JPH1058102A - 中炭素鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

中炭素鋼の連続鋳造方法

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JPH1058102A
JPH1058102A JP21873296A JP21873296A JPH1058102A JP H1058102 A JPH1058102 A JP H1058102A JP 21873296 A JP21873296 A JP 21873296A JP 21873296 A JP21873296 A JP 21873296A JP H1058102 A JPH1058102 A JP H1058102A
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Akio Uehara
原 彰 夫 上
Hideaki Sakurai
井 秀 明 櫻
Kiyoshi Sawano
野 清 志 澤
Hisao Esaka
阪 久 雄 江
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は中炭素鋼の連続鋳造方法において、
鋳片表面に縦割れ等が発生しない極めて有利な連続鋳造
方法を提供する。 【解決手段】 炭素含有量が0.07〜0.16%の包晶反応を
経て凝固する中炭素鋼を連続鋳造するに当たり、モール
ドパウダーとして、パウダー中の有効CaF2の相対的
な量比率RCaF2を 0.3 以上とした中炭素鋼の連続鋳
造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、中炭素鋼の連続
鋳造方法に関し、特に、0.07〜0.16 wt%(重量%)の
範囲の炭素を含む一般に中炭素鋼と呼ばれる鋼の、連続
鋳造において不可避であった包晶反応凝固を原因とする
不均一凝固を緩和し、縦割れの軽減やバルジング起因の
湯面変動の抑制を図ることにより操業の安定と鋳片品質
の改善を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】炭素含有量が0.07〜0.16wt%の、いわ
ゆる中炭素鋼を対象とする連続鋳造では、連続鋳造時に
鋳片表面に縦割れが発生しやすく、完全無手入れ化が困
難であるとともに、高速鋳造ではバルジング起因の湯面
変動が発生しやすく、これらの問題解決が急務であっ
た。
【0003】中炭素鋼の連続鋳造において問題となる縦
割れ発生機構については、従来より種々の研究がなされ
ている。中炭素鋼において、このような割れが発生しや
すいのは、炭素の含有量が0.07〜0.16wt%の包晶変態
域にあるため、鋼の凝固過程における変態応力の付加に
より、凝固シェルの成長の遅い部分と速い部分に大きな
差が生じること、すなわち、凝固シェルの不均一度が大
きくなることが原因であることが明らかになっている。
さらに、この中炭素鋼の連続鋳造においては、ロール間
バルジングに起因する湯面変動も発生しやすく、このバ
ルジング起因の湯面変動が発生すると、ノロかみなどの
品質問題を誘発するとともに、甚だしい場合には、ブレ
ークアウトなどの操業トラブルを誘発する。このバルジ
ング起因の湯面変動も凝固シェルの不均一凝固に大きく
影響されることを、本発明者は数々の実操業と鋳片の観
察結果より知得した。
【0004】つまり、中炭素鋼の連続鋳造において、凝
固シェルの不均一を抑制することは、縦割れなどの鋳片
品質欠陥を防止し、鋳片の無手入れ化を促進することに
よる歩留り向上のコスト的な効果のみならず、バルジン
グ起因の湯面変動も抑えられ、操業安定化と生産性確保
の観点からも重要である。この中炭素鋼の凝固シェルの
不均一度は、鋳型内初期の抜熱量との間に相関があっ
て、緩冷却化することによって緩和できることは、既に
公知のことになっている。
【0005】この点に関する先行技術としては、連続鋳
造用鋳型として鋳型内の上部表面に適正な複数の縦溝を
形成したものを用い、鋳型の上部のみを緩冷却すること
により、凝固シェルを均一に冷却して表面割れを回避し
ながら連続鋳造を行う方法が、特開昭61−09275
6号公報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この方法で
は、鋳型に特別な加工を施す必要があるため、鋳型製作
の費用が高価になるとともに、中炭素鋼を鋳造するため
の専用の鋳型を用いる必要が有り、鋳型交換などのダウ
ンタイムを考慮した場合に製造コストの面で不利にな
り、連続鋳造機の生産性も低下する。
【0007】また、鋳型上部での緩冷却を得る別の手段
として、高塩基度かつ高凝固温度のモールドパウダーを
用いる技術(CAMP-ISIJ,5(1992),p283 参照)や、パ
ウダーの溶融状態での輻射熱の吸収係数を限定し、輻射
熱伝達を抑制する技術(特開平7−185755号公
報)などがある。
【0008】しかし、高塩基度かつ高凝固温度のモ−ル
ドパウダーでは、鋳型−鋳片間に介在するパウダー層の
液相部分の厚みを十分に確保することができないため、
潤滑不足となり、ブレークアウトが発生しやすく、操業
上問題である。また、溶融層の吸収係数を限定する方法
では、パウダーの流入量変化による鋳型幅方向や鋳造方
向での抜熱の均一化が確保できず、縦割れ防止やバルジ
ング性湯面変動の抑制効果は享受できない。
【0009】この発明の目的は、中炭素鋼の連続鋳造に
あたって、鋳型と凝固シェルとの間での抜熱状態に起因
した凝固シェルの不均一成長を抑制し、縦割れなどの表
面割れを回避するとともに、バルジング性湯面変動を抑
制して、操業の安定化も確保し、鋳片を効率よく製造し
ようとするところにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、包晶変態
域にある中炭素鋼の連続鋳造における凝固シェル不均一
に起因する特有の問題点、すなわち縦割れなどの鋳片表
面割れ防止とバルジング起因の湯面変動防止を図ること
について、種々の実験と調査検討を重ねた結果、凝固シ
ェルと鋳型との間に介在させるモールドパウダーの層の
内、固相部分を結晶質にすることが、鋳型上部を緩冷却
にするためには重要なことであることを知得した。つま
り、本発明は急速冷却条件でもパウダーが結晶質として
凝固する条件を特定し、この条件を満足するパウダーを
用いることにより、中炭素鋼の連続鋳造でも、安定して
操業するとともに、表面割れの無い鋳片を無手入れで製
造することを目的として発明したものである。
【0011】すなわち、この発明は、炭素含有量が0.07
〜0.16wt%の範囲になり、包晶反応を経て凝固する中
炭素鋼を連続鋳造するに当たり、連続鋳造用のモールド
パウダーとして、パウダー中の有効CaF2の相対的な
量比率RCaF2が、次の条件を満足するものを用いる
ことを特徴とする中炭素鋼の連続鋳造方法である: RCaF2=Eff.CaF2/(Eff.CaF2+Eff.CaO+Eff.SiO2) ≧0.3 Eff.CaF2= W〔F〕×78/38 Eff.CaO = W〔CaO〕−W〔F〕×56/38 Eff.SiO2= W〔SiO2〕−W〔Na2O〕×120/62 −W〔Li2O〕×120/30−W〔K2O〕×120/94 ここで、W〔i〕はパウダー中でのi成分の重量%とす
る。
【0012】
【発明の実施の形態】連続鋳造用鋳型内の上部、いわゆ
るメニスカス近傍域での凝固シェルが形成されつつある
状況に基づいて以下に説明する。鋳型内における凝固シ
ェルの抜熱は、すべて凝固シェルと鋳型の間のモールド
パウダーを介して行われている。このモールドパウダー
の鋳型に接した部分では固相の層を形成し、凝固シェル
に接した部分では、パウダーの凝固温度を越えているの
で液相の層を形成している。中炭素鋼の凝固シェル厚み
の不均一を緩和するために、前記メニスカス部における
鋳型抜熱を低減するには、結晶質のパウダーを適用する
ことが効果的である。パウダーの結晶化を確保するため
には、パウダーの組成や特性を種々組みあわせて、製作
される。たとえば、塩基度(C/S)を高めたり、凝固
温度を高めたりする方法がよく行われている。しかし、
実際に適正パウダーを考案するには、多くの組みあわせ
の成分のパウダーを試作し、実験室にて上記の特性(凝
固温度など)を一つ一つ測定し、実鋳造に適合するかを
判断するために、多くの労力と時間を要するとともに、
コスト的にも甚だ不利であった。さらに、この実験室で
の調査した特性のみでは、必ずしもパウダーの結晶化を
評価判断できず、実際の鋳造に適用した結果、判明する
ものであり、必ずしも鋳片表面割れ防止やバルジング性
湯面変動防止を成し得ず、さらにはパウダー開発にあた
っては、時には、ブレークアウトなどの操業トラブルを
誘発していた。
【0013】パウダーの結晶化を事前に評価する方法と
しては、一定の降温速度における示差熱曲線から結晶化
による発熱反応を検出する方法が、特開平8−6675
2号公報に開示されているが、この方法では、降温速度
に限界があり、実際の鋳型表面付近でのパウダーの急速
冷却挙動を必ずしも評価できない。
【0014】そこで、本発明者は、種々のパウダーを実
際の連続鋳造機にて適用し、その時の鋳型上部に付着し
ている固体パウダーの実物を観察した。その結果、鋳型
上部でパウダーが結晶化されている場合は、その結晶質
の構造として、カスピダイン(3CaO・2SiO2
CaF2)が晶出していることに着目した。そこで、カ
スピダインの晶出状況をCaOとSiO2とCaF2の要
素成分に着目して検討した。つまり、パウダー中のF分
は、全量CaF2を形成し、残りのCa分が有効なCa
Oを形成すると考えた。さらに、SiO2はCaOやC
aF2の他に、Na2OやLi2O,K2Oなどとも反応
し、複合酸化物を形成するため、これらの複合酸化物に
含まれるSiO2の量を除外したものを有効SiO2量と
し、この有効CaF2の相対的な量比率RCaF2を、パ
ウダーの結晶化の評価指標とし、これに基づいてパウダ
ーの結晶化を推定した。
【0015】具体的には、次の式にそって、それぞれの
パラメータを計算する: RCaF2 =Eff.CaF2/(Eff.CaF2+Eff.CaO+Eff.SiO2) Eff.CaF2= W〔F〕×78/38 Eff.CaO = W〔CaO〕−W〔F〕×56/38 Eff.SiO2= W〔SiO2〕−W〔Na2O〕×120/62 −W〔Li2O〕×120/30−W〔K2O〕×120/94 ここでW〔i〕はパウダー中でのi成分の重量%であ
り、上記式中の各数値は、分子量であり、78は、Ca
2の分子量、38は、F2の分子量、56は、CaOの
分子量、62は、Na2Oの分子量、120は、2Si
2の分子量(SiO2の分子量の2倍)、30は、Li
2Oの分子量、94は、K2Oの分子量、である。
【0016】この計算したRCaF2値とパウダーの鋳
型上部での結晶化状況を調査した結果、図1の関係を見
い出した。この図から、このRCaF2値を 0.3 以上に
限定することにより、鋳型上部で結晶質の固相パウダー
を確実に得ることを知得した。
【0017】
【実施例】次に、本発明の実施例を比較例とともに挙げ
る。中炭素鋼の連続鋳造を行った場合について述べる。
表1に示す組成になるパウダーを用い、鋳造幅1100mm、
鋳造厚み245mm、鋳造速度1.8m/分の条件で鋳造実験を
実施した。
【0018】
【表1】
【0019】連鋳対象鋼種は、C:0.09〜0.11wt%,
Si:0.35wt%以下,Mn:0.30〜0.50wt%,P:
0.02wt%以下,S:0.023wt%以下,Al:0.04w
t%を含有する鋼である。この条件で鋳造試験を実施
し、その時の縦割れ発生状況とバルジングを起因とする
湯面変動の発生状況を観察しつつ、鋳造終了後に鋳型上
部に付着している固相パウダーを回収し、組識観察を実
施した。その結果も表1に示した。
【0020】表1を参照すると、パウダーNo.1〜4
は、本発明の実施適用例であり、本発明での新指標であ
るRCaF2値がそれぞれ、0.41,0.41,0.35,0.32で
あり、どの場合もRCaF2値が 0.3 以上である条件を
満足していた。また、鋳造後に回収した鋳型への付着パ
ウダーも結晶質となっていた。さらに、鋳造上もバルジ
ング起因の湯面変動も発生せず、鋳片表面での縦割れも
発生しなかった。
【0021】一方、パウダーNo.5〜8は、該RCa
2値がすべて 0.3 未満であり、本発明の条件を満足せ
ず、鋳型への付着固相パウダーもガラス質であった。特
に、パウダーNo.5は、塩基度(C/S)が 1.22 と
高いにもかかわらず、ガラス質パウダーであった。ま
た、パウダーNo.6は、パウダーNo.2に比べ高融
点パウダーであるにもかかわらず、ガラス質であった。
さらに、鋳片表面の縦割れが観察され、バルジング起因
の湯面変動も大きく、甚だしい場合には、操業続行が不
可能になり、鋳造を中断せざるを得なかったケースもあ
った。
【0022】
【発明の効果】この発明を適用すれば、中炭素鋼の連続
鋳造において発生していた鋳片表面の縦割れを解消でき
る。さらに、バルジング起因の長周期の大きな湯面変動
も解消でき、ブレークアウトの発生もほとんどなく、安
定した連続鋳造が実施できる。さらには、新たに、中炭
素鋼用パウダーを開発する場合には、パウダーの結晶化
に関して、従来の実験室での特性評価や実機連続鋳造機
での実湯試験による評価が不必要になり、パウダー開発
の迅速化、低コスト化が享受できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の新指標RCaF2値とパウダーの結
晶化の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 江 阪 久 雄 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素含有量が0.07〜0.16wt%の範囲に
    なり、包晶反応を経て凝固する中炭素鋼を連続鋳造する
    に当たり、連続鋳造用のモールドパウダーとして、パウ
    ダー中の有効CaF2の相対的な量比率RCaF2が、次
    の条件を満足するものを用いることを特徴とする中炭素
    鋼の連続鋳造方法: RCaF2 =Eff.CaF2/(Eff.CaF2+Eff.CaO+Eff.SiO2) ≧0.3 Eff.CaF2= W〔F〕×78/38, Eff.CaO = W〔CaO〕−W〔F〕×56/38, Eff.SiO2= W〔SiO2〕−W〔Na2O〕×120/62 −W〔Li2O〕×120/30−W〔K2O〕×120/94 、ここでW〔i〕はパウダー中でのi成分の重量%とす
    る。
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