JPH10298199A - 新規ペプチド及びそれを含有するアンギオテンシンi変換酵素阻害剤 - Google Patents

新規ペプチド及びそれを含有するアンギオテンシンi変換酵素阻害剤

Info

Publication number
JPH10298199A
JPH10298199A JP9118717A JP11871797A JPH10298199A JP H10298199 A JPH10298199 A JP H10298199A JP 9118717 A JP9118717 A JP 9118717A JP 11871797 A JP11871797 A JP 11871797A JP H10298199 A JPH10298199 A JP H10298199A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
peptide
glycyl
angiotensin
tyrosine
converting enzyme
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9118717A
Other languages
English (en)
Inventor
Kokichi Taniguchi
宏吉 谷口
Tsugio Tomita
次男 冨田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KINKAME SHIGYO KK
PUROZA TEC KK
Original Assignee
KINKAME SHIGYO KK
PUROZA TEC KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KINKAME SHIGYO KK, PUROZA TEC KK filed Critical KINKAME SHIGYO KK
Priority to JP9118717A priority Critical patent/JPH10298199A/ja
Publication of JPH10298199A publication Critical patent/JPH10298199A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 シルク蛋白質から調製されたアンギオテンシ
ンI変換酵素阻害活性の高い有用なペプチドを提供す
る。 【解決手段】 シルク蛋白質を加水分解して、グリシル
−L−バリル−グリシル−L−アラニル−グリシル−L
−チロシンのヘキサペプチド及び/又はグリシル−L−
アラニル−グリシル−L−チロシンのテトラペプチドを
含有するペプチド組成物を得る。上記2つのペプチド
は、アンギオテンシンI変換酵素阻害活性が高いので、
上記2つのペプチド、又はそれを含むペプチド組成物を
アンギオテンシンI変換酵素阻害剤として利用する。ペ
プチド組成物の場合、その平均分子量が2000〜40
00であることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シルク蛋白質を加水分
解して得られる新規ペプチド及びそれを含有するアンギ
オテンシンI変換酵素阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来よりシルクは高級な衣料材料として
利用されてきたが、近年シルクを食品や医薬品として利
用する試みがなされている。例えば、特開平2−177
864号には、シルク蛋白質の加水分解物を含有する食
品が開示されている。また、特開平4−210576号
にはシルクフィブロイン由来の水溶性蛋白質を含有する
ことを特徴とする血糖上昇抑制食品が開示され、特開平
4−210577号にはシルクフィブロイン由来の蛋白
質を含有することを特徴とするコレステロール上昇抑制
食品が開示されている。
【0003】一方、アンギオテンシンI変換酵素(以下
ACEと呼称する)は、血圧調節に関する酵素であり、
この酵素を阻害することにより、アンギオテンシンIか
らアンギオテンシンIIに変換されることが阻止され、血
圧の上昇が抑制されることが知られている。そして、特
定の何種類かのペプチドにACE阻害活性があることが
報告されている。
【0004】これまでに報告されている食品蛋白質由来
のACE阻害ペプチドを列挙すると以下の通りである。
なお、ペプチドのアミノ酸配列の後の括弧内の数字はI
50の濃度(μM)を示し、IC50は、ACEを50%
阻害するために必要とされる濃度を表わす。小さい数字
ほど活性は強い。
【0005】すなわち、トウモロコシ由来のペプチドと
して、L−ロイシル−L−アラニル−L−チロシン(3.
9)、L−バリル−L−アラニル−L−チロシン(16)、
L−アラニル−L−チロシン(19)が報告されている
(アグリカルチャーバイオロジカルケミストリー(Agri
c.Biol.Chem.) 55巻、1313〜1318頁(1991)参照)。
【0006】また、清酒由来のペプチドとして、L−チ
ロシル−グリシル−グリシル−L−チロシン(16.2)と、
L−バリル−L−チロシン(7.2) が報告されている(バ
イオサイエンスバイオテクノロジーバイオケミストリー
(Biosci.Biotech.Biochem.)60巻、1081〜1087頁(1992)
参照)。
【0007】更に、イワシ由来のペプチドとして、L−
バリル−L−リジル−L−アラニル−グリシル−L−フ
ェニルアラニル(83)及びL−リジル−L−バリル−L−
ロイシン−L−アラニル−グリシル−L−メチオニン(3
0)が報告されている(日本農芸化学会誌65巻、1223〜12
28頁 (1991) 、左同66巻、25〜29頁(1992)及び日本食品
工業学会誌40巻、783 〜791 頁(1993)参照)。
【0008】更にまた、アミノ酸残基数が6個以上の長
い配列をもった食品蛋白質由来のACE阻害ペプチドが
他にいくつか報告されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
ACE阻害ペプチドは、そのACE阻害活性が十分に高
いものとは言えなかった。また、シルク蛋白質の加水分
解物について、そのアミノ酸配列を決定した例は今まで
知られていなかった。
【0010】したがって、本発明の目的は、シルク蛋白
質から調製されたACE阻害活性の高い有用なペプチド
を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、シルク蛋
白質を加水分解して得られるペプチドについて研究する
過程で、ある特定のペプチドが高いACE阻害活性を有
することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】すなわち、本発明の第1は、グリシル−L
−バリル−グリシル−L−アラニル−グリシル−L−チ
ロシンのヘキサペプチドである新規ペプチドを提供する
ものである。
【0013】本発明の第2は、グリシル−L−アラニル
−グリシル−L−チロシンのテトラペプチドである新規
ペプチドを提供するものである。
【0014】上記第1及び第2の発明によれば、ACE
阻害活性の高い新規かつ有用なペプチドを提供すること
ができる。
【0015】本発明の第3は、上記第1の発明によるヘ
キサペプチド及び/又は上記第2の発明によるテトラペ
プチドを有効成分とするアンギオテンシンI変換酵素阻
害剤を提供するものである。
【0016】上記第3の発明によれは、高い活性を有す
るACE阻害剤を提供することができ、血圧降下作用を
有する機能性食品や医薬品として利用することができ
る。
【0017】本発明の第4は、シルク蛋白質を加水分解
して得られるペプチド組成物であって、上記第1の発明
によるヘキサペプチド及び/又は上記第2の発明による
テトラペプチドを含有するものからなるアンギオテンシ
ンI変換酵素阻害剤を提供するものである。
【0018】上記第4の発明によれば、シルク蛋白質を
加水分解することにより調製できるので、工業的に比較
的安価に生産することが可能であり、機能性食品等とし
て利用しやすくなる。
【0019】本発明の第5は、上記第4の発明におい
て、前記ペプチド組成物の平均分子量が2000〜40
00であるアンギオテンシンI変換酵素阻害剤を提供す
るものである。
【0020】上記第5の発明によれば、ACE阻害活性
がより高いペプチド組成物を得ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明において、ペプチドの原料
としては、生糸製造時に派生する繭の副蚕糸及び生糸製
造に不適とされた選除繭などが好ましく用いられる。
【0022】本発明では、これらのシルク原料を加水分
解してペプチド組成物を得る。加水分解方法としては、
酸又はアルカリを用いた分解方法や、酵素分解方法が適
用される。酸或いはアルカリを用いた通常の加水分解で
は、シルク原料を酸又はアルカリ溶液に浸漬し、加熱温
度と処理濃度を選択して、目的とする平均分子量となる
まで処理を行えばよい。しかし、酵素分解を行う場合に
は、繊維状の物性を相転移せしめ、速やかに酵素反応が
展開できるように前処理を実施することが好ましい。前
処理方法としては、シルク原料を酸或いはアルカリで膨
潤せしめるか、或いは高濃度の中性塩で高温下で膨潤せ
しめ、分散溶解を行う方法が挙げられるが、好ましくは
中性塩、特には食品として安全な中性塩を用いる。分解
効率的には、できるだけ高濃度のシルク原料の溶解物を
得ることが得策であるが、高濃度になるに従い粘度が極
めて高くなるため、溶解濃度は25%以下が望ましい。
【0023】この場合、粘度の発現は、シルクのセリシ
ン蛋白とフィブロイン蛋白の含量の相違によって大きく
変わってくる。通常は、セリシン25%、フィブロイン
75%が平均的含量とされる。粘度に関して、セリシン
の影響は大きく、フィブロインの影響は少ない。シルク
蛋白質は、フィブロインがセリシンによって糊付けされ
ているように包まれた構造となっている。セリシン蛋白
はアルカリ状態で煮沸などをすることで容易に除去され
る。セリシン蛋白の存在は製造上の工程の容易性に影響
はするが、物質本体には何ら弊害を生ずるようなことは
一切ない。シルク蛋白質の産業的利用にあっては、機能
性の面からもセリシン及びフィブロイン混合の形又はい
ずれか単独であっても、本目的の機能性の究明において
不適切なものは何ら存在しない。
【0024】前処理として、酸又はアルカリ処理を行っ
た場合は、アルカリ又は酸で中和した後、塩濃度を低下
するために水で希釈して酵素反応を行うことが望まし
い。又、中性塩の高濃度処理を行った場合も、同様に希
釈してから酵素反応を行うことが望ましい。
【0025】酵素分解に用いる酵素としては、各種のプ
ロテアーゼを適宜選択して使用することができるが、好
ましくは、液体培養法によって得られた細菌産生プロテ
アーゼと、固体培養法によって得られたカビ産生プロテ
アーゼとを一定の比率で併用して用いる。ただし、有用
性が確認できれば、単独の酵素で処理してもよいことは
勿論である。
【0026】こうして得られたペプチド組成物は、種々
のアミノ酸配列をもった種々の分子量のペプチド類で構
成される。このペプチド組成物の特性を示すものとし
て、ゲル濾過法などによって求められる平均分子量が一
つの指標となる。シルク蛋白質の平均分子量は、通常約
35万と云われている。シルク蛋白質を加水分解するこ
とによって、上記平均分子量が約1/3の10万位にな
ると、水に可溶となる。この位の分子量のものを水溶液
から乾燥すると、フィルム状になる。分子量が更に小さ
くなって、約1〜3万位では、シルク蛋白質の等電点近
くまでpHを調整した場合、得られる物性はゲル状とな
る。このゲルは熱に安定で、煮沸しても溶解して崩れる
ことはないという特徴がある。分子量が5000〜1000位ま
では、よく水に溶け、ゲルを形成する物性はみられなく
なる。更に1000〜300 位までは、食べた場合は消化吸収
のよいシルクペプチドとなり、構成アミノ酸の特徴であ
るグリシン、アラニン、セリン、チロシンの各々のアミ
ノ酸の機能の特性が発揮されやすくなる。300 以下から
遊離アミノ酸までは、甘味を持った格別な物性を持つ。
これらのペプチドの利用に際し、それらを構成するアミ
ノ酸配列を同定して、ACE阻害活性との係りを調べた
のは本発明者らがはじめてである。
【0027】本発明の新規ペプチドは、上記ペプチド組
成物中に含まれるグリシル−L−バリル−グリシル−L
−アラニル−グリシル−L−チロシンのヘキサペプチド
(以後、「アンギオシルキンII」と呼称する)、及びグ
リシル−L−アラニル−グリシル−L−チロシンのテト
ラペプチド(以後、アンギオシルキンIと呼称する)で
ある。
【0028】後述する実施例に示されるように、アンギ
オシルキンIIのIC50は4.1 μM 、アンギオシルキンI
のIC50は8.2 μM であった。これらは今までに同定さ
れたシルク以外の蛋白質由来のペプチドに比べて強い阻
害力であった。また、アミノ酸残基が6個以上の長い配
列をもったペプチドがいくつか報告されているが、これ
らに比べても、本発明の両ペプチドは優れたものであっ
た。
【0029】この一つの理由として、アンギオシルキン
I、IIの場合、C末端アミノ酸が芳香族アミノ酸のチロ
シンであり、他の構成アミノ酸は疎水性アミノ酸に分類
されるグリシン、アラニン、バリンであることから、阻
害機作の面からも親和性があり、阻害力が優れていると
推測される。
【0030】本発明のACE阻害剤は、上記アンギオシ
ルキンI及び/又はアンギオシルキンIIを含有するもの
であればよい。すなわち、上記ペプチド組成物からアン
ギオシルキンI及び/又はアンギオシルキンIIを分離精
製したものであってもよく、あるいは、アンギオシルキ
ンI及び/又はアンギオシルキンIIを含有する上記ペプ
チド組成物をそのまま用いてもよい。この場合、ACE
阻害活性がより高いものを得るために、ペプチド組成物
の平均分子量は2000〜4000であることが好まし
い。平均分子量が上記範囲を外れると、いずれもACE
阻害活性が低下する傾向がある。
【0031】
【実施例】本発明について実施例を挙げて更に詳細に説
明するが、本発明はこれら実施に限定されるものではな
い。
【0032】以下の実施例において、平均分子量が異な
る各ペプチド区分は、酵素法で調製し、酵素としては分
解様式の異なる細菌由来の中性プロテアーゼとカビ由来
の中性プロテアーゼとを併用した。これらのプロテアー
ゼの作用で分子量の異なるペプチド区分をいくつか調製
した。
【0033】これらのペプチド区分のうち、最も強いA
CE阻害活性が認められた区分を精製した。精製は大量
分取用ゲル濾過法用の「スーパーデックス75pg」(商品
名、ファルマシア社製)を用いた。次に「トヨパールH
W−40」(商品名、東洋ソーダ社製)を用いて精製し
た。さらに「ショーデックスC18−10E」(商品名、昭
和電工社製)を用いて、逆相クロマトグラフィーで精製
した。
【0034】各阻害活性ピーク分子量の推定は、「スー
パーデックスペプチドHR」(商品名、ファルマシア社
製)を用いたゲルクロマトグラフィーを行い、各分子量
マーカーを用いて分子量の対数と相対移動度より検量線
を作成して行った。
【0035】ACE阻害ペプチドのアミノ酸組成分析と
モル濃度の定量は、ピコータグ(PICO-TAG) 法に準じて
アミノ酸組成を求め、アミノ酸標準液(タイプH)の検
量線からモル濃度を定量した。加水分解の条件は、110
℃、24時間とした。
【0036】質量スペクトル(Ms)は、「JMS−S
X/SX102Aタンデム質量分析計」(商品名、日本
電子製)を使用して測定し、ACE阻害ペプチドの質量
分析を行った。測定は、ダイレクト−ハブ(Direct-FAB
+)(Positivemode) でウルトラマーク(Ultramark) によ
りキャリブレーションを行った。マトリックスにはマジ
ックブルーを使用した。
【0037】アミノ酸配列分析は、自動エドマン分解法
(気相法)によるN末端アミノ酸分析により行った。
【0038】また、ペプチドのACE阻害活性の試験方
法は次の通りである。すなわち、合成基質馬尿酸−L−
ヒスチジル−L−ロイシン(シグマ社製)を用いてAC
Eが基質の末端ジペプチドのL−ヒスチジル−L−ロイ
シンを選択的に切断することを利用して、遊離する馬尿
酸を抽出し、比色するという試験法により行った。
【0039】上記において、試薬であるACE溶液は、
ACE10単位(シグマ社製)を、硼酸緩衝液(pH8.3
、0.4 モル食塩を含む)200ml に溶かして調製した。
単位は1分間に1μmoleの馬尿酸を生成する反応速度を
もって表わした。
【0040】ACE阻害活性は次のような方法で測定し
た。すなわち、試験管(14×105mm)に基質溶液〔7mM 馬
尿酸−L−ヒスチジニル−L−ロイシン、硼酸緩衝液
(pH8.3, 0.4モル食塩を含む)〕を0.25ml入れ、試料水
溶液を0.05ml加えた。37℃で5分間安定させた後、AC
E溶液を0.1ml 添加し、30分間反応した。1N−塩酸
を0.1ml 添加して反応を停止せしめ、温室で5分間放置
した。その後、酢酸エチル4ml を加え、15秒間攪拌
し、ACEによって遊離した馬尿酸を抽出した。5℃、2
000rpm で3分間遠心分離して、水層と酢酸エチル層を
分離した後、上層の酢酸エチルを2ml 分取した。遠心エ
バポレーターで乾固した後、室温で5分間放置した。こ
れを蒸留水3ml に再溶解して228mm で比色した。なお、
対照は試料溶液の代わりに蒸留水を用い、さらにACE
溶液を加える前に1N−塩酸を加え反応を停止させた。
ACE阻害率は、下記数1より求めた。
【0041】
【数1】 阻害率(%)=(B−S)/(B−C)×100 (S:試料の吸光度,B:対照の吸光度,C:反応開始
前の吸光度)
【0042】ACE阻害活性試験から阻害率50%を示
す濃度をもって、IC50として表示した。
【0043】次に具体的に精製するまでのペプチド標品
の製造例について説明する。副蚕糸原料(ノイルと呼称
する)100gを用いて、煮沸中の40%塩化カルシウ
ム溶液1000mlに徐々に加え、速やかに分散溶解せしめ
た。粘稠な液のため撹拌が困難であり、2倍量の水を加
えて希釈して酵素処理を行った。温度を50℃に保ち、
細菌産生プロテアーゼである「プロチンPC−10」(商
品名、大和化成製)0.6 g及びカビ産生プロテアーゼで
ある「プロチンFN」(商品名、大和化成製)0.4 g
を、少量の水でよく溶解してから加え、緩やかに撹拌し
ながら24時間反応せしめた。90℃で10分間加熱し
て酵素を失活せしめた。次に塩置換を目的に、10%硫
酸ナトリウム溶液を当量加えて、沈殿した硫酸カルシウ
ムを濾別して清澄液を得た。この液に2%活性炭(商品
名「太閤S」:二村化学製)を加え、50℃、2時間保
温して脱色・脱臭を行った。これを濾過して澄明な液を
得、次に電気透析を実施し、電気抵抗が充分上昇するま
で透析を行い、脱塩を完了した。この液を凍結乾燥して
43gのペプチド標品を得た。
【0044】本標品を用いて次の手順で精製を繰り返し
た。すなわち、ゲル濾過用のカラムの移動相に「スーパ
ーデックス75p・g16/60 」(商品名、ファルマシア社
製)を用い、溶媒には30%アセトニトリルを用い、1
ml/分の流速をもってカラムより溶出せしめクロマトグ
ラムを得た。その分画パターンを第1図に示した。第1
図中、実線は蛋白質の吸収波長280 mmにおける吸光度を
示し、点線はACE阻害率を示す。
【0045】第1回の精製で得られた阻害力のピークの
画分を集めて、第2回目の精製法として、カラムの移動
相に「トヨパールHW−40 16/30」(商品名、東洋ソー
ダ社製)を用いて、30%アセトニトリルを溶媒にして
第1回目と同様に精製を行った。第2図にその分画パタ
ーンを示した。第2図中、実線は蛋白質の吸収波長210
mmにおける吸光度を示し、点線はACE阻害率を示す。
【0046】第3回の精製には逆相クロマトグラフィー
法を導入した。カラムの移動相には「ショーデックスC
18−10E」(商品名、昭和電工社製)を用い、溶媒には
5〜10%アセトニトリルを用いた。3ml/分の流速で
分画をすすめ、温度は40℃のオーブン中で実施した。
この分画パターンを第3図に示した。第3図中、実線は
210 mmにおける吸光度を示し、点線はアセトニトリルの
濃度(%)を示す。その結果、ACE阻害活性の強く認
められた二つのピーク、B画分とF画分を得ることがで
きた。
【0047】更に、得られたこれら二つの画分につい
て、再度クロマトグラフィーを展開した。第4図にピー
クBの画分の分画パターンを示した。溶媒は3〜5%ア
セトニトリルを用いて分画した。第4図中、実線は210
mmにおける吸光度を示し、点線はアセトニトリルの濃度
(%)を示す。このように単一なピークを得ることがで
きた。
【0048】もう一つのピークFについて、ピークBの
場合と同様に分画して、第5図にそのパターンを示し
た。5〜6%アセトニトリルを溶媒に展開して単一なピ
ークFを得ることができた。第5図中、実線は210 mmに
おける吸光度を示し、点線はアセトニトリルの濃度
(%)を示す。
【0049】こうして得られた各ペプチドのアミノ酸の
組成を解析した。ピコタッグ法(PICO−TAG 法)による
アミノ酸分析を行った。その結果を表1に示した。ペプ
チドBには、グリシン:アラニン:チロシンが2:1:
1であり、ペプチドFは、グリシン:アラニン:チロシ
ン:バリンが3:1:1:1の組成で含まれていること
が判明した。
【0050】
【表1】
【0051】更に、上記各ペプチドの質量分析の結果を
図6、7に示した。この結果、ペプチドBの場合、理論
質量(m/z)が366.1 であるのに対して、測定値は36
7 であった。また、ペプチドFの場合、理論質量が522.
2 であるのに対して、実測値は523 であった。このよう
に両者とも理論値質量とよく一致した結果を得た。
【0052】アミノ酸配列(N末端)分析の結果、上記
ペプチドは4〜6のオリゴペプチドであり、そのアミノ
酸組成からも極めて疎水的であることが認められたの
で、濾紙上に(+)・(−)両荷電を持たせたペプチド
用の支持体を用いて分析を行った。分析の結果、ペプチ
ドBはN末端から第4残基までグリシル−L−アラニル
−グリシル−L−チロシンであり、ペプチドFはN末端
から第6残基までグリシル−L−バリル−グリシル−L
−アラニル−グリシル−L−チロシンであることが判明
した。
【0053】IC50について記述すれば、ペプチドBは
8.2μM 、ペプチドFは4.1μM であった。ペプチ
ドBをアンギオシルキンII、ペプチドFをアンギオシル
キンIと命名した。
【0054】本発明のペプチドのアミノ酸配列は、シル
ク蛋白質の主成分であるフィブロインのアミノ酸一次構
造の決定(「高分子」、三田和英、45, 146-149、 1996
)の繰り返し構造の中で、アミノ酸配列の同一な配列
を確認することができた。アンギオシルキンI、IIを含
んだペプチド類としての原体の各ペプチド区分の標品の
IC50の比較を表2に示した。この結果、平均分子量30
00の標品に最も強い活性が得られた。平均分子量が1万
を越える標品には殆ど阻害力を示す結果は得られなかっ
た。なお、平均分子量が300以下の標品では、阻害力
は弱まる傾向にあった。
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
シルク蛋白質由来のACE阻害活性を有する新規なペプ
チドであるアンギオシルキンI、IIを提供することがで
きる。そして、このアンギオシルキンI、II、又はそれ
らを含むペプチド組成物を、血圧降下作用を有する医薬
品又は機能性食品として利用することができ、今後のシ
ルク蛋白質の新しい有効な用途開発及びシルク産業の活
性化にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シルク蛋白質を酵素分解して得られたペプチド
組成物をゲル濾過クロマトカラムにかけて分画したパタ
ーンを示す図表である。
【図2】図1におけるアンギオテンシンI変換酵素阻害
力のピーク画分を再度ゲル濾過クロマトカラムにかけて
分画したパターンを示す図表である。
【図3】図2におけるアンギオテンシンI変換酵素阻害
力のピーク画分を逆相クロマトカラムにかけて分画した
パターンを示す図表である。
【図4】図3におけるピークBの再クロマトグラフィー
での分画パターンを示す図表である。
【図5】図3におけるピークFの再クロマトグラフィー
での分画パターンを示す図表である。
【図6】実施例で得られたペプチドBの質量分析結果を
示す図表である。
【図7】実施例で得られたペプチドFの質量分析結果を
示す図表である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07K 14/435 A61K 37/02 ABU C12N 9/99 AED // C07K 123:00

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリシル−L−バリル−グリシル−L−
    アラニル−グリシル−L−チロシンのヘキサペプチドで
    ある新規ペプチド。
  2. 【請求項2】 グリシル−L−アラニル−グリシル−L
    −チロシンのテトラペプチドである新規ペプチド。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のヘキサペプチド及び/又
    は請求項2記載のテトラペプチドを有効成分とするアン
    ギオテンシンI変換酵素阻害剤。
  4. 【請求項4】 シルク蛋白質を加水分解して得られるペ
    プチド組成物であって、請求項1記載のヘキサペプチド
    及び/又は請求項2記載のテトラペプチドを含有するも
    のからなる請求項3記載のアンギオテンシンI変換酵素
    阻害剤。
  5. 【請求項5】 前記ペプチド組成物の平均分子量が20
    00〜4000である請求項4記載のアンギオテンシン
    I変換酵素阻害剤。
JP9118717A 1997-04-22 1997-04-22 新規ペプチド及びそれを含有するアンギオテンシンi変換酵素阻害剤 Pending JPH10298199A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9118717A JPH10298199A (ja) 1997-04-22 1997-04-22 新規ペプチド及びそれを含有するアンギオテンシンi変換酵素阻害剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9118717A JPH10298199A (ja) 1997-04-22 1997-04-22 新規ペプチド及びそれを含有するアンギオテンシンi変換酵素阻害剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10298199A true JPH10298199A (ja) 1998-11-10

Family

ID=14743358

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9118717A Pending JPH10298199A (ja) 1997-04-22 1997-04-22 新規ペプチド及びそれを含有するアンギオテンシンi変換酵素阻害剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10298199A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002076487A1 (en) * 2001-03-21 2002-10-03 Aminogen Co., Ltd. Anticancer agents containing antigenotoxic and immunostimulative peptides produced from the hydrolysate of silkworm cocoon
KR100354960B1 (ko) * 1999-10-23 2002-10-05 대한민국 겔 여과법에 의한 고순도 실크 펩타이드 제조방법
JP2004269395A (ja) * 2003-03-07 2004-09-30 Minato Pharmaceutical Co Ltd 血圧低下作用を有する組成物
JP2007191448A (ja) * 2006-01-20 2007-08-02 Azuma Noen:Kk アレルギー性疾患改善用ペプチド組成物及びアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物含有食品
JP2014180216A (ja) * 2013-03-18 2014-09-29 Kyoto Prefecture 絹フィブロイン由来の食品機能材およびその製造方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100354960B1 (ko) * 1999-10-23 2002-10-05 대한민국 겔 여과법에 의한 고순도 실크 펩타이드 제조방법
WO2002076487A1 (en) * 2001-03-21 2002-10-03 Aminogen Co., Ltd. Anticancer agents containing antigenotoxic and immunostimulative peptides produced from the hydrolysate of silkworm cocoon
JP2004269395A (ja) * 2003-03-07 2004-09-30 Minato Pharmaceutical Co Ltd 血圧低下作用を有する組成物
JP2007191448A (ja) * 2006-01-20 2007-08-02 Azuma Noen:Kk アレルギー性疾患改善用ペプチド組成物及びアレルギー性疾患改善用ペプチド組成物含有食品
JP2014180216A (ja) * 2013-03-18 2014-09-29 Kyoto Prefecture 絹フィブロイン由来の食品機能材およびその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Bohak Purification and characterization of chicken pepsinogen and chicken pepsin
TWI341866B (en) Casein hydrolysate, method of preparing the same, and use of the same
CN107779489B (zh) 一种具有抗氧化和ace抑制功能的蚕蛹蛋白肽
Yamashita et al. Applying proteolytic enzymes on soybean part IV. A ninhydrin-negative bitter peptide in peptic hydrolyzate of soybean protein
Isemura et al. Isolation and amino acid sequences of proline-rich peptides of human whole saliva
Foster et al. Conformation-dependent limited proteolysis of bovine plasma albumin by an enzyme present in commercial albumin preparations
Darke et al. Further characterization and N-terminal sequence of cobra venom phospholipase A2
Piot et al. Application of ultrafiltration to the preparation of defined hydrolysates of bovine haemoglobin
JPH10298199A (ja) 新規ペプチド及びそれを含有するアンギオテンシンi変換酵素阻害剤
Shiozawa et al. Isolation and Characterization of the Polypeptide Components from Light‐Harvesting Pigment‐Protein Complex B800–850 of Rhodopseudomonas capsulata
Harper et al. The hydrolysis of poly (L‐prolyl‐glycyl‐L‐prolyl) by bacterial collagenase
EA012972B1 (ru) Трипептиды мар и itp или их соли, белковые гидролизаты и смеси, содержащие указанные трипептиды или их соли, для снижения кровяного давления
Rahali et al. Chemical cleavage of bovine β-lactoglobulin by BNPS-skatole for preparative purposes: comparative study of hydrolytic procedures and peptide characterization
Chang et al. Histidine decarboxylase of Lactobacillus 30a. III. Composition and subunit structure
Muszynska et al. Chemical modification of carboxypeptidase A crystals. Nitration of tyrosine-248
Biedermann et al. The amino acid sequence of proteinase A inhibitor 3 from baker's yeast
JP2673659B2 (ja) ペプチド
Kumagai et al. Isolation, purification and some chemical properties of an acid carboxypeptidase from Aspergillus niger var. macrosporus
Lieberman et al. Carboxypeptidase Y digestion of band 3, the anion transport protein of human erythrocyte membranes
Maruyama et al. Purification and amino acid analysis of plasma acid stable trypsin inhibitor
NL8304449A (nl) Werkwijze voor de bereiding van hydrolyseprodukten van proteinen.
Piot et al. Preparation of decolorized peptides from slaughter-house blood
JPH03255095A (ja) カゼインペプチド
Shan et al. Solid-phase enzymatic peptide synthesis to produce an antioxidant dipeptide
JP3056543B2 (ja) 新規ペプチド

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20061024

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20070508