JPH10251807A - 熱間加工性および極低温靱性の優れた高Mnステンレス鋼材 - Google Patents

熱間加工性および極低温靱性の優れた高Mnステンレス鋼材

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JPH10251807A
JPH10251807A JP9056499A JP5649997A JPH10251807A JP H10251807 A JPH10251807 A JP H10251807A JP 9056499 A JP9056499 A JP 9056499A JP 5649997 A JP5649997 A JP 5649997A JP H10251807 A JPH10251807 A JP H10251807A
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光明 柴田
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隆司 細谷
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孝道 浜中
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 板厚中央部で、4Kの極低温での 0.2%耐力
が 1200N/mm2以上の高強度と、KIC値で評価される破壊
靱性値が 200MPam1/2 以上の高靱性を有し、同時に、熱
間加工割れを防止した高Mnステンレス鋼材を提供す
る。 【構成】 高窒素型高Mnステンレス鋼材の組成のう
ち、特に、かつ35%≦Ni eq+0.8 ×Creq≦40%を満
足するとともに、P:0.008 %以下、S:0.003 %以
下、P%+S%≦0.011 %、O:0.0050%以下、Pb:
5 ×10-4%以下、清浄度d:0.1 %以下、に各々規制
し、更に、平均オーステナイト粒径が0.05〜0.17mmで、
かつオーステナイト粒の展伸度AIl が1.2 以下である
極低温用高Mnステンレス鋼材である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱間加工性に優れ、か
つ、絶対温度4K(-269℃)の極低温で高強度、高靱性
を有する高Mnステンレス鋼材に関するものである。
【0002】
【従来技術】近年、大型超電導マグネットを利用したM
HD発電や核融合炉などに関する技術が急速に進展して
いる。これらの装置で用いられる超電導マグネットコイ
ルは、液体ヘリウムにより絶対温度4Kまで冷却された
状態で運転されるため、これらの支持体や構造物等の構
造体も同様の温度まで冷却される。したがって、これら
の構造体に使用される鋼板などの鋼材には、通常の鋼材
とは違う特性を兼備することが要求されるとともに、こ
れらの要求が益々厳しくなってきている。
【0003】まず、超電導マグネットコイルが、超電導
状態で高磁界を形成すると、前記支持体や構造物には強
大な電磁力が作用し、強磁場の中で繰り返し高応力が働
く。したがって、このような用途に使用される鋼材とし
ては、その溶接部を含めて、極低温で高い耐力と優れた
破壊靱性を有する非磁性鋼が必要とされる。
【0004】次に、超電導マグネットコイルの温度を4
Kに到達させるために、前記支持体や構造物の雰囲気を
真空にして断熱する必要から、支持体や構造物の表面に
錆があってはならない。したがって、このような用途に
使用される鋼には更に、その溶接部を含めて、優れた耐
錆性を有する非磁性鋼が必要とされる。
【0005】また、この超電導マグネットコイルは、出
力の増大に伴い、近年次第に大型化しており、その支持
体や構造物の製作には、例えば 110mm厚×2500mm幅
×10000 mm長さ以上の、より厚肉でかつ大面積の鋼材
が必要とされる。
【0006】そして、更に重要なことは、これらの特性
に加えて、大型超電導マグネットの支持体や構造物用の
鋼材に対しては、4Kにおいて、1200N/mm2 以上の 0.2
%耐力(YS)と、200MPam 1/2 以上の破壊靱性値KIC
要求されるようになっている点である。しかも、この高
強度、高靱性は、従来のような鋼材のt/4(t:板
厚)位置での材質保障ではなく、板厚中央部での保障に
変わってきている。この特性要求は、板厚中央部の材質
がより制御しにくい厚肉でかつ大面積の鋼材にとって
は、非常に厳しい要求であり、このような要求を安定し
て満足することは容易ではなかった。
【0007】これまでに、本用途における厚肉鋼材の従
来技術としては、まず、高窒素型オーステナイトステン
レス鋼である18%Cr− 8%NiのSUS304LNが
あるが、この材料は、前記4Kにおける0.2 %耐力が80
0N/mm2程度しかなく、要求される1200N/mm2 以上の 0.2
%耐力を満足できず、前記近年の厳しい特性要求を満足
できない。
【0008】これに対し、高窒素型で高Mn系の非磁性
鋼材を適用することが提案されているが、この鋼材は、
特公昭55−51423 号公報の従来技術の欄に記載されてい
るように、圧延や鍛造などの熱間加工性が極めて悪いと
いう大きな問題がある。具体的には、この高Mn系非磁
性鋼材を熱間加工する場合、例えば、連鋳後のスラブの
熱間圧延や、造塊後の鋼塊の分塊圧延や厚板への熱間圧
延において、スラブや鋼塊の全表面に大きな割れが発生
したり、鋼板の全表面や幅方向端部に割れが生じてしま
う。
【0009】とりわけ、大質量の鋼塊、スラブあるいは
鋼板を用いて熱間加工する場合、前記割れの発生のため
に、前記超電導マグネットコイルの大型化に対応した、
厚肉で広幅、長尺の鋼材を、加工後の圧延材から採取で
きないという問題がある。そして、この問題は、超電導
マグネットコイルおよびその構造体の大型化、ひいては
核融合発電設備の実用化に対する障害となっている。
【0010】したがって、従来より、この種高Mn系非
磁性鋼材の熱間加工性を改善するために種々の技術が提
案されている。まず、その技術の代表的なものは、鋼材
の熱間加工性を阻害する不純物の低減なり無害化であ
る。
【0011】例えば、前記特公昭55−51423 号公報に
は、LNGのタンクやタンカー等の低温用鋼として、低
温靱性の優れたオーステナイト鋼を用いる技術が開示さ
れている。そして、この従来技術では、オーステナイト
鋼の熱間加工性を改善すべく、AlとCaを複合添加し
て、熱間加工性を阻害する、鋼中のS、Oの固定および
介在物の形態変化により、鋼材の熱間加工割れを防止し
ている。
【0012】特開昭59−229471号や特公平3 −59136 号
公報では、高窒素型オーステナイトステンレス鋼の分塊
圧延時の割れを防止するために、鋼中のS、Oの低減に
加えて、鋼中のPを、通常の0.020 〜0.035 %の含有量
から、0.020 %以下に低減する技術が開示されている。
【0013】特公平2 −45695 号、特開昭61−170545号
公報には、耐錆性極低温用高Mn鋼について、4Kでの
50J以上のシャルピ衝撃吸収エネルギーを得るため
に、前者はS量を0.003 %以下とし、後者はCaを0.00
1 〜0.020 %添加した技術が開示され、両者とも、熱間
加工性を改善すべく、Alを添加している。
【0014】特開平2 −15151 号公報には、超電導マグ
ネット構造用の高Mn系のオーステナイト鋼であって、
Nb3 Sn生成熱処理後の極低温特性(4Kでの高い破
壊靱性)を得るために、Cr炭化物の粒界析出抑制を目
的としてNb、TiをMoとともに共存含有するととも
に、Sn、Sb、Asの総量を0.020 %以下に規制した
技術が開示されている。この技術においても、熱間加工
性を改善すべく、鋼中のPやS量を制限している。
【0015】また、熱間加工自体の制御により、表面割
れを防止する技術も種々提案されている。例えば、特開
平7 −90366 号公報には、高Mnステンレス系非磁性鋼
について、δフェライト生成による熱間加工性と靱性の
劣化を防止すべく、Mn量やCr量の増加に応じて、N
iを増量するとともに、熱間加工による表面割れを防止
するために、1150〜1250℃の狭い領域で鋼塊を加熱する
こと、および分塊圧延も表面温度が1000℃で終了させる
ことなど、圧延の条件も特定した技術が開示されてい
る。そして、この技術においても、熱間加工性を改善す
べく、鋼中のPやSを制限している。
【0016】特公平5 −36482 号公報では、液体He温
度(4K)において、1200MPam(N/mm2) 以上の 0.2%耐
力(YS)と、150MPam 1/2 以上の破壊靱性値KICを有す
る、核融合炉超電導マグネット構造用の高Mn系のオー
ステナイト鋼の熱間加工性を改善すべく、前記特開平7
−90366 号公報と同様に、1150〜1250℃の狭い領域で鋼
塊を加熱後、950 ℃以上で分塊圧延を終了させ、ついで
やはり1150〜1250℃の狭い領域で加熱後、950 〜1010℃
で厚板圧延を終了させる技術が開示されている。また、
この技術でも、鋼材の熱間加工性を改善すべく、鋼中の
PやSを制限している。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
従来技術に記載された熱間加工性改善技術のうち、ま
ず、熱間加工性を阻害する鋼中の不純物の低減技術、即
ち、AlやCaなどを添加して、鋼中のP、S、Oを固
定ないし低減する、あるいは、介在物の形態制御を行う
だけでは、後述する通り、前記超電導マグネットコイル
の大型化に対応した、厚肉で広幅、長尺の鋼材の熱間加
工割れを完全に防止することはできない。
【0018】また、加熱温度や圧延終了温度を特定の範
囲で制御する熱間加工性改善技術では、加熱温度や圧延
終了温度の設定範囲が、前記した通り、必然的に100 ℃
以下の狭い領域となる。このため、超電導マグネットコ
イルなどの大型化に対応した、特に大質量の鋼塊または
スラブを用いて、広幅、長尺の鋼材を製造する場合、加
工中の温度低下が大きく、設定条件内に、加工中の鋼塊
またはスラブ全域を入れることは極めて困難である。し
たがって、適正加工温度を下回り、設定条件外になる鋼
塊部分が必然的に生じるため、この部分において割れが
生じ、熱間加工割れを完全に防止することはできない。
【0019】更に重要な点は、これら従来技術では、熱
間加工割れを完全に防止した上で、オーステナイト単相
の高Mn系ステンレス鋼材の、4Kにおいて、1200N/mm
2 以上の 0.2%耐力や、200MPam 1/2 以上の破壊靱性値
を、両方とも、しかも鋼材の板厚中央部で安定的に保障
ないし確保することは考慮されておらず、また、この両
特性を達成してもいない点である。即ち、熱間加工割れ
防止と、4Kでの高強度、高靱性の材質とは、言わば相
矛盾する技術的課題であり、特に大質量ないし大面積の
鋼材にとっては、非常に厳しい要求特性であり、このよ
うな要求を安定して満足する鋼材は従来無かった。
【0020】現に、例えば、前記特開平2 −15151 号公
報は、この種鋼の特性として、4Kにおける 0.2%耐力
と、破壊靱性値KICとを両者とも開示しているが、実施
例において、 0.2%耐力はぎりぎり1200N/mm2 を確保し
ているものの、一方、破壊靱性値の方は、最高でも172M
Pam 1/2 程度に過ぎず、200MPam 1/2 以上の破壊靱性値
を得られていない。しかもこの鋼材自体の厚みは30mm
程度でしかなく、また鋼材特性の試験片採取位置は、明
記されていないが、通常の鋼材のt/4(t:板厚)位
置であり、本発明で対象とする板厚中央部ではないと推
察される。
【0021】また、前記特公平5 −36482 号公報でも、
実施例において、鋼材厚みが70mmの厚板の特性とし
て、4Kにおける1200N/mm2 以上の 0.2%耐力(YS)
と、最高で210MPam 1/2 程度の破壊靱性値(KIC)を有
することが開示されている。しかし、この鋼材も板厚は
厚いが、幅や長さに関する記載が無く、本発明が対象と
する、50mm厚×2000mm幅×10000 mm長さ以上の、
より好ましくは110 mm厚×2000mm幅×10000 mm長
さ以上の、より厚肉でかつ大面積の鋼材よりも小さい鋼
材を対象としているものと推察され、また鋼材特性の試
験片採取位置は、通常の鋼材のt/4(t:板厚)位置
であることが明記されており、本発明で対象とする板厚
中央部ではない。
【0022】即ち、鋼材の板厚中央部は、より表層側の
部分に比して、熱処理や加工の影響が及びにくく、最も
材質が制御しにくく、材質が劣化し易い部分であり、厚
肉でかつ大面積の鋼材になるほど、通常の鋼材の試験片
採取位置であるt/4位置に比して、特性が劣る。した
がって、厚肉でかつ大面積の鋼材になるほど、鋼材のt
/4位置での特性が優れていても、板厚中央部が同等に
優れている保障は何もなく、板厚中央部の特性を保障し
ようとすれば、t/4位置ではなく、板厚中央部におい
て直接保障する必要がある。
【0023】したがって本発明は、これら従来の高Mn
ステンレス鋼や高Mnオーステナイト鋼の問題に鑑み、
板厚中央部で、4Kの極低温での 0.2%耐力が 1200N/m
m2以上の高強度と、KIC値で評価される破壊靱性値が 2
00MPam1/2 以上の高靱性を有し、同時に、熱間加工割れ
を防止し、熱間加工性に優れた高Mnステンレス鋼材を
提供することを目的とする。
【0024】
【問題を解決するための手段】熱間加工割れ発生を防止
し、かつ、板厚中央部で、4Kでの高強度、高靱性を安
定的に確保するということは、厚肉で広幅材の極低温用
鋼材にとって、前記した通り、相反する課題となる。し
かし、本発明者等は、この課題について鋭意検討を行
い、その結果、まず、鋼材の鋼種としては、オーステナ
イト鋼の欠点である低い耐力を克服できる高Mnステン
レス鋼を選択した。
【0025】次に、熱間加工割れ対策の方向として、デ
ンドライト粒界の強度および延性を向上させることを選
択した。オーステナイト単相とした、高Mnステンレス
鋼からなる鋳造ままの鋼塊、連鋳スラブの熱間圧延や、
ブレークダウンスラブの熱間圧延の過程で発生する割れ
は、共通して、オーステナイト未再結晶域で加工を受け
たデンドライト粒界に生成している。そして、このこと
から、熱間加工割れを防止するためには、前記デンドラ
イト粒界の強度および延性を向上させることが有効であ
る。
【0026】このデンドライト粒界の強度および延性を
向上させるための手段として、本発明では、鋳造の凝
固過程でデンドライト粒界への不純物元素や偏析を抑制
すべく、固液凝固温度範囲を狭めることを主眼として、
オーステナイト安定化元素の合金量を適正に制御するこ
と、および、凝固時にデンドライト粒界偏析する有害
な不純物元素を見極めて、その量を低位に制御すること
に着目した。また、これらの手段に更に加えて、4Kに
おいて、凝固金属ままで、高耐力、高靱性を発揮させる
ために、Delongの状態図にあるNi当量(Ni
eq)とCr当量(Creq)とを適正に制御すること、
平均オーステナイト粒径と展伸度を制御することとし
た。
【0027】そして、これら〜を同時に満足するよ
う、後述するごとく、高Mnステンレス鋼の化学成分を
適正量に制御することにより、熱間加工割れの発生を防
止して、健全な表面および内部品質の鋼材が、高歩留り
で得られるとともに、4Kでの耐力および破壊靱性値に
ついても要求値を満足できることを見いだし、本発明に
至ったものである。
【0028】本発明では、前記技術思想に基づき、高M
nステンレス鋼材の組成を、質量%にて、C:0.03〜0.
10%、Si:0.10〜0.50%、Mn:18〜30%、Ni:5
〜8%、Cr:12〜18%、Mo:0.50〜 3.00 %、A
l:0.01〜0.07%、N:0.10〜0.28%、を含有し、かつ
35%≦Nieq+0.8 ×Creq≦40%( 但し、Nieq= N
i%+30×C%+30×N%+0.5 ×Mn%、Creq= C
r%+Mo%+1.5 ×Si%+0.5 ×Nb%)を満足す
るとともに、P:0.008 %以下、S:0.003 %以下、P
%+S%≦0.011 %、O:0.0050%以下、Pb:5 ×10
-4%以下、清浄度d(但しJIS G 0555測定法による) :0.
1 %以下、に各々規制し、残部Feおよび不可避的不純
物からなりものとし、更に、平均オーステナイト粒径(
但しASTM E112 −1995,13.5,234 頁の測定方法による)
が0.05〜0.17mmで、かつオーステナイト粒の展伸度AIl
( 但しASTM E112 −1995,16.3.5,237 頁の測定方法によ
る)が1.2 以下とする。
【0029】また、選択添加元素として更に、Nb、
V、Tiの内から1種以上と、B、Caの内から1種以
上を含有しても良い。
【0030】
【発明の実施の形態】以下に、本発明における化学成分
の限定理由について説明する。Cは、オーステナイトの
安定化を通じて非磁性の確保および4Kでの耐力上昇に
有効な元素である。含有量が0.03%未満ではこのような
効果が乏しく、一方、0.10%を超えて含有すると、鋳造
冷却時に、デンドライト粒界へのCr炭化物の析出が顕著
になり、4Kでの靱性や耐食性が劣化する。したがっ
て、C含有量は0.03〜0.10%の範囲とする。
【0031】Siは溶鋼の脱酸のために必須の元素であ
り、また耐力上昇に有効であるが、0.10%未満では効果
が不十分であり、 0.50 %を超えると高温延性が低下
し、溶接時の高温割れが発生しやすくなるとともに、靱
性劣化をもたらす。したがって、Si含有量は0.10〜0.
50%の範囲とする。
【0032】Mnは、耐溶接高温割れ性に悪影響を与え
るNiに変わり(代替して)、オーステナイト形成元素
として、4Kでの靱性の向上に不可欠な元素である。ま
た、Nの固溶限を増大させて、オーステナイト組織の安
定化に寄与する。含有量が18%未満では、4Kでの充分
な靱性(破壊靱性値が 200MPam1/2 以上)を得ることが
できず、またα’マルテンサイトなどが析出し易くなり
非磁性が失なわれる。一方、30%を超えて過多に含有す
ると、熱間加工性が劣化し、歩留りが悪くなり、コスト
上昇を招く。したがって、Mn含有量は18〜30%の範囲
とする。
【0033】Niは、溶接金属の凝固過程でのδフェラ
イトの晶出を抑制するとともに、オーステナイト組織の
安定と、4Kでの靱性の向上(破壊靱性値が 200MPam
1/2 以上)を得るために不可欠な元素である。Niが5
%未満の含有量ではこのような優れた効果を得ることが
できない。しかし、一方、Niの過剰な含有は、完全オ
ーステナイト組織における固液凝固温度範囲を広げて、
低融点不純物元素のデンドライト粒界への偏析を助長す
るとともに、Sと反応して溶接金属の粒界に、低融点の
NiS化合物を析出させ、凝固金属の粒界の延性を劣化
させる。したがって、Niの過剰な含有は、耐溶接高温
割れ性に悪影響を与えるので、その上限の含有量は8 %
とすべきであり、Ni含有量は5 〜8 %の範囲とする。
【0034】Crは、耐銹性を付与するとともに、オー
ステナイトを安定化し、4Kでの耐力の上昇のために必
要であり、また、Nの固溶限も増大させる。含有量が12
%未満ではこの効果がなく、18%を超えると溶接金属の
凝固過程で、δフェライトが晶出して完全オーステナイ
ト組織が維持しえなくなり、靱性を低下させ、4Kでの
充分な靱性(破壊靱性値が 200MPam1/2 以上)を得るこ
とができない。したがって、Cr含有量は12〜18%の範
囲とする。
【0035】更に、NiとCrは、4Kにおいての耐
力、靱性および非磁性を確保するために、各元素量の限
定に加えて、Delongの状態図にあるNi当量(N
eq)とCr当量(Creq)とが、Nieq+0.8 ×Cr
eqを35%以上とする必要がある。これが35%未満である
と、完全オーステナイト組織であっても、4Kにおける
必要靱性が得られない。
【0036】そしてまた、一方で、溶接時の高温割れ感
受性を改善するためには、Creqに応じて、Nieqに上
限の制約を設ける必要があり、Nieq+0.8 ×Creq
40%以下とする。40%を越えた場合、溶接高温割れ感受
性が増大してしまう。但し、このNieqとCreqにおい
て、Nieq= Ni%+30×C%+30×N%+0.5 ×Mn
%、Creq= Cr%+Mo%+1.5 ×Si%+0.5 ×N
b%である。
【0037】NはCと同様にオーステナイトの安定化と
4Kでの耐力向上に有効な元素である。また、CはCr
炭化物の粒界析出による靱性劣化をもたらすが、Nはか
かる悪影響をおよぼさない。上記効果を発揮させるため
には、0.15%以上の含有が必要であるが、0.28%を超え
ると靱性の劣化が著しく、耐溶接高温割れ性に乏しくな
る。よって、N含有量は0.15〜0.28%の範囲とする。
【0038】Alは、溶鋼の脱酸元素として、固溶酸素
を捕捉するとともに、ブローホールの発生を防止して、
4Kでの靱性の向上のために必要な元素である。0.01%
未満では十分な効果が得られず、いっぽう、0.07%を超
えると、アルミナ系介在物の増加により、逆に4Kでの
靱性を劣化させる。したがって、Al含有量は0.01〜0.
07%の範囲とする。
【0039】Moは、固溶強化元素であり、4Kでの0.
2 %耐力を向上させる元素である。また、Cr炭化物の
粒界析出に起因した靱性の劣化を防止するのにも有効で
あるが、このような効果は 0.50 %未満では得られず、
また3.00%を超えると、耐力向上効果は飽和する反面、
4Kでの靱性が劣化する。よって、Mo含有量は 0.50
〜 3.00 %の範囲とする。
【0040】次に、本発明の選択的添加元素の含有の意
義と含有量限定理由について述べる。 Nb、V、Ti
は炭窒化物を析出させて、析出強化により4Kでの0.2
%耐力向上に有効な元素であるが、いずれの含有量も0.
01%未満ではその効果は乏しく、一方、いずれの含有量
も0.50%を超えて含有すると、4Kでの靱性を劣化させ
る。したがって、Nb、V、Tiの一種または2種以上
の含有量は、総量で0.01〜 0.50 %の範囲とする。
【0041】Caは、鋼の溶製時に強脱酸効果を発揮
し、4Kでの靱性に有害な固溶酸素を捕捉して減少させ
るとともに、非金属介在物の微細化に有効である。含有
量が0.0010%未満では、このような効果に乏しく、逆に
0.0035%を超えて含有すると鋼の清浄度を悪くする。し
たがって、Caの含有量は0.0010〜0.0035%の範囲とす
る。
【0042】Bは、オーステナイト粒界に偏析すること
により、粒界を強化して4Kでの耐力を向上させる効果
があるが、含有量が0.0001%未満では、このような効果
に乏しく、逆に0.0030%を超えて含有すると鋼の靱性を
劣化させる。したがって、Bの含有量は0.0001〜0.0030
%の範囲とする。
【0043】次に、不純物の規制について、本発明にお
いては、熱間加工割れ防止の点からP、S、O、Pbを
合わせて、各々規制することを特徴としている。これら
の不純物含有量が高いと、前記した通り、凝固過程での
デンドライト粒界に低融点不純物元素が偏析し、耐熱間
加工割れ性を劣化させる。
【0044】まず、PおよびSは、耐熱間加工割れ性を
劣化させる元素であり、高Mnステンレス鋼塊の耐熱間
加工割れ性を確保するためには、P:0.008 %以下、
S:0.003 %以下、に各々規制する必要がある。
【0045】Oは、固溶酸素、ブローホール、非金属介
在物として残留して、4Kでの靱性を劣化させる。ま
た、高Mnステンレス鋼塊の耐熱間加工割れ性を劣化さ
せるため、歩留りが悪くなり、コスト上昇を招く。した
がって、Oの含有量は0.0050%以下にする必要がある。
【0046】Pbの規制は本発明では重要な規定であ
る。本発明では、前記P、S、O等の不純物の他に、高
Mnステンレス鋼塊の耐熱間加工割れ性を確保するため
に、Pbを規制の対象とすることが特徴である。本発明
者らは、高Mnステンレス鋼塊の耐熱間加工割れ性が、
Pb含有量と正の相関があることを知見した。Pbは、
溶製原材料のメタリックCrに含まれるため、このメタ
リックCr添加とともに鋼中に混入し易い。したがっ
て、高Mnステンレス鋼塊の熱間加工割れ感受性を低減
するためには、原材料や製造過程から必然的に含まれる
低融点のPbが固液共存凝固域においてデンドライト粒
界に偏析する量を減らすことが重要である。このため、
Pbは5 ×10-4%以下に規制することが重要である。
【0047】更に、本発明では、耐熱間加工割れ性の確
保とともに、かつ、4Kでの高強度、高靱性を安定的に
確保するために、清浄度d( 但しJIS G 0555測定法によ
る)と、平均オーステナイト粒径( 但しASTM E112 −199
5,Lineal Intercept Procedure 13.5, 234 頁の測定法
による) と、展伸度AIl ( 但しASTM E112 −1995,Speci
mens with Nonequiaxed Grain Shapes 16.3.5, 237頁の
測定方法による) とを特定することを特徴とする。因み
にこれらは、熱間加工後の鋼板における特性値であり、
熱間加工後の鋼板のこれら特性値を特定することによっ
て、鋼板の熱間加工性自体が確保できるとともに、合わ
せて熱間加工後の鋼板の4Kでの高強度、高靱性を安定
的に確保できる。
【0048】まず、鋼材の平均オーステナイト粒径は、
4Kでの 0.2%耐力と破壊靱性値とに影響を及ぼし、粒
径が細かくなるほど 0.2%耐力は上昇するが、逆に破壊
靱性値は低下するという関係にある。200MPam 1/2 以上
の破壊靱性値KICを確保するためには、0.05mm以上の平
均オーステナイト粒径が必要であり、また、1200N/mm 2
以上の 0.2%耐力(YS)を確保するためには、0.17mm以
下の平均オーステナイト粒径が必要である。したがっ
て、4Kでの 0.2%耐力と破壊靱性値とを共に満足させ
るためには、平均オーステナイト粒径を0.05〜0.17mmと
する必要がある。この平均オーステナイト粒径は、ASTM
E112 −1995,Lineal Intercept Procedure 13.5, 234
頁の測定法の通り、一辺100mm の方形内のオーステナイ
ト粒の数を測定し、これを顕微鏡の倍率で割った値が、
平均オーステナイト粒径として測定される。
【0049】次に、4Kでの破壊靱性値は、オーステナ
イト粒の展伸度と負の相関がある。4Kでの破壊靱性値
200MPam 1/2 以上を満足させるためには、ASTM E112 −
1995,16.3.5, 237頁の測定方法による展伸度AIl を1.2
以下にする必要がある。この展伸度AIl は、ASTM E112
−1995,Specimens with Nonequiaxed Grain Shapes 16.
3.5, 237頁の測定方法で、以下の通り規定される。
【0050】
【数1】
【0051】また、鋼材中の非金属介在物の存在は、4
Kでの破壊靱性値に悪影響を及ぼす。本発明では、この
鋼材中の非金属介在物を、JIS G 0555測定法による清浄
度dで規定し、4Kでの破壊靱性値200MPam 1/2 以上を
満足させるために、清浄度dを0.1 %以下とする。JIS
G 0555測定法による清浄度dは、d=n/(p×f)×
100%で表される(但し、p;顕微鏡視野内の挿入ガ
ラス板上の総格子点数、f;視野数、n;f個の視野に
おける全介在物によって占められた格子点中心の数)。
つまり、清浄度dは、非金属介在物の量の母材生地での
占有面積割合を示している。
【0052】次に、本発明高Mnステンレス鋼の製造方
法を説明する。本発明高Mnステンレス鋼は、高Mnス
テンレス鋼の通常の製法により製造可能であり、鋼の溶
製後、分塊圧延乃至熱間鍛造や、厚板圧延などの熱間加
工を行い製造される。ただ、本発明高Mnステンレス鋼
は、従来の高Mnステンレス鋼に比して熱間加工性が格
段に向上しているものの、炭素鋼や低合金鋼に比べると
熱間加工性は劣る。したがって、分塊圧延や厚板圧延の
加熱温度や仕上温度が低すぎると、本発明にも係わら
ず、鋼塊、鋼板の表面に割れが生じ、歩留の低下を招く
恐れがある。これを防止するためには、加熱温度や仕上
温度を高めにすることが望ましく、加熱温度を1000〜12
50℃とし、仕上温度を 900℃以上とすることが望まし
い。圧延の後の冷却は空冷あるいは強制冷却のいずれで
もよい。
【0053】本発明では、後述する通り、最適加工温度
範囲が広がっている(230℃以上)ので、前記望まし
い条件でも、その温度範囲は、従来の加熱温度や圧延終
了温度の設定範囲(100 ℃程度)よりは余程広い。した
がって、特に大質量(広幅で長尺)の鋼塊またはスラブ
をこのより好ましい温度条件で加工しても、加工中に鋼
塊またはスラブが温度低下して適正加工温度を下回り、
熱間加工割れを生じることはない。
【0054】
【実施例】
〔実施例1〕次に、以上説明した本発明高Mnステンレ
ス鋼材の各要件の意義について、実施例を挙げて説明す
る。
【0055】表1、2、3に示す化学成分、清浄度、平
均オーステナイト粒径、展伸度などを有する偏平鋼塊を
各々溶製し、これら各鋼塊の熱間加工割れ感受性を調査
した。鋼塊の熱間加工割れ感受性は、鋼塊表層部から引
張試験片を採取して、高温高速引張試験(グリーブル試
験)を行い、破断部の断面収縮率(RA)で評価した。
この場合、RAが40%以上になると、分塊圧延におい
て割れが発生しないことが経験的に分かっており、この
試験では、RAが40%以上であることを、割れが発生
しない臨界的な条件乃至基準とした。
【0056】まず、Pb量の鋼塊の熱間加工割れ感受性
への影響について、図1〜3を用いて説明する。図1
は、前記表1のNo.1〜4のPb量が異なる供試材
を、各加工温度(例えば、○印のNo.1の供試材では
1160〜1225℃)に10℃/sの速度で加熱およ
び10分間保持し、この加熱状態のままで、ひずみ速度
を2として圧縮加工した場合(On heating) の、断面収
縮率(RA)と加工温度との関係を示している。図1の
断面収縮率(RA)に対するPb量の影響から明らかな
通り、Pb量が低い供試材ほど、熱間加工割れを発生し
ない(RAが40%以上の)加熱温度の上限がより高温
側に広がることが分かる。
【0057】図2に、前記表1のNo.1〜4の供試材
を、RAが40%となる最高加工温度(図1における、
No.1〜4の供試材のRAが40%となる加工温度)
に10℃/sの速度で加熱後10分間保持し、この加熱
温度から5℃/sの冷却速度で特定温度に降温した後に
60s間保持し、その後ひずみ速度を2として圧縮加工
した場合(On cooling) での、断面収縮率(RA)と加
工温度との関係を示している。図2の断面収縮率(R
A)に対するPb量の影響から明らかな通り、Pb量が
低い供試材ほど、熱間加工割れを発生しない加工温度の
下限がより低温側に広がることが分かる。
【0058】また、図1、2の結果より、RAが40%
以上となる加工温度範囲ΔTと、Pb量との関係を整理
したものを、図3に示す。図3より、本発明供試材N
o.3、4のようにPb量を5×10-4%以下に低減す
ると、Pb量がこれより多い従来例ないし比較例の供試
材No.1、2に比して、熱間加工割れを発生しない、
良好な加工温度範囲が広くなる。
【0059】通常の分塊圧延において、前記した超電導
マグネットコイルの大型化に対応した、大質量の鋼塊ま
たはスラブを用いて、広幅、長尺の鋼材を製造する場
合、設定条件内に、加工中の鋼塊またはスラブ全域を入
れ、設定条件外になる部分が生じないようにするために
は、加工温度範囲(ΔT)は少なくとも、230℃以上
であることが必要である。
【0060】この点、本発明供試材No.3、4は、従
来例ないし比較例の供試材No.1、2に比して、ΔT
が、230℃以上を確保でき、加工温度範囲が広くなる
ため、より高温での加熱と、それに伴う、より高温での
圧延仕上がりが可能となることが分かる。そしてその結
果、広幅、長尺の鋼材を製造する場合、加工中、鋼塊ま
たはスラブの温度が低下しても、設定条件外になる鋼材
部分が生じずに、熱間加工割れを防止できる。
【0061】つぎに、Ni量の鋼塊の熱間加工割れ感受
性への影響について、図4〜6を用いて説明する。図4
は、前記表1のNo.5〜9のNi量が異なる供試材
を、各加熱温度(例えば、○印のNo.5の供試材では
1175〜1220℃)に10℃/sの速度で加熱およ
び10分間保持し、この加熱状態のままで、ひずみ速度
を2として圧縮加工した場合(On heating) の、断面収
縮率(RA)と加工温度との関係を示している。図4の
断面収縮率(RA)に対するNi量の影響から明らかな
通り、Ni量が低い供試材ほど、熱間加工割れを発生し
ない(RAが40%以上の)加熱温度の上限がより高温
側に広がることが分かる。
【0062】図5に、前記表1のNo.5〜9の供試材
を、RAが40%となる最高加工温度(図4における、
No.5〜9の供試材のRAが40%となる加工温度)
に10℃/sの速度で加熱後10分間保持し、この加熱
温度から5℃/sの冷却速度で特定温度に降温した後に
60秒間保持し、その後ひずみ速度を2として圧縮加工
した場合(On cooling) での、断面収縮率(RA)と加
工温度との関係を示している。図5の断面収縮率(R
A)に及ぼすNi量およびNi当量+0.8×Cr当量
からなるパラメータX値の影響から明らかな通り、Ni
量が低い供試材ほど、(Ni量を低減すると)熱間加工
割れを発生しない加工温度の下限がより低温側に広がる
ことが分かる。
【0063】また、図4、5の結果より、RA40%以
上となる加工温度範囲ΔTとNi量との関係を整理した
ものを、図6に示す。図6より、Ni量を5〜8および
Ni当量+0.8×Cr当量からなるパラメータX値を
35〜40%とした、No.3、7〜9の供試材は、N
i量およびパラメータX値がこの範囲からはずれたN
o.5、6の供試材に比して、熱間加工割れを発生しな
い、良好な加工温度範囲が、ΔTで230℃以上確保で
き、より高温での加熱と、それに伴う、より高温での圧
延仕上がりが可能となる。
【0064】以上図1〜6で説明した通り、Pb量を5
×10-4%以下と、Ni量8%以下、およびNi当量+
0.8×Cr当量からなるパラメータX値40%以下の
条件を具備すれば、RA40%以上となる加工温度範囲
ΔTを230℃以上とれることが分かる。したがって、
その結果、通常の熱間加工条件の範囲で熱間加工割れを
防止できる。
【0065】次に、表1、2、3に示す化学成分、清浄
度、平均オーステナイト粒径、展伸度などを有する偏平
鋼塊を用いて、実際に220mmの分塊スラブに分塊圧
延した場合の割れの発生状況を調査した。この結果を分
塊圧延条件とともに表4、5、6に示す。表1〜3のN
o.は、各々表4〜6のNo.に対応している。表4、
5、6から明らかな通り、Pb量と、Ni量およびNi
当量+0.8×Cr当量からなるパラメータX値が規定
よりはずれる、従来例ないし比較例のNo.1、2、
5、6、27では、分塊圧延時に割れが発生している。
【0066】この分塊圧延時に割れが発生している例を
除き、分塊圧延時の割れの無いものだけについて、引き
続き厚板圧延を行い、110mmの厚板の厚さ中央部か
ら試験片を採取して、4K(−269℃)で、引張試験
(形状:JIS14A号)およびASTME813−1
989によるJ1C試験を行い、 0.2%耐力(YS)、引っ
張り強さ(TS)、破壊靱性値KICを求めた。この結果を厚
板圧延条件とともに表4、5、6に示す。
【0067】4Kでの 0.2%耐力(YS)および靱性(K
IC値)と、Ni含有量およびNieq+0.8 ×Creq(=
X)のパラメータとの関係について、表4〜6の、特に
No.3、7〜9の供試材のデータを用いて、整理した
結果を各々図7、8に示す。図7、8から明らかな通
り、4Kでの 0.2%耐力(YS)および靱性(KIC値)は
Ni含有量およびパラメータXが増加すると増大する。
このことから、前記した通り、4Kでの1200N/mm2
以上の 0.2%耐力(YS)と200MPam 1/2以上の破壊靱
性値KICを得ようとすれば、Ni含有量を5%以上、パ
ラメータXを35%以上とする必要があることが分か
る。
【0068】ただし、前記した通り、熱間加工割れを防
止する観点からは、Ni量を8%以下およびパラメータ
Xを40%以下とする必要がある。したがって、本発明
において、熱間加工割れを防止し、同時に4Kでの 0.2
%耐力(YS)および靱性(K IC値)を確保するために
は、Ni量を5〜8%、パラメータXを35〜40%の
範囲とする必要があることが分かる。
【0069】つぎに、4Kでの 0.2%耐力(YS)および
靱性(KIC値)と、清浄度dと、平均オーステナイト粒
径と、オーステナイト粒の展伸度eとの関係を説明す
る。
【0070】図9、10に、4Kでの 0.2%耐力(YS)
および靱性(KIC値)と、鋼の清浄度dとの関係につい
て、各々示す。図9、10は、表4、5の、特にNo.
8、10〜12の供試材の4Kでの 0.2%耐力および靱
性と鋼の清浄度のデータを用いて、整理した結果であ
る。図9から明らかな通り、4Kでの 0.2%耐力は、鋼
の清浄度dによってもあまり影響を受けない。しかし、
図9から明らかな通り、4Kでの靱性(KIC値)は、鋼
の清浄度dによって大きく影響を受け、鋼の清浄度dが
0.1以下と低い(鋼の清浄度が高い)方が、4Kでの
靱性(KIC値)が高い。したがって、4Kでの200MP
am 1/2以上の破壊靱性値KICを得ようとすれば、鋼の清
浄度dを0.1以下にする必要があることが分かる。
【0071】次に、図11、12に、4Kでの 0.2%耐
力(YS)および靱性(KIC値)と、平均オーステナイト
粒径との関係について、各々示す。図11、12は、表
4、5の、特にNo. 8、13〜19の供試材の4Kでの
0.2%耐力および靱性と鋼の平均オーステナイト粒径の
データを用いて、整理した結果である。図11から明ら
かな通り、4Kでの 0.2%耐力は、鋼の平均オーステナ
イト粒径(d)の平方根の逆数と正の相関がある(平均
オーステナイト粒径が小さいほど増加する)。したがっ
て、4Kでの1200N/mm2 以上の 0.2%耐力(YS)を
得るためには、平均オーステナイト粒径を0.17mm
以下とする必要がある。
【0072】また、逆に、4Kでの靱性は、図12から
明らかな通り、鋼の平均オーステナイト粒径(d)の平
方根の逆数と負の相関がある(鋼の平均オーステナイト
粒径が大きいほど増加する)。したがって、4Kでの2
00MPam 1/2以上の破壊靱性値KICを得ようとすれば、
平均オーステナイト粒径を0.05mm以下とする必要
がある。以上、図11、12の結果から、4Kでの12
00N/mm2 以上の 0.2%耐力と200MPam 1/2以上の破
壊靱性値KICを両方満足しようとすれば、鋼の平均オー
ステナイト粒径を、0.05〜0.17mmの範囲とす
る必要があることが分かる。
【0073】更に、図13、14に、4Kでの 0.2%耐
力(YS)および靱性(KIC値)と、展伸度との関係につ
いて、各々示す。図13、14は、表4、5の、特にN
o. 8、20〜22の供試材の4Kでの 0.2%耐力およ
び靱性と、鋼の展伸度のデータを用いて、整理した結果
である。図13から明らかな通り、4Kでの 0.2%耐力
は、鋼の展伸度と正の相関がある(展伸度が大きいほど
増加する)。しかし、逆に、4Kでの靱性は、図14か
ら明らかな通り、鋼の展伸度と負の大きな相関がある
(展伸度が大きいほど急激に減少する)。したがって、
4Kでの200MPam 1/2以上の破壊靱性値KICを得よう
とすれば、展伸度を1.2以下とする必要があることが
分かる。
【0074】以上、図9〜14の説明をまとめると、4
Kでの1200N/mm2 以上の 0.2%耐力と200MPam
1/2以上の破壊靱性値KICを両方満足しようとすれば、
Ni含有量を5%以上、パラメータXを35%以上と
する、鋼の清浄度dを0.1以下にする、平均オー
ステナイト粒径を、0.05〜0.17mmの範囲とす
る、展伸度を1.2以下とする必要があることが分か
る。
【0075】その他、表6のNo.23、24の供試材
は、Ca含有量の影響を見るためのものである。No.
23のCa含有量は0.0035%と本発明のCa量の
上限量を含み、板厚中央部において、4Kでの破壊靱性
値KICが225MPam 1/2と高いのに対し、No.24の
Ca含有量は0.0100%と本発明のCa量の上限量
を超えており、板厚中央部の、4Kでの破壊靱性値KIC
も190MPam 1/2と低い。これは、No.24のCa含
有量が多すぎるため、鋼中の非金属介在物量が大きくな
って、4Kでの破壊靱性を劣化させたためである。
【0076】また、表6のNo.25、26、28、2
9、30の供試材は、本発明例であり、本発明の諸規定
を満足するため、熱間加工性と4Kでの 0.2%耐力(Y
S)および靱性(KIC値)なども良好である。これに対
し、表6のNo.27の比較例は、Si量およびパラメ
ータX等が本発明の規定より上限にはずれるため、分塊
圧延で割れが発生しており、熱間加工性に劣る。また、
表6のNo.31の比較例は、Nb、Vの総量が、本発
明の規定より上限にはずれるため、4Kでの破壊靱性値
ICが160MPam 1/2と低い。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
【発明の効果】本発明によれば、板厚中央部で、4Kの
極低温での 0.2%耐力が 1200N/mm2以上の高強度と、破
壊靱性値が 200MPam1/2 以上の高靱性を有し、同時に、
熱間加工割れを防止し、熱間加工性に優れた高Mnステ
ンレス鋼を提供することが出来、その結果、MHD発電
や核融合炉などに用いられる超電導マグネットの構造材
料の大型化を可能にする点で工業的な価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるPb量と、断面収縮率(RA)
および加工温度との関係を示す説明図である。
【図2】本発明におけるPb量と、断面収縮率(RA)
および加工温度との関係を示す説明図である。
【図3】本発明におけるPb量と、断面収縮率(RA)
が40%以上となる加工温度との関係を示す説明図であ
る。
【図4】本発明におけるNi含有量およびNieq+0.8
×Creq(=X)のパラメータと、断面収縮率(RA)
と加工温度の関係を示す説明図である。
【図5】本発明におけるNi含有量およびNieq+0.8
×Creq(=X)のパラメータと、断面収縮率(RA)
と加工温度の関係を示す説明図である。
【図6】本発明におけるNi含有量およびNieq+0.8
×Creq(=X)のパラメータと、断面収縮率(RA)
が40%以上となる加工温度との関係を示す説明図であ
る。
【図7】本発明におけるNi含有量と、4Kでの 0.2%
耐力との関係を示す説明図である。
【図8】本発明におけるNi含有量と、4Kでの破壊靱
性値KICとの関係を示す説明図である。
【図9】本発明における鋼の清浄度と、4Kでの 0.2%
耐力との関係を示す説明図である。
【図10】本発明における鋼の清浄度と、4Kでの破壊
靱性値KICとの関係を示す説明図である。
【図11】本発明における鋼の平均オーステナイト粒径
と、4Kでの 0.2%耐力との関係を示す説明図である。
【図12】本発明における鋼の平均オーステナイト粒径
と、4Kでの破壊靱性値KICとの関係を示す説明図であ
る。
【図13】本発明における鋼の展伸度と、4Kでの 0.2
%耐力との関係を示す説明図である。
【図14】本発明における鋼の展伸度と、4Kでの破壊
靱性値KICとの関係を示す説明図である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%にて、C:0.03〜0.10%、Si:
    0.10〜0.50%、Mn:18〜30%、Ni:5 〜8 %、C
    r:12〜18%、Mo:0.50〜 3.00 %、Al:0.01〜0.
    07%、N:0.15〜0.28%を含有し、かつ35%≦Nieq
    0.8 ×Creq≦40%( 但し、Nieq= Ni%+30×C%
    +30×N%+0.5 ×Mn%、Creq= Cr%+Mo%+
    1.5 ×Si%+0.5 ×Nb%)を満足するとともに、
    P:0.008%以下、S:0.003 %以下、O:0.0050%以
    下、Pb:5 ×10-4%以下、清浄度d (但しJIS G 0555
    測定法による) :0.1 %以下に各々規制し、残部Feお
    よび不可避的不純物からなり、平均オーステナイト粒径
    ( 但しASTM E112 −1995,13.5,234 頁の測定方法によ
    る) が0.05〜0.17mmで、かつオーステナイト粒の展伸度
    AIl ( 但しASTM E112 −1995,16.3.5,237 頁の測定方法
    による) が1.2 以下であり、板厚中央部において、絶対
    温度4Kで、1200N/mm2 以上の 0.2%耐力および200MPa
    m 1/2 以上の破壊靱性値を有することを特徴とする、熱
    間加工性および極低温靱性の優れた高Mnステンレス鋼
    材。
  2. 【請求項2】 選択添加元素として更に、Nb:0.01〜
    0.20 %、V:0.01〜 0.50 %、Ti:0.01〜 0.50
    %、の内から1種又は2種以上を総量で0.01〜0.50 %
    含有する請求項1に記載の熱間加工性および極低温靱性
    の優れた高Mnステンレス鋼材。
  3. 【請求項3】 選択添加元素として更に、B:0.0001〜
    0.0030 %を含有する請求項1または2に記載の熱間加
    工性および極低温靱性の優れた高Mnステンレス鋼材。
  4. 【請求項4】 選択添加元素として更に、Ca:0.0010
    〜0.0035%を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に
    記載の熱間加工性および極低温靱性の優れた高Mnステ
    ンレス鋼材。
  5. 【請求項5】 高温高速引張試験(グリーブル試験)に
    よる、破断部の断面収縮率(RA)が40%以上となる
    熱間加工温度範囲が230℃以上である請求項1乃至4
    のいずれか1項に記載の熱間加工性および極低温靱性の
    優れた高Mnステンレス鋼材。
  6. 【請求項6】 鋼材の用途が、超電導マグネットコイル
    の構造体用である請求項1乃至5のいずれか1項に記載
    の熱間加工性および極低温靱性の優れた高Mnステンレ
    ス鋼材。
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