JPH10195683A - 合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金 - Google Patents
合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金Info
- Publication number
- JPH10195683A JPH10195683A JP30676897A JP30676897A JPH10195683A JP H10195683 A JPH10195683 A JP H10195683A JP 30676897 A JP30676897 A JP 30676897A JP 30676897 A JP30676897 A JP 30676897A JP H10195683 A JPH10195683 A JP H10195683A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- alloy
- water
- soluble compound
- soluble
- alloy containing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Landscapes
- Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 本発明は材料表面の化合物中の内で、材料内
部の保護の為に有用な難溶性の化合物層を損なうことな
く、吸湿性等の為に表面の経時劣化上、問題となる水溶
性化合物のみを選択的に溶出・除去し、より安定、且つ
高機能性表面を有する合金材料を製造する為の表面処理
方法及び同方法によって作製された経時劣化耐性に優れ
た合金材料を提供する。 【解決手段】 水溶性化合物を形成する金属元素を成分
として含有する合金をpHが5から8で、不純物元素の
総含有量濃度が100ppm以下の水に浸漬するか、ま
たは、その水を該合金に噴霧して、合金表面に形成され
た水溶性化合物のみを選択的に溶出・除去し、該合金の
表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物中
に含有される元素の、同領域に存在するHを除く全元素
に対する原子分率が10at.%以下である表面経時劣
化耐性に優れた合金を提供する。
部の保護の為に有用な難溶性の化合物層を損なうことな
く、吸湿性等の為に表面の経時劣化上、問題となる水溶
性化合物のみを選択的に溶出・除去し、より安定、且つ
高機能性表面を有する合金材料を製造する為の表面処理
方法及び同方法によって作製された経時劣化耐性に優れ
た合金材料を提供する。 【解決手段】 水溶性化合物を形成する金属元素を成分
として含有する合金をpHが5から8で、不純物元素の
総含有量濃度が100ppm以下の水に浸漬するか、ま
たは、その水を該合金に噴霧して、合金表面に形成され
た水溶性化合物のみを選択的に溶出・除去し、該合金の
表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物中
に含有される元素の、同領域に存在するHを除く全元素
に対する原子分率が10at.%以下である表面経時劣
化耐性に優れた合金を提供する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に、金属産業分
野、特に自動車、建材、缶材等の分野で、それらの合金
材料の作製過程や作製後の使用環境下に於て、合金材料
表面に形成され、材料特性に大きな影響を与える水溶性
化合物を選択的に除去することで、表面経時劣化耐性に
優れた合金表面を形成する合金表面の処理方法、および
表面経時劣化耐性に優れた合金に関する。
野、特に自動車、建材、缶材等の分野で、それらの合金
材料の作製過程や作製後の使用環境下に於て、合金材料
表面に形成され、材料特性に大きな影響を与える水溶性
化合物を選択的に除去することで、表面経時劣化耐性に
優れた合金表面を形成する合金表面の処理方法、および
表面経時劣化耐性に優れた合金に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、合金表面に形成される酸化物層等
の表面層を除去する方法としては、研削等の機械的方
法、イオンスパタリングやアーク放電によるクリーニン
グ(例えば、アール エフ アシトン他:ウエルディン
グ ジャーナル 9月号(1976年)pp.1750
〜1759)(R.F.Ashton et al.:
Welding Journal,Sept.(197
6),pp.1750〜1759)等の物理的方法、酸
(特公平7−116629号公報)やアルカリ溶液(特
開平4−214835号公報)に浸漬する化学的方法が
使用されてきた。
の表面層を除去する方法としては、研削等の機械的方
法、イオンスパタリングやアーク放電によるクリーニン
グ(例えば、アール エフ アシトン他:ウエルディン
グ ジャーナル 9月号(1976年)pp.1750
〜1759)(R.F.Ashton et al.:
Welding Journal,Sept.(197
6),pp.1750〜1759)等の物理的方法、酸
(特公平7−116629号公報)やアルカリ溶液(特
開平4−214835号公報)に浸漬する化学的方法が
使用されてきた。
【0003】また、この様にして得られた材料表面の評
価法としては、主に化学分析等による元素分析法によ
り、表面の原子組成と表面性能の関係が問題にされてき
ただけで、表面に存在する元素の原子価数等の化学状態
別の存在比と表面性能の関係が問題にされることはなか
った。従って、例えば、表面酸化被膜の存在が原因で、
合金表面の経時劣化が生じた事が解った場合でも、表面
酸化被膜中のどの様な化合物が経時劣化の原因となるか
が明らかにされていなかったために、有効な対策が講じ
られなかった。
価法としては、主に化学分析等による元素分析法によ
り、表面の原子組成と表面性能の関係が問題にされてき
ただけで、表面に存在する元素の原子価数等の化学状態
別の存在比と表面性能の関係が問題にされることはなか
った。従って、例えば、表面酸化被膜の存在が原因で、
合金表面の経時劣化が生じた事が解った場合でも、表面
酸化被膜中のどの様な化合物が経時劣化の原因となるか
が明らかにされていなかったために、有効な対策が講じ
られなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の合金表面に形成
される酸化物層を中心とした表面層を除去する方法は、
合金を酸に浸漬する方法等の様に、表面層を最表面から
ある一定の深さまで、その組成や化学状態に関係なく、
均一に除去していく方法である。然るに、発明者らがこ
れらの合金の表面層中に存在する様々な化合物の組成や
化学状態と表面性能との関係を詳細に検討した結果、表
面経時劣化の原因となるのは表面層中の化合物のうちで
も、特に水溶性化合物である事が判明した。即ち、水溶
性化合物は、吸湿性が強く、その様な吸湿した部分は、
反応性に富み、水分中に含まれるClやF等や、空気中
のCO2 等と化合して、有害な腐食生成物を形成しやす
く、材料表面の経時劣化を起こしやすい事が判った。
される酸化物層を中心とした表面層を除去する方法は、
合金を酸に浸漬する方法等の様に、表面層を最表面から
ある一定の深さまで、その組成や化学状態に関係なく、
均一に除去していく方法である。然るに、発明者らがこ
れらの合金の表面層中に存在する様々な化合物の組成や
化学状態と表面性能との関係を詳細に検討した結果、表
面経時劣化の原因となるのは表面層中の化合物のうちで
も、特に水溶性化合物である事が判明した。即ち、水溶
性化合物は、吸湿性が強く、その様な吸湿した部分は、
反応性に富み、水分中に含まれるClやF等や、空気中
のCO2 等と化合して、有害な腐食生成物を形成しやす
く、材料表面の経時劣化を起こしやすい事が判った。
【0005】しかしながら、従来法である酸やアルカリ
に浸漬して表面層を除去する方法では、表面層中の化合
物を無差別に除去してしまうので、材料表面の保護等の
有用な表面機能を有する難溶性の化合物層も同時に除去
され、活性な金属層が表面に露出してしまい、かえって
表面性能を劣化させ易くする事も明らかとなった。本発
明は、材料表面層中の各種化合物の内で、材料表面の保
護等の有用な表面機能を有する難溶性の化合物を損なう
ことなく、材料作製過程や作製後の使用環境中での吸湿
現象や、それらの雰囲気中に存在するClやF等の様な
表面経時劣化上で有害な元素との反応を起こす水溶性化
合物のみを選択的に溶出・除去し、より化学的に安定
で、且つ、高機能性表面を有する材料を作製する為の表
面処理方法、及び同処理方法によって表面処理された経
時劣化耐性に優れた表面を有する合金材料を提供するこ
とを目的とする。
に浸漬して表面層を除去する方法では、表面層中の化合
物を無差別に除去してしまうので、材料表面の保護等の
有用な表面機能を有する難溶性の化合物層も同時に除去
され、活性な金属層が表面に露出してしまい、かえって
表面性能を劣化させ易くする事も明らかとなった。本発
明は、材料表面層中の各種化合物の内で、材料表面の保
護等の有用な表面機能を有する難溶性の化合物を損なう
ことなく、材料作製過程や作製後の使用環境中での吸湿
現象や、それらの雰囲気中に存在するClやF等の様な
表面経時劣化上で有害な元素との反応を起こす水溶性化
合物のみを選択的に溶出・除去し、より化学的に安定
で、且つ、高機能性表面を有する材料を作製する為の表
面処理方法、及び同処理方法によって表面処理された経
時劣化耐性に優れた表面を有する合金材料を提供するこ
とを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、水溶性化合物
を形成する金属元素を含有する合金の作製過程、あるい
は作製後の使用環境下で、合金表面に形成された水溶性
化合物を除去する方法であって、該合金をpHが5から
8で、不純物元素の総含有量濃度が100ppm以下の
水に浸漬するか、または、その水を該合金に噴霧して、
合金表面に形成された水溶性化合物のみを選択的に溶出
させ、除去する事を特徴とする合金表面の処理方法を提
供するものである。その内でも特に、水溶性化合物を形
成する金属元素を含有する合金が、Mgを含有する合金
であって、該合金の表面に形成される水溶性化合物が水
溶性マグネシウム化合物であることを特徴とする合金表
面処理方法を提供するものである。更に、その内でも特
に、Mgを含有する合金が、Alを主成分とする合金で
ある事を特徴とする合金表面処理方法を提供するもので
ある。
を形成する金属元素を含有する合金の作製過程、あるい
は作製後の使用環境下で、合金表面に形成された水溶性
化合物を除去する方法であって、該合金をpHが5から
8で、不純物元素の総含有量濃度が100ppm以下の
水に浸漬するか、または、その水を該合金に噴霧して、
合金表面に形成された水溶性化合物のみを選択的に溶出
させ、除去する事を特徴とする合金表面の処理方法を提
供するものである。その内でも特に、水溶性化合物を形
成する金属元素を含有する合金が、Mgを含有する合金
であって、該合金の表面に形成される水溶性化合物が水
溶性マグネシウム化合物であることを特徴とする合金表
面処理方法を提供するものである。更に、その内でも特
に、Mgを含有する合金が、Alを主成分とする合金で
ある事を特徴とする合金表面処理方法を提供するもので
ある。
【0007】また、水溶性化合物を形成する金属元素を
含有する合金であって、該合金の表面から5nm迄の深
さ領域に存在する水溶性化合物中に含有される元素の、
同領域に存在するHを除く全元素に対する原子分率が1
0at.%以下である事を特徴とする水溶性化合物を形
成する金属元素を含有する表面経時劣化耐性に優れた合
金を提供するものである。その内でも特に、水溶性化合
物を形成する金属元素を含有する合金が、Mgを含有す
る合金であって、該合金の表面に形成される水溶性化合
物が水溶性マグネシウム化合物であることを特徴とする
Mgを含有する表面経時劣化耐性に優れた合金を提供す
るものである。更にその内でも特に、Mgを含有する合
金が、Alを主成分とする合金である事を特徴とする表
面経時劣化耐性に優れた合金を提供するものである。
含有する合金であって、該合金の表面から5nm迄の深
さ領域に存在する水溶性化合物中に含有される元素の、
同領域に存在するHを除く全元素に対する原子分率が1
0at.%以下である事を特徴とする水溶性化合物を形
成する金属元素を含有する表面経時劣化耐性に優れた合
金を提供するものである。その内でも特に、水溶性化合
物を形成する金属元素を含有する合金が、Mgを含有す
る合金であって、該合金の表面に形成される水溶性化合
物が水溶性マグネシウム化合物であることを特徴とする
Mgを含有する表面経時劣化耐性に優れた合金を提供す
るものである。更にその内でも特に、Mgを含有する合
金が、Alを主成分とする合金である事を特徴とする表
面経時劣化耐性に優れた合金を提供するものである。
【0008】また、水溶性化合物を形成する金属元素を
含有する合金を、pHが5から8で、不純物元素の総含
有量濃度が100ppm以下の水に浸漬するか、また
は、その水を該合金に噴霧して、該合金の表面から5n
m迄の深さ領域に存在する水溶性化合物を溶出・除去
し、同領域に存在する水溶性化合物中に含有される元素
の、Hを除く全元素に対する原子分率が、10at.%
以下にした事を特徴とする表面経時劣化耐性に優れた合
金を提供するものである。その内でも特に、水溶性化合
物を形成する金属元素を含有する合金が、Mgを含有す
る合金であって、該合金の表面に形成される水溶性化合
物が水溶性マグネシウム化合物あることを特徴とする表
面経時劣化耐性に優れた合金を提供するものである。更
にその内でも特に、Mgを含有する合金が、Alを主成
分とする合金である事を特徴とする表面経時劣化耐性に
優れた合金を提供するものである。
含有する合金を、pHが5から8で、不純物元素の総含
有量濃度が100ppm以下の水に浸漬するか、また
は、その水を該合金に噴霧して、該合金の表面から5n
m迄の深さ領域に存在する水溶性化合物を溶出・除去
し、同領域に存在する水溶性化合物中に含有される元素
の、Hを除く全元素に対する原子分率が、10at.%
以下にした事を特徴とする表面経時劣化耐性に優れた合
金を提供するものである。その内でも特に、水溶性化合
物を形成する金属元素を含有する合金が、Mgを含有す
る合金であって、該合金の表面に形成される水溶性化合
物が水溶性マグネシウム化合物あることを特徴とする表
面経時劣化耐性に優れた合金を提供するものである。更
にその内でも特に、Mgを含有する合金が、Alを主成
分とする合金である事を特徴とする表面経時劣化耐性に
優れた合金を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】上述したように、使用環境下で経
時劣化を起こす合金の表面には、合金作製時の高温での
圧延や焼鈍等の様な材料処理によって、経時劣化の原因
となる水溶性化合物が生成する。このような合金は、合
金表面に水溶性化合物を形成する金属元素を含んでお
り、その様な金属元素としては、Li,Mg,Ca,B
a等がある。またそれらの金属元素を成分として含有す
る合金としては、Al−Mg,Al−Li,Cu−M
g,Fe−Mg合金等がある。これらの合金表面に生成
する水溶性化合物の内、現在、工業的に問題になる化合
物としては、Li2 O,MgO,CaO,BaO等が挙
げられる。
時劣化を起こす合金の表面には、合金作製時の高温での
圧延や焼鈍等の様な材料処理によって、経時劣化の原因
となる水溶性化合物が生成する。このような合金は、合
金表面に水溶性化合物を形成する金属元素を含んでお
り、その様な金属元素としては、Li,Mg,Ca,B
a等がある。またそれらの金属元素を成分として含有す
る合金としては、Al−Mg,Al−Li,Cu−M
g,Fe−Mg合金等がある。これらの合金表面に生成
する水溶性化合物の内、現在、工業的に問題になる化合
物としては、Li2 O,MgO,CaO,BaO等が挙
げられる。
【0010】これら合金表面に形成された水溶性化合物
を除去する方法としては、合金板を作製工程中に設けた
処理水浴中に浸漬するか、合金表面に処理水を噴霧する
のが良い。合金が厚板のような切り板の場合は、合金板
を加工などの為に搬送ロール上に載せて搬送する途中
に、ロールの上下にノズルを設けて、処理水を噴霧する
のが最も効果的である。また薄板のようにコイル状のも
のは、浸漬水漕を設けて、その中にコイルを通すのが良
い。このような処理に用いる水または噴霧水は、pHが
5から8の水であれば、蒸留水である必要はなく、各種
のイオンや有機物質を不純物として含む通常の上水道水
でも十分な効果を上げることが可能である。しかしなが
ら、水中の含有不純物の総量含有濃度は100ppm以
下のものを用いる必要がある。
を除去する方法としては、合金板を作製工程中に設けた
処理水浴中に浸漬するか、合金表面に処理水を噴霧する
のが良い。合金が厚板のような切り板の場合は、合金板
を加工などの為に搬送ロール上に載せて搬送する途中
に、ロールの上下にノズルを設けて、処理水を噴霧する
のが最も効果的である。また薄板のようにコイル状のも
のは、浸漬水漕を設けて、その中にコイルを通すのが良
い。このような処理に用いる水または噴霧水は、pHが
5から8の水であれば、蒸留水である必要はなく、各種
のイオンや有機物質を不純物として含む通常の上水道水
でも十分な効果を上げることが可能である。しかしなが
ら、水中の含有不純物の総量含有濃度は100ppm以
下のものを用いる必要がある。
【0011】この処理水のpHが5未満または8を越え
て酸やアルカリ領域になると、水溶性化合物ばかりでな
く、表面の保護層である難溶性の化合物の溶出も起こっ
てしまう。また、処理水に含まれる不純物の種類は、水
溶性化合物の溶出にほとんど影響しないが、含有不純物
の総含有濃度が100ppmを越える場合は、逆にこれ
らの不純物が、表面に析出してしまい、効果がなくなっ
てしまう。従来、材料表面に物理的に付着した汚染物質
等を除去するために利用されてきた工業用水には多量の
不純物を含むため、水溶性化合物が溶出する前に、水の
中に含まれた不純物元素が合金表面に付着してしまうの
で、本発明の処理水としてこのような工業用水は適しな
い。
て酸やアルカリ領域になると、水溶性化合物ばかりでな
く、表面の保護層である難溶性の化合物の溶出も起こっ
てしまう。また、処理水に含まれる不純物の種類は、水
溶性化合物の溶出にほとんど影響しないが、含有不純物
の総含有濃度が100ppmを越える場合は、逆にこれ
らの不純物が、表面に析出してしまい、効果がなくなっ
てしまう。従来、材料表面に物理的に付着した汚染物質
等を除去するために利用されてきた工業用水には多量の
不純物を含むため、水溶性化合物が溶出する前に、水の
中に含まれた不純物元素が合金表面に付着してしまうの
で、本発明の処理水としてこのような工業用水は適しな
い。
【0012】浸漬水または噴霧液の水温は特に制限はな
いが、溶解度の温度係数によって、反応速度が異なるの
で、実用的な時間内に溶出させる為には、通常50℃以
上の温水を用いるのが好ましい。また、噴霧ではなく浸
漬する場合は、水として安定な90℃以下で使用するの
が望ましい。ところで、材料表面の化合物層の内でも、
特に経時劣化との関連に於て問題となるのは、環境と直
接接触、反応する材料最表層部である。そこで、最表層
の元素の化学状態と経時劣化との相関を調べたところ、
水溶性化合物を形成する可能性のある元素の内でも、あ
る特定の化学状態にある原子の最表層の存在量が、経時
劣化現象に影響を及ぼすことを見いだした。即ち、合金
の表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物
中に含有される元素の存在量が、同領域に存在するHを
除く全元素に対する原子分率で10at.%以下のと
き、優れた経時劣化耐性を示す事が判明した。
いが、溶解度の温度係数によって、反応速度が異なるの
で、実用的な時間内に溶出させる為には、通常50℃以
上の温水を用いるのが好ましい。また、噴霧ではなく浸
漬する場合は、水として安定な90℃以下で使用するの
が望ましい。ところで、材料表面の化合物層の内でも、
特に経時劣化との関連に於て問題となるのは、環境と直
接接触、反応する材料最表層部である。そこで、最表層
の元素の化学状態と経時劣化との相関を調べたところ、
水溶性化合物を形成する可能性のある元素の内でも、あ
る特定の化学状態にある原子の最表層の存在量が、経時
劣化現象に影響を及ぼすことを見いだした。即ち、合金
の表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物
中に含有される元素の存在量が、同領域に存在するHを
除く全元素に対する原子分率で10at.%以下のと
き、優れた経時劣化耐性を示す事が判明した。
【0013】本発明の表面処理方法を施し、経時劣化試
験によって経時劣化が進行しないことを確認した数種の
合金について、合金表面から5nm程度の深さ領域の原
子組成と化学状態をX線光電子分光法によって解析した
ところ、同領域内に存在する経時劣化の原因となる水溶
性化合物中に含まれる金属元素の存在量が、Hを除く全
元素に対する原子分率で10at.%以下になってい
た。(尚、X線光電子分光法によって、合金表面の原子
組成や化学状態を解析する方法については後述する。)
験によって経時劣化が進行しないことを確認した数種の
合金について、合金表面から5nm程度の深さ領域の原
子組成と化学状態をX線光電子分光法によって解析した
ところ、同領域内に存在する経時劣化の原因となる水溶
性化合物中に含まれる金属元素の存在量が、Hを除く全
元素に対する原子分率で10at.%以下になってい
た。(尚、X線光電子分光法によって、合金表面の原子
組成や化学状態を解析する方法については後述する。)
【0014】また、同一材料をアルゴンイオンによっ
て、最表層5nm程度の層をアルゴンイオンによってス
パタリングして除去し、表面からの深さが5〜10nm
程度の領域を最表面層と同様の方法で解析したところ、
同層に於ける水溶性化合物中に含まれる金属元素の存在
量が、Hを除く全元素に対する原子分率で10at.%
以上のものもあった。つまり、合金表面から5nm迄の
層に存在する水溶性化合物の存在量が、Hを除く全元素
に対する原子分率で10at.%以下であれば、内部の
層に水溶性化合物が10at.%以上存在しても、吸湿
や表面反応などの経時劣化現象が進行しないことを示し
ている。
て、最表層5nm程度の層をアルゴンイオンによってス
パタリングして除去し、表面からの深さが5〜10nm
程度の領域を最表面層と同様の方法で解析したところ、
同層に於ける水溶性化合物中に含まれる金属元素の存在
量が、Hを除く全元素に対する原子分率で10at.%
以上のものもあった。つまり、合金表面から5nm迄の
層に存在する水溶性化合物の存在量が、Hを除く全元素
に対する原子分率で10at.%以下であれば、内部の
層に水溶性化合物が10at.%以上存在しても、吸湿
や表面反応などの経時劣化現象が進行しないことを示し
ている。
【0015】これは、本発明の表面処理法によって、最
表面層の水溶性化合物を除去した際にも、除去されずに
残っていた最表面に存在する難溶性化合物が保護層とな
り、それ以上の吸湿や表面反応などの経時劣化現象が進
行しない事によるものである。更に、比較のために、経
時劣化耐性が低い無処理材について同一の解析を行った
ところ、表面からの深さが5〜10nm程度の領域で
は、経時劣化耐性に優れた合金とあまり変わらないが、
表面から5nm迄の深さに存在する水溶性化合物の存在
量は、Hを除く全元素に対する原子分率で10at.%
を越えていた。
表面層の水溶性化合物を除去した際にも、除去されずに
残っていた最表面に存在する難溶性化合物が保護層とな
り、それ以上の吸湿や表面反応などの経時劣化現象が進
行しない事によるものである。更に、比較のために、経
時劣化耐性が低い無処理材について同一の解析を行った
ところ、表面からの深さが5〜10nm程度の領域で
は、経時劣化耐性に優れた合金とあまり変わらないが、
表面から5nm迄の深さに存在する水溶性化合物の存在
量は、Hを除く全元素に対する原子分率で10at.%
を越えていた。
【0016】以上のことから、合金の表面から5nm迄
の深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有される元素
の存在量が、同領域に存在するHを除く全元素に対する
原子分率で10at.%以下の合金が、経時劣化耐性に
優れた合金であることがわかる。このような合金表面に
生成した化合物が、水溶性であるか、或は難溶性である
かは、その化合物に含まれる元素の種類だけでなく、そ
の化合状態によって異なる。例えば、Mgの場合、水溶
性を有し、表面性状にとって有害なのは、Mgを含有す
る化合物のうちでもMgOやMgCl2 ,MgCO3 の
みであって、他の酸化物であるMgAl2 O4 (スピネ
ル)やMgFe2 O4 (マグネシウムフェライト)には
この様な性質がない。
の深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有される元素
の存在量が、同領域に存在するHを除く全元素に対する
原子分率で10at.%以下の合金が、経時劣化耐性に
優れた合金であることがわかる。このような合金表面に
生成した化合物が、水溶性であるか、或は難溶性である
かは、その化合物に含まれる元素の種類だけでなく、そ
の化合状態によって異なる。例えば、Mgの場合、水溶
性を有し、表面性状にとって有害なのは、Mgを含有す
る化合物のうちでもMgOやMgCl2 ,MgCO3 の
みであって、他の酸化物であるMgAl2 O4 (スピネ
ル)やMgFe2 O4 (マグネシウムフェライト)には
この様な性質がない。
【0017】この様な水溶性化合物の内でも、特に、A
l−Mg,Fe−Mg,Cu−Mg合金等のMgを含有
する合金の表面に形成されるMgOを中心とする水溶性
マグネシウム化合物は吸湿性、反応性が強い事が知られ
ている。このような合金系の材料を、水温90℃、不純
物総含有濃度が50ppmのイオン交換水中で、1分間
浸漬した後、X線光電子分光法によって、最表面層5n
m程度のMgの原子組成と化学状態を測定した結果、表
面に形成された水溶性マグネシウム化合物であるMgO
は総ての合金材料に於て、10at.%以下になってお
り、MgO以外では各合金系とも、それぞれAl
2 O3 ,Fe2 O3 ,CuOのみが表面に存在してい
た。これらの表面処理を施した合金に経時劣化試験を施
したところ、吸湿や表面反応等の経時劣化現象が進行し
なかった。即ち、処理後の表面に存在する化合物はすべ
て難溶性化合物であり、様々な経時劣化の原因となる水
溶性マグネシウム化合物のみが溶出・除去されたため
に、経時劣化現象が起こるのが抑制されたためと考えら
れる。
l−Mg,Fe−Mg,Cu−Mg合金等のMgを含有
する合金の表面に形成されるMgOを中心とする水溶性
マグネシウム化合物は吸湿性、反応性が強い事が知られ
ている。このような合金系の材料を、水温90℃、不純
物総含有濃度が50ppmのイオン交換水中で、1分間
浸漬した後、X線光電子分光法によって、最表面層5n
m程度のMgの原子組成と化学状態を測定した結果、表
面に形成された水溶性マグネシウム化合物であるMgO
は総ての合金材料に於て、10at.%以下になってお
り、MgO以外では各合金系とも、それぞれAl
2 O3 ,Fe2 O3 ,CuOのみが表面に存在してい
た。これらの表面処理を施した合金に経時劣化試験を施
したところ、吸湿や表面反応等の経時劣化現象が進行し
なかった。即ち、処理後の表面に存在する化合物はすべ
て難溶性化合物であり、様々な経時劣化の原因となる水
溶性マグネシウム化合物のみが溶出・除去されたため
に、経時劣化現象が起こるのが抑制されたためと考えら
れる。
【0018】更に、Mgを含有する合金の内でも、特
に、Alを主成分とする合金(Al−Mg−X ここ
で、X=Si,Cu,Zn)は工業的にも、自動車用車
体等の構造材料、缶材等に広範囲に利用されているが、
表面は何れもMgを主成分とする表面層に被覆されてい
る。この様な表面層中のMgOは、その吸湿性のため、
経時劣化以外にもその後の材料の使用目的によっては、
接着性、溶接性、化成性等の重要な表面機能を阻害する
原因となる事が判明した。Alを主成分とする合金系に
於ては、これまでも、この様なMg酸化層を除去する方
法として様々な方法が発明され、使用されてきたが、何
れも、酸化層全体を無差別的に損壊、除去してしまうた
めに、重要な保護層(例えばAl2 O3 )をも一緒に除
去してしまい、以下の理由によって、かえって経時劣化
耐性が低下する。
に、Alを主成分とする合金(Al−Mg−X ここ
で、X=Si,Cu,Zn)は工業的にも、自動車用車
体等の構造材料、缶材等に広範囲に利用されているが、
表面は何れもMgを主成分とする表面層に被覆されてい
る。この様な表面層中のMgOは、その吸湿性のため、
経時劣化以外にもその後の材料の使用目的によっては、
接着性、溶接性、化成性等の重要な表面機能を阻害する
原因となる事が判明した。Alを主成分とする合金系に
於ては、これまでも、この様なMg酸化層を除去する方
法として様々な方法が発明され、使用されてきたが、何
れも、酸化層全体を無差別的に損壊、除去してしまうた
めに、重要な保護層(例えばAl2 O3 )をも一緒に除
去してしまい、以下の理由によって、かえって経時劣化
耐性が低下する。
【0019】即ち、通常、Al−Mg合金系では、熱処
理等の作製過程において、表面酸化層とバルク合金層と
の界面に、金属マグネシウムの原子組成がバルク合金組
成よりも高くなった層が存在する場合が多い。酸洗等に
よって、無差別的に酸化層を取り除いてしまうと、この
様な金属的なマグネシウムが濃縮された界面層が表面に
露出してしまう。この様な金属的マグネシウムの濃縮量
は合金の作製条件や雰囲気によって異なるが、最大で表
面酸化層中のマグネシウムと同程度に達することもあ
る。
理等の作製過程において、表面酸化層とバルク合金層と
の界面に、金属マグネシウムの原子組成がバルク合金組
成よりも高くなった層が存在する場合が多い。酸洗等に
よって、無差別的に酸化層を取り除いてしまうと、この
様な金属的なマグネシウムが濃縮された界面層が表面に
露出してしまう。この様な金属的マグネシウムの濃縮量
は合金の作製条件や雰囲気によって異なるが、最大で表
面酸化層中のマグネシウムと同程度に達することもあ
る。
【0020】このような金属的なマグネシウムは極めて
活性であるから、酸洗直後には金属的なマグネシウム
も、酸洗した合金を大気中に放置しておくと、室温でも
急速に酸化し、酸化マグネシウムになり、再び表面経時
劣化の原因となる。従って、難溶性の保護層も損なう様
な従来の表面処理法は、経時劣化耐性をかえって損なう
ことになるが、本発明の方法であれば、保護層を損なう
ことなく水溶性のマグネシウムを除去することができる
ので、経時劣化耐性に優れたAl−Mg合金を製造する
ことができる。
活性であるから、酸洗直後には金属的なマグネシウム
も、酸洗した合金を大気中に放置しておくと、室温でも
急速に酸化し、酸化マグネシウムになり、再び表面経時
劣化の原因となる。従って、難溶性の保護層も損なう様
な従来の表面処理法は、経時劣化耐性をかえって損なう
ことになるが、本発明の方法であれば、保護層を損なう
ことなく水溶性のマグネシウムを除去することができる
ので、経時劣化耐性に優れたAl−Mg合金を製造する
ことができる。
【0021】以上述べたように、最表層に存在する特定
の化学状態の元素の存在量が経時劣化耐性を左右してい
るわけであるが、合金中の最表層領域の元素の化学状態
と存在比の定量的な判定は、X線光電子分光法やオージ
ェ電子分光法等によって容易に行うことができる。特
に、X線光電子分光法では、同一の元素でもその化学状
態、例えば、金属的であるか、化合物を形成している
か、等が異なれば、電子の結合エネルギーが異なるの
で、色々な化学状態の物質が表面層中に混在する場合に
は、結合エネルギースペクトルは幾つかのピークに分か
れる。従って、目的とする化学状態のピーク位置とピー
クの形状(対称か非対称か等)が、予め標準物質の測定
や文献などから解っていれば、目的とする化合物の原子
分率を求めることができる。
の化学状態の元素の存在量が経時劣化耐性を左右してい
るわけであるが、合金中の最表層領域の元素の化学状態
と存在比の定量的な判定は、X線光電子分光法やオージ
ェ電子分光法等によって容易に行うことができる。特
に、X線光電子分光法では、同一の元素でもその化学状
態、例えば、金属的であるか、化合物を形成している
か、等が異なれば、電子の結合エネルギーが異なるの
で、色々な化学状態の物質が表面層中に混在する場合に
は、結合エネルギースペクトルは幾つかのピークに分か
れる。従って、目的とする化学状態のピーク位置とピー
クの形状(対称か非対称か等)が、予め標準物質の測定
や文献などから解っていれば、目的とする化合物の原子
分率を求めることができる。
【0022】以下に、Al−Mg合金の表面に生成した
Mg化合物を例として、X線光電子分光法によって測定
したMgに固有な内殻電子準位のスペクトルから、Mg
元素を含有する化合物毎の原子分率を求める定量法につ
いて具体的に説明する。図1は、X線光電子分光法によ
るMgを含有したAl合金の表面のMg 2p状態のス
ペクトルの模式図である。まず、図1に示した様なスペ
クトル(1)から積分法等の適当な方法で、バックグラ
ウンド(2)を差し引いた後に、適当なフィッティング
関数を用いて、最小二乗法等を利用して、差し引かれた
スペクトルを幾つかの単一な化学状態のスペクトル(3
a〜c)に分解する。
Mg化合物を例として、X線光電子分光法によって測定
したMgに固有な内殻電子準位のスペクトルから、Mg
元素を含有する化合物毎の原子分率を求める定量法につ
いて具体的に説明する。図1は、X線光電子分光法によ
るMgを含有したAl合金の表面のMg 2p状態のス
ペクトルの模式図である。まず、図1に示した様なスペ
クトル(1)から積分法等の適当な方法で、バックグラ
ウンド(2)を差し引いた後に、適当なフィッティング
関数を用いて、最小二乗法等を利用して、差し引かれた
スペクトルを幾つかの単一な化学状態のスペクトル(3
a〜c)に分解する。
【0023】次に、文献や、標準物質の測定によって、
分解したスペクトルの結合エネルギーがこれまで知られ
ているどの化合物のものと最も近いかを判断し、スペク
トルの同定を行う。例えば、3aがMgOのスペクトル
とすると、分析領域におけるMgOのMg全体に対する
原子分率は、(3aのピークの面積)/(Mg全体のス
ペクトルの面積(1))として、容易に求められる。更
に、他の元素との原子分率を求めるには、装置関数や、
感度係数などが必要であるが、いずれもX線光電子分光
法に於ては、既にH以外の表面原子組成の定量法として
広く行なわれている方法を容易に適用できる。
分解したスペクトルの結合エネルギーがこれまで知られ
ているどの化合物のものと最も近いかを判断し、スペク
トルの同定を行う。例えば、3aがMgOのスペクトル
とすると、分析領域におけるMgOのMg全体に対する
原子分率は、(3aのピークの面積)/(Mg全体のス
ペクトルの面積(1))として、容易に求められる。更
に、他の元素との原子分率を求めるには、装置関数や、
感度係数などが必要であるが、いずれもX線光電子分光
法に於ては、既にH以外の表面原子組成の定量法として
広く行なわれている方法を容易に適用できる。
【0024】
【実施例】厚さ1mmのMg含有Al合金薄板{4.5
wt%−Mg含有合金(5182(JIS規格))}の
表面に形成された水溶性酸化物を除去する目的で、該合
金薄板を、処理液の入った漕中に60秒間浸漬処理し、
処理前後の材料の表面から5nmの深さ迄のMgの化学
状態別の原子組成の変化をX線光電子分光法によって測
定し、更に処理した試料を表1に示す様な条件で暴露試
験を行った。結果を表2に示す。尚、同様の条件で噴霧
処理も行ったが、ほぼ同様の結果を得た。
wt%−Mg含有合金(5182(JIS規格))}の
表面に形成された水溶性酸化物を除去する目的で、該合
金薄板を、処理液の入った漕中に60秒間浸漬処理し、
処理前後の材料の表面から5nmの深さ迄のMgの化学
状態別の原子組成の変化をX線光電子分光法によって測
定し、更に処理した試料を表1に示す様な条件で暴露試
験を行った。結果を表2に示す。尚、同様の条件で噴霧
処理も行ったが、ほぼ同様の結果を得た。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】各試料について、X線光電子分光法によっ
て測定した材料の表面から5nmの深さ迄のMg 2p
準位のスペクトルデータのピーク分離を行ったところ、
いずれの試料においても、金属MgまたはMgOのピー
クのみが観測された。そこで、このデータに基づいて、
MgO中のMgの原子分率(at.%)を解析したとこ
ろ、本発明の処理を行った試料は、無処理材に較べて、
表面のMgO中のMg濃度が大幅に減少しており、材料
表面の水溶性化合物が選択的に除去されていることが解
った。
て測定した材料の表面から5nmの深さ迄のMg 2p
準位のスペクトルデータのピーク分離を行ったところ、
いずれの試料においても、金属MgまたはMgOのピー
クのみが観測された。そこで、このデータに基づいて、
MgO中のMgの原子分率(at.%)を解析したとこ
ろ、本発明の処理を行った試料は、無処理材に較べて、
表面のMgO中のMg濃度が大幅に減少しており、材料
表面の水溶性化合物が選択的に除去されていることが解
った。
【0028】また、暴露試験の結果、表面のMgO中の
Mgの原子分率が、同領域のHを除く全元素の10a
t.%以下であれば、何れも良好な経時劣化耐性を示す
ことが明らかである。尚、pH=4で処理した試料は、
表面のMgOが除去され、水溶性マグネシウムは一旦減
少するが、保護層であるAl2 O3 も同時に除去されて
しまうため、Al−Mg合金中の金属的なマグネシウム
の濃縮層が表面に露出し、それが大気中で急速に酸化さ
れて再びMgOが生成したために、経時劣化耐性が悪く
なったものである。
Mgの原子分率が、同領域のHを除く全元素の10a
t.%以下であれば、何れも良好な経時劣化耐性を示す
ことが明らかである。尚、pH=4で処理した試料は、
表面のMgOが除去され、水溶性マグネシウムは一旦減
少するが、保護層であるAl2 O3 も同時に除去されて
しまうため、Al−Mg合金中の金属的なマグネシウム
の濃縮層が表面に露出し、それが大気中で急速に酸化さ
れて再びMgOが生成したために、経時劣化耐性が悪く
なったものである。
【0029】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、材
料表面に形成されている表面層中に存在する各種の化合
物の内で、表面保護などの為に有用な難水溶性化合物層
を損なうことなく、吸湿性等の性質を有し、材料の表面
経時劣化の上で問題となる水溶性化合物のみを選択的に
除去し、より安定且つ高機能性表面を有する材料を簡便
且つ安価に製造することが可能である。また、本発明の
方法によって製造された合金は、経時劣化耐性に優れて
いる。
料表面に形成されている表面層中に存在する各種の化合
物の内で、表面保護などの為に有用な難水溶性化合物層
を損なうことなく、吸湿性等の性質を有し、材料の表面
経時劣化の上で問題となる水溶性化合物のみを選択的に
除去し、より安定且つ高機能性表面を有する材料を簡便
且つ安価に製造することが可能である。また、本発明の
方法によって製造された合金は、経時劣化耐性に優れて
いる。
【図1】X線光電子分光法によるMgを含有したAl合
金の表面のMg 2p状態のスペクトルの模式図であ
る。
金の表面のMg 2p状態のスペクトルの模式図であ
る。
1 測定された光電子スペクトル 2 バックグラウンド(非弾性散乱光電子成分等) 3 ピーク分離フィッティングによる存在状態毎に分離
されたスペクトル 3a:MgO成分(水溶性化合物成分) 3b:MgAl2 O4 (スピネル)成分(難溶性化合物
成分) 3c:金属的Mg(合金成分)(難溶性化合物成分)
されたスペクトル 3a:MgO成分(水溶性化合物成分) 3b:MgAl2 O4 (スピネル)成分(難溶性化合物
成分) 3c:金属的Mg(合金成分)(難溶性化合物成分)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 敏明 東京都墨田区錦糸1丁目2番1号 スカイ アルミニウム株式会社内 (72)発明者 倉田 正裕 東京都墨田区錦糸1丁目2番1号 スカイ アルミニウム株式会社内
Claims (9)
- 【請求項1】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
する合金の作製過程、あるいは作製後の使用環境下で合
金表面に形成された水溶性化合物を除去する方法であっ
て、該合金をpHが5から8で、不純物元素の総含有量
濃度が100ppm以下の水に浸漬するか、または、そ
の水を該合金に噴霧して、合金表面に形成された水溶性
化合物のみを選択的に溶出・除去する事を特徴とする合
金表面の処理方法。 - 【請求項2】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
する合金が、Mgを含有する合金であって、該合金の表
面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合
物であることを特徴とする請求項1記載の合金表面の処
理方法。 - 【請求項3】 Mgを含有する合金が、Alを主成分と
する合金である事を特徴とする請求項2記載の合金表面
の処理方法。 - 【請求項4】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
する合金であって、該合金の表面から5nm迄の深さ領
域に存在する水溶性化合物中に含有される元素の、同領
域に存在するHを除く全元素に対する原子分率が10a
t.%以下である事を特徴とする表面経時劣化耐性に優
れた合金。 - 【請求項5】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
する合金が、Mgを含有する合金であって、該合金の表
面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合
物であることを特徴とする請求項4記載の表面経時劣化
耐性に優れた合金。 - 【請求項6】 Mgを含有する合金が、Alを主成分と
する合金である事を特徴とする請求項5記載の表面経時
劣化耐性に優れた合金。 - 【請求項7】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
する合金を、pHが5から8で、不純物元素の総含有量
濃度が100ppm以下の水に浸漬するか、または、そ
の水を該合金に噴霧して、該合金の表面から5nm迄の
深さ領域に存在する水溶性化合物を溶出・除去し、同領
域に存在する水溶性化合物中に含有される元素の、Hを
除く全元素に対する原子分率が、10at.%以下にし
た事を特徴とする表面経時劣化耐性に優れた合金。 - 【請求項8】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
する合金が、Mgを含有する合金であって、該合金の表
面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合
物であることを特徴とする請求項7記載の表面経時劣化
耐性に優れた合金。 - 【請求項9】 Mgを含有する合金が、Alを主成分と
する合金である事を特徴とする請求項8記載の表面経時
劣化耐性に優れた合金。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30676897A JPH10195683A (ja) | 1996-11-12 | 1997-11-10 | 合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31416096 | 1996-11-12 | ||
JP8-314160 | 1996-11-12 | ||
JP30676897A JPH10195683A (ja) | 1996-11-12 | 1997-11-10 | 合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10195683A true JPH10195683A (ja) | 1998-07-28 |
Family
ID=26564854
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP30676897A Withdrawn JPH10195683A (ja) | 1996-11-12 | 1997-11-10 | 合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH10195683A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007162056A (ja) * | 2005-12-13 | 2007-06-28 | Mitsubishi Alum Co Ltd | ボトル型飲料缶用アルミニウム合金板 |
-
1997
- 1997-11-10 JP JP30676897A patent/JPH10195683A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007162056A (ja) * | 2005-12-13 | 2007-06-28 | Mitsubishi Alum Co Ltd | ボトル型飲料缶用アルミニウム合金板 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Hughes et al. | Chromate conversion coatings on 2024 Al alloy | |
Lunder et al. | The effect of alkaline-etch pretreatment on the pitting corrosion of wrought aluminum | |
JPH05195247A (ja) | アルミニウムを保護するためのクロムを含まない方法および組成物 | |
JP2001032100A (ja) | 不動態処理表面層を有するオーステナイト系ステンレス鋼製物品 | |
EP1281783B1 (en) | Stainless steel for ozone added water and manufacturing method thereof | |
Nelson et al. | Characterisation of aluminium alloys after HNO3/HF–NaOH–HNO3/HF pretreatment | |
US20090162678A1 (en) | Magnesium alloy article and method for fabricating the same | |
JP4375827B2 (ja) | 合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金 | |
JPH10195683A (ja) | 合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金 | |
Sekine et al. | Effect of water content on the corrosion behaviour of type 430 stainless steel in formic and acetic acids | |
Hughes et al. | Desmutting of aluminium alloy 2024-T3 using rare earth electrolyte | |
JP5114834B2 (ja) | 冷延鋼板およびその製造方法 | |
US4600443A (en) | Process for removing surface oxides from a copper-base alloy | |
GB2179960A (en) | Passivation of zinc and zinc-aluminium alloys | |
JP7332948B2 (ja) | 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 | |
JP3337134B2 (ja) | 防錆処理金属、防錆皮膜形成用組成物およびそれを用いた防錆皮膜形成方法 | |
US20060257682A1 (en) | Corrosion protection of galvanized steel using a cerium salt-based solution and detection of the amount of corrosion resistance enhancement | |
Elfström et al. | Preparation of alloys for ESCA investigation | |
KR0142648B1 (ko) | 베어본딩용 동합금 리드프레임 | |
Suter et al. | The characterization of the tarnishing of Cu-15Ni-8Sn and Cu-5Al-5Sn alloys | |
JP2007113108A (ja) | 冷延鋼板およびその製造方法 | |
Hudson et al. | Surface segregation of manganese in low-carbon steel during annealing | |
Kim et al. | Chemistry of the surface of hot-dipped galvanized steel and its relation to paint adherence | |
Lea | Quantitative Solderability Measurement of Electronic Components: Part 3: Surfaces of Standard Solderability | |
EP0064295B1 (en) | Method of improving the corrosion resistance of chemical conversion coated aluminum |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20050201 |