JPH0995759A - 焼結含油軸受とその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来より高強度で低摩擦係数の焼結含油軸受
の開発。 【解決手段】 Ｃｕが局部拡散したＦｅ−Ｃｕ合金粉：
40〜70wt％、７／３黄銅粉：30〜60wt％、Ｓｎ粉： 0.5
〜 2.0wt％、Ｐ−Ｃｕ合金粉： 0.5〜 2.0wt％、又はさ
らに、黒鉛粉： 0.5〜３wt％と金属硫化物粉末： 0.4〜
1.0wt％の１種もしはく２種を混合して圧粉成形した後
800℃以上 900℃未満で焼結することを特徴とする焼結
含油軸受の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は焼結含油軸受とその
製造法に関し、特に強度が大きく、耐摩耗性に優れたも
のである。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】含油軸
受として用いられる焼結合金には従来から種々のものが
あるが、主要なものとしては銅系と鉄系とがある。即ち
銅系としてはＣｕ−Ｓｎ、Ｃｕ−Ｓｎ−Ｃ、Ｃｕ−Ｓｎ
−Ｐｂ−Ｃ合金があり、また鉄系にはＦｅ−Ｃ、Ｆｅ−
Ｐｂ−Ｃ、Ｆｅ−Ｃｕ−Ｃ合金などが多様に提案され、
且つ実用化されている。ところがこのような従来のもの
において、鉄系のものは銅系のものに比較して低コスト
であって機械的強度は高いが、硬度が高いので軸材に対
するなじみが好ましいものでないため軸材を摩耗させや
すく、また耐食性に劣る。これに対し銅系のものは優れ
た潤滑特性を有するが高荷重に耐え得る強度に不十分で
あった。

【０００３】

【課題を解決するための手段】本発明はこれに鑑み、従
来の銅系焼結含油軸受の高潤滑性と鉄系焼結含油軸受の
高強度とを併せ持った新規な焼結含油軸受とその製造方
法を開発したものである。

【０００４】即ち本発明の焼結含油軸受は、Ｆｅ：40〜
70wt％、Ｃｕ：20〜40wt％、Ｚｎ：10〜30wt％、Ｓｎ：
0.5〜 3.0wt％、Ｐ：0.01〜0.02wt％を含有し、又はさ
らにＣ： 0.5〜３wt％、金属硫化物： 0.4〜 1.0wt％の
１種もしくは２種を含有し、残部不可避的不純物からな
る合金組成を有することを特徴とするのである。

【０００５】さらに本発明の焼結含油軸受の製造方法
は、Ｃｕが局部拡散したＦｅ−Ｃｕ合金粉：40〜70wt
％、７／３黄銅粉：30〜60wt％、Ｓｎ粉： 0.5〜 2.0wt
％及びＰ−Ｃｕ合金粉： 0.5〜 2.0wt％、又はさらに黒
鉛粉： 0.5〜３wt％と金属硫化物粉末： 0.4〜 1.0wt％
の１種もしくは２種を混合した原料粉末を圧粉成形した
後800℃以上 900℃未満で焼結することを特徴とするも
のである。

【０００６】本発明の焼結含油軸受の材料は従来の鉄系
材料と銅系材料の優れた特性を併せ持ったものである。
即ちＦｅ成分により強度と耐摩耗性を、またＣｕ、Ｚ
ｎ、Ｓｎ成分やＣｕ−Ｚｎ合金、Ｃｕ−Ｚｎ−Ｓｎ合金
成分により潤滑性を付与するものである。

【０００７】本発明の軸受において、Ｆｅの含有量が40
wt％未満の場合は所定の強度を得られないため40wt％以
上として強度と低コスト性を得、一方70wt％を越えると
Ｃｕ、Ｚｎ、Ｓｎ等の他の元素の添加量を減ずることに
なり、耐食性や潤滑性が劣ってしまう。そしてＦｅはＣ
ｕが局部拡散したＦｅ−Ｃｕ合金粉として添加すること
により、通常単体のＦｅ粉の場合の焼結温度（1000℃以
上）よりずっと低温の約 800〜900 ℃での焼結が実施で
きる。このような合金粉としてはＦｅ粉中に５〜10wt％
程度のＣｕが局部拡散している商品名デスタロイＣｕの
ような合金粉が利用できる。

【０００８】Ｓｎはこの合金粉同士の結合をより促進し
て強固にするために添加するものであるが、その量が
0.5wt％未満では上記効果及び軸受の摩擦係数低減の効
果が得ずらく、またその量が 3.0wt％を越えるとＳｎは
高価なためコストアップにつながる。

【０００９】Ｃｕ及びＺｎは70％Ｃｕ−30％Ｚｎの７／
３黄銅として添加するのが好適であり、軸受材料として
なじみ性と潤滑性を付与するが、その量がそれぞれの下
限未満、又は７／３黄銅として30wt％未満では相対的に
Ｆｅ量が多すぎるので上記なじみ性と潤滑性が劣り、そ
れぞれ上限を越え、又は７／３黄銅として60wt％を越え
ると逆に相対的にＦｅ量が少なくなりすぎて軸受の強度
や耐摩耗性が得られない。

【００１０】またＰ−Ｃｕ合金粉は上記Ｆｅ−Ｃｕ合金
粉同士の結合をさらに進めて軸受の強度を高めると共
に、潤滑性にも寄与して摩擦係数をより低下させる。そ
の量がＰ−Ｃｕ合金粉として 0.5wt％未満ではこの効果
がなく、 2.0wt％を越えてもこの効果はあまり変らなく
なってしまう。なおＰ−Ｃｕ合金粉の組成はＰを５〜９
wt％程度含有したＰ−Ｃｕ合金粉が好適である。

【００１１】さらにＣや金属硫化物はいずれも軸受とし
ての潤滑性を向上させて摩擦係数を低減させるものであ
り、それぞれの添加量が下限未満ではあまり効果がな
く、他方それぞれ上限を越えると強度に悪影響を及ぼ
す。

【００１２】

【実施例】次に本発明をさらに実施例により詳細に説明
する。表１に示す割合で各金属粉を混合して攪拌し、各
々内径２mm×外径５mm×全長３mmで軸受形状のテストピ
ースの成形体を得、表１に示す温度で還元雰囲気中で焼
結を行い、空孔率20％±１％のテストピース焼結体とし
た。表中Ｐ−Ｃｕ合金粉はＰを 8.6wt％含有したＣｕ粉
であるりん銅粉−３２５を用い、Ｆｅ−Ｃｕ合金粉は10
wt％Ｃｕが局部拡散したＦｅ粉である商品名デスタロイ
Ｃｕを用いた。また金属硫化物粉としてはＭｎＳ（硫化
マンガン）を使用した。これら焼結体について圧環強度
と摩擦係数を各条件共に10個測定してその平均値を表２
に示した。なお摩擦係数のテスト条件はＰＶ値＝ 314.2
kg／cm² ／minに設定した。

【００１３】

【表１】

【００１４】

【表２】

【００１５】表１及び表２から明らかなようにＰ−Ｃｕ
合金粉の添加した本発明例では、焼結温度の高い比較例
よりも強度及び摩擦係数が向上していることが判る。本
発明の軸受のような焼結含油軸受をモーターのケース等
に組み付ける際には圧入もしくはカシメにより取り付け
る場合がほとんどである。従って軸受自体の強度が小さ
いと圧入やカシメにより該軸受の内径面に歪が生じて内
径の精度を保てなくなってしまう。本発明例の強度の大
きい軸受を用いることによってこのような組み付け時の
内径の変形が非常に小さくなり、且つ摩擦係数も小さい
ので軸受として利用価値は大である。

【００１６】

【発明の効果】このように本発明によれば、高強度且つ
低摩擦係数の軸受が得られ、しかも従来のＦｅ系軸受に
比べて低い温度で焼結可能であるため製造コストが低減
し、焼結炉の寿命も延びる等工業上顕著な効果を奏す
る。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｃ２２Ｃ 38/16 Ｃ２２Ｃ 38/16 Ｆ１６Ｃ 33/10 7123−3Ｊ Ｆ１６Ｃ 33/10 Ａ 33/14 7123−3Ｊ 33/14 Ａ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 Ｆｅ：40〜70wt％、Ｃｕ：20〜40wt％、
   Ｚｎ：10〜30wt％、Ｓｎ： 0.5〜 3.0wt％及びＰ：0.01
   〜0.02wt％を含有し、残部不可避的不純物からなる合金
   組成を有することを特徴とする焼結含油軸受。
2. 【請求項２】 Ｆｅ：40〜70wt％、Ｃｕ：20〜40wt％、
   Ｚｎ：10〜30wt％、Ｓｎ： 0.5〜 3.0wt％、Ｐ：0.01〜
   0.02wt％と、Ｃ： 0.5〜３wt％及び／又は金属硫化物
   0.4〜 1.0wt％を含有し、残部不可避的不純物からなる
   合金組成を有することを特徴とする焼結含油軸受。
3. 【請求項３】 Ｃｕが局部拡散したＦｅ−Ｃｕ合金粉：
   40〜70wt％、７／３黄銅粉：30〜60wt％、Ｓｎ粉： 0.5
   〜 2.0wt％及びＰ−Ｃｕ合金粉： 0.5〜 2.0wt％を混合
   して圧粉成形した後、 800℃以上 900℃未満の温度で焼
   結することを特徴とする焼結含油軸受の製造方法。
4. 【請求項４】 Ｃｕが局部拡散したＦｅ−Ｃｕ合金粉：
   40〜70wt％、７／３黄銅粉：30〜60wt％、Ｓｎ粉： 0.5
   〜 2.0wt％、Ｐ−Ｃｕ合金粉： 0.5〜 2.0wt％と、黒鉛
   粉： 0.5〜３wt％及び／又は金属硫化物粉末： 0.4〜
   1.0wt％を混合して圧粉成形した後 800℃以上 900℃未
   満で焼結することを特徴とする焼結含油軸受の製造方
   法。