JPH10316683A - 蛍光イオノホア化合物 - Google Patents

蛍光イオノホア化合物

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JPH10316683A
JPH10316683A JP10089147A JP8914798A JPH10316683A JP H10316683 A JPH10316683 A JP H10316683A JP 10089147 A JP10089147 A JP 10089147A JP 8914798 A JP8914798 A JP 8914798A JP H10316683 A JPH10316683 A JP H10316683A
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ジェイ.ハルバーソン クルト
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ヒュン チョ シ
John E Trend
イー.トレンド ジョン
Elisa M Cross
エム.クロス エリサ
Cary A Kipke
エー キプケ クレイ
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ヤフソ マサオ
Sanjay L Patil
エル.パティ サンジャ
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  • Investigating Or Analyzing Non-Biological Materials By The Use Of Chemical Means (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた光安定性を示す蛍光イオノホア化合物
を提供すること。 【解決手段】 クリプタンド又はクラウンエーテル部分
のような錯化部分とクマリン部分のような発蛍光部分と
を含む蛍光イオノホア化合物を開示する。前記クマリン
部分は、その3位で置換芳香族基又はそのα位のうちの
少なくとも1箇所にヘテロ原子を有する置換複素環式基
のような電子吸引性又は分極性基により置換されていて
もよい。優れた光安定性を示すこの化合物を、適切な位
置にある共有結合によりカチオン検出用複合構造物に組
み込むことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カチオン、特にア
ルカリ金属カチオンの検出に使用することができる蛍光
イオノホア化合物及びそれらの使用方法に関する。本発
明は、これらの化合物を含み、かつ、連続検出用途に有
用なカチオン検出用複合構造物にも関する。
【0002】
【従来の技術】種々の流体中のイオン成分の濃度測定は
ますます普及している方法である。環境試験方法は、1
種以上の金属イオン、特に重金属イオンの濃度を頻繁
に、そして時には連続的に決定することを伴う場合があ
る。同様に、医療診断方法及び治療方法は、患者の1種
以上の体液中に含まれる1種以上のイオンの濃度を頻繁
に又は連続的に決定することを伴う場合がある。
【0003】より良い連続試験方法に対する要求は拡大
している。医療処置に関し、特に血液及び他の体液中の
血清カリウムイオンレベルの連続同時監視が、特に心臓
バイパス外科手術中に、非常に望ましい。
【0004】金属イオン濃度の測定に関して幾つかの方
法がこれまで報告されている。例としては、イオン交換
膜に基づく検出;試薬の存在を伴う分光光度技術及び蛍
光分析技術;湿式電極;及びイオノホアに基づく検出法
がある。
【0005】しかしながら、上記方法のうちの幾つかは
アルカリ金属イオン濃度を決定するのに有効ではない。
これらの方法のうちアルカリ金属イオン濃度を決定する
ために通常使用されている方法は、そのようなイオン
(又はそれらの錯体)を含む溶液の種々の光学的特性を
監視する方法である。これらのうち蛍光を測定する技術
は、励起(プローブ)及び発光(シグナル)波長の本質
的分離に基づく感度及び操作上の利点を有するために、
他の分光学的観測に基づくものよりも好ましい。生体外
カチオン濃度決定に有用な化合物は、例えば米国特許第
4,808,539号明細書及びAnthony Czarnick編集
のFluorescent Chemosensors for Ion andMolecule Rec
ognition に記載されている。これらのカチオンには、
アルカリ金属のみならずAg+ 、Pb2+、Mn2+、Zn
2+、Hg2+、Ti+ 、及びCd2+も含まれる。
【0006】生体内システムを製造するためにファイバ
ーオプチック化学センサーを使用することも開示されて
いる。例としては、化学センサーが被検体と相互作用し
て光学的変化を検出するようにファイバーオプチック導
波管に化学センサーを導入すること;ファイバーオプチ
ック導波管内の化学センサーとして蛍光エネルギー転移
指示体の束縛対(tethered pair)の使用;共鳴エネルギ
ー転移が起こり得るほど吸収体物質に十分に近接してい
る基材に固定化された蛍光体(substrate-immobilized
fluorescer) により発生するシグナルを監視するための
ファイバーオプチックスの使用;光吸収性配位子及び光
吸収性錯体と組み合わされた発蛍光物質を含む系におけ
る蛍光を検出するためのファイバーオプチックスの使
用;並びに特定のアルカリ金属イオンに対して選択性の
ある可動イオノホアと半透膜を通して接触している重合
体カチオン物質と蛍光アニオン物質とを含む溶液を含む
系におけるファイバーオプチックスによる蛍光の検出が
ある。
【0007】生体内/生体外での使用に適合させること
ができる可能性のある幾つかの蛍光分析法が開示されて
いる。例えば、発蛍光団としてのローダミンエステル及
びメロシアニン540 とイオノホアとしてのバリノマイシ
ンからなる蛍光プローブが既知である。最近、2,2−
ビス[3,4−(15−クラウン−5)−2−ニトロフ
ェニルカルバモキシメチル]テトラデカノール−14
と、発蛍光団として錯体カリウムイオンに選択的に結合
したローダミンBを使用するファイバーオプチックセン
サーが開示された。この後者の装置は生体内用途に適す
るように特別に設計されている。
【0008】前述の方法の幾つかは、生理的濃度での、
特に生理的pHの水性媒体中でのアルカリ金属イオンに対
する感度及び選択性の不足に悩まされてきた。選択性の
問題の幾つかを解消する方法であって、クリプタンドを
選択的にカリウムと錯化させる方法が開示されている。
この方法の感度は乏しい。また、この方法は有機塩基の
存在下で有機溶剤中で実施されねばならないため、連続
的な血液又は流体の測定には向かない。
【0009】種々のクリプタンドに結合した4−メチル
−クマリン部分に基づく一群の蛍光を発するイオノホア
も開示されている(米国特許第5,162,525号、
Masilamani等)。カリウムイオンに対して選択性のある
[2.2.2]クリプタンド誘導体:
【0010】
【化3】
【0011】は、前述の選択性の制限をうけず、蛍光に
よるカリウムイオン濃度決定を可能にする。しかしなが
ら、その最大励起は330nm付近にあり、慣用的なガラ
ス光学部材との併用には問題がある。
【0012】関連出願本願は、米国特許出願第08/1
40,257号(現在は米国特許第5,474,743
号)の分割出願である米国特許出願明細書第08/52
1,869号の一部係属出願である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、イオンを結合するため
の錯化部分及び発蛍光部分を含む蛍光イオノホア化合物
(「イオノホア」)を提供する。この化合物の吸収極大
波長は少なくとも約350nmである。これらの化合物を
含むセンサーも開示する。
【0014】適切な発蛍光部分は好ましくは近接してい
るnπ* 及びππ* 励起状態を含む。適切な発蛍光部分
は、適切な錯化部分に結合した場合に、好ましくはイオ
ン依存性のある面外パッカリング(out-of plane pucke
ring) をすることができるものである。また、適切な発
蛍光部分のππ* 状態は、好ましくはイオン依存性のあ
る混成が基底状態への無放射カップリングを支配するほ
ど十分にエネルギーが高い。特に好ましい発蛍光部分に
はクマリン部分が包含されるが、他の芳香族カルボニル
若しくはニトロ芳香族又はN−複素環式部分が使用され
てもよい。
【0015】適切なイオン錯化部分にはイオンを捕捉す
ることができる環状「ケージ(cage)」部分が包含され
る。このケージはイオンを選択的に捕捉することができ
るものであることが好ましい。好ましいイオン錯化部分
にはクリプタンド及びクラウンエーテル部分が包含さ
れ、クリプタンド部分が特に好ましい。
【0016】本発明の化合物を使用して検出することが
できるイオンには、例えば、Ag+、Ba+2、Ca+2
Ce+ 、Cd2+、Fr+ 、Hg2+、K+ 、Li+ 、Mg
+2、Mn2+、Na+ 、Pb+2、Ru+ 、Sr+2、Ti+
及びZn2+が包含される。所望であれば、この化合物は
イオン選択膜と共に使用される。
【0017】一態様において、本発明は、下記一般式
(式「A」):
【化4】 により表される蛍光イオノホア化合物を提供する。ここ
で、Tは、TがOである場合にqが0であり、かつ、n
が0〜2であること並びにTがNである場合にqが1で
あり、かつ、nが独立に0又は1であることを条件とし
て、O又はNであり;各R2 は独立に、水素、ハロゲ
ン、ヒドロカルビル含有基、複素非環式基、又は式:
(CH2 X)a E(式中、XはO、NH若しくは単結合
であり、Eは活性水素を含有する官能基であり、aは1
〜100の整数である)により表される基のような部分
を包含する立体障害作用のない基であり、好ましくは各
2 基は水素、ハロゲン、C1 〜C20アルキル、C1
20アルコキシ、C2 〜C18アルケニル、C1 〜C20
ドロカルビルアミノ、C2 〜C20ジ(ヒドロカルビル)
アミノ及び式:(CH2 X)a E(式中、X及びEは上
記定義の通りのものであり、aは1〜25の整数であ
る)により表される基からなる群から独立に選ばれ、よ
り好ましくは各R2 基は水素、ハロゲン、C1 〜C10
ルキル、C1 〜C10アルコキシ、C2 〜C10アルケニ
ル、C1 〜C10アルキルアミノ、C1 〜C10ジアルキル
アミノ及び式:(CH2 X)a E(式中、X及びEは上
記定義の通りのものであり、aは1〜10の整数であ
る)により表される基からなる群から独立に選ばれ、最
も好ましくは各R2 基は水素、メチル、エチル、プロピ
ル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、C2
10アルケニル、C1 〜C10ジアルキルアミノ、塩素、
臭素、又は式:(CH2 X)a E(式中、X及びEは上
記定義の通りのものであり、aは1〜3の整数である)
により表される基からなる群から独立に選ばれ;R
3 は、適切な電子吸引性基及び非電子吸引性基から選ば
れる。適切なR3 基には、水素、ヒドロカルビル含有
基、複素非環式基、複素環式基、又は式:(CH2 X)
b E(式中、X及びEは上記定義の通りのものであり、
bは0〜100の整数である)により表される基のよう
な電子吸引性基及び非電子吸引性部分が包含され、好ま
しくは各R3 基は水素、C1 〜C20アルキル、C3 〜C
18シクロアルキル、C6 〜C18アリール、C6 〜C18
リールオキシ、C6 〜C18ヒドロキシアリール、C6
18アリールカルボキシ、C6 〜C18カルボキシアリー
ル、C2 〜C18アルケニル及び式:(CH2 X)b
(式中、X及びEは上記定義の通りのものであり、bは
0〜25の整数である)により表される基からなる群か
ら独立に選ばれる非電子吸引性基であり、より好ましく
は各R3 基は水素、C1 〜C10アルキル、C5 〜C8
クロアルキル、C6 〜C10アリール、少なくとも1個の
O、N又はS原子を含む複素環式基、C2 〜C10アルケ
ニル及び式:(CH2 X)b E(式中、X及びEは上記
定義の通りのものであり、bは0〜10の整数である)
により表される基からなる群から独立に選ばれ、最も好
ましくは各R3 基は水素、メチル、エチル、プロピル、
ブチル、C5 〜C8 シクロアルキル、C6 〜C10アリー
ル、C2 〜C10アルケニル、C1 〜C10ジアルキルアミ
ノ又は式:(CH2 X)b E(式中、X及びEは上記定
義の通りのものであり、bは0〜3の整数である)によ
り表される基からなる群から独立に選ばれ;R1 は、カ
ルボキシル、カルボキサミド、スルホニルアリール、エ
ステル、ケト−アルキルエステル、複素環式部分及び芳
香族基(好ましくは1箇所以上の位置で置換されたも
の)のような部分を包含する適切な電子吸引性基及び分
極性基から選ばれ、好ましくはR1 基はエステル(より
好ましくはエチルエステル)、ケトーアルキルエステル
(より好ましくは−(CO)CH2 CH2 CH2 (C
O)OCH2 CH3 )、並びに置換されたフェニル、ベ
ンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル及びベンゾチア
ゾリルのような置換芳香族基を包含し、最も好ましくは
1 基は一般式(式「C」):
【0018】
【化5】
【0019】(上式中、Y及びY’は、それらの少なく
とも一方がO、S又はNHx であることを条件として独
立にO、S、NHx 又はCHy (式中、xは0又は1で
あり、yは1又は2である)であり、各R4 基は水素、
ハロゲン、ヒドロカルビル含有基、複素非環式基、複素
環式基若しくは式:(CH2 X)c E(式中、X及びE
は上記定義の通りのものであり、cは0〜100の整数
である)により表される基からなる群から独立に選ばれ
るものであるか、又は両方のR4 基がそれらが結合して
いる炭素原子と共に5員若しくは6員環を形成し、この
5員若しくは6員環に任意に1個以上のさらなるR4
が結合していてもよく、好ましくは各R4基は水素、ハ
ロゲン、C1 〜C20アルキル、C1 〜C20アルコキシ、
3 〜C18シクロアルキル、C6 〜C18アリール、C6
〜C18アリールオキシ、C6 〜C18ヒドロキシアリー
ル、C6 〜C18アリールカルボキシ、C6 〜C18カルボ
キシアリール、C2 〜C18アルケニル、C1 〜C20ヒド
ロカルビルアミノ、C6 〜C18アリールアミノ、C6
18アミノアリール、C2 〜C20ジ(ヒドロカルビル)
アミノ、少なくとも3個の環原子を有する複素環式基、
カルボキサミド(−C(O)NR1 2 )若しくは式:
(CH2 X)c E(式中、X及びEは上記定義の通りの
ものであり、cは0〜25の整数である)により表され
る基からなる群から独立に選ばれるものであるか、又は
両方のR4 基がそれらが結合している炭素原子と共に5
員若しくは6員環を形成し、この5員若しくは6員環に
任意に1個以上のさらなるR4 基が結合していてもよ
く、より好ましくは各R4 基は水素、ハロゲン、C1
10アルキル、C1 〜C10アルコキシ、C5 〜C8 シク
ロアルキル、C6 〜C10アリール、少なくとも1個の
O、N若しくはS原子を含む複素環式基、C2 〜C10
ルケニル、C1 〜C10アルキルアミノ、C1 〜C10ジア
ルキルアミノ若しくは式:(CH2 X)c E(式中、X
及びEは上記定義の通りのものであり、cは0〜10の
整数である)により表される基からなる群から独立に選
ばれるものであるか、又は両方のR4 基がそれらが結合
している炭素原子と共に5員若しくは6員環を形成し、
この5員若しくは6員環に任意に1個以上のさらなるR
4 基が結合していてもよく、最も好ましくは各R4 基は
水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、
エトキシ、プロポキシ、C5 〜C8 シクロアルキル、少
なくとも1個のO、N若しくはS原子を含む5員若しく
は6員複素環式基、C6 〜C10アリール、C2 〜C10
ルケニル、C1 〜C10ジアルキルアミノ、塩素、臭素若
しくは式:(CH2 X)c E(式中、X及びEは上記定
義の通りのものであり、cは0〜3の整数である)によ
り表される基からなる群から独立に選ばれるものである
か、又は両方のR4 基がそれらが結合している炭素原子
と共に5員若しくは6員環を形成し、この5員若しくは
6員環に任意に1個以上のさらなるR4 基が結合してい
てもよい)により表される置換複素環式部分を包含し;
並びにZはO又はNR5 (式中、R5 は水素又はヒドロ
カルビル含有基であり、より好ましくはR5 はH又はC
1 〜C4 アルキル基であり、最も好ましくはR5 はHで
ある)である。
【0020】青色光源と共に使用する特に好ましい態様
において、本発明は、一般式(「B」):
【0021】
【化6】
【0022】(式中:m及びnは独立に0又は1であ
り、ZはO又はNR5 (式中、R5 はH又はアルキル基
であり、より好ましくはR5 はH又はC1〜C4アルキ
ル基であり、最も好ましくはR5 はHである)であり;
Y及びY’は、それらの少なくとも一方がO、S又はN
x であることを条件として独立にO、S、NHx 又は
CHy (式中、xは0又は1、yは1又は2である)で
あり;R2 、R3 及びR4 は式Aに関して既に定義した
通りである)により表される蛍光イオノホア化合物を提
供する。このイオノホアは基材に共有結合される場合に
は、R2 、R3 又はR4 の少なくとも1つはH以外のも
のでなくてはならない。
【0023】概して、式Aにより表される化合物の励起
波長は少なくとも約350nmであり、発光波長は好まし
くは約500nm以下である。式Bにより表される化合物
の励起波長は少なくとも約380nm、好ましくは少なく
とも約390nmであり、そして発光波長は約500nm以
下、好ましくは約480nm以下である。これらの化合物
の励起波長と発光波長とは好ましくは少なくとも約10
nm離れており、このことによってこれらの化合物は蛍光
に基礎を置くカチオン濃度測定技術において有用なもの
となることができる。
【0024】一態様において、本発明はある種のクマロ
クリプタンドを教示する。クマロ[2.2.2]クリプ
タンドイオノホアは、Pb+2又はBa+2の不在下では、
+に対して非常に選択性が高いが、クリプタンドケー
ジの大きさが異なるクマロクリプタンドは他の一価及び
二価カチオンに対して非常に選択性が高い。例えば、ク
マロ[2.2.1]クリプタンドは臨床上適切なレベル
のK+ 及びCa2+を含む水溶液中のNa+ に対して非常
に選択性が高い。都合良いことに、本発明の[2.2.
2]クマロクリプタンドは、水性媒体中で使用された場
合に、K+ に対する高い選択性を保つ(すなわち、K+
/Na+ 錯化比は少なくとも20:1である)。本発明
のイオノホアのクリプタンド部分がカチオンと錯化する
場合に、蛍光分析により個々の試料におけるカチオン濃
度を決定することができるようにこのイオノホアの光学
的特性は変化する。特に好ましい態様において、本発明
のイオノホアの励起(すなわち、吸収)極大波長が38
0nmを超える波長に集中するように、クマリン環上の置
換基及びそれらの位置が選択される。このことによっ
て、本発明のイオノホアは、例えば青色LED及びレー
ザーのような固体光源と共に使用できるものとなる。置
換基及びそれらの位置も、500nm未満の発光波長を保
つように好ましくは選ばれ、それによりイオノホアの応
答はこの種の指示体に適するものに保たれる。結局、置
換基及びそれらの位置は、基材への共有結合に任意性を
提供するために選ばれることが好ましい。好ましくは、
指示体が結合される基材は、均一かつ再現性のあるイオ
ノホアの応答を維持するように及びイオノホアの応答に
及ぼす生理的pH変化の影響を最低限に抑えるように選ば
れる。
【0025】さらなる観点において、本発明は、基材と
式A又はBにより表される蛍光イオノホア化合物とを含
むカチオン検出用複合構造物を提供する。好ましくは、
このイオノホア化合物は少なくとも1個のE基を含み、
そしてこのイオノホア化合物は結合(すなわち、Eが基
材上の共反応性基と直接に反応する)又はEと当該イオ
ノホアが結合すべき基材上の官能基との両方と反応する
ことができる別の「連結基」化合物により基材に(例え
ば1個以上のR基を介して)共有結合する。連結基が使
用される場合には、連結基が両末端に官能基を含み、そ
の片方の末端に位置する官能基がEに対して相補的であ
り、かつ、もう一方の末端に位置する官能基が基材上の
官能基に対して相補的であることが好ましい。共有結合
に適するカップリング剤は米国特許第5,053,52
0号明細書に記載されている。ホモ二官能性及び/又は
ヘテロ二官能性カップリング剤は国際特許出願明細書第
WO96/07268号及び第WO96/10747号
に記載されている。
【0026】さらなる観点において、本発明は、(a)
前記検出用複合構造物を、イオン輸送可能なカチオン含
有媒体に接触させ、カチオンを前記検出用複合構造物に
拡散させるか又はカチオンを前記検出用複合構造物に拡
散させる手段を提供し、当該検出用複合構造物の蛍光イ
オノホア化合物との平衡錯体を形成させる工程であっ
て、前記イオノホア化合物錯体が、λ1 を中心とする波
長範囲の光に暴露された場合にλ2 を中心とする波長範
囲の光を放射することができるものであり、ここでλ2
はλ1 よりも少なくとも10nm大きく、λ1 は少なくと
も約350nmであり、より好ましくは少なくとも約38
0nmであり、λ2 は好ましくは約500nm以下である工
程;並びに(b)前記錯体にλ1 を中心とする波長範囲
の光を、集光されて検出される波長λ2 の可視光を前記
錯体が放射するのに十分な時間当てる工程を含むカチオ
ンの存在を検知する方法を提供する。適切なアルゴリズ
ムによって、カチオン含有媒体中のカチオンの濃度と発
光量とを相関させることができる。
【0027】定義 特に断らない限り、本明細書において以下の定義を適用
する:「基」若しくは「化合物」又は「部分」とは、所
望の生成物を阻害しない一般的な置換基により置換する
ことができる化学種を意味し;「LED」とは発光ダイ
オードを意味し;「クマロクリプタンド」とは、クマリ
ンの典型的には6及び7位にオルト縮合したクリプタン
ド部分を有するクマリン部分を意味し;「アルキル」と
は、最も長い鎖中に1〜30個の炭素原子を有する直鎖
又は分枝有機基を意味し;「芳香族」とはその1つの環
又は複数の環中に5〜15個の炭素原子又はヘテロ原子
を有し、環電子が非局在化している環又は縮合環系を意
味し;「カルボキシル」とは、例えば、酸ハロゲン化
物、アジド、アミド、イミダゾールアミド、エステル及
びニトリルを包含するカルボン酸基又はそれらの誘導体
を意味し;「呼びかけ(interrogate)」とは、励起放射
線源に暴露し、放射線の変化を監視することを意味し;
「非電子吸引性基」とは、ハメットσp 値が0.2以下
である任意の化学基(例えば、J.E. Leffler及びE. Gru
nwald のRates and Equilibria of Organic Reactions,
第172 頁(John Wiley and Sons, NY) に記載されてい
るハメット置換定数を参照、引用によりその教示をここ
に含めることにする)を意味し;「立体障害作用のない
基」とは、ケージの機能を立体的に妨害しない任意の化
学基を意味し;「近接している」nπ* 及びππ* 励起
状態とは、nπ* 励起状態とππ* 励起状態の間の1電
子ボルト(eV)未満のエネルギー差を意味し;ππ*
状態に関して「エネルギーが高い」とは、イオン依存性
のある混成が基底状態への無放射カップリングを支配す
るのに十分に発蛍光部分のエネルギーが高いことを意味
し;6,7−ジオキソ置換クマリンに関して「面外パッ
カリング」とは、2個の環内酸素原子(1及び2位)に
対する2個の環外酸素原子(6及び7位)の非対称運動
を伴う分子振動を意味し;「蛍光量子収率」とは、励起
過程のうち蛍光放出をもたらすものの割合を意味し;
「ストークスシフト(Stokes shift)」とは、蛍光分子
に関する発光極大波長と吸収極大波長の波長差を意味
し;「レッドシフト(red shift )」とは、指示体の吸
収波長がより長波長側に移動するように指示体を化学修
飾することを意味し;そして「活性水素」とは、穏やか
な条件下で化学的に反応性であるようにヘテロ原子に結
合している水素原子を意味する。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明の蛍光イオノホア化合物
は、(i)イオンの結合用の錯化部分と(ii)発蛍光部
分を含む。この化合物の吸収極大波長は少なくとも約3
50nmである。
【0029】ある態様において、本発明の蛍光イオノホ
アは上記一般式Aにより表される。現在のところ好まし
いある態様において、本発明の蛍光イオノホアは上記一
般式Bにより表される。クマリン環上の3位(すなわ
ち、式AのR1 )に電子吸引性又は分極性基を配置する
ことによって、本発明のイオノホアの励起波長は、慣用
的なガラスオプチックスを使用する系で使用できる点ま
でレッドシフトし得る。
【0030】このイオノホアは、青色光源を使用する系
で使用することができる点までレッドシフトすることが
より好ましい。結合部位に対してαの位置(すなわち、
α位)の片方又は両方の位置にヘテロ原子を有する5員
複素芳香環をクマリン環上の3位に配置することによっ
て、本発明のイオノホアの励起波長は、青色光源を使用
する系で使用することができる点までレッドシフトし得
る。励起波長は少なくとも380nmであることが好まし
く、少なくとも約390nmであることがより好ましく、
少なくとも約400nmであることが最も好ましい。
【0031】励起波長が実質的にレッドシフトすること
が好ましいと同時に、発光波長は約500nm以下である
ことが好ましく、約480nm以下であることがより好ま
しく、約470nm以下であることが最も好ましい。この
特定の種類の化合物に関し、当該イオノホアの応答は、
吸収波長に依存せずに発光波長の増大とともに減衰する
ようである。500nmを超える発光波長に関し、K+
対するイオノホアの応答は微々たるものである。これと
は対照的に、血液パラメーターの監視に対しては、発光
波長が約470nm未満である場合が最適であるようであ
る。
【0032】本発明のイオノホアは2種の単位(例え
ば、クリプタンドとクマリン、又はクラウンエーテルと
クマリン)を含み、この2種の単位は一緒になって特定
のカチオンを選択的に検出することを可能にする。
【0033】錯化部分(例えば、クリプタンド又はクラ
ウンエーテル部分)は分析すべきカチオンと相互作用す
る。当業者はどのクリプタンド及びクラウンエーテル部
分が特定のカチオンを錯化するのに有用なものであるの
かを認識することができるが、この論題についてのさら
なる情報に関して、参考文献としてLehn及びSauvageの
“[2]-Cryptates: Stability and Selectivity of Alka
li and Alkaline-Earth Macrobicyclic Complexes,”J.
Am. Chem. Soc. 第97巻, 第6700〜6707頁(1975)を挙
げることができる。
【0034】クリプタンドケージに関し、酸素及び窒素
原子により規定される[2.2.2]ケージ(例えば、
上記式Bにおいてm及びnが双方とも1である場合)に
よりこの単位は同様な直径を有するカチオン(例えば、
+ 、Pb+2、Sr+2及びBa+2)に対して相当に選択
性の高いものとなり;[2.2.1]ケージ(すなわ
ち、m及びnのうちの一方が1であり、他方が0である
場合)によりこの単位は同様な直径を有するカチオン
(例えば、Na+ 及びCa+2)に対して相当に選択性の
高いものとなり;[2.1.1]ケージ(すなわち、m
及びnの双方が0である場合)によりこの単位は同様な
直径を有するLi+ 及びMg+2のようなカチオンに対し
て非常に選択性の高いものとなる。このサイズ選択性
は、例えばK+に加えてK+ 以外のイオンを含有する生
理的試料について[K+ ]を分析する場合に重要であ
る。K+ 、Na+ 又はLi+ の生理的濃度を測定する系
にこれらのクリプタンドを導入する場合に、より重い金
属がこれらのイオンのうちの1つの分析を妨害する濃度
で存在し難いことは都合良い。クリプタンド基は、被検
体のpHに依存してモノプロトン化又はジプロトン化され
た形態で存在することができる。架橋窒素で起こるプロ
トン化は、生理的pH範囲にわたって(他の金属イオン以
上に)K+ に対する当該クリプタンドの選択性に実質的
な影響を及ぼさないが、クリプタンド種の合計蛍光強度
に影響を及ぼしうる。
【0035】クラウンエーテル部分に関し、酸素原子に
より規定される15−クラウン−5ケージ(例えば、式
Aにおいてqが0であり、nが0である場合)の大きさ
によりこの単位はNa+ に対する選択性が適切であるも
のとなり;18−クラウン−6ケージ(例えば、式Aに
おいてqが0であり、nが1である場合)の大きさによ
りこの単位はK+ に対する選択性が適切であるものとな
り;21−クラウン−7ケージ(例えば、式Aにおいて
qが0であり、nが2である場合)の大きさによりこの
単位はK+ に対する選択性が相当に高く、かつ、Na+
に対する選択性がないものとなる。
【0036】本発明のイオノホアの第2の特殊な単位は
発蛍光部分である。この発蛍光部分は「情報伝達」単位
と見なすことができる。例として生理的試験を用いる
と、錯化部分ケージ内にプロトン、Na+ 又は幾つかの
他のカチオンが存在する場合に、発蛍光部分(例えばク
マリン単位)は特徴的な蛍光強度対波長プロットを示
す。錯化部分ケージの酸素及び/又は窒素原子とK+
錯化する場合に、蛍光強度の増加が観測される。換言す
れば、カリウム錯体の形成によって、発蛍光部分の蛍光
量子収率が増加する。特定の錯化部分に選択的な他のカ
チオンについてもこれと同様な機構があてはまる。適切
な発蛍光部分にはクマリン部分が包含されるが、他の芳
香族カルボニル又はニトロ芳香族若しくはN−複素環式
部分が使用されてもよい。好ましい発蛍光部分には3位
で置換されたクマリンが包含される。
【0037】クマリン単位は2位にカルボニル官能基を
有する(すなわち、ZがOである)ことが好ましいが、
このカルボニル官能基の代わりに当該イオノホアの性能
に著しい影響を及ぼすことなくイミン官能基(例えば、
ZがNH)を使用することができる。しかしながら、本
発明のイオノホアが水性酸性環境中で使用される場合に
は、イミン官能基はカルボニル基に加水分解し得る。
【0038】本発明の蛍光イオノホアにおいて、クマリ
ン単位の3位は電子吸引性基又は分極性基(例えば、式
AのR1 )により置換されていてもよい。3位に置換基
を配置することによって、本発明のイオノホアはMasili
mani等により説明されているもののように4位で置換さ
れたクマリンよりも幾分高い(例えば20%以下高い)
量子収率を有する。このことは、低い励起強度を用いる
ことができ、それによって光分解の起こりやすさを減少
させることが可能であり、またより低強度の光源を使用
することができることを意味する。有用な電子吸引性基
又は分極性基には、カルボキシル基、カルボキサミド
基、スルホニルアリール基、エステル基、ケト−アルキ
ルエステル基及び芳香族基(好ましくは1箇所以上の位
置で置換されたもの)が包含される。好ましいR1 基に
は、エステル、ケト−アルキルエステル、複素環式部分
及び置換芳香族基、例えば置換されたフェニル、ベンゾ
イミダゾリル、ベンゾオキサゾリル及びベンゾチアゾリ
ルが包含される。エステルのうちでエチルエステルが特
に好ましく、ケト−アルキルエステルのうちで−(C
O)CH2 CH2 CH2 (CO)OCH2 CH3 が特に
好ましい。好ましい芳香族の基置換基には、アミン、カ
ルボン酸及びスルホン酸が包含される。これらのクマロ
クリプタンドの励起波長は概して及び好ましくは少なく
とも350nmである。例えば、6,7−O,O−[2.
2.2]−クリプタンド−3−カルボエトキシクマリン
の励起波長は約354nmである。
【0039】クマリン単位の3位は、クマロクリプタン
ドへの結合位置に隣接する位置(すなわち、α位)の片
方又は両方の位置にヘテロ原子を有する複素芳香族基に
より置換されることがより好ましい。適切な複素芳香族
基には、一般式(式C):
【0040】
【化7】
【0041】(上式中、Y及びY’は、それらの少なく
とも一方がO,S又はNHx であることを条件として独
立にO、S、NHx 又はCHy (式中、xは0又は1で
あり、yは1又は2である)であり、各R4 基は、水
素、ハロゲン、ヒドロカルビル含有基、複素非環式基、
複素環式基、若しくは式:(CH2 X)c E(式中、X
及びEは上記定義の通りであり、cは0〜100の整数
である)により表される基であるか、又は両方のR4
がそれらが結合している炭素原子と共に5員若しくは6
員環を形成し、この5員若しくは6員環に任意に1個以
上のさらなるR4 基が結合していてもよい)により表さ
れる5員基が包含される。
【0042】好ましくは、各R4 基は、水素、ハロゲ
ン、C1 〜C20アルキル、C1 〜C20アルコキシ、C3
〜C18シクロアルキル、C6 〜C18アリール、C6 〜C
18アリールオキシ、C6 〜C18ヒドロキシアリール、C
6 〜C18アリールカルボキシ、C6 〜C18カルボキシア
リール、C2 〜C18アルケニル、C1 〜C20ヒドロカル
ビルアミノ、C6 〜C18アリールアミノ、C6 〜C18
ミノアリール、C2 〜C20ジ(ヒドロカルビル)アミ
ノ、少なくとも3個の環原子を有する複素環式基、カル
ボキサミド(−C(O)NR1 2 )若しくは式:(C
2 X)c E(式中、X及びEは上記定義の通りのもの
であり、cは0〜25の整数である)により表される基
からなる群から独立に選ばれるものであるか、又は両方
のR4 基がそれらが結合している炭素原子と共に5員若
しくは6員環を形成し、この5員若しくは6員環に任意
に1個以上のさらなるR4 基が結合していてもよい。よ
り好ましくは、各R4 基は、水素、ハロゲン、C1 〜C
10アルキル、C1 〜C10アルコキシ、C5 〜C8 シクロ
アルキル、C6 〜C10アリール、少なくとも1個のO、
N若しくはS原子を含む複素環式基、C2 〜C10アルケ
ニル、C1 〜C10アルキルアミノ、C1 〜C10ジアルキ
ルアミノ若しくは式:(CH2 X)c E(式中、X及び
Eは上記定義の通りのものであり、cは0〜10の整数
である)により表される基からなる群から独立に選ばれ
るものであるか、又は両方のR4 基がそれらが結合して
いる炭素原子と共に5員若しくは6員環を形成し、この
5員若しくは6員環に1個以上のさらなるR4 基が結合
していてもよい。最も好ましくは、各R4 基は、水素、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキ
シ、プロポキシ、C5 〜C8 シクロアルキル、少なくと
も1個のO、N若しくはS原子を含む5員若しくは6員
複素環式基、C6 〜C10アリール、C2 〜C10アルケニ
ル、C1 〜C10ジアルキルアミノ、塩素、臭素若しくは
式:(CH2 X)c E(式中、X及びEは上記定義の通
りのものであり、cは0〜3の整数である)により表さ
れる基からなる群から独立に選ばれるものであるか、又
は両方のR4 基がそれらが結合している炭素原子と共に
5員若しくは6員環を形成し、この5員若しくは6員環
に1個以上のさらなるR4 基が結合していてもよい。
【0043】クマリン単位の3位に置換基を限定するこ
とによって、特定の5員複素芳香族環式基が、青色光源
と共に使用することが可能になるほど十分に(すなわ
ち、少なくとも380nmより上に)レッドシフトした励
起極大波長を有するイオノホアを提供することが見出さ
れた。
【0044】GaN発光ダイオードのような固体光源
は、吸収極大波長が少なくとも約380nm、好ましくは
少なくとも約390nm、より好ましくは少なくとも約4
00nmであるイオノホアの使用を必要とする。従来の化
合物により提供されるものを上回る吸収極大波長のレッ
ドシフトが必要である。しかしながら、レッドシフトし
た後の励起最大波長が350を超えるクマロクリプタン
ドの全てが有用であるとは限らない。例えば、6,7−
O,O−[2.2.2]−クリプタンド−4−シアノ−
3−カルボエトキシクマリンは吸収極大波長が約425
nmであるが、K+の存在下でも殆ど又は全く応答を示さ
ない。
【0045】特定の理論に束縛されるわけではないが、
励起状態の「近接効果」は、カチオンに対するクマロク
リプタンドの蛍光応答に一役を果たすと考えられる。特
に、クリプタンドケージが適切な大きさのカチオン(す
なわち、「標的カチオン」)と錯化していない場合に、
分子の面外パッカリング振動は放射性ππ* 状態とその
近傍の無放射性nπ* 状態との混成を誘発し、その結
果、当該イオノホアの蛍光を弱くする。このパッカリン
グは、2つの環外クマリン酸素原子の逆位相面外振動と
調和するクマリン部分の6位及び7位にある2つの環外
酸素の逆位相(反対称)面外振動を伴う。標的カチオン
がクリプタンドケージ内で錯化すると、このパッカリン
グは禁止され、蛍光が増加する。しかしながら、ππ*
状態のエネルギーが低すぎる(すなわち、発光波長が長
すぎる)と、面内振動がππ* 状態と基底状態の直接混
成を誘発し、標的カチオンの応答は低下するか又は失わ
れ得る。このもう1つのエネルギー散逸過程は、6,7
−O,O−[2.2.2]−クリプタンド−4−シアノ
−3−カルボエトキシクマリン及び特定の他のレッドシ
フトしたクマロクリプタンドが標的カチオンの存在下で
不適切な応答を示す理由であると考えられる。
【0046】上記記載に基づき、有用なイオノホアを設
計することに関して次の3つの指針を導き出すことがで
きる:(1)ππ* 及びnπ* 状態はそれらの混成が可
能になるほどエネルギー的に近接していることが好まし
い;(2)ππ* 状態は、基底状態への無放射カップリ
ングが優勢にならないか又は基底状態への無放射カップ
リングがnπ* 状態とππ* 状態の標的カチオン依存性
のある混成と非常に強く競合しないように十分にエネル
ギーが高いことが好ましい;並びに(3)クマロクリプ
タンドをレッドシフトさせるために使用されるいかなる
クマリン置換基も当該クマロクリプタンドの面外パッカ
リング振動を妨害しないことが好ましい。
【0047】上記指針のうちの最初の指針は、吸収極大
波長がレッドシフトされる一方で、それに対応して発光
波長が増加するのを妨げなければならないこと、すなわ
ちストークスシフトを比較的小さく保たねばならないこ
とを意味する。(当然のことながら、蛍光の検出が可能
であるように特定の最低限のストークスシフトを保つ必
要がある。典型的には、このシフトは少なくとも約10
nm、好ましくは少なくとも約20nm、より好ましくは少
なくとも約25nm、最も好ましくは少なくとも約30nm
である。)前記の第2番目の指針は、発光波長が約50
0nm以下、好ましくは約480nm以下、より好ましくは
約470nm以下であることを示す。前記の第3番目の指
針は、吸収極大波長をレッドシフトするために使用する
ことができる置換基の種類を限定する。特に、当該イオ
ノホアのクマリン部分は、概して当該クマリン部分に縮
合した環系を有することができず、このクマリン置換基
は少なくとも350nmに(より好ましくは少なくとも3
80nmに)吸収極大波長をレッドシフトさせなくてはな
らないが、500nmを超えるほどまで吸収極大波長をレ
ッドシフトさせてはならない。
【0048】これらの指針に基づいて、可能性のあるク
マリン及びクマロクリプタンド候補分子を調査した。こ
の調査には3種のモデル化合物:6,7−エチレンジオ
キシクマリン(EDO)、6,7−メチレンジオキシク
マリン(MDO)及び6,7−ジメトキシクマリン(D
MO)を使用した。EDO型化合物は、それらがクマロ
クリプタンドにおける優れた標的イオン応答に必要とさ
れる面外パッカリング振動モードと同様な面外パッカリ
ング振動モードを維持することが示されたことから、未
錯化クマロクリプタンドに対して好ましいモデルである
ことが見出された。前記DMO及びMDO型化合物は、
それらが平面構造を維持することから、錯化クマロクリ
プタンドに好ましいモデルであることが見出された。予
想されるように、DMO及びMDO型化合物の蛍光量子
収率は、対応するEDO型化合物のそれよりも大きい。
表16eに示されるように、DMO/EDO及びMDO
/EDO量子収率比は、対応するクマロクリプタンドイ
オノホア応答の優れた予測者である。これらの相関によ
って、種々のレッドシフト性置換基に対して対応するク
マロクリプタンドのK+ 応答を予測するために、EDO
型及びDMO型化合物に関する分子起軌道計算を使用す
ることが可能となる。多数のEDO型モデル化合物に関
する分子軌道計算(下記表16c参照)によって、少な
くとも1個のヘテロ原子がα位に位置する複素芳香環に
より3位で置換されたクマリンは、約390nmの望まし
い範囲内にあるレッドシフトした吸収波長に80nmの範
囲内にあるストークスシフトを与える能力を有すること
が示された。
【0049】本発明のクマロクリプタンドイオノホアの
調製法は、引用によりここに含めることにする米国特許
第5,474,743号明細書に詳細に記載されている
一般スキームに基づく。典型的な反応スキームが便宜上
示されている。以下の議論の中で、ビス−クロロエトキ
シ種を「基本中間体」と表示するが、任意の脱離基を末
端基とするビス−エトキシ−2−ヒドロキシベンズアル
デヒドを使用することができる。
【0050】このビス−クロロエトキシ基本中間体の調
製は、Landini 及びMontanari によるSynthesis, 第22
3 〜225 頁(1978)に記載されている方法により調製す
ることができる1,2−ビス−(2’−ヒドロキシエト
キシ)ベンゼンを用いて開始することができる。過剰の
塩化チオニルとの反応によりこの出発物質を1,2−ビ
ス−(2’−クロロエトキシ)ベンゼン(I)に転化さ
せることができる。化合物Iを塩化チタンの存在下で
1,1−ジクロロメチルメチルエーテルと反応させ、加
水分解させると1,2−ビス(2’−クロロエトキシ)
ベンズアルデヒド(II)が生成する。化合物IIと過酸化
水素及び硫酸との反応によって、3,4−ビス−(2’
−クロロエトキシ)フェノール(III) が生成する。塩化
チタンの存在下で化合物III を1,1−ジクロロメチル
メチルエーテルにより処理し、加水分解させると、上記
ビス−クロロエトキシ基本中間体種が生成する。
【0051】この基本中間体をシアノ置換5員芳香環化
合物(Y及びY’は上記定義の通り)により処理し、続
いてHClと反応させると、3−(複素芳香族)−6,
7−ビス(2’−クロロエトキシ)クマリン(IV)が生
成する。塩素をヨウ素により置換して化合物Vとした
後、アセトニトリルのような溶剤中での4,13−ジア
ザ−18−クラウン−6との反応によって、この化合物
を6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−(複素
芳香族)−クマリン(VI)に直接転化させることができ
る。所望であれば、化合物VII が提供されるように酸加
水分解によりエステル基をカルボン酸基に転化させるこ
とができる。
【0052】これらの反応を以下のスキームにまとめ
た。
【0053】
【化8】
【0054】当業者は、前記[2.2.2]種以外のク
マロクリプタンドは、4,13−ジアザ−18−クラウ
ン−6以外のジアザクラウンエーテルを使用することに
より調製できることを認識するであろう。例えば、
[2.2.1]クマロクリプタンドが望ましい場合に
は、1,4,10−トリオキサ−7,13−ジアザシク
ロペンタデカンを使用することができる。さらに詳細な
点については下記実施例18及び20を参照されたい。
【0055】α位のうちの少なくとも1箇所にヘテロ原
子を有する好ましい5員芳香環はフラン(例えば、Yが
Oであり、Y’がCHである)である。他の有用な5員
芳香環基には、限定するわけではないが、
【0056】
【化9】
【0057】が含まれる。
【0058】電子状態に関する指針の上記議論に基づ
き、当業者は、式Aの化合物に関してR1 、R2 及びR
3 基の選択が重要であることを認識することができる。
【0059】当該化合物のレッドシフトに対するその寄
与が特に重要であるR1 は既に述べた。適切なR2 基に
は、立体障害作用のない任意の基が含まれる。適切な基
には、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル含有基、複素非
環式、又は式:(CH2 X)aE(式中、X及びEは上
記定義の通りであり、aは1〜100の整数である)に
より表される基のような部分が包含される。好ましく
は、各R2 基は、水素、ハロゲン、C1 〜C20アルキ
ル、C1 〜C20アルコキシ、C2 〜C18アルケニル、C
1 〜C20ヒドロカルビルアミノ、C2 〜C20ジ(ヒドロ
カルビル)アミノ、又は式:(CH2 X)a E(式中、
X及びEは上記定義の通りのものであり、aは1〜25
の整数である)により表される基からなる群から独立に
選ばれる。より好ましくは各R2 基は、水素、ハロゲ
ン、C1 〜C10アルキル、C1 〜C10アルコキシ、C2
〜C10アルケニル及びC1 〜C10アルキルアミノ、C1
〜C10ジアルキルアミノ、又は式:(CH2 X)a
(式中、X及びEは上記定義の通りのものであり、aは
1〜10の整数である)により表される基からなる群か
ら独立に選ばれる。最も好ましくは各R2 基は、水素、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキ
シ、プロポキシ、C2 〜C10アルケニル、C1 〜C10
アルキルアミノ、塩素、臭素、又は式:(CH2 X)a
E(式中、X及びEは上記定義の通りのものであり、a
は1〜3の整数である)により表される基からなる群か
ら独立に選ばれる。
【0060】R3 に対して多くの種々の基が選択されて
よい。好ましいR3 基には任意の非電子吸引性基が包含
される。適切な基には、水素、ヒドロカルビル含有基、
複素非環式基、複素環式基、又は式:(CH2 X)b
(式中、X及びEは上記定義の通りのものであり、bは
0〜100の整数である)により表される基のような非
電子吸引性部分が包含される。好ましくは各R3 基は、
水素、C1 〜C20アルキル、C3 〜C18シクロアルキ
ル、C6 〜C18アリール、C6 〜C18アリールオキシ、
6 〜C18ヒドロキシアリール、C6 〜C18アリールカ
ルボキシ、C6 〜C18カルボキシアリール、C2 〜C18
アルケニル、又は式:(CH2 X)b E(式中、X及び
Eは上記定義の通りのものであり、bは0〜25の整数
である)により表される基からなる群から独立に選ばれ
る。より好ましくは各R3 基は、水素、C1 〜C10アル
キル、C5 〜C8 シクロアルキル、C6 〜C10アリー
ル、少なくとも1個のO、N又はS原子を含む複素環式
基、C2 〜C10アルケニル、又は式:(CH2 X)b
(式中、X及びEは上記定義の通りのものであり、bは
0〜10の整数である)により表される基からなる群か
ら独立に選ばれる。最も好ましくは各R3 基は、水素、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、C5 〜C8シクロ
アルキル、C6 〜C10アリール、C2 〜C10アルケニ
ル、C1 〜C10ジアルキルアミノ、又は式:(CH
2 X)b E(式中、X及びEは上記定義の通りのもので
あり、bは0〜3の整数である)により表される基から
なる群から独立に選ばれる。
【0061】本発明のイオノホア化合物を基材に結合さ
せるべき場合には、少なくとも1個のR基は、活性水素
を有する官能基(すなわち、E基)を含まなくてはなら
ない。そのような基の導入によって、共有結合を形成す
るような共反応性官能基との反応が可能となる。
【0062】各R2 及びR3 が水素であり、R1 が一般
式(式「C」):
【0063】
【化10】
【0064】(上式中、Y及びY’はそれらの少なくと
も一方がO、S又はNHx であることを条件として独立
にO、S、NHx 又はCHy (式中、xは0又は1であ
り、yは1又は2である)であり、一方のR4 は水素で
あり、もう一方のR4 はカルボン酸基である)により表
される置換芳香族部分であることが好ましい。
【0065】K+ の検出に特に好ましい本発明のイオノ
ホアは式:
【0066】
【化11】
【0067】(上式中、YはO、S又はNHであり、特
にYはOである)により表される。
【0068】R1 、R2 及びR3 のうちの少なくとも1
つ又は少なくとも1つのR4 基が活性水素を含む基であ
る場合には、本発明の蛍光イオノホアは、他の分子及び
/又は基材への都合の良い共有結合手段を有する。本発
明のイオノホアは、直接又は分子テザー(molecular te
ther)(すなわち、連結基)を通じて基材に結合して検
出用組成物を形成することができるものであり、連続検
出装置又はフロースルー(flow-through)装置にこの検
出用組成物を導入することができる。
【0069】本発明のイオノホアをそのような連結基を
通じて基材に結合させるべき場合に、その最も長い連続
鎖は好ましくは5〜125個の炭素原子及び/又は酸
素、窒素、硫黄等のようなヘテロ原子、より好ましくは
10〜70個の炭素原子及び/又はヘテロ原子、最も好
ましくは5〜15個の炭素原子及び/又はヘテロ原子を
含み、その少なくとも1つの末端に官能基はない。これ
らの連結基は、当該イオノホアとの金属イオンの相互作
用能を阻害しないように親水性であることが好ましい。
しかしながら、当該系の種々の物理的特性にこの連結基
が寄与することが望ましい場合又は基材が十分に親水性
である場合には、その繰返し単位及び末端基の官能性を
それに応じて変性させることができる。
【0070】当該クマロクリプタンドのR基のうちの1
つと選択的に反応するようにこれらの連結基の官能基を
選択することができる。可能な官能基には、アミン類、
アミド類、エステル類、オキシラン類、オレフィン類、
尿素類、イソシアネート類、チオイソシアネート類、カ
ルバメート類、スルホン酸、スルホンアミド類、塩化ス
ルホニル類、カルボン酸類、カルボキシル類、シラノー
ル類、クロロトリアジン類、ヒドラジン類、ヒドラジド
類及びアルデヒド類(又は当該クマロクリプタンドのR
基のうちの1つと反応することによって、アミン類、ア
ミド類、エステル類、エーテル類、尿素類、ウレタン
類、スルホンアミド類、シラン類及びヒドラジド類を形
成する基)が包含される。
【0071】この連結基は、好ましいことに当該イオノ
ホアとの反応前に基材に結合することができる。これは
2通りの態様のうちの一方で行われる。第1の態様で
は、当該イオノホアを結合させる前に、連結基を基材と
反応させることができる。この選択肢を選ぶ場合には、
各連結基は二反応性である(すなわち、各テザーの各端
に同種又は異種の官能基を有する)ことが好ましく、基
材はテザーの官能基のうちの1つの官能基と反応するこ
とができる相補的官能基を有することが好ましい。第2
の態様では、予め結合した連結基を用いて基材を形成す
ることができる。このことは、例えば、連結基が前もっ
て結合するように基材ポリマーを選択することを伴う。
【0072】検出用複合構造物を形成するために本発明
のイオノホアを基材上に固定化(すなわち、直接又は連
結基を通じて)すべき場合に、種々の形態の基材を使用
することができる。当該検出用複合体を連続監視装置に
導入すべき場合には、単に当該装置の寸法及び形態のた
めに、平面状基材がおそらく好ましいであろう。
【0073】平面状基材又は平面状に容易に作製可能な
基材の例には、膜又はフィルムの形態にある自己支持性
ポリマー、及びコーティング可能なポリマー(すなわ
ち、基材上にコーティングすることができるポリマー)
が包含される。自己支持性膜は、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル(PV
C)、ポリスルホン、セルロース、官能化セルロース及
びナイロン、並びにシリカキセロゲル若しくは多孔質ガ
ラスのようなシリカを包含する種々のポリマーから形成
される。(ある種のナイロン膜は、不十分な可逆複合材
料、すなわち金属イオン濃度の変化に伴う強度変化を徐
々に示さなくなる前に、高カチオン濃度と低カチオン濃
度の間で僅かに数サイクルだけしか使用することができ
ない複合材料を提供する。)有用な基材は好ましくはイ
オン透過性であり、場合に応じて、R基の官能基と相補
的な、R基の官能基と反応する基により官能化されたも
のであるか、又はそのような基を本質的に有するように
処理(例えば、空気酸化)されたものである。
【0074】イオノホアを基材表面に結合させるべき場
合にイオノホアの濃度をできる限り高くするために、多
孔質基材又は膜を使用すること、又は当該イオノホアを
結合させる前に、膜、特にシリカを含む膜の表面を粗く
することが望ましいであろう。
【0075】水不溶性のコーティング可能なポリマーが
好ましい基材である。そのようなポリマーには、ポリ塩
化ビニル(PVC)、塩化ビニルのコポリマー及びター
ポリマー、スチレンとマレイン酸及び無水マレイン酸の
うちの少なくとも1種とのコポリマー、アルキルビニル
エーテルとマレイン酸及び無水マレイン酸のうちの少な
くとも1種とのコポリマー、ビニルジメチルアズラクト
ンのポリマー及びコポリマー、並びにアクリレートエス
テル及びメタクリレートエステル(又はアクリルアミド
及びメタクリルアミド)のうちの1種とアクリル酸及び
メタクリル酸のうちの1種とのコポリマーが包含され
る。本発明のイオノホアがいったんこれらのポリマーの
うちの1種に(直接又は連結基を通じて)共有結合した
ならば、場合に応じてポリマー−イオノホア複合体を上
記の膜のうちの1つの上に塗布することができる。代わ
りに、(場合に応じて連結基と反応した)コーティング
可能なポリマーにより膜をコーティングし、次に本発明
のイオノホアの溶液中で反応させてもよい。どちらが行
われても、基材は当該イオノホアを有するコーティング
可能なポリマーを加えた膜となる。
【0076】特に好ましい複合構造物は、本発明の3位
置換クマロクリプタンドと(直接又はテザーを通じて)
反応したポリマーによって場合に応じてコーティングさ
れた前記基材である。有効な予備形成されたポリマー基
材のうちで好ましい例には、PCT特許出願明細書第W
O92/07899号に記載されているようなPVCで
オーバーコートされた親水性多孔質ポリプロピレン(H
PPP)が包含される。カーボンブラックでオーバーコ
ートされたヘキサンジアミン(HDA)官能セルロース
も好ましい。
【0077】当業者は、プロトン(又はヒドロニウムイ
オン)を選択的に透過し得る基材又は膜を選択すること
によって、種々の濃度の金属イオンの存在下でpHセンサ
ーとして機能する複合構造物を調製できることを認識す
るであろう。一定濃度の金属イオンが保たれる場合に
は、そのような選択性膜が必要でないこともありうる。
【0078】フロースルー装置を使用する場合には、例
えば、固体複合構造物を粉末に粉砕するか(又はクマロ
クリプタンド化合物を市販入手可能な粉末若しくはビー
ズに結合させてもよい)、又はヒドロゲル、アクリルア
ミド若しくはアクリレート型ゲルのようなイオン透過性
マトリックス内に封入することができる。当該複合構造
物が粉末であるならば(又は粉末に粉砕されるなら
ば)、所望であれば平面状の基材に当該複合構造物を付
着させることができる。
【0079】連続検出が望ましい場合に、基材は当該基
材付近に存在するカチオンと相互作用しないか又は当該
基材付近に存在するカチオンとの可逆的相互作用を可能
にしないため、特定の基材形態に関わらず、カチオン
は、結合しているイオノホアと可逆的錯体を容易に形成
することができる。カチオン/イオノホア平衡の阻害を
最低限に抑えるために、この相互作用の可逆性がカチオ
ン濃度が変化したときに著しく変わらないような態様
で、選択された基材材料がカチオンと相互作用すること
が好ましい。基材自体は、好ましくはカチオンと不可逆
的に反応せず、かつ、カチオンを不可逆的に吸着せず、
負の実効電荷を有し、親水性である。選択された基材が
本質的にこれらの好ましい特性を持たないならば、選択
された基材が本質的にこれらの好ましい特性を持つよう
に基材を変性させることができる。例えば、この組成物
に全負電荷を与え、その親水性を高めるために、前記連
結基と共にスルホネート基又はホスフェート基を結合さ
せることができる。
【0080】結合したイオノホアにカチオンが達するに
はカチオンが基材中を拡散しなくてはならない装置に当
該検出用組成物を使用すべき場合には、基材が少なくと
も幾分イオン透過性であるか又は微孔質であることが必
要である。さらに、光の呼びかけビームが使用されるか
どうか(及びどのように光の呼びかけビームを使用する
か)に依存して、半透明又は透明基材と不透明の反射性
又は光吸収性オーバーコートを提供することが望ましい
であろう。典型的なオーバーコートには、ポリマーのよ
うなキャリア又は適切な溶媒中にカーボンブラック又は
他の顔料を含む分散液が包含される。
【0081】被検体溶液中のカチオンの濃度を定量的に
決定すべき場合には、平衡イオン−イオノホア錯体濃度
を測定することができる分析技術が好ましい。分光分析
法が特に有用であることが見出された。蛍光分析法が特
に好ましい。そのような方法を任意に改良して励起光及
び放射光の伝送にファイバーオプチックスを使用しても
よい。例えば、励起波長λ1 を中心とする波長範囲の呼
びかけ光を導入するため及び発光波長λ2 を中心とする
波長範囲の放射光を検出器に送信するために、1本以上
の光学繊維を使用することができる。
【0082】光源を使用するシステムは産業上の有用性
があることが証明されているが、固体LED及びレーザ
ーダイオード光源が好ましい。これらの固体光源は、概
して、光電子システムの信頼度を高め、コストを抑え、
サイズを小さくし、ノイズ/ドリフト特性を改良する。
日本国のニチア化学工業により販売されているGaN青
色LEDは、多芳香族炭化水素系蛍光指示体系のための
実際的なLED型電子光学システムの開発を可能にして
きた。特に、GaN発光ダイオードの発光(390〜4
20nm)は、本明細書に開示するレッドシフトしたイオ
ノホアの吸収極大波長に一致させることができる。さら
に、新しいGaNレーザーダイオードは405nmの光を
発するものであって、位相変調型イオノホア検出を持続
させるのに十分な周波数で変調させることができるもの
である。
【0083】本発明の蛍光イオノホア化合物は、特定の
カチオンの濃度の決定が望まれる種々の用途に使用する
ことができる。K+ 又はNa+ に対して選択性があるイ
オノホアは、これらのイオンの濃度を決定する際に、特
に生物学的系において特に有用である。これらのイオノ
ホアは、現存する試験用キットに組み込まれても、種々
の基材上にコーティングされても、ファイバーオプチッ
ク型分析装置に組み込まれてもよい。Pb+2に対して選
択性があるイオノホアは、環境試験で、あるいは生物学
的試験でも有用であり得る。シリコーンゴム又は同様な
気体透過性膜の内側(又はことによると後方)の適切に
緩衝化された水が充填された区画内に、pH近傍のpKa
好ましくはジプロトン化種のpKa を有するクマロクリプ
タンドイオノホアを限定することによって、[CO2
を決定することも可能となる(すなわち、イオノホア
は、H2 CO3 へのCO2 の水和により発生する酸性種
と相互作用し得る)。これらのイオノホアを使用する他
の検出及び濃度決定用途は当業者に明らかであろう。
【0084】本発明の複合構造物の顕著な利点は、pHが
それらの蛍光強度に影響を及ぼさないことである。例え
ば、約4mMの生理学的K+ 濃度で生理学的pH範囲(7.
3〜7.5)を包含する約6.98〜約7.8のpH範囲
にわたってのそのような検出用複合構造物の蛍光強度の
変化は、全蛍光強度の僅かに約6%であった(図4b参
照)。対照的に、米国特許第5,474,743号明細
書に記載されている先行技術のクマロクリプタンドは同
様なpH範囲にわたって約33%の蛍光強度の変化を示し
た(図4a参照)。
【0085】特に好ましい態様において、当該イオノホ
アは、血液のような流体の1種以上のパラメーターを測
定するためのシステムの一部であるカセットであって、
米国特許第4,640,820号及び第4,786,4
74号明細書、並びに同時係続出願である米国特許出願
番号第08/810,954号に記載されているような
カセットを包含するカセットに組み込まれる。当該イオ
ノホアを、多層集成体にさらに組み込まれる膜であっ
て、前記多層集成体がカセットに接着させることができ
るものである膜に共有結合させることが好ましい。その
ような多層集成体は、感圧接着剤層であって、その片面
に貼り付けられた剥離ライナー(例えば、ポリエチレン
テレフタレート、接着剤業界でPETとして知られてい
るもの)と、その対向面に薄い可撓性膜、例えばPVC
又はポリカーボネートとを有する感圧接着剤層を含み得
る。本発明の検出用イオノホアが共有結合した又は本発
明の検出用イオノホアによりコーティングされた好まし
くはHPPP又は変性セルロースのようなキャリア基材
を含むこの検出用基材は、可撓性膜に接着剤により接着
されるか又は可撓性膜に貼り合わされる。この多層集成
体の最外面(例えば、当該検出用基材の露出面)で、不
透明コーティングが当該検出用基材を被覆していること
が好ましい。個々の層については前述の通りである。
【0086】既に述べたもののような流体パラメーター
測定システムに有用なカセットには、フロースルー型又
はシャント型の少なくとも2種類がある。フロースルー
カセットは、動脈又は静脈路内での検出に有用であるこ
とができ、一方、シャントカセットは、例えば開胸外科
手術でのシャント路内での検出に有用であることができ
る。シャント路は、患者からの血液を主心肺循環回路に
接続されているが主心肺循環回路から分かれている回路
に流す手段を包含する。以下で述べる一体型カセット集
成体は、それが典型的にはより小さな流体チャンバーを
有し、当該システムから容易に取り外し、慣用的なオー
トクレーブ法により殺菌することができるものであるた
め、シャント路で使用されることが好ましい。都合良い
ことに、本発明のクマロクリプタンドイオノホアを含む
多層検出用集成体は、オートクレーブ殺菌(約120
℃)の前後で実質的に同じイオン応答及びスペクトル特
性を示す。
【0087】フロースルーカセットによって、動脈及び
静脈路に沿う流体の通過を、監視前に妨害されずに保つ
ことが可能となる。フロースルーカセットは、典型的に
は、血液流を制限しないようにより直径が大きい入口と
出口を有する。半透膜が使用される場合に、半透膜は、
本明細書に記載するような1つ以上の較正された検出用
膜が組み込まれた本体に封着されるフロースルーケーシ
ングの上部開口部をシールする。この検出用本体は、以
下で詳しく説明する図11の装置200のような測定装
置に接続されることが好ましい。いったん流体パラメー
ターを測定したならば、このカセットは装置200から
取り外され、廃棄される。フロースルーカセットは、通
常オートクレーブ処理されることを予定されていない。
【0088】血液のような流体の1種以上の特性又はパ
ラメーターを測定するためのシステム10を図11に示
す。システム10は概してカセット10内の流体のパラ
メーターを測定するための測定装置14に加えて流体を
受容するカセット12を具備する。
【0089】カセット12を図12により詳細に示す。
このカセット12は、ケーシング16の軸線に沿って延
びる細長い内部フロースル流体チャンバー18を画定す
る壁部分を有する細長いケーシング16を具備する。流
体チャンバー18は、チャンバー18に流体を入れるた
めの第1口又は「入口」を有する第1部分20と、流体
が流体チャンバー18から流出させるための第2口又は
「出口」を有する第2部分22と、部分20と22の間
に位置する中央部分とを具備する。(この記載は、第1
部分20を通ってチャンバー18に流入し、第2部分2
2を通ってチャンバー18から排出される流体を示すも
のであるが、所望であれば流体が第2口を通ってチャン
バー18に入り、そして第1口を通って出るように、流
体がチャンバー18を通って逆方向で流れてもよいこと
が理解されるべきである。)
【0090】ケーシング16の外側は、概して長円形の
窪み26を有する中央部分を具備する。チャンバー18
内の流体の1種以上のパラメーターを決定するための少
なくとも1つのセンサーが、ケーシング16に搭載され
る。図示されている態様において、一連の4つのセンサ
ーは窪み26と流体チャンバー18の中間部分24との
間に配置されており、これらのセンサーは、ケーシング
16の軸線に沿って整列して互いに離間した関係で設け
られた4つのキャビティ内に配置されている。図4に示
されているように、これらのセンサーは、キャビティ2
7、29、31、33のそれぞれの中に収容されている
カリウムセンサー28、pHセンサー30、二酸化炭素セ
ンサー32及び酸素センサー34を包含する。
【0091】ケーシング16内の穴は、pHセンサー30
と二酸化炭素センサー32の間に設けられている。熱電
対収容用縦穴36はケーシング16に取り付けられてお
り、前記穴に延びている。縦穴36は、流体チャンバー
18の中央部分に面するケーシング16の壁部分に接着
剤により接着されたリムを有する帽子型の形態を有す
る。適切な接着剤は、Loctite Corporation 製の商標
「UV Cure 」の接着剤のようなアクリルウレタン系接着
剤である。縦穴36は金属のような伝熱性を有する耐蝕
性材料、例えば厚さ0.004インチ(0.1mm)のチ
タンから作製されたものであることが好ましい。縦穴3
6は、流体チャンバー18内の流体との本質的な熱的接
触を提供するように、流体チャンバー18の中央部分2
4中に突き出ている。
【0092】ケーシング16は、窪み26を画定し、そ
してケーシング16の軸線から離れる方向に外側に向か
って延びる概して長円形のリム40も具備する。図12
を参照すると分かるように、長円形の窪み26と周囲の
リム40の主軸は一致しており、センサー28、30、
32、34及び縦穴36の中心を横切って延びており、
またケーシング16及び流体チャンバー18の軸線と平
行である。
【0093】半円筒形の整合キー42はリム40の内壁
に一体的に連結されている。また、ケーシング16の軸
線に垂直であり且つセンサー32とセンサー34の間に
等距離に延びる基準面が整合キー42の直径面に沿って
整合キー42を二等分するように整合キー42が配向さ
れることが好ましい。
【0094】カセット12は、測定装置14にケーシン
グ16を着脱可能に連結するための第1雄カップリング
を具備する。カップリング44は、ケーシング16の軸
線に垂直な方向に、凸状の概してU字形の形状を有す
る。カップリング44は、ケーシング16の前述の中央
部分と、リム40の外延方向とは反対側にケーシング1
6から外側に延びる対向脚部46とを具備する。各脚部
46は、各脚部46の外面と平行である同一平面上の平
らな外面47を有する支持部分の対を具備する。好まし
くは、対向脚部46の外面47は、ケーシング16に収
束し、約28度〜約32度の範囲内の角度で互いに向か
い合う各基準面に沿って延びている。より好ましくは、
外面47は、約30度の角度で互いに向かい合う各基準
面に沿って延びている。
【0095】フランジ48は、各脚部46の外端に一体
的に連結されている。フランジ48は、ケーシング48
の軸線と平行な共通基準面内にある。脚部46は、幾分
可撓性であり、指圧の作用下でもう一方の方向に若干移
動することができるが、いったん指圧を解放すると、そ
れらの原形に即座に且つ繰返し戻るのに十分な記憶も有
する。
【0096】各脚部46の外側の中央端領域は、前記支
持部分の間に存在するくさび形タブ50に一体的に連結
されている。タブ50は、一方に対して約80度の角度
で配向している各基準面に沿って各脚部46から外側に
向かって互いに反対側に延びている。さらに各タブ50
の末端は、フランジ48の延長方向に対して25度の角
度で配向している基準面内で延びている。タブ50の最
外端は、各脚部46の隣接する領域に対して外側に間隔
をおいて拡がっており、且つ、ケーシング16の軸線と
フランジ48を含む上記基準面との間の共通基準面内に
存在する。
【0097】好ましくは、ケーシング16は、医療用ポ
リカーボネートのような比較的透明のプラスチック材料
から作製されたものであって、射出成形に続いて互いに
接合された2個以上の元々は別々の部品から構成された
ものである。適切な2個構成構造の例を図13に示す。
図13において、ケーシング16の一部品は窪み26及
びリム40を具備してセンサー28、30、32及び3
4を搭載し、そして第2の部品は図示されているような
脚部47、入口及び出口並びに他の要素を具備する。こ
れらの部品は、超音波溶接、溶着又は接着により互いに
連結される。当然のことながら、他の構造(一体的な1
個構成構造又は3個構成構造)も可能である。
【0098】図11〜13に例示されているように、ケ
ーシング16は第1部分20の入口を取り囲む第1おね
じ付き部分を有する。この第1おねじ付き部分は、カセ
ット12がチャンバー18を流れる流体のパラメーター
を測定するために使用される場合に、めねじ付きLuer型
コネクタに係合的に連結するような構造に作られたもの
であることが好ましい。コネクタ52はチャンバー18
の方に流体を向けるフレキシブルチューブの部分に締り
嵌め継手を提供するためのリブ付き部分を有する。
【0099】第2ねじ付き部分は第2流体チャンバー部
分22の出口を取り囲む。図11に示されているよう
に、取付部品56は、第2ねじ付き部分を係合的に受容
するめねじ付き部分を場合に応じて有する。取付部品5
6は、放射状に内側に延びるリブを有する後方に延びる
つばを具備する。ケーシング16は、取付部品56がケ
ーシング16から部分的に抜けたときには常に標準環境
下での取付部品56の脱離を防止するために、限界を画
する外側に放射状に延びるリブであって、止め具として
機能し、且つ、当該リブに物理的障害を提供する第2ね
じ付き部分に隣接するリブ60を有する。
【0100】測定装置14は、2部品型の細長いハウジ
ング200を具備する。この2個の部品は、(スナップ
合わせ集成体用の)内側にかえしのあるコネクタにより
又はねじにより結合させることができる。ハウジング2
00は、ポリカーボネートとアクリロニトリル−ブタジ
エン−スチレン(ABS)ポリマーの混合物のような耐
衝撃性プラスチック材料から作製されたものであって、
殺菌を容易にするために滑らかな外面を有する。場合に
応じて、ハウジング200の内面は電磁適合性のある材
料によりコーティングされる。
【0101】測定装置14は、陽極酸化されたアルミニ
ウムのような金属材料から任意に作製された第2雌カッ
プリング202を具備する。カップリング202は、ハ
ウジング200の軸線に垂直な方向に概してU字形の凹
形窪みを有する。この窪みは、中央湾曲部206により
相互連結される2つの平らな対向側壁部204を具備す
る。好ましくは、対向側壁部204は、湾曲部206に
収束し、約28度〜約32度の範囲内の角度で互いに向
かい合う各基準面に沿って延びている。より好ましく
は、外面47は、約30度の角度で互いに向かい合う各
基準面に沿って延びている。各側壁部204の外端部
は、ハウジング200の軸線に平行な方向に延びる細長
い溝208を有する。
【0102】本発明の理解を助けるために次の実施例を
示すが、この実施例が本発明の範囲を限定するものであ
ると理解されるべきではない。特に断らない限り、全て
の部及び百分率は重量で表されている。
【0103】
【実施例】実施例1〜6及び18〜21は、フリル置換
クマロクリプタンド(FCCC)の調製法を説明する。
実施例7〜11はチオフェン置換クマロクリプタンド
(TCCC)の調製法を説明する。実施例12〜16
は、FCCCの誘導体を含むセンサーの作製法を説明す
る。実施例17は、このセンサーについて実施した試験
結果を説明する。実施例26〜36は、6,7−[2.
2.2]−クリプタンド−3−カルボエトキシ−クマリ
ン(VII) の調製法における種々の工程を説明する。実施
例37は、この化合物のエステル部分の加水分解を説明
する。
【0104】実施例1 エチル−(5−ブロモエチル)−2−フロエート A.ルート1 Bull. Chem. Soc. Japan, 第60巻、第1907〜1912頁(19
87)に記載されているTsuboi等の手順を用いて二酸化セ
レンによりエチルソルベートを酸化させ、エチル−t−
メチル−2−フロエート及びエチル−5−メチル−2−
セレノフェノカルボキシレートの混合物とした。18g
のエチルソルベート、26gのSeO2 及び75mlのキ
シレンの混合物を還流下で約2時間加熱した。濾過後、
蒸留により溶剤を除去した。残留油をシリカゲル上で2
種の生成物にクロマトグラフ分離(ヘプタン−酢酸エチ
ル4:1を使用)した。エチル−5−メチル−2−フロ
エートの収量は5.12gであった。 H1 NMR(CDCl3): d 1.38 (t, 3H, CH3); d 2.40 (s, 3H,
CH3); d 4.38 (q, 2H,CH2); d 6.11 (d, 1H, Ar-H); d
7.07 (d, 1H, Ar-H).
【0105】Textbook of Practical Organic Chemistr
y, B. Furniss 等(編集者)、第4版、Longman, Londo
n (1978)の第402 頁にVogel により記載されている手
順に従って、150mlのクロロホルムに、16.4gの
N−ブロモスクシンイミド及び0.5gの過酸化ベンゾ
イルと共に14.2gの上記生成物を加えた。この混合
物を窒素下で約2時間還流させ、次に一晩冷却した。沈
殿したスクシンイミドを濾過し、回転減圧蒸発器により
CHCl3 を除去した。エチル−(5−ブロモエチル)
−2−フロエートの収量は15.5gであった。 H1 NMR(CDCl3): d 1.38 (t, 3H, CH3); d 4.36 (t, 2H,
CH2); d 4.50 (s, 1H,CH2Br); d 6.50 (d, 1H, Ar-H);
d 7.12 (d, 1H, Ar-H).
【0106】B.ルート2 OPPI Briefs, 第17巻、第203 頁(1985)に記載されて
いるMoore 等の手順を用いてスルファミン酸及び亜塩素
酸ナトリウムにより5−メチル−2−フルフラルアルデ
ヒドを酸化させた。2リットルの水に50gの5−メチ
ル−2−フルフラルアルデヒド及び44gのスルファミ
ン酸を溶解させた。別の500mlの水に41gの亜塩素
酸ナトリウムを溶解させ、この第2溶液を前記第1溶液
に加えた。組み合わせた溶液を一晩攪拌し、100mlの
酢酸エチルを用いて3回抽出し、次に濃縮すると油とな
り、この油は放置すると結晶化した。5−メチル−2−
フロ酸の収量は27.5gであった。 H1 NMR(CDCl3): d 2.35 (s, 3H, CH3); d 6.09 (d, 1H,
Ar-H); d 7.08 (d, 1H,Ar-H).
【0107】この手順から得た生成物22gと触媒量の
2 SO4 を500mlのエタノールに加えた。2日間還
流後、溶液を1リットルの水に注ぎ入れ、酢酸エチルを
用いて抽出した。回転減圧蒸発器を使用して酢酸エチル
を除去(すなわち、濃縮)した。残留物を20mlのヘプ
タンに溶解させ、フラスコの底部で形成されていた少量
の褐色固形物からデカントした。
【0108】このヘプタン溶液を濃縮し、14.6gの
褐色液体を得た。この反応の収率は、少量の2,6−ジ
−t−ブチル−4−メチルフェノールを酸化防止剤とし
て加えることにより向上した。NMRスペクトルは、エ
チルソルベートのSeO2 酸化から得られた生成物(す
なわち、エチル−5−メチル−2−フロエート)に一致
した。前述のようなN−ブロモスクシンイミドによる臭
素化によって、エチル−(5−ブロモメチル)−2−フ
ロエートが生成した。
【0109】実施例2 エチル−(5−シアノメチル)−2−フロエート A.ルート1 20mlのエタノールに、15.5gのエチル−(5−ブ
ロモメチル)−2−フロエート(実施例1から)を加
え、これに10mlの水に2.7gのNaCNを含む溶液
を加えた。組み合わせたものを約1時間還流させ、次に
冷却し、水に注ぎ入れ、生成物を酢酸エチル中に抽出さ
せた。この溶液を濃縮し、純度約50%の褐色液体1
0.8gを得た。 H1 NMR: d 1.15 (t, 3H, CH3); d 4.24 (q, 2H, CH2);
d 4.30 (s, 2H, CH2CN);d 6.60 (d, 1H, Ar-H); d 7.26
(d, 1H, Ar-H).
【0110】B.ルート2 代わりに、市販入手可能なエチル(5−クロロメチル)
−2−フロエート(ワイオミング州ミルウォーキー所在
のAldrich Chemical Co.製)から以下のようにエチル−
(5−シアノメチル)−2−フロエートを調製した:2
5.89gのKCN、500mlのDMSO及び200ml
のTHFを含む機械攪拌機が装着された5リットル3口
丸底フラスコに、500mlのTHF中の50gのエチル
−(5−シアノメチル)−2−フロエートを4分間にわ
たって滴下添加した。混合物を23℃で一晩攪拌し、次
に2リットルの5℃の水及び1リットルのクロロホルム
と共に10分間攪拌した。水性相を分離し、500mlの
クロロホルムで2回抽出した。組み合わせたクロロホル
ム相を1リットルの飽和NaCl水溶液で洗浄し、27
0gの硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、回転減圧
蒸発器で蒸発させた。残留物をシリカゲルカラム上でフ
ラッシュ濾過し、酢酸エチル:石油エーテル15:85
混合物を使用して所望の生成物を溶出させた。収量は1
3.77gであり、特性評価は上記のようにNMRによ
り行った。
【0111】実施例3 6,7−ビス−(2’−クロロエトキシ)−3−[2''
−5''−カルボエトキシ)−フリル]クマリン 100mlのエタノールに、10.83gの粗製エチル−
(5−シアノメチル)−2−フロエート(実施例2か
ら、純度約50%)、16.9gの4,5−ビス−
(2’−クロロエトキシ)−2−ヒドロキシ−ベンズア
ルデヒド(米国特許第5,474,743号明細書の実
施例4に記載されている手順に従って調製したもの)及
び触媒量のピペリジンを組み合わせた。混合物を約1時
間還流させ、冷却し、次いで20mlの濃HClにより処
理した。数分後、沈殿物が形成された。スラリーを冷却
し、4.8gの固形物を採集した。 H1 NMR(d6 DMSO): d 1.31 (t, 3H, CH3); d 3.98 (m, 4
H, CH2Cl); d 4.32 (m,4H, CH2); d 4.42 (t, 2H, C
H2); d 7.22 (d+s, 2H, Ar-H); d 7.40 (d, 1H, Ar-H);
d 7.65 (s, 1H, Ar-H); d 8.43 (s, 1H, Ar-H).
【0112】実施例4 6,7−ビス−(2’−ヨードエトキシ)−3−[2''
−(5''−カルボエトキシ)−フリル]クマリン 4.3gの6,7−ビス−(2’−クロロエトキシ)−
3−[2''−5''−カルボエトキシ)−フリル]クマリ
ン(実施例3から)及び4.1gのNaIを100mlの
メチルエチルケトン中で3日間還流させた。溶液を冷却
し、4.3gの沈殿物を採集した。この沈殿物は対応す
るヨウ素化クマリンであることが示された。 H1 NMR(d6 DMSO): d 1.31 (t, 3H, CH3); d 3.50 (m, 4
H, CH2I); d 4.32 (m, 4H, CH2); d 4.40 (t, 2H, C
H2); d 7.08 (s, 1H, Ar-H); d 7.18 (d, 1H, Ar-H); d
7.34 (d, 1H, Ar-H); d 7.58 (s, 1H, Ar-H); d 8.38
(s, 1H, Ar-H).
【0113】実施例5 FCCC−エステル (6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2''
−(5''−カルボエトキシ)フリル]クマリン) 4.3gの6,7−ビス−(2’−ヨードエトキシ)−
3−[2''−(5''−カルボエトキシ)フリル]クマリ
ン(実施例4から)、2.12gの1,4,10,13
−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカ
ン、及び4.3gのNa2 CO3 を400mlの乾燥アセ
トニトリル中で3日間還流させた。その後、所望の生成
物の量のさらなる増加はHPLCにより検出できなかっ
た。溶液を濃縮させ、残留物を不活性中性アルミナ上で
クロマトグラフ分離した。ジヨード出発物質をまずCH
2 Cl2 により溶出させた。次に、生成物をCH2Cl
2 中の5%エタノールにより溶出させた。最終的に、エ
タノール中の5%酢酸を使用し、カラム上の任意のFC
CC−酸を除去した。代わりに、熱メタノール中に溶解
させ、シクロヘキサンと酢酸エチルの5:1混合物を加
えることにより粗製FCCC−エステルを結晶化させ、
固体FCCC−エステルを得ることができる。この手順
において、カラムクロマトグラフィーは必要ではない。
5%エタノール画分を組み合わせ、回転減圧蒸発器によ
り濃縮した。FCCC−エステルの収量は3.4gであ
った。 H1 NMR(d6 DMSO): d 1.31 (t, 3H, CH3); d 3.50〜4.0
(m, 24H,クリプタンドのCH2); d 4.32 (q, 2H, OCH2);
d 4.50 (t, 2H, CH2); d 4.60 (t, 2H, CH2); d7.16
(d, 1H, Ar-H); d 7.30 (s, 1H, Ar-H); d 7.42 (d, 1
H, Ar-H); d 7.75(s, 1H, Ar-H); d 8.50(s, 1H, Ar-
H).
【0114】実施例6 FCCC−酸 (6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2''
−(5''−カルボキシ)フリル]クマリン) FCCC−エステル(実施例5から)を2NのHCl水
溶液中で約1時間還流させることにより加水分解させ
た。反応の進行をHPLCにより追跡した。エステル出
発物質の11.85分間の保持時間に対し、酸生成物は
10.42分間の保持時間を示した。加水分解時間がよ
り長くなると、第3成分(すなわち、エステル又は酸以
外のもの)が生成した。未反応エステルを溶出させるた
めにエタノール(「EtOH」)を、そして酸生成物を
溶出させるためにEtOH/5%酢酸を使用し、不活性
中性アルミナ上でのカラムクロマトグラフィーにより酸
を精製した。EtOH/5%酢酸画分を組み合わせ、回
転減圧蒸発器に続いて減圧ポンプを使用して濃縮した。
カボチャ色の固形物が得られた。4.3gのFCCC−
エステルの加水分解を幾つかのバッチで行った。例え
ば、0.95gのエステルは、クロマトグラフ分離後に
0.5gの純粋なFCCC−酸を与えた。
【0115】代法として、以下の手順に従って、エステ
ルの加水分解を行った。90mlのTHF中に5.6gの
FCCC−エステル(実施例5から)を含む混合物を2
9mlのメタノールと共に攪拌及び混合した。この混合物
に56mlの水の中に3.7gの水酸化リチウム一水和物
を含む溶液を加えた。得られた混合物を23℃で30分
間攪拌し、次に84mlの6NのHClにより稀釈し、続
いてさらに1時間攪拌した。回転減圧蒸発器を使用し、
20分間を要して38℃で溶剤を除去し、残留物を12
0mlのメタノール(「MeOH」)及び120mlのTH
Fの溶液中に溶解させ、次に溶剤のストリッピングを継
続した。MeOH/THFストリッピングを数回繰り返
すと、残留水の殆どが除去され、黄色固形分が得られ
た。0.01mmHgで一晩乾燥させると、9.7gのFC
CC−酸が得られた。
【0116】実施例7 エチル−(5−ブロモメチル)−2−チオフェンカルボ
キシレート 実施例1Bにおけるように5−メチル−2−チオフェン
カルボン酸の25gの試料をエステル化し、29.9g
のエチル−5−ブロモメチル−2−チオフェンカルボキ
シレートを得た。 H1 NMR(CDCl3): d 1.35 (t, 3H, CH3); d 2.36 (s, 3H,
CH3); d 4.33 (q, 2H,CH2); d 6.02 (d, 1H, Ar-H); d
7.00 (d, 1H, Ar-H). 27.56gのN−ブロモスクシンイミドを用いてこの
生成物を実施例1Aにおけるように臭素化すると、3
6.23gのエチル−(5−ブロモメチル)−2−チオ
フェンカルボキシレートを橙色液体として得た。 H1 NMR(CDCl3): d 1.35 (t, 3H, CH3); d 4.30 (t, 2H,
CH2); d 4.40 (s, 1H,CH2Br); d 7.19 (d, 1H, Ar-H);
d 7.70 (d, 1H, Ar-H).
【0117】実施例8 エチル−(5−シアノメチル)−2−チオフェンカルボ
キシレート 36.23gのエチル−(5−ブロモメチル)−2−チ
オフェネカルボキシレート(実施例7から)を実施例2
に記載したようにNaCNと反応させ、26gのエチル
−(5−シアノメチル)−2−チオフェンカルボキシレ
ートを褐色液体として得た。 H1 NMR: d 1.23 (t, 3H, CH3); d 3.93 (s, 1H, CH2B
r); d 4.24 (q, 2H, CH2);d 6.98 (d, 1H, Ar-H); d 7.
60 (d, 1H, Ar-H).
【0118】実施例9 6,7−ビス−(2’−クロロエトキシ)−3−[2''
−(5''−カルボエトキシ)−チオフェン]クマリン エタノール中に4.8gのエチル−(5−シアノメチ
ル)−2−チオフェンカルボキシレート(実施例8か
ら)を含む溶液を6.5gの4,5−ビス−(2’−ク
ロロエトキシ)−2−ヒドロキシベンスアルデヒドによ
り実施例3に記載したように処理し、所望のクマリンに
対応する黄色固形物4.8gを得た。 H1 NMR (d6 DMSO): d 1.29 (t, 3H, CH3); d 3.98 (m,
4H, CH2Cl); d 4.30 (m,4H, CH2); d 4.40 (t, 2H, C
H2); d 7.20 (s, 1H, Ar-H); d 7.39 (s, 1H, Ar-H); d
7.78 (s+d, 2H, Ar-H); d 8.68 (s, 1H, Ar-H).
【0119】実施例10 6,7−ビス−(2’−ヨードエトキシ)3−[2''−
(5''−カルボエトキシ)−チオフェン]クマリン 6,7−ビス−(2’−クロロエトキシ)−3−[2''
−(5''−カルボエトキシ)−チオフェン]クマリン
(実施例9から)の2.44gの試料を実施例4に記載
したようにNaIと反応させ、所望のヨードクマリンに
対応する黄色固形物2.0gを得た。 H1 NMR (d6 DMSO): d 1.31 (t, 3H, CH3); d 3.58 (m,
4H, CH2); d 4.30 (t, 2H, CH2); d 7.23 (s, 1H, Ar-
H); d 7.40 (s, 1H, Ar-H); d 7.81 (s+d, 2H, Ar-H);
d 8.73 (s, 1H, Ar-H).
【0120】実施例11 TCCC−エステル (6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2''
−(5''−カルボエトキシ)チオフェニル]クマリン) 実施例10のヨードクマリンの全てを実施例5に記載し
たように1,4,10,13−テトラオキサ−7,16
−ジアザシクロオクタデカンと共に加熱した。得られた
混合物のHPLCにより多くの生成物が示され、幅の広
いピークに取り囲まれた鋭いピークは所望の生成物と一
致した。不活性アルミナ上でのカラムクロマトグラフィ
ーによる粗生成物の精製(CH2 Cl2 中に7%のエタ
ノールを含むものを使用して溶出)によって、前記鋭い
ピークにほぼ対応する1つの画分を得た。この画分を濃
縮し、0.17gの所望のTCCC−エステルを得た。 H1 NMR (d6 DMSO): d 1.31 (t, 3H, CH3); d 3.5〜4.0
(m, 24H, クリプタンドのCH2); d 4.35 (q, 2H, OCOCH
2); d 4.39 (t, 2H, CH2); d 4.50 (t, 2H, CH2); d 7.
39 (d, 1H, Ar-H); d 7.60 (s83 (d, 1H, Ar-H); d 8.8
1 (s, 1H, Ar-H).
【0121】実施例12 アズラクトン官能HPPE上に固定化されたFCCC A.アミン官能HPPE膜 寸法が7.6cm×7.6cmの親水性アズラクトン官能多
孔質ポリエチレン(HPPE)膜(引用によりここに含
めることにする米国特許第5,334,701号明細書
の開示に従って作製)を、6.5gの JeffamineTM ED9
00(ニューヨーク州ロンコンコマ(Ronkonkoma)所在の
Fluka Chemical Corp 製のビス(2−アミノプロピル)
ポリエチレングリコール800)と15滴の1,8−ジ
アザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エンとを含
む40mlのCHCl2 中に入れ、約18時間攪拌した。
膜を取り出し、CHCl2 により4回洗浄し、次に風乾
させた。
【0122】B.膜への染料のカップリング 広口ジャー内の約30mlのジメチルホルムアミド中に約
200mgのFCCC−酸(実施例6から)を溶解させ
た。これに2mlの1,3−ジイソプロピルカルボジイミ
ド(DIC)及び約200mgのヒドロキシベンゾトリア
ゾール水和物(HOBt)を加えた。混合物を回転混合
機で約10分間攪拌した。その後、1mlのN,N−ジイ
ソプロピルエチルアミン(DIEA)及び寸法が各々
7.6cm×7.6cmである全段落に記載のアミン官能膜
4枚を加えた。上記混合物を回転混合機で一晩攪拌し、
その後、膜を取り出し、風乾させる前にジメチルホルム
アミドで4回及びCH2 Cl2 で4回洗浄した。
【0123】代法として、10mlのDIC、480mgの
HOBt及び1mlのDIEAを含む50mlの塩化メチレ
ンに部分加水分解したアズラクトン官能HPPE膜を加
えた。フラスコを回転混合機で約6時間穏やかに攪拌
し、その後、膜を取り出し、塩化メチレンによりしっか
り洗浄した。アズラクトン官能基の再現は、赤外スペク
トルでの1823cm-1のピークの存在により確認され
た。場合に応じて、残留アミンを除去するための追加の
アセチル化工程を、10mlの無水酢酸及び1mlのDIE
Aを含む10mlのCH2 Cl2 溶液中に膜を入れること
により行ってもよい。しかしながら、生成物のアセチル
化の後においてセンサーの性能の向上を認めることはで
きなかった。
【0124】実施例13 HPPP上にコーティングされた固定化FCCC 米国特許第5,474,743号明細書に記載の実施例
17〜19の方法を使用し、FCCC染料にカップリン
グしたポリマーによりコーティングされたHPPP膜を
作製した。カルボキシル化PVC(「PVC−COO
H」、Aldrich )をJeffamine ED-900TMによりエステル
化し、得られたアミン官能ポリマーをFCCC−酸(実
施例6から)と反応させた。染料がカップリングしたP
VC−COOHをHPPP上に溶液塗布した。乾燥され
た被覆HPPPウェブを使用して本発明のカリウムセン
サーを作製した。
【0125】実施例14 アミン官能 CuprophanTM膜上に固定化されたFCCC 合計8枚の各々30.5cm×30.5cm×0.01mmの
グリセロールがしみ込んだ CuprophanTMセルロースのシ
ート(イリノイ州シカゴ(Chicago )所在のAkzo Nobel
Chemicals製)を500mlの脱イオン水中で2回洗浄
(10分間)し、グリセロールを除去した。各シートを
23.5cm×26cmのガラスプレート上に延ばし、室温
(約21℃)で乾燥させた。
【0126】A.オーバーコート 4.5gのデキストラン(MW 2,000,000)及び225ml
の脱イオン水を広口500mlボトルに加えることにより
オーバーコート溶液を調製した。混合物をオーブン内で
50℃に加熱し、デキストランを溶解させた。次に、
2.25gの Marasperse DBOS-4TM分散剤(ワイオミン
グ州ロスチャイルド(Rothschild)所在Diashowa Chemi
cals, Inc.製)を加え、混合物を振盪した。その後、
4.5gの Monarch-700TMカーボンブラック(マサチュ
ーセッツ州ウォールサム(Waltham )所在のCabot Cor
p. 製)を攪拌しながら加えた。氷水浴中で、各サイク
ルの間に振盪しながら、Model W-385 音波処理機(ニュ
ーヨーク州ファーミングデール(Farmingdale )所在の
Misonix Inc.製)により5回(3分間のサイクル時間
で)音波処理した。カーボンブラックの均一な水性分散
液を得た。この分散液に4.5gの50%NaOH溶液
(水溶液)を加え、そして分散液をさらに1分間振盪し
た。その後、脱イオン水中に6.75gの50%エチレ
ングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)を含
む溶液を加え、続いて1分間振盪した。振盪せずに室温
で10分間エージングした後、得られたオーバーコート
溶液を CuprophanTM膜の各シート上に均一に吹き付け
た。Model 8452A UV分光光度計(カリフォルニア州パロ
アルト(Palo Alto )所在のHewlett-Packard Instrume
nts Corp.製)を使用し、464nmでのシートの不透明
度を監視した(ほぼ3の吸収単位)。シートをガラス板
上で1時間乾燥させた。
【0127】B.架橋 1リットルビーカー内で、354mlの脱イオン水中に
3.1gの50%NaOH溶液を含む溶液を調製した。
これに混合しながら86gのDMSOを加えた。その
後、443gの50%EGDGE水溶液を加え、混合し
た。架橋溶液をシート上に流延し、シート上に保つこと
ができるように、8枚の板の全ての上に枠を載せ、クラ
ンプで締めた。溶液(約100ml)を各板の上に流延
し、50〜60分間を要して架橋させた。新しい溶液が
CuprophanTMシートと接触するようにこの時間の間に静
かに板を回転させた。その後、枠に沿って CuprophanTM
膜を切断し、2000mlの脱イオン水で3回濯いだ。
【0128】C.HDA(1,6−ヘキサンジアミン)
反応 4リットルビーカー内の2.0リットルの脱イオン水中
に120gの70%HDAを含む溶液に、室温で、架橋
した CuprophanTM膜を105分間浸漬した。ガラス棒を
用いてシートに渦を巻かせることによりトラップされた
気泡を注意深く除去した。ビーカーからシートを取り出
し、2000mlの脱イオン水により5回濯ぎ、過剰のH
DAを洗い落とし、次に脱イオン水に浸漬した。(この
段階で、次の工程にシートを即座に使用することができ
る。代わりに、シートを脱イオン水/酸浴(2リットル
の脱イオン水中に1mlの12NのHClを含む)中で一
晩貯蔵してもよい。)
【0129】D.FCCCカップリング反応 30mlのDMFを含む直径15.2cmのペトリ皿内で3
0mgのFCCC(実施例6から得たもの)を10〜15
分間攪拌することにより溶解させることによって、染料
溶液を調製した。その後、0.8mlのDIC及び190
mgのHOBtを加え、15分間攪拌し、その後に、0.
4mlのDIEAを加え、攪拌を約5分間継続した。HD
A官能化 CuprophanTMシートを脱イオン水から取り出
し、10.2cm×10.2cm試験片に切断し、紙タオル
上に載せて過剰の水を吸い取った。そのような2枚の試
験片を一度に染浴中に(平坦に保ったまま)24時間浸
漬し、その後、試験片を取り出し、250mlのDMFに
よる洗浄を2回行い、500mlの希HCl水溶液(pH 2
〜3.5 )で2回洗浄した。各洗浄に約3分間を要した。
【0130】代法として、HDA官能膜を2.5%Na
2 CO3 中で30分間洗浄し、続いて水中で3回及びア
セトン中で1回洗浄した。35mlのアセトンに100mg
のFCCC(実施例6から得たもの)を溶解させ、続い
て1mlのDIC、50mgのHOBt及び1mlのDIEA
を添加した。この溶液を回転混合機で15分間混合し、
その後、洗浄した膜を加えた。3日後、膜を取り出し、
アセトンで1回及び水で3回洗浄した。次に、洗浄した
膜を、10mlの無水酢酸及び1mlのDIEAを含む20
mlのアセトン溶液に加え、20分間回転混合した。溶液
から膜を取り出し、アセトンで1回及び水で3回洗浄し
た。
【0131】この塊状材料について、16ビットA/D
コンバーター及びLab VIEWTMソフトウェア(テキサス州
オースチン(Austin)所在のNational Instruments製)
により変更された S400 モニター(CDI/3M Health Car
e)により、pH 7.34 のN−(2−ヒドロキシエチル)
ピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)緩
衝液(ミズーリー州セントルイス(St. Louis )所在の
Sigma Chemical Corp.製)中8mMのK+ で強度を測定す
ることができる。標準ゲイン構成に基づき、計数1.3
×105 〜1.5×105 の優れた強度を得た。
【0132】実施例15 センサー−カセット集成体 FlexobondTM 430(カリフォルニア州アービン(Irvin
e)所在のBacon Industries, Inc.製)のような2液型
ポリウレタン接着剤を使用し、薄い(0.175mm)ポ
リカーボネートシート(ドイツ国レーヴァークーゼン
(Leverkusen)所在のBayer AG製)に、染料がカップリ
ングした CuprophanTMシート(実施例14から得たも
の)を貼り合わせた。ポリカーボネート側に、CW14TM
圧接着シート(ウィスコンシン州ラシーン(Racine)所
在のRSW Inc., Specialty Tape Div. 製)を取り付け、
剥離ライナーを剥がした。穿穴機を使用して積層体から
ディスクを打ち抜き、このディスクをS400カセット(カ
リフォルニア州タスティン(Tustin)所在のCDI/3M Hea
lth Care製)のpHチャンネル及びAO2 チャンネル上に
配置した。前記変更されたS400モニターに対し、カリウ
ム検出チャンネルとして適切なオプチックスと共にこれ
らの2つのチャンネルを使用した。
【0133】実施例16a LEDテストベッド 図10は、本発明のレッドシフトしたK+ センサーを試
験するために使用したLEDに基づく位相変調ブレッド
ボードの概略図100を示すものである。このブレッド
ボードは、血液ガスを検出するための振幅及び位相変調
法の両方を評価するように設計されたものである。
【0134】カリウムセンサー試験に関し、日本国徳島
県所在のニチア化学工業製又はトヨダ合成株式会社製
(商品名LedtronicsTMで製造されているもの)のGaN LE
D 110を、30kHzの搬送周波数、0.2秒間のバ
ースト持続時間、5秒間の繰返し時間及び2.5mWの
平均出力で振幅変調させた。光を集束させ、バンドパス
励起フィルター112(390nm±25nm;%T=52
%;帯域外ブロッキング(out-of-band blocking)=
0.001%T;マサチューセッツ州ウォバーン(Wobu
rn)所在のSpectroFilm から入手可能)に通し、ファイ
バーオプチックケーブル114に再集束させた。このケ
ーブルの末端にはCDI S400オプチカルヘッド116があ
った。ランダム化ファイバー束118により戻された変
調蛍光は、SpectrumFilmから入手可能なもののような帯
域発光フィルター120(475±35nm;%T=64
%;帯域外ブロッキング=0.001%T)に戻る。次
に、ろ波された光学信号をOPTO-8TM光電子増倍管検出器
122又はS1337-33-BR TMフォトダイオード検出器(双
方ともニュージャージー州ブリッジウォーター(Bridge
water)所在のHamamatsu Corp. から入手可能)の活性領
域上に集束させた。励起ファイバー124のほんの一部
を検出器集成体に直接送り、ニュートラル密度フィルタ
ー126により減衰させ、LEDからの基準光学信号を
提供した。
【0135】計算機により制御される光シャッター12
8を使用すると、光検出器は励起信号と蛍光戻り信号と
を交互にサンプリングする。これによって、LED出力
振幅の揺らぎを補正する光学的標準が提供される。さら
に、検出器の光電流と発振器132からの30kHzの
電気的基準信号とを交互にサンプリングするために電子
スイッチ130を使用した。検出器の出力は、フォトダ
イオード検出器からの光電流を電圧に変換する3段階電
子回路に送った。減衰及びスイッチ段階130を使用
し、LED駆動発振器132からの基準電気信号を減衰
させ、この減衰された基準信号と未減衰光信号とを切り
換えた。トランスインピーダンスプレアンプ段階134
で、OPA627演算増幅回路を使用して光電流又は基準電気
信号を電圧に変換した。次段階136は2基のOPA627演
算増幅器を使用する2段階Delyiannisスタイル帯域フィ
ルターであった。この段階は、ノイズのパワーを帯域限
定する一方で、信号をさらに増幅する。3段階回路のゲ
インは7.3×108 V/A(177dB)であって、約
30kHz を中心周波数として400Hzに帯域限定された
ものであった。
【0136】増幅された光信号又は基準電気信号は、位
相、振幅及び信号対ノイズ比(SNR)の最小二乗推定
法を使用する LabVIEWTMバーチャル・インスツルメント
・ソフトウェア(virtual instrument software )を使
用し、100kHz 毎にディジタル方式でサンプリング及
び加工した。これらのサンプリング条件下で、ノイズの
パワーを1Hz未満に帯域限定し、SNRをさらに増加さ
せた。動作時に、 LabVIEWTMソフトウェアは、光学セン
サーの信号、光学的基準信号及び電気的基準信号を交互
にサンプリングした。LED揺らぎのために集められた
光学的基準信号及び電子ドリフトのために集められた電
気的基準信号は、温度、湿度及び無線周波数(RF)整
流との相関がある。
【0137】実施例16b FCCC及びFCCCに基づくセンサーに関するスペク
トル調査 図1a及び1bは、溶液中でのFCCC(実施例6)と
6,7−[2.2.2]−クリプタンドクマリン−3−
カルボン酸(「CCC」、米国特許第5,474,74
3号明細書の実施例11)のカリウム応答を比較するも
のである。等モル濃度の溶液(0.08AUFS)をpH
7.3の100mMHEPES緩衝液中で調製した。発光ス
ペクトルを、図1a及び1bにぞれぞれ示されているよ
うに392nm及び354nmで、0.0、1.0、2.
0、3.9、7.7及び15mMのカリウム濃度でそれぞ
れ測定し、図1a及び1bの双方においてそれぞれA、
B、C、D、E及びFと標識付けした。図1cは、39
2nmの励起波長を使用した場合の、0mM(A)及び15
mM(B)のカリウムイオン濃度でのFCCCの応答を、
0mM(C)及び15mM(D)のカリウムイオン濃度での
CCCの応答に対して比較するものである。図1a〜1
cは、既に調製されているイオノホア(CCC)に対
し、本発明のイオノホアの広いカリウムイオン濃度域に
対する応答が著しく改良されたこと及び好ましい波長
(392nm)での励起に対する応答が非常に増強された
ことを示すものである。
【0138】FCCC及びCCCが、それらの各吸収極
大波長(392対354nm)で励起される場合には、F
CCCはレッドシフトした吸収極大波長(460nm対4
40nm)に一致する僅かに減少したカリウム応答(8mM
のK+ に対する呼びかけではCCCの29%対48%)
を示した。百分率で表される「カリウム応答」は、カリ
ウムイオンの不在下での発光強度に対する所定のカリウ
ムイオン濃度での発光強度の増加百分率を意味する。図
1cが、GaN青色LED又はフラッシュラップのろ波
された出力に似せるために両方の試料が392nmで励起
した場合に、FCCC蛍光戻りはCCCの蛍光戻りの1
4倍であったこと(すなわち、曲線「B」対曲線
「D」)を示すものであることは重要である。FCCC
のレッドシフト及び増加した効率は、ランプ型カリウム
検出系の性能を実質的に改良した。FCCCは、パルス
GaN青色LED及びフォトダイオード検出器によるカ
リウム検出を促進するほど十分な追加の信号を提供する
が、CCCはそうではなかった。FCCC及びCCCの
蛍光寿命が位相変調に基づくK+ 検出を可能にするカリ
ウム濃度の関数であることが示されたことは重要であ
る。
【0139】図2は、HDA官能Cuprophan (実施例1
4d)上のFCCC指示体のカリウム応答を表すもので
ある。図2において、曲線Aは初期の0mM K+ 濃度を表
し、曲線Bは8mMカリウムイオン濃度で390nmの励起
光を2分間露光した後の放射強度を表し、そして曲線C
は曲線Bに関して露光した直後の0mMカリウムイオン濃
度に対する応答を表している。FCCC−HDA−Cupr
ophan センサーは、カリウムイオンに対して強く(31
%)、速く(<2分)、可逆的な応答を示した。溶液中
で観測されるカリウム応答は、固定化により完全に一定
のまま保たれる。ポリマー支持体の選択は非常に重要で
ある。FCCC−ED900−PVCセンサー(実施例
13)は、非常に弱いカリウム応答(6%)を示す。F
CCC−アズラクトン−HPPE系センサー(実施例1
2)は速く(<1分)、可逆的な応答を示すが、溶液
(29%)に対して低下したカリウム応答(15%)を
示す。
【0140】FCCC系センサーの光分解は、FCCC
−アズラクトン/HPPEセンサー(実施例12)に関
して図3に示されているように、遅く且つ単原子的であ
った。照射する前に、0mM(曲線A)及び16mM(曲線
B)のカリウムイオン濃度で390nmの励起光での応答
が示された。センサー膜をHEPES緩衝液中に浸漬
し、次いで、1mmの励起スリット幅を使用し、SPEX Flu
orologTMシリーズ分光蛍光計(ニュージャージー州エジ
ソン(Edison)所在のSPEX industries, Inc. 製)内で
390nmで1時間連続照射した。照射後においても、0
mM(曲線C)及び16mM(曲線D)のカリウムイオン濃
度で390nmの励起光での応答が示された。繰返し測定
することにより分解速度が予測可能なものであることが
観測された。
【0141】FCCCセンサーは、pH 7.4のHEPES
緩衝液中で120℃で2時間オートクレーブ殺菌された
後でもそれらのカリウム応答及びスペクトル特性を失わ
ない。
【0142】図4a及び4bは、両方とも上記実施例1
2に記載した方法に従って作製したCCC−アズラクト
ン/HPPEセンサー(図4a)及びFCCC−アズラ
クトン/HPPEセンサー(図4b)のpH依存性のある
応答を比較するものである。Type924 トランスファーテ
ープ接着剤(3M Company)を使用してこれらのセンサー
をS400フロースルーカセット(CDI/3M Health Care)に
取り付け、一晩水和させた。HEPES緩衝液(100
mM、0mMカリウム)の溶液を、HCl(1M)を使用し
てpH 3.76 まで滴定し、蠕動ポンプを使用してセンサー
に循環させた。次に、NaOH(1M)を使用して溶液
を各連続pHに対して滴定し、370nm(CCCセンサ
ー)又は390nm(FCCCセンサー)で照射した。図
4a及び4bにおいて、pHを表す曲線を次のように区別
した:A=pH 6.98 ;B=pH 7.18;C=pH 7.4;D=p
H 7.62 ;及びE=pH 7.83 。各pHで平衡化(3分間)
後、発光スペクトルを記録した。両センサーともpKa =
5.8 を示した。しかしながら、発光強度のpH依存性、す
なわち最低から最高までの強度変化は、おおよそ7.0
〜7.8の生理的pH範囲にわたってCCCセンサー(3
3%)に対してFCCCセンサーはかなり小さい(6
%)。
【0143】図5は、S400フロースルーカセットに組み
込まれたFCCC−アズラクトン/HPPE膜から得た
データであって、図10に概略的に示した位相変調LE
Dブレッドボードにより測定されたデータである。カセ
ットを一晩水和させ、その後、センサーをHEPES緩
衝液(100mM 、pH 7.4)中で0mM K+ と16mM K+ の間
で周期的に循環させた。センサーを、光学的濾過された
(390nm)LED(ニチア化学工業)からの30kHz
の振幅変調光の0.2秒間のバーストに露光した。応答
曲線のうちの「A」の部分は0mMカリウムイオン濃度に
対応し、一方、「B」の部分のカリウムイオン濃度は1
6mMであった。約400mVの振幅の違い及び出力電圧の
急激な(約0.025秒間の)変化によって、波長がよ
り短い光源を利用するように変更された市販入手可能な
センサーに使用される本発明のイオノホアを用いると有
効なカリウムイオン検出が可能であることが示された。
【0144】光度測定によって、検出器で集められた蛍
光戻りが20nWよりも多いことが示された。20nWは、
パルス集積法と組み合わされた場合に高い信号対ノイズ
比を維持するのに十分な光学的戻りであった。帯域幅が
10kHz (フィードバック10Mohm及びキャパシタ1.
4pF)及びゲインが5μW であるOPA-627 オペアンプを
使用すると、20nWの蛍光戻りは、パルス当たり100
μV のノイズフロア(noise floor )で100mVの電気
的信号を提供した。これによって、パルス当たり0.1
%のノイズフロアが与えられた。多重パルスを平均化す
ることによりさらなる改良が得られた。コンパクトなガ
ラスファイバーGaN LED オプチックスモジュールの設計
にこの方法を使用した。固体光源及び検出器をコンパク
トモジュールに取り付けた。オンボードA/Dコンバー
ターは、任意のホストモニターに向けることができるデ
ジタル化された出力信号を提供した。前記モジュール
は、例えば図11におけるようにフロースルーカセット
センサーと直接接続させた。
【0145】実施例16c レッドシフト性置換基に関する調査 式Aにより表される化合物がレッドシフト式K+ 検出を
支えるであろうという結論を支持するために80種以上
のクマロクリプタンド誘導体を調製した。我々は、K+
依存性のある電荷移動機構が作用した場合に予測される
であろうK+ 依存性のあるスペクトルシフトに関する証
拠を得られなかった。その代わりに、我々は、カリウム
依存性のある振電カップリング機構に関する証拠を得
た。
【0146】種々のEDO型、MDO型及びDMO型ク
マリン誘導体に関する実験データを表16dに示す。Ph
otochemical Research Associates (PRA)System 3
000蛍光寿命測定装置を使用し、脱酸素化されたメチル
アルコール中で、ジメトキシ(DMO)、メチレンジオ
キシ(MDO)及びエチレンジオキシ(EDO)クマリ
ンモデル化合物に関する蛍光寿命データを得た。標準散
乱溶液を対照とする時間相関信号フォトン計数技術を使
用して蛍光減衰を測定し、グローバル最小法(global m
inimization)により分析した。
【0147】
【表1】
【0148】前記表中、Φは量子収率;τは緩和時間;
f は蛍光減衰の速度定数;及びknrは無放射減衰の速
度定数である。前記速度定数は、式(4)及び(5):
【0149】
【数1】
【0150】を解くことにより導かれる。6,7−エチ
レンジオキシ(EDO)クマリンモデル化合物の蛍光量
子収率は、対応する6,7−メチレンジオキシ(MD
O)誘導体又は6,7−ジメトキシ(DMO)誘導体の
蛍光量子収率よりも常に小さかった。EDO型化合物
が、面外パッカリング振動を維持することができ、一
方、この振動はMDO型及びDMO型化合物では抑制さ
れることは重要である。表16dに示した蛍光寿命の調
査は、化合物1、2及び3におけるそのような面外パッ
カリングが無放射速度定数knrを増大させ、放射又は蛍
光速度定数kf を実質的に変化させないことを表す。こ
のパッカリングは、近接しているnπ* 状態とππ*
態の混成に寄与し得る。発光極大波長が535nmである
比較用化合物4Cは、おそらくはππ* 状態と基底状態
の直接混成のために全ての類似体で大きなknrを示す。
【0151】表16eに示すデータは、DMO型及びM
DO型モデル化合物の両方が、本発明のクマロクリプタ
ンドのカリウムイオンに対する応答(例えば、面外パッ
カリングの抑制)を予測するのに有用であり得るという
観測結果を追認するものである。特に、図6a及び6b
に示されるように、幾つかのクマロクリプタンド誘導体
のカリウム応答と対応するモデル化合物のMDO/ED
O量子収率比との間に強い相関が存在する。「K+
答」は、カリウムオンの不在下での発光強度に対する所
定のカリウムイオン濃度(8mM)での発光強度の増加百
分率を意味する。図6a及び6bにおいて、「1」、
「3」、「5」及び「12」と標識付けしたデータ点
は、表16cに記載のMDO型化合物(図6a)及びD
MO型化合物(図6b)の1、3、5及び10の測定さ
れた量子収率の対応するEDO型化合物の測定された量
子収率に対する比にそれぞれ対応するものであって、同
様に置換されたクマロクリプタンドのカリウムイオンの
不在下で8mMカリウムイオン濃度での応答に対してプロ
ットしたものである。
【0152】これは、MDO型及びDMO型化合物が面
外パッカリング振動を抑制するのと同様に、クリプタン
ド酸素へのK+ の結合が無放射減衰の原因である面外パ
ッカリング振動を抑制することを示唆するものである。
放射緩和の速度(kf )及び無放射緩和の速度(knr
は、作動するカリウムセンサーが得られるように拮抗す
るものでなくてはならない。発色団が剛性であり過ぎる
と、knrは非常に小さくなり、量子収率Φは大きいまま
となる。knrが大き過ぎると、K+ 依存性のある変調が
かき消され、蛍光量子収率は小さいままとなる。実験的
研究及び理論的研究によって、本発明のレッドシフトし
たクマロクリプタンド誘導体はカリウム検出のための優
れた候補であることが示された。表16dに掲載されて
いるデータは、振幅及び寿命測定の両方が、例えばカリ
ウムイオンの定量的測定に使用できるものであることを
示している。
【0153】
【表2】
【0154】理論に束縛されるわけではないが、クマリ
ン類の無放射緩和に関して提案する機構を使用すること
ができる。提案する機構において、クマリンは、最初に
0基底状態からS1 (ππ* )励起状態に光励起され
る。π電子密度の変化によって、全ての核の位置がその
基底状態配置から少しエネルギー的に励起した状態にあ
る核配置に変化する。クマリン類のような平面状の芳香
族化合物に対し、S1(ππ* )励起状態は、芳香環系
の平面に主として閉じ込められる分子歪みを通じて緩和
する。
【0155】S1 (ππ* )励起状態が緩和すると、S
1 (ππ* )励起状態は直交するS2 (nπ* )励起状
態とほぼ等エネルギー的になる。面外振動はこれらの2
つの状態を混成させ、それらのポテンシャルエネルギー
面を変化させ、そして適切な条件下では、S1 (π
π* )状態から基底S0 状態への無放射遷移を促進す
る。
【0156】そのような励起状態過程に関する軌道エネ
ルギーは図7に示されている。図7の中で図7Aは、弱
いカップリングを表し、図7Bは強いカップリングを表
し、そして図7Cは非常に強いカップリングを表してい
る。ここで「カップリング」とは、S1 (ππ* )(曲
線2)状態とS2 (nπ* )(曲線1)状態の全体的に
非対称な振電的カップリングを意味する。非混成状態は
点線で示されており、振電カップリングした状態は実線
で示されている。無放射遷移に対する障壁幅は、矢印
A、B及びCでそれぞれ示されている。S2 (nπ*
軌道のほうがかなりエネルギーが高い場合には、明らか
に振電カップリングは好ましくない(スキームA)。こ
の場合には、蛍光量子収率は大きいままであり、カリウ
ム応答は観測されない。S2 (nπ* )及びS1 (ππ
* )が非常に強くカップリングする場合(スキームC)
には、無放射減衰が支配的である。この場合には蛍光量
子収率は非常に小さく、K+ 結合に依存しない。これら
の2種の極端な振電カップリングの間で、適度な無放射
減衰速度がK+ 感度(スキームB)のあるものとなる。
【0157】結局、初期S1 (ππ* )と無放射遷移の
最終S0 状態との間のエネルギーギャップが減少するに
つれて面外パッカリングモードのエネルギー受容能が減
少する。また、面内モードは、近くにS2 (nπ* )状
態を必要とすることなく、S1 (ππ* )状態とS0
態とをより有効に直接カップリングさせる。従って、S
1 (ππ* )−S0 間のエネルギーギャップが減少する
ほど、すなわち蛍光波長が増加するほど、K+ 応答がは
っきり現れなくなる。
【0158】このことは、図8に本発明のクマロクリプ
タンドに対して実験的に示されている。表8で、データ
点の数字は表16c中に示したクマリン置換パターンに
対応する。データ点「1」は、DMO型クマリン化合物
及びEDO型クマリン化合物に関して実験的に得られた
相対量子収率Φに対応する。この相対量子収率は、本発
明の対応する置換クマロクリプタンドの実験的に得られ
た蛍光発光極大波長に対してプロットしたものである。
蛍光発光極大波長が増加するにつれて、(ΦDMO /Φ
EDO 比から分かるように)カリウム応答は減少する。蛍
光波長が470nmを超えると、カリウム応答は市販用型
センサーにおいて有効でなくなるほど非常に小さくな
る。
【0159】適切なセンサーを選別するために分子モデ
リングを用いた。当該イオノホアが、(1)芳香族カル
ボニル、ニトロ芳香族及びN−置換複素環式系において
見出されるような近接しているS2 (nπ* )及びS1
(ππ* )励起状態;(2)クリプタンドのヘテロ原子
と複素環のヘテロ原子とを連結させることを伴うフレキ
シブルな面外振動モード;並びに(3)480nm未満で
の蛍光極大、を示す。
【0160】吸収波長を予測するために基底状態分子軌
道計算を、そして蛍光波長を予測するために励起状態分
子軌道計算を使用し、可能性のある候補を選別すること
ができる。レッドシフトしたクマリン誘導体の大部分が
上記基準を満足せず、優れたカリウム指示体とならない
ことは重要である。
【0161】種々の置換パターンを有するEDO型クマ
リン誘導体に関して計算された発光波長及び吸収波長、
ストークスシフト及びK+ 応答(上記定義の通り)を表
16cに示す。表中、y1 及びy2 は、下記式(1)及
び(2)に従って計算された値からそれぞれ導かれた予
測された吸収波長及びストークスシフトに対応する。図
6b及び8から、観測された「K+ 応答」をクマリン化
合物の観測された発光波長λemと相関させるために単純
な実験式:
【0162】
【数2】
【0163】を導入することができる。この式(3)を
使用して表16cに示す通りのクマリン誘導体のK+
答を計算した。
【0164】
【表3】
【0165】
【表4】
【0166】
【表5】
【0167】
【表6】
【0168】
【表7】
【0169】
【表8】
【0170】
【表9】
【0171】
【表10】
【0172】
【表11】
【0173】初期分子構造は、市販の分子構築ソフトウ
ウェアEDITOR(オレゴン州ビーバートン(Beaver
ton )所在のCAChe Scientific製)を使用することによ
り構築した。S0 基底状態のコンホメーションは、2種
のソフトウェアパッケージ:MM2(CAChe Scientific
製)及びMOPAC6.0(PM3パラメーターを使
用)を使用することにより決定した。S1 (ππ* )励
起状態のコンホメーションは、制限つきハートリー−フ
ォック(restrict Hartree-Fock )(RHF)開殻配置
間相互作用計算(CI)によるMOPAC6.0(PM
3パラメーターを使用)を使用することにより決定し
た。幾何配置最適化の部分として、2種のCI計算:
(a)HOMO及びLUMOのみを用いる小規模CI計
算(CI=2)(MOPACパラメータMICROSは
4(又は3))と、(b)0.05よりも大きなS
1 (ππ* )状態でのCI拡張係数を有する全てのマイ
クロステート(Microstate)を用いる大規模CI計算
(10>CI>2)(全てのマイクロステートが含まれ
るようにMOPACパラメーターMICROSは5〜2
5)を行った。
【0174】種々の分子に関する吸収極大波長及び蛍光
波長は、入力幾何配置として基底状態及び励起状態の分
子コンホメーションをそれぞれ用いるZINDO、MO
PAC6.0(PM3パラメーターを使用)又はLAN
LPACを使用することにより決定した。ZINDOか
らの全ての結果は、26の配置間相互作用(CI)ウィ
ンドウ(占有軌道数13及び非占有軌道数13)を使用
することにより得た。MOPAC計算において、種々の
励起状態のエネルギーは、51個の制止用波動関数(de
termental wavefunctions )を用いるCI計算を使用し
て決定した。これらの波動関数は、1つの基底状態配置
と50個の(5つの最高占有分子軌道から5つの最低非
占有分軌道への)単一励起を含んでいた。これらの計算
から各分子に関するストークスシフトを決定することが
できる。
【0175】調査した分子種に関する実験的に測定され
た波長に、計算された吸収波長及び蛍光波長を較正する
ことが必要であった。典型的には、計算された波長と実
験的に測定された波長との間に線形相関が存在した。こ
れらの既定された相関及びモデリングの結果から、幾つ
かの新規誘導体に関する吸収波長、ストークスシフト、
蛍光波長及びK+ 応答を予測することができる。
【0176】モデリング手段の3つの組み合わせを使用
して吸収極大波長:λabs (PM3,ZINDO)、λ
abs (PM3,LANLPAC)及びλabs (MM2,
ZINDO)を計算した。これらの3通りの方法から得
られた結果のうち、λabs (MM2,ZINDO)は、
表9aに示されるように実験データと最も高い線形相関
を与えた。
【0177】EDO型化合物に対してこの方法により計
算された吸収波長を、同じ置換パターンを有する本発明
のクマロクリプタンドに対して8mMカリウムイオンの存
在下で実験的に得られた吸収波長に対してプロットし
た。図9a中のデータ点は、表16cに示した化学構造
及び置換パターンに対応する。理論吸収波長x1 を算出
したならば、式(1):
【0178】
【数3】
【0179】に従って、表16cに記載した予測される
吸収波長に理論吸収波長x1 を変換する。
【0180】モデリング手段の3つの組み合わせを使用
して発光極大波長:λem(PM3,CI=2,ZIND
O)、λem(PM3,CI=2,LANLPAC)及び
λem(MM2,CI>2,LANLPAC)を計算し
た。これらの3通りの方法から得られた結果のうち、λ
em(PM2,CI>2,LANLPAC)は、実験デー
タと最も高い線形相関を与えた。
【0181】EDO型モデル化合物の理論的ストークス
シフト{Δλ=λem(PM3,CI>2,LANLPA
C)−λabs (PM3,LANLPAC)}と本発明の
同様に置換されたクマロクリプタンドイオノホアの実験
的的ストークスシフトとの間に線形相関が存在した。ス
トークスシフトの計算された値x2 を式(2):
【0182】
【数4】
【0183】に従って予測される値y2 に変換し、この
予測される値を表16cに記載した。図9a及び9bに
関し、FCCC−エステル(データ点11)が、カリウ
ム応答が実質的に残るようにレッドシフトした吸収と小
さなストークスシフトの独特の組み合わせを提供するこ
とは明らかである。
【0184】図9a及び9b並びに式(1)、(2)及
び(3)に従って確立される相関に基づいて、可能性の
ある指示体の候補を選別することが可能である。表16
cは、我々がモデル化し、指示体の理論(計算される)
吸収極大波長と発光極大波長を示した幾つかのEDO型
クマリン誘導体の構造を表すものである。
【0185】表16cのデータから幾つかの結論を導き
出すことができる: (1)ヘテロ原子に対してα位で結合しているクマリン
環の3位に存在する5員複素環は、望ましいレッドシフ
トを提供すると同時にK+ 応答を維持する。ヘテロ原子
に対してβ位で結合しているモデル化した5員複素環は
そうではないこと; (2)3−置換クマリン類の4位に存在する電子吸引性
置換基は、それらの未置換類似体又は4位に電子供与性
置換基を有する3−置換クマリン類に対し、K+ 応答を
著しく低下させること;並びに (3)3−置換クマリン類の5又は8位に存在する電子
吸引性置換基は、4位に存在する電子吸引性置換基より
もかなり小さい影響をK+ 応答に及ぼすこと。同様な方
法を使用すると、イオノホアに基づく検出を支持するの
に必要な近接するnπ* 及びππ* 励起状態を有する他
の種類の芳香族カルボニル、ニトロ芳香族及びN−複素
環系を確認することが可能である。
【0186】実施例17 カリウムサンサーの臨床試験 カリウムセンサー膜を実施例15に記載した通りのセン
サーカセットに取り付け、このカセットを心臓外科患者
の血液中の[K+ ]を測定するのに使用されるCDI/3M H
ealth Care Model S400TM臨床モニターに取り付けた。
前記膜は、取り付け前にpH 7.32 のHEPES緩衝液中
で11カ月間エージングさせたものであった。フラッシ
ュランプを使用してセンサーを照らし、 LabVIEWTMソフ
トウェアを使用し、16ビットA/Dコンバーターを通
じて結果を得た。
【0187】これらの実験的試験において、2点HEP
ES緩衝液シリンジ較正又は1標準[K+ ]緩衝液及び
1血液点較正のいずれかを使用し、Model 865 臨床血液
ガス分析計(BGA)(マサチューセッツ州メドフィー
ルド(Medfield)所在のCibaCorning Diagnostics Cor
p.製)に関し、6回の心臓バイパス外科手術で[K+
を監視した。S400TM臨床モニターのチャンネル1及び2
でカリウムイオンを監視した。全ての場合において、K
+ 濃度−1.8mMの一定オフセットを観測した。
【0188】各手術に対して5又は6つのデータ点を測
定した。表17aにおいて、データ点はM−Nで示され
ており、ここでMは手術であり、Nはデータ点である。
【0189】表示した通りの3及び8mMの[K+ ]、1
39mMの[Na+ ]濃度及び血液温度で2点HEPES
緩衝液シリンジ較正を実施した。この方法に関して表1
7aに示されているデータは、−1.8mMのオフセット
で調整されたものではない。シリンジと血液較正のデー
タに関し、シリンジ緩衝液点は9.8mM(1.8mMのオ
フセットを調整)で一定であり、血液点は臨床試験に依
存して3.6〜4.4mM K+ の間であった。表17aに
示されているこの方法に関するデータは、−1.8mMの
オフセットを調整したものである。
【0190】
【表12】
【0191】表17aのデータから、2点HEPES緩
衝液を使用して測定されたカリウム濃度に関し、64の
カリウム試料測定値のうちの6つが(BGA測定値に関
する)±0.5mMの誤差範囲の外にあり、14の試料が
±0.3mM K+ 濃度の範囲外にあることが示される。1
シリンジ緩衝液点及び1血液点を使用して測定されたカ
リウム濃度に関しては、64のカリウム試料測定値のう
ちの10が±0.5mMの誤差範囲の外にあり、21の試
料が±0.3mM[K+ ]の範囲外にある。
【0192】表17a中のデータは、本発明のカリウム
センサーが、pH 7.32 で23℃で11カ月間貯蔵された
後、7.2〜7.5の血液pH範囲、18〜36℃の温度
範囲及び2.3〜6.0mMの[K+ ]範囲にわたって適
切な強度及び傾きを示したことを表している。
【0193】実施例18 6,7−[2.2.1]−クリプタンド−3−[2''−
(5''−カルボエトキシ)フリル]クマリン(2.2.
1−FCCC−エステル) 160mlアセトニトリル中に1.2gの6,7−ビス
(2−ヨードエトキシ)−3−[2''−(5''−カルボ
エトキシ)フリル]クマリン、0.4197gの1,
4,10−トリオキサ−7,13−ジアザシクロペンタ
デカン及び1.019gのNa2 CO3 を含む溶液を攪
拌し、窒素下で36日間還流させた。冷えた混合物を濾
過し、溶剤を減圧除去し、残留物を3部の100ml熱ヘ
キサン、3部の100ml熱酢酸エチルを用いて粉砕し、
次に100mlのクロロホルム中に溶解させ、濾過した。
溶剤を除去すると固形物が得られ、この固形物を15ml
のメタノールと7mlのシクロヘキサン/酢酸エチルの8
5:15(v/v) 溶液との混合物から再結晶化させた。得
られた固形物を0.1mmHgで乾燥させると、0.49g
の所望のクリプタンドが得られた。
【0194】実施例19 6,7−[2.2.1]−クリプタンド−3−[2''−
(5''−カルボキシ)フリル]クマリン(2.2.1−
FCCC−酸) 実施例18のFCCC−エステルを、2.7mlのメタノ
ールが加えられた7.8mlのTHFと共に攪拌した。こ
の混合物に5.4mlの水中に0.36gの水酸化リチウ
ム一水和物を含む溶液を加えた。23℃で30分間攪拌
後、8.1mlの6NのHCl水溶液を加え、60分間攪
拌を続けた。回転減圧蒸発器により38℃で20分間を
要して溶剤を除去し、残留物を25mlのメタノール及び
25mlのTHF中に繰返し溶解させてストリッピング
し、水を除去した。残留物を0.2mmHgで数日間乾燥さ
せると、0.97gの所望の酸(H1 NMRにより8
4.4相対重量%)が得られた。
【0195】実施例20 6,7−[2.1.1]−クリプタンド−3−[2''−
(5''−カルボエトキシ)フリル]クマリン(2.1.
1−FCCC−エステル) 160mlアセトニトリル中に1.2gの6,7−ビス
(2−ヨードエトキシ)−3−[2''−(5''−カルボ
エトキシ)フリル]クマリン(実施例4から)、0.3
350gの1,7−ジアザ−12−クラウン−4(ペン
シルヴェニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)所在のAcro
s Organics製)及び1.019gのNa2CO3 を含む
溶液を攪拌し、窒素下で36日間還流させた。冷えた混
合物を濾過し、溶剤を減圧除去し、残留物を3部の10
0ml熱ヘキサン、3部の100ml熱酢酸エチルを用いて
粉砕し、次に100mlのクロロホルム中に溶解させ、濾
過した。溶剤を除去すると固形物が得られ、この固形物
を15mlのメチルアルコールと7mlのシクロヘキサン/
酢酸エチルの85:15(v/v) 溶液との混合物から再結
晶化させた。得られた固形物を0.1mmHgで乾燥させる
と、0.43gの所望のクリプタンドが得られた。
【0196】実施例21 6,7−[2.1.1]−クリプタンド−3−[2''−
(5''−カルボキシ)フリル]クマリン(2.1.1−
FCCC−酸) 実施例20のFCCC−エステルを、2.5mlのメチル
アルコールが加えられた6.9mlのTHFと共に攪拌し
た。この混合物に5.0mlの水中に0.342gの水酸
化リチウム一水和物を含む溶液を加えた。23℃で30
分間攪拌後、7.7mlの6NのHCl水溶液を加え、6
0分間攪拌を続けた。回転減圧蒸発器により38℃で2
0分間を要して溶剤を除去し、残留物を25mlのメチル
アルコール及び25mlのTHF中に繰返し溶解させてス
トリッピングし、水を除去した。残留物を0.2mmHgで
数日間乾燥させると、0.97gの所望の酸(H1 NM
Rにより64.5相対重量%)が得られた。
【0197】2−フルフリルローダミン 340mlの氷酢酸中に68.4gのローダミン、12
8.35gの酢酸ナトリウム、及び43ml(49.8
g)の2−フルアルデヒドを含む溶液を加熱し、時々攪
拌しながら30分間沸騰させた。溶液を少し冷却し、
2.6リットルの水中に注いだ。その結果生成した固形
物を採集し、1.4リットルの水、500mlのエチルア
ルコール及び200mlのジエチルエーテルにより連続的
に濯いだ。アセトンからの再結晶化によって、97.4
gの2−フルフリルローダミンが得られた。
【0198】実施例23 3−α−フリル−3−チオケトプロパン酸 150mlの15(重量)%NaOH水溶液中に34.0
gの2−フルフリルローダミン(実施例22)を含む溶
液を30分間沸騰させ、次に23℃に冷却し、濾過し
た。濾液を氷の上で冷却し、200mlの10(重量)%
HCl水溶液により酸性にした。その結果として生成し
た黄色結晶を濾過により捕集し、メチルアルコールから
再結晶化させた。所望の生成物の構造をNMRにより決
定した。
【0199】実施例24 3−α−フリル−3−オキシイミノプロパン酸 16mlの水中に18.0gのヒドロキシルアミン塩酸塩
を含む溶液を全ての固形物が溶解するまで加熱すること
により調製し、その後、187mlのエチルアルコール中
に22.0gのナトリウムエトキシドを含む溶液を加え
た。その結果として生成した塩沈殿物を濾過により除去
し、そして濾液に20.0gの3−α−フリル−3−チ
オケトプロパン酸(実施例23)を加えた。得られた溶
液を熱水浴上で30分間沸騰させ、次に氷の上で冷却
し、60mlの5(重量)%水酸化ナトリウム水溶液と混
合した。混合物を濾過し、冷却し、次いで56mlの10
(重量)%HCl水溶液により酸性にした。生成物をジ
エチルエーテル(5×10ml)中に抽出させ、溶液を硫
酸マグネシウム上で乾燥させた。溶剤の蒸発によって、
橙色固形物として所望のオキシムが得られた。
【0200】実施例25 2−フルフリルアセトニトリル 無水酢酸中に3−α−フリル−3−オキシイミノプロパ
ン酸(実施例24)を含む混合物(それぞれ1g:4.
83mlの比で混合)を熱水上で還流下30分間加熱し
た。得られた混合物の蒸気蒸留によって、90〜100
℃で所望のニトリルと水の共沸混合物が得られた。黄色
共沸混合物をジエチルエーテルにより抽出し、残留水性
相を飽和炭酸ナトリウム水溶液により中和し、次に再び
ジエチルエーテルにより抽出した。組み合わせたエーテ
ル溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させた。エーテルの
除去後、残留物の減圧蒸留によって、105〜115℃
で所望のニトリルが得られた。
【0201】実施例26 1,2−ビス−(2’−クロロエトキシ)ベンゼン 400mlのトルエンと6mlのピリジン中に6g(0.0
3mol )の1,2−ビス−(2’−ヒドロキシエトキ
シ)ベンゼン(Landini 及びMontanari の手法に従って
調製)を含む溶液を窒素下で40℃に加熱した。過剰の
塩化チオニル(9.2ml、0.13mol )を攪拌しなが
ら25分間にわたって加えた。反応混合物を沸点(約1
10℃)に加熱し、還流を3時間保った。デカントする
前に溶液を室温に冷却し、保存した。残留物を粉砕し、
水に溶解させ、トルエンにより抽出した。トルエン溶液
を組み合わせ、まず2NのHClにより洗浄し、次に飽
和炭酸水素ナトリウム水溶液により洗浄した。乾燥させ
た溶液を減圧蒸発させると4.5g(64%)の粗生成
物が得られ、これをクーゲルロア(Kugelrohr )により
アスピレーター圧力で蒸留すると、融点が55〜56.
5℃である分析的に純粋な試料4.43gが得られた。
分光分析によって、この生成物は1,2−ビス−(2’
−クロロエトキシ)ベンゼンであることが確認された。
【0202】実施例27 1,2−ビス−(2’−クロロエトキシ)ベンズアルデ
ヒド この手法は、Org. Synth. Coll.,第V巻、第49〜51頁
(1973)及びChem. Ber., 第96巻、第308 〜313 頁(19
63)に記載されているようなメシトアルデヒドの合成に
使用される方法に変更を加えたものである。60mlの塩
化メチレン中に25g(0.11mol )の実施例6の生
成物を含む溶液を0℃に冷却した。この溶液を0℃の反
応温度に保ちながら、全部で20ml(0.18mol )の
四塩化チタン(ワイオミング州ミルウォーキ所在のAldr
ichChem. Corp. 製)を窒素下30分間にわたって攪拌
しながらシリンジにより加えた。10mlの塩化メチレン
中に13.5g(0.117mol )の1、1−ジクロロ
メチルメチルエーテル(Aldrich )を0℃で15分間に
わたって加えた。0℃での攪拌を5分間続けた。この溶
液が室温に達するまで水槽上でこの溶液を20分間温め
た。次に、溶液を15分間還流させた。溶液を冷却した
後、溶液を粉砕された氷の上に注いだ。分液漏斗内で混
合物を振盪した後、塩化メチレン層を分離し、水性層を
2部の100mlのクロロホルムにより抽出した。クロロ
カーボン溶液を組み合わせ、まず水で、次に塩化ナトリ
ウム水溶液で徹底的に洗浄した。有機層を乾燥させ、減
圧蒸発させると、沸点が49〜51℃の刺激性の臭気が
あるサフラン黄色固形物として24.5gの前記アルデ
ヒド(87%)が得られた。分光分析によって、この生
成物は1,2−ビス−(2’−クロロエトキシ)ベンズ
アルデヒドであることが確認された。
【0203】実施例28 3,4−ビス−(2’−クロロエトキシ)フェノール この化合物を、まず3−クロロペルオキシ安息香酸又は
モノペルオキシフタル酸マグネシウムを使用して実施例
27から得たベンズアルデヒドをギ酸エステルにバイヤ
ー−ビリガー(Baeyer-Villiger )酸化し、続いて酸触
媒加水分解することにより調製した。しかしながら、こ
の方法は、スケールアップすると、分解により生成物の
大きな損失を引き起こす。従って、バイヤー−ビリガ−
法の代替方法を使用した。オーバーヘッッド攪拌機及び
冷却浴を備えた2リットルフラスコ内に、実施例27の
生成物162g(0.616mol )及び冷(10℃の)
メタノール1.5リットルを入れた。この溶液に予冷さ
れた33(重量)%硫酸溶液48gを加えた。
【0204】125mlのメタノールに94g(0.83
mol )の30(重量)%過酸化水素溶液を加え、攪拌及
び冷却しながら5分間にわたってこの混合物を上記溶液
に加えた。この結果として得られた溶液は濁ったが、2
時間攪拌した後に透明になった。
【0205】反応フラスコの底部で形成された褐色油
(11g、廃棄した)からこの溶液をデカントした。デ
カントした溶液を室温で一晩攪拌した。粗生成物の40
0mlのクロロホルム及び100mlの水を加える前に、反
応混合物からメタノールをストッリピングした。この混
合物を攪拌した。
【0206】各層を分離した後、水性層をクロロホルム
でさらに抽出した。クロロホルム層を組み合わせ、中性
pHになるまで水で洗浄した。有機層を、400mlの水中
に30g(0.75mol )のNaOHを含む溶液で抽出
し、次に同様に調製された第2のNaOH溶液200ml
により抽出した。水性抽出液を組み合わせ、200mlの
6NのHClにより酸性にし、次いで400mlの新しい
クロロホルムにより抽出した。クロロホルム層を硫酸ナ
トリウム上で乾燥させ、シリカの5cm×5cmプラグに通
した。溶剤を除去すると、84g(54%)の僅かに褐
色の固形物が得られた。プロトンNMRによって、生成
物の構造を確認した。
【0207】実施例29 4,5−ビス−(2’−クロロエトキシ)−2−ヒドロ
キシベンズアルデヒド この基本中間体は、実施例27において1,2−ビス−
(2’−クロロエトキシ)ベンゼンにアルデヒド官能基
を導入するために使用した方法によって調製した。60
mlの塩化メチレン中で、実施例28から得た粗生成物1
2.4g(49.4mmol)を16.3ml(148mmol)
の四塩化チタンで処理し、続いて4.5ml(50mmol)
の1,1−ジクロロメチルメチルエーテルにより処理
し、5.2g(37%)の基本中間体を得た。この生成
物をオイルポンプ減圧で昇華させ、沸点が102〜10
2.5℃の乳白色結晶4.35gを得た。分光分析によ
って、この生成物が前記基本中間体であることを確認し
た。
【0208】実施例30 6,7−ビス−(2’−クロロエトキシ)−3−カルボ
エトキシクマリン(第1方法) この方法は、実施例29の2−ヒドロキシベンズアルデ
ヒドに対する標準的なクネーフェナーゲル(Knoevenage
l )縮合であり、Balaiah 等のProc. Indian Acad. Sc
i., 第16A 巻、第68〜82頁(1942)(Chem. Abs., 第3
7巻、第1429頁(1943));Borsche 等のChem. Ber.,
第85巻、第198 〜202 頁(1952);Fukui等のBull. Che
m. Soc. Japan, 第35巻、第1321〜1323頁(1962)に記
載されている方法に基づくものである。
【0209】6.03g(37.6mmol)のジエチルマ
ロネート(Aldrich )に実施例29の生成物10g(3
6mmol)を加え、完全に混合した。この混合物を窒素
下、蒸気浴上で加熱した。溶解後、2滴のピペリジンを
加えた。加熱を30分間続けた。次に溶液を冷却し、ス
ラリーが得られるまでエタノールにより溶液を稀釈し
た。濾過及び風乾後、11.5(85%)の黄褐色粉末
が得られた。この粉末は、融点が102〜103.5℃
であった。そのプロトンNMRスペクトルは、実施例3
1の生成物から得られたものに一致した。
【0210】実施例31 6,7−ビス−(2’−クロロエトキシ)−3−カルボ
エトキシクマリン(第2方法) BisselのSunthesis,第846 〜848 頁(1982)に基づくこ
の方法は、一貫性がなく、うまく行ったとしても収率が
低い。その1つの利点は、この方法が実施例28のフェ
ノールから化合物Vを直接提供するため、工程が1つ減
ることである。実施例28から得たフェノールの0.9
g(4mmol)を0.9ml(5mmol)のジエチルエトキシ
メチレンマロネート(Aldrich )と混合した。この溶液
に、40mlの塩化メチレンと共に1MのZnCl2 溶液
(Aldrich )5mlを加えた。この溶液を窒素下で24時
間還流させ、回転減圧蒸発器でアスピレーター圧力で減
圧蒸留することにより溶剤を除去し、水で失活させた。
この混合物をクロロホルムにより抽出した。溶出溶剤と
して塩化メチレンを使用するアルミナ短カラムによるク
ロマトグラフ分離によって、0.33g(24%)の生
成物を得た。プロトンNMRによって、この生成物が
6,7−ビス−(2’−クロロエトキシ)−3−カルボ
エトキシクマリンであることが示された。
【0211】実施例32 6,7−ビス−(2’−ヨードエトキシ)−3−カルボ
エトキシクマリン(第1方法) この実施例は、米国特許第5,162,525号明細書
の対応する4−メチル誘導体に関する実施例3に記載さ
れている方法に従うものである。実施例30から得たビ
ス−クロロエトキシクマリン0.75(2.0mmol)と
ヨウ化ナトリウム0.9g(6mmol)を25mlのアセト
ン中に溶解させた。この溶液を窒素下で2日間還流させ
た。その後、追加の0.45gのヨウ化ナトリウムを加
えた。この溶液をさらに24時間還流させた。(アセト
ンの代わりにメチルエチルケトンを使用すると、総反応
時間が約24時間に短縮されることをその後発見し
た。)最後の0.45gのヨウ化ナトリウムを加えた。
還流をさらに6時間続けた。元の反応容積を維持するた
めに必要に応じてアセトンを加えた。溶液を冷却し、減
圧蒸発させた。塩化メチレンとクロロホルムの混合物に
より残留物を抽出した。生成物を含むクロロカーボン溶
液を10%チオ硫酸ナトリウム(形成されたヨウ化物を
ヨウ素に還元するため)で洗浄し、硫酸マグネシウム上
で乾燥させ、回転減圧蒸発器で乾燥するまで蒸発させ
た。残留物をエタノールから結晶化させると、沸点が1
64〜166℃である淡黄色粉末0.92g(82%)
が得られた。生成物のプロトンNMRスペクトルは、実
施例34の生成物のものと一致した。
【0212】実施例33 4,5−ビス−(2’−ヨードエトキシ)−2−ヒドロ
キシベンズアルデヒド この実施例は、実施例34のビス−ヨードエトキシクマ
リン誘導体(IV)に対する2通りの代替方法のうちの1
つを提供する。20mlのアセトンに2.21g(14.
7mmol)のヨウ化ナトリウム及び実施例29の生成物
1.37g(4.91mmol)を溶解させた。この溶液を
4日間還流させた。その後、10mlのアセトン及び第2
のヨウ化ナトリウム(0.73g,2.6mmol)を溶解
させ、溶液をさらに24時間還流させた。この溶液を冷
却し、濾過した。回転減圧蒸発器で溶剤を除去し、残留
物をクロロホルムに溶解させた。クロロホルム溶液を水
で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶剤を除去
すると、2.05g(89%)の生成物が得られた。プ
ロトンNMRによって、この生成物の構造を確認した。
【0213】実施例34 6,7−ビス−(2’−ヨードエトキシ)−3−カルボ
エトキシクマリン(第2方法) 実施例33から得たビス−ヨードエトキシ−ヒドロキシ
ベンズアルデヒド1.73g(10.8mmol)に、ジエ
チルマロネート2.1g(4.6mmol)を加え、この混
合物を蒸気浴上で加熱した。混合物が均質になった時
に、2滴のピペリジンを加えた。混合物を冷却した後、
沈殿物が形成された。この溶液を数ミリリットルのエタ
ノールで稀釈し、蒸気浴上で沸騰するまで再加熱した。
溶液を冷却した後、溶液を濾過すると沈殿生成物が残っ
た。この生成物は、沸点が162〜165℃である固体
であった。プロトンNMRによって、この生成物の構造
を確認した。
【0214】実施例35 6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−カルボエ
トキシクマリン 米国特許第5,162,525号明細書の対応する4−
メチル誘導体に関する実施例4に記載されている方法を
使用してこのクマロクリプタンドを調製した。ビス−ヨ
ードエトキシ−クマリン(実施例32又は実施例34か
ら)の1.0g(1.8mmol)の試料及び0.47g
(1.8mmol)の1,4,10,13−テトラオキサ−
7,16−ジアザシクロオクタデカン(すなわち、4,
13−ジアザ−18−クラウン−6)を別々に50mlの
乾燥アセトニトリルに溶解させた。混合溶液(合計10
0ml)を5当量(0.94g)の無水炭酸ナトリウムの
存在下、窒素下で6日間還流させた。この反応の間、粒
子の粗い炭酸ナトリウムは非常に細かい微粉末になっ
た。冷却した反応混合物を濾過し、溶液を乾燥するまで
減圧蒸発させた。残留物を塩化メチレンに溶解させ、溶
液を濾過した。回転減圧蒸発器を使用してアスピレータ
ー圧力で、続いてオイルポンプ圧力で塩化メチレンを蒸
発させると、黄色気泡体(計算した収率の100%を超
える)が得られた。未反応出発物質の溶出に塩化メチレ
ンを使用し、続いて生成物の溶出に1〜5%エタノール
/塩化メチレン混合物を使用し、粗生成物を不活性中性
アルミナ上でのクロマトグラフィーにより精製した。本
質的に所望の生成物(VII) からなる生成物を理論量の約
50%回収した。C28402 10に対するLRMS FAB
(トリエタノールアミン)理論m/eは564.27で
あるが、実測m/eは587であった。[VIII(N
a)]+ ;遊離 [VII]+ は観測されなかった。UV(ホス
フェートにより緩衝された塩化ナトリウム水溶液)l
max =374nm、312nmであった。蛍光(ホスフェー
トにより緩衝された塩化ナトリウム水溶液)はlex=3
71nm及びlem=453nmであった。さらにクロマトグ
ラフィーにより精製した同様に調製した試料の構造をプ
ロトンNMRによって確認した。
【0215】実施例36 実施例35のクマロクリプタンドの加水分解 実施例35の0.25gの試料を25mlの2NのHCl
に溶解させ、蒸気浴上で30分間加熱した。溶解を促進
するために必要に応じて少量のメタノールを加えた。反
応の揮発性成分(すなわち、水、過剰のHCl、アルコ
ール類)をまず回転減圧蒸発器でアスピレーター圧力で
蒸発させ、次にオイルポンプ減圧で穏やかに蒸発させる
と、3−カルボキシクリプタンドクマリン塩酸塩がカボ
チャ黄色固形物として得られた。プロトンNMRによっ
て所望の生成物であることを確認した。実施例37〜3
9は、他のクマロクリプタンドの調製法を説明するもの
である。
【0216】実施例37 6,7−ビス−(2’−クロロエトキシ)−3−(1’
−オキソ−4’−カルボエトキシブチル)クマリン 実施例30に記載の方法を使用し、100mlのエタノー
ル中に2.12g(7.60mmol)の実施例29の生成
物及び1.76g(7.64mmol)のジエチル3−オキ
ソ−ピメレート(Aldrich )を含む溶液を蒸気浴上で加
熱した。約20滴のピペリジンを加えた。混合物を30
分間還流させ、次いで室温に冷却した。形成された沈殿
物を濾過により単離し、乾燥させると収量3.53g
(96%)の生成物が得られた。生成物の構造をプロト
ンNMRにより確認した。
【0217】実施例38 6,7−ビス(2’−ヨードエトキシ)−3−(1’−
オキソ−4’−カルボエトキシブチル)クマリン 300mlのメチルエチルケトン中に3.5g(7.5mm
ol)の実施例12の生成物及び3.4g(23mmol)の
無水ヨウ化ナトリウムを含む溶液を窒素下で加熱して4
8時間還流させた。混合物を室温に冷却し、次いで回転
減圧蒸発器により溶剤を減圧除去した。残留物を約20
mlの水により処理した。残った固形物を濾過により単離
し、トルエン中に溶解させた。トルエンを回転減圧蒸発
器により減圧除去し、残留水を除去した。生成物を高真
空下で乾燥させ、4.5g(95%)の生成物を得た。
プロトンNMRを使用して生成物の構造を確認した。
【0218】実施例39 6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−(1’−
オキソ−4’−カルボエトキシブチル)クマリン 実施例35に記載の方法を次のように変更した:磁気攪
拌機、還流冷却器及び窒素パージ源を備えた250mlフ
ラスコ内で0.79g(1.3mmol)の実施例38の生
成物を乾燥アセトニトリル(45ml、シリカゲル及び
0.4nm分子篩上で乾燥させ、水素化カルシウムから蒸
留したもの)に溶解させた。1当量(0.33g)の
4,13−ジアザ−18−クラウン−6を第2(20m
l)の乾燥アセトニトリルに溶解させ、この溶液を前記
第1溶液に加えた。0.62g(5.8mmol)の炭酸ナ
トリウムを加える前に、反応混合物を70℃に加熱し
た。窒素下で溶液を7日間還流させた。その後、60ml
のクロロホルムを加え、溶液を濾過した。
【0219】溶剤をストリッピングした後、約1gの黄
色粘着性油が得られた。この油に60mlのクロロホルム
と20mlの塩化ナトリウム水溶液を加え、この組み合わ
せたものを混合した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム
上で乾燥させた。溶剤をストリッピングすることによっ
て、0.85gの油状生成物を得た。これを、まず酸化
アルミニウム粉末の2cm×6cmカラムに通すフラッシュ
クロマトグラフィー(溶出溶剤として70mlの塩化メチ
レンを使用)により精製すると、0.65gの生成物が
残った。次に、この物質を塩化メチレン/ヘキサンの
1:2混合物を使用して酸化アルミニウムの第2のカラ
ムに慎重に通すと、370mg(46%)の黄色粘着性粉
末である本質的に純粋な生成物が得られた。プロトンN
MR及びIR分光分析法によって生成物の構造を確認し
た。UV分光分析(ホスフェートにより緩衝された塩化
ナトリウム水溶液)結果:lmax =382nm、317n
m。
【0220】実施例40 クマリン誘導体の光安定性の比較 次のモデル化合物を使用し、クマリン類の3位及び4位
に存在する官能基の変化が相対的光安定性に及ぼす影響
を評価した。エタノール中に化合物VIII、IX、X及びXI
を含み、吸光度が0.05≦Amax≦0.1の範囲内に
ある溶液を調製し、各溶液を、最大光源スリット幅(バ
ンドパス30nm)でlmax でSPEX Fluorog 2TMシリーズ
分光蛍光計(ニュージャージー州エジソン所在のSPEX I
ndustries, Inc. 製)で1時間連続照射した。試料位置
で測定された励起光源の測定された輝度は30〜50mW
/cm2に及んだ。照射中にそれぞれに対して発光極大で蛍
光強度を監視した。
【0221】Xに対して規格化したデータを表40aに
示す。(化合物VIII、IX及びXの光安定度は1回の実験
で測定したものであり、化合物XIの光安定度はそうでは
ないが、比較しやすいためにそれらの結果を1つの表に
した。)
【0222】時間0での強度の違いは、誘導体の相対的
な蛍光効率を反映している。3−カルボエトキシ誘導体
(VIII)は、優れた光安定性と4−メチル誘導体(IX)又
はカルボキシメチル誘導体(XI)よりも僅かに改良され
た蛍光効率とを併せ持つ。
【0223】
【化12】
【0224】
【表13】
【0225】
【表14】
【0226】実施例41 生理的濃度の[K+ ]の変化に対する実施例35のクマ
ロクリプタンドの応答 リン酸ナトリウムのみで緩衝された塩化ナトリウム水溶
液(20℃、pH=7.36、[Na+ ]=134mM、
[K+ ]=0mM、[Cl- ]=64mM)を用いて、実施
例35の生成物(A372nm =0.1)の約10-5M溶液
を調製した。[K+ ]=0.2Mのホスフェートにより
緩衝された塩化ナトリウム水溶液のアリコート(36μ
l )をキュベット内の3mlの溶液に加え、0から12mM
まで段階的に2.4mMごとに[K+ ]を変化させた。各
段階で、蛍光発光強度を270nmの励起波長で400nm
から600nmまで測定した。
【0227】[K+ ]=0mM及びl=445nmでの強度
に対してデータを規格化した。表41aに示す規格化し
たデータは、[K+ ]の増加とともに蛍光強度が単調増
加することを示している。[Na+ ]を145mMまで増
加させると、蛍光がほんの僅か減少した。実施例39の
生成物について同様な結果を得た。
【0228】
【表15】
【0229】実施例42 分子テザーによるコーティング可能なポリマーの官能化 室温の1リットルのテトラヒドロフラン(THF)に2
0gのポリ(塩化ビニル)カルボキシル化(PVC−C
OOH)ポリマー(COOH1.8%)(Aldrich )を
溶解させた。これに、THF中に4.9g(3当量)の
ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(Aldrich
)を含む溶液75mlを加えた。室温で蓋付きフラスコ
内で混合物を30〜60分間攪拌した後、72g(10
当量)のJeffamine ED-900TMビス(2−アミノプロピ
ル)ポリエチレングリコール800 (ニューヨーク州ロン
コンコマ所在のFluka Chemical Corp.製)を活性ポリマ
ー溶液に素早く加えると、濁った溶液/懸濁液となっ
た。これを室温で18時間攪拌した。回転減圧蒸発器
(60℃)で溶液を約300mlに濃縮し、急速攪拌して
いる容器に水(約18リットル)を素早く加えた。(小
さな粒子の発生を防止するため及び容易に濾過及び精製
することができるポリマー沈殿物を提供するためには、
水の低剪断流動、すなわち渦を巻かせることが必要であ
る。)
【0230】水からポリマーを取り出し、プラスチック
のメッシュシートを使用して濾過し、次に約500mlの
メタノール中に懸濁させ、再び濾過した。ポリマーを減
圧乾燥させる前に、残留水を減少させ、そして反応副生
成物を除去するために、さらに2回、ポリマーをメタノ
ール中に懸濁させ、濾過した。
【0231】ポリマーを約1リットルの室温のTHF中
に再溶解させ、そしてまずポリプロピレンフィルター布
に通し、次にポリ(プロピレン)フィルター布上にCeli
teTM545(ペンシルヴェニア州ピッツバーグ所在のFishe
r Scientific 製)珪藻土の厚い(3〜4cmの)パッド
を具備するポリエチレンブフナー漏斗(350〜600
ml)に通すことにより濾過した。透明濾液を集め、回転
減圧蒸発器で60℃で200mlに濃縮した。
【0232】上記のように水中でのポリマー溶液の沈殿
及びポリマーの濾過を実施した。減圧乾燥前に、最終工
程として水中でのポリマーの微細断(ブレンダーを使
用)を実施した。
【0233】官能化ポリマーフィルムの赤外スペクトル
を捕捉し、反応(COOH基の吸収特性1720cm-1
消失)を確認した。ポリマーのゲル透過クロマトグラフ
ィーによって、分子量がPVC−COOH出発物質の分
子量(すなわち、PVC−COOHロットに依存して16
0,000 〜220,000 )から本質的に変化していないことが
示された。
【0234】Anal. Biochem., 第117 巻、第147 頁(19
81)のSarin 等の方法を次のように変更した:試験管内
の乾燥ポリマー試料20mgに、(a)フェノール及びK
CNのピリジン溶液0.40ml、及び(b)ニンヒドリ
ンのエタノール溶液0.10mlを加えた(両方とも前記
引例に記載されているように調製した)。試験ブランク
を同様に調製した。両方の試験管を100℃で約10分
間加熱した。それぞれの試験管に2mlのテトラヒドロフ
ラン(THF)を加える前に、冷水中で両方の試験管を
冷却した。試験管の内容物を分離用25mlメスフラスコ
に移し入れた後、それらを25mlのTHFで稀釈した。
吸光係数が1.2×10-4-1cm-1であるUV分光分析
(labs =604nm)を使用してニンヒドリン濃度を決
定した。このことから。有効なアミンの濃度はポリマー
の0.2mmol/gであることが決定された。
【0235】実施例43 コーティング可能なポリマーへの化合物VII の結合 実施例42から得たPVC/ビス(2−アミノプロピ
ル)−ポリ(エチレングリコール)の200mgの試料を
10mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ
た。2mlのDMF中に50mgの加水分解したVII を含む
第2の溶液も調製した。第2の溶液に42ml(0.27
mmol)のジイソプロピルカルボジイミド(Aldrich )及
び40mg(0.27mmol)のヒドロキシベンジルチアゾ
ール(Aldrich )を加え、この混合物を第1の溶液に加
える前に約20分間攪拌した。(第2の溶液を含んでい
たフラスコを1mlのDMFで洗浄して完全に移した。)
組み合わせた混合物に50ml(0.27mmol)のジイソ
プロピルエチルアミン(Aldrich )を加えた。これを窒
素雰囲気下、暗室内で一晩攪拌した。
【0236】回転減圧蒸発器により40℃で溶剤の容積
を減少させた。濃縮された溶液を攪拌しながら200ml
の水に徐々に加えた。水性分散液を80メッシュスクリ
ーン上に注ぐことにより綿状の沈殿物を集めた。沈殿物
を水で4回洗浄し、メタノールで3回洗浄した。沈殿物
を安全剃刀の刃でより微細な細片に細断した後、細片を
メタノール中で3回洗浄した。官能化ポリマーを減圧乾
燥させた。
【0237】試薬としてニンヒドリンを使用するAnal.
Biochem., 第34巻、第595 頁(1970)のKaiserの方法に
よると、テザー化したビス(2−アミノプロピル)ポリ
(エチレングリコール)のアミン基のうちの95%を超
えるアミン基が、恐らくはVII とのカップリングを通じ
て消費されたことが示された。
【0238】実施例44 多孔質膜上への官能化ポリマーのコーティング THF及び水の90/10(v/v) 混合物中に実施例43
の官能化ポリマーを含む2%(w/w) 溶液を、幅6インチ
のスロット供給ナイフダイを使用し、親水性多孔質ポリ
プロピレン(WO92/07899参照)のロール(幅
27.9cm、厚さ79mm)上に押出塗布した。(HPP
Pウェブは、最大孔径が1.3mmであり、多孔度が77
%であった。)ウェブ速度は3m/分であり、溶液送出
量は67ml/分であった。コーティングされたウェブを
送風オーブン(15.6℃)に通して溶剤を蒸発させ
た。得られた乾燥皮膜重量は約2.5g/m2であった。
【0239】0〜8mMのK+ 溶液への浸漬及び応答百分
率の計算によって、ダイと接触した膜の側面に加えられ
た物質の殆どが存在するHPPPウェブの内部細孔表面
中に非対称官能ポリマーコーティングが分布することが
示された。
【0240】実施例45 コーティングされた膜の試験 実施例44のHPPP膜から円形ディスクを打ち抜い
た。これらを使用し、当該検出用複合材料の可逆性、pH
依存性及び安定性(緩衝液中及び血液中の両方)を試験
した。
【0241】可逆性 カリウムイオン濃度の変化に対する当該センサーの可逆
性を、395nmの励起光源を具備し、440nm以上の波
長の蛍光を検出する CDITM S400 モニター(カリフォル
ニア州タスティン所在のCDI/3M Health Care製)を使用
してセンサーの蛍光強度を測定することにより決定し
た。約138mMのNaClを含み、[K+]濃度が2、
4、6又は8mMとなるのに十分なKClを加えた50mM
のN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−
(エタンスルホン酸)緩衝液(ミズーリー州セントルイ
ス所在のSigma Chemical Corp.製)(以下、HEPES
と表す)を急速循環させることによりカリウムイオン濃
度を変化させた。(被検体のK+ 濃度の変化に対する)
実際のセンサーの応答時間は短い(すなわち、約60〜
120秒)かったが、平衡の8分後に蛍光強度を測定し
た。これらの測定結果を表45aに示す。
【0242】
【表16】
【0243】表45aは、実施例44におけるように作
製されたセンサーがバイパス手術の間に通常観測される
カリウムイオン濃度変化(すなわち、3〜6mM)よりも
大きいカリウムイオン濃度変化に関して可逆性であるこ
とを示している。
【0244】pH依存性+ 濃度2、4及び6mMで上記HEPES緩衝液のpHの
関数としてセンサーの蛍光強度の変化を CDITM S400 モ
ニターにより測定した。これらの測定結果を表45bに
示す。
【0245】
【表17】
【0246】表45bは、実施例44におけるように作
製されたセンサーが、特に生理的pH範囲で、変化するpH
での(変化する[K+ ]に対して)応答の変化が小さい
ことを示している。より詳細には、生理的pH(すなわ
ち、7.3〜7.5)及び生理的カリウムイオン濃度
(すなわち、約4mM)でのセンサーの蛍光強度の変化
は、pH=7.07からpH=7.90までに観測された全蛍光変化
の約2%であった。これは、非PVCマトリックスに結
合した同じクマロクリプタンドの約6%以上のpH依存性
及び同様なpH範囲の水性緩衝液中にある固定化されてい
ないクマロクリプタンドのより大きな依存性に匹敵す
る。
【0247】安定性 検出用複合材料の安定性を緩衝液中及び血液中の両方で
測定した。 A.緩衝液 AVL 9120TMナトリウム/カリウム分析計(ジョージア州
ロスウェル(Roswell)所在のAVL Scientific Corp.
製)により測定した場合に138mMのNaClを含むH
EPESの50mM溶液を LaudaTM RC 20恒温水槽(ドイ
ツ所在のLauda Dr. R. Wobser CmbH & Co. KG 製)内で
一定温度に保ち、モデル13400 蠕動ポンプ(ミシガン州
アナーバー(Ann Arbor )所在のSarns/3M Health Care
製)によりセンサーループを通して循環させた。7〜8
にわたる溶液のpHを OrionTM pH 計(ナサチューセッツ
州ケンブリッジ(Cambridge )所在のOrion Research
製)により監視した。285〜305mOsmにわたる溶液
の浸透圧モル濃度を AdvancedWide-Range Osmometer 3W
2TM(マサチューセッツ州ニーダムハイツ(Needham Hei
ghts )所在のAdvanced Instrument Inc.製)により測
定した。緩衝液の[K+]をIL 643TM炎光光度計(マサ
チューセッツ州レキシントン(Lexington )所在のInst
rumental Laboratories 製)により決定した。
【0248】2組の[K+ ]「段階的」実験を(両方と
も室温で)実施した。まず、[K+]を0〜8mMの間で
変化させた。実施例44に記載した通りの検出用複合材
料を8mMのKCl溶液に浸漬する前に0mMのKCl溶液
で平衡にし、その後、当該検出用複合材料を新たな[K
+ ]で(完全な平衡は非常に速かったが)5〜10分間
を要して平衡にさせた。5時間にわたってこの操作を5
回繰り返した。両方の溶液の蛍光強度(すなわち、 CDI
TM S400 モニターにより測定した場合の0mM溶液でのカ
ウント数は約488、8mM溶液でのカウント数は約56
7)は、実験時間中に実質的に変化しなかった。
【0249】第2の「段階的」実験は、IL 643TM炎光光
度計により測定した場合に3及び7mM(バイパス手術の
際に通常遭遇する濃度範囲)である[K+ ]を使用し
た。検出用複合材料を7mMのKCl溶液に浸漬する前に
3mMのKCl溶液で平衡にし、その後、当該検出用複合
材料を数分間を要して新たな[K+ ]で(完全な平衡は
約90秒以内に起こったが)5〜10分間を要して平衡
にさせた。約3時間半にわたってこの操作を5回繰り返
した。両方の溶液の蛍光強度(すなわち、 CDITMS400
モニターにより測定した場合の3mM溶液でのカウント数
は約647、7mM溶液でのカウント数は約677)は、
実験時間中に実質的に変化しなかった。
【0250】B.血液 前項に記載したようにウシ血液を138mMの[Na+
及び300mOsmの浸透圧モル濃度に調節した。上記のよ
うにKClを加えることによって、約3及び9mMのカリ
ウムイオン濃度を得た。2.8%のCO2 、5.5%の
2 、91.7%のN2 からなるガス組成物で連続的に
スパージすることによって、ABL-7 TM血液ガス分析計
(デンマーク、コペンハーゲン(Copenhagen)所在のRA
diometer A/S製)で測定した場合に約7.34±0.0
2となるように血液のpHを保った。血液溶液を試験用ル
ープに導入した後に恒温に保たれた水浴中に貯蔵し、蠕
動ポンプにより循環させた。(前項を参照)センサーを
CDITM S400 モニターカセット及び大きさが3/8 インチ
の CDITM Model 6730 Quik-cell 血液ガス監視装置(CD
I/3M Health Care製)に固定した。
【0251】2種の[K+ ]溶液を交換するために、3
mM溶液で初期センサー強度を得、そして9mM溶液を直接
導入する前に試験ループを空にした。この操作を逆にし
た時に、試験ループを[K+ ]=3mMの血液洗浄液で濯
ぎ、3mM試験溶液の混入を防いだ。(この洗浄操作は、
血液溶液の交換の間にセンサーが空気に暴露する原因と
なり、その結果、センサーの応答時間が長くなる。8mM
のK+ と少量のTritonTM X-100又は TweenTM 80 (両方
ともAldrich から入手可能)、好ましくは内用薬用途に
対するその認可のために後者のような界面活性剤を含む
HEPES緩衝液中でセンサーを水和させると安定した
センサー強度が得られることが見出された。)
【0252】血液溶液の交換の間に中間洗浄浴を使用し
ない場合に、[K+ ]が3mMから9mMになるまでの応答
時間(95%)は約40秒間であり、9mMから3mMにな
るまでの応答時間は約65秒間であた。
【0253】センサーは約5時間にわたって優れた安定
性を示した。9mM溶液により得られた強度は試験期間中
に徐々に(すなわち、約5カウント)減少したが、この
ことは交換した3mM溶液によりこの溶液が稀釈されたた
めであると考えられる。
【0254】本発明の範囲及び真意から逸脱することな
く、本発明の種々の改良及び変更が当業者には明らかに
なるであろう。また、本発明は本明細書に記載した例示
的態様に無論のこと限定されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1a、1b及び1cは、それぞれ、K+ 濃度
の増加に対する本発明のクマロクリプタンドイオノホア
の蛍光発光応答のグラフ図(図1a)及び従来のクマロ
クリプタンドの蛍光発光応答のグラフ図(図1b)と、
0及び15mMのK+ 濃度でのクマロクリプタンドの応答
を比較するグラフ図(図1c)である。
【図2】図2は、0、8及び0mMのK+ 濃度の連続変化
にそれぞれかけられた本発明のクマロクリプタンドイオ
ノホアの蛍光発光応答のグラフ図である。
【図3】図3は、本発明のカリウムセンサーに及ぼす照
射効果を表すグラフ図である。
【図4】図4a及び4bは、本発明のクマロクリプタン
ドイオノホア(図4b)及び従来のクマロクリプタンド
(図4a)に対する、カリウム濃度が測定されるべき生
理的媒体のpH変化の効果を表すグラフ図である。
【図5】図5は、HEPES緩衝液中での0mMK+ と1
6mMK+ の間で循環させた本発明のカリウム検出用装置
の応答を表すグラフ図である。
【図6】図6a及び6bは、特定の置換クマロクリプタ
ンドのK+ 応答と同様に置換されたモデル化合物MDO
及びEDO(図6a)並びにモデル化合物DMO及びE
DO(図6b)の相対量子収率との間の相関を表すグラ
フ図である。
【図7】図7は、分子内無放射遷移に関する障壁幅に対
する弱い、強い及び非常に強い振電カップリング効果を
表すポテンシャルエネルギー図である。
【図8】図8は、実験的蛍光発光極大波長と置換された
モデル化合物DMO及びEDOに関する発光率との間の
相関を表すグラフ図である。
【図9】図9aは、EDO型モデル化合物群について計
算及び測定された吸収波長間の相関を表すグラフ図であ
る。図9bは、EDO型モデル化合物群について計算及
び測定されたストークスシフト間の相関を表すグラフ図
である。
【図10】図10は、モデル化合物及び本発明のクマロ
クリプタンドイオノホアのカリウム応答を評価するため
に使用した30kHz 位相変調ブレッドボードの略図であ
る。
【図11】図11は、本発明のクマロクリプタンドイオ
ノホアを使用することができる流体パラメーター測定装
置と共に較正用及び流体パラメーター測定カセットを表
す斜視図である。
【図12】図12は、図11に示した測定装置の部分拡
大図であって、前記カセットと前記装置を結合させた場
合に当該測定装置と向かいあうカセットの側から見た図
である。
【図13】図13は、図11に示したカセットのみの拡
大斜視図であって、例示のために前記カセットの2構成
構造を別の角度から示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 シ ヒュン チョ アメリカ合衆国,ミネソタ 55144−1000, セント ポール,スリーエム センター (72)発明者 ジョン イー.トレンド アメリカ合衆国,ミネソタ 55144−1000, セント ポール,スリーエム センター (72)発明者 エリサ エム.クロス アメリカ合衆国,ミネソタ 55144−1000, セント ポール,スリーエム センター (72)発明者 クレイ エー キプケ アメリカ合衆国,ミネソタ 55144−1000, セント ポール,スリーエム センター (72)発明者 マサオ ヤフソ アメリカ合衆国,カリフォルニア 92780, ツスティン,バレンシア アベニュ 1311,シーディーアイ スリーエム ヘル ス ケア (72)発明者 サンジャ エル.パティ アメリカ合衆国,カリフォルニア 92780, ツスティン,バレンシア アベニュ 1311,シーディーアイ スリーエム ヘル ス ケア

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオンの選択的結合用の錯化部分と近接
    しているnπ* 及びππ* 励起状態を含む発蛍光部分と
    を含む蛍光イオノホア化合物であって、吸収極大波長は
    少なくとも約350nmであり、且つ、発光極大波長は約
    500nm以下であり、イオン依存性のある面外パッカリ
    ングをすることができ、イオン依存性のある混成が基底
    状態への無放射カップリングを支配するほど十分に前記
    発蛍光部分のππ* 状態はエネルギーが高い蛍光イオノ
    ホア化合物。
  2. 【請求項2】 錯化部分が、クリプタンド部分及びクラ
    ウンエーテル部分からなる群から選ばれ、発蛍光部分が
    置換クマリン部分からなる群から選ばれる請求項1記載
    の化合物。
  3. 【請求項3】 一般式: 【化1】 (上式中:Tは、TがOである場合にqが0であり、か
    つ、nが0〜2であること並びにTがNである場合にq
    が1であり、かつ、m及びnが独立に0又は1であるこ
    とを条件として、O又はNである;各R2 は独立に立体
    障害作用のない基である;R3 は適切な電子吸引性基及
    び非電子吸引性基から選ばれる;R1 は適切な電子吸引
    性基及び分極性基から選ばれる;並びにZはO又はNR
    5 (式中、R5 は水素又はヒドロカルビル含有基であ
    る)である)により表される請求項1記載のイオノホア
    化合物。
  4. 【請求項4】 R1 が一般式: 【化2】 (上式中:Y及びY’は、それらの少なくとも一方が
    O、S又はNHx であることを条件として独立にO、
    S、NHx 又はCHy (式中、xは0又は1であり、y
    は1又は2である)である;並びに各R4 基は、水素、
    ハロゲン、ヒドロカルビル含有基、複素非環式基、複素
    環式基若しくは式:(CH2 X)c E(式中、XはO、
    NH又は単結合であり、Eは活性水素を含む官能基であ
    り、cは0〜100の整数である)により表される基で
    あるか、又は両方のR4 基がそれらが結合している炭素
    原子と共に5員若しくは6員環を形成し、この5員若し
    くは6員環に任意に1個以上のさらなるR4基が結合し
    ていてもよい)により表される置換された部分である請
    求項3記載の化合物。
  5. 【請求項5】 流体チャンバーを有するカセットに提供
    されるカチオン検出用構造物であって、前記流体チャン
    バー内に収容される流体中のK+ イオンとイオン連絡が
    あるカチオン検出用構造物を形成するように基材に結合
    される、K+に対して選択性がある上記請求項のうちの
    いずれか一項に記載の化合物。
  6. 【請求項6】 流路を有するカセットに取り付けられる
    イオンセンサーであって、オートクレーブ殺菌に耐えう
    るイオンセンサーに組み込まれる上記請求項のうちのい
    ずれか一項に記載の化合物。
  7. 【請求項7】 入口及び出口とイオン透過性膜で被覆さ
    れた開口部とを有する第1フロースルーカセットケーシ
    ング並びに第2イオン検出カセット本体を具備するカセ
    ット集成体に取り付けられるイオンセンサーに組み込ま
    れる上記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物。
  8. 【請求項8】 高分子基材と上記請求項のうちのいずれ
    か一項に記載の蛍光イオノホア化合物とを含むカチオン
    検出用複合構造物であって、結合及び多官能連結部分の
    うちの1つにより少なくとも1つのR1 若しくはR2
    はR3 基を通じて基材に前記化合物が共有結合され、前
    記連結部分の第1官能基がR1 若しくはR2 又はR3
    の官能基に対して相補的であり、前記連結部分の第2官
    能基が基材上の官能基に対して相補的であるカチオン検
    出用複合構造物。
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