JPH1015782A - 切削工具の異常検出装置 - Google Patents

切削工具の異常検出装置

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JPH1015782A
JPH1015782A JP17523496A JP17523496A JPH1015782A JP H1015782 A JPH1015782 A JP H1015782A JP 17523496 A JP17523496 A JP 17523496A JP 17523496 A JP17523496 A JP 17523496A JP H1015782 A JPH1015782 A JP H1015782A
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JP
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cutting tool
abnormality
data
cutting
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Application number
JP17523496A
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English (en)
Inventor
Daisuke Murakami
大介 村上
Hideki Moriguchi
秀樹 森口
Akihiko Ikegaya
明彦 池ケ谷
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】切削工具の二次元温度分布を計測し工具異常や
寿命時間等を解析する。 【解決手段】切削工具と被削材を所定周期で離間させ、
露出した切削工具の刃先を撮像部Aにて撮像する。画素
温度データ換算回路76が撮像部Aにて得られる画像デ
ータPi,jを二次元温度分布データTPi,jに換算する。
温度分布換算回路88が二次元温度分布データTPi,j
について統計演算し、被削材から離間した時点で工具刃
先の二次元温度分布データCPi,jを求める。異常判定
部Hは、正常な工具にて得られたデータCPi,jから高
温部分を表す二値化データRi,jを求めると共に、切削
加工継続中に計測されるデータCPi,jから高温部分を
表す二値化データDi,jを求め、これらのデータRi,j
i,jを対比することで異常摩耗等を判定する。また、
二値化データDi,jの時間変化について回帰分析を行う
ことにより切削工具の寿命を予測する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切削加工中における切
削工具の刃先の二次元温度分布を計測してその摩耗状況
や異常発生の有無等を自動的に解析処理する、切削工具
の異常検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、切削加工中に、切削工具の欠損を
予測したり摩耗状況を検知するためには、切削工具から
発せられるアコースティックエミッション波や切削抵抗
などを逐次計測してそれらの計測情報を信号処理する手
法と、CCDカメラ等で切削工具を撮像して得られる画
像情報を信号処理する手法が知られている。
【0003】また、摩耗の進行に伴う工具温度の上昇に
着目した方法として、プリント基板穴明機用加工状態監
視装置(特開昭61-293753)が挙げられ、加工中のドリ
ルの温度分布より工具異常を検出する方法が開示されて
いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記アコースティック
エミッション波や切削抵抗による異常検出手法は、切削
工具の摩耗量とアコースティックエミッション波との相
関関係を明確に知ることが困難であること、切削工具の
摩耗量と切削抵抗との相関関係を明確に知ることが困難
であること、切削抵抗とアコースティックエミッション
波が切削工具の欠損条件にいかなる係わり合いを有する
のかを明確に知ることが困難であること等の理由から、
実際の切削加工状況が異常状態に該当するものなのか、
もし将来異常が発生するものとすると何時その異常が発
生するのかを高い確度で予知することが難しいという問
題があった。
【0005】前記CCDカメラを用いて切削工具を撮像
し、これにより得られる画像情報から異常の有無等を検
知する手法にあっては、切削加工中に切削工具に付着す
る汚れや溶着物が邪魔になり、刃先の画像を鮮明に撮像
することができないという理由から精度の良い信号処理
を行うことができなかったり、あるいは、画像情報を信
号処理して摩耗状況を判断したり将来の異常発生の有無
を予測する等のためには、ニューラルネットワーク等の
複雑な信号処理システムを構築する必要が生じたり、そ
の結果処理速度が遅くなってオンライン処理を実現する
ことが困難となる等の問題があった。
【0006】更に、前記温度分布より検出する方法で
は、切削加工中における固有の問題として、工具異常に
対して最も相関が高いと考えられる切削中の刃先切削点
が切り屑や被削材に隠されて直接観察できないため、切
削工具の露出部分、即ち刃先切削点以外の観察可能な部
分の温度分布より異常を検出していた。つまり、工具異
常を高精度で判定するためには被削材に接触している前
記刃先切削点を直接観察する必要があるにも関わらずそ
れが困難であるため、検出すべき工具異常の種類が限ら
れてしまったり、発生した工具異常の種類を判別できな
かったり、摩耗の進行に伴う温度変化の測定感度が低く
なる等の問題点があった。
【0007】本発明は、このような従来技術の課題に鑑
みてなされたものであり、実際の切削加工中において、
切削工具の摩耗状況等を高精度で測定し、この測定結果
に基づいて、現時点での異常の有無及び異常の程度等を
判断したり、将来起こり得る欠損を予測する等の処理を
行うことができる異常検出装置を提供することを目的と
する。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、本発明の切削工具の異常検出装置にあって
は、切削加工中における切削工具の二次元温度分布を測
定する二次元温度分布測定手段と、前記二次元温度分布
測定手段により得られた二次元温度分布のデータを所定
のしきい値と比較することにより、前記切削工具の高温
部分と低温部分との形状を表す二値化された二次元温度
分布のデータを形成する二値化手段と、前記高温部分の
形状を表す二値化された二次元温度分布のデータに基づ
いて前記切削工具の異常を判定する異常判定手段とを具
備する構成とした。
【0009】ここで、前記異常判定手段は、次の如き種
々の機能を有する構成とした。即ち、前記異常判定手段
は、前記高温部分の形状を表す二次元温度分布のデータ
に基づいて前記高温部分の面積を演算すると共に、前記
高温部分の面積と予め決められた基準面積との相対面積
比を演算し、前記相対面積比の値が所定のしきい値を超
えると異常と判定する構成とした。
【0010】また、前記異常判定手段は、前記高温部分
の形状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高
温部分の面積を演算すると共に、前記高温部分の面積と
予め決められた基準面積との時間経過に伴う相対面積比
の変化を演算し、回帰分析法により前記相対面積比の変
化に基づいて推定した推定相対面積比の値が所定のしき
い値に到達するまでの推定時間を求め、前記推定時間に
基づいて前記切削工具の残り寿命時間を予測する構成と
した。
【0011】また、前記異常判定手段は、前記高温部分
の形状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高
温部分の縦横比を演算し、前記縦横比の値と予め決めら
れた基準の縦横比の値との相対比の値が所定のしきい値
を超えると異常と判定する構成とした。
【0012】また、前記異常判定手段は、前記高温部分
の形状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高
温部分の縦横比を演算すると共に、前記縦横比と予め決
められた基準の縦横比との時間経過に伴う相対比の変化
を演算し、回帰分析法により前記相対比の変化に基づい
て推定した推定相対比の値が所定のしきい値に到達する
までの推定時間を求め、前記推定時間に基づいて前記切
削工具の残り寿命時間を予測する構成とした。
【0013】また、前記異常判定手段は、前記高温部分
の形状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高
温部分の幅を演算し、前記幅が所定のしきい値を超える
と異常と判定する構成とした。
【0014】また、前記異常判定手段は、前記高温部分
の形状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高
温部分の幅の時間経過に伴う変化を演算し、回帰分析法
により前記幅の時間変化に基づいて推定した推定幅の値
が所定のしきい値に到達するまでの推定時間を求め、前
記推定時間に基づいて前記切削工具の残り寿命時間を予
測する構成とした。
【0015】また、前記異常判定手段は、前記高温部分
の形状を表す二次元温度分布のデータと予め決められた
パターンデータとをパターンマッチングし、前記高温部
分の形状を表す二次元温度分布のデータから鋭利な突起
形状と括れた形状とを検出すると、前記切削工具に境界
摩耗が発生したと判定する構成とした。
【0016】また、前記異常判定手段は、前記高温部分
の形状を表す二次元温度分布のデータと予め決められた
パターンデータとをパターンマッチングし、前記高温部
分の形状を表す二次元温度分布のデータから鋭利な突起
形状を検出すると共に、前記突起形状の幅が所定のしき
い値を超えると異常と判定する構成とした。
【0017】また、前記異常判定手段は、前記高温部分
の形状を表す二次元温度分布のデータと予め決められた
パターンデータとをパターンマッチングし、前記高温部
分の形状を表す二次元温度分布のデータから鋭利な突起
形状の幅の時間経過に伴う変化を演算し、回帰分析法に
より前記突起形状の幅の変化に基づいて推定した推定幅
の値が所定のしきい値に到達するまでの推定時間を求
め、前記推定時間に基づいて前記切削工具の残り寿命時
間を予測する構成とした。
【0018】また、前記異常判定手段は、前記切削工具
の形状を表す二次元温度分布のデータと予め決められた
パターンデータとをパターンマッチングし、前記予め決
められたパターンデータに対応する前記二次元温度分布
のデータが欠落している部分を、前記切削工具の欠損部
分と判定する構成とした。
【0019】更にまた、前記目的を達成するための本発
明の他の手段として、切削加工中における切削工具の二
次元温度分布を測定する二次元温度分布測定手段と、前
記二次元温度分布測定手段により得られた二次元温度分
布内の最高温度を探索する手段と、前記最高温度の変化
に基づいて前記切削工具の異常を判定する異常判定手段
とを具備する構成とした。
【0020】ここで、前記異常判定手段は、次の如き種
々の機能を有する構成とした。即ち、前記異常判定手段
は、前記二次元温度分布内の最高温度が予め決められた
所定のしきい値を超えると異常と判定する構成とした。
【0021】また、前記異常判定手段は、前記二次元温
度分布内の最高温度の時間経過に伴う変化を演算し、回
帰分析法により前記最高温度の変化に基づいて推定した
推定最高温度が所定のしきい値に到達するまでの推定時
間を求め、前記推定時間に基づいて前記切削工具の残り
寿命時間を予測する構成とした。
【0022】更にまた、前記二次元温度分布測定手段
は、前記切削加工中に、前記切削工具と被削材とを接触
させることにより実質的な切削期間と、前記切削工具と
前記被削材とを離すことにより実質的な非切削期間とを
設定する切削状態設定手段と、前記非切削期間中に前記
切削工具を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により得
られる画像データを温度成分の画像温度データに換算す
る手段と、前記画像温度データに基づいて前記非切削期
間中の時間経過に伴う前記切削工具の冷却特性を演算
し、前記冷却特性に基づいて前記切削期間と前記非切削
期間との切替り時点における前記切削工具の前記二次元
温度分布のデータを推定演算する温度分布演算手段とを
具備する構成とした。
【0023】また、前記異常判定手段は、前記異常を判
定すると異常発生を示す警報信号を出力する構成とし
た。
【0024】
【作用】切削工具による実際の切削加工中に、二次元温
度分布測定手段により切削工具の二次元温度分布を測定
し、二値化手段によりこの二次元温度分布のデータと所
定のしきい値とを比較することで、切削工具の高温部分
の形状を表すデータを求める。
【0025】この高温部分の形状を表すデータからその
形状の面積を求め、この面積を予め決められた基準面積
(例えば、切削工具が正常状態にある時に求められた高
温部分の面積)と比較して、所定のしきい値を超える
と、刃先すくい面等の摩耗範囲や摩耗の深さが拡大して
異常状態になったと判定する。
【0026】また、正常な切削工具では被削材に当接す
る刃先の部分が高温となり、その当接部分から離れた部
分ほど低温となる。したがって、前記高温部分の縦横比
を求めて、予め決められた基準の縦横比と比較し、この
基準の縦横比からのずれを検出することにより、異常に
摩耗した部分の存在等を判定する。
【0027】このように、高温部分の縦横比を異常の有
無の判断条件とすることによって、摩耗状況等の判定を
行う。また、所謂境界摩耗が発生すると、高温部分に
は、鋭利な突出部分と括れ部分が生じるようになる。よ
って、予め決められた正常状態での高温部分のパターン
データと実測された高温部分のデータとをパターンマッ
チングして、鋭利な突出部分と括れ部分との有無を検出
し、境界摩耗を判定する。
【0028】更に、前記高温部分の面積が切削加工の時
間経過に伴って変化するので、回帰分析法によりこの面
積の時間変化に基づいて例えば回帰直線等を求め、この
回帰直線等における推定面積が所定のしきい値に到達す
るまでの推定時間を、切削工具の残り寿命時間と予測す
る。
【0029】同様に、回帰分析法により、前記高温部分
の縦横比の時間変化に基づいて回帰直線等を求め、この
回帰直線等における推定縦横比の値が所定のしきい値に
到達するまでの時間を推定して、この推定時間から切削
工具の残り寿命時間を予測する。
【0030】同様に、前記高温部分に鋭利な突出部分を
検出し、回帰分析法により、この突出部分の幅の時間的
変化に基づいて回帰直線等を求め、この回帰直線等が所
定のしきい値に到達するまでの時間を推定して、この推
定時間を切削工具の残り寿令時間と予測する。
【0031】そして、このような残り寿命時間を予測す
ることにより、切削工具の交換時期等を予測したり、切
削工具の破損等に伴う事故の未然防止を図る。
【0032】また、実際の切削加工中に二次元温度分布
測定手段により切削工具の二次元温度分布を測定し、二
次元温度分布内の最高温度を探索し、予め決められた温
度のしきい値(操作者が任意に設定する温度、もしく
は、切削工具が正常状態にある時に求められた最高温度
から計算される許容温度等)と比較して、所定のしきい
値を超えると、刃先すくい面や逃げ面の摩耗範囲や摩耗
の深さが拡大して異常状態になったと判定する。
【0033】更に、前記最高温度は時間経過に伴って変
化するので、回帰分析法によりこの最高温度の時間変化
に基づいて回帰直線等を求め、この回帰直線等における
推定最高温度が所定のしきい値に到達するまでの時間を
推定し、この推定時間を切削工具の寿命時間と予測す
る。
【0034】このような残り寿命時間を予測することに
より、切削工具の交換時期等を予測したり、切削工具の
破損等に伴う事故の未然防止を図る。
【0035】また、異常判定に対応して警報機等に警報
信号を出力することにより、上記の如き事故の発生を未
然に防止する。また、この警報信号をNC工作機械等に
供給することで、プログラム制御による合理的な切削加
工システムの実現化に供する。
【0036】
【実施の形態】
(第1の実施の形態)以下、本発明による一実施の形態
を図面と共に説明する。一般的には、切削加工中におけ
る固有の問題として、切削加工中に被削材から発生する
切り屑が切削工具の切削点を覆うので、真の二次元温度
分布を計測することができないという問題がある。この
問題点を解決するためにこの実施の形態では、図1に示
すように、被削材の一部に切り欠きや溝(以降、断続部
と称す)を有する被削材22を使用し、切削工具24の
刃先が断続部22sに対向するときに実質的に切削が中
断される非切削加工状態となって、切り屑の発生が必然
的に無くなるときに、露出した刃先を撮像することによ
って二次元温度分布を正確に計測するようにしている。
尚、図1(a)〜(e)は切削加工中の動作を示し、同
図(a’)〜(e’)は刃先の画像を対応付けて示して
いる。
【0037】即ち、図1に示すように、切削工具24の
刃先が被削材22に当接して通常の切削加工がなされる
ときには(図1(a)(b)(e)参照)、切り屑の発
生に起因して切削工具24の刃先が隠されてしまうので
刃先切削点の画像を撮像することができないが、切削工
具24の刃先が断続部22sに対向して隙間ができ、被
削材22に当接しなくなるときには(図1(c)(d)
参照)、実質的に切削加工が中断された状態となるので
切り屑が発生せず、露出した刃先切削点を撮像すること
ができる。
【0038】尚、断続部22sが設けられた被削材22
を切削対象としない場合、即ち、このような断続部が設
けられていない被削材を用いたときの切削工具24の温
度分布を計測する場合には、図2(a)〜(e)中の同
図(c)に示すように、一時的に切削工具24を被削材
22から後退させて、刃先を被削材22から離すことに
より、露出した刃先を計測するようにしてもよい。更に
詳述すれば、図2(a)(b)に示すように通常の切削
を行っている間は、刃先が切り屑によって隠れてしまう
ので、切削工具24の温度分布を計測(撮像)すること
ができない。そこで、同図(c)に示すように、所定の
タイミングに同期して切削工具24を後退させ、一定期
間中は切削を中断する。これにより、刃先が露出される
ので、温度分布の計測が可能となる。
【0039】尚、いずれの計測方法でもよいが、この実
施の形態では、断続部22sの設けられた被削材22を
適用する場合について説明することとする。
【0040】次に、図3に基づいて、異常検出装置の構
成を説明する。この異常検出装置は、切削加工中におけ
る切削工具24を撮像するための撮像部Aと、切削工具
24が被削材22から離れた瞬間のタイミング等を検出
する切削状態検出部Bと、撮像部Aから得られる画像情
報に基づいて所定の演算処理を行うことにより切削工具
24の二次元温度分布を求める解析部Cとを具備してい
る。
【0041】また、この異常検出装置は、各種の旋盤等
に適宜に着脱して使用することができる汎用性を備えて
いる。例えば、普通旋盤に設けられている主軸台と芯押
台の各センタ間に支持された被削材22を所定方向Rに
回転させ、切削工具24を被削材22に当接させつつ、
回転方向Rに対して直交する方向Zへ切削加工を行う場
合には、撮像部Aにおける撮像可能範囲(図3中、点線
BWで示す視野範囲)内に、切削工具24の計測対象範
囲が収まるように設定するだけでよい。なお、撮影範囲
BWは刃先すくい面に限らず、逃げ面側から撮影するよ
うに設定することもできる。
【0042】撮像部Aは、電荷結合型固体撮像デバイス
やMOS型固体撮像デバイスによって被写体を二次元撮
像するカメラから成り、解析部Cから供給されるシャッ
タ信号Sonに同期して撮像すると共に、この撮像により
上記撮像デバイスに生じるフレーム画像の情報を、所定
の点順次読出し周期τsに同期した個々の画素信号SB W
にして時系列に読み出して、解析部Cへ供給する。
【0043】切削状態検出部Bは、一例として、図4
(a)(b)や図5(a)(b)に示す構成のものが適
用されている。
【0044】図4(a)に示す切削状態検出部Bは、旋
盤の送り系サーボモータにてZ方向に繰り出される刃物
台32に、電気絶縁部材34を介して金属製の切削工具
24が固着され、旋盤の主軸モータにて回転駆動される
金属製の被削材22と切削工具24との間に一定電圧の
直流電源36及び通電センサ38から成る電気回路が接
続された構成となっている。
【0045】通電センサ38は、検流計や抵抗素子等の
導電性検出手段が用いられ、切削工具24と被削材22
の切削面との接触時(導通時)と、それらの非接触時
(非導通時)との電流変化を検出して、その電流変化を
示す切削状態信号Stを後述の露出同期設定部Dに供給
する。したがって、切削状態信号Stは、電気回路中を
電流が流れるときは実質的な切削期間を示し、電流が流
れないときには切削工具24が被削材22から離れた非
切削期間を示す。
【0046】図4(b)に示す切削状態検出部Bは、主
軸モータヘ駆動電流を供給するための電源40の電流供
給経路中に切削動力センサ42が接続された構成となっ
ている。
【0047】切削動力センサ42は、切削加工中に主軸
モータに掛かる負荷に相当する駆動電流と、切削工具2
4と被削材22との非接触時の駆動電流を検出すること
により、切削工具24による切削期間及び非切削期間の
変化を示す切削状態信号Stを出力し、後述の露出同期
設定部Dに供給する。即ち、切削加工中では切削工具2
4と被削材22の切削面との当接に起因する負荷の増大
に伴って主軸モータに流れる駆動電流が増加し、切削工
具24と上記切削面との非接触時では駆動電流が減少す
ることから、これらの駆動電流の変化により切削期間と
非切削期間を示す切削状態信号Stを発生する。
【0048】あるいは、切削加工中に送り系サーボモー
タに流れる駆動電流の変化に基づいて切削状態信号St
を発生させる構成の切削状態検出部Bが適用される。即
ち、送り系サーボモータへ駆動電流を供給するための電
源44の電流供給経路中に切削動力センサ46が接続さ
れ、送り系サーボモータに掛かる負荷に対応する駆動電
流の変化を検出することにより、切削期間と非切削期間
を示す切削状態信号Stを発生させ、後述の露出同期設
定部Dに供給する。
【0049】尚、図4(b)に示すものはいずれも同一
の原理に基づくものであるので、いずれか一方の切削状
態検出部Bが適用される。また、これらの切削状態検出
部Bは、図4(a)のような切削工具24と被削材22
との電気的接触を検出するものではないので、金属製の
切削工具及び被削材による切削加工に限らず、例えばセ
ラミック等から成る絶縁性の切削工具及び被削材による
切削加工においても適用することができる。
【0050】図5(a)に示す切削状態検出部Bは、刃
物台32に切削工具24を支持するための支持部材48
の一端に歪みゲージ50が固着され、切削加工時におけ
る支持部材48の変形量に対応する歪みゲージ50の歪
み検出出力を動力アンプ52を介して出力する構成とな
っている。即ち、支持部材48に掛かる負荷に起因する
変形量が切削期間中では増加し非切削期間中では減少す
るので、歪みゲージ50でその変形量の変化に応じた歪
みを検出することによって、切削期間と非切削期間を示
す切削状態信号Stを出力し、後述の露出同期設定部D
に供給する。
【0051】図5(a)の切削状態検出部Bも、金属製
の切削工具及び被削材による切削加工に限らず、絶縁性
の切削工具及び被削材による切削加工においても適用す
ることができる。
【0052】図5(b)に示す切削状態検出部Bは、刃
物台32に圧電素子を有する圧電型動力計54を介して
切削工具24の支持部材48が固着され、切削加工中に
おける切削工具24の変位に応じて加わる圧力変化を検
出すると共に、その検出出力をチャージアンプ56を介
して出力する構成となっている。即ち、切削工具24と
被削材22とが接触する切削加工中では、支持部材48
の変位に伴って圧力型動力計54に掛かる圧力が増加
し、切削工具24が被削材22から離れる非切削期間中
ではその圧力が減少するので、かかる圧力変化を検出す
ることによって、切削期間と非切削期間を示す切削状態
信号Stを、後述の露出同期設定部Dに供給する。
【0053】図5(b)の切削状態検出部Bも、金属製
の切削工具及び被削材による切削加工に限らず、絶縁性
の切削工具及び被削材による切削加工においても適用す
ることができる。
【0054】そして、図4及び図5に列記したいずれか
一つの切削状態検出部Bが適宜に用いられる。
【0055】解析部Cは、所定アルゴリズムに基づくコ
ンピュータプログラムを実行することにより切削工具の
二次元温度分布を演算すると共に解析して異常判定等を
行う所謂コンピュータシステムから成り、図6に示す如
く、切削状態検出部Bの切削状態信号Stを入力する露
出同期設定部Dと、撮像部Aよりの画素信号SBWを入力
する画像入力部Eと、各種データの記録再生及び表示等
の処理を行う録再表示部Fと、切削工具の二次元温度分
布を演算する信号処理部Gと、切削工具の異常発生等を
解析処理する異常判定部Hを備え、操作者がキーボード
等の入力装置63を介して所望の処理を指示すると、マ
イクロコンピュータを内蔵した中央制御回路62がその
指示に応じて上記各部A〜Hの動作を制御するようにな
っている。
【0056】尚、解析部C中の露出同期設定部Dと画像
入力部E及び録再表示部Fの構成及び機能は、本願発明
者が既に出願した特願平8−81643号に詳細に開示
されているので、以下、これら各部D〜Fについて概説
する。
【0057】露出同期設定部Dは、プリアンプ64、波
形整形回路66、トリガ回路68及びタイマ回路70を
備え、図7のタイミングチャートに示す如く、プリアン
プ64で増幅された切削状態信号Stを波形整形回路6
6により二値信号Spに波形整形し、その二値信号Spが
論理“1”から“0”に反転した時点を示すパルス信号
Srをトリガ回路68において発生させ、更に、タイマ
回路70により、パルス信号Srの発生時点から所定遅
延時間を計数した直後に、その遅延時間を表す遅延時間
データDr及びシャッタ信号Sonを同時に出力する。
【0058】これにより、切削加工中に被削材22の1
回転する周期τがパルス信号Spの発生周期で表わさ
れ、切削期間τaと非切削期間τsとの切替り時点がパル
ス信号Spの発生時点で表わされる。また、パルス信号
Spの発生時点(切替り時点)は、切削工具24が被削
材22の被切削面22aから離れた直後を示すことにな
る。
【0059】各周期τにおけるパルス信号Srの発生時
点からシャッタ信号Sonの発生時点までの各遅延時間△
1,△2,△3…は、時間経過に伴って次第に長くなるよ
うに決められており、更に、遅延時間が非切削期間τs
を超える場合には、最短の遅延時間△1から繰り返して
設定することにより、常にシャッタ信号Sonを各周期τ
の切削期間τs内で発生させて、露出した切削工具24
を撮像部Aにて撮像させる。
【0060】画像入力部Eは、撮像部Aからの画素信号
BWをプリアンプ72で増幅した後、A/D変換器74
により読出し周期τsと同じサンプリング周期に同期し
てデジタルの画素データPi,jに変換し、更に、各画素
データPi,jを画素温度データ演算回路76により画素
温度データTPi,jに換算して出力する。
【0061】即ち、A/D変換器74のサンプリング周
期を読出し周期τsに同期させることにより、I×J個
の画素数から成るフレーム画像相当の画素データPi,j
(但し、1≦i≦I、1≦j≦J)を発生させる。但
し、画素データPi,jは撮像部Aの各画素にて受光され
た輝度成分であって温度成分を直接表さないので、画素
温度データ演算回路76において次式(1)のステファ
ンボルツマンの式を適用することにより、画素データP
i,jを温度成分の画素温度データTPi,jに換算する。
【0062】W=εσT4 …(1) 但し、Wは赤外線エネルギー(各画素データPi,jに相
当する) Tは物体の絶対温度(各画素温度データTPi,jに相当
する) εは放射率(≦1) σはステファンボルツマンの定数 尚、画素温度データ演算回路76は、各フレーム周期の
先頭の画素温度データTPi,jを出力する直前に、タイ
マ回路70からの遅延時間データDrを出力することに
より、引続き出力されるフレーム画像相当の画素温度デ
ータTi,jが前記いずれの遅延期間△l,△2,△3…にお
いて撮像されたものであるかを示すようになっている。
【0063】録再表示部Fは、マルチプレクサ回路7
8、複数フレームの画像データを格納可能な記憶容量を
有するフレームメモリ80、モニター等を有する表示部
82と、ハードディスク(HD)やフロッピディスク
(FD)等の記録媒体を有する記憶再生回路84を備え
ている。
【0064】マルチプレクサ回路78は、中央制御回路
62の指示に従って伝送経路の切換動作を行い、画像入
力部Eより出力される遅延時間データDr及び画素温度
データTPi,jをフレームメモリ80へ転送したり、信
号処理部Gにて形成される二次元温度分布データCP
i,jをフレームメモリ80や異常判定部Hへ転送する。
【0065】表示部82は、フレームメモリ80中の遅
延時間データDr及び画素温度データTPi,jや二次元温
度分布データCPi,j等に基づいて画像を再生表示した
り、これらのデータを印刷する等の処理を行う。
【0066】記録再生回路84は、フレームメモリ80
中の遅延時間データDr及び画素温度データTPi,jや二
次元温度分布データCPi,j等を前記ハードディスク
(HD)やフロッピディスク(FD)等の記録媒体に記
憶させたり、記憶したこれらのデータを再生してフレー
ムメモリ80に再転送したり、信号処理部G中の演算用
メモリ86へ転送する等の処理を行う。
【0067】画像処理部Gは、少なくとも1フレーム画
像相当のデータを格納し得る記憶容量を有する演算用メ
モリ86と、画素温度データTPi,jに基づいて二次元
温度分布データCPi,jを演算する温度分布換算回路8
8を備えている。
【0068】温度分布換算回路88は、撮像部A及び画
像入力部E等による前記撮像時に記録再生回路80にて
記憶された複数フレーム分の遅延時間データDr及び画
素温度データTPi.jが演算用メモリ86に格納される
と、切削工具24の二次元温度分布を求めるための次の
演算処理を実行する。
【0069】尚、図7に示した各非切削期間τsにおい
て、切削期間τaと非切削期間τsとの切替り時点trを
基準にして設定された各遅延時間△1,△2,△3毎に撮
像された切削工具24の各フレーム画像が図8(a)で
あるものとして二次元温度分布の演算処理を説明する。
【0070】同図(a)中の遅延時間データDr(△1
によって特定される画素温度データTPi,j(△1)によ
るフレーム画像は、切替り時点trから最も近いときに
撮像されたものであるので、切削期間τaにおける切削
工具24と被削材22との摩擦熱が残存した全体的に高
温状態を示すこととなる。
【0071】遅延時間データDr(△2)にて特定される
画素温度データTPi,j(△2)によるフレーム画像は、
次の周期τにおける切替り時点trを基準にして、遅延
時間△1よりも遅れた時間△2で撮像されたものであるの
で、かかる遅延時間△2中の空気冷却に起因して、遅延
時間△1で撮像されたフレーム画像よりも全体的に低温
状態を示すこととなる。
【0072】同様に、遅延時間データDr(△3)にて特
定される画素温度データTPi,j(△3)によるフレーム
画像は、次の周期τにおける切替り時点trを基準にし
て、遅延時間△2よりも更に遅れた時間△3で撮像された
ものであるため、かかる遅延時間△3中の空気冷却に起
因して、遅延時間△2で撮像されたフレーム画像よりも
全体的に更に低温状態を示すこととなる。
【0073】これら各周期τにおいて撮像されたフレー
ム画像において、ある特定の同位置の画素(x,y)に
対応する画素温度データTPx,y(△1)とTP
x,y(△2)及びTPx,y(△3)を抽出し、図8(b)の
グラフに示す如く、これらの画素温度データを、切替り
時点trを基準時にした遅延時間△1,△2,△3毎にプロ
ットする。尚、同図(b)は、横軸が時間、縦軸が画素
温度である。
【0074】したがって、切替り時点tr以前の切削期
間τaでは被削材22から出る切り屑によって切削工具
24が覆われているが、切替り時点tr後の非切削期間
τsにおいては、切削工具24が露出したときの画素温
度データがプロットされることになる。更に、同図
(b)中の切替り時点tr及びその直後では、切り屑が
完全に飛散しないで切削工具24を未だ覆っている場合
もあり得るが、最初の遅延時間△1を切り屑が十分に飛
散し得る期間後に設定することによって、完全に露出し
た切削工具24を撮像することができる。
【0075】そして、プロットされた画素温度データT
x,y(△1)とTPx,y(△2)及びTPx,y(△3)に基
づいて、カーブフィット法や最小2乗法等の統計処理
や、ニューラルネット法等を適用することにより、図8
(b)中の点線にて示す時間経過に対する冷却特性(以
下、冷却曲線という)を推定演算し、更に、この冷却曲
線に基づいて、切替り時点trにおける画素温度データ
TPx,y(tr)を求める。
【0076】更に、残余の位置に在る画素に対応する全
ての画素温度データTPi,j(△1)とTPi,j(△2)及
びTPi,j(△3)についても同様の処理を行うことによ
り、切替り時点trにおける全ての画素温度データTP
j,j(tr)を推定演算する。これらの切替り時点trで
の画素温度データを二次元温度分布データCPijとして
演算用メモリ86に格納すると共に、フレームメモリ8
0にも転送することによって表示部82にその二次元温
度分布の画像を表示させ、更に、記録再生回路84によ
りハードディスク(HD)等の記録媒体に記憶・保存さ
せる。
【0077】かかる演算処理によれば、現実には得るこ
とができない切替り時点trにおける露出状態の切削工
具24の二次元温度分布を求めることができる。又、非
切削期間τs中に露出した切削工具24の画素温度デー
タTPi,jに基づいて二次元温度分布のデータCPi,j
演算するので、切り屑の影響が除去された極めて鮮明な
二次元温度分布を得ることができる。
【0078】尚、上記の遅延時間△1,△2,△3…は、
2=2△1、△3=3△1の如く整数倍に比例した関係
に設定される必要は無く、0<△1<△2<△3…<τsの
関係を満足する適宜の時間であればよい。
【0079】更に、これらの遅延時間△l,△2,△3
は、撮像部A中の撮像デバイスが1フレーム画像を撮像
するのに要するフレーム周期とは関係なく設定すること
ができる。即ち、被削材22の各回転周期τにおける前
記切替り時点trに同期したシャッタ信号Sonに基づい
て撮像を行うので、一つの非切削期間τs中のみで複数
のフレーム画像を高速に撮像する必要がない。特に高速
の撮像デバイスを使用しなくとも、各遅延時間△1
2,△3…を短時間に設定するだけで、実質的に非切削
期間τs中に多数のフレーム画像を得ることができる。
この結果、これら多数のフレーム画像に相当する画素温
度データTPi,jに基づいて図8(b)の冷却曲線を極
めて精度良く求めることができ、ひいては切替り時点t
rの二次元温度分布のデータCPi、jを高精度で求めるこ
とができる。
【0080】次に、異常判定部Hについて説明する。図
6において、異常判定部Hには、マルチプレクサ回路7
8に接続される2系統の二値化回路90,94とバッフ
ァメモリ92,96、特徴情報計算回路98及び異常解
析回路100が備えられている。
【0081】二値化回路90は、マルチプレクサ回路7
8を介して転送されてくる画素温度データCPi,jを所
定温度に相当する予め決められたしきい値THLと比較
し、このしきい値THLを境にして、切削工具24の高温
部分と低温部分とを表す二値化された二次元温度分布の
データ(以下、基準二値化データと呼ぶ)Ri,jを形成
して、バッファメモリ92に記憶させる。二値化回路9
4も同様に、マルチプレクサ回路78を介して転送され
てくる画素温度データCPi,jを所定のしきい値THL
比較し、このしきい値THLを境にして、切削工具24の
高温部分と低温部分とを表す二値化された二次元温度分
布のデータ(以下、参照二値化データと呼ぶ)Di,j
形成して、バッファメモリ96に記憶させる。
【0082】ただし、後述するように、マルチプレクサ
回路78は、実際の切削加工の開始後しばらく経過した
時、即ち、切削工具24が未だ摩耗等を生じていない正
常な状態の時に二値化回路90側に切換わり、そのとき
に得られる画素温度データCPi,jを二値化回路90へ
供給する。したがって、バッファメモリ92には、切削
工具24が正常な時の1フレーム画像相当の二次元温度
分布の基準二値化データRi,jが格納される。
【0083】一方、上記基準二値化データRi,jがバッ
ファメモリ92に格納された後に、マルチプレクサ回路
78が二値化回路94側に切換わり、画素温度データC
i, jを二値化回路94へ供給する。そして、二値化回
路94で形成される最新の二次元温度分布の参照二値化
データDi,jを各フレーム周期毎に更新してバッファメ
モリ96に格納する。したがって、バッファメモリ96
には、切削工具24の異常を判定するための参照二値化
データDi,jが上記フレーム周期毎に格納される。
【0084】また、これらのバッファメモリ92,96
に格納された二次元温度分布の二値化データRi,jとD
i,jはフレームメモリ80にも転送され、これらのデー
タRi, jとDi,jに基づく二次元温度分布画像を表示部8
2にて再生表示させたり、記録再生回路84を介してハ
ードディスク(HD)等の記録媒体に記憶させるように
なっている。
【0085】特徴情報計算回路98は、バッファメモリ
96に逐次格納される参照二値化データDi,jをバッフ
ァメモリ92に格納されている基準二値化データRi,j
と対比することにより切削工具24の特徴を抽出し、異
常解析回路100は、この特徴抽出結果に基づいて切削
工具24の異常の有無を判定すると共に、異常判定の結
果を警報機110に供給することによって警報等を行わ
せたり、フレームメモリ80を介して表示部82に異常
の有無を表示させたり、記録再生回路84を介してハー
ドディスク(HD)等の記録媒体に記憶させる。
【0086】特徴情報計算回路98及び異常解析回路1
00は、次のような種々の異常解析機能を備えており、
操作者が入力装置63及び中央制御回路62を介してこ
れら複数の解析処理の内の一つを選択的に指定したり、
複数の解析処理を指定することができるようになってい
る。
【0087】以下、これら複数種類の異常解析処理の内
容を個々に説明する。
【0088】(第1の異常解析処理)前述した如く、撮
像部Aと切削状態検出部B及び解析部Cにより切削加工
中の切削工具24の二次元温度分布のデータCPi,j
測定し、バッファメモリ92に基準二値化データRi,j
が格納された後、バッファメモリ96にフレーム周期に
同期して参照二値化データDi,jが順次に格納される
と、特徴情報計算回路98が、そのフレーム周期に同期
して、バッファメモリ92の基準二値化データデータR
i,jとバッファメモリ96の参照二値化データDi,jを読
み取る。更に、基準二値化データRi,jに基づいて切削
工具24が正常なときの高温部分に相当する面積ARを
演算すると共に、参照二値化データDi,jに基づいて切
削加工継続中における切削工具24の高温部分の面積A
RCを演算して、これらの相対面積比ARC/ARを求
める。そして、相対面積比ARC/ARの値が、予め決
められたしきい値TARC/ARよりも大きくなったときに、
切削工具24に異常が発生したと判定する。
【0089】かかる異常解析処理を行うと、切削加工の
比較的初期の時点、即ち、切削工具24が正常なときの
刃先すくい面の二次元温度分布は、図9(a)に示す如
く、高温部分が比較的矩形状であり且つその面積ARは
小さく、一方、切削加工を更に継続していくと、同図
(b)に示す如く、切削工具24の高温部分の幅Wが拡
大していきその面積ARCが大きくなるので、相対面積
比ARC/ARを所定のしきい値TARC/ARと比較するこ
とにより、切削工具24の摩耗状態及び異常摩耗等を判
定することができる。
【0090】図13は、この第1の異常解析処理の有効
性を確認するために成された実験結果を示している。同
図上段は、切削加工の時間経過に伴う切削工具24の摩
耗状況を銀塩フィルムカメラにて撮影して得られた画像
をトレースしたものであり、同図下段は、本実施の形態
に係る異常検出装置にて得られた画素温度データCP
i.jに基づく二次元温度分布の印字画像を示したもので
あり、両者とも時間的に同期が取られている。
【0091】また、下表1は、図13に示す切削工具2
4の摩耗の程度に合わせて、実測した相対面積比ARC
/ARの時間変化を示している。
【0092】
【表1】
【0093】尚、切削条件は、次のように設定した。 切削工具24の条件は、材質:サーメツト、形状:CN
MG422(ブレーカ付き)、ホルダー:PCLNL3
225−43。被削材22の条件は、材質:SCM41
5。切削速度の条件は、150m/min。送り速度の
条件は、0.2mm/rev.断続部の幅は、15m
m。温度のしきい値THLは、500℃。
【0094】図13から明らかなように、時間の経過に
伴って切削工具24の刃先すくい面の摩耗範囲とその摩
耗深さが内部に向かって拡大していくにつれて(同図上
段参照)、二次元温度分布も同様に拡大していき(同図
下段参照)、各経過時点において最も高温度Tpとなる
箇所も摩耗範囲の拡大と共に、刃先の先端部分から内部
に向かって移っていく。そして、上記表1から明らかな
ように、相対面積比ARC/ARが例えば、約3.5倍
を超えたときに異常発生と判断することで、事故の発生
等を未然に防止することができることが確認された。即
ち、異常解析回路100に設定するしきい値TARC/AR
例えば3.5にすることにより、切削工具24の異常発
生を判定することができる。
【0095】(第2の異常解析処理)第2の異常解析処
理では、上記第1の異常解析処理で得られる相対面積比
ARC/ARの期間経過tに伴う変化について回帰分析
法を適用し、その変化傾向から求まる推定相対面積比が
上記所定のしきい値TARC/ARに到達するまでの推定時間
を演算することによって、切削工具24が破損状態に陥
るまでの残り寿命時間を推定する。
【0096】この異常解析処理の原理を図12に基づい
て詳述すると、時間経過tに伴う相対面積比ARC
(t)/ARを求めてプロットし、現時点tsまでのこ
の相対面積比ARC(t)/ARの複数データに基づい
て例えば回帰直線を求める。そして、この回帰直線にお
ける推定相対面積比の値が予め決められたしきい値T
ARC/ ARよりも大きくなるときの時点txを推定し、現時
点tsと推定時点txの時間差(tx−ts)を切削工具2
4の残り寿命時間と推定する。
【0097】したがって、この異常解析処理によれば、
切削工具24の残り寿命時間が予め求まるので、工具異
常に伴う事故の発生を未然に防止することができる。例
えば図12の実験結果によれば、切削加工を開始してか
ら10分経過した時点tsでの残り寿命時間を、約7.
5分と推定することができる。
【0098】(第3の異常解析処理)第3の異常解析処
理では、前述した如く、撮像部Aと切削状態検出部B及
び解析部Cにより切削加工中の切削工具24の二次元温
度分布のデータCPi,jを測定し、バッファメモリ92
に基準二値化データRi,jが格納された後、バッファメ
モリ96にフレーム周期に同期して参照二値化データD
i,jが順次に格納されると、特徴情報計算回路98が、
そのフレーム周期に同期して、バッファメモリ92の基
準二値化データデータRi,jとバッファメモリ96の参
照二値化データDi ,jを読み取る。更に、図9(a)に
示す如く、基準二値化データRi,jに基づいて切削工具
24が正常なときの高温部分の縦Hと横Wとの縦横比H
W(=H/W)を求め、これを基準の縦横比とする。ま
た、図9(b)に示す如く、参照二値化データDi,j
基づいて切削加工継続中における切削工具24の高温部
分の縦横比HWC(=H/W)を求めると共に、これら
の相対縦横比HWC/HWを求める。そして、相対縦横
比HWC/HWが予め決められたしきい値THWC/HWより
も小さくなったときに、切削工具24に異常が発生した
と判定する。
【0099】下表2は、異常判定の有効性を確認するた
めに、相対縦横比HWC/HWの時間経過に伴う変化を
実測したものである。尚、切削条件は前記第1の異常解
析処理と同様に設定した。
【0100】
【表2】
【0101】同表2から明らかなように、切削工具24
の摩耗が進行するにつれて相対縦横比HWC/HWの値
が次第に小さくなる。そこで、異常解析回路100に設
定するしきい値THWC/HWを例えば0.32に設定し、H
WC/HWがしきい値THWC/ HWより小さくなったとき
に、切削工具24に異常が発生したと判定することがで
きる。
【0102】(第4の異常解析処理)この第4の異常解
析処理では、上記第3の異常解析処理と同様にして得ら
れる相対縦横比HWC/HRの期間経過tに伴う変化に
ついて回帰分析法を適用し、その変化傾向から求まる推
定縦横比が上記所定のしきい値THWC/HWに到達するまで
の推定時間を演算することによって、切削工具24が破
損状態に陥るまでの残り寿命時間を推定する。即ち、図
12に基づいて説明した相対面積比比ARC/ARの回
帰直線と同様に、相対縦横比HWC/HRの回帰直線を
求め、その回帰直線における推定縦横比の値がしきい値
HWC/HWに到達するまでの推定時間と現時点との時間差
を切削工具24の残り寿命時間と予測することができ
る。
【0103】(第5の異常解析処理)この第5の異常解
析処理では、前述した如く、撮像部Aと切削状態検出部
B及び解析部Cにより切削加工中の切削工具24の二次
元温度分布のデータCPi,jを測定し、バッファメモリ
92に基準二値化データRi,jが格納された後、バッフ
ァメモリ96にフレーム周期に同期して参照二値化デー
タDi,jが順次に格納されると、特徴情報計算回路98
が、そのフレーム周期に同期して、バッファメモリ92
の基準二値化データデータRi,jとバッファメモリ96
の参照二値化データDi,jを読み取る。更に、基準二値
化データRi,jに基づいて切削工具24が正常なときの
高温部分の幅Wを求め、この幅Wよりも大きな所定値を
しきい値TWとする。また、参照二値化データDi,jに基
づいて切削加工継続中における切削工具24の高温部分
の幅WCを求める。そして、幅WCが上記しきい値TW
よりも大きくなったときに切削工具24に異常が発生し
たと判定する。
【0104】この異常解析処理によれば、特に切削工具
24の刃先逃げ面に生じる異常摩耗等を判定することが
できる。即ち、図10(a)に示す如く切削工具24が
正常な場合での刃先逃げ面の高温部分の幅Wに較べて、
図10(b)に示す如く切削工具24の摩耗等が進行し
たときのその高温部分の幅WCが拡大する。また、正常
時の高温部分の面積ARよりも摩耗進行状態での高温部
分の面積ARCが大きくなる。したがって、高温部分幅
WCとしきい値TWとを対比することにより、切削工具
24の刃先逃げ面における異常発生を判定することがで
きる。
【0105】図14は、この第5の異常解析処理の有効
性を確認するために成された実験結果を示している。同
図上段は、切削加工の時間経過に伴う刃先逃げ面の摩耗
状況を銀塩フィルムカメラにて撮影して得られた画像を
トレースしたものであり、同図下段は、本実施の形態に
係る異常検出装置にて得られた画素温度データCPi. j
に基づく二次元温度分布の印字画像を示したものであ
り、両者とも時間的に同期が取られている。
【0106】また、下表3は、図14に示す切削工具2
4の摩耗の程度に合わせて実測した高温部分の幅WCの
時間変化を示している。
【0107】
【表3】
【0108】尚、切削条件は、次のように設定した。 切削工具24の条件は、材質:超硬コーティング工具、
形状:CNMG422(ブレーカ付き)、ホルダー:P
CLNL3225−43。被削材22の条件は、材質:
SCM435。切削速度の条件は、150m/min。
送り速度の条件は、0.2mm/rev.断続部の幅
は、1.5mm。温度のしきい値THLは、600℃。
【0109】図14から明らかなように、時間の経過に
伴って切削工具24の刃先逃げ面の摩耗範囲とその摩耗
深さが内部に向かって拡大していくにつれて(同図上段
参照)、二次元温度分布も同様に拡大していき(同図下
段参照)、特に、逃げ面摩耗の場合には、切削工具24
の下面方向に向かって摩耗が進行する傾向があるので、
高温部分の幅WCに基づいて異常発生の有無を判定する
ことができることが確認された。
【0110】また、上記表3によれば、切削工具24の
刃先逃げ面の摩耗幅拡大に伴って得られる高温部分の幅
WCがしきい値TW(=0.255mm)より大きくな
ったときに異常発生と判定することにより、事故の発生
等を未然に防止することができる。
【0111】(第6の異常解析処理)この第6の異常解
析処理では、上記第5の異常解析処理と同様にして得ら
れる刃先逃げ面の高温部分の幅WCの期間経過tに伴う
変化について回帰分析法を適用し、その変化傾向から求
まる推定幅が上記所定のしきい値TWに到達するまでの
推定時間を演算することによって、切削工具24が破損
状態に陥るまでの残り寿命時間を推定する。即ち、図1
2に基づいて説明した相対面積比比ARC/ARの回帰
直線と同様に、刃先逃げ面の高温部分の幅WCの回帰直
線を求め、その回帰直線における推定幅の値がしきい値
Wに到達するまでの推定時間と現時点との時間差を切
削工具24の残り寿命時間と予測することができる。
【0112】(第7の異常解析処理)この第7の異常解
析処理では、前述した如く、撮像部Aと切削状態検出部
B及び解析部Cにより切削加工中の切削工具24の二次
元温度分布のデータCPi,jを測定し、バッファメモリ
92に基準二値化データRi,jが格納された後、バッフ
ァメモリ96にフレーム周期に同期して参照二値化デー
タDi,jが順次に格納されると、特徴情報計算回路98
が、そのフレーム周期に同期して、バッファメモリ92
の基準二値化データデータRi,jとバッファメモリ96
の参照二値化データDi,jを読み取る。更に、図11
(a)に示す如く、基準二値化データRi,jに基づいて
切削工具24が正常なときの高温部分の形状を基準パタ
ーンARとして記憶する。また、図11(b)に示す如
く、参照二値化データDi,jに基づいて切削加工継続中
における切削工具24の高温部分の参照形状ARCを求
め、基準パターンARと参照形状ARCとをパターンマ
ッチング法により比較して、一致しない部分の形状を抽
出する。そして、この抽出された形状の輪郭を演算し、
鋭利な突起部分q1,q3等と括れた部分q2等を抽出
し、これらの鋭利な突起部分と括れた部分とが抽出され
ると、切削工具24に境界摩耗が発生したとして異常判
定する。
【0113】図15は、この第7の異常解析処理の有効
性を確認するために成された実験結果を示している。同
図上段は、切削加工の時間経過に伴う刃先すくい面の摩
耗状況を銀塩フィルムカメラにて撮影して得られた画像
をトレースしたものであり、同図下段は、本実施の形態
に係る異常検出装置にて得られた画素温度データCP
i.jに基づく二次元温度分布の印字画像を示したもので
あり、両者とも時間的に同期が取られている。尚、切削
条件は、次のように設定した。
【0114】切削工具24条件は、材質:セラミック工
具、形状:SNMN433(ブレーカなし)。
【0115】被削材22の条件は、材質:FC250。
切削速度の条件は、150m/min。送り速度の条件
は、0.2mm/rev。断続部の幅は、1.5mm。
温度のしきい値THLは、500℃。
【0116】図15から明らかなように、時間の経過に
伴って切削工具24の刃先すくい面に、鋭利な部分と括
れた部分を有する高温部分を計測することができ、境界
線データq1,q2,q3等に基づいて境界摩耗の発生
を判定することが有効であることが確認された。
【0117】(第8の異常解析処理)この第8の異常解
析処理では、前記第7の異常解析処理と同様に、参照二
値化データDi,jに基づいて切削加工継続中における切
削工具24の高温部分の参照形状ARCを求め、図11
(b)に示す如く、この参照形状ARC中の鋭利部分q
1の幅WCを抽出する。そして、この幅WCが予め決め
られたしきい値TWより大きくなったときに切削工具2
4に境界摩耗による異常が発生したと判定する。
【0118】下表4はこの異常解析処理の有効性を確認
するために、境界摩耗に起因する鋭利部分の幅WCの時
間変化を実測したものである。尚、切削条件は第7の異
常解析処理中の説明と等しくした。この表3から明らか
な如く、例えばしきい値TWを1.5mmに設定するこ
とにより、境界摩耗の発生を判定することができること
が確認された。
【0119】
【表4】
【0120】(第9の異常解析処理)この第9の異常解
析処理では、前記第7の異常解析処理と同様に、参照二
値化データDi,jに基づいて切削加工継続中における切
削工具24の高温部分の参照形状ARCを求め、図11
(b)に示す如く、この参照形状ARC中の鋭利部分q
1の時間経過に伴う変化を演算し、回帰分析法により鋭
利部分q1の幅WCの変化に基づいて例えば図12の如
き回帰直線を求め、この回帰直線における推定幅の値が
予め決められたしきい値TWに到達する間での推定時間
を、切削工具24の残り寿命時間と予測する。
【0121】この異常解析処理によれば、境界摩耗に起
因する切削工具24の異常発生が生じるまでの時間を予
測するので、事故の発生を未然に防止することができ
る。
【0122】(第10の異常解析処理)この第10の異
常解析処理においては、第7の異常解析処理と同様に、
切削工具24が正常なときの基準パターンARと参照二
値化データDi,jに基づく高温部分の参照形状ARCを
演算し、これら基準パターンARと参照形状ARCとを
パターンマッチング法によって対比する。そして、基準
パターンARには存在するが、参照形状ARCにはそれ
に対応するデータDi,jが存在しない部分を検出する
と、その検出箇所の刃先に欠損が発生したと判定する。
【0123】かかる異常解析処理によれば、切削工具2
4に欠落した欠損部分が生じると二次元温度分布にもそ
れに対応して大きな変化が生じるので、計測した二次元
温度分布から切削工具24の欠損異常等を高い確度で推
定することができる。
【0124】以上説明したように、この実施の形態によ
れば、各種の異常解析処理機能を備え、これらの異常解
析処理を操作者が適宜に選択することができる。そし
て、各異常解析処理を実行することにより、異常の有無
や異常の状況等を自動的に判定し、更に、記録表示部F
には、画素温度データCPi,jによる再生画像や二値化
画素データDi,jによる再生画像、及び異常判定部Hの
判定結果のデータがリアルタイム表示される。このよう
に、視覚的に異常の有無等を表示するので、操作者にと
って、異常の有無やそれに対する処理を迅速適格に判断
することが可能になる。
【0125】尚、この第1の実施の形態では、回帰分析
法を適用して工具の寿命時間を推定することにしたが、
ニューラルネットワークを適用する等、他の統計手法を
用いてもよい。ニューラルネットワークを用いれば、非
線形性をもつような複雑な解析も簡便に行うことが可能
となる。
【0126】(第2の実施の形態)次に、本発明の異常
検出装置に係る他の実施の形態を図面と共に説明する。
【0127】図16は、異常検出装置の構成を示す。
尚、同図中、撮像部A、切削状態検出部B、解析部C中
の露出同期設定部Dと画像入力部Eと録再表示部F及び
信号処理部Gは、図6中に同一符号にて示す各構成要素
と同じであるので、この実施の形態特有の構成要素を説
明する。
【0128】図16において、解析部Cには異常判定部
Iが備えられ、マルチプレクサ回路78に接続された第
1,第2の最高温度探索回路102,104と、バッフ
ァメモリ104、異常解析回路108及び警報機110
が備えられている。
【0129】第1の最高温度探索回路102は、マルチ
プレクサ回路78を介して転送されてくる1フレーム画
相当の画素温度データCPi,j中から最高温度を表すデ
ータ(以下、基準最高温度データと呼ぶ)DPmaxを検
索し、バッファメモリ104に記憶させる。
【0130】第2の最高温度探索回路106も同様に、
マルチプレクサ回路78を介して転送されてくる1フレ
ーム画相当の画素温度データCPi,j中から最高温度を
表すデータ(以下、参照最高温度データと呼ぶ)CP
maxを検索する。
【0131】ただし、後述するように、マルチプレクサ
回路78は、実際の切削加工の開始後しばらく経過した
時、即ち、切削工具24が未だ摩耗等を生じていない正
常な状態の時に第1の最高温度探索回路102側に切換
わり、そのときに得られる画素温度データCPi,jを第
1の最高温度探索回路102へ供給する。したがって、
バッファメモリ104には、切削工具24が正常な時に
最高温度になる部分及びその最高温度を表す基準最高温
度データDPmaxが記憶される。
【0132】一方、上記基準最高温度データDPmax
バッファメモリ104に格納された後に、マルチプレク
サ回路78が第2の最高温度探索回路106側に切換わ
り、画素温度データCPi,jを第2の最高温度探索回路
106へ供給する。したがって、第2の最高温度探索回
路106からは、各フレーム周期に同期して、切削工具
24の各フレーム画像毎の参照最高温度データCPmax
が出力される。
【0133】また、バッファメモリ104に格納された
基準最高温度データDPi,jはフレームメモリ80にも
転送されて表示部82にて再生表示させたり、記録再生
回路84を介してハードディスク(HD)等の記録媒体
に記憶させるようになっている。
【0134】異常解析回路108は、バッファメモリ1
04に格納されている基準最高温度データDPi,jと第
2の最高温度探索回路106から出力される参照最高温
度データCPi,jとを対比することにより、切削工具2
4の異常発生の有無等を判定すると共に、異常判定の結
果を警報機110に供給することによって警報等を行わ
せたり、フレームメモリ80を介して表示部82に異常
の有無を表示させたり、記録再生回路84を介してハー
ドディスク(HD)等の記録媒体に記憶させる。
【0135】異常解析回路108は、次のような種々の
異常解析機能を備えており、操作者が入力装置63及び
中央制御回路62を介してこれら複数の解析処理の内の
一つを選択的に指定したり、複数の解析処理を指定する
ことができるようになっている。
【0136】以下、これら複数種類の異常解析処理の内
容を個々に説明する。
【0137】(第1の異常解析処理)前述した如く、撮
像部Aと切削状態検出部B及び解析部Cにより切削加工
中の切削工具24の二次元温度分布のデータCPi,j
測定し、バッファメモリ104に基準最高温度データD
maxが格納された後、第2の最高温度探索回路106
からフレーム周期毎に参照最高温度データCPmaxが出
力されると、異常解析回路108は、参照最高温度CP
maxが基準最高温度データDPmaxの所定倍率kの値を超
えたときに異常発生と判定する。換言すれば、基準最高
温度データDPmaxの所定倍率kの値をしきい値Tmax
し、参照最高温度CPmaxがこのしきい値Tmaxを超えた
時に切削工具24に異常が発生したと判定する。そし
て、この判定結果に基づいて警報機110に警報させた
り、フレームメモリ80を介して表示部82に警報内容
を表示させたり、記憶再生回路84を介して異常判定結
果をハードディスク(HD)等の記録媒体に記憶させ
る。
【0138】下表5は、この異常解析処理の有効性を確
認するために実測した、切削工具24の最高温度の時間
経過を伴う変化を示したものである。尚、切削条件は、
図14に示す実験時と同じに設定した。
【0139】
【表5】
【0140】同表から明らかな如く、参照最高温度デー
タCPmaxによる最高温度が約740℃を超えると異常
と判定することが確認された。したがって、切削工具2
4が正常の時の温度(表中、649℃)に対して倍率k
を約1.14倍に設定することにより、異常判定のため
のしきい値Tmaxを約740℃とすることが効果的であ
る。
【0141】また、この異常解析処理によれば、特に切
削工具24の刃先逃げ面の摩耗異常を判定するのに有効
であることが確認された。
【0142】(第2の異常解析処理)この第2の異常解
析処理では、この実施の形態に係る上記第1の異常解析
処理と同様に、第2の最高温度探索回路106によっ
て、フレーム周期毎に時間経過に伴う参照最高温度デー
タCPmaxを求め、図12に示したのと同様に、回帰分
析法によりこれらの参照最高温度データCPmaxの変化
に基づいて例えば回帰直線を演算する。そして、この回
帰直線における推定最高温度の値が予め決められたしき
い値Tmaxに到達するまでの時間を現時点からの残り寿
命時間と推定する。
【0143】この異常解析処理によれば、切削工具24
の残り寿命時間を予測するので、事故の発生等を未然に
防止することができる。
【0144】尚、この第2の実施の形態でも、回帰分析
法を適用して工具の寿命時間を推定することとしたが、
ニューラルネット法等の他の統計手法を用いてもよい。
【0145】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、
切削工具の摩耗状況や寿命時間をリアルタイムで検知す
ることができるので、切削工具の交換時期を判断した
り、事故の発生を未然に防止したり、加工不良の発生を
未然に防止することができる等の効果が得られる。特
に、切削工具の刃先の摩耗範囲及びその深さが次第に拡
大していく所謂クレータ摩耗、所謂逃げ面摩耗、所謂境
界摩耗などのこれまでインプロセス検出の困難であった
種類の摩耗を容易に測定することができるという優れた
効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】二次元温度分布測定の原理を説明するための説
明図である。
【図2】二次元温度分布測定の原理を更に説明するため
の説明図である。
【図3】温度分布計測装置の概略構成を示す説明図であ
る。
【図4】切削状態検出部の構成例を示す説明図である。
【図5】切削状態検出部の他の構成例を示す説明図であ
る。
【図6】本発明の一実施の形態の構成を示すブロック図
である。
【図7】露出同期設定部の動作を説明するためのタイミ
ングチャートである。
【図8】信号処理部の動作及び露出温度を予測するため
の原理を説明するための説明図である。
【図9】切削工具のすくい面の異常摩耗等を判定するた
めの原理を説明するための説明図である。
【図10】切削工具の逃げ面の異常摩耗等を判定するた
めの原理を説明するための説明図である。
【図11】切削工具の境界摩耗等を判定するための原理
を説明するための説明図である。
【図12】切削工具の残り寿命時間を予測するための原
理を説明するための説明図である。
【図13】二次元温度分布と光学映像とを対比して示す
実測結果の図である。
【図14】二次元温度分布と光学映像とを対比して示す
他の実測結果の図である。
【図15】二次元温度分布と光学映像とを対比して示す
他の実測結果の図である。
【図16】本発明の他の実施の形態の構成を示すブロッ
ク図である。
【符号の説明】
A…撮像部、B…切削状態検出部、C…解析部、D…露
出同期設定部、E…画像入力部、F…録再表示部、G‥
信号処理部、H,I…異常判定部、22…被削材、22
s…断続部、24…切削工具、76…画素温度データ換
算回路、88…温度分布演算回路、90,94…二値化
回路、92,96,104…バッファメモリ、98…特
徴情報計算回路、100,108…異常解析回路、10
2,106…最高温度探索回路、110…警報機。

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 切削加工中における切削工具の二次元温
    度分布を測定する二次元温度分布測定手段と、 前記二次元温度分布測定手段により得られた二次元温度
    分布のデータを所定のしきい値と比較することにより、
    前記切削工具の高温部分と低温部分との形状を表す二値
    化された二次元温度分布のデータを形成する二値化手段
    と、 前記高温部分の形状を表す二値化された二次元温度分布
    のデータに基づいて前記切削工具の異常を判定する異常
    判定手段と、を具備することを特徴とする切削工具の異
    常検出装置。
  2. 【請求項2】 前記異常判定手段は、前記高温部分の形
    状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高温部
    分の面積を演算すると共に、前記高温部分の面積と予め
    決められた基準面積との相対面積比を演算し、前記相対
    面積比の値が所定のしきい値を超えると異常と判定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の切削工具の異常検出
    装置。
  3. 【請求項3】 前記異常判定手段は、前記高温部分の形
    状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高温部
    分の面積を演算すると共に、前記高温部分の面積と予め
    決められた基準面積との時間経過に伴う相対面積比の変
    化を演算し、回帰分析法により前記相対面積比の変化に
    基づいて推定した推定相対面積比の値が所定のしきい値
    に到達するまでの推定時間を求め、前記推定時間に基づ
    いて前記切削工具の残り寿命時間を予測することを特徴
    とする請求項1に記載の切削工具の異常検出装置。
  4. 【請求項4】 前記異常判定手段は、前記高温部分の形
    状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高温部
    分の縦横比を演算し、前記縦横比の値と予め決められた
    基準の縦横比の値との相対比の値が所定のしきい値を超
    えると異常と判定することを特徴とする請求項1に記載
    の切削工具の異常検出装置。
  5. 【請求項5】 前記異常判定手段は、前記高温部分の形
    状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高温部
    分の縦横比を演算すると共に、前記縦横比と予め決めら
    れた基準の縦横比との時間経過に伴う相対比の変化を演
    算し、回帰分析法により前記相対比の変化に基づいて推
    定した推定相対比の値が所定のしきい値に到達するまで
    の時間を求め、前記推定時間に基づいて前記切削工具の
    残り寿命時間を予測することを特徴とする請求項1に記
    載の切削工具の異常検出装置。
  6. 【請求項6】 前記異常判定手段は、前記高温部分の形
    状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高温部
    分の幅を演算し、前記幅が所定のしきい値を超えると異
    常と判定することを特徴とする請求項1に記載の切削工
    具の異常検出装置。
  7. 【請求項7】 前記異常判定手段は、前記高温部分の形
    状を表す二次元温度分布のデータに基づいて前記高温部
    分の幅の時間経過に伴う変化を演算し、回帰分析法によ
    り前記幅の時間変化に基づいて推定した推定幅の値が所
    定のしきい値に到達するまでの推定時間を求め、前記推
    定時間に基づいて前記切削工具の残り寿命時間を予測す
    ることを特徴とする請求項1に記載の切削工具の異常検
    出装置。
  8. 【請求項8】 前記異常判定手段は、前記高温部分の形
    状を表す二次元温度分布のデータと予め決められたパタ
    ーンデータとをパターンマッチングし、前記高温部分の
    形状を表す二次元温度分布のデータから鋭利な突起形状
    と括れた形状とを検出すると、前記切削工具に境界摩耗
    が発生したと判定することを特徴とする請求項1に記載
    の切削工具の異常検出装置。
  9. 【請求項9】 前記異常判定手段は、前記高温部分の形
    状を表す二次元温度分布のデータと予め決められたパタ
    ーンデータとをパターンマッチングし、前記高温部分の
    形状を表す二次元温度分布のデータから鋭利な突起形状
    を検出すると共に、前記突起形状の幅が所定のしきい値
    を超えると異常と判定することを特徴とする請求項1に
    記載の切削工具の異常検出装置。
  10. 【請求項10】 前記異常判定手段は、前記高温部分の
    形状を表す二次元温度分布のデータと予め決められたパ
    ターンデータとをパターンマッチングし、前記高温部分
    の形状を表す二次元温度分布のデータから鋭利な突起形
    状の幅の時間経過に伴う変化を演算し、回帰分析法によ
    り前記突起形状の幅の変化に基づいて推定した推定幅の
    値が所定のしきい値に到達するまでの推定時間を求め、
    前記推定時間に基づいて前記切削工具の残り寿命時間を
    予測することを特徴とする請求項1に記載の切削工具の
    異常検出装置。
  11. 【請求項11】 前記異常判定手段は、前記切削工具の
    形状を表す二次元温度分布のデータと予め決められたパ
    ターンデータとをパターンマッチングし、前記予め決め
    られたパターンデータに対応する前記二次元温度分布の
    データが欠落している部分を、前記切削工具の欠損部分
    と判定することを特徴とする請求項1に記載の切削工具
    の異常検出装置。
  12. 【請求項12】 切削加工中における切削工具の二次元
    温度分布を測定する二次元温度分布測定手段と、 前記二次元温度分布測定手段により得られた二次元温度
    分布内の最高温度を探索する手段と、 前記最高温度の変化に基づいて前記切削工具の異常を判
    定する異常判定手段と、を具備することを特徴とする切
    削工具の異常検出装置。
  13. 【請求項13】 前記異常判定手段は、前記二次元温度
    分布内の最高温度が予め決められた所定のしきい値を超
    えると異常と判定することを特徴とする請求項12に記
    載の切削工具の異常検出装置。
  14. 【請求項14】 前記異常判定手段は、前記二次元温度
    分布内の最高温度の時間経過に伴う変化を演算し、回帰
    分析法により前記最高温度の変化に基づいて推定した推
    定最高温度が所定のしきい値に到達するまでの推定時間
    を求め、前記推定時間に基づいて前記切削工具の残り寿
    命時間を予測することを特徴とする請求項12に記載の
    切削工具の異常検出装置。
  15. 【請求項15】 前記異常判定手段は、前記異常を判定
    すると異常発生を示す警報信号を出力することを特徴と
    する請求項1又は請求項12に記載の切削工具の異常検
    出装置。
  16. 【請求項16】 前記二次元温度分布測定手段は、 前記切削加工中に、前記切削工具と被削材とを接触させ
    ることにより実質的な切削期間と、前記切削工具と前記
    被削材とを離すことにより実質的な非切削期間とを設定
    する切削状態設定手段と、 前記非切削期間中に前記切削工具を撮像する撮像手段
    と、 前記撮像手段により得られる画像データを温度成分の画
    像温度データに換算するデータ換算手段と、 前記画像温度データに基づいて前記非切削期間中の時間
    経過に伴う前記切削工具の冷却特性を演算し、前記冷却
    特性に基づいて前記切削期間と前記非切削期間との切替
    り時点における前記切削工具の前記二次元温度分布のデ
    ータを推定演算する温度分布演算手段と、を具備するこ
    とを特徴とする請求項1又は請求項12に記載の切削工
    具の異常検出装置。
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