JPH10251986A - 漂白パルプの製造方法 - Google Patents

漂白パルプの製造方法

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JPH10251986A
JPH10251986A JP4886897A JP4886897A JPH10251986A JP H10251986 A JPH10251986 A JP H10251986A JP 4886897 A JP4886897 A JP 4886897A JP 4886897 A JP4886897 A JP 4886897A JP H10251986 A JPH10251986 A JP H10251986A
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pulp
bleaching
oxygen
acid treatment
stage
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JP4886897A
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Yosuke Uchida
洋介 内田
Takahiro Yamamoto
高廣 山本
Makoto Iwasaki
誠 岩崎
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Oji Paper Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 木材を蒸解して得られる未漂白パルプ或いは
該未漂白パルプを更に酸素とアルカリで脱リグニンした
パルプを、酸素含有ガスによる加圧下で酸で処理するこ
とにより、パルプ繊維中のリグニンを大幅に除去し、更
にその後の漂白薬品による一段或いは多段漂白におい
て、パルプの収率を損なうことなくパルプの漂白性を顕
著に改善し、所望の白色度に漂白するのに必要な漂白薬
品の使用量を大幅に削減しうる漂白パルプの製造方法の
提供。 【解決手段】 木材を状改易を用いて蒸解した後に得ら
れるパルプを漂白薬品を用いて一段或いは多段漂白し、
漂白パルプを製造する方法において、漂白薬品で漂白す
るに先立ち、未漂白パルプ或いは該未漂白パルプを酸素
とアルカリで脱リグニンしたパルプを、酸素含有ガスに
よる加圧下で酸処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、木材から漂白パル
プを製造する方法に関する。更に詳しく述べれば、本発
明は、木材を蒸解した後に洗浄して得られる未晒パルプ
を、漂白薬品で漂白して漂白パルプを製造する方法であ
って、漂白薬品による漂白に先立ち酸素とアルカリによ
り酸素脱リグニンせずに、或いは酸素とアルカリにより
酸素脱リグニンした後、該パルプを酸素含有ガスによる
加圧下で酸水溶液で処理し、それによって、漂白でのパ
ルプ収率を減少させることなく漂白性を改善し、所望の
白色度にパルプを漂白するのに必要な漂白薬品使用量を
大幅に削減し得る漂白パルプの製造方法に関する。
【0002】木材を製紙原料として多くの用途に使用す
るためには、木材を蒸解液で蒸解し、薬品の化学作用に
よってパルプ化した後、或いは木材の場合は木材チップ
をリファイナー等を用いて機械的作用によってパルプ化
した後、得られるパルプを漂白薬品で漂白して白色度を
高める必要がある。例えば、木材チップをクラフト蒸解
液で蒸解して得られるクラフトパルプは包装資材のよう
に強度を必要とする用途に使う場合を除いて、通常、酸
素とアルカリにより酸素脱リグニンされた後、或いは酸
素とアルカリにより酸素脱リグニンされないまま、塩
素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、酸素、オゾン、過酸化
水素、苛性ソーダ等の漂白剤及び漂白助剤からなる選ば
れた漂白薬品により1段乃至は多段シーケンスで漂白さ
れ、パルプに含まれる着色原因物質であるリグニン等が
除去され、ハンター白色度が70〜90%の範囲の半晒
クラフトパルプ乃至完全漂白クラフトパルプとして使用
されるのが一般的である。
【0003】半晒パルプは、未漂白パルプを次亜塩素酸
塩で1段で漂白し、黄色を強調したハンター白色度が7
0%未満のパルプとし包装用紙、封筒、事務用袋として
用いられる場合を除き、通常は酸素脱リグニン無しに、
或いは酸素脱リグニンした後に2〜3段で漂白を行いハ
ンター白色度で70〜80%に仕上げて、例えば新聞を
製造する際のつなぎパルプとして用いられる。しかしな
がら、未漂白パルプからハンター白色度で80〜90%
の完全漂白パルプを製造する場合は、漂白においてはパ
ルプ繊維自体の強度を或る程度維持することが必要であ
り、そのためパルプ繊維を構成するセルロース、ヘミセ
ルロース等の炭水化物の分解を最小限にとどめるよう
に、過激な1段の漂白を避け、漂白薬品と漂白条件を様
々に組み合わせて、温和に漂白する3〜6段の多段漂白
法を採用するのが一般的である。
【0004】従来から多段漂白法においては、パルプを
最初に塩素で処理し、パルプ中に含有されるリグニンを
塩素化し、リグニンに可溶性を付加した後、次にアルカ
リで塩素化リグニンを溶解抽出して、パルプ中からリグ
ニンを分離除去し、更に次亜塩素酸塩、二酸化塩素等を
使用し、残留する少量のリグニンを分解除去し、白色度
の高いパルプを得る方法が採られてきた。しかしなが
ら、近年、パルプの塩素化段からの漂白排水に含まれる
有機塩素化合物の環境への影響が懸念され、パルプ漂白
に原子状塩素を用いない漂白シーケンスについて盛んに
研究されてきている。又、次亜塩素酸塩を用いた場合も
パルプの漂白時にクロロホルムが生成し、環境に悪影響
を及ぼす可能性があることから、パルプ漂白に使用しな
い漂白シーケンスの模索が行われている。
【0005】現在、塩素や次亜塩素酸塩の代替として、
オゾン、酸素、及び過酢酸、過硫酸等の過酸等の酸素系
の漂白薬品が注目されている。しかしながら、これらの
薬品は、酸素と過酸化水素を除いては、薬品コストが高
く、又爆発性があるため取り扱いが困難であり、現在の
ところ一般に普及するまでには至っていないが、将来的
には有望な漂白方法である。現在、塩素や次亜塩素酸塩
と比較して、前記酸素系の漂白薬品は脱リグニンに対す
る選択性が低いために、過剰に反応を進めた場合には、
パルプ繊維の強度が低下するという問題があるので最適
な漂白シーケンスや条件の模索が継続されている。
【0006】一方、漂白後のパルプの白色度を一定に維
持しながら使用する漂白薬品そのものを減少させる方法
としては、蒸解時においてできるだけ脱リグニンを進
め、パルプのカッパー価を減少させる方法(例えば、
J.E.Jiang等、Appita、45(1)、19(199
2))、蒸解済みの未漂白パルプを酸素とアルカリによ
り酸素脱リグニンを施す方法或いは亜硝酸のような前処
理薬品を用いて酸素脱リグニン段において更に一層脱リ
グニンを進め、カッパー価をより減少させる方法(例え
ば、特開平4−316690号公報)、漂白の前にパル
プをキシラン分解酵素を用いて処理する方法(例えば、
特開平2−264087号公報)、漂白の前にパルプを
リグニン分解酵素を用いて処理する方法(例えば、特開
平4−316689号公報)等が提案されている。
【0007】しかしながら、前記の方法にはまだ改良の
余地が残されており、例えば蒸解時に脱リグニンを通常
の水準より進め、減少したカッパー価のパルプを得る方
法は、多くの場合、パルプ収率の低下やパルプ繊維の強
度低下の危険を伴う。酸素脱リグニン段で脱リグニンを
更に進めてパルプのカッパー価を減少させる方法も多く
の場合、パルプ繊維の強度低下の危険を伴う。又、漂白
に先立ち酵素処理によりパルプを前処理する方法は、反
応条件が比較的穏和であるためにパルプ強度の低下とパ
ルプ収率の低下が少ない反面、反応速度が遅く、処理に
長時間を要すると共にカッパー価の減少量が極めて小さ
いという問題がある。
【0008】又、最近とみに注目されているパルプのキ
シラン分解酵素による処理の場合には、反応を起こすた
めに酵素と基質を十分に接触させる必要があるが、パル
プ繊維中のキシランやリグニンは高分子でかつ三次元的
に不均一に分布しており、更に酵素自体が高分子である
ために、例えばキシランとキシラン分解酵素を完全に接
触させることは困難であり、反応を効率的に進めること
が今後の研究課題となっている。
【0009】一方、特開平6−101186号公報に
は、木材チップを蒸解した後に得られる未漂白パルプを
パルプ濃度1〜30%、温度30〜95℃、処理時間5
〜120分、酸溶液のpH1〜5からなる酸処理工程を
行った後、アルカリ性媒体中で過酸化物と加圧酸素によ
る脱リグニン・漂白工程を行う化学パルプの漂白方法が
開示されている。この方法によれば、後段で原子状塩素
と次亜塩素酸塩を漂白薬品として使用しなくても高粘度
と高白色度のパルプを得ることができ、漂白排水から有
機塩素化合物の排出がないので環境汚染問題を解消する
ことができる。しかしながら、この方法の酸溶液による
未漂白パルプの処理後では処理前と比較して脱リグニン
は全く生じておらず、即ちパルプのカッパー価は減少し
ておらず、殆ど処理前と比較して変化しない。
【0010】又、特開平6−158573号公報には、
木材チップを蒸解した後に得られる未漂白パルプを酸素
とアルカリで脱リグニンし、更に酸素脱リグニンパルプ
を前記と同じ条件での酸処理又はキレート剤処理を行っ
てパルプ中の重金属イオンを除去した後、アルカリ性媒
体中で過酸化物或いは過酸化物と酸素による脱リグニン
・漂白を行う方法が開示されている。ここで用いられて
いる酸処理は、パルプ繊維から重金属を除去し、過酸化
物或いは過酸化物と酸素による漂白におけるセルロース
の解重合を防止することを目的としており、ここに開示
されている酸処理自体には脱リグニン効果はない。
【0011】又、木材チップを蒸解して得られた未漂白
パルプを、更に酸素とアルカリで脱リグニンし、得られ
るパルプを窒素雰囲気下で酸処理することにより、パル
プ中のキシラン側鎖であるヘキセンウロン酸を選択的に
除去し、見掛けのカッパー価を下げ、その後の漂白薬品
によるパルプの漂白の際に使用する漂白薬品を低減させ
る方法も提案されている(例えば、Tapauni Vuorinen
等、1996 InternationalPulp Bleaching Conference Pr
oceeding43〜51頁)。しかしながら、このような酸
処理条件では見掛けのカッパー価は低下するものの、脱
リグニン自体は殆ど起こらないため、パルプの漂白性は
余り改善されず、従って後段で用いられる漂白薬品の使
用量の低減効果も十分ではなかった。
【0012】又、特開平6−280177号公報には、
蒸解後の未漂白パルプを無機酸のpH1.0〜1.6、
温度80℃〜酸性処理液の煮沸温度、パルプ濃度5〜2
0%、時間1〜3時間の条件下で酸処理し、次いでリグ
ニンのアルカリ抽出処理を行うことによりパルプを漂白
する方法が開示されている。しかしながら、ここで用い
られている酸処理条件は、pH1.0〜1.6と過酷で
あり、多糖類の酸加水分解によりパルプ収率とパルプ粘
度が著しく低下し、ひいては強度を損なう恐れがある上
に、このようなpHにすること自体に多量の薬品を必要
とし、経済的にも問題を抱えている。又、この方法に
は、酸処理時のpHを低くすることにより、脱リグニン
が起こる反面、分解したリグニンが縮合し、パルプ繊維
へ再吸着し、かえって漂白性が悪化するという潜在的な
問題も存在する。このように、漂白に先立ち、酸処理に
より漂白工程での漂白薬品の使用量を減少させるために
は、できるだけ酸処理を軽度に行いながらも脱リグニン
を進め、かつ酸による分解したリグニンの縮合、再吸着
を如何に制御するかということが大きな課題であった。
【0013】特開平8−158284号公報には、蒸解
された化学パルプを(1)アルカリ性下において高温高
圧下で酸素処理を行う工程、(2)タングステン、モリ
ブデン、バナジウム、セレン、チタン等のようにIV、
V、VI族元素の酸素酸あるいはその塩からなる反応触媒
および過酸化水素を混合して、pHを3以下かつ75〜
110℃の温度で処理を行う工程、(3)アルカリ性媒
体で過酸化物により処理を行う工程の順に処理すること
からなる製紙用化学パルプの製造方法が開示されてい
る。この方法は、化学パルプをアルカリ性媒体中に過酸
化物と酸素の組み合わせで処理して脱リグニンするに際
し、酸性かつ高温条件下で過酸化物とともに触媒を添加
して前処理する工程を加えることでパルプ粘度は殆ど低
下せずに、著しく脱リグニン効果が向上するというもの
である。
【0014】このように、この方法では重金属の酸素酸
或いはその塩を酸水溶液中に存在することで脱リグニン
を著しく促進するが、元々パルプの酸処理はその後に続
く酸素、オゾン、過酸化水素による漂白脱リグニンにお
いて重金属によるセルロースの解重合を防ぎ、パルプ品
質を良好なものとする目的で重金属を除去するために行
われていたのに対し、わざわざ前記重金属を添加するこ
とは趣旨が矛盾し、酸化系薬品による脱リグニンに際
し、セルロースの解重合を防止するため新たに大量の保
護剤を添加、使用しなければならないといった問題点を
有している。また、パルプの酸処理において前記金属の
酸或いはその塩を添加して脱リグニンを行うことは、そ
の重金属の一部がパルプ或いは廃液と一緒にパルプ製造
工程や抄紙工程に持ち込まれることになり、粘着物、ピ
ッチトラブル、スケールトラブル等の原因となる上、紙
製品中にも微量ではあるが混入するので、衛生上も好ま
しくなく厳に避けなければならい。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、かかる
背景に鑑みパルプ繊維の酸処理による脱リグニン及びそ
の後の漂白性の改善方法について種々検討を重ねた結
果、未晒パルプあるいは酸素脱リグニンされたパルプ繊
維を酸で処理する際に重金属のような触媒を全く使用し
なくても、加圧することにより、脱リグニンが進み、極
めて顕著なカッパー価の減少が生じることることを見出
した。しかしながら、このように脱リグニンされたパル
プは、その後に続く塩素、塩素系漂白剤、酸素系漂白剤
等を用いる一段漂白或いは多段漂白において漂白性がそ
れほど優れたものではないことが判明した。
【0016】そこで、本発明者等は、前記の知見に基づ
き、加圧下に触媒を一切使用しないで木材パルプの酸処
理を行なうことについて更に検討を行なった結果、酸素
の存在下に加圧して酸処理を行うと脱リグニンが極めて
顕著に進むと同時に、意外なことに、このように処理さ
れたパルプ繊維は、加圧無しで酸処理を行なったものと
比較して、その後に続いて行なう漂白薬品による一段或
いは多段漂白において極めて顕著な易漂白性を示し、そ
のため漂白薬品の大幅な削減が達成できることを見出し
本発明を完成するに至った。本発明の目的は、木材を蒸
解して得られる未漂白パルプ或いは該未漂白パルプを更
に酸素とアルカリで脱リグニンしたパルプを、酸素含有
ガスによる加圧下で酸で処理することにより、パルプ繊
維中のリグニンを大幅に除去し、更にその後の漂白薬品
による一段或いは多段漂白において、パルプの収率を損
なうことなくパルプの漂白性を顕著に改善し、所望の白
色度に漂白するのに必要な漂白薬品の使用量を大幅に削
減し得る漂白パルプの製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の第1は、木材を
蒸解液を用いて蒸解した後に得られるパルプを漂白薬品
を用いて一段或いは多段漂白し、漂白パルプを製造する
方法において、漂白薬品で漂白するに先立ち、未漂白パ
ルプを酸素含有ガスによる加圧下で酸処理することを特
徴とする漂白パルプの製造方法である。本発明の第2
は、漂白薬品で漂白するに先立ち、前記未漂白パルプを
酸素とアルカリで脱リグニンし、次いで得られる酸素で
脱リグニンされたパルプを酸素含有ガスによる加圧下で
酸処理することを特徴とする本発明第1に記載の漂白パ
ルプの製造方法である。
【0018】本発明第3は、パルプの酸処理をパルプ濃
度5〜40重量%、酸水溶液pH2〜6、温度50〜1
50℃、時間5〜120分、加圧ガスの圧力0.5〜
9.0kg/cm2(ゲージ圧力)で行なうことを特徴
とする本発明第1又は2に記載の漂白パルプの製造方法
である。本発明の第4は、前記酸素含有ガスが20容量
%以上の酸素を含有することを特徴とする本発明第1乃
至3に記載の漂白パルプの製造方法である。本発明の第
5は、酸素含有ガスによる加圧下での酸処理で排出され
る廃水を回収することを特徴とする本発明の第1乃至4
のいずれかに記載の漂白パルプの製造方法である。
【0019】本発明の第6は、前記漂白薬品が原子状塩
素を含まないことを特徴とする本発明の第1乃至4のい
ずれかに記載の漂白パルプの製造方法である。本発明の
第7は、前記漂白薬品が原子状塩素と塩素系漂白薬品を
含まないことを特徴とする本発明の第1乃至4のいずれ
かに記載の漂白パルプの製造方法である。本発明の第8
は、前記酸処理と漂白薬品による漂白からの廃水を回収
することを特徴とする本発明の第6又は7に記載の漂白
パルプの製造方法である。本発明の第9は、前記漂白薬
品による漂白において、酸素と過酸化水素から選ばれた
酸化系薬品を添加したアルカリ抽出段を少なくとも一段
含むことを特徴とする本発明の第1又は2に記載の漂白
パルプの製造方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明は、木材をクラフト蒸解液
のような化学薬品を用いて蒸解し、得られる未漂白パル
プ或いは該未漂白パルプを公知の酸素とアルカリによる
酸素漂白法により脱リグニンしたパルプを、酸素含有ガ
スによる加圧のもとに酸で処理して更に脱リグニンし、
次いで塩素や塩素系漂白薬品を含む或いはそれらの漂白
薬品を含まない漂白薬品を用いて公知の一段或いは多段
漂白法で漂白し、酸処理から排出される排水を回収し或
いは塩素を用いない多段漂白の場合は、酸処理と多段漂
白から排出される廃水を回収しながら、ハンター白色度
が70〜90%の漂白パルプを製造する方法である。
【0021】本発明で用いられるパルプは、針葉樹木材
と広葉樹木材からの未漂白パルプ或いは該未漂白パルプ
を酸素とアルカリにより酸素漂白したパルプである。本
発明に使用されるパルプを得るための蒸解法としては、
クラフト蒸解、サルファイト蒸解、ポリサルファイド蒸
解、ソーダ蒸解等の公知の蒸解法を用いることができる
が、パルプ品質、エネルギー効率等を考慮すると、クラ
フト蒸解法が好適に用いられる。例えば、木材をクラフ
ト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は5〜75
%、好ましくは15〜45%、有効アルカリ添加率は絶
乾木材重量当たり5〜30重量%、好ましくは10〜2
5重量%、蒸解温度は140〜170℃で、蒸解方式
は、連続蒸解法或いはバッチ蒸解法のどちらでもよく、
連続蒸解釜を用いる場合は、蒸解液を多点で添加する修
正蒸解法でもよく、その方式は特に問わない。蒸解に際
して、使用する蒸解液に蒸解助剤として、公知の環状ケ
ト化合物を併用してもよい。
【0022】本発明では、公知の蒸解法により得られた
粗パルプは、洗浄、粗選及び精選工程を経て、精選され
た未漂白パルプ、或いは該未漂白パルプを公知の酸素と
アルカリを用いる酸素漂白法により脱リグニンしたパル
プであり、次いで前記したように、パルプを酸素含有ガ
スにより加圧下で酸処理して更に脱リグニンし、その後
塩素や塩素系漂白薬品を含む漂白薬品或いはそれらの漂
白薬品を含まない漂白薬品による一段或いは多段漂白に
より漂白して漂白パルプとされる。本発明に使用される
酸素漂白による脱リグニン法は、酸素とアルカリを用い
る公知の中濃度法或いは高濃度法がそのまま適用できる
が、現在汎用的に用いられているパルプ濃度が8〜15
重量%で行われる中濃度法が好ましい。
【0023】前記中濃度法による酸素漂白による脱リグ
ニン法で使用されるアルカリとしては苛性ソーダ或いは
酸化されたクラフト白液であり、酸素ガスとアルカリは
中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加
され混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及
びアルカリの混合物を一定時間保持できる脱リグニン反
応塔へ送られ、脱リグニンされるというものである。前
記中濃度ミキサーは、メーカーにより異なるが500〜
1000rpmで高速回転するローターを有し、高剪断
力を中濃度パルプスラリーへ付与してあたかもパルプス
ラリーが水のような流体に変化させ、それによってパル
プ、酸素及びアルカリを十分混合できる。酸素ガスの添
加率は、絶乾パルプ重量当たり0.5〜3重量%、アル
カリ添加率は0.5〜4重量%、反応温度は80〜12
0℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜1
5重量%であり、この他の条件は公知のものが適用でき
る。酸素漂白により脱リグニンが施されたパルプは洗浄
され、次いで酸処理工程へ送られ酸処理される。
【0024】本発明における酸処理とは、パルプを、触
媒を一切使用せずに、2〜6の範囲のpHの酸水溶液に
浸し、或いは該水溶液を含有させ、酸素含有ガスの存在
下に加圧して特定時間と温度を維持することと定義され
る。本発明の酸処理に用いられる酸は、酸処理時のpH
を2〜6に調整できるものであれば無機酸、有機酸のい
ずれでも良いが、硫酸、硝酸、塩酸、亜硫酸、亜硝酸等
の無機酸、中でも硫酸が入手と取り扱いが容易であるた
め好適に用いられる。
【0025】本発明の酸処理におけるパルプ濃度は5〜
40重量%、好ましくは8〜35重量%、更に好ましく
は10〜25重量%の範囲である。パルプ濃度が5重量
%未満では、処理に大容量の設備を要するので適さな
い。パルプ濃度が40重量%を超えると、パルプと酸を
均一に混合することが難しくなり、酸処理の効果が十分
得られないので適さない。本発明の酸処理においては、
処理効果を挙げるためにはパルプ、酸素含有ガス中に含
有される酸素及び酸が均一に混合する必要がある。均一
な混合を得るには、低濃度ミキサー、中濃度ミキサー、
スタティックミキサー、高濃度ミキサー等の中から処理
時のパルプの種類と濃度に応じて適宜ミキサーを選択し
て用いることができるが、酸素漂白による脱リグニン法
の場合と同様にして処理することができる。
【0026】即ち、酸処理する場合のパルプ濃度が中濃
度や高濃度の場合は、パルプの撹拌が困難となるのでデ
ィスパーザーを併用して或いは併用せずに高剪断力を付
与できる中濃度ミキサー或いは高濃度ミキサーでパル
プ、酸素含有ガス及び酸を瞬時に混合して、直ちに圧力
下で保持できる反応塔へ導入し、そこでは混合を目的と
した撹拌は行わないで一定時間と温度を維持する方がよ
い。中濃度でパルプの酸処理を行う場合の反応塔は、デ
ィストリビューターとディスチャージャーを備えた或い
は備えていない連続式のダウンフロー或いはアップフロ
ータイプのものを用いることができる。高濃度でパルプ
の酸処理を行う場合の反応塔は、縦型のダウンフロータ
イプで一個所に穴が開いた棚を備え、パルプを下の棚へ
移送するための水平に回転する羽根により、棚から棚へ
パルプを落下することができるもの、或いは耐圧製の水
平チューブを複数段有し、緩く回転するパルプを移送す
るためのスクリュウでパルプを水平に移送し、チューブ
の末端から次のチューブヘパルプを移送して排出するこ
とができるパンディア式のものが好都合である。
【0027】本発明の酸処理は、前記したようにパルプ
濃度5〜40重量%、pH2〜6、好ましくは2.5〜
5、温度50〜150℃、好ましくは90〜120℃、
保持時間5〜120分、好ましくは20〜90分、酸素
含有ガスによる加圧0.5〜9.0kg/cm2、好ま
しくは1.5〜7.0kg/cm2(ゲージ圧力)の条
件下で行われる。酸処理時のpHが2未満では、リグニ
ンの分解よりも多糖類の分解の方が顕著となり、パルプ
繊維の強度低下と収率低下が大きくなるので適さない。
pHが6を超えると、加圧下においても脱リグニンが殆
ど生じなくなるので適さない。本発明では酸素含有ガス
で加圧して酸処理をおこなうため、公知の酸処理と異な
り、pHが3を超えて高くても十分な脱リグニンを得る
ことができ、その後の漂白薬品による漂白においても優
れた漂白性を得ることができる。処理温度が50℃未満
では、酸によるリグニンの分解が不十分になり、温度が
150℃を超えると、多糖類の分解が顕著となり、パル
プ繊維の強度低下が大きくなるので適さない。本発明の
酸処理の処理時間は5分以上であれば十分であるが、1
20分を超えて長くしても脱リグニンの効果は上限に到
達しそれ以上の処理時間は品質的に劣化を生じるので適
さない。
【0028】本発明の酸処理時に加圧のために用いられ
る酸素含有ガスは、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressu
re Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing
Adsorption)からの酸素等のように工業規模での利用が
可能で、現在酸素とアルカリによる酸素漂白に使用され
ている酸素純度が85容量%以上の酸素或いは酸素含有
ガス、前記モレキュラーシーブを用いた酸素製造設備を
用いて酸素の含有量を21容量%を超えて調整された酸
素含有ガス、前記酸素純度が85容量%以上の酸素含有
ガスと空気を混合して製造される酸素富化ガス、酸素含
有量が20容量%以上の空気等を挙げることができ、こ
れらの中から適宜選択して用いられる。また、漂白工程
の一つとしてオゾン漂白工程を有する場合には、酸素を
含有するその排ガスも好適に使用される。しかしなが
ら、本発明の酸処理は、処理時の加圧圧力とパルプ重量
当たりの酸素添加率の双方が重要であるため、酸素含有
量が低く、酸素分圧の低いガスを用いた場合には、加圧
圧力を上げることによりパルプ重量当たりの酸素添加率
を0.1%以上にする必要がある。酸処理時の加圧圧力
が0.5kg/cm2(ゲージ)未満では、加圧による
効果が小さくなるため適さない。加圧圧力が9.0kg
/cm2を超えて高くなると、加圧による効果は限界に
達し、その上、このような条件に耐え得る反応容器自体
の製造コストが高くなり、経済的でないため適さない。
【0029】前記の酸処理を施されたパルプはそのまま
で、或いは洗浄工程を経て、続いて漂白薬品による一段
或いは多段漂白が行われる。漂白薬品による一段或いは
多段漂白に先立ちキシラン分解酵素、リグニン分解酵素
等の酵素を用いる処理を併用してもよい。本発明で用い
られる漂白薬品としては、原子状塩素(C)、苛性ソー
ダ(E)、次亜塩素酸塩化合物(H)、二酸化塩素
(D)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン
(Z)、有機過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤からなる
漂白薬品を挙げることができ、これらの中から適宜選択
されて漂白薬品として用いられる。本発明では、酸素含
有ガスによる加圧下での酸処理に続く漂白薬品による多
段漂白シーケンスとして、例えばC−E/O−H−D、
C/D−E/O−H−Dのように塩素と塩素系漂白薬
品を含む漂白シーケンスを用いることもできるし、D−
E−D、D−E/O−D、E/O−D、E−O−D、Z
−D、のように塩素を含まない漂白シーケンスを用いる
こともできる。また、Z−E−P、Z−E/O−P、E
/OP−PO等のように塩素と塩素系漂白薬品を一切用
いない漂白シーケンスを用いることもできる。
【0030】本発明では前記酸処理に続く漂白薬品によ
る一段或いは多段漂白において、酸素と過酸化水素から
選択された酸化系薬品を公知のアルカリ抽出段に添加し
てE/O、E/P或いはE/OPのようなシーケンスを
少なくとも一段用いる漂白シーケンスで漂白した場合
に、漂白後の白色度がさらに向上するという特徴があ
る。酸素及び/又は過酸化水素を添加したアルカリ抽出
は、酸素漂白法に準じて加圧下で行ってもよく、最初の
5〜15分間だけ加圧して、その後は圧力を大気開放し
て保持する方法でもよい。本発明では、酸処理後の廃水
は回収して、蒸解工程の蒸解廃液と一緒に回収ボイラー
へ送り、燃焼して廃水中に溶解している或いは含まれる
有機物を熱エネルギーとして利用することができる。同
時に、本発明では酸処理に続く一段或いは多段漂白にお
いて、漂白薬品として塩素を用いない漂白シーケンス
で、更には塩素と塩素系漂白薬品の両方を用いない漂白
シーケンスで漂白パルプを製造することができるため、
漂白からの廃水も回収して漂白工程をクローズド化する
ことができ、漂白排水に起因する有機ハロゲン化合物
(AOX)の環境への排出が実質的に皆無となる。
【0031】本発明では酸素含有ガスによる加圧下でパ
ルプを酸処理することにより、脱リグニンが顕著に進行
し、カッパー価の減少は酸処理前のカッパー価に対して
20〜80%の範囲にも達する。この場合、酸処理でカ
ッパー価を顕著に減少させると、パルプ収率とパルプ粘
度はともに若干低下するが、逆に、漂白薬品を用いる一
段或いは多段漂白において減少したカッパー価に起因し
て漂白薬品の使用量が顕著に減少すること以外に、漂白
性が大幅に改善されるため、パルプ収率が増加するの
で、酸処理と一段或いは多段漂白を含めて考えると、全
パルプ収率は、酸処理を行わない場合と変わりなく維持
できる。
【0032】本発明の酸処理によるカッパー価の低下率
(対処理前カッパー価)は、広葉樹パルプについて非常
に顕著であるが、他の材種についてもカッパー価の低下
率は低いが脱リグニン効果はあり、針葉樹未漂白パルプ
(酸処理前のパルプカッパー価20〜30)は酸処理前
のパルプカッパー価に対して20〜30%、針葉樹酸素
脱リグニンパルプ(酸処理前のパルプカッパー価12〜
15)は20〜40%、広葉樹未漂白パルプ(酸処理前
のパルプカッパー価15〜20)は20〜60%、広葉
樹酸素脱リグニンパルプ(酸処理前のパルプカッパー価
7〜11)は20〜80%の範囲減少する。本発明の酸
処理は、広葉樹パルプにおいて効果が大きく、特に酸素
脱リグニンしたパルプにおいてその効果は顕著である。
【0033】本発明において、酸素含有ガスによる加圧
下で酸処理することにより脱リグニンが大幅に進み、か
つ酸処理後の漂白性が著しく促進される理由については
今後の研究を待たないと明確には断定できないが、第1
に加圧することにより酸による脱リグニン反応が加速さ
れること、第2に加圧により酸溶液がパルプ繊維内部に
まで容易に浸透し、パルプ繊維表面に露出しているリグ
ニンは勿論のこと、繊維内部に存在するリグニンまでも
酸分解されること、第3に、更に、反応系内の酸素がリ
グニンの分解時に生成したラジカルによって活性化さ
れ、その活性化された酸素が更にリグニンの分解に寄与
すると同時にリグニンの縮合を抑制するために、酸処理
後に残留したリグニンも分解されやすい構造になってい
る、等の相乗効果によるものと推察される。
【0034】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に
限定されるものではない。以下に示す実施例1〜5及び
比較例1〜3は、木材チップを蒸解して得られる未漂白
パルプを用いて酸処理した後、或いは前記未漂白パルプ
を更に酸素脱リグニンして得られたパルプを用いて、酸
処理した後、D1−E−D2シーケンスで漂白を行った
ものであり、実施例6と比較例4は、酸処理したパルプ
をD1−E/O−D2シーケンスで漂白を行い、実施例
7と比較例5は、酸処理したパルプをE/O−POシー
ケンスで漂白を行い、実施例8と比較例6は、半晒パル
プを得るため、パルプを酸処理した後、POによる一段
漂白を行ったものである。又、特に示さない限り、酸処
理によるカッパー価の低下率、D1とD1段、及びE段
における薬品の削減率、酸処理におけるパルプ収率及び
酸処理と漂白における全パルプ収率はそれぞれ以下のよ
うに算出した。なお、実施例及び比較例における薬品の
添加率は絶乾パルプ重量当たりの重量%示す。
【0035】1.酸処理によるカッパー価の低下率 酸処理によるカッパー価の低下率は、酸処理前後のパル
プのカッパー価をJIS P 8211により測定し、
式(1)により算出した。 酸処理によるカッパー価の低下率、%={(酸処理前のカッパー価−酸処理後の カッパー価)/酸処理前のカッパー価}×100…(1) 2. D1とD2段における合計薬品の削減率 薬品の削減率は、パルプの酸処理ありとなしにおける漂白に使用したD1とD 2段の二酸化塩素の合計の薬品率から式(2)により算出した。 D1とD2段における合計薬品の削減率、%={(酸処理なしの場合のD1と D2段における合計薬品添加率−酸処理ありの場合のD1とD2段における合計 薬品添加率)/酸処理なしの場合のD1とD2段における合計薬品添加率}×1 00…(2)
【0036】3.E段における薬品の削減率 薬品の削減率は、パルプの酸処理ありとなしにおける漂
白に使用したE段の苛性ソーダの薬品添加率から式
(3)により算出した。 E段における薬品の削減率、%={(酸処理なしの場合のE段における薬品添加 率−酸処理ありの場合のE段における薬品添加率)/酸処理なしの場合のE段に おける薬品添加率}×100…(3) 4.酸処理におけるパルプ収率 酸処理におけるパルプ゜収率は、酸処理前後のパルプの絶
乾重量から式(4)により算出した。 酸処理におけるパルプ゜収率、%={(酸処理後のパルプの絶乾重量)/酸処理前の パルプの絶乾重量}×100…(4) 5.酸処理から漂白までの全パルプ収率 酸処理から漂白までの全パルプ収率は、酸処理における
パルプ収率に多段漂白におけるパルプ収率を乗じて求め
た。
【0037】実施例1 国内産広葉樹材70%とユーカリ材30%からなる広葉
樹混合木材チップを絶乾 500g採取し、液比4、絶乾
チップ重量当たり有効アルカリ18%、蒸解液の硫化度
25%、蒸解温度160℃、蒸解時間120分の条件下
で実験用間接加熱用オートクレーブを用いてクラフト蒸
解し、その後廃液とパルプを分離し、パルプを10カッ
トのスクリーンプレートを備えたフラットスクリーンで
精選してハンター白色度45.2%、カッパー価20.
1、パルプ粘度23.3mPa・s(J.TAPPI
44により測定)の広葉樹未漂白クラフトパルプを絶乾
重量で229g(精選パルプ収率45.8%)得た。
【0038】この未漂白パルプを絶乾重量で80.0g
採取し、パルプをイオン交換水に濃硫酸を添加してpH
を2.6とした硫酸水溶液で希釈してパルプ濃度を10
%に調整した後、ステンレス製2リットル容の間接加熱
式オートクレーブに入れ、ゲージ圧力で5kg/cm2
となるように純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスを
導入して加圧し、温度105℃で60分間圧力を維持し
ながら加熱し、パルプの酸処理を行った。オートクレーブ
を冷却後、酸処理して得られたパルプをイオン交換水を
用いて洗浄、脱水した。絶乾重量78.9gの白色度4
8.1%、カッパー価11.0、パルプ粘度17.8m
Pa・sの酸処理したパルプを得た。パルプカッパー価
の低下率は45.3%、パルプ収率は98.6%であっ
た。
【0039】酸処理後のパルプ絶乾重量70.0gをプ
ラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度
を10%に調整した後、絶乾パルプ重量当たり二酸化塩
素を1.10%添加し、温度が70℃の恒温水槽に30
分間浸漬してD1段の漂白を行った。得られたパルプを
イオン交換水で洗浄、脱水し絶乾69.5gのパルプを
得た。D1段後のパルプ絶乾重量 69.5gをプラス
チック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を1
0%に調整した後、苛性ソーダ゛をD1添加率の1.7倍
量加え、D1段と同様にして温度70℃で120分間処
理し、E段の抽出を行った。得られたパルプをイオン交
換水を用いて洗浄、脱水し絶乾重量68.8gのパルプ
を得た。
【0040】続いて、E段後のパルプ絶乾重量68.8
gをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパル
プ濃度10%に調整した後、絶乾パルプ重量当たり二酸
化塩素を0.7%添加し、D1段と同様にして温度70
℃で180分間処理し、D2段の漂白を行った。得られ
たパルプをイオン交換水を用いて洗浄、脱水し絶乾重量
68.5gの漂白パルプを得た。多段漂白におけるパル
プ収率は97.9%であり、酸処理から漂白処理までの
全パルプ収率は96.5%であった。D2段後のパルプ
を離解した後、Tappi試験法T205os−71
(JISP 8209)に従って坪量60g/m2のシ
ートを作製し、JIS P 8123に従ってパルプの白
色度を測定した結果85.4%であった。酸処理後のパ
ルプのカッパー価、酸処理によるカッパー価の低下率及
びパルプ収率を表1に、D1及びD2段薬品添加率、D
(D1+D2)段全薬品の削減率、E段薬品の削減率、漂
白処理におけるパルプ収率及び酸処理から漂白処理まで
の全パルプ収率を表2に示した。
【0041】実施例2 実施例1で得られた広葉樹未漂白クラフトパルプの絶乾
重量90.0gを採取し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソ
ーダを1.5%添加し、次いでイオン交換水で希釈して
パルプ濃度を10%に調整し、間接加熱式オートクレー
ブに入れ、ゲージ圧力が5kg/cm2となるように純
度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスで加圧し、温度1
00℃で60分間加熱し、中濃度酸素漂白法により脱リ
グニンを行った。得られたパルプをイオン交換水を用い
て洗浄、脱水し、絶乾重量88.8gの白色度が51.
1%、カッパー価10.2、パルプ粘度が18.8mP
a・sの酸素脱リグニン処理したパルプを得た。
【0042】このパルプを絶乾重量で80.0g採取
し、イオン交換水に濃硫酸を添加してpHを2.6とし
た硫酸水溶液で希釈してパルプ濃度を10%に調整した
後、ステンレス製2リットル容の間接加熱式オートクレ
ーブに入れ、ゲージ圧力で5kg/cm2となるように
純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスを導入して加圧
し、温度95℃で60分間圧力を維持しながら加熱し、
パルプの酸処理を行った。オートクレーブを冷却後、酸
処理して得られたパルプをイオン交換水を用いて洗浄、
脱水した。 絶乾重量79.2gの白色度が53.4%、
カッパー価4.3、カッパー価の低下率が57.8%、
パルプ粘度が15.8mPa・sの酸処理したパルプを
得た。パルプカッパー価の低下率は57.8%、パルプ
収率は99.0%であった。
【0043】酸処理後のパルプ絶乾重量70.0gを採
取し、二酸化塩素を絶乾パルプ重量当たり0.30%と
したこと以外は、実施例1のD1段と同様にして漂白を
行い、その後洗浄、脱水して絶乾重量69.9gのパル
プを得た。D1段後のパルプ絶乾重量69.9gを採取
し、実施例1のE段と同様にしてE段抽出を行い、洗
浄、脱水して絶乾重量69.7gのパルプを得た。更
に、E段後のパルプ絶乾重量69.7gを採取し、二酸
化塩素を絶乾パルプ重量当たり0.40%添加したこと
以外は実施例1のD2段と同様にして漂白し、洗浄脱水
して漂白パルプを絶乾重量で69.6g得た。多段漂白
におけるパルプ収率は99.4%であり、酸処理から漂
白処理までの全パルプ収率は98.4%であった。
【0044】D2段後のパルプを離解した後、実施例1
と同様にしてTappi試験法に従って坪量60g/m
2のシートを作製し、パルプの白色度を測定した結果8
5.5%であった。酸処理後のパルプのカッパー価、酸処
理によるカッパー価の低下率及びパルプ収率を表1に、
D1及びD2段薬品添加率、D(D1+D2)段全薬品
の削減率、E段薬品の削減率、漂白処理におけるパルプ
収率及び酸処理から漂白処理までの全パルプ収率を表2
に示した。
【0045】実施例3 実施例2で得られた酸素漂白法による脱リグニンを行っ
たのと同じパルプ(パルプカッパー価10.2)を用
い、酸処理時の温度を105℃に変え、D1段の二酸化
塩素の添加率を絶乾パルプ重量当たり0.18%とした
こと以外は、実施例2と同様にして酸処理に続いて多段
漂白(D1−E−D2)を行い、漂白パルプを得た。な
お、酸処理後のカッパー価は2.6、カッパー価の低下
率は74.5%、パルプ収量は絶乾重量79.0gで収
率は98.8%、多段漂白後のパルプ収量は絶乾重量6
9.7gで、収率は99.6%、パルプ白色度は85.
6%であった。 酸処理から漂白までの全パルプ収率は、
98.4%であった。酸処理後のパルプのカッパー価、
酸処理によるカッパー価の低下率及びパルプ収率を表1
に、D1及びD2段薬品添加率、D(D1+D2)段全
薬品の削減率、E段薬品の削減率、漂白処理におけるパ
ルプ収率及び酸処理から漂白処理までの全パルプ収率を
表2に示した。
【0046】実施例4 実施例2で得られた酸素漂白法により脱リグニンを行っ
たのと同じパルプ(パルプカッパー価10.2)を用
い、酸処理時の加圧のために用いたガスを空気とし、D
1段の二酸化塩素の添加率を絶乾パルプ重量当たり0.
33%としたこと以外は、実施例2と同様にして酸処理
に続いて多段漂白(D1−E−D2)を行い、漂白パル
プを得た。なお、酸処理後のカッパー価は4.4、カッ
パー価の低下率は56.9%、酸処理におけるパルプ収
量は絶乾重量79.2gで収率は99.0%、多段漂白
後のパルプ収量は絶乾重量69.5gで、収率は99.
3%、パルプ白色度は85.5%であった。 酸処理から
漂白までの全パルプ収率は、98.3%であった。酸処
理後のパルプのカッパー価、酸処理によるカッパー価の
低下率及びパルプ収率を表1に、D1及びD2段薬品添
加率、D(D1+D2)段全薬品の削減率、E段薬品の削
減率、漂白処理におけるパルプ収率及び酸処理から漂白
処理までの全パルプ収率を表2に示した。
【0047】実施例5 実施例2で得られた酸処理後のパルプ(酸処理後のパル
プカッパー価4.3、カッパー価の低下率57.8%、
パルプ収率99.0%)と同じパルプ70gを用い、D
1段処理後のパルプに絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダ
を0.51%添加し、次いでイオン交換水で希釈してパ
ルプ濃度を10%に調整し、間接加熱式オートクレーブ
に入れ、純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスでゲー
ジ圧力が1.5kg/cm2となるまで加圧し、温度70
℃で15分間加熱した後、減圧し、大気圧(ゲージ圧力
は0)にて温度70℃で105分間保持し、酸素を添加
したアルカリ抽出(E/O)処理を行い、その後更にD
2段での二酸化塩素添加率を0.10%に変えたこと以
外は、実施例2と同様にして多段漂白(D1−E/O−
D2)を行い、漂白後のパルプ白色度が85.4%のパ
ルプを得た。多段漂白後のパルプ収量は69.5gで、
収率は99.3%、 酸処理から漂白までの全パルプ収
率は98.3%であった。酸処理後のパルプのカッパー
価、酸処理によるカッパー価の低下率及びパルプ収率を
表1に、D1及びD2段薬品添加率、D(D1+D2)
段全薬品の削減率、E段薬品の削減率、漂白処理におけ
るパルプ収率及び酸処理から漂白処理までの全パルプ収
率を表2に示した。
【0048】実施例6 実施例2で得られた酸処理後のパルプ(酸処理後のパル
プカッパー価4.3、カッパー価の低下率57.8%、
パルプ収率99.0%)と同じパルプ70gを採取し、
絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを1.0%、過酸化水
素0.5%添加し、次いでイオン交換水で希釈してパル
プ濃度を10%に調整し、間接加熱式オートクレーブに
入れ、純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスでゲージ
圧力が1.5kg/cm2となるまで加圧し、温度70℃
で15分間加熱した後、減圧し、大気圧にて温度70℃
で105分間保持し、酸素と過酸化水素を添加したアル
カリ抽出(E/OP)処理を行った。オートクレーブを
冷却後、このアルカリ抽出(E/OP)処理して得られ
たパルプをイオン交換水を用いて洗浄、脱水し、絶乾重
量69.4gのパルプを得た。
【0049】続いて、E/OP段後のパルプ絶乾69.
4gを採取し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダ1.5
%と過酸化水素3.0%を添加し、次いでイオン交換水
で希釈してパルプ濃度を10%に調整し、間接加熱式オ
ートクレーブに入れ、純度が99.9%の市販の圧縮酸
素ガスでゲージ圧力が5kg/cm2となるように加圧
し、温度100℃で60分間加熱し、酸素加圧による過
酸化水素(PO)処理を行った。得られたパルプをイオ
ン交換水を用いて洗浄、脱水し、パルプ白色度が85.
4%の漂白パルプを得た。得られたパルプの絶乾重量は
69.1gで、漂白(E/OP−PO)におけるパルプ
収率は98.7%で酸処理から漂白処理までの全収率は
97.7%であった。漂白後のパルプ白色度と酸処理か
ら漂白処理までの全パルプ収率を表3に示した。
【0050】実施例7 実施例2で得られた酸処理後のパルプ(酸処理後のパル
プカッパー価4.3、カッパー価の低下率57.8%、
パルプ収率99.0%)と同じパルプ70gを採取し、
絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダ1.5%と過酸化水素
2.0%を添加し、次いでイオン交換水で希釈してパル
プ濃度を10%に調整し、間接加熱式オートクレーブに
入れ、純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスでゲージ
圧力が5kg/cm2となるまで加圧し、温度100℃で
60分間加熱し、酸素加圧による過酸化水素(PO)処
理を行った。得られたパルプををイオン交換水を用いて
洗浄、脱水し、パルプ白色度が75.2%の半晒パルプ
を得た。得られたパルプの絶乾重量は69.6gで、漂
白(PO)におけるパルプ収率は99.4%で酸処理か
ら漂白処理までの全収率は98.4%であった。漂白後
のパルプ白色度と酸処理からPO処理までの全パルプ収
率を表3に示した。
【0051】実施例8 国内産針葉樹60%とラジアータ松40%からなる針葉
樹混合木材チップを絶乾 500g採取し、液比5、絶乾
チップ重量当たり有効アルカリ20%、蒸解液の硫化度
25%、蒸解温度165℃、蒸解時間150分の条件下
で実験用間接加熱用オートクレーブを用いてクラフト蒸
解し、その後廃液とパルプを分離し、パルプを14カッ
トのスクリーンプレートを備えたフラットスクリーンで
精選してハンター白色度43.3%、カッパー価27.
5、パルプ粘度31.6mPa・s(J.TAPPI
44により測定)の針葉樹未漂白クラフトパルプを絶乾
重量で218g(精選パルプ収率43.6%)得た。
【0052】この未漂白パルプを絶乾重量で80.0g
採取し、パルプをイオン交換水に濃硫酸を添加してpH
を2.6とした硫酸水溶液で希釈してパルプ濃度を10
%に調整した後、ステンレス製2リットル容の間接加熱
式オートクレーブに入れ、ゲージ圧力で5kg/cm2
となるように純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスを
導入して加圧し、温度105℃で60分間圧力を維持し
ながら加熱し、パルプの酸処理を行った。オートクレーブ
を冷却後、酸処理して得られたパルプをイオン交換水を
用いて洗浄、脱水した。絶乾重量78.6gの白色度4
6.2%、カッパー価18.3、パルプ粘度22.3m
Pa・sの酸処理したパルプを得た。酸処理におけるパ
ルプカッパー価の低下率およびパルプ収率を表4に示し
た。
【0053】実施例9 実施例8で得られた針葉樹未漂白クラフトパルプの絶乾
重量90.0gを採取し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソ
ーダを2.1%添加し、次いでイオン交換水で希釈して
パルプ濃度を10%に調整し、間接加熱式オートクレー
ブに入れ、ゲージ圧力が5kg/cm2となるように純
度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスで加圧し、温度1
00℃で60分間加熱し、中濃度酸素漂白法により脱リ
グニンを行った。得られたパルプをイオン交換水を用い
て洗浄、脱水し、絶乾重量88.5gの白色度が48.
8%、カッパー価13.3、パルプ粘度が21.8mP
a・sの酸素脱リグニン処理したパルプを得た。
【0054】このパルプを絶乾重量で80.0g採取
し、イオン交換水に濃硫酸を添加してpHを2.6とし
た硫酸水溶液で希釈してパルプ濃度を10%に調整した
後、ステンレス製2リットル容の間接加熱式オートクレ
ーブに入れ、ゲージ圧力で5kg/cm2となるように
純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスを導入して加圧
し、温度105℃で60分間圧力を維持しながら加熱
し、パルプの酸処理を行った。オートクレーブを冷却後、
酸処理して得られたパルプをイオン交換水を用いて洗
浄、脱水した。 絶乾重量79.0gの白色度が51.3
%、カッパー価8.2、パルプ粘度が17.1mPa・
sの酸処理したパルプを得た。酸処理におけるパルプカ
ッパー価の低下率およびパルプ収率を表4に示した。
【0055】比較例1 パルプの酸処理を行わないこと及びD1段の薬品添加率
を絶乾パルプ重量当たり2.41%としたこと以外は、
実施例1と同様にして多段漂白(D1−E−D2)を行
い、パルプ白色度が85.4%でパルプ収量が絶乾重量
67.5g(パルプ収率96.4%)の漂白パルプを得
た。未漂白パルプのカッパー価を表1に、D1、D2段
薬品添加率及び漂白処理におけるパルプ収率(全パルプ
収率)を表2に示した。
【0056】比較例2 パルプの酸処理を行わないこと及びD1段の薬品添加率
を絶乾パルプ重量当たり0.92%としたこと以外は、
実施例2と同様にして多段漂白(D1−E−D2)を行
い、パルプ白色度が85.3%のパルプ収量が絶乾重量
68.7g(パルプ収率98.1%)の漂白パルプを得
た。酸素漂白後のパルプのカッパー価を表1に、D1、
D2段薬品添加率及び漂白処理におけるパルプ収率(全
パルプ収率)を表2に示した。
【0057】比較例3 酸処理時に酸素ガスによる加圧を行わなかったこと及び
D1段の薬品添加率を絶乾パルプ重量当たり0.65%
としたこと以外は、実施例2と同様にして酸処理と多段
漂白(D1−E−D2)を行い、パルプ白色度が85.
3%、絶乾重量69.1gの漂白パルプを得た。なお、
酸処理後のカッパー価は6.5、酸処理におけるカッパ
ー価の低下率は36.3%、パルプの収量は絶乾重量で
79.4g、パルプ収率は99.3%、多段漂白におけ
るパルプ収量は69.1g、パルプ収率は98.7%
で、酸処理から漂白までの全パルプ収率は98.0%で
あった。酸処理後のパルプのカッパー価、酸処理による
カッパー価の低下率及びパルプ収率を表1に、D1及び
D2段薬品添加率、D(D1+D2)段全薬品の削減率、
E段薬品の削減率、漂白処理におけるパルプ収率及び酸
処理から漂白処理までの全パルプ収率を表2に示した。
【0058】比較例4 比較例3で得られた酸処理後のパルプ(酸処理後のカッ
パー価は6.5、カッパー価の低下率は36.3%、パ
ルプ収率99.3%)と同じパルプ70gを採取し、D
1段処理後のパルプに絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダ
を1.11%添加し、次いでイオン交換水で希釈してパ
ルプ濃度を10%に調整し、間接加熱式オートクレーブ
に入れ、純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスでゲー
ジ圧力が1.5kg/cm2となるまで加圧し、温度7
0℃で15分間加熱した後、減圧し、大気圧(ゲージ圧
力は0)にて温度70℃で更に105分間保持し、酸素
を添加したアルカリ抽出(E/O)処理を行い、その後
更にD2段での二酸化塩素添加率を絶乾パルプ重量当た
り0.28%とし、多段漂白(D1−E/O−D2)を
行い、漂白後のパルプ白色度が85.4%の漂白パルプ
を得た。多段漂白後のパルプ収量は69.1gで、収率
は98.7%であり、 酸処理から漂白までの全パルプ
収率は、98.0%であった。酸処理後のパルプのカッ
パー価、酸処理によるカッパー価の低下率及びパルプ収
率を表1に、D1及びD2段薬品添加率、D(D1+D
2)段全薬品の削減率、E段薬品の削減率、漂白処理にお
けるパルプ収率及び酸処理から漂白処理までの全パルプ
収率を表2に示した。
【0059】比較例5 比較例3で得られた酸処理後のパルプ(酸処理後のカッ
パー価は6.5、カッパー価の低下率は36.3%、パ
ルプ収率99.3%)と同じパルプ70gを用い、実施
例6と同様にして多段漂白(E/OP−PO)を行い、
パルプ白色度が81.4%の漂白パルプを得た。多段漂
白後のパルプ収量は68.9gで、収率は98.4%で
あり、 酸処理から漂白までの全パルプ収率は、97.
7%であった。多段漂白後のパルプ白色度および酸処理
から漂白処理までの全パルプ収率を表3に示した。
【0060】比較例6 比較例3で得られた酸処理後のパルプ(酸処理後のカッ
パー価は6.5、カッパー価の低下率は36.3%、パ
ルプ収率99.3%)と同じパルプ70gを用いたこと
以外は、実施例7と同様にして−段漂白(PO)を行
い、パルプ白色度が69.8%の漂白パルプを得た。一
段漂白後のパルプ収量は69.5gで、収率は99.3
%であり、 酸処理から漂白までの全パルプ収率は、9
8.6%であった。多段漂白後のパルプ白色度および酸
処理から漂白処理までの全パルプ収率を表3に示した。
【0061】比較例7 酸処理時に酸素ガスによる加圧を行わなかったこと以外
は、実施例8と同様にして酸処理を行った。絶乾重量7
8.7gの白色度43.3%、カッパー価21.8、パ
ルプ粘度23.8mPa・sの酸処理したパルプを得
た。酸処理におけるパルプカッパー価の低下率およびパ
ルプ収率を表4に示した。
【0062】比較例8 酸処理時に酸素ガスによる加圧を行わなかったこと以外
は、実施例9と同様にして酸処理を行った。絶乾重量6
9.4gの白色度48.8%、カッパー価10.0、パ
ルプ粘度18.0mPa・sの酸処理したパルプを得
た。酸処理におけるパルプカッパー価の低下率およびパ
ルプ収率を表4に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】表から明らかなように、広葉樹パルプの場
合、未漂白パルプ(カッパー価20.1)或いはその後
更に酸素漂白法により脱リグニンされたパルプ(カッパ
ー価10.2)を、酸素の存在下に加圧して酸処理する
ことにより、パルプ粘度は若干低下するが、脱リグニン
が顕著に進み(カッパー価の低下率は20〜80%)、
その後の漂白薬品による一段或いは多段漂白において
は、パルプ粘度とパルプ収率を実用できる範囲に維持し
ながら、極めて少ない漂白薬品の使用量で所望の白色度
を有するパルプを得ることができる(実施例1〜7)。
又、本発明の酸素の存在下に加圧して酸処理したパルプ
は、その後の多段漂白において酸素を添加したアルカリ
抽出段(E/O)での脱リグニン性が著しく改善される
ため、所望の白色度に漂白するのに必要な漂白薬品の使
用量を大幅に削減することができる(実施例5)。
【0068】更に、本発明の酸処理を行うことにより、
その後の漂白薬品による漂白において原子状塩素と塩素
系薬品を全く用いなくても、即ちE/PO−POでパル
プを所望の白色度(85.4%)に漂白できる(実施例
6)が、酸素が存在せず、加圧もしない酸処理では、同
じシーケンスではパルプの白色度を所望の水準に到達さ
せることができない(パルプ白色度81.4、比較例
5)。一方、パルプを酸処理しても酸素含有ガスによる
加圧を行わない場合(比較例3と4)は、酸素含有ガス
による加圧を行った場合に較べ、酸処理におけるカッパ
ー価の低下率が低く(36%)、その後の多段漂白にお
ける漂白薬品の削減率も極めて低く(比較例3)、又、
その後の多段漂白において酸素を添加したアルカリ抽出
段(E/O段)を併用しても顕著な漂白薬品の削減率の
低下は達成できない(比較例4)。本発明の酸処理を行
ったパルプは、酸素加圧した過酸化水素漂白によりパル
プ白色度が75%の半晒パルプとすることができる(実
施例7)が、酸素含有ガスによる加圧を行わない酸処理
では、同じ漂白シーケンスで漂白した場合、パルプ白色
度の水準が極めて低い(パルプ白色度69.8%、比較
例6)。
【0069】針葉樹パルプの場合、広葉樹パルプの場合
ほど顕著ではないが、未漂白パルプ(カッパー価27.
5)或いはその後更に酸素漂白法により脱リグニンされ
たパルプ(カッパー価13.3)を、酸素の存在下に加
圧して酸処理することにより、パルプ粘度は若干低下す
るが、パルプ収率を保持したまま脱リグニンが顕著に進
む(実施例8と9)。一方、針葉樹パルプを酸処理して
も酸素含有ガスによる加圧を行わない場合(比較例7と
8)は、酸素含有ガスによる加圧を行った場合に較べ、
酸処理におけるカッパー価の低下率が低い。
【0070】
【発明の効果】本発明は、酸処理と漂白での全パルプ収
率を減少させることなく漂白性を顕著に改善し、漂白薬
品の使用量を大幅に削減し得る漂白パルプの製造方法を
提供するという効果を奏する。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 木材を蒸解液を用いて蒸解した後に得ら
    れるパルプを漂白薬品を用いて一段或いは多段漂白し、
    漂白パルプを製造する方法において、漂白薬品で漂白す
    るに先立ち、未漂白パルプを酸素含有ガスによる加圧下
    で酸処理することを特徴とする漂白パルプの製造方法。
  2. 【請求項2】 漂白薬品で漂白するに先立ち、前記未漂
    白パルプを酸素とアルカリで脱リグニンし、次いで得ら
    れる酸素で脱リグニンされたパルプを酸素含有ガスによ
    る加圧下で酸処理することを特徴とする請求項1記載の
    漂白パルプの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記パルプの酸処理をパルプ濃度5〜4
    0重量%、酸水溶液pH2〜6、温度50〜150℃、
    時間5〜120分、加圧ガスの圧力0.5〜9.0kg
    /cm2(ゲージ圧力)で行なうことを特徴とする請求
    項1又は2記載の漂白パルプの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記酸素含有ガスが20容量%以上の酸
    素を含有することを特徴とする請求項1乃至3記載の漂
    白パルプの製造方法。
  5. 【請求項5】 酸素含有ガスによる加圧下での酸処理で
    排出される廃水を回収することを特徴とする請求項1乃
    至4のいずれかに記載の漂白パルプの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記漂白薬品が原子状塩素を含まないこ
    とを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の漂白
    パルプの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記漂白薬品が原子状塩素と塩素系漂白
    薬品を含まないことを特徴とする請求項1乃至4のいず
    れかに記載の漂白パルプの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記酸処理と漂白薬品による漂白からの
    廃水を回収することを特徴とする請求項6又は7記載の
    漂白パルプの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記漂白薬品による漂白において、酸素
    と過酸化水素から選ばれた酸化系薬品を添加したアルカ
    リ抽出段を少なくとも一段含むことを特徴とする請求項
    1又は2記載の漂白パルプの製造方法。。
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