JPH105812A - 成形加工用ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
成形加工用ステンレス鋼板およびその製造方法Info
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- JPH105812A JPH105812A JP17437596A JP17437596A JPH105812A JP H105812 A JPH105812 A JP H105812A JP 17437596 A JP17437596 A JP 17437596A JP 17437596 A JP17437596 A JP 17437596A JP H105812 A JPH105812 A JP H105812A
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Abstract
質圧延仕上げステンレス鋼板を提供する。 【解決手段】 調質圧延後における鋼板表面の圧延方向
の圧縮残留応力が3kgf/mm2以下であり、焼鈍状態で降
伏伸びの現象が現れるフェライト系鋼種においてはさら
に調質圧延後の降伏伸びが1%以下である、成形加工用
ステンレス鋼板。上記鋼板は、ロール径400mm以上の
大径ワークロールを用いて、圧下力R(kgf/mm)と張力
T(kgf/mm2)が、R≦500、かつR×T≧5000
の関係を満たす条件で、伸び率0.1〜2.0%の調質
圧延を行うことによって製造される。
Description
製造される成形加工用ステンレス鋼板、およびその製造
方法に関するものである。
BA仕上げやNo.2B仕上げステンレス冷延鋼帯は、そ
の表面光沢から、衛生的な印象が重視される厨房製品
や、金属光沢が求められる家電製品,建材などに広く使
用されている。通常、BA仕上げ鋼板は光輝焼鈍後に、
また2B仕上げ鋼板は焼鈍・酸洗後に、主に表面光沢向
上を目的としてスキンパス圧延あるいはテンパーローリ
ングとも呼ばれる調質圧延が施される。そして、これら
の調質圧延材は、前記用途においては多くの場合、プレ
スなどの成形加工に供される。
匠性向上が図られ、従来は不問であった成形品平坦部で
のゆがみ、すなわち「ペコ」と呼ばれる面ひずみが問題
化するようになってきた。図1にペコの一例を模式的に
示す。ペコは成形加工によって発生する面ひずみであ
る。すなわち、もともと平坦度が高い鋼板素材を使用し
て成形加工した際、プレス品の設計上平坦のままの形状
が維持されるべき部分に、それが維持されずに生じる形
状欠陥である。例えば長径がおよそ150mm,短径がお
よそ100mmで高さが0.5mm程度であるような凸状も
しくは凹状の形状欠陥であり、通常、指で押すと「ぺこ
ん」と音を発生しながら反転し、指を放すともとの形状
に戻る弾性変形範囲内の形状欠陥である。このような面
ひずみは、成形加工度が小さく、平坦面の面積が大きい
プレス品で特に問題となり、寸法精度上において不具合
を生ずるばかりでなく、高光沢を持つ2B仕上げ鋼板や
鏡面状のBA仕上げ鋼板では特に目立ち、外観上問題と
される。成形加工によってペコが発生しない材料は、成
形品の離型後において所期の形状がそのまま保たれる
(すなわちスプリングバックやねじれなどの寸法精度不
良が生じない)という意味で、「形状凍結性」に優れた
材料であると言うことができる。
例えば、調質圧延を施さない素材(焼鈍材)を使用する
か、あるいは調質圧延率を極力抑えた素材を使用するの
が有効であることが知られている。しかし、そのような
素材においては、十分な表面光沢を得ることができな
い。つまり、調質圧延率を低めればペコの発生は抑制で
きるが、逆に、十分な表面光沢を得ることができなくな
る。
の際に発生してしばしば問題となる形状欠陥として「ス
トレッチャーストレイン」と呼ばれる格子模様状の形状
欠陥がある。ストレッチャーストレインは、一般に常温
で「降伏伸び」の現象を示すような性質の素材に対して
数%以下の加工ひずみを与えたとき、この「降伏伸び」
に起因して発生するものである。降伏伸びの現象は、鋼
の結晶構造および固溶元素であるC,Nの存在と密接な
関係がある。一般に、常温で面心立方構造であるオース
テナイト系ステンレス鋼では降伏伸びの現象は見られな
い。これに対し、常温で体心立方構造であるフェライト
系ステンレス鋼では焼鈍状態で降伏伸びを示す場合と示
さない場合がある。例えば、JISG4307に規定さ
れるSUS430LXのように、C,N含有量を低減し
且つTi,Nb等の炭化物または窒化物形成元素を添加
してC,Nを固定することによって固溶C,N量を低減
した鋼種では、焼鈍状態であっても降伏伸びを示さな
い。一方、フェライト系の代表的鋼種であるSUS43
0をはじめ、固溶C,N量の低減を特に図っていない多
くのフェライト系ステンレス鋼種では、焼鈍状態で降伏
伸びの現象を示す。
のうち、降伏伸びの現象を示す多くのフェライト系ステ
ンレス鋼種においては、ストレッチャーストレインの発
生を防止することも、成形品の品質を確保する上で重要
となる。ストレッチャーストレインは降伏伸びに起因し
て発生するのであるから、ストレッチャーストレインの
発生を防止するには素材の段階である程度の加工を施し
ておき、後の成形加工時に降伏伸びの現象が現れないよ
うにしておくことが有効である。このため、SUS43
0等のフェライト系ステンレス鋼板の製造においては、
表面光沢を得る目的のみならずストレッチャーストレイ
ンを防止する観点からも調質圧延が加えられる場合が多
い。
の高い成形加工品のニーズに対応するためには、その素
材となるステンレス鋼板は、十分な表面性状(白ボケ
がなく光沢に優れる表面状態)を有しており、焼鈍状
態で降伏伸びの現象が現れるフェライト系鋼種では成形
加工時にストレッチャーストレインによる外観上の問題
が生じない特性を具備しており、さらに、成形加工時
にペコによる寸法精度上あるいは外観上の問題が生じな
い特性を具備しているものであることが要求される。こ
のうち、上記およびの特性を満足させるためには、
調質圧延を積極的に利用することが不可欠である。しか
しながら、調質圧延を積極的に行うことは同時に、の
特性を阻害する要因ともなる。したがって、単に調質圧
延率を調整するだけではおよびの特性を同時に満
足する成形加工用素材を得ることはできなかった。
条件で調質圧延を行うことによって、成形加工時にペコ
が発生しないような応力状態を鋼板素材中に作り出し、
前記およびの特性を同時に兼ね備えた成形加工用
のステンレス鋼板を再現性良く安定的に提供することを
目的とする。
に、請求項1に記載の発明は、調質圧延後における鋼板
表層部の圧延方向の圧縮残留応力を3kgf/mm2以下とし
た点に特徴を有する、成形加工用ステンレス鋼板であ
る。この発明の対象鋼種は、もともと焼鈍状態で「降伏
伸び」の現象を示さない鋼種である。具体的には、オー
ステナイト系鋼種、および、前述のSUS430LXの
ように固溶C,N量を低減した一部のフェライト系鋼種
などである。また請求項2に記載の発明は、調質圧延後
における鋼板表層部の圧延方向の圧縮残留応力を3kgf/
mm2以下とすることに加え、特に降伏伸びを1%以下に
抑えた点に特徴を有する、成形加工用フェライト系ステ
ンレス鋼板である。この発明の対象鋼種は、もともと焼
鈍状態で「降伏伸び」の現象を呈する性質のフェライト
系鋼種である。具体的には、JISG4307に規定さ
れるSUS430や、その他多くのフェライト系鋼種が
これに該当する。これらの成形加工用ステンレス鋼板
は、請求項3に記載の製造方法によって得ることができ
る。すなわち、ロール径400mm以上の大径ワークロー
ルを用いて、圧下力R(kgf/mm)と張力T(kgf/mm2)
が、R≦500、かつR×T≧5000の関係を満たす
条件で、伸び率0.1〜2.0%の調質圧延を行うこと
によって得られる。
他、長尺物の加工等に利用されるようなロール成形も含
む。また、本発明において「張力」とはユニットテンシ
ョン(kgf/mm2)を意味する。「圧下力R」は、ロール
圧下荷重を鋼板幅で除した値と定義し、その単位を(kg
f/mm)で表す。
で発生する形状欠陥である「ペコ」の発生状況と、成形
加工前における素材鋼板中の応力状態との相関を鋭意調
査した。その結果、素材鋼板表層部における圧延方向の
圧縮残留応力の存在がペコの発生に密接に関連している
ことがわかった。そして、この圧縮残留応力が3.0kg
f/mm2以下であるときに、成形加工においてペコ発生の
問題が起こらないことを突き止めた。本発明者らの調査
によると、焼鈍材では表層部の圧縮残留応力の発生はみ
られずほぼ0であったが、調質圧延を加えると発生する
ことを確認した。ところが、ある特定の条件で調質圧延
を行った場合に限っては、この圧縮残留応力の発生は非
常に抑えられ、しかもその場合においても十分な表面光
沢がえられ、なおかつフェライト系ステンレス鋼におけ
る降伏伸びも十分に低減できることが明らかとなった。
以下、実験結果に基づき、本発明を特定するための事項
について説明する。
ラインで溶製した。A鋼およびB鋼は、もともと焼鈍状
態で降伏伸びの現象が現れないSUS430LXに属す
るフェライト系ステンレス鋼である。C鋼はSUS30
4に属するオーステナイト系ステンレス鋼である。D鋼
およびE鋼は、焼鈍状態で降伏伸びの現象が現れるSU
S430に属する一般的なフェライト系ステンレス鋼で
ある。
1000mmの中間焼鈍鋼帯を仕上げ冷間圧延により板厚
0.5mmとした後、フェライト系ステンレス鋼(鋼A,
B,D,E)は材料温度950℃,均熱時間30秒の条
件で、またオーステナイト系ステンレス鋼(鋼C)は材
料温度1050℃,均熱時間30秒の条件で、それぞれ
連続仕上げ光輝焼鈍を実施した。このようにして得られ
た光輝焼鈍鋼帯を分割し、表2に示す種々の圧下力・張
力条件によりロール径600mmのワークロールを用いて
調質圧延し、No.1〜25の鋼板を得た。調質圧延の伸
び率は、いずれの場合も0.1〜2.0%の範囲とし
た。なお圧下力,張力ともに0の鋼板No.16およびNo.
25は、調質圧延をしていない、すなわち焼鈍のままの
材料である。種々の条件で調質圧延を施した鋼板No.1
〜No.25について、表層部の残留応力,表面性状(白
ぼけ,光沢),および降伏伸びを調査した。
示す3箇所の位置から長さ30mm,幅30mmの寸法の試
料を切り出し、その表面および裏面についてX線残留応
力測定法により測定した。測定には、PSPC微少部X
線応力測定装置(理学電機(株)製,型式 CN2905G3)
を用いた。測定条件の詳細は表2に示す。3箇所から採
取した試料の表面・裏面について測定した計6点の測定
値を平均した値をその鋼板の残留応力値として採用し
た。その結果を表3中に記載した。なお、ここで用いた
X線残留応力測定法は非破壊で素材の残留応力を測定す
る方法である。すなわち、鋼板表面に種々の入射方向か
らX線を照射して表層部の結晶格子のひずみを3次元的
に把握し、ある方向における格子のひずみ量にその材料
の弾性係数を乗じることによって、その方向の残留応力
を求める方法であり、具体的には、「X線応力測定法標
準」(社団法人日本材料学会X線材料強度部門委員会
編,1982年、に記載されている方法(日本材料学会X線
材料強度部会によって標準化された方法)を用いた。こ
の方法によって測定される表層部の深さは概ね10μm
以内である。
ついて、目視判定により実施した。これは鋼板表面上で
の蛍光灯の反射像を見たとき、その解像度を「白ボ
ケ」、また反射像の光沢輝度を「光沢」として、A,
B,C,Dの4段階評価により判定する官能検査法によ
って行った。評価はAが最も良好で、次いでB、C、D
の順とし、「白ボケ」および「光沢」がいずれもB以上
であるものを「表面性状が合格」と判定した。その結果
を表3中に記載した。
したJISZ2201に規定されるJIS13B号試験
片について引張試験を行うことによって求めた。その結
果を表3中に記載した。
のままの材料である鋼板No.16および25では、圧縮
残留応力はほとんど生じていない反面、降伏伸びが1%
を大きく超え、また、表面性状も白ボケ,光沢ともDラ
ンクと劣る。これに対し、調質圧延した鋼板No.1〜1
5,17〜24ではいずれも圧縮残留応力が大きくなる
傾向を示す反面、表面性状および降伏伸びは改善される
傾向を示す。このことから、「表層部の圧縮残留応力を
低減すること」と、「良好な表面性状(光沢など)を得
ること、および焼鈍状態で降伏伸びの現象が現れる鋼種
の成形加工時に生じる降伏伸びを低減させること」と
は、調質圧延を行うことに関して、互いに相反する挙動
を示すものであると見ることができる。しかし、本発明
者らは、この一見相反すると見られる挙動の中に、両者
をともに満足する部分があることを見出したのである。
4,5,10〜14,17〜21,24は、いずれも鋼
板表層の圧縮残留応力が3kgf/mm2以下の低い値を示す
ものである。これらは、張力Tの値にかかわらず圧下力
Rが500kgf/mm以下の条件で調質圧延を行ったもので
ある。つまり、鋼板表層に生じる圧縮残留応力は張力T
には依存しないことが明らかであり、圧下力Rを500
kgf/mm以下にすることだけで3kgf/mm2以下の低い圧縮
残留応力値が得られるのである。
種である鋼D,Eにおける鋼板No.7〜12,17,1
9,21〜23は、圧下力Rと張力Tの積算値:R×T
が5000以上となる条件で調質圧延を施したものであ
るが、いずれも降伏伸びが1.0%以下に低減され、か
つ表面性状も白ボケ,光沢とも評価B以上で合格とな
る。同様に鋼A,BおよびCにおける鋼板No.1〜3,
5,6もR×Tが5000以上となる条件で調質圧延を
施したものであるが、表面性状はすべて合格となる。こ
のように、表面性状を良好にし、さらに焼鈍状態で降伏
伸びが現れる鋼種の調質圧延後の降伏伸びを低減するた
めには、R×Tを5000以上とすることが有効であ
る。
(kgf/mm)と張力T(kgf/mm2)が、R≦500、かつ
R×T≧5000の関係を満たす条件で調質圧延を行う
ことによって、圧縮残留応力の低減、並びに、表面光沢
の維持および焼鈍状態で降伏伸びの現象が現れるフェラ
イト系鋼種における成形加工時の降伏伸びの低減を、同
時に達成することができる。特に本発明では、張力を積
極的に高めることによって、より一層圧縮残留応力の低
減に有利な条件を選択することができるという特徴を有
する。すなわち、張力を高めても圧縮残留応力の低減を
阻害しないので張力を積極的に高めることができ、R×
T≧5000の関係に従ってより低い圧下力を採用する
ことが許容され、その結果一層、圧縮残留応力を低減す
ることが可能となるのである。表3に示した鋼板のう
ち、R≦500、かつR×T≧5000の関係を満たす
ものは、鋼板No.1,3,5,10〜12,17,1
9,21である。これらの鋼板が、成形加工においてペ
コが発生せず、かつストレッチャーストレインも発生し
ないものであることは、後述の実施例において実証す
る。
5000未満の鋼板No.4,13,14,18,20,
24は、圧縮残留応力は3kgf/mm2以下に低減されてい
るが、表面性状が不良であるか、または降伏伸びが1.
0%よりも大きい値を示し低減されていない。圧下力R
が500kgf/mmよりも大きく、R×Tが5000未満の
鋼板No.15は、圧縮残留応力が3kgf/mm2よりも大き
く、さらに表面性状が不良で降伏伸びが1.0%よりも
大きい値を示す。
16および25を除いた、鋼板No.1〜15,17〜2
4についての圧下力Rと張力Tとの関係(表3に記載し
たデータ)をプロットした。圧縮残留応力が3kgf/mm2
以下に低減され、良好な表面性状を有し、かつ降伏伸び
が1%以下のもの(鋼板No.1,3,5,10〜12,
17,19,21)は、R≦500、かつR×T≧50
00である領域内に存在する。
T≧5000を満足する条件で調質圧延を行ったとき
に、鋼板の表層の圧縮圧縮残留応力が低減され、かつ表
面光沢が向上し、さらに焼鈍状態で降伏伸びが現れる鋼
種において調質圧延後の降伏伸びが低減される理由とし
て以下のことが考えられる。
面光沢の向上と、焼鈍状態で降伏伸びの現象が現れる鋼
種では降伏伸びの低減である。調質圧延のような低圧下
の圧延では、鋼板の表層部は圧延ロールにより拘束を受
けるため、内部に比べ大きな塑性変形を受ける。従来の
調質圧延法では、この表層部と内部の変形量の差を積極
的に利用し、表層部の塑性変形をより大きくすることで
充分な表面光沢の向上効果を得ている。また、焼鈍状態
で降伏伸びの現象が現れる鋼種では、降伏伸び低減のた
めにはひずみを与える必要がある。すなわち調質圧延に
より予めひずみを鋼板に加えることで、圧延後に加工ひ
ずみが加えられたときには、鋼板は降伏伸びの現象を示
さず、プレス加工等によるストレッチャーストレインが
防止されるのである。
もたらすはずの前記「表層部と内部の変形量の差」は、
表層部に圧縮状態の残留応力をつくりだす要因ともな
る。この圧縮状態の残留応力の存在こそが、既に述べた
ようにプレス等の成形加工に際してペコを発生させる
(すなわち形状凍結性を低下させる)大きな原因となっ
ているものと考えられる。
から享受している「表面光沢向上効果」と「降伏伸び低
減効果」を得るためには、必ずしも鋼板表層部の塑性変
形量を内部と比べて大きくする必要はないとの考えから
本発明に至ったものである。
力を付与しながらロールによる圧下を加える。張力は鋼
板の表層部,内部ともに均等に加わる。すなわちロール
による圧下力に比べると、張力は表層部と内部との塑性
変形量の差を生じさせにくい。したがって、ロール圧下
力の低減により表層部の塑性変形量を低減するととも
に、張力を大きくすることで表層部と内部に均一な塑性
変形を加え、結果的に表層部に生成する圧縮圧縮残留応
力を低減することができる。そして、張力を大きくする
ことは、圧下力低減により減少した鋼板に加わるひずみ
量を補うことになり、表層の圧縮残留応力を増すことな
く表面光沢の向上・降伏伸びの低減に寄与するとができ
るものと考えられる。
性変形の到達深さにより残留応力分布が決まる。さらに
その塑性変形の到達深さは圧延条件であるロール直径お
よび圧下率により決定付けられる。本発明は、ロール径
400mm以上の大径ワークロールを使用する通常の調質
圧延ラインにおいて実施されることを前提として、圧下
力・張力の適正範囲を規定した。
により決まるものであり、必ずしも規定する必要はない
が、本発明範囲における圧下力・張力条件で得られる鋼
板の伸び率の実績に基づき、十分な表面性状を再現性良
く安定して得るという観点から、伸び率の下限値は0.
1%とした。また、伸び率が高くなりすぎると鋼板が硬
質化し、その耐力も上昇するためプレス等の加工による
形状凍結性に悪影響を及ぼすようになる。これも実績に
基づき、良好な形状凍結性を再現性良く安定して得ると
いう観点から、伸び率の上限値は2.0%とした。
は、前述のとおり圧下力R(kgf/mm)との関係におい
て、R×T≧5000の関係を満たす範囲であれば特に
限定する必要はないが、あまり高すぎると鋼板形状不良
の原因となるとともに通板中の板切れの原因となり、ま
た、通常使用される調質圧延機の能力を考慮して経済的
な範囲を検討すると、30kgf/mm2以下の範囲とするこ
とが望ましい。以下、実施例により、本発明条件により
調質圧延した鋼板のプレス成形結果を示す。
向に850mm、圧延方向に直角な方向に350mmの長方
形のブランク材を作製した。これらを同一条件でプレス
に供し、フランジ部を除いた後、図4に示す形状の成形
品を得た。これらの成形品について、表面性状,ペコ発
生状況,さらに鋼種D,E(SUS430系)について
はストレッチャーストレインの発生状況を調査した。こ
れらの結果は後述の表4にまとめて示す。
ついて前述の目視による官能検査法により白ボケ・光沢
を判定し、合格の場合には○、不合格の場合には×とし
た。
状を図4中に点線で示した位置について測定してペコ生
成量を定量的に求めるとともに、官能検査として触手判
定による官能検査を行って評価した。ペコ生成量を定量
化するための測定法方は、成形品を定盤上に置き、定盤
との距離を一定に保ちながら、この上を走査するレーザ
ー変位計により、成形品とは非接触の状態で表面高さの
相対的な変位量を測定する方法を用いた。その測定結果
例を図5に示す。ここで形状曲線の延べ長さをL、測定
のための走査距離をL0として、ペコ生成量Peを次式に
て定義した。 Pe=(L−L0)/L0 また、官能検査の方法は、面ひずみ発生箇所の凸部を手
で押したときに、凸量が大きく、反転する場合をペコが
生成していると判定し不合格:×、反転しない場合をペ
コが生成していないと判定し合格:○とした。さらにそ
の中間と判定される場合を△とした。
eと触手による官能検査結果の関係を図6に示す。Pe値
と官能検査値とは、ほぼ直線相関を有し、官能検査で○
判定となるのはPe値が25×10-6以下のときに対応
する。したがって、前記のように定義したPe値はペコ
発生の合否を判定する定量指標として使用することがで
きるものである。
価は、図4中に網目斜線で示した部分におけるストレッ
チャーストレイン生成量を目視により判定する方法で行
った。その生成量が大きく外観上問題となる場合を×、
発生していないか若しくは発生量が少なく外観上問題と
ならない場合を○とした。
スして得られた成形品a〜yについて、上記の調査結果
を示している。圧下力Rが500kgf/mm以下で張力Tと
の積算値R×Tが5000以上である条件で調質圧延し
た本発明の成形加工用鋼板を使用した成形品a,c,
e,j〜l,q,s,uは、ペコ生成量Peが25×1
0-6以下であった。またa,c,eにおいては表面性状
は合格、さらにj〜l,q,s,uは表面性状が合格で
且つストレチャーストレインが生成していない。すなわ
ち本発明の成形加工用鋼板を用いた成形品は、表面性状
に優れ、かつペコやストレッチャーストレインなどによ
る外観上の問題が生じない良好なものであった。
が、R×Tが5000未満の条件で調質圧延した鋼板を
使用した成形品d,m,n,p,r,t,x,yは、ペ
コ生成量は抑制されているものの、dにおいては表面性
状が不合格であり、これに加えてm,n,p,r,t,
x,yではストレッチャーストレインが発生して外観上
不合格であった。
×Tが5000以上の条件で調質圧延した鋼板を使用し
た成形品では、bは表面性状が合格、これに加えf,q
〜i,v,wはストレッチャーストレインも防止されて
いるものの、いずれもペコ生成量Peが25×10-6を
超えており、ペコ発生により外観上不合格となった。
×Tが5000未満の条件で調質圧延した鋼板を使用し
た成形品oは、ペコが発生し、さらにストレッチャース
トレインも発生したため、外観上不合格となった。
生じないようなステンレス鋼板(加工用素材)を再現性
良く安定的に製造するための調質圧延技術を開示した。
この技術により、従来解決できなかった課題、すなわ
ち、「BA仕上げや2B仕上の美麗な表面肌を有する材
料を使用した成形加工品においてペコの発生を防止す
る」という課題が実現できた。また、従来、成形加工時
にストレッチャーストレインが発生して外観上の問題を
生じやすかった鋼種においては、その問題をも同時に解
消することができた。よって、本発明は、ステンレス鋼
を用いた意匠性の高い成形加工品の普及に寄与するもの
である。
た図。
面図。
すグラフ。
ストレッチャーストレイン調査位置を示す図。
さL,形状測定走査距離L0の定義付けを示す図。
触手による官能検査結果の関係を表すグラフ。
Claims (3)
- 【請求項1】 調質圧延後における鋼板表層部の圧延方
向の圧縮残留応力が3kgf/mm2以下である、成形加工用
ステンレス鋼板。 - 【請求項2】 調質圧延後における鋼板表層部の圧延方
向の圧縮残留応力が3kgf/mm2以下、かつ降伏伸びが1
%以下である、成形加工用フェライト系ステンレス鋼
板。 - 【請求項3】 ロール径400mm以上の大径ワークロー
ルを用いて、圧下力R(kgf/mm)と張力T(kgf/mm2)
が、R≦500、かつR×T≧5000の関係を満たす
条件で、伸び率0.1〜2.0%の調質圧延を行う、請
求項1に記載のステンレス鋼板または請求項2に記載の
フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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