JPH10156564A - アルミニウム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法 - Google Patents

アルミニウム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法

Info

Publication number
JPH10156564A
JPH10156564A JP8310977A JP31097796A JPH10156564A JP H10156564 A JPH10156564 A JP H10156564A JP 8310977 A JP8310977 A JP 8310977A JP 31097796 A JP31097796 A JP 31097796A JP H10156564 A JPH10156564 A JP H10156564A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aluminum
laser
groove
notch
welding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8310977A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeshi Matsumoto
松本  剛
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP8310977A priority Critical patent/JPH10156564A/ja
Publication of JPH10156564A publication Critical patent/JPH10156564A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Laser Beam Processing (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 低出力のレーザ装置を使用しても、十分な溶
込みを得ることができ、溶接部の形状が安定して良好で
あって高い継手強度を有するアルミニウム又はアルミニ
ウム合金材のレーザ溶接方法を提供する。 【解決手段】 アルミニウム又はアルミニウム合金板か
らなる第1部材1及び第2部材2を準備し、第1部材1
の端面にL字状の切欠き5を設ける。そして、切欠き5
が形成された端面を上方に向けて第1部材1を垂直に立
て、この切欠き5に、第2部材2の端部を水平にしてこ
れを嵌合して角形継手を形成する。次に、第1部材1と
第2部材2との間に形成された継手に対して、第1部材
1の端面側からレーザ光6を照射することにより、両者
を溶接接合する。このとき、第1部材の切欠きが設けら
れた部分の肉厚をd(mm)、第2部材の端部の肉厚を
t(mm)とし、第1部材と第2部材との間に形成され
た開先部から第1部材側の肉厚方向にe(mm)離間し
た位置をレーザ光の狙い位置としたとき、dをtの25
乃至75%とし、eを0乃至0.5dとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は角形継手等の溶接部
をレーザ溶接するアルミニウム又はアルミニウム合金材
のレーザ溶接方法において、特に、溶接部の形状が安定
して良好であると共に、高接合強度が得られるアルミニ
ウム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、輸送機材において、低燃費化及び
高速化が要求されており、より軽量な構造が採用される
ようになっている。そして、これらの構造物の材料とし
て鉄鋼材の代わりに、軽量であるアルミニウム又はアル
ミニウム合金材が使用されるようになっている。以下、
アルミニウム又はアルミニウム合金材を総称して、単に
アルミニウム材という。このようなアルミニウム材に
は、その製造方法の違いから圧延材、押出形材、鋳物材
等があり、種々の溶接構造物にも使用されている。
【0003】通常、アルミニウム材はアーク溶接を主体
とする溶接により接合されて、溶接構造物に組み込まれ
ている。しかしながら、アルミニウム部材は、溶接熱に
よる変形、歪み及び残留応力が大きいという性質を有し
ており、これらの変形、歪み及び残留応力を補修するた
めのコストが高くなってしまう等の理由から、アルミニ
ウム部材のアーク溶接については、大幅な使用実績を得
ることができなかった。
【0004】一方、レーザ溶接法は、そのエネルギー密
度が高いことから、高速で、能率が高く、歪みが少ない
溶接方法として鋼材等の溶接方法に広く使用されてきて
いる。また、溶接熱の影響による変形及び歪みが少ない
ので、突合せ溶接又は重ね溶接等の溶接方法を使用し
て、熱影響を受けやすいアルミニウム材をレーザ溶接法
により接合することにより、溶接能率を向上させること
が試みられている。
【0005】図14は従来のレーザ溶接方法により溶接
したアルミニウム材の継手を示す断面図である。垂直に
配置されたアルミニウム板31の端部表面に、水平に配
置されたアルミニウム板32の端面を当て、これにより
形成された開先部33の上方からレーザ光を照射するこ
とにより、開先部33の近傍のアルミニウム板31及び
32が溶融して溶融部34となり、両者が接合される。
【0006】前述の如く、レーザ溶接法はエネルギー密
度が高く、深溶込みを得ることができる方法として公知
であるため、図14に示すように継手が形成されたアル
ミニウム材を溶接する場合には、開先部33をレーザ光
により一気に溶融させて、接合させる方法が適してい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、アルミ
ニウム材はその表面の光吸収率が極めて低いという性質
を有しているため、アルミニウム材をレーザ溶接する場
合にレーザ光が反射しやすいという問題点がある。ま
た、アルミニウム材は熱伝導率が高いという性質も有し
ているので、アルミニウム材をレーザ溶接する場合、大
出力のレーザエネルギーが必要となる。従って、図14
に示すように、アルミニウム板31及び32を単純な継
手形状で配置した場合、両者を効率よく溶融させるため
には、大入熱とすると共に、常にレーザ光の狙い位置を
開先部33に向ける必要がある等、溶接条件を高精度に
設定する必要がある。また、このようなレーザエネルギ
ーを出力することができる装置を準備する必要があるの
で、溶接のためのイニシャルコストが高くなってしま
う。
【0008】更に、アルミニウム材は、一旦溶融すると
急激に光の吸収率が向上するという性質を有しているた
め、アルミニウム材を溶融させるために加えた多大なレ
ーザエネルギーが過大な金属プラズマを発生し、その圧
力により溶融池に悪影響を与えることがある。
【0009】このような欠点を解決するために、図14
に示すアルミニウム板31の端面にL字状の切欠きを設
け、その切欠きにアルミニウム板32の端部を嵌合して
継手を形成し、アルミニウム板31の端面側からレーザ
溶接する溶接方法も提案されている。
【0010】しかしながら、上述の溶接方法によって継
手を溶接しても、切欠きのサイズ及びレーザ狙い位置に
よっては、所望の溶込みを得ることができず、継手強度
が低下することがある。また、アルミニウム材をレーザ
溶接すると、金属蒸気の影響と考えられる不安定なキー
ホールが形成され、これによりポロシティ欠陥が発生し
たり、溶融金属の粘性が低いことにより溶け落ち等の欠
陥が発生しやすくなって、溶接部の形状が不安定とな
る。
【0011】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、低出力のレーザ装置を使用しても、十分な
溶込みを得ることができ、溶接部の形状が安定して良好
であって高い継手強度を有するアルミニウム又はアルミ
ニウム合金材のレーザ溶接方法を提供することを目的と
する。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係るアルミニウ
ム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法は、アルミ
ニウム又はアルミニウム合金からなる第1部材及び第2
部材を、第1部材の端面にL字状の切欠きを設け、前記
切欠きに、前記第1部材に対して直角となる方向で前記
第2部材の端部を嵌合して配置し、前記第1部材の端面
側から両者をレーザ溶接するレーザ溶接方法であって、
前記第1部材の切欠きが設けられた部分の肉厚をd(m
m)、前記第2部材の端部の肉厚をt(mm)とし、第
1部材と第2部材との間に形成された開先部から前記第
1部材側の肉厚方向にe(mm)離間した位置をレーザ
光の狙い位置としたとき、dをtの25乃至75%と
し、eを0乃至0.5dとしてレーザ溶接することを特
徴とする。
【0013】本発明においては、第1部材に切欠きを設
けることによりその上端部を薄肉化しているので、開先
部にレーザ光を照射したときに溶融潜熱を小さくするこ
とができ、これにより、レーザ光の熱集中が良好にな
る。従って、レーザエネルギーを小入熱として溶接して
も、十分な溶込みを有する溶融部を得ることができる。
また、小入熱で溶融するので、溶接部の形状等が安定し
て優れたものとなり、第1部材と第2部材とが完全に一
体化する。その結果、本発明方法によってレーザ溶接す
ることにより、更に一層高い強度を有する継手を形成す
ることができる。
【0014】更にまた、深い溶込みを得る場合、第1部
材にL字状の切欠きが設けられているので、粘性が低い
アルミニウム又はアルミニウム合金溶湯が切欠きの底面
で保持され、溶け落ち欠陥の発生を防止することができ
る。
【0015】この切欠きのサイズについては、前記dが
tの25%未満であると、完全に溶融しても溶接時にお
いて溶接部の溶湯量が少なくなるので、継手部の強度が
不十分となってしまう。一方、dがtの75%を超える
と、前述の如く、溶接部を溶融させるために必要な熱量
が増加し、低出力で加工する場合に完全な溶融部を得る
ことができない。その結果、溶接部の溶込みが浅くなっ
て、強度が低下する。従って、本発明においては、切欠
きが設けられた部分の肉厚dを第2部材端部の肉厚tの
25乃至75%とする。
【0016】また、前記eが負の値、即ち、レーザ光の
狙い位置を開先部よりも第2部材側とすると、体積的に
溶融潜熱が大きく、溶融熱が不足して十分な溶込みを得
ることができないので、溶融部の強度が低下する。一
方、eが0.5dを超えると、溶接すべき開先部の位置
から溶接部が離間しすぎるので、両者を溶接接合するこ
とができなくなる。従って、本発明においては、eが0
乃至0.5dの範囲を満足するようにeを設定し、開先
部から第1部材側の肉厚方向にe(mm)離間した位置
をレーザ溶接位置とする。
【0017】また、L字状の切欠きの隅部底面側に、前
記隅部に沿う形状の溝を形成することが好ましい。深い
溶込みを得る条件でレーザ溶接する場合、第1部材に設
けられたL字状の切欠きの隅部底面側に、この隅部に沿
う形状の溝が形成されていると、溶接時に発生してブロ
ーホールの原因となる金属蒸気及び水素等は、この溝を
介して外部に排出される。また、この溝は、アルミニウ
ム又はアルミニウム合金溶湯を保持することができるの
で、溶け落ちを防止する効果を高めることができる。但
し、浅い溶込みの溶接部を得る場合には、前記溝を形成
する必要はない。
【0018】更に、前記第2部材の端部の肉厚をt(m
m)とし、前記切欠きの底面の幅をf(mm)、前記溝
の幅をg(mm)、前記溝の深さをh(mm)としたと
き、gを0.5f以下とし、hを0.5t以下とするこ
とが望ましい。
【0019】このg及びhが0である場合、即ち、溝を
形成しない場合、深い溶込みを得る条件でレーザ溶接す
ると、金属蒸気、水素及びシールドガス等のブローホー
ル並びにポロシティ欠陥の発生源となるガスを外部に排
出することができないので、欠陥の発生量が増加する。
一方、gが0.5fを超えるか又はhが0.5tを超え
ると、溝による溶湯の保持力が低下するので、溶け落ち
が発生して、アンダフィル又はアンダカットが発生しや
すくなる。従って、切欠きの隅部底面側に溝を形成する
場合、gを0.5f以下とすると共に、hを0.5t以
下とすることが好ましい。
【0020】なお、本発明の継手形状において、第1部
材と第2部材とがなす角度は厳密に直角である必要はな
く、実質的に直角であれば、本発明を適用することがで
きる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について添
付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の
第1の実施例に係るアルミニウム又はアルミニウム合金
材のレーザ溶接方法を示す断面図である。先ず、アルミ
ニウム又はアルミニウム合金板からなる第1部材1及び
第2部材2を準備し、第1部材1の端面にL字状の切欠
き5を設ける。そして、切欠き5が形成された端面を上
方に向けて第1部材1を垂直に立て、この切欠き5に、
第2部材2の端部を水平に配置してこれを嵌合して角形
継手を形成する。次に、第1部材1と第2部材2との間
に形成された継手に対して、第1部材1の端面側からレ
ーザ光6を照射することにより、両者を溶接接合する。
【0022】本実施例においては、第1部材1に切欠き
5が設けられているので、この切欠き5が形成された第
1部材1の端部は肉厚が薄くなっている。従って、開先
部3にレーザ光6を照射したときに溶融潜熱を小さくす
ることができ、これにより、レーザ光6の熱集中が良好
になる。従って、レーザエネルギーを小入熱として溶接
しても、十分な溶込みを有する溶融部を得ることができ
る。また、小入熱で溶融するので、溶接部の形状等が安
定して優れたものとなり、第1部材1と第2部材2とが
完全に一体化して、その結果、継手強度が向上する。
【0023】また、深い溶込みの溶接部を得る場合、第
1部材1に切欠き5が設けられているので、粘性が低い
アルミニウム又はアルミニウム合金溶湯が切欠き5の底
面で保持される。従って、溶け落ち欠陥の発生を防止す
ることができる。
【0024】本発明においては、溶接部の形状及び継手
強度を向上させることができる切欠き5のサイズ及びレ
ーザ狙い位置の範囲を規定している。図2は切欠き5の
サイズを示す模式図である。図2に示すように、第1部
材1の切欠きが設けられた部分1aの肉厚をd(m
m)、前記第2部材の端部の肉厚をt(mm)とする
と、dをtの25乃至75%とすることにより、低出力
の加工によって完全な溶融部を得ることができ、継手強
度を向上させることができる。
【0025】図3はレーザ狙い位置を示す模式図であ
る。図3に示すように、開先部3から第1部材1側の肉
厚方向にe(mm)離間した位置をレーザ光の狙い位置
としたとき、eを0乃至0.5dとしてレーザ溶接する
ことにより、継手強度を向上させることができる。な
お、図3において、レーザ光6aはeが0のとき、即ち
開先部3を狙う場合の狙い位置を示し、レーザ光6bは
eが0.5dの場合の狙い位置を示している。
【0026】図4は本発明の第2の実施例に係るアルミ
ニウム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法を示す
断面図である。第2の実施例が第1の実施例と異なる点
は、L字状の切欠き5の隅部底面側に、隅部に沿う形状
の溝5aを形成する点のみであるので、図4において図
1と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省
略する。
【0027】深い溶込みを得る条件でレーザ溶接する場
合、図4に示すように、第1部材1に設けられたL字状
の切欠き5の隅部底面側に、この隅部に沿う形状の溝5
aが形成されていると、溶接時に発生してブローホール
等の原因となる金属蒸気及び水素等が、この溝5aを介
して外部に排出される。従って、ブローホール及びポロ
シティ等の発生を防止することができ、溶接部の形状を
良好なものにすることができる。また、この溝5aは、
低粘度であるアルミニウム又はアルミニウム合金溶湯を
保持することができるので、溶け落ちを防止する効果を
より一層高めることができる。
【0028】また、本発明においては、更に一層溶接部
の形状を向上させることができる溝5aのサイズの好ま
しい範囲を規定している。図5は溝5aのサイズを示す
模式図である。図5に示すように、切欠き5に溝5aを
形成する場合、切欠きの底面の幅をf(mm)、前記溝
の幅をg(mm)、前記溝の深さをh(mm)としたと
き、gを0.5f以下とすると共に、hを0.5t以下
とすると、アルミニウム又はアルミニウム合金溶湯を保
持する効果を十分に得ることができ、溶け落ちの発生を
抑制する効果が高くなる。また、溶接欠陥の発生を防止
する効果が更に一層向上する。
【0029】なお、第2の実施例においては、切欠き5
に溝5aが形成されているが、この切欠き5のサイズ及
びレーザ光6の狙い位置の好ましい範囲については、第
1の実施例に示す範囲と同様である。
【0030】図6は第2の実施例方法によってアルミニ
ウム材をレーザ溶接した場合の熱伝導状況を示す模式図
である。図6に示すように、切欠き5が形成された第1
部材1の端部は肉厚が薄くなっているので、開先部3に
レーザ光6を照射したときに溶融潜熱を小さくすること
ができる。従って、レーザ光6の熱集中が良好になり、
レーザエネルギーを小入熱として溶接しても、図14に
示す従来の溶接方法によって得られた溶融部34と比較
して、深い溶込みの溶融部4を得ることができる。ま
た、本実施例においては、切欠き5に溝5aが形成され
ているので、深い溶込みとなった場合においても、優れ
た形状を有する溶接部を得ることができる。
【0031】なお、本発明において、アルミニウム又は
アルミニウム合金材に適用するレーザ溶接の溶接条件は
特に制限しない。例えば、レーザ溶接においては、通
常、ワイヤ等の添加材を供給する必要はないが、特に、
余盛りが必要である場合には、ワイヤ等の添加材を供給
することができる。また、その添加材は、特に指定がな
い場合はどのような組成のアルミニウム材であってもよ
い。
【0032】更に、本発明は、主にアルミニウム合金押
出形材同士のレーザ溶接に適用されるが、他の種々の形
態の部材に対しても適用することができる。図7は本発
明を適用することができる継手形状の例を示す斜視図で
ある。図7(a)に示すように、例えば、アルミニウム
板材11及び12をこれらが直角をなす方向で配置する
ことにより角形継手を形成し、この継手に対して本発明
を適用することができる。また、図7(b)に示すよう
に、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金からな
る円筒形材17と円形状の板材18とをレーザ溶接によ
り接合する場合においても、本発明を適用することがで
きる。
【0033】このように、本発明は、例えば、アルミニ
ウム合金部材とアルミニウム板材、アルミニウム合金部
材とアルミニウム鋳物材とのレーザ溶接等にも適用する
ことができる。また、機械加工等によって本発明に規定
する切欠き等を形成する場合、板材同士、鋳物材同士又
は板材と鋳物材との接合にも適用することができる。
【0034】更にまた、本発明において、レーザ照射条
件は特に限定しない。例えば、レーザ自体の選定におい
て、アルミニウム合金を溶融させるためには、炭酸ガス
レーザの場合には約1kW以上、YAGレーザの場合に
は約0.4kW以上の出力とすることが望ましい。レー
ザ出力及び溶接速度等の溶接条件は、使用するレーザの
種類及び非加工部材によって選定することができる。
【0035】更にまた、本発明において、溶接姿勢は安
全性を確保することができる姿勢であれば、特に限定さ
れず、上向、下向及び横向のいずれの姿勢で溶接しても
よい。更にまた、シールドガスの流量についても溶接条
件の選定によって異なるので、本発明においては特に限
定しないが、良好な溶接部を得るためには、毎分5乃至
30リットルの流量とすることが好ましい。
【0036】
【実施例】以下、本発明に係るアルミニウム又はアルミ
ニウム合金材のレーザ溶接方法の実施例についてその比
較例と比較して具体的に説明する。
【0037】先ず、レーザ光の狙い位置(開先部からの
距離e)及び切欠き部の肉厚dを種々に変化させて、図
7(b)に示す円筒形材17と円形状の板材18とを本
発明方法に従ってレーザ溶接することにより密封体を製
造し、この密封体に対してバースト試験を実施すること
により、レーザ光の狙い位置及び切欠き部の肉厚に対す
る継手強度を評価した。但し、レーザ溶接には炭酸ガス
レーザを使用し、出力を2.0乃至4.0kW、溶接速
度を33.3(mm/秒)とした。また、円筒形材17
及び板材18はJIS A5052材により作製し、ア
ルゴンガスを毎分20リットルの流量で流し、下向にレ
ーザ光を照射した。
【0038】図8は本実施例において使用したバースト
試験方法を示す模式図である。密封体19はチューブ2
1を介してポンプ20に接続されており、このポンプ2
0により、密封体19の内部に水を送出することができ
る。また、密封体の内部には、その内圧を測定すること
ができる圧力計(図示せず)が設置されている。試験時
においては、ポンプ20から水を密封体19に充填し、
密封体19の内圧を徐々に上昇させる。そして、この内
圧が低下したとき、即ち、密封体19が破裂したときの
圧力(バースト圧)を測定することにより、継手強度を
測定することができる。これらの板材18の端部の肉厚
tに対する円筒形材17の切欠き部の肉厚dの比率を下
記表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】図9は縦軸に試験内圧をとり、横軸に開先
部からレーザ照射位置までの距離eをとって、バースト
試験の評価結果を示すグラフ図である。但し、図9にお
いて、レーザ照射位置は開先部よりも円筒形材側の肉厚
方向を+として示している。また、図9中の数字は表1
に示す実施例及び比較例のNo.と対応しており、力学
的に溶接部がない場合の密封体の内圧計算によって算出
された完全体の限界破壊圧力(バースト圧)をP(kg
/cm2)として図9中に示す。
【0041】上記表1及び図9に示すように、切欠き部
の肉厚dが板材の端部の肉厚tの25乃至75%である
実施例No.1乃至3は優れたバースト圧を示した。特
に、開先部からレーザ光照射位置までの距離eが0乃至
0.5dの範囲であるときに、実施例1乃至3は優れた
バースト圧を示し、完全体のバースト圧Pを超える値と
なった。
【0042】次に、図4に示す第2の実施例に従って、
溝5aの幅g及び深さhを種々に変化させて、図7
(a)に示す形状の角形継手をレーザ溶接し、これらの
レーザ溶接部に対して、JIS Z3105に準じて放
射線透過試験を実施すると共に、断面を観察することに
より、溶接部の品質を評価した。但し、レーザ溶接には
炭酸ガスレーザを使用し、出力を2.0乃至4.5k
W、溶接速度を50.0(mm/秒)とした。また、板
材11及び12はJIS A5182材により作製し、
アルゴンガスを毎分15リットルの流量で流し、下向に
レーザ光を照射した。このとき、板厚によって得られる
溶け込み状況は異なるが、同じ板厚条件下において、適
した溶接条件によって溶接した場合、レーザ出力が低い
と部分溶込みとなり、レーザ出力が高いと貫通溶込みと
なった。
【0043】図10は部分溶込みを得る条件でレーザ溶
接した場合の溶接部を示す断面図であり、図11は縦軸
に溝5aの深さhをとり、横軸に溝5aの幅gをとっ
て、図10に示す部分溶け込みの場合の溶接金属24a
の品質評価結果を示すグラフ図である。品質評価方法と
しては、放射線透過試験によって溶接金属24aの欠陥
の発生状況を調査すると共に、溶接金属24aから採取
した試験片を切断・研磨して、その接合断面を観察する
ことにより溶け込み状況を評価した。なお、図11にお
いて、放射線透過試験の結果が1〜2級であると共に、
断面の外観が良好であるものを○(良好)とし、放射性
透過試験の結果が3〜4級であるか、又はアンダカット
等の溶接欠陥が発生したものを×(不良)として示す。
【0044】図11に示すように、部分溶込みの場合、
溶接金属24aがアルミニウム板材12の溶接裏面まで
到達していないので、溝5aの有無、溝5aの深さh及
び幅gに関係なく、優れた品質の溶接金属を得ることが
できた。
【0045】図12は貫通溶込みを得る条件でレーザ溶
接した場合の溶接部を示す断面図であり、図13は縦軸
に溝5aの深さhをとり、横軸に溝5aの幅gをとっ
て、図12に示す貫通溶込みの場合の溶接金属24bの
品質評価結果を示すグラフ図である。但し、図13にお
いて、f及びtは、夫々、図12に示す切欠き5の底面
の幅f(mm)及びアルミニウム板材12の端部の板厚
t(mm)である。この品質評価方法及び評価基準は、
部分溶込みの場合と同様とした。
【0046】図13に示すように、貫通溶込みの場合、
溝5aの幅gが0.5f(mm)以下であると共に、深
さhが0.5t(mm)以下であると、優れた品質の溶
接金属を得ることができた。一方、溝5aの幅gが0.
5f(mm)を超えるか又は深さhが0.5t(mm)
を超えると、溶湯の保持力が不十分となって溶け落ちが
発生し、アンダフィル及びアンダカット等が発生しやす
くなった。また、溶湯を保持することができなくなるの
で、アルミニウム板材12の溶接裏面側の溶接形状が乱
れて、溶接部の安定性が阻害され、これにより、溶接欠
陥が発生した。
【0047】
【発明の効果】以上詳述したように本発明方法によれ
ば、第1部材にL字状の所定のサイズの切欠きを形成
し、この切欠きに第2部材の端部を嵌合して所定の狙い
位置でレーザ溶接するので、低出力のレーザ装置を使用
しても、十分な溶込みを得ることができ、安定して良好
な溶接部形状を得ることができると共に、接合強度を向
上させることができる。更に、L字状の切欠きの隅部底
面側に溝を形成すると、溶接部形状をより一層向上させ
ることができ、その溝の幅及び深さを規定すると、貫通
溶込みの場合でも、溶接欠陥の発生を防止することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係るアルミニウム又は
アルミニウム合金材のレーザ溶接方法を示す断面図であ
る。
【図2】切欠き5のサイズを示す模式図である。
【図3】レーザ狙い位置を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係るアルミニウム又は
アルミニウム合金材のレーザ溶接方法を示す断面図であ
る。
【図5】溝5aのサイズを示す模式図である。
【図6】第2の実施例方法によってアルミニウム材をレ
ーザ溶接した場合の熱伝導状況を示す模式図である。
【図7】本発明を適用することができる継手形状の例を
示す斜視図である。
【図8】本実施例において使用したバースト試験方法を
示す模式図である。
【図9】縦軸に試験内圧をとり、横軸に開先部からレー
ザ照射位置までの距離eをとって、バースト試験の評価
結果を示すグラフ図である。
【図10】部分溶込みを得る条件でレーザ溶接した場合
の溶接部を示す断面図である。
【図11】縦軸に溝5aの深さhをとり、横軸に溝5a
の幅gをとって、図10に示す部分溶け込みの場合の溶
接金属24aの品質評価結果を示すグラフ図である。
【図12】貫通溶込みを得る条件でレーザ溶接した場合
の溶接部を示す断面図である。
【図13】縦軸に溝5aの深さhをとり、横軸に溝5a
の幅gをとって、図12に示す貫通溶込みの場合の溶接
金属24bの品質評価結果を示すグラフ図である。
【図14】従来のレーザ溶接方法により溶接したアルミ
ニウム材の継手を示す断面図である。
【符号の説明】
1、2;部材 3、33;開先部 4、34;溶融部 5;切欠き 5a;溝 6、6a、6b;レーザ光 11、12、18;板材 17;円筒形材 19;密封体 20;ポンプ 24a、24b;溶接金属 31、32;アルミニウム板

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金から
    なる第1部材及び第2部材を、第1部材の端面にL字状
    の切欠きを設け、前記切欠きに、前記第1部材に対して
    直角となる方向で前記第2部材の端部を嵌合して配置
    し、前記第1部材の端面側から両者をレーザ溶接するレ
    ーザ溶接方法であって、前記第1部材の切欠きが設けら
    れた部分の肉厚をd(mm)、前記第2部材の端部の肉
    厚をt(mm)とし、第1部材と第2部材との間に形成
    された開先部から前記第1部材側の肉厚方向にe(m
    m)離間した位置をレーザ光の狙い位置としたとき、d
    をtの25乃至75%とし、eを0乃至0.5dとして
    レーザ溶接することを特徴とするアルミニウム又はアル
    ミニウム合金材のレーザ溶接方法。
  2. 【請求項2】 前記L字状の切欠きの隅部底面側に、前
    記隅部に沿う形状の溝を形成することを特徴とする請求
    項1に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金材のレ
    ーザ溶接方法。
  3. 【請求項3】 前記第2部材の端部の肉厚をt(mm)
    とし、前記切欠きの底面の幅をf(mm)、前記溝の幅
    をg(mm)、前記溝の深さをh(mm)としたとき、
    gを0.5f以下とし、hを0.5t以下とすることを
    特徴とする請求項2に記載のアルミニウム又はアルミニ
    ウム合金材のレーザ溶接方法。
JP8310977A 1996-11-21 1996-11-21 アルミニウム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法 Pending JPH10156564A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8310977A JPH10156564A (ja) 1996-11-21 1996-11-21 アルミニウム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8310977A JPH10156564A (ja) 1996-11-21 1996-11-21 アルミニウム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10156564A true JPH10156564A (ja) 1998-06-16

Family

ID=18011678

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8310977A Pending JPH10156564A (ja) 1996-11-21 1996-11-21 アルミニウム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10156564A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11151587A (ja) * 1997-11-18 1999-06-08 Canon Inc 円筒部材の溶接方法及び円筒体
CN106155075A (zh) * 2016-08-22 2016-11-23 上海交通大学 一种可分离式无人机控制系统
WO2021230250A1 (ja) 2020-05-13 2021-11-18 株式会社村田製作所 二次電池およびその製造方法
CN114012263A (zh) * 2021-12-02 2022-02-08 远景动力技术(江苏)有限公司 轻量化铝板焊接方法和电池模组的外壳加工方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11151587A (ja) * 1997-11-18 1999-06-08 Canon Inc 円筒部材の溶接方法及び円筒体
CN106155075A (zh) * 2016-08-22 2016-11-23 上海交通大学 一种可分离式无人机控制系统
WO2021230250A1 (ja) 2020-05-13 2021-11-18 株式会社村田製作所 二次電池およびその製造方法
CN114012263A (zh) * 2021-12-02 2022-02-08 远景动力技术(江苏)有限公司 轻量化铝板焊接方法和电池模组的外壳加工方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kawahito et al. Elucidation of high-power fibre laser welding phenomena of stainless steel and effect of factors on weld geometry
Zhang et al. Microstructure and properties of the laser butt welded 1.5-mm thick T2 copper joint achieved at high welding speed
US6740845B2 (en) Laser welding with beam oscillation
US11931826B2 (en) Continuous welding method and device for hybrid welding, welded finished product, train body
US7154065B2 (en) Laser-hybrid welding with beam oscillation
CN103476536B (zh) 激光焊接钢管的制造方法
Banas High power laser welding-1978
WO2011111634A1 (ja) レーザー・アーク複合溶接方法及び該溶接方法による溶接部材の製造方法
JP2005334974A (ja) レーザ溶接方法
JPH08300172A (ja) 溶接鋼管の製造方法
JP2004306084A (ja) レーザ溶接とア−ク溶接の複合溶接方法
JP2008126315A (ja) 改良された溶込みを伴うレーザ溶接方法
KR101545423B1 (ko) 레이저 용접 방법
CN110238525A (zh) 一种低碳钢与铸铁的异种金属焊接方法
CN107570866A (zh) 一种薄板的激光焊接方法
JP4026452B2 (ja) レーザとアークの複合溶接方法およびそれに用いる溶接継手の開先形状
JPH0919778A (ja) 溶融金属が裏面に露出しないアルミニウム合金のレーザ溶接方法
JP2007090397A (ja) 重ね隅肉溶接方法
JPH10156564A (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法
JP3136231B2 (ja) アルミニウム合金部材のレーザ溶接方法
JP2010167425A (ja) 上下t型継手の溶接方法及び上下t型溶接継手並びにこれを用いた溶接構造物
JP2001150155A (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金材の電子ビーム溶接方法
Jokinen Novel ways of using Nd: YAG laser for welding thick section austenitic stainless steel
JPH0957477A (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金材のレーザ溶接方法
Tayebi et al. Laser Welding