JPH1053850A - 溶融めっき浴のトップドロス除去方法及び装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 トップドロスを鋼帯立上り部から自動的に除
去し、表面性状の良好な溶融めっき鋼板を製造する。 【解決手段】 溶融めっき浴２から引き上げられる鋼帯
１の表裏両面に対向した移動磁場発生コイル５で鋼帯１
を所定の搬送ラインに沿って走行させながら、鋼帯１の
立上り部近傍の湯面に、鋼帯１の幅方向中央部から幅方
向両端部に向かった電磁力を移動磁場により発生させ、
電磁力で湯面近傍の溶融めっき金属を幅方向中央部から
幅方向両端部に流動させる。湯面に浮遊するトップドロ
スは、この流れに沿って鋼帯１の立上り部から除去され
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶融めっき鋼帯の表面
性状に悪影響を及ぼすトップドロスを鋼帯引き上げ部の
めっき浴表面から除去する方法及び装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】連続溶融めっきラインでは、還元焼鈍で
表面を活性化した鋼帯を溶融めっき浴に導入し、溶融め
っき浴中に浸漬されているシンクロールを周回させて上
方に引き上げている。鋼帯に付着した溶融めっき金属は
溶融めっき浴から持ち上げられ、ワイピングにより過剰
量が搾り取られ、目標付着量の溶融めっき層が形成され
る。このとき、鋼帯が立上がる箇所の湯面に酸化物，金
属間化合物等を主体とするトップドロスがあると、上昇
する鋼帯にトップドロスが随伴され、めっき層の表面性
状を著しく悪化させる。トップドロスは、網杓を用いた
手作業で溶融めっき浴の液面から除去されていた。しか
し、めっき操業中に継続して除去作業が必要とされ、且
つ高温雰囲気での作業であることから、作業者にとって
大きな負担になっていた。また、手作業でトップドロス
を除去しているので、バラツキが避けられず、溶融めっ
き鋼帯の品質を不安定化する一因になっていた。

【０００３】そこで、トップドロスを自動的に除去する
方法が種々検討されてきた。たとえば、特開昭５４−３
３２３４号公報では、溶融めっき浴の湯面上方に複数の
リニアモータを配置し、電磁誘導作用による推進力によ
って鋼帯引上げ部近傍の湯面にあるトップドロスを流動
させ、回収箱に集めることを紹介している。特開平６−
２０７２６３号公報では、溶融めっき浴の湯面近傍又は
湯面下の浅い位置に電磁コイルを配置し、移動磁場と溶
融めっき金属に発生する渦電流で電磁力を発生させ、通
板する鋼帯の両エッジ部近傍で溶融めっき金属の流動状
態を制御している。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】リニアモータで溶融め
っき金属を流動させる方法では、多数のリニアモータが
必要とされるため、設備が大規模化し、ランニングコス
トが大きくなる。また、磁場印加による発熱で蒸発した
溶融めっき金属がリニアモータに付着し易く、付着物を
除去するためにリニアモータの面倒なメンテナンスが必
要になる。他方、移動磁場を印加する方法では、移動磁
場発生用電磁石方向への磁気吸引力が鋼帯に働く。磁気
吸引力は、鋼帯が電磁石に接近するほど大きくなる。そ
の結果、電磁石又はその周辺機器に鋼帯が接触し、表面
疵等の欠陥を発生させることになる。本発明は、このよ
うな問題を解消すべく案出されたものであり、鋼帯を正
規の走行ラインに沿って走行させながら移動磁場を印加
することにより、電磁石又はその周辺機器に鋼帯が接触
することを防止し、ドロス付着のない表面性状に優れた
溶融めっき鋼板を製造することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明のトップドロス除
去方法は、その目的を達成するため、溶融めっき浴から
引き上げられる鋼帯の表裏両面に対向した移動磁場発生
コイルで鋼帯を所定の搬送ラインに沿って走行させなが
ら、鋼帯の立上り部近傍の湯面に、鋼帯の幅方向中央部
から幅方向両端部に向かった電磁力を移動磁場により発
生させ、電磁力で湯面近傍の溶融めっき金属を幅方向中
央部から幅方向両端部に流動させることを特徴とする。
また、トップドロス除去装置は、鋼帯の板幅よりも大き
な幅をもつ扁平形状で、溶融めっき浴から引き上げられ
る鋼帯の立上り部近傍の湯面に一部浸漬され、鋼帯を挟
んで対向配置された移動磁場発生コイルと、移動磁場発
生コイルの上方位置で鋼帯の少なくとも幅方向両端部近
傍に配置された移動磁場発生コイルと、各移動磁場発生
コイルと鋼帯幅方向に関して同じ位置関係で配置され、
各移動磁場発生コイルに対応する位置センサーと、位置
センサーで検出された鋼帯の位置情報が入力され、鋼帯
の変位量に応じて電磁力を調整するように各移動磁場発
生コイルに供給する電流を演算する位置制御機構とを備
えている。溶融めっき浴から引き上げられる鋼帯を挟む
ように、一対の遮蔽板を配置することもできる。この場
合には、鋼帯の板幅よりも大きな幅をもち、溶融めっき
浴から引き上げられる鋼帯の立上り部近傍の湯面に一部
浸漬された遮蔽板を、鋼帯を挟んで対向配置し、鋼帯幅
方向に関して遮蔽板よりも外側に両側一対の移動磁場発
生コイルを配置する。

【０００６】

【実施の形態】本発明に従ったトップドロス除去装置
は、たとえば図１に示す設備構成を備えている。還元焼
鈍により表面活性化された鋼帯１は、溶融めっき浴２に
導入され、シンクロール３を周回して上方に引き上げら
れる。鋼帯１が溶融めっき浴２から立ち上がる湯面の近
傍で、一対の移動磁場発生コイル４を鋼帯１の表裏両面
に対向させている。移動磁場発生コイル４の上方には、
移動磁場発生コイル５及び位置センサー６が配置されて
いる。移動磁場発生コイル，移動磁場発生コイル及び位
置センサーは、鋼帯１の表面に直交する方向からみた図
１（ｂ）に示されているように、鋼帯１の左右双方に設
けてもよい。すなわち、移動磁場発生コイル４は、鋼帯
１の表面側左右に２個，裏面側左右に２個の合計４個配
置する。吸着防止用電磁石５も、同様に鋼帯１の表面側
左右に２個，裏面側左右に２個の合計４個配置する。位
置センサー６は、図１では鋼帯１の裏面側左右に２個設
けているが、これも表裏両面の左右に合計４個配置する
こともできる。位置センサー６には、光センサー，渦流
式センサー等が使用される。

【０００７】移動磁場発生コイル４は、図２に示すよう
に内容器７及び外容器８の二重構造をもつ扁平な立方体
形状の容器に収容されている。内容器７と外容器８との
間には、外部からの熱が移動磁場発生コイル４に伝達さ
れないように断熱材９が充填されている。また、移動磁
場発生コイル４の過熱を防止するため、冷却水供給管１
０を内容器７の内部に引き込んでいる。二重容器に収容
された移動磁場発生コイル４を、対として鋼帯１の立上
り部近傍の湯面に配置すると、図３（ａ）に示すように
溶湯流動空間１１が両移動磁場発生コイル４，４の間に
形成される。この状態で移動磁場発生コイル４，４に通
電すると、溶融めっき金属に磁場が印加され渦電流が発
生する。その結果、図３（ｂ）に実線矢印で示す方向の
電磁力が溶融めっき金属に作用する。溶融めっき金属
は、この電磁力の作用を受け、二点鎖線の矢印で示す方
向に流動する。

【０００８】立上り部近傍の湯面に浮遊しているトップ
ドロスは、鋼帯１の幅方向両端部に向かった溶融めっき
金属の流れに随伴され、溶湯流動空間１１から除去され
る。また、新鮮な溶融めっき金属が下方から溶湯流動空
間１１に供給されるため、鋼帯１が常に新鮮な溶融めっ
き金属に接触し、良好な溶融めっき層が形成される。更
に、溶湯流動空間１１で溶融めっき金属が鋼帯幅方向両
側に流動しているので、溶融めっき金属の持ち上げ量が
少なくなると共に、エッジオーバーコートも抑制され
る。移動磁場発生コイル４は、鋼帯１の立上り部近傍の
湯面からトップドロスを除去することに有効であるが、
磁気バランスが崩れると一方のコイル４に鋼帯１を吸引
する傾向がある。

【０００９】本発明では、移動磁場発生コイル４，４の
上方に吸着防止用電磁石５，５を配置することにより、
表裏両側に配置した移動磁場発生コイル４と４との中間
に鋼帯１を正しく保持している。走行している鋼帯１の
表面は、位置センサー６で検出され、位置情報として位
置制御機構１２に入力される。位置制御機構１２では、
入力された位置情報に基づいて鋼帯１の変位を計算し、
その変位を打ち消す電磁力を発生させるのに必要な電流
を演算する。演算結果は、制御信号として移動磁場発生
コイル５，５に出力される。たとえば、一方の電磁石５
に鋼帯１が近付いていると、その電磁石５に供給する電
流を少なくして磁気吸引力を弱め、或いは他方の電磁石
５に供給する電流を増やして他側の磁気吸引力を強め
る。これにより、鋼帯１は、移動磁場発生コイル５と
５，ひいては移動磁場発生コイル４と４との中間点、す
なわち正規の通板ラインに沿って走行する。

【００１０】図３では、吸着防止用電磁石５を鋼帯１の
表裏両側の合計４か所に設けている。しかし、これに拘
束されることなく、鋼帯１の表裏両側で幅方向に沿って
複数の吸着防止用電磁石５を設けても良い。この場合、
各吸着防止用電磁石５に対応して複数の位置センサー６
を鋼帯１の表裏両側で幅方向に配列する。そして、各位
置センサー６で検出された鋼帯表面の位置情報に応じて
電磁力を調整することにより、鋼帯１のＣ反りが矯正さ
れ、後続工程でのワイピング作用が鋼帯１の幅方向に均
等になり、板幅方向に関するめっき付着量のバラツキが
軽減される。移動磁場発生コイル４は、図４に示すよう
に、鋼帯１の立上り部近傍で鋼帯幅方向両側に配置する
こともできる。この場合、溶融めっき浴２から立ち上る
湯面の近傍で、鋼帯１を挟むように一対の遮蔽板１３，
１３を配置する。遮蔽板１３と１３との間が溶湯流動空
間１１となり、下方から上昇してきた新鮮な溶融めっき
金属が鋼帯１の幅方向両側に流動する。したがって、図
３の場合と同様に、溶融めっき金属の流動によってトッ
プドロスが鋼帯１の立上り部近傍から除去され、トップ
ドロス付着のない良好な溶融めっき鋼帯が得られる。

【００１１】

【実施例】板厚０．８ｍｍ，板幅１２００ｍｍの鋼帯１
を通板速度１００ｍ／分で溶融めっき浴２に導入し、溶
融めっき浴２から引き上げられた鋼帯１をガスワイピン
グしてめっき付着量を目標値９０ｇ／ｍ² に調整した。
移動磁場発生コイル４としては、高さ１０００ｍｍ，幅
１５００ｍｍのコイルを使用し、セラミックス板で作製
された厚み１０ｍｍの二重構造の内容器７に収容した。
図４に示すように、左右一対のコイル４，４を鋼帯１の
板端から５０ｍｍ離れた位置で対向させ、高さ５００ｍ
ｍを溶融めっき浴５に浸漬した。左右のコイル４，４の
間に鋼帯１の通板ラインを挟んでセラミックス板製の遮
蔽板１３，１３を対向配置し、各遮蔽板１３，１３から
鋼帯１の表裏両面までの距離を１００ｍｍに設定した。
遮蔽板１３，１３とコイル４，４との間隔は、２０ｍｍ
に設定した。各コイル４には、６００Ｈｚの三相交流を
１相当り１００Ａの電流値で供給した。

【００１２】移動磁場発生コイル５としては、直径１０
０ｍｍで２０００ターンの電磁石を鋼帯の板幅方向に関
して等間隔で５個（両面で合計１０個）を配列した。個
々の電磁石５に対しては、それぞれの位置センサー６で
検出された正規の走行ラインからの鋼帯１の変位量に応
じて５０〜２００Ａの直流電流を供給した。この条件下
で鋼帯１を溶融めっきし、遮蔽板１３，１３に挟まれて
いる溶湯流動空間１１の湯面を観察した。その結果、溶
湯流動空間１１の板幅方向中央部に溶融めっき金属の湧
き出しが発生し、湧き出し点１４から板幅方向両側に向
かって溶融めっき金属が流動していた。

【００１３】溶湯流動空間１１の湯面に浮遊しているト
ップドロスは、この溶融めっき金属の流動に随伴され、
溶湯流動空間の左右両側に排出された。その結果、鋼帯
１の立上り部近傍でトップドロスがない面積は、制御前
に比較して約３０％増加していることが目視観察で確認
された。また、引き上げられた鋼帯１に随伴する溶融め
っき金属の持上げ量は、移動磁場をかけない場合に比較
して約１０％減少していた。これは、鋼帯１の幅方向に
沿った溶融めっき金属の流動により、鋼帯１の表面近傍
にある溶融めっき金属が洗い出された結果であると推察
される。製造された溶融めっき鋼帯では、板幅方向に関
するめっき付着量のバラツキが±１０ｇ／ｍ² 以下に抑
制されており、トップドロス付着に起因する表面欠陥が
ない良好な表面性状を呈していた。また、溶融めっき浴
２から引き上げられた鋼帯１がコイル４，電磁石５又は
その周辺機器に接触しないので、形成された溶融めっき
層に表面疵も発生していなかった。これに対し、移動磁
場を作用させることなく製造した溶融めっき鋼帯では、
めっき付着量が板幅方向に関して±２０ｍｇ／ｍ² と大
きくばらついており、トップドロス付着に起因する表面
欠陥が散見された。

【００１４】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、溶融めっき浴から引き上げられる鋼帯の立上り部近
傍の湯面に幅方向中央部から幅方向両側に向かう溶融め
っき金属の流れを作り、この流れによって立上り部近傍
の湯面に浮遊しているトップドロスを立上り部から外方
に流し出している。そのため、引き上げられた鋼帯にト
ップドロスが付着することが抑制され、表面性状の良好
な溶融めっき鋼帯が製造される。幅方向中央部から幅方
向両側に向かう溶融めっき金属の流れは、鋼帯によって
持上げられる溶融めっき金属の量を少なくし、エッジオ
ーバーコートを軽減する作用も呈する。しかも、吸着防
止用電磁石により鋼帯が正規の通板ラインに維持される
ため、コイル，電磁石又はその周辺機器との接触に起因
する表面疵が溶融めっき鋼板に発生することもない。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に従ったトップドロス除去装置を組み
込んだ鋼帯立上り部近傍を鋼帯の板幅方向（ａ）及び板
厚方向（ｂ）にみた図

【図２】 移動磁場発生コイルの正断面図（ａ）及び側
断面図（ｂ）

【図３】 本発明に従ったトップドロス除去装置を鋼帯
の板幅方向（ａ）及び板厚方向（ｂ）にみた図

【図４】 本発明に従った別のトップドロス除去装置を
鋼帯の長手方向（ａ）及び板厚方向（ｂ）にみた図

【符号の説明】

１：鋼帯 ２：溶融めっき浴 ３：シンクロール
４：移動磁場発生コイル ５：吸着防止用電磁石
６：位置センサー ７：内容器 ８：外容器
９：断熱材 １０：冷却水供給管 １１：溶湯流動空間 １２：
位置制御機構 １３：遮蔽板 １４：新鮮な溶融めっき金属の湧き出
し点

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中本 一成 兵庫県尼崎市鶴町１番地 日新製鋼株式会 社技術研究所内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 溶融めっき浴から引き上げられる鋼帯の
   表裏両面に対向した移動磁場発生コイルで鋼帯を所定の
   搬送ラインに沿って走行させながら、鋼帯の立上り部近
   傍の湯面に、鋼帯の幅方向中央部から幅方向両端部に向
   かった電磁力を移動磁場により発生させ、電磁力で湯面
   近傍の溶融めっき金属を幅方向中央部から幅方向両端部
   に流動させることを特徴とする溶融めっき浴のトップド
   ロス除去方法。
2. 【請求項２】 鋼帯の板幅よりも大きな幅をもつ扁平形
   状で、溶融めっき浴から引き上げられる鋼帯の立上り部
   近傍の湯面に一部浸漬され、鋼帯を挟んで対向配置され
   た移動磁場発生コイルと、移動磁場発生コイルの上方位
   置で鋼帯の少なくとも幅方向両端部近傍に配置された移
   動磁場発生コイルと、各移動磁場発生コイルと鋼帯幅方
   向に関して同じ位置関係で配置され、各移動磁場発生コ
   イルに対応する位置センサーと、位置センサーで検出さ
   れた鋼帯の位置情報が入力され、鋼帯の変位量に応じて
   電磁力を調整するように各移動磁場発生コイルに供給す
   る電流を演算する位置制御機構とを備えている溶融めっ
   き浴のトップドロス除去装置。
3. 【請求項３】 鋼帯の板幅よりも大きな幅をもち、溶融
   めっき浴から引き上げられる鋼帯の立上り部近傍の湯面
   に一部浸漬され、鋼帯を挟んで対向配置された遮蔽板
   と、鋼帯幅方向に関して遮蔽板よりも外側に配置された
   両側一対の移動磁場発生コイルと、移動磁場発生コイル
   よりも上方位置で鋼帯の少なくとも幅方向両端部近傍に
   配置された移動磁場発生コイルと、各移動磁場発生コイ
   ルと鋼帯幅方向に関して同じ位置関係で配置され、各移
   動磁場発生コイルに対応する位置センサーと、位置セン
   サーで検出された鋼帯の位置情報が入力され、鋼帯の変
   位量に応じて電磁力を調整するように各移動磁場発生コ
   イルに供給する電流を演算する位置制御機構とを備えて
   いる溶融めっき浴のトップドロス除去装置。