JPH10155485A - 新規大容量バイナリーシャトルベクター - Google Patents

新規大容量バイナリーシャトルベクター

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JPH10155485A
JPH10155485A JP9299278A JP29927897A JPH10155485A JP H10155485 A JPH10155485 A JP H10155485A JP 9299278 A JP9299278 A JP 9299278A JP 29927897 A JP29927897 A JP 29927897A JP H10155485 A JPH10155485 A JP H10155485A
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gene
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shuttle vector
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Shinji Kawasaki
信二 川崎
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NORIN SUISANSYO NOGYO SEIBUTSU SHIGEN KENKYUSHO
NORINSUISANSHO NOGYO SEIBUTSU
Kagaku Gijutsu Shinko Jigyodan
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NORIN SUISANSYO NOGYO SEIBUTSU SHIGEN KENKYUSHO
NORINSUISANSHO NOGYO SEIBUTSU
Kagaku Gijutsu Shinko Jigyodan
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 T-DNA領域とRi複製起点とを有し、大型
の染色体断片を組み込むことが可能な大容量バイナリー
シャトルベクター、植物の形質転換能を有するゲノムラ
イブラリー、上記大容量バイナリーシャトルベクターに
よって形質転換された植物、および上記ベクターを用い
る有用遺伝子の探索方法を提供する。 【効果】 上記のベクターは、10kb以上の大型の染色体
断片を、容易かつ効率的に、安定性して、これらの染色
体の分断等が起こらない条件で、高等植物に導入でき
る。また、lox部位を有する環状ゲノムライブラリーを
取込むことができるか、任意の発現特性を有する遺伝子
で効率的に植物を形質転換することができる、上記のRi
ori駆動ベクター由来とは別のベクターを提供する。ベ
クター中に挿入されたゲノム断片の機能を、相補性検定
によって評価できる評価法もまた包含され、有用遺伝子
の効率的な探索が可能で、単離も容易となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、種子植物の形質転換な
どに用いられる大容量シャトルベクターに関する。特
に、種子植物の中でも経済的価値が高いにもかかわらず
形質転換の難しい単子葉作物の形質転換にも用いられる
とともに、ゲノム機能の相補性検定解析やゲノム機能解
析用ゲノムライブラリー構築にも好適に用いることがで
きる大容量バイナリーシャトルベクターに関する。
【0002】
【従来の技術】単子葉作物は、農業上の重要性にもかか
わらず、その形質転換は双子葉植物より困難である。こ
れまでこれらの植物の形質転換は、遺伝子銃による強制
的導入法やプロトプラスト化した上での電気導入(エレ
クトロポレーション)法やPEG(polyethylene glycol)
法、などにより行われてきた。しかし、電気導入法やPE
G法による場合にはプロトプラストからの再生が困難で
あり、遺伝子銃を用いる場合には高価な装置を必要とす
る上、多数の試料の同時処理が困難であるという問題点
があった。また、いずれの方法を用いても10kb以上の大
きな遺伝子断片を、効率良く、かつその構成を損なわず
に単子葉作物に導入した例はなかった。
【0003】最近、日永らは単子葉作物であるイネにお
いても、pBI系ベクターとアグロバクテリウムとを用い
た形質転換が可能なことを報告し(Hiei et al., Plant
Journal, 6;271-282(1994))、これにより、イネの形質
転換は飛躍的に容易になった。しかし、日永らの用いた
pBI系のベクターでは、10kb程度のDNA をイネに安定的
に導入できるにすぎなかった。また、シャトルベクター
としてもこれ以上の大きさのDNA を組み込むと、大腸菌
の中でもベクターを安定して維持することが難しくな
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一方、最近のゲノム
(染色体)研究の進展により、農業形質を決定する有用
遺伝子などを単離する方法として、染色体上の位置情報
をもとに遺伝子を単離するポジショナルクローニング法
が有望な方法としてにわかに注目を浴びるようになっ
た。この手法を用いる場合、位置情報から絞りこまれた
複数の遺伝子のうちで、真にその形質を担う遺伝子を同
定するためには、その遺伝子を含む染色体断片を植物に
導入してその形質が発現することを確認する必要があ
る。この際、大きな染色体断片を導入できれば効率の良
い遺伝子の絞り込みが可能となるため、なるべく大きな
染色体断片を導入することが望ましい。
【0005】これまで10kb以上の染色体断片を植物に導
入する方法としては、以下に述べるバイナリーコスミド
法とPEG法とが知られているが、いずれも下記のような
問題を含んでいる。 (1)バイナリーコスミド法では、導入できる染色体断
片の大きさが20kb程度に制限されてしまうこと、および
複製オリジンとしてpBI系のRK2を使用していることか
ら、実際に最初に染色体を導入される大腸菌内でのプラ
スミドの維持が難しい場合がかなりあった。
【0006】(2)PEG法では、プロトプラストからの
再生に高度な技術を要するほか、導入断片がバラバラに
なりそのままの形で導入されない場合が多いことから、
導入された染色体断片中に含まれる遺伝子機能の検定を
行うには問題が多かった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は以上の通りの事
情に鑑みてなされたものである。本発明は、10kb以上の
大型の染色体断片を、高等植物、特に農業上重要な作物
を多く含みながら形質転換が困難とされてきた単子葉作
物に導入することを目的としている。また、本発明は、
上記の高等植物に、これまで特に困難であった10kb以上
のDNA をこれらの植物の核へ効率良く安定的に導入する
ことによって、大きな染色体領域での遺伝子の相補性分
析を可能とし、各種の農業形質を司る遺伝子が染色体上
の何処に存在するかを効率良く示すことによってその遺
伝子の単離を容易にすることを目的とする。また、大き
な遺伝子複合体を一まとめに導入することにより、これ
まで困難であった複合的形質をこれらの植物へ一括して
導入できるようにすることをも目的とする。
【0008】すなわち、本発明は、T-DNA領域と、 Ri複
製起点とを有する大容量バイナリーシャトルベクターで
ある。本発明の大容量バイナリーシャトルベクターは、
pBI系のバイナリーシャトルベクターであることを特徴
とする。また、上記大容量シャトルベクターは、上記T-
DNA領域にマルチクローニングサイトを有する遺伝子、
具体的にはlacZ遺伝子が導入されていることを特徴とす
る。
【0009】さらに、上記大容量バイナリーシャトルベ
クターは、T-DNA領域に導入されたlacZ遺伝子とT-DNAの
境界領域との間に抗生物質耐性遺伝子が導入されている
ことを特徴とする。上記境界領域は左側境界領域である
ことが好適であり、また、上記抗生物質耐性遺伝子とし
ては、ハイグロマイシン耐性遺伝子が好適である。別の
選択マーカー抗生物質遺伝子はカナマイシン耐性遺伝子
であってもよく、大腸菌と単子葉植物中において選択マ
ーカーとして使用することができる。
【0010】さらにまた、上記大容量シャトルベクター
は、小さなDNA 断片から大型の染色体断片までを組み込
むことができることを特徴とする。これらの染色体断片
としては、少なくとも40kbまでの大きさのものが効率よ
く組み込めることが確認され、さらに大きなものを組込
んでもよい。
【0011】本発明は、植物、特に単子葉植物の形質転
換能を有するゲノムライブラリーである。植物の形質転
換能を有するゲノムライブラリーを構成する各クローン
は、本発明の大容量バイナリーシャトルベクターのT-DN
A領域中にインサートを有することを特徴とする。
【0012】本発明は、T-DNA領域内のlox部位、parC遺
伝子、および複製起点としてRi oriを有するバイナリー
シャトルベクターであって、宿主である大腸菌またはア
グロバクテリウム中で、 cre酵素によりlox部位を有す
る環状ゲノムライブラリーのクローンプラスミドと統合
可能なバイナリーベクターである。本発明は、また、T-
DNA領域中に植物用プロモーターとターミネーターとで
挟まれたマルチクローニング部位と、複製起点としてRi
oriとを有する植物の形質転換用バイナリーベクターで
ある。
【0013】本発明は、ゲノムライブラリーのクローン
に挿入された染色体断片中の遺伝子の機能を評価するた
めの相補性検定法である。この方法には、ゲノムインサ
ートを有する上記プラスミドをアグロバクテリウム細胞
中に導入する工程と、このプラスミドを植物に移行させ
る工程とを備える。さらに本発明は、ゲノムライブラリ
ーのクローンに挿入された染色体断片中の遺伝子の機能
を評価するための別の相補性検定法である。この方法に
は、ゲノムインサートを有するライブラリーの構成プラ
スミドを上記のバイナリーベクターとを統合する工程
と、この統合ベクターをアグロバクテリウム細胞中に導
入する工程と、この統合ベクターを植物中に移行させる
工程とを備える。ここで、上記ライブラリーは、lox部
位を有し、宿主が大腸菌である環状ベクターを用いるこ
とによって構築される。
【0014】本発明は、上記の相補性検定法によって得
られた遺伝子である。また、本発明は、上記の大容量バ
イナリーシャトルベクターを使用する工程を備える有用
遺伝子のスクリーニング方法である。
【0015】さらに、本発明は、上記大容量バイナリー
シャトルベクターで形質転換された形質転換植物であ
る。形質転換される植物としては、すべての植物、主と
して種子植物、とりわけ単子葉植物が挙げられる。
【0016】本発明は、大型インサートを有するバイナ
リーベクターを安定に維持するためにrecA-を有する高
転換率アグロバクテリウム株の作製方法である。この方
法は、高い形質転換高率を有する株のrecA遺伝子上にお
ける部位特異的突然変異を生じさせてrecA-株に形質転
換する工程と、細胞中において形質転換されたrecA-
クターとrecA+遺伝子との間で、recA+遺伝子を有する株
に相同組換えを導入する工程と、前記株を広げたプレー
トのレプリカヲ作成することにより組換え体を選択する
工程と、前記プレートに放射線を照射してUV照射下で
は生育できないクローンをスクリーニングする工程とを
備える。
【0017】本発明は、大型インサートを有する前記大
容量バイナリーシャトルベクターを安定に維持するrecA
-高形質転換効率アグロバクテリウム株であり、形質転
換のための種々の通常の農業形質を有する植物を形質転
換することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】図1は、大容量シャトルベクター
pBIGRZとRi複製起点を持たない同様のベクターpBIGZと
の構築を示す図である。大容量シャトルベクターRi ori
を有しないpBIGRZの構築。Ri oriの矢印は、遺伝子の方
向とプラスミドの対応する番号とを示す。ユニークなク
ローニング部位を有する制限酵素を示す。RBはT-DNAの
右側境界領域を、LBはT-DNAの左側境界領域を示す。NPT
IIはネオマイシン耐性遺伝子、NPおよびNTはノパリン合
成酵素のプロモーターおよびターミネーターを示し、la
cZはβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を、MCSはマルチクロ
ーニング部位を示す。P35Sは35Sプロモーターを、iGUS
はイントロンを有するβ−グルクロニダーゼ遺伝子を、
HPTはハイグロマイシン耐性遺伝子を、Ri oriはRiプラ
スミドの複製起点を示す。
【0019】図2は、pBI121からpBIHG を経てpBIGRZを
作製するまでの過程を示す図である。図3は、pBIGRZに
よりイネに導入された2種類のヒトの40kbの染色体断片
のサザンブロットの結果を表すゲル電気泳動写真であ
る。A:導入当代(R0)において対照と比較したとき
に、導入されたゲノムの断片にほとんど変動が見られ
ず、導入された染色体断片がそのまま入っていることを
示す。B:導入後代(R1)でも変動が見られず、導入さ
れた染色体断片は安定に後代に伝えられることを示す。
【0020】図4は、pBIGRZにより、約40kbのヒトの染
色体断片を導入されたイネの花(左)と穂(中央)とを
示す図面代用写真である。稔性が極めて高く、実った穂
は頭を垂れる。図5は、pBIGRZを用いて作ったイネのゲ
ノムライブラリーを示す。これらは、制限酵素NotIで切
断した。Aは45kb以上のサイズの染色体断片が導入され
た消化断片を示し、Bは30〜50kbを有する断片が導入さ
れた消化断片を示す。AおよびBにおいて、導入された
断片の平均サイズは、それぞれ51kbおよび39kbであっ
た。
【0021】このことから、相補性検定に有用なゲノム
ライブラリーが実際に構築されたことを示す。平均のイ
ンサートサイズは、各レーンのバンドのサイズから約20
kbを差し引くことによって得られた。右側の2レーンは
サイズマーカーである。
【0022】図6AおよびBは、本発明の大容量バイナ
リーベクターの性質を利用した各種の誘導ベクターを示
す。Aはcre酵素の一次的発現によるlox部位での特異的
組換えを利用した単一ベクターを示す。pBRCは相補性検
定を行うためのベクターの1例であり、ゲノムインサー
トとlox部位とを有するBACベクターが宿主細胞中におけ
るcre酵素の一次的発現によって統合された。統合され
ていないBACを有するpBRCは、その中にparC配列が存在
する場合には速やかに除去される。Bは、ベクター、pB
PRPTの1例を示す。このベクターはプロモーターとター
ミネーターからの発現特性を有する単一の遺伝子を導入
する工程で使用され、高い形質転換能を有する本発明の
大容量ベクターである。
【0023】以下、この発明についてさらに詳しく説明
する。本発明の大容量バイナリーシャトルベクターを、
以下のようにして構築した。本発明の大容量バイナリー
シャトルベクターを、以下のようにして構築した。 (1)大きな染色体断片をインサートとして保持できる
バイナリーベクターの開発(図1および2参照) 以下の要件を満たすバイナリーベクターシステムを基本
とした。 (i)各種の染色体断片をインサートとして導入したT-
DNA領域を有するベクターであること。このT-DNA領域
は、種々の植物細胞に効率よく導入することができる。 (ii)ゲノムライブラリーの構築が容易であること。 (iii)プラスミドDNA の調製も容易であり、大腸菌を宿
主にできること。 (iv)構築したプラスミドを容易にアグロバクテリウム
にも容易に移行することができ、かつ安定に維持して植
物の形質転換を効率的にすることができることる。
【0024】本発明の大容量バイナリーシャトルベクタ
ーは、上記のようにアグロバクテリウムへ移行できるこ
とを要件としている。アグロバクテリウム(Agrobacteri
um tumefaciens)は、土壌細菌であり、約200kbの大きさ
のTiプラスミドを有し、このTiプラスミド上には、10〜
20kbのT-DNAと呼ばれる領域がある。T-DNAは、植物にア
グロバクテリウムが感染すると、アグロバクテリウムか
らTiプラスミド上のvir(virulence:病原性) 領域の遺伝
子産物の働きでT-DNA領域の切り出しが起こる。切り出
されたT-DNAは、植物へ転移し、最終的に植物の核DNA
中に組み込まれることが知られている。
【0025】この際、T-DNA領域とvir領域とは異なるベ
クターに存在していてもよく、このため、T-DNA領域と
少なくとも1つの複製起点およびマーカー遺伝子のみを
持ったバイナリーベクターを作製することが可能とな
る。T-DNAの転移と組込みには、T-DNAの両端にある25bp
からなる境界配列だけが必要であり、それ以外のT-DNA
上にある遺伝子群は不要である。このT-DNAの両端にあ
る境界配列をそれぞれ、左側境界配列(レフトボーダ
ー、LB:left border)および右側境界配列(ライトボー
ダー、RB:right border)という。
【0026】上記の要件を満たすバイナリーシャトルベ
クターは、適当な複製起点を有することにより2種以上
の菌を宿主とすることができ、バイナリーベクターとし
て機能できるベクターであればよく、特に制限されな
い。具体的には、pBI系のベクターである、pBI101やpBI
121などが市販されており、これらを使用することがで
きる。
【0027】バイナリーベクターに使用される複製起点
としては、RK2が一般的である。しかし、RK2を複製起点
として使用すると、10kb以上の大型のインサートを、安
定して大腸菌やアグロバクテリウムで保持するのが難し
い場合が多い。したがって、このような大型のインサー
トを上記のいずれの宿主においても安定に保持できるよ
うにするためにベクターの大容量化が必要である。複製
起点としてリゾビウム菌のRiプラスミドのRi複製起点を
導入することにより、ベクターの大容量化が可能とな
る。この場合、Ri複製起点はRK2とともにベクター中に
存在してもよい。
【0028】ベクタープラスミドが備えるべき選択マー
カーとしては、各種の抗生物質耐性遺伝子を挙げること
ができる、具体的には、カナマイシン耐性遺伝子(NP
T)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(HRT)などを挙げるこ
とができる。これらのマーカーは、必要に応じて、上記
のプラスミド中に公知の方法により導入することができ
る。pBI系の基本ベクタープラスミドは、導入された植
物での選択マーカーとしてカナマイシン遺伝子のみを有
するが、ハイグロマイシン耐性遺伝子を導入することが
好ましい。イネにおいては、カナマイシンは、選択マー
カーとしては余りよく働かないためである。
【0029】また、導入する選択マーカー中に、多様な
染色体断片を導入するにあたって邪魔な部分(部位)が
ある場合には、このような部位を除去または改変しても
よい。例えば、上述したハイグロマイシン耐性遺伝子か
ら、この遺伝子中にあるEcoRI部位を制限酵素によって
切断されないように改変する。ここで、上記バイナリー
ベクター中に導入する染色体またはDNA 断片は、ウイル
スから各種の細菌、糸状菌、原生動物、動植物などすべ
ての生物から、それぞれ公知の方法で得ることができ
る。
【0030】上記バイナリーベクターに導入するDNA ま
たは染色体断片は、少なくとも40kb程度またはそれ以上
の大きさのものでも組み込むことができ、目的に応じて
選択することができる。40kbの染色体断片を用いたイネ
の形質転換は、数kbの遺伝子の場合と差がない効率で行
うことができるため、より大きな断片を困難性なく導入
することができる可能性もある。マーカー遺伝子中にク
ローニングサイトを導入して染色体断片の導入を確認す
ることが好ましい。マーカー遺伝子としては、lacZ(β
−ガラクトシダーゼ)遺伝子中に、Hind III、Spe I 、
Not I といったクローニングサイトを有するものを使用
することができる。
【0031】このベクターにさらに以下のような遺伝子
を導入することもできる。すなわち、上記のバイナリー
シャトルベクターを用いて植物を形質転換した際に形質
転換植物におけるT-DNAの導入と発現の模様をモニター
するための遺伝子を導入してもよい。
【0032】こうした遺伝子としては、先に挙げた抗生
物質耐性遺伝子の中のNPTやHRT遺伝子などを用い
ることもできるが、特に発現部位を可視化できる点で、
β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子が好ましい。イント
ロン入りのGUS(iGUS)は、真核細胞、すなわち、ここで
使用する植物細胞中でのみ発現し、アグロバクテリウム
中では発現しない。このため、イントロン入りのGUSを
用いると、バクテリア中での発現による青色の発色はな
く、ノイズを避けることができる。しかし、こうしたマ
ーカーが多数ベクター中に入ることによって、目的遺伝
子の発現が影響を受ける可能性もあるので、必ずしも入
っていればよいとは限らない。
【0033】(2)ベクターへの染色体断片の導入と大
腸菌の形質転換 (i)任意のDNA 断片のベクターへの導入 (1)で得たベクターと、そのクローニングサイトに適
合する適当な大きさのDNA 断片(染色体断片)またはリ
ンカーを介して適合させた断片とを、市販のリガーゼな
どを用いてライゲーションさせる。得られた反応生成物
をエレクトロポレーションにより、大腸菌DH10B株に導
入する。導入した菌を、ハイグロマイシンB(50μg/m
L)、X-gal 、IPTG(イソプロピルチオガラクトシド(is
opropyl thiogalactoside) )を含むLB寒天プレート上
に展開する。通常の条件で、一晩培養し、Lb寒天プレー
ト上に発現した白色コロニーを、上記DNA 断片がインサ
ートとして組み込まれたものとして選択する。
【0034】(ii)形質転換ベクターによるゲノムライ
ブラリーの作製 好適な制限酵素、多くの場合にはHind III、を適宜使用
して植物細胞または他の材料の細胞からの染色体DNAを
部分的に、または完全に消化する。このようにして得た
断片について、CHEF(contour-clamped hexagonal elect
ric field)電気泳動でサイズ選択を行う。このようにし
て得たDNA 断片を上述の(1)のベクターにライゲーシ
ョンにより結合させる。得られた反応生成物を、エレク
トロポレーションにより大腸菌大腸菌DH10B株に導入
し、上記のようにハイグロマイシンB(50μg/mL)とX-ga
l 、IPTGとを含むLB寒天プレート上に展開し、上記
(i)と同様にしてインサートの入った菌株を選択す
る。
【0035】(3)大腸菌からアグロバクテリウムへの
ベクターの移行 大腸菌からアグロバクテリウムへのベクターの移行は、
下記のエレクトロポレーション法とトリパレント法(ト
リペアレントメイティング法)とを用いて好適に行うこ
とができる。
【0036】(i)エレクトロポレーション法 大腸菌からバイナリーベクターを、通常のアルカリによ
るミニプレップ法で回収する。ここで、自動プラスミド
抽出機がある場合には、非常に容易に多数のベクターを
効率よく抽出することができる。ベクターを移行させる
アグロバクテリウムとしては、EHA101などを挙げること
ができる。特に、大型断片をこれらの細胞中に挿入する
場合には、高形質転換能を有する株から誘導された組換
え能を欠損しているrecA-株を、好適に使用することが
できる。このようなアグロバクテリウムから、公知の方
法で、エレクトロ−コンピテントセルを調製する。
【0037】ミニプレップ法で回収したバイナリーベク
ターを、エレクトロポレーションにより上記アグロバク
テリウムのコンピテントセルに導入する。このベクター
を導入したコンピテントセルを、ハイグロマイシンB
(50μg/mL)とカナマイシン(50μg/mL)とを含む培地の
上で、上述したと同様の条件で培養し、形質転換株の選
択を行う。
【0038】(ii)トリパレント法 上記(2)に記載されたバイナリーベクターを導入した
大腸菌、ヘルパープラスミドを有する大腸菌、およびア
グロバクテリウムを混合培養することにより、所望のバ
イナリーベクターを大腸菌からアグロバクテリウムに移
行させることができる。これらのヘルパープラスミドを
有する大腸菌と、上記バイナリーベクターを導入した大
腸菌とを、アグロバクテリウムと適当な培地中で、28℃
で12〜24時間程度混合培養する。適当な培地としては、
YEP培地などを挙げることができる。
【0039】ここで、ヘルパープラスミドとは、あるベ
クターを目的の菌に移行させようとする場合に、その菌
へのベクターの移行を助けるプラスミドをいい、具体的
には、pRK2013 などを挙げることができる。ヘルパープ
ラスミドを有する大腸菌を混合培養のときに用いると、
バイナリーベクターを導入した菌からアグロバクテリウ
ムへ混合培養中に効率よく移行する。以上のようにして
混合培養したアグロバクテリウムから、本発明の大容量
バイナリーシャトルベクターを含む菌をカナマイシン、
テトラサイクリン、ハイグロマイシンによって選択し、
以下に示す植物の形質転換に使用する。
【0040】(4)バイナリーシャトルベクターを導入
したアグロバクテリウムによる植物の形質転換 ついで、バイナリーベクターを導入したアグロバクテリ
ウムから植物へT-DNAを導入して、植物の形質転換を行
う。すなわち、上述のようにしてバイナリーシャトルベ
クターを導入したアグロバクテリウム株 (約3×108
3×109個/mL)を植物細胞のカルスまたは組織片と数分
間程度共存させた後、2N6-ASまたはN6COなどの培地中
で、25〜28℃で3日間程度共存培養する。ここで共存培
養する植物としては、共存培養の難易度に差があるもの
の種子植物が用いられる。特に、これまで形質転換の困
難であった単子葉作物、すなわち、イネ、コムギ、オオ
ムギ、トウモロコシなども対象となり得る。しかし、そ
の中では、個体再生の容易さからイネが最も好適に使用
される。
【0041】上記のアグロバクテリウムとの共存培養の
後、カルスまたは組織片は、適当な抗生物質を含む培地
で選択培養を行う。上述のように、バイナリーシャトル
ベクターに選択マーカーとしてハイグロマイシン耐性遺
伝子を導入した場合には、ハイグロマイシン(10〜100
μg/mL)とアグロバクテリウム除去のためのセフォタキ
シム(250μg/mL)またはカルベニシリン(500μg/mL)とを
含む2N6-CHまたはN6Se培地を用いて、1〜3週間選択培
養を行うことにより、形質転換したカルス体を選択的に
得ることができる。
【0042】選択的に得たカルス体を、N6S3-CH、MSre
などの適当な再分化培地を用いて再分化を誘導し、再分
化個体を得る。上述したように、β−グルクロニダーゼ
遺伝子をT-DNA上に持つバイナリーベクターを形質転換
に用いた場合には、x-gluc(x-glucuronide)を、選抜カ
ルスや再生個体に与えることによって青色の発色が見ら
れる。この青色の発色により形質転換が行われたことを
確認することができる。以上のようにして、本発明の大
容量バイナリーシャトルベクターを用いて大きな染色体
断片を植物に導入し形質転換することができる。
【0043】したがって、本発明の大容量バイナリーシ
ャトルベクターを用いて大型の染色体断片を植物中に導
入して、形質転換することができる。このため、適当な
植物またはその他の生物から定法に従ってゲノムDNA を
得て、これを上述のような適当な制限酵素で断片化し、
本発明の大容量バイナリーシャトルベクターに上述のよ
うに組み込み、ゲノムDNA ライブラリーを作製すること
ができる。
【0044】本発明のベクターは、大容量バイナリーシ
ャトルベクターであるため、このようにして作製したゲ
ノムDNA ライブラリーは、種々の細胞を形質転換する能
力を有する。したがって、このゲノムDNA ライブラリー
用いて、このライブラリーを構成する各クローン中に含
まれる植物のDNA 断片を他の植物の細胞中に導入し、こ
れらを形質転換することができる。
【0045】特に、本発明の大容量バイナリーシャトル
ベクターは40kb程度の大きなDNA または染色体断片を組
み込むことができるので、有用遺伝子を効率的に探索す
ることができる。すなわち、特定の遺伝子の機能が失わ
れた突然変異体に形質転換することによりその機能を回
復させるクローンがあれば、そのクローンの中に目的と
する遺伝子があることになる(相補性検定)。
【0046】ベクター、PBRGRZにおいては、遺伝子は染
色体断片と、またはプロモーターとターミネーターとと
もに導入されるにすぎない。適当なプロモーターとター
ミネーターとの間にマルチクローニング部位を有するベ
クターに固有のプロモーターを除去した遺伝子またはcD
NA全長を導入して任意の遺伝子の特性を発現させること
ができる(図6B)。遺伝子またはcDNAの挿入後、このよ
うなベクターを形質転換のために植物中に挿入すること
ができる。一般的には、アクチンプロモーターとアクチ
ンターミネーターとの組合せが、遺伝子の発現量多くな
るために好ましい。宿主細胞中で相同組換えが生じる可
能性があるために、同一のプロモーターまたはターミネ
ーターを1つのベクター中で繰り返し使用することは避
けるべきである。
【0047】recA-を有するアグロバクテリウムの高転
換率の株を、本発明の大容量バイナリーベクターから作
製された大型のプラスミドを維持するために作製する。
この大型プラスミドは単一または低コピー数のプラスミ
ドであるため、一般に、大腸菌およびアグロバクテリウ
ムのいずれにおいても安定に維持される。大腸菌におい
ては、遺伝子組換えができないrecA-株が、例えば、DH1
0Bが容易に得られる。アグロバクテリウムにおいてもま
た、幾つかのrecA-株が知られている。しかしながら、
形質転換が難しい植物の形質転換に不可欠な高転換率株
については、大型のプラスミドの安定な維持と形質転換
に望ましいrecA-株は報告されていない。
【0048】したがって、このような高転換率のrecA-
株を、EHA101株のrecA遺伝子上における部位特異的突然
変異法によって作製する。この突然変異は、染色体のre
cA遺伝子とrecA-遺伝子を有する形質転換プラスミドと
の相同組換えによってアグロバクテリウムに導入する。
部位特異的突然変異によって作り出されたrecA-遺伝子
を有するプラスミドで高転換率アグロバクテリウム株を
形質転換し、ついで、プレート上に拡げる。レプリカプ
レートを作製した後に、このプレートに紫外線を照射
し、このプレート上でアグロバクテリウム細胞を培養す
る。 recA-を有する突然変異体はUV照射下では生育で
きないため、このようなクローンを選択する。突然変異
体を使用すると、大型染色体断片を含むクローンがアグ
ロバクテリウム細胞中でより安定に維持される。このよ
うな突然変異体もまた、通常の突然変異誘発を行った後
に、上記のUV照射下で陰性選択することができる。
【0049】
【実施例】以下に、本発明の大容量バイナリーシャトル
ベクターの作製と、これを用いてイネにヒトのゲノムDN
A を導入した例を示すが、本発明は以下の実施例に限定
されるものではない。
【0050】(実施例1)本発明の大容量バイナリーシ
ャトルベクターであるpBIGRZ(図2に示す)を、以下の
工程(1)〜(3)の通りに作製した。 (1)pBH の作製 35S プロモーター、ノパリンターミネーターを有し、か
つ内部にEco RI切断部位のないハイグロマイシン耐性遺
伝子(HPT 、北大の初山氏より分与を受けた)を、定法
に従ってバイナリーベクターpBI121のT-DNAの左側境界
配列(図2中、LBで示す)のEcoRI部位に導入してpBH
を作製した。図2においては、35SプロモーターはP35S
と、またノパリンターミネーターはNPTと表示した。
【0051】(2)pBHGの作製 イントロン入りのβ−グルクロニダーゼ(iGUS)を、上記
(1)で作製したpBHのT-DNAのNPTとHPTとの間に、定法
にしたがって導入し、pBHGを作製した。
【0052】(3)Riプラスミドの複製起点の挿入 リゾビウム菌のRiプラスミドを、定法に従ってT-DNA外
部のNotI部位にライゲーションにより挿入した。
【0053】(4)HindIII、SpeI、NotIというマルチ
クローニングサイトをその途中に持つlacZ遺伝子を、pB
luescriptのlacZ部分より作製し、NPTとiGUSとの間に導
入してプラスミドを作製した。ここで完成したプラスミ
ドをpBIGRZとした。上述のように、pBIGRZは、lacZ内に
クローニングサイトを持つため、これにより染色体など
の断片がプラスミドに挿入されているか否かがX-galとI
PTGとを含む培地で確認できる。
【0054】(実施例2)実施例1で作られたバイナリ
ーベクターpBIGRZが実際に10kb以上の染色体断片を単子
葉作物にも効率よく安定的に導入できるかを調べるため
に、ヒトの染色体断片約40kbをイネに導入した例を示
す。 (1)lacZ中にあるpBIGRZのNot I部位を制限酵素で切
断して、末端を脱リン酸化処理した。その後、2つのコ
スミド中に挿入されていたヒト染色体のNot I 断片DNA
(それぞれ約40kb)をバイナリーベクターにライゲーシ
ョンにより挿入した。このインサートを有するベクター
を、大腸菌に導入した。
【0055】(2)ヒト染色体断片の導入が確認された
pBIGRZベクターについて、大腸菌からアグロバクテリウ
ムにエレクトロポレーション法により導入した。すなわ
ち、通常のアルカリによるミニプレップ法にて大腸菌か
らバイナリーベクターを回収した。得られたバイナリー
ベクターをエレクトロポレーションにより、T-DNAを除
いたTiプラスミドを有するアグロバクテリウム(EHA101)
のコンピテントセルに導入し、ハイグロマイシン(50μ
g/mL)とカナマイシン(50μg/mL)とを含む培地の上で
形質転換株を選択した。
【0056】(3)アグロバクテリウムに安定に導入さ
れたヒト染色体断片の挿入されたpBIGRZベクターを、以
下のようにしてイネの胚盤カルスに導入した。すなわ
ち、バイナリーベクターを導入したアグロバクテリウム
株をカルスと25℃で3日間共存培養し、ついでハイグロ
マイシン培地(30〜50μg/mL)を用いて、形質転換したカ
ルスを選択培養した。その後、再生培地で個体再生を行
い、ホルモン不含培地中でシュート形成を行い、再分化
個体を得た。この個体を馴化した後、温室ポットで栽培
した。
【0057】ここでは、Ri複製起点の向きが、上記の過
程におけるアグロバクテリウム(EHA101株)内でのヒト
染色体断片を有するプラスミドの保持、イネのカルスと
の共存培養後のトランジェントなGUS 発現率、および再
分化個体再生率に影響するか否かを調べるために、Ri複
製起点の向きが異なるpBIGRZ1とpBIGRZ2とを使用し
た。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】 表中、+は可(可能)、±(可能だが困難)そして−は
不良(不可)として示した。
【0059】(4)これと平行して、同じヒト染色体断
片をpBIGZ(図1)にも導入して同様の操作を行い、イ
ネのカルス細胞へのこの染色体断片の導入を試みた。pB
IGZ は、Ri複製起点を持たず、pBI121のRK2複製起点の
みを持つ以外はpBIGRZと同じ構造を有するベクターであ
る。アグロバクテリウム中におけるプラスミド保持と植
物個体の再生率とを表1に示す。
【0060】(5)Ri複製起点を持つpBIGRZと、それを
持たないpBIGZ とを比較すると、アグロバクテリウム中
でのプラスミド保持と植物個体の再生率が、pBIGRZで有
意に向上していることが明らかになった。特に、個体の
再生率では、pBIGRZにおいて飛躍的な向上が認められ
た。
【0061】(6)また、Ri複製起点のプラスミド中で
の向きによっては、アグロバクテリウム中での保持率、
個体の再分化率の有意な差は認められなかった。 (7)再生個体の緑葉から染色体DNA を抽出しHindIII
により消化した。この消化断片について、コスミド(H7
8C10, H605)中に挿入されていたヒトゲノムのNotI挿入
断片を用いてサザン解析を行った。図3Aおよび3Bに結果
を示す。
【0062】図3Aおよび3Bにおいて、パネルAはH605
(約44kb)またはH78C10(約38kb)で形質転換されたR0
世代のサザンハイブリダイゼーションの結果である。各
パネルの対照のレーンは、元のヒトの染色体断片をHind
IIIで切断した断片を1コピー分の濃さで流したもので
ある。各クローンの1〜10レーンは、再生個体1個体の
葉から抽出したDNA をEco RIで切断し、サザンハイブリ
ダイゼーションを行った結果を示す。各形質転換体より
得られたDNA 断片のサザンハイブリダイゼーションの結
果、対照とほとんど同じパターンが見られた。パネルB
は、同じ親個体から得られた3個の植物個体のサザン分
析を示す。いずれの植物体においても、対照と同じ断片
のほぼ1コピーが含まれていた。点をつけて示したバン
ドは、ランダムマーカーにハイブリダイズしたものであ
る。
【0063】図3Aおよび3Bに示すように、ヒトコスミド
断片H78C10では6/10個体、断片H605では5/10個体の割
合で、1コピーないしそれ以上の数の染色体断片が、ほ
とんど初めの形を維持した状態でイネゲノムに導入され
ていることが明らかになった。また、このような染色体
断片が子孫に安定して伝えられてゆくことも証明され
た。
【0064】上記のように、大きな染色体DNA断片をベ
クター中に挿入して植物の形質転換に用いた場合、組み
込まれたDNA 断片が本発明のベクター中では、分断や再
編成を起こすことも少なく安定して当代のみならず後代
へも保持されること、および効率よく植物細胞中へ導入
されることが示された。したがって、本発明発明の大容
量バイナリーシャトルベクターは、できるだけ大きな染
色体DNA 断片により目的の遺伝子機能を相補して、目的
とする遺伝子を染色体上で絞り込む上で有用であること
も明らかになった。
【0065】この実施例では、イネを用いた結果を示し
た。しかし、従来の知見から、双子葉植物では、一般的
にイネより容易にアグロバクテリウムによる形質転換が
行われており、双子葉植物でも広く応用が期待されると
ともに、イネその他の重要な単子葉作物についても多少
の条件の検討により、より広い範囲の作物において応用
できることが期待される。さらに、最近では、アグロバ
クテリムより、酵母にも形質転換が行われることが示さ
れており、高等植物に限らず、すべての植物での応用も
可能と考えられる。
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、上記の課題である10kb
以上の染色体断片を、容易に、効率良く、安定性も良
く、染色体の再編成等が起こらない条件で、高等植物、
特にイネを始めとする単子葉作物に導入する手法が提供
される。また、本発明の大容量バイナリーシャトルベク
ターを用いて、対象となる植物の形質転換能を有したイ
ンサートサイズ40kb程度のゲノムライブラリーを作製す
ることも可能である。したがって、このベクターはポジ
ショナルクローニング法などを用いた有用遺伝子の単離
に有用である。
【0067】さらに、本発明の大容量のバイナリーシャ
トルベクターは、このように大きな染色体断片を組み込
むことができるため、これまで以上に大きな遺伝子や遺
伝子の複合体を効率よく植物に導入する上でも、本発明
の大容量バイナリーシャトルベクターが有用である。
【0068】また、本発明によって、高等植物、特に単
子葉作物を代表する作物の1つであるイネにおいて、ゲ
ノム機能を相補性テストで極めて効率的に検定するため
の手段が提供される。これにより、生物学的に重要では
あるが、発現量の少ない各種の遺伝子群、例えば、調節
遺伝子や、シグナルの認識/伝達に関与する遺伝子な
ど、あるいは、農業上重要な形質発現に関与する遺伝子
の単離を相当程度容易にすることが可能となる。
【0069】Ri oriのみをベクターの複製起点として使
用することにより、大容量化が達成される。さらに、本
発明の大容量バイナリーシャトルベクターを用いること
により、有用形質遺伝子の探索効率を大幅に向上させる
ことができる。このベクターは、BACライブラリーの構
成成分などのようなlox部位を有する従来のゲノムライ
ブラリーのインサートを有するプラスミドを、植物を形
質転換できる形に変化させる能力を有するように改変し
てもよい。
【0070】現在まで、多数のゲノムライブラリーが作
製されており、これらのライブラリーが植物の相補性検
定に使用できる場合には、非常に有用である。例えば、
Ri oriのみ、またはRi oriとRK2 oriの双方を有するベ
クター、すなわち、上述の大容量ベクターは、大腸菌お
よびアグロバクテリウム中で非常に安定であり、優れた
植物の形質転換能を有する。このような特性に基づき、
T-DNA領域中に複製起点としてRi oriとlox部位とparC部
位遺伝子とを有する本発明のベクターを作製することが
できる。ついで、このベクターを、BACなどのlox部位を
有するゲノムライブラリーのクローンを構成する環状プ
ラスミドとともに、特別な条件の下でcre酵素を一次的
に発現するように遺伝子操作された大腸菌株に導入する
ことができる。得られた形質転換体を、その後、ライブ
ラリーベクターの抗生物質による選択とその後のバイナ
リーベクターの選択に供する。このようにして、BACな
どのlox部位を有するライブラリーの構成ベクターが別
のベクターのT-DNA領域中のlox部位に統合されたベクタ
ーを得ることができる(図6A)。
【0071】上述のようにして得られた統合ベクター中
において、大型のゲノムインサートは、基本的には、上
記の大容量バイナリーシャトルベクターと同様の方法で
挿入されている。したがって、上記の手順を用いた統合
ベクターのアグロバクテリウム中への導入により、表I
に示す高転換率を有する植物へのインサートの導入を可
能にする。ライブラリーのプラスミドと統合されていな
い、Ri oriを有するバイナリーベクターを除くために、
parC配列をlox部位の近傍に挿入する。
【0072】したがって、本発明の大容量バイナリーベ
クターによるライブラリーを再度構築することなく、lo
x部位を有するBACまたはP1などのベクターからなる構築
されたゲノムライブラリーを、有効に相補性検定に利用
することができる。表Iに示したように、Ri oriとRK2
oriの双方を有するベクターは、RK2 oriのみを有するベ
クターによるよりも、はるかに高い効率で植物を形質転
換することができる。この結果より、大容量バイナリー
シャトルベクターを植物の農業形質の形質転換に使用し
て、遺伝子を導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】大容量シャトルベクターpBIGRZとRi複製起点を
持たない同様のベクターpBIGZとの構成を示す図であ
る。
【図2】pBI121からpBIHG を経てpBIGRZを作製するまで
の過程を示す図である。
【図3】pBIGRZによりイネに導入された2種類のヒトの
40kbの染色体断片のサザンブロットの結果を表すゲル電
気泳動写真である。A:導入当代(R0)において対照と
比較したときに、導入されたゲノムの断片にほとんど変
動が見られず、導入された染色体断片がそのまま入って
いることを示す。B:導入後代(R1)でも変動が見られ
ず、導入された染色体断片は安定に後代に伝えられるこ
とを示す。
【図4】pBIGRZにより、約40kbのヒトの染色体断片を導
入されたイネの花(左)と穂(中央)とを示す図面代用
写真である。稔性が極めて高く、実った穂は頭を垂れ
る。
【図5】pBIGRZを用いて作ったイネのゲノムライブラリ
ーを制限酵素NotIで切断した断片のゲル電気泳動の結果
を表す図面代用写真である。
【図6】本発明の大容量バイナリーベクターの性質を利
用した各種の誘導ベクターを示す。A:cre酵素の一次
的発現によるlox部位での特異的組換えを利用した単一
ベクターへの統合。B:ベクター、pBRPTの1例。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI (C12N 15/09 C12R 1:91) (C12N 5/10 C12R 1:91)

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 T-DNA領域と、複製起点にRiおよび/ま
    たはRK2とを有する大容量バイナリーシャトルベクタ
    ー。
  2. 【請求項2】 前記バイナリーシャトルベクターがpBI
    系のベクターである請求項1に記載の大容量バイナリー
    シャトルベクター。
  3. 【請求項3】 前記T-DNA領域にマルチクローニングサ
    イトを有する遺伝子を導入した請求項1または2に記載
    の大容量バイナリーシャトルベクター。
  4. 【請求項4】 前記マルチクローニングサイトを有する
    遺伝子がlacZ遺伝子である請求項1〜3のいずれかに記
    載の大容量バイナリーシャトルベクター。
  5. 【請求項5】 前記T-DNA領域に導入されたlacZと前記T
    -DNAの境界配列との間に抗生物質耐性遺伝子を導入した
    請求項1または2に記載の大容量バイナリーシャトルベ
    クター。
  6. 【請求項6】 前記抗生物質がハイグロマイシンである
    請求項1〜6のいずれかに記載の大容量バイナリーシャ
    トルベクター。
  7. 【請求項7】 大型の染色体断片を組み込むことができ
    る請求項1〜7のいずれかに記載の大容量バイナリーシ
    ャトルベクター。
  8. 【請求項8】 T-DNA領域中のlox部位と、par C遺伝子
    と、複製起点としてRi oriとを有するバイナリーベクタ
    ーであって、 cre酵素によりlox部位を有する環状ゲノ
    ムライブラリーの構成クローンと統合可能な前記ベクタ
    ー。
  9. 【請求項9】 T-DNA領域中に植物用のプロモーターと
    ターミネーターとで挟まれたマルチクローニング部位
    と、複製起点としてRi oriとを有する植物の形質転換用
    ベクター。
  10. 【請求項10】 植物の形質転換能を有するゲノムライ
    ブラリー。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の大容
    量バイナリーシャトルベクターからなる植物の形質転換
    能を有するゲノムライブラリー。
  12. 【請求項12】 ベクターをアグロバクテリウム細胞中
    に導入する工程と、前記アグロバクテリウムを植物中に
    移行させる工程とを備える、請求項11に記載のゲノムラ
    イブラリーのクローンに挿入された染色体断片中の遺伝
    子の機能を評価するための相補性検定方法。
  13. 【請求項13】 lox部位を有する環状ベクターを用い
    て構築されかつ宿主が大腸菌であるライブラリーの構成
    プラスミドクローンと請求項1〜9のいずれかに記載の
    バイナリーベクターとを統合する工程と、 前記統合ベクターをアグロバクテリウム細胞中に導入す
    る工程と、 前記アグロバクテリウムを植物中に移行させる工程とを
    備える、ゲノムライブラリーのクローンに挿入された染
    色体断片中の遺伝子の機能を評価するための相補性検定
    方法。
  14. 【請求項14】 請求項12または13に記載の方法で得ら
    れた遺伝子。
  15. 【請求項15】 請求項1〜9のいずれかに記載の大容
    量バイナリーシャトルベクターを用いる有用遺伝子の探
    索方法。
  16. 【請求項16】 請求項1〜9のいずれかに記載のバイ
    ナリーベクターまたは請求項14に記載の遺伝子を導入す
    ることによって作出された形質転換植物。
  17. 【請求項17】 植物が種子植物またはすべての植物で
    ある請求項16に記載の形質転換植物。
  18. 【請求項18】 植物が単子葉植物である請求項16に記
    載の形質転換植物。
  19. 【請求項19】 高転換能を有する株のrecA遺伝子上で
    の部位特異的突然変異によって前記株をrecA-株に形質
    転換する工程と、 形質転換されたrecA-ベクターとrecA+遺伝子との間で、
    細胞中においてrecA+遺伝子を有する株に相同組換えを
    導入する工程と、 前記株を拡げたプレートのレプリカを作製することによ
    って形質転換体を選択する工程と、 前記プレートを紫外線照射してUV照射下では生育できな
    いクローンをスクリーニングする工程とを備える、大型
    インサートを有するベクターを安定に維持するrecA-
    高転換能株の生産方法。
  20. 【請求項20】 大型インサートを有する大容量バイナ
    リーベクターを安定に維持するrecA-の高転換能株。
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