JPH10139595A - Ybco薄膜の製造方法およびybco薄膜被覆体 - Google Patents
Ybco薄膜の製造方法およびybco薄膜被覆体Info
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- JPH10139595A JPH10139595A JP29475896A JP29475896A JPH10139595A JP H10139595 A JPH10139595 A JP H10139595A JP 29475896 A JP29475896 A JP 29475896A JP 29475896 A JP29475896 A JP 29475896A JP H10139595 A JPH10139595 A JP H10139595A
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- ybco
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- axis
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Abstract
(57)【要約】
【課題】基板面に垂直にc軸が配向した、結晶粒界の少
ない酸化物超伝導体YBCO薄膜の製造方法およびYB
CO薄膜被覆体の提供。 【解決手段】(1)面方位{110}のMgO単結晶基
板を650℃以上に加熱して、その基板上に酸化物超伝
導体YBCOを成膜する方法を含むYBCO薄膜の製造
方法。 (2)面方位{110}のMgO単結晶基板上にc軸が
基板面に垂直な酸化物超伝導体YBCOの薄膜を備える
YBCO薄膜被覆体。
ない酸化物超伝導体YBCO薄膜の製造方法およびYB
CO薄膜被覆体の提供。 【解決手段】(1)面方位{110}のMgO単結晶基
板を650℃以上に加熱して、その基板上に酸化物超伝
導体YBCOを成膜する方法を含むYBCO薄膜の製造
方法。 (2)面方位{110}のMgO単結晶基板上にc軸が
基板面に垂直な酸化物超伝導体YBCOの薄膜を備える
YBCO薄膜被覆体。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超伝導デバイス、
SQUID、フィルタ等に使用される酸化物超伝導体Y
BCOの薄膜の製造方法およびYBCO薄膜被覆体に関
する。
SQUID、フィルタ等に使用される酸化物超伝導体Y
BCOの薄膜の製造方法およびYBCO薄膜被覆体に関
する。
【0002】
【従来の技術】立方晶の結晶構造をとるMgOの単結晶
基板は酸化物超伝導薄膜、誘電体薄膜等の成膜用基板と
して広く使用されている。特に近年では、誘電率が小さ
く、かつ熱膨張係数が酸化物超伝導体に近いなどの特徴
から、酸化物超伝導体YBCOの高周波デバイス用薄膜
の成膜基板としてもっとも広く使用されている。
基板は酸化物超伝導薄膜、誘電体薄膜等の成膜用基板と
して広く使用されている。特に近年では、誘電率が小さ
く、かつ熱膨張係数が酸化物超伝導体に近いなどの特徴
から、酸化物超伝導体YBCOの高周波デバイス用薄膜
の成膜基板としてもっとも広く使用されている。
【0003】このうち、通常使用されている基板はMg
Oの{100}面を基板面とする基板である。このよう
な基板を「面方位{100}のMgO単結晶基板」とい
う。本明細書において、特定の面を表示する場合には、
(100)等のように丸カッコを用い、{100}のよ
うに{}カッコを用いる場合には、等価な面を全て含む
ことを表示する。たとえば立方晶においては、{10
0}は、(100)、(010)、(-1 0 0)等を
全て含むことを意味する。
Oの{100}面を基板面とする基板である。このよう
な基板を「面方位{100}のMgO単結晶基板」とい
う。本明細書において、特定の面を表示する場合には、
(100)等のように丸カッコを用い、{100}のよ
うに{}カッコを用いる場合には、等価な面を全て含む
ことを表示する。たとえば立方晶においては、{10
0}は、(100)、(010)、(-1 0 0)等を
全て含むことを意味する。
【0004】また、特定の方向を表示する場合も、(1
00)のように丸カッコを用いる。しかし、等価な方向
を全て代表する場合は、〈100〉のような形状のカッ
コを用いる。面の場合も方向の場合も、マイナスを表す
ときは -1のように指標にマイナス符号を付ける。
00)のように丸カッコを用いる。しかし、等価な方向
を全て代表する場合は、〈100〉のような形状のカッ
コを用いる。面の場合も方向の場合も、マイナスを表す
ときは -1のように指標にマイナス符号を付ける。
【0005】立方晶の場合、方向(100)を直交する
xyz軸のx軸とすれば、面(100)はx軸に垂直、
すなわち方向(100)に垂直な面である。
xyz軸のx軸とすれば、面(100)はx軸に垂直、
すなわち方向(100)に垂直な面である。
【0006】MgOの結晶構造は上記したように立方晶
であり、その原子配列はサイコロ型に区分けできる。M
gOの面{100}はサイコロの1つの面(どの面でも
よい。6個のサイコロの面は等価であり区別できな
い。)に対応する。
であり、その原子配列はサイコロ型に区分けできる。M
gOの面{100}はサイコロの1つの面(どの面でも
よい。6個のサイコロの面は等価であり区別できな
い。)に対応する。
【0007】YBCOとは、酸化物超伝導体YBa2C
a3O7-X をいう。YBCOの結晶構造は常温では正方
晶であり、その原子配列は四角柱の形に区分けできる。
YBCOは四角柱のなかでも細長い四角柱に区分けでき
る。
a3O7-X をいう。YBCOの結晶構造は常温では正方
晶であり、その原子配列は四角柱の形に区分けできる。
YBCOは四角柱のなかでも細長い四角柱に区分けでき
る。
【0008】文献(M.Suzuki,et.al:Adv.Supercond. vo
l.7 ('95),p945 )によれば、MgO{100}基板上
にc軸配向のYBCO薄膜を成膜した場合、基板面内方
向に主に二つの方位を持つ薄膜の結晶粒が生成する。一
つはcube−on−cube grains(以下、
「辺々対応粒」という。)であり、もう一つは45°r
otated grains(以下、「45゜回転粒」
という。)である。
l.7 ('95),p945 )によれば、MgO{100}基板上
にc軸配向のYBCO薄膜を成膜した場合、基板面内方
向に主に二つの方位を持つ薄膜の結晶粒が生成する。一
つはcube−on−cube grains(以下、
「辺々対応粒」という。)であり、もう一つは45°r
otated grains(以下、「45゜回転粒」
という。)である。
【0009】ここで、“YBCOをc軸配向させる”と
は、上記のYBCOの四角柱の底面をMgOのサイコロ
の面に平行にのせるように、すなわち四角柱の長さ方向
(c軸)をサイコロ面に垂直になるようにYBCOの薄
膜を成長させることをいう。
は、上記のYBCOの四角柱の底面をMgOのサイコロ
の面に平行にのせるように、すなわち四角柱の長さ方向
(c軸)をサイコロ面に垂直になるようにYBCOの薄
膜を成長させることをいう。
【0010】上記の二つの方位とは、四角柱の底面をサ
イコロの面に平行に保ちながら、四角柱の底面の正方形
の辺をサイコロ面の正方形の辺に平行にする方位(辺々
対応粒)と、サイコロ面の正方形の対角線に四角柱の底
面の正方形の辺を平行にする方位(45゜回転粒)の2
つの方位をさす。
イコロの面に平行に保ちながら、四角柱の底面の正方形
の辺をサイコロ面の正方形の辺に平行にする方位(辺々
対応粒)と、サイコロ面の正方形の対角線に四角柱の底
面の正方形の辺を平行にする方位(45゜回転粒)の2
つの方位をさす。
【0011】YBCOの薄膜面内における結晶粒の成長
は成膜時の条件の影響を受け、成膜時に基板温度、酸素
圧が高い場合、45°回転粒の割合が増加する。YBC
Oにおいては、電流はほとんど四角柱の底面に平行に流
れ、四角柱の長さ方向には流れないので、c軸配向であ
るかぎり上記2種類の結晶粒が混在しても、双方の結晶
粒ともに電流が流れる面は基板面に平行なので電流が流
れなくなることはない。しかし、薄膜に上記のような異
なった二つの結晶粒が生成すると、その境界が結晶粒界
を形成し多結晶体となる。薄膜が多結晶体になると、そ
の結晶粒界が、超伝導薄膜の応用上非常に重要な因子で
ある臨界電流密度を低下させるので、多結晶薄膜となる
ことは避けなければならない。ここで、“臨界電流密
度”とは、臨界温度以下で超伝導状態にあるYBCOに
電流を流して超伝導状態が壊れない最大の電流をいう。
は成膜時の条件の影響を受け、成膜時に基板温度、酸素
圧が高い場合、45°回転粒の割合が増加する。YBC
Oにおいては、電流はほとんど四角柱の底面に平行に流
れ、四角柱の長さ方向には流れないので、c軸配向であ
るかぎり上記2種類の結晶粒が混在しても、双方の結晶
粒ともに電流が流れる面は基板面に平行なので電流が流
れなくなることはない。しかし、薄膜に上記のような異
なった二つの結晶粒が生成すると、その境界が結晶粒界
を形成し多結晶体となる。薄膜が多結晶体になると、そ
の結晶粒界が、超伝導薄膜の応用上非常に重要な因子で
ある臨界電流密度を低下させるので、多結晶薄膜となる
ことは避けなければならない。ここで、“臨界電流密
度”とは、臨界温度以下で超伝導状態にあるYBCOに
電流を流して超伝導状態が壊れない最大の電流をいう。
【0012】成膜時に基板温度を低くすることにより、
45°回転粒の割合を少なくすることは出来る。しか
し、成膜持に基板温度を低くすることにより基板面に垂
直な方向にa軸が配向し(これは四角柱がサイコロ面に
横になって寝るような方位が増えることを意味する)、
超伝導特性がいちじるしく劣化する。
45°回転粒の割合を少なくすることは出来る。しか
し、成膜持に基板温度を低くすることにより基板面に垂
直な方向にa軸が配向し(これは四角柱がサイコロ面に
横になって寝るような方位が増えることを意味する)、
超伝導特性がいちじるしく劣化する。
【0013】上記の文献においては、a軸配向を抑制し
良好な超伝導特性を得るには、基板温度を840℃以上
にする必要があると述べているが、その場合には、45
°回転粒の増大、したがって結晶粒界の増大は避けられ
ない。
良好な超伝導特性を得るには、基板温度を840℃以上
にする必要があると述べているが、その場合には、45
°回転粒の増大、したがって結晶粒界の増大は避けられ
ない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、酸化物超伝
導体YBCO薄膜の成膜において、基板面に垂直にc軸
が配向した結晶粒界の少ないYBCO薄膜の製造方法お
よびYBCO薄膜被覆体を提供することを目的とする。
導体YBCO薄膜の成膜において、基板面に垂直にc軸
が配向した結晶粒界の少ないYBCO薄膜の製造方法お
よびYBCO薄膜被覆体を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】図1(a)はMgOの
(100)面を紙面に平行にした場合、方向(01
0)、(011)、(010)を示した図面である。
(100)面を紙面に平行にした場合、方向(01
0)、(011)、(010)を示した図面である。
【0016】図1(b)は、このMgOの(100)面
にYBCO薄膜を成膜した場合にc軸配向した薄膜YB
COがとりうる方位関係を示す図面である。図1(b)
においては、紙面に垂直な方向にYBCOのc軸、すな
わち(001)方向が、右側の図および左側の図ともに
揃っている。しかし、前記したようにYBCOのa軸お
よびb軸はMgOの方向(001)、(010)、(0
11)、(0 1 -1)等のどの方向に対しても優先順
位なく平行になる性質を有するため、基板面内方向に辺
々対応粒(〈100〉に平行な場合)、45°回転粒
(〈110〉に平行な場合)の異なる2方位の結晶粒が
生成する。YBCOのa軸とb軸(両者は等価な軸)
が、MgOの〈100〉に平行になる場合、および〈1
10〉に平行になる場合の2つの場合が生じるのは、M
gOとYBCOでの結晶配列その他の性質に由来する。
本発明者は、上記の性質について綿密な考察をつき詰
めていった結果、つぎのような考えに到達することがで
きた。
にYBCO薄膜を成膜した場合にc軸配向した薄膜YB
COがとりうる方位関係を示す図面である。図1(b)
においては、紙面に垂直な方向にYBCOのc軸、すな
わち(001)方向が、右側の図および左側の図ともに
揃っている。しかし、前記したようにYBCOのa軸お
よびb軸はMgOの方向(001)、(010)、(0
11)、(0 1 -1)等のどの方向に対しても優先順
位なく平行になる性質を有するため、基板面内方向に辺
々対応粒(〈100〉に平行な場合)、45°回転粒
(〈110〉に平行な場合)の異なる2方位の結晶粒が
生成する。YBCOのa軸とb軸(両者は等価な軸)
が、MgOの〈100〉に平行になる場合、および〈1
10〉に平行になる場合の2つの場合が生じるのは、M
gOとYBCOでの結晶配列その他の性質に由来する。
本発明者は、上記の性質について綿密な考察をつき詰
めていった結果、つぎのような考えに到達することがで
きた。
【0017】1種類の結晶方位のみのYBCO薄膜を作
製するためには、“YBCOのa軸およびb軸が平行に
なるMgOの方向を直交する2軸に持つ面”を基板面と
して成膜すればよい。そのような面は{110}であ
る。
製するためには、“YBCOのa軸およびb軸が平行に
なるMgOの方向を直交する2軸に持つ面”を基板面と
して成膜すればよい。そのような面は{110}であ
る。
【0018】図2は、MgO基板面(110)を紙面に
平行にした場合、基板面上で直交する2方向(001)
と(1 -1 0) を示す図面である。立方晶において、
基板面(110)は面{110}が代表する等価な面の
うちの1つであり、方向(001)および方向(1 -1
0)は、それぞれ 方向〈100〉および〈110〉が
代表する等価な方向の1つである。
平行にした場合、基板面上で直交する2方向(001)
と(1 -1 0) を示す図面である。立方晶において、
基板面(110)は面{110}が代表する等価な面の
うちの1つであり、方向(001)および方向(1 -1
0)は、それぞれ 方向〈100〉および〈110〉が
代表する等価な方向の1つである。
【0019】YBCOのa軸とb軸が平行になるMgO
の方向 (001)と(1 -1 0)は直交している。Y
BCOのa軸とb軸は結晶的に等価であるから、a軸ま
たはb軸が、方向(001)または方向(1 -1 0)
に平行であるかぎり、できるYBCOの結晶方位は1と
おりであり結晶粒界が生じることはない。
の方向 (001)と(1 -1 0)は直交している。Y
BCOのa軸とb軸は結晶的に等価であるから、a軸ま
たはb軸が、方向(001)または方向(1 -1 0)
に平行であるかぎり、できるYBCOの結晶方位は1と
おりであり結晶粒界が生じることはない。
【0020】本発明は、上記考察結果を基に実験をおこ
ないその効果を確認することによって完成されたもの
で、下記のYBCO薄膜の製造方法およびYBCO薄膜
被覆体を要旨とする。
ないその効果を確認することによって完成されたもの
で、下記のYBCO薄膜の製造方法およびYBCO薄膜
被覆体を要旨とする。
【0021】(1)面方位{110}のMgO単結晶基
板を650℃以上に加熱して、その基板上に酸化物超伝
導体YBCOを成膜する方法を含むYBCO薄膜の製造
方法(〔発明1〕とする)。
板を650℃以上に加熱して、その基板上に酸化物超伝
導体YBCOを成膜する方法を含むYBCO薄膜の製造
方法(〔発明1〕とする)。
【0022】(2)面方位{110}のMgO単結晶基
板上にc軸が基板面に垂直な酸化物超伝導体YBCOの
薄膜を備えるYBCO薄膜被覆体(〔発明2〕とす
る)。
板上にc軸が基板面に垂直な酸化物超伝導体YBCOの
薄膜を備えるYBCO薄膜被覆体(〔発明2〕とす
る)。
【0023】上記〔発明1〕および〔発明2〕におい
て、「MgOの面方位{100}」は、MgOの基板面
が厳密に{100}面でなくてもよく、後記するよう
に、その基板面が{100}面から一定の範囲内にあれ
ばよい。
て、「MgOの面方位{100}」は、MgOの基板面
が厳密に{100}面でなくてもよく、後記するよう
に、その基板面が{100}面から一定の範囲内にあれ
ばよい。
【0024】〔発明1〕において、“面方位{110}
のMgO単結晶基板を700℃以上に加熱して、その基
板上にYBCOを成膜する方法を含む”方法であれば、
いずれの方法も、本発明に該当する。
のMgO単結晶基板を700℃以上に加熱して、その基
板上にYBCOを成膜する方法を含む”方法であれば、
いずれの方法も、本発明に該当する。
【0025】〔発明2〕において、YBCOの全ての結
晶粒においてそのc軸が基板面に垂直でなくてもよく、
一部の結晶粒のc軸が基板面に垂直でなくてもよい。
晶粒においてそのc軸が基板面に垂直でなくてもよく、
一部の結晶粒のc軸が基板面に垂直でなくてもよい。
【0026】〔発明1〕における「YBCO“薄膜”」
はYBCO薄膜そのものをさすのに対して、〔発明2〕
における「YBCO薄膜“被覆体”」とはYBCO薄膜
とそれが成膜された基板との複合体をさす。
はYBCO薄膜そのものをさすのに対して、〔発明2〕
における「YBCO薄膜“被覆体”」とはYBCO薄膜
とそれが成膜された基板との複合体をさす。
【0027】
1.基板 本発明法は{110}面を基板面とするMgO単結晶基
板を成膜用基板として使用し、c軸配向し、かつ基板面
内方向のYBCO結晶粒の方位の揃った薄膜作製方法で
ある。基板は、面{110}を基板面に平行に出したM
gO単結晶基板で、通常用いられている研磨方法で研磨
したものでよい。成膜したYBCO結晶粒の方位を揃え
るため、基板面となる面は{110}面からの傾きが少
ない程良い。具体的には、基板面は、{110}面か
ら、任意の方向へ5度以内の傾きであればよい。
板を成膜用基板として使用し、c軸配向し、かつ基板面
内方向のYBCO結晶粒の方位の揃った薄膜作製方法で
ある。基板は、面{110}を基板面に平行に出したM
gO単結晶基板で、通常用いられている研磨方法で研磨
したものでよい。成膜したYBCO結晶粒の方位を揃え
るため、基板面となる面は{110}面からの傾きが少
ない程良い。具体的には、基板面は、{110}面か
ら、任意の方向へ5度以内の傾きであればよい。
【0028】2.薄膜成長方法 YBCO薄膜の成膜方法は、酸化物薄膜の成膜に通常用
いられる方法であればどのような方法でも良い。たとえ
ば、後述する実施例のような、レーザーアブレーション
法を用いてもよいし、また、スパッタリング法などで成
膜しても良い。
いられる方法であればどのような方法でも良い。たとえ
ば、後述する実施例のような、レーザーアブレーション
法を用いてもよいし、また、スパッタリング法などで成
膜しても良い。
【0029】ただし、成膜は、あくまで基板面に対し垂
直な方向にYBCOのc軸が配向する条件で行われなけ
ればならない。一般的にMgO{100}基板面にc軸
配向した薄膜を成膜させるためには基板温度840℃以
上が望ましいとされている。しかし、MgO{100}
単結晶基板上に成膜する場合、基板温度を高くすると4
5°回転粒が増大するため、臨界電流密度が劣化する。
直な方向にYBCOのc軸が配向する条件で行われなけ
ればならない。一般的にMgO{100}基板面にc軸
配向した薄膜を成膜させるためには基板温度840℃以
上が望ましいとされている。しかし、MgO{100}
単結晶基板上に成膜する場合、基板温度を高くすると4
5°回転粒が増大するため、臨界電流密度が劣化する。
【0030】〔発明1〕において、MgO{110}基
板面にc軸配向させるには、650℃以上でc軸配向が
得られることが判明した。MgO{100}基板を用い
る場合は、840℃以上がc軸配向を得るのに好ましい
温度域とされていたが、MgO{110}基板を用いる
場合には、それより低くなり、650℃以上が好ましい
温度域である。
板面にc軸配向させるには、650℃以上でc軸配向が
得られることが判明した。MgO{100}基板を用い
る場合は、840℃以上がc軸配向を得るのに好ましい
温度域とされていたが、MgO{110}基板を用いる
場合には、それより低くなり、650℃以上が好ましい
温度域である。
【0031】しかも、本発明方法によれば、c軸配向し
た結晶粒には1種類の方位しか生じようがないため、基
板温度を650℃を超えてさらに高温にしても結晶粒界
の増大は抑制され、良質の薄膜を得ることができる。し
たがって、〔発明1〕の製造方法においては、基板温度
は650℃以上とする。
た結晶粒には1種類の方位しか生じようがないため、基
板温度を650℃を超えてさらに高温にしても結晶粒界
の増大は抑制され、良質の薄膜を得ることができる。し
たがって、〔発明1〕の製造方法においては、基板温度
は650℃以上とする。
【0032】一方、基板温度があまり高すぎるとYBC
O中の酸素の含有率が低下して目的とするYBCOの組
成が得られないので900℃以下とすることが望まし
い。より確実にc軸配向が得られ、かつ最適な酸素濃度
とするには、基板温度は675〜850℃の温度域とす
ることが望ましい。
O中の酸素の含有率が低下して目的とするYBCOの組
成が得られないので900℃以下とすることが望まし
い。より確実にc軸配向が得られ、かつ最適な酸素濃度
とするには、基板温度は675〜850℃の温度域とす
ることが望ましい。
【0033】3.YBCO薄膜被覆体 〔発明2〕におけるYBCO薄膜被覆体のうちのYBC
O薄膜は、全てである必要はないが、大部分の結晶粒の
c軸がMgO基板面に垂直でなければならない。すべて
の結晶粒がc軸配向することが望ましいのは言うまでも
ない。c軸配向の度合いが減少するほど、超伝導の電流
密度がいちじるしく低下するからである。
O薄膜は、全てである必要はないが、大部分の結晶粒の
c軸がMgO基板面に垂直でなければならない。すべて
の結晶粒がc軸配向することが望ましいのは言うまでも
ない。c軸配向の度合いが減少するほど、超伝導の電流
密度がいちじるしく低下するからである。
【0034】さらにMgO{110}を基板としている
ので、基板上には結晶粒界の少ないYBCO薄膜が成膜
されており、臨界電流密度など超伝導特性は優れたもの
となる。通常、YBCO薄膜は基板上に成膜された後、
YBCO薄膜だけ基板から分離されて使用されずに、そ
のままの状態でYBCO薄膜被覆体として使用される。
ので、基板上には結晶粒界の少ないYBCO薄膜が成膜
されており、臨界電流密度など超伝導特性は優れたもの
となる。通常、YBCO薄膜は基板上に成膜された後、
YBCO薄膜だけ基板から分離されて使用されずに、そ
のままの状態でYBCO薄膜被覆体として使用される。
【0035】
【実施例】つぎに、実施例により本発明の効果を説明す
る。
る。
【0036】本発明例として(110)面を基板面とす
るMgO単結晶基板上にレーザーアブレーション法を用
いてYBCO薄膜を成膜した。
るMgO単結晶基板上にレーザーアブレーション法を用
いてYBCO薄膜を成膜した。
【0037】表1はそのレーザーアブレーション法によ
る成膜条件を示す。
る成膜条件を示す。
【0038】
【表1】
【0039】成膜の際の基板温度は、700、750、
800℃の3条件とし、基板面の(110)からのオフ
角度はジャスト、3度オフ、5度オフ、10度オフとし
た。
800℃の3条件とし、基板面の(110)からのオフ
角度はジャスト、3度オフ、5度オフ、10度オフとし
た。
【0040】比較例として(100)面を基板面とする
MgO単結晶を用い、レーザーアブレーション法によ
り、表1と同じ条件で成膜をおこなった。基板面の(1
00)面からのオフ角度は、ジャスト、3度オフ、5度
オフ、10度オフとした。膜厚は全てについて、0.3
μmとなるように時間を調整しておこなった。
MgO単結晶を用い、レーザーアブレーション法によ
り、表1と同じ条件で成膜をおこなった。基板面の(1
00)面からのオフ角度は、ジャスト、3度オフ、5度
オフ、10度オフとした。膜厚は全てについて、0.3
μmとなるように時間を調整しておこなった。
【0041】成膜後、特別な熱処理を行うことなく、Y
BCO薄膜に対してX線回折測定をおこなった。X線回
折測定は入射角をスキャンさせ回折強度を求め、辺々対
応粒に対する45°回転粒の回折強度の割合({I(4
5゜回転粒)/I(辺々対応粒)}×100%)により
評価した。
BCO薄膜に対してX線回折測定をおこなった。X線回
折測定は入射角をスキャンさせ回折強度を求め、辺々対
応粒に対する45°回転粒の回折強度の割合({I(4
5゜回転粒)/I(辺々対応粒)}×100%)により
評価した。
【0042】表2は測定結果を示す一覧表である。
【0043】
【表2】
【0044】表3は別の機会に行った成膜温度のc軸配
向性に及ぼす影響を示す一覧表である。ここでa軸配向
は、前記したように、基板面にYBCOを区切る四角柱
が横に寝る向きであり、超伝導特性が劣るものをさす。
本発明は超伝導特性の良好なc軸配向であって、かつ4
5゜回転粒の少ない薄膜を得ることを目的とする。
向性に及ぼす影響を示す一覧表である。ここでa軸配向
は、前記したように、基板面にYBCOを区切る四角柱
が横に寝る向きであり、超伝導特性が劣るものをさす。
本発明は超伝導特性の良好なc軸配向であって、かつ4
5゜回転粒の少ない薄膜を得ることを目的とする。
【0045】
【表3】
【0046】表2には成膜温度600℃での45゜回転
粒の割合は記載されていないが、これは600℃ではa
軸配向の割合が増えたためc軸配向における45゜回転
粒の比率の有意な測定ができなかったためである。
粒の割合は記載されていないが、これは600℃ではa
軸配向の割合が増えたためc軸配向における45゜回転
粒の比率の有意な測定ができなかったためである。
【0047】表2および表3によれば、本発明例はc軸
配向をとり、かつ45゜回転粒の割合は非常に低く、と
くに基板温度700〜750℃においては45゜回転粒
の割合がゼロになる場合がある。比較例ではこのような
良質の薄膜は得られなかった。このような、単結晶化し
た、または単結晶に近いYBCO薄膜は、これまででは
きわめて多数の試行錯誤の後、ごく少数の例において得
られていたものである。本発明例においてはこれが普通
に得られており、本発明がこの分野において、簡明、か
つ基本的なものであることを如実に示している。
配向をとり、かつ45゜回転粒の割合は非常に低く、と
くに基板温度700〜750℃においては45゜回転粒
の割合がゼロになる場合がある。比較例ではこのような
良質の薄膜は得られなかった。このような、単結晶化し
た、または単結晶に近いYBCO薄膜は、これまででは
きわめて多数の試行錯誤の後、ごく少数の例において得
られていたものである。本発明例においてはこれが普通
に得られており、本発明がこの分野において、簡明、か
つ基本的なものであることを如実に示している。
【0048】
【発明の効果】本発明により、臨界電流密度の高い結晶
粒界の少ないYBCO薄膜の製造方法とYBCO薄膜被
覆体が高い再現性のもとに得られ、工業システムのなか
に良質のYBCO薄膜を製造する方法を組み込むことが
可能となる。この結果、エレクトロニクス分野の各種の
デバイスにおいて高い臨界電流密度をもつYBCO薄膜
の利用が促進される。
粒界の少ないYBCO薄膜の製造方法とYBCO薄膜被
覆体が高い再現性のもとに得られ、工業システムのなか
に良質のYBCO薄膜を製造する方法を組み込むことが
可能となる。この結果、エレクトロニクス分野の各種の
デバイスにおいて高い臨界電流密度をもつYBCO薄膜
の利用が促進される。
【図1】(a)は、MgO(100)面を紙面に平行に
した場合の方向(001)、(010)、(011)を
表す。(b)は、MgO(100)面にYBCO薄膜が
c軸配向して成長する場合にとりうる2つの方位関係を
示す。
した場合の方向(001)、(010)、(011)を
表す。(b)は、MgO(100)面にYBCO薄膜が
c軸配向して成長する場合にとりうる2つの方位関係を
示す。
【図2】MgO(110)面を紙面に平行にした場合
に、基板面上で直交する2方向(1 -1 0)と(00
1)を示す。
に、基板面上で直交する2方向(1 -1 0)と(00
1)を示す。
Claims (2)
- 【請求項1】面方位{110}のMgO単結晶基板を6
50℃以上に加熱して、その基板上に酸化物超伝導体Y
BCOを成膜する方法を含むことを特徴とするYBCO
薄膜の製造方法。 - 【請求項2】面方位{110}のMgO単結晶基板上に
c軸が基板面に垂直な酸化物超伝導体YBCOの薄膜を
備えることを特徴とするYBCO薄膜被覆体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29475896A JPH10139595A (ja) | 1996-11-07 | 1996-11-07 | Ybco薄膜の製造方法およびybco薄膜被覆体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29475896A JPH10139595A (ja) | 1996-11-07 | 1996-11-07 | Ybco薄膜の製造方法およびybco薄膜被覆体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10139595A true JPH10139595A (ja) | 1998-05-26 |
Family
ID=17811928
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP29475896A Pending JPH10139595A (ja) | 1996-11-07 | 1996-11-07 | Ybco薄膜の製造方法およびybco薄膜被覆体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH10139595A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7283855B2 (en) | 2002-08-30 | 2007-10-16 | Fujitsu Limited | Dielectric waveguide having a 45° face and method of production thereof |
CN103184513A (zh) * | 2013-03-13 | 2013-07-03 | 清华大学 | 高温超导薄膜的制备方法 |
KR101884137B1 (ko) | 2017-11-14 | 2018-07-31 | 김문수 | 2단 연소통을 가지는 펠릿용 로스터 |
-
1996
- 1996-11-07 JP JP29475896A patent/JPH10139595A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7283855B2 (en) | 2002-08-30 | 2007-10-16 | Fujitsu Limited | Dielectric waveguide having a 45° face and method of production thereof |
CN103184513A (zh) * | 2013-03-13 | 2013-07-03 | 清华大学 | 高温超导薄膜的制备方法 |
CN103184513B (zh) * | 2013-03-13 | 2016-04-27 | 清华大学 | 高温超导薄膜的制备方法 |
KR101884137B1 (ko) | 2017-11-14 | 2018-07-31 | 김문수 | 2단 연소통을 가지는 펠릿용 로스터 |
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