JPH10203470A - ウオータージェット推進高速船 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ウオータージェット推進高速船において、停
泊または低速航行中は船体の動揺を軽減させることがで
きるようにし、高速航行時には良好な高速性能を得るこ
とができるようにする。 【解決手段】 ウオータージェット推進機を有するウオ
ータージェット推進高速船１１は、バラストタンク６を
有し、バラストタンク６とウオータージェット推進機と
が開閉制御される制御弁９を備えた連通管８により相互
に接続され、制御弁９が開状態に制御された際には、バ
ラストタンク６とウオータージェット推進機とが連通さ
れ、バラストタンク６内の水が上記ウオータージェット
推進機の吸引作用により吸引されてバラスト排水が行な
われ、制御弁９が閉状態に制御された際には、バラスト
タンク６と上記ウオータージェット推進機との連通が遮
断される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば波浪中にお
いて看視行動を行なう哨戒艇や取締船等のように、波浪
中において停泊、低速航行および高速航行を頻繁に且つ
迅速に繰返す必要がある高速船、特にウオータージェッ
ト推進高速船に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、波浪中において停泊、低速航行お
よび高速航行を頻繁に繰返す必要がある高速船として、
停泊中における船体の横揺れを軽減するため、船尾外板
および船側外板を二重構造とし、水面付近の船側部を支
点として水面上に広げることができるように構成された
アンチローリングボード（ＡＲＢ）を備えた高速船が考
えられたが、このような構成を有する高速船において
は、装備重量が重くなり、高速性能が損なわれること、
アンチローリングボードの使用が高速船の停船中におけ
る使用に限られてしまうこと、使用中のアンチローリン
グボードが高速船の船体より張り出した状態にあるため
他船の同高速船への接近が危険なこと、高速船が発進す
る際にはアンチローリングボードの格納操作が必要なた
め急発進ができないこと等のため、高速船において、実
際に、停泊中における船体の横揺れを軽減するようにア
ンチローリングボードを備えるようにした例は、ごく限
られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】例えば漁業取締船等の
ように哨戒や取締業務を行なう業務船は、違反船の高速
化に伴い急速に高速化されているが、波浪海面において
停泊看視や低速航行看視を行なうことも業務船にとって
重要な任務である。しかしながら、業務船において高速
化のために軽量化を行ない、高速船船型を採用すると、
停泊中や低速航行中の船体の動揺が大きくなり、長時間
にわたる看視業務に耐えられなくなる。

【０００４】船体の動揺を低減するには、船体の重量を
増加せざるを得ず、その結果高速性能が損なわれること
となるため、一つの解決策として、停泊中においてのみ
使用することができるアンチローリングボードが考えら
れ、例えば巡視船において実施されている。このアンチ
ローリングボードは、上述のように低速航行中には使用
できず、船体の重量増を伴い、高価で、船体内への格納
にも時間を要し、そのため船体の急発進ができない等の
不都合があり、巡視船への採用は普及せず、すでにアン
チローリングボードを採用した巡視船と同任務の後続船
については、速力性能を犠牲にして、船体重量が重くな
る鋼製の船体が採用されている。

【０００５】そこで、本発明は、停泊または低速航行中
は外水バラストにより船体の重量を増加させて船体の動
揺の軽減化を図ることができるようにし、低速航行から
高速航行へと移行する際には、低速航行から高速航行へ
と移行する過程の短い時間内に外水バラストの排水を行
なって船体を軽量にし、高速航行時には良好な高速性能
を得ることができるようなウオータージェット推進高速
船を提供しようとするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
め、本発明のウオータージェット推進高速船は、ウオー
タージェット推進機を有するウオータージェット推進高
速船であって、同ウオータージェット推進高速船の船体
には開閉制御される第１の制御弁を開状態に制御するこ
とにより導入した外水を収容することができるバラスト
タンクが配設され、同バラストタンクと上記ウオーター
ジェット推進機とが開閉制御される第２の制御弁を備え
た連通管により相互に連通可能に接続され、上記第２の
制御弁が開状態に制御された際には、上記バラストタン
クと上記ウオータージェット推進機とが連通され、上記
バラストタンク内の水が上記ウオータージェット推進機
の吸引作用により吸引されてバラスト排水が行なわれ、
上記第２の制御弁が閉状態に制御された際には、上記バ
ラストタンクと上記ウオータージェット推進機との連通
が遮断されるように構成されている。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下、図面により本発明の実施の
形態について説明する。図１は本発明の１実施の形態に
係るウオータージェット推進高速船の縦断側面図、図２
は図１の実施の形態に係るウオータージェット推進高速
船の図１のＡ−Ａ線に沿って見た横断面図、図３は図１
の実施の形態に係るウオータージェット推進高速船の海
水バラストタンク内にバラスト水を保持した状態を示す
縦断側面図、図４は図１の実施の形態に係るウオーター
ジェット推進高速船の図３のＢ−Ｂ線に沿って見た横断
面図である。

【０００８】まず図１および図２において、ウオーター
ジェット推進高速船１１は、左右１対のウオータージェ
ット推進機を備え、左右のウオータージェット推進機
は、それぞれ吸水口１より海水を吸込み、吸込んだ海水
をエンジン３により回転駆動される羽根車２により加速
し、加速した海水をウオータージェット噴出口４よりウ
オータージェットとして噴出することにより、 ウオー
タージェット推進高速船１１を推進させるように構成さ
れている。

【０００９】ウオータージェット推進高速船１１の船体
の船尾寄りの位置において、左右両舷側には、開閉制御
可能な例えば船底弁としての１対の第１の制御弁７と、
１対の各第１の制御弁７に対応する例えば海水バラスト
タンク等の脚荷水槽としてのバラストタンク６とがそれ
ぞれ配設されている。各第１の制御弁７が開状態に制御
されることにより導入された海水等の外水は、それぞれ
対応するバラストタンク６内に収容されるように構成さ
れている。

【００１０】他方、各バラストタンク６と各バラストタ
ンク６に対応するウオータージェット推進機のウオ−タ
ージェットダクトとは、開閉制御される第２の制御弁９
を備えた連通管８により相互に接続され、各第２の制御
弁９が開状態に制御された際には、各バラストタンク６
と各バラストタンク６に対応するウオータージェット推
進機のウオータージェットダクトとが連通され、各バラ
ストタンク６内の水が各ウオータージェット推進機の吸
引作用により吸引されてバラスト排水が行なわれ、各第
２の制御弁９が閉状態に制御された際には、各バラスト
タンク６と各ウオータージェット推進機のウオータージ
ェットダクトとの連通が遮断されるように構成されてい
る。 また、各バラストタンク６は開閉制御される第３
の制御弁９ａを備えた空気流通管８ａを介して、大気中
に連通することができるように構成されている。

【００１１】図１および図２における水線５はウオータ
ージェット推進高速船１１が高速航走を行う際の計画喫
水の位置にある水線を示している。この状態において、
海水バラストタンクである各バラストタンク６は空状態
であり、各バラストタンク６に注水するための第１の制
御弁７としての船底弁は閉まっている。各ウオータージ
ェットダクトと各ウオータージェットダクトに対応する
バラストタンク６とは、それぞれ第２の制御弁９を備え
た連通管８により連結されており、図１および図２のよ
うに各バラストタンク６が空状態である間は各第２の制
御弁９が閉状態に制御されている。

【００１２】図３および図４において、船底弁である第
２の制御弁７を開状態に制御するとともに第３の制御弁
を開状態に制御すると、各バラストタンク６内に海水バ
ラストが外水圧によってハッチングにより示したように
注水され、その結果、ウオータージェット推進高速船１
１の船尾側の部分の浮力が減少し、図３および図４に示
したように水線５が特に船尾側において上昇し、ウオー
タージェット推進高速船１１の船尾側の部分が沈んだ状
態となる。

【００１３】図３および図４の状態のウオータージェッ
ト推進高速船１１において高速発進を行なおうとする際
には、まず船底弁である各第１の制御弁７を閉状態に制
御し、各ウオータージェット推進機のウオータージェッ
トダクトと各バラストタンク６との間の第２の制御弁９
を開状態に制御する。 ウオータージェット推進高速船
１１が加速状態に入れば、吸水口１より推進用の海水を
吸入すると共に、連通管８を通して各バラストタンク６
内のバラスト水がウオータージェットダクト内へと吸込
まれ、吸水口から直接吸込まれた海水と合流して加速さ
れ、ウオータージェット噴出口４より噴出されて、推力
発生水の一部として利用される。各バラストタンク６が
空になった時点で、各第２の制御弁９を閉じることによ
り、ウオータージェット推進高速船１１は、図１および
図２に示した状態に戻る。

【００１４】本発明は、ウオータージェット推進高速船
１１に搭載されるウオータージェット推進機が、通常は
大容量のポンプであり、しかも、ウオータージェット推
進高速船１１が停止状態または低速航行状態から加速し
て行く際、船速がウオータージェット推進高速船１１の
ラストハンプを越えるまではウオータージェットダクト
内が負圧になる現象を利用したもので、ウオータージェ
ット推進高速船１１の推進のために船底部の各吸水口１
より吸水しながら、同時に各バラストタンク６からも吸
水し、各バラストタンク６の排水を迅速に行なうことが
できるようにしたものである。

【００１５】海水バラストタンク等の各バラストタンク
６は、ウオータージェット推進高速船１１の船底をその
ままタンク底として併用することができるものであり、
波浪中においてウオータージェット推進高速船１１に停
船または低速航行をさせながら看視業務を行なおうとす
る際には、高速航行中のウオータージェット推進高速船
１１を減速しながら、タンク底の水準にある船底弁とし
ての各第１の制御弁７を遠隔操作によって開状態に制御
することにより、各バラストタンク６内にバラスト水す
なわちバラスト海水を外水圧により注入し、船尾部分の
船体の浮力を減少させて船尾部分の船体の喫水を高める
ことにより船体の動揺を軽減する。そして、再び高速航
行に移る場合には、まず船底弁としての各第１の制御弁
７を閉状態に制御し、各バラストタンクと各ウオーター
ジェットダクトとの間の連通管に配設した各第２の制御
弁９を遠隔操作により開状態に制御することにより、ウ
オータージェット推進高速船１１を加速しながら各バラ
ストタンク内からバラスト排水を行なうことができる。
各バラストタンク６からのバラスト排水が終了した後
は、各第２の制御弁９を閉じる。

【００１６】本発明によれば、ウオータージェット推進
高速船１１の船内に設けた各バラストタンク６内からの
バラスト水の迅速な排出を行なうことができる。各バラ
ストタンク６内からのバラスト水の排出を行なうには、
通常は当然大型のポンプが必要となるが、高速船には、
そのようなポンプを配置するスペースも、重量の余裕
も、余剰電力もないのが普通である。本発明によれば、
高速船のこのような問題を解決することができる。

【００１７】

【発明の効果】本発明のウオータージェット推進高速船
によれば、以下のような効果が得られる。 （１）ウオータージェット推進機を有するウオータージ
ェット推進高速船であって、同ウオータージェット推進
高速船の船体には開閉制御される第１の制御弁を開状態
に制御することにより導入した外水を収容することがで
きるバラストタンクが配設され、同バラストタンクと上
記ウオータージェット推進機とが開閉制御される第２の
制御弁を備えた連通管により相互に連通可能に接続さ
れ、上記第２の制御弁が開状態に制御された際には、上
記バラストタンクと上記ウオータージェット推進機とが
連通され、上記バラストタンク内の水が上記ウオーター
ジェット推進機の吸引作用により吸引されてバラスト排
水が行なわれ、上記第２の制御弁が閉状態に制御された
際には、上記バラストタンクと上記ウオータージェット
推進機との連通が遮断されるように構成されているの
で、停泊または低速航行中は外水バラストにより船体の
重量を増加させて船体の動揺を軽減させることができ、
低速航行から高速航行へと移行する際には、低速航行か
ら高速航行へと移行する過程の短い時間内にウオーター
ジェット推進機の吸引力を利用して外水バラストの排水
を行ない、迅速に船体を軽量にすることができ、高速航
行時には外水バラストの排水を行なって軽量となった船
体により、良好に高速性能を発揮して高速航行を行なう
ことができるような、ウオータージェット推進高速船が
得られる（請求項１）。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の１実施の形態に係るウオータージェッ
ト推進高速船の縦断側面図である。

【図２】図１の実施の形態に係るウオータージェット推
進高速船の図１のＡ−Ａ線に沿って見た横断面図であ
る。

【図３】図１の実施の形態に係るウオータージェット推
進高速船の海水バラストタンク内にバラスト水を保持し
た状態を示す縦断側面図である。

【図４】図１の実施の形態に係るウオータージェット推
進高速船の図３のＢ−Ｂ線に沿って見た横断面図であ
る。

【符号の説明】

１ 吸水口 ２ 羽根車 ３ エンジン ４ ウオータージェット噴出口 ５ 水線 ６ バラストタンク（脚荷水槽） ７ 船底弁等の第１の制御弁 ８ 連通管 ９ 第２の制御弁 ８ａ 空気流通管 ９ａ 第３の制御弁 １０ 羽根車軸 １１ ウオータージェット推進高速船

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. ウオータージェット推進機を有するウオータージェット
   推進高速船であって、同ウオータージェット推進高速船
   の船体には開閉制御される第１の制御弁を開状態に制御
   することにより導入した外水を収容することができるバ
   ラストタンクが配設され、同バラストタンクと上記ウオ
   ータージェット推進機とが開閉制御される第２の制御弁
   を備えた連通管により相互に連通可能に接続され、上記
   第２の制御弁が開状態に制御された際には、上記バラス
   トタンクと上記ウオータージェット推進機とが連通さ
   れ、上記バラストタンク内の水が上記ウオータージェッ
   ト推進機の吸引作用により吸引されてバラスト排水が行
   なわれ、上記第２の制御弁が閉状態に制御された際に
   は、上記バラストタンクと上記ウオータージェット推進
   機との連通が遮断されるように構成されていることを特
   徴とする、ウオータージェット推進高速船。