JP4375827B2 - 合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金 - Google Patents
合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、金属産業分野、特に自動車、建材、缶材等の分野で、それらの合金材料の作製過程や作製後の使用環境下に於て、合金材料表面に形成され、材料特性に大きな影響を与える水溶性化合物を選択的に除去することで、表面経時劣化耐性に優れた合金表面を形成する合金表面の処理方法、および表面経時劣化耐性に優れた合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、合金表面に形成される酸化物層等の表面層を除去する方法としては、研削等の機械的方法、イオンスパタリングやアーク放電によるクリーニング(例えば、アール エフ アシトン他:ウエルディング ジャーナル 9月号(1976年)PP.1750−59)(R. F. Ashton et al.:Welding Journal, Sept. (1976), pp. 1750-1759.)等の物理的方法、酸(特公平7−116629)やアルカリ溶液(特開平4−214835)に浸漬する化学的方法が使用されてきた。
【0003】
また、この様にして得られた材料表面の評価法としては、主に化学分析等による元素分析法により、表面の原子組成と表面性能の関係が問題にされてきただけで、表面に存在する元素の原子価数等での化学状態別の存在比と表面性能の関係が問題にされることはなかった。従って、例えば、表面酸化被膜の存在が原因で、合金表面の経時劣化が生じたことが解った場合でも、表面酸化被膜中のどの様な化合物が経時劣化の原因となるかが明らかにされていなかったために、有効な対策が講じられなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の合金表面に形成される酸化物層を中心とした表面層を除去する方法は、合金を酸に浸漬する方法等の様に、表面層を最表面からある一定の深さまで、その組成や化学状態に関係なく、均一に除去していく方法である。
然るに、発明者らがこれらの合金の表面層中に存在する様々な化合物の組成や化学状態と表面性能との関係を詳細に検討した結果、表面経時劣化の原因となるのは表面層中の化合物のうちでも、特に水溶性化合物である事が判明した。即ち、水溶性化合物は、吸湿性が強く、その様な吸湿した部分は、反応性に富み、水分中に含まれるClやF等や、空気中のCO2 等と化合して、有害な腐食生成物を形成しやすく、材料表面の経時劣化を起こしやすいことが判った。
【0005】
しかしながら、従来法である酸やアルカリに浸漬して表面層を除去する方法では、表面層中の化合物を無差別に除去してしまうので、材料表面の保護等の有用な表面機能を有する難溶性の化合物層も同時に除去され、活性な金属層が表面に露出してしまい、かえって表面性能を劣化させ易くすることも明らかとなった。
本発明は、材料表面層中の各種化合物の内で、材料表面の保護等の有用な表面機能を有する難溶性の化合物を損なうことなく、材料作製過程や作製後の使用環境中での吸湿現象や、それらの雰囲気中に存在するClやF等の様な表面経時劣化上で有害な元素との反応を起こす水溶性化合物のみを選択的に溶出・除去し、より化学的に安定で、且つ、高機能性表面を有する材料を作製するための表面処理方法、及び同処理方法によって表面処理された経時劣化耐性に優れた表面を有する合金材料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水溶性化合物を形成するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)の作製過程、あるいは作製後の使用環境下で、合金表面に形成された水溶性化合物を除去する方法であって、珪酸ソーダー系脱脂剤を用いて該合金の表面層を5〜50mg/m2除去した後、pHが5から8であって且つ不純物元素の総含有量濃度が100ppm以下である水に浸漬するか、または、該水を該合金に噴霧して、合金表面に形成された水溶性化合物のみを選択的に溶出させ、除去することを特徴とする合金表面の処理方法を提供するものである。
【0007】
その内でも特に、水溶性化合物を形成するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)の表面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合物であることを特徴とする合金表面処理方法を提供するものである。
【0008】
また、水溶性化合物を形成するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)であって、該合金の表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有される該Mgの原子分率が、該深さ領域に存在するHを除く全元素に対して10at.%以下であることを特徴とする表面経時劣化耐性に優れた合金を提供するものである。
その内でも特に、水溶性化合物を形成する金属元素を含有するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)の表面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合物であることを特徴とするMgを含有する表面経時劣化耐性に優れた合金を提供するものである。
【0009】
また、水溶性化合物を形成するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)を、珪酸ソーダー系脱脂剤を用いて表面層を5〜50mg/m2除去した後、pHが5から8であり且つ不純物元素の総含有量濃度が100ppm以下である水に浸漬するか、または、該水を該合金に噴霧して、該合金の表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物を溶出・除去し、該深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有される該Mgの原子分率が、Hを除く全元素に対して10at.%以下にしたことを特徴とする表面経時劣化耐性に優れた合金を提供するものである。
【0010】
その内でも特に、水溶性化合物を形成するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)の表面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合物であることを特徴とする表面経時劣化耐性に優れた合金を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
前述のように、使用環境下で経時劣化を起こす合金の表面には、合金作製時の高温での圧延や焼鈍等の材料作製過程に於て、経時劣化の原因となる水溶性化合物が生成する。このような合金は、合金表面に水溶性化合物を形成する金属元素を含んでおり、その様な金属元素としては、Li,Mg,Ca,Ba等がある。またそれらの金属元素を成分として含有する合金としては、Al−Mg,Al−Li,Cu−Mg,Fe−Mg合金等がある。これらの合金表面に生成する水溶性化合物の内、現在、工業的に問題になる化合物としては、Li2 O,MgO,CaO,BaO等が挙げられる。
【0012】
ところで、この様な合金材料の最表面には、高温での圧延や焼鈍等の材料作製過程に於て、潤滑油や圧延油として使用された油脂成分が付着している場合が多い。この様な油脂成分は難溶性化合物であるから、合金材料をそのまま水溶性化合物を除去するのと同じ条件で処理して、除去することは困難である。更にこの様な油脂成分は合金最表面に不均一に付着している場合が多いので、油脂成分を除去する為に何らかの前処理を施すことなく、いきなり、水溶性化合物を除去するのと同じ条件で処理すると、油脂成分が付着している部分は撥水してしまうので除去されずに、油脂成分が付着していない部分の水溶性化合物のみを溶解してしまい、結果的に酸化膜厚が不均一になり、色調むら等の表面性能にとって好ましくない現象を生じる場合がある。そこでこの様に最表面層に油脂成分が不均一に付着している合金材料の場合は、前処理として、アルカリ系脱脂剤を用いて、不均一な最表面層の難溶性油脂成分を除去した後(以下、前処理と呼ぶ。)、合金板をpH5から8であって且つ不純物元素の総含有量濃度が100ppm 以下である処理水浴中に浸漬するか、合金表面にこの処理水を噴霧すれば(以下、本処理と呼ぶ。)、表面層中の水溶性化合物を均一に除去することが可能であり、色調むら等の表面性能にとって好ましくない現象が発生しないことが解った。この様な前処理工程のアルカリ脱脂剤による最表面層の除去量は5〜50mg/m2 程度が良いことが実験の結果から解った。尚、前処理の場合も、本処理の場合も、合金が厚板のような切り板の場合は、合金板を加工などのために、搬送ロール上に載せて搬送する途中に、ロールの上下にノズルを設けて、処理水を噴霧するのが最も効果的である。また薄板のようにコイル状のものは、浸漬水槽を設けて、その中にコイルを通すのが良い。
【0013】
一般的にアルカリ脱脂剤としては市販の苛性ソーダー系、燐酸ソーダー系、珪酸ソーダー系のどの脱脂剤でも良い。しかし、特にMgを含有するAl合金の表面酸化層はアルカリにも、酸にも溶出するので、苛性ソーダー系、燐酸ソーダー系の脱脂剤の様に同表面酸化層に対する溶出速度の速い脱脂剤を用いると、短時間の間に同表面酸化層全体を溶出・除去してしまい、表面層の除去量を5〜50mg/m2に制御し、最表面層中の油脂成分のみを除去することが技術的に難しくなる。従って、Mgを含有するAl合金を、これらの溶出速度の速い脱脂剤を用いてアルカリ脱脂処理を行う場合は、脱脂液のpHを下げ、処理温度も低くしなければならないので、除去量を精密に制御することが難しい。その点、珪酸ソーダー系の脱脂剤はMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)の表面酸化層の溶出速度が遅く、特にAl2O3等の難溶性化合物は殆どエッチングしないので、最表面層の除去量を5〜50mg/m2に管理することが比較的容易であり、Mgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)の表面酸化層の最表面層の油脂成分を除去するためのアルカリ脱脂剤として最も適している。
【0014】
ところで、この様なアルカリ脱脂処理による除去量は処理前後の重量差の測定により容易に求めることが可能である。また色調むらの判定は、目視でも十分できるが、光学顕微鏡、特に偏光顕微鏡を用いれば更に正確に行うことができる。
アルカリ脱脂後の処理に用いる浸漬水または噴霧水は、pHが5から8の水であれば、蒸留水である必要はなく、各種のイオンや有機物質を不純物として含む通常の上水道水でも十分な効果を上げることが可能である。しかしながら、水中の含有不純物の総量含有濃度は100ppm 以下のものを用いる必要がある。
【0015】
この処理水のpHが5未満または8を越えて酸やアルカリ領域になると、水溶性化合物ばかりでなく、表面の保護層である難溶性の化合物も溶出するので、好ましくない。また、処理水に含まれる不純物の種類は、微量であれば、水溶性化合物の溶出速度に殆ど影響しないが、含有不純物の総含有濃度が100ppm を越える場合は、逆にこれらの不純物が、表面に析出してしまい、水溶性化合物の溶出速度が遅くなり、効果がなくなってしまう。従来、材料表面に物理的に付着した汚染物質等を除去するために利用されてきた工業用水には、Si,P,Ca,Mg,SO4 ,Cl,F等の多量の不純物を含むため、水溶性化合物が溶出する前に、水の中に含まれた不純物元素が合金表面に付着してしまうので、本発明の処理水としてこのような工業用水は適しない。
【0016】
浸漬水または噴霧水の水温は特に制限はないが、溶解度の温度係数によって、反応速度が異なるので、実用的な時間内に溶出させるためには、通常50℃以上の温水を用いるのが好ましい。また、噴霧ではなく浸漬する場合は、水として安定な90℃以下で使用するのが望ましい。
ところで、材料表面の化合物層の内でも、特に経時劣化との関連に於て問題となるのは、環境と直接接触、反応する材料最表層部である。そこで、最表層中に存在する元素の化学状態と経時劣化との相関を調べたところ、水溶性化合物を形成する可能性のある元素の内でも、ある特定の化学状態にある原子の最表層の存在量が、経時劣化現象に影響を及ぼすことを見いだした。即ち、合金の表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有されるMgの存在量が、同深さ領域に存在するHを除く全元素に対する原子分率で10at.%以下のとき、優れた経時劣化耐性を示すことが判明した。
【0017】
本発明の表面処理方法を施し、経時劣化試験によって経時劣化が進行しないことを確認した数種の合金について、合金表面から5nm程度の深さ領域の原子組成と化学状態をX線光電子分光法によって解析したところ、同深さ領域内に存在する経時劣化の原因となる水溶性化合物中に含まれるMgの存在量が、Hを除く全元素に対する原子分率で10at.%以下になっていた。(尚、X線光電子分光法によって、合金表面の原子組成や化学状態を解析する方法については後述する。)また、同一材料の最表層5nm程度の層をアルゴンイオンによってスパタリングして除去し、表面からの深さが5〜10nm程度の領域を最表面層と同様の方法で解析したところ、同層に於ける水溶性化合物中に含まれるMgの存在量が、Hを除く全元素に対する原子分率で10at.%以上のものもあった。つまり、合金表面から5nm迄の層に存在する水溶性化合物に含有されるMgの存在量が、Hを除く全元素に対する原子分率で10at.%以下であれば、内部の層に水溶性化合物が10at.%以上存在しても、吸湿や表面反応などの経時劣化現象が進行しないことを示している。これは、本発明の表面処理方法によって、最表面層の水溶性化合物を除去した際にも、除去されずに残っていた最表面に存在する難溶性化合物が保護層となり、それ以上の吸湿や表面反応などの経時劣化現象が進行しないことによるものである。更に、比較のために、経時劣化耐性が低い無処理材について同一の解析を行ったところ、表面からの深さが5〜10nm程度の領域では、経時劣化耐性に優れた合金とあまり変わらないが、表面から5nm迄の深さに存在する水溶性化合物に含有されるMgの存在量は、Hを除く全元素に対する原子分率で10at.%を越えていた。
【0018】
以上のことから、合金の表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有されるMgの存在量が、同深さ領域に存在するHを除く全元素に対する原子分率で10at.%以下の合金が、経時劣化耐性に優れた合金であることがわかる。このような合金表面に生成した化合物が、水溶性であるか、或は難溶性であるかは、その化合物に含まれる元素の種類だけでなく、その化合状態によって異なる。Mgの場合、水溶性を有し、表面性状にとって有害なのは、Mgを含有する化合物のうちでもMgOやMgCl2,MgCO3のみであって、他の酸化物であるMgAl2O4(スピネル)やMgFe2O4(マグネシウムフェライト)にはこの様な性質がない。
【0019】
この様な水溶性化合物の内でも、特に、Al−Mg,Fe−Mg,Cu−Mg合金等のMgを含有する合金の表面に形成されるMgOを中心とする水溶性マグネシウム化合物は吸湿性、反応性が強いことが知られている。このような合金系の材料を、珪酸ソーダー系の脱脂剤で温度70℃の溶液に浸漬して5〜50mg/m2 除去した後、水洗して、処理水温度50〜90℃、不純物総含有濃度が50〜100ppm のイオン交換水中で、15sec 浸漬した後、X線光電子分光法によって、最表面層5nm程度のMgの原子組成と化学状態を測定した結果、表面に形成された水溶性マグネシウム化合物であるMgO中に含まれるMgは総ての合金材料に於て、10 at.%以下になっており、MgO以外では各合金系とも、それぞれAl2 O3 ,Fe2 O3 ,CuOのみが表面に存在していた。これらの表面処理を施した合金に経時劣化試験を施したところ、吸湿や表面反応等の経時劣化現象が進行しなかった。即ち、処理後の表面に存在する化合物はすべて難溶性化合物であり、様々な経時劣化の原因となる水溶性マグネシウム化合物のみが溶出・除去されたために、経時劣化現象が起こるのが抑制されたためと考えられる。
【0020】
更に、Mgを含有する合金の内でも、特に、Alを主成分とする合金(Al−Mg−X、ここで、X=Si,Cu,Zn、以下この様な合金をAl−Mg合金と記す。)は工業的にも、自動車用車体等の構造材料、缶材等に広範囲に利用されているが、表面は何れもMgを主成分とする表面層に被覆されている。この様な表面層中のMgOは、その吸湿性のため、経時劣化以外にもその後の材料の使用目的によっては、接着性、溶接性、化成性等の重要な表面機能を阻害する原因となることが判明した。Alを主成分とする合金系に於ては、これまでも、この様なMg酸化層を除去する方法として様々な方法が考案され、使用されてきたが、何れも、酸化層全体を無差別的に損壊、除去してしまうために、重要な保護層(例えばAl2 O3 )をも一緒に除去してしまい、以下の理由によって、かえって経時劣化耐性が低下する。即ち、通常、Al−Mg合金系では、熱処理等の作製過程において、表面酸化層とバルク合金層との界面に、金属マグネシウムの原子組成がバルク合金組成よりも高くなった層が存在する場合が多い。酸洗等によって、無差別的に酸化層を取り除いてしまうと、この様な金属的なマグネシウムが濃縮された界面層が表面に露出してしまう。この様な金属的マグネシウムの濃縮量は合金の作製条件や雰囲気によって異なるが、最大で表面酸化層中のマグネシウムと同程度に達することもある。このような金属的なマグネシウムは極めて活性であるから、酸洗直後には金属的なマグネシウムも、酸洗した合金を大気中に放置しておくと、室温でも急速に酸化し、酸化マグネシウムになり、再び表面経時劣化の原因となる。従って、難溶性の保護層も損なう様な従来の表面処理法は、経時劣化耐性をかえって損なうことになるが、本発明の方法であれば、保護層を損なうことなく水溶性のマグネシウムを除去することができるので、経時劣化耐性に優れたAl−Mg合金を製造することができる。
【0021】
以上述べたように、最表層に存在する特定の化学状態での元素の存在量が経時劣化耐性を左右しているわけであるが、合金中の最表層領域での元素の化学状態と存在比の定量的な判定は、X線光電子分光法やオージェ電子分光法等によって容易に行うことができる。特に、X線光電子分光法では、同一の元素でもその化学状態、例えば、金属的であるか、化合物を形成しているか、等が異なれば、電子の結合エネルギーが異なるので、色々な化学状態の物質が表面層中に混在する場合には、結合エネルギースペクトルは幾つかのピークに分かれる。従って、目的とする化学状態のピーク位置とピークの形状(対称か非対称か等)が、予め標準物質の測定や文献などから解っていれば、目的とする化合物の原子分率を求めることができる。
【0022】
以下に、Al−Mg合金の表面に生成したMg化合物を例として、X線光電子分光法によって測定したMgに固有な内殻電子準位のスペクトルから、Mg元素を含有する化合物毎の原子分率を求める定量法について具体的に説明する。
図1は、X線光電子分光法によるAl−Mg合金の表面でのMg2p状態におけるスペクトルの模式図である。まず、図1に示した様な実測されたスペクトル1から積分法等の適当な方法で、バックグラウンド2を差し引いた後に、適当なフィッティング曲線4を用いて、最小二乗法等を利用して、差し引かれたスペクトルを幾つかの単一な化学状態のスペクトル3a〜3cに分解する。
【0023】
次に、文献や、標準物質の測定によって、分解したスペクトルの結合エネルギーがこれまで知られているどの化合物のものと最も近いかを判断し、スペクトルの同定を行う。
例えば、3aがMgOのスペクトルとすると、分析領域におけるMgOのMg全体に対する原子分率は、(3aのピークでの面積1)/(Mg全体のスペクトルの面積1)として、容易に求められる。
【0024】
更に、他の元素との原子分率を求めるには、装置関数や、感度係数などが必要であるが、いずれもX線光電子分光法に於ては、既にH以外の表面原子組成の定量法として広く行なわれている方法を容易に適用できる。
また本発明の方法によって表面処理された材料表面に残存する表面酸化膜厚はグロー放電発光分光法 (Glow Discharge Optical Emission Spectroscopy:GD−OES)(以下、GD−OESと略称)によるデプスプロファイル (depth profile ) の測定によって、比較的容易に確認することが可能である。
【0025】
【実施例】
厚さ1mmのMg含有Al合金薄板(4.5 wt.%−Mg含有合金(5182(JIS規格)))の表面に形成された水溶性酸化物を除去する目的で、該合金薄板を、前処理として、珪酸ソーダー系の脱脂剤(FC−315(日本パーカー製))2%で温度70℃の溶液に浸漬して5〜50mg/m2 除去した後、水洗し、本処理として、処理水温度50〜90℃、不純物総含有濃度が50〜120ppm のイオン交換水中で、15sec 浸漬した後、乾燥処理して試験片とした。アルカリ脱脂での除去量測定は処理前後の重量差より求めた。また、各試験片の表面酸化膜厚はGD−OESによるデプスプロファイルの結果より求めた。(尚、GD−OESによって決定された膜厚は、直径数mm程度の表面領域の平均値である。)処理前後の材料の表面から5nmの深さ迄のMgの化学状態別での原子組成の変化をX線光電子分光法(以下、XPSと略称)によって測定し、更に処理した試料を表1に示す様な条件で暴露試験を行った。結果を表2に示す。尚、同様な条件で噴霧処理も行ったが、ほぼ同様の結果を得た。
【0026】
各試料について、XPSによって測定した材料の表面から5nmの深さ迄のMg2p準位のスペクトルデータのピーク分離を行ったところ、いずれの試料においても、金属MgまたはMgOのピークのみが観測された。
本発明の処理方法で処理したものは、前処理によって、表面の油脂成分は完全に除去されているので、色調むらが発生することはなく、また本処理によって、材料表面の水溶性化合物が選択的に除去されるので、本発明の処理を行った試料は、無処理材に較べて、表面のMgO中のMg濃度が大幅に減少していることがXPSの解析結果から解った。以上の結果から、表面のMgOを形成しているMgの原子分率が、同領域のHを除く全元素の10 at.%以下であれば、何れも良好な経時劣化耐性を示すことが明らかである。
【0027】
次に、本発明の条件より外れた条件で、処理された材料に関して比較例として説明する。前処理として、アルカリ脱脂での除去量が50mg/m2 以上になった材料(比較例1)はその後の本処理で、本発明の条件内で処理しても、色調むらは発生しないものの、経時劣化度は良くないことが分かる。これは酸化膜厚が、1nmと極薄になっていることからも容易に分かるように、前処理の段階で殆どの酸化膜が溶出してしまい、合金表面の金属マグネシウムが濃縮した層(Mg総量:20 at.%)が露出してしまい、処理後に金属マグネシウムが酸化されて、再び殆どがMgO(20 at.%)となってしまったためであることがXPSの結果から判る。
【0028】
また前処理は適切(除去量:36mg/m2 )でも、本処理の処理水がpH4(比較例2)、pH9(比較例3)と本発明の条件を外れた処理板では比較例1と同様に、色調むらは発生しないものの、経時劣化度は良くないことがわかる。これは酸化被膜の膜厚が1nmと極薄になっていることからも容易に分かるように、前処理では油脂成分が適切に除去されたものの、その後の本処理で、前処理の時には残存していた酸化膜がすべて無差別に溶出・除去されてしまい、比較例1の場合と同様に、表面に合金層が露出した部分が多くなり、合金層中のMgが処理後に、再び急速に酸化マグネシウムを形成するためと考えられる。
【0029】
また前処理のアルカリ脱脂による除去量が、5mg/m2 以下のもの(比較例4)はその後の本処理で、本発明の条件内で適切な処理をしても、色調むらが発生し、経時劣化耐性も劣る。これは酸化被膜の膜厚が10nmと比較的厚いことからも判るように、前処理で十分に油脂成分が除去できなかったために、その後の本処理でも、油脂成分が付着したままの部分のMgOは撥水のために十分除去できず、MgO中に含まれるMgが16 at.%も残っているためであると考えられる。
【0030】
さらに比較例5に示すように、比較例4と同様な前処理(アルカリ脱脂による除去量:5mg/m2 以下)を施し、本処理の条件が、pH4と本発明の条件外の場合でも、色調むらが発生しない場合もある。これは酸化膜厚が1nmであることからも解るように、前処理によっては十分に油脂成分が除去されなかったものの、その後の本処理の条件が、酸洗の場合に近く、水溶性のMgOだけでなく、前処理で十分除去できなかった油脂成分も含めて、すべての酸化膜成分が除去されてしまったためである。しかしながら、この様な条件では、比較例1〜3の場合と同様に合金層が露出してしまい、経時劣化耐性は劣る結果になることが判る。
【0031】
また比較例6に示す様に、適切な条件で前処理を行っても、本処理の処理水に含まれる不純物総量が100ppm を越える場合には、表面の油脂成分は除去されるために、色調むらは発生しないが、その後の本処理では、不純物が表面に急速に付着して、水溶性化合物の溶出が殆ど進まないために、酸化膜厚も厚く(6nm)、また表面のMgO中に含まれるMgも11 at.%と本発明の範囲外となるために、経時劣化耐性が劣っている。
【0032】
さらに比較例7に示す様に、前処理においても、除去量が少なく、また本処理においても処理水に含まれる不純物総量が100ppm を越える場合には、前処理で、油脂成分も除去されず、また本処理においても、MgOが十分除去できないために、色調むらが発生し、経時劣化耐性も劣る結果となる。
また比較例8に示した様に、無処理材に関しては、表面のMgOを構成するMgが20 at.%存在するので、経時劣化耐性は劣るが、色調むらに関しては、むらがあるものとないものがある。これは材料によって、油脂成分の付着の不均一性が異なるために発生する現象で、本発明の方法とは直接関係がない。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、材料表面に形成されている表面層中に存在する各種の化合物の内で、表面保護などの為に有用な難水溶性化合物層を損なうことなく、吸湿性等の性質を有し、材料の表面経時劣化の上で問題となる水溶性化合物のみを選択的に除去し、より安定且つ高機能性表面を有する材料を簡便且つ安価に製造することが可能である。また、本発明の方法によって製造された合金は、経時劣化耐性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】X線光電子分光法によるMgを含有したAl合金表面のMg2p状態でのスペクトルの模式図である。
【符号の説明】
1…測定された光電子スペクトル
2…バックグラウンド(非弾性散乱光電子成分等)
3…ピーク分離フィッティングによる存在状態毎に分離されたスペクトル
3a…MgO成分(水溶性化合物成分)
3b…MgAl2 O4 (スピネル)成分(難溶性化合物成分)
3c…金属的Mg(合金成分)(難溶性化合物成分)
4…3のそれぞれの成分に対応するフィッティング曲線
【表1】
【表2】
Claims (6)
- 水溶性化合物を形成するMgを含有するAl−Mg−X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)の作製過程、あるいは作製後の使用環境下で、合金表面に形成された水溶性化合物を除去する方法であって、珪酸ソーダー系脱脂剤を用いて該合金の表面層を5〜50mg/m2除去した後、pHが5から8であり且つ不純物元素の総含有量濃度が100ppm以下である水に浸漬するか、または、該水を該合金に噴霧して、合金表面に形成された水溶性化合物のみを選択的に溶出・除去することを特徴とする合金表面の処理方法。
- 水溶性化合物を形成するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)の表面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合物であることを特徴とする請求項1記載の合金表面の処理方法。
- 水溶性化合物を形成するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)であって、該合金の表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有される該Mgの原子分率が、該深さ領域に存在するHを除く全元素に対して10at.%以下であることを特徴とする表面経時劣化耐性に優れた合金。
- 水溶性化合物を形成するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)の表面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合物であることを特徴とする請求項3記載の表面経時劣化耐性に優れた合金。
- 水溶性化合物を形成するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)を、珪酸ソーダー系脱脂剤を用いて表面層を5〜50mg/m2除去した後、pHが5から8であり且つ不純物元素の総含有量濃度が100ppm以下である水に浸漬するか、または、その水を該合金に噴霧して、該合金の表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物を溶出・除去し、該深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有される該Mgの原子分率が、Hを除く全元素に対して10at.%以下にしたことを特徴とする表面経時劣化耐性に優れた合金。
- 水溶性化合物を形成するMgを含有するAl-Mg-X合金(ここで、X=Si、Cu、Zn)の表面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合物であることを特徴とする請求項5記載の表面経時劣化耐性に優れた合金。
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