JPH10114648A - 皮膚外用組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】経皮吸収性あるいは化学安定性等が良好で、優
れた抗ざそう性を有し、且つ副作用が少なく、人体に対
する安全性の高い尋常性ざそうの予防および治療に用い
られる皮膚外用組成物を提供する。 【解決手段】総炭素数が２０〜２５のテルペンアルコー
ルの少なくとも一種を、尋常性ざそうの予防および治療
に当てられる皮膚外用組成物の有効成分として使用す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、美容および皮膚薬
理学の領域において、皮膚の変調、特に尋常性ざそうの
予防および治療に用いられる皮膚外用組成物に関する。

【０００２】

【従来の技術】尋常性ざそうの発症には、毛包上皮の角
化、皮脂分泌の亢進、ホルモン、細菌性因子などが関与
すると言われる。我が国における治療法は、これらの症
状に対する外用療法あるいは全身療法が中心である。外
用療法に関しては、角質剥離の目的で、硫黄あるいはサ
リチル酸を含むローション剤が広く用いられているが、
充分な効果が得られず、さらに多用によって刺激症を起
こしやすいことが挙げられる。全身療法に関しては、テ
トラサイクリン系あるいはセフェム系抗生剤等を内服と
して用いるが、重症の場合には長期にわたる投与が必要
で、胃腸障害、肝障害、色素沈着、発疹の発現などの副
作用を示す場合があり、妊娠やその可能性のある婦人に
対して用いることは出来ない。また、欧米における尋常
性ざそうの治療は、抗生剤の他にビタミンＡ酸誘導体の
内服・外用、過酸化ベンゾイルの外用が行われている。
しかしながら、両者の刺激性あるいは催奇形性等の副作
用のため、我が国における使用は認められていない。即
ち、尋常性ざそうの治療等に対して有効で且つ人体に対
する安全性の高い薬剤の開発が要望されているのが現状
である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、経皮吸収性あるいは化学安定性等が良好で、優れた
抗ざそう性を有し、且つ副作用が少なく、人体に対する
安全性の高い尋常性ざそうの予防および治療に用いられ
る皮膚外用組成物を提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、鋭
意検討を重ねた結果、特定の化合物を含有する組成物
が、上記目的を達成し得ることを発見し、本発明を完成
した。即ち、本発明は、総炭素数が２０〜２５のテルペ
ンアルコールの少なくとも一種を有効成分として含有す
ることを特徴とする、尋常性ざそうの予防および治療に
当てられる皮膚用の化粧または薬理組成物を提供するも
のである。

【０００５】

【発明の実施の形態】以下、本発明の尋常性ざそうの予
防および治療に用いられる皮膚外用組成物について詳細
に説明する。本発明の皮膚外用組成物の有効成分として
用いられる総炭素数が２０〜２５のテルペンアルコール
としては、例えば以下の一般式（１）〜（４）で示され
る化合物が挙げられる。

【０００６】

【化５】

【０００７】

【化６】

【０００８】

【化７】

【０００９】

【化８】

【００１０】上記一般式（１）で表される化合物の例と
しては、フィトール、ゲラニルサイトロネロール、ゲラ
ニルゲラニオール、ゲラニルファルネソール等が挙げら
れる。また一般式（２）で表される化合物としては、ゲ
ラニルゲラニルイソプロパノール等が、一般式（３）で
表される化合物としては、フィタントリオール等が、そ
して一般式（４）で表される化合物としては、イソフィ
トール、ゲラニルリナロール等が挙げられる。本発明で
有効成分として使用するテルペンアルコールは、これら
の化合物に限定されるものではなく、総炭素数が２０〜
２５であるものはいずれも使用可能である。

【００１１】本発明における上記有効成分の含有量は、
尋常性ざそうの予防および治療効果を奏するのに十分な
範囲内であれば特に限定されないが、当該組成物全体の
０．００１〜２０重量％であるのが好ましい。上記含有
量が、０．００１重量％未満の場合は、十分な尋常性ざ
そうの予防および治療効果を得ることができず、また、
２０重量％を越えた場合は、当該組成物の安定化を妨げ
ることがあるため好ましくない。

【００１２】本発明の尋常性ざそうの予防および治療に
用いられる皮膚外用組成物は、上記有効成分が面ぽう縮
小効果、角質溶解効果、ざそう治療効果、過角化症治療
効果等を有しているので、種々の化粧品、皮膚外用治療
薬として好適に使用することができる。また驚くべきこ
とに、本発明における上記有効成分は、シワに対する予
防及び治療効果、シミ・ソバカスなどの色素沈着の消失
効果、日焼け後の皮膚における抗炎症・色素沈着・スケ
ーリングの抑制効果、荒れ肌の予防及び改善効果、肌や
毛穴におけるクスミの改善効果、肌のキメを整える効果
や美白作用などを有しているので、皮膚の局所あるいは
全身用の種々の化粧品、皮膚外用治療薬として好適に使
用することができる。さらに、本発明における上記有効
成分は、抗フケ作用、頭髪の成長促進効果などを有して
いるので、頭皮及び頭髪用の組成物としても使用するこ
とができる。

【００１３】本発明の尋常性ざそうの予防および治療に
用いられる皮膚外用組成物の使用形態としては、化粧
品、皮膚外用治療薬の何れとして用いた場合でも、乳
液、ローション、クリーム、ゲル、スティック、軟膏、
パック、ファンデーション、皮膚洗浄剤等の形態を採用
することができる。本発明の尋常性ざそうの予防および
治療用組成物は、化粧品、皮膚外用治療薬の何れとして
用いる場合にも、有効成分として上記テルペンアルコー
ルのみを使用することができるが、その使用形態に応じ
て、任意の成分を適宜配合することもできる。このよう
な任意の成分としては、例えば、溶媒や、通常上述の使
用形態に応じて化粧品、皮膚薬品に添加・使用されてい
る増粘剤、軟化剤、過脂肪剤、緩和剤、湿化剤、表面
剤、保存剤、紫外線吸収剤、消泡剤、油、ワックス、染
料又は顔料（皮膚または尋常性ざそうの予防および治療
剤自身を着色するために用いられるもの）、保存剤、及
びその他の通常化粧品、皮膚外用剤に用いられる成分等
が挙げられる。

【００１４】上記溶媒としては、例えばエタノール、イ
ソプロピルアルコール等の炭素数１〜４の低級アルコー
ル、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコ
ールが挙げられる。上記溶媒は、当該組成物全体に５〜
９９重量％の割合で存在するように適宜配合される。ま
た、本発明の尋常性ざそうの予防および治療剤は、その
使用形態を、乳液又はクリームとするのが特に好まし
く、この際、前記有効成分に加えて、水；脂肪アルコー
ル、オキシエチレン又はポリグリセロール脂肪アルコー
ル；脂肪酸エステル；天然又は合成の油（特にシリコー
ン系油）；ワックス等を配合するのが好ましい。

【００１５】本発明の組成物を尋常性ざそう治療薬とし
て用いる場合は、クリーム、ゲル、ローション、スティ
ック、軟膏等の使用形態とすることができ、この際、前
記有効成分に加えて、これらの形態とする際に通常添加
・配合される成分を上記の任意の成分中から適宜選択し
配合することができる。また、一般にざそう治療薬に使
用される他の化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、エリ
スロマイシン、クリンダマイシン、リンコマイシン等の
マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン、カロチノ
イド、レチノイド、アズリン、イオウ、サリチル酸、レ
ゾルシン、グリチルリチン酸類、トコフェロール、女性
ホルモン等の1種以上を配合することによりその効果を
更に高めることができる。

【００１６】上記尋常性ざそう治療薬は、毎日１〜３
回、使用量０．１〜２ｍｇ／ｃｍ² で治療される区域全
体に、１週〜３ヶ月継続して適用することにより使用で
き、これにより良好な結果が得られる。また、本発明の
尋常性ざそうの予防および治療剤を過角化症治療薬とし
て用いる場合も、上記のざそう治療薬として用いる場合
と同様の使用形態として用いることができ、この際、上
記のざそう治療薬に使用される化合物以外のものも配合
することができる。また、上記過角化症治療薬は、上記
ざそう治療薬と同様に使用することにより、良好な結果
を得ることができる。

【００１７】

【実施例】以下に実施例を挙げて本発明の尋常性ざそう
の予防および治療剤を更に説明するが、本発明はこれら
の実施例に限定されるものではない。 （試験例）面ぽう縮小効果評価試験 下記試験を行い、本発明の尋常性ざそうの予防および治
療に用いられる皮膚外用組成物の有効成分である化合物
の面ぽう（ニキビ）縮小効果について評価した。尚、こ
の面ぽう縮小効果は、ＬＯＷＥの手法に従い、無毛のラ
イノマウスを用いて組織学的に評価した。また、本試験
は、１９７２年ＶＡＮ ＳＣＯＴＴにより、面ぽう治療
薬のスクリーニングのモデルとして強く勧められたもの
である。

【００１８】雄または雌のライノマウス（試験開始時に
は生後２ヶ月のもの）を１群あたり５匹として次の第１
群〜第３群に配分した。 第１群は、試験物質のエタノール：プロピレングリコー
ル（７：３）溶液（下記［表１］に示す試験物質）によ
って処置する。 第２群は、対照物質のエタノール：プロピレングリコー
ル（７：３）溶液（下記［表１］に示す対照物質）によ
って処置する。 第３群は、エタノール：プロピレングリコール（７：
３）溶液によって処置する。 上記１〜３群のライノマウスの背に、上記の各々の溶液
０．１ｍｌを１３日間連続で処置（塗布）した。最終処
置の７２時間後に、ライノマウスの背の皮膚に処置した
上記断片区域から皮膚断片を採取した。この皮膚断片を
０．５重量％酢酸溶液中に４℃で一夜放置した。その
後、皮膚断片の表皮を真皮から剥離し、水分を除去して
から、適当な包埋剤でスライドガラスに包埋し、毛包の
最大になる横断面の面積をイメージアナライザーによっ
て測定した。得られた測定値から下記［数１］に示す式
により毛包縮小率を求め、面ぽう縮小効果の評価をした
（毛包縮小率が大きい程、面ぽう縮小効果、即ち面ぽう
治療効果があることを示す）。それらの結果を下記［表
１］に示す。

【００１９】

【数１】

【００２０】

【表１】

【００２１】上記［表１］の結果から明らかなように、
本発明の尋常性ざそうの予防および治療剤の有効成分で
ある化合物はサリチル酸に比較して優れた面ぽう縮小効
果を示した。

【００２２】つぎに、本発明の皮膚外用組成物により各
種の製剤を調製した実施例について以下に記載する。 （実施例１）抗ざそう性クリームの調製 下記組成の抗ざそう性クリームを常法に従い調製した。 ・ゲラニルゲラニオール １（重量％） ・自己乳化型モノステアリン酸グリセリン １５ ・パーム油 ８ ・パーヒドロスクアレン １０ ・ポリエチレングリコール４００ ８ ・エチレンジアミン四酢酸 ０．０５ ・水 残量

【００２３】（実施例２）抗ざそう性ローションの調製 下記組成の抗ざそう性ローションを常法に従い調製し
た。 ・ゲラニルゲラニオール １（重量％） ・エタノール ５０ ・プロピレングリコール ４７．５ ・可溶性ヒドロキシプロピルセルロース １．５

【００２４】（実施例３）抗ざそう性ローションの調製 下記組成の抗ざそう性ローションを常法に従い調製し
た。 ・ゲラニルゲラニオール １（重量％） ・エタノール ６０ ・プロピレングリコール １０ ・グリセリン ３ ・ポリエチレングリコール４００ ３ ・水 残量

【００２５】（実施例４）抗ざそう性スティックの調製 下記組成の抗ざそう性スティックを常法に従い調製し
た。 ・ゲラニルゲラニオール １（重量％） ・カルナバろう ６ ・オゾケリト ６ ・セチルアルコール １ ・ラノリン ６ ・酸化防止剤 ０．１ ・酸化チタン ２０ ・黄色及び赤色酸化鉄 ４．５ ・パーヒドロスクアレン 残量

【００２６】（実施例５）抗ざそう性クリームの調製 下記組成の抗ざそう性クリームを常法に従い調製した。 ・ゲラニルファルネソール １（重量％） ・イオウ ５ ・自己乳化型モノステアリン酸グリセリン １５ ・パーム油 ８ ・パーヒドロスクアレン １０ ・ポリエチレングリコール４００ ８ ・エチレンジアミン四酢酸 ０．０５ ・水 残量

【００２７】（実施例６）抗ざそう性ローションの調製 下記組成の抗ざそう性ローションを常法に従い調製し
た。 ・ゲラニルファルネソール １（重量％） ・クリンダマイシン １ ・エタノール ６０ ・プロピレングリコール １０ ・グリセリン ３ ・ポリエチレングリコール４００ ３ ・水 残量

【００２８】（実施例７）抗ざそう性軟膏の調製 下記組成の抗ざそう性軟膏を常法に従い調製した。 ・ゲラニルファルネソール １（重量％） ・ワセリン ４９ ・ポリテトラヒドロフランジメチルエーテル ４９ （粘度２２cps)

【００２９】（実施例８）抗ざそう性スティックの調製 下記組成の抗ざそう性スティックを常法に従い調製し
た。 ・ゲラニルファルネソール ２（重量％） ・パラフィン ３０ ・パラフィン油 ３０ ・ワセリン ３８ 上記実施例１〜８の各製剤は、ざそう患部に毎日１〜２
回塗布し、１週間〜３か月間継続して使用することによ
り、本発明の効果が発現し、尋常性ざそうの予防および
治療に用いられる皮膚外用組成物として優れたものであ
った。

【００３０】

【発明の効果】本発明の総炭素数が２０〜２５のテルペ
ンアルコールを有効成分として含有する皮膚外用組成物
は、経皮吸収性、化学安定性が良好で、優れた抗ざそう
性を有し、且つ副作用が少なく、人体に対する安全性の
高いものであり、尋常性ざそうの予防および治療に用い
られる種々の形態の化粧品、皮膚外用治療薬として好適
なものである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 ＦＩ Ａ６１Ｋ 31/715 Ａ６１Ｋ 31/715 // Ａ６１Ｋ 7/40 7/40 (72)発明者 堀 公彦 栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式会 社研究所内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】総炭素数が２０〜２５のテルペンアルコー
   ルの少なくとも１種を有効成分として含有することを特
   徴とする尋常性ざそうの予防および治療に用いられる皮
   膚外用組成物。
2. 【請求項２】テルペンアルコールが下記一般式（１）〜
   （４）で表される化合物であることを特徴とする請求項
   １に記載の皮膚外用組成物。 【化１】 【化２】 【化３】 【化４】
3. 【請求項３】有効成分の含有量が０．００１〜２０重量
   ％であることを特徴とする請求項１又は２に記載の皮膚
   外用組成物。
4. 【請求項４】更に、過酸化ベンゾイル、マクロライド系
   抗生物質、テトラサイクリン、カロチノイド、レチノイ
   ド、イオウ、サリチル酸、レゾルシン、グリチルリチン
   酸類、トコフェロール類からなる群から選択された化合
   物の一種以上を含有することを特徴とする請求項１〜３
   のいずれか１項に記載の皮膚外用組成物。