルギヤ61の小歯車61bと噛み合いこれより多い歯数を有する。入力回転軸8、入力歯車22、出力歯車25、延在部30a、および第1、第2のアイドルギヤ61、62は前段減速機20としての平行軸型歯車装置を構成する。アイドルギヤ61、62を入れることにより、容量の割に回転軸径の大きい市販電動モータ1を用いる場合であっても、所定の前段減速比i1を得ることができる。他の構成および作用は前述した第1および第2の実施例と同じであるので、該実施例の説明に用いた符号を図8に付け、その説明を省略する。
【0032】
次に、図10に示す産業ロボット65に用いた本発明に係る産業ロボットの関節装置の実施例を図面を用いて説明する。図10において、産業ロボット65は第1関節66と、第1関節66に連結する第2関節67と、第2関節67に連結する第1アーム83および第2アーム68とから構成されている。第1関節66は支柱71の上側の旋回盤73を矢印P方向に回動し、第2関節67は旋回盤73に固定されたブラケット81の上側の第1アーム83を矢印Q方向に回動し、第2アーム68の先端部68aの3次元的移動を可能にする。
【0033】
【実施例4】
図11は本発明の第4実施例を示す図であり、前述の第3実施例と同一構成については、同一符号を用いて説明する。
【0034】
図11において、70は減速装置であり、減速装置70は、図10に示す産業ロボットの第1関節66において、第1部材としての筒状の支柱71の内側に内装されている。減速装置70は電動モータ1に連結された前段減速機としての平行軸型歯車装置20と、この前段減速機20に連結された後段の偏心揺動型遊星歯車装置21とから構成されている。電動モータ1のフランジ2は、筒体4を介して支柱71にボルト4bを用いて固定されている。電動モータ1の上側のほぼ垂直な出 力回転軸7は前段減速機20のピニオン22に固定され、ピニオン22に噛み合う3個の平歯車25は、後述する3本の入力クランク軸30の延在部30aにそれぞれ固定されている。偏心揺動型遊星歯車装置21は平行 軸型歯車装置20の上側に配置され、筒体4に固定して設けられた内歯歯車28と、内歯歯車28に噛み合う一対の外歯歯車29a、29b(以下、添字をつけない29で代表する)と、外歯歯車29に嵌合して外歯歯車29を揺動回転させる偏心入力軸としての3本の入力クランク軸30と、から構成されている。入力クランク軸30は偏心揺動型遊星歯車装置21の下端部を構成する円板部33にベアリング34を介して軸支され、偏心揺動 型遊星歯車装置21の上端部および外歯歯車29の円周上に等配して設けられた貫通孔内を挿通したブロック体35にべアリング41を介して軸支されている。ブロック体35と円板部33とは円周上に等配された3つのボルト46により一体的となり、支持体(キャリア)44を構成し、支柱71の上側に設けられた第2部材としての円筒状体の旋回盤73の底部73aに固定されている。底部73aと支柱71の上部71aとの間にはベアリング74が設けられ、支持体(キャリア)44の自転に伴い、旋回盤73は回転する。前述以外の構成、作用および振動特性は第3実施例と同じであり省略する。
【0035】
【実施例5】
図12は本発明の第5実施例を示す図であり、前述の第3実施例と同一構成については、同一符号を用いて説明する。
【0036】
図12において、80は減速装置であり、減速装置80は図10に示す産業ロボットの第2関節67に用いたものである。第1部材としての箱形ブラケット81は前述の第1関節66の旋回盤73の上側に一体的に固定されている。減速装置80は電動モータ1に連結された前段減速機としての平行軸型歯車装置20とこの前段減速機20に連結された後段の偏心揺動型遊星歯車装置21とから構成されている。電動モータ1のフランジ2はブラケット81にボルト4bを用いて固定され、電動モータ1の回転軸7は前段減速機20のピニオン22に固定され、ピニオン22に噛み合う3個の平歯車25は後述する3本の入力クランク軸30の延在部30aにそれぞれ固定されている。偏心揺動型遊星歯車装 置21の入力クランク軸30の前端部はベアリング41を介してブロック体35に軸支され、その後端部はベアリング34を介して円板部33に軸支されている。ブロック体35と円板部33はボルト46で一体的に固定されて支持体44を構成し、さらにボルト82によりブラケット81に固定されている。偏心揺動型遊星歯車装置21の内歯歯車28は支持体44の外周部にベアリング84を介して回動自在に支持されている。内歯歯車28は、第2部材としての第1アーム83の端部83aに一体的に固定されている。
【0037】
電動モータ1の回転は出力回転軸7を介して平行軸型歯車装置20のピニオン22に伝達され、平 行軸型歯車装置20で減速される。平行軸型歯車装置20の出力は平歯車25により偏心揺動型遊星歯車装置21の入力クランク軸30に入力される。次いで、入力クランク軸30の回転により偏心揺動させられる一対の外歯歯車29a、29b(以下、29で代表する)と、この外歯歯車29と噛み合い外歯歯車29より一つ多い歯数を有する内歯歯車28とによりさらに減速され、内歯歯車28のゆっくりした自転は第2アーム83を回動させる。前述以外の構成、作用および振動特性は第3実施例と同じであり、同じ符号をつけて説明を省略する。
【0038】
【実施例6】
図13は本発明の第6実施例を示す図であり、これは、前述の第5実施例の構成の一部を変更したものであり、第5実施例と同一の構成には同一の符号をつけて説明する。
【0039】
図13において、90は減速装置であり、減速装置90は、第5実施例と同様に、図10に示す、産業ロボットの第2関節67に用いたものである。第6実施例では、減速装置90は電動モータ1に連結された前段減速機としての平行軸型歯車装置20と平行軸型歯 車装置20に連結された後段の偏心揺動型遊星歯車装置21とから構成されている。電動モータ1の出力回転軸7は平行軸型歯車装置20の太陽歯車91に連結され、太陽歯車91に噛み合い円周上に等配された3個の遊星歯車92は、ブロック体35の前端部から前方に連結された円筒部35aの内側に設けられた内歯歯車93とも噛み合い遊星運動する。偏心揺動型遊星歯車装置21の偏心入力軸としての入力クランク軸30は電動モータの 出力回転軸7の回転軸線と同一軸線上でブロック体35の軸芯上に配置され、入力クランク軸30の延在部30aはベアリング94を介してブロック体35に軸支されている。延在部30aの前端部にはフランジ部95が設けられ、フランジ部95の周辺に設けられた孔96に平 行軸型歯車装置20の遊星歯車92の軸92aが嵌合する。入力クランク軸30の後段部は、円板部33にベアリング98を介して軸支されている。ブロック体35および円板部33はボルト82によりブラケット81に一体的に固定されている。
【0040】
電動モータ1の回転は出力回転軸7を介して太陽歯車91に伝達され、太陽歯車91の自転運動に伴い、遊星歯車92は、太陽歯車91と内歯歯車93との間を減速されて遊星運動する。遊星歯車92の遊星運動の中公転運動はフランジ部95を介して入力クランク軸30に伝達される。前述以外の構成、作用および振動特性は第5実施例と同じであり、同じ符号をつけて説明を省略する。
【0041】
なお、後段に偏心揺動型遊星歯車装置を用 いた場合においては、前段減速機の減速比は電動モータ の毎秒当たり最高回転数を駆動系の固有振動数より若干 小さな値に減じる減速比であることが好ましい。例えば駆動系の固有ねじり振動数f0が5〜9Hz(ヘルツ)の場合であって、電動モータの通常制御回転数領域での最高回転数が1000rpm、総減速比iが1/60〜1/320のときは前段最小減速比i1を約1/1.9〜約1/6、後段減速比i2を1/25〜1/60とするのが好ましい。また駆動系の固有ねじり振動数f0が5〜9ヘルツの場合であって、電動モータの通常制御回 転数領域での最高回転数2000rpm、総減速比iが1/110〜1/320のときは、前段の最小減速比i1を約1/3.7〜約1/6.7、後段減速比i2を約1/25〜約1/60とするのが好ましい。同様(f0=5〜9Hz)の場合であって電動モータの通常制御回転数領域での最高回転数が4000rpm、総減速比iが1/210〜1/640のときは、前段最小減速比i1を約1/7.4〜約1/13.3、後段減速比i2を約1/30〜約1/60とするのが好ましい。また、駆動系の固有ねじり振動数f0が10〜15Hzの場合であって、電動モータの最高回転数が1000rpm、総減速比iが1/80〜1/300のときは前段最小減速比i1を1/1.5〜1/4、後段の減速比i2を1/25〜1/60とするのが好ましい。同様(f0=10〜15Hz)の場合であって、電動モータの通常制御回転数領域での最高回転数が4000rpm、総減速比iが1/125〜1/600のときは、前段減速比i1を約1/4.5〜約1/10、後段減速比i2を約1/30〜1/100とするのが好ましい。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、特に産業ロボットにおいては重量や累積バックラッシュを小さくして制御性能を良好にすることを要求されるのに対して、本来、調和歯車装置等のような単一の遊星歯車装置により必要な減速比を満足するようにその減速装置部を構成できる産業ロボットの関節装置において、その減速装置部を偏心揺動型遊星歯車装置(後段減速機)の入力側にわざわざ平行軸型歯車装置(前段減速機)を設けて前段減速機と後段減速機とにより必要な減速比を得るようにしているので、ロボットに共振が生じるとしても、大きな共振現象の生じる時の電動モータ回転数を、所望のモータ回転数領域にシフトさせることができる。その結果、ロボットにその先端部(工具把持等)で正確な軌跡を描くことを必要とする作業を行わせる時において大きな振動の発生を防ぐことができるので、ロボットの作業性が向上すると共に、ロボットの耐久性を向上させることができる。また、電動モータ、前段減速機、後段減速機の各軸線が同一軸線上に配置され、かつ、それら軸線が第1部材と第2部材の連結部で、第1、第2部材の軸線と直角になるよう構成されているので、第1、第2、第3アームといったように連続したアーム関節装置とすることができ、ロボットの作業領域を大きくすることができる。更に、電動モータから第2部材までの間に設ける伝動部材が増える構造になると、ばね要素が増えることになり、 その結果、駆動系の固有ねじり振動数が低下すると考え られるのが通常であるが、本発明によれば、電動モー タ、前段減速機、後段減速機の各軸線が同一軸線上に配 置され、かつ、それら軸線が第1部材と第2部材の連結 部で、第1、第2部材の軸線(延在方向)と直角になる よう構成されているので、電動モータから第2部材まで の動力伝達経路を短くでき、ばね常数が大きく低下する こともない。その結果、駆動系の固有ねじり振動数が大 きく低下することもなく、上述した大きな共振の生じる 時の電動モータ回転数をシフトさせるための前段減速装 置の減速比は平行軸型歯車装置で得られる程度の大きさ でよいことになる。つまり、本発明によれば、構造が簡 単な平行軸型歯車装置で得られる減速比により、電動モ ータの通常制御回転数領域が広くても共振が生じる時の 電動モータ回転数をその領域から外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の産業ロボットの関節装置の全体概略説明図である。
【図2】実施例1の減速装置の一部断面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】実施例1および比較例の性能を説明する図である。
【図5】図4に係る実験例の全体構成図である。
【図6】第2実施例の要部断面図である。
【図7】図6のB−B矢視断面図である。
【図8】第3実施例の要部断面図である。
【図9】減速装置一般の回転ばね定数の特性図である。
【図10】本発明に係る産業ロボットの関節装置を用いた産業ロボットの全体概念図である。
【図11】図10の第1関節に用いた本発明の第4実施例の要部断面図である。
【図12】図10の第2関節に用いた本発明の第5実施例の要部断面図である。
【図13】図10の第2関節に用いた本発明の第6実施例の要部断面図である。
【符号の説明】
1 電動モータ
3、40、60、70、80、90 減速装置
5、71、81 第1アーム(第1部材)
12、73、83 第2アーム(第2部材)
20 前段減速機
21 後段減速機
28 内歯歯車
29 外歯歯車
30 入力クランク軸(カム軸)
Claims (11)
- ロボットの第1部材と、第1部材に回動自在に支持されたロボットの第2部材と、第1部材に一体的に取り付けられた電動モータの回転を減速して第2部材に伝達する歯車減速装置と、を備えた産業ロボットの関節装置において、前記歯車減速装置が、前記電動モータの回転数を減速する前段減速機と、前段減速機の出力の回転数をさらに減速する後段の遊星歯車減速機と、から構成され、前記電動モータが前記電動モータ、歯車減速装置及び第2部材を含んで構成される駆動系のねじり発振周波数に対応する回転数を通常制御域内に有し、前記前段減速機が、前記電動モータの通常制御域における毎秒最高回転数を前記ねじり発振周波数以下になるように減速する、減速比を有し、前記遊星歯車減速機が、前記前段減速機の出力が入力される偏心入力軸、偏心入力軸の回転により偏心揺動させられる外歯歯車、外歯歯車と噛み合い外歯歯車の歯数より一つ多い歯数を有する内歯歯車および外歯歯車に係合するキャリアを有することを特徴とする産業ロボットの関節装置。
- 前記偏心入力軸が前記キャリアの円周上に複数個等配支持され、前記前段減速機が前記電動モータの出力軸に連結された入力歯車および各偏心入力軸に連結されると共に入力歯車に噛み合う出力歯車を有する平行軸減速機であることを特徴とする請求項1記載の産業ロボットの関節装置。
- 前記電動モータ、遊星歯車減速機および前段減速機が軸方向に順次配設され、電動モータの出力軸を前記外歯歯車およびキャリアの中央にそれぞれ穿った孔に貫通させ前段減速機の入力軸に連結したことを特徴とする請求項2記載の産業ロボットの関節装置。
- 前記電動モータ、前段減速機および遊星歯車減速機が軸方向に順次配設され、前段減速機の入力歯車と出力歯車の間でこれらに噛み合うアイドルギヤを有することを特徴とする請求項2記載の産業ロボットの関節装置。
- 前記偏心入力軸が前記キャリアの軸芯上で支持され、前記前段減速機が前記電動モータの出力軸に連結された太陽歯車、太陽歯車に噛み合う遊星歯車および遊星歯車の公転を取り出して前記偏心入力軸に出力する出力アームを有することを特徴とする請求項1記載の産業ロボットの関節装置。
- 前記内歯歯車を前記第1部材に連結し、前記キャリアを前記第2部材に連結したことを特徴とする請求項1記載の産業ロボットの関節装置。
- 前記内歯歯車を前記第2部材に連結し、前記キャリアを前記第1部材に連結したことを特徴とする請求項1記載の産業ロボットの関節装置。
- 前記前段減速機の減速比が前記駆動系の固有ねじり振動数と前記電動モータの前記最高回転数との比より大きいことを特徴とする請求項1記載の産業ロボットの関節装置。
- 前記駆動系の固有ねじり振動数が5〜9ヘルツ、前記電動モータの通常制御域が0〜1000rpm、前記前段減速機の最小減速比が1/1.9〜1/6、前記遊星歯車減速機の減速比が1/25〜1/60および総減速比が1/60〜1/320であることを特徴とする請求項1記載の産業ロボットの関節装置。
- 前記駆動系の固有ねじり振動数が5〜9ヘルツ、前記電動モータの通常制御域が0〜2000rpm、前記前段減速機の最小減速比が1/3.7〜1/6.7、前記遊星歯車減速機の減速比が1/25〜1/60および総減速比が1/110〜1/320であることを特徴とする請求項1記載の産業ロボットの関節装置。
- 前記駆動系の固有ねじり振動数が5〜9ヘルツ、前記電動モータの通常制御域が0〜4000rpm、前記前段減速機の最小減速比が1/7.4〜1/13.3、前記遊星歯車減速機の減速比が1/30〜1/60および総減速比が1/210〜1/640であることを特徴とする請求項1記載の産業ロボットの関節装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP3976497A JP2742912B2 (ja) | 1997-02-10 | 1997-02-10 | 産業ロボットの関節装置 |
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JP9076599A Division JPH1029189A (ja) | 1997-03-12 | 1997-03-12 | 産業ロボットの関節装置 |
Publications (3)
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JPH10586A JPH10586A (ja) | 1998-01-06 |
JP2742912B2 JP2742912B2 (ja) | 1998-04-22 |
JPH10586A6 true JPH10586A6 (ja) | 2004-10-21 |
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Families Citing this family (2)
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1997
- 1997-02-10 JP JP3976497A patent/JP2742912B2/ja not_active Expired - Lifetime
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