JPH10220578A - ピストン - Google Patents

ピストン

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Publication number
JPH10220578A
JPH10220578A JP3258897A JP3258897A JPH10220578A JP H10220578 A JPH10220578 A JP H10220578A JP 3258897 A JP3258897 A JP 3258897A JP 3258897 A JP3258897 A JP 3258897A JP H10220578 A JPH10220578 A JP H10220578A
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JP
Japan
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piston
oil
outer ring
skirt portion
ring member
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Application number
JP3258897A
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English (en)
Inventor
Teruo Nakada
輝男 中田
Yasuhiro Okubo
泰宏 大久保
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Isuzu Motors Ltd
Original Assignee
Isuzu Motors Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 この発明は、ピストンの行程に基づいて外環
部材とスカート部との間の隙間のオイルに生じる負圧を
利用して、外部供給機構を要することなくスラップ音を
軽減するためのダンピング用オイルを隙間に供給する。 【解決手段】 ピストンの圧縮行程時に、ピストン本体
1と外環部材27に作用する外力の作用により、スカー
ト部3の外周面7と外環部材27との間の隙間に満たさ
れていたダンピング用オイルに負圧が生じる。シリンダ
ライナ内面に付着していたオイルは、ピストンリング溝
12に嵌合されていたピストンリングによって掻き取ら
れて、ピストンリング溝12からスカート部3の外周面
に形成されたオイル導入溝9を通じて隙間に臨むオイル
貯留溝8に供給される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばエンジン
に適用される、クラウン部とスカート部とを一体構成と
したピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】シリンダ内でのピストンの作動によって
発生する騒音の一つにスラップ音がある。このスラップ
音は、ピストンがシリンダ内を往復運動するときに該ピ
ストンのスカート部がシリンダライナの壁面に衝突する
ことによって発生するものである。つまり、シリンダ内
をピストンが往復運動できるようにピストンとシリンダ
ライナの壁面との間には間隙が形成されている一方で、
燃焼室からのブローダウンを防止するため、ピストンに
形成されたピストンリング溝にはピストンリングが嵌入
しているので、ピストンとシリンダとの間には隙間が存
在している。したがって、ピストンがシリンダ内を往復
運動する時、ピストンは、上記隙間に相当する距離だけ
ピストン径方向、即ちスラスト方向に移動可能となるた
め、ピストンがシリンダライナ壁面に衝突してスラップ
音が発生する。
【0003】従来、このスラップ音を低減するため、種
々のピストンが開発されてきた。例えば、本出願人は、
ピストン本体のスカート部外周に、ピストン本体に対し
て回動可能に且つスラスト方向に相対移動可能となるよ
うに、外環部材を配設すると共に、スカート部と外環部
材との間の形成される隙間にオイルを導入し、導入した
オイルのダンピング作用によって、外環部材がピストン
本体のスカート部に衝突するのを緩和させて低騒音化を
図ったピストンを提案している(特開平8−42391
号公報参照)。
【0004】図8は、上記特開平8−42391号公報
に開示されたピストンの例を示す分解斜視図である。図
8に示すように、このピストンは、ピストンヘッド部で
あるクラウン部42とボス部53を備えたスカート部4
3とを一体構造に構成したピストン本体40、スカート
部43に嵌合する外環部材47、ボス部53と外環部材
47との間に介在され外環部材47を回動自在に且つス
ラスト方向に相対移動自在に支持する外環支持部材5
0、ピストン本体40とコンロッド51(図8参照)と
を回転自在に連結するピストンピン62、及びピストン
ピン62に外環支持部材50を取り付けるためのサブピ
ストンピン63を有している。
【0005】ピストン本体40のクラウン部42には複
数のピストンリング溝52が形成されており、各ピスト
ンリング溝52にはピストンリング(図示せず)が嵌入
される。スカート部43は、クラウン部42の外径より
も小さい外径を有し且つクラウン部42の下部に一体的
に形成されている。また、ピストン本体40のスカート
部43はピストンピン62を挿通するピストンピン孔4
4が形成されたボス部53を備えている。ピストン本体
40には、ピストンピン孔44からスカート部43に延
びる油路46が形成されている。油路46については、
図8では、スカート部43の外周面に開口する部分のみ
が図示されており、図9では、簡潔のため、エンジンの
燃焼行程中にピストンがシリンダライナに対して圧接さ
れる側であるスラスト側にのみ示されている。スカート
部43には油路46から導入された油圧をスカート部4
3の一面に分布させるための油溝45が十字状に形成さ
れている。
【0006】油溝45及び油路46は、スカート部43
のスラスト側と反スラスト側とに形成されているが、図
8にはスラスト側のみ示してある。油溝45の形成箇所
はピストンリング溝52よりも下方位置であって且つピ
ストンピン62の中心軸よりも上方位置に設定されてい
る。外環部材47はスラスト側及び反スラスト側におい
てスカート部43に配設されているので、ピストンは、
スラスト側及び反スラスト側にオイルダンピング機構を
備えたピストン(以下、「両側オイルダンピング式ピス
トン」と言う)である。
【0007】外環部材47は一対の半円弧面部材47b
からなり、ピストン本体40のスカート部43に嵌合さ
れる。半円弧面部材47bの周方向両側にはそれぞれ円
周方向に延びる腕部58が形成されている。また、外環
部材47の熱膨張率を、シリンダを構成するシリンダラ
イナと同程度の熱膨張率とすると、外環部材47とシリ
ンダライナとの間に熱膨張差が発生せず好ましい。例え
ば、シリンダライナが鋳鉄で製作されている場合には、
外環部材47は鋳鉄又は鋼等で製作し、また、シリンダ
ライナがセラミックスで製作されている場合には、外環
部材47をセラミックスで製作することができる。
【0008】外環支持部材50はピストン本体40のス
カート部43に形成されたボス部53にピストンピン6
2を両側から挟むように配置され、外環部材47を支持
するものである。外環支持部材50はピストンピン62
の軸回りに回動可能に設けられている。また、外環支持
部材50は外環部材47の上下方向移動を規制し且つ外
環部材47のスラスト方向の相対移動を許容する案内溝
59を有している。案内溝59は外環支持部材50の上
部と下部にそれぞれ凸状に形成された係止部即ち鍔部6
0,61によって規定されている。案内溝59の幅は外
環部材47の腕部58の幅と略等しく形成されているの
で、腕部58は案内溝59に係合可能である。腕部58
の案内溝59への係合により、外環部材47は腕部58
を介して外環支持部材50に形成された案内溝59に摺
動可能に支持される。また、案内溝59の中央部にはス
カート部43のピストンピン孔44に整合するピン孔6
9が形成されている。
【0009】ピストンピン62は中心孔68を有してお
り、該中心孔68にはサブピストンピン63の小径部6
4が圧入可能である。また、ピストンピン62は外周面
の3箇所に即ち中央部と両端部に円周状に形成された油
溝48,49を有しており、各油溝48,49は油路5
5,56を介して中心孔68に連通している。ピストン
ピン62をピストン本体40及びコンロッド51に取り
付けた状態では、中央部の油溝48は、図10に示すよ
うに、コンロッド51の油路78と連通し、両端部の油
溝49は、図9、図10から分かるように、ピストン本
体40のピストンピン孔44からスカート部43へ向か
って延びる油路46に連通している。
【0010】サブピストンピン63は、図8に示すよう
に、小径部64と大径部65とからなるピン部66と、
大径部65の端部に形成されたキャップ部67とから構
成されている。小径部64はピストンピン62の中心孔
68に圧入される。また、大径部65は外環支持部材5
0のピン孔69に嵌合される。
【0011】このピストンの組立は以下のようにして行
われる。まず、ピストン本体40のピストンピン孔44
及びコンロッド51の小径端51aの孔にピストンピン
62を挿入して、ピストン本体40にピストンピン62
を固定する。次いで、ピストンピン62を両側から挟む
ように外環支持部材50をピストン本体40のボス部5
3に当接させて、サブピストンピン63の先端の小径部
64をピストンピン62の中心孔68に圧入する。サブ
ピストンピン63の大径部65が外環支持部材50のピ
ン孔69に挿入された状態になり、外環支持部材50は
ピストンピン62の軸回りに回動可能となる。その後、
ピストン本体40のスカート部43に対して、腕部58
を外環支持部材50の案内溝59に挿入して一対の外環
部材47を嵌合することにより、上記ピストンは組み立
てられる。なお、このピストンは、ピストン単体の状態
においては、外環部材47は腕部58が外環支持部材5
0の案内溝59から簡単に外れてしまうが、ピストンを
シリンダ内に収納した状態では、外環部材47は外環支
持部材50から外れ落ちることはない。
【0012】次に、外環部材47とピストン本体40の
スカート部43との関係について説明する。外環部材4
7とスカート部43との間には、図9に示すように隙間
54が形成されている。隙間54には加圧されたオイル
が供給される。外環部材47は外周面の半径がシリンダ
ボアの半径Br と等しく形成されているので、このピス
トンをシリンダ内に組み込んだ状態においては、外環部
材47はシリンダライナに密着することになる。外環部
材47の内周面の半径R1 は、外環部材47の板厚をt
とするとき、R1 =Br −tで表される。これに対し
て、ピストン本体40は、スカート部43の半径R2
外環部材47の内周面の半径R1 よりも大きく(R2
1 )、且つスカート部43の半径R2 の中心Pがピス
トン本体40の中心P0 から外環部材47が配設される
側とは反対方向に微小距離Ls だけ離れるように即ち偏
倚するように設定したものである。また、外環部材47
とスカート部43との間隔(クリアランス)の取り方に
ついて、スカート部43をピストン中心に対して楕円状
に形成することもできる。
【0013】この結果、外環部材47とスカート部43
との隙間54の間隔は、外環部材47の中央部70と周
辺部71とでは異なることになる。即ち、中央部70の
間隔(クリアランス)をC1 、周辺部71の間隔(クリ
アランス)をC2 で表すとすれば、中央部70の間隔C
1 は、C1 =R1 −(R2 −LS )となり、R1 、R
2 、LS を適当に選ぶことにより、C1 >C2 となり、
外環部材47とスカート部43との間隔は、中央部70
から周辺部71に至るに従って、C1 からC2 まで徐々
に小さくなるように形成することができる。
【0014】次に、ピストンへのオイル供給経路につい
て説明する。ピストンへのオイル供給経路については、
大別して、クランクシャフトからコンロッド,ピストン
ピンを介してスカート部43まで導いた油路を通じてオ
イルを供給する形態と、ピストン頂部に形成した冷却空
胴(クーリングチャンネル)からピストンスカート部に
導いた油路を通じてオイルを供給する形態とがある。上
記公報に開示されているピストンでは前者のオイル供給
方式を採用しており、以下に簡単に説明する。
【0015】図10に示したオイルの供給経路によれ
ば、ピストン本体40は、コンロッド51の小径端51
aに形成された孔と、スカート部43のピストンピン孔
44にピストンピン62を挿通することによって、コン
ロッド51の小径端51aに回転可能に支持される。ま
た、コンロッドの大径端51bはクランクシャフト73
のクランクピン74にコンロッドベアリング72を介し
て回転可能に支持される。クランクシャフト73はオイ
ルギャラリー75を備えたシリンダブロック76に回転
自在に支持される。ピストンには、オイルギャラリー7
5からシリンダブロック76及びクランクシャフト73
を経由してクランクピン74まで延びる油路77が形成
されている。コンロッド51にはクランクピン74の油
路77に連通する油路78が形成され、油路78に連通
する油溝48がピストンピン62の中央部周面に形成さ
れている。ピストンピン62の中央部周面に形成された
油溝48は油路79としての中心孔68に連通し、油路
79は更にピストンピン62の両端部周面に形成された
油溝49に連通している。また、油溝49はピストン本
体40におけるピストンピン孔44からスカート部43
へ向かって延びる油路46に連通している。
【0016】以上のように構成されたオイルの供給経路
によれば、オイルギャラリー75から供給された加圧オ
イルは、これらの油路及び油溝を経由して、ピストン本
体40のスカート部43に形成された油溝45へと導か
れ、外環部材47とスカート部43との間の隙間54に
次々に供給されることになる。勿論、この隙間54は密
閉空間ではないから、オイルは隙間54から次々に漏出
する。この状態において、外環部材47はシリンダライ
ナのスラスト側の壁面に向けて所定の圧力で押し付けら
れ、外環部材47の外周面がシリンダライナの壁面に密
着した状態になる。なお、所定の圧力とは、外環部材4
7をシリンダライナの壁面に常に軽く密着させておく程
度の小さな圧力をいう。
【0017】このピストンは、以上のような構成を備え
ており、以下のように作動する。ピストンをシリンダボ
ア内に組み込み、前記隙間にオイルを供給すると、外環
部材47はシリンダライナに向けて押し付けられて該シ
リンダライナの壁面に密着した状態になる。ピストンが
往復運動すると、外環部材47はピストン本体40と一
体的に往復運動する。また、ピストンの往復運動に従っ
てピストン本体40はスラスト方向に移動し即ちピスト
ンピン62の軸回りで揺動し、スラスト側においては、
スカート部43が外環部材47を介してシリンダライナ
の壁面に衝突しようとする。その時、外環部材47とス
カート部43との間の隙間54に満たされているオイル
はスカート部43の周辺部71の隙間C2 から押し出さ
れる。ところが、その隙間54は外環部材47の中央部
70(隙間C1 )で大きく且つ周辺部71(隙間C2
で小さく形成されている(C1 >C2 )ので、周辺部7
1が絞りとしての機能を発揮するようになり、ピストン
本体40は急に油圧による抵抗を受けて外環部材47の
方へ接近し難くなる。このようにピストン本体40がピ
ストンピン62の軸回りに揺動した時に、ピストン本体
40はオイルダンピング作用を受けるので、スラスト側
におけるスラップ音の発生が防止される。
【0018】図11に示したピストンは、冷却空胴(ク
ーリングチャンネル)のオイルを利用したオイルダンピ
ング機能を備えるピストンである。このピストンのピス
トン本体80は、ピストンヘッド部であるクラウン部8
2と、クラウン部82の下部に形成され且つピストンピ
ン孔84が形成されたボス部(図8に示したボス部53
と同様の構造であるが、図11には図示せず)を備えた
スカート部83とを一体構造に構成したものである。ま
た、このピストンは、外環部材87をピストンのスラス
ト側にのみ配設した片側オイルダンピング式ピストンで
ある。クラウン部82には複数のピストンリング溝92
が形成されており、各ピストンリング溝92にはピスト
ンリング(図示せず)が嵌入される。スカート部83に
嵌合する外環部材87は、図8に示した外環支持部材5
0と同様な構造を有する外環支持部材(図示せず)によ
って、ピストン本体80に対して回動自在に且つスラス
ト方向に相対移動自在に支持されている。
【0019】図11に示したピストンにおいては、スカ
ート部83と外環部材87との間に形成される隙間94
に導入されるオイルは、冷却空胴(クーリングチャンネ
ル)89内のオイルが利用される。燃焼室内の高温ガス
によって高熱に晒されるクラウン部82には、冷却用の
オイルが流れる冷却空胴89が形成されている。ピスト
ン本体80には冷却空胴89からスカート部83に延び
る油路86が形成されている。油路86を通じて供給さ
れた冷却空胴89内のオイルは、スカート部83の周面
に形成された油溝85を通って、外環部材87とスカー
ト部83との間に形成される隙間94に導入される。そ
の他の構造は、図8に示したピストンと同様であるの
で、再度の詳細な説明を省略する。
【0020】冷却空胴89内には、クランク室に設けら
れたオイルノズルから噴出されるオイルジェットが注入
される。オイルジェットを冷却空胴89に正確に注入す
るため、上記オイルジェットを冷却空胴89に向けて噴
き出すタイミングは、ピストンが下死点付近にあってノ
ズルからピストンまでの距離が短くなっている状態に選
定される。冷却オイル供給系統には、リリーフバルブが
設けられており、オイルが所定の油圧を超える状態にな
った状態でオイルを噴出する。したがって、通常のアイ
ドリング運転では、エンジン回転数が低く且つオイルポ
ンプの吐出油圧が低圧であり、その一方で、ピストン温
度が低いので冷却を要するまでもないので、オイルノズ
ルからのオイルの噴射は遮断されている。
【0021】また、本出願人は、国際出願(PCT/J
P96/01278)にも低騒音化を図ったピストンを
開示している。このピストンは、ピストン本体のスカー
ト部と外環部材との間に形成された油膜のダンピング作
用によってシリンダライナに対するピストンの衝撃を抑
えてピストンのスラップ音を低減させるという基本的な
構成において、上記の公報に記載のものと同じである。
このピストンは、また、ピストンピンの外側に取り付け
られた支持部材で支持される二組の外環部材を有し、ス
ラスト側及び反スラスト側においてダンピング作用が得
られる両側オイルダンピング式ピストンである。
【0022】更に、本出願人は、オイルダンピング機構
を片側だけに採用した構造を有する低騒音のエンジン用
ピストンを提案した(特願平8−249089号)。オ
イルダンピング機構を片側だけに採用したことによって
オイル使用量が低減される。また、オイルダンピング機
構を片側だけに限ったことによって増加する騒音には、
ピストンの重心位置を特定することによって対処したも
のである。即ち、ピストン本体の重心をピストン本体の
中心線に対してスラスト側にオフセットすることによ
り、上死点に向かって減速中のピストンにおいても、圧
縮圧力が作用し始める圧縮行程の終期においても、ピス
トンに対して常に反スラスト側に押し付ける力が作用し
続け、ピストンが押し付けられる方向がスラスト側から
反スラスト側に変わることがないので、スラップ音が発
生するのを抑制することができる。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のピストン
は、いずれも、スラップ音を有効に低減させることがで
きるものであるが、以下に挙げるような、ピストンスカ
ート部へのオイルの供給について、なお改良すべき点が
残されている。即ち、クランク軸からピストンピンまで
の油路を通じてスカート部の外周面へオイルを供給する
構造では、コンロッドからピストンピンまでの一連の部
品に油路を形成する必要がある。また、ピストン頂部に
形成した冷却空胴からピストンスカート部へオイルを供
給する構造では、オイルジェットを必要とすると共に冷
却空胴とスカート部の外周面とを連通させる特別の油路
を形成することが必要になる。即ち、これらの油路やオ
イルジェット機能等の給油手段を備えていないエンジン
にあっては、既存のピストンを低騒音化されたピストン
とするには、上記給油手段を備えたり、油路を形成する
ための機械加工設備を必要とするという問題点が存在し
ていた。
【0024】ところで、冷却空胴からの外環部材とスカ
ート部との間の隙間へのオイルの供給については、上記
のとおり、ピストンが下死点付近にあってオイルジェッ
トから給油されるときに限られ、その後は、冷却空胴内
のオイルには充分な油圧が確保できないために、上記隙
間へのオイルの供給はないものと考えられている。しか
しながら、実際には、ピストンが下死点以外にあるとき
でも、冷却空胴からピストンスカート部へオイルが供給
されて騒音低減効果を奏していることが確認されてい
る。このことは、ピストンが下死点以外に位置している
状態でも、冷却空胴内の正の油圧による給油メカニズム
以外の別の給油メカニズムが働いて、上記隙間へのオイ
ルの供給が行われていることを示している。
【0025】上記、別の給油メカニズムの現象を効率良
く利用することができれば、給油源が冷却空胴でなくて
もよく、また供給するオイルは必ずしも加圧されている
状態でなくてもピストンのスカート部と外環部材との間
の隙間にオイルを供給することが可能となる。また、上
記隙間にオイルを供給するための特別の油路等をピスト
ン等のエンジン部品に加工する必要がなく、且つそのた
めの機械加工設備を要することなく、低騒音化を図った
ピストンを得ることができる。
【0026】
【課題を解決するための手段】この発明の目的は、上記
課題を解決することであり、オイルを加圧することな
く、スカート部と外環部材との間に形成された隙間にダ
ンピング用のオイルを供給して低騒音化を達成すること
ができるピストンを提供することである。即ち、、この
発明の目的は、前記隙間へのオイルの供給を、ピストン
ピンがコンロッドから受ける摩擦トルクや、ピストンに
作用する慣性力及びコンロッドからの強制的な変位力等
によって上記隙間が拡大するときの吸込み作用によって
行い、特別なオイル供給構造を用いることなく、既にピ
ストンに使用されているオイル、即ち、シリンダライナ
との摺動面に供給されているオイルや、ピストン本体の
裏面に跳ねかけられるオイルを利用して、ピストンの静
音化を図ることである。
【0027】この発明は、ピストンリング溝を備えたク
ラウン部とピストンピンを挿通するピストンピン孔が形
成されたボス部を備えたスカート部とから構成したピス
トン本体、前記スカート部の少なくともスラスト側に配
設され且つ前記スカート部との間に隙間を形成している
外環部材、及び前記外環部材を前記ピストンピンの軸回
りに回動自在に且つ前記ピストン本体に対して径方向に
相対移動自在に支持するため前記ピストンピンの両端部
に取り付けられた外環支持部材を具備し、前記スカート
部の外周面には、前記隙間に供給されるオイルを貯留す
るオイル貯留溝及び前記オイル貯留溝と前記ピストンリ
ング溝とを接続するオイル導入溝が形成されていること
から成るピストンに関する。
【0028】この発明は、上記のとおり構成されている
ので、次のように作用する。上死点前のクランク角度範
囲にあって上昇中のピストンは、コンロッドからの押し
上げ力や横方向の押しつけ力、ピストンピンを介しての
摩擦トルク、及びピストンの慣性力等を受けるが、摩擦
トルクに比して横方向の押しつけ力はきわめて大きいた
め、この間はピストンは反スラスト側でシリンダライナ
に接した状態のままである。
【0029】外観部材は、ピストンピン回りに回動自在
且つピストン本体に対して径方向に相対移動自在に支持
されている。コンロッドからの押し上げ力や横方向の押
しつけ力は外環部材には作用しないため、ピストンの動
きに必ずしも常に追従するわけではない。外環部材に
は、ピストンピンを介して摩擦トルク、慣性力、シリン
ダライナからの摩擦力などが作用する。上記のクランク
角度範囲においては、摩擦トルクによる回動によって、
外環部材はその下端を支点としてピストンから離れシリ
ンダライナに接近するように変位する。したがって、外
環部材とピストンスカート部との間に形成される隙間は
拡大しようとするため、隙間に存在するオイルは負圧と
なる。隙間に連通するオイルの導入路を設け、さらに導
入路の先にオイル溜まりを設けておけば、オイル溜まり
から導入路を通じてオイルが吸い出されることになり、
隙間に対するオイルの補充が行われる。
【0030】上記のメカニズムによれば、エンジンの回
転速度が、油圧が低く且つピストンに作用する慣性力が
小さい低速回転領域であっても、隙間へのオイル供給は
可能となり、スラップ音による騒音が軽減される。更
に、外環部材とスカート部との間に形成される隙間の体
積は非常に僅かな量であるので、導入路の先に設けられ
るオイル溜まりへのオイルの供給は極少量で済む。した
がって、オイル溜まりへ供給されるべきオイルは、量的
にはピストンリングによってピストン下降行程中に掻き
落とされたオイルを利用することで賄うことができる程
度であり、掻き落とされてピストンリング溝に貯留した
オイルは、ピストン上昇行程中にスカート部の外周面に
形成されたオイル導入溝を通じてオイル貯留溝に供給さ
れる。
【0031】また、この発明は、ピストンリング溝を備
えたクラウン部とピストンピンを挿通するピストンピン
孔が形成されたボス部を備えたスカート部とから構成し
たピストン本体、前記スカート部の少なくともスラスト
側に配設され且つ前記スカート部との間に隙間を形成し
ている外環部材、及び前記外環部材を前記ピストンピン
の軸回りに回動自在に且つ前記ピストン本体に対して径
方向に相対移動自在に支持するため前記ピストンピンの
両端部に取り付けられた外環支持部材を具備し、前記ス
カート部の外周面には前記隙間に供給されるオイルを貯
留するオイル貯留溝が形成され、且つ前記スカート部に
は前記オイル貯留溝と前記スカート部の裏面とを連通す
るオイル導入孔が形成されていることから成るピストン
に関する。
【0032】この発明によれば、エンジンの運転に伴
い、ピストンを冷却するためにコンロッドやクランクシ
ャフトによってピストンの裏面に向かって跳ね上げられ
たオイルは、オイル導入孔に供給される。オイル導入孔
に供給されたオイルの隙間への供給については、先の発
明の場合と同様、スカート部の外周面に形成されたオイ
ル導入溝を通じて、ピストン上昇行程中に行われる。ピ
ストンのスカート部の厚さが厚ければ、前記オイル導入
孔は長くなるので、前記隙間に供給すべき量のオイルを
オイル導入孔内のオイルで賄うことができる。
【0033】ピストンのスカート部の厚さが薄く、前記
隙間に供給すべき量のオイルをオイル導入孔内のオイル
のみで賄うことができない場合には、スカート部の裏面
側に、オイル導入孔の開口部の近傍にオイルを貯留させ
ておくための棚部を形成することができる。
【0034】スカート部がシリンダライナに対して強く
衝突する領域は、スカート部の外周面がピストンピン軸
を通りピストン軸に直交する平面と交差する部位の、特
にクラウン部寄りの領域である。それ故、ピストンのス
ラップ音もこの領域で最も発生しやすい。外環部材は当
該領域を覆うようにスカート部に対して装着されている
が、前記領域には充分なオイルが常に存在しているのが
好ましい。こうした考えに基づき、オイル貯留溝は、ス
カート部の外周面において、ピストンピンの軸線を含み
ピストン軸に直交する平面よりもクラウン部側の位置
に、隙間に臨んで形成されている。このようにオイル貯
留溝の形成位置を定めると、オイル貯留溝から隙間に供
給されたオイルのうちの相当な量が前記領域に供給さ
れ、オイルダンピング効果を充分に発揮させて、スラッ
プ音を軽減させることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しつつ、こ
の発明によるピストンの実施例を説明する。図1はこの
発明によるピストンの一実施例を示す分解斜視図、図2
は図1に示したピストンの縦断面図、図3は図1に示し
たピストンの正面図である。
【0036】図1に示したこの発明によるピストンは、
ピストン本体1は、従来のピストンと同様に、複数のピ
ストンリング溝12を備えたクラウン部2と、ボス部1
3にピストンピン22が挿入されるピストンピン孔4が
形成されたスカート部3とを有している。ピストンピン
孔4に挿入されたピストンピン22は、ピストンピン孔
4の両端近傍に形成されたリング溝25に嵌着されるス
ナップリング24によってピストンピン孔4内から抜け
出さないように保持される。
【0037】この実施例では、外環部材27は、ピスト
ン本体1のスカート部3のスラスト側にのみ配設されて
いる。しかし、本発明は、スラスト側にのみ外環部材を
有する片側オイルダンピング式ピストンのみならず、ス
ラスト側と反スラスト側とに外環部材を有する両側オイ
ルダンピング式ピストンにも適用可能であるのは勿論で
ある。なお、外環部材27をスラスト側に限って配設し
ても、外環部材27をスラスト側及び反スラスト側の両
側に配設する場合と比較して、スラップ音の軽減作用が
大きく減少しないことが、実験上確認されている。
【0038】外環部材27は、鋼板のような全体が弾性
を有する板状部材で形成されている。外環部材27は、
ピストン本体1の外周面に沿って配置されてオイルダン
ピング機能を受け持つ半円弧状本体28と、半円弧状本
体28から両側に延びて後述する外環支持部材に係合さ
れる腕部29とを有している。外環部材27の弾性は、
半円弧状本体28が円弧を縮径する方向にばね性を備え
るものである。
【0039】ピストンピン22の両端部には、外環支持
部材32が配設されている。外環支持部材32は、ピス
トンピン22の中空孔23内に嵌入される小径部33
と、外環部材27の腕部29と係合する係合部35を有
する大径部34とを有している。外環支持部材32の小
径部33がピストンピン22の中空孔23内に嵌入した
状態では、大径部34の側面がピストンピン22の端面
に当接している。係合部35は、一対の対向する鍔部3
6,37によって形成される案内溝38を有している。
外環部材27は、腕部29が係合部35の案内溝38に
嵌入係合した状態では、ピストン本体1の径方向に相対
移動自在である。外環支持部材32の小径部33がピス
トンピン22の中空孔23内で回動することにより、外
環部材27は外環支持部材32と共にピストンピン22
の軸周りに回動自在でもある。
【0040】腕部29の内側面には、補強部材30がプ
ロジェクション溶接等により取り付けられている。補強
部材30は、腕部29が係合部35に対して摺動接触す
る接触面積を増加させている。したがって、外環支持部
材32に対する腕部29の支持が安定すると共に、外環
部材27が外環支持部材32に対してピストン本体1の
径方向に摺動するときの摺動部の耐摩耗性が向上する。
【0041】外環部材27は、ピストン本体1のピスト
ン軸(即ち、軸線)X−X及び周方向について対称形に
形成されている。即ち、外環部材27は、ピストン本体
1のピストン軸線X−Xに直交し且つピストンピン22
の軸線Y−Yを含む平面A−A、及びピストン本体1の
ピストン軸線X−Xを含み且つピストンピン22の軸線
Y−Yに直交する平面B−Bについて、対称形に形成さ
れている。したがって、外環部材27をピストン本体1
に組み付ける時に、外環部材27の上下及び左右方向に
注意を払うことなく組み付けることができ、外環部材2
7のピストン本体1への組付け作業が簡素化される。
【0042】また、外環部材27は、特にピストン本体
1のピストン軸線方向及び周方向に対称に形成してある
ので、図8に示したようなスカート部43の形状に合わ
せた特有の形状を有する従来の外環部材47と比較し
て、上下幅が狭くスカート部3の肩部にのみ適用される
ものとなっている。このような形状を有する外環部材2
7は、形状が簡素化されて製作上有利であるばかりでな
く、シリンダライナとの摩擦が軽減され、且つピストン
全体の軽量化に寄与している。上下幅が狭い外環部材2
7であっても、従来の外環部材47と比較してオイルダ
ンピング効果に格別の差が生じないことが、実験上確認
されている。
【0043】外環部材27は、その半円弧状本体28が
円弧を縮径する方向にばね性を有している。腕部29
は、そのばね性に抗して腕部29を拡開した状態で、外
環支持部材32の係合部35に係合する。即ち、外環支
持部材32は、外環部材27の半円弧状本体28が自身
の円弧を縮径させようとするばね性により、ピストンピ
ン22の端部に当接するように付勢される。したがっ
て、外環支持部材32は、中空孔23から抜け出ること
がないので、ピストンピン22から脱落せず、外環部材
27は外環支持部材32に保持される。外環部材27と
外環支持部材32とのピストン本体への組付けには、従
来のピストンで使用していたサブピストンピンを必要と
していないので、部品点数が削減されて低コスト化が図
られる。また、ピストン本体1と外環部材27とをアッ
センブリ品として扱うことが可能となり、シリンダライ
ナへのピストンの挿入等の組立作業性が改善される。
【0044】ピストン本体1のスカート部3のスラスト
側には、外環部材27が嵌まり合う面を含む外周面7が
形成されている。スカート部3の外周面7と外環部材2
7との間に形成される隙間14に導入されるオイルはク
ランク室へ流れ出ていくものであるので、常にオイルを
補給する必要がある。外周面7には、外環部材27とス
カート部3との隙間14に供給されるオイルを貯留する
ためのオイル貯留溝8が形成されている。オイル貯留溝
8は、ピストンピン22の軸線Y−Yを含みピストンの
軸線X−Xに直交する平面(A−Aで示す平面)よりも
クラウン部2側で且つピストンリング溝12よりもスカ
ート部3側の位置において、隙間14に臨むように、外
周面7の周方向に延びて形成されている。
【0045】オイル貯留溝8へ供給されるオイルは、シ
リンダライナの表面に付着していたオイルが利用され
る。オイル貯留溝8と、オイル貯留溝8に最も近いピス
トンリング溝12との間のピストン本体1の表面上に
は、ピストン軸線X−Xと並行な方向に延びるオイル導
入溝9が形成されている。シリンダライナの表面に付着
していたオイルは、ピストン下降時にピストンリングに
よって掻き落とされて、ピストンリング溝12内に入り
込む。ピストンリング溝12内に溜められたオイルは、
オイル導入溝9を通じてオイル貯留溝8に供給される。
なお、ピストンは、図2に示すように、冷却空洞19を
備えたピストンである。
【0046】ここで、隙間14に生じる負圧について、
図5及び図6の記載に基づいて説明する。図5はピスト
ンに作用する力の状態を示す概略図、図6はピストン作
用するトルク及び横方向変位を示すグラフである。ピス
トンピン22には、コンロッド51の揺動運動に伴っ
て、図6の下側のグラフに示すような摩擦トルクTが作
用している。摩擦トルクTの向きや大きさは、ピストン
ピン22に加わる荷重や、ピストンとコンロッド51の
ピストンピン22周りの相対角速度によって決まるが、
通常は、上死点の前後のクランク角度範囲αでは、コン
ロッド51の揺動方向が図5(ピストンは上死点より前
に位置しているとする)に矢印γで示すように反時計方
向であるから、ピストンピン22がコンロッド51から
受ける摩擦トルクTも反時計方向のトルクである。摩擦
トルクTは、圧縮上死点付近で最大値となる。従ってピ
ストン本体1は、クランク角度範囲αでは、全体として
回転方向Dで示すように時計方向に回転しようとする力
を受ける。
【0047】一方、ピストンピン22の横方向変位は、
図6の上側のグラフに示すように、概略下死点から上死
点までのクランク角度範囲βでは反スラスト側に生じて
いる。即ち、ピストンに作用する慣性力、コンロッドか
らの強制的な変位力、及び燃焼室内の空気の圧縮圧力等
の力のバランスによって、上死点へ向かう上昇中のピス
トンは、図5に矢印Eで示すように反スラスト側に向か
う横変位方向に押されて変位している。
【0048】クランク角度範囲αとクランク角度範囲β
とが重なる、ピストンが上死点前で上昇中のクランク角
度範囲では、ピストンピン22を介して働くコンロッド
51の横方向押しつけ力によって、ピストン本体1は反
スラスト側に変位している。これに対してピストンピン
22を介して作用する摩擦トルクは、横方向押しつけ力
に比して非常に小さいためピストン本体1を回動させる
力とはならない。
【0049】外環部材27は、コンロッド51からの押
しつけ力は受けないが、ピストンピン22及び外環支持
部材32を介して働く摩擦トルクTを受けて、反時計方
向に回転しようとする。ピストン本体1は反スラスト側
に変位したままであるから、ピストン本体1のスラスト
側において、スカート部3とシリンダライナとの間に形
成された隙間の中で、外環部材27はその上端がシリン
ダライナに接し、その下端がスカート部3に接する状態
になるまで回動する(矢印F)。したがって、外環部材
27とスカート部3の間に隙間14は、上端が広くなる
逆三角形の形で拡大形成され、隙間14内のオイルには
負圧が作用する。
【0050】したがって、隙間14内のオイルに生じた
負圧によって、オイルは、オイル貯留溝8から隙間14
に吸い出される。オイル貯留溝8の先にオイルの補給手
段を設けておけば、補給手段からオイル貯留溝8にオイ
ルが補給される。即ち、ピストン下降時にピストンリン
グによって掻き落とされて、オイル貯留溝8に最も近い
ピストンリング溝12内に入り込んでいたオイルは、前
記負圧によって、オイル導入溝9を通じてオイル貯留溝
8に供給される。
【0051】ピストンが下降行程に入ったとき、ピスト
ン本体1がスラスト側に移動してシリンダライナに衝突
しようとするが、隙間14内のオイルのダンピング作用
によって、上記移動は減衰されて衝突が緩和され、スラ
ップ音が軽減する。ピストンの下降行程時にスカート部
3がシリンダライナに対して特に強く衝突する領域は、
図3にCで示すように、ピストンピン22の軸線Y−Y
を含みピストンの軸線X−Xに直交する平面からみてク
ラウン部2寄りに隣接する領域、即ち、外環部材27の
中央部上方に対応する領域Cである。オイル貯留溝8
は、領域Cのクラウン部2側の位置に、隙間14に臨む
ように、外周面7の周方向に延びて形成されている。し
たがって、隙間14の領域Cに対応する部分は、直近に
位置するオイル貯留溝8から供給されるオイルによって
常に充分に満たされている。
【0052】オイルは、ピストンリング溝12からオイ
ル導入溝9を通じて補給される。外環部材27とスカー
ト部3との間に形成される隙間14の体積は非常に僅か
な量であるので、オイル貯留溝8へのオイルの供給は極
少量で済む。したがって、オイル貯留溝8に供給される
べきオイルは、量的にはピストンリングによって下降行
程で掻き落とされたオイルを利用することで賄うことが
できる程度である。
【0053】ピストンリングによるオイル掻き取り作用
は、エンジンが低速運転状態であっても確実に生じ、掻
き取ったオイルは隙間14に供給される。したがって、
従来のような直接供給方式や、冷却空胴からの給油方式
の場合のように、エンジンの低速回転のために隙間14
へのオイル供給能力が低下することもなく、低速回転状
態のエンジンにおいても、スラップ音による騒音が軽減
される。
【0054】図1〜図3には、ピストンリング溝12か
らオイル導入溝9を通じたオイルの供給に代わる、別の
オイル供給構造も開示されている。即ち、図1〜図3に
示した実施例のピストンは、オイル貯留溝8に供給すべ
きオイルを、ピストンの裏面6に対して跳上げ等の手段
で供給されたオイルを利用している。ピストン本体1の
スカート部3に形成した複数のオイル導入孔10の一端
10aは、オイル貯留溝8に開口し、他端10bはスカ
ート部3の内側である裏面6に開口している。ピストン
の冷却のためにクランク室内から跳ね上げられたオイル
は、他端10bからオイル導入孔10に入り、オイル貯
留溝8への供給に備えてオイル導入孔10内に貯留され
る。ピストンのスカート部3は肉厚に形成されているの
で、オイル導入孔10内の容積は、オイル貯留溝8に供
給すべきオイルを賄うのに十分な量である。なお、オイ
ル貯留溝8に供給すべきオイルには、シリンダライナの
摺動面に付着していてピストンリングで掻き取ったオイ
ルと、ピストンの裏面6に跳ね上げられたオイルとを同
時に利用することもできる。
【0055】図4には、この発明によるピストンの別の
実施例の断面図が示されている。図4に示したピストン
の実施例は、図1及び2に示したピストンの実施例と、
オイル貯留溝8へのオイル供給構造が異なる以外の基本
的な構造に差異はないので、当該基本的な構造について
は同等の構成要素に同じ符号を付して重複する説明を省
略する。図4に示した実施例は、ピストンの重量を軽減
するためスカート部3の肉厚を薄くした例である。図1
〜図3に示した実施例におけるオイル導入孔10に対応
して、スカート部3にはオイル導入孔11が形成されて
いる。オイル導入孔11は、オイル導入孔10の場合と
同様、オイル貯留溝8に沿って隔置して形成されてお
り、一端11aがオイル貯留溝8に開口し、他端11b
がスカート部3の裏面6に開口している。スカート部3
の肉厚を薄くすると、オイル導入孔11に供給すべき充
分なオイルを貯留することができないので、スカート部
3の裏面6に、棚部15を溶接等の適宜の手段で取り付
ける。棚部15の上面は、オイル導入孔11の他端11
bに臨む位置にあり、ピストン本体1の裏面6に跳ねか
けられたオイルは、貯留オイル16として示すように棚
部15に貯留される。棚部16に貯留されたオイルは、
ピストン上昇行程時に隙間14に生じる負圧作用によっ
て、オイル導入孔11内に容易に吸い込まれることにな
る。
【0056】図7には、この発明によるピストンの静音
効果が、エンジン回転速度が低速である場合にも得られ
ていることを示している。即ち、図7において、実線で
示すグラフは、従来のピストンのエンジン回転速度に応
じた騒音レベル(単位デシベル)を示している。図7に
おいて、破線で示すグラフは、この発明によるピストン
の騒音レベルを示している。両グラフの比較から明らか
なように、この発明によるピストンの騒音レベルは、全
エンジン回転数にわたって、特に、エンジンの回転速度
が低速の領域で大きく低下していることが分かる。
【0057】
【発明の効果】この発明によるピストンは、上記のよう
に、ピストン本体のスカート部との間に隙間を形成する
外環部材と、外環部材をピストンピンの軸回りに回動自
在に且つピストン本体に対して径方向に相対移動自在に
支持するためピストンピンの両端部に取り付けられた外
環支持部材とを具備しており、スカート部の外周面には
オイル貯留溝が形成され、且つスカート部の外周面には
オイル貯留溝とピストンリング溝とを接続するオイル導
入溝が形成されているか、又は、スカート部の外周面に
はオイル貯留溝が形成され、且つスカート部にはオイル
貯留溝とスカート部の裏面とを連通するオイル導入孔が
形成されていることから成るので、従来のものに見られ
るような供給路による直接供給方式やオイルジェットを
生じさせる高価な噴射方式等の能動的なオイル供給構造
は必要とせず、ピストンリングによって掻き取ったオイ
ルやピストンの裏面に跳ね付けられるオイル等の既に使
用されているオイルを、ピストンに作用する摩擦トルク
や横変位力等の外力を利用して、スカート部の外周面と
の間に形成されている隙間に供給することができる。ま
た、オイル貯留溝は、スカート部の外周面において、ピ
ストンピンの軸線を含みピストン軸に直交する平面より
クラウン部側に、隙間に臨んで形成されているので、ピ
ストンのスカート部がシリンダライナに強く衝突する領
域でのオイルダンピング効果を充分に発揮させることが
できる。また、エンジンの回転速度が低速であっても、
上記隙間に確実にオイルを供給することができ、スラッ
プ音による騒音を静音化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるピストンの一実施例を示す分解
斜視図である。
【図2】図1に示されたピストンの部分縦断面図であ
る。
【図3】図1に示されたピストンの、外環部材を取り除
いた状態で示す正面図である。
【図4】この発明によるピストンの他の実施例を示す部
分縦断面図である。
【図5】上死点へ向かうピストンに作用する力の状態を
示す概略図である。
【図6】ピストンに作用るすトルクと横方向変位を示す
グラフである。
【図7】この発明によるピストンの静音化効果を示すグ
ラフである。
【図8】従来のピストンの一例を示す分解斜視図であ
る。
【図9】図8に示すピストンの横断面図である。
【図10】従来のピストンにおけるダンピング用オイル
の直接給油方式を説明する断面図である。
【図11】従来のピストンにおける冷却空洞を利用した
ダンピング用オイルの給油方式を説明する断面図であ
る。
【符号の説明】
1 ピストン本体 2 クラウン部 3 スカート部 4 ピストンピン孔 6 裏面 7 外周面 8 オイル貯留溝 9 オイル導入溝 10 オイル導入孔 11 オイル導入孔 12 ピストンリング溝 13 ボス部 14 隙間 15 棚部 22 ピストンピン 27 外環部材 32 外環支持部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16J 1/16 F16J 1/16

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピストンリング溝を備えたクラウン部と
    ピストンピンを挿通するピストンピン孔が形成されたボ
    ス部を備えたスカート部とから構成したピストン本体、
    前記スカート部の少なくともスラスト側に配設され且つ
    前記スカート部との間に隙間を形成している外環部材、
    及び前記外環部材を前記ピストンピンの軸回りに回動自
    在に且つ前記ピストン本体に対して径方向に相対移動自
    在に支持するため前記ピストンピンの両端部に取り付け
    られた外環支持部材を具備し、前記スカート部の外周面
    には、前記隙間に供給されるオイルを貯留するオイル貯
    留溝及び前記オイル貯留溝と前記ピストンリング溝とを
    接続するオイル導入溝が形成されていることから成るピ
    ストン。
  2. 【請求項2】 ピストンリング溝を備えたクラウン部と
    ピストンピンを挿通するピストンピン孔が形成されたボ
    ス部を備えたスカート部とから構成したピストン本体、
    前記スカート部の少なくともスラスト側に配設され且つ
    前記スカート部との間に隙間を形成している外環部材、
    及び前記外環部材を前記ピストンピンの軸回りに回動自
    在に且つ前記ピストン本体に対して径方向に相対移動自
    在に支持するため前記ピストンピンの両端部に取り付け
    られた外環支持部材を具備し、前記スカート部の外周面
    には前記隙間に供給されるオイルを貯留するオイル貯留
    溝が形成され、且つ前記スカート部には前記オイル貯留
    溝と前記スカート部の裏面とを連通するオイル導入孔が
    形成されていることから成るピストン。
  3. 【請求項3】 前記オイル導入孔が開口する前記スカー
    ト部の裏面には、前記オイル導入孔に供給されるオイル
    を貯留するための棚部が形成されている請求項2に記載
    のピストン。
  4. 【請求項4】 前記オイル貯留溝は、前記スカート部の
    前記外周面において、前記ピストンピンの軸線を含みピ
    ストン軸に直交する平面よりも前記クラウン部側の位置
    に、前記隙間に臨んで形成されている請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載のピストン。
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