JPH1016865A - 自転車用リヤディレーラ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】小さなサイズのチェーン押圧部によってチェー
ンの掛け換え動作時にチェーンを適切に押圧できるよう
にし、自転車用リヤディレーラの部品の小型、軽量化、
ならびにチェーンの掛け換え動作の確実化を図る。 【解決手段】上部にガイドプーリ５を有し、かつ下部に
テンションプーリ６を有するチェーンガイド７と、チェ
ーンガイド７をガイドプーリ５の回転中心軸と同一軸線
上の軸体周りに回転可能に支持する可動部材１７を有す
る制御機構８と、ガイドプーリ５の外周上部から多段フ
リーホイールＦの選択されたスプロケットの外周下部に
到るチェーン経路に対向するチェーン押圧部４４Ａとを
備えており、制御機構８は、ガイドプーリ５の外周上部
が多段フリーホイールＦのハブ軸方向最外方のスプロケ
ットの外周下部よりも前方に配置された状態から可動部
材１７をハブ軸方向内方へ移動させるときに、可動部材
１７が徐々に下降しつつ前方にも移動するように構成さ
れており、かつチェーン押圧部４４Ａは、可動部材１７
に設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【技術分野】本願発明は、自転車用リヤディレーラの変
速性能を高めるための技術に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、自転車用リヤディレーラとして
は、種々の構成のものがあるが、その一例としては、た
とえば本願の図７および図８に示すようなものがある。
この従来のものは、自転車の後輪のハブ軸２に取付けら
れている多段フリーホイールＦの一つのスプロケットか
ら他のスプロケットにチェーンＣを掛け換えるためのも
のであり、上部にガイドプーリ５を有するとともに、下
部にテンションプーリ６を有するチェーンガイド７ｅ
を、パンタグラフ機構９ｅによって多段フリーホイール
Ｆのハブ軸方向に移動させ得る構造となっている。ま
た、上記チェーンガイド７ｅの上端部には、ガイドプー
リ５の外周上部から多段フリーホイールＦのスプロケッ
トの外周下部に到るチェーン経路に対向する突起状のチ
ェーン押圧部４４Ｂが設けられている。

【０００３】このような構成のリヤディレーラにおいて
は、ガイドプーリ５がハブ軸方向に移動し、このガイド
プーリ５に掛かっているチェーンＣの位置がハブ軸方向
に移動すると、これに伴って多段フリーホイールＦに対
するチェーンＣの掛け換えがなされる。また、ガイドプ
ーリ５が図８の矢印Ｎ１方向に移動し、多段フリーホイ
ールＦの小径スプロケットＳ１から大径スプロケットＳ
５へチェーンＣが掛け換えられるときには、チェーンガ
イド７ｅのチェーン押圧部４４ＢによってチェーンＣの
側面部を押圧することができる。したがって、ガイドプ
ーリ５の移動に伴わせてチェーンＣをハブ軸方向に適切
に移動させることが可能であり、チェーンＣの掛け換え
動作の確実化が図れる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のリヤディレーラにおいては、次のような不具合が生
じていた。

【０００５】すなわち、従来では、チェーン押圧部４４
Ｂをチェーンガイド７ｅに設けている。ところが、この
チェーンガイド７ｅは、テンションプーリ６によってチ
ェーンＣの弛みを解消させるために、ハブ軸２と平行な
所定の軸体２１ｅ周りに回転可能に設けられた上で、バ
ネ（図示略）によって常時矢印Ｎ２方向に弾発付勢され
ているのが通例である。したがって、従来では、上記チ
ェーンガイド７ｅが軸体２１ｅ周りに回転し、その姿勢
が変化すると、これに伴ってチェーン押圧部４４Ｂの位
置が変化するようになっていた。

【０００６】一方、従来では、ガイドプーリ５の外周上
部から多段フリーホイールＦの外周下部に到るまでのチ
ェーン経路の傾斜状態は、常に一定ではなく、たとえば
チェーンＣが小径スプロケットＳ１に掛けられた場合と
大径スプロケットＳ５に掛けられた場合とでは、ガイド
プーリ５からこれら各スプロケットに到るチェーンＣの
傾斜角度はかなり相違していた。また、従来では、ガイ
ドプーリ５の回転中心Ｏは、チェーンガイド７ｅの回転
中心となる軸体２１ｅから位置ずれしているために、上
記チェーンガイド７ｅが軸体２１ｅを中心として回転す
ると、ガイドプーリ５の位置も変化することとなり、こ
のようなガイドプーリ５の位置変化にも原因して、ガイ
ドプーリ５から多段フリーホイールＦのスプロケットに
到るチェーン経路が変化していた。このようなチェーン
経路の変化は、リヤディレーラを動作させる場合に限ら
ず、たとえばフロントディレーラを兼備した自転車にお
いて前ギヤの異径スプロケット間でチェーンの掛け換え
動作を行わせるときにチェーンＣのテンションが変化す
ることに原因し、チェーンガイド７ｅが軸体２１ｅを中
心として回転することによっても、やはり同様に生じて
いた。

【０００７】したがって、従来では、上述したようにガ
イドプーリ５から多段フリーホイールＦに到るチェーン
Ｃの移動経路が変化するばかりではなく、チェーン押圧
部４４Ｂ自身の位置も変化する状況下において、チェー
ン押圧部４４ＢによってチェーンＣの側面部を確実に押
圧させるためには、チェーン押圧部４４Ｂ自身の幅やそ
の突出高さの寸法をかなり大きくする必要があった。と
ころが、このようにチェーン押圧部４４Ｂのサイズを大
きくしたのでは、チェーンガイド７ｅの全体のサイズが
嵩張ったものとなり、部品の小型、軽量化を図る観点か
らしても好ましいものではないばかりか、上記チェーン
押圧部４４Ｂを大きくするには次に述べるように一定の
限界があり、チェーン押圧部４４ＢによってチェーンＣ
を適切に押圧させることができない場合もあった。

【０００８】すなわち、従来のリヤディレーラに用いら
れていたパンタグラフ機構９ｅは、自転車フレームのバ
ックホークエンドＥに取付けられるベース部材１０ｅ
と、このベース部材１０ｅに対して基端部が回転可能に
連結された略水平状の２つのリンク部材９０，９０と、
これら２つのリンク部材９０，９０の各先端部に連結さ
れた可動部材１７ｅとから構成されており、この可動部
材１７ｅに上記チェーンガイド７ｅが軸体２１ｅを介し
て連結されている。さらに詳しくは、上記パンタグラフ
機構９ｅの平面視における概略構造は、図９の実線で示
すように、可動部材１７ｅとベース部材１０ｅとを繋ぐ
２つのリンク部材９０，９０は、小径スプロケットＳ１
にチェーンＣを掛けているときには、自転車の前方方向
（矢印Ｆｒ方向）に延びている。これに対して、大径ス
プロケットＳ５へチェーンＣを掛けるときには、上記２
つのリンク部材９０，９０の各先端部９０ａが各基端部
９０ｂを中心としてハブ軸方向（自転車幅方向）へ揺動
するようになっている。したがって、従来のパンタグラ
フ機構９ｅは、チェーンＣを小径スプロケットＳ１から
大径スプロケットＳ５の方向へ順次掛け換えてゆくに連
れて、可動部材１７ｅやチェーンガイド７ｅが自転車後
方へ順次移動してゆくこととなる。

【０００９】ところが、このような方向にチェーンガイ
ド７ｅが移動したのでは、チェーンＣを多段フリーホイ
ールＦの大径スプロケット側に掛け換えてゆくに連れ
て、チェーンガイド７ｅの上部が大径スプロケットの外
周の刃先に接近してゆくこととなる。したがって、従来
では、上記チェーンガイド７ｅの上部に設けられている
チェーン押圧部４４Ｂのサイズを大きくした場合には、
このチェーン押圧部４４Ｂが大径スプロケットの刃先に
当接する虞れがあった。その結果、従来では、このよう
な虞れを未然に防止する観点から、チェーン押圧部４４
Ｂをさほど大きく形成することができない場合が多々あ
り、このためチェーンＣをチェーン押圧部４４Ｂによっ
て適切に押圧ガイドすることができず、チェーンの掛け
換え動作を確実に行わせることができない場合があっ
た。

【００１０】本願発明は、このような事情のもとで考え
出されたものであって、チェーン押圧部のサイズをさほ
ど大きくしなくても、多段フリーホイールへのチェーン
の掛け換え動作時においてチェーンをチェーン押圧部に
よって適切に押圧できるようにし、もって自転車用リヤ
ディレーラの部品の小型、軽量化を図り、しかもチェー
ンの掛け換え動作を確実かつ円滑に行えるようにするこ
とをその課題としている。

【００１１】

【発明の開示】上記の課題を解決するため、本願発明で
は、次の技術的手段を講じている。

【００１２】すなわち、本願発明は、ハブ軸方向内方に
向かうほど大径となる複数の異径スプロケットを並設し
ている多段フリーホイールの選択したスプロケットにチ
ェーンを掛け換えるための自転車用リヤディレーラであ
って、上部にガイドプーリを有し、かつ下部にテンショ
ンプーリを有するチェーンガイドと、このチェーンガイ
ドを上記ガイドプーリの回転中心軸と同一軸線上の軸体
周りに回転可能に支持する可動部材を有する制御機構
と、上記ガイドプーリの外周上部から上記多段フリーホ
イールの選択されたスプロケットの外周下部に到るチェ
ーン経路に対向するチェーン押圧部と、を備えており、
上記制御機構は、上記ガイドプーリの外周上部が上記多
段フリーホイールのハブ軸方向最外方のスプロケットの
外周下部よりも前方に配置された状態から上記可動部材
をハブ軸方向内方へ移動させるときに、この可動部材が
徐々に下降しつつ前方にも移動するように構成されてお
り、かつ、上記チェーン押圧部は、上記可動部材に設け
られていることを特徴としている。

【００１３】本願発明においては、ガイドプーリの外周
上部を自転車の多段フリーホイールのハブ軸方向最外方
のスプロケットの外周下部よりも前方に配置させた状態
から制御機構の可動部材をハブ軸方向内方へ移動させる
ときに、この可動部材を徐々に下降させながら前方にも
移動させることができる。このため、上記可動部材に支
持されているガイドプーリをハブ軸方向に移動させると
きには、このガイドプーリの外周上部が各スプロケット
の外周下部よりも常に前方に位置するように移動させる
ことが可能となる。また、ガイドプーリの回転中心軸と
チェーンガイドの回転中心とは同一軸線上に位置するた
めに、上記チェーンガイドが所定の軸体周りに回転して
も、それとは関係なく、上記ガイドプーリを所定の一定
位置に維持させておくこともできる。したがって、多段
フリーホイールのいずれのスプロケットにチェーンを掛
けた場合であっても、ガイドプーリの外周上部からスプ
ロケットの外周下部に到るまでのチェーン経路の傾斜角
度を安定させることができることとなる。すなわち、本
願発明では、従来とは異なり、ガイドプーリの外周上部
からスプロケットに到るまでのチェーン経路の傾斜角度
が、チェーンガイドが回転することによって大きく変化
したり、あるいは多段フリーホイールのいずれのスプロ
ケットにチェーンが掛けられているかによって大きく変
化するといったことが無くなる。したがって、このよう
にガイドプーリの外周上部からスプロケットに到るまで
のチェーン経路の傾斜角度を安定させることができれ
ば、その分だけこのチェーン経路に位置するチェーンの
側面部にチェーン押圧部を押圧させ易くなる。

【００１４】さらに、本願発明では、チェーン押圧部
は、チェーンガイドには設けられておらず、上記可動部
材に設けられているために、チェーンガイドが上記軸体
周りに回転することに原因してその位置が変化するよう
なことが無いばかりか、チェーン掛け換え動作時には、
チェーン押圧部が上記ガイドプーリと同様な軌跡で移動
する。したがって、ガイドプーリの外周上部からスプロ
ケットに到るまでのチェーン経路に対してチェーン押圧
部を常に略一定の位置関係に維持させておくことも可能
となる。その結果、チェーン押圧部をさほど大きなサイ
ズに形成しなくても、チェーンの掛け換え動作時におい
て、このチェーン押圧部によってチェーンの掛け換え動
作に最適な位置を適切に押圧することが可能となり、チ
ェーンの掛け換え動作の確実性を高めることができると
いう優れた利点が得られる。また、チェーン押圧部を小
さくすることにより、リヤディレーラの部品の小型、軽
量化も図れ、さらにはチェーン押圧部と多段フリーホイ
ールのスプロケットとの不当な干渉なども適切に防止す
ることができる。

【００１５】本願発明の好ましい実施の形態では、上記
制御機構は、上端部が自転車フレームに連結されるとと
もに上下方向に一定寸法を有するベース部材と、このベ
ース部材の下端部とこのベース部材の下端部よりも上方
に配置された上記可動部材とを互いに相対移動可能なよ
うに連結する一組の起立状のリンク部材と、を具備する
パンタグラフリンク機構によって構成されており、か
つ、このパンタグラフリンク機構は、上記一組のリンク
部材が上記ベース部材の下端部とこれら各リンク部材の
下端部との連結部を中心としてハブ軸方向内方に向かう
斜め前方へ揺動可能に設定されている構成とすることが
できる。

【００１６】このような構成によれば、パンタグラフリ
ンク機構を変形させたときには、一組のリンク部材がハ
ブ軸方向内方に向かう斜め前方へ揺動するために、これ
ら一組のリンク部材に連結されている可動部材は、これ
ら一組のリンク部材と同方向に移動する。また、上記一
組のリンク部材は、ベース部材の下端部とこれら各リン
ク部材の下端部との連結部を中心として揺動するため
に、上記一組のリンク部材が上記方向に揺動するに連れ
て、これら一組のリンク部材の上端部の高さは徐々に下
降してゆく。したがって、可動部材をハブ軸方向内方へ
移動させるときには、この可動部材を前方にも移動させ
つつ徐々に下降させてゆくこともでき、本願発明が意図
する可動部材やガイドプーリの移動動作を簡易な構成の
パンタグラフリンク機構によって的確に得ることができ
る。

【００１７】本願発明の他の好ましい実施の形態では、
上記チェーンガイドは、上記テンションプーリが上記チ
ェーンにテンションを与えるように上記軸体周りの一定
方向にバネによって弾発付勢されており、かつ、上記制
御機構は、自転車フレームに対して自転車前後方向に自
由揺動可能に設けられている構成とすることもできる。

【００１８】このような構成によれば、バネの弾発力を
利用し、テンションプーリによってチェーンにテンショ
ンを与えると、チェーンからの反力がこのテンションプ
ーリを支持するチェーンガイドに作用することとなる
が、制御機構は自転車フレームに対して自転車前後方向
に自由揺動可能に設けられているために、この制御機構
は上記反力の作用方向と同方向に回転しようとする。こ
のような動作は、ガイドプーリを上昇させる挙動を生じ
させるが、ガイドプーリから多段フリーホイールのスプ
ロケットに到るチェーン経路には一定のテンションが生
じるために、このテンションによって上記ガイドプーリ
の上昇が抑制されることとなり、これによって制御機構
の上昇が抑制されることとなり、バランスする。そし
て、このようなバランス条件下にあっては、ガイドプー
リにはこのガイドプーリをできる限り上方へ移動させよ
うとする力が働くこととなる。このため、ガイドプーリ
の外周上部を、スプロケットの外周下部よりも上位に配
置させることが簡単に行えることとなり、ガイドプーリ
の外周上部からスプロケットの外周下部に到るチェーン
の傾斜を後ろ下がりの傾斜状に設定することが可能とな
る。

【００１９】したがって、可動部材に設けられるチェー
ン押圧部については、たとえば可動部材からのチェーン
押圧部を大きく上方へ突出させた寸法に形成しなくて
も、後ろ下がり傾斜状に設定されるチェーンの側面部に
対してチェーン押圧部を適切に対向させることが可能と
なり、チェーン押圧部のサイズが嵩張ることを一層徹底
して防止した上で、上記チェーンの押圧動作を確実に行
わせることができるという好ましい利点が得られる。む
ろん、ガイドプーリをできる限り上位に配置させること
によって、ガイドプーリとスプロケットとの相互間距離
を短くすることもできるために、チェーンの掛け換え動
作をより円滑に、かつ確実に行わせることができるとい
う利点も得られる。

【００２０】本願発明の他の好ましい実施の形態では、
上記チェーン押圧部は、上記可動部材に一体的に設けら
れている構成とすることもできる。

【００２１】このような構成によれば、チェーン押圧部
と可動部材とを別部品として構成した場合とは異なり、
部品点数の削減が図れ、製造コストの低減化に役立つ。

【００２２】

【発明の実施の形態】以下、本願発明の好ましい実施の
形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。

【００２３】図１は、本願発明に係る自転車用リヤディ
レーラ１を自転車フレームに取付けた状態を自転車右方
からみた側面図である。図２は、図１のII方向矢視の一
部断面正面図である。図３は、図１のIII 方向矢視の要
部平面図である。図４は、図３のIV方向矢視の要部背面
図である。図５（ａ）は、チェーン押圧部を備えた可動
部材の一例を示す平面図であり、図５（ｂ）は、その正
面図である。なお、これらの図において、矢印Ｆｒは自
転車前方を示し、矢印Ｏｕはハブ軸方向外方を示してい
る。

【００２４】図１に示すように、自転車用リヤディレー
ラ１の使用対象となる自転車は、自転車フレームの左右
一対のバックホークエンドＥ（同図には自転車右サイド
のバックホークエンドのみが表れている）の相互間に支
持されたハブ軸２に、ハブ軸方向内方ほど大径となる複
数の異径スプロケットＳ１〜Ｓ６を並設した多段フリー
ホイールＦを設けている。自転車用リヤディレーラ１
は、上記多段フリーホイールＦの選択した一つのスプロ
ケットにチェーンＣを掛け換えて変速を行うように構成
されたものである。

【００２５】自転車用リヤディレーラ１は、上記バック
ホークエンドＥに固定されたブラケット３に対し、ハブ
軸２と平行な第１の軸体４を中心として自転車の前後方
向へ自由揺動しうるように取付けられている。本実施形
態では、上記第１の軸体４をハブ軸２よりも下方やや後
方寄りに配置させるためにブラケット３を用いている
が、このようなブラケットを用いることなく、自転車用
リヤディレーラ１を自転車フレームに取付けても構わな
い。

【００２６】自転車用リヤディレーラ１は、チェーンガ
イド７と、このチェーンガイド７をハブ軸方向に移動さ
せる制御機構８とを具備している。

【００２７】上記チェーンガイド７は、金属製などの２
枚のアーム部材７０，７１の相互間の上部にガイドプー
リ５を回転可能に支持し、かつ上記アーム部材７０，７
１の相互間の下部にテンションプーリ６を回転可能に支
持したものである。チェーンＣは、上記テンションプー
リ６の外周後部を経た後に、ガイドプーリ５の外周前部
を逆Ｓ字状に掛け回されてから、ガイドプーリ５の外周
上部から離脱し、多段フリーホイールＦのスプロケット
Ｓ１〜Ｓ６のいずれか一つに対してその外周下部から掛
け回される。むろん、上記チェーンＣは、無端状であ
り、上記多段フリーホイールＦと図示しないチェーンホ
イール（前ギヤ）との両者間に掛け回されている。

【００２８】上記制御機構８は、ベース部材１０、２つ
のリンク部材１３，１４、可動部材１７を具備して構成
されており、これらの各部材はいわゆる下部支点型の平
行四辺形パンタグラフリンク機構９を構成している。

【００２９】上記ベース部材１０は、上記第１の軸体４
を中心として自転車前後方向に揺動可能に取付けられて
おり、上記第１の軸体４の取付点から下方に延びた形状
を有している。上記２つのリンク部材１３，１４の各下
端部は、上記ベース部材１０の下端部に対してピン１
１，１２を介して回転可能に連結されている。また、上
記リンク部材１３，１４の各上端部は、上記可動部材１
７に対してピン１５，１６を介して回転可能に連結され
ている。上記計４本のピン１１，１２，１５，１６は、
平行四辺形の頂点をなすように配置されており、上記２
つのリンク部材１３，１４が下端部のピン１１，１２を
中心として揺動すると、上記可動部材１７が自転車の幅
方向、すなわちハブ軸方向に移動するようになってい
る。

【００３０】ただし、上記２つのリンク部材１３，１４
がピン１１，１２を中心として揺動する方向は、図３の
矢印Ｎ３で示す方向、すなわち自転車のハブ軸方向内方
へ向かうにしたがって自転車の前方へ進む方向に設定さ
れている。このような設定は、上記各ピン１１，１２，
１５，１６の向きを上記矢印Ｎ３方向と直交する方向に
設定することによって簡単に行うことが可能である。上
記可動部材１７は、上記リンク部材１３，１４の揺動方
向と同方向に移動するが、この移動時においては、上記
リンク部材１３，１４の上端部の高さが徐々に低くなっ
ていく。したがって、上記可動部材１７は、結局は、徐
々に下降しながら上記矢印Ｎ３方向へ移動してゆくこと
となる。

【００３１】上記パンタグラフリンク機構９には、復帰
バネ１８が設けられており、この復帰バネ１８は可動部
材１７を常時ハブ軸方向外方へ移動復帰させる方向のバ
ネ力を発揮している。図４に表れているように、リンク
部材１３に連設された作動アーム１９には、ベース部材
１０に形成したアウタ受け２０に支持されているアウタ
ケーブルＷ₂ から引き出されたインナケーブルＷ₁ の一
端部が連結されている。上記アウタケーブルＷ₂ および
インナケーブルＷ₁ からなる操作ケーブルの他端部は、
自転車フレームのハンドルバーなどに取付けられた変速
操作装置（図示略）に連結されており、この変速操作装
置の操作によって上記操作ケーブルを牽引し、または繰
り出すことにより、上記パンタグラフリンク機構９を変
形させることができるようになっている。

【００３２】上記可動部材１７は、金属板をプレス加工
するなどして形成されたものであり、たとえば図５
（ａ），（ｂ）に示すような形態を有している。この可
動部材１７には、孔部４０を有する下向状の突片４１，
４１ａが計４箇所形成されているが、これらは上記パン
タグラフリンク機構９の上部支点となるピン１５，１６
を貫通させることにより２つのリンク部材１３，１４と
の連結を図るための部位である。

【００３３】上記可動部材１７の一端部には、孔部４３
を具備した下向状の側板部４２、上向状の突起部４４、
および扇形状のカバー片部４５のそれぞれが一体的に設
けられている。上記側板部４２は、後述するとおり、チ
ェーンガイド７をこの可動部材１７に連結するのに利用
される部位である。上記突起部４４は、やはり後述する
ように多段フリーホイールＦに対するチェーンＣの掛け
換え時にチェーンＣを押圧するための部位であり、その
一側面４４Ａが本願発明でいうチェーン押圧部４４Ａと
なっている。この突起部４４は、たとえば可動部材１７
に適当な切り込み加工を施してから、この切り込み部分
を起立させることによって形成することができる。上記
カバー片部４５は、ガイドプーリ５の外周の刃先部の一
側方をカバーするための部位である。

【００３４】上記可動部材１７の側板部４２の孔部４３
には、ハブ軸２と平行なように第２の軸体２１が挿通さ
れ、チェーンガイド７はこの第２の軸体２１周りに回転
可能なように取付けられている。また、ガイドプーリ５
の回転中心軸は、上記第２の軸体２１と同心軸上に位置
するように設定されている。したがって、チェーンガイ
ド７が上記第２の軸体２１周りに回転しても、ガイドプ
ーリ５の位置は不変である。さらに、上記チェーンガイ
ド７は、上記側板部４２に取付けられたスプリングボッ
クス２２内のコイルバネ２３によって図１の時計回り方
向に常時弾発付勢されており、チェーンＣにテンション
を与えるようになっている。

【００３５】次に、上記構成の自転車用リヤディレーラ
１の作用について説明する。

【００３６】まず、図１に示すように、チェーンＣが多
段フリーホイールＦのトップギヤとしての最小径のスプ
ロケットＳ１に掛けられている状態について説明する
と、テンションプーリ６は、チェーンＣに対して同図矢
印Ｎ４方向のテンションを与えるために、その反力がリ
ヤディレーラ１の全体を第１の軸体４を中心として同図
反時計周り方向に回動させようとする。このような動作
は、ガイドプーリ５を上昇させて、チェーンＣをスプロ
ケットＳ１の外周下部に対してさらに巻付けようとする
挙動となる。ところが、チェーンＣの長さは一定である
から、ガイドプーリ５からスプロケットＳ１に到るチェ
ーン部分にもテンションが生じ、このテンションによっ
て上記ガイドプーリ５の上昇は抑制されることとなっ
て、バランスする。したがって、リヤディレーラ１の姿
勢は一定の姿勢状態に維持され、ガイドプーリ５の外周
上部をスプロケットＳ１の外周下部よりも前方に配置さ
せておくことができる。

【００３７】上記のようなバランス条件下では、通常、
ガイドプーリ５はできるだけ上方へ移動しようとする。
したがって、ガイドプーリ５の外周上部を、スプロケッ
トＳ１の外周下部よりも上位に配置させることが簡単に
行える。このようにガイドプーリ５をできるだけ上位に
配置させることができれば、ガイドプーリ５をスプロケ
ットＳ１に対して接近させることができる。また、スプ
ロケットＳ１に対するチェーンＣの巻付け量も大きくす
ることができる。さらに、このようなガイドプーリ５と
スプロケットとの位置関係は、スプロケットＳ１にチェ
ーンＣが掛けられている場合のみならず、チェーンＣを
他のスプロケットＳ２〜Ｓ６に掛け換えた場合において
も同様に得られる。

【００３８】次いで、上記自転車用リヤディレーラ１の
パンタグラフリンク機構９を変形させて、チェーンＣを
小径のスプロケットＳ１から大径のスプロケットＳ６に
順序掛け換えてゆく場合について説明する。

【００３９】まず、上記パンタグラフリンク機構９の２
つのリンク部材１３，１４を揺動させて、このパンタグ
ラフリンク機構９を変形させることにより、可動部材１
７やチェーンガイド７をハブ軸方向へ移動させることが
できる。したがって、ガイドプーリ５のハブ軸方向の変
位に基づき、このガイドプーリ５によってガイドされる
チェーンＣの移動経路が変化し、チェーンＣをスプロケ
ットＳ１から離脱させてからその隣りに位置する他のス
プロケットＳ２，Ｓ３…へ順次掛け換えてゆくことがで
きる。そして、たとえば図６に示すように、チェーンＣ
をスプロケットＳ６に掛けることができる。このような
チェーンＣの掛け換え動作時には、チェーンＣの一側面
部を、突起部４４のチェーン押圧部４４Ａによってハブ
軸方向内方へ押圧することができる。

【００４０】このようなチェーンの掛け換え時におい
て、上記ガイドプーリ５は、先の図３において説明した
可動部材１７の移動動作と同様に、単にハブ軸方向に移
動するだけではなく、徐々に下降しながら同図矢印Ｎ３
方向に移動してゆく。これに対し、多段フリーホイール
Ｆは、ハブ軸方向最外方のスプロケットＳ１が最小径で
あって、最内方のスプロケットＳ６が最大径であるため
に、これら複数のスプロケットＳ１〜Ｓ６の外周縁のう
ち上記ガイドプーリ５と対向するそれぞれの部分は、ハ
ブ軸方向内方になるほどその高さが順次低くなると同時
に、自転車前方方向へ張り出してゆく配置形態となって
おり、これは上記ガイドプーリ５の移動方向と一致す
る。したがって、ガイドプーリ５をハブ軸方向に移動さ
せたときに、このガイドプーリ５を上記複数のスプロケ
ットＳ１〜Ｓ６のいずれの前方にも配置させることがで
きることは勿論のこと、各スプロケットとガイドプーリ
５との相互間の距離を略均一にすることも可能となる。
これはチェーンの掛け換え性能を向上させる上で有利と
なる。

【００４１】また、図６に示すように、チェーンＣを大
径スプロケットＳ６に掛けた場合には、チェーンＣの弛
みが少なくなるために、チェーンガイド７が第２の軸体
２１を中心として同図反時計回り方向に回転する。しか
しながら、ガイドプーリ５の支持中心は、上記第２の軸
体２１と一致しているために、チェーンＣのテンション
の変動に原因するチェーンガイド７の姿勢変化によって
ガイドプーリ５の位置が変化することもない。このた
め、ガイドプーリ５の外周上部からスプロケットＳ６の
外周下部に到るチェーン経路の傾斜角度は、図１で説明
したガイドプーリ５の外周上部からスプロケットＳ１の
外周下部に到るチェーン経路の傾斜角度と殆ど変わら
ず、いずれのスプロケットにチェーンＣを掛け換えた場
合であっても、上記チェーン経路の傾斜角度は略一定と
なる。さらに、チェーン押圧部４４Ａは可動部材１７に
設けられており、チェーンガイド７が第２の軸体２１周
りに回転しても、このチェーン押圧部４４Ａの位置はや
はり変化せず、ガイドプーリ５とチェーン押圧部４４Ａ
との位置関係も不変である。

【００４２】したがって、チェーンＣが多段フリーホイ
ールＦのいずれのスプロケットに掛けられている場合で
あっても、チェーン押圧部４４Ａは、ガイドプーリ５の
外周上部からスプロケットの外周下部に到るチェーン経
路に対して常に略同一の相対的な位置関係を維持するこ
ととなる。また、リヤディレーラとは別に、この自転車
にフロントディレーラが設けられている場合において、
前ギヤの異径スプロケット間でチェーンＣの掛け換えが
なされたときにもチェーンＣのテンションは変化し、チ
ェーンガイド７が第２の軸体２１周りに回転するが、や
はりこの場合であっても、ガイドプーリ５の外周上部か
らスプロケットＳ１の外周下部に到るチェーン経路の傾
斜角度や、チェーン押圧部４４Ａの位置は変化しない。
その結果、チェーン押圧部４４Ａをさほど大きなサイズ
に形成しなくても、リヤディレーラによるチェーンＣの
掛け換え時においては、フロントディレーラの変速段数
には関係無く、上記チェーン押圧部４４Ａによってチェ
ーンＣの一側面を適切に押圧し、確実なチェーン掛け換
え動作を確保することが可能となる。

【００４３】このリヤディレーラ１では、既述したとお
り、ガイドプーリ５の外周上部を、各スプロケットの外
周下部よりも上位に配置させることでき、ガイドプーリ
５の外周上部から各スプロケットの外周下部に到るチェ
ーン経路を、自転車後方になるほどその高さが低くなる
後ろ下がりの傾斜状に設定することができるために、ガ
イドプーリ５よりも自転車後方寄りに位置する突起部４
４の高さをさほど高くする必要はなく、上記チェーン押
圧部４４Ａのサイズを一層小さくすることが可能とな
る。したがって、上記チェーン押圧部４４Ａがスプロケ
ットＳ１〜Ｓ６のいずれかと干渉するといった不具合を
生じさせることなく、上記チェーン押圧部４４Ａによっ
てチェーンＣを適切に押圧し、いずれの変速段位の場合
においてもチェーンＣの掛け換え動作を確実なものとす
ることが可能となる。

【００４４】また、チェーンＣの掛け換え動作は、具体
的には、まず現在掛かっているスプロケットからの離
脱、目的のスプロケットの歯先への引っ掛かりと乗り上
げ、これに続く目的のスプロケットの歯底への嵌合とい
う、スプロケット半径方向のチェーンＣの挙動が必要で
ある。これに対し、この自転車用リヤディレーラ１は、
第１の軸体４周りに回転可能であり、各スプロケットの
刃先に対してチェーンＣが離脱したり、乗り上げたりす
るときに、チェーンＣのテンションの変化に対応させて
ガイドプーリ５の高さを変化させることによって、ガイ
ドプーリ５の外周上部からスプロケットの外周下部に到
るチェーン経路の角度を適宜変化させることができる。
したがって、スプロケットの刃先に対するチェーンＣの
離脱や、乗り上げ動作などについても円滑に行わせるこ
とができ、このようなことからも変速性能を大幅に向上
させることが可能である。

【００４５】もちろん、この発明の範囲は上述した実施
例に限定されるものではない。本願発明では、たとえば
制御機構８を第１の軸体４周りに自由揺動可能とする場
合に、第１の軸体４周りに制御機構８が自由揺動する角
度範囲を、一定の角度範囲内に制限してもよい。また、
第１の軸体４を中心として時計回り方向に制御機構を付
勢する弾力の弱いバネ（図示略）を設けるといった手段
を採用してもよい。このような手段を採用すれば、車輪
の交換時などにおいてチェーンを外す場合に、ディレー
ラ全体を第１の軸体回りに後方へ回動させ、車輪の交換
作業を容易化するのに役立つ。

【００４６】その他、本願発明に係る自転車熔リヤディ
レーラの各部の具体的な構成は種々に設計変更自在であ
り、可動部材やチェーン押圧部などの具体的な形状など
も限定されないことは言う迄もない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本願発明に係る自転車用リヤディレーラを自転
車フレームに取付けた状態を自転車右方からみた側面
図。

【図２】図１のII方向矢視の一部断面正面図。

【図３】図１のIII 方向矢視の要部平面図。

【図４】図３のIV方向矢視の要部背面図。

【図５】（ａ）は、チェーン押圧部を備えた可動部材の
一例を示す平面図、（ｂ）は、その正面図。

【図６】図１に示す自転車用リヤディレーラの動作状態
の一例を示す側面図。

【図７】従来の自転車用リヤディレーラを示す側面図。

【図８】図７に示す自転車用リヤディレーラのＶ方向矢
視の要部背面図。

【図９】従来のパンタグラフ機構の概略構成を示す平面
図。

【符号の説明】

１ 自転車用リヤディレーラ ２ ハブ軸 ４ 第１の軸体 ５ ガイドプーリ ６ テンションプーリ ７ チェーンガイド ８ 制御機構 ９ パンタグラフリンク機構 １０ ベース部材 １３ リンク部材 １４ リンク部材 １７ 可動部材 ２１ 第２の軸体 ４４Ａ チェーン押圧部 Ｆ 自転車用多段フリーホイール Ｃ チェーン

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハブ軸方向内方に向かうほど大径となる
   複数の異径スプロケットを並設している多段フリーホイ
   ールの選択したスプロケットにチェーンを掛け換えるた
   めの自転車用リヤディレーラであって、 上部にガイドプーリを有し、かつ下部にテンションプー
   リを有するチェーンガイドと、 このチェーンガイドを上記ガイドプーリの回転中心軸と
   同一軸線上の軸体周りに回転可能に支持する可動部材を
   有する制御機構と、 上記ガイドプーリの外周上部から上記多段フリーホイー
   ルの選択されたスプロケットの外周下部に到るチェーン
   経路に対向するチェーン押圧部と、を備えており、 上記制御機構は、上記ガイドプーリの外周上部が上記多
   段フリーホイールのハブ軸方向最外方のスプロケットの
   外周下部よりも前方に配置された状態から上記可動部材
   をハブ軸方向内方へ移動させるときに、この可動部材が
   徐々に下降しつつ前方にも移動するように構成されてお
   り、かつ、 上記チェーン押圧部は、上記可動部材に設けられている
   ことを特徴とする、自転車用リヤディレーラ。
2. 【請求項２】 上記制御機構は、上端部が自転車フレー
   ムに連結されるとともに上下方向に一定寸法を有するベ
   ース部材と、このベース部材の下端部とこのベース部材
   の下端部よりも上方に配置された上記可動部材とを互い
   に相対移動可能なように連結する一組の起立状のリンク
   部材と、を具備するパンタグラフリンク機構によって構
   成されており、かつ、 このパンタグラフリンク機構は、上記一組のリンク部材
   が上記ベース部材の下端部とこれら各リンク部材の下端
   部との連結部を中心としてハブ軸方向内方に向かう斜め
   前方へ揺動可能に設定されている、請求項１に記載の自
   転車用リヤディレーラ。
3. 【請求項３】 上記チェーンガイドは、上記テンション
   プーリが上記チェーンにテンションを与えるように上記
   軸体周りの一定方向にバネによって弾発付勢されてお
   り、かつ、 上記制御機構は、自転車フレームに対して自転車前後方
   向に自由揺動可能に設けられている、請求項１または２
   に記載の自転車用リヤディレーラ。
4. 【請求項４】 上記チェーン押圧部は、上記可動部材に
   一体的に設けられている、請求項１ないし３のいずれか
   に記載の自転車用リヤディレーラ。