【発明の詳細な説明】
アクリダンからの新規な発光方法及びキット
技術分野
本発明は、過酸化物およびペルオキシダーゼとの反応によりアクリダンが発光
(化学発光)する、化学発光性アクリダン化合物、特にN−アルキルアクリダン
カルボン酸誘導体に関する。本発明は、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素など
のオキシダントと、ある種のN−アルキルアクリダンカルボン酸誘導体との作用
により、化学的に発光(化学ルミネセンス)させるための改良された方法に関す
る。本発明はまた、特定の強化剤物質を用いて前記方法による化学発光の発光量
を増強させるための改良された方法に関する。本発明はまた、前記方法を用いた
過酸化水素、またはペルオキシダーゼの検出に関する。本発明はまた、前記方法
を用いた様々な生体分子の検出および定量に関する。たとえば、この方法は、イ
ムノアッセイの技術によるハプテン、抗原、タンパク質及び抗体の検出、ハイブ
リッド核酸の測定によるDNA、またはRNAの検出に用いることができる。さらに、
この方法は、過酸化水素を生成する酵素、例えばオキシダーゼの検出に用いるこ
とができる。この方法は特に、自動化装置で行われるアッセイの生体分子の検出
に有用である。
背景技術
生体分子を感度よく検出および定量する方法としては、これまで特定分子を放
射性同位元素で標識する方法が使われてきた。最近になって、放射性物質の持つ
危険性やその取り扱いの難しさを解消するため、放射性物質を使わない技術が数
多く開発されてきている。酵素結合の検出技術によれば、その触媒作用による基
質の変化を測定できるようになり、検出信号を増幅した形で観測できるため、最
も高感度で検出を行うことができる。そのため、着色光、蛍光、化学発光を発生
する基質が開発されるようになり、特に化学発光による高感度の検出が可能とな
ってきている。
測定の感度がさらに向上すれば、微量物質の検出が可能となり、また測定に必
要な時間や試薬の量が削減できるため、化学発光の用途は一層広がる。このよう
な化学発光アッセイの検出速度および感度を向上させるためには、パルスが小さ
く、高強度の光を発生させる必要がある。
ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)はイムノアッセイ、オリゴヌクレ
オチドの検出、およびハイブリッド核酸の技術などの酵素結合法を用いた検出に
使われる酵素としては、最も良く使われるものの一つである。従来知られている
HRP検出用の化学発光試薬では、分析時の感度の限界などにより、この酵素の特
性を最大限に活かすことができなかった。本報告の酵素の有用性を改良するため
に更に有効な化学発光の基質が必要である。加うるに、従来技術では知られてい
ないような、酵素の増幅作用と共に、高強度の閃光を発生する能力は、検出精度
と自動化分析に更なる利益をもたらし得る。
a. アクリダンの酸化
本出願人による同時係属出願となる1993年5月17日出願のNo.08 061,810及び19
94年3月2日出願のNo.08 205,093及び1994年4月15日出願のNo.08 228,290では、
その開示内容を参考のために本明細書に取り入れるが、ペルオキシダーゼ酵素を
用いてN−アルキルアクリダンカルボン酸誘導体およびその置換体を酸化するこ
とにより、化学発光を起こさせる方法が開示されている。ペルオキシダーゼおよ
び過酸化物の存在下で、N−アルキルアクリダンカルボン酸誘導体は効率的に酸
化されてN−アルキルアクリドンとなるとともに、一工程で化学発光による青色
化学発光を生ずる。
10-メチルアクリダン−9-カルボン酸のエステルは、強塩基性の双極中性溶媒
中で自動酸化されてN-メチルアクリドンとなり、化学発光を起こす(F.McCapra
,Accts.Chem.Res.,9(6),201-8(1976); F.McCapra,M.Roth,D.Hysert,
K.A.Zaklika in Chemiluminescence and Bioluminescence,Plenum Press,Ne
w York,1973,pp.313-321; F.McCapra,Prog.Org.Chem.,8,231-277(1971
); F.McCapra,Pure Appl.Chem.,24,611-629(1970); U.S.Patent No. 5,28
3,334 and 5,284,951 to McCapra,and 5,284,952 to Remakrishnam)。化学発光
の量子収量は、10-5から0.1の範囲で、脱離するフェノールまたはアルコール
のpKaが低下するのにしたがって増大することが分かっている。また、水溶液中
では、中間生成物が発光を伴わない競合反応により分解するため、量子収量が有
意に低下した。カチオン界面活性剤(CTAB)を添加すると、この競合反応が抑制さ
れるため、見かけの光収量は130倍に増大した。
b. アクリジニウムエステルの酸化による化学発光
N-アルキルアクリジニウムカルボン酸の脂肪族および芳香族エステルをアルカ
リ性溶液中でH2O2により酸化することにより発光させる反応はよく知られている
。この場合の化学発光の量子収量は0.1と高いため、生体分子に結合する反応基
を持った誘導体を開発することができるようになり、アクリジニウムエステルを
標識とした化学発光によるイムノアッセイやオリゴヌクレオチドプローブアッセ
イが多数報告されている。
アクリジニウムエステル(AE's)を使用する場合、特にタンパク質やオリゴヌク
レオチドを標識する場合には、2つ問題がある。まず第1に、加水分解の安定性が
低いことである。アクリジニウムエステル抱合体(conjugate)は、室温またはそ
れよりやや高い温度で、エステル基の加水分解により徐々に分解が進行する。長
期間保存するには、脱離基(leaving group)の性質にもよるか、-20℃に保つこと
が必要となる。N-アルキルアクリジニウムカルボン酸のアミド、チオエステル、
スルホンアミドも、同様の条件で酸化されることにより、発光することが分かっ
ている(T.Kinkel,H.Lubbers,E.Schmidt,P.Molz,H.J.Skripczyk,J.
Biolumin.Chemilumin.,4.136-139,(1989); G.Zomer,J.F.C.Stavenuite
r,Anal.Chim.Acta,227,11-19(1989))。しかし、このように脱離基を変え
ても、貯蔵安定性はわずかしか向上しない。
アクリジニウムエステルの第2の問題は、水などのような求核性試薬を9−部位
に付加することによって発光性のない擬似塩基性の中間物を生成し、これがpH
依存性で発光のない分解反応を起こすことである。実際に反応させる際には、ア
クリジニウムエステルを含む溶液のpHを、はじめは擬似塩基の生成を防ぐため低
く保ち、H2O2添加後は発光を起こさせるため高くする必要がある。
アクリジニウムエステルの化学発光を利用して標識を行う際に、より根本的な
問題は、標識分子としてタンパク質やオリゴヌクレオチドに直接結合させると、
多くても10分子程度しか結合できないということにある。発光時の量子収量(≦
10%)を考えると、アクリジニウムエステルで標識した試料物質は、多くても光
子1個分の光しか生じないことになる。これに対し、試料物質を酵素で標識し、
その発光反応を検出するようにすれば、酵素の持つ触媒作用の結果、試料物質1
分子当たりの発光量は数桁も高くすることができる。
イムノアッセイにおいて試料物質になるべく多くのアクリジニウムエステル分
子を結合させるため、不特定の数のアクリジニウムエステル(AE's)を含むリポソ
ームと抗体との抱合体を作成する方法が採られている(S.J.Law,T.Miller,
U.Piran,C.Klukas,S.Chang,J.Unger,J.Biolumin.Chemilumin.,4,88
-98,(1989))。この方法では、アクリジニウムエステルの直接標識による方法
と比べ、シグナルはわすかしか増大しない。
c. ホースラディッシュペルオキシダーゼの化学発光検出
ルミノール、イソルミノールなど、アミノ基で置換した環状アシルヒドラジド
は、H2O2および(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、HRPのような)ペルオ
キシダーゼと塩基性環境でと反応して発光する。この反応は、H2O2およびペルオ
キシダーゼの基本的な検出法として使われてきた。さらにその発展として、ルミ
ノール様物質(8-アミノ-5-クロロ-7-フェニルピリド[3,4-d]ピリダジン−1,4
(2H,3H)ジオン)を使ったHRPによる化学発光アッセイが行われてきた(M.Ii,H
.Yoshida,Y.Aramaki,H.Masuya,T.Hada,M.Terada,M.Hatanaka,Y.Ic
himori,Biochem.Biophys.Res.Comm.,193(2),540-5(1993))。ペルオキ
シダーゼと過酸化物によって酸化されて発光する化合物としては、他にヒドロキ
シ基で置換したフタルヒドラジドがある(Akhavan-Tafti,U.S.Patent Applica
tion No.965,231,1992年10月23日出願)。本出願の原出願となるNo.08 061,81
0,No.08 205,093及びNo.08 228,290では、過酸化物およびペルオキシダーゼと反
応して発光する化学発光性N−アルキルアクリダンカルボン酸のエステルおよび
スルホンイミドを用いて、ペルオキシダーゼの検出および各種アッセイを行う方
法が開示されている。
ルミノールによる発光の光度および持続時間を向上させる手段として、様々な
強化剤が用いられている。たとえば、D-ルシフェリンのようなベンゾチアゾール
誘導体、パラ-ヨードフェノールやパラ−フェニルフェノールを含む種々のフェ
ノール化合物、芳香族アミンなどである(G.Thorpe,L.Kricka,in Biolumine
scence and Chemiluminescence,New Perspectives,J.Scholmerich, et al.
,Eds.,pp.199-208(1987))。ここでは、フェノール化合物とは、上記のヒド
ロキシフェノール化合物の置換体の他、2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール
など、ペルオキシダーゼによる反応を促進することが知られている化合物を含め
た、ヒドロキシル基を持つ芳香族化合物を総称するものとする。アミノ基で置換
された環状アシルヒドラジドのペルオキシターゼによる酸化発光を促進する他の
物質は、U.S.Patent No.5,206,149(Oyama)、U.S.Patent No.5,171,668(Sugiy
ama)1993年8月19日PCT出願WO93 16195、及びM.Ii,et al(infra)で開示されてい
る。
発明の開示
以上に述べたことから、本発明の目的は、ペルオキシダーゼの作用によって化
学発光を生じさせることにより、生体物質および化合物を検出する上で優れた性
質を持ったアクリダン化合物、特にアリール N-アルキルアクリダンカルボキシ
レート誘導体を提供し、さらにそのため改良された方法を提供することである。
また、本発明の別の目的は、アリール N-アルキルアクリダンカルボキシレート
誘導体を使って、ペルオキシダーゼの作用によって化学発光を生じさせることに
より、溶液アッセイにおけるペルオキシダーゼおよび酵素抱合体を検出するため
の改良された方法およびキットを提供することである。加うるに、本発明の別の
目的は、アリール N-アルキルアクリダンカルボキシレート誘導体を使って、ペ
ルオキシダーゼの作用によって化学発光を生じさせることにより、溶液中および
表面上での核酸アッセイを行うための改良された方法およびキットを提供するこ
とである。さらに、本発明の別の目的は、アリール N-アルキルアクリダンカル
ボキシレート誘導体を使って、ペルオキシダーゼの作用によって化学発光を生じ
させることにより、酵素イムノアッセイでハプテン、タンパク質および抗体を検
出するための改良された方法およびキットを提供することである。
図面の簡単な説明
第1図は、本発明による2',3',6'-トリフルオロフェニル 1,6−ジメトキシ−1
0-メチルアクリダン−9-カルボキシレート(5c)を含む試薬の発光特性を示したグ
ラフである。試薬40μLを1.4×10-16molのHRP水溶液1μLとインキュベートした
。試薬の組成は1.5μMのアクリダン化合物5cを含むpH8.0、0.01Mのトリス緩衝
液、0.6mMの過酸化尿素、0.1mMのパラ−フェニルフェノール、0.025%のTWEEN
20、1mMのEDTA、とした。100秒後、0.1M NaOH 100μLを注入した。図から分かる
ように、この条件下では、相対光量単位(RLU)において、発光の強いバースト(
burst)が見られる。
第2図は、本発明による試薬組成物を用いたHRP検出の直線性を示したグラフ
である。夫々実験において、アクリダン5Cを含む溶液50μLを、所定量の酵素を
含有するHRPのアリコート(aliquuots)1.25μLと室温で混合した。100秒後、0.1
M NaOH 100 μLを注入した。光強度は、2秒間積算した。図中のS-Bとは、HRP存
在下でのRLUにおける化学発光シグナル(S)を、HRP不存在下でのバックグランド
の化学発光(B)に対して補正したものである。
第3図は、アクリダン5C(3 mL)を含有する実施例9の試薬と、1.1x10-13molの
HRPとの反応からの一連の吸収スペクトルを示す。吸収スペクトルは酵素添加後3
0秒間隔で300mnから500nmまでスキャンした。曲線の経時変化では(400nmでの底
部曲線から頂部曲線までの方向で)アクリジニウム化合物4cの生成が見られ、そ
れと共に約338nmに等吸収点をもつことが見られる。15分後には、スペクトルに
、それ以上の変化は観察されなかった。
第4図は、アクリダン化合物2',6'-ジフルオルフェニル10−メチルアクリダン
−9-カルボキシレートを含有する試薬3 mLと、1.1x10-13molのHRPとの反応から
の一連の吸収スペクトルを示す。吸収スベクトルは酵素添加後30秒間隔で300nm
から500nmまでスキャンした。曲線の経時変化は、より複雑な挙動を示し、等吸
収点は見られず、アクリジニウム化合物2',6'-ジフルオロフェニル10-メチルア
クリジニウム−9−カルボキシレートと10-メチルアクリドンの両化合物の真正サ
ンプルの比較で証明される如く(400nmでの底部曲線から頂部曲線までの方向で
)これら両者の生成が見られる。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、
a)過酸化化合物とペルオキシダーゼとを、中間体を蓄積させる時間、温度及び
pHの条件下で、次式、
(ここで、Rはアルキル基、ヘテロアルキル基及びアラルキル基より選択される
基、R1からR8まではそれぞれ発光を生じさせる基より選択される基、Yは脱離基(
leaving group)である)で表されるアクリダンと反応させることと、
b)pHを上げる前より実質的に高い光強度で、中間体と過酸化物との反応による
発光のバーストを生じさせるに充分な高いレベルまでpHを上げることと、
を含むことを特徴とする化学発光発生方法に関する。
本発明はまた、化学発光反応によるアッセイ操作で、試料物質がペルオキシダ
ーゼに直接または間接的に結合し、或は結合し得る場合であって、発光量が試料
物質の量と相関する試料物質を検出するのにこの方法を用いることに関する。
本発明はまた、化学発光反応によるアッセイ操作で、発光量が酵素の量と相関
する場合に、ペルオキシダーゼを検出するのにこの方法を用いることに関する。
例えば、ビオチンで標識した試料や、ストレプタビジン・ペルオキシダーゼ抱合
体を用いることによって、酵素は、特別な結合の組のメンバーと結合し得る。フ
ルオレセインと抗フルオレセイン、ジゴキシゲニンと抗ジゴキシゲニン或いは相
補的配列を持つ核酸同志のような従来よく知られている上記以外の高い親和性の
ある結合組み合わせは、本発明を実施する目的で、特異的な結合対のメンバー(m
ember)に、ペルオキシダーゼを結合させる方法として、容易に採用することがで
きる。このように、本方法は、イムノアッセイの技術によるハプテン、抗原、た
んぱく質及び抗体の検出、並びに核酸のハイブリッド形成分析によるDNAまた
はRNAの検出に用い得る。
本発明はまた、ペルオキシダーゼとの化学発光反応によるアッセイ操作で、発
光量が過酸化物の量と相関する場合に、過酸化水素を検出するのにこの方法を用
いることに関する。オキシダーゼ酵素を本方法を使って検出し得ることは、化学
発光技術の当業者にとっては、明らかである。オキシダーゼ酵素が酸素の還元と
自身の基質の酸化によって、過酸化水素を生じるので、本発明のアクリダン化合
物と生じた過酸化水素との反応は、オキシダーゼ酵素の量と相関し得る発光を生
じるであろう。
本発明はまた、試料物質、ペルオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ抱合体、過酸
化物、または化学発光反応によるアッセイ操作で過酸化水素を生じる試薬系のい
ずれかを検出するためのキットを企図している。本発明の任意具体例を実施する
ために有用なキットは、1以上のコンテナに、
a)上記のアクリダン化合物と、
b)反応溶液のpHを上げる試薬と、
c)検出すべき試料物質が過酸化物でない場合に、過酸化物または過酸化物を
生じる試薬と、
d)検出すべき試料物質がペルオキシダーゼでない場合に、ペルオキシダーゼ
、または試料物質とペルオキシダーゼとの抱合体、或いは試料物質との特別な結
合組をなす試薬とペルオキシダーゼとの抱合体と、
を含有することを特徴とする。
本発明の別の側面は、次式、
(ここで、Rはアルキル基、ヘテロアルキル基及びアラルキル基より選択される
基、R1からR8まではそれぞれ発光を生じさせる基より選択される基で、R1からR8
の少なくとも一つはアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子より選択され
る基であり、Yは、過酸化物とペルオキシダーゼとの反応によりアクリダンから
発光を生ぜしめる脱離基 である)で表される特殊なアクリダン化合物に関する
。
好ましい化合物は、次式、
(ここで、Rはアルキル基、アラルキル基またはヘテロアルキル基であり、R2か
らR8まではそれぞれ発光を生じさせる基より選択される基で、OR9はC1〜C20の直
鎖または分枝したアルコキシ基であり、Arは置換または無置換のアリール基また
はヘテロアリール基である)で表されるものである。
他の好ましい化合物は、次式、
(ここで、R2からR8の少なくとも1つは同じでも、異なっていてもよく、C1〜C2 0
の直鎖または分枝したアルコキシ基であり、OR9、R及びArは上記に定義した通
りである)で表されるものである。
更に、他の好ましい化合物は、次式、
(ここで、Rはアルキル基、アラルキル基またはヘテロアルキル基であり、R2か
らR8まではそれぞれ発光を生じさせる基より選択される基で、R1はハロゲン原
子またはC1〜C20の直鎖または分枝したアルキル基であり、Arは置換または無置
換のアリール基またはヘテロアリール基である)で表されるものである。
本発明の実施に有用なアクリダン化合物は、Ar基が置換または無置換のアリー
ル基、ヘテロアリール基から成るもので、このアリール基が、フェニル基、ナフ
チル基、アントリル基、フェナントリル基及びピレニル基から選ばれた基であり
、ヘテロアリール基は、ピリヂル基、ピリミヂル基、ピリダジニル基、キノリニ
ル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、イミダゾリル基等から選ばれた
基である。置換基として企図されるものは、アルキル基、アルケニル基、アルキ
ニル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシル基、アルコキシアルキル基、
ヒドロキシアルキル基、ハロゲン原子、カルボニル基、カルボキシル基、カルボ
キシアミド基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アミノ基、トリアルキルアン
モニウム基及びニトロ基である。
本発明の範囲から逸脱しない範囲でR及びAr基の特別な組み合わせを限定して
、特殊な用途に対して、アクリダン化合物の性質を最適化することは容易になし
得ることである。例えば、置換基は、合成の容易なこと、優れた溶解度、或は独
特の反応速度を有すること、から選ぶことができる。また、アクリダン化合物が
、後述する反応工程を考慮して、また実施例を参照して評価できる程に、優れた
安定性を有すること、副反応が少ないこと、或は優れた化学発光の効率から置換
基を選ぶことができる。
本発明は、ペルオキシダーゼ及び過酸化化合物との反応で、その後の高いpHで
速やかな化学発光反応が進行する中間体に変化する、改良されたアクリダン化合
物に関する。任意の特別な理論で束縛すべきではないが、かかる中間体の正体は
、真ん中の環が芳香環である対応するアクリジニウム化合物である。かかる方法
で化学発光反応を導くことで、ピーク強度の高い光の短時間バーストが得られる
。逆に、特許出願No.08 061,810に開示された方法での発光は、緩やかに上昇し
、安定したレベルに達するまで数分間以上かかる。アクリダンとペルオキシダー
ゼ及び過酸化物との反応は、通常緩衝液水溶液中で酵素活性に適合するpH、好ま
しくは約6ないし約8.5の間で行われる。次いで、溶液のpHは、予備的な数秒乃至
数分のインキュベーション期間の後、約11以上に上げられる。酵素反応で生
じた中間体は、この高いpHで過酸化物と反応して、化学発光のバーストを生じる
。反応手順1。
酵素的酸化相中におけるアクリジニウム化合物の化学発光分解の速度は、適当
なアクリダン化合物の選択により、またアクリジニウム化合物を蓄積させる反応
条件の調整により、低下させることができる。例えば、1位に水素原子以外の置
換基を有するアクリダンは、より安定性の良いアクリジニウム化合物に酸化され
る。その後、反応溶液を高い塩基性にすると、アクリジニウムと過酸化物との反
応が大いに促進されて、脱離基とCO2が追い出され、N置換アクリドンの励起状態
からの発光を生じる。
本発明の化学発光反応は、予期し得ない感度のペルオキシダーゼまたは過酸化
化合物の検出方法を提供する。本信号とバックグラウンド信号との比で定義され
る分析精度は、酵素的に生じた中間体の塩基誘発反応によって発生する発光と、
他のあらゆる発光プロセスとを区別することができるか否かが限界になる。極め
て意外なことは、三つの潜在的に問題となりそうな副反応が、求める信号の測定
を妨げる程には起こらないことであった。第一に本方法でアクリダンの酵素的酸
化によって生じたアクリジニウムエステル中間体は、中性からややアルカリ性pH
では、比較的低レベルの発光に止まっている。これは、従来知られているアクリ
ジニウムエステル、チオエステル及びスルフォンイミドが過酸化水素と速やかに
反応して強く発光することを見れば、驚くべきことである。
第二に、N−アルキルアクリダンカルボキシレートエステル自身は、後述のMcC
apraが論じているように、pHが11かまたはそれ以上で、酸素分子と化学発光反応
(自動酸化)を行う。従って、インキュベーション後に、酵素とともに残ってい
る任意の未反応のアクリダンは、pHが上がった時に大きなバックグラウンド発光
を生じると思われる。驚くべきことに、本発明のアクリダンは、第二工程に用い
た高いpHでも、酵素的に発生したアクリジニウム化合物からの発光レベルの割り
には有意な量の発光を生じない。
第三に、アクリジニウム化合物は発光を生じない副反応が進行することがある
。発光しない経路でアクリジニウム化合物を消費する、従来から知られている反
応は、生じ得る光りの量を減殺する。加水分解で、脱離基Yは除去され、無発光
のカルボキシレートイオンを生成する。9位への求核付加反応で、擬似塩基と言
われる中間体を生じる。この反応は溶液のpHを約1乃至3に下げると可逆的に進行
し、不必要に複雑な反応となる。更に、出発物質のアクリダンの加水分解は、生
ずべき光量を制限する。本発明の反応は、酵素でコーテイングしたビース、チュ
ーブ、膜或はマイクロウエルプレートのような固体支持体の表面に接触し得る緩
衝水溶液のような溶液中で行われる。適する緩衝液には、pHを約6から約8.5の範
囲に保ち得る、通常用いられている任意緩衝液があり、例えば、フォスフェート
、ボレート、カルボネート、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタン、グリシ
ン、トリシン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ジエタノールアミンなどが
ある。この点について、本発明を実施する好ましい方法は、特に企図された用途
の必要性から決められる。
ある種の強化剤を単独または界面活性剤との併用で反応混合液に加えると、酵
素の反応性が促進される。酵素反応で生成した中間体は、pHを上げると発光反応
が続いて進行するので、中間体の生成が増強されると、発光の増強につながる。
これらの強化剤のうち、フェノール性化合物と芳香族アミンは、参考のため、こ
こに示す、G.Thorpe,L.KricKa,Bioluminescence and Chemiluminescence,Ne
w Perspectives,J.Scholmerich,et al,Eds.,pp.199-208(1987),M.Ii,H.Y
oshida,Y.Aramaki,H.Masuya,T.Hada,M.Tereda,M.Hatanaka,Y.Ichim
ori,Biochem.Biophys.Res.Comm.,193(2),540-5(1993).及び U.S.P No.5,1
71,668と No.5,206,149 に記載された如く他のペルオキシダーセの反応を増強
することが知られている。置換または無置換のアリールホウ酸化合物とそのエス
テル及び無水物誘導体は、PCT WO 93 16195,8月19日,1993年 に開示され、参
考のためにここに示されている如く、本発明に有用な強化剤の範囲にはいると考
えられる。好ましい強化剤は、次のようなものであるが、これに限定されるもの
ではない。即ち、パラ−フェニルフェノール、パラ−ヨードフェノール、パラ−
ブロモフェノール、パラ−ヒドロキシ−ケイ皮酸、2-ナフトール及び6-ブロモ-2
-ナフトールである。
ペルオキシダーゼ不存在下における過酸化水素とアリールアクリダン誘導体と
の反応からの発光を抑制する添加剤が、本発明の有用性を更に改良するために、
用いられる。また、アニオン性、カチオン性及び非イオン性の界面活性剤のよう
なある種の界面活性剤は、大きな信号を発することにより本発明のアッセイにお
けるペルオキシダーゼの検出の感度を改良することも見いだされた。
本発明の組成物の各種成分の好ましい量は第1表に示される。
本発明は、緩衝水溶液に、1)フェノール強化剤またはその塩と、2)過酸化水素
、過酸化尿素または過ホウ酸塩とし得る(これに限定されない)過酸化化合物と
、3)本発明のアクリダン化合物と、4)多座(polydentate)カチオン錯生成剤、例
えばEDTA,EGTA及びそれらの塩と、5)界面活性剤、例えばアニオン性界面活性剤
、ナトリウムドデシルサルフェート(SDS)、或は好ましくは、ポリオキシエチ
レン化アルキルフェノール、ポリオキシエチレン化アルコール、ポリオキシエチ
レン化エーテル、ポリオキシエチレン化ソルビトールエステルなどのような非イ
オン界面活性剤と、を含有することに関する。
本発明を実施する好ましい方法においては、パラ−フェニルフェノール或はパ
ラ−ヨードフェノールのようなフェノール化合物を最終濃度約 0.01 M 乃至 1x
10-6 M で含有する、pH範囲約5乃至約9の緩衝溶液と、最終濃度約 5% 乃至約 0
.005%(v.v)の非イオン界面活性剤と、過酸化水素、或はより好ましくは、過ほう
酸塩または尿素過酸化物のような過酸化物源と、最終濃度約 1x 10-3 M 乃至
約1x 10-5 M の EDTA のようなカチオン錯生成剤とを、本発明のアクリダン化
合物を、最終のアクリダン濃度が約 0.001 M 乃至 1x 10-9 M となるように含
有する第二の溶液と混合して、検出試薬溶液を作成する。この溶液を、溶液中が
、または固体の支持体に付着させ得るペルオキシダーゼと接触させる。検出反応
は、少なくとも10 〜 40 ℃を含む温度範囲で行うことができる。インキュベー
ション期間の後、塩基を添加し、場合により過酸化物を追加して、溶液のpHを少
なくとも約10程度に上げる。その結果、発光が生じ、光は速やかに最高レベルに
達し、減衰する。好ましくは、塩基の添加は発光が数秒間の間続くように、迅速
に行われる。インキュベーションの時間、温度及び反応のpHの調節は、当業者に
は明らかな如く本発明の主題の範囲内で考慮される。
アリールアクリダン誘導体と、それを含有する本発明の組成物との有意な利点
には、短時間に、蓄積した化学発光生成物からの発光を全部測定できることがあ
る。数秒の間に起こる全発光の測定は、長時間の発光を生じる、本出願者が先に
開示したアクリダンの反応によって生じる強度対時間曲線の積分に等しい。発光
時間の圧縮の結果、ごく少量のペルオキシダーゼの活性から、測定容易な光のス
パイク(spike)が得られる。このことは、バックグランドの化学発光がコントロ
ールされれば、検出感度の改良がもたらされることになる。このタイプの光検出
を用いて設計されたアッセイは、現存する大容量の、市販のイムノアッセイ装置
に、容易に適用される。これらの、及び他の利点は、実施例を考慮することによ
って、明らかとなろう。
実施例アクリダン誘導体の合成
アクリダンカルボン酸誘導体5a-hを反応手順2に示す方法の1つに従い、対応する
アクリジン-9-カルボン酸から合成した。下記に示す構造で、置換基A及びBの基
と位置は、下記表に示される。他の置換基はすべて、水素原子である。
反応手順2、アクリダン化合物の製造
対応するアクリジン-9-カルボン酸1a-hは文献(G.Zomer,J.Stavenuiter,R.Van
Den Berg,E.Jansen,In Luminescence Techniques in Chemical and Biochemi
cal Analysis,W.Baeyens,D.De Keukeleire,K.Korkidis,eds.,Dekker,New
Youk,505-521,(1991);R.Stoll ,J.Prakt.Chem.,105,137,(1922))記載の
方法で製造した。実施例 1、化合物5aの合成
2',3',6'- トリフルオロフェニル 1-メトキシ-10-
メチルアクリダン-9-カルボキシレート。
(a)市販品(Aldrich)の3-メトキシジフェニルアミンをシュウ酸クロリドとの縮
合で、3-メトキシ及び1-メトキシアクリジンカルボン酸(1a及び1f)の混合物を
製造し、これをエステル(3a,f)に転化した後、シリカ上20%酢酸エチル/
ヘキサンでカラムクロマトグラフィにより精製をした。
(b)化合物1aと1fの混合物(1.5g)を、10mLの塩化チオニルに懸濁させ、反応混液
を3時間還流した。溶媒を減圧下で溜去して、黄色の固体を得、これを、アルゴ
ン雰囲気下で塩化メチレン(CH2Cl2)とピリジン(0.7mL)に溶解した。塩化メチレ
ン中フェノール(0.878g)の溶液を滴下した。溶液を室温で一晩中攪拌し、さらに
塩化メ
チレン(100mL)で希釈し、水(3x50mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥し、
濃縮して、異性体エステルの混合物を得た。生成物2',3',6'- トリフルオロフェ
ニル 1-メトキシアクリジン-9-カルボキシレート(3a)は、シリカ上25%酢酸エチ
ル/ヘキサンでカラムクロマトグラフィにより単離した。:1H NMR(CDCl3)δ4.1
80(s),7.08-8.43(m).
(c)エステル3a(0.223g)をアルゴン雰囲気下70mLのエタノールに加熱溶解した。
室温に冷却したフラスコを光から遮蔽した後、0.313gの塩化アンモニウム(10eq.
)を、次に0.382gの粉末亜鉛(10eq.)を加えた。90分後、固体を濾過し塩化メチレ
ンで洗浄し、溶媒を合体して乾燥した。残った固体物質を塩化メチレンに溶解し
、濾過して淡黄色物質を得、該物質が純粋であり出発物質のエステルと異なるRf
を有することを示すTLC(薄層クロマトグラフィ)によって、2',3',6''-トリフ
ルオロフェニル 1-メトキシアクリダン-9-カルボキシレート(6a)であることが
明らかとなった。
(d)還元された生成物は、メチルトリフレート(methyl triflate)(7 mL)で、遮光
下にアルゴン雰囲気中約8mLの塩化メチレン中でメチル化された。4日後揮発物を
蒸発させ、生成物をシリカ上50%酢酸エチル/ヘキサンでクロマトグラフィによ
り精製して、化合物5aを白色固体として得た。実施例 2、化合物 5bの合成、
4'-フルオロフェニル 1-メトキシ-10-メチルアクリ
ダン-9-チオカルボキシレート。
(a)3-メトキシ及び1-メトキシアクリジンカルボン酸(1a及び1f)10.3gの混合物を
実施例1に記載した如く異性体の酸クロリドに転化させた。生成物をアルゴン雰
囲気下約200mLの塩化メチレンに溶解した。ピリジン(4.2mL、1.3eq.)を加え、溶
液を15分間攪拌した。4-フルオロチオフェノール(5.4mL、1.2 eq.)を加え、温溶
液を一晩中攪拌した。更に塩化メチレン(100mL)を加え、溶液を飽和食塩水で抽
出した。有機相をNa2SO4上で乾燥し、濃縮して褐色の固体を得た。生成物の4'-
フルオロフェニル1-メトキシアクリジン-9-チオカルボキシレート(3b)をシリカ
上で20%酢酸エチルヘキサンから純粋の酢酸エチルまでの範囲の種々の極性の溶
剤でクロマトグラフィによる単離を行った。:1H NMR(CDCl3)δ4.162(s),7.18
-7.24(m),7.55-7.65(m),7.82-7.88(m),8.07-8.10(d),8.35-8.38(d).
(b)チオエステル3b(1.19g)を加熱しながら300mLのエタノールに溶解した。室温
に冷却し、フラスコを遮光した後、1.75gの塩化アンモニウム(10eq.)を、続いて
2.14gの粉末亜鉛(10eq.)を加えた。15分後、固形分を濾過し、塩化メチレンで洗
浄し、溶剤を合体して蒸発させた。残った固形物質を塩化メチレンに溶解し濾過
して淡褐色の物質を得たが、1H NMR によって 4'-フルオロフェニル 1-メトキシ
アクリダン-9-チオカルボキシレート(6b)であることが同定され、これ以上の精
製なしで化合物5bの製造に用いた。:1H NMR(CDCl3)δ 3.928(s),5.165(s),6
.56-6.59(d),6.89-7.03(m),7.16-7.34(m).
(c)還元した物質を、遮光しながらアルゴン雰囲気下で5mLの塩化メチレン中メチ
ルトリフレート(12mL)でメチル化した。72時間後揮発性物質を蒸発させ、生成物
をシリカ上で10〜20%酢酸エチル ヘキサンでクロマトグラフィ精製し、0.75gの
白色固体を得た。:1H NMR(CDCl3)δ 3.712(s),3.916(s),4.892(s),6.656-6
.685(d),6.97-7.06(m),7.12-7.27(m),7.31-7 37(m).実施例 3、化合物 5cの合成、
2',3',6'-トリフルオロフェニル 1.6-ジメトキシ-1
0-メチルアクリダン-9-カルボキシレート。
(a)カルボン酸(1c,1d及び1e)の混合物(1.4g,4.9mmol)を過剰のチオニルクロリド
(15mL)に懸濁させ、反応混液を4時間還流した。溶剤を減圧下に除去し、酸クロ
リドの生成物を2,3,6-トリフルオロフェノール(0.74g,5mmol)と塩化メチレンと
に混合した。アルゴン雰囲気下ピリジン(1mL,13mmol)を滴下した。溶液を一晩中
室温で攪拌し、揮発物を減圧下に除去した。粗製物をシリカ上で10%酢酸エチル
ヘキサンでカラムクロマトグラフィにかけて精製し、純粋な2',3',6'-トリフル
オロフェニル 1,6-ジメトキシアクリジン-9-カルボキシレート(3c)を得た。:1H
NMR(CDCl3)δ 4.03(s,3H),4.04(s,3H),6.85-6.88(d,1H),7.02-7.24(m,2H)
,7.32-7.36(dd,1H),7.48-7.49(d,1H),7.70-7.83(m,2H),8.08-8.11(d,1H).
(b)エステル(3c)(0.2g,0.46mmol)をアルゴン雰囲気下、メチル トリフルオロメ
タン-スルフォネート(1 mL,8.8mmol)で10mLの塩化メチレン中一晩中攪拌してメ
チル化した。揮発物を減圧下に蒸発し、残滓を酢酸エチルで洗浄した。N-メチル
アクリジニウムエステル(4c)として直接次工程に使用した。
(c)4c(45mg)と1gの塩化アンモニウムとの25mLエタノール溶液と、1gの亜鉛とを
反
応させてアクリダン(5c)への還元を行った。黄色溶液は直ちに脱色され、更に30
分攪拌した。50mLの酢酸エチルを加え、混合物を濾過した。溶剤を蒸発し、残滓
をシリカ上で10%酢酸エチル ヘキサンでクロマトグラフィにかけて純粋な5cを得
た。:1H NMR(CDCl3)δ 3.39(s),3.84(s,1H),3.90(s,3H),5.90(s,1H),6.50
-7.43(m,8H).実施例 4、化合物 5dの合成、
2',3',6'-トリフルオロフェニル 1,8-ジメトキシ-1
0-メチルアクリダン-9-カルボキシレート。
(a)実施例3に記載の実験からエステル3dをクロマトグラフィで単離した。:1H NM
R(CDCl3)δ 4.17(s),7.10-7.30(m),7.58-7.61(d),8.16-8.19(d).
(b)エステル(0.02g)と塩化アンモニウム(2g)とのエタノール(25mL)溶液に亜鉛(2
g)を加え、溶液は直ちに脱色した。無色の溶液を室温で30分攪拌した。酢酸エチ
ル(200mL)を溶液に加え、次いで濾過した。減圧下濾液から溶剤を除去した。得
た粗製物をシリカゲル上で(10%酢酸エチル ヘキサンで)クロマトグラフィにかけ
て純粋な製品(6d)を得た。:1H NMR(acetone-d6)δ 3.99(s),5.66(s),6.87-6
.89(d),7.12-7.40(m),7.43-7.46(d),7.58(s).
(c)還元した生成物(0.16g,0.46mmol)を遮光下にアルゴン雰囲気下5mLの塩化メチ
レン中でメチルトリフレート(methyl triflate)によってメチル化した。72時間
後揮発物を蒸発し、生成物をシリカゲル上で30%酢酸エチル ヘキサンでクロマト
グラフィで精製し、白色固体を得た。:1H NMR(CDCl3)δ 3.47(s),3.91(S),5
.03(s),6.74-6.77(d),7.80-7.00(m),7.21-7.23(d).実施例 5、化合物 5eの合成、
2',3',6'-トリフルオロフェニル 3,6-ジメトキシ-1
0-メチルアクリダン-9-カルボキシレート。
(a)実施例3に記載の実験から、エステル3eをクロマトグラフィで単離した。:1H
NMR(CDCl3)δ 4.03(s,6H),7.11-7.24(m,2H),7.29-7.33(dd,2H),7.47-7.4
8(d,2H),8.08-8.11(d,2H).
(b)エステル(3e)(1g,2.3mmol)をアルゴン雰囲気下30mLの塩化メチレン中で一晩
中攪拌しながらメチルトリフレート(methyl triflate)(1.3mL,5eq.)によってメ
チル化した。減圧下揮発物を蒸発し、残滓を酢酸エチルで洗浄した。N-メチルア
クリジニウムエステル(4e)を直接次工程に使用した。:1H NMR(DMSO-d6)δ 4.2
5(s,6H),
4.73(s,3H),7.60-8.23(m,8H).
(c)4e(650mg)と650mgの塩化アンモニウムとの100mLエタノール溶液と、650mgの
亜鉛とを反応させてアクリダン(5e)への還元を行った。黄色溶液は直ちに脱色さ
れ、更に30分攪拌した。酢酸エチル(150mL)を加え、混合物を濾過した。溶剤を
蒸発し、残滓をシリカ上で10%酢酸エチル ヘキサンでクロマトグラフィにかけて
純粋な5eを得た。:1H NMR(acetone-d6)δ 3.48(s,3H),3.88(s,6H),5.41(s
,1H),6.62-7.39(m,8H).実施例 6、化合物 5fの合成、
2',3',6'-トリフルオロフェニル 3 メトキシ-10-メ
チルアクリダン-9-カルボキシレート。
(a)生成物2',3',6'-トリフルオロフェニル 3-メトキシアクリジン-9-カルボキシ
レート(3f)を実施例1の反応からシリカ上で25%酢酸エチル ヘキサンでクロマト
グラフィにより単離した。:1H NMR(CDCl3)δ 4.043(s,3H),7.08-8.25(m,9H
).
(b)化合物3f(0.24g)をアルゴン雰囲気下塩化メチレン(3mL)に溶解し、メチルト
リフルオロメタンスルフォネート(0.1mL,1.4eq.)を加えた。溶液を一晩中室温で
攪拌し、淡黄色の沈澱を得た。この沈澱を濾過し、エーテルで洗浄し、乾燥して
純粋な4fを黄色結晶として得た。:1H NMR(DMSO-d6)δ 4.288(s,3H),4.837(s
,3H),7.64-8.89(m,9H).
(d)化合物4f(35mg)を無水エタノール(15mL)に懸濁し、10分間還流して透明な溶
液を得た。過剰の塩化アンモニウム(4g)を、溶液に分割添加し、亜鉛(4g)を加え
ると直ちに溶液が脱色した。無色の溶液を30分間還流し、冷却し、濾過し、沈澱
物をエタノール(3x20mL)で洗浄した。溶液を濃縮して灰白色の固体を得、これを
塩化メチレンに再溶解し、水(3x50 mL)で洗った。塩化メチレンを蒸発した後得
た粗製物をシリカゲル上(酢酸エチル ヘキサンで)フロマトグラフィにかけ、白
色固体として純粋な生成物を得た。:1H NMR(CDCl3)δ 3.422(s,3H),3.847(s
,3H),5.25(s,1H),6.54-7.39(m,9H).実施例 7、化合物 5gの合成、
2',3',6'-トリフルオロフェニル 1,10-ジメチルア
クリダン-9-カルボキシレート。
(a)1-メチルアクリジン-9-カルボン酸と3-メチルアクリジン-9-カルボン酸との
混合物(4.0g,15.6mmol)を過剰のチオニルクロリド(50mL)に懸濁し、反応混液を1
.5
時間還流した。減圧下溶剤を除去した。その残滓に2,3,6-トリフルオロフェノー
ル(2.77g,18.7mmol)を加えた。混合物を塩化メチレンに溶解し、アルゴン雰囲気
下ピリジン(4mL,49.5mmol)を滴下した。溶液を室温で数日間攪拌し、次いで、溶
剤と過剰のピリジンを減圧下除去した。得た粗製物をシリカゲル上(5%酢酸エチ
ル/ヘキサンで)クロマトグラフィにかけ、異性体の3-クロロ- 及び1-メチルア
クリダンエステルを得た。:(3g)1H NMR(CDCl3)δ 7.04-7.25(m,2H),7.70-7
77(m,3H),7.87-7.92(t,1H),8.24-8.31(m,3H).
(b)エタノール(200ml)中エステル3g(0.2g)と塩化アンモニウム(2g)とを亜鉛(2g)
で処理すると、溶液は直ちに脱色した。無色の溶液を室温で30分間攪拌した。酢
酸エチル(200mL)を溶液に加え、次いで濾過した。減圧下濾液から溶剤を除去し
た。粗製物をシリカゲル上(40%酢酸エチル/ヘキサンで)クロマトグラフィにか
け2,3,6-トリフルオロフェニル 1-メチルアクリダン-9-カルボキシレート(6g)を
得た。
(c)還元した生成物(0.18g)を遮光下にアルゴン雰囲気下5mLの塩化メチレン中で
メチルトリフレート(3mL)によってメチル化した。約72時間後、揮発物を蒸発し
、生成物をシリカゲル上30%酢酸エチル/ヘキサンでクロマトグラフィで精製し
て(5g)を白色固体として得た。実施例 8、化合物 5hの合成、
2',3'.6'-トリフルオロフェニル 1-クロロ-10-メチ
ルアクリダン-9-カルボキシレート。
(a)1-クロロアクリジン-9-カルボン酸と3-クロロアクリジン-9-カルボン酸との
混合物(4.0g,15.6mmol)を過剰のチオニルクロリド(50mL)に懸濁し、反応混液を1
.5時間還流した。減圧下溶剤を除去した。上記残滓に2,3,6-トリフルオロフェノ
ール(2.77g,18.7mmol)を加えた。この混合物を塩化メチレンに溶解し、アルゴン
雰囲気下ピリジン(4mL,49.5mmol)を滴加した。溶液を室温で数日間攪拌し、次い
で、溶剤と過剰のビリジンを減圧下除去した。得た粗製物をシリカゲル上(5%酢
酸エチル/ヘキサンで)クロマトグラフィにかけ、異性体の3-クロロ- 及び1-ク
ロロアクリジンエステルを得た。:(3h)1H NMR(CDCl3)δ 7.04-7.25(m,2H),7
.70-7.77(m,3H),7.87-7.92(t,1H),8.24-8.31(m,3H).
(b)エタノール(200ml)中エステル3h(0.2g,0.52mmol)と塩化アンモニウム(2g)と
の温溶液に亜鉛(2g)を加えると、溶液は直ちに脱色した。無色の溶液を室温で30
分間
攪拌した。酢酸エチル(200mL)を溶液に加え、次いで濾過した。減圧下濾液から
溶剤を除去した。得た粗製物をシリカゲル上(40%酢酸エチル ヘキサンで)クロマ
トグラフィにかけ、純粋な生成物2,3,6-トリフルオロフェニル 1-クロロアクリ
ダン-9-カルボキシレート(6h)を得た。:1H NMR(CDCl3)δ 5.72(s),6.29(s),
6.68-6.70(d),6.77-6.79(d),6.79-6.88(m),6.96-7.03(m),7.12-7.17(t),7.2
1-7.27(d),7.54-7.76(d).
(c)還元した生成物6h(0.18g,0.46mmol)を遮光下にアルゴン雰囲気下5mLの塩化メ
チレン中でメチルトリフレート(3mL)によってメチル化した。72時間後、揮発成
分を蒸発し、生成物をシリカ上30%酢酸エチル ヘキサンでクロマトグラフィで精
製して白色固体(5h)を得た。:1H NMR(CDCl3)δ 3.441(s,3H),5.754(s,1H)
,6.81-7.09(m,6H),7.22-7.38(m,2H),7.52-7.55(dd,IH).化学発光の測定
下記の実施例の実験は、光の減衰についてのニュートラル密度フィルター(neu
tral density filter)を備えたターナー・デザインズ(Turner Designs)TD-20e(Su
nnyvale,CA)ルミノメーターか、又はラブシステムズ ルミノスカン(Helsinki,F
inland)ルミノメーターを用いて行った。データの収集、解析及び表示はソフト
ウェアでコントロールした。実施例 9.
検出試薬は40:1の比率で試薬Aと試薬Bとを配合して製造した。ここで
、試薬Aは、0.6mMの過酸化尿素と、0.1mMのパラ-フェニルフェノールと、0.025%
のTWEEN 20と、pH 8.0の0.01Mトリス緩衝液中1mMのEDTAとからなる。試薬Bは、1
:1(v v)のパラ-ジオキサン エタノール又は1:1(v v)のプロピレングリコール/
エタノールの液中アクリダン5c(0.86mg mL)からなる。得られた溶液40μLに1μL
のHRP(1.4x10-16mol)を加え、溶液を5分間インキュベートした。0.1M水酸化ナト
リウムの100μLを注入することによってフラッシュ発光を誘発した。ブランクと
して酵素を加えすに実験を繰り返して行った。第1図は発光生成の結果を示す。実施例 10.
検出試薬は、試薬Aと試薬Bとの比率を1200:1に配合し、インキュベー
ションの時間を100秒とし、実施例9による実験を繰り返した。ブランクの光強度
を低くしたことによって、シグナル対バックグランド比のより良い結果を得た。実施例 11
.実施例10の検出試薬を用いて、HRP検出の感度と直線性とを決定した
。ミクロプレートの3個のウェルのそれぞれにおいて、検出試薬の50μLを、1.4x
10-15から1.4x10-19molの酵素を含むHRPのアリコート溶液1μLと室温で混合し
た。100秒後、0.1M水酸化ナトリウム100μLを添加し、発光を2秒間積算した。第
2図は、アクリダン5dを含有する本発明の試薬を用いて測定したHRP量の直線範
囲を示す。実施例 12.
実施例9のアクリダンをアクリダン5bに代えた他は実施例9と同様の組
成に従った検出試薬をHRPの検出について試験した。実施例10に規定した方法で
、検出液を酵素と5分間インキュベートした以外は、実施例10と同様の方法を用
いた。HRPの最低検出量は、シグナル対バックグランド比が2で1.4amol(1.4x10-1 8
mol)であった。実施例 13.
実施例9のアクリダンを若干不純物を含んだ製法のアクリダン5dに代
えた他は実施例9と同様の組成に従った検出試薬をHRPの検出について試験した。
実施例10に規定した方法に従い、試薬とインキュベートしかつ、水酸化ナトリウ
ムでフラッシュした1.4x10-16molのHRPは、ブランクよりも105倍のシグナルを発
生した。1.4x10-17 molのHRPで10分間インキュベートしたものは、ブランクの69
倍のシグナルを発生した。主な不純物として、N-メチルが脱メチルした同族体(6
d)が別個に該実験条件でテストされ、有意な量の発光がないことが見出された。実施例 14.
アクリダンをアクリダン5hの粗製物に代えた検出試薬をHRPの検出に
ついて試験した。実施例10に規定した方法に従い、試薬と3分間インキュベート
し0.1Mの水酸化ナトリウムで処理した1.4x10-16molのHRPは、ブランクよりも72
倍のシグナルを発生した。主な不純物として、N-メチルが脱メチルした同族体(6
h)が別個に該実験条件でテストされ、発光しないことが見出された。実施例 15.強化剤の効果。
HRPと反応し、それによって高い塩基性を作る各種のフ
ェノール性強化剤を置き換え配合する以外は実施例9の組成に従って、検出試薬
溶液を調製した。試薬のバックグランドに比し、有用なレベルの光強度が、パラ
-ヨ-ドフェノール、パラ-ブロモフェノール、パラ-ヒドロキシ桂皮酸、2-ナフト
ール、6-ブロモ-2-ナフトール及び4-ヨードフェニルホウ酸を含む試薬で得られ
た。実施例 16.過酸化物の効果。
HRPと反応し、それによって高い塩基性を作る各種の
過酸化物を置き換え配合する以外は実施例9の組成に従って、検出試薬溶液を調
製し
た。試薬のバックグラントに比し、有用なレベルの光強度が、過酸化水素、過ホ
ウ酸ナトリウム及び過酸化尿素を含む試薬で得られた。実施例 17.
アクリダン5c(3mL)を含有する実施例9の試薬溶液を、Varian Cary 3E
(Palo Alto,CA)UV-Visスペクトロフォトメーターににおける石英製キュベット
に入れた。HRP(1.4x10-15 mol)を加え、吸収スペクトルを30秒間隔で300nmから5
00nmまでスキャンした。第3図は(400nmで底部曲線から頂部曲線までの方向で)
アクリジニウム化合物4cの生成を示している。15分後には、スペクトルにそれ以
上の変化は観察されなかった。0.1Mの水酸化ナトリウムを加えると青色光のバー
ストを生じた。得られた溶液のスペクトルは1,6-ジメトキシ-10-メチルアクリド
ンの吸収と一致した。実施例 18.
1位に置換基を有するアクリダンが卓越した性能を有することを示す
ために、1位に置換基のないアクリダン化合物を用いた以外は、実施例17と同様
にして実験を行った。実施例9(3mL)に用いたと同様の試薬溶液ではあるが、アク
リダンとして、2',6'-ジフルオロフェニル 10-メチルアクリダン-9-カルボキシ
レートを含有する試薬溶液をHRP(1.4x10 -15 mol)と反応させて、吸収スペクト
ルを30秒間隔で300nmから500nmまでスキャンした。第4図は、(400nmでの底部曲
線から頂部曲線までの方向で)両化合物の真正サンブルとの比較によって証明さ
れた如く、アクリジニウム化合物、2',4'-ジフルオロフェニル10-メチルアクリ
ジニウム-9-カルボキシレートと10-メチルアクリドンとの両方の生成を示す。加
うるに、アクリジニウム化合物2',4'-ジフルオロフェニル10-メチルアクリジニ
ウム-9-カルボキシレートを、HRPの添加なしで、同様の試薬組成に供することで
、数分の内に同じアクリドンへの測定可能な転化を生じた。
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(72)発明者 ザーラ アルガバニ
アメリカ合衆国 ミシガン 48310 スタ
ーリング ハイツ リアン ロード
33858
(72)発明者 レヌカ デシルヴァ
アメリカ合衆国 ミシガン 48167 ノー
スヴィル デルタ ドライブ 40628