JPH10267869A - 仕事関数またはイオン化ポテンシャル測定装置 - Google Patents

仕事関数またはイオン化ポテンシャル測定装置

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JPH10267869A
JPH10267869A JP9070181A JP7018197A JPH10267869A JP H10267869 A JPH10267869 A JP H10267869A JP 9070181 A JP9070181 A JP 9070181A JP 7018197 A JP7018197 A JP 7018197A JP H10267869 A JPH10267869 A JP H10267869A
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久喜 藤川
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康訓 多賀
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 試料の仕事関数またはイオン化ポテンシャル
を正確に測定する。 【解決手段】 重水素ランプ1からの紫外線を分光器2
で分光し、試料5に照射する。生じた光電子を電子増倍
管13で検出する。試料5から光電子の放出が始まる波
長(エネルギー)に基づき仕事関数またはイオン化ポテ
ンシャルを求める。ここで、直流電源11により試料の
電位を固定し、ゴニオメータ9により試料5の位置を調
整し、NDフィルタ8により照射紫外線強度を調整する
などことによって、微小電流計11で計測される試料の
吸収電流を一定に保つことで、試料のチャージアップを
防止して、正確な仕事関数またはイオン化ポテンシャル
を測定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、試料に分光され
た紫外線を照射し、放出される光電子の収量を測定する
ことにより、試料の仕事関数またはイオン化ポテンシャ
ルを測定する仕事関数またはイオン化ポテンシャル測定
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体や誘電体を使った電子デバイス、
センサーなどにおいては、素子の構成要素の中に、pn
接合や金属電極と半導体の接合や誘電体とのショットキ
ー接合等が含まれる。これらの接合を正確に制御して素
子を作製することが、電気特性の優れた素子を作製する
のに重要な技術となる。ここで、pn接合やショットキ
ー接合の特性は、キャリア(電子、またはホール)が接
合を通るときの障壁高さで表される。そして、接合を構
成する材料の仕事関数またはイオン化ポテンシャルの差
が、障壁の高さに対応する。すなわち、仕事関数または
イオン化ポテンシャルの差そのものが直接障壁高さに一
致はしないが、障壁の高さと一定の関係がある。従っ
て、材料の仕事関数またはイオン化ポテンシャルの正確
な測定は、接合特性、接合の障壁高さを推測する上で必
要不可欠であり、電子デバイス、センサーの設計や特性
向上のためにも非常に重要である。
【0003】特に、最近では今までにない有機材料を用
いた有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)素子など
の材料開発において、透明電極であるITO(indi
um−tin−oxide)、有機膜、金属電極(Mg
Ag、MgIn、AlLi)の間の接合状態の解析が必
要であり、このためにそれぞれの仕事関数またはイオン
化ポテンシャル測定が重要である。すなわち、有機EL
素子の効率向上のためには、電極から注入されるキャリ
アに対する障壁高さを低くし、また発光領域では、キャ
リアに対する障壁を高くしてキャリアを閉じこめ、分子
を励起する確率を高くする必要がある。そこで、各接合
を形成する材料の仕事関数またはイオン化ポテンシャル
を測定し、各接合の障壁高さを制御することが、有機E
L素子の特性を制御する上で非常に重要なこととなって
いる。
【0004】このように、デバイス作製上必要なパラメ
ータである仕事関数またはイオン化ポテンシャルである
が、これを精度よく、かつ再現性よく測定することは困
難であった。仕事関数またはイオン化ポテンシャルを測
定する方法として、比較的エネルギーが高く、強力な紫
外線を試料に照射し、試料から放出される光電子のエネ
ルギースペクトルを分析することで、試料の価電子帯の
状態分布を測定する紫外線光電子分光法(UPS)と呼
ばれる方法がある。この方法によれば、試料の最外殻電
子に関与する電子状態を電子分光法で分析することで、
真空準位からのフェルミ準位や価電子帯の準位を算出
し、仕事関数またはイオン化ポテンシャルを求めること
ができる。この方法における光電子分光の精度を高める
ために、電子分光器のエネルギー分解能を高めたり(特
開平6−167465、特開平6−27058)信号の
増幅方法を改善する(特開平1−88241)といった
改良が提案されている。
【0005】また、別の方法として、測定物質に数eV
の分光した紫外線を試料に照射し、試料から放出される
光電子の収量を測定し、光電子放出が始まるときの励起
紫外線のエネルギー(閾値のエネルギー)を求めること
で、仕事関数またはイオン化ポテンシャルを算出するす
るものがある。この方法では、強力な紫外線光源が不要
である。この方法は、試料表面の汚染や傷の状態を調べ
る目的で、大気中で光電子の収量を測定するものとして
広く使用されている。この方法における大気中での光電
子検出のために、光電子検出器の電極に印加するパルス
電圧の印加方法などについて各種の提案がある(特開昭
55−159168、特開昭62−145395、Jour
nal of Applied Physics 46、 1553 (1975))。また、こ
の手法により、大気中での光電子検出が可能になったた
め、表面の汚染状態や膜厚の測定を光電子収量を測定す
ることで算出することも提案されている(特開昭62−
145395、特開平1−282407、特開平3−1
08648)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】紫外線光電子分光法
(UPS)では、強力な紫外光源が必要であり、加速器
を使った放射光を利用する場合もある。そのため、装置
が非常に大がかりになるという欠点がある。さらに、U
PSでは、試料に照射する励起光のエネルギーが数十e
Vであり、元素の内殻まで励起されてしまう。このた
め、価電子帯の状態分布を測定するのには適当な手法で
あるが、主に最外殻電子が関与する仕事関数またはイオ
ン化ポテンシャルといった物性値を評価するのには適し
ていない。さらに、分析中に照射する光源の強度が強い
ために、チャージアップにより試料の電位が変動してし
まい、精度や再現性のよい測定ができないといった問題
点もあった。
【0007】次ぎに、紫外線照射により測定物質から放
出される光電子の収量に基づいて、仕事関数またはイオ
ン化ポテンシャルを求める方法は、励起する紫外線のエ
ネルギーが数eVと小さいので、光電子放出は最外殻電
子のみを対象としており、目的とする仕事関数またはイ
オン化ポテンシャルを測定するのに適している。しかし
ながら、この手法でも、試料がチャージアップし、基準
の電位が正確に定まらず、精度のよい測定ができないと
いう問題があった。
【0008】さらに、光電子の放出は、試料に対する紫
外線の入射角、試料に対する検出器の検出角度によって
異なることがわかっている。従って、再現性のある測定
のためには、1つの状態についての測定においては、試
料の設置位置、角度を常に一定にすることが必要であ
る。このため、試料はいつも一定の位置に固定され、励
起光源、試料、光電子検出器の配置はいつも一定になる
ようになっている。一方、光電子収量の最も高い条件で
測定したり、チャージアップを防ぐためには、試料の取
り付け角度の調整が重要である。しかし、通常の装置で
は、試料の設置位置を変えることができないため、必ず
しも最適な条件での測定が実施されていなかった。
【0009】また、一般的な問題点として、光を試料に
照射する系では、試料表面で反射した光がまわりの容器
の内壁にあたり、そこから光電子が放出されノイズ源と
なるという問題がある。特に、感度の高い光電子検出装
置を用いるほど、このような試料以外から放出される光
電子がバックグラウンドのノイズとなっていた。
【0010】さらに、大気中での光電子検出器の開発に
よって、大気中で簡単に仕事関数またはイオン化ポテン
シャルを測定することが可能になった。しかし、一般的
に、大気中に放置された試料表面は、酸化されたり、炭
化水素で汚染されている。このため、大気中での測定で
は、表面の酸化層、汚染層からの光電子放出を測定する
ことになり、試料そのものの特性を測定することはでき
ないという問題があった。
【0011】本発明は、試料の仕事関数またはイオン化
ポテンシャルを高精度にまた再現性よく測定できる仕事
関数またはイオン化ポテンシャル測定装置を提供するこ
とを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、試料の仕事関
数またはイオン化ポテンシャル試料から放出される光電
子の収量を測定する試料の光電子検出装置であって、試
料が取り付けられ、試料の位置を調整可能な試料台と、
試料に向けて分光された紫外線を照射する紫外線源と、
試料から発生する光電子を検出する光電子検出器と、上
記試料における吸収電流を検出する吸収電流検出器と、
を有し、吸収電流の検出結果に基づき試料に照射される
紫外線の強度を調節すると共に、試料台により試料位置
を調整することにより吸収電流を調整し、この状態にお
いて光電子検出器の検出結果に基づき試料の仕事関数ま
たはイオン化ポテンシャルを測定することを特徴とす
る。
【0013】本発明では、試料の仕事関数またはイオン
化ポテンシャルを測定するために試料に紫外線を照射
し、試料の最外殻電子を主に励起する。そこで、紫外線
(特に数eV程度)で試料を励起し、放出される光電子
を測定する。
【0014】ここで、仕事関数またはイオン化ポテンシ
ャル測定の精度、再現性を悪化させている第1の原因
は、励起用の紫外線を照射したときに起こるチャージア
ップである。すなわち、このチャージアップにより、試
料の基準電位(通常は、0Vに接地)が変動するため
に、精度や再現性のよい測定ができない。このチャージ
アップを防ぎ、精度よく再現性のよい測定を行うために
は、試料に流れ込む(試料から放出される)光電子を一
定にする必要がある。そこで、試料における吸収電流を
測定し、紫外線の強度や試料の配置を変えることで、吸
収電流を一定になるようにしている。なお、試料に照射
する紫外光の強度を一定にするために、紫外光を分光し
たあと試料までの光路中にフォトダイオードなどの光検
出器を設置して、光の強度をモニターし、光源に対して
フィードバックをかけることも好適である。また、試料
の電位を外部から直流バイアスを印加し、強制的に、試
料を一定の電圧にすることも好適である。
【0015】また、試料台は、ここに取り付けた試料の
位置を変更可能である。例えば、試料台自体が、その位
置を変更してその位置を平行移動できるようにXYZの
移動機構と、励起光や光電子の検出器への角度を変化で
きるように回転機構(θ)がついたゴニーメータを用い
ることが好適である。これによって、いつも同じ位置で
測定ができるとともに、測定の最適な条件(チャージア
ップが少なく、光電子の収量が最も多い)での測定が可
能になる。
【0016】さらに、試料で反射した光が、試料台が設
置される容器の内壁にあたり、試料以外から光電子が放
出されノイズになるという問題に対しては、容器の内壁
を光電子を放出しにくい材料であるSiO2やAl23
のセラミック被覆の防着板でおおうことが好適である。
これによって、試料周囲の物質からのノイズとなる光電
子の放出を防ぐことができる。また、試料に照射された
紫外線の反射光が光電子検出器に直接入らないように遮
蔽板をおくことも好ましい。
【0017】さらに、試料表面の汚染を防ぐためには、
測定を真空容器中で行うことが必要である。そして、試
料を設置する容器である測定用の真空容器と、試料を形
成するための成膜用の真空容器を試料搬送機構で結びつ
けるとよい。これによって、試料の表面を大気にさらし
て汚染させることなく、成膜後の試料を分析することが
可能になる。そのとき、分析中、試料の成膜中で真空度
(真空の質)は、試料の表面の状態をかえる要因と考え
られるので、分圧モニターで常に真空の質を観察し、こ
れを所定値に維持することも好適である。また、試料の
膜厚を制御するために、水晶振動子型の膜厚計を備え、
膜圧を制御するとよい。さらに、有機膜などのダメージ
の入りやすい材料を成膜して試料を作成する場合には、
抵抗加熱やKセルを利用した真空蒸着法を採用する。K
セルを用いることで、蒸着源の温度を制御しながら蒸着
が可能になり、常に一定の蒸着速度で成膜することがで
きる。特に、有機材料の蒸着では、比較的低い温度で蒸
発が始まり、その蒸着速度を制御することが困難である
ので、Kセルで温度制御しながら成膜することが実験の
再現性向上に役立つ。
【0018】また、試料作製時の基板の表面状態は、作
製される膜の配向性、結晶性などに大きな影響を与える
ので、基板の清浄化を成膜前にできるようにイオン源を
設け、これによって基板の清浄化を図ることが望まし
い。また、基板表面や膜表面の結晶状態、組成を観察で
きる電子線反射回折装置(RHEED)、オージェ電子
分光装置(AES)を備え、基板や試料の表面状態を監
視することが好ましい。
【0019】試料の仕事関数またはイオン化ポテンシャ
ルの測定においては、試料の表面の汚染がないことが前
提である。しかし、成膜チャンバーにガス導入機構を付
加すれば、試料に強制的にガスを吸着させることがで
き、デバイス作製上問題となるガス吸着と仕事関数また
はイオン化ポテンシャルの関係を調べることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態(以下
実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0021】「実施形態1」図1は、実施形態1に係る
仕事関数またはイオン化ポテンシャル測定装置の概略構
成図である。一般的な材料の仕事関数またはイオン化ポ
テンシャルは、3−6eV程度である。そこで、紫外線
源である重水素ランプ1は、そのエネルギー(3−6e
V)に対応する400−200nmの波長の光を発生す
る。分光器2は、重水素ランプ1において発生された光
を分光し、所望の波長の光を通過させる。分光器2の前
後には、一対の溶融形成された合成石英レンズ3a、3
bが配置されている。この合成石英レンズ3aは重水素
ランプ1からの光をほぼ平行光として分光器2に入射さ
せ、合成石英レンズ3bは分光器2において分光された
光を集光する。そして、合成石英レンズ3bにより集光
された光が同じく溶融石英で形成された石英窓4を通し
て、真空容器16内の試料5に照射される。このように
して、分光された紫外線が試料5に照射される。
【0022】このとき、分光器2で分光した光の一部を
ハーフミラー6で反射させ、その光の強度を光検出器7
でモニターする。また、試料5へ照射される励起用の光
強度を一定するようにNDフィルタ8で光強度を調整す
る。なお、NDフィルタ8は分光選択吸収を示さないフ
ィルターである。従って、光路に挿入する部分を回転さ
せることで、減衰量を調整することができる。光検出器
7の検出値に基づいてNDフィルタ8を回転させること
で、試料5に照射される光の強度をフィードバック制御
している。また、重水素ランプ1の発光強度も制御して
いる。
【0023】試料5は、試料台としてのゴニオメータ9
にセットされる。すなわち、ゴニオメータ9は、XYZ
とθ機構を有しており、真空容器16内で上下左右に移
動可能でると共に、水平平面内において回転可能になっ
ている。
【0024】試料5には、ここにおける吸収電流(試料
電流)を測定するための微小電流計10と、試料5の電
位を一定にするための直流電源11が接続されている。
そして、測定の度に、微小電流計10でモニターする試
料の吸収電流を一定にするように、重水素ランプ1の光
量、NDフィルタ8での減衰量、ゴニオメータ9による
試料5への光線照射位置を調整をする。また、真空容器
16の内壁には、仕事関数が非常に大きく、光電子放出
がほとんどないSiO2のセラミックで被覆した防着板
で覆っている。なお、真空容器16内において、紫外線
が入射する可能性のある箇所はできる限りSiO2など
の光電放出のほとんどない物質で被覆しておくことが好
ましい。また、SiO2の代わりにAl23などを利用
してもよい。また、試料5に照射された紫外線の反射光
が光電子検出器である電子増倍管13に直接入らないよ
うに遮蔽板をおくことも好ましい。
【0025】試料5から放出された光電子は、高圧電源
12から数kVの電圧が印加された電子増倍管13で1
6〜107倍に増幅される。ここ増幅された電子は、パ
ルスとして検出され、パルスカウンティングユニット1
4でパルスの数を計測される。このパルスカウンティン
グユニット14において得られたパルス数が光電子の収
量となる。そして、パーソナルコンピュータ15に光電
子収量(パルス数)と分光器2における波長のデータが
転送され、励起光の波長(エネルギー)と光電子の収量
の関係が算出される。そして、得られたエネルギーと光
電子収量に関係から、光電子放出が始まるときのエネル
ギーを求めることで、試料の仕事関数またはイオン化ポ
テンシャルを求める。
【0026】「実施形態2」実施形態2の装置の構成を
図2に示す。この実施形態では、実施形態1の構成に成
膜用の真空容器17が、試料搬送機構18とゲートバル
ブ19を用いて接続されている。真空容器16は、実施
形態1に示した測定の精度、再現性を向上させる構成に
なっている。これらの真空容器16、17は、10-6
10-10Torrの真空度に真空排気されている。そし
て、成膜用の真空容器17で試料5を作製したあと、ゲ
ートバルブ19を開き、試料搬送機構18を用いて、仕
事関数またはイオン化ポテンシャルを測定するための真
空容器16へ移動させ仕事関数またはイオン化ポテンシ
ャルの測定を行う。従って、試料5を大気にさらすこと
がなく、試料5の表面の酸化、汚染がない状態での測定
ができる。
【0027】ここで、成膜用の真空容器17内での試料
5の成膜は蒸発源20から膜材料を蒸発させる真空蒸着
で行うが、膜にダメージが入らないように蒸発源20に
は抵抗加熱やKセルを用いる。特に、ダメージに弱い有
機膜などの形成の際には、このような蒸発源20を採用
することが必要である。このとき、試料5の膜厚を膜厚
計21でモニターし、蒸着量を制御して膜厚を制御す
る。膜厚計21としては例えば水晶振動式のものが採用
される。また、シャッタなどを設け、蒸発物を制御する
ことによって、蒸着量を制御することができる。
【0028】また、真空蒸着の際には、真空容器の真空
度によって試料の膜質が大きく変わる。このため、分圧
計22で真空度と分圧(特に、水の分圧)を測定し、こ
れらを常に一定の状態にして蒸着を行う。さらに、基板
の表面状態、結晶状態によっても膜質は変化するので、
イオンガン23で基板を清浄にし、RHEED装置24
で基板表面の結晶状態を検出すると共に、AES装置2
5で基板表面の汚染がないことを確認したあと成膜を行
う。RHEED装置24、AES装置25は、成膜した
試料5の表面の結晶状態、元素分析にも使用し、成膜条
件のばらつきで試料の特性を変化することがないように
する。このようにして、所望の試料5が得られ、これが
仕事関数またはイオン化ポテンシャル測定用の真空容器
16に移送される。従って、本実施形態2の装置によ
り、試料5の表面の酸化、汚染がない状態で、試料5の
物性本来の仕事関数またはイオン化ポテンシャルを精
度、再現性よく測定できる。
【0029】
【実施例】図1に示した装置により、半導体材料である
p型Si(単結晶)の仕事関数を測定した実施例を図3
に示し、図2に示した装置により、有機EL素子などに
用いられる有機膜のAlq3(トリス(8−ヒドロキシ
キノリン)アルミニウム)のイオン化ポテンシャルを測
定した実施例を図4に示す。
【0030】高抵抗のp−Siを洗浄し、希ふっ酸で表
面の酸化膜を除去した試料5を用い、図1に示した装置
により試料5の仕事関数を測定した。試料5であるSi
の表面は、大気中では徐々に酸化され、仕事関数が低い
値にシフトし、光電子の収量も低下する。しかし、この
測定では、図3に示すように、光電子収量の立ち上がり
のエネルギーから4.96eVと清浄表面のSiの仕事
関数が求められた。
【0031】このとき、真空容器16の内壁に光電子放
出がほとんどないSiO2セラミック被覆しているた
め、ノイズレベルが数cpsと非常に低く、正確に光電
子放出の立ち上がりのエネルギーが算出できた。さら
に、長時間繰り返しの測定を行っても、真空中での測定
のため表面の酸化が防止されるため、再現性が高い測定
ができた。繰り返しの測定時には、図1の構成に示すよ
うに、試料5の吸収電流、光源の強度を一定にすること
で、ばらつきを±0.03eV以内にでき高い再現性を
確保できた。
【0032】Alq3薄膜は、図2の装置で測定した。
まず、試料5であるSi基板をイオンガン23で清浄化
し、清浄表面ができていることをRHEED装置24、
AES装置25で確認したあと、Alq3を真空蒸着し
た。膜厚は、膜厚計21でモニターして70nmとし
た。このとき、分圧計22で水の分圧が10-8Torr
以下であることを確認した。成膜後、試料搬送機構18
で仕事関数またはイオン化ポテンシャル測定用の真空容
器16に搬送し、ゴニオメーター9で位置を正確に固定
し、光電子を検出する電子増倍管13に反射した紫外線
が入らないように試料5の角度を調節した。微小電流計
10の測定値に基づき、試料5の吸収電流が一定になる
ように、照射紫外線強度を調整して測定した結果、図4
に示すように、イオン化ポテンシャルとして5.36e
Vが得られた。このときの、繰り返しのデータのばらつ
きは、±0.03eV以下であり、高い再現性が確保で
きた。
【0033】基板を清浄化しなかったり、試料5を成膜
した後、大気にさらした場合には、測定値が0.3−
0.5eV変動して精度のよい測定はできなっかった。
これより、図2に示した構成を用いなければ、正確な材
料の仕事関数またはイオン化ポテンシャルが求められな
いことは明らかである。
【0034】「実施形態の効果」以上説明したように、
本発明によれば、試料に流れ込む吸収電流を測定するこ
と、試料に強制的に直流バイアスを印加すること、試料
に当たる紫外光の光量を一定にすることで、チャージア
ップを防止して試料5を常に一定の状態にすることがで
き、精度、再現性に優れた測定が可能になる。また、試
料5の設置位置を調整する機構を付加することでも、チ
ャージアップを防ぐことができ、測定の精度、再現性を
向上させることができる。
【0035】また、試料5を取り囲む真空容器16の内
壁を仕事関数またはイオン化ポテンシャルが非常に大き
く光電子放出がないSiO2、Al23を被覆すること
で、試料5以外から放出される光電子を減らすことがで
き、ノイズレベルを下げることができる。
【0036】仕事関数またはイオン化ポテンシャルの測
定を真空中で実施し、試料作製用の真空容器17と測定
用の真空容器16を試料搬送機構18で結合することに
より、試料5を大気にさらさずに移送することができ
る。従って、試料5の表面が酸化したり、炭化水素で汚
染されたりすることがない。このため、試料5そのもの
の特性を評価できる。また、基板を清浄化し、基板表面
の結晶状態、元素分析を実施し、また、成膜時には、膜
質の変動の要因である真空度(分圧)を制御すること
で、繰り返し成膜を実施しても、再現性のよい試料作製
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る仕事関数またはイオ
ン化ポテンシャル測定装置の構成を示す図である。
【図2】 成膜用の真空容器を接続した仕事関数または
イオン化ポテンシャル測定装置の構成を示す図である。
【図3】 清浄なp−Siの励起光エネルギーと光電子
収量の関係を示す図である。
【図4】 清浄なAlq3の励起光エネルギーと光電子
収量の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 重水素ランプ、2 分光器、3 合成石英レンズ、
4 合成石英窓、5試料、6 ハーフミラー、7 光検
出器、8 NDフィルタ、9 ゴニオメーター、10
微小電流計、11 直流電源、12 高圧電源、13
電子増倍管、14 パルスカウンティングユニット、1
5 パーソナルコンピュータ、16,17 真空容器、
18 試料搬送機構、19 ゲートバルブ、20 蒸発
源、21 膜厚計、22 分圧計、23 イオンガン、
24 RHEED装置、25AES装置。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料から放出される光電子の収量を測定
    することにより試料の仕事関数またはイオン化ポテンシ
    ャルを測定する仕事関数またはイオン化ポテンシャル測
    定装置であって、 試料が取り付けられ、試料の位置を調整可能な試料台
    と、 試料に向けて分光された紫外線を照射する紫外線照射部
    と、 試料から発生する光電子を検出する光電子検出器と、 上記試料における吸収電流を検出する吸収電流検出器
    と、 を有し、 吸収電流の検出結果に基づき試料に照射される紫外線の
    強度を調節すると共に、試料台により試料位置を調整す
    ることにより吸収電流を調整し、この状態において光電
    子検出器の検出結果に基づき試料の仕事関数またはイオ
    ン化ポテンシャルを測定することを特徴とする仕事関数
    またはイオン化ポテンシャル測定装置。
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