JPH1012968A - 量子ドットカスケードレーザ装置 - Google Patents

量子ドットカスケードレーザ装置

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JPH1012968A
JPH1012968A JP9078497A JP7849797A JPH1012968A JP H1012968 A JPH1012968 A JP H1012968A JP 9078497 A JP9078497 A JP 9078497A JP 7849797 A JP7849797 A JP 7849797A JP H1012968 A JPH1012968 A JP H1012968A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小さい閾値電流で有効なレーザ放射が可能な
レーザ装置を提供する。 【解決手段】 電気的コンタクトを一基板面に有する基
板層と、基板層の他基板面上に形成された少なくとも1
つのダブルドット配列層と、ダブルドット配列層上に形
成された別のコンタクト層と、コンタクト層上に形成さ
れたもう一つの電気的コンタクトとを有し、ダブルドッ
ト配列層は、他基板面上に間隔をおいて配列された複数
のダブル量子ドット部を有し、複数のダブル量子ドット
部の各々は他基板面に実質的に垂直な方向に積層された
二つの量子ドット部(62)と、二つの量子ドット部の
各々を、他基板面に実質的に垂直な方向において間に挟
んだ状態に形成された三つの半導体バリア層(64)と
を有し、電気的コンタクト及び別の電気的コンタクト間
に形成される電流の通路によってレーザ動作が達成され
ることを特徴とする量子ドットカスケードレーザ装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体レーザ装置に
関し、特に、従来の半導体カスケードレーザ装置におい
て不可避的に発生していたフォノン崩壊(phonon decay)
をなくすことができる量子ドットカスケードレーザ装置
を提供する。
【0002】
【従来の技術】例えば、ジェイ・ファイストら(J.Faist
et al) が1994年4月22日号のサイエンス第26
4巻、第553乃至556頁(SCIENCE, Vol. 264, pp.
553-556, April 22, 1994)に「量子カスケードレー
ザ」("Quantum Cascade Laser")と題して掲載した論文
に開示されているように、この分野における最近の進歩
は互に結合された量子井戸のカスケードから作られた半
導体レーザ装置が実現可能であることを論証した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】図3を参照すると、下
位のサブバンドへ放射遷移するエレクトロンを示す量子
井戸カスケードレーザ装置の単純化した伝導帯エネルギ
ー図が示されている。この図に示されるように、エレク
トロンがエネルギーε1 の量子井戸1の第1の励起状態
からエネルギーε0 の結合された量子井戸2の基底状態
へ遷移することによりエネルギーhνのフォトンが生成
される。
【0004】量子井戸装置の重要な特徴は、励起及び基
底状態は、図3に示されているとおり、離散した別々の
レベルではなく、励起及び基底状態は、伝導帯エネルギ
ー変動方向(すなわち、電流の流れの方向)の横方向の
2次元でのエレクトロンの自由運動(これは図3に正弦
波形で示されている。)によってバンド(帯)を形成し
ていることである。不都合にも、量子井戸レーザ装置に
おける有力なエレクトロン崩壊 (decay)メカニズムは非
放射性であり、フォトンよりむしろ光学フォノンの放出
を生じる。前述のバンドはエネルギーにおいて連続して
いるので、このような遷移は常に可能である。エレクト
ロンと光学フォノンとの結合はエレクトロンとフォトン
との結合より非常に強固であるため、量子井戸レーザ装
置では非放射性フォノン遷移は放射性フォトン遷移より
約3000対1の割合ではるかに数が多い。
【0005】これらの非放射性フォノン遷移の結果、量
子井戸カスケードレーザ装置は極めて効率が悪く、有効
なレーザ放射を始めるためには大きいしきい値電流が必
要となるという欠点がある。
【0006】本発明の課題は、上記欠点を除去し、小さ
いしきい値電流で有効なレーザ放射を行うことができ
る、効率の良い半導体カスケードレーザ装置を提供する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、電気的
コンタクト(708)を一基板面に有する基板層(70
2)と、前記基板層の前記一基板面に対向する他基板面
上に形成された少なくとも1つのダブルドット配列層
(714)と、このダブルドット配列層上に形成された
コンタクト層(706)と、このコンタクト層上に形成
された別の電気的コンタクト(710)とを有し、前記
ダブルドット配列層は、前記他基板面上に間隔をおいて
配列された複数のダブル量子ドット部を有し、前記複数
のダブル量子ドット部の各々は、所定の体積を持ち、か
つ前記他基板面に実質的に垂直な方向に積層された二つ
の量子ドット部(62)と、前記二つの量子ドット部の
各々を、前記他基板面に実質的に垂直な方向において間
に挟んだ状態に形成された三つの半導体バリア層(6
4)とを有し、前記電気的コンタクト及び前記別の電気
的コンタクト間に形成される電流の通路によってレーザ
動作が達成されることを特徴とする量子ドットカスケー
ドレーザ装置が得られる。
【0008】更に本発明によれば、前記複数のダブル量
子ドット部の各々の体積は20nm3 以下であることを
特徴とする量子ドットカスケードレーザ装置が得られ
る。
【0009】また本発明によれば、前記複数のダブル量
子ドット部の密度は、前記ダブルドット配列層の体積の
180nm3 につき、少なくとも1つのダブル量子ドッ
ト部が存在する密度であることを特徴とする量子ドット
カスケードレーザ装置が得られる。
【0010】更に本発明によれば、前記基板層と前記ダ
ブルドット配列層との間及び前記ダブルドット配列層と
前記コンタクト層との間に挟まれた二つのクラッド層
(704)を、更に有することを特徴とする量子ドット
カスケードレーザ装置が得られる。
【0011】また本発明によれば、前記複数のダブル量
子ドット部の各々の前記二つの量子ドット部はそれぞれ
GaAsからなることを特徴とする量子ドットカスケー
ドレーザ装置が得られる。
【0012】更に本発明によれば、前記複数のダブル量
子ドット部の各々の三つの半導体バリア層はそれぞれA
lGaAsからなることを特徴とする量子ドットカスケ
ードレーザ装置が得られる。
【0013】また本発明によれば、トンネリングによる
エレクトロンの流出を選択的に防止する付加的なダウン
ストリームバリアを更に有することを特徴とする量子ド
ットカスケードレーザ装置が得られる。
【0014】更に、本発明によれば、前記複数のダブル
量子ドット部の各々の前記二つの量子ドット部はそれぞ
れIII −V族の物質からなり、III族の元素としてB、
Al、Ga、In、及びTiが含まれ、V族の元素とし
てN、P、As,及びBiが含まれることを特徴とする
量子ドットカスケードレーザ装置が得られる。
【0015】また本発明によれば、前記複数のダブル量
子ドット部の各々の前記二つの量子ドット部はそれぞれ
II−VI族の物質からなり、II族の元素としてZn、C
d、及びHgが含まれ、VI族の元素としてO、S、S
e、Te、及びPoが含まれることを特徴とする量子ド
ットカスケードレーザ装置が得られる。
【0016】
【作用】本発明によれば、半導体カスケードレーザ装置
が、量子井戸の代りに配列された複数の量子ドット部か
ら作られ、このようにして作られた本発明による量子ド
ットカスケードレーザ装置により、上記の欠点は除去さ
れ、従来技術にさらに進歩がなされる。本発明による量
子ドットカスケードレーザ装置は、従来の量子井戸レー
ザ装置の望ましい特徴を有する一方で、同時に極めて望
ましくない非放射性フォノン崩壊をなくす。この結果、
本発明に従って作られた量子ドットカスケードレーザ装
置は、チューナブルな動作周波数、本質的に強力かつ狭
いゲインスペクトル、低しきい値電流、及び温度無依存
動作を示す。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明による量子ドットカスケー
ドレーザ装置を完全に理解するためには、従来の量子井
戸レーザ装置と比較することが役立つ。
【0018】図3をさらに参照すると、互に電子的に結
合された2個の量子ドット部(以降において、ダブル量
子ドット部とも呼ばれる。)あるいは互に電子的に結合
された2個の量子井戸が参照符号1及び2にて示されて
いる。エネルギーhνのフォトンは、互に結合された量
子ドット部(あるいは互に結合された量子井戸)1及び
2の第1の励起状態ε1 から基底状態ε0 へのエレクト
ロンの遷移によって生じる。どちらの場合も、エレクト
ロンはアップストリームバリアを介する電流のトンネリ
ングにより直接、前記励起状態へ導入される。いったん
一つのエレクトロンが逆励起(de-excite) されると、そ
のエレクトロンは、フォトンの吸収が無視できるほど速
やかにダウンストリームバリアを介して流出する。
【0019】本発明による量子ドットレーザ装置と従来
の量子井戸レーザ装置との重大な相違は、従来の量子井
戸レーザの場合には図3に示された励起及び基底電子レ
ベルは励起及び基底状態間の正弦波形で示された継続的
なバンドの底を表しているのに対して、本発明による量
子ドットレーザ装置では図3の前記正弦波形の上方に示
された波形の如く、励起及び基底電子レベルは正に離散
した別々の状態を表していることである。
【0020】具体的には、従来の量子井戸レーザ装置で
は、エレクトロンは、上述したとおり、図3に示された
伝導帯エネルギー変動方向(すなわち電流の流れの方
向)の横方向の2次元でのそれらの自由運動(これは前
述のように図3に正弦波形で示されている。)によりバ
ンドを形成する。その結果、量子井戸における主たる電
子的な崩壊メカニズムは非放射性であり、フォトンより
むしろ光学フォノンの放出をもたらすことになる。この
場合、前述のバンドはエネルギーにおいて連続している
ので、このような遷移は常に可能である。さらに、エレ
クトロンと光学フォノンとの結合はエレクトロンとフォ
トンとの結合より非常に強固であるため、そのような非
放射性遷移は放射性遷移より多発する。
【0021】逆に、本発明による量子ドットレーザ装置
においては放射性崩壊の割合は非放射性の場合の割合を
上回っている。互に結合された量子ドット部の励起及び
基底状態は離散した別々のレベルであるため、非放射性
崩壊は差エネルギε1 −ε0でフォノンの放出をもたら
す。通常、フォノンエネルギーは、1個のフォノンの崩
壊が可能となるように連続したバンドを形成する。しか
しながら、差エネルギε1 −ε0 が、最大フォノンエネ
ルギ(たとえば、GaAsにおいては、最大フォノンエ
ネルギは、hをプランク定数、ωLOを角振動数とする
時、(h/2π)×ωLO=36meVでの光学フォノン
エネルギに等しい。)より大きい場合、ただの1個のフ
ォノンも電子的エネルギーを運び去ることができない。
多重フォノン崩壊過程はなお可能であるが、これらの割
合は無視できる(ある特定の狭いエネルギーバンドの場
合は除く)。故に、量子ドット部における主たる崩壊メ
カニズムはフォトン放出である。
【0022】互に結合された一対の量子ドット部を構成
する各量子ドット部のサイズは、励起及び基底状態間の
エネルギ差が光学フォノンエネルギ(h/2π)×ωLO
を越えるという必要条件によってしばられる。特に、分
離した量子ドット部のうちの1個の最下位状態間のエネ
ルギー差は(h/2π)×ωLOを越えていなければなら
ない。結果として最大ドット部サイズLは、サイズLの
平方井戸におけるエネルギー間隔から、 {3π2 ×(h/2π)2 /(2m* 2 )}>(h/2π)×ωLO (1) と推定される。ここでm* は実効質量である。
【0023】GaAsにとっては、実効質量m* =0.
067mの条件で、3次元すべてにおいてL20nm
より小さい量子ドット部が必要とされる。
【0024】図1を参照すると、レーザ装置の組み立て
に適した、複数のダブル量子ドット部(ダブル量子ドッ
ト部の各々は、2つの量子ドット部62を含む)の配列
の基本構造(サンドイッチ)が示されている。この構造
は、前記ダブル量子ドット部の配列の基本構造の支持体
となり、それらを間にサンドイッチする一対の導電シー
ト60を含んでいる。導電シート60は、そのサンドイ
ッチ部の上下に積み重ねられた他の量子ドット部のサン
ドイッチ部に対しても導電通路となる。好ましい実施例
において、導電シート60は、nドープGaAsから形
成することも可能である。当業者は、III−V族の元
素、あるいはII−VIの元素がGaAsに代用され得るこ
とを容易に理解できるであろう。
【0025】上述のダブル量子ドット部は、レーザ放射
に有効なドット部密度が得られるように、一定の間隔を
置かれて導電シート60間に配置される。好ましくは、
図1に示されるように、量子ドット部62はバリア層6
4によって完全に離間されかつバリア層64間に挟まれ
る。バリア層64は、上述のアップストリームバリア或
いはダウンストリームバリアとして作用する。図1には
示されていないが、ダブル量子ドット部のバリア層64
は、量子ドット部62の上面及び下面のみならず、その
ダブル量子ドット部に隣接するダブル量子ドット部の量
子ドット部62に対向する側面も、隣接するダブル量子
ドット部との間の空間で、完全にダブル量子ドット部を
包囲している。当業者は、量子ドット部62は適当な構
成物質、すなわち、GaAsあるいは他のIII−V族の
物質(ここで、III 族はB、Al、Ga、In、Ti、
V族はN、P、As、Biである。)或いはII−VIの物
質(II族はZn、Cd、Hg、VI族はO、S、Se、T
e、Poである。)から形成され得ることや、バリア層
64も同様に適当なバリア構成物質、例えば、AlGa
Asから形成されることを容易に理解するであろう。
【0026】レーザ作用は利得係数γ(ω)が分散損失
を越えた場合、即ち、 γ(ω)>αI +αM (2) にのみ起こる。ここで、αI はバルク損失であり、αM
=(1/L)log(1/R)は反射鏡を介した損失で
ある。上述の関係(2)は量子ドット部対の最小密度及
びドット部サイズの均一性を共に決定する。利得は、互
に結合された量子ドット部の3次元密度に比例し、下記
によって示される。
【0027】 γ(ω)=fNσ(ω) (3) ここで、fはエレクトロンが励起状態にあるときの互に
結合された量子ドット部の割合であり(エレクトロンが
基底状態にあるときの量子ドット部の割合は小さいので
無視する。)、σ(ω)は横断面積である。σ(ω)は
振動子強度Sと正規化された線形関数g(ω)との積、 σ(ω)=Sg(ω) (4) として書くほうが都合が良い。
【0028】双極子(dipole)近似において振動子強度S
は、 S=(4π2 αωfi/n)×|〈f|r・e(hat) |i〉|2 (4π2 αωfi /n)×[td/{(h/2π)×ωfi}]2 (5) で表される。ここで、α=e2 /{(h/2π)×c}
1/137は微細構造定数を表し、nは屈折率、及び
ωfiは初期及び最終状態間の遷移周波数である。初期及
び最終状態間の双極子行列要素〈f|r・e(hat) |
i〉は、双極子モーメントを偏光方向e(hat) に投射さ
せる。互に結合された量子ドット部では、遷移双極子モ
ーメントは電流方向に純粋に沿って位置する。したがっ
て放射はその方向に偏光される。上記式(5)の最後の
項において、双極子行列要素はドット部間の距離dとイ
ンタードットハイブリダイゼーション(interdot hybrid
ization)t/{(h/2π)×ωfi}との積によって近
似される。ここで、tはドット部間のトンネル結合を表
す。残りのファクタは正規化された線形関数g(ω)で
ある。ここで、ディスオーダ(狂い:disorder)による
不均一な広がりは線形形状を決定すると仮定される。便
宜上、FWHMディスオーダ広がり△ωをもつローレン
ツ線形形状を利用して、最大利得係数 γpeak=2fNS/π△ω (6) が見つかる。
【0029】最大利得を総損失と相等しいものとして示
すことにより、量子ドットレーザ装置の密度及び均一性
に対する共通の必要条件を記述することができる。サレ
ー及びテイク(Saleh and Teich )によって、1991
年ニューヨークにおいてウィレー(Wiley, New York 19
91)により出版されたフォトニクスの原理(Fundamenta
ls of Photonics )に述べられたように、半導体インジ
ェクションレーザ装置の分配損失は少なくとも10cm
-1である。インタードットハイブリダイゼーションt/
{(h/2π)×ωfi}は、自然発生的なエミッション
レート(emission rate) wspがダウンストリームバリア
を介した励起状態からのリーケッジレート(leakage rat
e)を上回るように十分に小さくなければならない。また
逆に、自然発生的なエミッションレートは基底状態から
のエスケープレート(escape rate) より小さくなければ
ならない。ダウンストリームバリアを介したエスケープ
レートをΓとすると、 [t/{(h/2π)×ωfi}]2 Γ<wsp<Γ (7) が成り立つ。これは、明らかに、インタードットハイブ
リダイゼーションを[t/{(h/2π)×ωfi}]2
1/10に制限する。さらに、遷移エネルギーを10
0meV、インタードット間隔をd=10nm、屈折率
をn=3と仮定すると、レーザ放射は、 fN/{(h/2π)×△ω}1.6×1016cm-3eV-1 (8) の広がりエネルギー比に対する励起結合ドット密度を必
要とすることが分かる。
【0030】故に、遷移エネルギー(非均一性5%)の
10%ディスオーダ広がり及びほぼf=1の励起割合
は、(180nm)3 の体積につき1つの結合ドット対
の最小密度を必要とする。
【0031】レーザ放射モードによって占められる領域
に渡りこの結合ドット部の平均密度を達成するために、
レーザー放射モードは3次元構造を必要とする。そのよ
うな構造の好ましい本発明の一実施例が図2に示されて
いる。
【0032】図2を参照すると、本発明の一実施例によ
る量子ドットカスケードレーザ装置700は、利得必要
条件を十分満足する密度のダブル量子ドット部(図1参
照)の2次元配列を有する積層構造である。
【0033】最後に、このような量子ドット装置のしき
い値電流を決定することができる。放射性崩壊が支配的
であるため、量子ドット部の各対を通過する電流は、自
然発生的放出による損失を補充するのに十分であること
だけが必要とされる。自然発生的エミッションレートの
総計は、 wsp=(4αnωfi/3c2 )×|〈f|r|i〉|2 (4αnωfi/3) ×[td/{(h/2π)×c}]2 (9) で与えられる。
【0034】上記と同様のパラメーターを用いて、一つ
の結合ドット部対につき、Jt=ewsp 1.6pAの
しきい値電流が得られる。3次元における均一なドット
配列にとって、これは4.9mA/cm2 の電流密度を
与える。この量子ドット装置のしきい値電流密度は、量
子井戸カスケードレーザ装置に必要な、14kA/cm
2 より低い6.5オーダの大きさである。
【0035】図2に示した本発明の一実施例による量子
ドットカスケードレーザ装置700において、基板70
2はこのレーザ装置に基礎構造的土台を提供している。
基板702は、典型的には単結晶ウェーハであり、単結
晶ウェーハの格子定数は、転位や欠陥のない高度な結晶
化度を維持する一方で、レーザ動作に必要とされる種々
の実用的な層をウェーハ上に増やすのに非常に適してい
る。この基板702上には、図1で示されたように組み
立てられる、複数のダブルドット配列層714と、ダブ
ルドット配列層714内に発生したフォトンを適切に反
射する一対のクラッド層704とを有する。この実施例
においては、ダブルドット配列層714間及び図におい
て最下方のダブルドット配列層714と下方のクラッド
層704との間は、GaAs層(図1の導電シート60
として好ましくはnドープGaAsが使用されることは
既に述べたが、このGaAs層としても好ましくはnド
ープGaAs層が使用される。)がそれぞれ配置されて
いる。代りに、ダブルドット配列層714の各々は一対
の導電シート60を有しているので、これら導電シート
60を、ダブルドット配列層714間及び最下方のダブ
ルドット配列層714と下方のクラッド層704との間
のGaAs層として作用させても良い。
【0036】図2にはダブルドット配列層714が3個
だけ示されているが、当業者であれば、このような層の
数を変えることにより各層に利用される特定の物質如何
で効果的なダブルドット部密度を実現できることが容易
に理解できるであろう。
【0037】さらに、クラッド層704(クラッド層7
04はウェーブガイドクラッド層として作用する。)の
対向端面712a及び712bはレーザ光を高度に反射
することが望ましい。また端面712a及び712bの
少なくとも一方はレーザ光を部分的に外部に透過するも
のであるべきである。
【0038】また、基板702及びコンタクト層706
に電気的コンタクト708及び710をそれぞれ備え
て、レーザー放射を維持するために十分な構造を介して
電流を提供することが望ましい。
【0039】最後に、当業者にとって、ダウンストリー
ムバリアを更に付加し、付加されたダウンストリームバ
リアによって、エネルギの励起状態からのトンネリング
による流出が除去され、それにより量子ドットカスケー
ドレーザ装置の総合的効率が向上するように有効利用さ
れ得ることは容易に明らかであろう。
【0040】様々な層の寸法が公知のレーザー設計原理
によって選択され得る。
【0041】様々な公知技術が分子線エピタキシー(M
BE)、あるいは化学蒸着法(CVD)等のここに説明
された種類の構造の製造に利用可能である。
【0042】以上に量子ドットカスケードレーザ装置に
ついて説明及び図示してきたが、ここに添えられた請求
項の範囲にのみ限定される本発明の明瞭な原理及び意図
から逸脱することなく修正や変形が可能であることは、
当業者にとって明らかであろう。
【0043】上述したように、図2の量子ドットカスケ
ードレーザ装置は、配列された複数の量子ドット部から
作られる。この量子ドットカスケードレーザ装置は、量
子井戸レーザの望ましい特徴を有する一方で、同時に極
めて望ましくない非放射性フォノン崩壊をなくすことが
できる。この結果、この量子ドットカスケードレーザ装
置は、チューナブルな動作周波数、本質的に強力かつ狭
いゲインスペクトル、低しきい値電流、及び温度無依存
動作を示す。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、半
導体カスケードレーザ装置が、配列された複数の量子ド
ット部から作られ、このようにして作られた本発明によ
る量子ドットカスケードレーザ装置により、従来の量子
井戸レーザ装置の上述した欠点は除去され、従来技術に
さらに進歩がなされる。本発明による量子ドットカスケ
ードレーザ装置は、量子井戸レーザ装置の望ましい特徴
を有する一方で、同時に極めて望ましくない非放射性フ
ォノン崩壊をなくすことができる。この結果、本発明に
従って作られた量子ドットカスケードレーザ装置は、チ
ューナブルな動作周波数、本質的に強力かつ狭いゲイン
スペクトル、低しきい値電流、及び温度無依存動作を示
す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるダブルドット配列層の概略
図である。
【図2】図1のダブルドット配列層を用いて組み立てら
れた本発明の一実施例による量子ドットカスケードレー
ザ装置の斜視図である。
【図3】従来の量子井戸カスケードレーザ装置及び本発
明の量子ドットカスケードレーザ装置における動作を説
明するための伝導帯エネルギー図である。
【符号の説明】
60 導電シート 62 量子ドット部 64 バリア層 700 量子ドットカスケードレーザ装置 702 基板 704 クラッド層 706 コンタクト層 708 電気的コンタクト 710 電気的コンタクト 712a 端面 712b 端面

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電気的コンタクト(708)を一基板面
    に有する基板層(702)と、 前記基板層の前記一基板面に対向する他基板面上に形成
    された少なくとも1つのダブルドット配列層(714)
    と、 このダブルドット配列層上に形成されたコンタクト層
    (706)と、 このコンタクト層上に形成された別の電気的コンタクト
    (710)とを有し、 前記ダブルドット配列層は、前記他基板面上に間隔をお
    いて配列された複数のダブル量子ドット部を有し、前記
    複数のダブル量子ドット部の各々は、所定の体積を持
    ち、かつ前記他基板面に実質的に垂直な方向に積層され
    た二つの量子ドット部(62)と、前記二つの量子ドッ
    ト部の各々を、前記他基板面に実質的に垂直な方向にお
    いて間に挟んだ状態に形成された三つの半導体バリア層
    (64)とを有し、 前記電気的コンタクト及び前記別の電気的コンタクト間
    に形成される電流の通路によってレーザ動作が達成され
    ることを特徴とする量子ドットカスケードレーザ装置。
  2. 【請求項2】 前記複数のダブル量子ドット部の各々の
    体積は20nm3 以下であることを特徴とする請求項1
    に記載の量子ドットカスケードレーザ装置。
  3. 【請求項3】 前記複数のダブル量子ドット部の密度
    は、前記ダブルドット配列層の体積の180nm3 につ
    き、少なくとも1つのダブル量子ドット部が存在する密
    度であることを特徴とする請求項2に記載の量子ドット
    カスケードレーザ装置。
  4. 【請求項4】 前記基板層と前記ダブルドット配列層と
    の間及び前記ダブルドット配列層と前記コンタクト層と
    の間に挟まれた二つのクラッド層(704)を、更に有
    することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の
    量子ドットカスケードレーザ装置。
  5. 【請求項5】 前記複数のダブル量子ドット部の各々の
    前記二つの量子ドット部はそれぞれGaAsからなるこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の量子ド
    ットカスケードレーザ装置。
  6. 【請求項6】 前記複数のダブル量子ドット部の各々の
    三つの半導体バリア層はそれぞれAlGaAsからなる
    ことを特徴とする請求項5に記載の量子ドットカスケー
    ドレーザ装置。
  7. 【請求項7】 トンネリングによるエレクトロンの流出
    を選択的に防止する付加的なダウンストリームバリアを
    更に有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに
    記載の量子ドットカスケードレーザ装置。
  8. 【請求項8】 前記複数のダブル量子ドット部の各々の
    前記二つの量子ドット部はそれぞれIII−V族の物質か
    らなり、III族の元素としてB、Al、Ga、In、及
    びTiが含まれ、V族の元素としてN、P、As,及び
    Biが含まれることを特徴とする請求項1に記載の量子
    ドットカスケードレーザ装置。
  9. 【請求項9】 前記複数のダブル量子ドット部の各々の
    前記二つの量子ドット部はそれぞれII−VI族の物質から
    なり、II族の元素としてZn、Cd、及びHgが含ま
    れ、VI族の元素としてO、S、Se、Te、及びPoが
    含まれることを特徴とする請求項1に記載の量子ドット
    カスケードレーザ装置。
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