JPH10117515A - 板状植生マット - Google Patents

板状植生マット

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JPH10117515A
JPH10117515A JP27952996A JP27952996A JPH10117515A JP H10117515 A JPH10117515 A JP H10117515A JP 27952996 A JP27952996 A JP 27952996A JP 27952996 A JP27952996 A JP 27952996A JP H10117515 A JPH10117515 A JP H10117515A
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seeds
mat
vegetation
soil
plate
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JP27952996A
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Yoshihiro Nishiyama
嘉寛 西山
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Okayama Prefectural Government
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  • Pretreatment Of Seeds And Plants (AREA)
  • Pit Excavations, Shoring, Fill Or Stabilisation Of Slopes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 乾燥に弱い木本種子に対応させて、乾燥に強
い木本種子や草本種子をも混在させることにより、人工
的に自然の混植状態に近い緑化を可能にすることができ
るとともに、平地のみならず法面においても簡単に設置
することができる緑化植生材を提供すること。 【解決手段】 木本種子又は木本種子を含む種子類を、
土壌と繊維質及び展着剤からなる培地に混合し、微生物
分解性シートで被覆して板状に成形した、板状植生マッ
トとした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平地のみならず山
地等の法面の植生緑化にも使用できる板状の植生マット
に関する。さらに詳しくは、乾燥に弱い木本種子の植生
に好適であるのに加えて、乾燥に強い木本又は草本種子
をも混在させることにより、人工的に自然の混植状態に
近い緑化を可能にすることができる板状の植生マットに
関する。
【0002】
【従来の技術】従来の緑化用植生材は、乾燥しても発芽
能力の高いアカマツ、ヤシャブシ類、ハギ類等の木本種
子や、イタドリ、ヨモギ、牧草類の草本種子といった細
粒種子を使用している。そのため、製品の培地に水分を
含ませる必要がなく、場合によっては紙に上記種子を貼
り付けただけのものも見られる。
【0003】例えば、培地に土壌を使用した緑化用植生
材としては、軽量のバーミキュライトにハギ類等の乾燥
種子を混ぜ、棒状の糸入り有機紙袋内に入れた製品があ
る。また、培地に土壌を使用しない緑化用植生材として
は、有機紙に牧草類の種子、肥料等を貼り付け、袋状に
した製品がある。これは一般に植生土嚢と称されるもの
で、法面緑化等に使用されている。
【0004】このほか、植生袋付の植生マットと肥料基
袋をネットに取り付けて法面の緑化に使用されている緑
化用植生材もある。この製品では、種子にハギ類の木本
類やヨモギ、牧草といった草本類の乾燥に強い種子が使
用されている。
【0005】一方、法面の緑化方法としては、近年は種
子吹き付け法が主流になっていた。ただ、現在のところ
では前述のような乾燥に強い細粒種子を用いた緑化が主
流であり、乾燥に弱い種子や大粒の種子を使用した種子
吹き付け法については、その試みが一部で始まったばか
りである。なお、種子吹き付け法では、吹き付けた種子
が雨等により流れるのを防止するために展着剤としてポ
リ酢酸ビニル、水溶性ポリウレタンを使用している例が
公知である(特開昭49-91827号、特開昭50-141754号)。
【0006】また、従来から行われている緑化方法とし
て苗木を用いる方法もある。この方法では、ポット苗や
苗床である程度まで育成した苗を目的地に直接植栽して
緑化を図ることになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように様々な緑
化方法があるが、とくに苗の植栽が困難な法面や山火事
等の被災地において乾燥に弱い種子を用いて緑化を行う
場合には、従来は前述の種子吹き付け法や種子を直接播
く播種法により行っていた。種子の吹き付け法は効果的
な緑化方法の一つではあるが、何種類もの種子の大きさ
(厚み)に対応した施工は難しいこと、展着剤が自然界に
存在しない人工的な材料であること、土壌及び種子が流
れること、等の問題を含んでいる。また、播種法の場合
には、施工者や作業の方法によって成否が大きく左右さ
れること、播種後に表土の流出等を抑制する作業が必要
であること、吹き付け方法と同様に何種類もの種子の大
きさ(厚み)に応じた覆土が必要になること、法面(切り
土面)にはほとんど利用できないこと、等の問題があ
る。
【0008】このように検討していくと、とくに法面等
における緑化には、種子を培地に混入したり紙に貼着し
たりした、前述の如き緑化用植生材が有用であると考え
られるのであるが、緑化用植生材を用いる場合には、次
のような点に配慮する必要がある。すなわち、乾燥に強
い種子は小粒で種子の厚みも1mm未満のものがほとんで
あるため、例えばマット状の緑化用製品とした場合でも
マットの厚みは問題とならないし、種子自体の乾燥を考
慮する必要もないが、乾燥に弱い種子は、小粒径のもの
から大粒径のものまで種子の大きさがまちまちであるし
(具体的には種子の厚みに1mm弱〜15mm程度の幅があ
る)、種子自体の乾燥にも配慮する必要があるのであ
る。とりわけ、種子を埋める深さは種子の厚み分程度が
適当であることから、マット自体の厚みは種子の厚さの
倍程度を必要とするところ、ドングリ等の大粒の種子を
使用する場合には、植生材となるマットに一定の厚みが
必要となる。
【0009】したがって、乾燥に弱い種子にも対応した
植生材とするためには、紙に種子を貼り付けた形態は選
択し得えず、一定の厚みをもたせたマット状とすること
が必要となるのに加えて、一定の厚みが要求される植
生マットをすべて土壌で構成するとマット重量が重くな
るため他の材料を加えて軽量化を図ること、マット内
の種子が動かないようにすること、水分を保持できる
こと、マットを板(盤)状にした時にバラバラにならな
いこと、種子の腐敗を抑制すること、等の条件を満た
した緑化用植生材とする必要がある。
【0010】とくに、従来の緑化用植生材に用いられて
いる種子は、木本類又は草本類の特定の種類のものに限
定されており、乾燥に弱い木本類の種子については緑化
用植生材にはほとんど用いられていないのが現状であ
る。木本類の種子は、乾燥に弱い種子と乾燥に強い種子
とに大別されるのであるが、乾燥に弱い樹種の方が乾燥
に強い樹種よりもはるかに種類が多いために、乾燥に強
い樹種のみを用いたのでは自然修景に合った緑化を行う
ことは難しい。また、従来の製品は早期緑化に主眼を置
くものであり、牧草等の草本類による緑化が主であった
ため、緑化施工地における郷土樹種の外部からの侵入が
3年以上も遅れる弊害がある一方、牧草による緑化では
施工後3年程度経過した時点で衰退することがよくみら
れる。したがって、乾燥に弱い樹種にも対応できる緑化
用植生材とする必要があった。
【0011】
【課題解決のための手段】本発明では、以上のような課
題を解決するために、木本種子又は木本種子を含む種子
類を土壌と繊維質及び展着剤からなる培地に混合し、微
生物分解性シートで被覆した後、板状に成形してなる板
状植生マットとした。
【0012】ここで、木本種子のうち乾燥に弱いものと
しては、ドングリ類のコナラ、シラカシ、ウバメガシ、
クリ、ヤブツバキ、イチョウなど大粒径の種子から、細
粒のヤマザクラ、ヒサカキ等が挙げられる。本発明の板
状植生マットは、特にこれらの種子の発芽率を高めるの
に有効であるが、乾燥に強い樹種であるキリ等や、イタ
ドリ、ジューングラス(牧草)、クローバー類の草本類と
の混植をするのにも適している。
【0013】土壌としては、マサ土、パーライト、鹿沼
土など園芸用土一般が用いられ、これらと砂、パーク堆
肥、鶏糞、牛糞、油カス、化成肥料を適宜混合して用い
る。繊維質としては、切ワラ、ピートモス、乾燥牧草、
砂糖キビの絞りかすのチップなど各種の天然繊維質が利
用できる。
【0014】展着剤としては、各種の水溶性糊料が用い
られ、フノリ、アラビアゴム、ニカワ、澱粉、変性澱粉
のほか比較的自然崩壊しやすい合成糊料としてのポリビ
ニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダなども使用でき
るが、とりわけ自然環境に悪影響を及ぼさないフノリが
最適である。
【0015】微生物分解性シートとしては、耐水性も備
えた油紙、ポリエチレンやポリプロピレン中に澱粉を混
合して得られたシート若しくはこのようなシートから得
られたフラットヤーンを用いたワリ布やメッシュクロ
ス、さらにはこれらシートから得られたスプリットヤー
ンを用いた短繊維不織布、レーヨン不織布のような微生
物分解性不織布などが好適に用いられる。
【0016】以上の各配合物や資材を適宜組合せて本発
明の板状植生マットとするのであるが、特に前記課題中
で指摘した〜の条件を満たすものとしては、乾燥に
弱いコナラ、ウバメガシ、シラカシ、ヤマザクラ、クリ
等の木本種子又はこれを含む他の木本種子と草本種子の
混合種子を土壌と切ワラ及びフノリからなる培地に混合
し、油紙で被覆した後、板状に成形した板状植生マット
とするのがよい。
【0017】本発明に係る板状植生マットの大きさや厚
みは、混入する種子の大きさや緑化施工条件、作業効率
等を考慮して適宜決定されるが、通常は20×30cmの大き
さで10〜30mmの厚みの範囲が好ましい。この板状植生マ
ットは、含水状態で低温保存すると、種子が低温刺激を
受け、緑化施工地における発芽率が向上する。
【0018】ここで、本発明に係る板状植生マットの展
着剤としては、自然にやさしい材料であるフノリに注目
した。フノリは展着剤(ノリ)としての利用が容易なこ
と、ミネラルが含まれている等の利点を有しており、上
記の、、、の条件を満たすものである。ただし
、、の条件をより十分に満たすためには、フノリ
以外のつなぎとして繊維質のものを混入することが必要
である。
【0019】そこで、フノリに加えて切ワラをも使用す
るとよい。切ワラは有機物繊維であるため、つなぎとし
て有効であるとともに肥料としても活用でき、また、自
然にやさしい材料である。水分保持の条件を満たすも
のとして、切ワラをマット表面にもマルチングとして使
用するとよい。これは、主に降雨による雨滴衝撃による
表面の洗掘を防ぐ意味もある。
【0020】さらに、本発明に係る板状植生マットの水
分を保持する目的で、フノリ、切ワラに加えて植生マッ
トの被覆用(包装用)に油紙を使用した。油紙をそのまま
使用すると、余分な水分が植生マットから逃げないため
に、逆に植生マット自体が過湿状態になり、雑菌の繁殖
や種子の腐敗が進行する弊害を招く。そこで、油紙に径
6mmの穴を全表面積の3割程度にあけたところ、水分状
態の均衡を保つことができた。植生マットの製作時には
マット自体が過湿状態となっているため、有機紙や布等
のラップ資材では水分を含んでしまって使用できなくな
るところであるが、油紙では水をはじくため、変質等の
心配がない。
【0021】種子の腐敗を抑制するためには、植生マ
ット製作以後のマットの保存方法が問題となる。すなわ
ち、植生マット製作時は、マットが水分(フノリも含ま
れる)を多く含んでおり柔らかいため、種子にとっては
過湿状態となっている。過湿状態のまま放置すると雑菌
の繁殖が顕著となることから、フノリ等により展着剤を
作る際、土と展着剤を混ぜる際、種子を混入する際等に
種子消毒用の殺菌剤を植生マットに混入することによ
り、雑菌の繁殖を抑え、発芽率を向上させる必要性があ
った。このように種子消毒用の殺菌剤(チラム水和剤、
ベンレート水和剤)を植生マットに混入することで、種
子の腐敗抑制効果が認められた。同時に、植生マットの
製作から数日間は、マットを自然乾燥させて、余分な水
分を飛ばすことにより、水分保持の条件を助けるとと
もに植生マットの以後の保存が可能となった。
【0022】以上のように、植生マットを構成すること
によって、低温貯蔵(5℃以下)では2、3カ月、常温で
も1カ月程度植生マットを保存した後においても種子の
発芽を期待できる。保水剤を使用すれば、さらに植生マ
ットの保存期間を延ばすことができる。
【0023】すなわち、本発明では、従来の乾燥に強い
草本・木本種子は当然として、これら以外の従来では不
可能と考えられていたドングリ等の大粒種子や、小粒種
子で乾燥にきわめて弱い種子についても、一定の水分を
保った培地内に入れ、これを微生物分解性シートでラッ
プして固めた緑化植生製品とすることで容易に発芽させ
ることができるので、緑化施工地の環境や美観により一
層配慮した種子の広範な選択が可能となった。例えば、
山火事が多発する岡山県南部の寡雨地帯では、その周囲
にある自然植生に含まれる樹種(郷土樹種)や防火樹とし
て有用な樹種、土砂流出を抑止する草本類の種子を使用
することができるし、岡山県中部の常緑、落葉樹林帯で
はドングリ等の大粒種子を主に配した樹種選択が可能と
なり、また岡山県北部の落葉樹を主とする地域では落葉
樹を主とした樹種選択が可能となるといったように、そ
の地域の特性に適合した樹種・草種を選択することがで
き、その結果として、将来的に理想的な森林又は群落を
形成させることができるのである。
【0024】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る板状植生マ
ットを詳細に説明する。
【0025】まず、板状植生マットの製作手順を図1の
フローチャートに従って説明する。
【0026】工程1では、展着剤を調製する。この実施
例で展着剤として使用したのはフノリである。フノリを
煮たものは、古くは白壁等を作るのに生石灰と混ぜて使
用されていた。まず、種子消毒用殺菌剤を溶いた水でフ
ノリを煮た。フノリが溶け、全体がノリ状になったこ
ろ、火から下ろし、煮沸したフノリ溶液の温度が常温に
なるまで置く。現在では粉末状のフノリ(水溶性)も市販
されており、これでも代用することができる。従来から
公知の展着剤であるポリ酢酸ビニル、水溶性ポリウレタ
ンなどは乾燥すると固くなり、一旦固化すると以後は水
を加えても柔らかくならないため、種子の発芽生育に問
題が生じ、植生マットの展着剤としては好ましくなかっ
た。
【0027】工程2では、マサ土、バーク堆肥、パーラ
イト、鹿沼土から培地を調製し、植生マットを成形する
ための型枠と、マットを被覆するラップ紙とを用意す
る。完成した植生マットは一定期間濡れた状態にあるこ
とから、ラップ紙には、水をはじくものとして油紙を用
いた。このラップ紙には、前もって全表面積の約1/3程
度に穴(6mm径程度)をあけておく。一方、型枠としては
プラスチック製容器(バット)を用いればよい。油紙を型
枠内に敷き、その上に展着剤と培地、さらにマット自体
に強度をもたすために繊維質のものとして切ワラ等を入
れる。このように培地、展着剤、繊維質のものを直接型
枠内に入れるのではなく、別な容量の大きい容器内でこ
れらをよく撹拌してから必要分だけ型枠に移してもよ
い。この場合はミキサーを使用して省力化を図ることが
できる。いずれの場合も、種子消毒用の殺菌剤を入れて
撹拌するか、表面に散布するのが望ましい。
【0028】工程3では、植生マットに種子を入れる。
コナラ、ウバメガシ、シラカシといった大粒径の種子
(ドングリ)の場合は深めに埋める。逆に、ヤマザクラ、
イタドリ、キリ、牧草類といった細粒系の種子の場合
は、表面に近い部分に埋める。このように、種子を埋め
込む深さ(覆土の厚さ)は、種子の厚みを目安にして調節
する。細粒種子の場合、表面近くの浅いところに入れる
ことから、種子を入れた後で薄く覆土してやるとよい。
【0029】工程4では、緑化施工地に設置した植生マ
ットの表面が降雨による雨滴衝撃で洗掘されたり流亡す
るのを防ぐ意味から、マットの表面を切ワラ等でマルチ
ングする。使用する切ワラは長さ1cm程度のものでよ
い。切ワラは古くから播種床の表面マルチングに使用さ
れていたこと、及び有機質であることから肥料としても
有効な素材である。切りワラの代わりに使用済みの古紙
(新聞紙)を小さく裁断したものを表面にマルチングして
もよい。なお、場合によっては切ワラ等によるマルチン
グの前に、表面に種子消毒用の殺菌剤を散布してもよ
い。
【0030】工程5では、マットを穴開きの油紙で被覆
(ラップ)する。このラップ紙は、ステープラーやテー
プを用いて十分に固定できる。植生マットを法面等に施
工する場合には別途にネットが必要になることから、工
程2の段階でラップ紙の上にさらに同面積のネット(例
えば格子状1cmメッシュ)を置いておき、工程5のラッ
プ時にネット、ラップ紙の順番に固定してもよい。な
お、植生マットを緑化施工地に設置する際には、必要に
応じて表面の油紙を取り除けばよい。
【0031】工程6では、マットを固める作業を行う。
工程5でラップしたマットを再度型枠内に入れ、上から
荷重をかけて一定期間(1週間程度)置く。常温、低温
(摂氏5度以下)いずれの場合でも、マットが湿っている
ので固まるまでには日数を要する。このため、日陰干し
等を行い、余分な水分を除くようにする。
【0032】以上の工程にしたがって、各種の植生マッ
トを平成7年1〜3月にかけて製作した。製作した植生
マットの大きさは、縦長28cm、横長19cm、厚さ1.5〜2.5
cmの範囲である。大粒径の種子(コナラ、シラカシ、ウ
バメガシ等)では種子の厚みが数mm〜1cm程度あり、と
くにクリは1.5cm程度の厚みがあることから、植生マッ
トの厚みはこの程度必要であった。製作した植生マット
に使用した種子は、コナラ、シラカシ、ウバメガシ(以
上ドングリ類)、クリ(外果皮に包まれたもの)、ヤブツ
バキ、イチョウ(殻果に包まれた種子)、細粒のヤマザク
ラ、ヒサカキ等の木本類の乾燥に弱い樹種の種子と、乾
燥に強く種子が細粒のキリ(木本類)、イタドリ、ジュー
ングラス(牧草)、ホワイトクローバー(クローバー類)の
草本類である。乾燥に弱い大粒径種子は湿ったオガ(含
水率約50%)に混ぜ、ヤマザクラ、ヒサカキではポリエ
チレン袋内に入れて大型低温貯蔵庫(摂氏5度以下)で前
年より貯蔵しておいたものを、乾燥に強い種子はポリエ
チレン袋内に入れ、同様に貯蔵しておいたものを、それ
ぞれ使用した。
【0033】培地には、マサ土、バーク堆肥、パーライ
ト、鹿沼土を各45、45、5、5%の割合で配合したもの
を使用した。展着剤には煮沸用のフノリを使用し、水10
Lに対してフノリ500gの割合で混ぜて煮た溶液を約350
〜450cc使用した。培地に含まれている水分と合わせる
と、全重量の約半分が水分であり、マットの含水率(マ
ット全重量に占める水分量)は約50%程度になった。接
着強度を増すため、フノリとともに一部に細かく裁断し
た紙を使用、そのほかでは切ワラを中心に使用した。種
子消毒用の殺菌剤(チラム、ベンレート水和剤)は、その
大部分をフノリに混ぜて使用したため、量としては微量
(2g未満)である。マルチングは一部切紙のほかはすべ
て切ワラである。切ワラの使用量は、培地に混入したも
のとマルチングに使用したものとを合わせると50〜100
gである。1マット当たりの重量は1,200〜1,600gとな
った。製作した植生マットの詳細を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】このように製作した植生マットに対して実
験を行った。平成7年1月製作分のマットは、常温で7
〜8日、その後低温(摂氏5度以下)で20日、さらに常温
で35日の3段階で保存した場合と、常温で7〜8日、そ
の後低温で55日の2段階で保存した場合とに分けて実験
を行った。2月製作分のマットは、いずれも常温で13〜
14日置いて乾燥させた後、低温で14〜36日保存した場合
と、常温で14日保存した場合とに分けた。3月製作分の
マットは、常温で4〜55日保存した場合と、常温で49〜
55日保存し、さらに低温で58日保存した場合とに分け
た。常温又は低温保存について、保存期間(日数)と含水
比(%)の関係を図2(a)〜(c)に示すが、この結果より、
1月(a)、2月(b)、3月(c)のすべてにおいて、このよ
うな寒冷期であっても低温保存を行った方が水分保持す
る方法としては有効であることが判明した。
【0036】平成7年1〜3月に製作した上記の植生マ
ットについて、岡山県林業試験場内で発芽率の調査を行
った。マットの設置は同年3月6日〜7月12日である。
設置場所は温室内、屋外の2箇所である。屋内の場合
は、鹿沼土を幅80cm、高さ約40cmにわたって入れたベン
チを利用し、ここにマットの厚さ分だけ埋め込んだ。表
面の油紙は、これを取り除いた場合と装着したままの場
合とに分けた。加温は行っていないが、温室内は屋外よ
り2〜3℃気温が高い。マットを設置後、3日置きに約
10mm散水した。他方、屋外は埋立、転圧、整地されてお
り、固い地盤である。その表面を数mm削り、マットを設
置した。温室内と異なり、水の散布は行わず自然状態に
まかせた。
【0037】これらの植生マットに使用した種子はコナ
ラ、シラカシ、ウバメガシ(以上ドングリ類)、ヤマザク
ラ、イチョウ、ヤブツバキ(殻に包まれたもの)、ヒサカ
キといった木本類で種子自体が非常に乾燥に弱い種子
と、キリ(木本類)、イタドリ、ジューングラス(牧草)、
ホワイトクローバーのように乾燥に強い種子である。シ
ラカシ、イチョウ、ウバメガシは林業試験場内に植栽さ
れており、ヤマザクラ、コナラ、クリ、キリは岡山県北
部に分布していることから使用した。これらの樹種別の
発芽結果を表2に示す。なお、発芽前種子の生存率は、
いずれもほぼ100%であった。
【0038】
【表2】
【0039】乾燥に弱い種子であるコナラ、シラカシ、
ウバメガシ、ヤマザクラ、クリであっても、植生マット
に入れた場合は一定期間の発芽を十分期待できることが
判明した。とくに、コナラ、クリ、シラカシでは発芽率
が60%以上みられた。含水比(%)と発芽率(%)の関係を
図3に示すが、これからみると、含水比が60%以上あれ
ば、発芽率の低下を防ぐことができることが明らかにな
った。保存期間と含水比の関係(前述の図2)から、本発
明に係る植生マットは、常温で約1カ月、低温(5℃以
下)で約2カ月間は保存可能であることが明らかになっ
た。
【0040】発芽・成長状態を目視観察したところ、平
成7年1月製作分ではイタドリ、2月製作分ではジュー
ングラス、3月製作分ではホワイトクローバー等の草本
類が木本類に混じって地表部を覆っており、土砂流出等
による侵食防止の点でも有効である。また、ジューング
ラスやホワイトクローバーが地表部を覆ったことによる
木本類の枯損現象はあまりみられないことから、これら
牧草類と木本類の種子を混合して植生マットへ使用する
ことは十分に可能であることが判明した。
【0041】植生マットからの発芽状況からみて、植生
マットの有効使用期間は、種子結実時期から4月までで
あると考えられる。ただし、コナラ、シラカシ、クリで
は7月に設置した植生マットでも60%以上の高い発芽率
を記録したことから、一部の種子については4月以降も
使用可能であると考えられる。マットの設置方法として
温室、屋外にそれぞれ設置した方法、さらにマットの下
部に根が入らないシートを設けることにより、一定期間
手元で育てて時期に応じて施工目的地に供給する方法も
有望である。
【0042】以下に、現場設置事例として、岡山県玉野
市王子ケ岳の玉野市有林内に平成6年11月に設定した試
験地での植生結果について説明する。同地は平成6年8
月11日の大規模火災により被災したが、今回の植生マッ
トの設置はこの被災跡地の緑化を目的としたものであ
る。試験地の標高は115〜135m、斜面方位は北東向き、
傾斜は35〜40゜、尾根筋にある面積200m2の被災地であ
る。土壌は花崗岩質で、土壌型Im−β型(粗粒残積性未
熟土壌)の、肥力に乏しい土壌である。試験地における
植生マットの配置を図4に示す。
【0043】試験地に植生マットを設置するに際して
は、焼死したアカマツ、ウバメガシ、コバノミツバツツ
ジを取り除いた。さらに、設置場所の傾斜が大きいこと
から、階段状に斜面を切って水平部分を設けた。階段と
階段の高さは20〜60cm、水平部分の幅は約25〜30cmであ
る。
【0044】使用した植生マットは、平成7年1月12〜
13日にかけて製作した縦28cm、横19cm、厚さ1.5cm、重
量約1,300gのものである。使用種子は、コナラ、シラ
カシ、ウバメガシ(以上、ドングリと呼ばれる大粒種
子)、ヤマザクラ、ヒサカキ(細粒種子)、イチョウ、ヤ
ブツバキ(殻に包まれたもの)といった木本種子で乾燥に
弱い種子とキリ(木本)、イタドリ(草本)のように乾燥に
強い種子である。シラカシ、イチョウは周囲に自生して
はいないが、防火樹として使用した。ヤマザクラ、コナ
ラ、ウバメガシ、ヤブツバキ、キリ、ヒサカキ、イタド
リは岡山県南部に広く自生していることから用いた。
【0045】植生マットの設置は、平成7年1月18〜19
日にかけて行った。植生マットの形状や使用種子の詳細
を表3に示す。設置する際、マット表面の油紙を取り除
き、マットの厚さ分だけ地中に埋め込み、竹串(長さ15c
m)でマットの4隅を固定した。設置した植生マットの半
数には、長さ30cmの横長のポリエチレン袋(1mm径の穴
を多数設けたもの)に鶏糞を約300g詰めた肥料袋をマッ
トの上側(山側)に埋め込んだ。肥料袋の設置は、植生マ
ットと同様に竹串で2箇所を固定することにより行っ
た。
【0046】
【表3】
【0047】イチョウ、ヤブツバキ等の殻に包まれた種
子は鳥類による食害の影響により、また、シラカシの場
合はもともと種子の発芽率が低かったため、いずれも発
芽率が低い傾向がみられたが、それ以外の樹種では、コ
ナラで60%以上、ウバメガシで40%以上、ヤマザクラで
20%近い発芽率がみられた。これの3樹種の発芽率は先
の岡山林業試験場における試験結果と同程度であった。
試験場における発芽率と比較した玉野市試験地における
発芽率を表4に示す。
【0048】
【表4】
【0049】樹種別の生育状態は表5に示すとおりであ
り、平成8年6月の段階では更に成長し、キリ、ヤマザ
クラ(木本)、イタドリ(草本)が上層を占めている。キ
リ、ヤマザクラは樹高70cm、キリ、イタドリでは草高50
cm程度までとなっている。中層はコナラが占めている。
下層にはヤブツバキ、ウバメガシ、シラカシ、イチョウ
等がみられる。ヒサカキも一部のマットにおいて発芽、
生存が確認された。
【0050】
【表5】
【0051】玉野市の試験地は、林業試験場内に比べて
降水量が少なく、かつ肥力に乏しいせき悪地であるため
に1年以上経過した平成8年5月末の生存状況は林業試
験場内結果と比べて生存率が低下する傾向がみられた
が、イチョウ、シラカシ以外の岡山県南部に分布してい
る樹種やイタドリの場合には80%以上の生存が確認され
た。この結果からみると、1月に製作した植生マット
は、岡山県南部のせき悪地でも利用可能であると考えら
れる。
【0052】最後に、本発明に係る板状植生マットの法
面における設置事例について説明する。試験地は、岡山
県林業試験場内にある法面である。標高110m、土壌は
BD(d)である。法面は、切土、方位S、層位B層、勾
配51゜、土壌硬度14mmである。法面は、切土、方位
W、層位C層(基岩)、勾配41゜、土壌硬度23mmである。
法面は、切土、方位N、層位C層(基岩)、勾配47゜、
土壌硬度22mmである。この法面は、斜面上部から下部
にかけて土壌が落下して下部では堆積していることか
ら、3カ所の中では最も条件がよい。
【0053】試験地に植生マットを設置するに際して、
の箇所では法面に手を加えていない。、の場合
は、切土ではあるが、表面をマットの厚み程度に削りと
った。
【0054】使用した植生マットは平成7年3月17〜23
日に製造した(A),(B)の2種類である。両マットと
も、製作時から常温で1カ月以上保存していたものであ
り、マットの含水比はともに60%台である。使用種子
は、コナラ、シラカシ、ウバメガシ(以上ドングリ類)、
ヤマザクラ、イチョウ(殻に包まれたもの)といった非常
に乾燥に弱い種子とジューングラス(牧草)、ホワイトク
ローバーのように乾燥に強い種子である。シラカシ、イ
チョウ、ウバメガシは林業試験場内に植栽されており、
ヤマザクラ、コナラ、クリは岡山県北部に分布してい
る。これら植生マットの形状や使用種子等の詳細を表6
に示す。
【0055】
【表6】
【0056】植生マットの設置は、平成7年4月27日に
行った。試験地に植生マットを設置するに際して、法面
の箇所ではマットを法面に張り付ける方法をとった。
そのため、マットの設置時にマット表面の油紙を取り去
り、ビニール製のネットをマットに取り付けた。ビニー
ルネットは太さ1mm程度の細紐を格子状に組んだもの
で、約12mm程度の隙間がある。植生マット1枚当たり4
箇所程度に釘(12〜15cm)を打ち込むことにより法面にマ
ットを固定した。法面及びの場合、切土であるが、
各表面をマットの厚み程度削り取り、ここに法面と同
様な方法で植生マットを固定した。各法面における発芽
率を表7に示す。
【0057】
【表7】
【0058】ヤマザクラを除き、発芽率はコナラで50%
以上、シラカシで40〜60%、ウバメガシで35%、クリで
60〜70%に達した。この結果から、板状植生マットにし
た場合、法面でも高い発芽率を期待できることが判明し
た。
【0059】更に、平成8年6月時点で、法面、で
はウバメガシ、コナラを中心に成長がみられた。法面
は平成8年度末に工事により消滅してしまったが、法面
又はより条件がよいので、消滅していなければこれ
らと同等以上の生育があったものと推測される。平成7
年12月末時点での発芽・生存率は表8に示すとおりであ
り、法面ではクリで60%、シラカシで50%にまで低下
したが、それ以外の樹種では80%以上の発芽・生存が確
認された。法面及びでは、すべての樹種で発芽・生
存率が80%以上に達していた。
【0060】
【表8】
【0061】
【発明の効果】本発明に係る板状植生マットによれば、
一定の湿った状態でマット中に水分を保持することがで
きるため、従来は緑化用製品として使用されていなかっ
た乾燥に弱い種子をも取り入れて一定期間保存すること
が可能となり、その発芽を期待できる。そして、本発明
に係る板状植生マットでは、乾燥に弱い種子と強い種子
とを混ぜて使用することができるので、緑化したい樹種
や草種の選択の幅が広がり、緑化施工地周囲の自然植生
に合わせた種子の選択が可能となり、限りなく自然修景
にあった緑化ができるようになる。とくに、草本類と木
本類とを併用することにより、草本類による地表部の早
期緑化を図るとともに郷土樹種のような将来森林を主に
構成する樹種を同時に生育させることができる。
【0062】また、本発明に係る板状植生マットでは、
板状であることから平地のみならず法面においても設置
が極めて容易であり、土砂流出の抑止力が高く、自然災
害の跡地(山火事、崩壊地)等において面的な緑化が可能
となるほか、マット中に含める種子量を調整することで
生育本数を調整できること、さらには、ほとんど自然界
で分解される素材を使用しているゆえに環境にやさしい
エコロジー製品となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】板状植生マットの製作工程を示すフローチャー
トである。
【図2】板状植生マットの保存期間と含水比の関係を示
すグラフであり、(a)は1月、(b)は2月、(c)は3月に
製作したものを示す。
【図3】マット中の含水比と発芽率の関係を示す木本種
子別のグラフである。
【図4】板状植生マットの設置試験地の略平面図であ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 木本種子又は木本種子を含む種子類を、
    土壌と繊維質及び展着剤からなる培地に混合し、微生物
    分解性シートで被覆した後、板状に成形してなる板状植
    生マット。
  2. 【請求項2】 乾燥に弱いコナラ、ウバメガシ、シラカ
    シ、ヤマザクラ、クリ等の木本種子又はこれを含む他の
    木本種子と草本種子の混合種子を土壌と切ワラ及びフノ
    リからなる培地に混合し、穴あきの油紙で被覆した後、
    板状に成形してなる板状植生マット。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010284083A (ja) * 2009-06-09 2010-12-24 Tankatsu:Kk 無土壌面樹木植栽緑化工法
CN104871679A (zh) * 2015-05-08 2015-09-02 福建省林业科学研究院 一种福建山樱花种子均衡打破休眠及芽苗培育方法

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