JPH10287502A - 畑作害虫防除方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】畑作害虫防除方法において、薬剤の残効を長く
延ばし、栽培後期まで薬剤の効果を維持させ、しかも手
間のかかる畑作物への直接的な茎葉散布を避けるような
薬剤処理方法を提供すること。 【解決手段】農薬成分としての、水溶解度が１００ｐｐ
ｍ以上であるニトロメチレン系、ニトロイミノ系及びシ
アノイミノ系殺虫化合物からなる群より選ばれる１種以
上と肥料成分とを含有する農薬含有肥料組成物を畑地作
土における種子の播種部又は苗の定植部の深層に施用し
た後、該畑地作土に畑作物の種子を播種するか又は苗を
定植することにより、総翅目、コナジラミ類及びアブラ
ムシ類に代表される畑作害虫を効果的に防除する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、畑作害虫防除方法
に関する。

【０００２】

【従来の技術】畑作物を加害する主要な害虫として総翅
目、コナジラミ類及びアブラムシ類害虫があげられる。
これら害虫は、非常に多くの個体が植物体に寄生する
が、極めて短小であるために人目につきにくい。このた
め、発生に気付いたときには既に作物が大きく加害され
ていたということが多く、農家にとって、その対策が重
要な課題となっている。現在、このような害虫を防除す
るために、主として殺虫剤希釈液の茎葉散布処理が行わ
れている。また一部には殺虫剤粒剤の種子の播種溝や苗
の植穴への処理も行われている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
処理においては、散布むらが生じ易く、又、複数回の処
理が必要であり、人手や費用がかかり、又後者の処理の
場合には、種子の播種溝や苗の植穴への処理における機
械化が難しく、又一般に薬剤の効力持続期間も短いため
作物の栽培後期に殺虫剤希釈液の茎葉散布処理を行う必
要があり、何れも効果的な防除法とは言い難い。

【０００４】

【課題を解決するための手段】このような状況下に、本
発明者らは鋭意検討を行った結果、特定の化学構造を有
し、且つ水溶解度が一定値以上である殺虫化合物を含有
する農薬含有肥料組成物を畑地作土における種子の播種
部又は苗の定植部の深層、即ち、畑作物の成長期から収
穫期において、畑作物の根が位置し、根から当該農薬含
有肥料組成物の含有成分を吸収しうる層に施用した後、
該畑地作土に畑作物の種子を播種するか又は苗を定植す
ることによって、代表的な畑作害虫である総翅目、コナ
ジラミ類及びアブラムシ類害虫が効率的に防除できるこ
とを見い出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、
農薬成分としての、水溶解度が１００ｐｐｍ以上である
ニトロメチレン系、ニトロイミノ系及びシアノイミノ系
殺虫化合物からなる群より選ばれる１種以上と、肥料成
分とを含有する農薬含有肥料組成物を、畑地作土におけ
る種子の播種部又は苗の定植部の深層に施用した後、該
畑地作土に畑作物の種子を播種するか又は苗を定植する
ことによる、総翅目、コナジラミ類及びアブラムシ類に
代表される畑作害虫の防除方法（以下、本発明方法と記
す。）を提供するものである。

【０００５】本発明で用いられる肥料成分としては、た
とえば窒素、リン酸、カリウム、珪酸、マグネシウム、
カルシウム、マンガン、ホウ素、鉄、アルミニウム、ナ
トリウム等の畑作物が要求する元素を挙げることができ
る。中でも窒素（Ｎ）、リン酸（Ｐ）およびカリウム
（Ｋ）が好適であり、これらの肥料成分の一種以上、特
にこれら三種の肥料成分を含むことが好ましい。より具
体的にはＮＰＫ成分型（Ｎ−Ｐ₂ Ｏ₅ −Ｋ₂ Ｏ）肥料が
挙げられ、かかる肥料としては、例えば、5-5-7、12-12
-16等の１型平上り型、5-5-5 、14-14-14等の２型水平
型、6-6-5 、8-8-5 等の３型平下がり型、4-7-9 、6-8-
11等の４型上り型、4-7-7 、10-20-20等の５型上り平
型、4-7-4 、6-9-6 等の６型山型、6-4-5 、14-10-13等
の７型谷型、6-5-5 、18-11-11等の８型下がり平型、7-
6-5 、14-12-9 等の９型下がり型、3-20-0、18-35-0 等
の１０型ＮＰ型、16-0-12 、18-0-16 等の１１型ＮＫ
型、0-3-14、0-15-15 等の１２型ＰＫ型等を挙げること
ができる。尚、上記の肥料成分の原料としては、たとえ
ば、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、
塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニ
ウム、硝酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウ
ム、硝酸カリウム、石炭窒素、ホルムアルデヒド加工尿
素肥料（ＵＦ）、アセトアルデヒド加工尿素肥料（ＣＤ
Ｕ）、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料（ＩＢＤ
Ｕ）、グアニール尿素（ＧＵ）等の窒素質肥料、過リン
酸石炭、重過リン酸石炭、苦土過リン酸、リン酸アンモ
ニウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩
リン安等のリン酸質肥料、塩化カリウム、硫酸カリウ
ム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、
リン酸カリウム、硝酸カリウム等のカリウム質肥料、珪
酸カルシウム等の珪酸質肥料、硫酸マグネシウム、塩化
マグネシウム等のマグネシウム質肥料、生石炭、消石
炭、炭酸カルシウム等のカルシウム質肥料、硫酸マンガ
ン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン等のマンガン質
肥料、ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素質肥料、鉄鋼スラグ
等の含鉄肥料等の肥料取締法に定められる普通肥料（複
合肥料を含む）を挙げることができる。用いる肥料の形
態は、粒状、粉状、塊状、液状等の何れでもよく、種々
の形態の肥料を用いることができる。徐放性が付与され
た化成肥料を用いることにより、前記の畑作害虫の防除
効果の向上を図ることができ、徐放性の付与方法として
は、たとえば、リン酸をリン酸カルシウムの形で含有さ
せたり、ピッチ、イオウ、樹脂等を添加する等の方法
や、被覆資材を溶媒に溶解あるいは分散し、この溶液を
肥料成分の表面に被覆し、乾燥後、溶媒を除去すること
により被覆肥料とする方法を挙げることができる。な
お、被覆資材の被覆肥料に対する重量割合、すなわち被
覆率は、たとえば約２から３０重量％の範囲である。本
発明で用いられる肥料成分には、必要に応じて、本発明
の効果を損なわない範囲で、上述の成分以外の助剤、た
とえば、タルク、ろう石、炭酸カルシウム、シリカ等の
水不溶性無機物質等を加えることにより、粒状肥料組成
物を製造する際または農薬含有肥料組成物を製造する際
のブロッキング防止を図ることもできる。

【０００６】本発明で用いられる水溶解度が１００ｐｐ
ｍ以上であるニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシ
アノイミノ系殺虫化合物（以下、ニトロメチレン系、ニ
トロイミノ系又はシアノイミノ系化合物と記す。）と
は、下記の一般式 化１

【化１】 （式中、Ａｒは置換されていてもよい芳香族複素環を表
し、Ｘ及びＹは炭素原子又は窒素原子を表し、かつ少な
くとも一方は窒素原子である。Ｚは電子吸引性基を表
す。）で示される骨格を有する化合物である。ここで、
置換されていてもよい芳香族複素環とは、置換されてい
てもよい５員環又は６員環の芳香族複素環（１〜２個の
窒素原子を含むか、又は１個の窒素原子と酸素原子もし
くはイオウ原子のいずれか１個とを含む）であり、特
に、６−クロロピリジン−３−イル基及び５−クロロチ
アゾール−３−イル基が好ましい。また、電子吸引性基
とは、たとえば、ニトロ基又はシアノ基等を挙げること
ができる。一般式 化１で示される骨格としては、たと
えば、ニトロメチレン骨格、ニトロイミノ骨格、シアノ
イミノ骨格等をあげることができる。さらに具体的に
は、２−（ニトロイミノ）イミダゾリジン基、２−（シ
アノイミノ）イミダゾリジン基、２−ニトロイミノ−ヘ
キサヒドロ−１，３，５−トリアジン、２−シアノイミ
ノ−ヘキサヒドロ−１，３，５−トリアジン等の環状グ
アニジン骨格又は該環状グアニジン骨格が開環した構造
（たとえば、置換グアニジン骨格等）およびその類似構
造（たとえば、置換アミジン骨格、置換ビニリデンジア
ミン骨格等）をあげることができる。具体的な化合物と
しては、たとえば、 １．１−（６−クロロ−３−ピリジルメチル）−Ｎ−ニ
トロ−イミダゾリジン−２−イリデンアミン（以下、化
合物Ａと記す。） ２．（Ｅ）−Ｎ−（６−クロロ−３−ピリジルメチル）
−Ｎ−エチル−Ｎ’−メチル−２−ニトロビニリデンジ
アミン（以下、化合物Ｂと記す。） ３．（Ｅ）−Ｎ¹ −〔（６−クロロ−３−ピリジル）メ
チル］−Ｎ² −シアノ−Ｎ¹ −メチルアセトアミジン
（以下、化合物Ｃと記す。） ４．１−（２−クロロ−５−チアゾリルメチル）−３−
メチル−２−ニトログアニジン（以下、化合物Ｄと記
す。） ５．１−（２−クロロ−５−チアゾリルメチル）−３，
５−ジメチル−２−ニトロイミノ−ヘキサヒドロ−１，
３，５−トリアジン（以下、化合物Ｅと記す。） 等をあげることができる。本発明方法においては、これ
らの化合物を単独でも、又二種以上を混合して用いても
よい。なお、これら化合物は、たとえば、特開昭６１−
２６７５７５号、特開平２−１７１号、特開平４−１５
４７４１号、特開平２−２８８８６０号、特開平２−２
３５８８１号等に記載される製造方法により製造するこ
とができる。

【０００７】該化合物は、他の何らの成分も加えず、そ
のまま本発明方法における農薬含有肥料組成物の製造に
使用することができ、又、固体担体、液体担体等の各種
担体と混合し、必要であればさらに添加剤として界面活
性剤、その他の製剤用補助剤を加えて、乳剤、水和剤、
水中懸濁剤、水中乳濁剤、粒剤、粉剤等に製剤し、本発
明方法における農薬含有肥料組成物の製造に使用するこ
とができる。これらの製剤には、有効成分として前記の
ニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系
化合物を、通常、重量比で0.001 ％〜９５％含有する。

【０００８】このような製剤に際し用いられる固体担体
としては、たとえば粘土類（カオリンクレー、珪藻土、
合成含水酸化珪素、ベントナイト、フバサミクレー、酸
性白土等）、タルク類、セラミック、その他の無機鉱物
（セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、
水和シリカ等）等の微粉末あるいは粒状物等があげら
れ、液体担体としては、たとえば水、アルコール類（メ
タノール、エタノール等）、ケトン類（アセトン、メチ
ルエチルケトン等）、芳香族炭化水素類（ベンゼン、ト
ルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルナフタレン
等）、脂肪族炭化水素類（ヘキサン、シクロヘキサン、
灯油、軽油等）、エステル類（酢酸エチル、酢酸ブチル
等）、ニトリル類（アセトニトリル、イソブチロニトリ
ル等）、エーテル類（ジイソプロピルエーテル、ジオキ
サン等）、酸アミド類（Ｎ，Ｎ−ジメチルホルムアミ
ド、Ｎ，Ｎ−ジメチルアセトアミド等）、ハロゲン化炭
化水素類（ジクロロメタン、トリクロロエタン、四塩化
炭素等）、ジメチルスルホキシド、大豆油、綿実油等の
植物油等があげられる。

【０００９】界面活性剤としては、たとえばアルキル硫
酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリー
ルスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類およびそ
のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエ
ーテル類、多価アルコールエステル類、糖アルコール誘
導体等があげられる。

【００１０】固着剤や分散剤等の製剤用補助剤として
は、たとえばカゼイン、ゼラチン、多糖類（でんぷん
粉、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸
等）、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶
性高分子（ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリド
ン、ポリアクリル酸類等）等があげられ、安定剤として
は、たとえばＰＡＰ（酸性リン酸イソプロピル）、ＢＨ
Ｔ（２，６−ジ−tert−ブチル−４−メチルフェノー
ル）、ＢＨＡ（２−tert−ブチル−４−メトキシフェノ
ールと３−tert−ブチル−４−メトキシフェノールとの
混合物）、植物油、鉱物油、界面活性剤、脂肪酸または
そのエステル等があげられる。

【００１１】フロアブル剤（水中懸濁剤または水中乳濁
剤）の製剤は、一般に１〜７５％の化合物を0.5 〜１５
％の分散剤、0.1 〜１０％の懸濁助剤（たとえば、保護
コロイドやチクソトロピー性を付与する化合物）、０〜
１0 ％の適当な補助剤（たとえば、消泡剤、防錆剤、安
定化剤、展着剤、浸透助剤、凍結防止剤、防菌剤、防黴
剤等）を含む水中で微小に分散させることによって得ら
れる。水の代わりに化合物がほとんど溶解しない油を用
いて油中懸濁剤とすることも可能である。保護コロイン
ドとしては、たとえばゼラチン、カゼイン、ガム類、セ
ルロースエーテル、ポリビニルアルコール等が用いられ
る。チクソトロピー性を付与する化合物としては、たと
えばベントナイト、アルミニウムマグネシウムシリケー
ト、キサンタンガム、ポリアクリル酸等があげられる。

【００１２】上記の肥料成分とニトロメチレン系、ニト
ロイミノ系又はシアノイミノ系化合物（以下、殺虫化合
物と記す）を含有する農薬含有肥料組成物（以下、本農
薬含有肥料組成物と記す）は、たとえば、以下の公知な
方法によって製造することができる。 １．粒状または塊状の肥料（約５０〜９９．９重量部）
を粉砕要素のない混合機中に入れ、ポリビニルアルコー
ル、ポリビニルアセテート等の粘着剤（約０．１〜５重
量部）を含む水溶液を混合操作過程でスプレーする。ポ
リビニルアルコール、ポリビニルアセテート等の粘着剤
の溶液を肥料の表面上に均一に分布させた後、該混合機
に水和性粉剤に製剤した殺虫化合物（有効成分量として
約１〜５０重量％）を入れ、約１０〜３０分間混合した
後、混合機を運転しながら、顆粒を約５０〜１５０℃で
乾燥することにより、顆粒状の本農薬含有肥料組成物を
得る。 ２．アセトン、キシレン等の溶剤に殺虫化合物を溶解さ
せた液（有効成分量として約０．０１から２０重量％）
を、流動コーティング装置や粉砕要素のない混合機を用
い、粒状又は塊状の肥料にコーティングまたは含浸させ
た後、約５０〜１５０℃で乾燥するか、もしくは風乾す
ることにより本農薬含有肥料組成物を得る。 ３．殺虫化合物、又はその水和剤あるいは粉剤（有効成
分量として約０．０１〜５重量％）と粉状の肥料とを混
合した後、皿型造粒機等の造粒機を用いて造粒すること
により本農薬含有肥料組成物を得る。 なお本農薬含有肥料組成物が粒状の場合、その粒径は、
ハンドリングの面から約１〜１０ｍｍの範囲が好まし
い。本農薬含有肥料組成物において、肥料成分の含有量
は、通常、９９．９９９〜約７５重量％、好ましくは９
９．９９９〜約９５重量％であり、また、殺虫化合物の
含有量は、有効成分量として、通常、約２５〜０．００
１重量％、好ましくは約２〜０．０１重量％程度がよい
である。

【００１３】このように調製される本農薬含有肥料組成
物は、これを畑地作土における種子の播種部又は苗の定
植部の深層に施用した後、該畑地作土に畑作物の種子を
播種するか又は苗を定植することにより、総翅目、コナ
ジラミ類及びアブラムシ類に代表される畑地害虫を充分
に防除することができる。ここで深層とは、畑作物の成
長期から収穫期において、該畑作物の根が位置し、本農
薬含有肥料組成物に含まれる農薬成分及び／又は肥料成
分を充分利用し得る層を意味する。本農薬含有肥料組成
物を畑地作土の深層に施用する方法としては、例えば、
１）畑地作土の表面に本農薬含有肥料組成物を散布した
後、トラクター、耕うん機等を用いて通常深さ１０〜５
０cm程度の土壌と撹拌混和することにより、深層を含む
層に本農薬含有肥料組成物を均一に分布させる方法、
２）畝立て後ベッドを前記と同様に処理することによ
り、ベッドの深層を含む層に本農薬含有肥料組成物を分
布させる方法、３）種子の播種部や苗の定植部から５〜
３０cm程度の深さになるような位置の畑地作土に本農薬
含有肥料組成物を帯状に施用し、次いで１０〜５０cm程
度畝立てすることにより、畑土壌深層に本農薬含有肥料
組成物を分布させる方法が挙げられる。尚、本農薬含有
肥料組成物の施用に際しては、上記深層部以外の部分に
も本農薬含有肥料組成物が分布することがあるが、上記
害虫を防除する上で何ら支障はない。このように本農薬
含有肥料組成物を、畑作物の種子を播種するか又は苗を
定植する前に畑地作土の種子の播種部又は苗の定植部の
深層に、一度施用するだけで、総翅目、コナジラミ類及
びアブラムシ類に代表される畑作害虫を充分に防除で
き、しかも施肥効果をも発揮し得ることから、畑地作物
の栽培における大巾な省力化を図ることが可能となる。
ここで、防除対象としての総翅目、コナジラミ類及びア
ブラムシ類害虫としては、たとえば、以下のものが挙げ
られる。 総翅目 ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi ) 、 ハナアザミウマ(Thrips hawaiiensis ）、 チャノキイロアザミウマ（Scirtothrips dorsalis ）、 コナジラミ類 オンシツコナジラミ（Trialeurodes vaporariorum ）、 タバココナジラミ（Bemisia tabaci）、 ミカントゲコナジラミ（Aleurocanthus spiniferus）、 アブラムシ類 モモアカアブラムシ（Myzus persicae）、 ユキヤナギアブラムシ（Aphis citricola ）、 ワタアブラムシ（Aphis gossypi ）、 ニセダイコンアブラムシ（Lipaphis erysimi）、 ジャガイモヒゲナガアブラムシ（Acyrthosiphon solan
i）

【００１４】本農薬含有肥料組成物が施用された畑地作
土は、そのまま露地栽培に供することができ、又、例え
ば、ハウス栽培、トンネル栽培、マルチ栽培等の各種栽
培に供することもできる。本農薬含有肥料組成物の施用
量、施用濃度は、作物の種類、気象条件により変わり得
るが通常、本農薬含有肥料組成物の施用量としては、肥
料成分の有効成分量として、約１〜２００００g/a 、好
ましくは約１０〜２０００g/a 、殺虫化合物の有効成分
量として、約０．１〜１００g/a 、好ましくは約０．５
〜１０g/aである。また、本発明方法において本農薬含
有肥料組成物は、他の植物病害防除剤、殺虫剤、殺ダニ
剤、殺線虫剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料及び土壌
改良剤からなる群より選ばれる１種以上と混合して施用
するか、あるいは同時に施用することもできる。

【００１５】本発明方法が適用できる畑作物としては、
例えば、トマト、ナス、ピーマン、メロン、スイカ、キ
ュウリ、カボチャ、イチゴ、レタス、ハクサイ、キャベ
ツ、ホウレンソウ、ネギ、タマネギ、セルリー、カリフ
ラワー、ブロッコロー、ニラ、シュンギク、フキ、ワケ
ギ、ラッキョウ、ニンニク、ショウガ、ダイコン、ニン
ジン、サトイモ、カブ、ヤマノイモ、スイートコーン等
の野菜類、タバコ、菜種、テンサイ、サトウキビ、コン
ニャクイモ等の工芸農作物、キク、カーネーション、バ
ラ、ストック、リンドウ、宿根カスミソウ、洋ラン類、
スターチス、ガーベラ、トルコギキョウ、チューリッ
プ、ユリ、グラジオラス、フリージア、アイリス、スイ
セン、キンセンカ、マーガレット等の花き類、小麦、大
麦、裸麦等の麦類、カンショ、馬鈴薯等の芋類、大豆、
小豆、トウモロコシ、ソバ、落花生、インゲンマメ、エ
ンドウ、ソラマメ等の雑穀・豆類等を挙げることができ
る。

【００１６】以下に、本発明を製造例及び試験例でさら
に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。

【実施例】

製造例１ 粒状肥料（住友化学工業（株）製、Ｎ−Ｐ₂ Ｏ₅ −Ｋ₂
Ｏ＝１４％−１４％−１４％、粒度１．４ｍｍ〜２．６
ｍｍ）９９９部を粉砕要素のない混合機中に入れ、化合
物Ａを２重量％含むアセトン液５０部を混合機を回転さ
せながら該粒状肥料に含浸させた後、風乾によりアセト
ンを除去することにより、農薬含有肥料組成物（農薬有
効成分量を０．１重量％含有）を得る。

【００１７】製造例２ 粒状肥料（住友化学工業（株）製、Ｎ−Ｐ₂ Ｏ₅ −Ｋ₂
Ｏ＝１４％−１４％−１４％、粒度１．４ｍｍ〜２．６
ｍｍ）９８５部を粉砕要素のない混合機中に入れ、混合
機を回転させながらポリビニールアルコールを２重量％
含む水溶液２５０部をスプレー後、化合物Ｂを２０重量
％含有する水溶剤（日本農薬（株）製の市販品）１０部
を投入し粒状肥料に均一に付着させ、これを乾燥するこ
とにより、農薬含有肥料組成物（農薬有効成分を０．２
重量％含有）を得る。

【００１８】製造例３ 化合物Ｂを２０重量％含有する水溶剤の代わりに化合物
Ｃを１０重量％含有する水溶剤（武田薬品工業（株）製
の市販品）を使用する以外は、製造例２と同様にして農
薬含有肥料組成物（農薬有効成分量を０．１重量％含
有）を得る。

【００１９】製造例４ 有機質を含む粒状肥料（住友化学工業（株）製、Ｎ−Ｐ
₂ Ｏ₅ −Ｋ₂ Ｏ＝７％−１０％−４％）９９２部及び化
合物（Ａ）を２重量％含有する粒剤（日本バイエルアグ
ロケム（株）製の市販品）８部をミキサーに入れ、混合
しつつ粉状化させる。該混合物に水２５部を加えて攪拌
した後、押し出し造粒し、この造粒物を乾燥することに
より、約４ｍｍの棒状農薬含有肥料組成物（農薬有効成
分量を０．０１６重量％含有）を得る。

【００２０】製造例５ 化合物Ｄを０．７５部、粉状肥料（Ｎ−Ｐ₂ Ｏ₅ −Ｋ₂
Ｏ＝１４％−１４％−１４％）９９９．２５部を混合機
中に入れ、２０分間混合する。次いで、該混合物を皿型
造粒機を用いて転動させながら、水をスプレーして粒状
に造粒後、得られる顆粒を乾燥することにより農薬含有
肥料組成物（農薬有効成分を０．０７５重量％含有）を
得る。

【００２１】製造例６ 化合物Ｄに代えて化合物Ｅを使用する以外は製造例５と
同様にして、農薬含有肥料組成物（農薬有効成分を０．
０７５重量％含有）を得る。

【００２２】試験例１ ビニルハウス内において、畝立て（条間１２０cm、畝上
面の幅８０cm、高さ１５cm）を行い、３ｋｇ／ａ（農薬
有効成分量として３ｇ／ａ、Ｎ成分量として４２０ｇ／
ａ、Ｐ成分量として４２０ｇ／ａ、Ｋ成分量として４２
０ｇ／ａ）相当の製造例１に準じて製造された農薬含有
肥料組成物及び１３ｋｇ／ａ（Ｎ成分量として１．８２
ｋｇ／ａ、Ｐ成分量として１．８２ｋｇ／ａ、Ｋ成分量
として１．８２ｋｇ／ａ）相当の肥料組成物を畝上面に
均一に散布後、小型耕うん機を用いて深さ約１５cmまで
攪拌混和した。次いで該畑地作土にサイトウ（品種：キ
ャニオン）苗を定植した。その後、栽培を継続し、定植
２１日目に調査を行った。本発明方法での処理区、比較
区及び農薬無処理区ともにアブラムシの自然発生が認め
られなかったので、各区ともに、夫々、アブラムシが多
数寄生したサイトウの葉を、該定植苗に隣接して配置し
（以下、アブラムシ接種と記す）、定植４２日、７０
日、８５日目に、寄生アブラムシ数を調査した。試験は
１区１６株、４．８ｍ² 、３反復制で行い、調査は中央
４株について株全体を対象とし、１株当りの平均値を求
めた。尚、比較区として、上記の農薬含有肥料組成物及
び肥料組成物の代わりに、１６ｋｇ／ａ（Ｎ成分量とし
て２．２４ｋｇ／ａ、Ｐ成分量として２．２４ｋｇ／
ａ、Ｋ成分量として２．２４ｋｇ／ａ）相当の肥料組成
物用い、定植直前に、化合物Ａを有効成分として１重量
％含有する農薬粒剤３００ｇ／ａ（農薬有効成分量とし
て３ｇ／ａ）相当を深さ約１０ｃｍの苗の植穴に施用
（１穴当たり０．９ｇ）すること以外は、上記と同様の
方法でサイトウ苗の定植、栽培、調査を行なった。また
農薬無処理区として、上記農薬含有肥料組成物及び肥料
組成物の代わりに、１６ｋｇ／ａ（Ｎ成分量として２．
２４ｋｇ／ａ、Ｐ成分量として２．２４ｋｇ／ａ、Ｋ成
分量として２．２４ｋｇ／ａ）相当の肥料組成物を用い
ること以外は、上記と同様の方法でサイトウ苗の定植、
栽培、調査を行った。結果を表１に示す。表１から明ら
かなように本発明方法での処理区ではサイトウ苗の定植
後約３ヶ月経過後においても、比較区及び農薬無処理区
と比較して、アブラムシの発生の顕著な抑制が認められ
た。

【００２３】

【表１】

【００２４】試験例２ （ミナミキイロアザミウマに対
する防除効果） 圃場において、畝立て（条間１２０cm、畝上面の幅８０
cm、高さ１５cm）を行い、３ｋｇ／ａ（農薬有効成分量
として３ｇ／ａ、Ｎ成分量として４２０ｇ／ａ、Ｐ成分
量として４２０ｇ／ａ、Ｋ成分量として４２０ｇ／ａ）
相当の製造例１に準じて製造された農薬含有肥料組成
物、及び肥料組成物４３．０ｋｇ／ａ（Ｎ成分量として
６．０２ｋｇ／ａ、Ｐ成分量として６．０２ｋｇ／ａ、
Ｋ成分量として６．０２ｋｇ／ａ）相当を畝上面に均一
に散布後、小型耕うん機を用いて深さ約１５cmまで攪拌
混和した。次いで該畑地作土にピーマン（品種：翠玉２
号）苗を定植した。その後、栽培を継続し、定植後２
２、４２、５７日目に、自然発生したミナミキイロアザ
ミウマの個体数を調査した。試験は１区６株、３．６ｍ
² 、３反復制で行い、調査は全株について１株当たり１
葉を対象とし、１株当りの平均値を求めた。尚、農薬無
処理区として、農薬含有肥料組成物及び肥料組成物の代
わりに４６．０ｋｇ／ａ（Ｎ成分量として６．４４ｋｇ
／ａ、Ｐ成分量として６．４４ｋｇ／ａ、Ｋ成分量とし
て６．４４ｋｇ／ａ）相当の肥料組成物を用いること以
外は、上記と同様の方法でピーマン苗の定植、栽培、調
査を行った。結果を表２に示す。表２から明らかなよう
に本発明方法での処理区ではピーマン苗の定植後約２ヶ
月経過後においても、ミナミキイロアザミウマの発生の
顕著な抑制が認められた。

【００２５】

【表２】

【００２６】試験例３ ビニルハウス内において、畝立て（条間１２０cm、畝上
面の幅８０cm、高さ１５cm）を行い、２０ｋｇ／ａ（農
薬有効成分量として３ｇ／ａ、Ｎ成分量として２．８ｋ
ｇ／ａ、Ｐ成分量として２．８ｋｇ／ａ、Ｋ成分量とし
て２．８ｋｇ／ａ）相当の製造例３に準じて製造された
農薬含有肥料組成物を畝上面に均一に散布後、小型耕う
ん機を用いて深さ約１５cmまで攪拌混和した。次いで該
畑地作土にトマト（品種：瑞栄）苗を定植した。その
後、栽培を継続し、定植後７、２１、３５日目に、自然
発生したタバココナジラミ成虫の個体数を調査した。試
験は１区６株、３．６ｍ² 、２反復制で行い、調査は３
株について１株当たり５葉を対象とし、１株当りの平均
値を求めた。尚、農薬無処理区として、農薬含有肥料組
成物の代わりに、２０ｋｇ／ａ（Ｎ成分量として２．８
ｋｇ／ａ、Ｐ成分量として２．８ｋｇ／ａ、Ｋ成分量と
して２．８ｋｇ／ａ）相当の農薬を含有しない肥料組成
物を用いること以外は、上記と同様の方法でトマト苗の
定植、栽培、調査を行った。結果を表３に示す。表３か
ら明らかなように本発明方法での処理区ではトマト苗の
定植後約１ヶ月経過後においてもタバココナジラミの発
生の顕著な抑制が認められた。

【００２７】

【表３】

【００２８】試験例４ 圃場において、畝立て（条間１５０cm、畝上面の幅１１
０cm、高さ２５cm）を行い、３ｋｇ／ａ（農薬有効成分
量として３ｇ／ａ、Ｎ成分量として４２０ｇ／ａ、Ｐ成
分量として４２０ｇ／ａ、Ｋ成分量として４２０ｇ／
ａ）相当の製造例１に準じて製造された農薬含有肥料組
成物、及び肥料組成物４０ｋｇ／ａ（Ｎ成分量として
５．６ｋｇ／ａ、Ｐ成分量として５．６ｋｇ／ａ、Ｋ成
分量として５．６ｋｇ／ａ）相当を畝上面に均一に散布
後、小型耕うん機を用いて深さ約２０cmまで攪拌混和
し、該地作土の表面をビニルマルチで被覆した。次いで
該畑地作土にナス（品種：千両２号）苗を定植した。そ
の後、栽培を継続し、定植後１１６、１２３日目に、自
然発生した寄生アブラムシの個体数を調査した。試験は
１区７株、６．３ｍ² 、３反復制で行い、調査は中央５
株について１株当たり１葉を対象とし、１株当りの平均
値を求めた。尚、農薬無処理区として、農薬含有肥料組
成物及び肥料組成物の代わりに、４３ｋｇ／ａ（Ｎ成分
量として６．０２ｋｇ／ａ、Ｐ成分量として６．０２ｋ
ｇ／ａ、Ｋ成分量として６．０２ｋｇ／ａ）相当の肥料
組成物を用いること以外は、上記と同様の方法でナス苗
の定植、栽培、調査を行った。結果を表４に示す。表４
から明らかなように本発明方法での処理区ではナス苗の
定植後約４ヶ月経過後においてもアブラムシの発生の顕
著な抑制が認められた。

【００２９】

【表４】

【００３０】試験例５ ビニルハウス内において、木枠（幅１００cm×長さ２０
０cm）で側面を囲って畑地作土を高さ約３０cmになるよ
うに充填し、１．５ｋｇ／ａ（農薬有効成分量として
１．５ｇ／ａ、Ｎ成分量として２１０ｇ／ａ、Ｐ成分量
として２１０ｇ／ａ、Ｋ成分量として２１０ｇ／ａ）相
当の製造例１に準じて製造された農薬含有肥料組成物、
及び肥料組成物１８．５ｋｇ／ａ（Ｎ成分量として２．
５９ｋｇ／ａ、Ｐ成分量として２．５９ｋｇ／ａ、Ｋ成
分量として２．５９ｋｇ／ａ）相当を土壌表面に均一に
散布後、小型耕うん機を用いて深さ約２０cmまで攪拌混
和した。次いで該畑地作土にキャベツ（品種：四季穫）
苗を定植した。その後、定植後７、３１、５２日目にア
ブラムシ接種を行い、定植後３５、５６、７０日目に、
寄生アブラムシの個体数（１株当たりの寄生数）を調査
した。試験は１区４株、２ｍ² 、２反復制で行い、調査
は全株を対象とし、１株当りの平均値を求めた。尚、農
薬無処理区として、農薬含有肥料組成物及び肥料組成物
の代わりに、２０ｋｇ／ａ（Ｎ成分量として２．８０ｋ
ｇ／ａ、Ｐ成分量として２．８０ｋｇ／ａ、Ｋ成分量と
して２．８０ｋｇ／ａ）相当の肥料組成物を用いること
以外は、上記と同様な方法でキャベツ苗の定植、栽培、
調査を行った。結果を表５に示す。表５から明らかなよ
うに本発明方法での処理区ではキャベツ苗の定植後７０
日経過後においてもアブラムシの発生の顕著な抑制が認
められた。

【００３１】

【表５】

【００３２】試験例６ 圃場において、畝立て（条間１２０cm、畝上面の幅８０
cm、高さ１５cm）を行い、２０ｋｇ／ａ（農薬有効成分
量として３ｇ／ａ、Ｎ成分量として１．４ｋｇ／ａ、Ｐ
成分量として２ｋｇ／ａ、Ｋ成分量として０．８ｋｇ／
ａ）相当の製造例４に準じて製造された農薬含有肥料組
成物を畝の谷部分に均一に散布後、畝の谷部分に畑地作
土を３０cm盛り上げ畝立てした。農薬含有肥料組成物処
理後９５日目に、該畝面の畑地作土にタバコ（品種：Ｍ
Ｃ１号）苗を定植した。その後、栽培を継続し、定植後
４９、６３、６８日目に、自然発生した寄生アブラムシ
の個体数を調査した。試験は１区４８５株、２６０
ｍ² 、１反復制で行い、調査は２０株について１株当た
り１０葉を対象とし、１株当りの平均値を求めた。尚、
農薬無処理区として、農薬含有肥料組成物の代わりに、
２０ｋｇ／ａ（Ｎ成分量として１．４ｋｇ／ａ、Ｐ成分
量として２ｋｇ／ａ、Ｋ成分量として０．８ｋｇ／ａ）
相当の農薬を含有しない肥料組成物を用いること以外
は、上記と同様な方法でタバコ苗の定植、栽培、調査を
行った。結果を表６に示す。表６から明らかなように本
発明方法での処理区ではタバコ苗の定植後約２ヶ月経過
してもアブラムシの発生の顕著な抑制が認められた。

【００３３】

【表６】

【００３４】

【発明の効果】本発明により、殺虫化合物の残効が著し
く延長し、栽培後期まで殺虫化合物の効果を維持するこ
とが可能となり、従って、総翅目、コナジラミ類及びア
ブラムシ類に代表される畑地害虫を１回の施用によって
充分に防除でき、しかも施肥効果をも発揮できることか
ら、畑地作物の栽培における大巾な省力化を図ることが
できる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平岡 洋 兵庫県加西市岸呂町塩ノ山636の２ 住友 化学工業株式会社内 (72)発明者 岡田 昭二 兵庫県宝塚市高司４丁目２番１号 住友化 学工業株式会社内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】農薬成分としての、水溶解度が１００ｐｐ
   ｍ以上であるニトロメチレン系、ニトロイミノ系及びシ
   アノイミノ系殺虫化合物からなる群より選ばれる１種以
   上と、肥料成分とを含有する農薬含有肥料組成物を、畑
   地作土における種子の播種部又は苗の定植部の深層に施
   用した後、該畑地作土に畑作物の種子を播種するか又は
   苗を定植することを特徴とする畑作害虫の防除方法。
2. 【請求項２】殺虫化合物が下記の群より選ばれる１種以
   上である請求項１に記載の防除方法。 １−（６−クロロ−３−ピリジルメチル）−Ｎ−ニトロ
   −イミダゾリジン−２−イリデンアミン （Ｅ）−Ｎ−（６−クロロ−３−ピリジルメチル）−Ｎ
   −エチル−Ｎ’−メチル−２−ニトロビニリデンジアミ
   ン （Ｅ）−Ｎ¹ −〔（６−クロロ−３−ピリジル）メチ
   ル］−Ｎ² −シアノ−Ｎ¹−メチルアセトアミジン １−（２−クロロ−５−チアゾリルメチル）−３−メチ
   ル−２−ニトログアニジン １−（２−クロロ−５−チアゾリルメチル）−３，５−
   ジメチル−２−ニトロイミノ−ヘキサヒドロ−１，３，
   ５−トリアジン
3. 【請求項３】畑作害虫が総翅目、コナジラミ類及びアブ
   ラムシ類の１種以上である請求項１又は２に記載の防除
   方法。
4. 【請求項４】畑作害虫が総翅目である請求項１又は２に
   記載の防除方法。
5. 【請求項５】畑作害虫がミナミキイロアザミウマである
   請求項１又は２に記載の防除方法。