JPH10183325A - 溶融めっき時のエッジオーバーコート防止方法及び装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガスワイピングノズルから噴射される噴流の
うち、鋼帯幅方向両端部の外側領域にある噴流を鋼帯に
向かう変向流とし、めっきムラの発生なくエッジオーバ
ーコートを防止し、板幅方向に関してめっき付着量が均
一化された溶融めっき鋼帯を得る。 【解決手段】 溶融めっき浴４から引き上げられた鋼帯
１の両面にガスワイピングノズル８からの噴流９を吹き
付け、溶融めっき付着量を調整する際、ガスワイピング
ノズル８と同じ高さに設けられた鋭角的な外側幅角度を
もつ補助ノズル１０から、噴流９よりも高圧力の噴流１
１を鋼帯１の板幅方向中央部に向けて噴射させる。ガス
ワイピングノズル８の噴射口両端部からの噴流９は、補
助ノズル１０の側面に衝突した後、鋼帯１の板幅方向端
部に向かう変向流１２となる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、めっき付着量が板幅方
向に均一化された溶融めっき鋼板が製造されるように、
めっきムラの発生なくエッジオーバーコートを防止する
方法及び装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】溶融めっきラインでは、図１に示すよう
に、めっき原板である鋼帯１を還元性雰囲気に維持され
た還元焼鈍炉２に搬送し、鋼帯１の表面を活性化した
後、還元焼鈍炉からスナウト３を経て溶融めっき浴４に
送り込んでいる。鋼帯１は、溶融めっき浴４に浸漬され
ているシンクロール５を周回し、進行方向を上向きに変
更される。次いで、鋼帯１は、サポートロール６を経由
して溶融めっき浴４から送り出され、ガスワイピング装
置７で付着量が調整される。溶融めっきされた鋼帯１
は、必要に応じて合金化熱処理され、次工程に搬送され
る。ガスワイピング装置７では、図２に示すように鋼帯
１の表面側及び裏面側に配置したガスワイピングノズル
８から噴射された噴流９を鋼帯１に吹き付けることによ
り、鋼帯１に付着している過剰な溶融めっき金属を絞り
取り、めっき付着量を調整している。このとき、鋼帯１
に衝突した噴流９の大部分は、鋼帯１の幅方向に沿って
流れ、板幅方向端部から逸散する。そのため、鋼帯１の
板幅方向端部では、噴流９による溶融めっき金属の絞り
取り作用が弱まり、結果として鋼帯１の板幅方向中央部
に比較して板幅方向端部でめっき付着量が多くなるエッ
ジオーバーコートが発生し、規格外製品が増加する傾向
にある。

【０００３】ところで、ライン速度を高速化させ溶融め
っきの生産性を向上させる要求が近年高まってきてい
る。ライン速度を高速化すると、鋼帯１が溶融めっき浴
４から引き上げられた際、溶融めっき浴４から持ち上げ
られる溶融めっき金属の量が増加する。ガスワイピング
ノズル８から噴射される噴流９を増加させることによ
り、過剰な溶融めっき金属を絞り取ることができる。し
かし、噴流９の流量を増加させても、エッジオーバーコ
ートが残ってしまう。そこで、ガスワイピングノズルと
同じ高さ又は下方に配置した補助ノズルから鋼帯の板幅
方向端部に気体を吹き付ける方法（特開平３−２８７７
５２号公報），サイドノズルから鋼帯の板幅方向端部に
気体を吹き付けた後、流量調整板を備えた主ノズルでガ
スワイピングする方法（特開平６−１５８２６１号公
報），鋼板中央部方向に対して傾斜させた補助ノズルか
ら鋼帯の板幅方向端部に気体を吹き付ける方法（特開平
６−２５６９２３号公報）等によってエッジオーバーコ
ートの発生を防止することが提案されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平３−２
８７７５２号公報記載のようにガスワイピングノズルと
同じ高さに配置した補助ノズルから水平方向に気体を噴
射させると、ガスワイピングノズルからの噴流が補助ノ
ズルからの噴流によって弱められることがある。また、
ガスワイピングノズルよりも下方、或いは水平方向より
も４５度までの範囲で補助ノズルから気体を噴射する
と、ガスワイピングノズルによる絞り取り作用が働かな
い領域であるため、補助ノズルからの噴流により板幅方
向端部から流動した溶融めっき金属が鋼帯表面にめっき
ムラを発生させる原因ともなる。他方、特開平６−１５
８２６１号公報，特開平６−２５６９２３号公報のよう
にサイドノズル又は補助ノズルを配置した場合でも、サ
イドノズル又は補助ノズルからの噴流が作用する領域
は、ガスワイピングノズルによる絞り取り作用が働かな
い領域である。そのため、補助ノズルからの噴流により
板幅方向端部から流動した溶融めっき金属によって同様
なめっきムラが鋼帯表面に発生する虞れがある。本発明
は、このような問題を解消すべく案出されたものであ
り、鋭角的な外側幅角度をもつ補助ノズルから高圧力の
噴流を鋼帯の板幅方向中央部に向けて噴射させることに
より、ガスワイピングノズルの噴出口端部から噴射され
た噴流も鋼帯に向かう変向流としてワイピングに利用
し、めっきムラを発生させることなく効率よくエッジオ
ーバーコートを防止することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明のエッジオーバー
コート防止方法は、その目的を達成するため、溶融めっ
き浴から引き上げられた鋼帯の両面にガスワイピングノ
ズルからの噴流を吹き付け、溶融めっき付着量を調整す
る際、ガスワイピングノズルと同じ高さに設けられた鋭
角的な外側幅角度をもつ補助ノズルから、ガスワイピン
グノズルからの噴流よりも高圧力の噴流を鋼帯の板幅方
向中央部に向けて噴射し、ガスワイピングノズルの噴射
口両端部からの噴流を補助ノズルの側面に衝突させて鋼
帯の板幅方向端部に向かう変向流にすることを特徴とす
る。また、エッジオーバーコート防止装置は、溶融めっ
き浴から引き上げられた鋼帯の両面に対向配置され、鋼
帯の板幅よりも幅広の噴出口をもつガスワイピングノズ
ルと、ガスワイピングノズルと同じ高さ且つガスワイピ
ングノズルの噴出口の両端部からの噴流が側面に衝突す
る位置で鋼帯の板幅方向両端に対向して配置され、鋭角
的な外側幅角度をもつ補助ノズルとを備えている。

【０００６】

【実施の形態】本発明に従った装置は、図３に示すよう
にめっき浴４から送り出された鋼帯１の表面側及び裏面
側にガスワイピングノズル８を配置すると共に、ガスワ
イピングノズル８と同じ高さで且つ板幅方向両端部の鋼
帯１の外側位置に補助ノズル１０を配置している。補助
ノズル１０としては、図４に示すように鋭角的な外側幅
角度θをもつノズルが使用される。ガスワイピングノズ
ル８は、主として鋼帯１に付着している過剰な溶融めっ
き金属を絞り取る噴流９を鋼帯１の表裏両面に向けて吹
き付ける。ガスワイピングノズル８の幅は、鋼帯１の板
幅変更に対応し且つ均一な噴流８を板幅方向全域に作用
させるように、通常は鋼帯１の板幅よりも大きく設定さ
れている。そのため、鋼帯１の表面側及び裏面側に吹き
付けられた噴流９が衝突する領域が鋼帯１の幅方向外側
に生じる。

【０００７】本発明では、この領域に補助ノズル１０を
配置し、ガスワイピングノズル８からの噴流９よりも高
圧力の噴流１１を鋼帯１の板幅方向中央部に向けて噴射
させる。鋼帯１の板幅方向端部に付着している過剰な溶
融めっき金属は、噴流１１により板幅方向中央部に流動
する。噴流９よりも噴流１１の圧力が高いため、噴流１
１に衝突した噴流９も、噴流１１に引き摺られて鋼帯１
に向かい、板幅方向端部に付着している過剰な溶融めっ
き金属を流動させる作用を呈する。更に、補助ノズル１
０の外側が先端に向かって鋭角的な外側幅角度θで先細
になっているため、ガスワイピングノズル８の噴出口両
端部から噴射された噴流９は、図５に示すように補助ノ
ズル１０の側面に衝突し、鋼帯１の板幅方向中央部に向
かう流れ１２となる。この変向流１２は、補助ノズル１
０からの噴流１１が広がることを抑え、集中した噴流１
１を鋼帯１に衝突させる。変向流１２も、鋼帯１に向か
って流れるため、板幅方向端部に付着している過剰な溶
融めっき金属を流動させる作用を呈する。外側幅角度θ
は、３０度以内に設定することが好ましい。外側幅角度
θが３０度を超えると、噴流１１の広がりを抑制する作
用が低下する。

【０００８】このように噴流９及び１１を鋼帯１に吹き
付けるとき、ガスワイピングノズル８の噴出口両端部か
ら噴射された噴流９も変向流１２となって鋼帯１に向か
い、幅方向端部に付着している溶融めっき金属の絞り取
りに利用される。そのため、エッジオーバコートが効率
よく防止され、板幅方向に関してめっき付着量が均一な
溶融めっき製品が得られる。また、鋼帯１の両面に対向
配置されたガスワイピングノズル８の噴出口両端部から
噴射された噴流９は、変向流１２となるので、互いに衝
突しない。したがって、噴流９の衝突によって生じる衝
撃音が少なく、生産性を上げるため噴流９の流量を大き
く設定した場合でも作業環境の悪化が防止される。

【０００９】

【実施例】高さ１ｍｍ，幅２０００ｍｍの噴射口をもつ
ガスワイピングノズル８を、溶融めっき浴４の湯面から
高さ２００ｍｍの位置で鋼帯１の表面側及び裏面側に配
置し、鋼帯１からガスワイピングノズル８までの距離を
２０ｍｍに設定した。また、高さ１ｍｍ，幅１０ｍｍの
噴射口をもち外側幅角度θが２０度の補助ノズル１０
を、ガスワイピングノズル８と同じ高さで鋼帯１から２
０ｍｍ離れた位置で、鋼帯１の両端部に対向配置した。
板厚０．８ｍｍ，板幅１２００ｍｍの鋼帯１をライン速
度１００ｍ／分で溶融めっき浴４に導入し、シンクロー
ル５を経て垂直方向に引き上げた。この鋼帯１に、ガス
ワイピングノズル８から圧力０．２５ｋｇｆ／ｃｍ² で
噴流９を、補助ノズル１０から圧力０．３０ｋｇｆ／ｃ
ｍ² で噴流１１を吹き付け、過剰な溶融めっき金属を鋼
帯１から絞り取った。また、比較のため、補助ノズル１
０から噴流１１を吹き付けないことを除き、他は同じ条
件下で鋼帯１をガスワイピングした。

【００１０】ガスワイピングノズル８及び補助ノズル１
０の双方から噴流９，１１を吹き付けて溶融めっき金属
を絞り取った場合、溶融めっき金属を付着量６０ｇ／ｍ
² まで絞ることができた。また、鋼帯１の板幅方向に関
するめっき付着量のバラツキを±１０ｇ／ｍ² の範囲に
抑えることができ、めっきムラも発生しなかった。これ
に対し、ガスワイピングノズル８からの噴流９のみを吹
き付けた場合、溶融めっき金属を同様に付着量６０ｇ／
ｍ² まで絞ることができた。しかし、鋼帯１の板幅方向
に関するめっき付着量のバラツキを±２０ｇ／ｍ² の範
囲に抑えることが限界で、板幅方向端部のめっき付着量
が多くなりがちであった。更に、補助ノズル１０を配置
することなくガスワイピングした場合には、ガスワイピ
ングノズル８の噴出口両端部から噴射された噴流９が互
いに衝突し、大きな衝撃音が発生した。

【００１１】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、溶融めっき金属を絞り取るガスワイピングノズルと
同じ高さで且つ鋼帯の板幅方向両端部に対向配置した補
助ノズルから、ガスワイピングノズルからの噴流よりも
高圧力の噴流を鋼帯の板幅方向中央部に向けて吹き付け
ている。補助ノズルからの噴流は、ガスワイピングノズ
ルの噴射口両端部からの噴流を鋼帯に向かう流れに変向
させ、板幅方向両端部に付着している過剰な溶融めっき
金属の絞り取りに利用している。その結果、めっきムラ
を発生させることなくエッジオーバーコートを防止し、
溶融めっき付着量を高精度で調整することが可能とな
る。更に、鋼帯の両側に配置されているガスワイピング
ノズルの噴射口両端部からの噴流が鋼帯に向かう変向流
となるので、互いに衝突することがない。そのため、噴
流の衝突に起因した騒音が少なく、作業環境の悪化も防
止される。

【図面の簡単な説明】

【図１】 ガスワイピング装置を付設した溶融めっき装
置

【図２】 鋼帯に噴流を吹き付けているガスワイピング
ノズル

【図３】 本発明に従って補助ノズルを組み込んだガス
ワイピング装置

【図４】 ガスワイピングノズルと補助ノズルとの位置
関係

【図５】 補助ノズルにより発生した変向流が鋼帯に向
かって流れている状態

【符号の説明】

１：鋼帯 ２：還元焼鈍炉 ３：スナウト ４：
溶融めっき浴 ５：シンクロール ６：サポートロ
ール ７：ガスワイピング装置 ８：ガスワイピン
グノズル ９：ガスワイピングノズルからの噴流
１０：補助ノズル １１：補助ノズルからの噴流 １２：変向流 θ：補助ノズルの外側幅角度

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 溶融めっき浴から引き上げられた鋼帯の
   両面にガスワイピングノズルからの噴流を吹き付け、溶
   融めっき付着量を調整する際、ガスワイピングノズルと
   同じ高さに設けられた鋭角的な外側幅角度をもつ補助ノ
   ズルから、ガスワイピングノズルからの噴流よりも高圧
   力の噴流を鋼帯の板幅方向中央部に向けて噴射し、ガス
   ワイピングノズルの噴射口両端部からの噴流を補助ノズ
   ルの側面に衝突させて鋼帯の板幅方向端部に向かう変向
   流にすることを特徴とする溶融めっき時のエッジオーバ
   ーコート防止方法。
2. 【請求項２】 溶融めっき浴から引き上げられた鋼帯の
   両面に対向配置され、鋼帯の板幅よりも幅広の噴出口を
   もつガスワイピングノズルと、ガスワイピングノズルと
   同じ高さ且つガスワイピングノズルの噴出口の両端部か
   らの噴流が側面に衝突する位置で鋼帯の板幅方向両端に
   対向して配置され、鋭角的な外側幅角度をもつ補助ノズ
   ルとを備えているエッジオーバーコート防止装置。