【発明の詳細な説明】
イムノアッセイの特異性の改良に有用な方法及び試薬 発明の背景
本発明は概してイムノアッセイの特異性を改良する方法、より具体的には、検
体希釈液に変性及び/又は精製した細菌酵素を加えて、細菌酵素との融合タンパ
ク質として発現させた組換え抗原を用いるイムノアッセイの特異性を高める方法
に関する。
イムノアッセイは歴史的に偽陽性反応を起こしがちであることが知られている
。固体支持体上で用いられる典型的な抗原溶液を含むウイルス溶解物又は組換え
タンパク調製物は他のタンパク質をも含み得る。これらの他のタンパク質は固体
支持体に結合して患者試料中の抗体と反応し得る。あるいは、患者試料中の成分
が固体支持体に結合してアッセイを妨害し得る。
例えば、McFarlaneら,Lancet(1990)335:754−
57は、自己免疫慢性活動性肝炎(AI−CAH)に罹患している患者が高レベ
ルの抗C型肝炎ウイルス(HCV)抗体を有すると報告し、さらに、AL−CA
H患者の血清がアッセイの結果を偽陽性とする成分
を含み得ることを示唆した。McFarlaneらは、IgGレベルとOD値と
の間に相関関係を認めたので、アッセイにより非特異的にIgGが検出されたの
ではないか、あるいは、アッセイに用いられた抗原と交差反応する何か他の病原
体に対する抗体又は固相に付着し且つIgGと結合する成分のような患者血清中
に含まれている因子が該結果に関与したのでないかと推測した。さらに、ある種
の偽陽性結果は、患者血清と、アッセイに利用する組換え抗原の発現に用いられ
る融合タンパク質との交差反応性によるものである。
本明細書に記載のような反応性は予測され得るものであるから、アッセイは、
一般に組換えタンパク質の使用に係わる問題のいくつかを回避するように設計し
得る。例えば、米国特許出願第08/059,868号に対応するPCT特許出
願公開第WO92/13275号(本明細書に参照として組込むものとする)を
参照されたい。該刊行物には、スーパーオキシドジスムターゼを検体希釈液に添
加することが、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)との融合タンパク質と
して発現させた組換えタンパク質を用いるアッセイの特異性を高めることに有用
であることが教示され
ている。当業者は、この教示を基にすれば、組換えタンパク質を用いるアッセイ
の特異性を高めるために検体希釈液に細菌酵素を添加することを考えるであろう
。
しかし驚くべきことには、本出願人は、そのような細菌酵素を添加しただけで
は、たとえ該酵素が同じ細菌宿主系で発現されたものであっても、全てのタイプ
の融合タンパク質において必ずしも特異性が向上されるわけではないことを見い
だした。従って、アッセイにおいて捕獲及び/又は指示試薬として融合タンパク
質を用いる場合に、イムノアッセイの特異性を高める方法及び試薬を提供するの
が有利である。発明の要旨
本発明は、イムノアッセイにおける特異性を高めるための改良法を提供し、該
方法は、(a)検体と、細菌酵素との融合タンパク質として発現させた変性組換
え細菌酵素を含む希釈液とを混合する段階、及び(b)その希釈検体を、該変性
細菌酵素との融合タンパク質として発現させた少なくとも1種の組換え抗原と接
触させる段階を包含する。変性組換え細菌酵素は組換えタンパク質からなり、C
KSであってもSODであってもよい。さらに、該変性組換え細
菌酵素の濃度は、約0.001〜約1.0g/l希釈液の範囲である。該変性組
換え細菌酵素の濃度が約0.01〜約0.1g/l希釈液の範囲であればなお好
ましい。該組換え細菌酵素は約100μg/mlの濃度であるのが最も好ましい
。本発明の方法は、抗C型肝炎ウイルス(HCV)抗体や抗ヒト免疫不全ウイル
ス(HIV)抗体を含む多くの分析物(analytes)を検出し得る。変性
は熱及び尿素を含む多様な方法で実施し得る。また、精製した組換え細菌酵素を
用いてもよい。
本発明はさらに、組換え細菌酵素との融合タンパク質として発現させた少なく
とも1種の組換え抗原を用いるアッセイを実施する際に、テスト試料中の抗体の
検出に有用な、変性組換え細菌酵素を含む希釈液を提供する。該変性組換え細菌
酵素の濃度は約100μg/mlである。精製した組換え細菌酵素を用いてもよ
い。
さらに本発明はイムノアッセイを実施するためのテストキットを提供し、該キ
ットは、CKS及びSODからなる群から選択される変性組換え細菌酵素を含有
する容器を含む。発明の詳細な説明
本発明は、個体由来の検体中の抗体の改良型検出法を提供し、該方法に用いら
れる組換え抗原は、ベクターにより融合タンパク質として発現し、CKS又はS
ODのような細菌酵素の遺伝子によってコードされる。上記改良法は、検体と変
性組換え細菌酵素(例えば、SOD又はCKS)を含む希釈液とを混合する段階
を含み、該酵素は、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂を含む、本明細書に
記載のような当業界において公知の方法で精製し得る。
アッセイ診断法において、特定タイプのアッセイ法に用いる血清試料を調製す
る際に、加熱又は化学的手段によりタンパク質を変性させることは公知である。
タンパク質の変性はタンパク質の三次構造(tertiary bonds)が
破壊されたときに起こり、それによってタンパク質の折り畳みは部分的又は全体
的に損なわれる。しかし、通常、アッセイに用いるタンパク質溶液は変性しない
ように注意しなければならない。というのは、そのような変性が起こると、タン
パク質の特性が変化し、アッセイの結果に悪影響を与えるからである。例えば、
N.W.Tietzら,Fundamentals of Clinical
Chemjstry,第2版,W.B.Saunders C
ompany,Philadelphia(1976),270ページを参照さ
れたい。
アッセイの特異性を改良するために、アッセイ希釈液に融合タンパク質に用い
た組換え細菌酵素を添加することは公知であるが、そのような細菌酵素を希釈液
に添加しただけでは、偽陽性反応の量を低減させることによりアッセイの特異性
を高めるという所望効果が得られないかもしれない、ということはこれまで知ら
れていなかった。本明細書において、偽陽性結果とは、試料が、ELISA、E
IA又はPHAにおいては常に反応性であるが、分析物抗体の存在を測定する代
替法では確認されない、として定義される。代替テスト法には、合成ペプチドE
IA、抗体ブロッキング法及び組換えイムノブロットアッセイが含まれる。
本出願人は、ある場合には、組換え又は精製組換え細菌酵素を添加しても、組
換えタンパク質を用いるアッセイの特異性が向上されないことを見いだした。驚
くべきことには、本出願人は、組換え細菌酵素を変性させることによりアッセイ
の特異性が高まることを知見した。本出願人はさらに、希釈検体中に精製した変
性組換え細菌酵素を用いてアッセイの特異性を有利に向上させ得る場合があるこ
とを
見いだした。
希釈液(以後に定義する)に変性組換え細菌酵素を添加してアッセイの特異性
を高めることにより分析物の検出を改良するのが特に有利であることが知見され
た。イムノアッセイには、ベクターにより融合タンパク質として発現される組換
え抗原を用いることができるが、該抗原はスーパーオキシドジスムターゼ(SO
D)遺伝子又はCKS(CTP:CMP−3−デオキシ−manno−オクツロ
ソン酸シチジリルトランスフェラーゼ又はCMP−KDOシンテターゼ)遺伝子
によりコードされるもの〔1992年6月23日発行の米国特許第5,124,
255号及び米国特許出願第07/903,043号(両文献とも本明細書に参
照として組込むものとする)を参照されたい〕である。従って、細菌酵素との融
合タンパク質として発現させた組換え抗原を用いるアッセイは、患者試料中の抗
SOD又は抗CKS抗体と干渉する反応を示し得る。この抗CKS又は抗SOD
の作用は、用いられる細菌酵素を検体希釈液に添加する前に変性させない限り、
偽陽性反応として除去し得るものではない。好ましくは組換え工学的に得られた
細菌酵素は、約0.001〜約1g/l、より好ましくは約
0.005〜約0.5g/l、最も好ましくは約0.01〜約0.1g/lの範
囲の濃度で希釈液に添加し得る。細菌酵素は細菌抽出物から精製又は部分精製さ
れたタンパク質として添加し得る。しかし、細菌酵素は希釈液に添加する前又は
希釈液中で使用する前に変性させなければならないことが知見された。
変性は、約50〜60℃の温度で約20〜60分間の加熱、並びに化学物質、
例えば、8M尿素、グアニジン及びある種の有機溶媒による細菌酵素の処理を含
む、当業界において公知の方法により実施し得る。
本発明によれば、本明細書において「希釈液」とは、当業界においては周知で
あり且つ上記に示されているような緩衝液及び塩の水溶液と定義される。好まし
い緩衝液は、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO
からTrisという商標名で市販されているトリス[ヒドロキシメチル]アミノ
メタン、又はリン酸緩衝液であり、適当な緩衝液には、HEPES(N−[2−
ヒドロキシエチル]ピペラジン−N′−[2−エタンスルホン酸]、PIPES
(ピペラジン−N,N′−ビス[2−エタンスルホン酸])、PIPES(ピペ
ラジン−N,N′−ビス
[2−エタンスルホン酸])、CAPS(3−[シクロヘキシルアミノ]−1−
プロパンスルホン酸)及びMOPES(3−[N−モルホリノ]プロパンスルホ
ン酸)のような緩衝液が含まれるが、それらには限定されない。適当な塩には、
塩化ナトリウム(NaCl)やリン酸塩及び硫酸塩のような塩が含まれる。
さらに、種々の動物血清、界面活性剤、ブロッキング剤及び他の成分を加えて
特異性を改良し得る。例えば、ウシ血清、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウシ
胎児血清及びヤギ血清のような動物血清タンパク質を、約0.5〜約5
0として市販されているポリオキシエチレンソルビタン、
シエチレンエーテル、Nonidet P−40(オクチルフェノール−エチレ
ンオキシド縮合物)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又はN−ラウロイルサ
ルコシン(N−ドデカノイル−N−メチルグリシン)のような生物界面活性剤を
、約0.01〜約5%v/vの範囲の濃度で加えてもよい。エチレンジアミン四
酢酸(EDTA)及びエチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)
−N,
N,N′,N′−四酢酸(EGTA)のようなキレート化剤を、約2〜約20m
Mの範囲の濃度で添加してもよい。
固体支持体上で用いられる抗原溶液を含むウイルス溶解物又は組換えタンパク
質に含まれる他のタンパク質による非特異的反応を中和するために、リンパ球溶
解物溶液、例えば、ヒトT−リンパ球溶液又はE.coli溶菌液のような宿主
細胞溶解物溶液を、典型的には約0.01〜約10%v/vの範囲の濃度で添加
し得る。アジ化ナトリウムのような保存剤を加えてもよい。
検体希釈液を用いて種々のアッセイ法のテスト検体を希釈し得る。アッセイに
用いられる希釈液試薬は、1個以上の容器例えばバイアル又はビンを含むキット
の形態で供給され得、各容器は、アッセイに用いられる希釈液、モノクローナル
抗体若しくはその組合わせ又は組換えタンパク質のような別個の試薬を含む。
アッセイ法に用い得る「固相」(「固体支持体」)は当業者には公知であり、
反応トレイのウエル壁、試験管、ポリスチレンビーズ、磁性ビーズ、ニトロセル
ロースストリップ、膜、ラテックス粒子のような微粒子などが含まれる。「固相
」の種類は重要ではないが、当業者が選択し得る。
従って、ラテックス粒子、微粒子、磁性又は非磁性ビーズ、膜、プラスチック管
、マイクロタイターウエルの壁、ガラス又はシリコンチップ及び赤血球はいずれ
も適当な例である。固相上にペプチドを固定させる適当な方法には、イオン相互
作用、疎水的相互作用、共有結合相互作用などが含まれる。
本発明は、特異的結合メンバーを用いるイムノアッセイの特異性を高めるため
の希釈液、テストキット及び方法を提供する。本明細書に用いられている「特異
的結合メンバー」とは、特異的結合ペアのメンバー、即ち、一方の分子が化学的
又は物理学的手段により他方の分子に特異的に結合する2つの異なる分子である
。従って、一般的なイムノアッセイの抗原抗体特異的結合ペアに加えて、他の特
異的結合ペアには、ビオチンとアビジン、炭水化物とレクチン、相補的ヌクレオ
チド配列、エフェクター分子とレセプター分子、補因子と酵素、酵素阻害剤と酵
素などが含まれ得る。さらに、特異的結合ペアには、元の特異的結合メンバーの
類似体、例えば、分析物類似体が含まれ得る。免疫反応性特異的結合メンバーに
は、組換えDNA分子により形成されたものを含む、抗原及び抗原断片、モノク
ローナル抗体;
ポリクローナル抗体及び該抗体の断片、並びにその複合体が含まれる。本明細書
に用いられている「ハプテン」という用語は、担体タンパク質に結合しない限り
抗体の形成を誘発し得ないものであって、抗体に結合し得る不完全抗原(par
tial antigen)又は非タンパク性結合メンバーを指す。
本明細書に用いられている「分析物」とは、テスト試料中に存在し得る検出す
べき物質を指す。分析物は、天然の特異的結合メンバー(例えば、抗体)が存在
する物質であるか、又はその特異的結合メンバーを形成し得る任意の物質であっ
てよい。従って、分析物は、アッセイにおいて1つ以上の特異的結合メンバーに
結合し得る物質である。「分析物」には、任意の抗原性物質、ハプテン、抗体及
びその組合わせも含まれる。分析物は、特異的結合ペアのメンバーとして、ビタ
ミンB12を定量するための特異的結合ペアのメンバーとして固有のタンパク性因
子を使用するか、又は葉酸を定量するために葉酸結合タンパク質を使用するか、
又は炭水化物を定量するために特異的結合ペアのメンバーとしてレクチンを使用
する、というように天然の特異的結合パートナー(ペア)を用いて検出し得る。
分析物は、タ
ンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、治療目的で
投与されるもの又は違法な目的で投与されるものを含む薬剤、細菌、ウイルス、
及び上記物質のいずれかの代謝物又は該物質に対する抗体を含み得る。そのよう
な抗体の調製及び特異的結合メンバーとしての使用適格についての詳細は当業者
には周知である。テストし得るウイルス類には、肝炎の原因ウイルス(例えば、
A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、デルタ肝炎及びE型
肝炎ウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV−1、HIV−2)、
HTLV−I及びHTLV−IIウイルスなどが含まれる。
本明細書に記載の種々のアッセイ法に「指示試薬」を用いてもよい。「指示試
薬」は、分析物に特異的な結合メンバーに結合(付着)した外部手段により検出
し得る測定可能シグナルを生成し得る「シグナル生成化合物」(標識)を含む。
本明細書に用いられている「特異的結合メンバー」とは、特異的結合ペアのメン
バー、即ち、一方の分子が化学的又は物理学的手段により他方の分子に特異的に
結合する2つの異なる分子を意味する。指示試薬は、分析物に特異的な結合ペア
の抗体メンバーであることに加えて、ハプ
テン−抗ハプテン系、例えば、ビオチン又は抗ビオチン、アビジン又はビオチン
、炭水化物又はレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター分子又はレセ
プター分子、酵素補因子又は酵素、酵素阻害剤又は酵素などを含む任意の特異的
結合ペアのメンバーでもあり得る。免疫反応性特異的結合メンバーは、サンドイ
ッチアッセイにおいては分析物に、競合アッセイにおいては捕獲試薬に、又は間
接アッセイにおいては補助的特異的結結合メンバーに結合し得る、抗体、抗原又
は抗体/抗原複合体であってよい。
考えられる種々の「シグナル生成化合物」(標識)には、色素原、酵素のよう
な触媒、フルオレセイン及びローダミンのような発光化合物、化学発光化合物、
放射性元素、並びに直視標識(direct visual labels)が
含まれる。酵素の例としては、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシ
ダーゼ、β−ガラクトシダーゼなどが挙げられる。特定の標識の選択は重要では
ないが、標識は、単独で又は1種以上の追加物質と結合してシグナルを生成し得
る。
「テスト試料」という用語には、本明細書に記載の本発明方法によりテストし
得る生物学的試料が含まれ、該試料
には、全血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、リンパ液のようなヒト及び動物の体液
、呼吸器、腸管及び尿生殖器管の種々の外分泌液、涙、唾液、乳、白血球、骨髄
腫等、細胞培養上清、固定した組織標本及び固定した細胞標本のような生物液が
含まれる。組換えタンパク質を用い本発明に記載のアッセイ法により希釈及びテ
ストし得る物質はいずれも本発明の範囲内に包含されるものとする。
選択されるアッセイ法の如何に拘わらず、希釈されたテスト試料を用いるもの
とする。当業界では多くのアッセイ法が公知であり、捕獲又は指示試薬として組
換え抗原を用いるアッセイ法は全て本発明の範囲内に包含されるものとする。従
って、1段階及び2段階サンドイッチイムノアッセイ、血球凝集反応アッセイ、
競合アッセイ、中和アッセイ、イムノドットアッセイは全て本発明の範囲内に包
含されるものとする。
ハプテンの使用は当業界において公知である。アッセイの性能を高めるために
、融合タンパク質を用いるアッセイにハプテンを用い得ることも考慮に含まれる
。
以下の実施例は本発明の思想及び範囲を説明することを目的とし、本発明を限
定するものではない。
実施例 実施例1.HIVアッセイ用の組換えCKS−rp36の作製
A.アニオン交換樹脂の調製
PD−10カラム(Pharmaciaから入手可能)を、8M尿素を含む1
0mMリン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化した。6Mグアニジン−塩酸中のC
KS−rp36抗原溶液を該カラム及び8M尿素を含む10mMリン酸緩衝液(
pH7.5)で処理して、8M尿素中のCKS−rp36抗原溶液を得た。この
溶液交換法の代わりに透析法を用いてもよいことが知見された。そのような処理
により、精製・変性細菌酵素調製物を得た。
次いで、DEAEイオン交換樹脂又はQAEイオン交換樹脂、例えばDEAE
−5PW(Tosoから入手可能)、Resource−Q(Pharmaci
aから入手可能)、をカラムに充填し、8M尿素を含む10mMリン酸緩衝液(
pH7.5)で平衡化した。次いで、8M尿素中のCKS−rp36溶液を上記
アニオン交換樹脂カラム上に流した。この段階では、1ml/分の流速でCKS
−rp36抗原を流した。以下のように、得られたCKS−
rp36抗原を受動的血球凝集反応アッセイ(PHA)の抗原として用いた。変
性CKS−rp36抗原をヒトO型赤血球上にコーティングし、PHAアッセイ
キット(Dainabot,Tokyo,Japan)に用いた。テスト血清を
記載の種々の濃度に希釈したこのPHAテストキットを用い、3千人のボランテ
ィア血清ドナーをテストした。得られた結果を以下の表1に要約する。
B.カチオン交換樹脂の調製
PD−10カラム(Pharmaciaから入手可能)を、8M尿素を含む1
0mMリン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化した。6Mグアニジン−塩酸中のC
KS−rp36抗原溶液を、該カラム及び8M尿素を含む10mMリン酸緩衝液
(pH7.5)で処理して、8M尿素中のCKS−rp36抗原溶液を得た。溶
液交換法の代わりに透
析法を用い得ることも知見された。
次いで、CMイオン交換樹脂又はSPイオン交換樹脂、例えばCM−3WS(
Tosoから入手可能)、Resource−S(Pharmaciaから入手
可能)、をカラムに充填し、8M尿素を含む10mMリン酸緩衝液(pH7.5
)で平衡化した。次いで、CKS−rp36抗原を上記カチオン交換樹脂カラム
上に流した。次いで、該カラムを徹底的に洗浄し、1ml/分の流速で塩を用い
た段階的溶離によりCKS−rp36抗原を溶出した。次いで、変性させたCK
S融合タンパク質をヒトO型赤血球上にコーティングし、上記PHAアッセイの
抗原として用いた。テスト血清を種々の濃度に希釈した上記PHAキットを用い
、3千人のボランティア血清ドナーをテストした。得られた結果を以下の表2に
要約する。
C.アニオン及びカチオン交換樹脂の調製
上記の処理それぞれから得られたCKS−rp36抗原をヒトO型赤血球上に
コーティングし、上記PHAアッセイによりテストした。本実施例の(A)及び
(B)項に記載の方法によりテストして偽陽性とされた8種のテスト検体を種々
の濃度に希釈して、本実施例に記載の抗原を用いて再テストした。得られた結果
を表3に要約する。
実施例2.HIV関連抗体アッセイキットの作製
先ず、ヒトO型赤血球を生理食塩水(pH7.0)で洗浄し、次いで、DEA
E−CM処理HIVCKS−rp36抗原を含む溶液と共にインキュベートした
。細胞を該抗原溶液中2時間室温でインキュベートし、リン酸緩衝塩水
で洗浄した。抗原をコートした細胞の溶液は、生理食塩水溶液中1.0%(v/
v)の抗原コーティング細胞からなるものであった。3,000人のボランティ
ア血清ドナーをテストする際には、本明細書に記載のPHAアッセイに、E.c
oli XL−1溶解物(lysates)、E.coli JM103溶解物
、E.coli pTB210/XL−1溶解物、20μg/ml組換えCKS
溶解物及び20μg/ml精製組換えCKSを用いた。結果を以下の表4に要約
する。
これらのデータは、DEAE及び/又はCM処理したCKS−rp36HIV
抗原を用い、該CKS材料を本実施例及び実施例1のように8M尿素で変性させ
ると、E.c
oliにより引き起こされる偽陽性反応の数を減少させ得ることを示している。実施例3.組換えCKSの作製
米国特許第5,124,255号に記載の方法を用い、DNAの合成配列を作
製した。実施例4.検体希釈液
0.15%(v/v)TritonX−100、1%(w/v)BSA及び5
00μg/ml以下の組換えCKS細菌酵素(実施例3に記載のように調製した
)を含む20mM Trisリン酸緩衝液中10%(v/v)ウシ血清及び20
%(v/v)ヤギ血清を含む試料希釈液を調製し、組換えCKS細菌酵素を50
℃で約30分変性させてから該希釈液に加えた。実施例5.HIVアッセイの特異性パネルテスト
CKSによる偽反応を評価するために実験を行い、組換え細菌酵素の熱処理に
より偽陽性反応が減少するかどうかを測定した。過去のデータは、第2世代HI
Vアッセイ(Abbott Laboratories,Abbott Par
k,IL)にCKS溶解物を添加しても、発生すると思われる偽陽性反応の数を
減少させることによる第2世代
HIVアッセイの特異性の向上が得られないことを示していた。従って、組換え
CKS細菌酵素を変性させると特異性が改良されるかどうかを測定するための実
験を設計した。テストには、陽性及び陰性対照と共に、10メンバーからなる特
異性パネルを選択した。該実験にはAbbottの第2世代HIVアッセイ(A
bbott Laboratories,Abbott Park,IL)を用
いた。検体は2回テストし、対照はそれぞれ5回テストした。標準アッセイ試薬
として利用し得る希釈液と実施例4に記載のような(50℃で30分間変性させ
た)CKS組換え細菌酵素を含む希釈液との比較を行った。用いたアッセイプロ
トコルは、アッセイの製造業者に推奨されたものであり、得られた読取り値は光
学密度読取り値(O.D.)として記録した。結果を以下の表5に要約する。
これらのデータから、10メンバー特異性パネル中のメンバー1、4、5、7
、8及び9を含む数メンバーに有意な改良(>50%O.D.減少)が示された
ことがわかる。メンバー7及び9のテスト結果は陽性から陰性に転じ、パネルメ
ンバー9は最も有意な効果を示した。実施例6.HIV1/HIV2 Test Packアッセイの特異性パネルテ スト
CKSによる偽反応を評価するために実験を行い、組換え細菌酵素を熱処理す
ると、Abbott Test pack HIV1/HIV2アッセイにおけ
る偽陽性反応が減少するかどうかを測定した。過去のデータは、HIV1/HI
V2 Test PackAssay(AbbottLaboratories
,Abbott Park,ILから入手可能)にCKS溶解物を添加しても、
発生すると思われる偽陽性反応の数を減少させることによるHIVアッセイの特
異性の向上が得られないことを示していた。従って、組換えCKS細菌酵素を変
性させると特異性が改良されるかどうかを測定するための実験を設計した。テス
トには、陽性及び陰性対照と共に、実施例7に記載のものと同じ10メンバーか
らなる特異性パネルを選択した。該実
験には、Abbott HIV1/HIV2 Test packアッセイ(A
bbott Laboratories,Abbott Park,ILから入
手可能)を用いた。陽性及び陰性対照を含む標本は2回テストし、種々の濃度(
12μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、75μg/ml及び100
μg/ml)の熱処理CKS組換え細菌酵素をテストした。CKS細菌酵素を変
性させるための熱処理は全て50℃で30分間実施した。用いたアッセイプロト
コルは、アッセイの製造業者が推奨したものであり、得られた読取り値は、陽性
、陰性又は陽性/陰性として記録した。この実験から得られたデータは実施例5
で得られたデータに類似しており、変性させたCKS組換え細菌酵素を用いた場
合に、HIV1/HIV2 Test Packアッセイに特異性の改良が示さ
れた。殆どの場合、特異性の向上に十分な濃度は12μg/mlであったが、変
性CKS組換え細菌酵素の好ましい濃度は、100μg/mlであることが知見
された。
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(72)発明者 武井 俊憲
東京都杉並区阿佐ヶ谷北3−36−3
(72)発明者 城村 哲
千葉県野田市谷津626−1
(72)発明者 スウイーニー,スーザン・イー
アメリカ合衆国、イリノイ・60060、マン
デイライン、クレセント・ドライブ・78
(72)発明者 ニードバルスキー,ジヨーゼフ・エス
アメリカ合衆国、イリノイ・60031、ガー
ニー、ウエスト・マウント・バーノン・コ
ート・6894