JPH10121179A - 耐圧強度低下が少ない炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

耐圧強度低下が少ない炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法

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JPH10121179A
JPH10121179A JP27946296A JP27946296A JPH10121179A JP H10121179 A JPH10121179 A JP H10121179A JP 27946296 A JP27946296 A JP 27946296A JP 27946296 A JP27946296 A JP 27946296A JP H10121179 A JPH10121179 A JP H10121179A
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carbonated beverage
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strength
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Yutaka Kaneda
豊 金田
Tetsuya Hattori
哲也 服部
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルミニウム合金製缶蓋を薄肉高強度化或い
は小径化しても、また缶蓋の成形加工が強加工化して
も、缶蓋の耐圧強度の経時的な低下の少ない炭酸飲料缶
蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法を提供す
る。 【解決手段】 Mg:2.5〜3.5%、Mn:0.5
1〜1.00%、Cu:0.1〜0.5%を含有し、残
部Alおよび不可避的不純物とするとともに、MgとC
uがアルミニウムマトリックス中に固溶している組織と
した炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金、および、この化
学成分のアルミニウム合金に、熱間圧延後特定温度で保
持した後、特定の冷却速度で冷却する焼鈍を施す製造方
法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭酸飲料缶の缶蓋
として使用されるアルミニウム合金板およびその製造方
法に関し、特に蓋材の薄肉高強度化および蓋の小径化に
伴う、成形加工の強加工化によって、成形加工後に経時
的に蓋材の耐圧強度が低下する現象を防止した缶蓋用ア
ルミニウム合金板およびその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】一般に、飲料用アルミニウムDI缶(以
下単にアルミ缶と言う)の缶蓋材に要求される特性とし
ては、シェル(蓋の形状)の成形加工性(絞り加工
性)が優れること、リベットの成形加工(多段張出
し)性が優れること、缶内圧(陽圧)に対する耐圧強
度が優れること、飲料を飲む際の開缶性が優れるこ
と、耐蝕性が優れること等がある。近年、飲料用のア
ルミ缶は、コスト低減のために、缶蓋材の薄肉高強度化
および蓋の小径化が進められる傾向にある。このような
傾向の中で、前記要求特性のうち、特に重要になるの
は、主としてシェル加工性、リベット成形性、耐
圧強度の3点である。
【0003】従来より、これらの特性について、缶蓋材
であるアルミニウム合金板の素材面から改良がなされる
とともに、缶の成形法の面からの向上が図られてきた。
例えば、シェル加工性については、アルミニウム合金
板素材の薄肉高強度化に伴う成形性低下を、成形加工の
面からカバーする方法が、既に実用化されている。ま
た、リベット成形性についても、成形加工の面から、
リベット径やコイニング加工量を調整したり、多段張出
し加工時の工程数増加などにより、向上させることが可
能である。
【0004】更に、耐圧強度についても、同じく成形
加工の面から、シェル加工時にリフォーム加工工程を加
えて2工程化し、このリフォーム加工により、蓋のカウ
ンターシンク部(缶蓋の耐圧強度を増すため、蓋周縁の
巻締部の内側に設ける凹溝)を、更に深く成形すること
により確保することができる。そして、これらの成形法
の改善は、いずれも缶蓋の成形加工の強加工化の方向で
あり、缶蓋材であるアルミニウム合金板にとっては、よ
り厳しい成形加工を受けることにつながる。
【0005】従来から、これら飲料用のアルミ缶蓋材に
使用されるアルミニウム合金板材として、周知の通り、
Al─Mg系のA5052、A5082、A5182等
の合金が使用されている。これらの合金は、飲料用缶の
種類によって各々要求強度が異なっており、適用される
アルミニウム合金が違っている。例えば、果汁、コーヒ
ー等の非炭酸系飲料用には、強度が比較的低いA505
2が使用され、ビールやコーラなどの炭酸系飲料用に
は、強度が比較的高いA5082、或いはA5182等
の合金が使用されている。これらの合金の中でも、特に
A5182合金は、強度が極めて高く成形性にも優れて
いるため、缶蓋を薄肉高強度化する場合に有効な合金と
言える。
【0006】また、このA5182合金の特性を改善し
たアルミニウム合金板材も種々提案されている。例え
ば、特公平3−31779号公報には、A5182合金
などが缶蓋の塗装印刷時のベーキングにおいて軟化し
て、強度が低下するのを防止するために、Mg:2.0
〜5.0%、Mn:0.05〜0.50%、Cu:0.
05〜0.5%を含有し、残部Alおよび不可避的不純
物からなるアルミニウム合金を、熱間および冷間圧延
後、焼鈍して、Mg、Cuを固溶状態とし、塗装印刷時
のベーキングにおいて逆に強度が向上するベークハード
性を付加した、キャンエンド用アルミニウム合金硬質板
が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記缶
蓋の成形加工の強加工化に伴い、従来のA5182合金
などのAl─Mg系アルミニウム合金では、缶蓋のシェ
ル成形後、長期間保管しておくと、耐圧強度が低下して
しまい、飲料用のアルミ缶蓋に必要とされる耐圧強度を
下回ってしまうという、新たな問題が生じてきた。
【0008】この耐圧強度低下の原因は、アルミ缶蓋の
時効軟化現象によるものであり、この時効軟化現象の要
因は、アルミニウム合金中のMgである。より具体的に
は、時効軟化現象のメカニズムは、アルミニウムマトリ
ックス中に固溶し、合金の強度を確保する役割を果たし
ていたMgが、缶蓋の成形加工により、マトリックス中
に拡散および析出して、回復現象(強度低下)を生じる
ことによる。
【0009】また、この時効軟化現象は、Al─Mg系
の合金におけるMg添加量の影響が大きく、Mg添加量
が多いほど、時効軟化現象が大きく、Mg添加量が少な
いほど、時効軟化現象が小さい。したがって、現在缶蓋
材として用いられている、Al─Mg系のA5052、
A5082、A5182等の合金は、特にMgの添加量
を多くして、強度を確保しているため、特に、この時効
軟化現象が生じ易い。
【0010】この時効軟化現象に伴う、耐圧強度低下の
問題は、缶蓋の成形加工の強加工化に伴う、アルミニウ
ム合金素材側の問題であり、しかも、この問題は、アル
ミニウム合金素材の強度を主として確保しているMgに
起因する問題である。それだけに、この経時的な缶蓋の
耐圧強度低下を防止することは、缶蓋を薄肉高強度化を
推進するために、アルミニウム合金素材側で克服すべ
き、重要で、しかも困難な課題となっている。
【0011】そして、この時効軟化現象は、前記アルミ
缶の種類のなかでも、ビールを除いた、コーラやサイダ
ーなどの炭酸系飲料用アルミ缶の場合に、特に問題とな
る。この理由は、これらの缶の内圧が他に比して格段に
高く、それだけ、缶蓋に要求される耐圧強度も高くなる
からである。前記炭酸系飲料用アルミ缶に要求される耐
圧強度基準は、6.3〜7.0kgf/cm2 のレベルであ
り、ビールなどは、炭酸が含まれるものの、他の炭酸系
飲料に比して、炭酸の量が少なく、その耐圧強度基準
は、5.5〜6.2kgf/cm2 のレベルである。
【0012】しかも、前記した通り、時効軟化現象のメ
カニズムは、アルミに固溶していたMgが、缶蓋の成形
加工による加工歪み(応力)により、拡散および析出す
る回復現象であり、この缶蓋の成形加工による加工歪み
は、材料を薄肉化するほど、そして、カウンターシンク
部などに強加工を施すほど顕著になる。この代表例が、
シェル成形後に、缶蓋のカウンターシンク部をリフォー
ムするタイプの加工の場合である。
【0013】従来の代表的な缶蓋用素材であるA518
2合金などのアルミニウム合金の強度には、特に成形性
との兼ね合いで限界があり、最も強度の高いA5182
合金の場合、缶蓋への加工直後の耐圧強度は、6.6〜
7.3kgf/cm2 のレベルである。したがって、A518
2合金などでは、アルミ缶蓋を薄肉高強度化し、しかも
成形加工を、より強加工化した場合に、経時的な耐圧強
度の低下が生じると、必然的に缶蓋の耐圧強度が所定の
耐圧強度を保持できなくなる。
【0014】また、前記特公平3−31779号公報に
記載されたキャンエンド用アルミニウム合金硬質板は、
Mg、Cuを固溶状態とするため、塗装印刷時のベーキ
ングにおける時効軟化現象に対しては、確かに効果があ
る。しかし、化学成分的には、A5182合金と同じく
Mg量が多く、やはりA5182合金と同じ理由で、缶
蓋のシェル成形後の長期間保管により、耐圧強度が低下
してしまう。
【0015】これに対し、時効軟化現象の要因であるM
g量を減らそうとしても、MnやCuなどの強化元素量
が少なく、缶蓋材としての必要な強度が得られず、耐圧
強度自体が不足する結果となる。この点は、A5182
合金などの既存のアルミニウム合金の場合も同じであ
る。
【0016】これら従来技術の問題点に鑑み、本発明
は、アルミニウム合金製缶蓋を薄肉高強度化或いは小径
化しても、またそれに伴い缶蓋の成形加工が強加工化し
ても、缶蓋の耐圧強度の経時的な低下の少ない炭酸飲料
缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明に係る炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金板
は、その化学成分組成を、Mg:2.5〜3.5%、M
n:0.51〜1.00%、Cu:0.1〜0.5%を
含有し、残部Alおよび不可避的不純物とするととも
に、MgとCuがアルミニウムマトリックス中に固溶し
ている組織とする。また、より好ましくは、上記化学成
分の他に、Cr:0.03〜0.25%を含有する。
【0018】アルミニウム合金板の特性上、より好まし
い条件は、缶蓋の耐圧強度低下を保証するため、アルミ
ニウム合金板の耐圧強度の経時的な低下を、缶蓋成形後
3ヵ月で、0.3kgf/cm2 以下とする。缶蓋の経時的な
耐圧強度の低下の程度は、勿論、缶蓋素材強度や組織、
そして成形加工条件、或いは缶の保管状態などに大きく
左右される。しかしながら、A5182合金の缶蓋への
加工直後の耐圧強度(6.6〜7.3kgf/cm2 )と、炭
酸系飲料用アルミ缶に要求される耐圧強度基準(6.3
〜7.0kgf/cm2 )とを比較すると、経時的な耐圧強度
の低下を0.3kgf/cm2 以下にすることができれば、合
金の耐圧強度が低くても(6.6kgf/cm2 でも)、缶の
所定の耐圧強度(6.3kgf/cm2 )を保持できることに
なる。
【0019】また、本発明アルミニウム合金板のより好
ましい用途は、炭酸飲料缶蓋用の中でも、特に、シェル
成形後に、カウンターシンク部をリフォーム加工するタ
イプの缶蓋である。前記した通り、時効軟化現象は、缶
蓋の成形加工による加工歪みが大きいほど顕著になり、
この代表例が前記加工の場合であり、本発明の必要性が
高い。
【0020】更に、上記の目的を達成するための、本発
明に係る炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法
は、上記化学成分組成のアルミニウム合金鋳塊に、45
0〜550℃の温度で均質化処理を施し、その後熱間圧
延を行い、次いで、380〜600℃の温度で保持した
後、100℃/分以上の冷却速度で冷却する焼鈍を施
し、Mg、Mn、Cuをアルミニウムマトリックス中に
固溶させた組織とした後に、冷間圧延を行うことであ
る。
【0021】
【発明の実施の形態】発明者らの知見によれば、この耐
圧強度低下の要因は、前記した通り、Al─Mg系の合
金における時効軟化現象によるものである。アルミニウ
ム材の時効軟化現象による耐圧強度低下が大きい場合、
その材料を用いた蓋の耐圧強度低下は蓋成形時から始ま
り、缶製品として形成された後も、耐圧強度は低下しつ
づけるため、飲料用缶としての耐圧強度を確保すること
が困難となる。
【0022】そして、発明者らは、また、この時効軟化
現象の要因は、Al─Mg系の合金におけるMg添加量
の影響が大きく、Mg添加量が多いほど、時効軟化現象
が大きく、Mg添加量が少ないほど、時効軟化現象が小
さいことを知見した。
【0023】このMg添加量の問題は、缶蓋の成形のや
り方(加工歪みの程度)と深く関連している。即ち、前
記炭酸飲料缶蓋には、塗装印刷(ベーキング)後に、成
形加工(リフォーム加工)が施される。加工前はベーキ
ングが施されているため、強度の経時変化は生じないも
のの、リフォームシェル加工のように強加工を受ける場
合、缶蓋のカウンターシンク部では、比較的大きな加工
歪みが生じる。
【0024】この加工歪みにより、それまでアルミニウ
ムマトリックス中に固溶し、合金の強度を確保する役割
を果たしていたMgが、マトリックス中に拡散および析
出して、回復現象(強度低下)を生じる。この回復現象
は、Mgの固溶量が多い(最も強度の高い)A5182
合金の場合ほど顕著であり、平衡状態になるまで、相当
長期の時間を要するため、蓋を成形後も時間の経過とと
もに耐圧強度の低下が続くこととなる。本発明におい
て、缶蓋の耐圧強度の経時的な低下の基準を、缶蓋成形
後3ヵ月(0.3kgf/cm2 以下)としているのは、この
ためである。
【0025】本発明では、Mgの添加量(固溶量)を減
らして、固溶Mgが、マトリックス中に拡散および析出
して、回復現象(強度低下)を生じる現象を軽減し、耐
時効軟化性に優れるアルミニウム合金とすることを骨子
としている。しかし、Mgは強度確保のための重要添加
元素であり、添加しないわけにはいかない。このため、
本発明ではMgの添加量(固溶量)低減に伴う強度低下
を補うために、Mn、Cu、Crなどの他の強化元素を
加える。
【0026】Mn、Cu、Cr以外にも、強化元素はN
i、Zr等があるが、本発明では、缶蓋に要求される他
の特性、即ち前記シェル加工性(絞り加工性)、リ
ベット成形(多段張出し)性、開缶性、耐蝕性、の
諸特性も優れることが必要であるので、これらの強化元
素を選択した。他の強化元素では、これら特性のいずれ
かを満足させることができない。
【0027】次に、本発明に係る炭酸飲料缶蓋用アルミ
ニウム合金板の化学成分組成について説明する。Mg
は、アルミニウム合金板の強度を向上させ、また耐圧強
度の低下に大きな影響を与える。含有量が2.2%未満
では、缶蓋材としての必要な強度が得られず、耐圧強度
自体が不足する。一方、3.5%を越えると経時的な耐
圧強度低下が大きい。したがって、Mgの含有量は、
2.2〜3.5%の範囲とする。
【0028】Mnも、アルミニウムマトリックス中へ固
溶して、アルミニウム合金板の強度を向上させる。含有
量が0.51%未満では、缶蓋材としての必要な強度が
得られず、耐圧強度自体が不足する。一方、1.00%
を越えると、粗大な晶出物が生成し、アルミニウム合金
板の成形加工性を阻害する。したがって、Mnの含有量
は、0.51〜1.00%の範囲とする。
【0029】Cuも、アルミニウムマトリックス中へ固
溶して、アルミニウム合金板の強度を向上させる。含有
量が0.1%未満では、缶蓋材としての必要な強度が得
られず、耐圧強度自体が不足する。一方、0.5%を越
えると、耐食性が著しく低下する。したがって、Cuの
含有量は、0.1〜0.5%の範囲とする。
【0030】Crも、アルミニウムマトリックス中へ固
溶して、アルミニウム合金板の強度を向上させるので、
更なる強度向上が必要な場合に選択的に添加する。含有
量が0.03%未満では、缶蓋材としての必要な強度が
得られず、耐圧強度自体が不足する。一方、0.25%
を越えると、粗大な晶出物が生成し、アルミニウム合金
板の成形加工性を阻害する。したがって、Crの含有量
は、0.03〜0.25%の範囲とする。
【0031】なお、その他の元素として、アルミニウム
合金中に、アルミ地金やアルミスクラップ(屑)などの
溶解原料中から、主として混入する不純物元素、例え
ば、Si、Fe、Zn、Ti等については、各々Si≦
0.3%、Fe≦0.5%、Zn≦1.0%、Ti≦
0.2%、以下の含有は、アルミニウム合金板の前記特
性に悪影響を及ぼさず、許容される。
【0032】次に、本発明に係る炭酸飲料缶蓋用アルミ
ニウム合金板の製造方法について、説明する。アルミニ
ウム合金鋳塊の均質化温度は、熱間圧延性に大きな影響
を与える。即ち、この均質化温度が450℃未満では、
鋳塊の均質化が不十分となり、熱間圧延時に耳割れを招
く場合がある。一方、550℃の温度を越えて均質化処
理を施すと、バーニング等が発生し表面性状等の不具合
を招く。したがって、均質化処理温度は450〜550
℃の範囲とする。そして、均質化処理を施したアルミニ
ウム合金鋳塊を、常法にて、好ましくは終了温度250
℃以上で熱間圧延を行い、次いで溶体化処理を行う。
【0033】溶体化処理のための熱処理(焼鈍)の保持
温度は、380℃未満では、アルミニウム合金板が充分
に溶体化しない。この溶体化が不十分であると、Mg、
Mn、Cu、Crなどの固溶強化元素が、アルミニウム
マトリックス中へ充分固溶せず、缶蓋材として必要な耐
圧強度が得られないし、缶蓋への成形加工による加工歪
みにより、これら元素がマトリックス中に拡散および析
出して、回復現象(強度低下)を生じ易くなる。一方、
600℃を越える温度ではバーニング等が発生し、表面
性状が悪くなる。したがって、溶体化処理温度は380
〜600℃の範囲とする。
【0034】溶体化処理のための熱処理の保持時間は1
分以内で充分である。保持時間は、アルミニウム合金の
板厚にもよるが、通常の缶蓋材の板厚の範囲であれば、
実体温度が、前記保持温度に到達してから、その温度で
1分以内保持すれば、充分溶体化の効果が得られる。
【0035】次に、溶体化処理のための熱処理の冷却速
度は、Mg、Cuなどの固溶強化元素を、アルミニウム
マトリックス中へ充分固溶させるために重要な条件であ
る。この固溶のためには、100℃/分以上の冷却速度
が必要であり、100℃/分未満の冷却速度では、充分
な容体化の効果が得られず、Mg、Cuなどを充分に固
溶させられず、缶蓋の耐圧強度そのものが不足する。
【0036】なお、前記特公平3−31779号公報の
場合にも、焼鈍により、Mg、Cuを固溶状態としてい
るが、この焼鈍は本発明の熱間圧延後で冷間圧延前の焼
鈍(溶体化処理)ではなく、冷間圧延途中乃至冷間圧延
後の焼鈍である。同公報は、焼鈍前の冷間圧延により、
アルミニウム合金板に駆動歪みを与え、続く焼鈍工程に
おいて、Mg、Cuの固溶の他、微細結晶粒を得て成形
性を改善しようとするものてある。
【0037】しかし、本発明の目的とするMg、Cuを
固溶状態を得ようとすれば、前記特公平3−31779
号公報のような、冷間加工途中乃至冷間圧延後の溶体化
処理焼鈍では不十分となる。また、冷間加工途中の溶体
化処理では、熱間圧延上がりの板厚を薄くした場合に、
パススケジュールの関係上、十分な冷間加工率をかける
ことができず、冷間加工による強度上昇が図れないし、
工程設計が制限される等の問題もある。
【0038】本発明では、熱間圧延直後に容体化処理を
入れているので、熱間圧延上がりの板厚を薄くした場合
でも、その後の冷間圧延率を十分とることができ、強度
の上昇を図ることができ、その分経時劣化の原因となる
Mgの添加量を低減できる利点がある。したがって、本
発明では、熱間圧延後で冷間圧延前に焼鈍(溶体化処
理)を行う必要がある。
【0039】この溶体化処理を施した後、常法により、
冷間圧延を行う。冷間圧延後、強度等の調整する必要が
ある場合は、仕上げ焼鈍を行っても良い。そして、この
種缶蓋材は、通常、冷間圧延後に適当な保管期間を経
て、切り板またはコイル状態で塗装され、塗装焼付処理
(310℃×20分、H38調質処理)が施された後、
缶蓋に成形加工される。
【0040】
【実施例】表1に示す化学成分を有するアルミニウム合
金鋳塊に、510℃の温度で2時間均質化処理を行い、
次いで熱間圧延により2.5mmの板厚とした。この熱
間圧延板を速度300℃/分で加熱し、510℃の温度
で5秒間保持した後、300℃/分の速度で冷却する焼
鈍(溶体化処理)を行った。その後、0.30mmの板
厚まで冷間圧延したアルミニウム合金板に、塗装相当の
熱処理(270℃のオイルバスに20分浸漬)を加え、
製品板とした。この製品板を、缶蓋に成形加工し、更に
リフォーム加工する2工程方式の成形加工によって、カ
ウンターシンク部を有する飲料缶蓋を作成した。
【0041】このように作成した蓋について、加工直後
(加工後30分以内)のものおよび室温で3ヵ月保管し
た蓋の耐圧強度を測定して比較した。更に、加工性を評
価するため、蓋シェル成形時のクビレ、加工割れの評価
(シェル成形性)および多段張出によるリベット成形性
を調査した。アルミニウム合金板の機械的性質を表1
に、蓋の耐圧強度、成形性の評価結果を表2に、各々示
す。
【0042】表2において、No.1〜6は本発明例で
あり、3ヵ月後の耐圧強度低下が少ないと共に、シェル
成形性およびリベット加工性は、従来のA5182合金
の常法による冷延材例(従来例)であるNo.15と同
等の性能を有している。比較例No.7、No.9およ
びNo.11は、各々、Cu、Mn、Mgの含有量が少
なすぎるため、蓋の耐圧強度が不足している。比較例N
o.8およびNo.13は、各々、Cu、Crの含有量
が多すぎるため、材料の強度が高すぎ、シェル成形自体
ができなかった。
【0043】比較例No.10は、Mnの含有量が多す
ぎるため、耐圧強度が高すぎ、耐圧強度低下は少ないも
のの、やはり成形性が著しく低下している。比較例N
o.12は、Mgの含有量が多すぎるため、3ヵ月後の
耐圧強度低下が大きい。また、従来のA5182合金材
を、本発明の製造工程にて製造した比較例No.14
は、Mgの含有量が多すぎ、また従来のA5182合金
の常法による冷延材例であるNo.15と比較して、冷
間圧延量が高く、冷間歪み量が多くなり、時効軟化現象
による強度低下も大きくなり、耐圧強度低下が最も大き
くなっている。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】次に、本発明の焼鈍(溶体化処理)の条件
の意義を確認するため、表1に示すNo.4の化学成分
を有するアルミニウム合金板を、焼鈍(溶体化処理)の
保持温度および冷却速度を変えて製造した。具体的に
は、前記実施例と同じ方法で、2.5mmの熱間圧延板
とし、この熱間圧延板を、保持温度および冷却速度を変
えて溶体化処理(熱処理)を行い、その後、前記実施例
と同じ方法で、0.30mmの板厚まで冷間圧延し、塗
装相当の熱処理を加え、製品板とした。この製品板を、
前記実施例と同じ方法で、缶蓋に成形加工し、飲料缶蓋
を作成した。各々の機械的性質と蓋の耐圧強度を表3に
評価結果を各々示す。
【0047】表3において、比較例Aは、本発明例D、
Eに比して焼鈍の保持温度が低く、Cu、Mgの固溶が
不十分で、蓋の耐圧強度が低いと共に、3ヵ月後の耐圧
強度低下が大きい。比較例BとCは共に、本発明例D、
Eに比して冷却速度が遅く、やはりCu、Mgの固溶が
不十分で、蓋の耐圧強度が低いと共に、3ヵ月後の耐圧
強度低下が大きい。比較例Fは、本発明例D、Eに比し
て、保持温度が高すぎるため、バーニングを起こし、製
造不能であった。これに対し、DとEは共に、本発明例
であり、缶蓋としての必要強度が得られるとともに、3
ヵ月後の耐圧強度低下も少ない。
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る炭酸
飲料缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法は、
アルミ缶蓋を薄肉高強度化乃至小径化しても、缶蓋の耐
圧強度の経時的な低下の少ないアルミニウム合金板を提
供することができる。しかも、従来のアルミニウム合金
板およびその製造方法、ないし缶蓋の成形加工方法を、
大幅に変更することなく、その効果が達成できる点で工
業的な意義は大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 692 C22F 1/00 692A

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg:2.5〜3.5%、Mn:0.5
    1〜1.00%、Cu:0.1〜0.5%を含有し、残
    部Alおよび不可避的不純物からなり、MgとCuがア
    ルミニウムマトリックス中に固溶していることを特徴と
    する耐圧強度低下が少ない炭酸飲料缶蓋用アルミニウム
    合金板。
  2. 【請求項2】 前記化学成分の他に、Cr:0.03〜
    0.25%を含有する請求項1に記載の耐圧強度低下が
    少ない炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金板。
  3. 【請求項3】 缶蓋成形後3ヵ月の耐圧強度低下が0.
    3kgf/cm2 以下である請求項1または2に記載の耐圧強
    度低下が少ない炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金板。
  4. 【請求項4】 前記缶蓋が、シェル成形後に再度リフォ
    ーム加工される缶蓋である請求項1乃至3の、いずれか
    1項に記載の耐圧強度低下が少ない炭酸飲料缶蓋用アル
    ミニウム合金板。
  5. 【請求項5】 Mg:2.5〜3.5%、Mn:0.5
    1〜1.00%、Cu:0.1〜0.5%を含有し、残
    部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金
    鋳塊に、450〜550℃の温度で均質化処理を施し、
    その後熱間圧延を行い、次いで、380〜600℃の温
    度で保持した後、100℃/分以上の冷却速度で冷却す
    る焼鈍を施し、MgとCuをアルミニウムマトリックス
    中に固溶させた後、冷間圧延を行うことを特徴とする耐
    圧強度低下が少ない炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金板
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記化学成分の他に、Cr:0.03〜
    0.25%を含有する請求項5に記載の耐圧強度低下が
    少ない炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法。
  7. 【請求項7】 缶蓋成形後3ヵ月の耐圧強度低下が0.
    3kgf/cm2 以下である請求項5または6に記載の耐圧強
    度低下が少ない炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金板の製
    造方法。
  8. 【請求項8】 前記缶蓋が、シェル成形後に再度リフォ
    ーム加工される缶蓋である請求項5乃至7の、いずれか
    1項に記載の耐圧強度低下が少ない炭酸飲料缶蓋用アル
    ミニウム合金板の製造方法。
JP27946296A 1996-10-22 1996-10-22 耐圧強度低下が少ない炭酸飲料缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法 Withdrawn JPH10121179A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004001085A1 (en) * 2002-06-19 2003-12-31 Alcan International Ltd. Methodof producing formable aluminium alloys
US6802197B2 (en) 2002-01-09 2004-10-12 Barrera Maria Eugenia Process for manufacturing a high strength container, particularly an aerosol container, and the container obtained through such process
JP2006152371A (ja) * 2004-11-29 2006-06-15 Furukawa Sky Kk 鋳造割れ性に優れた食缶用アルミニウム合金

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WO2004001085A1 (en) * 2002-06-19 2003-12-31 Alcan International Ltd. Methodof producing formable aluminium alloys
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