JPH10503643A - 微生物中に遺伝物質を導入する方法およびその方法によってえられる形質転換体 - Google Patents

微生物中に遺伝物質を導入する方法およびその方法によってえられる形質転換体

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JPH10503643A JP8501974A JP50197496A JPH10503643A JP H10503643 A JPH10503643 A JP H10503643A JP 8501974 A JP8501974 A JP 8501974A JP 50197496 A JP50197496 A JP 50197496A JP H10503643 A JPH10503643 A JP H10503643A
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Abstract

(57)【要約】 微生物の中へ核酸を導入する方法および前記方法により形質転換される微生物。微生物に新たな遺伝情報を与えるために微生物を形質転換するための既知の方法は応用性が制限されていた。いくつかの微生物は既知の技術により形質転換またはトランスフェクトさせることが困難である。これらの微生物はリカルシトラントと称される。いくつかの乳酸菌、とくにラクトバチルスおよびビフィドバクテリウム属の種は既知の技術により形質転換することが困難である。本発明は、形質転換工程においてまたはその前に、微生物を制限された自己消化に付することによりこの問題を解決する。前記制限された自己消化は、微生物を、浸透安定剤を含む低モル濃度のエレクトロポレーション緩衝液中、一般的にはpH4〜8のあいだ、37℃未満の温度、たとえば0℃〜10℃のあいだなどでインキュベートすることにより行なわれる。本発明は、微生物を形質転換するプラスミドを選択する基準および形質転換のために適切なプラスミドを提供する。また形質転換される微生物の応用も開示する。

Description

【発明の詳細な説明】 微生物中に遺伝物質を導入する方法および その方法によってえられる形質転換体 発明の技術分野 本発明は、組換えDNA法を用いる遺伝子工学または遺伝子修飾の技術分野の 発明であり、詳しくは、微生物、とくに乳酸菌類、さらに具体的に述べるとビフ ィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の細菌類の遺伝子修飾に関する。 本発明は、前記微生物に核酸を導入する方法、前記微生物を形質転換するのに 利用できるプラスミド、形質転換された微生物を選択するのに用いることができ るマーカー、前記方法でうることができる形質転換体および前記微生物中のプラ スミドベクター上に存在する遺伝子を発現させることによってうることができる 産物に関する。 本発明は詳しくは、既存の技術水準の方法ではほとんど形質転換できないかま たはほとんどトランスフェクトできない微生物に核酸を導入する方法に関する。 これらの微生物はしばしば、「リカルシトラント(recalcitrant)」と呼ばれて いる(以後同様に称する)。ある種の乳酸菌類、とくにある種のラクトバチルス (Lactobacillus)属の種およびビフィドバクテリウム属の種の細菌はリカルシ トラントと呼ばれている。本発明は具体的には、これら微生物に核酸を導入する 方法およびその方法によってうることができる微生物に関する。 さらに本発明は前記微生物の用途に関する。 発明の背景 ビフィド菌(Bifidobacteria)は、正常で健康な成人の腸管細菌叢の1/4を 占めている(エイチ エム モドラー(H.M.Modler)、アール シー マッケラー (R.C.McKeller)およびエム、ヤグチ(M.Yaguchi)、カン・インスト・フード・サ イ・テクノル・ジェイ(Can.Inst.Food Sci.Technol.J.)、23(1)、29〜41頁(1990 ))。これらの細菌は、その宿主に対して有益な特性を有していると考えられて いる。したがって、ヨーグルトおよびほかの発酵乳製品を製造するのに用いる接 種菌培養物(starter culture)としてビフィド菌を使用すると、健康促進に役 立ちうる。ビフィドバクテリウム属およびラクトバチルス属の細菌は長年にわた って乳酸菌(LAB)群の純種のメンバー(genuine member)として認識されて いた。ごく最近の見解によって、この2つの属の細菌は2つの異なる科に分類さ れている。LABは、グラム陽性で、嫌気性、微好気性であり、カタラーゼ陰性 の桿菌または球菌(ラクトコッカス(Lactococcus)属)であり、ラクトバチルス 属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ストレプトコッ カス(Streptococcus)属、リューコノストク(Leuconostoc)属、エンテロコッ カス(Enterococcus)属およびカルノバクテリウム(Carnobacteriun)属の細菌 が含まれる。最も重要なことであるが、これらの細菌はすべて、エネルギーを生 じる糖類の発酵に由来する重要な最終産物として乳酸を産生する。ある種のビフ ィドバクテリウム属およびラ クトバチルス属の種の細菌は、ヒトの健康を促進する性質を有しているだけでな く、経済的に重要であることは明らかである。なぜならば、これらの細菌は、飼 料製品および食料製品、とくに乳製品を製造するのに用いる接種菌培養物として 広く用いられているからである。 これら微生物を実際に使用しうる可能性をより完全に利用できるようにするに は、細胞代謝、遺伝子発現、タンパク質分泌などのような基本的な生物学的現象 について詳細な知識が必要である。また組換えDNA法の効用によって、従来の 「突然変異および選択」法を用いて可能であったよりも直接的でかつ迅速な方法 で菌株改良プログラムを実施することができる。 本発明は、微生物、とくに細菌の「リカルシトラント株」の有効かつ再現性の ある遺伝子形質転換を行なう系の開発に関する。リカルシトラント細菌は、本明 細書では、当業者が用いている通常の形質転換プロトコルのいずれによっても形 質転換できないか、また形質転換することが非常に困難な細菌株と定義する。通 常用いられる形質転換法としては、細菌中へのDNAの導入を、i)細菌を形質 転換できるようにしたのちに行なう、ii)細菌のプロトプラストを調製したのち に行なう、またはiii)各種のエレクトロポレーション法で行なう方法がある。 本発明は詳しくは、LABの特定の属の細菌、たとえばビフィドバクテリウム 属の細菌またはLAB属の特定の株の細菌などの形質転換法に関する。多くのラ クトバチルス属の種の細菌のばあい、有用な形質転換法を利用できる。しかしい くつかのラクトバチルス属の菌株(た とえばラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチ ルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(L actobacillus helveticus)、ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus am ylovorus)などの特定の菌株)は、通常に使用されているいずれの方法でも形質 転換できないか、または形質転換がきわめて困難である。本発明はこれらの種の 細菌の問題点を解決するものである。 本発明は、ビフィドバクテリウム属のリカルシトラント細菌の新規なエレクト ロポレーション法を提供するものである。しかしこの新規な方法は、原則として 、前記の通常用いられているいずれの形質転換法でも形質転換できないいずれの 細菌株にも使用できる。 従来技術の説明 ビフィド菌は、バチルス・ビフィズス(Bacillus bifidus)としてティッシャ ー(Tissier)が1900年に最初に報告した(ティッシャー、エイチ、パリ大 学論文(Thesis University of Paris)(1900))。1924年に、オーラ−ジェン セン(Orla-Jensen)がビフィドバクテリウム属の細菌が別個の分類群として存 在することを確認し、この名称を採用することを提案した(オーラ−ジェンセン 、エス(Orla-Jensen,S.)、ライト(Lait)、、468〜474頁(1924))。このタイプ の細菌の分類については長年にわたっていちじるしく混乱していたが、現在はビ フィド菌はビフィドバクテリウム属に分類すべきであると分類学者間で一般に合 意されており、この属は現在アクチノマイセタセアエ(Actinomycetaceae)の科 に含まれている。 ビフィド菌は、グラム陽性で、厳密に嫌気性であり、かつカタラーゼ陰性で、 発酵性の桿菌であり、しばしばY字形またはV字形である。伝統的に、ビフィド 菌はLABのメンバーとみなされているが、この分類は一致して受入れられてい るわけではない。この報告では、本発明者らはビフィド菌をLAB群のメンバー として扱う。ビフィド菌は、その主な最終産物として酢酸および乳酸(3:2) を産生する。DNA−DNAハイブリダイゼーションの測定結果および糖発酵の パターンにもとづいて、25の種を、現在の分類のビフィドバクテリウム属に分 類している。ビフィド菌のGC含量は高く、55〜64%であり(スネアス、エ イチ ピー(Sneath,H.P.)編集、バージェイズ・マニュアル・オブ・システマチ ック・バクテリオロジー(Bergey′s Manual of Systematic Bacteriology)、 、1418〜1434頁(1986)中のスカルドビ、ブイ(Scardovi,V.)の報告)、このこと は、ゲノムのGC含量が34〜50%の範囲で変動するLABのほかのメンバー 、たとえばラクトバチルス、ラクトコッカス、ストレプトコッカス、ペディオコ ッカス、リューコノストク、カルノバクテリウムおよびエンテロコッカスにみら れることとは対照的である。 ヒトの幼児および成人の胃腸管内にビフィド菌が存在していることは、細菌学 者と栄養学者の関心を大きく刺激してきた。動物とヒトの腸管内ではビフィド菌 が多種類の細菌と共存し、これらの菌は大部分が偏性嫌気性細菌である。ビフィ ド菌はヒトと動物の下部小腸内で最も量が多い種である。遠位回腸には、内容物 1ml当たり 105〜107個の微生物が存在している(ゴルバッハ、エス エル(Gorbach,S.L .)ら、ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)、53、856〜867頁(1967)、ド レイサー、ビー エス(Drasar,B.S.)ら、ガストロエンテロロジー、56、71〜79 頁(1969))。ヒトの大腸でもビフィド菌はラクトバチルス菌と異なり、優勢であ り、1g内容物当たり1010個またはそれ以上の濃度で存在し、腸内の合計細菌 叢の5〜10%を占めている(ビー ジェイ ビー ウッド(B.J.B.Wood)編集、 ザ・ラクティック・アシッド・バクテリア(The Lactic Acid Bacteria)、ザ・ラ クティック・アシッド・バクテリア・イン・ヘルス・アンド・ディジーズ(The L actic Acid Bacteria in Health and Disease)、69〜114頁、エルシヴィア・ア プライド・サイエンス(Elsevier Applied Science)社中のミツオカ、ティー(Mit suoka,T.)(1992)の報告)。 幼児と成人の糞便中およびヒトの膣中のビフィド菌の分布の研究結果は、特定 の生息場所に特定の種が適応していることを示している。ビー・ビフィダム(B. bifidum)およびビー・ロングム(B.longum)がこれら3つの生息場所で優勢な 種であるが、そのほかのビフィド菌の種は、前記生息場所の1ケ所または2ケ所 にしか存在しない(ビアヴァティ、ビー(Biavati,B.)ら、マイクロバイオロジカ (Microbiologica)、、341〜345頁(1984)、ビアヴァティ、ビー、マイクロバイ オロジカ、、39〜45頁(1986)、クロシアニ、エフ(Crociani,F.)ら、ツェント ラルブル・バクテリオル・パラシテンクト・インフェクションスクル・ヒグ・ア ブトル・オリグ・ライエ A 223(Zentralbl.Bakteriol.Parasitenkd.Infek ti onskr.Hyg.Abtl Orig.Reihe A 223)、298〜302頁(1973))。種特異性も観察され た。ビー・マグナム(B.magnum)およびビー・クニクリ(B.cuniculi)はウサギ の糞便中にのみ見出されたが、ビー・デンティウム(B.dentium)は一貫してヒ トのむし歯にみられる。 全年齢のヒトのおよび動物のビフィド菌の菌叢と食物の関係は広範囲の研究課 題である(総説については、ベッコロヴァニー、エイ(Bezkorovainy,A.)とミラ ー−キャッチポール、アール(Miller-Catchpole,R.)(1989)、シーアールシー・ プレス社(CRC Press Inc.)、フロリダ州ボカ・ラトンを参照)。田舎に住んでい る健康な日本人と都会に住んでいる健康なカナダ人の糞便菌叢を比較したところ 、日本の食物を食べている個体の菌叢は、西洋の食物を食べている人々にみられ るよりも多数のビフィド菌を含有していることが見出された。しかし、ほかの研 究者達は、腸菌叢の組成に対する食物の効果はないと報告しており、ヒトのビフ ィド菌の菌叢に対する食物の組成の効果については一般的な合意は存在していな い。 ビフィド菌の細胞壁の構造および組成にはかなりの種類があることが報告され ている。各種のペプチドグリカン層が、ビフィドバクテリウム属の細菌に見出さ れた(ロイヤー、イー(Lauer,E.)およびカンドラー、オー(Kandler,O.)、システ ム・アプル・マイクロバイオル(System.Appl.Microbiol.)、、42〜64頁(1983) )。その上、ビフィド菌の細胞壁はかなりの量の多糖類、リポテイコ酸類および タンパク質類を含有している(フィッシャー、ダブリュー(Fischer,W.)、ヨーロ ピアン・ジャー ナル・オブ・バイオケミストリー(Eur.J.Biochem.)、165、647〜652頁(1987)、 オプ・デン・キャンプ、エイチ ジェイ エム(Op den Camp,H.J.M.)ら、ビオキ ム・ビオフィス・アクタ(Biochim.Biophys.Acta)、795、301〜313頁(1984))。 厚い(多層)細胞壁が存在していると一般に外因性DNA分子の取込みに対する 障壁が形成される。本発明は、ビフィド菌の細胞壁を弱くしてその細菌を核酸( とくにDNA)に対して透過性にして、細菌を形質転換する前に、DNAを導入 するため通常の方法で用いられる化学物質および/または酵素を除く必要をなく す方法に関する。 多くの内因性因子および外因性因子、たとえば情動性ストレス、抗生物質の投 与および蠕動傷害は、腸の生態の平衡不調をもたらし、これらはとりわけビフィ ド菌の減少またはさらに消失によって明らかとなる。これらおよびほかの観察結 果は、ビフィド菌がヒト(および動物)の健康に重要であることを示唆している 。ヒトおよび動物の健康に対して可能性があるビフィド菌の有用性は、ビフィド 菌の以下の性能:i)免疫応答を刺激することによって細菌感染に対する抵抗性 に貢献する性能(カロウド、エイチ(Kaloud,H.)およびストッグマン、ダブリュ ー(Stogmann,W.)、アーチブズ・キンダーハイルク(Archieves Kinderheilk)、17 7 、29〜35頁(1969));ii)抗生物質によっておこる下痢を予防し治療する性能 (マイヤー、ジェイ ビー(Mayer,J.B.)、ムスクル・キンダーハイルク(Mschr K inderheilk)、144、67〜73頁(1966)、マイヤー、ジェイ ビー、フィジカリッシ ェ・レハビリタチオン(Physikalische Rehabilitat ion)、10、16〜23頁(1969)、タスバク、ビー(Tasvac,B.)、アナルス・ペデアト リクス(Annals Pediatrics)、11、291〜307頁(1964));iii)便秘、老人病およ び癌を予防する性能;iv)乳酸および酢酸を産生することによって腸の運動を刺 激する性能;ならびにv)ビタミン類、とくにB群のビタミン類を産生する性能 (ビー ジェイ ビー ウッド編集、ザ・ラクティック・アシッド・バクテリア ;ザ・ラクテッィク・アシッド・バクテリア・イン・ヘルス・アンド・ディジー ズ、69〜114頁、エルシヴィア・アプライド・サイエンス社中のミツオカ、ティ ーの報告(1992))から生じると考えられる。 オリゴ糖類、とくにフルクト−オリゴ糖類を経口投与すると、ビフィド菌の腸 内での増殖を刺激することが報告されている。この増殖刺激に伴って、高脂血症 がみられる老人の血圧低下に加えて糞便のpH、β−グルクロニダーゼとアゾレ ダクターゼの活性が低下し、インドールが減少し、血清のコレステロールとトリ グリセリドの濃度が低下する(タナカ、アール(Tanaka,R.)ら、ビフィドバクテ リア・マイクロフローラ(Bifidobacteria Microflora)、、17〜24頁(1983)) 。ホンマ(Homma)は、ビフィド菌が存在するとヒトの活性化されたT細胞のL DL受容体の新たな生成(neo-formation)を抑制すると報告している(ホンマ 、エヌ、ビフィドバクテリア・マイクロフローラ、、35〜43頁(1988))。ラッ トにおいて、ビフィドバクテリウムは、HMG CoAレダクターゼの活性に作 用することによってコレステロールの血清中濃度を低下させた。 ビフィド菌は健康促進特性をもっていると広く信じら れているので、ビフィド菌の増殖および代謝を刺激する「因子」を同定し利用す るための研究が実施されている。これらの研究(エイ バロウズ(A.Balows)ら編 集、ザ・プロカリオテエス(The prokaryotes)、816〜833頁中のビアバティ、ビ ーら(1991)の論文の編集物参照)によって、いくつもの成長促進化合物、たとえ ばラクツロース、フルクトース−オリゴ糖類、N−アセチルグルコサミン含有糖 類(ビフィダス因子1)、および酵素で加水分解されたタンパク質類(ビフィダ ス因子2)が発見されている。各種組合わせのビフィダス因子を添加した調整牛 乳が、とくに哺乳びん栄養補給幼児用にビフィド菌の増殖を促進する手段として 市販されている。 西洋およびアジアの国々において、ビフィドバクテリウムを添加した食品が成 人用に市販されている。バイオガード・カンパニー(BIOGARDE Company)(ミュ ンヘン、ドイツ連邦共和国)がビフィド菌を添加した培養牛乳(cultured milk) を発売して以来、異なる諸国のほかの多くの会社が、ビフィド菌を補助物として 添加した食品を生産している。またビフィド菌は、治療を目的として医薬品会社 が市販しており、たとえば、哺乳びん栄養補給幼児の消化不良、全腸炎、便秘お よび抗生物質で治療したあとの腸内菌叢の均衡障害の治療、ならびに腸蠕動の促 進のために用いられている(ラシク、ジェイ リ(Rasic J.Li.)およびクルマン 、ジェイ エイ(Kurmann,J.A.)、ビフィドバクテリア・アンド・ゼア・ロウル(B ifidobacteria and their role)、バークホイザー・フェ ビフィド菌がヒトの幼児と成人および動物の子供と親 の健康を促進することができることを示唆するデータが豊富にあるにもかかわら ず、その多くの主張に対する確実な科学的基礎が欠けている。したがって、ビフ ィド菌の食物における役割を含めて、ビフィド菌の治療効果を明確にする必要が ある。このような研究の結果によって、利用可能なビフィド菌株が一層良好に利 用され、ビフィド菌の新規な用途とビフィド菌株の特性の指示された改良がもた らされると期待される。本発明はとりわけ、ビフィドバクテリウムおよびほかの 微生物の特性を、組換えDNA法を用いて遺伝子工学によって改良できる系の開 発に関する。 細菌類の遺伝子修飾は、過去数十年にわたる広範囲の研究課題であった。初期 の大部分の研究は、結腸細菌のエシェリキア・コリ(Escherichia coli)および 土壌細菌のバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)に集中した。しかしご く最近は、ほかの細菌の種の遺伝子工学技術を行なえる方法が開発されてきた。 現在まで、50種以上の細菌の種の遺伝子工学技術を行なう系が開発されている 。 外来DNAは、原則として、エピソームまたはプラスミドと称される自律的に 複製する要素に、染色体の一部としてまたは染色体外因子として導入して安定に 保持することができる。対象の遺伝子はインビボで接合によって細胞中に導入す ることができ、この接合プロセスは、2種の細菌を接合し同時に一方のタイプの 細菌(供与菌)からもう一方の細菌(受容菌)にDNAを移行させることからな るプロセスである。外来DNAをインビボで導入する第二の方法は、形質導入( transduction)と 呼ばれる方法で、遺伝情報を受容細菌に移行させることができるバクテリオファ ージを用いることにもとづいた方法である。これらの方法は、従来、限られた数 の細菌種に広く用いられてきたが、いまや大きくインビトロでの組換えDNA法 に取ってかわられている。 組換えDNA法による遺伝子導入法はすべて、所定の特質についての遺伝情報 を保有するDNAフラグメントを微生物(たとえば細菌)中に導入することにも とづいており、そしてそのDNAフラグメントは、ベクターと呼ばれるキャリア DNA分子に連結される。多くのばあい、ベクターは、円形分子であり、選択さ れた微生物中で多コピープラスミドとして染色体外で複製することができる。自 律的に複製する多コピーベクターに対象の遺伝子を導入することによって、遺伝 子のコピー数が増加して、前記遺伝子から合成される産物がいちじるしく増加す るようになる。 細菌によるDNA分子の取込みは、自然条件(環境)下または実験室条件(た とえば振盪フラスコまたは発酵槽)下ではきわめて低い頻度でしかおこらないの で、実施するばあいには、外因性DNAの取込みと安定な保持が改善されるよう 方法が工夫されている。 初期には、細菌に外来DNAを取込ませるプロトコルはすべて、プロトプラス ト化された細菌またはいわゆるコンピテント細菌を使用することにもとづいてい た。コンピテント細胞の細菌を使用することは非常に少数の細菌の種に制限され 、LABには利用できない(マルセニア、エイ(Mercenier,A.)およびチャッシー 、ビー エム(Chassy,B.M.)、バイオキミエ(Biochimie)、70、503〜5 17頁(1988))。プロトプラスト化(またはスフェロプラスト化)された細菌は外 側細胞壁を(部分的に)、多くのばあい特定の酵素で、ときにはキレート剤の存 在下で処理することによって除いた細菌である。そのプロトプラスト化またはス フェロプラスト化された細菌は、DNAを導入したのち、液体培地もしくは凝固 させた寒天含有培地で増殖させて寒天平板上にコロニーを形成できるように再生 しなければならない。プロトプラストの生成と細菌の再生のプロセスは、再現す ることが困難なばあいが多くかつ時間がかかる。また本発明は、酵素および/ま たは化学物質で処理することによって細菌の細胞壁を除き(部分的に)、つぎに プロトプラスト化された細胞を再生する必要のない、DNAを導入する方法に関 する。 LABに対する遺伝子導入系の開発の飛躍的発展はチャッシーとフリッキンガ ー(Flickinger)が実現し(チャッシー、ビー エムおよびフリッキンガー、ジ ェイエル(Flickinger,J.L.)、エフイーエムエス・マイクロバイオル・レット(FE MS Microbiol.Lett.)、44、173〜177頁(1987))、彼らはラクトバチルス・カゼ イ(Lactobacillus casei)を形質転換するのにエレクトロポレーション法を用 いて成功したことを示した。エレクトロポレーション法は、細胞浮遊液中に高電 圧の放電を行なって細胞膜に一過性の「孔」を生成させて、その孔を通じてDN Aを細菌内に入れることができる方法である。エレクトロポレーションを用いて プラスミドDNAでLAB菌株を形質転換することは以下の菌株について報告さ れている。すなわちラクトコッカス・ラクティス(Lact ococcus lactis)(ジェイ ジェイ フェレッティ(J.J.Ferretti)およびアール シー クルティス(R.C.Curtiss)編集、ストレプトコッカル・ジェネティック ス(Streptococcal Genetics)、229〜233頁、ワシントン デー シー、エイ エ ス エム パブリケーションズ(A.S.M.Publications)のなかのハーランダー、エ ス(Harlander,S.)(1987)の報告);エル・カゼイ(チャッシー、ビー エムおよ びフリッキンガー、ジェイ エル、エフイーエムエス・マイクロバイオル・レッ ト、44、173〜177頁(1987));エル・プランタルム(L.plantarum)およびエル ・ペントサス(L.pentosus)(ポスノ、エム(Posno,M.)ら、アプル・エンバイロ ン・マイクロバイオル(Appl.Environm.Microbiol.)、57、1822〜1828頁(1991) );リューコノストク・パラメセンテロイデス(Leuconostoc Paramesenteroide s)(デービッド、エス(David,S.)ら、アプル・エンバイロン・マイクロバイオ ル、55、1483〜1489頁(1989));ならびにエスティー・サーモフィラス(St.the rmophilus)(マルセニア、エイ、エフイーエムエス・マイクロバイオル・レヴ( FEMS Microbiol Rev.)、87、61〜78頁(1990))について報告されている。なお総 説については、チャッシー、ビー エムら、トレンズ・バイオテクン(Trends B iotechn.)、、303〜309頁(1987);デー シー チャン(D.C.Chang)、ビー エム チャッシー、ジェイ エイ サンダーズ(J.A.Saunders)およびエイ イー ソワーズ(A.E.Sowers)編集、ガイド・トゥー・エレクトロポレーション・アン ド・エレクトロフュージョン(Guide to Electroporation and Electrofusion)、 265〜290頁、アカデミック ・プレス(Academic Press)のなかのトレヴァーズ、ジェイ ティー(Trevors,J.T .)らの報告(1992)を参照のこと。 グラム陰性細菌の種の大部分はグラム陽性細菌の多数の菌株と同様に、エレク トロポレーションで形質転換するのに成功している。エレクトロポレーション法 は、乳酸菌用に開発するのに何年もかかった、単調で時間がかかり、かつ信頼で きないことが多いプロトプラスト形質転換法に取って代わっている(コンドー、 ジェイ ケイ(Kondo,J.K.)およびマッケイ、エル エル(McKay,L.L.)、アプル ・エンバイロン・マイクロバイオル、43、1213〜1215頁(1982);マルセニア、エ イおよびチャッシー、ビー エム、バイオキミエ、70、503〜517頁(1988))。し かしいくつかの因子がエレクトロポレーションの実験結果に影響しうる。緻密な グラム陽性細胞壁は、外因性核酸がある種の菌株中に入る際の障壁になりうる。 この可能性は、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の形 質転換効率を、細胞壁合成阻害剤のペニシリンGを増殖培地中に低濃度で添加す ることによって200倍よりも高くすることができるという観察結果によって示 唆されている(パーク、エス エフ(Park,S.F.)およびスチュワート、ジー エ ス エイ ビー(Stewart,G.S.A.B.)、ジーン(Gene)、94、129〜132頁(1990))。 また細胞壁の生合成に影響する試薬、グリシンを添加することによってエレクト ロポレーションの効率を増大することができる(ダニー、ジー エイチ(Dunny,G .H.)ら、アプル・エンバイロン・マイクロバイオル、57、1194〜1201頁(1991)) 。その上に、ラクトコ ッシ(lactococci)をエレクトロポレーションに付す前に細胞壁分解酵素(mural ytic enzyme)でその細胞を処理すると、形質転換頻度を高めることができること が観察されている(ポウェル、アイ ビー(Powell,I.B.)ら、アプル・エンバイ ロン・マイクロバイオル、54、655〜660頁(1988))。また、形質転換ベクターと 常在プラスミドとが不和合性であると、形質転換の頻度が低下することがある。 このことは異なるラクトバチルス属の種について証明されている(ポスノ、エム ら、アプル・エンバイロン・マイクロバイオル、57、1822〜1828頁(1991))。形 質転換に対しておこりうるそのほかの障壁としては、DNAの制限/修飾の系、 ならびに非特異的ヌクレアーゼ、発現されない選択マーカー遺伝子、発現されな い複製必須機能および宿主必須機能に対する干渉の系が受容微生物中に存在して いることが含まれる。 近年、前記の方法は、以下のi)〜vii)の効果を系統的に研究することによ って改良された。すなわちi)細菌の増殖条件;ii)エレクトロポレーション溶 液の組成;iii)たとえばフィールド強度および抵抗などのパルス条件;iv)形 質転換に使用するDNAの大きさ、濃度および純度;v)エレクトロポレーショ ンの装置;vi)形質転換体を選択するのに使用する選択マーカーと選択条件の選 択;ならびにvii)プラスミドベクターの選択が研究された。一般に、特定の菌 株を効率的に形質転換するための条件は、各菌株が特異的な「形質転換特性」を 示すように最適化しなければならない。密接な類縁関係の菌株間でさえも、形質 転換の頻度に大差があることがしばしば観察されている。 先に述べたように、選択された微生物を形質転換するのに用いるプラスミドの 選択は非常に重要である。 本発明は、適切なプラスミドに対するすぐれた選択基準そしてさらにかような 形質転換に非常に適したプラスミドを提供するものである。 プラスミドはビフィド菌中に存在しているようである。プラスミドは、ヒトの 腸内で優勢な種のビー・ロングム(B.longum)菌株の70%に、動物中に最も普 通に存在している種のビー・グロボスム(B.globosum)(菌株の22%)中に、 ならびにアジアミツバチの後腸中に独占的にみられる種のビー・インディカム( B.indicum)の67%にみられる。興味深いことであるが、ビー・ロングムに最 も密接な類縁種であるビー・インファンティス(B.infantis)菌株は、これら2 種の種が同じ試料から単離されたばあいでさえプラスミドを保持しない。 プラスミド由来のベクターは、外因性DNAをビフィドバクテリウム中に導入 するのに使用されるばあい、そのプラスミドはビフィド菌中で複製できなければ ならない。この目的のため、原則として3種のプラスミドが使用できる。 i)ビフィドバクテリウム由来のレプリコンにもとづいたベクター。このベク ターは、ベクター構築時にたとえば選択マーカーのようなDNA配列を導入する ことによって、必須機能が破壊されないならば、宿主微生物内で複製するようで ある。 ビフィド菌(およびほかのLAB類たとえばラクトバチルス・デルブリュッキ イ亜種ブルガリカス(Lactobaci llus delbrueckii subsp.bulgaricus))は、食品の発酵および/または保存の ためヒトと動物の食物にまたは食品添加物として安全に使用できるGRAS(Ge nerally Recognized As Safe)生物であると考えられている。遺伝子加工がなさ れた微生物をこのような目的に用いたいばあい、規制当局は該細菌を修飾するの に使用した遺伝物質について充分に説明するよう要求する。また、修飾微生物の 認可は、宿主細菌中に既に存在しているか、または発生的に密接な類縁関係にあ るソース由来であるかおよび/またはほかのGRAS生物由来の遺伝子およびほ かのDNA配列を利用することによって高まると考えられる。 ii)発生的に密接な類縁関係にある細菌由来のプラスミド。多くのプラスミド は、一つの微生物からもう一つの微生物へ同等に導入することができ、プラスミ ドの複製に関与する要素が1より多くの微生物中で機能しうることを示している (プロジャン、エス(Proian,S.)およびノヴィック、アール(Novick,R.)、プラス ミド(Plasmid)、19、203〜221頁(1988);ポウウェルズ、ピー エイチ(Pouwels, P.H.)ら、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Mol.Gen.Gene t.)、242、614〜622頁(1993))。ビフィド菌はグラム陽性細菌のサブクラスに属 し、そのゲノムはGC含量が非常に高い。この群のほかの属としては、マイコバ クテリウム(Mycobacterium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)および ストレプトマイセス(Streptomyces)がある。マイコバクテリウム・フォーチュ イタム(Mycobacterium fortuitum)由来のプラスミドpAL5000(ロイツ ァ ー、アール(Rauzier,R.)ら、ジーン、71、315〜321頁(1988))およびコリネバク テリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来のプラスミドpX Z10142(X72691エンブル・ジェン・バンク(EMBL-Gen Bank))のコンピュ ータ利用解析の結果は、これらプラスミド間にはかなりの類似性があることを示 している。とくに複製に関与している機能は非常によく類似している。これらの 試験結果は、これらのプラスミドがビフィドバクテリウムを含む類縁微生物中で 複製できることを示唆している。 iii)大部分がグラム陽性菌由来で、いわゆるローリングサークル型複製(R CR)機構で複製する多数のプラスミドがある。RCR型プラスミドの代表例は 、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のプラスミドの pC194とpE194および誘導体(総説については、グルス、エス(Gruss,S .)およびエーリッヒ、エス デー(Ehrlich,S.D.)、マイクロバイオル・レヴ、53 、231〜241頁(1989)参照)ならびにラクトバチルスのプラスミドpLP825と pLPE323ならびに誘導体(総説については、ポウウェルズ、ピーエイチお よびリーア、アール ジェイ(Leer,R.J.)、アントニー・ヴァン・リーヴェンホ ーク(Antonie van Leeuwenhoek)、64、85〜107頁(1993)参照)である。これらの プラスミドのうちいくつかは、広範囲の種類のグラム陽性菌中およびときにはグ ラム陰性菌中でさえ複製することができる(デル−ソラー、ジー(del-Solar,G.) ら、モル・マイクロバイオル(Mol.Microbiol.)、、789〜796頁(1993))。また RCR型のプラスミドはストレプ トマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)内で複製することが見出さ れており(グルス、エスおよびエーリッヒ、エス デー、マイクロバイオル・レ ヴ、53、231〜241頁(1989))、この微生物はビフィドバクテリウムと同じ細菌群 に属している。本発明は、外因性DNAをビフィドバクテリウム中に導入するた めの全3種のプラスミド由来ベクターの使用に関する。 同じ機構、たとえばRCR型機構によって複製するプラスミドは通常、それら の複製要素が発生的に類縁関係にあるばあい、不和合性であることが見出される (ノヴィック、アール、マイクロバイオル・レヴ、51、381〜395頁)。換言すれ ば、同じ機構で複製する2種のプラスミドは、選択の力を用いてそれらプラスミ ドを保持しない限り、同じ細菌中に共存できない。ビフィド菌のDNAまたはプ ラスミドDNAの複製モードについては現在なにもわかっていないので、形質転 換プラスミドが内因性プラスミドと和合性であるかどうかについて予測すること は難しい。本発明には、内因性プラスミドをまったく保有しないビフィド菌株を 用いることによって、不和合性でおこりうる障害を回避する方法からなる。 ラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)に対して開発され、 (特定の菌株に対して手順をさらに最適化することなしに)ほかのラクトバチル ス菌株にも適用可能なことが明らかである代表的なエレクトロポレーションのプ ロトコルでは以下のステップが行なわれる。細菌の一晩培養物を、1%グリシン または0.2M D,L−トレオニンを含有するMRS液体培地で希釈し(50 倍)、さらに振盪することなく37℃でイン キュベートする。細胞を中間対数期(mid-log phase)で収獲し、氷上で冷却し 、ついで5mMリン酸ナトリウム(pH7.4)−1mM MgCl2で2度洗浄 する。細胞を、もとの容積の1/100の氷冷エレクトロポレーション緩衝液( 0.9Mスクロース、15mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)および3 mM MgCl2)中に、約1010CFU/ml密度で再懸濁する。プラスミドD NA(5μg)を、エレクトロポレーション装置内で前記細胞懸濁液50μlと 混合してついで電気パルスをかける。電気パルスをかけたのち、その細胞懸濁液 をMRS液体培地450μlで直接希釈し、つぎに37℃で1.5時間インキュ ベートして抗生物質耐性マーカーを発現させる。菌株によって、形質転換細菌は 、適当な濃度の抗生物質を含有するMRS寒天平板上で直接選択できるか、また はまず補助阻害濃度(sub-inhibitory concentration)(たとえば0.5μg/ ml)の抗生物質を含有する寒天平板上でインキュベートしなければならずその のち、選択濃度(たとえば5.0μg/ml)の抗生物質でレプリカ平板法を行 なうことによって選択することができる。形質転換体は一般に、37℃で24〜 48時間、嫌気培養を行なったのち、目視可能になる。 エレクトロポレーション法は広く利用できることが判明し、これを使用して、 いくつものLAB属、たとえばラクトコカッス、ペディオコッカス、ラクトバチ ルスおよびエントロコッカス属由来の細菌株を形質転換することができるが、ラ クトバチルス属の菌株のいくつか、およびビフィドバクテリウム属の全菌株が、 有効でかつ再 現性のある形質転換を受けつけないことが今まで明らかになっている。このこと は、とくに乳製品の発酵に用いられるいくつかのラクトバチルス菌株およびヒト または動物の胃腸管由来のいくつかのラクトバチルス菌株に当てはまる。各種の 有名研究所で広範囲の研究が行なわれているにもかかわらず、ラクトバチルス・ デルブリュッキイ亜種ブルガリカスまたはラクトバチルス・デルブリュッキイ亜 種ラクティスを形質転換しようとする試みはすべて不成功に終っている。エル・ デルブリュッキイ亜種ブルガリカスの形質転換が記載された一報告では、エル・ デルブリュッキイ亜種ブルガリカス由来のベクターと制限/修飾が不完全な変異 菌株が使用された(ササキ、ティー(Sasaki,T.)ら、エフイーエムエス・マイク ロバイオル・レヴ、8頁(1993))。今まで試験されたラクトバチルス・ヘルベテ ィカス菌株全体のうちごく少数の菌株(たとえばCNRZ 32)がエレクトロ ポレーション法で有効でかつ再現可能な形質転換をできることが報告されている (たとえばボーウミク、ティー(Bhowmik,T.)およびスチーレ、ジェイ(Steele,J. )、ジャーナル・オブ・ジェネラル・マイクロバイオロジー(J.Gen.Microbiol.) 、139、1433〜1439頁(1993)参照)。 過去数年間にわたって、いくつもの産業界および大学の研究所で、ビフィド菌 の形質転換法を開発するためかなりの量の研究が行なわれている。しかし、まだ 顕著な成功はない。最近の特許出願(欧州特許出願公開第0319690号明細 書)には、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)菌株1 08AのプラスミドDNAによる形質転換が特許請求されている。こ れらの研究に用いられたプラスミドのpAMβ1はエンテロコッカス・フェカー リス(Enterococcus faecalis)由来であり、エリスロマイシン耐性遺伝子をも っている。欧州特許出願公開第0319690号明細書に記載の一実験で、形質 転換にpAMβ1を用いたばあい、3日間インキュベートしたのち11個のエリ スロマイシン耐性(EryR)コロニーがえられたが、DNAを添加しなかった ばあい1個のEryRコロニーが見出された。同じ実験で、7日間インキュベー ト後23個のEryRコロニーが観察されたが、DNAを添加しなかったばあい 、3個のEryRコロニーが見出された。同じ報告に記載されている第二の実験 では、さらに少ない数のEryR形質転換体が見出された。えられたこれらEr yRコロニーのどれにもpAMβ1の存在が立証されていないので、ビフィドバ クテリウムが真に遺伝的形質転換がなされたという証拠はこの報告にはまったく 提示されていない。そのうえ、EryRコロニーがえられた頻度は約3〜6CF U/μg pAMβB1にすぎなかった。このように低い頻度の形質転換は、お こったならば、結合したDNAまたは非自律的に複製するDNAを有するビフィ ド菌の形質転換を妨害するであろう。 発明の要約 本発明の目的は、現在知られているいずれの方法によっても形質転換できない かまたは非常に非効率的におよび/または非再現的にしか形質転換できない微生 物、詳しくは乳酸菌類、さらに詳しくはビフィドバクテリウム属およびラクトバ チルス属由来の細菌の新規な形質転換 法を提供することである。 本発明の別の目的は、各種のビフィドバクテリウム属の種、たとえばビフィド バクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウ ム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)およびビフィドバクテリウム・ロ ングム;ならびにラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・ヘルベティ カスおよびラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)群 AおよびB由来の種(すなわちエル・アシドフィルス(L.acidophilus)、エル・ クリスパタス(L.crispatus)、エル・アミロボルス(L.amlylovorus)、エル・ガリ ナルム(L.galinarum)、エル・ガセリ(L.gasseri)およびエル・ジョンソニー(L.J honsonii))の新規で有用な形質転換体を提供することである。 本発明の別の目的は、同じ種または密接な類縁関係の種由来または異なる宿主 由来の再導入された加工遺伝子を含有する前記種の形質転換体であって、その遺 伝子が多コピープラスミドベクターに存在している形質転換体を提供することで ある。 本発明の別の目的は、本発明によって製造された形質転換微生物、さらに詳し くはビフィドバクテリウム属またはラクトバチルス属の形質転換細菌であって、 それら形質転換細菌を、未形質転換微生物から容易に区別できる容易に選択可能 な表現型を含有する形質転換細菌を提供することである。そのうえに、前記形質 転換細菌は、細菌に修飾特性を付与する外来DNAを含有していてもよい。 本発明の方法において、ビフィドバクテリウム属の種 は選択可能なマーカーを含有するプラスミド由来のベクターで形質転換され、前 記ベクターは前記微生物内で自律的に複製することができるが、形質転換がなさ れる前には前記微生物中に見られない。 またこのベクターは、外来DNAの発現を修飾するか高めるほかの外来DNA 配列を含有していてもよい。 本発明は、核酸を微生物に導入する方法であって、微生物の制限された自己消 化を誘発して微生物の細胞壁の核酸に対する透過性を改善し、その微生物を前記 核酸と直接的にもしくは間接的に接触させて該微生物を形質転換させ、ついでそ のえられた形質転換体を培養することからなる方法を提供するものである。詳し くは、本発明は、少なくとも1つの核酸を微生物に導入する方法であって、 a)微生物をいわゆるエレクトロポレーション緩衝液中に再懸濁させることによ って、核酸に対する不透過性が低下するように微生物の細胞壁を処理し; b)その微生物を、導入される核酸と間接的にまたは直接的に接触させ;つぎに c)えられた形質転換体を培養するステップからなり、ステップa)が微生物の 制限された自己消化を誘発することによって実施される方法を提供するものであ る。 本発明はさらに、微生物に対して高電圧の放電を行なうことからなる前記定義 の方法を提供するものである。詳しくは本発明は、少なくとも1つの核酸を微生 物に導入する方法であって、 a)微生物をいわゆるエレクトロポレーション緩衝液中に再懸濁させることによ って、核酸に対する不透過性 が低下するように微生物の細胞壁を処理し; b)前記微生物に対し高電圧の放電を行ない; c)前記微生物を、導入される核酸と間接的にまたは直接的に接触させ、つぎに d)えられた形質転換体を培養するステップからなり、ステップa)が微生物の 制限された自己消化を誘発することによって実施される方法を提供するものであ る。 好ましい態様で本発明は、少なくとも1つの核酸を乳酸菌に導入する方法であ って、 a)細菌の細胞壁を処理して核酸に対して一層透過性になるようにし、 b)該乳酸菌に対し高電圧の放電を行ない; c)前記細菌を、導入される核酸に接触させ、つぎに d)えられた形質転換体を培養するステップからなり、ステップa)が乳酸菌の 制限された自己消化を誘発することによって実施される方法を提供するものであ る。 前記発明によって、微生物はエレクトロポレーション緩衝液中に保持して該微 生物の制限された自己消化を誘発することが好ましい。前記エレクトロポレーシ ョン緩衝液はモル濃度が低くかつ浸透安定剤を含有していることが好ましい。好 ましい実施態様で、前記浸透安定剤は、スクロース、ソルビトール、マンニトー ル、グリセロールおよびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる。一般 に前記緩衝液の塩濃度は、10mM以下であり、好ましくは約0.1〜約2mM 、最も好ましくは約0.5〜約1mMである。前記制限された自己消化は好まし くは、pHが約4〜約8で、温度が−196℃〜37℃まで、好ましくは約0〜 37℃、一層好ましくは 約0〜10℃にて、時間が10分〜100時間、好ましくは約1〜約30時間で 実施される。 本発明の好ましい実施態様によれば微生物はリカルシトラントである。微生物 は好ましくは乳酸菌であり、とくにリカルシトラントの乳酸菌である。本発明の 方法で形質転換される細菌で最も好ましいのはビフィドバクテリウム属の種の細 菌である。 導入される核酸のCG含量は、その核酸が導入される細菌のCG含量と一致し ていることが好ましい。「導入される核酸」という用語は、受容体の細菌中に導 入され保持されるすべての核酸、すなわちベクターの核酸と挿入断片の核酸の両 方を意味する。さらに、導入される核酸の少なくとも重要な部分は、その核酸が 導入される微生物に対して発生的に類縁関係にあることが好ましく、かつ前記核 酸が微生物に改良された特性を提供する遺伝情報を保有する部分を少なくとも含 有していることが好ましい。とくにその核酸は、その微生物によって発現される タンパク質をコードする部分を少なくとも含有している。 また本発明は、本発明の前記方法のいずれか一つによってうることができる形 質転換されたリカルシトラント微生物、とくに形質転換されたリカルシトラント 乳酸菌、より好ましくは形質転換されたリカルシトラントのビフィドバクテリウ ム属およびラクトバチルス属の種の細菌を提供するものである。 また本発明には、かような形質転換されたリカルシトラント微生物の使用、と くに食料製品好ましくは乳製品の製造と配合(formulation)における使用が含 まれ る。 発明の詳細な説明 以下の実施例から明らかなように、微生物を比較的ゆるやかな自己消化に付す ことによって微生物を効率的にかつ再現可能に形質転換することができることが 明らかになった。 本発明の方法の好ましい実施態様で、ビフィドバクテリウム属の細菌はプラス ミドベクターDNAで形質転換される。形質転換ベクターが受容体宿主の細菌中 で複製できる可能性を高めるため、ビフィドバクテリウム属の細菌、より詳しく はビフィドバクテリウム・ロングム由来のプラスミドDNAを用いる。不和合性 が原因でおこることがある障害を避けるため、検出可能な内因性プラスミドをま ったく保有していないビフィドバクテリウム・アニマリスの菌株を使用する。 本発明のほかの好ましい実施態様で、エレクトロポレーション法が外来DNA を細菌中に導入するのに用いられるが、それはこの方法がほかの種類の細菌中に 導入するのに最も信頼性が高くかつ効率がよいことが分かったからである。プロ トプラスト化またはスフェロプラスト化を行なうため化学物質(たとえばペニシ リン)および/または酵素に暴露された細菌を再生させるばあいに付随しておこ ることがある障害を回避するため、限定された自己消化処理によって脆弱化され る(fragilize)細菌を用いる。このゆるやかな自己消化処理によって、プロト プラスト化ののちにしばしばみられる再現性がなく時間がかかる再生を行なう必 要がなくなるだけでなく、 そののちの処理(リゾチーム、ムタノリシンなどのプロトプラス化酵素および/ またはペニシリンのような化学物質の除去)を行なうことなくエレクトロポレー ションによって外来DNAを導入することができる。このようにして、この形質 転換法は、すぐれた再現性でかつ一層短い時間で行なうことができるようになる 。 乳酸桿菌の自己消化は、ラクトバチルス・デルブリュッキイ亜種ブルガリカス から細胞成分を迅速に単離する方法として提案されている(ササキ、ティーら、 エフイーエムエス・マイクロバイオル・レヴ、D18、(1987))。前記ササキら(1 987年)の報告に記載の方法では、細菌を、0.6Mクエン酸塩の存在下で45 ℃にて30〜150分間インキュベートする。エレクトロポレーション緩衝液中 に高濃度の塩、たとえば0.6Mクエン酸塩が存在していると、細菌のエレクト ロポレーションが妨害されるので、本発明に用いられる前記の好ましい方法では 、浸透安定剤の存在下、1mMのような低いモル濃度の緩衝液で細菌の自己消化 を行なう。この方法によれば、DNAの試料を添加したのち、細菌をそれ以上処 理することなく、細菌を電気パルスに直接かけることができる。実施例では、浸 透安定剤として0.5Mスクロースが使われているが、当該技術分野の当業者が 通常使用しているそのほかの浸透安定剤、たとえばソルビトール、マンニトール 、PEGなども同様に使用できる。自己消化用の緩衝液として実施例に用いられ ているのは、クエン酸塩緩衝液(pH5)、クエン酸塩緩衝液(pH6)、リン 酸塩緩衝液(pH4.5)、リン酸塩緩衝液(pH6)、Hepes緩衝液(p H6)および Hepes緩衝液(pH7.4)である。しかし、4〜8のpHの範囲で緩衝す る、たとえばカコジル酸塩、TRIS、リンゴ酸塩の緩衝剤のようなほかの化合 物も同様に自己消化法に使用することができる。先に述べたように、低モル濃度 (たとえば約0.1〜2mM)で自己消化用に緩衝剤を用いることが好ましい。 たとえば、約1もしくは2mMから約500mMまで(またはさらに高い濃度 )のような高い緩衝液濃度でも「自己消化細胞」をうることができる。しかしこ のような条件下では、洗浄ステップを入れねばならない。緩衝液濃度が高いばあ い、エレクトロポレーションは、エレクトロポレーターの電極間のフィールド強 度が変化して形質転換の効率が低下するかまたはDNAの導入がおこらない。ま た緩衝液の濃度が高いと(>10mM)、エレクトロポレーションのキュベット を損傷することもある。また、高い緩衝液濃度でインキュベートしたのちにえら えた自己消化細胞を洗浄すると、これらの脆弱化した細胞を損傷して形質転換の 効率が低下することがある。 本発明の以下の好ましい実施態様で、エレクトロポレーション透過性細菌をも たらす制限された自己消化は、低温(たとえば細菌を−196℃〜37℃の温度 で貯蔵することによる)で、好ましくは4℃(たとえば1mM濃度の緩衝液に再 懸濁させた細菌を4℃の冷却器内におくことによる)で0〜25時間または細菌 株によってはさらに長時間実施する。この処理によって、細菌の生育能の知覚し うる損失も該細菌の形態の目視可能な変化もおこらない。 本発明の以下の好ましい実施態様で、ビフィドバクテリウム属の細菌はまず、 0.05%のシステインおよび0.5Mスクロースを補充したMRS液体培地( ディフコ(Difco)、デ・マン、ジェイ シー(de Man.J.C.)ら、ジェイ・アプル・ バクテリオル(J.Appl.Bacteriol.)、23、130〜135頁(1960))中で37℃にて一 晩培養する。スクロースは別個に高圧滅菌を行なったのち、高圧滅菌したMRS 液体培地に添加する。続いて、細菌をたとえば同じ培地で25倍に希釈し(20 mlの一晩培養液を500mlにする)、37℃で数時間インキュベートする。 695nmでの密度がたとえば約0.2に達するまでインキュベートしたのち、 細菌を氷上で冷却し、0〜4℃にて(2100×gで15分間)で遠心分離して 集菌し、氷冷0.5Mスクロースで2度洗浄する。その細菌を、0〜4℃にて( 15分間、2100×gで)遠心分離によって集菌したのち、細菌のペレットを 1.8mlの氷冷0.5Mスクロース中に再び懸濁する。100mMクエン酸ア ンモニウム緩衝液(pH6.0)3μlを前記細菌懸濁液300μlに添加し、 その混合物をゆるやかに回転撹拌しついで冷却器中に3時間置いた。前記方法は 好ましい方法であるが、増殖培地の組成、増殖温度、増殖条件、洗浄条件、遠心 分離条件などを変えても形質転換細菌がえられることがわかっていることを強調 しておかねばならない。形質転換の効率は、変化することがあるが、たとえば自 己消化誘発緩衝液の存在下細菌のインキュベーション期間を変えることによって 容易に最適化することができる。また自己消化を行なう温度が変わると形質転換 の効力にも影響する。 本発明のほかの特別に好ましい実施態様で、前記のようにしてえた細胞懸濁液 80μlをベクターDNA2.5μl(約1.5μg)と混合し、その混合物を ゆるやかに回転撹拌しついであらかじめ冷却したジーン パルサー(Gene Pulse r)の使い捨てキュベット(電極間距離0.2cm)中に移す。11000V/ cmのシングルパルスを直ちに加える(200Ωの並列抵抗(parallel resistor ))、25μFキャパシタンスの設定;バイオラッド(Bio Rad)社製、ジーン パルサーおよびパルス コントローラー(Pulse Controller)。パルスを加えた のち(時定数4〜5msec)、直ちに細胞懸濁液を、0.05%システインお よび0.5Mスクロースを補充したMRS液体培地800μlで希釈する。37 ℃で2.5時間インキュベートして抗生物質耐性マーカーを発現させたのち、細 菌を、選択培地の寒天(1.4%ダイシン(Daishin)寒天)平板(MRS+0. 05%システイン+0.5Mスクロース+適当な濃度の抗生物質)上で平板培養 を行なう。37℃で2〜3日間嫌気培養を行なったのち、形質転換体が目視可能 になる。使用されるビフィドバクテリウム菌株によっては、エレクトロポレーシ ョンのほかの条件(たとえば、一層高いかもしくは低い電圧)およびエレクトロ ポレーションに続く細菌のほかの増殖条件が最適の結果をうるために必要なこと があることは強調しておかねばならない。 本発明の前記の好ましい実施態様で、ビフィドバクテリウム・ロングムB25 77由来の潜在プラスミドpMB1にもとづいたプラスミドベクターpDG7( マテウッチ、デー(Matteuzzi,D.)、レターズ・アプル・マイク ロバイオル(Letters Appl.Microbiol)、11、220〜223頁(1990);図1A)を使用 する。プラスミドpDG7は、大腸菌(E.Coli)における選択に用いるアンピシ リン耐性マーカーならびに多数の各種の細菌種、たとえばエシェリキア・コリ、 スタフィロコッカス、バチルス、ラクトコッカスおよびラクトバチルスにおける 選択に適したクロラムフェニコール耐性マーカーを含有している。後者のマーカ ーは、一連のほかのグラム陽性細菌の形質転換体を選択するのに非常に有効であ ることがわかっているので、ビフィド菌の形質転換体の選択に使用される。前記 パラグラフに示した条件下にて、異なる実験で、pDG7 1μg当り、103〜 8×104個のクロラムフェニコール耐性ビフィドバクテリウム・アニマリスの コロニーがみられる。クロラムフェニコール耐性コロニーが遺伝的に形質転換さ れていることを実証するために12個の形質転換体のプラスミドDNAの内容を 分析した。各種の1mM緩衝液(たとえばHepes(pH6または7.4); クエン酸塩(pH5または6);(リン酸塩(pH4.5または6))中で4℃ にて16時間インキュベートしてえた自己消化細胞をエレクトロポレーションす ることによって形質転換を行なった。図2に示すように、すべての形質転換体が 予想された大きさのプラスミドを含有している。ビフィドバクテリウム・アニマ リスの形質転換体は、エイピーアイ・シーエイチ50エル・ギャラリー(API CH 50L gallery)(エイピーアイ・システム(API System)、モンタリュー バース( Montalieu Verce)、フランス)で試験したところ、未形質転換のビフィドバクテ リウム・アニマリスと同じ炭水 化物発酵形態を示す。そのプラスミドDNAの構造をさらに、制限酵素分析法に よって分析したところ、pDG7の構造と同一であることがわかった。 本発明のほかの特定の実施の態様で、受容体細菌として、ビフィドバクテリウ ム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、 ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・インファンティス およびビフィドバクテリウム・ロングムを用い、そして形質転換ベクターとして pDG7を用いる。試験した各菌株について、前記パラグラフに示した実験条件 下でエレクトロポレーションを行なったのち、クロラムフェニコール耐性コロニ ーがみられる。この方法でえた形質転換体は、pDG7と区別できない大きさと 構造を有するプラスミドを含有している。 本発明の別の実施態様で、ビフィドバクテリウム・アニマリスは、エシェリキ ア・コリのプラスミドpSUP102、カナマイシンとクロラムフェニコールに 対する耐性マーカー、およびコリネバクテリウムのレプリコンを含有するプラス ミドpECM2とpEBM3(図1B)(カリノウスキー、ジェイ(kalinowsky, J.)私信)によって形質転換される。前記パラグラフに示したような実験条件下 でビフィドバクテリウム・アニマリスをエレクトロポレーションに付してえられ たクロラムフェニコール耐性形質転換体は、出発(starting)ベクターのpEC M2と同じ大きさと構造のプラスミドを含有している。 本発明の別の実施態様で、pDG7のような自律的に複製するベクターのかわ りに、ビフィドバクテリウムの 染色体中に組込むことができるベクターを使用する。かような組込みベクターは 、あらかじめ決められた部位で相同組換えができるように、好ましくは400個 を超えるヌクレオチドを有する、ビフィドバクテリウム由来のDNA断片を含有 していることが好ましい。 本発明の別の実施形態で、ビフィドバクテリウムのDNA断片を含有するベク ターの組込みは、複製タンパク質をコードするが複製起点をコードしない遺伝子 を除外されたベクターを利用してそして複製タンパク質をコードする遺伝子をト ランスに、和合性プラスミドに付与するとによって容易に行なわれる。充分なセ ットの複製機能が組込み体から除かれると、組換え微生物の遺伝的安定性が増大 するようである。 本発明の別の実施形態では、抗生物質耐性マーカーのかわりに食品グレードの 選択マーカーが使用される。食品グレードマーカーとして、たとえば、優性の選 択可能表現型を付与できるビフィドバクテリウム、ラクトコッカスおよびラクト バチルスのようなGRAS生物由来の遺伝子、たとえば(多)糖(ラクトース、 キシロース、デンプン、イヌリン)の代謝に関与する酵素をコードする遺伝子ま たはその細菌をトリメトプリムのような特定の医薬に対して耐性にするタンパク 質をコードする遺伝子を用いることができる。 本発明の方法によってうることができる微生物または形質転換体は基本的に、 未形質転換生物のすべての用途に使用することができる。有用な相同もしくは非 相同のタンパク質をコードする遺伝子を微生物に導入すると、その微生物はもち ろん、前記タンパク質の製造に用いる ことができる。これら微生物の多くの用途は、その微生物の形質転換法が本発明 の開示されているので、当該技術分野の当業者にとってもちろん明らかである。 以下に本発明者らは、網羅的でないがいくつかの可能性を示す説明リストを示 す。 本発明の方法は、微生物、およびさらに詳しくは既存の形質転換法のどれを用 いても形質転換することができない「リカルシトラント」細菌を遺伝的に修飾す る機会を提供するものである。 ビフィド菌を形質転換する可能性によって、新規なおよび/または改良された 特性を有するビフィド菌を胃腸管に対して用いる新しい道が開かれる。ビフィド 菌は、低いpHと胆汁酸類に対して比較的耐性なので、生育能をいちじるしく失 うことなく胃と小腸を通過することができる。したがってビフィド菌は、抗原類 (経口免疫プログラム);鉄、ヨウ素およびビタミン類(たとえばB群ビタミン 類もしくはビタミンA)のような微量栄養素の理想的な伝達体として役立つ。 ポリフルクタン類を分解する改良された性能を有するビフィド菌を提供するこ とによって、ビフィド菌はオリゴフルクトースの残基を生成するため増殖を自己 刺激することができる。 カーボンフラックス(carbon flux)を修飾することによって、糖発酵の最終産 物として乳酸を独占的に産生することができおよび/またはほかの望ましい化合 物を作ることができるビフィド菌を構築することができる。 図面の簡単な説明 図1は形質転換に使用されるベクター類の線図である。 A)ビフィドバクテリウム・ロングム−エシェリキア・コリ シャトルベクタ ーのpDG7;マテウッツィ、デー(Matteuzzi,D.)ら、レット・アプル・マイ クロバイオル、11、220〜223頁、(1990)から引用した。 B)コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum−エシ ェリキア・コリ シャトルベクターpECM2/pEBM3、ジェイ・カリノウ スキー、私信)。 図2は形質転換されたビフィドバクテリウム・アニマリスのプラスミドDNA 内容の分析結果を示す。 図2の説明、マニアティス・ティー(Maniatis,T.)ら、モレキュラー・クロ ーニング(Molecular cloning)、ア・ラボラトリー・マニュアル・コールド・ スプリング・ハーバー(a laboratory manual.Cold Spring harbor)ニューヨー クに記載されている方法を少し改変して用いてミニスクリーンDNA分析を実施 した。一晩培養物5mlを遠心分離にかけつぎに、50mMグルコース、10m M EDTA、25mMトリスHCl pH8および30mg/mlリゾチーム の混合物200μl中に再懸濁させた。37℃で40分間インキュベートしたの ち、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中、0.2N NaOH400μl を添加した。その試験管を2〜3回上下逆にし、つぎに氷上に5分間おく。3M 酢酸カリウムの氷冷溶液(pH4.8)300μlを添加し、その試験管を上下 逆方向に保持しながらボルテックスする。その試験管を氷上に10分間おき、つ いでク ロロホルムとフェノールの混合物500μlを添加する。ボルテックスし、つぎ にエッペンドルフ遠心分離器で2分間遠心分離にかける。上澄み溶液をもう1つ のエッペンドルフ試験管に移し、もう1回、同容積のフェノール/クロロホルム で抽出する。前記上澄み液に2倍容積のエタノールを添加してDNAを沈殿させ 、ついでその混合物を一晩放置する。エッペンドルフ試験管内で15分間、遠心 分離する。沈殿を30μg/mlのRNアーゼを含有する水35μl中に再懸濁 する。37℃で少なくとも30分間インキュベートする。15μlをゲルに加え てゲル電気泳動分析を行なう。 図2のレーンは左から右へ以下のものを示す。 1−エシェリキア・コリから単離された0.5μgのpDG7(対照)。 2−クエン酸塩pH5(緩衝液A)からのクローン。 3−クエン酸塩pH5(緩衝液A)からのクローン。 4−クエン酸塩pH6(緩衝液B)からのクローン。 5−クエン酸塩pH6(緩衝液B)からのクローン。 6−リン酸塩pH4.5(緩衝液C)からのクローン。 7−リン酸塩pH4.5(緩衝液C)からのクローン。 8−リン酸塩pH6(緩衝液D)からのクローン。 9−リン酸塩pH6(緩衝液D)からのクローン。 10−Hepes pH6(緩衝液E)からのクローン。 11−Hepes pH6(緩衝液E)からのクローン。 12−Hepes pH7.4(緩衝液F)からのクローン。 13−Hepes pH7.4(緩衝液F)からのクローン。 14−エシェリキア・コリから単離された0.5μgのpDG7(対照)。 15−ラムダ/EcoRI/Hind III 図3は、ビフィドバクテリウム・アニマリスの形質転換効率に対する自己消化 の温度と期間(duration)の効果を示す。その効率は、pDG7プラスミドベク ターDNA 1μgを導入したのちの形質転換体の数で示す。 図4は、ビフィドバクテリウム・アニマリスの形質転換頻度に対する、適用電 圧の効果を示す。自己消化細胞を、あらかじめ冷却した0.2cmキュベット中 でpDG7DNAと混合し、つぎに指示どおりに電気パルスをかけた。ジーン パルサーとジーン パルス コントローラー(バイオラッド社製)の設定値はそ れぞれ25μFと200Ωであった。形質転換の効率は、ベクターDNA1μg 当たりえられた形質転換体の数で示す。 実施例1ビフィドバクテリウム・アニマリスの形質転換 ビフィドバクテリウム・アニマリスを、異なる組成の緩衝液で細菌の自己消化 をしたのち、2種の異なる電圧(6000および10000V/cm)でエレク トロポレーションにより形質転換した。0.05%システインおよび0.5Mス クロースを含むMRS(ディフコ(Difco)社製)でのビフィドバクテリウム・ア ニマリスの一晩培養物20mlを、同じ培地500mlで希釈し、695nmで 0.19の密度になるまで、嫌気的に、37℃でインキュベートした(4〜5時 間)。細菌を氷冷水中に置くことにより冷却し、2100×g、4℃で15 分間遠心分離し、ついで0.5M氷冷スクロースで2度洗浄した。2度目の遠心 分離ステップののち、細菌を0.5Mスクロース1.8mlにゆるやかに再懸濁 した。再懸濁した細菌を6等分に分け、1.5mlエッペンドルフ試験管にいれ た。再懸濁した細菌300μlに以下の溶液3μlを加えた。A)100mMク エン酸アンモニウム緩衝液、pH5、B)100mMクエン酸アンモニウム緩衝 液、pH6、C)100mMリン酸カリウム緩衝液、pH4.5、D)100m Mリン酸カリウム緩衝液、pH6、E)100mM Hepes緩衝液、NaO HでpH6に調整、F)100mM Hepes緩衝液、NaOHでpH7.4 に調整。試験管を冷却器の中に置いた。16時間後、細菌の懸濁液80μlをp DG7 DNA 2.5μlとともにゆるやかに回転撹拌しながら混合した。pD G7 DNAの調製物は大腸菌から単離し、供給者(ダイアゲン(DIAGEN))の推 奨にしたがいキアゲン(QIAGEN)クロマトグラフィーにより精製したpDG7 DNA 1μgおよびあらかじめpDG7で形質転換したビフィドバクテリウム ・アニマリスから単離したpDG7 DNA 0.4μgを含む。混合物をあらか じめ冷却した0.2cmキュベットに入れ、電気パルス(10000V/cm、 200Ω並列抵抗、25μFキャパシタンスの設定、バイオラッド社製、ジーン パルサーおよびパルスコントローラー)に付した。パルスの直後(時定数4.3 〜4.4)に、0.05%システインおよび0.5Mスクロースを含むMRS8 00μlを加え、混合物を37℃で2.5時間インキュベートし、クロラムフェ ニコール耐性マーカーを発 現させた。最後に、細菌の懸濁液100μlを0.05%システイン、0.5M スクロースおよび10μg/mlクロラムフェニコールを含む寒天で固化したM RS培地にまいた。37℃の嫌気的インキュベーションで、2日後、小型の形質 転換体が目視可能となり、3日後全体(full-size)のコロニーが目視可能とな った。結果を表1に示す。 実施例2形質転換効率に及ぼすエレクトロポレーションに用いる電圧の影響 ビフィドバクテリウム・アニマリスをpDG7 DNAで形質転換した。いく つかの改変を除いて、実施例1と同様のプロトコルにしたがった。実施例1のよ うに一晩培養物を希釈したのち、細菌をOD695=0.19のかわりにOD695= 0.22になるまで、0.05%システインおよび0.5Mスクロースを含むM RS中で培養し、遠心分離および洗浄ののち、1mMクエン酸アンモニウム緩衝 液、pH6およびスクロースを含む0.5 Mスクロース2.0ml中に再懸濁した。冷却器で一晩貯蔵したのち、細菌の懸 濁液の80μl分を0.5Mスクロース80μlと混合した。このようにしてえ た細菌の懸濁液80μlにpDG7 DNA2.5μlを加えた(実施例1と同 様)。パルス(10000〜12500V/cm、時定数3.2〜3.8mse c)につづき、細菌を実施例1と同様に処理する。結果を図3に示す。 えられた形質転換体におけるpDG7の存在を、形質転換体からのDNAの単 離ののちアガロースゲル電気泳動により確認した。結果は実施例1の形質転換体 でみられたものと類似している。 実施例3細菌の自己消化の温度および期間の影響 自己消化およびエレクトロポレーションは、自己消化の時間および期間を図4 に示したように変化させたことならびに自己消化緩衝液が1mMクエン酸アンモ ニウム、pH6、およびスクロースであったことを除いては実施例1と同様のプ ロトコルを用いた。 実施例4pDG7による異なるビフィドバクテリウム属の菌株の形質転換 ビフィド・バクテリウム ATCC 27536、ビフィドバクテリウム・ブ レーベ #4、ビフィドバクテリウム・ブレーベ SA、ビフィドバクテリウム ・ビフィダム U3、ビフィドバクテリウム・ビフィダム ATCC 1569 6、ビフィドバクテリウム・インファンティス U1、ビフィドバクテリウム・ インファンテ ィス ATCC 27920、ビフィドバクテリウム・ロングム U2およびビ フィドバクテリウム・ロングム・ウィズビー(Wiesby)2を用い、ベクターとし てpDG7を用いた。細菌は実施例2に記載したように培養し、OD695が0. 2〜0.25の時点で集菌した。集菌、洗浄、自己消化緩衝液および自己消化の 期間を、10000V/cm(200Ω並列抵抗および25μF)の電気パルス を用い、実施例2に記載したプロトコルを用いて行なった。試験した各菌株につ いて、実施例2に記載した実験条件下、エレクトロポレーションののち、クロラ ムフェニコール耐性コロニーがみられた(表2)。このようにしてえられた形質 転換体は、ゲル電気泳動分析により確認されたように、pDG7のプラスミドと は大きさおよび構造が区別できないプラスミドを含む。 実施例5一般的にラクトバシリ(lactobacilli)およびラクトコッシの形質転換に用いら れるラクトバチルスおよびラクトコッカス由来のプラスミドベクターを用いるビ フィドバクテリウム・アニマリスの形質転換 細菌の自己消化およびエレクトロポレーションを、ラクトバチルス プラスミ ドpLP825、pLPE3537、pLPE323(ポスノ(Posno)ら、アプ ル・エンバイロン・マイクロバイオル、57、1822〜1828頁(1991))および種々の グラム陽性菌およびグラム陰性菌において複製する広い宿主範囲のプラスミドで あるラクトコッカス ベクター pGK12(コック(Kok)ら、アプル・エンバ イロン・マイクロバイオル、48、T26〜731頁(1984))をビフィドバクテリウム・ アニマリスのエレクトロポレーションに用いたことを除いて、実施例2に記載し たように行なった。エレクトロポレーションした細菌は実施例2に記載したよう に処理した。形質転換体を選択試薬としてクロラムフェニコールを含む平板上で 選択した。実施例2に記載したように37℃で2日間、選択平板を嫌気的インキ ュベーションしたのち、形質転換体はえられなかった。4〜6日間延長したイン キュベーション後、時折少数のコロニーが現れた。これらのコロニーを、自律的 に複製するプラスミドDNAの存在についてミニスクリーン分析により分析して も、プラスミドDNAはみられなかった。さらに、サザン ハイブリダイゼーシ ョンにより、ベクターDNA配列の存在についてクロラムフェニコール耐性コロ ニーを分析したが、染色体DNAの位置または自律的に複製するDNAの位置 のいずれにも陽性シグナルはみられなかった。これらの結果はラクトバチルスま たはラクトコッカスレプリコンを含むプラスミドは、ビフィド菌を形質転換する ために使用できないことを示す。
【手続補正書】特許法第184条の8 【提出日】1996年7月10日 【補正内容】 請求の範囲 19.前記請求の範囲のいずれかの項記載の方法によりえられる外来DNAで形質 転換されるビフィドバクテリウム属の種。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI (C12N 1/21 C12R 1:225) (C12N 1/21 C12R 1:01) (72)発明者 アルニャーニ、アレッサンドラ イタリア共和国、ボローニャ、40018 サ ン ピエトロ イン カサーレ、ビア プ ッチーニ 17/2 (72)発明者 ポウヴェルス、ピータル ヘンドリック オランダ王国、2289 アーイェー レイス ヴェイク、デルフトヴェフ 14

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.核酸を微生物に導入する方法であって、 微生物の制限された自己消化を誘発して微生物の細胞壁の核酸に対する透過性 を改善し、該微生物を該核酸と直接的にまたは間接的に接触させて該微生物を形 質転換させ、ついでそのえられた形質転換体を培養することからなる方法。 2.微生物をエレクトロポレーション緩衝液中に保持して該微生物の制限された 自己消化を誘発する請求の範囲第1項記載の方法。 3.前記エレクトロポレーション緩衝液のモル濃度が低くかつ該緩衝液が浸透安 定剤を含有する請求の範囲第2項記載の方法。 4.前記浸透安定剤がスクロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる請求の範囲第3項記載の 方法。 5.前記緩衝液が10mM以下、好ましくは約0.1〜約2mM、とくに好まし くは約0.5〜約1mMの塩濃度を有する請求の範囲第3項または第4項記載の 方法。 6.前記制限された自己消化がpH約4〜約8で行なわれる前記請求の範囲のい ずれかの項記載の方法。 7.前記制限された自己消化が−196℃〜37℃、好ましくは約0〜37℃、 より好ましくは約0〜10℃の温度で、10分〜100時間、好ましくは約1〜 約30時間の時間で行なわれる前記請求の範囲のいずれ かの項記載の方法。 8.さらに微生物を高電圧放電に供することからなる前記請求の範囲のいずれか の項記載の方法。 9.微生物がリカルシトラントである前記請求の範囲のいずれかの項記載の方法 。 10.微生物が乳酸菌である前記請求の範囲のいずれかの項記載の方法。 11.細菌がビフィドバクテリウム属の種である請求の範囲第10項記載の方法。 12.導入される核酸のCG含量が、該核酸が導入される微生物のCG含量と一致 する前記請求の範囲のいずれかの項記載の方法。 13.導入される核酸の少なくとも重要な部分が、該核酸が導入される微生物と発 生的に類縁関係にある前記請求の範囲のいずれかの項記載の方法。 14.核酸が少なくとも微生物に改良された特性を提供する遺伝情報を保有する部 分からなる前記請求の範囲のいずれかの項記載の方法。 15.核酸が少なくとも微生物により発現されるタンパク質をコードする部分から なる前記請求の範囲のいずれかの項記載の方法。 16.核酸が遺伝子の複製および/または発現のための要素からなるプラスミドで ある前記請求の範囲のいずれかの項記載の方法。 17.プラスミドが選択マーカーからなる請求の範囲第16項記載の方法。 18.プラスミドがプラスミドpDG7、pECM2またはpEBM3由来である 請求の範囲第16項または第 17項記載の方法。 19.前記請求の範囲のいずれかの項記載の方法によりえられる形質転換されるリ カルシトラントの微生物。 20.形質転換されるリカルシトラントの乳酸菌である請求の範囲第19項記載の 微生物。 21.ビフィドバクテリウム属の種である請求の範囲第19項または第20項記載 の微生物。 22.ビフィドバクテリウム属の種がビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィ ドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバク テリウム・インファンティスおよびビフィドバクテリウム・ロングムからなる群 より選ばれる請求の範囲第21項記載の微生物。 23.ラクトバチルス属の種である請求の範囲第19項または第20項記載の微生 物。 24.ラクトバチルス属の種がラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・ ヘルベティカスならびにラクトバチルス・アシドフィルス群AおよびB由来の種 からなる群より選ばれる請求の範囲第23項記載の微生物。 25.食料製品の製造または調合における請求の範囲第19項から第24項のいず れかの項記載の微生物の使用。 26.食料製品が乳製品である請求の範囲第25項記載の使用。
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