【発明の詳細な説明】
形態形成タンパク質発現を調節するための方法および組成物関連出願の参照
本出願は、USSN 07/667,274(1991年3月11日出願)の一部継続出願である、U
SSN 07/752,861(1991年8月30日出願)の一部継続出願である、USSN 07/938,02
1(1992年8月28日出願)の一部継続出願である、USSN 08/255,250(1994年6月
7日出願)の一部継続出願である(これらの開示は本明細書中で参考として援用
される)。発明の分野
本発明は、一般的には薬剤スクリーニングアッセイの分野に関する。さらに詳
細には、本発明は、真正組織形態形成タンパク質の産生を調節する分子を同定す
るための方法および組成物に関する。発明の背景
そのメンバーが真正組織形態形成タンパク質であるクラスのタンパク質が近年
同定されている。このクラスのタンパク質のメンバーは、天然に存在する組織に
必要とされるすべての血管組織および結合組織の形成を包含する、新たな器官特
異的組織の形成に至る細胞および分子事象の発達カスケードを誘導し得るとして
特徴付けられる。具体的には、このモルフォゲンは、形態形成を許容する環境に
おいて以下の生物学的機能を全て誘導し得る:(1)原性細胞(progenitor cell)の
増殖を刺激すること;(2)原性細胞の分化を刺激すること;(3)分化細胞の増殖を
刺激すること;(4)分化細胞の増殖および維持をサポートすること。例えば、形
態形成タンパク質は、間葉細胞の移動および増殖、軟骨細胞の増殖および分化、
軟骨基質の形成および石灰化、血管浸潤、骨芽細胞増殖、骨形成、骨再造形、お
よび造血性骨髄分化を包含する骨組織形態形成の完全発達カスケードを誘導し得
る。これらのタンパク質はまた、象牙質、肝臓、神経組織を含む非軟骨組織の真
正組織形態形成を誘導することが示されている。
特に有用な組織形態形成タンパク質は、米国特許第5,011,691号;米国特許第5
,266,683号およびOzkaynakら、(1990) EMBO J.9:2085-2093に記載されるヒトOP
-1 (骨形成タンパク質-1)である。今までに同定された種ホモログ(species homo
logue)はマウスOP-1(米国特許第5,266,683号参照)およびショウジョウバエホモ
ログ60A(Whartonら、(1991) PNAS 88:9214-9218に記載)である。他の近縁のタン
パク質として、OP-2(Ozkaynak(1992)J .Biol.Chem. 267:25220-25227および
米国特許第5,266,683号);BMP5、BMP6(Celesteら、(1991) PNAS 87:9843-9847)
およびVgr-1(Lyonsら、(1989))が挙げられる。これらの開示は本明細書中で参考
として援用される。
これらの組織モルフォゲンを動物に投与して欠損組織または損傷組織を再生し
得ることが以前から意図されていた。あるいは、インビボで部位にモルフォゲン
を供給するための手段として、内因性組織モルフォゲンの発現を調節し得る分子
を投与することを意図し得る。
本発明の目的は、内因性組織モルフォゲン、特にOP-1および近縁の遺伝子の発
現を調節し得る化合物をスクリーニングするための組成物および方法を提供する
ことである。このように同定された化合物は、インビトロとインビボの両方での
有用性を持つ。意図される有用な化合物として、OP-1遺伝子の転写および/また
は翻訳を刺激し得る化合物ならびにOP-1遺伝子の転写および/または翻訳を阻害
し得る化合物が挙げられる。
本発明のこれらのおよび他の目的ならびに特徴は、以下の説明、図面、および
請求の範囲から明らかである。発明の要旨
本発明の特徴は、生物において内因性OP-1の有効局部量または有効全身量を調
節する能力について、候補化合物をスクリーニングするための組成物および方法
、ならびに同定された化合物を生成するための方法である。1つの局面において
、この方法は以下の工程により実施される:(1)リポーター遺伝子と作動可能に
連結したOP-1非コードDNA配列部分(この配列は連結するレセプター遺伝子の発現
に作用および影響し得る)をコードするDNA配列でトランスフェクトした細胞を用
い
て1つ以上の候補化合物をインキュベートする工程;(2)トランスフェクトした
細胞におけるリポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程、および(3)候補化
合物の存在下で発現されたリポーター遺伝子のレベルと候補化合物の非存在下で
発現されたリポーター遺伝子のレベルとを比較する工程。関連する局面において
、本発明の特徴は、本発明の方法の使用により同定された化合物である。
本発明のスクリーニング方法は、1つ以上の候補化合物に曝露した後に細胞に
より発現されたリポーター遺伝子産物のレベルの変化を測定する簡易な方法を提
供する。所定の細胞培養において発現されるリポーター遺伝子産物のレベル、ま
たは1つ以上の化合物への曝露により生じるこのレベルの変化は、化合物の適用
により、発現され、そして通常非コード配列と連結されるモルフォゲンのレベル
を調節し得ることを示し、具体的には、リポーター遺伝子発現レベルの増加は、
候補化合物のインビボでのOP-1発現を増加させる能力を示す。同様に、リポータ
ー遺伝子発現レベルの減少は、候補化合物のインビボでのOP-1発現を減少させる
かそうでなければ阻害する能力を示す。
本発明の方法および組成物を用いて、インビボおよびエキソビボでの種々の哺
乳動物適用のための治療剤としての有望性を示す化合物を同定し得、ならびに多
くの有用性を有する化合物を同定し得る。例えば、疾患状態を矯正または緩和す
る、欠損組織または損傷組織を再生する、細胞増幅および分化を誘導する、なら
びに/あるいはインビボまたはエキソビボで、組織および細胞の生存性および/ま
たは分化した表現型を維持するために、モルフォゲン発現誘導化合物をインビボ
で用い得る。これらの化合物はまた、培養中の細胞の生存性および分化表現型を
維持するためにも用いられ得る。本明細書で記載される形態形成タンパク質の、
インビボ、エキソビボ、およびインビトロでの種々の有用性および応用は当該分
野で十分に裏付けされている。例えば、米国特許第92/01968号(WO 94/03200)(19
92年3月11日出願);米国特許第92/07358号(WO 93/04692)(8月28日出願);PCTU
S 92/0743(WO 93/05751)(1992年8月28日出願);米国特許第93/07321(WO 94/032
00)(1993年7月29日出願;米国特許第93/08808号)(WO 94/06449)(1993年9月16
日出願);米国特許第93/08885号(WO 94/06420)(1993年9月15日出願);および米
国特許第5,266,683号を参照のこと。
本明細書中で記載される方法、キットおよび組成物により同定されるモルフォ
ゲン発現阻害化合物を用いて、細胞におけるモルフォゲン発現の程度および/ま
たはその効果を調節し得る。このような化合物をインビトロおよびインビボの両
方で用いて、モルフォゲンの生成および/または利用可能な濃度をより厳密に調
節し得る。有用な用語のリストおよび定義
本明細書中で使用される用語「遺伝子発現」とは、目的のDNA配列によりコー
ドされるタンパク質産物の産生(DNA配列の転写およびmRNA転写物の翻訳を包含す
る)を示すことと理解される。
本明細書中で使用される「作動可能な連結」とは、記載されるDNA配列の、同
時転写されるリーディングフレーム内でのリポーター遺伝子との融合、またはリ
ポーター遺伝子の発現を調節し得る相対的位置でのリポーター配列との融合をい
う。
本明細書で使用される「ベクター」とは、目的のヌクレオチド配列を含み、宿
主細胞中に取り込まれ得、そして宿主細胞ゲノムと組換えられ、そして宿主細胞
ゲノムに組み込まれる任意の核酸を意味すると理解される。このようなベクター
として、直鎖状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、YAC'S(酵母人工染
色体)などが挙げられる。
本明細書中で使用される「非コード領域」または「非コードDNA」は、RNA配列
に転写されないDNA配列および/またはタンパク質に翻訳されないRNA配列を包含
する。この部類の「非コード配列」は、本出願における参照を容易にするために
規定され、開始コドンを示すATG部位に対して5'に存在する配列および停止コド
ンに対して3'の配列、ならびに遺伝子のコード領域中に存在する介在イントロ
ン配列を包含する。本明細書中で使用される「OP-1特異的」非コード配列は、自
然に存在する条件下でOP-1遺伝子座でOP-1特異的コード配列に隣接して存在する
非コード配列を定義すると理解される。この配列は、5'、3'およびイントロン
配列を含み得る。
本明細書中で使用される「その対立遺伝子、種および他の配列変異体」は、天
然に存在するかまたはOP-1非コードDNA配列中に遺伝子操作され、かつOP-1非コ
ード配列によるリポーター遺伝子の調節に実質的に影響を与えない点変異、挿入
および欠失を包含する。例えば、当業者は部位特異的変異誘発を用いて、例えば
欠失などにより、1つ以上の本明細書中に記載されるOP-1非コード配列を、改変
によりOP-1またはリポーター遺伝子の調節に影響を実質的に与えることなく改変
し得る。このような改変は、本明細書中で提供される開示の範囲内であると考え
られる。
本明細書中で使用される「Wt-1/Egr-1コンセンサス結合配列」または「Wt-1/E
gr-1コンセンサス結合エレメント」は、DNA結合タンパク質であるWt-1およびEgr
-1により結合されることが示されている9塩基の配列である。Wt-1/Egr-1結合部
位のコンセンサス配列は、GNGNGGGNG(配列番号4)に対する相同性により決定さ
れた(Rauscherら、Science 250:1259-1262(1990)(本明細書中で参考として援用
する))。
本明細書中で使用される「TCC結合配列」または「TCC結合エレメント」は、DN
A配列TCCの少なくとも3つの隣接または非隣接反復を含む約15〜20塩基の配列の
DNAである。ヒトOP-1ゲノムDNA中で同定されたTCC結合配列を配列番号5に示し
、そしてマウスOP-1ゲノムDNA中で同定されたTCC結合配列を配列番号6に示す。
TCC結合配列はまた、DNA結合タンパク質であるWt-1およびEgr-1により結合され
ることが示されている(Wangら、Proc .Natl.Acad.Sci. 90:8896-8900(1993);
Wangら、Biochem Biophys Res .Comm.、188:433-439(1992))。
本明細書中で使用される「FTZ結合配列」または「FTZ結合エレメント」は、DN
A結合タンパク質であるFushi-tarazu(FTZ-F1)により結合されることが示されたF
ushi-tarazu DNA配列(FTZ)である。ヒトOP-1ゲノムDNA中で同定されたFTZ結合配
列を配列番号7に示す。核ホルモンレセプタースーパーファミリーについてのコ
ンセンサス配列であるFTZコンセンサス配列は、YCAAGGYCRである。
本明細書中で使用される「ステロイド結合配列」または「ステロイド結合エレ
メント」は、活性化するシグナル分子に対する応答において、1つ以上のエレメ
ントにより結合されることが示されたDNA配列である。このような「活性化シグ
ナル分子」の例として、レチノイド、ビタミンDが挙げられ、またエストロゲン
およびプロゲステロンのようなステロイドも挙げられる。有用なエレメントは、
FTZ-F1タンパク質、Wt-1およびEgr-1を含むことが意図される。核レセプターフ
ァミリーの活性化シグナル分子は、ホモダイマー、ヘテロダイマーまたはモノマ
ーとしてDNAに結合することが近年示されている(Parker,M.G.、Curr.Op.Cell
Biol.、1993、5:499-504)。核レセプターファミリー分子間のヘテロダイマーの
形成は、これらの核レセプターにより認識される結合エレメントの多様性を顕著
に増加させ得、そして特異的結合部位を含む遺伝子のディファレンシャルな調節
を提供する。さらに、核レセプターは、転写因子などの他のアクセサリー因子(a
ccessory factor)と相互作用し、転写を刺激または抑制することが示されている
。核レセプターとアクセサリー因子との間のこれらの相互作用は、広く異なる転
写活性を有する非常に多くの核レセプター/アクセサリー因子相互作用が存在し
得ることを示す。
本発明の方法は、単一の細胞に関して記載するが、当業者に理解されるように
、これは説明を容易にするために過ぎず、そしてこの方法は複数の細胞を用いて
最も効率的に行われる。
本発明の細胞および方法におけるDNA配列のトランスフェクションに関して、
核酸を細胞中に導入するための全ての手段が意図され、これにはCaPO4同時沈殿
、エレクトロポレーション、DEAE-デキストラン仲介取り込み、プロトプラスト
融合、マイクロインジェクションおよびリポフュージョンが含まれるが、これら
に限定されない。本発明に重要なのは、DNA取り込みが達成される機械的または
化学的プロセスよりむしろ、細胞をトランスフェクトするのに用いるDNA配列で
ある。
有用なリポーター遺伝子は、適切な宿主細胞へのトランスフェクトが容易であ
ること、確立されたアッセイプロトコルを用いる検出が容易であること、そして
遺伝子の発現が強く調節され得ることとしてを特徴付けされる。有用性を持つこ
とが意図される他のリポーター遺伝子として、ルシフェラーゼ遺伝子、グリーン
フルオレセントタンパク質(Green Fluorescent Protein、GFP)遺伝子、クロラム
フェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(CAT)、ヒト成長ホルモン、お
よびβ-ガラクトシダーゼが挙げられるがこれらに限定されない。さらなる有用
なリポーター遺伝子は、その発現が容易にアッセイされる任意の十分に特徴付け
された遺伝子であり、そしてこのようなリポーター遺伝子の例は、例えば、F.A.
Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、N
ew York、(1989)に見出され得る。当業者により理解されるように、列挙したリ
ポーター遺伝子は可能なリポーター遺伝子のごく一部に過ぎず、そして全ての利
用可能なリポーター遺伝子が列挙されていないのは説明を容易にするために過ぎ
ない。
記載される方法、ベクター、および細胞は、OP-1非コードDNA配列に作動可能
に連結したリポーター遺伝子の使用を示すが、配列番号1に示されるヒトOP1ま
たは米国特許第5,266,683号に開示されるマウスOP-1を含むDNA配列OP-1もまた、
適切なリポーター遺伝子の範囲内であることが当業者に理解される。リポーター
mRNAまたはリポーター遺伝子産物の存在についてのアッセイを容易にするために
、他の適切なリポーター遺伝子が使用され得る。
細胞株が確立される場合、特にトランスフェクトされるDNAが細胞ゲノム内に
取り込まれる場合、不死化され得る株が特に望ましい。本明細書中で使用される
「不死化」細胞株は、増殖速度またはタンパク質産生の顕著な減少がなく、複数
の継代(例えば、50世代より多く)の間生育可能である。
本明細書中に開示される選択された非コードDNA配列は規定の塩基を用いて記
載されるが、当業者により理解されるように、記載される選択されたDNA配列の
長さは、ある程度任意であり、そして利便性のために定義される。当業者により
理解されるように、OP-1非コードDNA配列のより短い配列および他の融合DNA配列
が、本発明によるベクター中で使用され、そして細胞中にトランスフェクトされ
得るか、またはOP-1発現を調節する能力について候補化合物をスクリーニングす
るための本発明の方法において使用され得る。具体的に、まず有用な調節配列を
同定し、次に、例えば、エクソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼ消化、部
位特異的変異誘発などの体系的な消化および変異誘発により、必要な最小配列を
決定することは、分子生物研究者には標準的な手順である。従って、その後の標
準的な通常の実験により最小配列が同定されることが期待され、そしてこれらの
より短い配列が本明細書中で開示される本発明により意図される。
本発明による方法および組成物に有用な細胞タイプは、任意の真核生物細胞を
包含する。一般的に好ましいのはOP-1を発現することが公知である細胞タイプで
ある。このような細胞として、上皮細胞および腎臓(腎臓または膀胱)細胞を含む
泌尿生殖器細胞起源の細胞、ならびに肝臓、骨、神経、卵巣、心筋などが挙げら
れる。これらの細胞は、組織に由来し得るか、または確立された細胞株から培養
され得る。OP-1を発現することが公知である組織の詳細な説明については、例え
ば、Ozkaynakら、(1991) Biochem .BioPhys.Res.Comm. 179:116-123を参照さ
れたい。他の有用な細胞として、ステロイドレセプターを提示することが公知で
ある細胞が挙げられ、これは、エストロゲンレセプターを有する細胞およびFTZ-
F1タンパク質に応答性の細胞を包含する。一般的に好ましい細胞はまた、単純な
培地成分要求性を有する。他の代表的な有用な細胞として、チャイニーズハムス
ター卵巣(CHO);イヌ腎臓(MDCK);またはラット膀胱(NBT-2)などが挙げられるが
、これらに限定されない。有用な細胞タイプは、American Type Culture Collec
tion(ATCC)、Rockville、MDまたはEuropean Collection of Animal Cell Cultur
es、Portion Down、Salisbury SP40JG、U.K.から得られる。本発明中で使用され
る「由来する」とは、細胞が培養された組織そのものか、または親細胞が組織そ
のものである細胞株であることを意味する。本発明の局面および実施態様
1つの局面において、本発明の特徴は、1つ以上のOP-1非コード配列部分に作
動可能に連結したリポーター遺伝子を有するベクターである。選択されるOP-1非
コード配列は、それぞれ配列番号1および2に示される、5'(または「上流」)
非コードヒトOP-1配列または非コードマウスOP-1配列、配列番号1または3に示
される3'(または「下流」)非コードヒトOP-1配列またはマウスOP-1配列、なら
びに配列番号1に示されるヒトイントロン非コードOP-1配列から独立して選択さ
れる。また、有用であることが予期されるのは他の種のOP-1ホモログおよびOP-1
の近縁のタンパク質の非コード配列(例えば、5'、3'およびイントロン)である
。さらに、ベクターに含まれるOP-1配列部分は、2つ以上の5'非コードOP-1配
列、3'非コードOP-1配列および/またはイントロンOP-1配列の組合わせであり得
る。
1つの実施態様において、ベクターは、以下に示される配列番号1の以下の配
列セグメントの少なくとも1つから選択される非コードOP-1特異的配列を含み、
そしてこれは約3.3kbの5'非コード配列を含むヒトゲノムOP-1配列を規定し得る
。配列番号1において、開始コドンは位置3318で始まり、そして上流の配列(塩
基1〜3317)は、非転写OP-1特異的DNA(1〜2790)および非翻訳OP-1特異的DNA(27
91〜3317)からなる;このうち約1Kbを図1に示す(下の鎖)。
有用な配列セグメントとして、マウスOP-1ホモログとヒトOP-1ホモログとの間
で、有意な(70%を超える同一性)を共有する750塩基(図1を参照)を表す塩基254
8〜3317、および配列番号1の塩基3170〜3317;3020〜3317;2790〜3317;2548
〜2790、DNAのこの領域の全てのより短いフラグメントをが挙げられる。塩基279
0はmRNA開始部位であるため、他の有用なフラグメントとして、転写されるが翻
訳されない5'コード領域を表す2790〜3317および上記のようにこのDNA領域のよ
り短いフラグメント;OP-1特異的DNAの上流フラグメント(配列番号1の塩基2548
〜2790;1549〜2790;1〜2790)が挙げられる。また、有用な配列セグメントとし
て、さらなる上流配列(2300〜3317;1300〜3317;1〜3317;配列番号1の開示
された上流OP-1特異的DNA配列の全てのフラグメント)を有するヒトOP-1配列とマ
ウスOP-1配列との間で相同性を有する約750塩基が挙げられる。
別の実施例において、配列はマウスOP-1ホモログの非コード配列により規定さ
れ、これには、以下の5'非コード配列(配列番号2):2150〜2296、2000〜2296
、1788〜2296、および1549〜2296(これらは全てヒトホモログと高い配列同一性
を共有する750塩基を規定する(図1を参照));800〜2296;1〜2296;1549〜178
8、800〜1788および1〜1788が挙げられる。
この領域中にはまた、調節エレメントEgrおよびWt-1に結合することが当該分
野で知られる多くのEgr/Wt-1部位(hOP-1において8つ、mOP-1において7つ)が存
在する。従って、別の局面において、本発明はOP-1発現を調節する化合物を同定
するためのスクリーニング物質を意図する(このアッセイはEgr/Wt-1部位に結合
する化合物を同定する工程を包含する)。少なくとも1つのWt/Egr-1エレメント(
好ましくは1〜6つのエレメントの間)または少なくとも6つのWt/Egr-1エレメ
ントが配列に含まれる。これらのエレメントの相対的な位置を図1、ならびに配
列番号1の位置3192〜3200;3143〜3151;3027〜3035;2956〜2964;2732〜2740
;2697〜2704、および配列番号2の位置2003〜2011;1913〜1922;1818〜1826;
1765〜1776;1757〜1765;1731〜1739;1699〜1707;1417〜1425(配列番号1、
2は実質的に同一の配列アラインメント)に示す。これらの5'非コード配列内の
塩基の長さは、マウスゲノムOP-1とヒトゲノムOP-1との間で相同的であることが
決定されたDNAの配列部分を別々に、かつ非相同的DNAを含むより大きな配列の一
部として含むように選択される。さらに、選択されるOP-1配列部分は、マウスOP
-1 DNA配列とヒトOP-1 DNA配列との間の相同な領域の一部であり得、配列番号1
の塩基2548〜2790または2548〜3317、あるいは配列番号2の塩基1549〜1788また
は1549〜2296および/または少なくとも1つのWt-1/Egr-1コンセンサス結合配列
であり得る。さらに別の局面において、選択されるOP-1配列部分は、TCC結合配
列、FTZ結合配列、ステロイド結合配列、あるいはOP-1イントロン配列の一部ま
たは全てを含み得る。TCCエレメントおよびFTZエレメントの相対的位置を図1お
よび配列番号1の位置2758〜2778(TCC);2432〜2441(FTZ)および配列番号2の位
置1755〜1769(TCC)に示す。
別の局面において、本発明の特徴は、OP-1非コードDNA配列の一部と作動可能
に連結したリポーター遺伝子でトランスフェクトされた細胞である。OP-1非コー
ド配列部分は、配列番号1および2に示される5'(または上流)非コードヒトま
たはマウスOP-1配列、配列番号3に示される3'(または下流)非コードマウスOP-
1配列、ならびに配列番号1に示されるヒトイントロン非コードOP-1配列から独
立して選択される。6つのヒトイントロン非コードOP-1配列は、塩基3736〜1070
0;塩基10897〜11063;塩基11217〜11424;塩基11623〜13358;塩基13440〜1054
8;塩基15166〜17250;(全て配列番号1)である。さらに、選択されるOP-1配列
部分は、5'非コードOP-1配列、3'非コードOP-1配列および/またはイントロンO
P-1配列の組み合わせであり得る。従って、細胞は、塩基3170〜3317;3020〜331
7;2790〜3317;2548〜3317;2300〜3317;1300〜3317;1〜3317;2548〜2790
;1549〜2790および1〜2790;(全て配列番号1)、または塩基2150〜2296;2000
〜2296;1788〜2296;1549〜2296;800〜2296;1〜2296;1549〜1788;800〜17
88;1〜1788;(全て配列番号2)から独立して選択される5'非コードOP-1ゲノ
ム配列部分と作動可能に連結したリポーター遺伝子でトランスフェクトされ得る
。これらの5'非コード配列内の塩基の長さは、マウスゲノムOP-1とヒトゲノムO
P-1との間で相同的であることが決定されたDNA配列部分を、別々に、かつ非相同
的DNAを含むより長い配列の一部として含むように選択される。さらに、選択さ
れるOP-1配列部分は、配列番号1の塩基2548〜2790または2548〜3317、あるいは
配列番号2の塩基1549〜1788または1549〜2296のような、マウスOP-1 DNA配列と
ヒトOP-1 DNA配列との間の相同領域部分、ならびにWt-1/Egr-1コンセンサス結合
配列、TCC結合配列、FTZ結合配列、ステロイド結合配列およびイントロンの少な
くとも1つであり得る。従って、選択されるOP-1配列部分は、上記のような5'
非コードヒトOP-1ゲノムDNA配列部分またはマウスOP-1ゲノムDNA配列部分、なら
びに少なくとも1つのWt-1/Egr-1コンセンサス結合配列の単独、またはこれとTC
C結合配列、FTZ結合配列、ステロイド結合配列、およびヒトOP-1イントロンDNA
配列の少なくとも1つとの組み合わせであり得る。別の実施態様において、例え
ば1〜6の間の1つより多いWt-1/Egr-1エレメント、または少なくとも6つのWt
-1/Egr-1エレメントが使用される。これらの細胞は本発明の方法の使用に適する
。
1つの実施態様において、OP-1コード領域の一部は、発現調節機能を有すると
予想され、そしてまた本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイにおいて
使用されるベクターに加えられ得る。OP-1タンパク質は、典型的には約30未満の
アミノ酸残基であるN末端シグナルペプチド配列(「pre pro領域」)、これに続
く約260アミノ酸残基である「pro」領域、これに続く成熟タンパク質を含むさら
なるアミノ酸残基を有する前駆体ポリペプチドとして翻訳される。pre proおよ
びpro領域は、一次翻訳配列から切断されて、成熟タンパク質配列が生じる。成
熟配列は、保存されるC末端の7つのシステインドメインおよび種々のモルフォ
ゲンの間で配列が大きく変化するN末端配列の両方を含む。成熟ポリペプチド鎖
はダイマー化し、そしてこれらのダイマーは、典型的には、2つのポリペプチド
鎖サブユニットを結合する少なくとも1つの鎖間ジスルフィド結合により安定化
される。proドメインがOP-1タンパク質から切断された後、非共有結合的に成熟
ダイマータンパク質と結合し、おそらく成熟種の溶解性および/または標的化特
性を増強する。例えば、PCT/US93/07189(1993年7月29日出願)を参照されたい。
pro領域は、ATG開始コドンの約87塩基下流に存在するヌクレオチド配列を表し、
そして約980塩基にわたって続く。pro領域をコードするヌクレオチドは「GC」配
列が極めて多く、これはそれ自体がOP-1発現を調節し得る2次構造(例えば、mRN
A転写物の一部として)を十分に形成し得る。従って、本発明の組成物および方法
において、OP-1 pro領域、特にGCリッチ領域に対応する部分をコードするヌクレ
オチド配列の一部または全部が、好ましくは1つ以上のOP-1非コード配列と組み
合わせて用いられ得る。
別の実施態様において、この方法は、OP-1遺伝子を発現することが公知である
細胞を用いて実施され得る。トランスフェクションに適するDNA配列およびトラ
ンスフェクトされたDNA配列を含有する適切な細胞は以下に記載される。
別の局面において、本発明は、OP-1発現調節化合物の設計および/または同定
に有用な分子、ベクター、方法およびキットを提供する。本明細書中で使用され
る「キット」は、OP-1上流DNA配列部分と作動可能に連結したリポーター遺伝子
を含むDNA配列でトランスフェクトされた細胞およびリポーター遺伝子の発現の
検出に必要な試薬を含む。選択されるOP-1上流DNA部分は、本明細書中で記載さ
れた種々の部分のいずれかであり得る。
この開示に従い、OP-1発現調節化合物を同定するための培地流動(medium flux
)スクリーニングアッセイおよびそれためのキットが利用可能である。これらの
化合物は、天然に存在する分子であり得るか、または合理的な薬物設計および確
立された構造/機能分析方法論を用いて設計され、そして生合成的に生成され得
る。この化合物は、アミノ酸に基づくか、または一部または全体が非タンパク質
性合成有機分子から構成され得る。
このように同定されたOP-1発現調節化合物は、次いで当該分野で周知であるか
または特徴付けされているか、および/または本明細書中で記載される標準的な
組換え発現または化学合成技術を用いて、適度な量で生成され得る。例えば、核
酸配列およびアミノ酸配列の化学合成の自動化された手段は市販されている。あ
るいは、有望な候補物を、標準的な生物学的または化学的方法論を用いて改変し
て、例えば、化合物のDNAエレメントに対する結合親和性を増強し得、次いで、
好ましい候補誘導体を大量に生成し得る。
一旦候補化合物が同定されると、OP-1発現におけるその効果について試験され
得る。例えば、腎臓細胞株におけるOP-1の産生をアップレギュレート(増加)する
化合物は全身投与の候補物である。候補物は、候補分子のインビボでの効力を決
定するために動物モデルにおいてアッセイされ得る。例えば、インビボで血流中
のOP-1レベルをアップレギュレートする化合物の能力を用いて骨粗鬆症のような
骨代謝疾患を矯正し得る(例えば、PCT/US92/07932、前出を参考されたい)。全身
投与に有用なインビボの動物モデルは当該分野で開示されており、そして以下で
開示される。
本明細書中の以下で示すように、OP-1は異なる細胞タイプでデファレンシャル
に発現する。従って、候補化合物は、1つの細胞タイプにおいてはOP-1発現の誘
導剤としての有用性を有するが別の細胞タイプにおいてはそうでないことがさら
に予想される。従って、本発明は、天然の生理的条件下でOP-1を発現することが
公知である異なる細胞を包含する、インビボの異なる細胞におけるOP-1の発現を
調節するその有用性について候補物を試験することを意図する。
従って、この開示を考慮すれば、組換えDNA技術の当業者は、OP-1の発現を調
節する化合物についてアッセイするための本発明による方法において使用するた
めに、適切なDNAベクターおよび適切なDNA配列を有するトランスフェクト細胞を
設計および構築し得る。これらの同定された化合物を用いて、インビボおよびイ
ンビトロ環境の両方におけるOP-1産生およびその利用可能な濃度を調節し得る。図面の簡単な説明
図1は、マウスおよびヒトのOP-1遺伝子の上流配列のアラインメントを示す。
すべての行で、マウスの配列を上の配列行に示し、そしてヒトの配列は下の配列
である。マウスの配列に、強調して示される翻訳配列の最初のATGから逆に数え
て、逆向きの番号を付す。アラインメントの目的のために、ダッシュをDNA配列
に導入し、そしてヒトDNA配列の3つの部分を、その配列から切り取り、そして
黒三角の下部の、ギャップの下に置いた;
図2は、エストロゲンによるマウス子宮のOP-1 mRNA調節の時間経過を示す;
そして
図3aは、2kbおよび4kbのOP-1 mRNA、プローブ1〜7のハイブリダイゼーシ
ョン位置(模式図の下の棒で示される)の模式図を示す。実線はOP-1 mRNAを示
し、*は可能性のあるポリAシグナルを示し、四角はOP-1 mRNAの翻訳部分を示し
、TGF-β様ドメインを斜線の四角で示す。破線は、ゲノムDNA配列を示す。矢印
は、OP-1成熟化のための切断部位の位置を記す。
図3bは、マウス子宮組織におけるOP-1に特異的な2kbおよび4kbのmRNAのノー
ザンブロットハイブリダイゼーション分析を示す。レーン1〜7は、プローブ1
〜7に、それぞれ対応する。2kbおよび4kbのmRNAを、図3bの左側で、4-および
2-により示す。そして0.24〜9.49kbのRNAサイズラダーをこの図の右側にダッシ
ュにより示す。詳細な説明
以下により十分に記載されるように、本発明者らは、インビボでOP-1発現を調
節し得る分子を同定する際に有用な、OP1遺伝子配列内の領域を同定した。また
本明細書中で記載されるように、本発明者らは、インビボでのOP-1発現が、細胞
タイプおよび組織における細胞の状態の両方に依存し得ることを決定した。詳細
には、本明細書中以下に記載されるように、OP-1タンパク質発現は、子宮組織に
おいて、子宮組織の状態に依存してディファレンシャルに調節されている。例え
ば、OP-1発現は、妊娠中のマウスの子宮組織において、劇的にダウンレギュレー
トされるが、一方、未妊娠(virgin)マウスにおいては、OP-1は子宮組織において
正常に発現される。さらに他の組織(例えば、腎臓組織)におけるOP-1発現は、
妊娠中、見かけ上影響されない。未妊娠マウスにエストロゲンを投与すると、OP
-1遺伝子発現のこのダウンレギュレーションは2倍になり得る。
本発明者らは、ヒトおよびマウスのOP-1遺伝子の非コード配列をクローニング
することにより、OP-1遺伝子発現の調節を担うDNA配列を調べた。OP-1遺伝子発
現の組織特異的な調節、およびヒトおよびマウスの5'非コードOP-1ゲノム配列の
約750塩基領域間に見出された顕著な相同性は、これらの配列が、OP-1発現を調
節する能力について化合物をスクリーニングするための方法における有用性を有
することを示す。
本開示および以下に提供される実施例を考慮すれば、特定の細胞タイプにおい
てインビボでOP-1発現に影響し得る分子を同定するための方法が提供される。ヒトおよびマウスのOP-1遺伝子の非コード配列のクローニング
マウスの器官のノーザンブロット分析において、複数のOP-1転写物が検出され
ophys .Res.Comm.、179:116-123)。このパターンはラットにおいて同様であ
るが、1.8kb種のみが存在しない。OP-1 mRNAのエストロゲン仲介性ダウンレギュ
レーションは、これらのすべての種に影響する。この4.0kb mRNAが、実際に、同
じOP-1遺伝子座由来の転写物であるかを確認するために、cDNAクローンを、マウ
ス奇形ガンcDNAライブラリーから単離した。
4個の独立したクローンを得、公表されたマウスcDNA配列に対して配列情報を
加えた。これらのcDNAクローンの内の2個は、既に報告されている配列(0.1kb
)よりも長い5'非翻訳配列(0.4kbおよび0.3kb)を有する。マウスクローンの3
個は、3'末端で、さらに1.4kbを含有する。組合わせた配列は、合計で3.5kb(ノ
ーザンブロットで観測された4.0kbのmRNAより0.5kb短い)の全OP-1 cDNAサイズ
になる。2kbおよび4kbのメッセージを示すcDNAクローンを、図3aに模式的に示
す。3'の情報を延長するポリAテイルが、これらのcDNAクローンにおいて欠失て
いるため、0.5kb配列の消失は3'末端で生じたことが予想された。
3.5kbのcDNA配列の3'末端にすぐ隣接する配列を得るために、マウスのゲノム
ライブラリーであるML1039J(Clontech)を、上流の非コード配列のクローニン
グのための下記のパラメーターに従い、3'末端cDNA特異的プローブ(0.45kb、マ
ウスDP-1 cDNAの3'末端のXmnI-EcoRIフラグメント)を用いてスクリーニングし
た。このスクリーニングによって、4個のλクローンを得、これをサザンブロッ
ティングにより分析した。すべてのクローンより、1.5kbのXmnIフラグメントが
そして配列決定した。3つのポリアデニル化シグナル(AATAAA)(Proudfootら
、(1976) Nature、263:211-214)が、このゲノムフラグメントにおいて、3.52k
b、
3.58kbおよび3.59kbで見出された(図3aにおいて、*により模式的に示す)。3'
末端cDNA配列および1.5kb XmnIフラグメント内のゲノムDNA配列は0.4kb重複し、
その重複は、3.5kbに位置する第2のポリアデニル化シグナルのすぐ上流の領域
にあり(図3a、プローブ6により示される領域)、そしてこの範囲内で完全に一
致する。
ヒトの上流非コード配列およびさらにマウスの上流非コード配列を、ヒトおよ
びマウスのゲノムライブラリー(それぞれ、HL1067JおよびML1030J(Clontech))
をスクリーニングすることにより得た。すべてのライブラリーを、750,000プラ
ークの一次プレーティング(約50,000プラーク/プレート)によりスクリーニン
グした。ハイブリダイゼーションを、40%ホルムアミド、5×SSPE、5×デンハ
ルト液、および0.1%SDS中で37℃で行った。非特異的カウントを、0.1×SSPE、0
.1%SDS中で50℃で振盪することにより除いた。ヒトおよびマウスの上流ゲノムD
N
I OP-1 cDNAフラグメントから作製した32P標識プローブを用いて単離した。この
フラグメントは、主に5'非コード配列およびエキソン1の配列を含有した。
のフラグメントは、5kbの上流非コード配列を含有する。マウスについてのさら
フラグメントをサブクローン化することにより得た。このフラグメントは、5'非
コード領域においてマウスの最長cDNAクローンの5'末端と0.3kb重複し、そして
さらなる0.8kbの配列情報を提供した。2kbおよび4kbのOP-1メッセージの模式
図を図3aに示す。破線は、マウスの上流および下流のゲノムDNA由来の補足する
情報を示す。
ら、(1987) BioTechnique、5:770-773)、制限フラグメントのサブクローニン
グおよび合成プライマーにより、Sangerら((1977) Proc.Natl.Acad.Sci.74
:5463-5467)に従って行った。コンプレッションは、Taqポリメラーゼを用いて
70℃で反応を実施することおよび7-デアザ-GTP(U.S.Biochemical Corp.、Cl
eveland、OH)を使用することにより解決した。
ノーザンブロッティングによるOP-1 mRNA配列の確認
観測された短いmRNA種および長いmRNA種の構造を確認するために、ノーザンブ
ロットハイブリダイゼーションを、5'および3'の非コード領域、タンパク質コー
ド配列、および予想されるmRNAの上流および下流のゲノム領域に、それぞれ特異
的な7個の非重複DNAフラグメントから作製されたプローブ(図3a;プローブ1
〜7)を用いて行った。
これらのプローブの、マウス腎臓mRNAを含有する個々のノーザンブロット片に
対するハイブリダイゼーションは、予想される4kb mRNA構造物と一致する。図3
aおよび図3bに示すように、ゲノムDNAプローブ1および2は、どのメッセージに
対してもハイブリダイズしなかった。プローブ2は、cDNAにすぐ隣接する上流配
列に特異的である。プローブ3、4、および5(それぞれ、5' 非コード領域、
コード領域、および3'非コード領域に特異的)は、2kbおよび4kbのメッセージ
の両方にハイブリダイズした。従って、これらの配列は、両方のメッセージに存
在する。プローブ6(第1および第2のポリアデニル化シグナル間の配列に特異
的)は、4kbのメッセージにのみにハイブリダイズした。最後に、プローブ7は
第4(最後)のポリアデニル化シグナルのさらに下流の配列に特異的であるが、
どのメッセージに対してもハイブリダイズしなかった。これらのプローブを用い
て得られた結果により、2つのOP-1 mRNA構造物ならびに図3aに示されるOP-1転
写物のほぼ5'および3'末端の境界を確認する。このことは、2kbおよび4kbのmR
NAは、複数の遺伝子ではなく、同じOP-1ゲノム遺伝子座に由来することを示す。
4kb mRNA転写物内に含まれる長大な3'配列は、これが種を超えて(すなわち、
マウス、ラット、イヌ、ヒトおよびニワトリにおいて)検出されるので、3'非翻
訳配列が特にOP-1遺伝子発現において役割を担い得ることを示唆する。3つのす
べての可能な翻訳読みとり枠内の複数の停止コドンは、この配列がペプチドをコ
ードするという可能性を除外する。従って、非翻訳配列自体は、mRNAの安定性に
影響するように作用し得る。例えば、この配列は、トランスフェリンレセプター
mRNAについて記載されているように、他のタンパク質と相互作用し得る。ここで
、
IRE結合タンパク質(IRE;鉄応答エレメント)は、トランスフェリンレセプター
mRNAの3'末端に結合することによりそのmRNAを安定化する(Standardら、1990、Genes Dev.
、4:2157-2168、本明細書中で参考として援用される)。あるいは
、3'末端配列は5'末端配列と相互作用し、それによりタンパク質合成の開始に影
響し得る。または、3'末端配列は、リプレッサー分子を含む調節分子の発現の結
合を妨げ得る他のRNAの結合部位として作用し得る。(Klausnerら、1989、Scien ce
、246:870-872;Kozak、1992、Ann .Rev.Cell.Biol.、8:197-225、本明
細書中で参考として援用される)。
ヒトおよびマウスのOP-1 DNAの5'非コード配列の比較
5'非コードゲノムマウスおよびヒトOP-1 DNA配列のクローニングにより、高い
程度の配列相同性が、ヒトおよびマウスの5'非コードDNA配列間に存在すること
が示された。相同性は、OP-1モルフォゲンタンパク質の翻訳開始部位のすぐ上流
の塩基から翻訳開始部位の約750塩基上流まで広がる。これを、図1の影を付け
た領域において、マウスの配列を上に、そしてヒトの配列を下に示す。ヒトOP-1
の5'非コード配列についての相同性領域の5'のヌクレオチドは、配列番号1の25
48位の塩基であり、そしてマウスOP-1の5'非コード配列についての相同性領域の
5'のヌクレオチドは、配列番号2の1549位の塩基である。OP-1のヒトおよびマウ
スの5'非コード配列間の顕著な相同性は、この領域がOP-1発現の調節において重
要であり得ることを示唆する。下記にさらに詳細に議論するように、この領域は
、2つのDNA結合タンパク質(Wt-1およびEgr-1)のDNA結合配列として同定され
ているいくつかの保存されたDNA配列を含有する。Wt-1およびEgr-1の両方は、こ
れらの配列を認識する。ヒトおよびマウスにおいて存在するWt-1/Egr-1のDNA結
合配列を、図1で、1本線を付けて示す。また、TCC結合配列(Wt-1およびEgr-1
のDNA結合配列)を、図1で、2重線により示す。Wt-1およびEgr-1タンパク質は
また、OP-1に関連しないいくつかの遺伝子の発現の調節に関連付けられている。
マウスおよびOP-1ヒトゲノム配列のアラインメントは、最初のATGのすぐ上流
の0.75kbの保存された範囲を示す。この保存された範囲は、Egr-1およびWt-1に
特異的なジンクフィンガータンパク質結合配列(5'-GCG GGG GCG-3')に対して
著しい類似性を有するいくつかのパターンを含む(Christyら、1989、PNAS、86
:8737-8741;Rauscherら、1990、Science、250:1259-1262:Drummondら、1992
、Science、257:664-678)。マウスにおいて、合計8個、そしてヒトにおいて
7個のパターン(縮重Egr-1/Wt-1結合配列(5'-GNG NGG GNG-3')(Rupprechtら
、1994、J .Biol.Chem.、269:6198-6202;Wernerら、1994、J .Biol.Chem. 2 69
:12940-12946)に合致する)が、予想される転写開始部位の前および後に位
置する(図1、実線の1本線により示される)。これらの存在は、妊娠中のラッ
ト子宮脱落膜(uterus decidua)における上昇したレベルのWt-1 mRNAの点で重要
である(Zhouら、1993、Differentiation、54:109-114)。
分析はまた、ヒトの上流領域において、7個のTCC反復パターンを明らかにし
た。それは、2つのEgr/Wt-1配列(-624および-587における)のすぐ3'である、
-561に存在する(図1、2重の実線により、そして配列番号1の2758〜2778位で
示される)。マウスの上流領域は、あまり明瞭ではないが同様な、-356での、お
よび配列番号2の1755〜1769位での配列を含有する。このTCC反復パターンは、P
DGF-Aおよびいくつかの他の増殖関連遺伝子のプロモーター中に見出され、そし
てWt-1は、いずれかの配列が存在する場合、転写を活性化し、そして両方の配列
が存在する場合、転写を抑制することが見出されている。(Wangら、1992、Bioc
hem.Biophys.Res.Comm.、188:433-439;Wangら、1993、PNAS、90:8896-890
0は本明細書中で参考として援用される)。従って、エストロゲンレセプターは
、直接的または間接的のいずれかで、Wt-1をアップレギュレートすることにより
、子宮におけるOP-1発現に対するその効果を及ぼし得る。あるいはまた、さらに
、OP-1遺伝子のさらに上流に位置する他の調節エレメントが、エストロゲン調節
において関与し得る。
図1でまた、ヒトの5'非コードDNA配列は、ヒトDNA配列の下でカラット(carat
s)により示されるFushi-tarazu(FTZ)結合配列を含有することを示す。FTZ結合
配列は、Fushi-tarazuタンパク質(FTZ-F1)により結合される。このタンパク質
は、核レセプタースーパーファミリーのメンバーである(Parker、(1993) Curre nt opinion in Cell Biology
、5;499-504)。核レセプタータンパク質スーパ
ーファミリーは、ステロイドホルモン、レチノイド、甲状腺ホルモン、神経成長
因子、およびFushi-tarazuを含み、そして、これらは構造的に関連している。FT
Z-F1は、モノマーとしてDNAに結合する核レセプターのサブファミリーに属する
ようである。
FTZ-F1タンパク質は、ショウジョウバエの胞胚葉期の胚におけるfushi-tarazu
遺伝子での正の調節因子である。FTZ-F1は、カイコ(Bombyx)BmFTZ-F1タンパク
質およびマウス胚長末端反復結合タンパク質(embryonal long terminal repeat
binding protein)(ELP)に近縁であり、そしてそれらのすべては、核ホルモン
レセプタースーパーファミリーのメンバーである。これらは、同じ9塩基対配列
の5'-PyCAAGGPyCPu-3'を認識する。FTZ結合配列は、見かけ上は直接反復または
逆方向反復を有さない。対照的に、核ホルモンレセプタースーパーファミリーの
他のメンバーは、通常、反復配列に結合する。それにも関わらず、FTZ-F1、BmFT
Z-F1およびELPタンパク質は、FTZ結合部位のDNAに対して高い親和性を有する。
このことは、結合の機構が、核ホルモンレセプタースーパーファミリーの他のメ
ンバーの結合の機構とはいくらか異なることを示す。(Hitachiら、1992、Mol. and Cell Biology
12月、5667-5672頁)。
ヒトOP-1のmRNA転写開始部位を、図1で、上向きの矢印によりに記す。そして
OP-1タンパク質翻訳開始部位を、図1で、強調したATGの直前の黒三角により記
す。ヒトOP-1遺伝子の転写開始部位は、配列番号1の2790位の塩基であり、そし
てマウスの類似の部位は、配列番号2の1788位の塩基である。ヒトOP-1遺伝子の
翻訳開始部位は、配列番号1の3318位の塩基であり、そしてマウスOP-1の翻訳開
始部位は、配列番号2の2296位の塩基である。マウスおよびヒトのDNA配列が転
写開始部位および翻訳開始部位間の領域において共有する高度の同一性は、この
領域がOP-1遺伝子産物の発現の調節において役割を果たしそうであることを示唆
する。
マウス組織におけるOP-1遺伝子発現の分析
ラットの泌尿生殖管の詳細な分析により、腎臓、および膀胱組織、ならびに泌
尿生殖器官系の他の部位におけるOP-1 mRNA発現が明らかになった。最も豊富な
レベルが腎臓および子宮組織(8週齢マウス)に存在し、一方、ずっと少ないレ
ベルが卵巣で見出された。「ハウスキーピング機能」分子であるG3DPHのmRNAレ
ベルを、mRNA調製物の回収および質のための内部コントロールとして使用し、そ
して等量のポリ(A)+ RNA(5mg)を各レーンに載せた。
RNAの調製およびノーザンブロットハイブリダイゼーション分析は、以下の通
りに行った。8週齢の雌マウス(CD-1系統)を、Charles River Laboratories(
Wilmington、MA)から入手した。マウスの種々の器官由来の全RNAを、酸性−グ
アニジンチオシアネート−フェノール−クロロホルム法(Chomczynskiら、(1987
) Anal.Biochem.162:156-159)を用いて調製した。RNAを、プロテイナーゼK
(Stratagene、La Jolla、CA;約1mgプロテイナーゼ/ml TES)を含有するTES緩
衝液(10mM Tris-HCl、1mM Na2EDTA、0.1%SDS、pH 7.5)に溶解し、そして37℃
で1時間インキュベートした。ポリ(A)+ RNAを、バッチ手順で、0.5M NaCl、10m
M Tris-HCl、1mM Na2-EDTA、pH 7.4(1×結合緩衝液)中のオリゴ(dT)−セル
ロース(Stratagene、La Jolla、CA)で選択した。ポリ(A)+ RNA選択のために、
1gの組織から得た全RNAを、約0.1gのオリゴ(dT)−セルロース(0.5M NaClを含
有する11mlのTES中)と混合した。RNAとオリゴ(dT)−セルロースとを含むチュー
ブを、穏やかに約2時間振盪した。その後、オリゴ(dT)−セルロースを、1×結
合緩衝液で2回洗浄し、そして0.5×結合緩衝液(0.25M NaCl、10mM Tris-HCl、
1mM Na2-EDTA、pH 7.4)で1回洗浄し、そしてポリ(A)+ RNAを水で溶出し、そ
してエタノールで沈殿させた。
ポリ(A)+ RNA(1レーン当たり5mg)を、熱変性前に、各サンプルに1mgの40
0μg/mlのエチジウムブロミドを添加して、1.2%アガロース−ホルムアルデヒド
ゲルで電気泳動した(Rosenら、(1990) Focus、12:23-24)。電気泳動は、100
ボルトで、1×MOPS緩衝液を連続的に循環して実施した(Ausubelら、編、(1990
)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York)
。電気泳動後、ゲルを写真撮影し、水で簡単に洗浄し、そしてNytran(Schleich
er & Schuell Inc.、Keene、NH)メンブランまたはDuralon-UV(Stratagene)メ
ンブラン上に10×SSC中で一晩ブロットした。メンブランを80℃で30分間乾燥し
、そしてUV光を照射した(1mW2/cm2で25秒間)。
32P標識プローブを、ランダムヘキサヌクレオチドプライミング(Freinbergら
、
(1984) Anal.Biochem.、137:266-267)によりマウスOP-1 cDNAフラグメント(
0.68kbのBstXI-BGIIフラグメント)から作製した。ハイブリダイゼーションは、
40%ホルムアルデヒド、5×SSPE、5×デンハルト、0.1%SDS、pH 7.5中、37℃
で一晩行った。非特異的カウントを、0.1×SSPE、0.1%SDS中、50℃で振盪する
ことにより洗い流した。再使用のために、フィルターを、1mM Tris-HCl、1mM
Na2-EDTA、0.1%SDS、pH 7.5中に80℃で10分間はずした(stripped)。
マウスにおける妊娠中のOP-1発現の分析
OP-1発現に対する妊娠の効果を、腎臓、卵巣および子宮におけるOP-1 mRNAレ
ベルを、妊娠の前、妊娠中、および妊娠後(未妊娠、交尾後2日、交尾後4日、
交尾後6日、交尾後8日、交尾後13日、交尾後17日、授乳3日、および繁殖齢を
過ぎたもの)、ポリ(A)+ RNAのノーザンブロットハイブリダイゼーションにより
測定することで試験した。これらの測定は、腎臓はOP-1 mRNAレベルの妊娠に関
係する変化を示さないが、子宮のレベルは、交尾後6日までにほとんど検出でき
なくなったことを示した。しかし、卵巣では、変化は全く観測されなかった。妊
娠の3日と4日との間の子宮組織におけるOP-1メッセージの劇的で急速な衰退は
、未妊娠動物との比較において明らかである。
妊娠の13日目および16日目での8週齢マウスの子宮における、胚および母体の
レベルにおけるOP-1 mRNAのレベルもまた比較した。妊娠子宮におけるOP-1発現
は劇的に減少する一方で、高レベルのOP-1メッセージが、13日目および16日目の
マウス胚で見出される。従って、母体子宮におけるOP-1 mRNA発現がほとんど検
出できない妊娠の段階で、胚のOP-1発現は高い。高い胚のOP-1発現はまた、比較
的高いレベルのOP-1 mRNA(ヒトの胎盤で見出される)と一致して検出される。
胚で測定されたOP-1 mRNAのレベルは、成体腎臓組織または未妊娠子宮組織で測
定されたレベルと同じ範囲内にある。従って、OP-1は、組織および器官の形態形
成の非常に特異的な段階でのOP-1の適切な量を必要とし得る胚の発生において重
大な役割を果たしているようである。これまでのいかなる理論にも限定されない
が、妊娠中の子宮組織におけるOP-1発現は、発生中の胚により産生されるOP-1レ
ベルを潜在的に妨げ、そしてその結果、胚の正常な発生を妨げ得る。従って、妊
娠中の子宮のOP-1発現の停止または阻害は、胎児に恩恵を与え得る。
OP-1 発現に対するエストロゲンおよびプロゲステロンの効果
妊娠中、エストロゲンおよびプロゲステロンのレベルは数倍増加し、そして高
レベルは出産まで維持される。これらのホルモンの変化が妊娠子宮組織における
変化したOP-1転写を担うか否かを決定するために、非妊娠の雌マウスに、17β-
エストラジオール、またはプロゲステロン、あるいは両者の組み合わせ物を皮下
に投与した。
最初の実験において、妊娠中のエストロゲンまたはプロゲステロンのレベルの
急速な増加が刺激された。非妊娠マウスに、4日間連続して漸増用量(20mgの17
β-エストラジオール、または100mgのプロゲステロンまたは両者の組み合わせ物
で開始し、そして以降毎日用量を倍にする)で皮下に注射した。4日目、動物を
屠殺し、そしてmRNAを子宮および腎臓から単離した。子宮のOP-1 mRNA発現に対
する17β-エストラジオールの著しいネガティブな効果が観測されたが、プロゲ
ステロンによる効果は見られなかった。しかし、腎臓において、mRNAレベルは、
17β-エストラジオール処置またはプロゲステロン処置後、変化しなかった。
別の実験は、時間経過を表した:17β-エストラジオールを、未妊娠雌マウス
に200mgの一定用量で投与した(1日当たり50mlの17β-エストラジオール4mg/m
l、DMSO[ジメチルスルホキシド]+150mlの150mM NaCl、皮下で)(図2)。こ
の後、マウスの子宮を摘出し、ポリ(A)+ RNAを調製し、等量のポリ(A)+ RNA(5
mg)を、1.2%アガロース−ホルムアルデヒドゲルの各レーンに載せ、そしてノ
ーザンブロットハイブリダイゼーションにより分析した。図2に示すように、効
果は急速で、17β-エストラジオールの投与後12時間でOP-1 mRNAはかなり減少し
、そして48時間までにほとんど検出できないレベルとなった。この図において、
レーンは以下の通りに対応する:左から右に、0日(ネガティブコントロール)
、0日(ネガティブコントロール)、0.5日、1日、2日、3日、4日、5日、
6日、7日、および8日。矢印は、2つの主要なOP-1 mRNA種を記す。微量メッ
セージが、数日後に再び現れる(図2)。
子宮は、OP-1発現の主要な部位として同定されている。子宮組織におけるOP-1
発現のレベルは、腎臓組織で観測されるレベルに匹敵する。しかし、妊娠中、4
日目まで、子宮のOP-1 mRNAレベルは検出限界まで減少する。OP-1発現の喪失は
、この同じ期間中にエストロゲンレベルが上昇することに対応する。子宮のOP-1
メッセージのこの同じ劇的な喪失はまた、エストロゲン処置動物において観測さ
れる。このことは、エストロゲンが子宮組織においてOP-1発現のネガティブな調
節に関与することを示唆する。エストロゲンの効果は急速で、17β-エストラジ
オール投与の12時間後に、ほとんどのメッセージが消失する。後日のいくらかの
OP-1メッセージの再出現は、反調節(counter-regulatory)機構により得る。子宮
での調節されたOP-1のmRNAレベルとは対照的に、妊娠中の腎臓組織においては、
またはエストロゲン処置に応答しては、実質的な変化は生じない。従って、これ
らの異なる器官でのOP-1 mRNA発現は、独立的に調節される。このディファレン
シャルな発現は、例えば、腎臓組織におけるエストロゲンレセプターの欠除によ
り得る。あるいは、エストロゲンまたは関連の核レセプター分子と相互作用する
1つ以上のアクセサリー分子による同時調節により、独立した調節が可能となり
得る。例えば、Wt-1タンパク質(これはWt-1/Egr-1エレメントに結合する)およ
びOP-1タンパク質のそれぞれが、正常な腎臓発達に必要であり、そしてそれぞれ
が腎臓組織の発達中、高レベルで発現される。上記のように、OP-1プロモーター
領域は、Wt-1コンセンサス結合エレメントを含有する。Wt-1タンパク質はまた、
インスリン成長因子II遺伝子および血小板由来増殖因子A鎖遺伝子の転写を負に
調節することが示されている。Kreidbergら、Cell、1993、74:679-691。これま
での理論に限定されないが、Wt-1タンパク質は、単独または1つ以上の分子と組
み合わせのいずれかで、OP-1の発現に関与することがあり得る。例えば、Wt-1タ
ンパク質は、核ホルモンレセプターエレメント(例えば、エストロゲンレセプタ
ーエレメントを含む)と共同して作用し得る。OP-1 発現の組織特異的に異なる調節の意味
エストロゲンはまた、カルビンジン(calbindin)-D28K(ビタミンD依存性カル
シウム結合タンパク質)の子宮での発現、糖タンパク質ホルモンのαサブユニッ
ト発現、および骨形成に関与する他のタンパク質を阻害することが示されている
。
エストロゲンはまた、骨基質タンパク質であるオステオカルシン、プレプロα2(
I)鎖のI型コラーゲン、オステオネクチン、オステオポンチン、およびアルカリ
ホスファターゼの定常状態のmRNAレベルの劇的な減少を卵巣摘出されたラット(
これは、骨粗鬆症のラットモデルである)において引き起こすことが示されてい
る。
エストロゲンは、破骨細胞を阻害することにより、骨粗鬆症モデルにおいて骨
代謝に対して有利な効果を仲介するようである。エストロゲンは、骨粗鬆症を逆
戻りさせない。対照的に、OP-1(これは、子宮、腎臓および骨組織において発現
する)は、骨粗鬆症モデルにおいて骨量の増加を誘導し得る。従って、子宮組織
におけるOP-1発現に対するエストロゲンのネガティブな効果は、骨代謝に対する
エストロゲンの効果を考慮すると、予想され得ないと思われる。
OP-1の5'非コードDNA配列に加えて、他の非コード配列(例えば、イントロン
および3'非コード配列)は、OP-1タンパク質の発現の調節に関与し得る。本発明
は、リポーター遺伝子と作動可能な連結をしている間、OP-1の発現に対する影響
についてこれらの非コード配列をアッセイする方法を提供する。OP-1発現の調節
に関与する非コード配列は、1つ以上の化合物を用いて、この非コード配列(リ
ポーター遺伝子と作動可能に連結した)でトランスフェクトした細胞を培養する
こと、リポーター遺伝子の発現をレベルを測定すること、およびこの発現レベル
を化合物の非存在下でのリポーター遺伝子発現のレベルに対して比較することに
より同定される。
OP-1 調節配列を調節する化合物のスクリーニングにおいて使用するための例示 的な細胞、ベクター、リポーター遺伝子およびアッセイ
I.有用な細胞
長期間の培養条件に適切な不死化細胞株を含む任意の真核細胞株は、本発明の
方法および細胞に有用であると期待される。有用な細胞は、容易にトランスフェ
クトされ、配列を再配置することなく外来DNAを安定的に維持し得、そして必要
ならば、翻訳後修飾および分泌に必要な任意の要素を含む、効率的な転写および
タンパク質の翻訳のための必要な細胞成分を有する。細胞が、優性でない選択遺
伝子(selection gene)でトランスフェクトされる場合、好ましくは、細胞の遺伝
子型は内在性の選択遺伝子の欠損である。好ましくは、細胞株はまた、単純な培
地組成必須物、およびすばやい世代時間を有する。特に有用な細胞株は、哺乳動
物細胞株であり、ミエローマ、HeLa、線維芽細胞、胚の細胞株および種々の組織
細胞株(例えば、腎臓、肝臓、肺など)が挙げられる。非常に多くの細胞株が、
American Type Culture Collection(Rockville、MD)またはEuropean Collecti
on of Animal Cell Cultures(Porton Down、Salisbury、SP4 OJG、U.K.)を通
じて現在入手可能である。
本明細書のように、モルフォゲンOP-1の非コード配列により制御されるリポー
ター遺伝子の発現を分析する場合、特に有用な細胞および細胞株は、真核生物、
好ましくはOP-1および/または密接に関連するタンパク質を発現することが知ら
れている組織および細胞タイプの哺乳動物細胞を包含することが考えられる。こ
のような細胞は、以下の細胞を包含するが、それらに限定されない:泌尿生殖器
細胞起源の細胞(腎臓、膀胱および卵巣細胞を含む)、肺、肝臓、乳腺および心
臓細胞、性腺起源の細胞、胃腸起源の細胞、グリア細胞ならびに形態形成タンパ
ク質をコードする内在性遺伝子を発現することが知られている他の細胞株。好ま
しい細胞株は、上皮起源の細胞である。
II.例示的なベクター/ベクター構築の考慮すべき事柄
本発明において使用するための有用なベクターとして、コスミド、ファージミ
ド、酵母人工染色体または他の大きなベクターが挙げられるが、これらに限定さ
れない。核内に維持され得るか、または相同組み換えによりゲノム内に組み込ま
れ得るベクターもまた、有用である。例えば、PSV2CATのようなベクターが有用
である。
非コードOP-1配列の選択された部分を、当業者には明らかであるような、標準
的な分子クローニング技術を用いて有用なベクターにクローン化し得る。制限エ
ンドヌクレアーゼ部位は、可能な場合、利用され、そして必要な場合、配列内に
操作され得る。制限エンドヌクレアーゼ部位が配列内への操作のために必要なら
ば、8塩基認識部位が好ましい。なぜならば、8塩基認識部位は一般的には、DN
Aにおいて稀に存在し、そして目的の配列を得るための従事者の能力を高めるか
らである。制限エンドヌクレアーゼ部位は、一般的な技術(例えば、所望の制限
エンドヌクレアーゼ部位を含むプライマーを用いる部位特異的変異誘発およびPC
R)を用いて非コード配列内に操作され得る。
上記のように、マウスおよびヒトのOP-1配列は、図1において影を付けて示さ
れる翻訳開始部位の上流の約750塩基にわたる高い相同性の領域を共有する。こ
の領域は、配列番号1の2548位〜3317位および配列番号2の1549位〜2296位であ
る。mRNA転写開始部位は、この領域内で、配列番号1の2790位および類似性によ
り配列番号2の1788位に位置し、図1において上向きの矢印により示される。こ
のことは、配列番号1の2548位〜2790位および配列番号2の1549位〜1788位は、
OP-1 mRNA発現のための保存されたプロモーターエレメントを含有し、そして配
列番号1の2791位〜3317位および配列番号2の1790位〜2296位での約500塩基は
、そのすべてまたは一部がOP-1発現の調節に関与し得る、転写配列(翻訳配列で
はない)の保存エレメントを含有することを示唆する。さらに、相同性領域の上
流配列もまた、OP-1発現の調節に関与し得る。従って、転写開始部位の上流配列
を含むが、約500塩基の転写配列を含まない範囲の上流配列は、遺伝子の発現を
調節するために、リポーター遺伝子との作動可能な連結に融合され得る。
3'非コード配列およびイントロン配列もまた、別個に、または互いにあるいは
5'非コード配列と組み合わせて、リポーター遺伝子との作動可能な連結に融合さ
れ得る。例えば、2790位〜3317位により規定される5'配列を配置し得る;配列番
号1の2548〜2790または2548〜3317、およびリポーター遺伝子との作動可能な連
結における3'配列またはイントロン配列のいずれか一方/両方。6個のイントロ
ンの位置を、配列番号1において塩基3736〜10700;塩基10897〜11063;塩基112
17〜11424;塩基11623〜13358;塩基13440〜10548;塩基15166〜17250に示す。
同様に、別の保存エレメント(例えば、1つ以上のWt-1/Egr-1結合配列)と組
み合わさった5'非コードOP-1配列の小さなフラグメント;リポーター遺伝子との
作動可能に連結したTCC結合配列および/またはFT2結合配列を含有する核酸構築
物も考えられる。このような核酸構築物はまた、イントロン配列および/または
3'非コード配列を含有する。
所定の範囲の有用な5'非コードフラグメントが提供され、そして当業者に明ら
かであるように、OP-1配列のより小さなフラグメントもまた有用である。このよ
うなより小さなフラグメントは、当該分野で周知である技術を用いて、与えられ
た5'非コードフラグメントの一端または両端から塩基を欠失することおよびリポ
ーター遺伝子の発現を調節する能力について、この短縮した構築物を試験するこ
とにより同定され得る。この方法において、最短の調節配列が同定され得る。
III.トランスフェクションの考慮すべき事柄
核酸を目的の細胞に組み込むための任意の方法が、本発明の方法において期待
される。リン酸カルシウム(CaPO4)、その後のグリセロールショックは、ベク
ター、特にプラスミドDNAを哺乳動物細胞に導入するために当該分野において使
用される標準的な手段である。代表的な方法が、Cockett ら、(1990) Biotechnol ogy
8:662-667(本明細書中で参考として援用される)に開示されている。使
用され得る他の方法として、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合(ミ
エローマのトランスフェクションにおいて特に有用)、マイクロインジェクショ
ン、リポフェクションおよびDEAE−デキストラン仲介取り込みが挙げられる。こ
れらの手順のための方法は、F.M.Ausubel編、Current Protocols in Molecular Biology
、John Wiley & Sons、New York (1989)に記載されている。
当業者により理解されるように、トランスフェクション当たりの最適なDNA濃
度は、トランスフェクションプロトコルに従って変化する。リン酸カルシウムト
ランスフェクションについては、例えば、好ましくは、プラスミド型当たり5〜
10μgのプラスミドDNAがトランスフェクトされる。さらに、トランスフェクトさ
れるDNAは、DNA取り込みを妨げ得る混入物を本質的に含まない。DNA精製のため
に当該分野で使用される標準的手段は、エチジウムブロミドバンド化によるもの
である。
IV.例示的なリポーター遺伝子
多くのリポーター系が市販されており、クロラムフェニコールアセチルトラン
スフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、GAL4、およびヒト成長ホルモン(hGH)
アッセイ系が挙げられるが、これらに限定されない。
CATは、十分に特徴付けられ、そしてしばしば使用されるリポーター系であり
、この系の主要な利点は、プロモーター活性が、広範囲に有効であり、かつ広く
認められた測定であることである。例えば、リポーター遺伝子および一般的な方
法論の記載について、Gorman,C.M.、Moffat,L.F.およびHoward,B.H.(1982) Mol .Cell.Biol.
、2:1044-1051を参照のこと。この系において、細胞は、CAT
発現ベクターによるトランスフェクションの2日〜3日後に回収され、そして抽
出物が調製される。抽出物を、アセチルCoAおよび放射活性クロラムフェニコー
ルとともにインキュベートする。インキュベーション後、アセチル化されたクロ
ラムフェニコールを、薄層クロマトグラフィーにより非アセチル化体と分離する
。このアッセイにおいて、アセチル化の程度は、特定のプロモーターを有するCA
T遺伝子活性を反映する。
他の十分に認識されたリポーター系は、ホタル(firefly)のルシフェラーゼリ
ポーター系である。例えば、リポーター遺伝子および一般的な方法論の記載につ
いて、Gould,S.J.およびSubramani,S.(1988) Anal .Biochem.、7:404-408
を参照のこと。ルシフェラーゼアッセイは迅速であり、そして高感度である。こ
の系はまた、大量の(bulk)トランスフェクションにおいて、または目的のプロモ
ーターが弱い場合、特に有用である。このアッセイにおいて、トランスフェクト
された細胞は標準的な条件下で増殖させられ、そしてアッセイ条件下で培養され
る場合、ATPおよび基質ルシフェリンの両方を細胞溶解物に添加する。酵素のル
シフェラーゼは、基質の迅速なATP依存的酸化を触媒し、次いで基質が発光する
。全発光量を、製造者(例えば、Cromega)の指示に従いルミノメーター(lumino
meter)を用いて測定し、そして発光量は広範囲の酵素濃度にわたり存在するルシ
フェラーゼ量に対して比例する。
第3のリポーター系は、hGHの免疫学的検出に基づき、これは迅速にかつ容易
に使用される(本明細書中で参考として援用されるSelden,R.、Burke-Howie,K
.、Rowe,M.E.、Goodman,H.M.およびMoore,D.D.(1986)、Mol .Cell.Biol. 6
:3173-3179)。hGHは、細胞抽出物よりはむしろ、培地中でアッセイされる。
このことは、トランスフェクト細胞の単一集団を時間に対して直接的にモニター
することを可能にする。
上記に示すようにそして当業者により理解されるように、組換え遺伝子のトラ
ンスフェクション、発現およびアッセイのための従来の手段が特に詳細に、当該
分野において十分に記載され、そして当業者により理解される。本発明は、OP-1
ゲノムDNAの非コード配列を介してOP-1の発現を調節する化合物の能力を測定す
るために化合物をスクリーニングするためのベクター、細胞および方法を可能に
し、そしてこれらを開示する。
哺乳動物細胞発現系における外来遺伝子の組換え生産において使用される各工
程の種々の技術的局面に関して、さらに詳細な記載が、当該分野における多くの
テキストおよび実験室マニュアルに見出される(例えば、F.M.Ausubelら、編、Current Protocols in Molecular Biology
、John Wiley & Sons、New York、(19
89))。
VIII.例示的な相同/非相同組換え
特定の組織(例えば、腎臓または子宮の組織)由来の特定の細胞株における(
器官特異的な)OP-1発現の誘導物についてスクリーニングするための一つのアプ
ローチは、相同組換えによるジーンターゲッティングを介する(Sedivyら、W.H
.Freema & Co.、New York (1992);A.S.Waldman、Crit.Rev.Oncol.Hematol
.12、49 (1992))。あるストラティジーにおいて、内在性(ゲノム)OP-1遺伝
子を、スクリーニングアッセイのために最もよく適する別のリポーター遺伝子(
例えば、ホタルのルシフェラーゼ遺伝子)により置換する。適切な細胞株(例え
ば、腎臓細胞株またはNBT-2)においてOP-1遺伝子を標的するために、遺伝子エ
レメントの以下の配置を組立て得る。
ゲノムOP-1の上流配列およびプロモーター配列で、好ましくは3000〜5000ヌク
レオチドの長さの配列(および相同組換えを仲介する配列)を、ルシフェラーゼ
遺伝子に結合する。最初にコードするATGまでのOP-1上流配列は、制限部位(例
えば、NcoI)を用いて、ルシフェラーゼコード配列の開始コドンATGで結合され
得る。この部位は、部位特異的変異誘発によりプロモーターおよびルシフェラー
ゼ配列の両方に導入され得る。
それ自体のプロモーターを有しない選択マーカー、好ましくはneo遺伝子もま
た含まれる。好ましくは、選択マーカー(neo)は、リポーター遺伝子(ルシフ
ェラーゼ)の下流に、ポリオウイルスゲノム由来のシストロン間配列の後に配置
され、そしてこれによりリポーター遺伝子転写物と同じ転写物上の配列マーカー
の翻訳を可能にする。このアプローチ(特定シストロン間配列および相同組換え
の詳細な工程を含む)の詳細が、Jasinら、PNAS USA 85:8583 (1988);Sedivy
ら、PNAS USA 86:227 (1989);Dorinら、Science 243:1357 (1989)を含む、当
該分野において記載されている。この開示は、本明細書中で参考として援用され
る。その記載のように、内在性OP-1遺伝子は、ルシフェラーゼおよびneoのコー
ド配列により置換され、次いでこれらの配列の発現を標準的なスクリーニングプ
ロトコルでアッセイする。
OP-1プロモーター(10,000bpまでの、可能な限りのゲノムOP-1の上流配列)お
よびリポーター遺伝子(その本来のプロモーターを有さないが、OP-1のATGに直
接またはその近くに結合させた)の遺伝子配置もまた、標準的な真核発現ベクタ
ーで細胞に導入され得る。これらのベクターは、選択マーカー(neo、dhfr、な
ど)を有し、そして典型的には、1コピーから数コピーの範囲で変化可能なコピ
ー数で、増幅時に容易に宿主ゲノム内に組み込まれる。同様に、所望であれば、
ベクターまたは遺伝子のコピー数を、十分に特徴付けられた増幅可能な遺伝子(
例えば、メトトレキセートと共に用いるdhfr)を用いて増強し得る。組み込まれ
ない自律複製のために設計された市販のベクターが、容易に利用可能である。エ
ピソーム発現エプスタインバールウイルスベクター(the Episomal Expression
Epstein Barr Virus Vector)(pREP、Invitrogen Corp.、San Diego CA) は、一
つの供給源ベクターである。
イントロンもまた、本明細書中の記載の方法を用いて、本明細書中上記のよう
に、調節配列のためにアッセイされ得る。好ましくは、ゲノムOP-1座由来の1つ
以上のイントロン配列が、例えば、酵母人工染色体(pYACneo、Clontech,Inc.
Pala Alto、CA)(参考 Albertson,H.M.らPNAS USA、87:4256、1990)または
長い配列(例えば、1メガ塩基まで)の転移を可能にするために適合した他のベ
クターを用いて適切な哺乳動物細胞に導入される。上記のOP-1の5'または3'の非
コード配列に関しては、イントロン配列またはその一部は、リポーター遺伝子と
の作動可能に連結して組み込まれ、次いでリポーター遺伝子発現の調節に対する
この配列の能力が加えられる。
X.OP-1遺伝子またはリポーター遺伝子のレベルを変化させる化合物のための例
示的なスクリーニングアッセイ
所定の内在性モルフォゲン(例えば、OP-1)、またはOP-1非コード配列に融合
されるリポーター遺伝子のレベルに影響するように投与され得る候補化合物が、
以下のスクリーニングアッセイを用いて見出され得る。このアッセイでは、細胞
に対するこの化合物の効果を評価するために候補化合物の存在および非存在での
培養において細胞をインキュベートすることにより、測定可能なレベルのリポー
ター遺伝子発現産物を産生する細胞タイプによるリポーター遺伝子産生のレベル
をアッセイする。これは、タンパク質レベルまたはRNAレベルのいずれかで、リ
ポーター発現産物を検出することにより実施され得る。このプロトコルは、モル
フォゲン発現の内在性レベルを変化させる化合物を同定するための手順に基づき
、詳細な記載は、PCT US 92/07359にも見出され得る。
培養細胞を、リポーター遺伝子と作動可能に連結したOP-1非コード配列の部分
でトランスフェクトする。そしてこのようなトランスフェクト細胞は、細胞核内
にプラスミドとして留まるベクターとともに維持されるか、またはこのベクター
は、宿主細胞ゲノム内に、好ましくはOP-1ゲノム座において組み込まれ得る。
リポーター遺伝子発現のレベルを試験するための細胞サンプルを、定期的に採
取し、そしてリポーター遺伝子アッセイを記載する節に示されるように、この所
定のリポーター遺伝子に適切なアッセイを用いてリポーター遺伝子発現について
評価するか、あるいは、細胞培養物自体の一部を定期的に採取し、そしてこれを
用いて、mRNA分析のためのポリA(+)RNAを調製し得る。
一旦、候補化合物が同定されると、これらの化合物は、当該分野の公知の標準
的な方法論を用いて、合理的で有用な量で生成され得る。アミノ酸をベースにし
た分子は、合成核酸分子によりコードされ、そして本明細書上記または当該分野
で記載の組換え発現系において発現され得る。あるいは、このような分子は化学
的に合成され得る。例えば、自動ペプチド合成機による。非アミノ酸に基づく分
子は、標準的な有機化学合成手順により生産され得る。
本発明の方法を行うための例示的なプロトコルを以下に示す。この場合、リポ
ーター遺伝子としてCAT遺伝子およびOP-1を発現することが知られている1つ以
上の哺乳動物の細胞株を用いる。この例に限定されない。そして他の細胞、リポ
ーター遺伝子およびOP-1非コード配列が考えられる。
トランスフェクションのための代表的なベクターの例示的な構築
内在性OP-1を発現する細胞株へのトランスフェクションのために、OP-1プロモ
ーターを含有するDNAフラグメントをリポーター遺伝子に結合し得る。適切な細
胞株は、OP-1に特異的なプローブへのノーザンブロットハイブリダイゼーション
により(OP-1 mRNAについて細胞抽出物を分析することにより)選択される。こ
の技術を用いて、本発明者らは、数個の細胞株が高レベルのOP-1 mRNAを生成す
ることを見出した。そしてこれらの細胞株のいくつかは、腎臓系のIMCD、膀胱系
のNBTIIである。
約4kbのOP-1の上流配列ならびに第1イントロン部分を含む約5kbのEcoRI、Ba
mHIのゲノムフラグメントを、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化し、そしてpUCベ
クターのポリリンカー内にクローン化する(pO146-1)。ヒトOP-1上流配列を含
む約3.5kbのDNAフラグメントを、制限酵素EheIを用いてpO146-1から、コード配
列の一部分および第1イントロンを欠失させることにより得る。この約3.5kbフ
ラグメントは、平滑末端を有し、そして5'非コード配列をほぼ含み、そしてまた
、30塩基の短い配列をOP-1遺伝子内に含む。この上流配列フラグメントは、5' H
indIII末端平滑化結合によりベクターSV2CATから得られるCAT遺伝子由来の1.6kb
のHindIII−BamHIフラグメントに連結した約3.5kbのフラグメントである。この1
.6kbのCAT遺伝子フラグメントは、約70塩基の上流配列を含有する。これらの連
結フラグメントを、Bluescript KS(-)ベクター(Stratgene、La Jolla、CA)に
クローン化する。次いで、この構築物を部位特異的変異誘発に供し、OP-1の上流
配列の3'末端の余分な配列(約30塩基)および隣接するCAT遺伝子由来の5'非コ
ード配列(約70塩基)を欠失する。この変異誘発により、プロモーターフラグ
メントからのすべてのOP-1コード配列を、ならびにCAT遺伝子のすべての非コー
ド上流配列が除去される。従って、得られる構築物は、OP-1上流配列と、CATタ
ンパク質をコードするCAT遺伝子配列との融合物である。次いで、適切な細胞株
へのトランスフェクトのために、約5kbフラグメントをHindIIIおよびBamHIを用
いてBluescriptから切り出し、そしてHindIII−BamHI切断し、そしてゲル精製し
たpSV2CATベクターの骨格に連結した。
適切な細胞株は、高レベルのOP-1 mRNAを含有することが知られている細胞株
を含む。このことは、OP-1プロモーターがこれらの細胞において活性であること
を示す。これらの細胞株のうちの2つは、マウスの内部髄質収集管(inner medul
lary collecting duct)(IMCD)、およびラットの膀胱癌株(NBT II)である。
しかし、高レベルのOP-1メッセージを産生する泌尿生殖系の他の細胞株が、多数
の既に述べた細胞タイプおよび細胞株に加えて、使用され得る。
このベクターのOP-1産生細胞株へのトランスフェクションは、標準的な技術(
すなわち、リン酸カルシウムを用いるトランスフェクション、リポソーム仲介ト
ランスフェクション、エレクトロポレーション、またはDEAEデキストラントラン
スフェクション)に従い実施される。
トランスフエクトされた細胞を、CAT発現ベクターでのトランスフェクション
の48〜72時間後に回収し、そして抽出物を、凍結融解の繰り返しにより作製する
。2μlの200μCi/ml 14C-クロラムフェニコール(35〜55mCi/mmol)、20μlの
4mMアセチルCoA、32.5μlの1M Tris-HCl(pH 7.5)および75.5μlの水を、20
mlの細胞抽出物に添加し、そして37℃で1時間インキュベートする。インキュベ
ーション終了の際、1mlの酢酸エチルを反応物に添加し、1分間微量遠心分離し
、そして最上層を取り出す。この最上層を、SpeedVacにおいて45分間乾固し、そ
して各サンプルを30mlの酢酸エチルに再懸濁する。このサンプルを、クロマトグ
ラフィーのためにプラスチック背面のTLCシート上にスポットする。次いで、薄
層を、19:1のクロロホルム/メタノールの200mlを含むタンク内で展開する。
クロマトグラフィーを2時間行い、そしてオートラジオグラフィーのためにフィ
ルムの下に置く。モノアセチル化クロラムフェニコール系列におけるC14の活性
を、Current Protocols in Molecular Biology、1993(Ausubelら、編John Wile
y &
Sons、New York)に記載されるように算出する。
CAT活性の測定の際、主な構築物は、観察されるCAT活性を担う領域を決定する
ために部分に欠失され得る。あるいは、上流配列は、Bal31のようなエキソヌク
レアーゼを用いて、一方向的に欠失され得る。そして欠失産物は、CAT活性アッ
セイにおいて分析され得る。この系はまた、細胞をいくつかのグループに分け、
そして化合物をなにも添加しないで1つのグループを培養し、そして1つ以上の
候補化合物とともにそれ以外のグループを培養し、そして得られるCAT活性のレ
ベルを比較することにより、OP-1発現を調節する能力について化合物をスクリー
ニングするために、本発明の方法において使用され得る。
容易にアッセイ可能で、十分に特徴付けられた非OP-1リポーター遺伝子が、本
明細書中で開示される方法において好ましいが、当業者により理解されるように
、OP-1コード配列もまた、本発明のスクリーニング方法において使用され得る。
OP-1発現は、好ましくは、免疫アッセイにより、またはノーザンもしくはドット
ブロット、またはmRNA転写物を測定する他の手段により測定される。例えば、細
胞または液体におけるOP-1レベルの変化をアッセイすることについての詳細な記
載に関しては、1995年5月4日公開のWO 95/11983を参照。
XI.内在性細胞タイプモデルにおけるOP-1遺伝子発現を変化させる化合物のため
の例示的なスクリーニングアッセイ
OP-1は、種々の異なる細胞タイプ(腎臓、骨、肺、心臓、子宮、噴門および神
経組織を含む)で発現する。ある組織タイプの細胞に対して調節効果を有するが
別の組織タイプの細胞に対しては調節効果を有さず、そして/または、この効果
が異なる細胞において調節される候補化合物が同定され得る。下記のアッセイを
用いて、生理学的条件下でOP-1を発現することが知られている特定の細胞タイプ
において、候補化合物の効果を評価し得る。
腎臓、副腎、膀胱、脳、または他の器官の細胞培養物は、広く文献に記述され
ているように調製され得る。例えば、生後まもない(neonatal)、新生期(nawb
one)、若齢期、成熟期の齧歯類(マウスまたはラット)から腎臓を外植し、組
織全体または薄切組織(1〜4mm)として器官培養に用いる。初代組織培養物お
よび樹立細胞株(これらもまた腎臓、副腎、膀胱、脳、乳房、または他の組織に
由来する)を、従来の細胞培養技術に従ってマルチウェルプレート(6ウェルま
たは24ウェル)に樹立し、そして一定期間(1〜7日)、血清の非存在下また
は存在下で培養する。細胞は、例えば、血清(例えば、1%〜10%のウシ胎児血
清、Gibco)を含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco,Long Island,NY)、
または所望により血清を除去した培地、または規定培地(例えば、インシュリン
、トランスフェリン、グルコース、アルブミン、またはその他の成長因子を含有
する)中で培養され得る。
OP-1産生のレベルを試験するためのサンプルは、定期的に回収され、そしてイ
ムノブロット分析(Sambrookら、編、1989,Molecular Cloning,Cold Spring H
arbor Press,Cold Spring Harbor,NY)によりOP-1の産生について評価される
培養上清または細胞溶解物、または定期的に回収され、そしてRNA分析用にpolyA
+ RNAを調製するのに使用される細胞培養自体の一部分を含む。OP-1のデノボ合
成をモニターするために、いくらかの培養物を、従来の方法に従って、35S‐メ
チオニン/35S‐システイン混合物で6〜24時間標識し、次に従来の免疫沈降
法によりOP-1合成について評価する。
XII.OP-1発現を調節する化合物の効力を試験するための例示的なインビボ動物
モデル
OP-1が、OP-1の注射後、アルカリホスフェートおよびオステオカルシンレベル
の用量応答性増加により示されるように、標準的な卵巣摘出ラットモデルで骨粗
鬆症に影響することは以前に示されている。骨粗鬆症ラットモデルは、候補の調
節化合物の効力を評価するためのインビボモデルを提供する。OP-1産生、および
従ってインビボでの骨生成に対する候補のモルフォゲン刺激薬剤の効果を測定す
るために、骨粗鬆症を促進する条件下(例えば、この場合、骨粗鬆症は、ラット
の卵巣の除去により、そして候補の調節化合物の存在下および非存在下で誘導さ
れる)で、アルカリホスフェートおよびオステオカルシンのレベルを測定する。
内在性OP-1発現を増強するかまたは誘導する能力を有する化合物は、増加したオ
ステオカルシンおよびアルカリホスフェートのレベルを生じるはずである。
体重約200gの40匹のLong-Evansラット(Charles River Laboratories,Wilmi
ngton)に、それぞれ標準的な外科手順を用いて卵巣摘出(OVX)を行い、そして
10匹のラットに偽の(sham)手術を行う。ラットの卵巣摘出は、エストロゲン産生
の減少の結果、ラットに骨粗鬆症状態を誘導する。餌および水を自由に摂取させ
る。卵巣摘出8日目後、上記のように調製したラットを、3群に分ける:(A)偽
手術を行ったラット;(B) 尾静脈内に1mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を
静脈内投与する卵巣摘出ラット;および(C)尾静脈を介する静脈内注射、または
腎臓組織への直接投与のいずれかにより、種々の用量範囲の候補の刺激薬剤を投
与される卵巣摘出ラット。
インビボでの骨形成に対する候補化合物の効果を、卵巣摘出ラットからの骨組
織の切片を調製することにより測定し得る。各ラットに、5mgのテトラサイクリ
ン(これは、新生骨を染色する(蛍光により黄色として視認される))を、研究
の15日目および21日目に注射し、そして22日目にラットを屠殺する。次いで、体
重、子宮重量、血清アルカリホスフェートレベル、血清カルシウムレベルおよび
血清オステオカルシンレベルを、各ラットについて測定した。骨切片を調製し、
そして各テトラサイクリン染色物(straining)の分離間隔を、新生骨の増殖量を
決定するために測定する。候補薬剤注射後の血清中のOP-1レベルもまた、例えば
、上記のV節およびVII節に記載される免疫アッセイを用いて、定期的にモニタ
ーし得る。
V.OP-1タンパク質産生の例示的な測定
OP-1がリポーター遺伝子として作用する場合、遺伝子産物の検出は、このタン
パク質に特異的な抗体および標準的な免疫アッセイ試験を用いて容易にアッセイ
され得る。例えば、OP-1は、以下のように、ELISAにおいてOP-1に特異的なポリ
クローナル抗体を用いて検出される。
OP-1に特異的な、アフィニティ精製したポリクローナルウサギIgG(1μg/10
0μl)を、96ウェルプレートの各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベート
する。ウェルを、0.1%のTween 20を含有する、pH 8.2の0.15M NaClを含む0.16
7Mのホウ酸ナトリウム緩衝液(BSB)で4回洗浄する。非特異的結合を最小限に
するために、BSB中の1%のウシ血清アルブミン(BSA)をウェル一杯に満たし、
37℃で1時間インキュベートすることにより、ウェルをブロックする。次いで、
0.1%のTween 20を含むBSBで、ウェルを4回洗浄する。適度に希釈した細胞培養
上澄みの各試験サンプルの100μlアリコートを、3連にして各ウェルに添加し、
37℃で30分間インキュベートする。インキュベーション後、100μlのビオチン化
ウサギ抗OP-1血清(ストック溶液は約1mg/mlで、使用前に1%BSAを含むBSB中
で1:400に希釈する)を各ウェルに添加し、37℃で30分間インキュベートする
。次いで、0.1%のTween 20を含むBSBで、ウェルを4回洗浄する。100μlのスト
レプトアビジン−アルカリ(Southern Biotechnology Associates,Inc.Birmin
gham,Alabama、使用前に0.1%のTween 20を含むBSBで1:2000に希釈する)を
各ウェルに添加し、37℃で30分間インキュベートする。プレートを、pH 7.2の0.
5Mトリス緩衝化生理食塩水(TBS)で4回洗浄する。50μlの基質(ELISA Ampli
fication System Kit、Life Technologies,Inc.,Bethesda,MD)を各ウェルに
添加し、室温で15分間インキュベートする。次いで、50μlの増幅剤(上記のAmp
lification System Kitより)を添加し、室温でさらに15分間インキュベートす
る。50μlの0.3M硫酸の添加により、反応を停止する。各ウェル中の溶液の490n
mでのODを記録する。培養培地中のOP-1を定量するために、試験サンプルと平行
してOP-1標準曲線を作る。
VI.OP-1ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の例示的な産生
OP-1タンパク質に対するポリクローナル抗体は、次のように調製され得る。各
ウサギに、500μlの完全フロイントアジュバントと混合した0.1%SDS中で100μg
/500μlのE .coli産生OP-1モノマー(配列番号5のアミノ酸328-431)の一次免
疫化を行う。抗原を、ウサギの背部および側腹部の複数の部位に皮下注射する。
1ヶ月後、不完全フロイントアジュバントを用いて、同様にウサギをブーストす
る。7日後、試験採血を耳静脈から行う。ELISAアッセイを用いて血清中にOP-1
に対する抗体が検出されるまで1ヶ月間隔で、さらに2回ブーストおよび試験採
血を実施する。次いで、1ヶ月間隔でウサギを100μgの抗原でブーストし、そし
てブーストの7日後および10日後に採血する(1回の採血当たり15ml)。
OP-1タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を、以下の通り調製し得る。マ
ウスに、E.coli産生OP-1モノマーを2回注射する。最初の注射は、完全フロイン
トアジュバント中に100μgのOP-1を含有し、皮下に投与する。2回目の注射は不
完全アジュバント中に50μgのOP-1を含有し、腹腔内に投与する。次いで、マウ
スは、合計230μgのOP-1(配列番号5のアミノ酸307-431)を8ケ月間にわたり種
々の時期に、4回腹腔内注射で投与される。融合の1週間前に、両方のマウスを
、100μgのOP-1(307-431)と、SMCC架線剤を用いて添加したシステインを介し
てウシ血清アルブミンに結合したN末端ペプチド (Ser293‐Asn309-Cys)の30μg
とを腹腔内ブーストする。このブーストを、融合の5日前(腹腔内)、4日前(
腹腔内)、3日前(腹腔内)および1日前(静脈内)に操り返した。次いで、マ
ウスの脾臓細胞を、PEG1500(Boeringer Mannheim)を使用して、1:1の比率
で、ミエローマ(例えば、653)細胞に融合し、そして細胞融合物をプレートし
、そして、OP-1(307-431)を抗原として用いてOP-1特異的抗体についてスクリ
ーニングする。次いで、細胞融合およびモノクローナルスクリーニングは、当該
分野で広く使用され得る標準的なテキストに十分に記述されている標準的な手順
による。
VII.血清中のOP-1を検出するための例示的プロセス
血清中のOP-1を同定するためのサンプルプロトコルを下記に示す。この一般的
な方法論に従い、OP-1を、血清含む体液において検出し得る。そして、OP-1は、
インビボでOP-1調節化合物の効力を評価するためのプロトコルにおいて使用し得
る。
当該分野で十分に記載され、そして上記の実施例VIで一般的に記載される標準
的な免疫学的な技術を用いて、組換え的に産生した哺乳動物のOP-1に対して惹起
したモノクローナル抗体を、アガロース活性化ゲル(例えば、Bio-Rad Laborato
ries,Richmond,CAのAffi-GelTM、製造者の指示に従って調製した)に抗体を通
過させることにより固定化し、そして血清からOP-1を精製するために使用した。
次いで、ヒトの血清をカラムに通過させ、そして3MのK-チオシアネートで溶
離した。次いで、K-チオシアネート画分を、6M尿素、20mM PO4(pH 7.0)中
で透析し、C8 HPLCカラムに添加し、そして20分間の25-50%アセトニトリル/0.
1%TFAのグラジエントで溶離した。組換えにより産生した成熟体OP-1ホモダイマ
ーが、20-22分の間に溶離し、そしてこれをポジティブコントロールとして使用
する。次いで、画分を回収し、そしてOP-1特異的抗体を用いる標準的な免疫ブロ
ットによりOP-1の存在について試験した。この方法により、OP-1を、ヒト血清中
で容易に検出した。アッセイの詳細な記載についてのPCT/US92/07432もまた、参
照のこと。
IX.治療薬剤を投与するための処方および方法について考慮すべき事柄
本明細書中で同定されるOP-1調節薬剤が組織または器官保存溶液の部分を含む
場合、任意の市販の保存溶液を有利に使用し得る。例えば、当該分野で公知の有
用な溶液は、コリンズ液、ウィスコンシン液、ベルザー液、ユーロコリンズ液お
よび乳酸化リンゲル液を含む。一般的に、器官保存溶液は、通常1つ以上の以下
の性質を有する:(a)哺乳動物細胞の内部の浸透圧に実質的に等しい浸透圧(溶
液は、典型的に、高浸透圧であり、そして哺乳動物細胞の内部よりも若干高い浸
透圧を生じるに十分な量で存在するK+および/またはMg++イオンを有する);(b
)溶液は、典型的に、細胞内において実質的に正常なATPレベルを維持し得る;そ
して(c)溶液は、通常、細胞内のグルコース代謝の最適な維持を可能にする。器
官保存溶液はまた、抗凝固剤、エネルギー源(例えば、グルコース、フラクトー
スおよび他の糖)、代謝物、重金属キレート化剤、低温での生存性を高めるため
の高粘性のグリセロールおよび他の物質、フリー酸素ラジカル阻害剤およびpH指
示剤を含有し得る。保存溶液および有用な成分の詳細な記載が、例えば、米国特
許第5,002,965号に見出され得る。
OP-1調節薬剤を、個体、例えば、摘出前のドナー、または移植前もしくは移植
と同時のレシピエントに与える場合、治療薬剤は、任意の適切な手段、好ましく
は、直接的に(例えば、組織または器官部位への注射によるような局所的に)ま
たは全身的に(例えば、非経口的にまたは経口的に)与えられ得る。
非経口投与に有用な溶液は、薬学分野で周知の方法のいずれかにより調製され
得る。この方法は、例えば、Remington's Phamaceutical Sciences (Gennaro,
A.、編)Mack Pub.,1990)に記載されている。処方物は、例えば、ポリエチレ
ングリコールのようなポリアルキレングリコール、野菜起源の油、水素化ナフタ
レンなどを含み得る。特に、直接的に投与するための処方物は、特にグリセロー
ルおよび所望の部位で薬剤の維持を助けるための他の高粘度の組成物を含み得る
。生体適合性、好ましくは生体吸収性のポリマー(例えば、ヒアルロン酸、コラ
ーゲン、リン酸トリカルシウム、ポリ酪酸、ラクチドおよびグリコリドポリマー
ならびにラクチド/グリコリドコポリマーを含む)は、薬剤のインビボでの放出
を制御するための有用な賦形剤であり得る。
当業者により理解されるように、治療組成物における記載される化合物の濃度
は、多くの要因(投与する薬剤の投与量、用いられる化合物の化学的特徴(例え
ば、疎水性)および投与経路を含む)により、変動する。モルフォゲン刺激剤が
保存溶液の一部分である場合、投与量は、例えば、移植される組織または器官の
サイズ、器官または組織自体の全体的な健康状態、摘出と移植の間の時間の長さ
(例えば、貯蔵期間)、保存溶液を交換する頻度、および期待する貯蔵タイプ(
例えば、低温)に依存するようである。一般的に、好ましい範囲は、1日当たり
組織または器官重量当たり、約0.1ngと100μg/kgとの間の濃度範囲を含む。
治療薬剤をドナーまたはレシピエントに投与する場合、投与する薬剤の好まし
い投与量はまた、疾患の進行のタイプおよび程度、特定の患者の全体的な健康状
態、選択される化合物の相対的生物学的効力、化合物賦形剤の処方、およびその
投与経路のような変数に依存するようである。一般的に、本発明の適切な化合物
は、非経口投与のためには、約0.001%〜10%w/vの化合物を含有する水性生理学
的緩衝液溶液で与えられ得る。代表的用量範囲は、1日当たり約10ng/kg体重〜
約1g/kg体重である;そして好ましい用量範囲は、1日当たり約0.1μg/kg体重
〜約100mg/kg体重である。
本発明は、本発明の精神および本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体
的な形態で実施され得る。従って、本実施態様は、いかなる観点においても、例
示的であるが、限定的なものでない。本発明の範囲は、先に記載した説明でなく
、添付した特許請求の範囲により示されており、従って、特許請求の範囲と均等
な意味および範囲内で生じるすべての変化は、本特許請求の範囲内に含まれるこ
と
を意図される。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AU,BB,BG,BR,BY,CA,CN,C
Z,EE,FI,GE,HU,IS,JP,KG,KP
,KR,KZ,LK,LR,LT,LV,MD,MG,
MN,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,SG,S
I,SK,TJ,TT,UA,UZ,VN
(72)発明者 オパーマン, ハーマン
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
02053, メドウェイ,サマー ヒル ロ
ード 25