JPH10237908A - 耐食性に優れた貯水槽 - Google Patents

耐食性に優れた貯水槽

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JPH10237908A
JPH10237908A JP5856397A JP5856397A JPH10237908A JP H10237908 A JPH10237908 A JP H10237908A JP 5856397 A JP5856397 A JP 5856397A JP 5856397 A JP5856397 A JP 5856397A JP H10237908 A JPH10237908 A JP H10237908A
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weight
corrosion resistance
corrosion
steel
reinforcing material
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JP5856397A
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English (en)
Inventor
Wakahiro Harada
原田和加大
Mitsuaki Nishikawa
光昭 西川
Toshiro Adachi
俊郎 足立
Toshiro Nagoshi
敏郎 名越
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】内部に金属製補強材を有する貯水槽の補強材と
して、フェライト系ステンレス鋼を使用することによ
り、耐食性の優れた貯水槽を得る。 【解決手段】補強材は、重量%でC:0.02%以下、
Si:0.6%以下、Mn:0.4%以下、P:0.0
4%以下、S:0.003%以下、Cr:20〜26
%、Mo:0.8〜2.5%、N:0.02%以下、T
i:0.05〜0.4%及び/又はNb:0.1〜0.
6%を含み、更に、C+N≦0.035%、Ti+Nb
≧7×(C+N)+0.15%の関係を満足する組成の
鋼よりなる耐食性の優れた貯水槽である。鋼は、更に、
Cu:0.3〜0.8%及び/又はAl:0.1〜0.
3%を含むことができる。また、補強材をボルト固定す
るには合成ゴム又は合成樹脂製ガスケットを介して締結
することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐食性及び経済性
に優れた貯水槽に関する。
【0002】
【従来の技術】多くの建築物には、飲料水として使用さ
れる上水を供給するための貯水槽が設置されている。マ
ンションや公共施設などの大型化に伴い、それら貯水槽
の大型化も進んでいる。また、最近では、耐震、耐火構
造に対する要求が高まり、衛生的に水を大量に貯蔵し、
非常時に給水できる貯水槽が求められている。貯水槽の
材質としては、FRP製が主流である。FRP製の貯水
槽は、パネルに加工したFRP板を、ボルトで締結・接
合する方法で製作される。FRP製貯水槽は強度的に弱
いために、内部に金属製の補強材を有する構造を採って
いる。補強材には耐食性及び構造材としての強度を得る
ために、オーステナイト系ステンレス鋼のSUS304
に加工後合成樹脂被覆したもの等が用いられている。補
強材は固定ボルトによって相互に固定されると共に貯水
槽本体と締結して剛性を保っている。また、補強材を固
定するボルトにも耐食性が要求されることから、気相部
ではSUS304に合成樹脂被覆したボルト・ナット及
びワッシャー等が用いられている。
【0003】しかし、近年、FRPに対する構造強度の
問題あるいは衛生上の問題から金属製の貯水槽が増えて
きている。金属としてはステンレス鋼板や合成樹脂被覆
鋼板がある。これらの金属製貯水槽はパネル式ボルト接
合型又は溶接一体型の構造であるが、板厚が薄いため
に、内部にはFRP製貯水槽と同様に金属製の補強材を
有する構造が多い。ステンレス鋼製貯水槽では、本体の
液相部にSUS444、気相部にはより耐食性の高いS
US329J4L等が用いられているが、内部の補強材
はFRP製貯水槽と同様に、SUS304に加工後合成
樹脂被覆したもの等が用いられている。補強材の形状
は、一般的に厚み約3mm程度の山形や溝形であるが幅
や長さは貯水槽の大きさによって異なる。
【0004】貯水槽の気相部がより腐食性になる理由は
以下のように考えられる。上水中に含有される残留塩素
の自己分解によって、気相中の塩素ガス濃度が高くな
り、このため、気相中の塩素ガスは、天井等の気相部壁
面に結露した水に再び溶け込み、塩化物イオンが生成さ
れるとともに、過酸化物と酸を形成する。塩化物イオ
ン、過酸化物、酸を含有した結露水は乾燥により濃縮す
ると、強い腐食作用を呈する。特に、外部に設置した貯
水槽では日中の気温変化により、結露乾燥が繰り返さ
れ、腐食に対して極めて過酷になる。夏場においては金
属貯水槽の天板は60℃以上に上がり、腐食の成長を促
進する。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】しかしながら、最近、
水質の低下に伴う殺菌の強化により、貯水槽内部、特に
気相部の腐食性が強くなる傾向にあり、貯水槽本体に耐
食性の材料を用いた場合にも、現状の補強材では補強材
が腐食する場合がある。すなわち、現在、SUS304
に加工後合成樹脂被覆したものが用いられているが、こ
のような環境下においては、気相部において欠陥がある
と塗膜下腐食を生じることがある。更に、補強材は後塗
装で被覆されているために、コスト的に高くなるという
問題がある。そこで、被覆を施さなくても優れた耐食性
を有する金属材料の適用が望ましい。ただし、液相部に
おいては、通常、合成樹脂被覆のないSUS304製ボ
ルト・ナットやワッシャー等が使われており、補強材に
金属製ワッシャーが直接接するような構造で固定される
ために、金属無垢材を用いた場合には、金属製ワッシャ
ーと補強材の隙間等で隙間腐食が懸念される。本発明
は、このような問題を解決するためになされたもので、
耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼からなる無被
覆の補強材を採用し、かつ、液相のボルト締結部を防食
構造にすることにより、耐食性に優れた貯水槽を提供す
ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】無被覆で耐食性に優れた
補強材を得る手段は、金属製補強材として、化学成分
で、C:0.02重量%以下、Si:0.6重量%以
下、Mn:0.4重量%以下、P:0.04重量%以
下、S:0.003重量%以下、Cr:20〜26重量
%、Mo:0.8〜2.5重量%、N:0.02重量%
以下、Ti:0.05〜0.4重量%及び/又はNb:
0.1〜0.6重量%を含み、残部が実質的にFeで、
C+N≦0.035重量%、Ti+Nb≧7×(C+
N)+0.15重量%の条件を満足するフェライト系ス
テンレス鋼を使用することである。フェライト系ステン
レス鋼は、更に、Cu:0.3〜0.8重量%及び/又
はAl:0.1〜0.3重量%を含むことができる。ま
た、この補強材をボルトにて固定する場合に、合成ゴム
又は合成樹脂製のガスケットを介して締結することによ
り、隙間腐食が防止できる。更に、貯水槽の外側に金属
製又は合成樹脂製の覆いを取り付けることにより、貯水
槽本体ならびに補強材の気相部の腐食性を弱め、耐食性
を向上することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明者等は、貯水槽環境におけ
るステンレス鋼の耐食性について詳細な調査を行った。
貯水槽環境における腐食は気相部における孔食と液相の
ボルト締結部で発生する隙間腐食が主な腐食で、両者に
対する耐食性が必要であることが判った。気相部におけ
る孔食については後述する実施例1に示すごとく、貯水
槽の気相部を模擬した条件下、すなわち、残留塩素量を
濃くした水溶液を用いて、結露と乾燥が繰り返される条
件下で耐食性を調べた。これらの試験の結果、気相部に
発生する孔食には、Moを含むフェライト系ステンレス
鋼で、かつ、Crの増加した鋼が有効であることを見出
した。また、適量のTi及び/又はNbとAlの添加に
よって、耐食性が一層向上することも判った。この原因
として、Ti及び/又はNbとAlを複合添加したフェ
ライト系ステンレス鋼では、Alを複合添加していない
鋼と比較して、鋼板の製造時の酸洗工程で形成される不
動態皮膜が著しく強固になること、溶接部にはAlの酸
化皮膜を形成しCrの酸化ロスを抑制して腐食の低下を
防止する作用があるためと考えられる。一方、ボルト締
結部で発生する隙間腐食に対しても、気相部に発生する
孔食に対して有効なMoを含むフェライト系ステンレス
鋼は非常に有効であるが、後述するように金属同士が直
接に接するような隙間構造を避けるのが好ましいことが
明らかになった。まず、本発明のステンレス鋼に含まれ
る合金成分、含有量を以下に説明する。
【0008】C、N:それぞれ0.02重量%以下 C、Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素である。鋼
は、C、N含有量の低下に従って軟質化し、加工性が向
上する。粒界腐食防止の観点から、鋼中のC、NはT
i、Nbで固定する必要があるが、C、N含有量が多い
と、固定化に必要なTi、Nbの添加量が増え、却って
加工性が損なわれる。したがって、C、N含有量の上限
を共に0.02重量%に規制し、後述するように、更
に、(C+N)量を0.035重量%以下に設定した。
【0009】Si:0.6重量%以下 脱酸剤として添加される元素である。しかし、0.6重
量%を超える多量のSiが含まれると、材料が硬質にな
り、加工性が低下する。
【0010】Mn:0.4重量%以下 鋼中に不可避的に存在するSと結合し、化学的に不安定
な硫化物MnSを形成し、耐食性を低下させると共に、
鋼中に固溶しているMn自体も、耐食性を阻害する。し
たがって、Mn含有量は低いほど好ましく、本発明では
上限を0.4重量%に規定した。
【0011】P:0.04重量%以下 不純物として不可避的に含まれる元素であるが、耐食性
に対しては低いほどよい。しかし、低P化すると副原料
の厳選や特別なスラグ処理が必要で有るなど、コスト的
に高くなるため、特性に大きな影響を与えることのない
範囲でP含有量の上限を0.04重量%に規定した。
【0012】S:0.003重量%以下 耐食性に悪影響を及ぼす有害元素であり、低ければ低い
ほど好ましい。しかしながら、S含有量を低下するには
使用する副原料の厳選や脱硫に時間を要するためコスト
が高くなる。そこで、本発明では耐孔食性から判断して
影響が小さい範囲として、S含有量を0.003重量%
以下に規定した。
【0013】Cr:20〜26重量% 不動態皮膜を形成し、Moと共にステンレス鋼の耐食性
を向上させる重要な合金元素である。水道水等の貯水槽
環境における隙間腐食や過酸化物を含む酸性結露水下で
の孔食は、Cr含有量が20重量%以上になると著しく
減少する。しかし、26重量%を超えて多量のCrを添
加すると、鋼材が硬質化し、比較的板厚の厚い補強材の
加工が困難になる。
【0014】Mo:0.8〜2.5重量% Crと共に鋼の不動態化能を高め、ステンレス鋼の耐食
性を向上させる合金元素である。Moの効果は、Cr含
有量の増加に伴って大きくなり、本発明が対象とするC
rレベルでは0.8重量%以上のMo添加で顕著とな
る。しかし、2.5重量%を超えるMo含有量では硬質
化を招き、補強材ヘの加工が困難になる。
【0015】Ti、Nb:Tiが0.05〜0.4重量
%及び/又はNbが0.1〜0.6重量% Ti、Nbは共に鋼中のC、Nを固定して粒界腐食を防
止する合金元素である。更に、Tiは、Sを固定して化
学的に安定な硫化物を形成し、可溶性硫化物MnSの生
成に起因した耐孔食性の低下を防止すると共に、固溶T
i自体も鋼の活性溶解を抑制する作用を有する。Tiの
効果は、0.05重量%以上の含有量で顕著となる。し
かし、0.4重量%を超える多量のTiが含まれると、
クラスター状介在物が生成し、素材表面庇の原因となる
ため、0.05〜0.4重量%に規制した。NbのC、
N固定作用は、0.1重量%以上で顕著になる。しか
し、0.6重量%を超える多量のNbは靱性や溶接性を
阻害するため、0.1〜0.6重量%に規制した。
【0016】Cu:0.3〜0.8重量% 塩化物環境における耐孔食性を改善する作用を呈するた
め、添加されることが好ましい合金元素であり、特に、
Mo含有量が1重量%以下の少ない系では、Cuの添加
効果が顕著に発揮される。このような効果は、0.3重
量%以上のCu添加で顕著になる。しかし、Cuの添加
効果は0.8重量%で飽和する。
【0017】Al:0.1〜0.3重量% 脱酸剤として添加される元素であるが、Ti及び/又は
NbにAlを複合添加したとき、ステンレス鋼板製造の
ために焼鈍後に行われる酸洗の過程で強固な不動態化皮
膜が生成し、耐食性が更に改善される。また、溶接部に
はAlの酸化皮膜を形成しCrの酸化ロスを抑制して腐
食の低下を防止する。このように、Al複合添加は耐食
性が向上するように作用し、結果として耐食性向上に必
要なMoの添加量を下げることができる。このため、よ
り軟質で加工性に優れた鋼材が得られ、また、鋼材コス
トの上昇を抑制する上でも有効である。Alの効果は、
0.1重量%以上の含有量で顕著になるが、多量に含ま
れると靱性や溶接性を阻害するため、上限を0.3重量
%とした。
【0018】C+N≦0.035重量% C、N含有量が多いと、固定化に必要なNb、Tiの添
加量が増え、却って加工性が損なわれる。したがって、
C及びN含有量の上限をそれぞれ0.02重量%に規制
すると共に、C+N量を0.035重量%以下に設定し
た。
【0019】 Ti+Nb≧7×(C+N)+0.15重量% Ti+Nb≧7×(C+N)+0.15重量%の条件を
維持することによりC、Nの固定に必要な量が確保さ
れ、粒界腐食を回避することができる。
【0020】本発明の化学成分の鋼を補強材に用いるこ
とにより、被覆を施すことなく、気相部で優れた耐食性
が得られる。しかし、本鋼はフェライト系ステンレス鋼
であるために、腐食が発生すると、オーステナイト系鋼
に比べて、板厚方向へ成長する傾向がある。最近の原水
の水質汚染に伴う上質水質の劣化により、上水中の塩化
物イオン濃度が上昇したり、殺菌のための残留塩素が高
くなったりすると、液相部において、補強材の固定のた
めにボルトで締結された部分での隙間腐食性が強まるこ
とが懸念される。そこでボルト締結部での隙間腐食につ
いて調べた。後述する実施例2に示すように、試験片を
ボルト・ナットで挟み込み、隙間を形成した試料を用い
て、40℃の200ppmCl- 水溶液中で、定電位試
験を行った。その結果、フェライト系ステンレス鋼は金
属同士の隙間は隙間腐食が発生しやすいが、合成ゴム又
は合成樹脂製のガスケットを介することにより、隙間腐
食を防止できることを見出した。もちろん、現使用の合
成樹被覆ワッシャーも使用できる。また、後述する実施
例3に示すように、モニター用の簡易貯水槽を作製して
試験した結果、貯水槽を加熱から防ぐ方法も効果的であ
ることを見出した。以下これらの結果に基づき、限定理
由を説明する。
【0021】ガスケット材料:合成ゴム又は合成樹脂 金属接触の隙間では極めて隙間腐食を起こしやすいが、
合成ゴム又は合成樹脂製ガスケットを挟むと耐隙間腐食
性は著しく向上する。合成ゴム又は合成樹脂製ガスケッ
トの種類、硬さ、厚みは特に限定しないが、EPDMや
PVCなどの軟質なものほどよい。軟質の合成ゴム又は
合成樹脂のガスケットであれば、その弾力のために構造
的に隙間を形成しにくくなるためである。厚みは変形が
大きくない程度とする。また、ボルト接合部にキズが存
在するとその隙間形成部は著しく耐隙間腐食性が低下す
ることもわかった。したがって、補強材の加工時などに
おいては、ボルト接合部にキズをつけないよう、保護シ
ートやアルカリ可溶性潤滑保護皮膜等を施して加工する
ことが望ましく、細心の注意をはらう必要がある。
【0022】貯水槽の外側覆い 貯水槽において最も腐食の厳しいのは天板をはじめとす
る気相部である。上述したように、これは塩素イオンの
結露濃縮に伴うものであるが、結露水が乾燥する過程を
経ないと、腐食は起こらないことを確認した。乾燥は直
射日光が当たるような貯水槽外部の温度が高い時に起こ
るものであり、直射日光が当たらないと、結露水で濡れ
たままの状態になる。したがって、貯水槽の外側に金属
製又は合成樹脂製の覆いを有する構造をとることによ
り、天板や側壁パネルあるいは補強材の温度上昇を緩和
し、気相部の腐食環境をマイルドにすることが可能とな
る。また、全面を覆わなくても、それぞれの貯水槽の設
置場所に応じて、日射面のみを覆う構造(屋根を含む)
にするのも有効である。覆いに用いる板の材質は本発明
鋼のような高耐食性鋼でなくとも、SUS304やSU
S430のような汎用鋼でよく、あるいはFRPパネル
でもよい。
【0023】
【実施例】
[実施例1]貯水槽に使用される補強材に要求される特
性は、気相部の耐孔食性,ボルト接合部の耐隙間腐食性
である。そこで、表1に示した成分をもつステンレス鋼
を500kg溶製し、熱間圧延、焼鈍・酸洗、冷間圧
廷、仕上げ焼鈍・酸洗等の工程を経て板厚1.5mmの
鋼板を製造した。ただし、表1の鋼種番号1、2はそれ
ぞれ市販のSUS304、SUS444であり、1.5
mmの2B仕上げ材である。板厚鋼種番号3はCr含有
量が本発明の範囲にあるが、Mo含有量が低い鋼であ
る。鋼種番号4〜8は本発明例である。また、鋼種番号
1のSUS304に厚さ0.4mmの合成樹脂被覆した
板(鋼種番号1−1)も用いた。
【0024】
【表1 】
【0025】結露水環境下における孔食発生をシミュレ
ートするため、図1に示すような構成で環境試験を行っ
た。まず、残留塩素濃度を300ppmに調整した試験
液1を用意した。通常の貯水槽では残留塩素濃度は1p
pm以下であるが、腐食を加速するために濃度を高め
た。次に、試験液1をガラス製の試薬瓶2(0.5l容
器)に0.3l入れ、ステンレス鋼板から切り出された
試験片3を試薬瓶2の開口部に水平配置した。試験片3
と試薬瓶2の開口部との隙間は、シリコーン樹脂でシー
リングした。試験片3を密着させた試薬瓶2を、水4を
張った保温箱5にセットし、全体を温度,湿度の制御が
可能な環境試験装置6の内部に配置した。環境試験装置
6の内部を相対湿度70%、温度20℃に1時間保持し
た後、相対湿度70%のままで温度60℃に昇温した雰
囲気に1時間保持することを1サイクルとするサイクル
試験を繰り返した。そして、60サイクル及び120サ
イクルが経過した時点で、試験片に発生した腐食の深さ
を測定することにより耐孔食性を調査した。
【0026】表2に腐食試験後の最大侵食深さを示す。
結露水により生じた孔食は、比較例の鋼種番号1〜3で
は最大侵食深さが0.1mmを超えており、SUS44
4にあたる鋼種番号2でも120サイクル後の最大侵食
深さが0.28mmとなっていた。鋼種番号3も最大侵
食深さが0.26mmの孔食が見られ、サイクルの増加
により侵食深さが進行していることが判る。また、鋼種
番号1のSUS304に合成樹脂被覆した板について
は、試験瓶との接触部より塗膜下腐食が生じ、孔食が発
生していた。他方、本発明に従った鋼種番号4〜6で
は、何れも60サイクルで孔食の発生が検出されず、1
20サイクル後でも最大侵食深さが0.04mm以下と
極く浅いものであった。また、本発明に従った鋼種番号
7、8のMo含有量の高い鋼、Cr含有量の高い鋼は1
20サイクル後も腐食は認められなかった。
【0027】鋼の成分と最大侵食深さの関係をみると、
最大侵食深さの浅い鋼種番号4〜7の鋼は、鋼種番号3
に比較すると、Cr量が約22重量%と同レベルにある
が、Mo含有量が0.8重量%以上と高くなっている。
かつ、鋼種番号5にはCuが添加されている。腐食の認
められなかった鋼種番号8は鋼種番号4に比べ、Mo含
有量は同じレベルにあるがCr量が高い。このことか
ら、結露水環境下における孔食は、0.8重量%以上の
Moを含有する鋼で、Cr、Moの増量により効果的に
抑制できることが確認される。また、鋼種番号4と5の
比較よりCuの有効性が確認できる。鋼種番号6は、鋼
種番号7に比較すると、Ti、Nb、Alを複合添加
し、且つMo含有量を下げた鋼種であるが、鋼種番号7
に匹敵する耐孔食性を呈している。このことから、T
i、Nb、Alの複合添加は、耐孔食性の向上に有効に
作用し、一定レベルの耐食性を得る場合に必要とされる
Mo含有量を低減でき、コスト軽減の面で有利なことが
判る。
【0028】
【表2】
【0029】[実施例2]実施例1で使用したSUS4
44に相当する鋼種番号2と発明例である鋼種番号5の
1.5mm厚みの鋼板を用い耐隙間腐食性を調べた。ま
ず、鋼板より、30×30mmの試験片を切出し、中央
に直径6.5mmの孔をあけ、板の端にインコネル線を
導線として溶接した。そして、図2に示すように、市販
の規格M6のSUS304製のボルト11、ナット1
2、呼び6のスプリングワッシャー10及び特別に製作
した直径15mmのSUS304製ワッシャー9(1.
5mm厚さ)を用い、更に、試験片7の両表面を市販の
直径15mmの発泡型のEPDM又はPVC製のガスケ
ット8が当たるように挟み、トルクレンチを用いて、締
め付けトルク60kgf・cmで締結することにより隙
間を形成した。比較のために、合成ゴム又は合成樹脂製
ガスケット8を挟まず、直接SUS304製ワッシャー
9が試験片7に当たり隙間を形成するものも作製した。
このように隙間を形成した試験片7を水道水の水質基準
で定められる塩化物イオン濃度の上限である200pp
mCl- 溶液(40℃)に浸漬し、定電位電解装置によ
る定電位試験を48時間行った。そして、試験後の腐食
状態ならびに試験中の腐食電流の有無より、腐食発生電
位を求め、耐隙間腐食性に及ぼすガスケット材質の影響
を検討した。
【0030】表3に電位と隙間腐食発生の有無の関係を
示す。鋼種番号2及び鋼種番号5ともにSUS304製
ワッシャーに直接接触した場合は、合成ゴム又は合成樹
脂製のガスケットを介した場合に比べて隙間腐食発生電
位(隙間腐食が発生する下限の電位)が低くなり、より
腐食しやすいことがわかる。鋼種番号5でPVC製のガ
スケットを用いると、自然電位が500mV,SCEま
で上がらないと腐食しないことになる。一般的に貯水槽
環境でのステンレス鋼の自然電位(腐食していないとき
の材料の電位)は150mV,SCE以下程度であるの
で、鋼種番号2及び鋼種番号5ともに、合成ゴム又は合
成樹脂製ガスケットを有すると隙間腐食を防ぐことがで
きる。この結果から、液相部における補強材のボルト締
結部の耐隙間腐食を防止するためには、軟質の合成ゴム
又は合成樹脂製ガスケットを介してボルト接合すること
が有効であることがわかった。
【0031】
【表3】
【0032】[実施例3]図3に示すように、市販のS
US444(2mmt )を用い、2m高さ×1.5m幅
×1m奥行の溶接一体型のモニター試験用簡易貯水槽本
体14を作製し、1年間の試験を行った。槽内部には本
発明例の鋼種番号6を用いて溝形(フランジ部30m
m、ウエッブ50mm、長さ1000mm)の補強材1
5を製作し、2本を気相部に2本を液相部にそれぞれP
VCガスケットを介するボルト接合により取付けた。試
験液には上水16を用い、水位を天板から1mとし、試
験の加速性を上げるために残留塩素濃度を2ppmに維
持した。部分的にSUS304製の外側覆い17を取り
付け、貯水槽内部ならびに補強材の耐食性を評価した。
【0033】表4に気相部のモニター試験結果を示す。
モニター試験の間、夏場には天板外側の温度は最高65
℃に達した。試験1年の結果、SUS444貯水槽本体
には、直射日光の当たった南側側面気相部及び天井面に
腐食が認められ、侵食深さで最大0.1mm程度であっ
た。一方、日光の当たらない北側側面並びに覆いを取り
付けた南側天井面及び南側側面には、わずかにしみ状の
腐食がある程度であった。本発明例の鋼種番号6補強材
に関しては、南側に位置した所で、わずかにしみ状の腐
食がある程度で、日光の当たらない北側及び覆いを取り
付けた南側に位置した所では腐食が起きていなかった。
また、鋼種番号6補強材の液相部のボルト締結部にも腐
食は認められなかった。この結果から、貯水槽本体の温
度を外側から上げないように覆いを取り付けることは、
内側の補強材ならびに本体の耐食性を維持するのに有効
であることがわかった。
【0034】
【表4】
【0035】
【発明の効果】本発明により、フェライト系ステンレス
鋼を貯水槽内部の補強材として用い、更に、合成ゴム又
は合成樹脂製ガスケットを使用することにより、気相部
の耐孔食性及び液相ボルト締結部の耐隙間腐食性に優れ
た補強構造が得られ、耐食性の高い貯水槽が得られる。
また、被覆をする必要がないため、補強材の製造におい
て省工程が可能になり経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】結露水環境下での孔食をシミュレートした孔食
試験の構成を示した図
【図2】隙間腐食を測定する浸漬試験に用いた試験片の
構成を示した図
【図3】モニター試験用簡易貯水槽の構成を示した図
【符号の説明】
1:試験液 2:試薬瓶 3:孔食試験
用の試験片 4:水溶液 5:保温箱 6:環境試験
装置 7:隙間腐食試験用の試験片 8:ガスケット 9:ワッシャー 10:スプリングワッシャー 11:ボルト 12:ナット 13:導電線 14:簡易貯水槽本体 15:補強材 16:上水 17:外側覆い
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 名越 敏郎 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内部に金属製補強材を有する構造の、ボル
    ト締結パネル式の合成樹脂製又は金属製貯水槽若しくは
    溶接式金属貯水槽であって、その補強材が、化学成分
    で、C:0.02重量%以下、Si:0.6重量%以
    下、Mn:0.4重量%以下、P:0.04重量%以
    下、S:0.003重量%以下、Cr:20〜26重量
    %、Mo:0.8〜2.5重量%、N:0.02重量%
    以下、Ti:0.05〜0.4重量%及び/又はNb:
    0.1〜0.6重量%を含み、残部が実質的にFeで、
    C+N≦0.035重量%、Ti+Nb≧7×(C+
    N)+0.15重量%の条件を満足するフェライト系ス
    テンレス鋼よりなる、耐食性に優れた貯水槽。
  2. 【請求項2】フェライト系ステンレス鋼は、更に、C
    u:0.3〜0.8重量%及び/又はAl:0.1〜
    0.3重量%を含有する請求項1記載の耐食性に優れた
    貯水槽。
  3. 【請求項3】金属製補強材をボルトにて固定する場合
    に、合成ゴム又は合成樹脂製のガスケットを介して締結
    することを特徴とする請求項1又は2記載の耐食性に優
    れた貯水槽。
  4. 【請求項4】貯水槽の外側に金属製又は合成樹脂製の覆
    いを有する請求項1から3までのいずれか1項記載の耐
    食性に優れた貯水槽。
JP5856397A 1997-02-27 1997-02-27 耐食性に優れた貯水槽 Pending JPH10237908A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100502854B1 (ko) * 2001-12-21 2005-07-22 주식회사 포스코 유리 봉착성 및 고온 열처리후의 내산성이 우수한 크롬계스테인리스강
US9905369B2 (en) 2012-05-22 2018-02-27 Gs Yuasa International Ltd. Energy storage device
JP2018162594A (ja) * 2017-03-27 2018-10-18 Jfe建材株式会社 波型鋼板製水路部材

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US9905369B2 (en) 2012-05-22 2018-02-27 Gs Yuasa International Ltd. Energy storage device
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