JPH10123075A - 半球面鏡式レーザフラッシュ方式による熱拡散率測定方法 - Google Patents
半球面鏡式レーザフラッシュ方式による熱拡散率測定方法Info
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- JPH10123075A JPH10123075A JP29933496A JP29933496A JPH10123075A JP H10123075 A JPH10123075 A JP H10123075A JP 29933496 A JP29933496 A JP 29933496A JP 29933496 A JP29933496 A JP 29933496A JP H10123075 A JPH10123075 A JP H10123075A
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Abstract
レーザフラッシュ方式による熱拡散率測定方法を改良し
て、試料表面の黒化処理を不要にする。 【解決手段】 パルスレーザ光源1からのレーザビーム
2を平板状の試料7の表面7aに照射し、その熱エネル
ギーによる試料裏面7bからの放射率を測定するが、試
料表面7aと試料裏面7b側に、半球面鏡8,半球面鏡
9を配置する。試料に照射したレーザビーム2は、試料
表面7aと半球面鏡8との間で繰り返し反射し、レーザ
ビームの吸収率が高められる。試料裏面7bからの熱放
射は試料裏面7bと半球面鏡9との間で繰り返し反射
し、見掛けの放射率を高められる。その結果、試料裏面
の温度変化を雑音に対して十分な大きさの信号として観
測することが可能となり、精度のよい熱拡散率の測定が
できる。
Description
低い材料を対象とし、試料表面の黒化処理無しに熱拡散
率を測定できるようにした半球面鏡式レーザフラッシュ
方式による熱拡散率測定方法に関するものである。
散率の測定では、試料が放射率の低い材料の場合、試料
に対して表面コートで黒化処理を施して測定している
が、熱拡散率の大きい材料に対しては、この黒化処理の
影響が大きく、主要な測定誤差要因となっている(例え
ば、荒木信幸、牧野敦、三原純共著、「レーザフラッシ
ュ法による層状試料の熱拡散率測定における問題点」、
The Ninth Japan Symposium on Thermophysical Proper
ties,(1988年) Japan.)。
黒色塗料をスプレーで塗布するか、あるいは物理蒸着法
または化学蒸着法によりコートする方法が用いられてき
たが、いずれにしても黒化処理に手間がかかる。また、
金属材料は熱拡散率が大きいので、塗布した黒色塗料に
より試料の厚みが増加し、測定誤差の要因となる。特
に、銅、銀、金及びその合金等、熱拡散率の優れた材料
は黒化処理の影響が特に大きく、黒化処理の影響による
補正量は数10%に達することもある。ところが、塗布
された黒色塗布材料自体の熱拡散率が分からないため正
確な補正は困難であり、金属材料の熱拡散率を精度よく
測定することはきわめて難しいのが現状である。
する技術的な課題は、レーザフラッシュ方式による熱拡
散率測定方法を改良し、金属材料等の放射率の低い材料
に対して表面を黒化処理しないで熱拡散率が測定でき、
熱拡散率の大きい材料でも精度よく測定を行えるように
した熱拡散率測定方法を提供することにある。
の本発明の熱拡散率測定方法は、平板状の試料の表面に
レーザビームを照射して熱エネルギーを与え、この熱エ
ネルギーによる試料裏面の熱放射から熱拡散率を求める
レーザフラッシュ方式による熱拡散率測定方法におい
て、平板状の測定試料の両側または片側に対向設置した
半球面鏡により、試料表面に照射されたレーザビームの
反射光を再び試料表面に戻してレーザビームの吸収率を
高め、且つ/または試料裏面からの熱放射を多重反射さ
せて試料裏面の見掛けの放射率を高め、試料への黒色塗
料のコート無しに熱拡散率を測定することを特徴とする
ものである。
は、試料表面に対してレーザビームを照射する角度θ及
び/または試料裏面の放射測温の角度θを、試料の直径
a、半球面鏡のレーザ照射口または放射測定口の直径
d、半球面鏡の曲率半径Rに基づき、 θ> sin-1{(a+d)/4R} とするのがより望ましく、また、試料の両面を粗面にす
ることにより、半球面鏡の設置効果を高めると共に、表
面粗さを補正して熱拡散率を導出することが望ましい。
表面に照射されるレーザビームのうち反射により失われ
るレーザビームを半球面鏡によって再び試料表面に戻
し、試料表面と半球面鏡との間での繰り返し反射により
無限の多重吸収を起こさせ、実効吸収率を増加させる。
そのため、試料は吸収した熱エネルギーに応じた温度ま
で昇温する。一方、試料裏面からは、その温度と放射率
に応じた熱放射があるが、半球全放射のうち放射温度計
に観測されないものが再び半球面鏡により試料裏面に戻
され、半球面鏡と試料裏面との間で無限の多重反射を起
こしながら、試料裏面の見掛けの放射率を増加させる。
おいて、レーザビームの照射角度及び/または放射温度
計の測温の角度θを、前述した数式の範囲に設定すれ
ば、測定精度を高めるための最適の測定条件を得ること
ができ、また、試料の両面を粗面にすることにより、半
球面鏡による実効吸収率及び見掛けの放射率の増加率が
はるかに大きくなり、より低い放射率の材料でも熱拡散
率を高精度に測定することが可能になる。
施の形態について説明する。図1は、本発明に係る熱拡
散率測定方法を実施する測定装置の構成の一例を示すも
ので、大出力パルスレーザ加熱源1から射出されたレー
ザビーム2は、ビームスプリッタ3によりその一部が反
射され、それがパワーメーター4に入り、パルスレーザ
のエネルギーの変動が観測される。上記レーザビーム2
の大部分は、ビームスプリッタ3を通過して、レーザビ
ームの進行方向を調整する反射鏡5により反射した後、
測定用真空槽6の窓6aを透して、槽中心部に斜めに設
置されている試料7に照射される。
に観測窓6bを備え、中央部分の試料7の両側、すなわ
ち、試料の表面7a側と裏面7b側に、半球面鏡8と半
球面鏡9とを配置している。これらの半球面鏡8,9に
は、その頂点からやや傾いた位置に、小さな開口からな
るレーザ照射口8a及び放射測定口9aを設け、レーザ
照射口8aは、測定用真空槽6におけるレーザビームの
入射方向である窓6aに向けて開口させ、照射測定口9
aは、観測窓6bに向けて開口させている。そして、半
球面鏡8の球心と試料表面7aの中心とをほぼ一致さ
せ、半球面鏡9の球心と試料7の裏面7bの中心とをほ
ぼ一致させるようにしている。なお、測定用真空槽6の
真空系、試料7及び半球面鏡8,9の固定機構等につい
ては、図示を省略している。
れたレーザビームは、そのうちの試料表面7aの吸収率
分だけが試料に一次吸収され、残りの反射率分は試料7
から反射されてしまうが、この反射されたレーザビーム
も、レーザ照射側の半球面鏡8での反射により試料表面
に戻され、この繰り返しにより無限の多重吸収が行わ
れ、吸収エネルギー量が増加して実効吸収率が大幅に高
くなる。
ーを吸収して上昇し、試料裏面7bからは、上昇する温
度と試料裏面7bの放射率に対応する放射エネルギーが
放射される。この試料裏面7bの中心部の放射エネルギ
ーの時間的変化を放射温度計11で観測し、観測された
放射エネルギーより試料裏面の温度変化を測定するが、
試料裏面7bの中心部の放射のうち、放射温度計の対物
レンズ10に直接的に入る放射エネルギーはその一部に
過ぎない。放射率の低い材料の場合は、この放射温度計
の対物レンズ10に直接的に入る放射エネルギーがあま
りにも少ないので、放射温度計の信号が小さく、試料裏
面の温度変化を測定するのがきわめて難しいが、前述し
たように、試料裏面7bの放射温度計11側にも半球面
鏡9を設置し、放射温度計の対物レンズ10から外れた
熱放射を半球面鏡9で取り戻すことにより、対物レンズ
10に入る放射エネルギーを増加させ、試料裏面7bの
見掛けの放射率の増加効果により温度変化の信号が増幅
されるようにしている。
次反射したレーザビームが半球面鏡8により効果的に戻
るように、あるいは、放射温度計の対物レンズ10から
外れる方向の熱放射が半球面鏡9により効果的に戻るよ
うに、試料7に対するレーザビームの照射角度や放射温
度計の測温の角度を適切な範囲に設定することが、測定
精度を高めるために有利であるが、その詳細については
後述する。
2が試料7に照射される瞬間からの試料裏面7bの時間
的温度変化が観測され、観測された試料裏面7bの温度
変化の信号は、出力信号の記憶装置であるトランジェン
トメモリ12に転送され、試料裏面の温度上昇速度がそ
の材質の熱拡散率の関数であるので、演算装置(パーソ
ナルコンピュータ)13により試料7の熱拡散率が算出
され、ディスプレーに表示される。
定方法における熱拡散率の算出の原理について説明す
る。図2のAは、半球面鏡8を試料表面7aの前方に設
置することにより、試料表面7aに照射されるレーザビ
ーム2の実効吸収率が増加することを説明するためのも
のである。試料表面7aに照射されるレーザビーム2
は、そのうち、試料表面7aの吸収率の分だけが一次吸
収され、残りは試料表面7aで反射する。この反射する
レーザビームを試料表面7aに戻して吸収率を高めるの
が半球面鏡8の役割で、この半球面鏡8により試料表面
7aに戻されたレーザビームは試料表面7aで第二次吸
収が行われ、さらに、このような半球面鏡8による多重
吸収により、試料表面7aの実効吸収率が大幅に増加す
る。
7b側に設置することにより試料裏面の見掛けの放射率
が増加することを説明するためのものである。試料表面
7aで吸収されたレーザビームにより、試料7はその吸
収エネルギーに相当する温度まで昇温し、試料裏面7b
の中心部から放射される熱放射は、放射温度計11の対
物レンズ10の立体角の中に向かう放射だけが、放射温
度計11により観測される。ここで、試料中心部からの
熱放射のうち、放射温度計の対物レンズ10の立体角よ
り外れている大部分の熱放射は、半球面鏡9により試料
裏面7bに戻され、戻された熱放射の一部は試料裏面7
bで反射した後、あるいは、半球面鏡9と試料裏面7b
との間で反射を繰り返した後、放射温度計11の対物レ
ンズ10に入るようになる。このような半球面鏡9によ
る無限の多重反射により、試料裏面の見掛けの放射率が
大幅に増加する。
半球面鏡8の反射率をρm 、半球面鏡8の形態係数をF
a 、半球面鏡8のレーザ照射口8aの形態係数をfa 、
試料表面の鏡面反射率をρs 、試料表面の拡散反射率を
ρd とすれば、半球面鏡8を試料表面7aの前方に設置
したときの試料表面7aの実効吸収率αe には、試料表
面自体の吸収率に、最初に試料表面で拡散反射されるレ
ーザビームによる吸収率の増加分と、最初に試料表面
で鏡面反射されるレーザビームによる吸収率の増加分
が加わり、(1)式のように求められる。
吸収率の増加分は、次式のようになる。
吸収率の増加分は、次式のようになる。
で、鏡面反射の後のレーザ照射口よりの損失、fa /F
a の二乗以上は非常に小さいので、これを無視すれば、
半球面鏡による実効吸収率αe は、次の(1)式のよう
になる。
球面鏡9の反射率を半球面鏡8と同じρm 、半球面鏡9
の形態係数をFe 、半球面鏡9の放射測定口9aの形態
係数をfe とすれば、半球面鏡9を試料裏面7b側に設
置したとき、放射温度計11により観測される試料裏面
の見掛けの放射率εe には、試料裏面7b自体の放射率
による放射に、半球面鏡9に反射された放射が試料裏面
で拡散反射されて放射温度計11に入る放射と、鏡面
反射されて放射温度計11に入る放射とが加わるの
で、半球面鏡9を設置したとき、放射温度計11により
観測される試料裏面の見掛けの放射率εe は、(2)式
のように求められる。
率の増加分は次式のようになる。
率の増加分は次式のようになる。
で、fe /Fe の二乗以上は非常に小さいので、これを
無視すれば、半球面鏡による見掛けの放射率εe は次の
(2)式のようになる。
実効吸収率αe は、半球面鏡8の曲率中心部での実効吸
収率である。実際の測定条件では、試料7の大きさがあ
り、半球面鏡8の曲率中心から外れたレーザビームは試
料表面と半球面鏡の間の多重反射に伴い順次広がって行
くので、レーザビームの広がりを考慮しなければならな
い。そこで、レーザビーム2の入射角度θでの試料表面
7a自体の吸収率をα、入射角度θのレーザビームの試
料表面7aでの一次鏡面反射のときの反射後に戻る面積
に対する反射前面積の比である有効反射係数をks 、拡
散形反射のときの反射後戻る面積に対する反射前面積の
比の有効反射係数をkd とすれば、レーザビームの広が
り及び入射角度を考慮したときの半球面鏡8による実効
吸収率αe は、次の(3)式で示される。
図3に、実効吸収率の増加率を図4に表した。
+SiOコートで、ρm = 0.97 、曲率半径はR= 70
mm、半球面鏡8の底面を 10 mm切り出したときの形
態係数は、Fa = 0.9683 、レーザ照射口8aについて
は、傾斜角度θ= 10 °、直径da = 15 mm、形態係
数fa = 0.0113 、試料7の直径a= 10 mmとし、こ
れらにより、鏡面反射に係る有効反射係数ks = 0.977
3 、拡散反射に係る有効反射係数kd = 0.9447 を求め
た。
吸収率αe の増加率αe/αは、試料表面7a自体の吸収
率αが低いほど、また拡散反射性ρd/ρが大きいほど大
きくなり、吸収率の低い金属材料などの熱拡散率の測定
に効果があることがわかる。図3及び図4に示している
α=ρd /ρである場合の曲線は、一般材料の場合、赤
外領域では吸収率が低いほど鏡面反射性が大きく、高い
ほど拡散反射性が大きくなるので、レーザの波長付近で
の試料表面の拡散性が吸収率に等しい場合を検討したこ
とで、α=ρd/ρ=0.2 の場合、実効吸収率はαe =
0.49 となり、半球面鏡8により2.44倍になること
がわかる。
したときも、試料裏面7bからの熱放射が半球面鏡9で
反射した後、試料裏面7bに戻る際に、熱放射の広がり
が生じる。このとき、放射温度計11における観測角度
をレーザビーム2の入射角度と同じくすれば、試料裏面
7bでの一次鏡面反射のときの有効反射係数はks ,拡
散形反射のときの有効反射係数はkd とおけるので、観
測角度θでの試料裏面7b自体の放射率をεとすれば、
熱放射の広がりと観測角度θを考慮したときの半球面鏡
9による見掛けの放射率εe は、次の(4)式で求めら
れる。
図5に、見掛けの放射率の増加率を図6に表した。
出したときの半球面鏡9の形態係数Fe = 0.9746 、放
射測定口9aについては、傾斜角度θ=10°、直径de
=10mm、形態係数fe = 0.0050 、放射温度計11の
観測標的の大きさはφ1mmとし、これらにより、ks
= 0.9987 ,kd = 0.9936 を求めた。この結果による
と、半球面鏡9による見掛けの放射率εe の増加率εe/
εも、観測角度θでの試料裏面7bの放射率εが低いほ
ど、また、拡散反射性ρd/ρが大きいほど大きくなり、
放射率の低い金属材料などの測定に効果があることがわ
かる。図5及び図6に示しているε=ρd /ρである場
合の曲線は、一般材料の場合、赤外領域では放射率が低
いほど鏡面反射性が大きく、高いほど拡散反射性が大き
くなるので、放射温度計11の測定波長付近での試料裏
面7bの拡散反射性が放射率に等しい場合を検討したこ
とで、ε=ρd /ρ=0.2 の場合、見掛けの放射率はε
e = 0.53 となり、半球面鏡9により2.66倍に増加
する。
び(4)式で示される見掛けの放射率εe は、試料表面
7a自体の吸収率α及び試料裏面7bの放射率ε,試料
7の表裏面状態、半球面鏡8,9の反射率ρm と形態係
数Fa ,Fe 等により変わるが、それらのうちで、レー
ザ照射口8a及び放射測定口9aの条件は、実効吸収率
αe 及び見掛けの放射率εe に及ぼす影響も大きく、他
の設計条件により決まるので、最適設計を行う必要があ
る。そこで、本発明では、試料表面7aに照射されるレ
ーザビーム2のエネルギーが一定のとき、試料表面7a
での吸収エネルギーと試料裏面7bでの見掛けの放射を
最大化するための半球面鏡8,9のレーザ照射口8a及
び放射測定口9aの最適角度を、以下のような方法で求
めた。
ザビーム2が、レーザ照射口8aより逃げ出さないよ
う、レーザ照射口8aの最小傾斜角度を次の(5)式の
範囲に制限する。 θ> sin-1{(a+d)/4R} ・・・ (5) ここで、aは試料7の直径、da はレーザ照射口8aの
直径、Rは半球面鏡8の曲率半径である。
料表面7aに照射されると、照射スポットは楕円形とな
り、また、レーザフラッシュ法では、一次元熱伝導を実
現するために、レーザビーム2の直径を試料7の直径a
より大きくするので、円形の試料表面7aから外れるレ
ーザビームは、損失エネルギーとなる。そこで、レーザ
ビーム2の照射効率を高めるため、半球面鏡8の設計に
次の(6)式で示すレーザビーム2の有効照射率Sを関
数として加えた。ここで、kは試料7の直径aに対する
レーザビーム2のビーム直径の比である。
置することにより、増加される実効吸収率αe は、レー
ザ照射口8aの大きさとその傾斜角度θに大きく影響を
受ける。したがって、レーザ照射口8aの条件を関数と
した実効吸収率αe の増加率αe/αを示している次の
(7)式を半球面鏡8の設計に加えた。
での形態係数、da はレーザ照射口8aの直径である。
たときも、放射測定口9aの大きさとその傾斜角度θに
より見掛けの放射率εe が変わるので、放射測定口9a
の条件を関数とした見掛けの放射率εe の増加率εe/ε
に関する下記の(8)式を考慮した。
の形態係数、de は放射測定口9aの直径である。
8a及び半球面鏡9の放射測定口9aの傾斜角度θを、
半球面鏡8,9の曲率半径R,試料7の直径a及びレー
ザ照射口8aの直径da より求めた(5)式の限界角度
以上とし、(6)式で示されるレーザビーム2の有効照
射率S,レーザビーム2の広がりを考慮したときの半球
面鏡8による試料表面7aの実効吸収率αe の増加率α
e/α、及び熱放射の広がりを考慮したときの半球面鏡9
による試料裏面7bの見掛けの放射率εe の増加率εe/
εなどを用いた下記(9)式により、測定条件係数Eが
大きくなる位置で、レーザ照射口8a及び放射測定口9
aの最適傾斜角度θを求めた。この測定条件係数Eは、
半球面鏡のない時の試料裏面の放射信号に対する半球面
鏡を設置したときの信号の改善効果に相当する。 E=S(αe /α)(εe /ε) ・・・ (9)
計算例を、試料7の直径aに対するレーザビーム2の比
率kをパラメーターとして示すものである。この図7で
は、両半球面鏡8,9の曲率半径R= 70 mm、反射率
ρm = 0.97 、半球面鏡8の底面を10mm切り出したと
きの形態係数Fa = 0.9683 、半球面鏡9の底面を10m
m切り出したときの形態係数Fe = 0.9746 、レーザ照
射口8aの直径da =15 mm、放射測定口9aの直径
de = 10 mm、試料7の直径a= 10 mm、及び放射
温度計11の観測標的の大きさがφ1mmの場合につい
て、(9)式で求めた半球面鏡のレーザ照射口及び放射
測定口の傾斜角度による測定条件係数の変化を表してい
る。図7からわかるように、(5)式で表わす限界傾斜
角度以下では急激に半球面鏡の設置効果が低下するの
で、半球面鏡8,9の曲率半径R、試料7の直径a、レ
ーザビーム2の直径、放射温度計11の観測標的の大き
さ等に対する希望の測定状況での測定条件係数Eが最大
になる傾斜角度を設計角度とすることが望ましい。
実効吸収率及び試料裏面の見掛けの放射率が大きく増加
することがわかる。なお、(3)式を表わしている図3
と図4、及び(4)式を表わしている図5及び図6によ
ると、実効吸収率αe 及び見掛けの放射率εe は、それ
ぞれ試料表面7aと試料裏面7bの拡散反射性ρd/ρが
大きくなるほどさらに増加するので、試料表面7aと試
料裏面7bを粗面にすることにより、実効吸収率αe 及
び見掛けの放射率εe を高めることができる。いま、試
料表面7a及び試料裏面7bを粒度#800 〜1000の研磨
材で研磨し、表面粗さ1〜5μm,内角80〜90°の
V溝窪を有する粗面にした場合には、表面粗さにより試
料表面7aの実効吸収率αe 及び試料裏面7bの見掛け
の放射率εe が増加すると共に、拡散反射性ρd/ρも増
加する。このとき、粗面にすることで、実効吸収率α
e ,見掛けの放射率εe 及び拡散反射性ρd/ρがほぼ同
じ傾向で増加するので、次のように0.8乗で増加する
場合を検討すると、αe^=εe^=αe 0.8=εe 0.8,(ρd
^/ρ^)=(ρd /ρ)o.8となる。ここで、符号^は、
「表面粗さによる」を意味している。
よる実効吸収率αe 及び見掛けの放射率εe の増加効果
を図8に示した。以上の結果によると、試料の表面を粗
くすることにより、試料表面7a自体の吸収率αと試料
裏面7b自体の放射率ε及び拡散性が同時に大きくな
り、半球面鏡の設置効果がさらに大きくなる。α=ε=
0.2の場合は、表面粗さ1〜5μm、内角80〜90
°のV溝窪を有する粗面とすることにより、実効吸収率
(αe^)は3.13倍、見掛けの放射率(εe^)は3.
35倍まで増加する。
導に係る試料の実効厚みが多少変化するので、試料表面
7aと裏面7bの表面粗さを補正した次の(10)式に
よる試料の厚みLを用いて熱拡散率を求める必要があ
る。 L=Lt −(ha +he )/√2 ・・・(10) ここで、Lは試料表面と裏面の表面粗さを補正した試料
の厚み、Lt は試料の両面7a,7bの間の最大厚み、
ha は試料表面7aの最大粗さの深さ、he は試料裏面
7bの最大粗さの深さである。(10)式は、表面を粗
くするとき、吸収率及び放射率がV溝窪の先端から谷ま
で比例して高まることとし、吸収と放射エネルギーの平
均位置の間より得られたものである。
としての円盤状の鉄材を用い、その熱拡散率を常温で測
定して、半球面鏡による実効吸収率及び見掛けの放射率
の増加効果を確認した実施例を、図9を参照して説明す
る。試料の大きさは、直径a= 10 mm、厚みL= 1.0
24mmの円盤状であり、試料表面及び試料裏面とも同じ
状態に鏡面研磨、あるいは研磨材粒度#600 のサンドペ
ーパーで粗面にした。試料表面側の半球面鏡8は、曲率
半径R= 70 mm、形態係数Fa = 0.91 、反射率ρm
≒0.9 である。レーザ照射口は、直径da =40 mm、
傾斜角度θ=25°である。試料裏面側の半球面鏡9は、
曲率半径R=70 mm、形態係数Fe = 0.96 、反射率
ρm ≒0.9 である。放射測定口は、直径de =20mm,
傾斜角度θ=20°である。両半球面鏡8,9の底面は、
迷光を考慮して高さ10mmを切り出した。レーザは、波
長 1.06 μmのYAGレーザで、約2Jの照射エネルギ
ーを照射し、一方、放射温度計11の測定波長は1〜5
μmで、観測標的の直径は3mmであった。
設置しないで測定したとき(a) と、鏡面に研磨した試料
の両面に半球面鏡を設置したとき(b) 、及び試料の表面
を#600の砂布で粗面にして半球面鏡を設置したとき
(c) の、放射温度計11により観測した放射信号の大き
さを比較できるようにして示している。
を、半球面鏡8,9を配置しないで測定したときは、最
高温度までの信号が 33 dgt.に過ぎないので、電気的な
ノイズを考慮すると、このままでは熱拡散率の測定がで
きないことがわかる。これに対して、同様の試料で半球
面鏡8,9を両側に配置して測定したときは、最高温度
までの信号が、98 dgt. となり、3倍以上増加したの
で、十分な精度で測定できることがわかった。また、両
面を粗面にした試料で半球面鏡8,9を配置して測定し
たときは、さらに7倍まで信号が増加して、吸収率及び
放射率の低い材料でも精度よく測定できることが明らか
になった。なお、この鉄の試料について、半球面鏡を設
置して熱拡散率を測定した結果、1.91×10-5m2 /sを
得た。
フラッシュ方式による熱拡散率測定方法によれば、これ
まで試料表面の黒化処理無しに熱拡散率の測定が困難で
あった吸収率及び放射率の低い材料でも、半球面鏡を設
置して試料表面を照射するレーザビームからの熱吸収
量、試料裏面から放射温度計に伝達される放射熱量をそ
れぞれ増大することにより、熱拡散率を精度よく測定す
ることができる。また、試料表面、試料裏面を粗面にす
ることにより、半球面鏡の設置の効果がさらに大きくな
り、黒化処理しても測定が困難であった熱拡散率の大き
い材料にも対処できる。
の一例を示す構造図である。
実効吸収率及び試料裏面側での見掛けの放射率が増加す
る原理を説明するための説明図である。
料表面の実効吸収率を示すグラフである。
である。
面の見掛けの放射率を示すグラフである。
ラフである。
角度による半球面鏡の設置効果の変化を示すグラフであ
る。
収率と見掛けの放射率の増加率を示すグラフである。
放射信号の改善効果を示すグラフである。
Claims (3)
- 【請求項1】平板状の試料の表面にレーザビームを照射
して熱エネルギーを与え、この熱エネルギーによる試料
裏面の熱放射から熱拡散率を求めるレーザフラッシュ方
式による熱拡散率測定方法において、 平板状の測定試料の両側または片側に対向設置した半球
面鏡により、試料表面に照射されたレーザビームの反射
光を再び試料表面に戻してレーザビームの吸収率を高
め、且つ/または試料裏面からの熱放射を多重反射させ
て試料裏面の見掛けの放射率を高め、試料への黒色塗料
のコート無しに熱拡散率を測定する、ことを特徴とする
半球面鏡式レーザフラッシュ方式による熱拡散率測定方
法。 - 【請求項2】請求項1に記載の方法において、 試料表面に対してレーザビームを照射する角度θ及び/
または試料裏面の放射測温の角度θを、試料の直径a、
半球面鏡のレーザ照射口または放射測定口の直径d、半
球面鏡の曲率半径Rに基づき、 θ> sin-1{(a+d)/4R} とする、ことを特徴とする半球面鏡式レーザフラッシュ
方式による熱拡散率測定方法。 - 【請求項3】請求項1または2に記載の方法において、 試料の両面を粗面にすることにより、半球面鏡の設置効
果を高めると共に、表面粗さを補正して熱拡散率を導出
する、ことを特徴とする半球面鏡式レーザフラッシュ方
式による熱拡散率測定方法。
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---|---|---|---|
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN103196943A (zh) * | 2013-02-28 | 2013-07-10 | 胡增荣 | 一种蜂窝板隔热性能试验装置及其试验方法 |
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1996
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