JPH1046331A - スパッタ成膜法およびスパッタ装置 - Google Patents

スパッタ成膜法およびスパッタ装置

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JPH1046331A
JPH1046331A JP21660796A JP21660796A JPH1046331A JP H1046331 A JPH1046331 A JP H1046331A JP 21660796 A JP21660796 A JP 21660796A JP 21660796 A JP21660796 A JP 21660796A JP H1046331 A JPH1046331 A JP H1046331A
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target
film
heating
sputtering
film forming
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JP21660796A
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English (en)
Inventor
Kazufumi Watabe
一史 渡部
Keiji Ishibashi
啓次 石橋
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Canon Anelva Corp
Original Assignee
Anelva Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 セラミックスターゲットを用いるスパッタ成
膜法において、新しいターゲットをスパッタ室に取り付
ける際、装置メンテナンスのためターゲットを大気に曝
した際に膜特性が安定するまで行われるダミーデポの行
程を短縮または省略できるスパッタ成膜法およびスパッ
タ装置を提供する。 【解決手段】 化合物薄膜の当該元素から成るセラミッ
クスをターゲット11として用い、スパッタリング現象を
利用して成膜する方法であり、ターゲットを成膜処理室
に配置した後であって成膜を開始する前に、成膜処理室
を真空排気しながら、ターゲットを加熱する。ターゲッ
トの加熱を行うので、ターゲットに吸着し吸蔵された水
を放出させることができ、これにより、形成される膜に
与える水の影響が抑制される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスパッタ成膜法およ
びスパッタ装置に関し、特に、ターゲットにセラミック
スを用いて基板上に化合物薄膜を形成するスパッタ成膜
法、およびこのスパッタ成膜法を実施するスパッタ装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の成膜法としてはスパッタ法、蒸着
法、CVD法等があるが、スパッタ法は大面積の基板上
に均一に薄膜を形成できるという点で他の成膜法よりも
優れている。スパッタ法の中でも、量産装置としては、
成膜速度が速いという理由で、ターゲット背後に配置し
たマグネットによる磁界でターゲット表面にプラズマを
収束させるマグネトロンスパッタ法が用いられる。
【0003】一方、最近の薄膜形成では、2種類以上の
元素から成る化合物の薄膜(「化合物薄膜」という)を
形成することが多い。化合物薄膜としては、例えば、I
TO(インジウム・錫・酸化物),In2 3 ,SnO
2 、ZnO等の透明導電膜、SrTiO3 ,BaTiO
3 ,Pb−Zr−Ti−O系等の強誘電体薄膜、Al2
3 ,MgO,ZrO2 ,TiO2 ,TiO2 ,Ta2
5 等の誘電体薄膜、Fe−Ba−O系の磁性体薄膜等
がある。
【0004】上記のような化合物薄膜をスパッタ法によ
り成膜する場合には、一般に、ターゲットとして、当該
化合物薄膜を構成する元素から成るセラミックスが用い
られる。
【0005】スパッタ装置によるスパッタ成膜法では、
先ず、成膜処理室を真空排気した後、Ar等の不活性ガ
スに反応性ガス(O2 ガス等)を適量添加した混合ガス
を導入する。次に、混合ガスの導入量または真空排気系
のコンダクタンスを制御することにより、成膜処理室の
圧力を任意の値に設定する。その後、カソードに負の電
圧を印加してプラズマを発生させ、ターゲットをスパッ
タする。スパッタによりターゲットから放出された粒子
は、ターゲットに対向した基板上に薄膜となって堆積す
る。スパッタの際、ターゲットはイオン衝撃により加熱
され、変質または破損する。このため、スパッタ中、タ
ーゲットは冷却される。
【0006】図2は、従来のマグネトロンスパッタ装置
に用いられるカソードを示す。このカソードは、セラミ
ックスのターゲット41が低融点金属のボンディング材
42によりバッキングプレート43に結合され、ターゲ
ット41の背面にマグネット44が配置される。バッキ
ングプレート43はCuやSUSで作られ、冷却用通路
45が形成されている。このカソードの構成では、冷却
用通路45に水を流すことによりターゲット41を冷却
する。図中の46は冷却水が流れる方向を示す。
【0007】図3は従来のカソードの他の例を示す。こ
のカソードは、セラミックスのターゲット41をボンデ
ィング材42で備えた板状バッキングプレート51の下
側に、内部にマグネット44を配置したカソードボディ
ー52に取り付けている。ターゲット41は、カソード
ボディー52の内部に矢印46のごとく水を流すことに
より冷却される。このカソードの構成では、カソードボ
ディー52の内部空間53が冷却用通路となる。
【0008】スパッタ装置では、例えば新しいターゲッ
トを成膜処理室に取り付けた初期の薄膜形成で、その特
性が徐々に変化してしまう。そのため、形成される薄膜
の特性が安定するまでしばらくスパッタ(ダミーデポ)
が行われる。
【0009】またスパッタ装置において連続的に薄膜を
形成していくと、基板以外の膜が堆積する部分では、そ
の膜厚が厚くなり、ある程度厚くなると、応力により次
第に剥離するようになる。剥離した膜の一部は、基板上
に形成される膜に取り込まれて欠陥となり、製品の歩留
りを低下させる原因となる。このため、従来のスパッタ
法による薄膜形成では、基板以外の部分に付着した膜が
剥離する前に、成膜処理室を開け(大気開放)、この薄
膜付着部分の部材交換を行うメンテナンス作業が行われ
る。
【0010】セラミックスをターゲットとしたスパッタ
成膜法で、上記のごときメンテナンスのために成膜処理
室の大気開放を行うと、大気開放前の膜特性およびその
基板面内均一性を再現できなくなるという問題が発生す
る。しかし、しばらくスパッタすることで、大気開放前
の膜特性およびその基板面内均一性を再現できるように
なることが経験的にわかっている。
【0011】そこで、実際にITO透明導電膜の生産ラ
インでは、新しいITOターゲットを用いて成膜を行う
場合、あるいは装置メンテナンスのため大気開放した後
に成膜を行う場合に、必ず「ダミーデポ」と呼ばれる生
産工程とは関係ない成膜工程を行う。このダミーデポで
は、ArまたはArに適量の酸素を導入した雰囲気で行
われ、膜特性(一般にはシート抵抗で判断される)が安
定するまで行われる。このダミーデポに要する時間はタ
ーゲットを大気に曝した時間や投入電力等にもよるが、
通常、3〜10時間程度必要である。製品となる膜は、
ダミーデポの後に酸素導入量を調節することにより、膜
特性がよくなる酸素導入量(以後「最適酸素導入量」と
いう)で形成される。一般的に、シート抵抗が最小にな
るとき膜特性が良好であると判断される。
【0012】なお、ターゲットの加熱機構を備えたスパ
ッタ装置が、特公平8−6177号公報に開示されてい
るが、この装置では成膜中にターゲットの加熱を行い、
その温度を一定に保つようにしている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】セラミックスをターゲ
ットとしたスパッタ成膜法を実施する従来のスパッタ成
膜法において、ターゲットを成膜処理室に取り付けた初
期の段階に、あるいはメンテナンス時にターゲット表面
を大気に曝した際に、膜特性が安定するまで行われるダ
ミーデポの行程は、時間的に大きな損失であり、さらに
ターゲットそのものはこの間も消費されるので、実質的
なターゲットの利用率は低下し、生産性の面では大きな
問題であった。従って、ダミーデポの工程に要する時間
は、可能な限り短いことが望ましい。
【0014】本発明者は、ターゲット表面を大気に曝し
た際の膜特性変動の原因について種々の検討を行った結
果、大気中の水分によってターゲットに吸着する水が原
因であるという結論に到った。ターゲットは、ターゲッ
トメーカで真空パックされたとしても、成膜処理室に取
り付ける際に大気に曝されるので、ターゲットに水が吸
着してしまう。また、メンテナンス等のために成膜処理
室を大気開放した場合も、ターゲットは大気に曝される
ことになるので、水が吸着する。特に、ターゲットがセ
ラミックスである場合には、吸着した水はターゲットに
吸蔵されることになる。
【0015】ターゲットに吸着し吸蔵された水はスパッ
タにより放出され、形成される膜の結晶性に影響を与え
る。例えば、膜の結晶性に与える水の影響として、IT
O透明導電膜のスパッタ成膜では膜の結晶化が抑制され
ることが報告されている(北原等:Proc. 1st Int'l Sy
mpo. on ISSP'91 Tokyo, p149 (1991))。膜の結晶性が
異なれば、その特性は異なる。ITO透明導電膜では、
結晶化が抑制されると、ウェットエッチングにおける加
工性は向上するが、比抵抗は高くなり、透過率は低下し
てしまう。
【0016】さらにマグネトロンスパッタ法の場合、放
電空間のプラズマ密度は不均一である。このためプラズ
マ密度が高い部分に面したターゲット面(エロージョン
部)からは、吸着し吸蔵された水がより多く放出され
る。従ってその部分に対向した基板面では水の影響が顕
著になり、面内における膜特性の均一性が悪くなってし
まう。
【0017】またITO透明導電膜の膜特性は、成膜時
の酸素導入量に大きく依存する。そのためITO透明導
電膜の成膜は一般的に、最適酸素導入量で行われてい
る。しかし、スパッタ中にターゲットから水が放出され
ると最適酸素導入量が変化してしまい、安定に成膜がで
きないという問題も提起される。
【0018】本発明の目的は、基板上に化合物薄膜を形
成するためターゲットとしてセラミックスを用いるスパ
ッタ成膜法において、新しいターゲットを成膜処理室に
取り付けるとき、または装置メンテナンスのためターゲ
ットを大気に曝したときに、膜特性が安定するまで行わ
れるダミーデポの行程を短縮または省略できるスパッタ
成膜法を提供すること、および当該スパッタ成膜法を実
施するのに適したスパッタ装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段および作用】第1の本発明
(請求項1に対応)に係るスパッタ成膜法は、上記目的
を達成するため、2種以上の元素を含む化合物薄膜の当
該元素から成るセラミックスをターゲットとして用い、
スパッタリング現象を利用して薄膜形成を行う成膜法で
あり、上記ターゲットを成膜処理室に配置した後であっ
て成膜を開始する前に、成膜処理室を真空排気しなが
ら、ターゲットを加熱する方法である。ターゲットの加
熱を行うので、ターゲットに吸着し吸蔵された水を放出
させることができ、これにより、形成される膜に与える
水の影響が抑制され、ターゲット取付け初期に膜特性が
安定するまで行うダミーデポの行程を大幅に短縮または
省略できる。
【0020】第2の本発明(請求項2に対応)に係るス
パッタ成膜法は、第1の発明に係る方法において、ター
ゲットは未使用のものであり、成膜を開始する前に、成
膜処理室を真空排気しながらターゲットを加熱すること
を特徴とする。
【0021】第3の本発明(請求項3に対応)に係るス
パッタ成膜法は、第1の発明に係る方法において、装置
のメンテナンスのために薄膜を形成する行程を中断して
ターゲットを大気に曝すとき、ターゲットを大気に曝す
前の段階で、前記ターゲットの加熱を開始し、成膜を開
始する前まで加熱を継続することを特徴とする。本発明
では、ターゲットを大気に曝す場合に、その前にターゲ
ットの加熱を開始するので、ターゲットへの水の吸着を
抑制することができる。これにより、形成される膜に与
える水の影響が抑制され、ダミーデポの行程を大幅に短
縮または省略できる。
【0022】第4の本発明(請求項4に対応)に係るス
パッタ成膜法は、第1の発明に係る方法において、成膜
行程を中断してターゲットを大気に曝すとき、ターゲッ
トを大気に曝した段階でターゲットの加熱を開始し、成
膜を開始する前まで加熱を継続することを特徴とする。
ターゲットを大気に曝すときには最も水が吸着されやす
いので、効果的に水を除去できる。
【0023】第5の本発明(請求項5に対応)に係るス
パッタ成膜法は、第1の発明に係る方法において、装置
のメンテナンスのために薄膜を形成する行程を中断して
ターゲットを大気に曝したとき、その後に再び成膜を開
始する前に、成膜処理室を真空排気しながら、ターゲッ
トを加熱することを特徴とする。本発明では、ターゲッ
トを大気に曝した後かつ成膜を開始する前に、ターゲッ
トの加熱を行うので、大気開放中に吸着し吸蔵された水
を放出させることができる。
【0024】第6の本発明(請求項6に対応)に係るス
パッタ成膜法は、第1〜第5の発明に係る方法におい
て、ターゲットの加熱は、スパッタ成膜中のターゲット
の加熱防止のために設けられた冷却通路に熱媒体を循環
させることにより行われることを特徴とする。ターゲッ
トの加熱を、スパッタ中のターゲット加熱防止のために
設けられた冷却通路を利用して行うので、成膜処理室や
カソード等を改造することなく、行える。
【0025】第7の本発明(請求項7に対応)に係るス
パッタ成膜法は、第6の発明に係る方法において、熱媒
体が温水であることを特徴とする。熱媒体に水を用いる
ので、スパッタ時には冷却水に切り替えられる。またタ
ーゲットとバッキングプレートとのボンディング材には
Inが一般的であり、このInの融点は156℃である
ので、熱媒体に温水を用いれば、たとえ異常加熱したと
しても100℃程度なので問題が起きない。
【0026】第8の本発明(請求項8に対応)に係るス
パッタ装置は、上記目的を達成するため、セラミックス
製のターゲットを放電によってスパッタリングして基板
上に化合物薄膜を成膜する装置であり、スパッタ成膜中
のターゲットの加熱防止のために循環させる冷却用の熱
媒体を供給する冷却機構と、当該熱媒体を加熱用として
用いる加熱機構と、ターゲットの近くに設けられた熱媒
体通路を冷却機構と加熱機構のうちのいずれかに接続す
る切替え機構とを備えるように構成される。かかる構成
によってターゲットの加熱または冷却を自在に行うこと
ができ、前述の本発明に係るスパッタ成膜法を容易に実
施できる。
【0027】第9の本発明(請求項9に対応)に係るス
パッタ装置は、第8の発明の構成において、熱媒体が水
であることを特徴とする。熱媒体に水を用いることによ
り、ターゲットの水を放出するための加熱時には温水
を、またスパッタ成膜の冷却時には冷水を使用でき、そ
の切替えも容易に行える。またターゲットとバッキング
プレートとのボンディング材にはInが一般的であり、
このInの融点は156℃であるので、熱媒体に温水を
用いれば、たとえ異常加熱したとしても最高100℃程
度なので問題がない。
【0028】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施形態
を添付図面に基づいて説明する。
【0029】図1に本発明に係るスパッタ成膜法が実施
されるスパッタ装置の要部構造を示す。この実施形態で
はITO透明電導膜の成膜法の例を挙げて説明する。図
1では、本発明に係るスパッタ成膜法に関連する要部構
造のみを示し、成膜処理室やその内部構造、排気系、お
よびガス導入系等の構造は周知なものを使用することか
らその図示を省略している。
【0030】図1では、ターゲット11と、バッキング
プレート12と、ターゲット11の温度を所定の低温に
保持する冷却機構13、ターゲット11の温度を所定の
高温に保持する加熱機構14、および切替え機構15が
示される。
【0031】ターゲット11は成膜処理室の内部に臨
み、被処理対象である基板(図示せず)はターゲット1
1に対向して配置される。基板の上には化合物薄膜が形
成される。またターゲット11は、基板の上に形成しよ
うとする当該化合物薄膜の構成元素から成るセラミック
スによって形成される。ターゲット11とバッキングプ
レート12は低融点金属であるボンディング材16で結
合される。バッキングプレート12の内部には熱媒体通
路17が形成される。バッキングプレート12の背後に
は図2に示すごとくマグネットが配置される。このよう
にして、スパッタ装置のカソード電極部が構成される。
【0032】バッキングプレート12の熱媒体通路17
は、熱媒体配管18によって冷却機構13と加熱機構1
4に接続される。熱媒体配管18の途中には、上記切替
え機構15が設けられる。切替え機構15は、4つのバ
ルブ21,22,23,24によって構成される。切替
え機構15のバルブ21〜24を開閉を制御することに
より、切替え機構15は、冷却機構13と加熱機構14
のいずれか一方を熱媒体配管18を介してバッキングプ
レート12の熱媒体通路17に接続される。すなわち、
切替え機構15においてバルブ23,24を閉じかつバ
ルブ21,22を開けると、冷却機構13により所望の
温度に冷却された熱媒体(冷水)が矢印20のごとく熱
媒体通路17を循環し、ターゲット11の冷却を行うこ
とができる。また、切替え機構15においてバルブ2
1,22を閉じかつバルブ23,24を開けると、加熱
機構14で所望の温度に加熱された熱媒体(温水)が矢
印20のごとく熱媒体通路17を循環し、ターゲット1
1の冷却を行うことができる。冷却機構13による冷却
は、スパッタにより成膜を行う場合に選択される。
【0033】従来のマグネトロンスパッタ装置では、通
常、スパッタによって成膜を行っている場合にターゲッ
トを冷却することが必要であるので、もともと冷却機構
13と冷却水用通路としての熱媒体通路17と熱媒体配
管18を備えている。かかる構成に対して、本実施形態
によるスパッタ装置では、加熱機構14と切替え機構1
5を付設し、熱媒体通路17と熱媒体配管18を利用し
て加熱のための構成を実現している。熱媒体としては、
冷却機構13で使用される水を利用するため、温水が使
用される。
【0034】また、上記の冷却機構13と加熱機構14
を備えたサーキュレータを用いることもできる。サーキ
ュレータは、温度設定するだけで容易に熱媒体の温度を
制御でき、上記バルブ21〜24の開閉操作は必要ない
が、実質的には、冷却機構13と加熱機構14と切替え
機構15に相当する要素とから構成される。
【0035】以下のスパッタ成膜法の各実施例では、サ
ーキュレータを用いて熱媒体の温度制御を行い、ターゲ
ット11の加熱と冷却を行うようにした。
【0036】本発明に係るスパッタ成膜法の第1実施例
を説明する。第1実施例は、未使用ITOターゲット
(ターゲット11に対応)を成膜処理室に配置し、成膜
開始前に、成膜処理室を真空排気しながらターゲット1
1を加熱し水を放出させ、その後に薄膜形成を行う例で
ある。
【0037】第1実施例で、ターゲット11には、In
2 3 にSnO2 を10wt%添加した焼結体ターゲット
(密度95%、サイズ600mm×700mm)を用い
た。サーキュレータは、バッキングプレート12の熱媒
体通路17と加熱機構(14に相当)とを接続する状態
にある。上記ターゲット11を成膜処理室に取り付けた
後、排気しながら、水を熱媒体としたサーキュレータを
用いてバッキングプレート12の熱媒体通路17に80
℃の温水を循環させ、ターゲット11の加熱を行った。
この状態で1.5×10-4Paまで真空排気する。その
後、バッキングプレート12の熱媒体通路17に循環さ
せていた80℃の温水を、冷却機構(13に相当)に接
続することによって20℃の水に切替え、3.0×10
-5Paまで真空排気する。その後、Arだけの雰囲気
で、投入電力DC3kW、Ar導入量500sccm、スパ
ッタ圧力0.7Paとしてダミーデポを行った。
【0038】上記ダミーデポは、370mm×470m
mのガラス基板上に、基板温度を200℃とし、1分間
ずつITO透明導電膜を成膜して、シート抵抗の基板面
内平均値および面内均一性の経時変化がなくなるまで行
う。その結果、ダミーデポ開始後16分で、シート抵抗
の基板面内平均値および面内均一性が安定に得られるよ
うになった。そこで酸素を導入し、最適酸素導入量の探
索を行い、ダミーデポを開始してから計21分後(積算
電力にして1.05kWh投入後)、酸素導入量2.0
sccmで、シート抵抗面内平均値20Ω/□、面内均一性
約±6%を得た。その後、スパッタを続けても、最適酸
素導入量は変化せず、安定したシート抵抗面内平均値と
面内均一性が得られた。
【0039】以上の成膜条件では、基板面内における平
均成膜速度は約100nm/min となり、基板面内平均
膜厚は100nmであった。
【0040】一方、ターゲットを加熱しない従来の方法
によれば、上記成膜条件の場合、ダミーデポおよび最適
酸素導入量の探索工程に要した時間は合計3時間以上、
積算電力にして9kWh以上が必要であった。
【0041】以上のように、従来方法と比較すると明ら
かなように、第1実施例に係るスパッタ成膜法によれ
ば、未使用ITOターゲットを成膜処理室に配置した
後、最初に行うダミーデポの工程に要する時間を大幅に
短縮できた。
【0042】第1実施例では未使用ITOターゲットの
場合の例であったが、一度使用して大気中に放置してい
たターゲットでも上記スパッタ成膜法を適用でき、第1
実施例と同様にダミーデポの時間を従来方法よりも大幅
に短縮できる。
【0043】次に本発明に係るスパッタ成膜法の第2実
施例を説明する。第2実施例は、薄膜を形成する行程を
中断してターゲット11を大気に曝すとき、ターゲット
11を大気に曝す前に当該ターゲット11を加熱して水
吸着を防ぎ、その後ターゲット11の加熱状態を保持し
て成膜処理室を大気開放し、再びターゲット11を成膜
処理室に配置して加熱状態を保持して一定レベルまで真
空排気し、成膜を行う例である。第2実施例で用いた装
置の構成、カソード電極部、およびターゲットの部分
は、第1実施例で用いたものと同じである。
【0044】成膜処理室を大気開放する前の最適酸素導
入量、シート抵抗面内平均値、面内均一性は、各々、第
1実施例で記した成膜条件において2.0sccm、約20
Ω/□、約±6%であり、第1実施例で安定に得られる
ようになった各値とほぼ同じであった。
【0045】第2実施例では、先ず、成膜処理室を大気
開放する前に、バッキングプレート12に設けられた熱
媒体通路17に流れていた水をサーキュレータ(加熱機
構14に相当)の温水(80℃)に切り替え、ターゲッ
ト11を加熱する。ターゲット11が十分に加熱される
まで待った後、成膜処理室を大気開放し、加熱状態を維
持したままでターゲット11を例えば2時間大気に曝
す。その後、再びターゲット11を成膜処理室に配置
し、上記温水でターゲット11を加熱した状態で、成膜
処理室を1.5×10-4Paまで真空排気する。次に、
バッキングプレート12の熱媒体通路17を流れる温水
を冷水に切り替え、3.0×10-5Paまで真空排気す
る。その後、大気開放前の成膜条件(酸素導入量も同
じ)にて、基板面内の平均膜厚が100nmの膜を連続
して形成した。その結果、成膜開始後、2枚目以降で大
気開放前と同様の、約20Ω/□のシート抵抗面内平均
値と、約±6%の面内均一性が得られた。またこのと
き、最適酸素導入量は2.0sccmのままであった。
【0046】一方、ターゲットを加熱しない従来の方法
では、第2実施例と同じようにターゲットを2時間大気
に曝した場合、再び大気開放前のシート抵抗の面内平均
値と面内均一性を得るためには、約3.1時間、積算電
力にして約9.3kWhのダミーデポが必要であった。
【0047】以上のように、従来方法と比較すると明ら
かなように、第2実施例に係るスパッタ成膜法によれ
ば、薄膜を形成する工程を中断してターゲットを大気に
曝した後、再び製品となる膜を作成する前に行うダミー
デポの時間を大幅に短縮することができた。
【0048】なお上記の第2実施例の代わりに、ターゲ
ット11を大気に曝す前の段階ではターゲットを加熱せ
ず、成膜処理室を大気開放しターゲット11を大気に曝
している間に当該ターゲット11の加熱を開始するよう
に構成することもできる。ターゲット11を大気に曝す
ときには特に水分が吸着しやすいので、かかる加熱は効
果的である。
【0049】次に本発明に係るスパッタ成膜法の第3実
施例を説明する。第3実施例は、薄膜を形成する工程を
中断してターゲット11を大気に曝した後に、再び成膜
を開始する前に、このターゲット11を配置した成膜処
理室を真空排気しながらターゲット11を加熱し、吸着
した水を放出させた後に成膜を行う例である。
【0050】第3実施例では、ターゲットを大気に曝す
ときには第2実施例で実施したようなターゲットの加熱
を行わず、大気に曝した後に成膜処理室を真空排気する
ときに上記実施例と同様にターゲット11の加熱を行
い、ターゲットの水を放出させる。2時間の大気開放
後、成膜処理室を排気しながら、バッキングプレート1
2の熱媒体通路17にサーキュレータを用いて温水(8
0℃)を流してターゲット11を加熱する。1.5×1
-4Paまで真空排気した後には、熱媒体通路17に流
していた温水を冷水に切り替え、3.0×10-5Paま
で真空排気する。その後、大気開放前の成膜条件(酸素
導入量も同じ)にて、基板面内平均膜厚100nmの膜
を連続して形成した。その結果、第2実施例と同様に、
成膜開始後、2枚目以降で大気開放前と同様のシート抵
抗面内平均値と面内均一性が得られた。またこのときの
最適酸素導入量も、第2実施例と同様に、2.0sccmの
ままであった。第3実施例でも、第2実施例と同様に、
従来の方法に比べてダミーデポの時間を大幅に短縮でき
た。
【0051】第3実施例では、ターゲットを大気に曝す
ときにはターゲット11の加熱を行わないので、この
間、ターゲット11に水が吸着する。このため、第3実
施例で、その後1.5×10-4Paまで排気するために
必要な時間は、ターゲットを大気に曝す前にターゲット
加熱を行う第2実施例よりも長くなる。従って実際に
は、第2実施例による方法を行うのが望ましい。
【0052】本発明によるスパッタ成膜法は、大気に曝
したターゲットを用いて成膜を行うとき、その成膜を行
う前に、ターゲット11の加熱を行ってターゲット11
の脱ガスを行うことに特徴がある。ターゲット加熱を利
用したスパッタ成膜法は、前述の実施例に限定されるも
のではなく、ランプヒータ等の加熱器を成膜処理室の内
部または外部に配置して、ターゲット11を直接(また
は間接)に加熱し、あるいは加熱器をバッキングプレー
ト12に直接設置して加熱することもできる。また加熱
のための温度も、上記実施例による80℃に限定され
ず、ボンディング材の融点以下であればよい。ただし、
ターゲット11とバッキングプレート12のボンディン
グでは、一般的にInがボンディング材として用いられ
るため、上記の方法では、制御系のトラブルにより異常
加熱された場合にはボンディング材のInが溶けるおそ
れがある。従って、上記各実施例のようにサーキュレー
タを用い、水を熱媒体として用いるのが望ましい。
【0053】上記各実施例では図2に示すカソード構成
のものを使用したが、カソード構成は本実施例に限定さ
れるものではなく、図3に示す構成であっても構わな
い。
【0054】また上記の各実施例では、ターゲット11
を加熱している場合1.5×10-4Paまで真空排気
し、冷却時には3.0×10-5Paまで真空排気した
が、排気圧力はこれに限るものではなく、薄膜形成に水
が影響を及ぼさない程度であればよい。本発明者の実験
によれば、その具体的な値は1×10-4Pa以下であ
り、この圧力まで排気できればよい。
【0055】上記の各実施例では、ITO透明導電膜の
成膜についてIn2 3 にSnO2を10wt%添加し
た、密度95%、サイズ600mm×700mmの焼結
体ターゲットを用いたスパッタ成膜法について述べた
が、ターゲットの組成、密度、形状、大きさおよび製法
等は、これらに限られるものではない。同じITO透明
導電膜を形成するターゲットでも、SnO2 の添加量の
異なるもの、または密度が異なるもの、形状が円形や楕
円形のもの、大きさが異なるもの、焼結体ではなくプレ
スしただけのもの等に対しても、本発明によるスパッタ
成膜法を適用することができる。
【0056】さらに上記実施例では、ITOターゲット
を用いたスパッタ成膜法について述べたが、その他のセ
ラミックス製ターゲットを用いる薄膜形成、例えば、I
23 ,SnO2 ,ZnO等の透明導電膜、SrTi
3 ,BaTiO3 ,Pb−Zr−Ti−O系等の強誘
電体薄膜、Al2 3 ,MgO,ZrO2 ,TiO2
Ta2 5 等の誘電体薄膜、Fe−Ba−O系の磁性体
薄膜等の形成に対しても、本発明によるスパッタ成膜法
を適用できる。
【0057】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように本発明によ
れば、セラミックスターゲットを用いたスパッタ成膜法
において、未使用ターゲットを用いる場合、または、装
置メンテナンスのため成膜行程を中断してターゲットを
大気に曝した場合、その後の成膜開始前に、ターゲット
を加熱し、表面に吸着あるいは吸蔵されている水を脱離
させるようにしたため、ターゲットを取り付けた後の初
期段階または大気に曝した後の段階における膜特性が安
定するまで行われるダミーデポの行程を短縮または省略
できる。
【0058】またターゲットの加熱を、スパッタ成膜中
のターゲット加熱防止のためにもともと設けられていた
冷却用の熱媒体通路、およびその熱媒体を循環させる機
構を利用して行うようにしたため、成膜処理室やカソー
ド等を改造する必要がなく、これまでに用いていた装置
を一部改良することによって容易に本装置を実現するこ
とができる。
【0059】さらに、ターゲットの加熱時に熱媒体通路
に循環させる熱媒体に温水を用いることで、当該加熱時
に仮に制御系のトラブルにより異常加熱したとしても高
々100℃程度であるため、ボンディング材の溶融温度
よりも低いので、ターゲットがバッキングプレートから
外れることはない。
【0060】上記のスパッタ成膜法を実施するスパッタ
装置は、バッキングプレートの熱媒体通路に熱媒体を循
環させると共に、ターゲットを加熱する加熱機構と冷却
する冷却機構を備え、それらの接続関係を切り替える切
替え機構を備えるようにしたため、容易に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスパッタ成膜法が実施されるスパ
ッタ装置の要部の基本的構成を示した構成図である。
【図2】従来のマグネトロンスパッタ装置に用いられて
いるカソード電極の一例を示す断面図である。
【図3】従来のマグネトロンスパッタ装置に用いられて
いるカソード電極の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
11,41 ターゲット 12,43 バッキングプレート 13 冷却機構 14 加熱機構 15 切替え機構 16,42 ボンディング材 17,45 熱媒体通路 18 熱媒体配管 21〜24 バルブ

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化合物薄膜を構成する元素から成るセラ
    ミックスをターゲットとするスパッタ成膜法において、
    前記ターゲットを成膜処理室に配置した後であって成膜
    を開始する前に、前記成膜処理室を真空排気しながら、
    前記ターゲットを加熱することを特徴とするスパッタ成
    膜法。
  2. 【請求項2】 前記ターゲットは未使用であり、成膜を
    開始する前に、前記成膜処理室を真空排気しながら前記
    ターゲットを加熱することを特徴とする請求項1記載の
    スパッタ成膜法。
  3. 【請求項3】 成膜行程を中断して前記ターゲットを大
    気に曝すとき、前記ターゲットを大気に曝す前に前記タ
    ーゲットの加熱を開始し、成膜を開始する前まで加熱を
    継続することを特徴とする請求項1記載のスパッタ成膜
    法。
  4. 【請求項4】 成膜行程を中断して前記ターゲットを大
    気に曝すとき、前記ターゲットを大気に曝した段階で前
    記ターゲットの加熱を開始し、成膜を開始する前まで加
    熱を継続することを特徴とする請求項1記載のスパッタ
    成膜法。
  5. 【請求項5】 成膜行程を中断して前記ターゲットを大
    気に曝したとき、その後、成膜を開始する前に、前記成
    膜処理室を真空排気しながら、前記ターゲットを加熱す
    ることを特徴とする請求項1記載のスパッタ成膜法。
  6. 【請求項6】 前記ターゲットの加熱は、スパッタ成膜
    中のターゲットの加熱防止のために設けられた冷却通路
    に熱媒体を循環させることにより行われることを特徴と
    する請求項1〜5のいずれか1項に記載のスパッタ成膜
    法。
  7. 【請求項7】 前記熱媒体が温水であることを特徴とす
    る請求項6記載のスパッタ成膜法。
  8. 【請求項8】 セラミックス製のターゲットを放電によ
    ってスパッタリングして基板上に化合物薄膜を成膜する
    スパッタ装置において、スパッタ成膜中のターゲットの
    加熱防止のために循環させる冷却用の熱媒体を供給する
    冷却機構と、前記熱媒体を加熱用として用いる加熱機構
    と、前記ターゲットの近くに設けられた熱媒体通路を前
    記冷却機構と前記加熱機構のうちのいずれかに接続する
    切替え機構とを備えたことを特徴とするスパッタ装置。
  9. 【請求項9】 前記熱媒体は水であることを特徴とする
    請求項8記載のスパッタ装置。
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