JPH10328827A - アーク溶接方法及びその溶接装置 - Google Patents

アーク溶接方法及びその溶接装置

Info

Publication number
JPH10328827A
JPH10328827A JP9155994A JP15599497A JPH10328827A JP H10328827 A JPH10328827 A JP H10328827A JP 9155994 A JP9155994 A JP 9155994A JP 15599497 A JP15599497 A JP 15599497A JP H10328827 A JPH10328827 A JP H10328827A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
welding
arc
electrodes
current
electrode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP9155994A
Other languages
English (en)
Inventor
Yukio Manabe
幸男 真鍋
Nobumi Hiromoto
悦己 広本
Yasuyuki Kobayashi
泰幸 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Heavy Industries Ltd filed Critical Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority to JP9155994A priority Critical patent/JPH10328827A/ja
Publication of JPH10328827A publication Critical patent/JPH10328827A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Arc Welding In General (AREA)
  • Arc Welding Control (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 交流の溶接電流による磁界の影響を受けず、
しかもアークの持続性を向上させ、ハンピングビードや
アンダーカットを発生させることのない高品質の高速度
溶接を可能とする多電極のアーク溶接方法及びその装置
を提供する方法を提供する。 【解決手段】 所定の間隔をおいて複数の電極1、2を
配置し、この電極に交流電流印加装置5、6から交流電
流を印加する。交流の極性の切り替わり時に溶接電流が
消弧電圧になったら、再点弧電圧発生手段13、14か
らアーク再点弧電圧を電極1、2に印加する。さらに、
複数の電極1、2の交流電流の位相を位相制御手段21
によってずらして、電極1、2に交流電流を印加する。
また、交流電流の波形を矩形波として、溶接ワイヤ9、
10の短絡時間を短くする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアーク溶接方法及び
その溶接装置に関し、更に詳細に言えば、交流の溶接電
流を用い、かつ複数の電極を溶接方向に所定の間隔をお
いて設けられ、橋梁、運搬機、船舶等の大型鋼構造物を
はじめ、煙突、ボイラパネルなどを製造する際に好適に
用いられる、ガスシールドアーク溶接方法及びその溶接
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】アーク溶接、特にガスシールド溶接は溶
融池が空気中の酸素、窒素、水素等のガスの悪影響を受
けやすいので、このような影響を避けるために周知のよ
うにアルゴン、ヘリウム等の不活性ガスや炭酸ガス、ま
たはこれらの混合ガスによって溶接アークを大気から遮
蔽している(MAG溶接、MIG溶接、炭酸ガス溶接な
ど)。そして、ガスシールド溶接の電源には、図12に
示すように一般的に直流電源50、60が用いられてい
て、アークの安定性を図っていた。また、溶接を短時間
に完了させるべく、複所定間隔Lおいて複数の電極1,
2(説明の便宜上2本の電極を用いたものを示した)を
配置した多重溶接装置を用いて多重極溶接を行なってい
た。そして溶接トーチ3、4よりシールドガスを流しな
がら溶接ワイヤ9、10よりアーク11、12を同時に
用いた多電極溶接が行われ、また、高速溶接を行うには
脚長に見合った溶着金属量を確保する必要から、溶接速
度の増加に伴い、溶接電流I1、I2も必然的に大電流化
していた。
【0003】更に図14及び図15に示す様に、トーチ
3とワイヤリール36に巻回された溶接ワイヤ9とで構
成される先行電極1とトーチ4とワイヤリール37に巻
回された溶接ワイヤ10とで構成される後行電極2を所
定の間隔Lを開けて配置するとともに、切替え回路(パ
ルス発生回路)7、8を介して直流溶接電源50、60
を接続し、先行電極1にピーク電流IP1 が溶接電流I
1 として流れ、アーク11が発生している間は、後行電
極2にはベース電流IB2 だけが溶接電流I2として流
れる。逆に後行電極2にピーク電流IP2 が流れてアー
クが12が発生している間は、先行電極1にはベース電
流IB1 だけ流してベース電流にパルス電流を重畳しな
がら溶接を行う、パルス状の直流波形が交互に流れるい
わゆるパルスアーク溶接法が行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述した従
来のこの種の高速ガスシールド溶接法では、以下のよう
な問題があった。すなわち、図12に示す従来の多電極
溶接では、図13に詳細に示すように先行電極1に流れ
る溶接電流I1 によってアーク11の周辺に溶接電流の
大きさに比例した磁界が発生し、この磁界中に後行電極
2が位置するため、該後行電極2のアーク12にも影響
が及び、同相電流の場合に両アーク11、12が相互に
干渉してアークが乱れて不安定になった。このために、
溶接電流I1 、I2 を低くしなければならず、アーク1
1、12を安定する使用域は狭かった。またスパッタ3
4が多発して溶接ビード25にピット、アンダーカッ
ト、オーバラップ等の表面の欠陥が発生するためビード
の不良が生じた。従って安定した溶接が困難となった。
【0005】また、直流の溶接電流I1 、I2 を大電流
化すると、アークや溶融池35の不安定化現象がみられ
た。すなわち通常の約2倍に大電流化(500A程度)
するとアークが母材20へ及ぼす力が過大となり、図1
7〜図19に示すように溶融金属29の先行側アーク点
27から後行側アーク点28への後退移行が顕著となり
ビード25にこぶ状のハンピングビードが発生したり、
あるいはアーク力が増大して溶融金属29に隣接する母
材20が溶融して溝となって残り、アンダーカット26
が形成された。
【0006】また、上記のようなアーク干渉を避けるに
は、電極間距離Lを大きく取る必要があったが、この場
合に溶接ビード25は単電極のMAG溶接を高速で複数
回繰り返すことにより形成されることと同じであるた
め、溶接ビード25にこぶ状のハンピングビードが形成
されることになり、電流値、電圧値、速度等の溶接条件
の安定域が大幅に制限された。また、ハンピングビード
の発生は、上記の他に溶融池35の温度上昇と溶接の高
速度化によって溶融池35の前半部と後半部の温度差が
大きくなることにも起因するのであり、このために溶融
金属の後退移行が顕著となり、図16に示すようにハン
ピングビード25やアンダーカット26等の溶接欠陥が
発生した。なお29は溶融金属である。
【0007】さらに、図14及び図15に示されたパル
スアーク法においても、常に各電極が正の同相電流であ
るためにアーク干渉は零ではなく、磁気吹き(アーク干
渉)が発生した。しかも、実用化できる最高溶接電流I
1 、I2 も約500A程度であるので、高速溶接を行う
には溶接電流が不十分であった。これ以上の大電流化を
狙うと、ワイヤ先端で溶融金属29が母材20に安定的
に移行する、いわゆる1パルス1溶滴の溶滴移行が行わ
れず、安定的な溶接条件が極めて狭くなり、施工不可能
になった。
【0008】本発明の目的は、かかる従来の問題点を解
決するためになされたもので、交流の溶接電流による磁
界の影響を受けず、しかもアークの持続性を向上させ、
ハンピングビードやアンダーカットを発生させることの
ない高品質の高速溶接を可能とする多電極のアーク溶接
方法及びその装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前述した技術的課題を解
決するために、請求項1記載の発明は所定間隔をおいて
設けられた複数の電極を用いるアーク溶接方法におい
て、隣接する電極夫々に極性が正負に振れる交流電流を
印加するとともに、交流の極性の切り替わり時に溶接電
流が消弧電圧になるとアーク再点弧電圧を電極に印加す
ることを特徴とする。
【0010】さらに、請求項2に記載のように前記複数
の電極に印加する交流電流は、同位相ではなく位相をず
らして印加するのがよい。また、前記複数の電極に印加
する交流電流の波形は正弦波波形でもよいが、請求項3
に記載のように矩形波とするのがよい。
【0011】さらに、請求項4乃至7記載の発明は前記
発明を円滑に達成するためのアーク溶接装置を提案する
もので、所定間隔をあけて設けられる複数の電極と、前
記電極に極性が正負に振れる交流電流を印加する交流電
流印加手段と、消弧電圧を検知してアーク再点弧電圧を
印加する再点弧電圧発生手段とを具えたことを特徴とす
る。
【0012】この場合、請求項5に記載のように、前記
複数の電極の少なくとも一つに磁気コイルを設けるのが
よく、さらに、請求項6に記載のように前記複数の電極
のうち、先行電極の前方にワイヤ供給手段を設けるのが
よい。また、請求項7に記載のように前記複数の電極に
印加する交流電流の位相を制御する位相制御手段を、前
記交流電流印可手段に設けるのがよい。
【0013】かかる発明によれば、交流波形はパルス波
形のように正の同相電流ではなく正負に振れる位相振幅
波形であるために、電極間距離を近づけた場合において
も先行電極と後行電極間のアークが互いに相殺され安定
したアークを得る事が出来るとともに、このように溶接
電流に交流電流を用いると交流の極性の切り替わり時に
溶接電流が消弧電圧になるが、この場合はアーク再点弧
電圧を電極に印加するために溶接ワイヤと母材間に電圧
が与えられてアークの持続性が向上し、安定な交流溶接
が行われる。
【0014】特に請求項2に記載のように複数の電極に
印加する交流電流の位相をずらす事により、この位相差
によって複数のアークの間に生じる磁界の影響によるア
ークの干渉がなくなり、複数のアーク間に働く力を安定
させることができ、高精度の高速度溶接が可能になる。
即ち複数のアークを並列させた場合、電流が同極性の場
合は反発力、電流の極性が反対の場合は吸引力が働く
が、交流では電流値が刻々変化するために、それら反発
力あるいは吸引力が電流値の変化に追随して発現し、ア
ークが不安定になる。しかし、本発明のように隣接する
アーク電流の位相をずらした場合、反発力と吸引力が交
互に発現し、結果的にアークが安定することになる。実
験の結果、位相差を60〜120°の範囲に設定した場
合は適正な溶接が可能である事を確認した。
【0015】更に請求項3に記載のように複数の電極に
印加する交流電流の波形を矩形波とすることにより、溶
接ワイヤの短絡時間が短くなり、その時間のアークの安
定性が向上する。又請求項5に記載のように複数の電極
の少なくとも一つに磁気コイルを設け、該磁気コイルの
磁場を溶融域に作用することにより、溶融池の挙動も安
定し、母材と溶接部の境目にアンダーカットが発生する
ことはなく、またハンピングビードの発生も防止され
る。
【0016】又請求項6記載のように、先行電極の前方
にワイヤ供給手段を設けたことにより、先行電極の前方
に添加ワイヤを挿入する事により大電流溶接時の溶融池
の温度上昇が防止され、溶融金属の後方流れが抑制され
て、アンダーカットやハンピングビードのない安定した
溶接ビードが形成される。更に本発明は、ガスシールド
溶接での交流位相制御のために、アークの偏向がなく、
狭開先溶接や全姿勢溶接も可能であるうえ、アークに働
く力が安定していてアークの監視も頻繁に行う必要がな
いために、溶接の自動化も可能になる。
【0017】
【発明の実施の形態】まず、本発明のアーク溶接装置を
図1に示される一実施形態について説明する。ただし、
この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材
質、形状、その相対的配置などは特に特定的な記載がな
い限りは、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨で
はなく、単なる説明例にすぎない。
【0018】図1には本発明の一実施形態に係る多電極
ガスシールドアーク溶接装置を接続配線図にて示してい
る。本実施の形態では多電極ガスシールドアーク溶接装
置100は、二つの電極1、2をもつものを例示した。
そして先行電極1と後行電極2とは所定の間隔Lをおい
て配置されている。各電極1、2には、ワイヤリール
(図示せず)に巻回されていて連続的に送給される溶接
ワイヤ9、10と、この溶接ワイヤを囲む同心のノズル
を備える溶接トーチ3、4から構成される。各溶接トー
チ3、4内にはシールドガス(アルゴン・ヘリウムなど
の不活性ガス、炭酸ガス、アルゴンと炭酸ガスとを適当
な割合で混合したガス)を供給してアーク11、12を
外気から遮断するように構成している。
【0019】前記先行電極1には交流溶接電流を印加す
る溶接電源5(定格出力電流1500A)が接続される
とともに、後行電極2には同じく交流溶接電流を印加す
る溶接電源6が接続されていて、交流電流I1 、I2
各電極1、2に印加して溶接ワイヤ9、10と母材20
の間にアーク11、12が形成される。また、溶接電源
5及び6には、アーク電圧が消弧電圧になると消弧電圧
を検知して再点弧電圧を印加し、アーク再点弧を容易に
行うための再点弧電圧発生装置13、14が接続されて
いる。
【0020】前記溶接トーチ3、4は前記母材20を載
置する高速台車19との間に高周波スターター22、2
3が接続しており、アークスタート性を向上させるよう
になっている。さらに、高速台車19と前記溶接電源
5、6との間にはインターフェースボックス15、16
が接続されていて、アーク溶接装置を自動運転するため
の各種信号のやりとりを可能にしている。また、高速台
車19には高速台車制御盤18が接続されていて、高速
台車19の運転を制御するようになっている。前記溶接
電源5と6は、位相制御手段であるオートトランス21
によって結ばれており、このオートトランスは溶接電源
5、6で発生する交流電流の位相を制御するように構成
されている。そして、上記の前記要素の接続中心には本
溶接装置の操作箱17が位置している。
【0021】次に、図1に示すアーク溶接装置を用いて
本発明の実施形態にかかるアーク溶接を行った。ちなみ
に、本アーク溶接装置は溶接電源5、6の定格出力が1
500A、再点弧電圧発生装置13、14の再点弧電圧
が200〜300Vで再点弧電圧発生時間が500μs
とした。
【0022】また、溶接条件として溶接電源5の溶接電
流I1 、I2 を、先行電極1ではピーク値で850A〜
1000Aが正負に振れる交流電流、後行電極2でピー
ク値を500A〜700Aが正負に振れる交流電流、溶
接電圧を両極とも28〜32vに設定した。また、電極
間距離Lを50〜70mm、先行電極1と後行電極2に
90°の位相差を与えて交流の溶接電流波形I1 、I2
を重畳しながら溶接を行った。また、溶接ワイヤ9、1
0にはメタル系コアードワイヤ40mmφを使用し、シ
ールドガスとして両電極1、2にCO2 もしくは、Ar
+20%CO2 を用いるとともに、シールドガスの流量
を100(l)/minずつ両電極に流すように設定し
た。
【0023】図2に示すように先行電極1の前進角α1
を10°に、そして後行電極2の後退角α2 を10°に
設定するとともに、図3に示すように先行電極1の溶接
トーチ3と後行電極2の溶接トーチ4の各トーチ傾斜角
θを45°に設定し且つ狙い位置をdだけずらして、以
下に述べるような方法で3m/minの溶接速度で水平
すみ肉溶接を行った。
【0024】まず、先行電極1に溶接電源5から図4
(a)に実線で示すような極性切換時の立ち上がり、立
ち下がり時間の短い矩形波の交流電流(図面では+側)
を印加するとともに、同方向に再点弧電圧発生装置13
からパルス状の再点弧電圧を印加し、高周波スターター
22によりアークスタート性をよくすることにより、溶
接アーク11が速やかに発生する。次に、オートトラン
ス21により交流溶接電源6には交流電源5から90°
位相がずれて矩形波の交流が発生するようになってお
り、該交流電源から矩形波の交流後行電極2に点線で示
すように位相差を90°もたせた矩形波状のほぼ同一波
形の交流電流(図面では+側)が印加されるとともに、
同方向に再点弧電圧発生装置14からパルス状の再点弧
電圧を印加し、高周波スターター23によりアークスタ
ート性を良くすることにより、溶接アーク12が速やか
に発生する。
【0025】先行電極1と後行電極2は上記のように位
相差を90°に設定してあるから、位相が90°進む間
は両電極1、2のアーク電流が同じ極性のために反発力
が働く。さらに、位相が90°進むと、交流電流5から
矩形波の交流の極性が+から−に短時間に逆転する。こ
のとき、交流の極性切替時の電圧がインターフェースボ
ックス15を通じて検知され、インターフェースボック
ス15を通じて溶接電流が消弧電流になったことが本装
置の操作箱17に伝わる。すると、再点弧電圧発生装置
13からパルス状の再点弧電圧が−側に発生するように
操作箱17により制御される。
【0026】その結果、先行電極1に印加される溶接電
源5からの交流が消弧電流になっても、再点弧電圧によ
り安定したアークの確保が可能となる。この後、位相が
90°進む間の両電極1、2のアーク電流の極性は反対
になるため両電極間に吸引力が働く。更に位相が90°
進むと、溶接電源6からの矩形波の交流は極性が+から
−に短時間で逆転する。このとき、インタフェースボッ
クス16を通じて溶接電流が消弧電流になったことが操
作箱17に伝わり、再点弧電圧発生装置14からパルス
状の再点弧電圧が図では−側に発生するように制御が行
われる。この結果、後行電極2に印加される溶接電源6
からの交流が消弧電流になっても再点弧電圧により安定
したアークの確保が可能となる。
【0027】さらに、位相が90°進むと、溶接電源5
から矩形波の交流は極性が−から+へ短時間に逆転す
る。このとき、インターフェースボックス15を通じて
溶接電流が消弧電流になったことが操作箱17に伝わ
り、再点弧電圧発生装置13からパルス状の再点弧電圧
を図では−から+側に発生するように制御される。この
ようにして、以後繰り返し電流の極性が逆転して、消弧
電流になるたびに再点弧電圧を印加し、かつ位相をずら
すことにより、反発と吸引が交互に発現することにより
アーク間に働く力を安定させることができる。そして溶
接後は超音波探傷及び断面マクロ調査を行ない、欠陥の
有無を調べた所高速溶接で発生しやすいスラグ巻き込み
やアンダーカット等の溶接欠陥の発生もなく、図5及び
図6に示すような良好な溶接結果を得た。
【0028】特に本実施形態において2本の電極1、2
に通常の正弦波の交流を用いずに矩形波を用いたのは、
正弦波の交流では電流の極性の逆転はなだらかに行われ
るため、判定前後の電流値が0に近い状態になったとき
にアークが消弧するからである。そして図4(b)に示
すように消弧電流を感知した後、再点弧電圧発生装置1
3、14から再点弧電流を印加したところ、極短時間に
アーク11、12が得られた。
【0029】さらに、交流電流値がほぼ0に近く、消弧
の状態にある時間を短くし、さらに安定を図るために、
図4(a)に示すように交流波形を極性逆転時の立ち上
がり、立ち下がり時間の短い矩形波を採用した。その結
果、溶接中の電流はほぼ一定で、極性が逆転するときの
消弧電流しか流れない、時間の短いパターンが可能とな
り、再点弧電圧を印加したのち短時間で溶接電流が定格
電流に達するようになり、図4(b)の場合よりも一層
安定した溶接が可能となった。なお、位相差は90°に
限定されるのではなく、60°〜120°の範囲で最適
位相差を選択して実施することができる。
【0030】第1の実施の形態で用いられたアーク溶接
装置の後行電極2の溶接トーチ4の先端部に、図7に示
すように磁気コイル31を取り付け、この磁気コイル3
1に磁場発生用としてコイル電流5Aを流し、中心磁束
密度を0.03T(ガウシアン分布)にして溶接を行
う。
【0031】このように磁気コイル31に電流を流すと
板厚方向に磁場が発生し、この磁場とアーク電流により
溶融池35の溶融金属に回転力が発生し、溶融池35の
温度分布の均一化が実現する。同時に溶接ビード25の
幅が広がり、溶融池35が拡大することになり、図17
〜図19に示すような母材20と溶接部の境目にアンダ
ーカット26やこぶ状のハンピングビード25の発生も
防止され、図8、図9に示すような良好な溶接結果が得
られた。なお、本実施の形態では、磁気コイル31を後
行電極2に取り付けたが、先行電極1に取り付けても、
あるいは両電極に取り付けても、同様の効果が得られ
る。
【0032】第1の実施の形態で用いられたアーク溶接
装置の先行電極1に、図10に示すように添加ワイヤ供
給装置32を設置し、溶接実施中に溶融池35に添加ワ
イヤ33を供給できるようにした。なお、この供給装置
はTIG溶接に採用されているものと同じものでよく、
この供給装置自体に溶接電流を流して溶融する機能は必
要ない。
【0033】アーク溶接を実施中、先行電極1のアーク
点27から約3mm程度前方の位置に1.2φのソリッ
ドワイヤ33を2.8m〜3m/minの供給速度で挿
入した。従来法では900A以上の大電流化をすると前
記したようなハンピングビードが発生しやすいが、本実
施形態によれば溶融池35の前半部と後半部に生じる温
度差が低減された。また、ソリッドワイヤ33添加によ
って溶融量が増大することになり、その結果、ハンピン
グビード25の発生が防止され、図11に示すような健
全な溶接結果が得られた。
【0034】なお、本実施の形態で添加ソリッドワイヤ
33の供給速度を2.8m〜3m/minとしたのは、
本実施の形態では供給速度を2.8m/min以下にす
ると、アーク熱により溶融池35に届く前にワイヤが溶
けてしまい、また、3m/min以上にすると、添加ソ
リッドワイヤ33の供給が早すぎて溶融しなかったから
である。添加ソリッドワイヤ33の供給速度はワイヤの
太さ、あるいは溶接電流の大きさ等の条件に応じて異な
り、適宜選定することができることは言うまでもない。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1及び4記
載の発明によれば、複数の電極夫々に交流電流を印加
し、交流の極性の切り替わり時に溶接電流が消弧電圧に
なるとアーク再点弧電圧を電極に印加するようにしたこ
とによって、ワイヤと母材間に安定的に電圧が与えられ
ることになり、アークの持続性が向上し、アークが安定
した状態での溶接が可能になる。請求項2記載の発明に
よれば、複数の電極に印加する交流電流の位相をずらす
ようにしたので、この位相差によって複数のアークの間
に生じる磁界の影響によるアークの干渉がなくなり、複
数のアーク間に働く力を安定させることができ、高精度
の高速度溶接が可能になる。
【0036】請求項2記載の発明によれば、複数の電極
に印加する交流電流の波形を矩形波としたので、溶接ワ
イヤの短絡時間が短くなり、その時間のアークの安定性
が向上する。請求項5記載の発明によれば、複数の電極
の少なくとも一つに磁気コイルを設けたことにより、溶
融池の挙動も安定し、母材と溶接部の境目にアンダーカ
ットが発生することはなく、またハンピングビードの発
生も防止される。
【0037】請求項6記載の発明によれば、先行電極の
前方に添加ワイヤを挿入することにより、大電流溶接時
の溶融池の温度上昇が防止され、溶融金属の後方流れが
抑制されて、アンダーカットやハンピングビードのない
安定した溶接ビードが形成される。請求項7記載の発明
によれば、ガスシールド溶接での交流位相制御のため
に、アークの偏向がなく、狭開先溶接や全姿勢溶接も可
能であるうえ、アークに働く力が安定していてアークの
監視も頻繁に行う必要がないために、溶接の自動化も可
能になる。従って前記した各発明によれば、従来から多
重極大電流高速溶接の諸欠点を大幅に改善でき、その有
用性は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である交流多電極高速溶接
装置の接続配線図である。
【図2】図1の交流多電極高速溶接装置の電極部の正面
図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】(a)は第1の実施形態に用いられた交流位相
制御の矩形波の電流波形図である。(b)は他の変形例
の電流波形図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の溶接ビードの正面図
である。
【図6】図5のA−A線における断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の溶接装置の電極部の
部分正面図である。
【図8】図7の溶接装置による溶接ビードの正面図であ
る。
【図9】図8のB−B線における断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の溶接装置の電極部
の部分正面図である。
【図11】図10の実施形態による溶接ビードの正面図
である。
【図12】従来の直流多電極溶接装置の概略図である。
【図13】図12の電極部の部分拡大正面図である。
【図14】従来の直流パルス多電極高速溶接機の概略図
である。
【図15】図14の溶接機の電流波形図である。
【図16】従来の直流溶接法による溶接ビードの外観図
である。
【図17】従来の直流パルス溶接法による溶接ビードの
外観図である。
【図18】図17のB−B線における断面図である。
【図19】図18のビードの外観図である。
【符号の説明】
1 電極(先行) 2 電極(後行) 5 交流電流印加装置(溶接電源) 6 交流電流印加装置(溶接電源) 9、10 ワイヤ 13 再点弧電圧発生手段 14 再点弧電圧発生手段 21 位相制御手段(オートトランス) 31 磁気コイル 32 添加ワイヤ供給手段 100 アーク溶接装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B23K 9/12 301 B23K 9/12 301C

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定間隔をおいて設けられた複数の電極
    を用いるアーク溶接方法において、 隣接する電極夫々に極性が正負に振れる交流電流を印加
    するとともに、交流の極性の切り替わり時に溶接電流が
    消弧電圧になるとアーク再点弧電圧を電極に印加するこ
    とを特徴とするアーク溶接方法。
  2. 【請求項2】 前記複数の電極に印加する交流電流の位
    相をずらすことを特徴とする請求項1記載のアーク溶接
    方法。
  3. 【請求項3】 前記複数の電極に印加する交流電流の波
    形を矩形波としたことを特徴とする請求項1又は2記載
    のアーク溶接方法。
  4. 【請求項4】 所定間隔をあけて設けられる複数の電極
    と、前記隣接する電極夫々に極性が正負に振れる交流電
    流を印加する交流電流印加手段と、消弧電圧を検知して
    アーク再点弧電圧を印加する再点弧電圧発生手段とを具
    えたことを特徴とするアーク溶接装置。
  5. 【請求項5】 前記複数の電極の少なくとも一つに磁気
    コイルを設けたことを特徴とする請求項4記載のアーク
    溶接装置。
  6. 【請求項6】 前記複数の電極のうち、先行電極の前方
    にワイヤ供給手段を設けたことを特徴とする請求項4又
    は5記載のアーク溶接装置。
  7. 【請求項7】 前記複数の電極に印加する交流電流の位
    相を制御する位相制御手段を、前記交流電流印可手段に
    設けたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1記載
    のアーク溶接装置。
JP9155994A 1997-05-29 1997-05-29 アーク溶接方法及びその溶接装置 Withdrawn JPH10328827A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9155994A JPH10328827A (ja) 1997-05-29 1997-05-29 アーク溶接方法及びその溶接装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9155994A JPH10328827A (ja) 1997-05-29 1997-05-29 アーク溶接方法及びその溶接装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10328827A true JPH10328827A (ja) 1998-12-15

Family

ID=15618032

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9155994A Withdrawn JPH10328827A (ja) 1997-05-29 1997-05-29 アーク溶接方法及びその溶接装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10328827A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002192363A (ja) * 2000-12-26 2002-07-10 Daihen Corp レーザ照射交流アーク溶接方法
EP1439021A2 (en) * 2003-01-17 2004-07-21 Lincoln Global, Inc. Electric arc welding system
EP1462203A2 (en) * 2003-03-24 2004-09-29 Lincoln Global, Inc. Arc welding system and method
KR20160105901A (ko) * 2014-02-12 2016-09-07 가부시키가이샤 고베 세이코쇼 다전극 편면 서브 머지 아크 용접 방법, 용접물의 제조 방법
CN113231714A (zh) * 2021-04-21 2021-08-10 广东开放大学(广东理工职业学院) 铝合金材料混合脉冲群焊接方法、系统、装置及存储介质
WO2022034132A1 (de) * 2020-08-13 2022-02-17 Fronius International Gmbh Verfahren und schweissvorrichtung zum berührungslosen zünden eines lichtbogens
JP2022121338A (ja) * 2021-02-07 2022-08-19 哈尓濱▲旱▼接研究院有限公司 複数のアークの共同による融解池に基づく厚板の溶接に適用するアーク安定化方法

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002192363A (ja) * 2000-12-26 2002-07-10 Daihen Corp レーザ照射交流アーク溶接方法
EP1439021A2 (en) * 2003-01-17 2004-07-21 Lincoln Global, Inc. Electric arc welding system
US7411156B2 (en) 2003-01-17 2008-08-12 Lincoln Global, Inc. Electric arc welding system
US6847008B2 (en) * 2003-01-17 2005-01-25 Lincoln Global, Inc. Electric arc welding system
US7148449B2 (en) 2003-01-17 2006-12-12 Lincoln Global, Inc. Electric ARC welding system
EP1439021A3 (en) * 2003-01-17 2005-05-11 Lincoln Global, Inc. Electric arc welding system
US7105772B2 (en) 2003-03-24 2006-09-12 Lincoln Global, Inc. Arc welding system and method
EP1462203A3 (en) * 2003-03-24 2005-05-11 Lincoln Global, Inc. Arc welding system and method
EP1462203A2 (en) * 2003-03-24 2004-09-29 Lincoln Global, Inc. Arc welding system and method
KR20160105901A (ko) * 2014-02-12 2016-09-07 가부시키가이샤 고베 세이코쇼 다전극 편면 서브 머지 아크 용접 방법, 용접물의 제조 방법
WO2022034132A1 (de) * 2020-08-13 2022-02-17 Fronius International Gmbh Verfahren und schweissvorrichtung zum berührungslosen zünden eines lichtbogens
JP2022121338A (ja) * 2021-02-07 2022-08-19 哈尓濱▲旱▼接研究院有限公司 複数のアークの共同による融解池に基づく厚板の溶接に適用するアーク安定化方法
CN113231714A (zh) * 2021-04-21 2021-08-10 广东开放大学(广东理工职业学院) 铝合金材料混合脉冲群焊接方法、系统、装置及存储介质

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100219813B1 (ko) Mag 아아크 용접 방법 및 용접장치
US9718147B2 (en) Method and system to start and use combination filler wire feed and high intensity energy source for root pass welding of the inner diameter of clad pipe
US7397015B2 (en) Metal cored electrode for open root pass welding
US6051810A (en) Short circuit welder
US9085041B2 (en) Method and system to start and use combination filler wire feed and high intensity energy source for welding
US8373093B2 (en) Method and system to increase heat input to a weld during a short-circuit arc welding process
CN104334304B (zh) 同步磁电弧操控与焊接
KR102090841B1 (ko) 직류 정극성의 회전 아크 용접 방법 및 시스템
US20130327749A1 (en) Method and system to start and use combination filler wire feed and high intensity energy source for welding aluminum to steel
US20150151376A1 (en) Method and system to increase heat input to a weld during a short-circuit arc welding process
JP2017510463A (ja) Ac溶接波形を使用して溶接するシステム及び方法並びに亜鉛めっき加工物の溶接を改善する強化された消耗材料
JP2011218387A (ja) アーク溶接方法およびその装置
JP3196140U (ja) タンデム埋れアーク溶接
WO2014009800A2 (en) Method and system to start and use combination filler wire feed and high intensity source for welding
JP6643813B2 (ja) 水平すみ肉溶接方法、水平すみ肉溶接システム及びプログラム
JPH10328827A (ja) アーク溶接方法及びその溶接装置
JPH04333368A (ja) Magアーク溶接方法及び溶接装置
JPS60255276A (ja) 消耗電極式ア−ク溶接法
WO2021153011A1 (ja) ガスシールドアーク溶接の出力制御方法、溶接システム、溶接電源及び溶接制御装置
JP7000790B2 (ja) Mig溶接方法及びmig溶接装置
JPH0320310B2 (ja)
JP4772957B2 (ja) レーザ照射交流アーク溶接方法
WO2020202508A1 (ja) Mig溶接方法及びmig溶接装置
CN114340827B (zh) 用于实施多重焊接方法的方法和焊接设备
JP2014516794A (ja) 回転アークおよびAr/He/CO2ガス混合物を用いたステンレス鋼のMIG/MAG溶接

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20040803