【発明の詳細な説明】
エキシマレーザ用のガス補充の方法と装置
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、一般にガスレーザに関し、詳細にいえば、エキシマガスレーザ内部
のガス混合物を補充するための方法と装置に関する。
2.関連技術の説明
多くのガスレーザ、特にエキシマレーザは、2種類またはそれ以上の種類のガ
スの混合物を、レーザ光線を発生する場合に使用するために、レイジング・チャ
ンバ中に保持する。典型的なエキシマレーザは、例えばフッ素、クリプトン、お
よびネオンから構成されたガス混合物を含んでいるだろう。レーザの効率は、一
部はガス混合物の特定の組成に依存する。最適組成から外れるレーザの効率が低
下することがあり、この結果として出力光線の出力が低下する。さらにまた、最
適でないガス組成は望みの出力周波数または望みのパルス繰返数を維持するため
のレーザの能力に影響する。ガス組成の最適混合からの実質的な偏りは、レーザ
自体内部の腐食と磨耗の増加を含めてレーザの耐久性と信頼性にも影響する可能
性がある。
ガス混合物の組成は、いくつかの要因に左右される時間の関数として変化する
。特にフッ素/クリプトン・エキシマレーザについては、エキシマレーザの作動
中にフッ素の量が減損する傾向がある。反応性の高いハロゲンであるフッ素は、
クリプトンに対してフッ素の量を低くするのに十分な量だけ、エキシマレーザの
中の材料と反応する傾向がある。
例えば典型的なフッ素/クリプトン・エキシマレーザは、0.1パーセントの
フッ素、1.0パーセントのクリプトン、および98.9パーセントのネオンか
ら成るガス混合物を含む。エキシマレーザの作動中にフッ素は減損し、これによ
って上記の相対的組成を変える。実質的に非反応性の希ガスであるクリプトンと
ネオンの成分は、フッ素のようには有意に減損しない。しかしながらクリプトン
とネオンの成分は、多分ガスチャンバからのクリプトンとネオンの拡散の結果と
して、作動中にいくらか減損する。
ガス混合物の種々の成分が減損する範囲は種々の要因に依存し、またガス混合
物のある期間の後の実際の組成を容易に測定することはできない。しかしながら
、いったんガス混合物が最適組成からかなり偏ると、レーザの効率は実質的に劣
化して、ガス混合物の補充を必要とすることがある。従来は、ガス混合物をすべ
てレーザから流出させて、新しい混合物と入れ替える。ガス混合物のすべての成
分をその望みの量または最適相対量だけ含む予備混合物を使用して、ガス混合物
を取り替える。先に検討したフッ素/クリプトン・レーザについては、予備混合
物は0.1パーセントのフッ素、1.0パーセントのクリプトン、および98.
9パーセントのネオンを含む。
ガス混合物の完全な入れ替えが各ガスの相対的組成の変化を補償するのに有効
であっても、これはガス減損を補償するための特に費用効果的で効率的な方法で
はない。実際に、エキシマレーザ予備混合物はきわめて高価になり、特にかなり
大きなガスチャンバ容積を有する大型エキシマレーザについては、ガスチャンバ
を完全に流出させてこれを予備混合物と取り替えるコストはかなり大きくなる可
能性がある。
したがって、ガス混合物の完全な取り替えを必要とすることなくガス成分の減
損を補償する方法が提案されている。この目的のために、フッ素/クリプトン・
レーザの中には、ガス混合物の完全な取り替えを必要とすることなく既存のガス
混合物にフッ素を追加するための手段を備えたものがある。減損したフッ素を補
充するために、フッ素とネオンの混合物を有するフッ素源を設けることもできる
。フッ素/ネオン混合物は、減損したフッ素を補充する目的でポンプでガスチャ
ンバに送られる。このような技法によって、ガス混合物の完全交換の時間をいく
らか延ばすことができ、エキシマレーザ・システムの全体的な費用効果は改善さ
れる。しかしながら、フッ素とネオンのみの混合物を含む補充源を設けることに
よっては、クリプトンの減損を有効に補償することはできない。実際に、フッ素
/
ネオン・ガスを追加するごとに、ガスチャンバ混合物中におけるクリプトンの比
率は低下する。何らかの抜き取りが必要な場合には、クリプトンの比率の全体的
低下はひどくなる。フッ素/ネオン・ガス混合物がチャンバ内部の全体的圧力を
望みの値以上に増加させて、ガス混合物の一部を放出して圧力を低下させなけれ
ばならない場合に、抜き取りが必要になる。抜き取り中にガス圧が低下すると、
クリプトンの追加の量は失われる。
さらにまた、フッ素混合物を追加することによってフッ素の減損を補償するた
めの方法には別の欠点もある。特に、フッ素を追加する必要があるときにどれだ
けのフッ素を追加しなければならないかを決定する有効な方法は、これまでは開
発されていなかった。これに関して、レーザチャンバ内のガス混合物における相
対的組成を時間の関数として安価に測定するための有効な方法は開発されていな
い。したがって、フッ素/ネオン混合物を用いてフッ素を補充する方法はいくら
か粗雑な推測に基づく方法であった。
発明の概要
前述のことから、ガスレーザ内のガス混合物を補充するための改善された方法
と装置を提供する必要があることを、よく認識することができる。本発明の一般
的な目的の一つは、このような改善された方法と装置を提供することである。本
発明の特定の目的の一つは、フッ素とクリプトンとネオンから成るガス混合物を
有するフッ素/クリプトン・エキシマレーザの中のガス混合物を補充するための
改善された方法と装置を提供することである。また、このようなエキシマレーザ
の中のフッ素の減損を補償すると同時に、チャンバ内のクリプトンの減損を補償
することも、本発明の特定の目的の一つである。本発明のさらなる一つの目的は
、エキシマレーザ内の各ガスの相対比率の実測を必要とせずに、レーザ内のガス
混合物を補充するための完成された方法を提供することである。
これらの目的と他の一般的な目的は、一対のガス補充源が第1ガス混合物を供
給する第1ガス源と、第2ガス混合物を供給する第2ガス源を備える、ガスレー
ザ内のガス混合物を補充するための方法と装置を提供することによって達成され
る。
好ましい一実施態様では、本発明は、ガス混合物がフッ素とクリプトンとネオ
ンを含み、エキシマレーザのガスレイジングチャンバ内のガス混合物を変更する
ための方法を提供する。この方法は、望みの組成とチャンバ内のガス混合物の実
際の組成との差を測定するステップと、フッ素/ネオン・ガス混合物のチャンバ
へのポンプ移送を選択し、チャンバ内のガス混合物の実際の組成を望みの組成に
向けて調節するのに十分な量だけ、その都度チャンバ内のガス混合物の一部を選
択的に放出して、クリプトン/ネオン・ガス混合物をチャンバの中に選択的にポ
ンプで送るステップとを含む。
この好ましい実施態様では、ガス混合物の望みの組成は、フッ素が約0.1パ
ーセント、クリプトンが1.0パーセント、およびネオンが98.9パーセント
である。フッ素/ネオン・ガス混合物は、フッ素が約1.0パーセント、ネオン
が99パーセントという組成を有する。クリプトン/ネオン・ガス混合物は、ク
リプトンが約1.0パーセント、ネオンが99パーセントという組成を有する。
望みの組成と実際の組成との差を測定するステップは、エキシマレーザの動作効
率の所望効率レベルからの差を検出するステップを含む。代替案として、過去の
経験に基づく予測から組成の変化を測定するための経験をベースとする方法を採
用してもよい。
第2の実施態様では、本発明は、エキシマレーザのガスチャンバ内のガス混合
物を変更する装置を提供する。そのガスチャンバは、フッ素とクリプトンとネオ
ンとを含むガス混合物を含んでいる。この装置は、
フッ素/ネオン・ガス混合物をチャンバの中に選択的にポンプで送るための第
1ポンプ手段と、
クリプトン/ネオン・ガス混合物をチャンバの中に選択的にポンプで送るため
の第2ポンプ手段と、
チャンバ内のガス混合物の一部分を選択的に放出させるための取出し手段と、
ガスチャンバ内の実際のガス組成を望みのガス組成に変えるために、第1ポン
プ手段と第2ポンプ手段と取出し手段との動作を制御するための制御手段と
を備えている。
この装置の好ましい実施態様では、望みのガス組成とチャンバ内の実際のガス
組成との間の差を測定するための手段が用意されている。
この測定手段は、エキシマレーザの動作効率の最初の効率レベルからの変化を
検出する。制御手段は、ガス混合物をチャンバに追加すべき時と量を含む最適ガ
ス混合物補充パラメータを決定するための、レーザの動作パラメータの変化を監
視するエキスパート・システムを含むこともある。
本発明の方法と装置の両方において、フッ素/ネオンおよびクリプトン/ネオ
ンのための個別源を設けることによって、エキシマレーザ内のガスの完全な交換
を必要とすることなく、クリプトンの減損を補償することが可能になる。さらに
、取出し性能と組み合わせた一対のガス源を設けることによって、エキシマレー
ザ内のガス混合物の実際の組成を、改良を加えた正確な方法で変更し、より長い
時間にわたって最適のガス混合物の組成を維持することができる。こうして、完
全なフラッシングとガス混合物交換との間の期間は長くなり、チャンバ中で使用
するために必要なガスの全体コストは最低限に抑えられる。
こうして、上記の本発明の一般目的は達成される。その他の目的および利点は
、これから挙げる本発明の詳細な説明から明らかになろう。
図面の簡単な説明
本発明の好ましい実施形態に関する下記の詳細な説明および添付の図面によっ
て、本発明はより完全に理解されよう。添付の図面において、
第1図は、本発明の好ましい実施形態によるガス補充装置を備えたエキシマレ
ーザをいくらか概略的に示すブロック図である。
第2図は、特に第1図に示すエキシマレーザ装置で使用するためのガス補充方
法を示すブロック図である。
発明の詳細な説明
第1図と第2図を参照して、本発明の好ましい実施形態をこれから説明する。
第1図は、フッ素とクリプトンとネオンの混合物で満たされたガス・レイジン
グ・チャンバ12を有するエキシマレーザ10の一部分を示す。チャンバ12の
内部で発生する干渉性レーザ光線を放射するために、一対の窓14、16をチャ
ンバ12の対向端に設ける。窓14を通過するレーザ光線を受け取るために、窓
14の近くに波長計18を位置付ける。波長計18は、チャンバ12から放射さ
れるレーザ光線の正確な波長と帯域幅を測定するための機構を含む。波長計18
はまた、レーザ光線の出力と利得を測定するための機構も含む。波長計18は、
それぞれ出力回線20と22に沿った利得と波長を示す信号を出力する。出力線
20に沿って出力される利得信号はレーザ制御機構23によって受け取られる。
レーザ制御機構23はエキシマレーザ10の動作を制御して、レーザチャンバ1
2の中で発生するレーザ光線の利得を調節する。レーザ制御機構23はまた、レ
ーザ光線を望みのパルス繰返し数のパルスにするように動作することも好ましい
。
線22に沿って波長計18から出力される波長信号は、チャンバ12の内部で
発生するレーザ光線の波長を調節するラインナローイング(line-narrowing)機
構24によって受信される。こうして、波長計18とラインナローイング機構2
4を設けることによって、エキシマレーザ10によって発生したレーザ光線の利
得と波長を制御して、望みの利得と周波数を達成することもできる。制御機構2
3が、連続的ではなくパルス状のレーザ光線を作るために、チャンバ12の内部
で発生するレーザ光線を脈動させるように動作することが好ましい。ここまで説
明したエキシマレーザ10の構成要素は従来型の設計と制作でもよく、ここでは
さらに詳しい説明はしない。しかしながら、一つの好ましいエキシマレーザ組立
品が、本出願の譲受人に譲渡された「レーザの壁に絶縁状態で取り付けられた電
極を含むコンパクトなエキシマレーザ」なる名称の米国特許第4959840号
に記載されている。エキシマレーザとともに使用するための一つの好ましい波長
計が、やはり本出願の譲受人に譲渡された「光線の波長を調整するためのシステ
ムとその方法」なる名称の米国特許第5025445号に記載されている。米国
特許第4959840号と同第5025445号は両方ともここに参照として組
み込まれている。
ここまで説明した構成要素に加えて、エキシマレーザ10は、全体として30
で示されるガス補充装置を含む。ガス補充装置30は、フッ素/ネオン・ガス・
ポンプ32、クリプトン/ネオン・ガス・ポンプ34、および取出し機構36を
含む。フッ素/ネオン・ガス・ポンプ32は、入口ポート38を介してチャンバ
12に連結されている。フッ素/ネオン・ガス・ポンプ32は、選択された量の
フッ素/ネオン・ガス混合物をチャンバ12の中にポンプで送るための適切な機
構を含む。クリプトン/ネオン・ガス・ポンプ34は、入口ポート40を介して
チャンバ12に連結されており、望みの量のクリプトン/ネオン・ガス混合物を
チャンバ12の中にポンプで送るための適切な機構を含む。取出し機構36は、
チャンバ12の出力ポート42に連結され、望みの量のガス混合物をチャンバ1
2から選択的に放出するための機構を含む。ポンプ32、34と取出し機構36
の各々には、これらの動作を制御するための制御機構44が連結されている。制
御機構44は構成要素として下記のエキスパート・システム46を含むこともあ
る。
チャンバ12を当初、フッ素0.1パーセント、クリプトン1.0パーセント
、およびネオン98.9パーセントの組成を有するフッ素とクリプトンとネオン
の予備混合物によって充填することが好ましい。予備混合物源48は、予備混合
物によってチャンバ12を初期充填するために、入口ポート50を通じてチャン
バ12に連結されている。上述の相対的ガスチャンバ混合物によって、エキシマ
レーザ10が248ナノメートルの波長を有するレーザ光線を発生することが好
ましい。波長計18とラインナローイング機構24は共同で動作して、1ピコメ
ートル以下の帯域幅(半値全幅)を有する248ナノメートルの望みの波長でレ
ーザ光線の波長を維持する。
上記の正確な組成を有する予備混合物を最初に与えたとしても、チャンバ12
内の混合物は、エキシマレーザ10の動作中は時間の関数として変化する。詳細
にいえば、多分レーザチャンバ12内部の他の材料すなわち合成物との反応によ
って、動作中にフッ素の一部分が減損する。クリプトンとネオンも、多分チャン
バ12からの漏れによって、程度は低いがレーザの動作中に減損する。この結果
として、チャンバ12内の混合物の相対的組成は時間の関数として変化し、本来
の予備混合物の組成からはいくらか実質的に偏る可能性がある。ガス混合物の組
成からの実質的な変化は、レーザ利得の全般的な低下と達成可能な正確な波長と
帯域幅のずれを含み、レーザの効率に影響する可能性がある。組成の変化はまた
、レーザ光線を望みの繰返数でパルスさせる能力にも影響することがある。補充
装
置30は、チャンバ12内の組成を最初の予備混合物の組成に維持するために動
作する。言い換えれば、補充装置30は、フッ素とクリプトンとネオンがチャン
バから減損するにつれて、これらを補充するために動作する。
フッ素とクリプトンの両方を独立してチャンバ12内で補充できるように、個
別のフッ素/ネオンおよびクリプトン/ネオンのガス源を設ける。フッ素/ネオ
ン・ポンプ32は1パーセントのフッ素と99パーセントのネオンの混合物を供
給する。クリプトン/ネオン源34は1パーセントのクリプトンと99パーセン
トのネオンの混合物を供給する。取出し機構36はチャンバ12内の混合物の一
部分を除去できるようにする。
一例として、クリプトンの実質的な減損がなく、フッ素が減損するとすれば、
フッ素/ネオン・ガス源32は、チャンバ12内部のフッ素の率を増加させるた
めにチャンバ12に望みの量のフッ素/ネオンを追加するように制御される。結
果としてチャンバ12の内部の全体圧力が望みの量を超過した場合には、取出し
機構36を使用して超過分のガスをチャンバ12から除去することもできる。特
に取出し方法を36において使用した結果として、チャンバ12内のクリプトン
/ネオンのレベルが大幅に減損した場合には、クリプトン/ネオン源34が動作
し、チャンバ12に一定量のクリプトン/ネオンを追加して減損したクリプトン
を補償する。一般にフッ素/ネオン源32、クリプトン/ネオン源34、および
取出し機構36の動作は、混合物を最初の予備混合物の組成にできるだけ近く維
持するように制御される。ガス混合物を変更するために種々のポンプと取出し機
構を同時に動作させてもよい。ポンプおよび取出し機構のトグル動作に加えて、
各ガスがチャンバ12と交換する速度を制御機構44が制御することもできる。
これに関して、ガスのチャンバ12に入る流速、およびこれから出る流速を制御
するために、第1図には示されていないガス流レギュレータを採用することもで
きる。
ポンプ32、34および取出し機構36の動作を自動的に制御するために、制
御機構44は、それぞれ信号線52、54に沿ってラインナローイング機構24
と波長計18からの信号を受け取る。これらの線に沿って受け取った信号から、
制御機構44は種々のガス混合物成分が減損する範囲を測定し、したがってポン
プ32、34と取出し機構36を制御して減損を補償する。レーザの利得、波長
、および帯域幅は例示的なパラメータであり、これらから制御機構44はガス混
合物内の偏りを測定するが、その際、レーザのパルス繰返数、温度、レーザチャ
ンバの圧力、ならびに他の一般的動作パラメータを含む他のパラメータも採用す
ることがある。利得、波長、帯域幅などの様々なレーザ動作パラメータは、全体
的なレーザ「効率」を定義する。種々の動作パラメータに対するガスチャンバ組
成の関係は、経験的な方法によって予め決定される。言い換えれば、ガス混合物
は、パラメータの変化を補償するための効果的な方針を決定するために、動作パ
ラメータの変化にしたがって選択的に変えられる。成功しない方針は破棄される
。成功することが認められる方針は制御ユニット44の中の論理に合併される。
例えば、レーザの利得の実質的な低下が通常フッ素減損の結果であると決定され
た場合には、このような関係が、レーザ利得の低下に応じてフッ素を追加するよ
うに動作する制御ユニット44の論理の中にプログラミングされる。
制御機構44は、動作パラメータの変化に応じてポンプと取出し機構の動作を
制御するのに必要な論理を与えるソフトウェアとデータベースを備えた、プログ
ラマブル・コンピュータであることが好ましい。プログラムとデータベースは、
エキシマレーザ10の履歴を保持し、これまでの経験に基づいてポンプと取出し
機構の動作を最適の方法で制御するエキスパート・システム46を含むことが好
ましい。エキスパート・システム46は、時間の関数としてシステムの動作パラ
メータの履歴、ならびにポンプと取出し機構の制御の履歴を含むデータベースを
保持することが好ましい。この方法で、また適切なプログラミングによって、エ
キスパート・システム46は、レーザの動作パラメータの望ましくない変化を補
償するために、ポンプと取出し機構の動作をいかに最良に制御するかを決定する
。
エキスパート・システムを有するプログラムされた制御機構が、ポンプと取出
し機構の動作を制御するための好ましい機構であるが、このようなことは必要で
はない。代替案として、自動制御機構を設けない。これによることなく、図示さ
れていない適切なセンサを使用してオペレータによって検出された動作パラメー
タの変化に応じて、ポンプと取出し機構をオペレータが手動で制御する。さらに
、制御機構は、種々のセンサによって検出されたレーザ・パラメータの変化に応
じ
て操作されるのが好ましいが、このようなことは必要ではない。これによること
なく、ポンプと取出し機構を、単に先に決定された制御計略に基づいて制御して
もよい。例えば、フッ素とクリプトンがレーザの動作中にある量だけ常に減損す
るとわかった場合には、ポンプ32、34と取出し機構36を、レーザ10の動
作を実際に監視することなく、フッ素とクリプトンのレベルを維持するための所
定の方針にしたがって制御することもできる。
さらに、チャンバ12内の相対的組成を直接測定するための機構が採用されな
いと認識されても、レーザの動作パラメータの変化からガス混合物の変化を測定
する必要性をなくすような機構を適切に設けることもできる。このような情況で
、制御システム44は単にチャンバ12内の各ガスの実測組成を監視し、そして
混合物におけるあらゆる変化を補償するためにポンプ32、34と取出し機構3
6を適切に制御するだけである。
さらにまた、予備混合物源48がガスの最適組成をもたらすことが予期されて
も、このような必要はない。予備混合物の組成が最適でないことがわかった場合
には、制御機構44は、予備混合物とは異なる最適混合物を達成するようにポン
プと取出し機構を制御することもある。例えば、予備混合物が低すぎる率のフッ
素を有することがわかった場合には、チャンバ12が予備混合物で充填された後
に、直ちにフッ素の量を増加するためにガス補充機構30を操作することもでき
る。
上記から認識される通り、すべてが本発明の一般原理にしたがう、多数の特定
の実施形態を採用することができ、また種々の方針を使用することができる。
補充機構30が動作するにもかかわらず、チャンバ12内の混合物が周期的に
取り出されて交換されることが理解されよう。こうして、補充装置の動作は、チ
ャンバから取り出してガスを交換する必要性を必ずしも完全になくそうというも
のではない。むしろ補充機構の動作は主として、システムの必要なガス交換の間
の期間を延長し、この期間中に最適の混合物を保持するために設けられる。
エキシマレーザの中のガス混合物を補充し保持する方法を第2図に示す。最初
にステップ200で、エキシマレーザのガスチャンバを、フッ素とクリプトンと
ネオンの好ましい最適組成を有する予備混合物で満たす。ステップ102で、エ
キシマレーザを活動化する。ステップ104で、レーザの動作パラメータを検出
する。動作パラメータは、レーザの利得、周波数、および帯域幅、ならびにレー
ザの繰返数を含むことができる。
ステップ106で、システムは動作パラメータの変化の原因となるガス混合物
の変化を測定する。次にステップ108で、個別のフッ素/ネオン源とクリプト
ン/ネオン源と取出し機構を制御して、最適混合物を維持するためにガス混合物
の変化を補償する。第2図の線110で示すフィードバック・ループのように、
エキシマレーザ10の制御が進行する。このように、システムはレーザの動作パ
ラメータを連続的に監視し、したがって個別のガス源と減損機構を制御して最適
の全体的レーザ効率を維持する。
このように、第2図は本発明の方法ステップの概要を示す図である。システム
の実際の動作は上記のように多くの要因に依存するが、様々なガス補充方針を採
用することができる。特に、システムはシステムの動作パラメータの実際の変化
を検出することを必要とせず、代わりに、所定の経験に基づく補充方針を使用し
てガス補充を制御することもある。
以上説明した内容は、エキシマガスレーザ内部のガス混合物を補充するための
方法と装置である。ここではフッ素/クリプトン・エキシマレーザを参照して説
明したが、本発明はその他のエキシマレーザおよびその他のガスレーザに適用す
ることができる。一般に、本発明の原理は、独立した減損を被る2種類またはそ
れ以上の個別ガス成分を使用するすべてのガスレーザ・システムにおいて有利に
活用することができる。したがって、ここに記載した例示的実施形態は単に本発
明の説明のためであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【手続補正書】特許法第184条の7第1項
【提出日】1996年1月1日
【補正内容】
補正請求の範囲
1. ハロゲン、第1希ガス、および第2希ガスを含み、かつ望みの組成を有し
ている、ガスレーザのガスチャンバ内のガス混合物を変更するための方法であっ
て、
望みのガス組成とガスチャンバ内の実際のガス混合物の組成との間の差を測定
するためのステップと、
ガスチャンバに追加すべきハロゲン・第1希ガス・第2希ガスの混合物の第1
の量と、ガスチャンバに追加すべき第1希ガス・第2希ガス混合物の第2の量と
を決定するためのステップと、
前記のハロゲン・第1希ガス・第2希ガスの混合物の前記の第1量を前記のチ
ャンバに選択的にポンプで送るステップと、
前記の第1希ガスと第2希ガスの混合物の前記の第2量を前記のチャンバに選
択的にポンプで送るステップと、
前記のチャンバの中のガス混合物の一部を選択的に放出するステップと
を含み、上記のステップの各々が、チャンバ内のガス混合物の実際の組成を望み
の組成に向けて調節するのに十分な量だけ実施されることを特徴とする方法。
2. 前記のガスレーザの動作効率の望みの効率レベルからの差を検出すること
によって、ガス混合物の望みの組成とガス混合物の実際の組成との差を測定する
ステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
3. 前記のハロゲンがフッ素であり、前記の第1希ガスがクリプトンであり、
前記の第2希ガスがネオンである請求項1に記載の方法。
4. 前記のチャンバの前記のガス混合物が、ほぼフッ素0.1%、クリプトン
1.0%、およびネオン98.9%である望みの組成を有する請求項3に記載の
方法。
5. 前記のハロゲン・第1希ガス混合物・第2希ガス混合物が、ほぼフッ素1
.0%とクリプトン1.0%とネオン98%の組成を有する請求項4に記載の方
法。
6. 前記の第1希ガスと第2希ガスの混合物が、ほぼクリプトン1.0%とネ
オン99%の組成を有す、請求項4に記載の方法。
7. フッ素、クリプトン、およびネオンを含み、ほぼフッ素0.1%、クリプ
トン1.0%、およびネオン98.9%である望みの組成を有している、エキシ
マレーザのガスチャンバ内のガス混合物を変更するための方法であって、
望みの組成と前記のチャンバ内のガス混合物の実際の組成との差を測定するス
テップと、
ガスチャンバに追加すべきフッ素・クリプトン・ネオンの混合物の第1の量と
、ガスチャンバに追加すべきクリプトンとネオンの混合物の第2の量とを決定す
るためのステップと、
フッ素・クリプトン・ネオン・ガス混合物がほぼフッ素1.0%とクリプトン
1.0%とネオン98%の組成を有し、このフッ素・ネオン・ガス混合物の第1
量を前記のチャンバに選択的にポンプで送り、クリプトンとネオンのガス混合物
がほぼクリプトン1.0%とネオン99%の組成を有し、このクリプトンとネオ
ンのガス混合物の第2量を前記のチャンバに選択的にポンプで送り、そして前記
のチャンバ内におけるガス混合物の実際の組成を望みの組成に向けて調節するの
に十分な量だけ、前記のガス混合物の一部分を前記のチャンバから選択的に放出
するステップと
を含む方法。
8. ガス混合物の望みの組成とガス混合物の実際の組成との差を測定する前記
のステップが、前記のエキシマレーザの動作効率の初期効率レベルからの変化を
検出するステップを含む請求項7に記載の方法。
9. ハロゲン、第1希ガス、および第2希ガスの望みの組成を有しているガス
混合物を内部に有するガスチャンバ内の前記ガス混合物を変化させるガスレーザ
の装置であって、
ハロゲン・第1希ガス・第2希ガスの混合物を前記のチャンバの中に選択的に
ポンプで送る第1ポンプ手段と、
第1希ガスと第2希ガスの混合物を前記のチャンバの中に選択的にポンプで送
る第2ポンプ手段と、
前記のチャンバ内のガス混合物の一部分を選択的に放出させる取出し手段と、
前記のガスチャンバ内の実際のガス組成を望みのガス組成に変えるために、第
1ポンプ手段と第2ポンプ手段と取出し手段との動作を個別に制御する制御手段
と
を含む装置。
10. 望みのガス組成と前記のチャンバ内の実際のガス混合物の組成との間の
差を測定する手段をさらに含み、前記の制御手段は前記の測定に応じて動作する
請求項9に記載の装置。
11. 望みの組成と実際の組成との差を測定するための前記の手段が、前記の
ガスレーザの動作効率の初期効率レベルからの変化を検出するための手段を含む
請求項10に記載の装置。
12. 前記の制御手段がエキスパート・システムを含む請求項9に記載の装置
。
13. 前記のハロゲンがフッ素であり、前記の第1希ガスがクリプトンであり
、前記の第2希ガスがネオンである請求項9に記載の装置。
14. 前記のチャンバ内の前記のガス混合物が、ほぼフッ素0.1%、クリプ
トン1.0%、およびネオン98.9%である望みの組成を有する請求項13に
記載の装置。
15. 前記のハロゲン・第1希ガス・第2希ガスの混合物が、ほぼフッ素1.
0%、クリプトン1.0%、ネオン98%の組成を有する請求項14に記載の装
置。
16. 前記の第1希ガスと第2希ガスの混合物が、ほぼクリプトン1.0%と
ネオン99%の組成を有する請求項14に記載の装置。
17. エキシマレーザのガスチャンバ内の、フッ素、クリプトン、およびネオ
ンを含み、ほぼフッ素0.1%、クリプトン1.0%、およびネオン98.9%
である望みの組成を有するガス混合物を変更するための装置であって、
フッ素・クリプトン・ネオンのガス混合物がほぼフッ素1.0%とクリプトン
1.0%とネオン98%の組成を有し、このフッ素・クリプトン・ネオンのガス
混合物を前記のチャンバに選択的にポンプで送るための第1ポンプ手段と、
クリプトン/ネオン・ガス混合物がほぼクリプトン1.0%とネオン99%の
組成を有し、このクリプトン/ネオン・ガス混合物を前記のチャンバに選択的に
ポンプで送るための第2ポンプ手段と、
前記のチャンバ内の前記のガス混合物の一部分を選択的に放出するために取出
し手段と、
前記のチャンバ内におけるガス混合物の実際の組成を望みの組成に向けて変化
させるために、前記の第1ポンプ手段と第2ポンプ手段と取出し手段の動作を制
御するための制御手段と
を含む装置。
18.望みのガス組成と前記のチャンバ内の実際のガス混合物の組成との間の差
を測定するための手段をさらに含み、前記の制御手段は前記の測定に応じて動作
する請求項17に記載の装置。
19.望みの組成と実際の組成との差を測定するための前記の手段が、前記のエ
キシマレーザの動作効率の初期効率レベルからの変化を検出するための手段を含
む請求項18に記載の装置。
20.前記の制御手段がエキスパート・システムを含む請求項17に記載の装置
。
【手続補正書】
【提出日】1997年11月19日
【補正内容】
請求の範囲
1. ハロゲン、第1希ガス、および第2希ガスを含み、かつ望みの組成を有し
ている、ガスレーザのガスチャンバ内のガス混合物を変更するための方法であっ
て、
望みのガス組成とガスチャンバ内の実際のガス混合物の組成との間の差を測定
するためのステップと、
ガスチャンバに追加すべきハロゲン・第1希ガス・第2希ガスの混合物の第1
の量と、ガスチャンバに追加すべき第1希ガス・第2希ガス混合物の第2の量と
を決定するためのステップと、
前記のハロゲン・第1希ガス・第2希ガスの混合物の前記の第1量を前記のチ
ャンバに選択的にポンプで送るステップと、
前記の第1希ガスと第2希ガスの混合物の前記の第2量を前記のチャンバに選
択的にポンプで送るステップと、
前記のチャンバの中のガス混合物の一部を選択的に放出するステップと
を含み、上記のステップの各々が、チャンバ内のガス混合物の実際の組成を望み
の組成に向けて調節するのに十分な量だけ実施されることを特徴とする方法。
2. 前記のガスレーザの動作効率の望みの効率レベルからの差を検出すること
によって、ガス混合物の望みの組成とガス混合物の実際の組成との差を測定する
ステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
3. 前記のハロゲンがフッ素であり、前記の第1希ガスがクリプトンであり、
前記の第2希ガスがネオンである請求項1に記載の方法。
4. 前記のチャンバの前記のガス混合物が、ほぼフッ素0.1%、クリプトン
1.0%、およびネオン98.9%である望みの組成を有する請求項3に記載の
方法。
5. 前記のハロゲン・第1希ガス混合物・第2希ガス混合物が、ほぼフッ素1
.0%とクリプトン1.0%とネオン98%の組成を有する請求項4に記載の方
法。
6. 前記の第1希ガスと第2希ガスの混合物が、ほぼクリプトン1.0%とネ
オン99%の組成を有す、請求項4に記載の方法。
7. フッ素、クリプトン、およびネオンを含み、ほぼフッ素0.1%、クリプ
トン1.0%、およびネオン98.9%である望みの組成を有している、エキシ
マレーザのガスチャンバ内のガス混合物を変更するための方法であって、
望みの組成と前記のチャンバ内のガス混合物の実際の組成との差を測定するス
テップと、
ガスチャンバに追加すべきフッ素・クリプトン・ネオンの混合物の第1の量と
、ガスチャンバに追加すべきクリプトンとネオンの混合物の第2の量とを決定す
るためのステップと、
フッ素・クリプトン・ネオン・ガス混合物がほぼフッ素1.0%とクリプトン
1.0%とネオン98%の組成を有し、このフッ素・ネオン・ガス混合物の第1
量を前記のチャンバに選択的にポンプで送り、クリプトンとネオンのガス混合物
がほぼクリプトン1.0%とネオン99%の組成を有し、このクリプトンとネオ
ンのガス混合物の第2量を前記のチャンバに選択的にポンプで送り、そして前記
のチャンバ内におけるガス混合物の実際の組成を望みの組成に向けて調節するの
に十分な量だけ、前記のガス混合物の一部分を前記のチャンバから選択的に放出
するステップと
を含む方法。
8. ガス混合物の望みの組成とガス混合物の実際の組成との差を測定する前記
のステップが、前記のエキシマレーザの動作効率の初期効率レベルからの変化を
検出するステップを含む請求項7に記載の方法。
9. ハロゲン、第1希ガス、および第2希ガスの望みの組成を有しているガス
混合物を内部に有するガスチャンバ内の前記ガス混合物を変化させるガスレーザ
の装置であって、
ハロゲン・第1希ガス・第2希ガスの混合物を前記のチャンバの中に選択的に
ポンプで送る第1ポンプ手段と、
第1希ガスと第2希ガスの混合物を前記のチャンバの中に選択的にポンプで送
る第2ポンプ手段と、
前記のチャンバ内のガス混合物の一部分を選択的に放出させる取出し手段と、
前記のガスチャンバ内の実際のガス組成を望みのガス組成に変えるために、第
1ポンプ手段と第2ポンプ手段と取出し手段との動作を個別に制御する制御手段
と
を含む装置。
10. 望みのガス組成と前記のチャンバ内の実際のガス混合物の組成との間の
差を測定する手段をさらに含み、前記の制御手段は前記の測定に応じて動作する
請求項9に記載の装置。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD),AM,AT,
AU,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C
Z,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU
,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,LR,
LT,LU,LV,MD,MG,MN,MW,NL,N
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,SK,TJ,TT,UA,UZ,VN