JPH10100008A - クランクシャフトのオイルホール用チャンファ加工装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 オイルホールの位置が異なるクランクシャフ
トであっても、オイルホール入口部の面取り加工ができ
るチャンファ加工装置を提供する。 【解決手段】 液圧シリンダ５０により昇下降作動する
ラックギアシャフト４０と、ラックギアシャフト４０の
直線連動により回転するピニオンギア３０と、ラックギ
アシャフト４０とピニオンギア３０を内部に収容するヘ
ッドハウジング１０と、ピニオンギア３０と同じ回転軸
に軸設されるドラム２０と、ドラム２０の回転軸２５と
偏心位置に回転可能に装着され、チャンファ加工用工具
を挟持するスピンドルチャック６０と、ドラム２０の正
面上部へ固定装着されている工具位置調整部材７０と、
工具位置調整部材７０がドラム２０と共に回転すると
き、一定角度の範囲内で回転を制限し、ストッパ７１の
何れか一側と面密着して工具位置調整部材７０を支持す
る工具位置固定部材８０とから構成される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、車両用クランクシ
ャフトのオイルホール用チャンファ(Chamfer) 加工装置
に関し、特に、排気量の異なる車種に応じて穿孔位置が
変わるクランクシャフトのオイルホールに対して、チャ
ンファ加工用工具の位置を変動しながら加工することが
できるクランクシャフトのオイルホール用チャンファ加
工装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、図４に示すように、車両用エン
ジンのクランクケース内部において、メインベアリング
に支持され、軸設されるクランクシャフト９０は、クラ
ンクピン９１、クランクアーム９２、クランクジャーナ
ル９３等が一体で形成されている。さらに、クランクシ
ャフト９０には、エンジン駆動時にクランクシャフト９
０の回転バランスを維持するために、ハウジングウエイ
ト９４が装着されている。

【０００３】クランクシャフト９０は、ピストンの往復
直線運動をコネクティングロッドを介して回転運動に変
換し、外部に伝達する役割を有する。このピストンの往
復運動やクランクシャフト９０の回転運動によって、様
々な部位に部品同士の摩擦が生じ、それに伴って多量の
摩擦熱が発生する。この部品同士の摩擦による磨耗を防
止し、かつ、摩擦熱の冷却を目的として潤滑油（エンジ
ンオイル）が用いられる。

【０００４】ところが、クランクシャフト９０内部のベ
アリング部や、ピストン内部のコネクティングロッドの
小端部（スモールエンド）及び大端部（ビッグエンド）
へは、潤滑油を適切に供給することが困難であった。こ
の不具合を克服するために、クランクシャフト９０に複
数のオイルホール９５を設け、メインベアリングに供給
される潤滑油の一部を、上述したベアリング部やピスト
ン内部へ供給するという方法が多く用いられている。

【０００５】オイルホール９５は、クランクシャフト９
０形成後ドリルなどの工具を用いて機械加工によって形
成されるのが一般的である。ドリル加工直後のオイルホ
ール入口部９５ａは、極めて鋭い角部が形成されてい
る。また、切り屑などによるバリなどが発生している場
合もある。これらは、潤滑油の通りを悪くし、偏磨耗の
発生や冷却効率の悪化の原因となってしまう。これらを
除去してオイルホール入口部９５ａをスムーズにするた
めには、通常、図５に示す専用の切削工具９７を使用し
て鋭い角を丸める面取り加工（以下、「チャンファ加
工」という。）を行う必要がある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、クランクシ
ャフト９０には、通常、車両の排気量の違いによって、
オイルホール９５の位置が異なって形成される。つま
り、図４に示すオイルホール９５とオイルホール９６の
ように、穴開け位置が異なることになる。このため、オ
イルホールのチャンファ加工を行う場合には、形状が同
じクランクシャフト９０であっても、それぞれのオイル
ホール位置に応じたチャンファ加工装置を準備しなけれ
ばならない。

【０００７】即ち、排気量の大きいクランクシャフト９
０を加工するチャンファ加工装置と排気量の小さいクラ
ンクシャフト９０を加工するチャンファ加工装置とを、
それぞれ別個に備えなければ、オイルホール９５の位置
の異なるクランクシャフト９０のチャンファ加工作業を
行うことはできない。したがって、オイルホール入口部
９５ａの位置によって加工装置が異なるため、非効率的
な作業を遂行しなければならないという問題がある。

【０００８】ここで、本発明は、前記問題点を解決すべ
く提案されたもので、車両用クランクシャフトのオイル
ホール入口部の位置によって、スピンドルチャックを可
変的に移動させて加工工具の位置決めが正確にできるよ
うにし、オイルホール入口部の位置が相異するクランク
シャフトでもチャンファ加工できるようにしたチャンフ
ァ加工装置を提供することを目的とする。

【０００９】本発明の他の目的は、クランクシャフトの
オイルホールのチャンファ加工を一つの場所で遂行でき
るようにして、工程の効率化と費用節減を促進させる加
工装置を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めに、本発明は、クランク軸のオイルホール穿孔時、入
口部に形成される鋭い角を除去するチァンパー加工装置
において、液圧シリンダにより昇下降作動するラックギ
アシャフトと、前記ラックギアシャフトの直線連動によ
り回転するピニオンギアと、前記ラックギアシャフトと
ピニオンギアを内部に収容するヘッドハウジングと、前
記ピニオンギアと同じ回転軸に軸設され、前記ヘッドハ
ウジング外部に設けられるドラムと、前記ドラムの回転
軸と偏心位置に回転可能に装着され、チャンファ加工用
工具を挟持するスピンドルチャックと、前記ドラムの正
面上部へ固定装着されその上部の両端にはストッパが締
結されている工具位置調整部材と、前記工具位置調整部
材がドラムと共に回転するとき、一定角度の範囲内で回
転を制限し、ヘッドハウジングに設けられた前記ストッ
パの何れか一側に面密着して工具位置調整部材を支持す
る工具位置固定部材とから構成されることを特徴とす
る。

【００１１】

【発明の実施の形態】添付した実施例図面を参照して詳
細に説明する。図１は本発明の一実施例のチャンファ加
工装置を例示し、さらに右側半分についてはその装置の
内部構造を例示する正面図である。図２は本発明の一実
施形態のチャンファ加工装置を例示する平面図である。
図３は本発明の一実施形態のチャンファ加工装置の動作
を説明するための図である。

【００１２】最初に、本発明のチャンファ加工装置の構
成について説明する。なお、クランクシャフト９０に
は、通常、図４に示すように、オイルホール９５が２箇
所形成されている。このため、本装置では、それぞれ２
箇所のオイルホール入口部のチャンファ加工が同時にで
きるように、２つのチャンファ加工装置を一体で形成し
た構造となっている。

【００１３】ヘッドハウジング１０の前方にはドラム２
０が軸設され、該ドラム２０は、ヘッドハウジング１０
内部に収容されたピニオンギア３０と同軸なギア軸２５
に軸設される。また、ピニオンギア３０は、ラックギア
シャフト４０と係合する位置に配置されている。ラック
ギアシャフト４０は、液圧シリンダ５０のシャフトに連
結されており、液圧シリンダ５０の上昇又は下降に応じ
て作動する。なお、この実施形態では、液圧シリンダと
して油圧シリンダを使用した。

【００１４】ドラム２０の平坦面上には、チャンファ加
工用工具９７を挟持するスピンドルチャック６０が配置
されている。スピンドルチャック６０は、図示しない駆
動モータにより自転でき、この自転によりオイルホール
９５の両端部の角取りが可能となる。また、スピンドル
チャック６０の位置は、ドラム２０の回転中心から所定
の距離だけ偏心している。この偏心によりドラム２０を
回転させたときにスピンドルチャック６０の位置が自在
に変更可能となる。

【００１５】また、ドラム２０の平坦面上には、正面上
部の所定の位置にボルト等の固定手段によって工具位置
調整部材７０が締結固定されている。なお、工具位置調
整部材７０には、ボルト固定手段により工具位置固定部
材８０と面接触するストッパ７１と、その接触面の位置
調整を行うスペーサ７２とがボルト締めされている。

【００１６】工具位置固定部材８０は、ヘッドハウジン
グ１０の側面上に工具位置調整部材７０を両側から挟み
込むようにボルトにて固定されている。これによりドラ
ム２０の回転が阻止され、その阻止された位置をチャン
ファ加工位置とすると、ドラム２０の回転に応じた２箇
所の加工位置が得られることになる。この加工位置は、
スぺーサ７２を調整することで微調整が可能である。

【００１７】図４，５に示すように、クランクシャフト
９０には、オイルホールがクランクシャフトの方向に対
して垂直に形成されているため、オイルホールの入口部
９５ａがシャフトの両側に存在する。この場合、オイル
ホール９５の両側からチャンファ加工するほうが効率的
なので、本装置はクランクシャフト９０を両側から挟み
込むように設置して使用する。

【００１８】液圧シリンダ５０の後端部には、シリンダ
の作動ストロークを一定範囲内で制限するために、スト
ロークの方向に沿って、下方にリミットスイッチ１０
０、上方にリミットスイッチ１０１が設けられている。
また、液圧シリンダ５０のシャフトの後端部には、リミ
ットスイッチ１００，１０１のアクチュエータを蹴って
スイッチをオンオフさせるＬＳ用ブラケット１１０が取
り付けられている。これらのリミットスイッチ１００，
１０１を作動させることにより液圧シリンダ５０の液圧
が制御され、所定の範囲内での液圧シリンダ５０の作動
が可能となる。

【００１９】工具位置調整部材７０にボルト締結される
ストッパ７１と前記工具位置調整部材７０との間には、
正確なセッティング角度の調整のためにスペーサ７２が
介在している。ここで、リミットスイッチにより制限さ
れた範囲内に工具位置調整部材７０、及び、工具位置固
定部材８０を配置して、スペーサ７２を調整することに
より、正確なチャンファ加工工具の位置が設定できる。

【００２０】オイルホール位置と加工用工具との位置調
整の方法について説明する。まず、オイルホールの入口
部９５ａがシャフト両側の同一位置に形成されたクラン
クシャフト９０を、装置正面にクランピングして固定し
ておく。次に、スピンドルチャック６０にチャンファ加
工用工具９７を装着し、その加工用工具９７の先端部が
オイルホールの入口部９５ａの中心になるように位置合
わせを行う。

【００２１】この時、ドラム２０の平坦面部に装着され
る工具位置調整部材７０のストッパ７１は、図３に示す
ように、工具位置固定部材８０の片方側と面密着した状
態であり、加工用工具９７はこの位置で固定されてい
る。なお、チャンファ加工用工具９７先端部とオイルホ
ールの入口部９５ａが合わなければ、スペーサ７２の厚
み調整や面加工などを実施して位置調整を行い、正確な
位置決めを実施する。なお、本実施形態では、スペーサ
は所定の厚さを有する薄い鋼板を複数枚重ねたものを使
用しており、必要な厚さに応じて、それらの鋼板を追加
したり減らしたりすることで調整可能としている。

【００２２】オイルホール入口部９５ａに加工用工具９
６を正確に位置決めしたあと、スピンドルチャック６０
を図示しない駆動モータにより回転させれば、その両端
角部が切削加工（又は、研磨加工）され、除去される。

【００２３】次に、排気量が異なる車種のエンジンに装
着されるクランクシャフト９０、即ち、オイルホール入
口部の位置が異なるクランクシャフト９０のオイルホー
ル入口部９６ａをチャンファ加工する場合について説明
する。この場合、まず、液圧シリンダ５０を作動させ
る。ここでは、図３に示すように、ラックギアシャフト
４０を下降させて、これと係合したピニオンギア３０を
反時計方向へ回転させる。これにより、ピニオンギア３
０と同軸上に軸設されたドラム２０も反時計方向に回転
し、同時に、スピンドルチャック６０も反時計方向へ回
転する。以上の動作により、加工工具９７の位置が移動
することになる。なお、回転したあとの工具位置調整部
材７０の状態について、図３の平面図上に２点鎖線を用
いて示す。

【００２４】ドラム２０の回転によってスピンドルチャ
ック６０の位置が移動すれば、ドラム２０に固定締結さ
れた工具位置調整部材７０も必然的に移動する。この
時、工具位置調整部材７０の他の一側のストッパ７１
は、回転方向側に位置する工具位置固定部材８０と面密
着した状態となり、ドラム２０の回転は、これにより、
阻止される。つまり、チァンファ加工用工具９７はこの
位置で固定され、位置決めされたことになる。

【００２５】上述した状態において、スピンドルチャッ
ク６０に挟まれた加工用工具先端部が、正確にクランク
シャフト９０のオイルホール入口部９６ｓに一致してい
ないならば、スペーサ７２の厚みを調節して正確な位置
決めを行う必要がある。

【００２６】上述したドラムの回転動作は、工具位置調
整部材７０の回動許容角度に限定する必要がある。この
ため、本実施形態では、液圧シリンダ５０の作動ストロ
ークをリミットスイッチ１００，１０１を設けることに
より、ドラム２０の回転を制限できるようにした。

【００２７】リミットスイッチ１００，１０１、及び、
工具位置固定部材８０による回転の制限により、ドラム
２０は常に一定角度だけ回転するようになる。したがっ
て、スピンドルチャック６０を、正確なオイルホール入
口部９５ｓ，９６ｓに位置決めさせることが可能とな
る。

【００２８】

【発明の効果】本発明のチャンファ加工装置によれば、
オイルホール入口部の位置が各々異なるクランクシャフ
トを、一台の加工装置で、適切に加工することができる
ので、装置の製作費、及び、設置費を大幅に削減するこ
とができる。

【００２９】また、加工の種類とその加工位置がそれぞ
れ異なる部品に対しても、加工用工具を交換するだけで
多様に活用できるので、装置の適用範囲を広げることが
可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態のチャンファ加工装置を例
示し、さらに右側半分についてはその装置の内部構造を
例示する正面図である。

【図２】本発明の一実施形態のチャンファ加工装置を例
示する平面図である。

【図３】本発明の一実施形態のチャンファ加工装置の動
作を説明するための図である。

【図４】クランクシャフトに開けられたオイルホールの
位置について説明するための図である。

【図５】オイルホールのチャンファ加工方法について説
明するための図である。

【符号の説明】

１０…ヘッドハウジング ２０…ドラム ２５…ギア軸 ３０…ピニオンギア ４０…ラックギアシャフト ５０…液圧シリンダ ６０…スピンドルチャック ７０…工具位置調整部材 ７１…ストッパ ７２…スペーサ ８０…工具位置固定部材 ９０…クランクシャフト ９１…クランクピン ９２…クランクアーム ９３…クランクウエイト ９４…ハウジングウエイト ９５，９６…オイルホール ９５ａ，９６ａ…オイルホール入口部 ９７…チャンファ加工用工具 １００，１０１…リミットスイッチ １１０…ＬＳ用ブラケット

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】クランクシャフトのオイルホール穿孔時、
   入口部に形成される鋭い角を除去するチァンファ加工装
   置において、 液圧シリンダにより昇下降作動するラックギアシャフト
   と、 前記ラックギアシャフトの直線連動により回転するピニ
   オンギアと、 前記ラックギアシャフトとピニオンギアを内部に収容す
   るヘッドハウジングと、 前記ピニオンギアと同じ回転軸に軸設され、前記ヘッド
   ハウジング外部に設けられるドラムと、 前記ドラムの回転軸と偏心位置に回転可能に装着され、
   チャンファ加工用工具を挟持するスピンドルチャック
   と、 前記ドラムの正面上部へ固定装着され、その上部の両端
   にストッパが締結されている工具位置調整部材と、 前記工具位置調整部材がドラムと共に回転するとき、一
   定角度の範囲内で回転を制限し、ヘッドハウジングに設
   けられた前記両側のストッパの何れか一側に面密着して
   前記工具位置調整部材を支持する工具位置固定部材とか
   ら構成されることを特徴とするチャンファ加工装置。
2. 【請求項２】前記液圧シリンダは、 前記ラックギアシャフトの昇下降動作を制限するため
   に、リミットスイッチが設けられている請求項１記載の
   チャンファ加工装置。
3. 【請求項３】前記ストッパは、 前記工具位置調整部材にスペーサを介して分解可能に締
   結されている請求項１記載のチャンファ加工装置。
4. 【請求項４】前記スペーサは、 正確なセッティング角度の調節のために厚さの調整が可
   能である請求項１記載のチャンファ加工装置。
5. 【請求項５】クランクシャフトのオイルホール入口部に
   形成される角部を除去するチャンファ加工装置であっ
   て、 液圧シリンダにより上下動するラックギアシャフトと、 該ラックギアシャフトと係合し、前記ラックギアシャフ
   トの昇下降動作に応じてギア軸を回転させるピニオンギ
   アと、 前記ギア軸に固定され、前記ピニオンギアと共に回転す
   るドラムと、 該ドラムの平坦面上に回転可能に配置され、チャンファ
   加工用工具を挟持するスピンドルチャックとを具備し、 前記スピンドルチャックは、前記ドラムの回転中心から
   所定の距離だけ偏心して配置されているチャンファ加工
   装置。
6. 【請求項６】前記ドラムの平坦面上の所定の位置に固定
   された工具位置調整部材と、 前記工具位置調整部材と互いに面接触して前記加工用工
   具の位置を決定付ける複数の工具位置固定部材と、 前記ラックギアシャフトとピニオンギアを外部から覆う
   ヘッドハウジングとを有しており、 前記複数の工具位置固定部材は、前記ヘッドハウジング
   の側面上であって前記工具位置調整部材を両側から挟み
   込む位置に配置されている請求項５記載のチャンファ加
   工装置。
7. 【請求項７】前記工具位置調整部材は、 前記工具位置固定部材と面接触して前記ドラムの回転を
   受け止めるストッパと、 前記工具位置固定部材との接触面の位置調整が可能なス
   ペーサとを有する請求項６記載のチャンファ加工装置。