【発明の詳細な説明】
モルフォゲン発現のモジュレーターおよびモジュレーターを同定する方法
発明の分野
本発明は、一般的には薬剤スクリーニングアッセイの分野に関する。より詳細
には、本発明は、真の組織形態形成タンパク質の発現を調整する分子を同定する
ための方法および組成物に関する。
発明の背景
そのメンバーが真の組織形態形成タンパク質であるクラスのタンパク質が近年
同定されている。このクラスのタンパク質のメンバーは、天然に存在する組織に
必要とされる任意の血管組織および結合組織の形成を包含する、新たな器官特異
的組織の形成に至る細胞および分子事象の発生カスケードを誘導する能力を有す
るとして特徴付けられる。具体的には、このモルフォゲンは、形態形成を許容す
る環境において以下の生物学的機能の全てを誘導する能力を有する:(1)前駆細
胞の増殖を刺激すること;(2)前駆細胞の分化を刺激すること;(3)分化細胞の増
殖を刺激すること;および(4)分化細胞の増殖および維持をサポートすること。
例えば、形態形成タンパク質は、間葉細胞の移動および増殖、軟骨細胞の増殖お
よび分化、軟骨基質の形成および石灰化、血管浸潤、骨芽細胞増殖、骨形成、骨
再造形、および造血性骨髄分化を含む骨組織形能形成の完全発生カスケードを誘
導し得る。これらのタンパク質はまた、象牙質、肝臓、および神経組織を含む非
軟骨組織の真の組織形態形成を誘導することが示されている。
特に有用な組織形態形成タンパク質は、米国特許第5,011,691号;米国特許第5
,266,683号およびOzkaynakら、(1990)EMBO J.9:2085-2093に記載されるヒトOP-
1(骨形成タンパク質-1)である。今までに同定された種ホモログ(species homolo
gue)はマウスOP-1(米国特許第5,266,683号参照)およびDrosophilaホモログ60A(W
hartonら、(1991)Proc .Natl.Acad.Sci.USA 88:9214-9218に記載)を包含す
るが、これらに限定されない。他の密接に関連するタンパク質として、OP-2(O
zkaynak(1992)J .Blol.Chem.267:25220-25227および米国特許第5,266,683号
);BMP5、BMP6(Celesteら、(1991)Proc .Natl.Acad.Sci.USA 87:9843-9847)
およびVgr-1(Lyonsら、(1989))が挙げられる。これらの開示は本明細書中で参考
として援用される。
これらの組織モルフォゲンを動物に投与して欠損組織または損傷組織を再生し
得ることが以前から意図されていた。しかし、現在、治療用高分子(例えば、モ
ルフォゲンタンパク質)の生成、処方、およびインビボでの使用間に特定の困難
に遭遇する。例えば、そのようなタンパク質は、代表的には適切な宿主細胞の発
酵または培養によって生成される。現在のところ、ヒトにおける使用のためのそ
のような宿主細胞から生成される任意の生物学的生成物は、宿主細胞夾雑物(例
えば、分泌または流出(shed)タンパク質、ウイルス性粒子、またはその分解産物
)を本質的に含まないことが示されなければならない。そのような保証を提供す
ることは、生物学的高分子の商業的製造の費用および技術的困難を顕著に付加し
得る。さらに、適切な処方物は、生物学的効力の有意な欠失なしに、生成された
高分子に対して商業的に妥当な保存期間を与えるために開発されなくてはならな
い。環境が、生成および処方された高分子を用いる治療的処置の延長した経過を
保証する場合、さらなる複雑な因子が生じる:処置された哺乳動物は、高分子に
対する免疫学的応答を発生し得、そして任意のこのような応答は、その有効性を
妨害し得る。極度の環境において、処置は中止されなくてはならない。
あるいは、内因性組織モルフォゲンの発現を調整し得る分子を投与することは
、インビボでの部位へのモルフォゲンの提供のための有効な手段である。例えば
、DNA配列は、wt-1/Egr-1コンセンサス配列、TLC結合配列、FTZ結合配列、ステ
ロイド結合配列に類似するOP-1遺伝子プロモーターにおいて同定されている(WO
95/33831を参照のこと、その開示は、本明細書中に参考として援用される)。
従って、これらの調節配列が応答性である分子は、おそらくOP-1遺伝子のモジュ
レーターであり、そしてその発現に影響を及ぼし得る。
本発明の目的は、内因性組織モルフォゲン(特に、OP-1)および真の組織モル
フォゲンのより大きな属の他のメンバーの発現を調整し得る化合物を同定する組
成物および方法を提供することである。このように同定された化合物は、インビ
トロおよびインビボの両方での有用性を有する。意図される有用な化合物には、
少なくとも、Paxホメオボックス遺伝子(特に、Pax 6またはPax 2遺伝子)につ
いてのコンセンサス配列に類似するOP-1非コード配列を介して、OP-1遺伝子の転
写および/または翻訳を刺激し得る化合物、ならびにOP-1遺伝子の転写および/ま
たは翻訳を阻害し得る化合物が挙げられる。
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下の説明、図面、および請求
の範囲から明らかである。
発明の要旨
本発明は、生物における内因性モルフォゲン(特に、OP-1)の有効な局所または
全身のレベルを調整する能力について、候補化合物をスクリーニングするための
組成物および方法を特徴とする。1つの局面において、本方法は以下の工程によ
って実施される:(1)1つ以上の候補化合物を、Paxホメオボックス遺伝子に対し
て応答性であるモルフォゲン非コードDNA配列の少なくとも一部をコードするDNA
配列でトランスフェクトした細胞とともにインキュベートする工程であって、上
記DNA配列は、それが作動可能に結合したレポーター遺伝子の発現に作用し、そ
してそれに影響を及ぼす能力のある、工程;(2)トランスフェクトされた細胞に
おけるレポーター遺伝子発現のレベルを測定する工程、および(3)候補化合物の
非存在下で発現されるレポーター遺伝子のレベルを、候補化合物の存在下で発現
されたレポーター遺伝子のレベルと比較する工程。所定の細胞培養物中の発現さ
れたレポーター遺伝子産物のレベル、または1つ以上の化合物への曝露から生じ
るレベルにおける変化は、上記化合物がまた、通常、非コード配列と結合したモ
ルフォゲンのレベルを調整し得ることを示す。詳細には、レポーター遺伝子発現
のレベルにおける増加は、インビボでのモルフォゲン発現を増加させる候補化合
物の能力もまた示す。同様に、レポーター遺伝子発現のレベルにおける減少は、
インビボでのモルフォゲンの発現を低減させるか、または他の様式で妨害する候
補化合物の能力もまた示す。上記方法は、特に、Pax媒介OP-1遺伝子発現に影響
を及ぼし得る化合物を同定するために有用である。
従って、本発明の方法は、種々のインビボおよびエクスビボでの哺乳動物適用
のための治療剤として見込みを示す化合物を同定するため、ならびに多くの有用
性を有する化合物を同定するために使用され得る。例えば、モルフォゲンのPax
2またはPax 6媒介転写を刺激することによって、モルフォゲン発現を調整する化
合物は、疾患状態を修正または緩和するため、損失または損傷した組織を再生す
るため、細胞増殖および分化を誘導するため、ならびに/またはインビボまたは
エクスビボでの細胞および組織の生存可能性および/もしくは分化した表現型を
維持するために、インビボにて使用され得る。化合物はまた、培養物における細
胞の生存可能性およびその分化した表現型を維持するために使用され得る。本明
細書中に記載されるモルフォゲンタンパク質の、種々のインビボ、エクスビボ、
およびインビトロでの有用性および適用は、当該分野において十分に立証されて
いる。例えば、US 92/01968(WO 94/03200)(1992年3月11日出願);US 92/0735
8(WO 93/04692)(8月28日出願);PCT US 92/0743(WO 93/05751)(1992年8月28
日出願);US 93/07321(WO 94/03200)(1993年7月29日出願);US 93/08808(WO
94/06449)(1993年9月16日出願);US 93/08885(WO 94/06420)(1993年9月15日
出願)、および米国特許第5,266,683号を参照のこと。
別の局面において、本発明はさらに、モルフォゲン(特に、OP-1)治療のため
に有用なベクターおよび細胞を提供する。1つの実施態様において、本発明は、
Paxホメオボックス遺伝子産物に対して応答性の、1つ以上のOP-1非コード配列
の少なくとも一部と作動可能に連結したレポーター遺伝子を有するベクターを特
徴とする。OP-1非コード配列は、第1のPax遺伝子発現産物に対して応答性であ
る、少なくとも1つの第1のPax応答性OP-1調整エレメントを含む。他の実施態
様において、ベクターはさらに、第2のPax遺伝子発現産物に対して応答性であ
る、少なくとも1つの第2のPax応答性OP-1調整エレメントを含む第2の非コー
ド配列を含み;このような実施態様において、第1のPax遺伝子発現産物と、第
2のPax遺伝子発現産物とは異なる。Pax応答性OP-1調整エレメントであるOP-1非
コード配列は、配列番号1のヌクレオチド1〜3317から選択され得る。また、OP
-1の他の種ホモログおよびOP-1に密接に関連するタンパク質の特定の非コード配
列は、同様に有用であると考えられる。例えば、Pax遺伝子産物またはそのホモ
ログに対して応答性である他の非コードDNAは、特定のモルフオゲンのモジュレ
ーター、またはモルフォゲン遺伝子発現を調整し得る他の因子を同定するために
使用され得る。
別の実施態様において、ベクターは、5'非コードヒトゲノムOP-1配列の約3.3K
bを規定する、以下に示される配列番号1の以下の配列セグメントのうちの少な
くとも1つから選択される、非コードOP-1特異的配列を含み得る。好ましいベク
ターは、ヌクレオチド1〜3317を含む配列セグメント、ならびにおよそ以下のヌ
クレオチドのような、DNAのこの領域のより短いフラグメントを含む:配列番号
1のヌクレオチド108〜121、139〜154、157〜167、365〜378、491〜503、598〜6
13、737〜747、891〜903、994〜1006、1123〜1140、1144〜1161、1285〜1297、1
750〜1762、2001〜2023、2365〜2378、2931〜2944(これらの対立遺伝子、種、
および他の配列改変体を含む)。塩基2790がmRNA開始部位であるので、他の好ま
しい配列は、転写されるが、翻訳されない5'非コード配列を示す、およそ2790〜
3317、およびこのDNA領域のより短いフラグメントを含む。配列番号1の5'非コ
ード領域の他の好ましい領域は、例えば、およそ1〜2073、1〜1297、1〜2691、1
〜378、491〜1006、1750〜2023、1750〜2378、1750〜269L1750〜2944のようない
くつかのPax応答性エレメントのクラスターを含む領域を含む。特定の実施態様
において、非コード配列は、配列番号2および/または配列番号3の一部または
すべて(これらの対立遺伝子、種、および他の配列改変体を含む)に対応する。
なお他の実施態様において、ベクターは、少なくとも1つ、好ましくは1〜12の
間、および/または4以上の第1および第2のPax応答性OP-1調整エレメントにそ
れぞれ対応する非コード配列を含む。第1のPax応答性部位は、およそ配列番号
1の塩基108〜121、139〜154、157〜167、365〜378、497〜511、598〜613、1123
〜1140、1144〜1161、1285〜1297、1750〜1762、2001〜2023、2365〜2378、2931
〜2944に対応する。第2のPax応答性部位は、およそ配列番号1の塩基491〜503
、737〜747、891〜903、および994〜1006に対応する。
別の局面において、本発明は、調節が、先に規定されたPax応答性OP-1非コー
ド配列のうちの1つ以上によって媒介されるレポーター遺伝子を含む細胞を提供
する。1つの実施態様において、細胞は、少なくとも1つのPax応答性部位と作
動可能に結合したレポーター遺伝子でトランスフェクトされる。別の実施態様に
おいて、本発明は、少なくとも2つのDNA配列と作動可能に結合したレポーター
遺伝子をコードするトランスフェクトされたベクターを含む細胞を提供し、ここ
で第1のDNA配列は、配列番号2から選択される配列の少なくとも一部を含むが
、第2のDNA配列は、配列番号3から選択された配列の少なくとも一部を含む(
前述の、対立遺伝子、種、および他の配列改変体を含む)。なお別の実施態様に
おいて、本発明の細胞は、例えばPax 2および/またはPax 6のようなPax遺伝子発
現産物をコードする発現ベクターで同時トランスフェクトされる。
別の局面において、本発明は、OP-1発現調整化合物の設計および/または同定
において有用なキットを提供する。本明細書中において使用される「キット」は
、OP-1非コードDNA配列と作動可能に結合したレポーター遺伝子を含む細胞、お
よびレポーター遺伝子の発現を検出するために必要な試薬を含む。選択されるOP
-1非コードDNAの部分は、本明細書中上記の種々の配列のいずれかであり得る。
本開示後、モルフォゲン発現(例えば、OP-1発現)のモジュレーターを同定す
るための、培地フラックススクリーンアッセイ、およびそれによるキットが利用
可能になる。これらの化合物は天然に存在する分子であり得るか、または化合物
は、合理的な薬物設計および確立された構造/機能分析方法論を用いて、設計お
よび生合成的に作製され得る。化合物は、アミノ酸に基づき得るか、または一部
もしくは全体的に非タンパク質性合成有機分子から構成され得る。
このように同定されたOP-1発現調整化合物は、周知および当該分野において特
徴付けられた、ならびに/または本明細書中に記載の標準的な組換え発現または
化学合成技術を用いて、妥当な量(商業的に有意な量を含む)で生成され得る。
例えば、核酸配列およびアミノ酸配列の化学合成のための自動化手段が市販され
ている。あるいは、可能性のある候補化合物は、例えば、DNAエレメントへの化
合物の結合親和性を増強するための標準的な生物学的または化学的方法論を用い
て改変され得、次いで好ましい候補化合物誘導体が大量に生成され得る。
一旦候補化合物が同定および生成されると、候補化合物はさらに、OP-1発現に
対する効果について試験され得る。例えば、腎臓細胞株においてOP-1の産生をア
ップレギュレートする(増加させる)化合物(例えば、OP-1アゴニスト)は、全
身投与のための候補である。候補化合物は、インビボでの候補分子の効力を決定
するために、動物モデルにおいてアッセイされ得る。例えば、インビボにてOP-1
を循環するレベルをアップレギュレートする化合物の能力は、骨代謝疾患(例え
ば、骨粗髭症)を修正するために使用され得る(例えば、上記のPCT/US92/07932
を参照のこと)。逆に、OP-1の生成をダウンレギュレーションする(低減させる
)化合物(例えば、OP-1アンタゴニスト)はまた、有用であると考えられる。全
身投与のための有用なインビボ動物モデルが、当該分野においておよび以下に開
示される。
当該分野において周知のように、OP-1は、異なる細胞型において示差的に発現
される。従って、候補化合物は、ある細胞型においてOP-1発現のインデューサー
としての有用性を有するが別の細胞型では有さないことがさらに予測される。従
って、本発明はさらに、インビボでの組織特異的様式でのOP-1の発現を調整する
ことにおける有用性について、候補化合物を試験することをさらに包含する。
従って、組換えDNA技術および組織培養技術の分野の当業者は、本開示を考慮
して、適切なDNAベクターを設計および構築し得、そしてOP-1の発現を調整する
化合物についてアッセイするための本発明による方法における使用のための適切
なDNA配列で細胞をトランスフェクトし得る。これらの同定された化合物は、イ
ンビボおよびインビトロでの両方において、OP-1生成およびその有効濃度を調整
するために使用され得る。
図面の簡単な説明
図1Aは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子と作動可能に結合したOP-1遺伝子の
5'非コード領域の模式図である。特定の好ましいPaxコンセンサス部位は、非コ
ード領域に沿って図示される。
図1Bは、Pax 2および/またはPax 6発現構築物での同時トランスフェクション
の存在または非存在下での(1A)のOP-1プロモーター欠失構築物でトランスフェク
トされたG401ヒト腎臓細胞におけるルシフェラーゼ活性の誘導のグラフである。
図2は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子と作動可能に結合したOP-1遺伝子の
5'非コード領域を含む構築物からのルシフェラーゼ発現の相対的レベルを示す。
図3は、pAS3.3およびpAS3.3dを含む細胞におけるルシフェラーゼ発現のレベ
ルを示す。
詳細な説明
以下により十分に記載されるように、本発明者らは、インビボでのOP-1発現を
調整し得る分子を同定する際に有用なOP-1遺伝子配列における特異的な領域を発
見した。本発明者らは、ヒトOP-1遺伝子の5'非コード配列から単離された種々の
短縮型配列をクローニングすることおよび特徴付けすることによってOP-1遺伝子
発現の調節を担うDNA配列を発見した。Pax 2またはPax 6遺伝子産物によって媒
介されるOP-1遺伝子発現の観察された調整とともに、OP-1非コード領域における
、本明細書中に規定されるようなPax 2またはPax 6コンセンサス結合配列を規定
する配列の存在は、OP-1発現を調整する能力についての化合物のスクリーニング
についての方法における有用性を有するとして、これらの配列またはその改変体
を関連付ける。さらに、他のモルフォゲン遺伝子の5'非コード配列に位置するPa
x応答性配列は、他のそのようなモルフォゲンの発現を調整する化合物を同定す
るための手段を提供する。
有用な用語および定義の列挙
本明細書中で使用される「モルフォゲン」とは、ヒト骨形成タンパク質1(hOP
-1)に分類されるタンパク質のクラスを意味する。hOP-1および機能的に等価なモ
ルフォゲンは、本明細書中に定義されるように、哺乳動物細胞、特に未決定の(u
ncommitted)前駆細胞を誘導または再誘導(reinduce)する二量体タンパク質であ
り、形態形成(このような状況において天然に生じる任意の脈管形成、結合組織
形成、神経衰弱など組織の特性を含む)が誘導される状況または局所的な生物学
的環境に適切な型の、十分に分化して機能的な組織の形成に達する、細胞性事象
および分子事象の十分に組み込まれた発生カスケードを受ける。例えば、細胞が
、骨、肝臓、神経、歯の象牙質、歯周組織、胃腸管管壁組織の状況において、OP
-1によって刺激される場合、例えば、得られた形態形成のカスケードは、その局
所的事象に適切な、新たな、または再生性の分化した組織の形成に達する。それ
ゆえ、形態形成は、廠痕組織(例えば、線維性結合組織)が形成されて分化した機
能
的組織における病変または他の欠損を満たす単なる再生治癒プロセスとは有意に
異なる。
一般的に、モルフォゲンは、形態形成的に許容性の環境において以下の生物学
的機能の全てを誘導する:前駆細胞の増殖の刺激;前駆細胞の分化の刺激;分化
した細胞の増殖の刺激;および分化した細胞の増殖および維持の補助。用語「前
駆細胞」とは、1つ以上の特定の分化した細胞の型に分化する能力のある、未決
定の細胞(好ましくは、哺乳動物起源)を含み、この特異的な型は、それらのゲノ
ムレパートリーおよび形態形成が誘導される許容性の環境の組織特異性に依存す
る。好ましくは、形態形成は、哺乳動物の身体において天然に生じる組織の構造
特異性および機能的特異性を有する分化した組織の形成に達する。モルフォゲン
は、さらに、表現型および/もしくは組織機能の老化または静止関連損失の発生
を遅延または緩和し得る。モルフォゲンは、なお、代謝的および/または機能的
なそれらの特性の発現を含む、分化した細胞の表現型の発現(例えば、分泌)をさ
らに刺激し得る。さらに、モルフォゲンは、適切な環境条件下で形質転換細胞の
再分化を誘導し得る。上記のように、少なくとも哺乳動物骨前駆細胞の増殖およ
び分化を誘導する、および/または哺乳動物軟骨性骨組織の形成、増殖、維持お
よび機能的特性を補助するモルフォゲンが、代表的である。
成熟な、生物学的に活性な形態の天然の供給源から単離されるようなモルフォ
ゲンは、代表的には、SDS-PAGEによって決定されるように約30〜36kDaの見かけ
の分子量を有するグリコシル化された二量体である。還元型の場合、30kDaタン
パク質は、約16kDaおよび18kDaの見かけの分子量を有する2つのグリコシル化ペ
プチドサブユニットを生じる。還元されたポリペプチドは、それ自体、検出可能
な形態形成活性を全く有さない。しかし、グリコシル化は、生物学的活性に必要
とされない。グリコシル化されていないタンパク質は、約27kDaの見かけの分子
量を有する。還元型の場合、この27kDaタンパク質は、約14kDa〜16kDaの分子量
を有する2つの非グリコシル化ポリペプチドを生じる。この生物学的に活性な二
量体をともに形成するポリペプチドは、米国特許出願第08/396,930号(この教示
は、本本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、少なくとも6
つ、好ましくは少なくとも7つの、位置的に保存されたシステイン残基を含む。
上記のように、特に好ましい配列としては、DPP(Drosophila由来)、Vgl(Xenopus
由来)、Vgr-1(マウス由来)、OP1およびOP2タンパク質(米国特許第5,011,691号お
よびOppermannらを参照のこと)ならびにBMP2、BMP3、BMP4と呼ばれるタンパク質
(WO88/00205、米国特許第5,013,649号、およびWO9l/18098を参照のこと)、BMP5
およびBMP6(WO90/11366、PCT/US90/01630を参照のこと)、BMP8およびBMP9のC末
端の96または102のアミノ酸配列を含む配列が挙げられる。
上記のように、本発明の目的の代表的なモルフォゲンは、OP-1またはOP-1関連
ポリペプチドを含む。有用なOP-1ポリペプチドの配列は、米国特許第5,011,691
号;同第5,018,753号および同第5,266,683号;Ozkaynakら(1990)EMBO J 9:2085-
2093;ならびにSampathら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6004-6008において
記載される。さらなる有用な配列は、DPP(Drosophila由来)、Vgl(Xenopus由来)
、60A(Drosophila由来、Whartonら(1991)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9214-92
18)、Vgr-1(マウス由来)、OP-1およびOP-2タンパク質(Oppermannらの米国特許第
5,011,691号を参照のこと)、ならびにBMP2、BMP3、BMP4と呼ばれるタンパク質(W
O88/00205、米国特許第5,013,649号、およびWO091/18098を参照のこと)、BMP5お
よびBMP6(WO90/11366、PCT/US90/01630を参照のこと)、ならびにBMP8およびBMP9
のC末端ドメインにおいて生じる。前述のポリペプチドの各々は、酸化され、か
つ二量体化された場合に、本明細書においてモルフォゲンとして有用である。さ
らに、このファミリーの形態形成タンパク質は、所定のタンパク質のより長い形
態ならびに系統発生的な形態(例えば、種および対立遺伝子変異体およびそれら
の生合成変異体)が挙げられる。これらには、この改変が、タンパク質に、形態
形成(例えば、骨形態形成の許容性マトリクスとともに哺乳動物において移植さ
れた場合の軟骨性骨形成)を誘導し得る立体構造を有する二量体種を形成させる
条件で、例えば、保存されたC末端システイン骨格を改変し得る変異体および改
変体のような、付加および欠失した変異体および改変体が挙げられる。さらに、
本明細書中に定義されるモルフォゲンは、種々のグリコシル化パターンおよび種
々のN末端を有する形態を含み得、これは天然に生じ得るか、または生合成的に
誘導され得、そして確立された技術に従って原核生物宿主細胞または真核生物宿
主細胞において組換えDNAの発現によって産生され得る。このタンパク質は、ホ
モ
二量体またはヘテロ二量体のいずれかとして活性である。
本明細書中において用いられる用語「モルフォゲン」、「骨モルフォゲン」、
「骨形態形成タンパク質」、「BMP」、「骨形成タンパク質」、および「骨形成
因子」とは、ヒト骨形成タンパク質1(hOP-1)に分類されるタンパク質のクラスを
含む。しかし、OP-1は、骨形成タンパク質として作用する能力のある真の組織モ
ルフォゲンのTGF-βサブクラスの代表に過ぎず、これによって、詳細な説明の限
定が意図されないことは、当業者に理解される。形態形成タンパク質は、一般的
に、少なくとも軟骨性骨形成に達する形態形成事象の完全なカスケードを誘導し
得るタンパク質を意味することが理解される。その他の公知および有用なタンパ
ク質としては、OP2、OP3、BMP-2、BMP-3、BMP-3b、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-8
、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-15、GDF-1、GDF-2、GDF-3、GD
F-5、GDF-6、GDF-7、GDF-8、GDF-9、GDF-10、GDF-11、GDF-12、Vgl、Vgr、60A、
DPP、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURALおよびこれらの形態形成的に活性な
アミノ酸改変体が挙げられる。本明細書中において定義されるように、形態形成
タンパク質としては、これらのタンパク質の任意の生物学的に活性な種の改変体
が挙げられる。これらの改変体には、本明細書中において定義され、かつ本明細
書中において開示される骨形成タンパク質をコードするDNA配列にハイブリダイ
ズする能力のあるDNA配列によってコードされる保存的7システイン骨格を共有
している、保存的アミノ酸配列改変体、変性ヌクレオチド配列改変体によってコ
ードされるタンパク質、および形態形成的に活性なタンパク質が含まれる。これ
らのタンパク質には、OP-1、BMP-5、BMP-6、BMP-2、BMP-4、またはGDF-5、GDF-6
、またはGDF-7が挙げられるが、これらに限定されない。形態形成タンパク質は
、本明細書中において規定されるように、保存された7システインドメインを共
有するタンパク質、およびC末端の活性なドメイン内に少なくとも70%アミノ酸
配列相同性(類似性)で共有するタンパク質を含む。すなわち、特に好ましい形態
形成タンパク質は、ヒトOP-1および関連タンパク質の保存された7システインド
メインを規定する、C末端の102〜106アミノ酸と少なくとも70%の相同性を有す
るアミノ酸配列を含むタンパク質である。本発明の特定の好ましい実施態様は、
形態形成タンパク質であるOP-1に関する。「アミノ酸配列相同性」とは、本
明細書中において、アミノ酸配列類似性を意味することが理解される。相同な配
列は、同一または類似のアミノ酸残基を共有する。ここで、類似の残基は、整列
された参照配列における対応するアミノ酸残基での保存的置換であり、またはそ
れらの許容された点変異である。従って、参照配列と70%のアミノ酸相同性を共
有する候補ポリペプチド配列は、整列された残基の任意の70%が、参照配列にお
ける対応する残基と同一であるか、またはそれらの保存的置換であるかのいずれ
かであるポリペプチド配列である。保存的置換の例としては、例えば、イソロイ
シン、バリン、ロイシン、もしくはメチオニンのような1つの疎水性残基の別の
疎水性残基での置換、または例えば、アルギニンのリジンでの置換、グルタミン
酸のアスパラギン酸での置換、もしくはグルタミンのアスパラギンでの置換など
のような1つの極性残基の別の極性残基での置換が挙げれる。用語「保存的改変
体」とはまた、置換されたポリペプチドに対する抗体もまた置換されていないポ
リペプチドと免疫反応するならば、置換されていない親アミノ酸の代わりに置換
されたアミノ酸の使用を含む。保存的置換は、代表的には、1つのアミノ酸の、
別の類似の特性を有するアミノ酸との置換、例えば、以下の群内の置換を含む:
バリン、グリシン;グリシン、アラニン;バリン、イソロイシ、ロイシン;アス
パラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;
リジン、アルギニン;フェニルアラニン、およびチロシン。
形態形成タンパク質であることが本明細書中において同定および/または理解
される天然に存在するタンパク質は、TGF-βスーパーファミリーまたはスーパー
遺伝子ファミリーとして公知の配列関連タンパク質の緩い進化性の群内の異なる
サブグループを形成する。天然に存在するモルフォゲンは、それらのC末端領域
(ドメイン)に置換アミノ酸配列相同性を共有する。形態形成タンパク質はアミノ
酸配列を有するポリペプチドの対を含み、各々は参照モルフォゲンのアミノ酸配
列と規定された関係を共有する配列を含む。本明細書中において、好ましい形態
形成タンパク質は、活性なヒトOP-1に存在する配列と規定された関係を共有する
。しかし、本明細書中に開示される任意の1つ以上の天然に存在するまたは生合
成配列は、同様に、参照配列として同様に使用され得る。好ましい骨形成ポリペ
プチドは、少なくともヒトOP-1のC末端の6システインドメインと規定された関
係
を共有する。好ましくは、形態形成ポリペプチドは、少なくともヒトOP-1のC末
端の7システインドメインと規定された関係を共有する。すなわち、形態形成活
性を有する二量体タンパク質における好ましいポリペプチドの各々は、参照配列
に相当するか、またはそれと機能的に等価な配列を含む。
機能的に等価な配列としては、参照配列内に配置されたシステイン残基の機能
的に等価な配置を含む(これらのシステインの直鎖状配置を改変するアミノ酸挿
入または欠失を含むが、二量体のモルフォゲンタンパク質の折り畳みされた構造
においてそれらの関係を実質的に減じない)。これらには、形態形成活性のため
に必須であり得るような鎖内または鎖間ジスルフィド結合を形成する能力が挙げ
られる。機能的に等価な配列には、1つ以上のアミノ酸残基が、この差異によっ
て形態形成活性が破壊されないならば、参照配列の対応する残基(例えば、ヒト
0P-1のC末端の7システインドメイン(本明細書中においては、保存された7シ
ステイン骨格とも言われる))とは異なる配列がさらに挙げられる。従って、参照
配列における対応するアミノ酸の保存的置換が好ましい。参照配列における対応
する残基での保存的置換であるアミノ酸残基は、対応する参照残基と物理的にま
たは機能的に類似する(例えば、共有結合、または水素結合などを形成する能力
を含む、類似のサイズ、形状、電荷、化学的性質を有する)残基である。特定の
好ましい保存的置換は、Dayhoffら(1978)、5 Atlas of Protein Sequence and S
tructure,増補3、第22章(354-352頁)、Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.
C.20007(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)における受け入
れられた点変異について規定された基準を満たす置換である。
これらの配列ならびに化学的特性および物理的特性を開示する刊行物には、以
下が挙げられる:別の実施態様において、有用なタンパク質には、2つ以上の公知のモルフォゲン
に由来する配列を使用して設計された新規な生合成形態形成タンパク質およびキ
メラタンパク質を含む、生物学的に活性な生合成構築物が挙げられる。米国特許
第5,011,691号に開示された生合成構築物(例えば、COP-1、COP-3、COP-4、COP-5
、COP-7、およびCOP-16)もまた参照のこと(この開示は、本明細書中において参
考として援用される)。
以前に示されたように、本明細書中において意図される形態形成タンパク質は
、そのアミノ酸配列が、前述の天然に生じるタンパク質より選択される参照形態
形成タンパク質と少なくとも70%のアミノ酸配列相同性または「類似性」、そし
て好ましくは80%の相同性または類似性を共有する配列を含む。好ましくは、参
照タンパク質はヒトOP-1であり、そしてそれらの参照配列は、ヒトOP-1の骨形成
的
に活性な形態に存在するC末端の7システインドメインである。参照モルフォゲ
ンポリペプチドに機能的に等価であると推測されるポリペプチドは、Alignプロ
グラム(DNAstar,Inc.)のようなコンピュータープログラムによって好都合に実
施される、Needlemanら(1970)J.Mol.Biol.48:443-453の方法を使用してそこで
整列される。上記のように、候補配列における内部ギャップおよびアミノ酸挿入
は、候補配列と参照配列との間の規定された関係(アミノ酸相同性または同一性
のレベルとして慣習的に表される)を算出する目的については無視される。「ア
ミノ酸配列相同性」とは、本明細書中においてアミノ酸同一性および類似性の両
方を含むことが理解される。相同性配列は、同一および/または類似のアミノ酸
残基を共有し、ここで類似の残基は、整列された参照配列における対応するアミ
ノ酸残基での保存的置換、またはそれの「許容された点変異」である。従って、
参照配列と70%のアミノ酸相同性を共有する候補ポリペプチド配列は、整列され
た残基の任意の70%が、参照配列において対応する残基と同一であるか、または
それらの保存的置換であるかのいずれかである配列である。現在好ましい実施態
様において、参照配列はOP-1である。従って本明細書中において有用な形態形成
タンパク質としては、対立遺伝子変異体、系統発生対応物、および好ましい参照
配列の他の改変体が挙げられ、これは、天然に存在するかまたは生合成的に産生
される(例えば、「ムテイン」または「ムテインタンパク質」を含む)、および一
般的なタンパク質の形態形成ファミリーの新規なメンバー(上記に記載のおよび
同定されるタンパク質を含む)のいずれかである。特定の特に好ましい形態形成
ポリペプチドは、ヒトOP-1の好ましい参照配列と少なくとも60%のアミノ酸同一
性、なおより好ましくはそれと少なくとも65%のアミノ酸同一性を共有する。
上記のように、特定の現在のところ好ましい形態形成ポリペプチド配列は、hO
P-1の好ましい参照配列を規定するアミノ酸配列と60%より大きい同一性、好ま
しくは65%より大きい同一性を有する。これらの特定の好ましい配列としては、
Drosophila 60Aタンパク質を含む、OP-1およびOP-2タンパク質の対立遺伝子変異
体および系統発生対応物が挙げられる。従って、好ましい形態形成タンパク質は
、7システイン骨格を規定する、「OPX」(以下および配列番号4を参照のこと)
といわれる、本明細書中において一般的なアミノ酸配列内のポリペプチド鎖の対
を
含む活性なタンパク質が挙げられる。そこに記載されるように、所定の位置にお
ける各Xaaは、マウスまたはヒトOP-1またはOP-2のC末端配列における対応する
位置で生じる残基から独立して選択される。
なお他の好ましい実施態様において、本明細書中において意図される形態形成
タンパク質は、一般的アミノ酸配列によってさらに規定され得る。例えば、本明
細書中に開示される配列番号5および6は、以下のタンパク質の複合アミノ酸配
列を表す:ヒトOP-1、ヒトOP-2、ヒトOP-3、ヒトBMP-2、ヒトBMP-3、ヒトBMP-4
、ヒトBMP-5、ヒトBMP-6、ヒトBMP-8、ヒトBMP-9、ヒトBMP-10、ヒトBMP-11、Dr
osophila 60A、Xenopus Vg-1、ウニUNIVIN、ヒトCDMP-1(マウスGDF-5)、ヒトCDM
P-2(マウスGDF-6、ヒトBMP-13)、ヒトCDMP-3(マウスGDF-7、ヒトBMP-12)、マウ
スGDF-3、ヒトGDF-1、マウスGDF-1、ニワトリDORSALIN、dpp、Drosophila SCREW
、マウスNODAL、マウスGDF-8、ヒトGDF-8、マウスGDF-9、マウスGDF-10、ヒトGD
F-11、マウスGDF-11、ヒトBMP-15、およびラットBMP3b。配列番号5は、C末端
の6システイン骨格を有し、そして配列番号6は、7システイン骨格を有する。ここで、各Xaaは、以下のように規定される1つ以上の特定のアミノ酸の群から
独立して選択され、「残基」は「残基」を意味する:
さらに、rBMP3bおよびmGDF-10における残基53の後ろに、Ileが存在する;GDF-1
における残基54の後ろに、Tが存在する;BMP3における残基54の後ろに、Vが存
在する;BMP-8およびDorsalinにおける残基78の後ろに、Gが存在する;hGDF-1
における残基37の後ろに、Pro、Gly、Gly、Proが存在する。
配列番号6は、配列番号5の全てを含み、さらに配列のN末端において以下の
配列(配列番号7)を含む:従って、残基6で始まる、配列番号6の各「Xaa」は、配列番号5について規定
される特定のアミノ酸であり、配列番号5に記載される各残基番号は、配列番号
6の5つまでシフトされることで区別される。従って、配列番号5における「残
基1でのXaa=(Tyr、Phe、His、Arg、Thr、Lys、Gln、Val、またはGlu)」は、
配列番号6における残基6でのXaaをいう。配列番号6において、残基2でのXaa
=(Lys、Arg、Gln、Ser、His、Glu、Ala、またはCys);残基3でのXaa=(Lys
、Arg、Met、Lys、Thr、Leu、Tyr、またはAla);残基4でのXaa=(His、Gln、
Arg、Lys、Thr、Leu、Val、Pro、またはTyr);および残基5でのXaa=(Gln、T
hr、His、Arg、Pro、Ser、Ala、Gln、Asn、Tyr、Lys、Asp、またはLeu)である
。
なおさらに、形態形成的に活性なタンパク質は、低、中程度、または高ストリ
ンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、参照モルフォゲン配列(例え
ば、OP-1、OP-2、BMP2、BMP4、BMP5、BMP6、60A、GDF3、GDF6、GDF7などの保存
された7つのシステインドメインを規定するC末端配列)をコードするDNAまた
はRNAにハイブリダイズする核酸によってコードされる配列を含むアミノ酸配列
を有するポリペプチド鎖を有する。本明細書中で使用される場合、高ストリンジ
ェンシーハイブリダイゼーション条件は、40%ホルムアミド、5×SSPE、5×デン
ハルト溶液、および0.1%SDS、37℃、一晩、および50℃での0.1×SSPE、0.1%SD
Sにおける洗浄において、公知の技術に従うハイブリダイゼーションとして規定
される。標準のストリンジェンシー条件は、市販される標準の分子クローニング
テキストにおいて良好に特徴付けられる。例えば、Sambrook、Fritsch、およびM
aniatis編、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版(Cold Spring Harb
or Laboratory Press:1989);DNA Cloning,Volumes IおよびII(D.N.Glover
編、1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984):Nucleic Acid
Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins編、1984);ならびにB.Perbal,A
Practical Guide To Molecular Cloning(1984)を参照のこと。
本明細書中で使用される「遺伝子発現」は、目的のDNA配列によってコードさ
れる遺伝子産物の産生(DNA配列の転写および/またはmRNA転写物の翻訳を含む)
をいうことが理解される。本発明の状況における遺伝子発現は、特異的なタンパ
ク質または因子の、本発明の特異的なDNA配列との直接的な相互作用の必須の結
果ではないが、レポーター遺伝子産物は、誘導性効果(すなわち、本発明の細胞
内のPax遺伝子の存在および/または発現によって媒介または影響される)の結果
としての産物であることが理解される。
本明細書中で使用される「作動可能な結合」は、同時転写されるようなリーデ
ィングフレームにおいて、またはレポーター遺伝子の発現を調整し得るような相
対的な位置付けで、記載された非コードDNA配列の、レポーター遺伝子との融合
に関する。
本明細書中で使用される「ベクター」は、目的のヌクレオチド配列を含む任意
の核酸、および宿主細胞へ取り込まれ得、および機能的に転写され得ることを意
味することが理解される。このようなベクターには、直線または環状の核酸、プ
ラスミド、ファージミド、コスミド、YAC(酵母人工染色体)などが含まれる。
本明細書中に使用されるベクターは、試験細胞を構築するために、または遺伝子
治療適用に適切なDNA、細胞および/もしくはウイルスを構築するために使用され
得る。
本明細書中で使用される「非コード配列」または「非コードDNA」は、RNA配列
に転写されないDNA配列、および/またはタンパク質に翻訳されないRNA配列を含
む。この「非コード配列」のカテゴリーは、本願における参照のし易さのために
規定されており、配列番号1のヌクレオチド3318でのOP-1遺伝子のATG部位の5'
に生じる配列を含む。さらに、本明細書中で使用される「5'非コード配列」また
は「5'非コードDNA」は、レポーター遺伝子の翻訳開始部位の上流または5'の遺
伝子座を規定する。対照的に、コード配列は、レポーター遺伝子または本明細書
中に規定されるような形態形成タンパク質をコードする翻訳および/または転写
DNA配列を意味する。
本明細書中で使用される「OP-1特異的」または「モルフォゲン特異的」非コー
ド配列は、天然に存在する条件下で、遺伝子座でのOP-1特異的またはモルフォゲ
ン特異的コード配列に隣接する非コード配列を規定することが理解される。
本明細書中で規定される「応答性」は、本発明のエレメント間の直接的な相互
作用(例えば、Pax応答性OP-1調整エレメントおよびPax遺伝子産物)に限定され
ないが、例えば、Pax遺伝子産物によって媒介または影響される、遺伝子転写ま
たは翻訳における間接的な影響を含む。
本明細書中で使用される「Pax応答性OP-1調整エレメント」は、Pax遺伝子の存
在および/またはPax遺伝子産物の発現を担うDNAエレメントである。すなわち、
それに作動可能に結合された遺伝子の発現は、Pax遺伝子をコードするDNAと共に
細胞内に存在する場合、調整される。例えば、レポーター遺伝子およびPax遺伝
子が宿主細胞に同時トランスフェクトされる場合、レポーター遺伝子発現は、内
因性Pax遺伝子の存在および/または発現によって調整される。本明細書中で議論
されるように、Pax応答性調整エレメントは、本明細書中に規定されるような任
意のモルフォゲンの5'非コード配列に位置し得ることが意図される。従って、本
発明の目的のために、Pax応答性モルフォゲン調整エレメントは、Pax応答性OP-1
調整エレメントと関連する少なくとも全ての遺伝子特徴(構造的、機能的、化学
的)を含み、さらにその対立遺伝子、種、および変異の改変体を含む。「Pax遺
伝子産物」は、核酸、またはPaxファミリー遺伝子のメンバーである遺伝子によ
ってコードされるタンパク質産物である。
「Pax遺伝子」は、多数のヒトおよびマウスの先天的な障害において、ならび
に腫瘍形成において関連付けられている、発達的に制御される転写因子のファミ
リーをコードする。「対形成ボックス遺伝子」としても特徴付けられるこれらの
遺伝子は、「対形成ドメイン」と称される進化的に保存されたDNA結合ドメイン
の存在によって規定される。以下の実施例2に示されるように、Pax遺伝子およ
び/またはその発現および/または転写産物は、化合物の群が本明細書中で規定さ
れるようなモルフォゲンモジュレーターである。
対形成ボックス遺伝子は、Drosophilaにおいて、128アミノ酸DNA結合ドメイン
をコードし、そして発達の間、一時的および空間的に制限されたパターンで発現
される関連遺伝子のファミリーとして、最初に同定された。Pax遺伝子変異に関
連する表現型は、これらの遺伝子産物が器官形成の間重要であることを示す。Pa
x遺伝子の対形成ドメイン内のミスセンス変異は、マウスおよびヒトの両方にお
いて、先天的な障害に関連している。また、Pax遺伝子は腫瘍形成能力を有する
ことが示されており、例えば、Pax3の対形成ボックス部分に関連する転座がヒト
腫瘍に関連している。
Pax6およびPax2対形成ドメインのコンセンサス結合配列は、非常に類似してい
る。Pax6コンセンサスは20塩基対にわたり、そしてTCACGC-TGAから成るPax2コン
センサスと、中心の10塩基対領域の相同性を共有する。ここで、ダッシュは、こ
の中心塩基対領域における2つの配列間のヌクレオチド差異を示す(Epsteinら(
1994)J.Biol.Chem.269:8355-8361、この開示は本明細書中に参考として援用さ
れる)。
それぞれの精製された対形成ドメインタンパク質は、それぞれのコンセンサス
配列について高親和性を示す。Pax6対形成ドメインはこのコンセンサス配列にモ
ノマーとして結合することが示されている。対形成ドメインは、このようなDNA
配列に結合する場合、α-ヘリックスコンホメーションを採用し、そしてDNA分子
の大きな伸長内の残基と接触する。
本明細書中で使用される「Pax2コンセンサス結合配列」または「Pax2コンセン
サス結合エレメント」は、DNA結合タンパク質Pax2によって結合されることが示
されているヌクレオチド配列である。Pax2結合部位のコンセンサス配列は、配列
番号3に示されるようなGTCAC/TGCG/ATGAである相同性によって決定されている
(Epsteinら(1994)J.Biol.Chem.269:8355-8361)。「Pax6コンセンサス結
合配列」または「Pax6コンセンサス結合エレメント」は、DNA結合タンパク質Pax
6によって結合されることが示されているヌクレオチド配列である。Pax6結合部
位のコンセンサス配列は、配列番号2に示されるようなTTCACGCA/TTG/CANTG/TA/
CNT/Cである相同性によって決定されている。ここで、N=A、G、C、または
Tである(Epsteinら(1994)J.Biol.Chem.269:8355-8361)。本発明の目的の
ための別の適切なコンセンサス配列は、A--TTCACGCATGA-TまたはTTCACGCATGAで
あり、ここで、ダッシュは任意のヌクレオチドがこの位置で存在し得ることを示
す。
「Pax2またはPax6媒介性転写または発現」は、本明細書中の他の箇所に記載さ
れるように、Pax応答性調整エレメント、またはその機能的等価物と作動可能に
結合するレポーター遺伝子の転写または発現を意味する。このような転写または
発現は、Pax遺伝子および/またはPax遺伝子発現産物の存在において生じるが、
それらの存在は必要ではない。「Pax2またはPax6媒介性転写または発現」には、
本発明中上記で定義されるように、例えば、Pax2またはPax6遺伝子産物の、Pax2
またはPax6コンセンサス結合配列との直接的な物理的相互作用が含まれ得る。あ
るいは、「Pax媒介性転写または発現」は、転写または発現の事象を模倣し得る
か、そうでなければPaxファミリータンパク質と関連する化合物によって調整さ
れ得る。このような化合物は、本明細書中で一般的にモルフォゲンモジュレータ
ーとして、そしてより詳細にはPaxアナログとして意図される。
本明細書中の他の箇所で議論されるように、「その対立遺伝子、種、および他
の配列改変体」には、天然に存在するか、または日常的な方法を使用してOP-1非
コードDNA配列に遺伝子操作され得、且つ、OP-1非コード配列によるレポーター
遺伝子の調節に実質的に影響を及ぼさないものなどの、点変異、挿入、および欠
失が含まれる。例えば、当業者は、改変によって、OP-1またはレポーター遺伝子
の調節に実質的に影響を及ぼすことなく、例えば、本明細書中に記載される1つ
以上のOP-1非コード配列の欠失によって改変させるために部位特異的変異誘発を
使用し得る。このような改変は、本明細書中に提供される開示の範囲内にあると
意図される。
本明細書中の他の箇所で議論されるように、「アナログ」または「改変体」は
、天然に存在するまたは代表的なDNAもしくはタンパク質と比較して、類似の機
能を模倣または行うDNAまたはタンパク質を意味することが意図される。例えば
、本明細書中に記載されるものと同じ様式でPax2またはPax6に応答性であり、な
おそれらとは構造的に異なるDNAは、本発明の範囲内でDNAアナログまたはDNA改
変
体であると意図される。同様に、本明細書中で開示されるようにPax2および/ま
たはPax6と同様の様式でOP-1発現を調整し得る任意の発現産物は、本発明の範囲
内でPax2および/またはPax2アナログもしくは変異体と意図される。
「同時トランスフェクション」は、2つ以上のベクターの、所定の細胞への同
時または連続したトランスフェクションをいう。
細胞株が樹立される場合、特に、トランスフェクトされたDNAが細胞のゲノム
に取り込まれる場合、不死化され得る株が特に所望される。本明細書中で使用す
る「不死化」細胞株は、増殖速度またはタンパク質発現において有意な減少なく
複数の継代について生存可能である。本発明の細胞が、高レベルのレポーター遺
伝子(例えば、OP-1)を産生する細胞が所望される場合、細胞媒介性遺伝子治療
に有用であることが意図される。Paxコンセンサス結合配列または他の有用な配
列が、日常的な方法を使用して、ウイルス媒介性遺伝子治療のために改変または
適合され得ることが、さらに意図される。
本明細書中で使用されるPax遺伝子および/または遺伝子産物は、モルフォゲン
遺伝子の転写を刺激し得、そして本明細書中で、「モルフォゲン刺激因子」、「
モルフォゲン調整化合物」、または「OP-1調整化合物」ともいわれる。
「候補化合物」は、OP-1調整化合物としての有用性を決定するために、本発明
の細胞をインビトロ、インビボ、またはエキソビボで処理するために使用され得
る、任意の試験物質である。従って、および初期の定義を保って、本明細書中で
開示されるようなPax2および/またはPax6の様式においてOP-1発現を調整し得る
候補化合物もまた、Pax2および/またはPax6アナログと同様にモルフォゲン刺激
因子である。逆に、本明細書中に開示されるPax2および/またはPax6に対して反
対に作用する候補化合物は、モルフォゲンサプレッサーまたはPax2/Pax6アンタ
ゴニストである。
OP-1上流領域は、遺伝子発現のサイレンサーを含む
OP-1遺伝子発現を減少させるOP-1上流領域内の配列(サイレンサーフラグメン
ト)の存在を、以下の実施例9に記載される発現アッセイにおいて同定した。約
0.1kb AatII-PvuIIフラグメント(配列番号1のヌクレオチド約2606-2690)は、
OP-1発現を約3倍(実施例9に記載される実験において、約2倍と5倍との間)
減少させる。
本発明の好ましい実施態様において、OP-1の発現は、OP-1上流領域からサイレ
ンサーフラグメントを除去することによって増加される。1つの実施態様におい
て、サイレンサーフラグメントは、OP-1遺伝子を含む、プラスミドまたは他の組
換え構築物から除去される。別の実施態様において、OP-1遺伝子の片方または両
方のゲノムのコピーが、当該分野に公知の方法を使用して、サイレンサーフラグ
メントを除去するように変異される組換え細胞株が作製される。
本発明の別の実施態様において、サイレンサーフラグメントは、別の(OP-1で
はない)遺伝子の発現を調整するために使用される。1つ以上のコピーのサイレ
ンサーフラグメントが、発現を減少させるために、遺伝子のプロモーター領域に
挿入される。このサイレンサーフラグメントは、プラスミド、組変えベクター、
またはゲノム自体に含まれる遺伝子のプロモーター領域に挿入される。
AatII-PvuIIフラグメント内に含まれるサイレンサーフラグメントは、実施例
2および9に記載される発現アッセイを使用して、フラグメントの標準的な欠失
分析によってより正確に同定され得る。さらなる欠失分析によって同定される短
縮型サイレンサーフラグメントもまた本発明において有用である。
高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で、サイレンサーフラグ
メント(もしくは短縮型サイレンサーフラグメント)の天然に存在する配列改変
体、またはサイレンサーフラグメント(もしくは短縮型サイレンサーフラグメン
ト)にハイブリダイズする核酸もまた、本発明において有用である。
OP-1遺伝子発現を調整する化合物のスクリーニングにおいて使用される、
例示的な細胞、ベクター、レポーター遣伝子およびアッセイ
A.有用な細胞
長期培養条件に適切な不死化細胞株を含む任意の真核生物細胞が、本発明の方
法および細胞に有用であることが意図される。有用な細胞は容易にトランスフェ
クトされるべきであり、再配列されない配列を有する外来DNAを安定に維持し得
、そして効率的な転写およびタンパク質の翻訳に必要な細胞成分(必要な場合、
翻
訳後修飾および分泌に必要な任意のエレメントを含む)を有する。細胞が非支配
性選択遺伝子でトランスフェクトされる場合、細胞遺伝子型は、好ましくは内因
性選択遺伝子を欠失する。好ましくは、細胞株はまた、単純な培地成分の必要量
および迅速な増殖時間を有する。有用な細胞株は哺乳動物細胞株であり、これに
は、骨髄腫、HeLa、線維芽細胞、胚細胞および種々の組織細胞株(例えば、腎臓
、肝臓、肺など)が含まれる。細胞は、組織由来であり得るか、または樹立され
た細胞株から継代培養され得る。本明細書中で使用される「由来(derived)」
は、細胞が培養された組織自体からであるか、または親細胞が組織自体の細胞で
ある細胞株であることを意味する。本発明の実施に特に有用な細胞株は、例えば
、Y79ヒト網膜芽腫細胞、G401ヒト腎細胞、ROSヒト造骨細胞、MCF-7ヒト乳ガン
細胞、およびLLCBK1ブタ近位尿細管細胞である。多数の細胞株が、現在、アメリ
カンタイプカルチャーコレクション(Rockville,MD)またはヨーロピアンコレ
クションオブアニマルセルカルチャー(Porton Down,Salisbury,SP4 OJG,U.K
.)から入手可能である。
モルフォゲンOP-1の非コード配列によって制御されるレポーター遺伝子の発現
が分析される場合、特に有用な細胞および細胞株は、真核生物細胞、好ましくは
OP-1および/または密接に関連したタンパク質を発現することが公知の組織およ
び細胞型の哺乳動物細胞を含むことが想定される。OP-1を発現することが公知の
組織の詳細な記載について、例えば、Ozkaynakら(1991),Biochem.Biophys.Re
s.Commun.179:116-123を参照のこと。このような細胞は、尿生殖細胞起源の細
胞(腎臓、膀胱、および卵巣細胞、肺、肝臓、骨、神経、乳腺、および心臓細胞
を含む)、生殖腺起源の細胞、胃腸管起源の細胞、グリア細胞、およびモルフォ
ゲンタンパク質をコードする内因性遺伝子を発現することが公知の他の細胞株を
含むが、これらに限定されない。好ましい細胞株は、上皮起源である。
腎臓、副腎、泌尿器、膀胱、脳、または他の器官の細胞培養物が、文献に広範
に記載されるように調製され得る。例えば、腎臓は、新生児、または生まれたて
もしくは若年もしくは成体のげっ歯類(マウスまたはラット)から外植され、そ
して全体または切片(1〜4mm)組織として器官培養に使用され得る。初代組織
培養物および樹立された細胞株はまた、腎臓、副腎、泌尿器、膀胱、脳、乳腺由
来であり、また、他の組織は、従来の細胞培養技術に従って、マルチウェルプレ
ート(6ウェルまたは24ウェル)において樹立され、そしてある期間(1〜7日
)、血清の非存在または存在下で培養され得る。細胞は、例えば、10%ウシ胎仔
血清含有DMEM中で、または血清由来培地中で、または規定培地(例えば、インス
リン、トランスフェリン、グルコース、アルブミン、または他の増殖因子を含有
する)中で培養され得る。試験化合物は培養細胞に添加され、そしてOP-1生合成
がモニターされ、そして種々の時間で本明細書中上記の方法を使用して測定され
る。適切な細胞株は、高レベルのOP-1mRNAを含むことが示されている細胞株を含
み、このことは、OP-1プロモーターが細胞内で活性であることを示す。細胞およ
びその培養液は、当該分野において周知の技術を使用して(mRNAレベルについて
はノーザンブロット分析およびOP-1mRNA特異的プローブのいずれかを使用して、
またはタンパク質レベルについてはOP-1特異的抗体を使用して)アッセイされる
。例えば、OP-1タンパク質は、標準的な免疫蛍光技術を直接使用して、組織切片
もしくは細胞において、またはサンドイッチイムノアッセイを使用して培養液お
よび体液において、測定され得る。タンパク質を検出、測定、および精製するた
めの他の方法は当該分野で周知である。
あるいは、1つの局面において、本発明は、本発明の同定された細胞内OP-1モ
ジュレーターのタンパク質-タンパク質相互作用を同定またはさらに特徴づける
ために、S.cerevisiaeのような酵母細胞において実施され得る。例えば、Kalpan
aら(1993)90 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(22):10593-10597に記載されるよ
うな、および当業者にすでに周知である酵母ツーハイブリッドシステムは、ドメ
インまたは2つのタンパク質(例えば、タンパク質Xおよびタンパク質Y)間の
相互作用に重要な残基を描写するのに有用である。簡潔には、ハイブリッド遺伝
子は、(a)タンパク質Xに融合されたDNA結合ドメイン、および(b)タンパク
質Yに融合されたアクチベータードメインを含む酵母における発現のために構築
される。これらの実験における転写活性は、タンパク質Xがタンパク質Yと相互
作用し、結合ドメインおよび活性ドメインの両方の密接な接触を導く場合のみ回
復される。次いで、転写活性は、酵母株に存在するレポーター遺伝子によってモ
ニターされる。
B.例示的なベクター/ベクター構築の考察
本発明の使用に有用なベクターには、プラスミド、コスミド、ファージミド、
酵母人工染色体、または他の大きなベクターが含まれるが、これらに限定されな
い。核内に維持され得るか、または相同組換えによってゲノムに取り込まれ得る
ベクターもまた、好ましい。
非コードOP-1配列の選択された部分は、以下に例示されるように、標準的な分
子クローニング技術を使用して有用なベクターにクローン化され得る。制限エン
ドヌクレアーゼ部位は、可能ならば利用され、そして必要とされる配列に操作さ
れ得る。制限エンドヌクレアーゼ部位は、部位特異的変異誘発および所望の制限
エンドヌクレアーゼ部位を含むプライマーを用いるPCRのような、一般的な技術
を使用して、非コード配列に操作され得る。
レポーター遺伝子との作動可能な結合における、1つ以上のPax6結合配列およ
び/またはPax2結合配列のような、付加的な保存エレメントとの組み合わせにお
いて、5'非コードOP-1配列の小フラグメントを含む核酸構築物もまた想定される
。
有用な5'非コードフラグメントの範囲が本明細書中で提供され、そして当業者
に明らかなように、OP-1配列のより小さいフラグメントもまた有用である。この
ようなより小さいフラグメントは、当該分野に周知の技術を使用して、およびレ
ポーター遺伝子発現を調整する能力について短縮型構築物を試験して、提供され
た5'非コードフラグメントの片方または両方の末端から塩基を欠失することによ
って同定され得る。このようにして、最短の調整配列が同定され得る。
C.トランスフェクションの考察
目的の細胞への核酸の取り込みのための任意の日常的な方法が、本発明の方法
において意図される。例えば、リン酸カルシウム(CaPO4)、続いてグリセロー
ルショックは、ベクター(特に、哺乳動物細胞へのプラスミドDNA)を導入する
ために当該分野において使用される標準的な手段である。代表的な方法は、Cock
ettら(1990)Biotechnology 8:662-667(本明細書中に参考として援用される)に
開示される。使用され得る他の方法には、エレクトロポレーション、プロトプラ
スト融合(特に骨髄腫トランスフェクションに有用である)、マイクロインジェ
クション、リポフェクション、およびDEAE−デキストラン媒介性取り込みが含ま
れる。これらの手順のための方法は、F.M.Ausubel編、Current Protocols in M
olecular Biology,John Wiley & Sons,New York(1989)に記載される。本発明
の重要な局面は、DNA取り込みが達成される機械的プロセスまたは化学的プロセ
スではなく、細胞がトランスフェクトされるDNA配列である。
当業者によって理解されるように、トランスフェクションあたりの最適なDNA
濃度および他の標準的な条件は、トランスフェクションプロトコルに従って変化
する。リン酸カルシウムトランスフェクションについては、例えば、好ましくは
1つのプラスミド型あたり、5〜10μgのプラスミドDNAがトランスフェクトされ
る。さらに、好ましくトランスフェクトされるDNAは、本質的に、DNA取り込みを
妨害し得る夾雑物を含まない。DNA精製のために当該分野において使用される標
準的な手段は、エチジウムブロミドのバンド形成(banding)による。
D.例示的なレポーター遺伝子
レポーター遺伝子は、適切な宿主細胞にトランスフェクトすることが容易であ
ること、確立されたアッセイプロトコールを使用して検出することが容易である
こと、およびその発現が強固に調節され得る遺伝子であることによって特徴付け
される。有用性を有することが意図される他のレポーター遺伝子は、ルシフェラ
ーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein、GFP)遺伝子、
ヒト成長ホルモン、GAL4およびβ-ガラクトシダーゼを含むが、これらに限定さ
れない。
十分に認識されたレポーター系は、ホタルルシフェラーゼレポーター系である
。レポーター遺伝子および一般的な方法論の記載については、例えば、Gould,S
.J.およびSubramani,S.(1988)Anal.Biochem.,7:404-408を参照のこと。
ルシフェラーゼアッセイは、迅速であり、そして増大した感度を有する。さらに
、ルシフェラーゼタンパク質の半減期は短く、それゆえにルシフェラーゼ産生の
正確な反応速度論的研究を可能にする。この系はまた、バルクトランスフェクシ
ョンにおいて、または目的のプロモーターが弱い場合に特に有用である。このア
ッセ
イにおいて、トランスフェクトされた細胞は標準条件下で増殖され、そしてアッ
セイ条件下で培養された場合に、ATPおよび基質ルシフェリンの両方が細胞溶解
物に添加される。酵素ルシフェラーゼは、迅速な、ATP依存的な基質の酸化を触
媒し、次いで光を放射する。全体の光の生産量は、製造者(例えば、Promega)
の指示に従ってルミノメーターを使用して測定され、そして酵素濃度の広い範囲
にわたって、存在するルシフェラーゼの量に比例する。例えば、pGL2-LUC(Prom
ega)のようなベクターが特に有用である。
第2の周知のレポーター系は、hGHの免疫学的検出に基づき、これは迅速かつ
使用が容易である(本明細書中に参考として援用される、Selden,R.,Burke-Ho
wie,K.Rowe,M.E.,Goodman,H.M.,およびMoore,D.D.(1986),Mol.Cell.
Biol.,6:3173-3179)。hGHは、細胞抽出物中ではなく培地中でアッセイされる
。このことは、トランスフェクトされた細胞の単一集団を経時的に直接的にモニ
ターすることを可能にする。
さらなる有用なレポーター遺伝子は、その発現が容易にアッセイされる、十分
に特徴付けられた任意の遺伝子であり、そのようなレポーター遺伝子の例は、例
えば、F.A.Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology,John Wil
ey & Sons,New York,(1989)に見出され得る。当業者に認識されるように、列
挙されたレポーター遺伝子は、可能なレポーター遺伝子のいくつかに過ぎず、こ
れは、記載を平易にするためのみであり、すべての利用可能なレポーター遺伝子
を列挙した訳ではない。他の検出可能な目的のタンパク質をコードする遺伝子、
例えば配列番号1に示すヒトOP-1をコードする遺伝子、またはその増強された発
現が所望される他のモルフォゲンもまた、適切なレポーター遺伝子の範囲内にあ
ることは当業者に明らかである。
上記に示すように、および当業者に理解されるように、組換え遺伝子のトラン
スフェクション、発現、およびアッセイのための従来の手段の特定の詳細は、十
分に記述されており、そして当業者によって理解される。本発明は、OP-1ゲノム
DNAの非コード配列を介する、OP-1の発現を調整する化合物の能力を決定するた
めのベクター、細胞、および化合物をスクリーニングするための方法を可能にし
、そしてこれらを開示する。
哺乳動物発現系における外来遺伝子の組換え的産生において使用される各々の
工程の種々の技術的な局面のさらなる詳細は、例えば、F.M.Ausubelら編、Curr
ent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,(1989)
のような、当該分野における多数の教科書および実験室マニュアルにおいて見出
され得る。
この開示および以下に提供される実施例を考慮し、インビボで特定の細胞タイ
プにおいてOP-1発現に影響を与え得る分子の同定の方法が、ここで提供される。実施例1:ヒトOP-1遺伝子非コード配列のクローニング
ヒトOP-1上流非コード配列を、ヒトゲノムライブラリーHL1067J(Clontech)
をスクリーニングすることによって獲得した。ライブラリーを、最初に750,000
プラーク(約50,000プラーク/プレート)をプレーティングすることによってス
クリーニングした。ハイブリダイゼーションを、40%ホルムアミド、5×SSPE、
5×Denhardt溶液、および0.1% SDS中で、37℃において、主に5’非コード配
列およびエキソン1配列を含むヒト0.47kb EcoRI OP-1cDNAフラグメントから作
製した32P標識プローブを使用して行った。非特異的カウントを、0.1×SSPE、0.
1%SDS中で、50℃において振とうすることによって除去した。
び配列決定し、そしてこれは5kbのOP-1の上流非コード配列を含んだ。
すべての配列決定を、エキソヌクレアーゼIII媒介単方向欠失(Ozkaynakら、
(1987)BioTechniques,5:770-773)、制限ララグメントのサブクローニング、
および合成プライマーを用いて、Sangerら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.74:
5463-5467に従って行った。Taqポリメラーゼを用いて、7-デアザ-GTP(U.S.Bioc
hemical Corp.,Cleveland,OH)を使用して、70℃で反応を行うことにより、
圧縮を解消した。
以下でより詳細に議論するように、配列番号1の1〜3317領域は、Epsteinら(
1994)J.Biol.Chem.269:8355-8361のPaxホメオボックスコンセンサス配列と
相同性を共有する、複数の保存性DNA配列を含み、そして本明細書中で、Pax応答
性OP-1調整エレメントとして同定および命名し、配列番号1のヌクレオチド約
108〜121、139〜154、157〜167、365〜378、491〜503、497〜511、737〜747、89
1〜903、994〜1006、1123〜1140、1144〜1161,1285〜1297、598〜613、1750〜1
762、2001〜2023、2365〜2378、2931〜2944を含む。特に好ましいPax6応答性OP-
1調整エレメントは、ヌクレオチド約108〜121、139〜154、365〜378、497〜511
、598〜613、1750〜1762、2365〜2378および2931〜2944に存在する。他の好まし
いPax6エレメントは、約157〜167、1123〜1140、1144〜1161、1285〜1297および
2001〜2023を含む。特に好ましいPax2応答性OP-1調整エレメントは、ヌクレオチ
ド約491〜503、737〜747、891〜903、および994〜1006に存在する。
なお他の好ましいPax6応答性のOP-1調整エレメントは、約104〜120、105〜121
、142〜158、362〜378、497〜513、1750〜1766、2362〜2378、2928〜2944、1128
〜1144、1125〜1141、1143〜1159、2000〜2016、2003〜20019、2007〜2023、601
〜617、595〜611および1746〜1762に存在する。なお他の好ましいPax2応答性OP-
1調整エレメントは、約493-503、891-901および996-1006に存在する。
ヒトOP-1遺伝子についての転写開始部位は、配列番号1の塩基2790にある。OP
-1タンパク質翻訳開始部位は、配列番号1のヌクレオチド3318である。
上記のように、骨原性タンパク質-1は、間葉の分化の調整ならびに軟骨および
骨形成のプロセスの誘導において重要な役割を演じる。これはまた、腎臓の発達
に必要とされ、そしてラットにおける虚血/再潅流障害由来の腎臓損傷を防止す
ることが示される。以下の実施例2に示されるように、ヒトOP-1遺伝子プロモー
ターの機能的分析が実行された。OP-1プロモーターおよびその5’切断バージョ
ンは、レポーター遺伝子として働くルシフェラーゼコード領域の上流に位置した
。ある実施態様において、ヒト腎臓細胞株G401へのこれらの構築物の一過性のト
ランスフェクトの後のルシフェラーゼアッセイの結果は、この上流配列がプロモ
ーター活性を有することを示す。この活性は、OP-1遺伝子の最初のATGの上流約3
00〜700ヌクレオチドに存在する。このプロモーター活性は構成的であり、そし
て、組織の形態形成の間に上皮/間葉相互作用に関与する、例えばPax2およびPa
x6のようなトランス活性化因子によっては影響されない(図1Bを参照のこと)
。しかし、OP-1遺伝子の上流700〜3300ヌクレオチドの間の領域まで移動した他
の実施態様においては、データはプロモーターの潜在的なサイレンサーエレメン
トの
存在を示す。さらに、プロモーターのこの領域は、実施例2に図示したように、
宿主の因子(Pax2、Pax6およびレチノイン酸を含む)によって影響され得る。
以下に記載する構築物を含む、一過性および永続的の両方のG401細胞株を単離
および試験した。ヒト網膜芽腫Y79、ラット骨肉腫ROS、およびブタ近位尿細管LL
CPK1を含む他の宿主細胞株が、一過性のトランスフェクションアッセイにおいて
試験された。これらのデータは、同様のPax仲介性の調節的要件および組織特異
性を説明することが期待され、それによって組織特異的および発生特異的なモル
フォゲンモジュレーターのさらなる同定さえ、可能にする。実施例2:OP-1遺伝子発現の分析
1つの局面において、本発明は、レポーター遺伝子と作動可能に連結されるの
と同時にOP-1非コード配列がアッセイされる方法を示し、そしてモジュレーター
化合物(例えば、Pax2またはPax6またはそのアナログ)はそれによってOP-1の発
現におけるそれらの影響について試験される方法を示す。例えば、Pax遺伝子産
物または機能的な等価物、またはそのアナログを介してOP-1発現の調整に関与す
る非コード配列は、以下:(1)細胞を1つ以上のPaxタンパク質発現ベクター
、およびレポーター遺伝子と作動可能に結合したOP-1非コード配列を含む発現ベ
クターでトランスフェクトすること;(2)1つ以上の候補化合物とともにトラ
ンスフェクト体を培養すること;(3)レポーター遺伝子発現のレベルを測定す
ること;および(4)この発現のレベルと、化合物の非存在下におけるレポータ
ー遺伝子発現のレベルを比較すること、によって同定される。あるいは、非コー
ド配列は、Pax2および/またはPax6を模倣し得る化合物、すなわちPax2および/
またはPax6アナログに対するそれらの応答性に対してアッセイされ得る。本発明
のプロトコールは、モルフォゲン発現の内在性レベルを直接的または間接的のい
ずれかで変化させる、化合物の同定のための手順に基づく。
候補化合物が、OP-1のような内在性タンパク質のレベルを調整するためにイン
ビボで投与され得ることもまた、意図される。このことは、タンパク質またはRN
Aのいずれかのレベルにおける発現産物の検出によって達成され得る。
培養細胞を、レポーター遺伝子と作動可能に結合したOP-1非コード配列の一部
を用いてトランスフェクトし、このようなトランスフェクトされた細胞を、細胞
核中にプラスミドとして残存するベクターとともに維持するか、またはベクター
を宿主細胞ゲノム(好ましくはOP-1ゲノム遺伝子座)に組み込み得る。レポータ
ー遺伝子アッセイについて記載したセクションに示されたように、レポーター遺
伝子発現のレベルを試験するための細胞試料を定期的に収集し、そして所定のレ
ポーター遺伝子にとって適切なアッセイを使用して、レポーター遺伝子発現につ
いて評価する。あるいは、細胞培養物それ自体の一部を、定期的に収集し得、そ
してmRNA分析のためのポリA(+)RNAを調製するために使用され得る。例えば
、候補モルフォゲンを用いる処理後にOP-1が産生される特定の時点を確認するた
めに、候補OP-1調整化合物で処理した細胞、化合物で処理した細胞を、上記のよ
うに定期的に収集し、OP-1産生について評価する。新規のOP-1合成をモニターす
るために、いくつかの培養物は従来の手順に従って35S−メチオニン/35Sシステ
イン混合物を用いて6〜24時間標識し、次いで従来のイムノアッセイ方法によっ
てOP-1合成を定量するために評価する。あるいは、抗OP-1抗体を標識し得、そし
て細胞または細胞溶解物とともにインキュベートし得、そして本明細書中上記の
ように従来の手段によって結合複合体を検出および定量し得る。組織もまた、当
該分野に認識される技術であるインサイチュハイブリダイゼーションを使用して
OP-1mRNAの合成について直接的に試験し得る。
いったん候補化合物が同定されると、当該分野に公知の標準的な方法論を使用
して、それらは、合理的な、有用な量において産生され得る。アミノ酸ベースの
分子を、合成核酸分子によってコードし得、そして本明細書中上記または当該分
野に記載されるように、組換え発現系中で発現し得る。あるいは、このような分
子を、例えば自動ペプチドシンセサイザーによって化学的に合成し得る。非アミ
ノ酸ベースの分子を、標準的な有機化学合成手順によって産生し得る。
モルフォゲンアゴニストは、機械的または化学的外傷、変性疾患、慢性的な炎
症から生ずる組織破壊、肝硬変、炎症疾患、ガンなどから生じた損傷した組織の
再生におけるように、または組織、器官、および手足の再生におけるように、組
織形態形成が所望される任意の適用において有用性を有すると予測される。モル
フォゲンアンタゴニストは、例えば、悪性形質転換(骨肉腫、パジェット病、お
よび進行性骨化性線維形成異常(例えば、Roush(1996)Science 273:1170を参
照のこと)を含むがこれらに限定されない)の処置において、組織形態形成が制
限される適用において有用性を有すると想定される。溶液中のOP-1タンパク質を
検出する能力は、診断アッセイのための価値ある道具を提供し、体内における(
例えば、血清中、尿中、髄液中もしくは腹水中、胸部浸出液中、およびOP-1調整
活性の存在を評価するための他の体液中の)遊離のOP-1のレベルをモニターする
ことを可能にする。そのために本発明は、OP-1調整活性を有する、天然に存在す
るかもしくは合成の、タンパク質、またはOP-1調整活性を有する他の因子もしく
は薬物を同定するための手段を提供する。さらに、Pax2またはPax6の発現を誘導
する化合物もまた、特に有用である。
OP-1は、種々の異なる細胞型(腎臓、骨、肺、心臓、子宮、心臓、および神経
組織を含む)中で発現される。1つの組織型の細胞に調整効果を有するが、別の
組織型の細胞には調整効果を有さず、および/またはここでその効果は異なる細
胞中で異なって調整される、候補化合物が同定され得る。以下に記載されるアッ
セイは、生理的条件下でOP-1を発現することが公知の特定の細胞型における候補
化合物の効果を評価するために使用され得る。
そのために本発明はまた、本明細書中で意図されるように、Pax2および/また
はPax6あるいはそのアナログのようなモルフォゲンモジュレーターに応答性であ
る、外因的に導入されたOP-1タンパク質を発現する試験細胞または細胞株を提供
する。その細胞または細胞株をまた、本明細書中の上記のスクリーニングアッセ
イのために、本明細書中で記載されるように使用して、内因的にOP-1を産生する
細胞株を置き換え得る。さらに、本発明は、内因性または外因性のOP-1遺伝子発
現の調整のために、Pax遺伝子産物(例えば、Pax2および/またはPax6)をコー
ドするDNAでトランスフェクトされる試験細胞を提供する。
容易にアッセイ可能であり、十分に特徴付けられる非OP-1レポーター遺伝子は
本明細書に開示されるスクリーニング法において好ましいが、当業者に認識され
るように、OP-1コード配列はまた、高レベルのOP-1の産生のための改善された方
法を提供する本発明の方法において使用され得、本発明の高レベルの遺伝子発現
の誘導を開発する。OP-1発現を、好ましくは、イムノアッセイあるいはmRNA転写
物の測定のためのノーザンブロットまたはドットブロットまたは他の手段によっ
て測定する。細胞または液体中のOP-1レベルにおける変化のアッセイについての
詳細な記載については、例えば、1995年5月4日に公開されたWO95/11983を参照
のこと。さらに、本発明の細胞を、転写因子の分析(例えば、OP-1転写調節また
は他のモルフォゲンの転写調節に関与するDNA-タンパク質および/またはタンパ
ク質-タンパク質相互作用)に使用し得る。
以下に提供されるのは、本発明の方法を実行するための例示的なプロトコール
であり、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を、そしてOP-1を発現さ
せることが知られる哺乳動物細胞株を使用する。この例は非限定的であり、他の
細胞、レポーター遺伝子およびモルフォゲン非コード配列(例えば、OP-1非コー
ド配列であるが、これに限定されない)が想定される。
配列番号1のOP-1ゲノムDNAヌクレオチド1〜3317を、ルシフェラーゼレポー
ター遺伝子およびOP-1遺伝子非コード領域の一部を有する一連の欠失構築物(図
1A)を調製するために使用した。検出可能な酵素ルシフェラーゼ(Promega,M
adison WI)をコードするヌクレオチド配列を含むpGL2-Basicプラスミドを、基
礎ベクターとして使用した。次いで、OP-1プロモーター配列(配列番号1のヌク
レオチド1〜3305に相当する)を、pGL2-Basicプラスミドに挿入した(構築物pAS
3.3、図1A)。ヌクレオチド+1は、OP-1ゲノム配列中に存在するHindIII部位の
30ヌクレオチド下流にある。それゆえにOP-1プロモーターにおいて+1位の上流に
さらなる30塩基対のDNA配列が存在し、AAGCTTGATG CCTGCACAGT CAGCCCTCAGを含
み、ここでAAGCTTがHindIII部位に相当する。
ゲノム配列を、HindIIIおよびBamHIで消化した。BamHI部位を、当該分野で周
知の方法に従って、以下の逆方向相補性プライマー:5’CAT CGC GCC GGA TCC
ACG CGC TAC CCG GGC3’(ここでGGA TCCがBamHI部位に相当する)を用いて、
部位特異的変異誘発によって配列番号1のヌクレオチド3306〜3311のOP-1プロモ
ーターに導入した。
従って、この変異誘発はOP-1配列に以下の変化を生成した:
天然の配列 :5’GCC CGG GTA GCG CGT AGA GCC GGC GCG ATG 3’
変化した配列 :5’GCC CGG GTA GCG CGT GGA TCC GGC GCG ATG 3’
これは、構築物pAS3.3中のOP-1プロモーターにおいて以下の変化を生じた:
GCCCGGGTAG CGCGTGGATC TAAGTAAGCT TGGCATTCCG GTACTGTTGG TAAAATG(ここでG
は、配列番号1のヌクレオチド3306を示し、そしてここでATGはルシフェラーゼA
TG(配列番号1のヌクレオチド3318〜3320)に相当する)。
それゆえに、天然のOP-1プロモーター配列はヌクレオチド3305で停止し、ヌク
レオチド3306はAからGのヌクレオチド変化から生じ、そしてヌクレオチド3307〜
3345はpGL2-Basicベクターに由来する。従って、OP-1遺伝子のクローニングされ
た5’非コード配列の3335ヌクレオチド(配列番号1のヌクレオチド1の30ヌク
レオチド上流から配列番号1の3305まで)は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子
と転写的に作動可能に結合するように配置された。
連続的な5’欠失物(図1A)を、周知のクローニング技術に従って、一連の
制限酵素を用いるpAS3.3構築物の消化、その後のプラスミドの再連結によって構
築した。例えば、pAS3.3ベクターを、BgIII(pGL2-BasicベクターおよびOP-1プ
ロモーター中に存在する)を用いて切断し、そして再環状化してpAS2.5を得た;
pAS3.3ベクターをKpnI(pGL2-BasicベクターおよびOP-1プロモーター中に存在す
る)で切断し、そして再環状化してpAS1.2を得た;pAS3.3ベクターを、XhoI(pG
L2-BasIcベクター中に存在する)およびSacIIを用いて切断し、続いてT4 DNAポ
リメラーゼフィルイン反応を行い、そして再環状化してpAS0.8を得た;pAS3.3ベ
クターを、KpnI(pGL2-Basicベクター中に存在する)およびAatIIを用いて切断
し、続いてT4 DNAポリメラーゼフィルイン反応を行い、そして再環状化してpAS0
.7を得た;pAS3.3ベクターを、XhoI(pGL2-Basicベクター中に存在する)および
PvuIIを用いて切断し、続いてT4 DNAポリメラーゼフィルイン反応を行い、そし
て再環状化してpAS0.6を得た;pAS3.3ベクターを、XhoI(pGL2-Basicベクター中
に存在する)およびAvrIIを用いて切断し、続いてT4 DNAポリメラーゼフィルイ
ン反応を行い、そして再環状化してpAS0.3を得た;そして、pAS3.3ベクターを、
KpnI(pGL2-Basicベクター中に存在する)およびPstIを用いて切断し、続いてT4
DNAポリメラーゼフィルイン反応を行い、そして再環状化してpAS0.1を得た。
ベクターを、単独で、または以前にpCMVβ発現ベクター(Clonetech)にクロ
ーニングされ、標準的な方法(Epsteinら、(1994)J.Biol.Chem.269:8355-
8361.この開示は本明細書中で参考として援用される)によってβ-ガラクトシ
ダーゼ遺伝子を除去したヒトPax2および/またはヒトPax6についてのcDNAととも
に、G401ヒト腎臓細胞にトランスフェクトした。手短に言えば、細胞を、10%ウ
シ胎仔血清を含むMcCoy's 5A培地中で60mmペトリ皿にプレートした(5×105細
胞/皿)。24時間後、上記のベクターを、無血清培地(Optimem、BRL)中で6時間
、Lipofectamine(BRL/Gibco)法を使用して、培養細胞中にトランスフェクトし
た。細胞を、(a)OP-1プロモーター構築物単独で;(b)OP-1プロモーター構
築物+Pax2構築物で;(c)OP-1プロモーター構築物+Pax6構築物で;または(
d)OP-1プロモーター構築物+Pax2構築物+Pax6構築物でトランスフェクトした
。コントロールのトランスフェクト細胞は、ネガティブコントロールとして、OP
-1非コード配列を有さないpGL-Basicプラスミドを含み、ポジテイブコントロー
ルとして、SV40プロモーターを有するpSV-Lucを含んだ。その後、トランスフェ
クトされた細胞を、完全培地中で培養した。72時間後、ルシフェラーゼ活性を、
Promega Luciferase Assay System(Promega,Madison WI)およびルミノメータ
ー(DynaTech)を用いて測定した。この結果を図1Bに示し、以下で議論する。
OP-1遺伝子の翻訳開始部位の上流の3305ヌクレオチドを含むpAS3.3構築物を含
む細胞によるルシフェラーゼ産生は、Pax2 cDNAとの同時トランスフェクション
によって2.4倍に、Pax6 cDNAとの同時トランスフェクションによって9.6倍に誘
導された(図1B)。pAS3.3構築物と、Pax2およびPax6の両方の発現ベクターと
の三重トランスフェクションは、相加的な11.5倍の誘導をもたらし、Pax2および
Pax6遺伝子産物が、OP-1遺伝子発現に相加的な効果を有することを示唆した。pA
S3.3構築物の5’欠失変異体を含む細胞は、Pax2またはPax6構築物を用いる同時
トランスフェクションの誘導効果に対して応答性がより低かった。例えば、pAS2
.5構築物は、Pax2構築物を用いる同時トランスフェクションによって1.7倍しか
誘導されず、そしてこのPax2応答性は、約1.3kbの5’配列のさらなる欠失によ
って消滅し、pAS1.2構築物またはさらなる5’欠失を有する残りの構築物ではPa
x2誘導が検出されなかった。
Pax6応答性もまた、pAS3.3構築物からの793塩基の欠失によって、約42%失わ
れた。配列番号1のpAS2.5(+794〜+3305)、pAS1.2(+2068〜+3305)、pAS
0.8(+2501〜+3305)、およびpAS0.7(+2606〜+3305)で同時トランスフェ
クトされたPax6構築物を含む細胞におけるルシフェラーゼ産生の4〜5.5倍の誘導
が示されたが、このPax6応答性はヌクレオチド+2606〜+2690の欠失によって失
われた。これは、この85ヌクレオチド領域が、Pax遺伝子産物またはそのアナロ
グによるOP-1調整に必要な好ましい配列を含むことを示唆する。
構築物pAS3.3およびpAS2.5(これらは、それぞれ、3.3kbの5’非コード領域(
配列番号1の1〜3305)およびその5'の793ヌクレオチドの欠失を含む)は、他の
欠失変異体よりも少ないルシフェラーゼを構成的に産生した。このことは、ヌク
レオチド1〜2067(図1B)を含む5'非コード領域におけるネガティブ調節エレメ
ントの存在を示唆する。
5'非コード上流OP-1遺伝子の完全DNA配列(配列番号1の1〜3317)を、ストリ
ング検索プログラムを用いて分析して、部分的に、Epsteinら(1994)J.Biol.Chem
.269:8355〜8361により記載されるPax2およびPax6コンセンサス配列に依存し、
そして部分的に本明細書に開示した特定のほかの適切なPaxコンセンサス配列に
依存して、推定Pax2またはPax6結合モチーフを同定した。Pax6についての1つの
コンセンサス配列は、配列番号2に対応するTTCACGCA/TTG/CANTG/TA/CNT/Cであ
る(ここで、Nは、A、G、CまたはTのいずれかである)。Pax2についての1つの
コンセンサス配列は、GTCAC/TGCG/ATGAであり、これは、配列番号3に対応する
。ストリング検索プログラムは、部分的ミスマッチを許容し、そして多くのPax6
またはPax2応答領域を明らかにした。現在好ましいPax2応答領域は、配列番号1
の約491〜503、737〜747、891〜903、994〜1006に位置し、そして配列番号3のP
ax2コンセンサス配列と約69〜82%の同一性を共有する。
現在好ましいPax6応答エレメントは、配列番号1の約ヌクレオチド108〜121、
139〜154、365〜378、497〜511、1750〜1762、2365〜2378、2931〜2944を含む。
これらのPax6応答エレメントは、配列番号3のPax6コンセンサス配列と53〜82%
の同一性を共有する。他の現在好ましいPax応答エレメントは、配列番号1の約
ヌクレオチド157〜167、1123〜1140、1144〜1161、1285〜1297、および2001〜20
23を含む。
コンセンサスPaxモチーフのいくつかは、他のモチーフが機能しないかもしれ
ない場合に、OP-1遺伝子発現を調節するように機能し得ることが理解される。さ
らに、各推定Pax応答OP-1エレメントの特徴付けを、以下の実施例5に記載され
るように達成する。以前に議論したように、Pax応答エレメント(例えば、本明
細書中に記載のもの)は、本明細書において規定されるような他のモルフォゲン
のプロモーター配列において存在し、そしてそれによって本明細書に教示される
ように同定され得そして利用され得る。本発明によって意図されるように、Pax
応答エレメントは、モルフォゲンのインビボ、エキソビボ、およびインビトロ発
現を調整し、従って、特定のモルフォゲンを調整し得る特定の化合物を同定する
のに有用である。
本発明は、Pax媒介性のOP-1遺伝子調節を調整し得る核酸およびそれらのそれ
ぞれのコードする化合物を同定する有用な方法をさらに提供することが意図され
る。1つの実施態様において、OP-1遺伝子発現(これは、OP-1遺伝子5'非コー
ド領域に位置するPax応答エレメント(配列番号1のヌクレオチド1〜3317)に
よって直接または間接的に媒介される)の細胞内調整をし得る候補化合物をコー
ドする1以上の候補核酸はまた、Pax応答OP-1 5’非コード配列/レポーター遺
伝子ベクターを含む本発明の細胞へとトランスフェクトされる。それゆえ、「候
補核酸」または「候補DNA」または「候補RNA」は、本明細書で規定される
場合、OP-1遺伝子発現を、Pax応答エレメントを介して調整する化合物をコード
する核酸(例えば、DNAまたはRNA)である。1つの実施態様において、候
補DNAは、Pax遺伝子産物との機能的類似性を共有するか、またはPaxアナログも
しくはアゴニストである転写因子をコードし得る。あるいは、候補核酸は、OP-1
遺伝子発現のインヒビターとして挙動するか、またはPaxアンタゴニストである
化合物をコードし得る。別の実施態様において、候補RNAを、まず、当業者に周
知の方法により細胞から単離し得るかまたはインビトロ合成し得、次いで、これ
を使用して上記に記載された細胞をトランスフェクトし得る。組織特異的候補核
酸を本発明の方法に従って同定および単離し得ることもまた意図される。従って
、例えば、組織特異的候補DNAを含む発現ベクターは、配列番号1のヌクレオチ
ド1〜3317のOP-1 5'非コード配列またはその短縮型を、ルシフェラーゼレポータ
ー遺伝子と作動可能に結合するように含む発現ベクターとともに細胞へ同時トラ
ン
スフェクトし得る。コントロールトランスフェクションと関連したルシフェラー
ゼ活性の変化は、候補DNAがOP-1遺伝子調節を調整し得る化合物をコードするこ
との指標である。個々の核酸または核酸のプール(例えば、cDNAライブラリーま
たは合成RNAのプール)は、本発明の方法に従って、本発明の応答エレメントを介
してOP-1遺伝子発現を調整するこれらの能力についてスクリーニングし得ること
が意図される。
実施例3:Pax応答OP-1調整エレメントのさらなる特徴付け
特定のPax2応答エレメント(例えば、配列番号1の、ほぼ、ヌクレオチド491-
503、737-747、891-903、994-1006)およびPax6応答エレメント(例えば、配列
番号1の、ほぼ、ヌクレオチド108-121、139-154、157-167、365-378、498-511
、598-613、1123-1140、1144-1161、1285-1297、1750-1762、2001-2023、2365-2
378、2931-2944)のOP-1遺伝子発現の調整におけるそれぞれの役割を特徴付ける
ために、種々のPax2およびPax6応答エレメントの変異体を分析した。各Pax2応答
エレメント配列の一部の変異によるPax媒介OP-1遺伝子発現の喪失または減少は
、Pax媒介OP-1遺伝子調節におけるエレメント配列についての役割を示唆する。
反対に、変異されたPax応答エレメントのPax媒介OP-1遺伝子発現の増加は、例え
ば、変化したDNA認識配列に対するpax転写因子の結合の増加、あるいは1以上の
ネガティブ調節エレメントの結合の喪失または減少を示唆し得る。
さらに、OP-1遺伝子プロモーターを、DNaseフットプリンテイングにより分析
してPax応答領域をさらに定義し、そしてOP-1遺伝子の発現に必要とされるPax遺
伝子産物の結合特異性および親和性を決定する。DNaseフットプリンティングを
、当業者に周知の技術に従って実施する。
さらに、OP-1プロモーターの核タンパク質との相互作用は、Pax2コンセンサス
配列(配列番号3)またはPax6コンセンサス配列(配列番号2)あるいはそれら
の改変体に対応する(オリゴヌクレオチド配列に変異を有するか、および有さな
い)オリゴヌクレオチドプローブを使用するゲルシフトアッセイによってさらに
特徴付けられる。手短には、細胞を、当該分野で公知の方法に従って溶解し、そ
して当業者に周知の方法によって核抽出物を調製し、そして選択した放射標識オ
リゴヌクレオチドとともにインキュベートする。抽出物の1以上のタンパク質成
分のオリゴヌクレオチドに対する結合は、複合体化していないオリゴヌクレオチ
ドDNAプローブの移動度と比較した電気泳動移動度の遅延を伴うDNA/タンパク質
複合体を生じる。放射標識したオリゴヌクレオチドのコールド(非標識)オリゴ
ヌクレオチドでの結合を完了させて、DNA/タンパク質複合体の特異性を確認する
。これらのアッセイは、候補化合物での処置に応答する核抽出物成分の量または
活性における変化を実証し得る。
核抽出物オリゴヌクレオチド複合体が特定の抗体との複合体化によってさらに
遅延されるスーパーシフトアッセイを用いて、Pax遺伝子産物またはそのアナロ
グの同一性を決定する。これらのアッセイにおいて、当該分野で公知の方法に従
って、以前に記載されたタンパク質オリゴヌクレオチドプローブ複合体を特異的
抗体とさらにインキュベートして、そして電気泳動に供する。例えば、候補化合
物によって誘導された試験細胞からのDNAタンパク質複合体は、例えば、抗Pax2
または抗Pax6抗体、あるいは他のPaxファミリー抗体で処置される場合、ゲル分
析の間にスーパーシフトする。このスーパーシフトは、抗原性ペプチドとのイン
キュベーションによって反転され得る。
Pax-DNA複合体の組織特異性は、種々の組織および細胞からの細胞抽出物を用
いて、ゲルシフトおよびスーパーシフトの移動度の比較によってさらに規定され
る。これらの研究は、OP-1遺伝子転写のPax媒介調節に関与し得る1以上の組織特
異的因子の関与を明らかにし得る。
実施例4:OP-1発現を調整する化合物の試験効力についてのインビボ動物モデル
OP-1が、標準的な卵巣除去ラットモデルにおける骨粗鬆症のための有効な処置
であり得ることが、OP-1の注射後にアルカリホスファターゼおよびオステオカル
シンのレベルの用量応答性増加によって示唆されるように、以前から実証されて
きた。骨粗髭症ラットモデルは、モルフォゲン合成を調整するための候補化合物
の効力を評価するためのインビボモデルを提供する。OP-1産生、およびそれによ
るインビボ骨産生に対する候補モルフォゲン刺激因子の効果を決定するため、ア
ルカリホスファターゼおよびオステオカルシンのレベルを、骨粗鬆症を促進する
条件(例えば、骨粗鬆症がラットにおいて卵巣の除去により、および候補化合物
の存在または非存在下で誘導される条件)下で測定する。内因性OP-1発現を増強
または誘導する能力のある化合物は、オステオカルシンおよびアルカリホスファ
ターゼのレベルの増加をもたらすはずである。
40匹のLong-Evansラット(Charles River Laboratories、Wilmington)(各々
体重約200g)を、標準的な手術手順を用いて卵巣除去(OVX)し、そして10匹の
ラットを、偽手術した。ラットの卵巣除去は、エストロゲン産生の減少の結果と
してラット内の骨粗鬆症状態を引き起こす。食餌および水を任意に与える。卵巣
除去の8日後、上記のように調製したラットを、3つのグループに分割した:(a)
偽手術ラット;(b)1mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を尾静脈に静脈注射で
受ける卵巣除去ラット;および(c)尾静脈を介する静脈注射によるかまたは腎臓
組織への直接投与によるかのいずれかによって、種々の用量範囲の候補モルフォ
ゲン刺激因子を受ける卵巣除去ラット。
候補化合物の、インビボ骨形成に対する効果を、卵巣除去したラットからの骨
組織の切片を調製することによって決定し得る。各ラットに、研究の15日目およ
び21日目に、5mgのテトラサイクリン(これは新骨を染色する(これは、蛍光に
よって黄色として可視化される))を注射し、そして22日目にラットを屠殺する
。次いで、体重、子宮重量、血清アルカリホスファターゼレベル、血清カルシウ
ムレベル、および血清オステオカルシンレベルを、各ラットについて決定する。
骨切片を調製し、そして各テトラサイクリン染色を分離する距離を測定して新骨
成長の量を決定する。候補因子の注射後の血清のOP-1レベルもまた、慣用方法を
用いて周期的にモニターし得る。
実施例5:OP-1タンパク質産生の決定
OP-1がレポーター遺伝子として作用する場合、遺伝子産物の検出は、タンパク
質に特異的な抗体および標準的なイムノアッセイ試験を用いて容易にアッセイし
得る。例えば、OP-1を、以下のようにELISAにおいてOP-1に特異的なポリクロー
ナル抗体を用いて検出し得る。
1μg/100μlのアフィニティー精製したOP-1に特異的なポリクローナルウサ
ギIgGを、96ウェルプレートの各ウェルに添加して、そして37℃で1時間インキュ
ベートする。ウェルを、0.1% Tween20を含む0.15M NaCl(BSB)、pH8.2を有す
る0.167Mホウ酸ナトリウム緩衝液で4回洗浄する。非特異的な結合を最小化する
ために、ウェルを、BSB中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)で完全に満たすこと
および37℃で1時間インキュベートすることによってブロッキングする。次いで
、ウェルを0.1% Tween20を含むBSBを用いて4回洗浄する。細胞培養上清の適切
な希釈の各々の試験サンプルの100μlアリコートを、各ウェルに三連で添加し、
そして37℃で30分間インキュベートする。インキュベーション後、100μlのビオ
チン化ウサギ抗OP-1血清(ストック溶液は、約1mg/mlであり、そして使用前に
1%BSAを含むBSB中で1:400に希釈する)を、各ウェルに添加して、そして37
℃で30分間インキュベートする。次いで、ウェルを0.1% Tween20を含むBSBで4
回洗浄する。100μlのストレプトアビジンアルカリ(Southern Biotechnology A
ssociates,Inc.Birmingham、Alabama、使用前に0.1% Tween 20を含むBSB中で1
:2000に希釈する)を、各ウェルに添加し、そして37℃で30分間インキュベート
する。プレートを0.5M Tris緩衝化生理食塩水(TBS)、pH7.2で4回洗浄する。5
0μlの基質(ELISA Amplification System Kit.Life Technologies、Inc.Bethes
da、MD)を各ウェルに添加し、室温で15分間インキュベートする。次いで、50μl
の増強剤(同じ増幅システムキット由来)を添加し、そして室温でさらに15分間
インキュベートする。反応を、50μlの0.3M硫酸の添加により終結させる。各ウ
ェルにおける溶液の490nmでのODを記録する。培養培地におけるOP-1を定量する
ために、OP-1標準曲線を試験サンプルと並行して実施する。
実施例6:OP-1ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の産生
OP-1タンパク質についてのポリクローナル抗体を以下のように調製し得る。各
ウサギに、100μg/500μlの、500μlの完全フロイントアジュバントと混合した
0.1%SDS中のE.coli産生したOP-1モノマー(配列番号5のアミノ酸328〜431)で
初回免疫を与える。抗原を、動物の背中および脇腹の複数部位に皮下注射する。
ウサギを、1ヵ月後に不完全フロイントアジュバントを用いて同様の様式で追加
免疫する。試験採血を7日後に耳の静脈から行う。2回のさらなる追加免疫およ
び試験採血を、OP-1に対する抗体が、ELISAアッセイを用いて血清中に検出され
るまで、1ヶ月おきに行う。次いで、ウサギを、100μgの抗原で毎月追加免疫し
、そして追加免疫後7日目および10日目に採血する(採血1回あたり15ml)。
OP-1タンパク質について特異的なモノクローナル抗体を、以下のように調製し
得る。マウスに、E.coli産生したOP-1モノマーを2回注射する。1回目の注射は
、完全フロイントアジュバント中に100μgのOP-1を含み、そして皮下に与えられ
る。2回目の注射は、不完全アジュバント中に50μgのOP-1を含み、そしてこれを
、腹腔内に与える。次いで、マウスに、合計230μgのOP-1を8ヶ月の期間にわた
って種々の時間にて4回の腹腔内注射で与える。融合の1週間前に、両方のマウス
を、SMCC架橋剤を用いてさらなるシステインを介してウシ血清アルブミンと結合
体化した100μgのOP-1および30μgのN末端ペプチド(Ser293-ASn309-CyS)で腹
腔内に追加免疫する。この追加免疫を、融合の5日(IP)、4日(IP)、3日(IP
)、および1日(IP)前に反復する。次いで、マウス脾細胞を、ミエローマ細胞
と、1:1の比でPEG1500(Boehringer Mannheim)を用いて融合し、そしてこの細
胞融合物を、プレートし、そしてOP-1を抗原として用いてOP-1特異的抗体につい
てスクリーニングする。次いで、細胞融合およびモノクローナルスクリーニング
を、当該分野で広く利用可能な標準的な手順に基づいて行う。
実施例7:血清中のOP-1を検出するためのプロセス
以下に示すのは、血清中のOP-1を同定するためのサンプリングプロトコルであ
る。この一般的な方法論に従って、OP-1を、血清を含む体液中で検出し得、そし
てインビボでOP-1調整化合物の効力を評価するためのプロトコルにおいて使用し
得る。
当該分野で充分に記載され、そして上記実施例6に一般的に記載されている標
準的な免疫学的技術を用いて哺乳動物の組換え産生されたOP-1に対して惹起され
たモノクローナル抗体をアガロース活性化ゲル(例えば、Bio-Rad Laboratories
、Richmond、CAからのAffi-GelTM、製造者の指示に従って調製した)を通して抗
体を通過させることによって固定し、そしてこれを使用して血清からOP-1を精製
した。次いで、ヒト血清をカラムを通して通過させ、そして3M K-チオシアネー
ト
を用いて溶出させた。次いで、K-チオシアネート画分を6M尿素、20mM PO4、pH7
.0中で透析し、C8 HPLCカラムに適用し、そして20分間、25〜50%アセトニトリ
ル/0.1%TFA勾配を用いて溶出した。組換え産生させた、成熟OP-1ホモダイマー
は、20〜22分に溶出し、そしてこれを陽性コントロールとして使用する。次いで
、画分を集め、そしてOP-1特異的抗体を用いて標準的なイムノブロットによりOP
-1の存在について試験した。この方法を用いて、OP-1をヒト血清において容易に
検出した。このアッセイの詳細な記載については、PCT/US92/07432もまた参照の
こと。
実施例8:治療剤を投与するための処方物および方法についての考慮
本明細書において同定されたOP-1モジュレーターが、組織または器官の保存溶
液の部分を含む場合、任意の市販される保存溶液が使用され得る。例えば、当該
分野で公知の有用な溶液は、Collins溶液、Wisconsin溶液、Belzer溶液、Euroco
llins溶液および乳酸加リンゲル溶液を含む。一般に、器官保存溶液は、通常、1
以上の次の特性を有する:(a)哺乳動物細胞の内側のものと実質的に等価な浸透
圧(溶液は代表的に、高浸透圧であり、そして哺乳動物細胞の内側よりもわずか
に高い浸透圧を生じるに充分な量で存在するK+および/またはMg++イオンを有す
る);(b)溶液は代表的に、細胞において実質的に正常なATPレベルを維持し得る
;および(c)溶液は、通常、細胞において、グルコース代謝の最適な維持を可能
にする。器官保存溶液はまた、抗凝固因子、エネルギー源(例えば、グルコース
、フルクトース、および他の糖類)、代謝物、重金属キレート剤、グリセロール
、および低温での生存を増強するための他の高粘性物質、酸素フリーラジカル阻
害剤、およびpH指示薬を含み得る。保存溶液の詳細な記載および有用な成分は、
例えば、米国特許第5,002,965号に見い出され得る。
OP-1モジュレーターが個体に提供される場合(例えば、採取前のドナー、移植
前または移植時のレシピエント)、治療剤は、任意の適切な手段、好ましくは直
接(例えば、組織または器官の位置への注射によるような局所的)または全身的
(例えば、非経口的または経口的)に提供され得る。
非経口投与のために有用な溶液は、薬学分野において周知の、例えば、Reming
ton's Pharmaceutical Sciences(Gennaro、A.編)Mack Pub.1990に記載される
任意の方法によって調製され得る。処方物は、例えば、ポリエチレングリコール
ようなポリアルキレングリコール、植物起源の油、水素化ナフタレンなどを含み
得る。直接投与のための処方物は、特に、グリセロールおよび高粘度の他の組成
物を含んで所望の位置での薬剤の維持を補佐し得る。生体適合性の、好ましくは
、生体吸収性のポリマー(例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、リン酸三カルシ
ウム、ポリブチレート)、ラクチド、およびグリコリドポリマーならびにラクチ
ド/グリコリドコポリマーを含む)は、インビボでの薬剤の放出を制御するのに
有用な賦形剤であり得る。
当業者に理解されるように、治療的組成物において記載される化合物の濃度は
、多数の因子(投与される薬物の投薬量、使用される化合物の化学的特徴(例え
ば、疎水性)および投与経路を含む)に依存して変化する。モルフォゲン刺激因
子が保存溶液の部分である場合、投薬量は、例えば、移植される組織または器官
のサイズ、器官または組織自身の全体の健康状態、採取と移植との間の時間の長
さ(例えば、保存期間)、保存溶液を交換する頻度、および予定される保存の型
(例えば、低温)に依存するようである。一般的な用語では、好ましい範囲は、
1日当たり、組織または器官1kg重量当たり約0.1ng〜100μgの濃度範囲を含む。
治療剤がドナーまたはレシピエントに投与される場合、好ましい投与される薬
物の投薬量はまた、疾患の進行の型および程度、特定の患者の全体的な健康状態
、選択した化合物の相対的な生物学的効力、化合物賦形剤の処方物、および投与
経路のような変数に依存するようである。一般的な用語では、本発明の適切な化
合物は、非経口投与のために約0.001%〜10%w/v化合物を含む生理的緩衝水溶
液中に提供され得る。代表的な用量範囲は、1日当たり約10ng/kg体重〜約1g/k
g体重であり;そして好ましい用量範囲は、1日当たり、約0.1μg/kg体重〜100m
g/kg体重である。
本発明は、本発明の精神または本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の
形態において具現化され得る。従って、本実施態様は、その全局面において例示
でありかつ制限しないものとして考慮されるべきであり、本発明の範囲は、上記
の記載によってではなく添付の請求の範囲によって示される。従って、請求の範
囲の等価物の意味および範囲内にある全ての変化が請求の範囲に含まれることが
意図される。
実施例9:発現サイレンサーを含むOP-1上流領域のAatII-PvuIIフラグメント
ルシフェラーゼレベルを、実施例2に記載したOP-1上流欠失構築物でトランス
フェクトしたG401細胞においてアッセイした。G401細胞を、Lipofectamineを用
いて欠失構築物でトランスフェクトした。48〜72時間後、ルシフェラーゼ活性を
Promega Luciferase Assay System(Promega、Madison、WI)およびルミノメー
ター(DynaTech)を用いて測定した。相対ルシフェラーゼ活性を図2に示す。最
大活性を、OP-1上流DNAの0.6kbを含む構築物について観察した。約0.1kbの上流D
NA(AatII-PvuIIフラグメント、配列番号1のほぼヌクレオチド2606〜2690)の付
加は、図2において約0.7kbのOP-1上流DNAを含むAatII構築物によって示すように
、ルシフェラーゼ活性を約5分の1に減少させた。
AatII-PvuIIフラグメント(配列番号1のヌクレオチド2606〜2690)の発現サ
イレンシング特性を、pAS3.3dを含む細胞におけるルシフェラーゼ活性と、pAS3.
3含有細胞におけるルシフェラーゼ活性とを比較することによってさらに試験し
た。pAS3.3構築物は、ルシフェラーゼ遺伝子に融合した3.3kbのOP-1上流DNAを含
む。pAS3.3d構築物は、AatII-PvuIIフラグメントを欠き、そしてpAS3.3構築物を
AatIIおよびPvuIIで消化し、AatIIオーバーハングを平滑化し、そしてベクター
に再連結することによって作製した。
G401細胞を、6ウェルプレートにおいて三連でプレートした。1日のインキュ
ベーション後、培養細胞を、Lipofectamineおよび約1μgのpAS3.3またはpAS3.3
dのいずれかを用いて欠失構築物でトランスフェクトした。48〜72時間後、ルシ
フェラーゼ活性を、以前に記載されるように測定した。結果を図3に示す。pAS3
.3を含む細胞は、pAS3.3dを含む細胞の約3倍(2〜4倍)のルシフェラーゼを発
現した。従って、AatII−PvuIIフラグメント(配列番号1のヌクレオチド2606〜
2690)は、遺伝子発現のサイレンサーを含む。
pAS3.3構築物(これは、OP-1遺伝子の翻訳開始部位の上流の3305ヌクレオチド
を含む)を含む細胞によるルシフェラーゼ産生は、Pax2 cDNAとの同時トランフ
ェクションによって2.4倍に誘導され、そしてPax6 cDNAとの同時トランスフェク
ションによって9.6倍に誘導された(図1B)。pAS3.3構築物とのPax2およびPax6発
現ベクターの両方の三連のトランスフェクションは、さらに11.5倍の誘導をもた
らした。このことは、Pax2およびPax6遺伝子産物がOP-1遺伝子発現に対して相加
効果を有することを示唆する。pAS3.3構築物の5'欠失変異体を含む細胞は、Pax2
またはPax6構築物との同時トランスフェクションの誘導効果に対してあまり応答
性ではなかった。例えば、pAS2.5構築物は、Pax2構築物との同時トランスフェク
ションによって1.7倍に誘導されただけであり、そしてこのPax2応答性は、約1.3
kbの5'配列のさらなる欠失によって消失し、Pax2誘導は、pAS1.2構築物について
も、またはさらなる5'欠失を伴う残りの構築物についても検出されなかった。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12N 5/10 C12Q 1/68 Z
C12Q 1/02 C12N 15/00 ZNAA
1/68 5/00 A
(72)発明者 シェパード,アリッサ エイ.
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
01545,スリューズバリー,ナイチンゲー
ル ドライブ 9
(72)発明者 サンパス,クバー ティー.
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
01746,ホリストン,パメラ ドライブ
98
(72)発明者 オパーマン,ハーマン
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
02053,メッドウェイ,サマー ヒル ロ
ード 25