JPH10231261A - 弗化沃化エタンの製造方法 - Google Patents

弗化沃化エタンの製造方法

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JPH10231261A
JPH10231261A JP26944597A JP26944597A JPH10231261A JP H10231261 A JPH10231261 A JP H10231261A JP 26944597 A JP26944597 A JP 26944597A JP 26944597 A JP26944597 A JP 26944597A JP H10231261 A JPH10231261 A JP H10231261A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 原料の入手が容易かつ安価で、簡便な製造プ
ロセスによる得ることができる弗化沃化エタンの製造方
法を提供する。 【解決手段】 極性溶媒中で一般式(I) CFmnCH2Cl (I) (ただし式中、mは1ないし3の整数であり、nは3−
mを示し、Xはnが1のときはClまたはHを、nが2
のときはClおよび/またはHを表す)で表わされる弗
化塩化エタンと金属沃化物を反応させることを特徴とす
る一般式(II) CFmnCH2I (II) (ただし式中、X、mおよびnは前記定義に同じ)で表
わされる弗化沃化エタンの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2,2,2−トリ
フルオロ−1−ヨードエタン等の弗化沃化エタンの製造
方法に関する。さらに詳しくは弗化塩化エタンと金属沃
化物を極性溶媒中で反応させ、対応する弗化沃化エタン
を製造する方法に関するものである。
【0002】本発明における弗化沃化エタンは、そのも
のが医薬、農薬中間体として利用されるだけでなく、水
酸基やアミノ基などのさまざまな官能基を有する有機化
合物の弗化エチル化剤として極めて有用な化合物であ
る。
【0003】
【従来の技術】従来弗化沃化エタンの製造方法として、
いくつかの方法が公知である。例えば、R.S.Tipsonらお
よびG.V.D.Tiersらは2,2,2−トリフルオロエタノ
ールをトシル化した後、沃化ナトリウムを反応させ2,
2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを得る方法を
開示している(Journal of the American Chemical Soc
iety, 75, 5978(1953))。またL.C.Kroghらは同様の方
法で2,2,2−トリフルオロエタノールをホスホニウ
ム化し、沃化ナトリウムと反応させる方法を開示してい
る(The Journal of Organic Chemistry, 19, 1124(19
54))。
【0004】L.C.Kroghら、およびH.Gilmanらは2,
2,2−トリフルオロエチルアミンをジアゾニウム化
し、沃素、または沃化水素と反応させ、2,2,2−ト
リフルオロ−1−ヨードエタンを得る方法を開示してい
る(The Journal of Organic Chemistry, 19, 1124(195
4)、Journal of the American Chemical Society, 65, 2
037(1943))。
【0005】しかしながら出発原料の2,2,2−トリ
フルオロエタノールや2,2,2−トリフルオロエチル
アミンは一般に高価であり、これらの方法は工業的な製
造方法とは成り難い。
【0006】R.D.ChambersらおよびR.N.Haszeldineら
は、弗化ビニリデンを原料とし、これに弗化沃素を付加
する2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンの製
造方法を開示している(Journal of Chemical Society,
3379(1961)、Journal of Chemical Society, 923(195
4))。この方法は原料の弗化ビニリデンが重合反応を起
こし易く、安全上の問題から運搬が困難であり、入手が
難しいばかりでなく、弗化沃素が必要である。通常、弗
化沃素は弗素と沃素を反応させて製造する。このため弗
素の発生設備が必要となり、特別な設備と技術が必要で
ある。さらに弗化沃素は腐食性が強く、特殊な耐食性材
料を用いなければならない。よって、この方法も工業的
に経済性に優れた合理的な製造方法とは成り難い。
【0007】一方、E.T.McBeeら、J.Hineら、およびF.
W.Hoffmannらは2,2,2−トリフルオロ−1−ブロモ
エタンや2−フルオロ−1−ブロモエタンと沃化カリウ
ムまたは沃化ナトリウムを反応させて、対応する弗化沃
化エタンを得る製造方法を開示している(Journal of t
he American Chemical Society, 84, 3157(1962)、TheJo
urnal of Organic Chemistry, 23, 1550(1958)、The Jou
rnal of Organic Chemistry, 14, 104(1949))。これら
の製造方法では弗化臭化エタンが原料として使用され
る。原料となるこれらの弗化臭化エタンは、例えば対応
する弗化エタンを臭素化して製造する必要があり、製造
プロセスが長くなり、高価であるうえ、さらに工業的原
料として一般に入手が困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来の弗化沃化エタン
の製造方法は、原料が高価であるとか、原料の輸送に安
全上の問題があって、入手が困難であるとか、弗素を発
生させる特別な設備が必要であるとか、またプロセスが
長くなるといった問題が有り、いずれも弗化沃化エタン
の工業的製造方法としては不適当なものであった。
【0009】本発明が解決しようとする課題は、原料の
入手が容易かつ安価で、簡便な製造プロセスにより得る
ことができる弗化沃化エタンの製造方法を提供すること
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく、安価で工業的に入手が容易な弗化塩化エ
タンと金属沃化物を用いて直接弗化沃化エタンを製造す
る方法を鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0011】すなわち、本発明は極性溶媒中で一般式
(I) CFmnCH2Cl (I) (ただし式中、mは1ないし3の整数であり、nは3−
mを示し、Xはnが1のときはClまたはHを、nが2
のときはClおよび/またはHを表す)で表わされる弗
化塩化エタンと金属沃化物を反応させることを特徴とす
る一般式(II) CFmnCH2I (II) (ただし式中、X、mおよびnは前記定義に同じ)で表
わされる弗化沃化エタンの製造方法、および、アセトン
中で2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタンと金
属沃化物を反応させて、2,2,2−トリフルオロ−1
−ヨードエタンを製造した後、2,2,2−トリフルオ
ロ−1−ヨードエタンとアセトンの共沸組成物を取り出
し、該共沸組成物に水を加え、粗2,2,2−トリフル
オロ−1−ヨードエタン相とアセトン−水相に分離した
後、粗2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを
蒸留することを特徴とする高純度2,2,2−トリフル
オロ−1−ヨードエタンの製造方法、さらに、2,2,
2−トリフルオロ−1−ヨードエタンおよびアセトンか
らなる共沸組成物、に関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】本発明の製造方法において原料として用い
られる化合物は前記一般式(I)で表される弗化塩化エ
タンである。前記一般式(I)で表される弗化塩化エタ
ンは、2−フルオロ−1−クロロエタン、2,2−ジフ
ルオロ−1−クロロエタン、2,2,2−トリフルオロ
−1−クロロエタン、2−フルオロ−1,2,2−トリ
クロロエタンおよび2,2−ジフルオロ−1,2−ジク
ロロエタンが挙げられる。本発明の原料化合物となる前
記一般式(I)で表される化合物は対応する例えばジク
ロロエタン、塩化ビニリデン、トリクロロエチレン等の
塩素化炭化水素化合物の弗素化により容易に得ることが
でき、工業的にも入手が容易である。
【0014】例えば、2,2,2−トリフルオロ−1−
クロロエタンは触媒存在下にトリクロロエチレンと弗化
水素を反応させて造られており、工業的に重要な1,
1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)
の重要な中間体である。これら原料である弗化塩化エタ
ンは一般に市販品として入手できるものをそのまま使用
することができる。
【0015】本発明において弗化塩化エタンと反応させ
る金属沃化物は、アルカリ金属および/またはアルカリ
土類金属の沃化物である。アルカリ金属の沃化物として
は、例えば、沃化リチウム、沃化ナトリウム、沃化カリ
ウム、沃化ルビジウムが挙げられ、アルカリ土類金属の
沃化物としては、例えば、沃化マグネシウム、沃化カル
シウム、沃化ビスマス等が挙げられる。これらのうち、
反応性、収率および経済性から、沃化ナトリウムまたは
沃化カリウムが好ましい。
【0016】本発明において溶媒として用いる極性溶媒
は電気双極子を有する液体であれば特に限定されない
が、例えば、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、
エステル類、スルホキシド類、ニトリル類、エーテル
類、アミン類、アミド類、グリコール類、ニトロ化合物
が挙げられる。これらの内、好ましい極性溶媒は、ケト
ン類、スルホキシド類、ニトリル類、エーテル類、エス
テル類、アミド類である。これらの好ましい極性溶媒の
内、ケトン類としてはアセトン、2−ブタノン、4−メ
チル−2−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキ
サノン、アセトフェノン等が、スルホキシド類としては
ジメチルスルホキシド、スルホランが、ニトリル類とし
てはアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリ
ルが、エーテル類としてはメチルグリコールエーテル、
エチルグリコールエーテルや、ポリエチレングリコール
アルキルエーテル類等が、エステル類としては酢酸エチ
ル、アセト酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等が、アミ
ド類としてはN−メチルピロリドン、1,3−ジメチル
−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素
等が挙げられる。これらの内、より好ましくはケトン類
としてはアセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペ
ンタノンが、スルホキシド類としてはスルホラン、ジメ
チルスルホキシドが、ニトリル類としてはアセトニトリ
ルが、エーテル類としてはジグライムが、エステル類と
してはγ−ブチロラクトンが、アミド類としてはN−メ
チルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジ
ノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチ
ルアセトアミド、テトラメチル尿素等が挙げられる。こ
れらの内、最も好ましい極性溶媒はアセトン、ジメチル
スルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチ
ル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムア
ミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿
素である。これらの極性溶媒は必要に応じ混合して用い
てもよい。
【0017】なお、ベンゼン等の無極性溶媒は、原料の
金属沃化物が溶解せず、反応が進行しないため、不適当
である。
【0018】本発明方法により製造される弗化沃化エタ
ンは、前記一般式(II)で表される化合物であり、2
−フルオロ−1−ヨードエタン、2,2−ジフルオロ−
1−ヨードエタン、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨ
ードエタン、2−フルオロ−2,2−ジクロロ−1−ヨ
ードエタンおよび2,2−ジフルオロ−2−クロロ−1
−ヨードエタンが挙げられる。
【0019】本発明方法は、これらの原料と極性溶媒を
用いて反応を行う。反応はバッチ式、半バッチ式、連続
式があるが、いずれの方式でも実施できる。以下に攪拌
機を備えた加圧容器を使用するバッチ式を例として説明
する。
【0020】まず加圧容器に金属沃化物および極性溶媒
を仕込む。次に加圧容器を閉じ、空隙の空気を原料また
は反応に対して不活性なガス(以下、不活性ガス)で十
分に置換する。その後原料の弗化塩化エタンを充填した
後、攪拌しながら昇温し、所定の反応温度で反応する。
ここで使用できる不活性ガスは、例えば、原料の弗化塩
化エタン、窒素、アルゴン、炭酸ガス等が挙げられる。
これらの内、好ましくは原料の弗化塩化エタンおよび/
または窒素である。
【0021】本発明方法において、原料の弗化塩化エタ
ンに対して金属沃化物のモル比は0.1〜5.0倍モル
が使用されるが、好ましくは0.5〜1.5倍モルであ
る。モル比が0.1倍モル未満では弗化塩化エタンの転
化率が小さく、経済的ではない。一方5.0倍モルを超
えると未反応の金属沃化物が多くなり、経済性が損なわ
れる。
【0022】極性溶媒の使用量は用いる極性溶媒の種類
や、金属沃化物の種類によって異なり、一元的に決定す
る事は困難であるが、金属沃化物100gに対して極性
溶媒100〜5,000mlとすれば良く、好ましくは
150〜2,000mlである。極性溶媒が100ml
未満では金属沃化物が十分に溶解せず、十分な反応速度
が得られない。また弗化塩化エタンの転化率も小さくな
り好ましくない。一方極性溶媒が5,000mlを超え
ると反応一回当たりの生産量が小さくなり経済性が損な
われる。
【0023】本発明方法における反応温度は、80℃以
上250℃以下の範囲で適宜選択すればよい。さらに好
ましくは100℃〜200℃である。反応温度が80℃
未満では反応速度が著しく遅く、反応を完結させるには
長い時間を要し実用的でない。また250℃を超えると
副生成物が増加し弗化沃化エ夕ンの選択性が低下する。
【0024】本発明方法における反応圧力は特に制限は
ないが、本発明の反応条件下では、自圧で約3MPaと
なる。必要があれば反応は不活性な窒素、アルゴンを加
えて加圧してもよいが、好ましくは反応条件下で5MP
a以下がよい。これ以上の圧力では加圧容器に掛る設備
費が増大し、好ましくない。
【0025】攪拌速度は加圧容器の大きさや形状に応じ
て異なるが、攪拌が十分にできる速度を選択すればよ
い。
【0026】本発明方法における反応時間は特に限定さ
れるものではないが、5〜30時間、好ましくは15〜
20時間がよい。5時間未満では弗化塩化エタンの転化
率が不十分であり、30時間を超えても反応はそれ以上
進行せず不必要である。
【0027】本発明方法によれば本反応終了後、加圧容
器を冷却し、未反応の弗化塩化エタンを冷却トラップで
回収し、不活性ガスをパージする。しかる後に加圧容器
から所望の弗化沃化エタン、極性溶媒、未反応の金属沃
化物、生成した金属塩化物から成る反応混合物を得る。
通常、反応混合物中の金属塩化物は塩として沈殿してい
るので、ろ過や遠心分離器で塩を分離し、弗化沃化エタ
ン、極性溶媒、未反応の金属沃化物からなる反応生成物
溶液を得る。この溶液より所望の弗化沃化エタンは常法
に従って、蒸留分離し、高純度の弗化沃化エタンを得る
事ができる。
【0028】本発明者らはさらに前記一般式(II)にお
いてm=3、n=0である2,2,2−トリフルオロ−
1−ヨードエタンと本発明の最も好ましい極性溶媒であ
るアセトンは、重量比約75〜81:19〜25、沸点
60〜66℃の最高共沸組成を形成することを見い出し
た。
【0029】この最高共沸組成を形成する性質を2,
2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンの分離精製プ
ロセスに適用すると、効率的かつ廃棄物の少ない簡便な
プロセスとなる。
【0030】2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエ
タンとアセトンの沸点は各々55℃、56℃である。こ
れらの沸点の差は約1℃と小さく、これを蒸留分離する
には通常の蒸留操作では極めて困難である。そこで前述
の最高共沸組成を形成する性質を利用することで初めて
効率的、かつ廃棄物の少ない2,2,2−トリフルオロ
−1−ヨードエタンの分離プロセスとすることが可能と
なる。
【0031】本発明の2,2,2−トリフルオロ−1−
ヨードエタンの精製方法によれば、例えば、次の手順に
よって分離精製すればよい。
【0032】まず加圧容器より未反応の原料の弗化塩化
エタンである2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエ
タン、反応生成物の弗化沃化エタンである2,2,2−
トリフルオロ−1−ヨードエタン、および極性溶媒であ
るアセトンをフラッシュさせ、冷却した容器に移す。こ
れを蒸留して未反応の原料の弗化塩化エタンを分離す
る。この蒸留を行うにあたっては必要ならば加圧蒸留を
行ってもよい。未反応の原料を分離したボトム液は2,
2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンとアセトンを
含む。この溶液は常圧において蒸留により、沸点56℃
のアセトンと沸点62〜64℃の2,2,2−トリフル
オロ−1−ヨードエタン−アセトン最高共沸組成物に分
離する。
【0033】次にボトム液である2,2,2−トリフル
オロ−1−ヨードエタン−アセトン最高共沸組成物に水
を加えて、攪拌、静置すると、下層の粗2,2,2−ト
リフルオロ−1−ヨードエタン相と上層のアセトン−水
溶液相の2層に分離できる。この時使用する水の量は
0.5〜10倍量であり、好ましくは1〜5倍量であ
る。水量が0.5倍量未満ではアセトンを十分に抽出分
離できず、また10倍量を超えるとアセトンを回収する
水量が多くなり経済性が損なわれる。粗2,2,2−ト
リフルオロ−1−ヨードエタンは常圧蒸留により塔頂か
ら高純度の2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタ
ンが製品として得られ、ボトム液として2,2,2−ト
リフルオロ−1−ヨードエタン−アセトン最高共沸組成
物が残る。
【0034】このようにして高純度の2,2,2−トリ
フルオロ−1−ヨードエタンを精製分離することができ
る。
【0035】2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエ
タンを本発明により工業的に製造する場合のプロセスの
一実施態様を図1に示した。
【0036】沃化ナトリウム、2,2,2−トリフルオ
ロ−1−クロロエタンおよびアセトンを加圧容器1に投
入し、反応させる。その後、ライン6により反応液をフ
ラッシュさせ、十分に冷却して容器2に移送する。その
時加圧容器1には未反応の沃化ナトリウムと塩化ナトリ
ウムが固体として分離され残る。その後回分蒸留塔3を
用いて加圧下に2,2,2−トリフルオロ−1−クロロ
エタンを回収し、続いて常圧下にアセトンの一部を回収
する。回収された2,2,2−トリフルオロ−1−クロ
ロエタンは再び原料として用いられ、回収されたアセト
ンは加圧容器1に戻され、加圧容器1内に残る沃化ナト
リウムを溶解し、アセトンに溶解しない塩化ナトリウム
と分離する。その後、このアセトン−沃化ナトリウム溶
液は加圧容器1に戻され、極性溶媒および原料として再
び利用する。蒸留塔3のボトム液は2,2,2−トリフ
ルオロ−1−ヨードエタン−アセトン最高共沸組成物で
ある。この共沸組成物をライン7を用い、二相分離器4
に送り、水を加えて水洗する。二相分離により得られた
下層の粗2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン
はライン8により蒸留塔5に送られ、製品としての高純
度の2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンと、
2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン−アセト
ン共沸組成物に分離される。ボトム液として残った2,
2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン−アセトン共
沸組成物はライン9により、二層分離器4に戻される。
一方、二相分離された上層の水―アセトン組成物は蒸留
により、水、アセトンに蒸留分離し、アセトンは再び極
性溶媒として利用する。
【0037】以下に実施例により本発明をさらに詳細に
説明する。ただし記載した実施例は本発明の範囲を限定
するものではない。
【0038】
【実施例】なお、実施例中の弗化沃化エタン選択率、弗
化塩化エタン転化率は下記(1)式により計算した。
【0039】
【数1】
【0040】実施例1 2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタン(以下、
「TFEC」とする)34.0g(0.287mo
l)、アセトン100ml、沃化ナトリウム(以下、
「NaI」とする)43.3g(0.289mol)を
200mlオートクレーブに取り、180℃まで加熱、
昇温し、その温度を維持して18時間反応させた。
【0041】その後、室温まで冷却し、反応液を採取
し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0042】その結果、TFEC転化率52.2%、
2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン(以下、
「TFEI」とする)選択率92.0%であった。
【0043】実施例2 TFEC712.4g(6.0mol)、アセトン2
L、NaI903.4g(6.0mol)を5Lのオー
トクレーブに取り、180℃まで加熱し、180℃を維
持して18時間反応させた。
【0044】その後、室温まで冷却し、反応液を取り出
した。この時反応液の分析の結果、この時のTFECの
転化率は53.9%、TFEIの選択率は88.0%で
あった。
【0045】実施例3〜5 反応温度のみを変更して、実施例1と同様に反応を行
い、表1に示したような結果を得た。
【0046】
【表1】
【0047】実施例6〜19 実施例1と同様の方法で溶媒の種類について検討を行っ
た結果を表2に示す。なお、各溶媒は100ml使用し
た。
【0048】
【表2】
【0049】実施例20 実施例1において、NaIを沃化カリウム(以下、「K
I」と略称する)に変えて行う以外同様の方法で行っ
た。
【0050】TFEC31.4g(0.265mo
l)、アセトン100ml、KI43.6g(0.26
3mol)を200mlオートクレーブに取り、180
℃まで加熱し、180℃を維持して18時間反応させ
た。
【0051】その後、室温まで冷却し、反応液を採取
し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0052】その結果、TFEC転化率21.4%、T
FEI選択率35.2%であった。
【0053】実施例21 2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン30.0g
(0.299mol)、アセトン100ml、NaI4
5.3g(0.302mol)を200mlオートクレ
ーブに取り、160℃まで加熱し、160℃を維持して
18時間反応させた。
【0054】その後、室温まで冷却し、反応液を採取
し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0055】その結果、2,2−ジフルオロ−1−クロ
ロエタン転化率55.2%、2,2−ジフルオロ−1−
ヨードエタン選択率85.0%であった。
【0056】実施例22 ガラス製蒸留塔(直径25mm、充填剤スルーザー、有
効充填高さ385mm)にアセトン61.8重量%、T
FEI38.2重量%を含む混合液203.8gを仕込
み、蒸留を行い、表3に示すような結果を得た。
【0057】
【表3】
【0058】実施例23 アセトン6.4重量%、TFEI93.6重量%を含む
混合液241.7gを用いた以外、実施例16と同じよ
うに蒸留を行い、表4に示すような結果を得た。
【0059】
【表4】
【0060】実施例22、23の結果により、アセトン
とTFEIは最高共沸組成物を作り、その組成はアセト
ン19〜25重量%、TFEI75〜81重量%であっ
た。 実施例24 実施例2で得られた反応液2343gから単蒸留によ
り、TFEC237.5gおよびアセトン1,162g
を回収し、TFEI−アセトン共沸組成物669gを得
た。このTFEI−アセトン共沸組成物を水3.3Lで
2回洗浄し、純度98.3%の粗TFEI507gを得
た。
【0061】これを蒸留し、純度99.9%のTFEI
を498g得た。TFEIの単離収率は39.5%であ
った。この時蒸留塔ボトムにTFEI−アセトン共沸組
成物が残った。
【0062】
【発明の効果】本発明の製造方法は、原料の入手が容易
かつ安価な弗化塩化エタンと金属沃化物を用い、極性溶
媒中で反応させ、高い選択率で弗化沃化エタンを簡便に
製造することができ、従来の製造方法に較べて工業的に
極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の弗化沃化エタンの製造方法の一実施態
様を示すプロセス図。
【符号の説明】
1 加圧容器 2 容器 3 蒸留塔 4 二相分離器 5 蒸留塔

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 極性溶媒中で一般式(I) CFmnCH2Cl (I) (ただし式中、mは1ないし3の整数であり、nは3−
    mを示し、Xはnが1のときはClまたはHを、nが2
    のときはClおよび/またはHを表す)で表わされる弗
    化塩化エタンと金属沃化物を反応させることを特徴とす
    る一般式(II) CFmnCH2I (II) (ただし式中、X、mおよびnは前記定義に同じ)で表
    わされる弗化沃化エタンの製造方法。
  2. 【請求項2】 一般式(I)で表される弗化塩化エタン
    が2−モノフルオロ−1−クロロエタンであり、一般式
    (II)で表される弗化沃化エタンが2−モノフルオロ−
    1−ヨードエタンである請求項1に記載の弗化沃化エタ
    ンの製造方法。
  3. 【請求項3】 一般式(I)で表される弗化塩化エタン
    が2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンであり、一般
    式(II)で表される弗化沃化エタンが2,2−ジフルオ
    ロ−1−ヨードエタンである請求項1に記載の弗化沃化
    エタンの製造方法。
  4. 【請求項4】 一般式(I)で表される弗化塩化エタン
    が2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタンであ
    り、一般式(II)で表される弗化沃化エタンが2,2,
    2−トリフルオロ−1−ヨードエタンである請求項1に
    記載の弗化沃化エタンの製造方法。
  5. 【請求項5】 金属沃化物がアルカリ金属および/また
    はアルカリ土類金属の沃化物である請求項1に記載の弗
    化沃化エタンの製造方法。
  6. 【請求項6】 金属沃化物が沃化ナトリウムおよび/ま
    たは沃化カリウムである請求項1に記載の弗化沃化エタ
    ンの製造方法。
  7. 【請求項7】 80〜250℃の温度範囲で反応を行う
    請求項1に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
  8. 【請求項8】 100〜200℃の温度範囲で反応を行
    う請求項1または請求項7に記載の弗化沃化エタンの製
    造方法。
  9. 【請求項9】 極性溶媒がケトン類、スルホキシド類、
    ニトリル類、エーテル類、エステル類およびアミド類か
    ら選ばれた少なくとも1種以上である請求項1に記載の
    弗化沃化エタンの製造方法。
  10. 【請求項10】 ケトン類がアセトン、2−ブタノンお
    よび4−メチル−2−ペンタノンから選ばれる少なくと
    も1種以上である請求項9に記載の弗化沃化エタンの製
    造方法。
  11. 【請求項11】 スルホキシド類がスルホランおよび/
    またはジメチルスルホキシドである請求項9に記載の弗
    化沃化エタンの製造方法。
  12. 【請求項12】 ニトリル類がアセトニトリルである請
    求項9記載の弗化沃化エタンの製造方法。
  13. 【請求項13】 エーテル類がジグライムである請求項
    9に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
  14. 【請求項14】 エステル類がγ−ブチロラクトンであ
    る請求項9に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
  15. 【請求項15】 アミド類がN−メチルピロリドン、
    1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジ
    メチルアセトアミド、テトラメチル尿素から選ばれた少
    なくとも1種である請求項9に記載の弗化沃化エタンの
    製造方法。
  16. 【請求項16】 アセトン中で2,2,2−トリフルオ
    ロ−1−クロロエタンと金属沃化物を反応させて、2,
    2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを製造した
    後、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンとア
    セトンの共沸組成物を取り出し、該共沸組成物に水を加
    え、粗2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン相
    とアセトン−水相に分離した後、粗2,2,2−トリフ
    ルオロ−1−ヨードエタンを蒸留することを特徴とする
    高純度2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンの
    製造方法。
  17. 【請求項17】 2,2,2−トリフルオロ−1−ヨー
    ドエタンおよびアセトンからなる共沸組成物。
  18. 【請求項18】 2,2,2−トリフルオロ−1−ヨー
    ドエタンおよびアセトンの組成比が75〜81重量%:
    19〜25重量%である請求項17に記載の共沸組成
    物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107857691A (zh) * 2017-10-30 2018-03-30 大丰跃龙化学有限公司 一种一氟一碘甲烷制备的新方法
CN113307720A (zh) * 2021-04-16 2021-08-27 浙江巨化技术中心有限公司 一种1,1-二氟-2-碘乙烯的制备方法

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