JPH10293951A - テープガイド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁気テープの走行性を向上させることがで
き、かつ加工コストを低減できるテープガイドを提供す
る。 【解決手段】 回転ガイドＲ’における回転部材Ｒ１’
がチタン酸カリウム繊維を配合した熱硬化性樹脂組成物
からなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオテープレコ
ーダ（以下ＶＴＲとする）等に用いられるテープガイド
に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ＶＴＲ等に使用される磁気テープ
走行系は、例えば図１に示すような構成であり、テープ
カセット１３から引き出された磁気テープ１２はテンシ
ョンガイド２，ＳＩローラ３，入口側ガイドローラ４，
入口側傾斜ガイド５，ドラム１，出口側傾斜ガイド６，
出口側ガイドローラ７，第２傾斜ガイド８，キャプスタ
ン９，Ｔｕガイド１１により走行を案内される。例え
ば、磁気テープへの信号の記録時には、磁気テープ１２
は、キャプスタン９とそのキャプスタン９に図示しない
バネにより圧着されているピンチローラ１０により挟ま
れた状態で、キャプスタン９の回転に伴い定速で走行す
る。

【０００３】上記した磁気テープ１２の走行を案内する
ガイド類のうち、ＳＩローラ３，入口側ガイドローラ
４，出口側ガイドローラ７は、類似した機能を有するよ
う構成されている。図４に、その代表的なガイド（回転
ガイドＲ）の形状を示す。

【０００４】図４に示すように、回転ガイドＲは回転部
材Ｒ１，上フランジＲ２，下フランジＲ３，固定軸Ｒ
４，ネジ部材Ｒ５，テープ案内部材Ｒ６で構成されてい
る。固定軸Ｒ４には、上フランジＲ２，下フランジＲ
３，ネジ部材Ｒ５が圧入固定されており、上フランジＲ
２，下フランジＲ３の間に外周にテープ案内部材Ｒ６を
嵌合した回転部材Ｒ１が回転可能に保持されている。回
転ガイドＲは、ネジ部材Ｒ５と固定軸Ｒ４に対応したネ
ジ部と穴部を有したレバー，シャーシ等（図示せず）に
取り付けられネジ部材Ｒ５によってその高さを調整され
る。その後、固定軸Ｒ４が穴部の横から設けた止めネジ
により固定される。

【０００５】従来、回転ガイドＲの回転部材Ｒ１は、磁
気テープ１２と接触し磁気テープ１２を案内するため、
表面精度・形状精度・導電性等を考慮して外周部にステ
ンレス鋼を用いていた。また、固定ガイド３はその全体
にステンレス鋼を用いていたが、最近その加工コスト等
の面から、例えば特開昭６０−１３８７６３号公報や特
開昭５９−２０７０５０号公報や特開平４−１０３０６
１号公報や特開平６−８４２４２号公報に示されるよう
に、樹脂組成物を用いることが知られている。

【０００６】一方、上記した磁気テープ１２の走行を案
内するガイド類のうち、入口側傾斜ガイド５・出口側傾
斜ガイド６・第２傾斜ガイド８は固定ガイドＳであり、
図３に示すような形状に構成されている。この図に示す
ように、固定ガイドＳは全体が同一素材からなりその一
端Ｓ１がレバー・ホルダ等１４に固定される。

【０００７】さらに、上記した磁気テープ１２の走行を
案内するガイド類のうち、テンションガイド２・Ｔｕガ
イド１１については、上述の回転ガイドＲ・固定ガイド
Ｓの両方のタイプの場合があるが、形状・構造について
は同様である。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、回転ガ
イドＲを構成する従来の樹脂材料はテープガイドとして
最適な物ではなく、樹脂材料として熱可塑性組成物を用
いた場合には、下記の課題を有している。

【０００９】（１）第１に成形精度が悪いという問題が
ある。例えば、現状のデジタルＶＴＲのテープガイドと
しては、その回転振れは５μｍ以下に抑えなければなら
ないが、この５μｍ以下という値は、例えば熱可塑性樹
脂組成物（チタン酸カリウム繊維等の充填剤を配合した
ものを含む）を用いた場合には、成形収縮率が大きいた
め得られない精度である。

【００１０】（２）第２に耐熱性である。従来の熱可塑
性樹脂では高温高湿下で変形を起こしたり、また、線膨
張係数が大きいため温度によって磁気テープの走行条件
が変わってしまうという課題があった。

【００１１】（３）第３に導電性である。導電性が殆ど
無い樹脂の場合、磁気テープの走行により静電気が発生
して帯電するため、テープガイドへの磁気テープの張り
付き現象をおこすという課題があった。

【００１２】（４）第４に、摩擦係数である。摩擦係数
の大きい樹脂では、磁気テープとテープガイドの摩擦
や、回転部材とその中心軸との摩擦によりテープ走行時
の負荷が大きく、良好な走行が出来ないという課題があ
った。

【００１３】このように、特開昭５９−２０７０５０号
公報に記載されたような熱可塑性樹脂組成物の成形物
は、テープガイド材料として用いる場合、多くの課題を
有しており、この課題を全て解決できるような材料の組
成は得ることは困難である。例えば、成形精度を向上す
るためには球状をした添加物を加えることが有効である
が、成形品の強度は悪くなる。逆に成形品の強度を向上
するためには棒状をした添加物を加えることが有効であ
るが、成形精度は悪くなる、というような相反する課題
が存在する。

【００１４】また、特開平６−８４２４２号公報や特開
平４−１０３０６１号公報に示されているような熱硬化
性樹脂組成物を用いた場合においても、炭素繊維やガラ
ス繊維を配合した場合、炭素繊維やガラス繊維は硬度が
高い（モース硬度で約６．５）ため、走行する磁気テー
プを傷めやすく、また繊維長が長いため成形時に繊維配
向が大きく樹脂の流れ方向／直角方向での強度差・成形
収縮率の差が大であった。

【００１５】更に、特開昭６０−１３８７６３号公報に
示されるように、テープガイドの材料としてチタン酸カ
リウムを配合した熱硬化性樹脂組成物を用いた場合にお
いても、導電性が殆ど無い電気絶縁性の樹脂であるた
め、磁気テープの走行により静電気による帯電が発生
し、テープガイドへの磁気テープの張り付き現象をおこ
すという課題があった。

【００１６】本発明は、上記課題を解決するためになさ
れたものであって、磁気テープの走行性を向上させるこ
とができ、かつ加工コストを低減できるテープガイドを
提供することを目的とする。

【００１７】

【課題を解決するための手段】上記した問題点を解決す
るため本発明の請求項１に係るテープガイドは、磁気テ
ープのテープ供給側からテープ巻取側への走行を案内す
るテープガイドにおいて、少なくとも磁気テープとの摺
動面は、チタン酸カリウム繊維を配合した熱硬化性樹脂
組成物から形成されてなることを特徴としている。

【００１８】請求項２に係るテープガイドは、請求項１
に記載のテープガイドにおいて、チタン酸カリウム繊維
が導電性を有することを特徴としている。

【００１９】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係るテープガイド
について、図１，２，３を用いて詳細な説明を行う。
図１は、本発明のテープガイドを用いて構成した磁気記
録再生装置の一例を示す概略図である。ここで、従来例
と同一構成部分については説明を省略する。

【００２０】図１の磁気記録再生装置においては、ＳＩ
ローラ３，入口側ガイドローラ４，出口側ガイドローラ
７に用いられる回転ガイドＲ、及び、入口側傾斜ガイド
５，出口側傾斜ガイド６，第２傾斜ガイド８に用いられ
る固定ガイドＳの材料として、チタン酸カリウム繊維を
配合した熱硬化性樹脂組成物を用いている。尚、テンシ
ョンガイド２，Ｔｕガイド１１は回転ガイドＲ’，固定
ガイドＳのどちらを用いても良い。

【００２１】図２は、回転ガイドＲ’の構成を示す概略
図である。図２に示すように、回転ガイドＲ’は、回転
部材Ｒ１’の外周に従来嵌合されていたテープ案内部材
Ｒ６を設けておらず、回転部材Ｒ１’の外周と直接磁気
テープ１２とが接触する。ここで、Ｒ１’が上記材料
（チタン酸カリウム繊維を配合した熱硬化性樹脂組成
物）により形成されている。

【００２２】図３は、固定ガイドＳ’の構成を示す概略
図である。ここで、この図に示すように、レバー・ホル
ダ等１４に固定された固定ガイドＳ’は、全体が上記材
料により形成されている。

【００２３】回転ガイドＲ’，固定ガイドＳ’の形成に
用いられる熱硬化性樹脂としては、従来公知のものを広
く使用でき、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニル
エステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミ
ン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等を使用できる。

【００２４】チタン酸カリウム繊維はＫ₂Ｏ・ｎＴｉＯ₂
の化学組成で示される例えば４チタン酸カリウム繊維、
６チタン酸カリウム繊維、８チタン酸カリウム繊維等を
使用できる。

【００２５】さらに、チタン酸カリウム繊維は熱硬化性
樹脂１００重量部に対して２〜３５重量部含有されてい
るのが望ましい。

【００２６】また、前記チタン酸カリウム繊維は、平均
繊維長が７〜３０μｍであり、平均繊維径が０．１〜１
μｍであるのが望ましい。

【００２７】また、チタン酸カリウム繊維は導電性を有
するものであることが望ましい。チタン酸カリウム繊維
に導電性を持たせる方法としては、金属，金属酸化物，
炭素等を表面に被覆したり、還元性雰囲気下で焼成する
ことにより得られ、この方法により、表面抵抗率＝１×
１０⁵Ω程度の導電性が得られる。このように、チタン
酸カリウム繊維に導電性を持たせることで、磁気テープ
の走行に起因して発生する静電気の帯電により起こる、
テープガイドへの磁気テープの張り付き現象を抑制でき
る。

【００２８】以上に示したように、本発明のテープガイ
ドでは、チタン酸カリウム繊維を含有しているため、例
えばガラス繊維（モース硬度で約６．５）や炭素繊維を
含有させた場合と比較して、チタン酸カリウム繊維自体
の硬度がモース硬度で約４と低いため、磁気テープの傷
つき等を抑制した良好な摺動性を得ることができる。

【００２９】また、チタン酸カリウム繊維は微細な繊維
であるため、金型転写性が高く、表面粗さＲ_max＝０．
２μｍという平滑な樹脂成形表面を得ることができる、
さらに成形時の繊維配向が小さく樹脂の流れ方向／直角
方向での強度差・成形収縮率の差がほとんど無いため、
テープガイドの成形材料として極めて好適である。

【００３０】また、チタン酸カリウム繊維を配合した熱
硬化性樹脂組成物は成形収縮率が小さいため、図２に示
した回転ガイドＲ’においては、回転部材Ｒ１’の外周
面の振れを５μｍ以下と低く抑えることができ、その外
周面を走行する磁気テープの振動により発生するテープ
走行速度のワウ，フラッタを無くすことが可能となる。
また、回転部材Ｒ１’の外周面の振れを５μｍ以下と低
く抑えることができ、その外周面を走行する磁気テープ
の走行状態を安定にし、正確なテープ走行を可能とす
る。

【００３１】さらに、図３に示した固定ガイドＳ’にお
いては、チタン酸カリウム繊維を配合した熱硬化性樹脂
組成物は成形収縮率が小さいため、その外周面の円筒度
を５μｍ以下と低く抑えることが可能となり、固定ガイ
ドＳ’の近傍に位置するドラム１への正確な磁気テープ
の案内が可能となる。また、固定ガイドＳ’はその一端
Ｓ１’がレバー・ホルダ等１４に固定されるが、固定ガ
イドＳ’の外周面と一端Ｓ１’の同軸度を１０μｍ以下
と低く抑えることが可能となり、レバー・ホルダ等と固
定ガイドＳ’の位置ずれや、レバー・ホルダ等に対して
取付角度不良などが無く、ドラムへの磁気テープの巻付
角が変わってしまうというようなことは発生しない。

【００３２】なお、本実施の形態では、回転ガイドＲ’
の回転部材Ｒ１’及び固定ガイドＳ’の全体をチタン酸
カリウム繊維を配合した熱硬化性樹脂組成物からなるも
のとしているが、それらガイドのテープ摺動面が上記組
成物で形成されていれば、本実施の形態で説明した効果
が得られることは言うまでもない。

【００３３】

【発明の効果】以上のように、本発明のテープガイドで
は、チタン酸カリウム繊維を配合した熱硬化性樹脂組成
物を用いてテープガイドを成形することにより、成形収
縮率が小さくなり成形精度を向上させることができる。
また、線膨張係数が小さくなるため、温度変化により磁
気テープの走行状態が変わることを抑制できる。さら
に、射出成形のみで形成できるため、加工コストを低く
抑えることが可能となる。また、炭素繊維やガラス繊維
を含まないため、磁気テープを傷めるようなことが無
く、磁気テープの走行性を向上させることができる。

【００３４】また、チタン酸カリウム繊維に導電性を付
与することにより、磁気テープの摺動に起因した静電気
による帯電が発生しないため、磁気テープの張り付きを
防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】テープ走行系を説明する概略図である。

【図２】本発明の回転ガイドを説明する断面概略図であ
る。

【図３】固定ガイドを説明する側面概略図である。

【図４】従来の回転ガイドを説明する断面概略図であ
る。

【符号の説明】

Ｒ’ 回転ガイド Ｒ１’ 回転部材 Ｓ 固定ガイド Ｓ１’ 固定ガイドの一端

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 テープ供給側からテープ巻取側への磁気
   テープの走行を案内するテープガイドにおいて、 少なくとも前記磁気テープとの摺動面は、チタン酸カリ
   ウム繊維を配合した熱硬化性樹脂組成物からなることを
   特徴とするテープガイド。
2. 【請求項２】 請求項１に記載のテープガイドにおい
   て、 前記チタン酸カリウム繊維は導電性を有することを特徴
   とするテープガイド。