JPH10174583A - 酸化酵素、その製造方法及び用途 - Google Patents

酸化酵素、その製造方法及び用途

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JPH10174583A
JPH10174583A JP33400496A JP33400496A JPH10174583A JP H10174583 A JPH10174583 A JP H10174583A JP 33400496 A JP33400496 A JP 33400496A JP 33400496 A JP33400496 A JP 33400496A JP H10174583 A JPH10174583 A JP H10174583A
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JP
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polyphenol oxidase
genus
polyphenol
oxidase according
sagenomella
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JP33400496A
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English (en)
Inventor
Takashi Echigo
貴 愛知後
Tadashi Yoneda
正 米田
Hirofumi Aoki
裕文 青木
Ritsuko Ono
律子 大野
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Novo Nordisk AS
Original Assignee
Novo Nordisk AS
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルカリ側に至適反応pHを有する新規なポ
リフェノールオキシダーゼ、その生産微生物及び用途の
開発、提供。 【解決手段】 スティルベラ、サゲノメラ、スタキリジ
ウム属菌類が生産するポリフェノールオキシダーゼ。該
酵素を用いる着色物質の処理、紙、パルプもしくは繊維
の処理、微生物もしくはウィルスの処理、または、洗浄
処理等の方法や脱酸素剤、洗剤組成物の提供。スティル
ベラ・sp.SD3101、サゲノメラ・sp.SD3102、スタ
キリジウム・sp.SD3103。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリ側に至適
反応pHを有する新規なポリフェノールオキシダーゼ及
びこのようなポリフェノールオキシダーゼを菌類培養物
から製造する方法と利用方法に関する。さらに詳しく言
えば、本発明はpH8近辺のアルカリ側に至適反応pH
を有する新規なポリフェノールオキシダーゼ、そのポリ
フェノールオキシダーゼを生産する微生物、そのポリフ
ェノールオキシダーゼの製造方法、及び着色物質、微生
物もしくはウィルス、紙、パルプ、または繊維の処理、
洗浄等の分野における利用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、担子菌類、不完全菌類等の糸状菌
が生産するポリフェノールオキシダーゼやラッカーゼに
よるポリフェノール酸化作用が知られている。しかしな
がら、従来のポリフェノ−ル酸化酵素はアルカリ側で活
性が著しく低いため、実際の用途が限られていた。例え
ば、ポリフェノール酸化酵素の漂白への利用について
は、WO91−05839、EP580707、DE4
008894、特開昭64−60693などに記載され
ている。しかしながら洗濯などの洗浄操作は通常アルカ
リpHで行われ、特に過酸化水素存在下での酸化漂白を
同時に行う場合には過酸化水素の漂白作用を促進するた
めにもアルカリpHでの洗浄操作が望ましい。従って、
こうした用途にポリフェノールオキシダーゼを用いる場
合、酸性pHに至適反応pHを有する従来の酵素では実
質的な利用は困難であった。
【0003】ポリフェノールを構造部分に有する天然の
着色物質として、フラボノイド系、キサントン系、メラ
ニン系などの植物色素やリグニンが知られており、ポリ
フェノールオキシダーゼはこれらの天然物に対する漂白
作用を有する。また、毒性が問題になっているジクロロ
フェノール、トリクロロフェノールをもポリフェノール
オキシダーゼは反応基質にできる。それ故に、これらの
天然物や非天然物を含有する廃水処理においてもポリフ
ェノールオキシダーゼは有用である。しかしながら従来
の酵素では酸性pHから中性pHに至適反応pHを有す
るためアルカリpHでの利用は実質的に困難であり、こ
のことがポリフェノールオキシダーゼの産業上の利用範
囲を狭くする要因となっていた。
【0004】一方、動植物由来のポリフェノールオキシ
ダーゼの中には、pH8以上の高pHに至適pHを有す
るものが知られている(Comp. Biochem. Physiol.,199
2,102B(4)891-896 : Zhongguo Nongye Huaxue Huizhi,1
991,29(2),177-185 : Agric.Biol. Chem.,1991,55(1),1
3-17)。しかしながら、これらのポリフェノールオキシ
ダーゼを動植物の組織から安定かつ安価に生産すること
は困難であり、産業上の利用に供するためには微生物由
来のポリフェノールオキシダーゼが望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、アルカリ側に至適反応pHを有するポリフ
ェノールオキシダーゼおよびこのようなポリフェノール
オキシダーゼを菌類培養物から製造する方法を提供する
ことにある。本発明が解決しようとする別の課題は、ア
ルカリ側に至適反応pHを有するポリフェノールオキシ
ダーゼを用いることにより、アルカリpH域での実用的
な酵素的酸化を達成して、ポリフェノールオキシダーゼ
の利用分野の拡大に寄与することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らはポリフェノ
−ル物質の酸化をアルカリpHにおいて触媒する菌体外
生産物を広範な微生物において鋭意探索を行い、不完全
菌類であるスティルベラ(Stilbella )属、サゲノメラ
Sagenomella )属、あるいはスタキリジウム(Stachy
lidium)属に属する菌株がpH8近辺のアルカリ側に至
適反応pHをする目的の酵素を菌体外に生産することを
見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】すなわち本発明は以下のものを提供するも
のである。 [1] 以下の特性: (1)作用:ポリフェノールを酸化する; (2)至適反応pH:pH8.2付近に至適反応pHを
有する; (3)至適反応温度:50℃付近に至適反応温度を有す
る; (4)分子量:GFC分析により測定した分子量が約7
6,000; (5)等電点:等電点電気泳動により測定した等電点が
約6.6;を有するポリフェノールオキシダーゼ。 [2] スティルベラ(Stilbella )属菌類が生産す
る、前記[1]記載のポリフェノールオキシダーゼ。 [3] スティルベラ(Stilbella )属菌類がスティル
ベラ・sp. (Stilbellasp. )SD3101(受託番号FERM P-
15963)である前記[2]記載のポリフェノールオキシ
ダーゼ。
【0008】[4] 以下の特性: (1)作用:ポリフェノールを酸化する; (2)至適反応pH:pH8.5付近に至適反応pHを
有する; (3)至適反応温度:50℃付近に至適反応温度を有す
る; (4)分子量:GFC分析により測定した分子量が約3
3,000; (5)等電点:等電点電気泳動により測定した等電点が
約5.9;を有するポリフェノールオキシダーゼ。 [5] サゲノメラ(Sagenomella )属菌類が生産す
る、前記[4]記載のポリフェノールオキシダーゼ。 [6] サゲノメラ(Sagenomella )属菌類がサゲノメ
ラ・sp. (Sagenomellasp. )SD3102(受託番号FERM P-
15964)である前記[5]記載のポリフェノールオキシ
ダーゼ。
【0009】[7] 以下の特性: (1)作用:ポリフェノールを酸化する; (2)至適反応pH:pH8.2付近に至適反応pHを
有する; (3)至適反応温度:50℃付近に至適反応温度を有す
る; (4)分子量:GFC分析により測定した分子量が約5
5,000; (5)等電点:等電点電気泳動により測定した等電点が
約7.0;を有するポリフェノールオキシダーゼ。 [8] スタキリジウム(Stachylidium)属菌類が生産
する、前記[7]記載のポリフェノールオキシダーゼ。 [9] スタキリジウム(Stachylidium)属菌類がスタ
キリジウム・sp. (Stachylidium sp.)SD3103(受託番
号FERM P-15965)である前記[8]記載のポリフェノー
ルオキシダーゼ。
【0010】[10] スティルベラ(Stilbella )属
菌類を培養することを特徴とする前記[1]記載のポリ
フェノールオキシダーゼの製造方法。 [11] スティルベラ(Stilbella )属菌類がスティ
ルベラ・sp. (Stilbella sp. )SD3101(受託番号FERM
P-15963)またはその変異株である前記[10]記載の
ポリフェノールオキシダーゼの製造方法。 [12] サゲノメラ(Sagenomella )属菌類を培養す
ることを特徴とする前記[4]記載のポリフェノールオ
キシダーゼの製造方法。 [13] サゲノメラ(Sagenomella )属菌類がサゲノ
メラ・sp. (Sagenomella sp. )SD3102(受託番号FERM
P-15964)またはその変異株である前記[12]記載の
ポリフェノールオキシダーゼの製造方法。 [14] スタキリジウム(Stachylidium)属菌類を培
養することを特徴とする前記[7]記載のポリフェノー
ルオキシダーゼの製造方法。 [15] スタキリジウム(Stachylidium)属菌類がス
タキリジウム・sp. (Stachylidium sp.)SD3103(受託
番号FERM P-15965)またはその変異株である前記[1
4]記載のポリフェノールオキシダーゼの製造方法。
【0011】[16] スティルベラ・sp. (Stilbell
a sp. )SD3101(受託番号FERM P-15963)。 [17] サゲノメラ・sp. (Sagenomella sp. )SD31
02(受託番号FERM P-15964)。 [18] スタキリジウム・sp. (Stachylidium sp.
SD3103(受託番号FERM P-15965)。 [19] 洗浄剤、洗剤、または界面活性剤、及び前記
[1]〜[9]のいずれか一項に記載のポリフェノール
オキシダーゼを含むことを特徴とする洗剤組成物。 [20] 前記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の
ポリフェノールオキシダーゼを作用させることを特徴と
する着色物質の漂白処理方法。 [21] 前記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の
ポリフェノールオキシダーゼを作用させることを特徴と
する、微生物またはウィルスの処理方法。 [22] 前記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の
ポリフェノールオキシダーゼを作用させることを特徴と
する紙、パルプ、または繊維の処理方法。 [23] 前記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の
ポリフェノールオキシダーゼを用いることを特徴とする
脱酸素方法。
【0012】以下に本発明を詳細に説明する。 [生産菌]本発明のポリフェノールオキシダーゼを得る
ために用いるスティルベラ(Stilbella )属に属する菌
株にはスティルベラ・アニュラタ(Stilbella annulat
a)、スティルベラ・ブルビコーラ(Stilbella bulbico
la )、スティルベラ・エリスロセファラ(Stilbella e
rythrocephala)、スティルベラ・ファラベセンス(Sti
lbella flavescens)、スティルベラ・フラビペス(Sti
lbella flavipes)、スティルベラ・サーモフィラ(Sti
lbella thermophila )、スティルベラ・sp.(Stilb
ella sp. )が挙げられるが、好ましくはスティルベラ
・sp.SD3101(Stilbella sp. SD3101)(工業
技術院生命工学工業技術研究所にFERM P-15963として寄
託)を用いる。
【0013】また、本発明のポリフェノールオキシダー
ゼを得るために用いるサゲノメラ(Sagenomella )属に
属する菌株にはサゲノメラ・ビリデ(Sagenomella viri
de)、サゲノメラ・sp.(Sagenomella sp. )が挙げ
られるが、好ましくはサゲノメラ・sp.SD3102
Sagenomella sp. SD3102 )(工業技術院生命工学工
業技術研究所にFERM P-15964として寄託)を用いる。ま
た、本発明のポリフェノールオキシダーゼを得るために
用いるスタキリジウム(Stachylidium)属に属する菌株
にはスタキリジウム・ビカラ(Stachylidiumbicolo
r)、スタキリジウム・セオブロメ(Stachylidium theo
bromae )、スタキリジウム・sp.(Stachylidium s
p.)が挙げられるが、好ましくはスタキリジウム・s
p.SD3103(Stachylidium sp. SD3103 )(工業
技術院生命工学工業技術研究所にFERM P-15965として寄
託)を用いる。
【0014】本発明での代表的な菌株について、ポテト
キャロット寒天培地及びマルトエキス寒天培地上で、25
℃で14〜60日間培養したときの集落の色調、形状及び分
生子、分生子形成構造等の形態観察を行った。その結
果、アクレモニウム属(Acremonium)に類似した白色、
粘質状の集落を形成し、分生子柄束(シンネマ)を形成
し、長径 3〜 5μmの楕円形の小型分生子を形成する糸
状菌をスティルベラ・sp.SD3101(Stilbella
sp. SD3101)と命名し、また、同様に、アクレモニウム
属(Acremonium)に類似した白色、粘質状の集落を形成
し、分生子柄束(シンネマ)を形成せず連鎖状の分生子
を形成し、長径 2〜 4μmの楕円形〜レモン形の小型分
生子を形成する糸状菌をサゲノメラ・sp.SD310
2( Sagenomella sp. SD3102 )、さらには、暗褐色〜
黒色の粘質状集落を形成し、輪生した分性子柄とフィア
ロ型分性子を有するが分性子座は形成しない糸状菌をス
タキリジウム・sp.SD3103(Stachylidium sp.
SD3103 )と命名した。
【0015】[酵素の調製]本発明のポリフェノールオ
キシダーゼは、前記のスティルベラ属またはサゲノメラ
属、スタキリジウム属に属する菌株及びその変異株を培
養して得られる他、遺伝子操作菌を利用して調製するこ
とも可能である。すなわち、該ポリフェノールオキシダ
ーゼをコードするDNAが宿主生物での酵素発現機能を
有する適当なプロモーター、及びオペレーター、ターミ
ネーターDNAと共に、宿主生物中でベクターを複製す
るための複製開始点を有するDNAベクターに挿入され
た発現ベクターを用いて形質転換された宿主細胞、また
は該ポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAが
宿主生物での酵素発現機能を有する適当なプロモータ
ー、及びオペレーター、ターミネーターDNAと共に、
宿主細胞DNAにインテグレーションせしめることで形
質転換された宿主細胞を、ポリフェノールオキシダーゼ
の発現できる条件のもとに培養し、さらにポリフェノー
ルオキシダーゼを培地から回収する方法によっても生産
される。
【0016】また、本発明のポリフェノールオキシダー
ゼは、該ポリフェノールオキシダーゼをコードするDN
A配列等を元に得られる該ポリフェノールオキシダーゼ
のアミノ酸配列に関する知見を元に、従来の酸性側に至
適反応pHを有するポリフェノールオキシダーゼのDN
Aを改変するプロテイン・エンジニアリングの手法によ
って生産されるものであってもよい。本発明のポリフェ
ノールオキシダーゼをコードするDNA断片の取得のた
めには、例えば本発明の菌株からのcDNAまたはゲノ
ムライブラリィを分離源とし、本発明のポリフェノール
オキシダーゼのアミノ酸配列もしくは既知のポリフェノ
ールオキシダーゼのアミノ酸配列に基づいて合成された
オリゴヌクレオチドをプローブとして目的のDNA断片
を特定するか、または酵素活性を発現するクローンを選
択するか、または該ポリフェノールオキシダーゼに対す
る抗体と反応する蛋白質を生産するクローンを選択する
といった常法によって行うことができる。
【0017】本発明のポリフェノールオキシダーゼを得
るための培養は、通常用いられる合成培地や有機炭素源
及び有機窒素源を含む栄養培地が使用可能である。ま
た、Cu2+イオンを金属塩として0.001mMから1
0mM、好ましくは0.01mMから1mMの濃度で添
加することが望ましい。培養温度は10〜60℃、好ま
しくは20〜40℃である。また、適当な培養時間は2
0時間から250時間、好ましくは50時間から150
時間である。分泌されたポリフェノールオキシダーゼは
培地中から周知の方法で回収できる。この回収手順に
は、遠心分離もしくはろ過、膜分離により培地から細胞
を分離し、例えばイオン交換クロマトグラフィー等によ
るクロマトグラフィーを行うという一連の手順が含まれ
る。また、限外ろ過膜を用いる膜濃縮も有効である。
【0018】[酵素の性質]本発明のポリフェノールオ
キシダーゼは5〜11の広いpH範囲で酸化反応を行え
るが、好ましくはpH6〜10、より好ましくはpH7
〜9であり、pH8近辺に至適pHがあり、中性からア
ルカリ性での酸化反応を触媒するという特長を有する
(図1〜図3)。また、pH8で10分間の反応を行っ
た場合の至適温度は50℃付近にあり(図4〜図6)、
さらには、様々な温度で30分間の加熱処理を施した後
の活性は、50℃以下の範囲でほぼ100%の残存活性
を示した(図7〜図9)。さらには、様々なpHのバッ
ファー中で30℃、30分間の処理を施した後の残存活
性は、広範囲のpHにおける安定性を示した(図1
0)。これらの結果は、中性からアルカリ性の広範囲の
pH域で、中低温の様々な溶液中での酸化反応を保証す
る。
【0019】また、本発明のポリフェノールオキシダー
ゼは、従来の酸性側に至適反応pHを有する酵素と共に
組み合わせて用いることも可能である。つまり、従来知
られている酸性側に至適反応pHを有するポリフェノー
ルオキシダーゼと本発明のポリフェノールオキシダーゼ
を組み合わせて用いることで、酸性からアルカリ性の広
範囲のpH域においてポリフェノールオキシダーゼ反応
を行うことが可能となる。このような目的で酵素を混合
して用いるとき、酸性側に至適反応pHを有するポリフ
ェノールオキシダーゼの活性量と本発明のポリフェノー
ルオキシダーゼの活性量の混合比率は、好ましくは1:
10〜10:1、より好ましくは1:3〜3:1であ
る。このようにして広範囲のpH域においてポリフェノ
ールオキシダーゼ反応を達成するためにも、本発明のポ
リフェノールオキシダーゼは有用である。
【0020】[活性測定法]本発明において、ポリフェ
ノール酸化活性の活性測定は25℃において20ppm
のシリンガルダジン(syringaldazine)と100mMの
リン酸カリウムバッファー溶液(pH8.2 )を含む水溶液
中で反応を行い、525nmの吸光度を測定することで
行った。そして、1分間に1μmolのシリンガルダジ
ンを酸化する活性量を1unit(以下Uと略す)と定
義した。
【0021】[分解反応、漂白反応の利用方法]アルカ
リpHに至適反応域を有する新規なポリフェノールオキ
シダーゼの用途としては、例えば、漂白への適用が可能
である。ポリフェノールオキシダーゼの漂白への利用に
ついては、WO91−05839、DE400889
4、特開昭64−60693などに記載されている。し
かしながら洗濯などの洗浄操作は通常アルカリpHで行
われ、特に過酸化水素存在下での酸化漂白を同時に行う
場合には過酸化水素の漂白作用を促進するためにもアル
カリpHでの洗浄操作が望ましい。従って、こうした用
途にポリフェノールオキシダーゼを用いる場合、酸性p
Hに至適反応pHを有する従来の酵素では実質的に利用
は困難であった。本発明のポリフェノールオキシダーゼ
はこうした、アルカリ洗浄、アルカリ漂白分野に酵素の
用途を開くものとして有用である。
【0022】過酸化水素による酸化漂白は洗浄、洗濯に
おいて現在広く用いられている。しかしながら、過酸化
水素は60℃以下の低温でその漂白力が十分ではない。
これを改善するために、過酸前駆体が過酸化水素と共に
用いられているが、40℃以下の低温での漂白力は十分
ではなく、より効果の高い漂白系が求められている。そ
のため、様々な酵素的漂白促進方法が従来より提案され
ている。ここに開示するポリフェノールオキシダーゼ
を、ペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、マ
ンガンペルオキシダーゼ等のペルオキシダーゼ作用を有
する物質の内の1つもしくは複数と共存させることで、
アルカリpHでの酸化漂白を促進することができ、本発
明の有用性は明らかである。
【0023】酸化漂白のために広く用いられている過酸
化水素は高価な酸化剤であり、そして、洗浄剤にしばし
ば用いられている過酸化水素前駆体や過酸前駆体、過酸
はさらに高価な酸化剤である。また、オキシダーゼとそ
の基質を用いることで過酸化水素を酵素的に生成するこ
とも可能だが、こうした過酸化水素発生系もまた高価な
酸化剤と考えることができる。ここに開示するポリフェ
ノールオキシダーゼを、従来より酸化漂白のために用い
られている酸化剤である空気、酸素、オゾン、過酸化水
素、過酸化水素前駆体、過酸前駆体、または過酸を、単
独で、または複数組み合わせて用いることで、酸化漂白
を促進することができる。従って、酸化剤を有効に用い
て酸化漂白を達成できる本発明の有用性は明かである。
【0024】酸化剤の内、過酸化水素前駆体は水に溶解
してパーヒドロキシルイオンを生成するものである。こ
のような物質には、1水和物もしくは4水和物のパーボ
レート、パーカルボネート、過ホウ砂、過ピロリン酸ナ
トリウム、過安息香酸、尿素−H22 反応物、メラミ
ン−H22 反応物、クエン酸過水和物などがあり、特
に好ましくはパーボレート、パーカルボネートである。
またさらには、過酸化水素前駆体としてオキシダーゼ及
びその基質による過酸化水素発生系を用いることもでき
る。このようなオキシダーゼの例は、グルコースオキシ
ダーゼ、アルコールオキシダーゼ、グリセロールオキシ
ダーゼ、アミンオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、
D−アミノ酸オキシダーゼ、アリールアルコールオキシ
ダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、ガラクトースオキシ
ダーゼ、ソルボースオキシダーゼ、ウレートオキシダー
ゼ、キサンチンオキシダーゼ、コレステロールオキシダ
ーゼなどがあり、特に好ましくはグルコースオキシダー
ゼ、アルコールオキシダーゼである。
【0025】また過酸前駆体は、反応性アシル基を有す
る有機化合物もしくはカルボン酸エステル、カルボン酸
無水物、酢酸塩であり、このような物質にはTAED
(tetraacetylethylenediamine)、TAMD(tetraace
tylmethylenediamine )、TAGU(tetraacetylglyco
luril )、DADHT(diacetyldioxohexahydrotriazi
ne)、SNOBS(sodium nonanoyloxybenzene sulfon
ate )、ISONOBS(sodium isononanoyloxybenze
ne sulfonate)、コハク酸無水物、安息香酸無水物、フ
タル酸無水物、PAG(glucose pentaacetate)、キシ
ローステトラアセテートがあり、特に好ましくは、TA
ED、SNOBSである。さらに過酸は、例えばDPD
DA(diperoxydodecanedioic acid)、diperoxyisopht
halic acid、magnesium monoperoxyphthalate hexahydr
ate 、NAPAA(nonylamidoperoxyadipic acid )で
ある。
【0026】本発明のポリフェノールオキシダーゼは、
様々な洗浄剤、洗剤、または界面活性剤と共に用いるこ
とができる。これにより、本発明のポリフェノールオキ
シダーゼを配合した洗浄剤または洗剤組成物が提供され
る。このような洗浄剤または洗剤組成物の代表例は、洗
浄剤または洗剤組成物重量当たり10〜50重量%の界
面活性剤、0〜50重量%のビルダー、1〜50重量%
のアルカリ剤あるいは無機電解質、0.1〜10重量%
の再汚染防止剤、酵素、漂白剤、蛍光染料、ケーキング
防止剤及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくと
も1種以上の配合成分からなる洗浄剤または洗剤組成物
が挙げられる。
【0027】界面活性剤としては石鹸、例えば直鎖また
は分岐鎖のアルキルあるいはアルケニル硫酸塩、アミド
硫酸塩、直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニ
ル基を有し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイ
ド及びブチレンオキサイドのうちの単独あるいは複数成
分が付加したアルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩
のような脂肪族硫酸化物、アルキルスルホン酸塩、アミ
ドスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−オ
レフィン、ビニリデン型オレフィン及び内部オレフィン
の各スルホン酸塩のような脂肪族スルホン酸塩、直鎖ま
たは分岐鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩のような芳
香族スルホン酸塩、直鎖または分岐鎖のアルキル基また
はアルケニル基を有し、エチレンオキサイド、プロピレ
ンオキサイド及びブチレンオキサイドのうちの単独ある
いは複数成分が付加したアルキルまたはアルケニルエー
テルカルボン酸塩またはアミド、α−スルホ脂肪酸塩ま
たはエステル、アミノ酸型界面活性剤、アルキルまたは
アルケニル酸性リン酸エステル、アルキルまたはアルケ
ニルリン酸塩のごときリン酸エステル系界面活性剤、ス
ルホン酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性
剤、直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基
を有し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及
びブチレンオキサイドのうちの単独あるいは複数成分が
付加したアルキルまたはアルケニルエーテルあるいはア
ルコール、直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケ
ニル基を有し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサ
イド及びブチレンオキサイドのうちの単独あるいは複数
成分が付加したポリオキシエチレンアルキルフェニルエ
ーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアル
キレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪
酸グリセリンモノエステル、アルキルまたはアルケニル
アミンオキサイド、テトラアルキルアンモニウム塩型カ
チオン界面活性剤など洗剤組成物として通常配合される
界面活性剤であればいずれも使用可能であり、陰イオン
性界面活性剤の場合の対イオンとしてはナトリウムイオ
ンまたはカリウムイオンであることが好ましい。これら
の界面活性剤は、単独または2種以上の混合物として使
用される。
【0028】ビルダー及びアルカリ剤あるいは無機電解
質としてはオルソリン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリ酸
塩、メタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、フィチン酸塩
などのリン酸塩、エタン−1,1 −ジホスホン酸及びその
誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2 −トリホスホン酸、
エタン−1,2 −ジカルボキシ−1,2 −ジホスホン酸、メ
タンヒドロキシホスホン酸などのホスホン酸塩、2 −ホ
スホノブタン−1,2 −ジカルボン酸、1 −ホスホノブタ
ン−2,3,4 −トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハ
ク酸などのホスホノカルボン酸塩、アスパラギン酸、グ
ルタミン酸などのアミノ酸塩、ニトリロ三酢酸塩、エチ
レンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩
などのアミノポリ酢酸塩、ポリアクリル酸、ポリイタコ
ン酸、ポリマレイン酸、無水マレイン酸共重合体、カル
ボキシメチルセルロース塩などの高分子電解質、ポリエ
チレングリコール、ポリビニルアルコールなどの非解離
高分子、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキ
シメチルオキシコハク酸、グルコン酸、クエン酸、乳
酸、酒石酸、ショ糖、ラクトースなどのカルボキシメチ
ル化物、ペンタエリスリトールのカルボキシメチル化
物、グルコン酸のカルボキシメチル化物、ベンゼンポリ
カルボン酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、
グルコン酸などの有機酸塩、ゼオライトなどのアルミノ
ケイ酸塩、炭酸塩、セスキ炭酸塩、硫酸塩、メタケイ酸
塩などの無機塩をアルカリ金属塩として用いることがで
き、またデンプン、尿素などの有機物質及び塩化ナトリ
ウム、ベントナイトなどの無機化合物を用いることがで
き、更には有機アルカリ剤としてトリエタノールアミ
ン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリ
イソプロパノールアミンなどを用いることができる。
【0029】本発明の洗剤組成物は、前述のごとく、界
面活性剤、本発明のポリフェノールオキシダーゼ等を構
成成分として含むが、その必要に応じて両性界面活性
剤、例えばパーボレート、パーカルボネートなどの漂白
剤、色素、ビルダー、例えばポリエチレングリコール、
ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボ
キシメチルセルロースなどの再汚染防止剤、ケーキング
防止剤、酸化防止剤、例えば他のオキシダーゼやペルオ
キシダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セ
ルラーゼなどのその他の酵素を必要に応じて含ませるこ
とができる。
【0030】本発明の洗剤組成物にポリフェノールオキ
シダーゼ等の酵素を配合するには如何なる方法をもって
行ってもよいが、微粉末状で配合することは、洗剤取扱
い時の発塵による洗剤使用者や洗剤工業における作業者
の安全衛生上好ましいことではなく、溶液状態あるいは
あらかじめ発塵性をおさえた形状に賦形しておくことが
好ましい。この賦形は通常よく用いられるマルメ造粒、
押し出し造粒、流動造粒、遠心流動造粒やその他の方法
のいずれによるものであってもよく、本発明の洗剤組成
物に配合する酵素の形状は特にこれらの方法によって賦
形されたものに限定されるものではない。
【0031】脱リグニン、漂白を目的として、パルプ工
程の一部において本発明の菌株を接種して本発明のポリ
フェノールオキシダーゼを生産せしめるか、もしくは直
接本発明の酵素標品を添加して、チップや粗砕パルプ等
に作用させるバイオパルピング、バイオ漂白が有用な用
途分野に挙げられる。この場合も、従来の酸性側に至適
反応pHを有するポリフェノールオキシダーゼと比べ、
アルカリ側に至適反応pHを有する本発明のポリフェノ
ールオキシダーゼの方がpH調整のために使用する薬液
の量を削減することができコスト・ダウンが可能であ
る。
【0032】[その他の利用方法]本発明のポリフェノ
ールオキシダーゼを用いるバイオセンサーは、本酵素の
特性を反映して、中性からアルカリ性域のpHを有する
様々な水溶液、有機溶媒中の芳香族化合物をモニターす
るために用いることができ有用である。また、本発明の
ポリフェノールオキシダーゼにより発生するフェノキシ
ラジカルの反応性を利用して、中性〜アルカリ性のpH
域において効率よく微生物やウィルスの殺菌や不活性化
を行うことも可能である。つまり、ポリフェノールオキ
シダーゼの基質自体の殺菌性に加えて、酵素的に発生す
るフェノキシラジカルによってより強力な殺菌性を与え
ることが可能である。しかも、殺菌処理物がそののち人
体に接触もしくは摂取される場合、もしくは環境中に放
出される場合には、ポリフェノールオキシダーゼの基質
は酸化によって毒性の軽減された物質に変わっているた
め、必要な時点での殺菌性とその後の安全性の双方を達
成でき、有用性が高い。
【0033】ポリフェノールを構造部分に有する天然の
着色物質として、フラボノイド系、キサントン系、メラ
ニン系などの植物色素やリグニンが知られており、ポリ
フェノールオキシダーゼはこれらの天然物に対する漂白
作用を有する。また、毒性が問題になっているジクロロ
フェノール、トリクロロフェノール等のAOXをもポリ
フェノールオキシダーゼは反応基質にできる。それ故
に、例えばこれらの天然物や非天然物を含有する廃水処
理においても本発明のポリフェノールオキシダーゼは有
用である。
【0034】また、本発明のポリフェノールオキシダー
ゼをアルカリpH域においてフェノール化合物、アルコ
キシル基含有芳香族化合物、ハロゲン化フェノール化合
物、キノン化合物、または芳香族アミン化合物に作用さ
せ、溶存する酸素を消費せしめることを利用した脱酸素
法あるいは脱酸素剤の製造も可能である。こうした脱酸
素法及び脱酸素剤においては、天然もしくは非天然の多
くのフェノール化合物、アルコキシル基含有芳香族化合
物、ハロゲン化フェノール化合物、キノン化合物、また
は芳香族アミン化合物が利用可能であり、急速に溶存酸
素濃度を低減することができ極めて有用である。特に、
カテコール類等の易酸化性のポリフェノールを含む物質
群を酸化する場合、アルカリpHでの自動酸化反応と酵
素触媒的なポリフェノールの酸化反応を同時に進行させ
ることができるアルカリpHでのポリフェノールオキシ
ダーゼの使用は、効率の良い脱酸素のために極めて有効
である。
【0035】
【実施例】以下に本発明について代表的な例を示し、さ
らに具体的に説明する。ただし、これらは単なる例示で
あり、本発明はこれらのみに限られるものではない。
【0036】実施例1:培養及び濃縮 2リッター容のフラスコ4器を培養装置に用い、1%グ
ルコース及び0.2%NH4 Cl、1.34%Na2
PO4 ・12H2 O、0.3%KH2 PO4 、0.1%
NaCl、0.2%ペプトン、0.05%MgSO4
7H2 O、0.02mMCuSO4 を含む500mlの
培地に2N−NaOHを加えてpHを7.5としたもの
を各々のフラスコに調製し、スティルベラ・sp.(St
ilbellasp. )SD3101(受託番号FERM P-15963)
を接種し、27℃、100時間の振とう培養を行った。
培養後、4℃での遠心分離により除菌された培養ブロス
を得た。次に、この除菌された培養ブロスを、ミニタン
・フィルターパケット(CAT.NO.: PTGC0MP04, ミリポア
社製)を用いるミニタン限外ろ過システム(ミリポア社
製)によって、分子量10,000以上の画分として濃縮し
た。
【0037】実施例2:粗精製 1.34%Na2 HPO4 ・12H2 O、0.3%KH
2 PO4 、0.1%NaClによって平衡化したDEA
E−Cellulofine A−800m(生化学工
業(株))カラム(φ60mm, 330cc )の上部に、実施例
1記載の濃縮された培養ブロスをカラム上部の空隙にア
プライし、さらに平衡化に使用したものと同組成の緩衝
液、400mlによるカラム洗浄を行った。次に、1.
34%Na2 HPO4 ・12H2 O、0.3%KH2
4 、0.3%NaClを1回に50mlずつ使用し
て、合計8回の溶出を行ったところ、ポリフェノールオ
キシダーゼ活性を2回目から5回目の画分に得た。これ
らの活性画分は、実施例1記載と同様の限外ろ過システ
ムによって濃縮し、さらに、200ppm NH4 HC
3 に対して透析後、凍結乾燥に供し、粗精製物を凍結
乾燥物として得た。凍結乾燥物のポリフェノールオキシ
ダーゼ活性は5U/mgであった。
【0038】実施例3:培養及び濃縮、粗精製 サゲノメラ・sp.(Sagenomella sp. )SD3102
(受託番号FERM P-15964)の培養及び濃縮を実施例1と
同様に行い、ポリフェノールオキシダーゼ活性を有する
水溶液を得た。さらに、実施例2と同様の粗精製を行
い、凍結乾燥物を得た。凍結乾燥物のポリフェノールオ
キシダーゼ活性は3.5U/mgであった。
【0039】実施例4:培養及び濃縮、粗精製 スタキリジウム・sp.(Stachylidium sp.)SD31
03(受託番号FERMP-15965 )の培養及び濃縮を実施例
1と同様に行い、ポリフェノールオキシダーゼ活性を有
する水溶液を得た。さらに、実施例2と同様の粗精製を
行い、凍結乾燥物を得た。凍結乾燥物のポリフェノール
オキシダーゼ活性は2.5U/mgであった。
【0040】実施例5:等電点の測定 実施例2〜4で得たポリフェノールオキシダーゼ活性サ
ンプルを用い、ロトフォア・システム(BIO−RAD
社製)を用いる等電点電気泳動により、活性染色と等電
点を測定した。バッファーにはファルマライト(pH2.5〜
5)(Sigma社から入手)を使用した。また、活性染
色は、電気泳動終了後のゲル・プレートを、50ppm
のシリンガルダジン(syringaldazine)と100mMの
リン酸カリウムバッファー溶液(pH8.2 )を含む水溶液
に浸漬し、ポリフェノールオキシダーゼによる反応の結
果生じる赤紫色のバンドを観察することで行った。その
結果、スティルベラ・sp.(Stilbella sp. )SD3101
(受託番号FERM P-15963)、サゲノメラ・sp.(Sage
nomella sp. )SD3102(受託番号FERM P-15964)、スタ
キリジウム・sp.(Stachylidium sp.)SD3103(受託
番号FERMP-15965 )の等電点はそれぞれ、6.6 ±0.5 、
5.9 ±0.5 、7.0 ±0.5 であった。
【0041】実施例6:基質特異性 実施例2〜4記載の粗精製ポリフェノールオキシダーゼ
を用いて酸化反応の基質特異性を調べた。室温(25
℃)において、0.05mMの基質と0.1Mのリン酸
カリウムバッファー(pH8.0 )を含む溶液における酵素
添加、無添加での酸素消費速度の差を、マノメータ(YS
I Model 5300 Biological Oxygen Monitor、Yellow Spr
ings Instrument Co.,Inc.製)で測定することで行っ
た。この測定ではアスコルビン酸を基質に用いた場合の
酸素消費速度の差(Δ酸素消費速度)が最大であったた
め、この値を100として、相対値で結果を表1に示し
た。なお、対照として、市販アスコルビン酸オキシダー
ゼ(Cucumis sp. 由来、フナコシ(株)から入手)を用
いて同様の測定を行った場合の結果も併せて示した。
【0042】
【表1】
【0043】実施例7:分子量 分子量測定は、GFC(ゲルろ過クロマトグラフィー)
を用いて行った。1.34%Na2 HPO4 ・12H2
O、0.3%KH2 PO4 、1%NaClによって流速
1.0ml/minで平衡化したGFCカラム(Shodex
PROTEINKW-802.5, 2連)とUV検出器(280n
m)を用いるHPLCにより、実施例2〜4記載の粗精
製ポリフェノールオキシダーゼの分析及び分取と活性測
定を行ったところ、ポリフェノールオキシダーゼ活性ピ
ークはそれぞれ、分子量76,000±5000、33,000±5000、
55,000±5000の位置に溶出された。なお、分子量マーカ
ー蛋白質として、オリエンタル工業(株)のMW−Ma
rker(HPLC)を使用した。
【0044】実施例8:5リッターフラスコでの培養及
び粗精製 1%グルコース及び0.2%NH4 Cl、1.34%N
2 HPO4 ・12H2 O、0.3%KH2 PO4
0.1%NaCl、0.2%ペプトン、0.05%Mg
SO4 ・7H2 O、0.02mMCuSO4 からなる1
リッターの培地に2N−NaOHを加えてpHを7.5
としたものを含む5リッター容のフラスコ,2器に、ス
ティルベラ・sp.(Stilbella sp. )SD3101
(受託番号FERM P-15963)を接種し、28℃、5日間の
振とう培養を行った。培養後、4℃での遠心分離により
除菌された培養ブロス1.8リッターを得た。次に、こ
の培養ブロスの一部を、ミニタン・フィルターパケット
(CAT.NO.: PTGC0MP04, ミリポア社製)を用いるミニタ
ン限外ろ過システム(ミリポア社製)によって、分子量
10,000以上の画分として濃縮した。これをさら
に、DEAE−Cellulofine A−800m
カラムクロマトグラフィーに供し、溶出した活性画分を
再び、上記のミニタン限外ろ過システムによって、分子
量10,000以上の画分として再濃縮した。さらにこ
の再濃縮液を200ppmNH4 HCO3 に対して透析
後、凍結乾燥に供し、粗精製物を凍結乾燥品として得
た。凍結乾燥品のポリフェノールオキシダーゼ活性は8
U/mgであった。
【0045】また、同様の培養および粗精製操作によ
り、サゲノメラ・sp.(Sagenomella sp. )SD31
02(受託番号FERM P-15964)およびスタキリジウム・
sp.(Stachylidium sp.)SD3103(受託番号FE
RM P-15965)の生産するポリフェノールオキシダーゼの
凍結乾燥品を得た。活性はそれぞれ5U/mg、4.5
U/mgであった。
【0046】実施例9:酵素含有洗剤による汚染布の処
25重量%の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウ
ム(LAS)、5重量%のポリオキシエチレンラウリル
エーテル、15重量%のトリポリリン酸ナトリウム、6
重量%のケイ酸ナトリウム、1重量%のカルボキシメチ
ルセルロースナトリウム、及び48重量%のNa2 SO
4 からなる指標洗剤1グラムに、実施例8記載の凍結乾
燥品を20mg添加したものを酵素配合洗剤とし、凍結
乾燥品を添加していないものを酵素非配合洗剤とした。
また、木綿白布(5cm×5cm)の中央に100pp
mエバンスブルー(和光純薬工業(株))0.2mlを
加えることで汚染布を調製した。次に、500ml容ビ
ーカーに汚染布1枚と水10mlを加えた後、さらに酵
素配合洗剤または酵素非配合洗剤を10mg添加し、1
2分間振とうすることで洗浄処理を行った。処理後の汚
染布は、水洗、風乾し、色彩色差計(CR-200, MINOLTA
製)によって Y,y,x値を測定し、さらに式[Z=(1−
x−y)Y/y]によってZ値を算出し、処理前後のZ
値の差(△Z値)によって白色度の向上を評価した。酵
素配合洗剤使用時の白色度の向上と酵素非配合洗剤使用
時の白色度の向上を比較したときの酵素添加効果(ΔΔ
Z値)を表2に示した。
【0047】
【表2】
【0048】実施例10:従来のポリフェノールオキシ
ダーゼとの混合 試薬として市販されているポリフェノールオキシダーゼ
Rigidoporus zonalis 由来、 TaKaRa (株)から入
手)と、実施例8記載の凍結乾燥品を混合したものを用
いて様々なpHで活性測定を行ったところ、図11に示
したようにpH4〜10の広範囲のpHにおいて酸化反
応が速やかに進行した。
【0049】実施例11:脱酸素剤 フェノール性化合物として50mMのL−アスコルビン酸
・Naを使用し、pH9.0 、温度25℃において、実施例
8記載のスティルベラ・sp.(Stilbella sp. )SD31
01(受託番号FERM P-15963)から得た凍結乾燥物を10p
pmの濃度で作用させ、マノメータで酸素消費速度を測
定したところ、反応開始後1時間目の溶存酸素濃度は、
反応開始時の0.4 %に減少しており、高い脱酸素能を有
することが示された。
【0050】
【発明の効果】以上詳細に説明した通り、本発明によ
り、アルカリ側に至適反応pHを有する新規なポリフェ
ノールオキシダーゼ及びこのようなポリフェノールオキ
シダーゼを菌類培養物から製造する方法が提供される。
また、本発明のスティルベラ・sp.(Stilbella sp.
)SD3101、サゲノメラ・sp.(Sagenomella sp. )S
D3102、スタキリジウム・sp.(Stachylidiumsp.)SD
3103は本発明のポリフェノールオキシダーゼの製造に有
効である。また、本発明のポリフェノールオキシダーゼ
を用いることにより、有効な着色物質の処理、紙、パル
プもしくは繊維の処理、微生物もしくはウィルスの処
理、または、洗浄処理等の方法や脱酸素剤、洗剤組成物
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】SD3101の生産するポリフェノールオキシダーゼ
のpHプロファイル。
【図2】SD3102の生産するポリフェノールオキシダーゼ
のpHプロファイル。
【図3】SD3103の生産するポリフェノールオキシダーゼ
のpHプロファイル。
【図4】SD3101の生産するポリフェノールオキシダーゼ
の温度プロファイル。
【図5】SD3102の生産するポリフェノールオキシダーゼ
の温度プロファイル。
【図6】SD3103の生産するポリフェノールオキシダーゼ
の温度プロファイル。
【図7】SD3101の生産するポリフェノールオキシダーゼ
の温度安定性を示すグラフ。
【図8】SD3102の生産するポリフェノールオキシダーゼ
の温度安定性を示すグラフ。
【図9】SD3103の生産するポリフェノールオキシダーゼ
の温度安定性を示すグラフ。
【図10】ポリフェノールオキシダーゼのpH安定性を
示すグラフ。
【図11】ポリフェノールオキシダーゼ混合物のpHプ
ロファイル。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 米田 正 千葉県千葉市緑区大野台1丁目1番1号 昭和電工株式会社 総合研究所内 (72)発明者 青木 裕文 千葉県千葉市緑区大野台1丁目1番1号 昭和電工株式会社 総合研究所内 (72)発明者 大野 律子 千葉県千葉市緑区大野台1丁目1番1号 昭和電工株式会社 総合研究所内

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の特性: (1)作用:ポリフェノールを酸化する; (2)至適反応pH:pH8.2付近に至適反応pHを
    有する; (3)至適反応温度:50℃付近に至適反応温度を有す
    る; (4)分子量:GFC分析により測定した分子量が約7
    6,000; (5)等電点:等電点電気泳動により測定した等電点が
    約6.6;を有するポリフェノールオキシダーゼ。
  2. 【請求項2】 スティルベラ(Stilbella )属菌類が生
    産する、請求項1記載のポリフェノールオキシダーゼ。
  3. 【請求項3】 スティルベラ(Stilbella )属菌類がス
    ティルベラ・sp. (Stilbella sp.)SD3101(受託番号F
    ERM P-15963)である請求項2記載のポリフェノールオ
    キシダーゼ。
  4. 【請求項4】 以下の特性: (1)作用:ポリフェノールを酸化する; (2)至適反応pH:pH8.5付近に至適反応pHを
    有する; (3)至適反応温度:50℃付近に至適反応温度を有す
    る; (4)分子量:GFC分析により測定した分子量が約3
    3,000; (5)等電点:等電点電気泳動により測定した等電点が
    約5.9;を有するポリフェノールオキシダーゼ。
  5. 【請求項5】 サゲノメラ(Sagenomella )属菌類が生
    産する、請求項4記載のポリフェノールオキシダーゼ。
  6. 【請求項6】 サゲノメラ(Sagenomella )属菌類がサ
    ゲノメラ・sp. ( Sagenomella sp.)SD3102(受託番号
    FERM P-15964)である請求項5記載のポリフェノールオ
    キシダーゼ。
  7. 【請求項7】 以下の特性: (1)作用:ポリフェノールを酸化する; (2)至適反応pH:pH8.2付近に至適反応pHを
    有する; (3)至適反応温度:50℃付近に至適反応温度を有す
    る; (4)分子量:GFC分析により測定した分子量が約5
    5,000; (5)等電点:等電点電気泳動により測定した等電点が
    約7.0;を有するポリフェノールオキシダーゼ。
  8. 【請求項8】 スタキリジウム(Stachylidium)属菌類
    が生産する、請求項7記載のポリフェノールオキシダー
    ゼ。
  9. 【請求項9】 スタキリジウム(Stachylidium)属菌類
    がスタキリジウム・sp. (Stachylidium s p. )SD3103
    (受託番号FERM P-15965)である請求項8記載のポリフ
    ェノールオキシダーゼ。
  10. 【請求項10】 スティルベラ(Stilbella )属菌類を
    培養することを特徴とする請求項1記載のポリフェノー
    ルオキシダーゼの製造方法。
  11. 【請求項11】 スティルベラ(Stilbella )属菌類が
    スティルベラ・sp.(Stilbella sp. )SD3101(受託番
    号FERM P-15963)またはその変異株である請求項10記
    載のポリフェノールオキシダーゼの製造方法。
  12. 【請求項12】 サゲノメラ(Sagenomella )属菌類を
    培養することを特徴とする請求項4記載のポリフェノー
    ルオキシダーゼの製造方法。
  13. 【請求項13】 サゲノメラ(Sagenomella )属菌類が
    サゲノメラ・sp. (Sagenomella sp. )SD3102(受託番
    号FERM P-15964)またはその変異株である請求項12記
    載のポリフェノールオキシダーゼの製造方法。
  14. 【請求項14】 スタキリジウム(Stachylidium)属菌
    類を培養することを特徴とする請求項7記載のポリフェ
    ノールオキシダーゼの製造方法。
  15. 【請求項15】 スタキリジウム(Stachylidium)属菌
    類がスタキリジウム・sp. (Stachylidium sp.)SD3103
    (受託番号FERM P-15965)またはその変異株である請求
    項14記載のポリフェノールオキシダーゼの製造方法。
  16. 【請求項16】 スティルベラ・sp. (Stilbella sp.
    )SD3101(受託番号FERM P-15963)。
  17. 【請求項17】 サゲノメラ・sp. (Sagenomella sp.
    )SD3102(受託番号FERM P-15964)。
  18. 【請求項18】 スタキリジウム・sp. (Stachylidium
    sp.)SD3103(受託番号FERM P-15965)。
  19. 【請求項19】 洗浄剤、洗剤、または界面活性剤、及
    び請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリフェノール
    オキシダーゼを含むことを特徴とする洗剤組成物。
  20. 【請求項20】 請求項1〜9のいずれか一項に記載の
    ポリフェノールオキシダーゼを作用させることを特徴と
    する着色物質の漂白処理方法。
  21. 【請求項21】 請求項1〜9のいずれか一項に記載の
    ポリフェノールオキシダーゼを作用させることを特徴と
    する、微生物またはウィルスの処理方法。
  22. 【請求項22】 請求項1〜9のいずれか一項に記載の
    ポリフェノールオキシダーゼを作用させることを特徴と
    する紙、パルプ、または繊維の処理方法。
  23. 【請求項23】 請求項1〜9のいずれか一項に記載の
    ポリフェノールオキシダーゼを用いることを特徴とする
    脱酸素方法。
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WO2001048135A1 (en) * 1999-12-23 2001-07-05 Unilever N.V. Bleaching detergent compositions
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JP2008514824A (ja) * 2004-09-25 2008-05-08 ▲力▼州摩▲維▼天然▲繊▼▲維▼材料有限公司 黄麻を脱ゴム化する方法

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