JP2000282384A - 漂白パルプの製造方法 - Google Patents

漂白パルプの製造方法

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JP2000282384A
JP2000282384A JP11091007A JP9100799A JP2000282384A JP 2000282384 A JP2000282384 A JP 2000282384A JP 11091007 A JP11091007 A JP 11091007A JP 9100799 A JP9100799 A JP 9100799A JP 2000282384 A JP2000282384 A JP 2000282384A
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bleaching
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beating
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Hitoshi Kagawa
仁志 香川
Takahiro Miura
高弘 三浦
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Oji Paper Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】漂白薬品の使用量を大幅に削減し得る漂白パル
プの製造方法の提供 【解決手段】リグノセルロース物質を蒸解して得られる
未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、次いで酵素処理工
程を経た後、多段漂白処理して漂白パルプを製造する方
法において、アルカリ酸素漂白直後にリファイナー処
理、ビーター処理等の前叩解工程を設けて処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リグノセルロース
物質から漂白パルプを製造する方法に関する。更に詳し
くは、本発明は、リグノセルロース物質を蒸解して得ら
れる未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、次いで酵素処
理工程を経た後、多段漂白工程処理し、漂白パルプを製
造する方法において、アルカリ酸素漂白後、リファイナ
ー処理、ビーター処理等の前叩解処理工程を設けること
により、所望の白色度へ漂白するのに必要な漂白薬品使
用量を大幅に削減し得る漂白パルプの製造方法に関す
る。
【0002】リグノセルロース物質を製紙原料として多
くの用途に使用するためには、蒸解のような化学作用に
よってパルプ化した後、或いはリファイナー等を用いて
機械的作用によってパルプ化した後、得られるパルプを
漂白薬品で漂白して白色度を高める必要がある。例え
ば、クラフトパルプは包装資材のように強度を必要とす
る用途に使う場合を除いて、通常、アルカリ酸素漂白し
た後、原子状塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、酸素、
オゾン、過酸化水素、苛性ソーダ等の漂白剤及び漂白助
剤により漂白処理され、パルプに含まれる着色原因物質
であるリグニン等が除去され、ハンター白色度が70〜
90%程度の半晒クラフトパルプあるいは完全漂白クラ
フトパルプとして使用されるのが一般的である。
【0003】半晒パルプは、蒸解後の未漂白パルプを次
亜塩素酸塩を1段で漂白し、黄色を強調したハンター白
色度が70%未満のパルプとし包装用紙、封筒、事務用
袋として用いられる場合を除き、通常はアルカリ酸素漂
白無しに、或いはアルカリ酸素漂白後に1〜3段で漂白
を行いハンター白色度で70%程度に漂白して、例えば
新聞印刷用紙を製造する際の繋ぎパルプとして用いられ
る。しかしながら、未漂白パルプからハンター白色度で
80〜90%程度の完全漂白パルプを製造する場合は、
漂白においてはパルプ繊維自体の強度をある程度維持す
ることが必要であり、そのためパルプ繊維を構成するセ
ルロース、ヘミセルロース等の炭水化物の分解を最小限
に留めるように過激な1段での漂白を避け、まずアルカ
リ酸素漂白を行い、その後、漂白薬品と漂白条件を様々
に組み合わせて温和に漂白する3〜6段の多段漂白法を
採用するのが一般的である。
【0004】従来から多段漂白法においては、パルプを
最初に塩素で処理し、パルプ中に含有されるリグニンを
塩素化し、リグニンに可溶性を付加した後、次にアルカ
リで塩素化リグニンを溶解抽出して、パルプ中からリグ
ニンを分離除去し、更に次亜塩素酸塩、二酸化塩素等を
使用し、残留する少量のリグニンを分解除去し、白色度
の高いパルプを得る方法が採られてきた。しかしなが
ら、近年、パルプの塩素化段からの漂白排水に含まれる
有機塩素化合物の環境への影響が懸念され、パルプ漂白
に原子状塩素を用いない漂白シーケンスについて盛んに
研究されてきている。又、次亜塩素酸塩を用いた場合も
パルプの漂白時にクロロホルムが生成し、環境に悪影響
を及ぼす可能性があることから、パルプ漂白に使用しな
い漂白シーケンスの開発が行われている。
【0005】現在、塩素や次亜塩素酸塩の代替として、
オゾン、酸素、及び過酢酸、過硫酸等の過酸等の酸素系
の漂白薬品が注目されている。しかしながら、これらの
薬品は、酸素と過酸化水素を除いては、薬品コストが高
く、又爆発性があるため取り扱いが困難であり、現在の
ところ一般に普及するまでには至っていないが、将来的
には有望な漂白方法である。現在、塩素や次亜塩素酸塩
と比較して、前記酸素系の漂白薬品は脱リグニンに対す
る選択性が低いために、過剰に反応を進めた場合には、
パルプ繊維の強度が低下するという問題があるので最適
な漂白シーケンスや条件の模索が継続されている。
【0006】一方、漂白後のパルプの白色度を一定に維
持しながら使用する漂白薬品そのものを減少させる方法
としては、蒸解時においてできるだけ脱リグニンを進
め、パルプのカッパー価を減少させる方法(例えば、
J.E.Jiang等、Appita、45(1)、19(199
2))、蒸解済みの未漂白パルプを酸素とアルカリによ
り酸素脱リグニンを施す方法或いは亜硝酸のような前処
理薬品を用いて酸素脱リグニン段において更に一層脱リ
グニンを進め、カッパー価をより減少させる方法(例え
ば、特開平4−316690号公報)等が提案されてい
る。
【0007】しかしながら、前記の方法にはまだ改良の
余地が残されており、例えば蒸解時に脱リグニンを通常
の水準より進め、減少したカッパー価のパルプを得る方
法は、多くの場合、パルプ収率の低下やパルプ繊維の強
度低下の危険を伴う。酸素脱リグニン段で脱リグニンを
更に進めてパルプのカッパー価を減少させる方法も多く
の場合、パルプ繊維の強度低下の危険を伴う。
【0008】一方、特開平6−101186号公報に
は、木材チップを蒸解して得られる未漂白パルプをパル
プ濃度1〜30%、温度30〜95℃、処理時間5〜1
20分、酸溶液のpH1〜5からなる酸処理工程を行っ
た後、アルカリ性媒体中で過酸化物と加圧酸素による脱
リグニン・漂白処理を行う化学パルプの漂白方法が開示
されている。この方法によれば、後段で原子状塩素と次
亜塩素酸塩を漂白薬品として使用しなくても高粘度と高
白色度のパルプを得ることができ、漂白排水から有機塩
素化合物の排出がないので環境汚染問題を解消すること
ができる。しかしながら、この方法の酸溶液による未漂
白パルプの処理後では処理前と比較して脱リグニンは全
く生じておらず、即ちパルプのカッパー価は減少してい
ないと推測される。
【0009】又、特開平6−158573号公報には、
木材チップを蒸解して得られる未漂白パルプを酸素とア
ルカリで脱リグニンし、更に酸素脱リグニンパルプを前
記と同じ条件での酸処理又はキレート剤処理を行ってパ
ルプ中の重金属イオンを除去した後、アルカリ性媒体中
で過酸化物或いは過酸化物と酸素による脱リグニン・漂
白を行う方法が開示されている。ここで用いられている
酸処理は、パルプ繊維から重金属を除去し、過酸化物或
いは過酸化物と酸素による漂白におけるセルロースの解
重合を防止することを目的としており、ここに開示され
ている酸処理自体には脱リグニン効果はない。
【0010】又、木材チップを蒸解して得られた未漂白
パルプを、更に酸素とアルカリで脱リグニンし、得られ
るパルプを窒素雰囲気下で酸処理することにより、パル
プ中のキシラン側鎖であるヘキセンウロン酸を選択的に
除去し、見掛けのカッパー価を下げ、その後の漂白薬品
によるパルプの漂白の際に使用する漂白薬品を低減させ
る方法も提案されている(例えば、Tapauni Vuorinen
等、1996 InternationalPulp Bleaching Conference Pr
oceeding43〜51頁)。しかしながら、この方法で
は、見掛けのカッパー価は低下するものの、脱リグニン
自体は殆ど起こらないため、パルプの漂白性は余り改善
されず、従って後段で用いられる漂白薬品の使用量の低
減効果も十分ではなかった。
【0011】又、特開平6−280177号公報には、
蒸解後の未漂白パルプを無機酸のpH1.0〜1.6、
温度80℃〜酸性処理液の煮沸温度、パルプ濃度5〜2
0%、時間1〜3時間の条件下で酸処理し、次いでリグ
ニンのアルカリ抽出処理を行うことによりパルプを漂白
する方法が開示されている。しかしながら、ここで用い
られている酸処理条件は、pH1.0〜1.6と過酷で
あり、多糖類の酸加水分解によりパルプ収率とパルプ粘
度が著しく低下し、ひいては強度を損なう恐れがある上
に、このようなpHにすること自体に多量の薬品を必要
とし、経済的にも問題を抱えている。又、この方法に
は、酸処理時のpHを低くすることにより、脱リグニン
が起こる反面、分解したリグニンが縮合し、パルプ繊維
へ再吸着し、かえって漂白性が悪化するという潜在的な
問題も存在する。
【0012】また、特開平8−158284号公報に
は、蒸解された化学パルプを(1)アルカリ性下におい
て高温高圧下で酸素処理を行う工程、(2)タングステ
ン、モリブデン、バナジウム、セレン、チタン等のよう
にIV、V、VI族元素の酸素酸あるいはその塩からなる反
応触媒および過酸化水素を混合して、pHを3以下かつ
75〜110℃の温度で処理を行う工程、(3)アルカ
リ性媒体で過酸化物により処理を行う工程の順に処理す
ることからなる製紙用化学パルプの製造方法が開示され
ている。この方法は、化学パルプをアルカリ性媒体中に
過酸化物と酸素の組み合わせで処理して脱リグニンする
に際し、酸性かつ高温条件下で過酸化物とともに触媒を
添加して前処理する工程を加えることでパルプ粘度は殆
ど低下せずに、著しく脱リグニン効果が向上するという
ものである。
【0013】しかしながら、この方法では重金属の酸素
酸或いはその塩を酸水溶液中に存在することで脱リグニ
ンを著しく促進するが、元々パルプの酸処理はその後に
続く酸素、オゾン、過酸化水素による漂白脱リグニンに
おいて重金属によるセルロースの解重合を防ぎ、パルプ
品質を良好なものとする目的で重金属を除去するために
行われていたのに対し、わざわざ前記重金属を添加する
ことは趣旨が矛盾し、酸化系薬品による脱リグニンに際
し、セルロースの解重合を防止するため新たに大量の保
護剤を添加、使用しなければならないといった問題点を
有している。また、パルプの酸処理において前記金属の
酸或いはその塩を添加して脱リグニンを行うことは、そ
の重金属の一部がパルプ或いは廃液と一緒にパルプ製造
工程や抄紙工程に持ち込まれることになり、粘着物、ピ
ッチトラブル、スケールトラブル等の原因となる上、紙
製品中にも微量ではあるが混入するので、衛生上も好ま
しくなく厳に避けなければならい。
【0014】一方、漂白の前にパルプをキシラン分解酵
素を用いて処理する方法(例えば、特開平2−2640
87号公報)、漂白の前にパルプをリグニン分解酵素を
用いて処理する方法(例えば、特開平4−316689
号公報)等の酵素を用いた方法が提案されている。
【0015】しかしながら、漂白に先立ち酵素処理によ
りパルプを前処理する方法は、反応条件が比較的穏和で
あるためにパルプ強度の低下とパルプ収率の低下が少な
い反面、反応速度が遅く、処理に長時間を要すると共に
カッパー価の減少量が極めて小さいという問題がある。
【0016】又、最近特に注目されているパルプのキシ
ラン分解酵素による処理の場合には、反応を起こすため
に酵素と基質を十分に接触させる必要があるが、パルプ
繊維中のキシランやリグニンは高分子でかつ三次元的に
不均一に分布しており、更に酵素自体が高分子であるた
めに、例えばキシランとキシラン分解酵素を完全に接触
させることは困難であり、反応を効率的に進めることが
今後の研究課題となっていた。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、かかる
背景に鑑みパルプ繊維の酵素処理効果を最大限にする方
法について種々検討を重ねた結果、パルプを酵素処理す
る前にリファイナー、ビーター等の叩解機により処理す
ることで、脱リグニンが進み、極めて顕著なカッパー価
の減少及び漂白性の向上が生じることを見出し、本発明
を完成するに至った。
【0018】本発明の目的は、リグノセルロース物質を
蒸解して得られる未漂白パルプ或いは該未漂白パルプを
更に酸素とアルカリで脱リグニンしたパルプを、リファ
イナー及びビーター等の叩解機で前叩解処理することに
より、パルプ繊維と酵素との反応性を向上させ、更にそ
の後の漂白薬品による一段或いは多段漂白におけるパル
プの漂白性を顕著に改善し、所望の白色度に漂白するの
に必要な漂白薬品の使用量を大幅に削減し得る漂白パル
プの製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】(1)本発明の第1は、
リグノセルロース物質を蒸解して得られた未漂白パルプ
をアルカリ酸素漂白し、次いで酵素処理工程を経た後、
多段漂白処理して漂白パルプを製造する方法において、
アルカリ酸素漂白直後に前叩解処理工程を設けることを
特徴とする漂白パルプの製造方法である。
【0020】(2)また、本発明第2は、前記酵素処理
工程に用いられる酵素が、少なくともキシラン分解活性
を有する酵素であることを特徴とする前項(1)記載の
漂白パルプの製造方法である。
【0021】(3)また、本発明第3は、前叩解工程直
後のパルプろ水度が450〜600mlであることを特
徴とする前項(1)記載の漂白パルプの製造方法であ
る。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明は、リグノセルロース物質
をクラフト蒸解液のような化学薬品を用いて蒸解し、得
られる未漂白パルプ或いは該未漂白パルプを公知の酸素
とアルカリによる酸素漂白法により脱リグニンしたパル
プを、リファイナー及びビーター等により前叩解処理し
て、次いで酵素処理を行った後、塩素や塩素系漂白薬品
を含む或いはそれらの漂白薬品を含まない漂白薬品を用
いて公知の一段或いは多段漂白法で漂白し、上質紙ある
いは塗工紙に適する白色度を有する漂白パルプを製造す
る方法である。
【0023】本発明で用いられるリグノセルロース物質
としては、針葉樹や広葉樹のような木材が好ましく用い
られるが、ケナフ、麻、バガス、イネ等の非木本性の植
物であってもよく、特に限定するものではない。本発明
に使用されるパルプを得るための蒸解法としては、クラ
フト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカ
リサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることがで
きるが、パルプ品質、エネルギー効率等を考慮すると、
クラフト蒸解法が好適に用いられる。例えば、木材をク
ラフト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は5〜7
5%、好ましくは15〜45%、有効アルカリ添加率は
絶乾木材重量当たり5〜30重量%、好ましくは10〜
25重量%、蒸解温度は140〜170℃で、蒸解方式
は、連続蒸解法あるいはバッチ蒸解法のどちらでもよ
く、連続蒸解釜を用いる場合は、蒸解液を多点で添加す
る修正蒸解法でもよく、その方式は特に問わない。
【0024】蒸解に際して、使用する蒸解液に蒸解助剤
として、公知の環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、
ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナン
トロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、アミノ
等の核置換体、或いは前記キノン系化合物の還元型であ
るアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合
物、さらにはディールスアルダー法によるアントラキノ
ン合成法の中間体として得られる安定な化合物である
9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ば
れた1種或いは2種以上が添加されてもよく、その添加
率は木材チップの絶乾重量当たり0.001〜1.0重
量%である。
【0025】本発明では、公知の蒸解法により得られた
未漂白化学パルプは洗浄、粗選及び精選工程を経て、公
知のアルカリ酸素漂白法により脱リグニンされる。本発
明に使用されるアルカリ酸素漂白法は、公知の中濃度法
あるいは高濃度法がそのまま適用できるが、現在汎用的
に用いられているパルプ濃度が8〜15重量%で行われ
る中濃度法が好ましい。前記中濃度法によるアルカリ酸
素漂白法において、アルカリとしては苛性ソーダあるい
は酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素
ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure S
wing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adso
rption)からの酸素等が使用できる。前記酸素ガスとア
ルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリ
ーに添加され混合が十分に行われた後、加圧下でパル
プ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反
応塔へ送られ、脱リグニンされる。酸素ガスの添加率
は、絶乾パルプ重量当たり0.5〜3重量%、アルカリ
添加率は0.5〜4重量%、反応温度は80〜120
℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜15
重量%であり、この他の条件は公知のものが適用でき
る。本発明では、アルカリ酸素漂白工程において、上記
アルカリ酸素漂白を連続して複数回行い、できる限り脱
リグニンを進めるのが好ましい実施形態である。アルカ
リ酸素漂白が施されたパルプは次いでリファイナー及び
ビーター等の前叩解処理工程へ送られる。
【0026】本発明の前叩解処理工程において、叩解機
は、パルプ繊維の解繊・フィブリル化が行われ、処理後
のフリーネスが50〜200mlCSF低下するもので
あれば、リファイナー、ビーター等何でもよい。クラフ
トパルプの叩解機としては、リファイナーが一般的であ
る。リファイナーの型式は、シングルディスク、コニカ
ルディスク、ダブルディスク、ツインディスク等何でも
よい。リファイナーに送られたパルプは、パルプ繊維間
の摩擦もあって発熱し、リグニンの軟化が促進され、解
繊・フィブリル化が行われるが、処理前のパルプ濃度
は、1〜35%、好適には3〜25%で叩解される。叩
解前のパルプ濃度が1%未満の場合には、処理するパル
プ懸濁液のボリュームが多くなるだけでなく、リファイ
ナープレート間でリテンションを多く取れないために、
解繊・フィブリル化が十分に進まない。叩解前のパルプ
濃度が35%より高い場合には、パルプ繊維自体が損傷
する可能性があり、また、エネルギー的にも経済的でな
くなるため、適さない。本発明の前叩解処理工程では、
複数の叩解機を使用することもできるし、種の異なる叩
解機と併用することもできる。パルプは前叩解処理工程
終了直後、酵素処理工程を経て多段漂白処理工程へ送ら
れる。
【0027】通常行われているパルプの叩解処理は、多
段漂白処理工程直後のパルプ、又は抄紙機に送られる直
前の配合パルプに適用される。パルプの叩解処理は、抄
紙製品の品質要求(例えば、引裂き強度、引っ張り強度
等の強度特性及び白色度、不透明度等の光学特性等)に
合うようにフリーネスを操作するための処理であり、一
般的に叩解処理によるフリーネスの操作は、叩解処理前
およそ550〜700mlCSFであるパルプを抄物の
種類によって、叩解処理により、通常300〜500m
lCSF位まで低下させる。叩解処理後の最適なフリー
ネスは、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、非木材パルプ等
により異なるし、抄紙製品の種類によっても異なるが、
一般的には、フリーネスを低くしすぎても高いままで
も、抄紙製品強度の低下を招く。
【0028】本発明の酵素処理工程で使用される酵素
は、パルプの構成成分を分解するものであればいかなる
酵素でも良い。パルプの構成成分としては、セルロー
ス、ヘミセルロース、リグニン、脂肪酸、樹脂酸等があ
げられ、これらの成分を分解する酵素としては、セルラ
ーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、リ
グニンパーオキシダーゼ、マンガンパーオキシダーゼ、
ラッカーゼ、リパーゼ等が知られており、勿論これらの
酵素でも良く、未だ知られていない酵素でも該当する酵
素であれば良いことは言うまでもない。また、これらの
酵素は単独で用いてもよく、あるいは複合、混合して、
さらには複数回に分けて使用することもできる。これら
酵素のうち、キシラナーゼと呼ばれるキシラン分解酵素
は、漂白促進効果も同時に有しており、好適に用いられ
る。
【0029】本発明の酵素処理工程では、酵素と含水状
態のパルプとが均一に混ざるように、低濃度ミキサー、
中濃度ミキサー、スタティックミキサー、高濃度ミキサ
ー等を用いて攪拌が行われる。酵素の添加量はパルプの
状態、処理温度、処理時間により左右され、所望の酵素
処理が得られるように加減されて添加される。例えば、
キシラン分解活性を有する酵素を用いた場合には、酵素
処理により溶出されるパルプ中のキシラン由来の全糖量
がパルプ1kg当たり0.1g〜2.0g、好ましくは
0.5g〜1.0gになるように添加量が決められる。
【0030】本発明の酵素処理工程においては、パルプ
濃度は1〜30重量%、好ましくは2〜15重量%の範
囲で行われる。パルプ濃度が1重量%未満では、処理に
大容量の設備を要するので適さない。パルプ濃度が30
%を超えると、パルプと酵素あるいは培養物を均一に混
合する点で問題が生じるので適さない。処理温度は10
〜90℃、好ましくは30〜60℃の範囲であるが、酵
素の至適温度に近い処理温度がより好ましい。一般的な
酵素の場合、処理温度が10℃未満では反応が不十分と
なる上、そのような温度を得ること自体に多大のコスト
を要するので適さない。一方、温度が90℃を超えて高
くなると、処理系を密閉化しないと熱ロスが大きくなる
上、一般的な酵素の場合、酵素自体が変性し、不活性に
なるので適さない。処理時の溶液pHは3〜10、好ま
しくは5〜9の範囲であるが、酵素の至適pHに近いp
Hがより好ましい。もし、pHの調整が必要な場合は、
任意の酸性溶液またはアルカリ性溶液を添加して調整す
ることができる。前記のpH調整用に用いられる溶液
は、多段漂白シーケンスからの排水を利用できることは
いうまでもない。処理時間は、10分以上、好ましくは
30分〜180分であるが、時間については特に限定さ
れない。
【0031】本発明の酵素処理は、複数回行うこともで
きる。同一酵素を用いて複数回酵素処理を行うこともで
きるし、複数の酵素を用いて複数回酵素処理を行うこと
もできる。また、本発明の酵素処理は、既設或いは新設
を問わず、反応塔、タンク、チェスト等の容器内で実施
することができる。また、耐圧容器内においては加圧状
態での処理も可能である。パルプは酵素処理工程終了
後、多段漂白工程へ送られる。
【0032】本発明の多段漂白処理工程で用いられる漂
白薬品としては、原子状塩素(C)、苛性ソーダ
(E)、次亜塩素酸塩化合物(H)、二酸化塩素
(D)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン
(Z)、硫酸(A)、有機過酸等の公知の漂白剤と漂白
助剤からなる漂白薬品を挙げることができ、これらの中
から適宜選択されて漂白薬品として用いられるが、本発
明においては、多段漂白処理工程中に少なくとも1つ以
上のアルカリ抽出段が含まれる。
【0033】本発明における多段漂白処理工程での漂白
シーケンスとして、例えばC−E/O−H−D、 C/
D−E/O−H−Dのように原子状塩素と塩素系漂白薬
品を含む漂白シーケンスを用いることもできるし、D−
E−D、D−E/O−D、Z−E/O−D、A−D−E
/O−Dのように原子状塩素を含まない漂白シーケンス
を用いることもできる。また、Z−E−P、Z−E/O
−P、A−Z−E/O−P等のように原子状塩素と塩素
系漂白薬品を一切用いない漂白シーケンスを用いること
もできる。
【0034】本発明において、未漂白パルプをアルカリ
酸素漂白し、その後多段漂白し、叩解工程を経て漂白パ
ルプを製造するのに際し、アルカリ酸素漂白直後のパル
プをリファイナー及びビーター等で叩解することによ
り、高白色度パルプが得られる理由については今後の研
究を待たないと明確には断定できないが、本発明者らは
以下のように推測している。つまり、リファイナー及び
ビーター等の叩解処理により、パルプ繊維の表面がフィ
ブリル化し、繊維内部への酵素の浸透性が上昇した、ま
た、パルプ繊維表面積が上昇し、パルプ繊維中の成分と
酵素との接触面が多くなった等の相乗効果により、酵素
との反応性が上昇し最終的に高漂白パルプが得られたと
思われる。更に本発明による付加的な長所として、本発
明により処理されたパルプは、比引裂き強度及び裂断長
が上昇している。パルプ強度アップの理由は、結果とし
て、前叩解処理と多段漂白後の叩解処理の2段叩解処理
となることで、パルプと叩解機のプレート面との接触面
が2倍に増えたことで、パルプ繊維のフィブリル化が促
進されたためと推測している。
【0035】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に
限定されるものではない。以下に示す実施例1〜3およ
び比較例1〜3は、木材チップを蒸解して得られる未漂
白パルプをアルカリ酸素漂白した後のパルプを用いたも
のである。実施例1〜3は、叩解処理後に酵素処理を行
いC−E−Dシーケンスで漂白を行ったものである。比
較例1、2は、酵素処理を行い、次いでC−E−Dシー
ケンスで漂白を行ったものであり、比較例3は、C−E
−Dシーケンスのみで漂白を行ったものである。実施例
1〜3および比較例1〜3で用いられるチップ蒸解後に
アルカリ酸素漂白したパルプは、以下の手順で得た。
【0036】1.未晒パルプの製造 国内産広葉樹材70%とユーカリ材30%からなる広葉
樹混合木材チップを絶乾550g採取し、液比4、絶乾
チップ重量当たり有効アルカリ18%、蒸解液の硫化度
25%、蒸解温度160℃、蒸解時間150分の条件下
で実験用間接加熱用オートクレーブを用いてクラフト蒸
解し、その後廃液とパルプを分離し、パルプを10カッ
トのスクリーンプレートを備えたフラットスクリーンで
精選して670mlCSF、ハンター白色度31.4
%、カッパー価19.9、パルプ粘度24.3mPa・
s(J.TAPPI 44により測定)の広葉樹未漂白
クラフトパルプを絶乾重量で276g(精選パルプ収率
50.1%)得た。
【0037】2.アルカリ酸素漂白パルプの製造 広葉樹未漂白クラフトパルプの絶乾重量80.0gを採
取し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを1.8%添加
し、次いでイオン交換水で希釈してパルプ濃度を10%
に調整し、間接加熱式オートクレーブに入れ、ゲージ圧
力が5kg/cm2となるように純度が99.9%の市
販の圧縮酸素ガスで加圧し、温度100℃で60分間加
熱し、中濃度酸素漂白法により脱リグニンを行った。得
られたパルプをイオン交換水を用いて洗浄、脱水し、6
60mlCSF、白色度が48.5%、カッパー価1
1.0、酸素脱リグニン処理したパルプを得た。パルプ
カッパー価の低下率は44.7%であった。
【0038】一方、カッパー価の測定、フリーネス(C
SF)の測定、パルプ白色度の測定は、特に示さない限
り、それぞれ以下の方法で行った。なお、実施例及び比
較例における薬品の添加率は絶乾パルプ重量当たりの重
量%示す。
【0039】1.カッパー価の測定 カッパー価の測定は、JIS P 8211に準じて行
った。
【0040】2.フリーネスの測定 フリーネスの測定は、JIS P 8121に準じて行
った。
【0041】3.パルプ白色度の測定 パルプを離解した後、Tappi試験法T205os−
71(JIS P 8209)に従って坪量60g/m
2のシートを作製し、JIS P 8123に従ってパルプ
の白色度を測定した。
【0042】4.パルプ比引裂き、裂断長の測定 パルプを離解した後、Tappi試験法T205os−
71(JIS P 8209)に従って坪量60g/m
2のシートを作製し、JIS P 8116に従ってパルプ
の比引裂き強度を測定し、JIS P 8113に従って
裂断長を測定した。
【0043】1.C段における薬品の削減率 薬品の削減率は、パルプの叩解処理ありとなしにおける
漂白に使用したC段の塩素の薬品添加率から式(2)に
より算出した。 C段における合計薬品の削減率、%={(叩解処理なしの場合のC段における 薬品添加率−叩解処理ありの場合のC段における薬品添加率)/叩解処理なしの 場合のC段における薬品添加率}×100…(2)
【0044】2.E段における薬品の削減率 薬品の削減率は、パルプの叩解処理ありとなしにおける
漂白に使用したE段の苛性ソーダの薬品添加率から式
(3)により算出した。 E段における薬品の削減率、%={(叩解処理なしの場合のE段における薬品添 加率−叩解処理ありの場合のE段における薬品添加率)/叩解処理なしの場合の E段における薬品添加率}×100…(3)
【0045】実施例1 アルカリ酸素漂白後のパルプ絶乾重量30.0gをイオ
ン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した後、前叩
解処理としてPFIミル(東西精器製)の叩解羽根とケ
ーシングのクリアランスを0.25mmで500rev
処理を行ない、590mlCSFのパルプを得た。同等
の前叩解処理を再度行いトータルで絶乾重量60.0g
相当のパルプを得た。得られたパルプの白色度は、4
8.0%で白色度の低下は、0.5%であった。
【0046】叩解処理後のパルプの絶乾重量で40.0
gをプラスチック袋に採取し、イオン交換水に濃硫酸を
添加してpHを6.0とした硫酸水溶液で希釈してパル
プ濃度を10%に調整した後、市販のキシラナーゼ(商
品名;イルガザイム40A、チバガイギー社製)溶液2
0μl(対パルプ0.05%)を添加し、60℃で12
0分間、酵素処理を行った。得られたパルプをイオン交
換水を用いて洗浄、脱水し、白色度が51.0%、カッ
パー価9.2の酵素処理パルプを得た。パルプ白色度の
上昇は、6.3%で、パルプカッパー価の低下率は1
6.4%であった。
【0047】続いて、酵素処理後のパルプをプラスチッ
ク袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%
に調整した後、絶乾パルプ重量当たり塩素水を1.70
%添加し、温度が55℃の恒温水槽に30分間浸漬して
C段の漂白を行った。得られたパルプをイオン交換水で
洗浄、脱水しC段処理パルプを得た。
【0048】続いて、C段処理パルプをプラスチック袋
に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%に調
整した後、苛性ソーダ゛をC添加率の1.7倍量加え、温
度60℃で90分間処理し、E段の抽出を行った。得ら
れたパルプをイオン交換水を用いて洗浄、脱水しE段処
理パルプを得た。
【0049】続いて、E段処理パルプをプラスチック袋
に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整
した後、絶乾パルプ重量当たり二酸化塩素を0.40%
添加し、温度70℃で180分間処理し、D段の漂白を
行った。得られたパルプをイオン交換水を用いて洗浄、
脱水しD段処理パルプを得た。
【0050】続いて、D段処理パルプの絶乾重量30g
をイオン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した
後、PFIミル(東西精器製)にて叩解処理を行い、4
50mlCSFとなるように叩解羽根とケーシングのク
リアランスを0.25mmで、5200rev処理を行
った。
【0051】叩解処理後のパルプを離解した後、Tap
pi試験法T205os−71(JIS P 820
9)に従って坪量60g/m2のシートを作製し、JIS
P 8123に従ってパルプの白色度を測定した結果8
4.1%であった。前叩解処理後の白色度及び白色度低
下率、酵素処理後のカッパー価と白色度及びカッパー低
下率と白色度上昇率を表1に、C段薬品添加率、CとE
段の削減率、D段後の白色度及び上昇率、叩解後の白色
度、白色度低下率及びパルプ強度を表2に示した。
【0052】実施例2 アルカリ酸素漂白後のパルプ絶乾重量30.0gをイオ
ン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した後、PF
Iミルにて前叩解処理を行い、550mlCSFとなる
ように叩解羽根とケーシングのクリアランスを0.25
mmで1400rev処理を行った。同等の前叩解処理
を再度行いトータルで絶乾重量60.0g相当のパルプ
を得た。得られたパルプの白色度は、47.6%で白色
度の低下は、0.9%であった。
【0053】叩解処理後のパルプの絶乾重量で40.0
gをプラスチック袋に採取し、イオン交換水に濃硫酸を
添加してpHを6.0とした硫酸水溶液で希釈してパル
プ濃度を10%に調整した後、市販のキシラナーゼ(商
品名;イルガザイム40A、チバガイギー社製)溶液2
0μl(対パルプ0.05%)を添加し、60℃で12
0分間、酵素処理を行った。得られたパルプをイオン交
換水を用いて洗浄、脱水し、白色度が51.1%、カッ
パー価8.7の酵素処理パルプを得た。パルプ白色度の
上昇は、7.4%で、パルプカッパー価の低下率は2
0.9%であった。
【0054】続いて、酵素処理後のパルプを実施例1と
同様の処理方法および薬品添加率にて多段漂白処理(C
−E−D処理)を行い、D段処理パルプを得た。
【0055】続いて、D段処理パルプの絶乾重量30g
をイオン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した
後、PFIミル(東西精器製)にて叩解処理を行い、4
50mlCSFとなるように叩解羽根とケーシングのク
リアランスを0.25mmで、3400rev処理を行
った。
【0056】叩解処理後のパルプを離解した後、実施例
1と同様にしてTappi試験法に従って坪量60g/
2のシートを作製し、パルプの白色度を測定した結果8
4.5%であった。前叩解処理後の白色度及び白色度低
下率、酵素処理後のカッパー価と白色度及びカッパー低
下率と白色度上昇率を表1に、C段薬品添加率、CとE
段の削減率、D段後の白色度及び上昇率、叩解後の白色
度、白色度低下率及び叩解後のパルプ強度を表2に示し
た。
【0057】実施例3 アルカリ酸素漂白後のパルプ絶乾重量30.0gをイオ
ン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した後、PF
Iミル(東西精器製)にて前叩解処理を行い、500m
lCSFとなるように叩解羽根とケーシングのクリアラ
ンスを0.25mmで3100rev処理を行った。同
等の前叩解処理を再度行いトータルで絶乾重量60.0
g相当のパルプを得た。得られたパルプの白色度は、4
7.1%で白色度の低下は、1.4%であった。
【0058】前叩解処理後のパルプの絶乾重量で40.
0gをプラスチック袋に採取し、イオン交換水に濃硫酸
を添加してpHを6.0とした硫酸水溶液で希釈してパ
ルプ濃度を10%に調整した後、市販のキシラナーゼ
(商品名;イルガザイム40A、チバガイギー社製)溶
液20μl(対パルプ0.05%)を添加し、60℃で
120分間、酵素処理を行った。得られたパルプをイオ
ン交換水を用いて洗浄、脱水し、白色度が50.7%、
カッパー価8.8の酵素処理パルプを得た。パルプ白色
度の上昇は、7.6%で、パルプカッパー価の低下率は
20.0%であった。
【0059】続いて、酵素処理後のパルプを実施例1と
同様の処理方法および薬品添加率にて多段漂白処理(C
−E−D処理)を行い、D段処理パルプを得た。
【0060】続いて、D段処理パルプの絶乾重量30g
をイオン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した
後、PFIミルにて叩解処理を行い、450mlCSF
となるように叩解羽根とケーシングのクリアランスを
0.25mmで、2800rev処理を行った。
【0061】叩解処理後のパルプを離解した後、実施例
1と同様にしてTappi試験法に従って坪量60g/
2のシートを作製し、パルプの白色度を測定した結果8
4.6%であった。前叩解処理後の白色度及び白色度低
下率、酵素処理後のカッパー価と白色度及びカッパー低
下率と白色度上昇率を表1に、C段薬品添加率、CとE
段の削減率、D段後の白色度及び上昇率、叩解後の白色
度、白色度低下率及びパルプ強度を表2に示した。
【0062】比較例1 アルカリ酸素漂白後にパルプの前叩解処理を行わないこ
と以外は、実施例1と同様にして酵素処理、多段漂白(C
−E−D)を行い、続いて、叩解処理を行い、450m
lCSFとなるように叩解羽根とケーシングのクリアラ
ンスを0.25mmで、5600rev処理を行った。
パルプ白色度が83.0%の漂白パルプを得た。酵素処
理後のカッパー価と白色度及びカッパー低下率と白色度
上昇率を表1に、C段薬品添加率、CとE段の削減率、
D段後の白色度及び上昇率、叩解後の白色度、白色度低
下率及びパルプ強度を表2に示した。
【0063】比較例2 アルカリ酸素漂白後にパルプの前叩解処理を行わないこ
と及びC段添加率2.6%としたこと以外は、実施例1と
同様にして酵素処理、多段漂白(C−E−D)を行い、
続いて、叩解処理を行い、450mlCSFとなるよう
にクリアランス0.25mmで、5600rev処理を
行った。パルプ白色度が84.5%の漂白パルプを得
た。酵素処理後のカッパー価と白色度及びカッパー低下
率と白色度上昇率を表1に、C段薬品添加率、CとE段
の削減率、D段後の白色度及び上昇率、叩解後の白色
度、白色度低下率及びパルプ強度を表2に示した。
【0064】比較例3 アルカリ酸素漂白後にパルプの前叩解処理及び酵素処理
を行わないこと更にC段添加率3.7%としたこと以外
は、実施例1と同様にして多段漂白(C−E−D)を行
い、続いて、叩解処理を行い、450mlCSFとなる
ように叩解羽根とケーシングのクリアランスを0.25
mmで、5400rev処理を行った。パルプ白色度が
84.4%の漂白パルプを得た。酵素処理後のカッパー
価と白色度及びカッパー低下率と白色度上昇率を表1
に、C段薬品添加率、CとE段の削減率、D段後の白色
度及び上昇率、叩解後の白色度、白色度低下率及びパル
プ強度を表2に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】表から明らかなように、酸素漂白法により
脱リグニンされたパルプ(カッパー価11.0)を、酵
素処理の直前で前叩解処理の度合いの大小に大きく関係
することなく前叩解処理することにより、酵素処理の効
果が促進し、酵素処理での白色度向上が顕著に進み(カ
ッパー価の低下率は6.3〜7.6%)、極めて少ない
漂白薬品の使用量で所望の白色度を有するパルプを得る
ことができる(実施例1〜3)。また、叩解処理後のパ
ルプは、比引裂き強度、裂断長共に5〜10%向上す
る。
【0068】更に、本発明の前叩解処理を行うことによ
り、酵素処理の効率を向上させなければ、同じ薬品添加
率の多段漂白シーケンスではパルプの白色度を所望の水
準に到達させることができない(パルプ白色度83.
0、比較例1)。また、本発明の前叩解処理を行わず、
白色度を所望の水準にするためには、大幅な多段漂白薬
品添加率アップを余儀なくされる(C段添加率2.6
%、比較例2)。一方、本発明の前叩解処理に加え、酵
素処理も行わない場合は、比較例2に比べ、更に多段漂
白における漂白薬品が必要となる(C段添加率3.7
%、比較例3)。
【0069】
【発明の効果】リグノセルロース物質を蒸解して得られ
る未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、次いで酵素処理
工程を経た後、多段漂白処理して漂白パルプを製造する
方法において、アルカリ酸素漂白直後においてリファイ
ナー処理、ビーター処理等の前叩解処理をすることによ
り、漂白性を顕著に改善し、漂白薬品の使用量を大幅に
削減し得る漂白パルプの製造方法を提供するという効果
を奏する。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リグノセルロース物質を蒸解して得られた
    未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、次いで酵素処理工
    程を経た後、多段漂白処理工程を経て漂白パルプを製造
    する方法において、アルカリ酸素漂白直後に前叩解処理
    工程を設けることを特徴とする漂白パルプの製造方法。
  2. 【請求項2】酵素処理工程に用いられる酵素が、少なく
    ともキシラン分解活性を有する酵素であることを特徴と
    する請求項1記載の漂白パルプの製造方法。
  3. 【請求項3】前叩解処理工程後のパルプのろ水度が45
    0〜600mlCSFであることを特徴とする請求項1
    記載の漂白パルプの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006219767A (ja) * 2005-02-08 2006-08-24 Univ Of Tsukuba 製紙用化学パルプ中の不飽和ウロン酸の除去方法
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