JP2873943B2 - 半球面鏡式比熱容量測定法 - Google Patents

半球面鏡式比熱容量測定法

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JP2873943B2
JP2873943B2 JP35290096A JP35290096A JP2873943B2 JP 2873943 B2 JP2873943 B2 JP 2873943B2 JP 35290096 A JP35290096 A JP 35290096A JP 35290096 A JP35290096 A JP 35290096A JP 2873943 B2 JP2873943 B2 JP 2873943B2
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哲也 馬場
宗憙 洪
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属、セラミック
ス、複合材料等の固体材料及び液体を対象とし、レーザ
等の放射エネルギーで試料を加熱し、試料の温度上昇を
放射温度計で測温して比熱容量を測定する半球面鏡式比
熱容量測定法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の比熱容量測定法としては、浮上
法、投下法、パルス通電加熱法、断熱法、交流加熱法、
示差走査熱容量法、あるいはフラッシュ法等が挙げられ
る(例えば、Maglic, Cezairliyan, Peretsky 編、「Co
mpendium of Thermophysical Property Measurement Me
thods, Volume 1, Survey of Measurement Techniques
」Plenum Press, (1984), New York)。
【0003】これらの測定法のうちで、導電性材料、非
導電性材料に限らず、高温まで、それも短時間で比熱容
量が測定できる有力な測定法として、フラッシュ法が試
みられてきた。特に、最近は加熱エネルギーとしてレー
ザを使うレーザフラッシュ法による比熱容量測定法が幅
広く活用されている。ところが、このレーザフラッシュ
法による比熱容量測定の最大の問題は、試料の吸収エネ
ルギーと上昇温度の正確な評価が容易でないことであ
る。このような問題を改善する方法として、空間エネル
ギー分布を均一化したレーザビームを用い、熱容量既知
の参照試料と測定試料の表面に同一の黒色塗料を被覆
し、参照試料との相互比較により比熱容量を算出するレ
ーザフラッシュ示差熱量計が開発されている(例えば、
李昶遠、馬場哲也、小野晃共著、「レーザフラッシュ示
差熱量計の開発」、熱物性、第9巻第4号、p224 〜 2
30、日本熱物性研究会発行(1995年))。
【0004】この方法は、測定試料と熱容量既知の参照
試料の表面に同一塗料を塗布することにより、ある程度
確実な比較評価が可能となる。しかしながら、この方法
においても、塗料の吸収率及び放射率は、塗布される材
料、塗布方法、塗布厚み、接着剤等様々な条件により敏
感に変わるので、同一塗料を使っても測定試料と参照試
料の表面を同じ吸収率及び放射率に塗布することは容易
ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する技術的な課題は、試料表面の実効吸収率及び実効放
射率を黒体に近くなるように増加させる手段を開発し、
試料表面に塗料を塗布する場合における塗布条件等によ
る敏感な吸収率及び放射率の変化が測定誤差に及ぼす影
響を低減するようにした比熱容量測定法を提供すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明の半球面鏡式比熱容量測定法は、平板状の測定
試料の表面にレーザビームを照射して加熱し、試料の温
度上昇を放射温度計により計測して比熱容量を測定する
方法において、上記測定試料の表裏両側に対向設置した
半球面鏡により、試料表面に照射されるレーザビームの
反射光を再び試料表面に戻してレーザビームの吸収率を
高め、且つ試料裏面からの熱放射を多重反射させて試料
裏面の実効放射率を高め、測定試料の吸収率及び放射率
の差による比熱容量の測定誤差を低減して、比熱容量を
測定することを特徴とするものである。
【0007】上記本発明の比熱容量測定法においては、
試料表面に照射されるレーザビームのうちで反射により
逃げるレーザビームを半球面鏡で再び試料表面に戻すこ
とにより、無限の多重吸収を起こし、試料表面の実効吸
収率を黒体に近いところまで増加させると共に、試料裏
面の半球全放射のうちで放射温度計に観測されない放射
を半球面鏡で試料裏面に戻すことにより、無限の多重反
射を起こさせて試料裏面の実効放射率を黒体に近いとこ
ろまで増加させ、これにより試料表面の吸収率及び裏面
の放射率の差の影響を低減させる。また、本発明の比熱
容量測定法においては、試料表面で反射されるレーザビ
ームを半球面鏡により、試料表面に戻して多重吸収させ
るので、試料表面に照射されるレーザビームの損失が低
減されると共に、試料裏面の熱放射のうち、放射温度計
に入射されない熱放射を半球面鏡により試料裏面に戻し
て、実効放射率を黒体に近くなるまで高めることによ
り、試料裏面の放射信号を増幅させ、ノイズに対する測
定信号の改善により、測定精度を高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に、図面を参照して本発明の
実施形態について説明する。図1は、本発明に係る半球
面鏡式比熱容量測定法を実施するための測定装置の構成
の一例で、比熱容量既知の参照試料との比較により、測
定試料の比熱容量を導出する場合を示すものである。パ
ルスレーザ加熱源1から射出されたレーザビーム2は、
ビームスプリッタ3によりその一部が反射され、それが
パワーメーター4に入り、パルスレーザのエネルギーの
変動信号は、試料の比熱容量の算出のための関数として
使用される。上記レーザビーム2の大部分は、ビームス
プリッタ3を通過して、レーザビームの進行方向を調整
する反射鏡5により反射した後、測定用真空槽6の窓6
aを通して、槽6の中心部に斜めに設置されている熱容
量既知の参照試料あるいは測定試料7に照射される。
【0009】測定用真空槽6は、上記窓6aの対向位置
に観測窓6bを備え、中央部分の試料7の両側、すなわ
ち、試料の表面7a側と裏面7b側に、半球面鏡8と半
球面鏡9とが配置される。これらの半球面鏡8,9に
は、その頂点からやや傾いた位置に、小さな開口からな
るレーザ照射口8a及び熱放射測定口9aを設け、レー
ザ照射口8aは、測定用真空槽6におけるレーザビーム
の入射方向である窓6aに向けて開口させ、熱放射測定
口9aは、観測窓6bに向けて開口させている。そし
て、半球面鏡8の球心と試料表面7aの中心とをほぼ一
致させ、半球面鏡9の球心と試料7の裏面7bの中心と
をほぼ一致させるようにしている。参照試料と測定試料
7とは、半球面鏡8,9の球心の位置に交互に置き替え
ることにより、比較測定を行うものである。なお、測定
用真空槽6の真空系、試料7及び半球面鏡8,9の固定
機構等については、図示を省略している。
【0010】参照試料あるいは測定試料7に照射される
レーザビーム2は、そのうちの試料表面7aの吸収率分
だけが試料に一次吸収され、残りの反射率分は試料7か
ら反射されるが、この反射されたレーザビームも、レー
ザ照射側の半球面鏡8での反射により試料表面7aに戻
され、この繰り返しにより無限の多重吸収が行われ、実
効吸収率が黒体の吸収率である1に近くなるまで増加す
る。その結果、参照試料と測定試料7の試料表面自体の
吸収率が互いに異なる場合でも、両者の実効吸収率の差
は低減される。
【0011】参照試料あるいは測定試料7は、照射され
たパルスレーザのエネルギーと実効吸収率より決まる吸
収エネルギーに相当する温度まで上昇し、試料裏面7b
からは、上昇する温度と試料裏面7bの放射率に対応す
る熱放射エネルギーが放射される。この試料裏面7bの
中心部の熱放射エネルギーの時間的変化を放射温度計1
1で観測し、観測した熱放射エネルギーより試料裏面の
上昇温度を測定するが、試料裏面7bの中心部の放射の
うち、放射温度計の対物レンズ10に直接入る放射エネ
ルギーはその一部に過ぎず、対物レンズ10から外れる
大部分の放射は周囲に逃げる。しかるに、試料裏面7b
の放射温度計11側にも上記半球面鏡9を設置し、放射
温度計の対物レンズ10から外れた熱放射を半球面鏡9
で再び試料裏面7bに戻すことにより、放射温度計の対
物レンズ10に入る熱放射エネルギーが増加し、試料裏
面7bの実効放射率が黒体に近くなるまで増加すると共
に、試料裏面7b自体の放射率の差より実効放射率の差
が小さくなる。
【0012】上述の測定においては、試料7に対するレ
ーザビームの照射角度や放射温度計の測温の角度を、試
料表面7aで一次反射したレーザビームが半球面鏡8に
効果的に取り戻せるように、あるいは放射温度計の対物
レンズ10から外れる方向の熱放射を半球面鏡9に効果
的に取り戻せるように、適切な角度範囲に設定すること
が、測定精度を高めるために有利であるが、その詳細に
ついては後述する。
【0013】放射温度計11においては、レーザビーム
2が試料7に照射される瞬間からの試料裏面7bの時間
的温度変化が観測され、観測された試料裏面7bの温度
変化の信号は、出力信号の記憶装置であるトランジェン
トメモリ12に転送され、演算装置(パーソナルコンピ
ュータ)13において、パワーメーター4により測定さ
れた参照試料と測定試料のパルスレーザのエネルギー信
号の比と、放射温度計11により観測されトランジェン
トメモリ12に転送された参照試料と測定試料の温度変
化の信号の最高上昇値の比を用い、比熱容量既知の参照
試料と測定試料との相対的な信号特性の比較により、測
定試料の比熱容量が算出される。
【0014】次に、図2〜図8を参照して、本発明の比
熱容量測定法における比熱容量の算出の原理について説
明する。まず、測定試料の比熱あるいは熱容量の算出式
より検討するに、測定試料の定圧比熱をCp 、質量を
m、参照試料の定圧比熱をCps、質量をms 、測定試料
及び参照試料の表面に塗布された塗料の定圧比熱をC
r 、質量をmr 、測定試料の表面に吸収されたレーザエ
ネルギーをQr 、参照試料の表面に吸収されたレーザエ
ネルギーをQrs、レーザエネルギーの吸収による測定試
料の温度上昇をΔT、参照試料の温度上昇をΔTs とす
れば、測定試料の比熱Cp と熱容量mCp の間には、次
の(1)式の関係が成立する。ただ、(1)式の中で塗
料の熱容量は試料の熱容量に比べて非常に小さいので、
塗料の熱容量は無視した。
【数1】
【0015】また、測定試料の表面7aに照射されたレ
ーザエネルギーをQ、参照試料の表面7aに照射された
レーザエネルギーをQs 、放射温度計11により指示さ
れる測定試料の温度上昇をΔTr 、放射温度計11によ
り指示される参照試料の温度上昇をΔTrs、参照試料と
測定試料の初期温度をTi 、参照試料の裏面7bの放射
率をεs 、測定試料の裏面7bの放射率をε、測定試料
の吸収率をα、参照試料の吸収率をαs とすれば、照射
エネルギーと吸収エネルギーの間には、Qs =Qrs/α
s ,Q=Qr /αの関係があり、試料の本来の温度上昇
値と放射温度計により指示される温度上昇値の間には
(2)式の関係が成立する。
【数2】
【0016】従って、(1)式に(2)式を代入するこ
とにより、吸収率及び放射率の差による比熱容量の測定
誤差を含める(3)式が求められる。
【数3】
【0017】ここで、C2 はプランクの法則による第2
定数で、C2 =1.4388×104 μm・K、λは放射温度計
の測定波長である。上記(3)式は、参照試料と測定試
料の吸収率及び放射率の差が比熱容量の測定誤差となる
ことを示しているもので、α=ε=0.8 ,ΔT= 10 ℃
のときの、吸収率と放射率の差(Δα=Δε)による比
熱容量の測定誤差が、図2に示されている。
【0018】このように、参照試料と測定試料の間の吸
収率及び放射率の差は、比熱容量測定の主要誤差要因と
なっている。本発明では、試料両面に半球面鏡を設置す
ることにより、参照試料と測定試料の実効吸収率及び実
効放射率を黒体に近くなるように増加させるので、実効
吸収率及び実効放射率の差が小さくなると共に、測定信
号も大きく改善される。図3のAは、試料表面7aに照
射されるレーザビームのうち、試料から反射されるエネ
ルギーが半球面鏡8により再び試料表面7aに戻り、実
効吸収率が増加されることを、また、図3のBは、試料
裏面7bの中心部の放射のうち、放射温度計11の対物
レンズ10より外れた放射が半球面鏡9により再び集光
され、放射温度計の対物レンズ10に入ることにより、
実効放射率が増加することを示している。
【0019】いま、試料の表面7aの本来の吸収率を
α、半球面鏡8の反射率をρm 、半球面鏡8の形態係数
をFa 、半球面鏡8のレーザ照射口8aの形態係数をf
a 、試料表面7aの鏡面反射率をρs 、試料表面7aの
拡散反射率をρd とすれば、半球面鏡8を設置したとき
の試料表面7aの実効吸収率αe には、試料表面自体の
吸収率に、最初試料表面7aで拡散反射されるレーザビ
ームによる吸収率の増加分と、最初試料表面7aで鏡
面反射されるレーザビームによる吸収率の増加分とが
加わり、(4)式のように求められる。
【0020】.試料表面の最初の拡散反射成分による
吸収率の増加分は、次式により表される。
【数4】
【0021】.試料表面の最初の鏡面反射成分による
吸収率の増加分は、次式により表される。
【数5】
【0022】ここで、鏡面反射と拡散反射の反復過程
で、鏡面反射の後のレーザ照射口よりの損失、fa /F
a の二乗以上は非常に小さいので、これを無視すれば、
半球面鏡による実効吸収率αe は、次のようになる。
【数6】
【0023】また、試料裏面7b自体の放射率をε、半
球面鏡9の反射率を半球面鏡8と同じρm 、半球面鏡9
の形態係数をFe 、半球面鏡9の熱放射測定口9aの形
態係数をfe とすれば、半球面鏡9を試料裏面7b側に
設置したとき、放射温度計11により観測される試料裏
面の実効放射率εe には、試料裏面7b自体の放射率に
よる放射に、半球面鏡9に反射された放射が試料裏面で
拡散反射されて放射温度計11に入る放射と、鏡面反
射されて放射温度計11に入る放射とが加わるので、
半球面鏡9を設置したとき、放射温度計11により観測
される試料裏面の実効放射率εe は、(5)式のように
求められる。
【0024】.試料裏面での拡散反射成分による放射
率の増加分は、次式により表される。
【数7】
【0025】.試料裏面での鏡面反射成分による放射
率の増加分は、次式により表される。
【数8】 ここで、鏡面反射と拡散反射の反復過程で、fe /Fe
の二乗以上は非常に小さいので、これを無視すれば、半
球面鏡による実効放射率εe は、次のようになる。
【数9】
【0026】いま、(4)式で示される試料表面7aの
実効吸収率αe は、半球面鏡8の曲率中心部での実効吸
収率である。実際の測定条件では、試料7に大きさがあ
り、半球面鏡8の曲率中心から外れたレーザビームは、
試料表面と半球面鏡の間での多重反射に伴い順次広がっ
て行くので、レーザビームの広がりを考慮しなければな
らない。そこで、レーザビームの入射角度θでの試料表
面7a自体の吸収率をα、入射角度θのレーザビームの
試料表面7aでの一次鏡面反射のときの反射後に戻る面
積に対する反射前面積の比である有効反射係数をks
拡散形反射のときの反射後に戻る面積に対する反射前面
積の比の有効反射係数をkd とすれば、レーザビームの
広がり及び入射角度を考慮したときの半球面鏡8による
実効吸収率αe は、次の(6)式で示される。
【0027】
【数10】 この(6)式で求めた半球面鏡による実効吸収率αe
図4に示した。
【0028】ここで、半球面鏡8の反射率ρm は、Al
+SiOコートで、ρm = 0.97 、曲率半径はR= 70
mm、半球面鏡8の底面を 10 mm切り出したときの形
態係数は、Fa = 0.968、レーザ照射口8aについて
は、傾斜角度θ= 10 °、直径da = 15 mm、形態係
数fa = 0.011、試料7の直径a= 10 mmとし、これ
らにより、鏡面反射に係る有効反射係数ks = 0.977、
拡散反射に係る有効反射係数kd = 0.945を求めた。
【0029】この結果によると、吸収率の高い材料は、
拡散性も大きいので、α=ρd /ρとすれば、試料表面
自体の吸収率が 0.8±0.1 の場合、半球面鏡8を設置す
ることにより、0.97±0.02以内となり、実効吸収率の増
加と共に、吸収率の偏差率が1/6以上小さくなる。従
って、半球面鏡の設置により、試料表面の吸収率の差に
よる比熱容量の測定誤差が従来の1/6以下に低減され
ることがわかる。また、照射されるレーザエネルギーの
吸収率も 80 %より 97 %まで上がるので、エネルギー
の損失も 20 %から3 %に大きく低減される。
【0030】一方、半球面鏡9を試料裏面7bの方に設
置したときも、試料裏面7bからの放射が半球面鏡9に
反射された後に試料裏面7bに戻るとき、放射の広がり
が生じる。このとき、放射温度計11による観測角度θ
をレーザビームの入射角度と同じくすれば、試料裏面で
の一次鏡面反射のときの有効反射係数はks 、拡散形反
射のときの有効反射係数はkd とおけるので、観測角度
θでの試料裏面自体の放射率をε、半球面鏡9による見
掛けの放射をεe とすることにより、放射の広がりを考
慮したときの実効放射率は(7)式で求められる。
【数11】 この(7)式で求めた半球面鏡9による実効放射率εe
を、図5に示した。
【0031】ここで、半球面鏡9の底面を 10 mm切り
出したときの半球面鏡9の形態係数は、Fe =0.975 、
熱放射測定口9aについては、傾斜角度θ=10°、直径
e=10mm、形態係数fe = 0.005、放射温度計11
の観測標的の大きさはφ1mmとし、これらにより、k
s =0.999 ,kd =0.994 を求めた。この場合も吸収率
の場合と同じく、放射率の高い材料は拡散性も大きいの
でε=ρd /ρとすれば、試料表面自体の放射率が 0.8
±0.1 の場合、半球面鏡を設置することにより、0.98±
0.015 以内となり、実効放射率の増加と共に、放射率の
偏差が1/8まで小さくなる。従って半球面鏡の設置に
より、試料表面の放射率の差による比熱容量の測定誤差
が低減される。
【0032】また、上記(6)式で示される実効吸収率
αe 及び(7)式で示される実効放射率εe により、放
射温度計により観測される試料裏面の放射信号が増加
し、ノイズに対する測定信号の比率(S/N比)が大き
くなるので、測定精度が向上する。いま、半球面鏡9を
設置しないでレーザを照射したときの測定試料裏面の放
射輝度の増加をΔR、半球面鏡9を設置したときの測定
試料裏面の放射輝度の増加をΔRe とすれば、次の
(8)式の関係が成立する。
【数12】
【0033】この(8)式は、半球面鏡9による放射信
号の増幅率を示している。ここで、ΔTe は半球面鏡9
を設置したときの測定試料の温度上昇で、ΔTe =αe
T/αの関係がある。Ti = 300Kの場合、測定試料の
温度上昇と半球面鏡による実効吸収率及び実効放射率の
増加による試料裏面の放射信号の増加率を図6に示し
た。半球面鏡8,9を設置することにより、吸収率及び
放射率が黒体に近く増加するので、測定条件が最適化さ
れ、測定材料の吸収率及び放射率が低いほど放射信号の
増加率が大きくなることがわかる。
【0034】
【実施例】次いで、図1の測定装置を用いて、表面に黒
鉛を塗布した鉄の試料の両面に半球面鏡を設置し、半球
面鏡による実効吸収率及び実効放射率の増加効果を確認
した実施例を、図7を参照して説明する。試料の大きさ
は、直径a= 10 mm、厚みL= 1.024mmの円盤状で
あり、試料の両面は、通常の測定と同じく黒鉛スプレー
を塗布した。レーザ照射側の半球面鏡は、曲率半径R=
70 mm、形態係数Fa = 0.91 、反射率ρm ≒0.9 で
ある。レーザ照射口は、直径da = 40 mm、傾斜角度
θ=25°である。試料裏面側の半球面鏡は、曲率半径R
= 70 mm、形態係数Fe =0.96 、反射率ρm ≒0.9
である。放射測定口は、直径de =20mm,傾斜角度θ
=20°である。両半球面鏡8,9の底面は、迷光を考慮
して高さ10mmを切り出した。レーザは、波長 1.06 μ
mのYAGレーザで、約2Jの照射エネルギーを照射
し、一方、放射温度計11の測定波長は1〜5μmで、
観測標的の直径は3mmであった。
【0035】図7は、半球面鏡を設置しないで、黒鉛ス
プレーを塗布した測定試料にレーザを照射して放射温度
計11により測定した試料裏面7bの放射信号と、試料
の両面に半球面鏡8,9を設置したときの同放射信号の
大きさを比較している。通常の測定と同じく、半球面鏡
なしに黒鉛スプレーを塗布したままレーザを照射したと
きは、最高温度までの信号が 850 dgt. であったが、試
料の両面に半球面鏡8,9を設置したときは、最高温度
までの信号が 1098 dgt.と 29 %ぐらい増加された。黒
鉛スプレーの放射率は 0.8±0.05ぐらいで、半球面鏡を
設置することにより、実効吸収率と実効放射率が黒体に
近くなるように増加したことがわかる。
【0036】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の半球面
鏡式比熱容量測定法によれば、試料の両側に半球面鏡を
設置することにより、参照試料と測定試料の間の吸収率
及び放射率の差による比熱容量の測定誤差が無視できる
ぐらい低減されるし、実効吸収率及び実効放射率が黒体
に近く増加し、試料裏面の放射信号が増幅されるので、
比熱容量の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る比熱容量測定法を実施するための
測定装置の一例を示す構成図である。
【図2】参照試料と測定試料の表面の吸収率及び放射率
の差が比熱容量測定の誤差要因となることを示すグラフ
である。
【図3】A及びBは、半球面鏡を試料両側に設置するこ
とにより、試料表面の実効吸収率及び実効放射率が増加
する原理を説明するための説明図である。
【図4】半球面鏡を参照試料及び測定試料のレーザ照射
側に設置したとき、増加する実効吸収率を示すグラフで
ある。
【図5】半球面鏡を参照試料及び測定試料の裏面に設置
したとき増加する試料裏面の実効放射率を示すグラフで
ある。
【図6】半球面鏡を試料の両側に設置することにより、
実効吸収率及び実効放射率が増加し、放射温度計により
観測される測定信号が改善されることを示すグラフであ
る。
【図7】本発明の効果を確認するために、実際の試料を
持って計った半球面鏡の設置による放射信号の改善効果
を示すグラフである。
【符号の説明】
1 レーザ加熱源 2 レーザビーム 3 ビームスプリッタ 4 パワーメーター 5 反射鏡 6 測定用真空槽 6a レーザ照射側窓 6b 放射測定側窓 7 参照試料及び測定試料 7a 試料表面 7b 試料裏面 8 レーザ照射側半球面鏡 8a レーザ照射口 9 放射温度計側半球面鏡 9a 熱放射測定口 10 放射測定用対物レンズ 11 放射温度計 12 トランジェントメモリ 13 演算装置

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平板状の測定試料の表面にレーザビームを
    照射して加熱し、試料の温度上昇を放射温度計により
    測して比熱容量を測定する方法において、 上記測定試料の表裏両側に対向設置した半球面鏡によ
    り、試料表面に照射されるレーザビームの反射光を再び
    試料表面に戻してレーザビームの吸収率を高め、且つ
    料裏面からの熱放射を多重反射させて試料裏面の実効放
    射率を高め、測定試料の吸収率及び放射率の差による比
    熱容量の測定誤差を低減して、比熱容量を測定する、 ことを特徴とする半球面鏡式比熱容量測定法。
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