JPH10130631A - 湿式摩擦材及びその製造方法 - Google Patents

湿式摩擦材及びその製造方法

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JPH10130631A
JPH10130631A JP30743996A JP30743996A JPH10130631A JP H10130631 A JPH10130631 A JP H10130631A JP 30743996 A JP30743996 A JP 30743996A JP 30743996 A JP30743996 A JP 30743996A JP H10130631 A JPH10130631 A JP H10130631A
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friction material
friction
material layer
ceramic
hollow
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JP30743996A
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English (en)
Inventor
Kota Maruyama
宏太 丸山
Wataru Yagi
渉 八木
Yasunobu Yamamoto
安信 山本
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Aisin Corp
Original Assignee
Aisin Seiki Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い摩擦係数と良好なトルク特性,及び優れ
た耐熱性及び耐久性とを発揮することができる湿式摩擦
材及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 芯材の表面に形成した摩擦材層6は,銅
合金5と,銅合金の中に分散させた潤滑剤3及び摩擦係
数向上用のセラミックス中空体11,12とよりなると
ともに,連通孔2を有する多孔質体である。セラミック
ス中空体は,中空形状,又は破断中空形状である。湿式
摩擦材を製造するに当たっては,発泡剤を含浸させた多
孔質のセラミックス粒子,銅合金材料,及び潤滑剤から
なる溶射用原料を混合し,次いで,溶射用原料を芯材に
溶射して,発泡剤によりセラミックス粒子を発泡させて
破断中空形状又は中空形状のセラミックス中空体を形成
するとともに,発泡剤の逃げ跡である連通孔を有する多
孔性の摩擦材層を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,産業用車両,高負荷車両等の動
力伝達機構等に用いられる,湿式摩擦材及びその製造方
法に関し,特に,摩擦係数が高く,高負荷で優れた耐熱
性を有する摩擦材料に関する。
【0002】
【従来技術】湿式多板クラッチは,自動車等の車両にお
ける動力伝達装置等に配置され,動力の接続中断を任意
に制御する手段である。湿式多板クラッチは,摩擦材層
を有するプレートを潤滑油中に摺動可能に複数枚設け
て,摺動時に各プレートの間に生じる摩擦力によって動
力を伝達する。潤滑油は,プレートの摩擦面で生じる熱
を放冷し,摩擦特性を改良する役目を担う。
【0003】摩擦材層としては,従来,例えば,ペーパ
ー系摩擦材料,金属系摩擦材料等が用いられている。ペ
ーパー系摩擦材料は,繊維成分等からなる不織布に熱硬
化型樹脂を含浸させて形成したものであり,摩擦係数が
高く,トルク特性も高い。
【0004】また,金属系摩擦材料は,繊維成分等の充
填材料を,金属,合金,金属化合物等のバインダーによ
り結合させたものである。かかる金属系摩擦材料は,特
に,ブルドーザー,ショベルカー等の産業用車両の動力
伝達装置に用いられ,高負荷条件下で,優れた耐熱性及
び耐久性を発揮する。かかる金属系摩擦材料としては,
従来,例えば,Cu−Co系材料(特開平7−9756
4号公報),Cu−C−Sn−SiO2 系材料(特開平
7−53947号公報,特開平7−149921号公
報)が提案されている。
【0005】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の湿
式摩擦材料においては,以下の問題点がある。即ち,ペ
ーパー系摩擦材料においては,高負荷条件下での耐熱性
及び耐久性が不十分であるという問題がある。また,金
属系摩擦材料においては,摩擦係数が低く,トルク特性
が低いという問題がある。
【0006】特に,近年,湿式摩擦材に要求される特性
が多様化している。更に,エンジンの高出力化,動力伝
達装置のコンパクト化によるプレートの小径化,プレー
トの使用枚数の削減等が望まれており,湿式摩擦材の使
用環境も過酷になってきている。従って,高い摩擦係数
と良好なトルク特性,及び優れた耐熱性及び耐久性とを
併有する新規な湿式摩擦材の開発が望まれている。
【0007】本発明はかかる従来の問題点に鑑み,高い
摩擦係数と良好なトルク特性,及び優れた耐熱性及び耐
久性とを発揮することができる湿式摩擦材及びその製造
方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,芯材と該芯材の
表面に形成した摩擦材層とよりなり,該摩擦材層は,銅
合金と,該銅合金の中に分散させた潤滑剤及び摩擦係数
向上用のセラミックス中空体とよりなるとともに,連通
孔を有する多孔質体であり,かつ,上記セラミックス中
空体は,内部に空隙を有する中空形状,又は該中空形状
の外壁の一部に破断部を有する破断中空形状を形成して
いることを特徴とする湿式摩擦材である。
【0009】本発明において最も注目すべきことは,摩
擦材層に連通孔が形成されていること,及び摩擦材層に
は破断中空形状又は中空形状のセラミックス中空体が分
散していることである。
【0010】次に,本発明の作用及び効果について説明
する。本発明の湿式摩擦材においては,摩擦材層に連通
孔が形成されている。連通孔は,摩擦材層の気孔率を増
大させるため,摩擦材層の摩擦面における油切れを良好
にする。即ち,摩擦面に漂う潤滑油は,摩擦面に開口し
た連通孔に入り込み,摩擦面の真実接触部の接触面積を
増大させる。そのため,高い摩擦係数が得られ,トルク
特性も向上する。
【0011】また,連通孔の中には,浸入した潤滑油を
溜めておくことができる。そのため,摩擦材層の摩擦面
付近に,適量な潤滑油が保持されている状態にすること
ができる。そのため,摩擦面の焼き付きを抑制でき,ま
た局部的な摩擦面の凝着を抑制できる。更に,摩擦材層
には,適量の潤滑剤が含まれているため,摩擦面の表面
潤滑性も良い。そのため,潤滑剤によって,摩擦面の局
部的な焼き付き及び凝着を更に抑制できる。
【0012】また,セラミックス中空体は,銅合金マト
リクスよりも硬い。そのため,破断中空形状(図3参
照)のセラミックス中空体が摩擦面に露出している場合
には,セラミックス中空体の破断部が,相手部材を引っ
掻くというくさび効果を発揮する。そのため,摩擦材層
の摩擦係数を更に向上させることができる。
【0013】次に,請求項2の発明のように,上記セラ
ミックス中空体は,SiO2 ,ZrO2 ,Al2 3
いずれかからなることが好ましい。これにより,くさび
効果を更に高くすることができる。また,上記セラミッ
クス中空体が均一に分散されているため,摩擦材層に適
当な硬度を与え,摩擦材層の耐摩耗性が向上する。
【0014】次に,請求項3の発明のように,上記潤滑
剤は,グラファイトからなり,該グラファイトの表面に
は,アルミニウム(Al)及びニッケル(Ni)のグル
ープから選ばれる1種又は2種以上を含む金属材料が被
覆してあることが好ましい。これにより,摩擦材層の摩
擦面の表面潤滑性を更に向上させることができる。ま
た,金属材料の被覆により溶射時のグラファイトの飛散
を抑え,グラファイトの歩留りを向上させることができ
る。
【0015】次に,請求項4の発明のように,上記銅合
金は,銅(Cu)と,錫(Sn),クロム(Cr)及び
亜鉛(Zn)のグループから選ばれる1種又は2種以上
の合金元素とからなることが好ましい。これにより,摩
擦材層の耐熱性及び強度を更に向上させることができ
る。
【0016】次に,請求項5の発明は,発泡剤を含浸さ
せた多孔質のセラミックス粒子,銅合金材料,及び潤滑
剤からなる溶射用原料を混合し,次いで,該溶射用原料
を芯材に溶射して,発泡剤によりセラミックス粒子を発
泡させて破断中空形状又は中空形状のセラミックス中空
体を形成するとともに,発泡剤の逃げ跡である連通孔を
有する多孔性の摩擦材層を形成することを特徴とする湿
式摩擦材の製造方法である。
【0017】本方法において最も注目すべきことは,多
孔質のセラミックス粒子に発泡剤を含浸させ,溶射の際
に,上記セラミックス粒子を発泡させることである。
【0018】本方法においては,発泡剤を含浸させたセ
ラミックス粒子を,銅合金及び潤滑剤とともに混合し,
これらを溶射している。溶射の際には,セラミックス粒
子に含浸した発泡剤が溶射の熱によって膨張して,セラ
ミックス粒子の内部に空隙を形成する。これにより,内
部に空隙を有する中空形状のセラミックス中空体が形成
される。
【0019】そして,発泡剤の膨張が更に進行すると,
セラミックス中空体が発泡して,破断状のセラミックス
中空体が形成される(図3参照)。発泡剤は,セラミッ
クス中空体の外へ逃げ,やがて摩擦材層の外にまで至
り,連続した連通孔を摩擦材層の中に形成する。
【0020】形成された連通孔は,上記請求項1の説明
で示したように,優れた油切れ効果と油溜め効果を発揮
する。そのため,高い摩擦係数と,優れたトルク特性,
耐熱性及び耐久性とを有する摩擦材層を形成することが
できる。また,溶射用原料の中には,潤滑剤が含まれて
いるため,得られた摩擦材層は表面潤滑性に優れ,摩擦
面の焼き付け及び凝着を抑制できる。
【0021】次に,請求項6の発明のように,上記発泡
剤は,尿素系発泡剤又は水であることが好ましい。これ
らの発泡剤は,熱膨張性が高いため,溶射によって確実
に発泡させることができ,多数の連通孔を形成すること
ができるからである。これらの発泡剤の中,特に,取扱
易さ及び材料コストの点から,水が好ましく,発泡性の
点からは尿素系発泡剤が好ましい。
【0022】発泡剤として水を用いた場合には,水の含
浸量は,セラミックス粒子の中に1〜10重量%である
ことが好ましい。1重量%未満の場合には,セラミック
ス粒子を発泡させることが困難となるおそれがある。一
方,10重量%を越える場合には,適度の発泡によりセ
ラミックス粒子が破裂するおそれがある。発泡剤として
尿素系発泡剤を用いた場合には,尿素系発泡剤の量は,
0.1〜0.5重量%であることが好ましい。この範囲
を逸脱する場合は,上記水の量が範囲を逸脱した場合と
同様の問題が生ずるおそれがある。
【0023】請求項7の発明のように,上記セラミック
ス粒子は,SiO2 ,ZrO2 ,又はAl2 3 のいず
れかからなることが好ましい。これにより,くさび効果
に優れた摩擦材層を形成することができる。また,上記
セラミックス中空体が均一に分散されているために,摩
擦材層に適度な硬度を与え,摩擦材層の耐摩耗性が向上
する。
【0024】次に,請求項8の発明のように,上記溶射
用原料中のセラミックス粒子の含有量は,30〜60重
量%であることが好ましい。これにより,多数の連通孔
を形成することができ,かつ耐久性及び耐熱性が高い摩
擦材層を形成することができる。
【0025】一方,セラミックス粒子の含有量が30重
量%未満の場合には,連通孔を十分に形成することがで
きず,油切れ効果及び油溜め効果が低下するおそれがあ
る。また,60重量%を越える場合には,摩擦材層の摩
耗量が増え,また耐熱性及び耐久性が低下するおそれが
ある。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態例にかかる湿式
摩擦材について,図1〜図10を用いて説明する。本例
の湿式摩擦材は,複数のプレートを摺動回転可能に設け
た湿式多板クラッチに用いられている。即ち,湿式多板
クラッチは,図4〜図7に示すごとく,フリクションプ
レート91と,セパレートプレート92とを交互に配置
した構造を有し,潤滑油中で互いに係合しながら摺動回
転するものである。
【0027】図1に示すごとく,フリクションプレート
91は,芯材としてのコアプレート7と,コアプレート
7の表面に形成した摩擦材層6とよりなる。摩擦材層6
は,銅合金5と,銅合金5の中に分散させた潤滑剤3,
及び摩擦係数向上用のセラミックス中空体11,12と
よりなる。摩擦材層6は,連通孔2を有する多孔質体で
ある。
【0028】一方のセラミックス中空体11は,内部に
空隙110を有する中空形状である。他方のセラミック
ス中空体12は,内部に空隙120を有する中空形状で
あって,その外壁の一部に破断部121を有する破断中
空形状である。セラミックス中空体11,12は,Si
2 からなる。潤滑剤3は,グラファイトの表面にアル
ミニウムを施してなる。銅合金7は,Cu−Sn−Cr
合金からなる。
【0029】コアプレート7は,図4,図5に示すごと
く,略リング状であり,リング部71の内径側には,入
力軸に固定するための複数の突起72が等間隔に形成さ
れている。コアプレート7の両側面のリング部71に
は,上記摩擦材層6が形成されている。
【0030】フリクションプレート91は,相手部材と
してのセパレートプレート92と対面している。セパレ
ートプレート92の外径側には,出力軸に固定するため
の複数の突起921が等間隔に設けられている。そし
て,フリクションプレート91は入力軸に固定した状態
で,セパレートプレート92は出力軸に固定した状態
で,摺動回転させることによって,入力軸の回転を出力
軸に変速制御可能に伝える。
【0031】上記湿式多板クラッチは,図8に示すごと
く,フルオートマチックトランスミッション(2WD
(後輪駆動)車専用;前進3段,後進1段)の随所に設
けられている。即ち,フルオートマチックトランスミッ
ション9は,ダイレクトクラッチ901,フォワードク
ラッチ902,及びロー&リバースブレーキ903を有
しており,これらは湿式多板クラッチを1組又は2組以
上配置した構造を有している。
【0032】次に,フリクションプレートの製造方法の
概要を説明すると,発泡剤を含浸させたセラミックス粒
子,銅合金材料,及び潤滑剤からなる溶射用原料を混合
し,芯材に溶射して,発泡剤によりセラミックス粒子を
発泡させてセラミックス中空体を形成するとともに,発
泡剤の逃げ跡である連通孔を有する多孔性の摩擦材層を
形成する。
【0033】次に,上記フリクションプレートの製造方
法の詳細を説明する。まず,多孔質のセラミック粒子と
してのSiO2 粉に,尿素系発泡剤水溶液を添加して,
SiO2 粉(#200−350mesh)の中に,0.
3重量%の尿素系発泡剤を含浸させた。
【0034】また,銅に錫粉(#200meshスタン
プ粉)を添加して,銅43.0重量部と錫5.0重量%
とからなる銅合金原料を得た。また,グラファイト粉の
表面をアルミニウムにより被覆して,Al−グラファイ
ト粉末(#120mesh粉)を得た。アルミニウムの
被覆量は,グラファイト粉と同重量とした。
【0035】なお,本例においては,銅に添加する合金
材として錫粉を用いたが,その代わりにクロム粉(#2
50meshスタンプ粉)を用いてもよい。
【0036】上記の発泡剤を含浸させたSiO2 粉4
2.0重量%と,銅合金(Cu−Sn)原料48.0重
量%と,Al−グラファイト(C)粉末10.0重量%
とを,Vブレンダーにより1.0〜1.5時間混合し
て,均一な溶射用原料を得た。溶射用原料の組成を,表
1に示した。
【0037】
【表1】
【0038】次に,鉄板(例えばS35C)を打ち抜い
て,略リング状のコアプレートを得た。次いで,コアプ
レートにショットブラスト処理を施し,被溶射面の表面
粗さを30〜50μmの程度となるように調整した。
【0039】次いで,ガスフレーム溶射方法により,溶
射用原料をコアプレートの被溶射面に対して溶射した。
コアプレートは,溶射用原料とともにガスフレームを吹
き出す口管の前方に配置した。コアプレートの被溶射面
は,口管の先端から150mm離した。フレーム形成用
のガスとしては,酸素とアセチレンとの混合ガスを用い
た。この混合ガスにおける酸素分圧は27psiであ
り,アセチレン分圧は15psiとした。また,ガス流
量は,酸素及びアセチレンともに,同流量とした。
【0040】上記溶射用原料の溶射によって,溶射用原
料の中の銅合金原料は,ガスフレームの熱で半溶融状態
となり,バインダー及びマトリックスとして,ほかの各
原料(Al−グラファイト,SiO2 )を接着した。こ
れにより,厚み0.3〜0.5mm程度の連続した摩擦
材層を形成した。
【0041】また,図2に示すごとく,セラミックス粒
子1に含浸されていた発泡剤が,ガスフレームの熱で膨
張して,セラミックス粒子1を発泡させた。これによ
り,図3に示すごとく,中空形状又は破断中空形状のセ
ラミックス中空体11,12を形成した。
【0042】中空形状のセラミックス中空体11は,内
部に空隙110が形成されていた。また,破断中空形状
の中空形状12は,内部に空隙120が形成されている
とともに,その外壁の一部に破断部121が形成されて
いた。セラミックス中空体の外方に滲み出た発泡剤は,
銅合金マトリクスの中に浸入して,摩擦材層の外方へと
排出された。この際に,図1に示すごとく,摩擦材層6
には,発泡剤の逃げ跡として,連続した連通孔2が形成
された。以上により,図5,図6に示すフリクションプ
レート91が得られた。
【0043】また,ベイナイト鋼板(S55Cの焼き入
れ,焼戻し材)を略リング状に打ち抜いて,図6,図7
に示すセパレートプレート92を得た。
【0044】(実験例1)次に,上記のフリクションプ
レートの摩擦特性評価を行った。摩擦特性評価を行うに
当たっては,フリクションプレート表面の摩擦材層の摩
擦係数を,温度333K〜373Kのオートマチックト
ランスミッションに用いられる潤滑油(D−IIタイ
プ)を用い,鈴木式摩擦試験機(回転型低速すべり摩擦
試験機)を用いて,以下のようにして測定した。
【0045】即ち,すべり速度2m/sec.で回転す
るリング状試験片の摩擦材層に対して,プレート状試験
片に垂直荷重0.8MPaを加えて押圧した。この押圧
時にプレート状試験片を固定している固定具が受ける負
荷をロードセルにより検知した。検知した負荷から,摩
擦係数をもとめた。リング状試験片はフリクションプレ
ートに,プレート状試験片はセパレートプレートに相当
する。測定回数は3回とした。
【0046】一方,比較のために,従来におけるペーパ
ー系湿式摩擦材(比較例1),及び特開平7−9756
4号公報に示される銅系焼結材からなる湿式摩擦材(比
較例2)を製造した。これらについても,上記と同様に
摩擦係数を測定した。比較例1の測定回数は,5回とし
た。比較例2の湿式摩擦材の摩擦係数は,特開平7−9
7564号公報における実施例の記載を抜粋した。
【0047】これらの測定結果を,図9に示した。同図
に示された摩擦係数は,複数回の測定結果の平均値であ
る。図9より知られるように,本例の摩擦材層(本発
明)は,摩擦係数が0.165と高かった。一方,比較
例1の場合には0.134であり,比較例2の場合には
0.100〜0.115と低かった。
【0048】(実験例2)次に,摩擦材層に含まれるS
iO2 粉の添加量と,摩擦材層の気孔率,硬度,摩擦係
数及び摩耗量との関係を測定した。これらの測定にあた
り,SiO2 粉に,尿素系発泡剤を0.3重量%含浸さ
せた。また,水分量を3.0重量%に調整するととも
に,溶射用原料の中におけるSiO2 粉の添加量を変え
て,摩擦材層を形成した。そのほかは,上記実施形態例
と同様にフリクションプレートを製造した。得られたフ
リクションプレートを試験片とした。
【0049】摩擦材層の気孔率は,摩擦面の気孔の面積
率とし,試験片表面を研磨した後,試験片の組織の気孔
面積を画像処理にて測定した。摩擦材層の硬度は,ロッ
クウエル硬度計を用い,スケール15T(基準荷重3k
gf,1/16インチ鋼球圧子)にて測定した。摩擦材
層の摩擦係数は,上記実験例1と同様の方法により測定
した。摩擦材層の摩耗量は,マイクロメーターを使用
し,試験前後の試験片の厚みの量を摩耗量とした。これ
らの測定結果を,図10に示した。
【0050】同図より,SiO2 粉の添加量が増加する
に従って,摩擦材層の気孔率が増加した。それにともな
い,摩擦材層の摩擦係数も増加した。これは,気孔率の
増加により,摩擦材層の摩擦面に存在する潤滑油の油切
れ効果が向上し,摩擦面の真実接触部の面積が増え,境
界潤滑化が促進したためであると考えられる。逆に,気
孔率の増大により,摩擦材層の硬度は低下し,それにと
もない,摩擦材層の摩耗量も増加した。
【0051】以上の結果より,溶射用原料の中における
SiO2 粉の添加量は,40〜45重量%の範囲内であ
る場合には,摩擦材層の摩擦係数が高く,硬度も高く,
かつ摩耗量は低く,実用に十分適用できる摩擦材層を形
成できることがわかる。
【0052】
【発明の効果】本発明によれば,高い摩擦係数と良好な
トルク特性,及び優れた耐熱性及び耐久性とを発揮する
ことができる湿式摩擦材及びその製造方法を提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例における,摩擦材層の断面説明図。
【図2】実施形態例における,溶射前のセラミックス粒
子の形状を示す説明図。
【図3】実施形態例における,溶射後のセラミックス中
空体の形状を示す説明図。
【図4】実施形態例における,フリクションプレートの
斜視図。
【図5】実施形態例における,フリクションプレートの
断面図。
【図6】実施形態例における,セパレートプレートの斜
視図。
【図7】実施形態例における,セパレートプレートの断
面図。
【図8】実施形態例における,フルオートマチックトラ
ンスミッションの断面図。
【図9】実験例1における,実施形態例,比較例1,2
の摩擦材層の摩擦係数を測定した結果を示す説明図。
【図10】実験例2における,溶射用原料の中における
SiO2 粉の添加量と,摩擦材層の気孔率,硬度,摩擦
係数,摩耗量との関係を示す線図。
【符号の説明】 1...セラミックス粒子, 11,12...セラミックス中空体, 110,120...空隙, 121...破断部, 2...連通孔, 3...潤滑剤, 5...銅合金, 6...摩擦材層, 7...コアプレート, 9...フルオートマチックトランスミッション, 91...フリクションプレート, 92...セパレートプレート,
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C10N 40:08 50:08 (72)発明者 山本 安信 愛知県碧南市港南町二丁目8番地12 アイ シン辰栄株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芯材と該芯材の表面に形成した摩擦材層
    とよりなり,該摩擦材層は,銅合金と,該銅合金の中に
    分散させた潤滑剤及び摩擦係数向上用のセラミックス中
    空体とよりなるとともに,連通孔を有する多孔質体であ
    り,かつ,上記セラミックス中空体は,内部に空隙を有
    する中空形状,又は該中空形状の外壁の一部に破断部を
    有する破断中空形状を形成していることを特徴とする湿
    式摩擦材。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記セラミックス中
    空体は,SiO2 ,ZrO2 ,Al2 3 のいずれかか
    らなることを特徴とする湿式摩擦材。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記潤滑剤
    は,グラファイトからなり,該グラファイトの表面に
    は,アルミニウム(Al)及びニッケル(Ni)のグル
    ープから選ばれる1種又は2種以上を含む金属材料が被
    覆してあることを特徴とする湿式摩擦材。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項において,
    上記銅合金は,銅(Cu)と,錫(Sn),クロム(C
    r)及び亜鉛(Zn)のグループから選ばれる1種又は
    2種以上の合金元素とからなることを特徴とする湿式摩
    擦材。
  5. 【請求項5】 発泡剤を含浸させた多孔質のセラミック
    ス粒子,銅合金材料,及び潤滑剤からなる溶射用原料を
    混合し,次いで,該溶射用原料を芯材に溶射して,発泡
    剤によりセラミックス粒子を発泡させて破断中空形状又
    は中空形状のセラミックス中空体を形成するとともに,
    発泡剤の逃げ跡である連通孔を有する多孔性の摩擦材層
    を形成することを特徴とする湿式摩擦材の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項5において,上記発泡剤は,尿素
    系発泡剤又は水であることを特徴とする湿式摩擦材の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 請求項5又は6において,上記セラミッ
    クス粒子は,SiO2,ZrO2 ,又はAl2 3 のい
    ずれかからなることを特徴とする湿式摩擦材の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 請求項5〜7のいずれか一項において,
    上記溶射用原料中のセラミックス粒子の含有量は,30
    〜60重量%であることを特徴とする湿式摩擦材の製造
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN100381536C (zh) * 2005-05-18 2008-04-16 中国科学院金属研究所 一种湿式铜基摩擦材料及其制备方法
CN113571244A (zh) * 2021-08-03 2021-10-29 江苏亨通线缆科技有限公司 一种铝合金缓冲的环保阻燃耐火电力电缆

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