JPH0995445A - 脳神経細胞障害に対する治療薬 - Google Patents

脳神経細胞障害に対する治療薬

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JPH0995445A
JPH0995445A JP8212105A JP21210596A JPH0995445A JP H0995445 A JPH0995445 A JP H0995445A JP 8212105 A JP8212105 A JP 8212105A JP 21210596 A JP21210596 A JP 21210596A JP H0995445 A JPH0995445 A JP H0995445A
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JP
Japan
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nerve cell
cerebral nerve
cerebral
therapeutic agent
compound
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JP8212105A
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English (en)
Inventor
Tetsuo Mori
哲郎 毛利
Kenzo Chiba
賢三 千葉
Matsumi Yamazaki
眞津美 山崎
Tamaaki Imakura
玉晶 今倉
Tsuneo Takadera
恒雄 高寺
Naoki Sakura
直樹 佐倉
Tadashi Hashimoto
忠 橋本
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】イリドイド化合物および/またはその薬理
学的に許容される塩を有効成分とする脳神経細胞障害に
対する治療薬。 【効果】イリドイド化合物は脳神経細胞賦活作用を示
し、外傷、代謝性の要因、脳虚血、ベータアミロイド蛋
白質、パーキンソン病およびダウン症による脳神経細胞
障害に対する治療および予防に極めて有用な物質であ
る。本発明によりイリドイド化合物を有効成分とする脳
神経細胞障害に対する治療薬が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は脳神経細胞障害の治
療薬に関する。さらに詳しくは、脳神経細胞賦活物質で
あるイリドイド化合物の脳神経細胞障害の治療薬として
の利用に関するものであり、特に外傷、代謝性の要因、
脳虚血、パーキンソン病またはダウン症などによって生
じる脳神経細胞障害の治療薬に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、脳神経細胞の壊死を伴う疾病を、
直接その細胞を賦活することにより予防、あるいは治療
する薬剤は広く探索されているにもかかわらず未だ有効
な治療薬は発見されるに至っていない。現状ではニンジ
ンを煎剤とするか、アルコールエキス(含量14%以
上)としたものが試用されているに過ぎない(特開平6
−316527号公報)。そこで、外傷、代謝性の要
因、脳虚血、パーキンソン病またはダウン症等によって
生じる脳神経細胞障害の治療薬の開発が強く望まれてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、脳神
経細胞が損傷され、記憶の障害、行動の不安定が現れる
初期の状態もしくはそれ以前から投与することにより、
直接脳細胞に達して脳神経細胞を賦活する新規な脳神経
細胞障害の治療薬を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】かかる情況の下で、本願
発明者らは、投与することにより直接脳細胞に達して脳
神経細胞を賦活することができる薬物の探索研究を広範
に実施したところ、意外にも、従来、緩下作用、利尿作
用、利胆作用、胃運動抑制作用、胃分泌抑制作用、血糖
降下作用、抗腫瘍作用、抗菌作用、抗乳酸菌、抗ウイル
ス、降圧作用、ヒト血清中のコリンエステラーゼ阻害作
用などを示すことが知られているにすぎないイリドイド
化合物に強力な脳神経細胞の賦活作用を示すものが存在
することを見いだした。
【0005】かかるイリドイド化合物に含まれるゲニポ
シド酸、ゲニポサイド、ガルデノサイド、カタルポー
ル、ゲニピン、アウクビン、モノトロペイン、ロガニ
ン、ムセノサイドは、性機能障害、健忘症または老人性
痴呆症の予防改善剤として知られている(特開平3−7
644号公報)が、イリドイド化合物に含まれる化合物
の中に、脳神経細胞障害の治療薬として有用なものは今
日まで全く知られていない。
【0006】本発明者らは、かかるイリドイド化合物が
神経成長因子(NGF)と同様のPC12h細胞の分化
および神経突起伸長作用並びにカルシウムチャンネル感
受性の増大をもたらすことを初めて発見した。本発明は
かかる発見に基づきさらに研究を進めて完成するに至っ
たものである。
【0007】即ち、本発明の要旨は、(1) イリドイ
ド化合物および/またはその薬理学的に許容される塩を
有効成分とする脳神経細胞障害に対する治療薬、(2)
脳神経細胞障害が外傷性脳神経細胞障害である前記
(1)記載の治療薬、(3) 脳神経細胞障害が代謝性
の要因による脳神経細胞障害である前記(1)記載の治
療薬、(4) 脳神経細胞障害が脳虚血性脳神経細胞障
害である前記(1)記載の治療薬、(5) 脳神経細胞
障害がベータアミロイド蛋白質に起因する脳神経細胞障
害である前記(1)記載の治療薬、(6) 脳神経細胞
障害がパーキンソン病またはダウン症による脳神経細胞
障害である前記(1)記載の治療薬、並びに(7) イ
リドイド化合物が、ゲニポサイド、ガルデノサイド、カ
タルポール、ゲニピン、アウクビン、およびそれらの水
解物からなる群より選ばれる1種以上である前記(1)
〜(6)いずれかに記載の治療薬、に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に用いられるイリドイド化
合物としては、一般式(1)〜(3)
【0009】
【化1】
【0010】(式中、R1 は水素原子または−CH2
H基を表し、R2 は水素原子または水酸基を表し、R3
は水素原子または−COOCH3 基を表し、R4 は水素
原子またはβ−D−グルコシド基を表す。)で表される
化合物が挙げられる。
【0011】例えば、一般式(1)で表される化合物と
しては、ゲニピン、ゲニポサイド、アウクビン等が挙げ
られ、一般式(2)で表される化合物としては、カタル
ポール等が挙げられ、一般式(3)で表される化合物と
しては、ガルデノサイド等が挙げられる。中でも、ゲニ
ポサイド、カタルポール、ガルデノサイド等が特に好適
に使用される。また、イリドイド化合物としては、これ
らの水解物も含まれ、本発明においては優れた脳神経細
胞賦活作用が認められている。さらに、本発明において
はこれらの化合物の薬理学的に許容される塩も有効成分
として使用される。
【0012】本発明に用いられるイリドイド化合物は、
以下のようにして入手(調製)することができる。アウ
クビン、カタルポール、ゲニポサイド、ガルデノサイド
は、例えば和光純薬工業(株)製のものを用いることが
できる。それぞれの水解物は、例えば和光純薬工業
(株)製のβ−グルコシダーゼを用いて加水分解し、調
製することができる。即ち、具体的には稀ギ酸水溶液
(pH5)0.5mlに5mgの各イリドイド化合物と
約0.05mgのβ−グルコシダーゼを加えて、37℃
で24時間静置することにより調製する。尚、後述の試
験例では、得られた水解物を直接、培地に添加して水解
物を希釈して試験に用い、各水解物の使用量は水解前の
各化合物の重量で示している。
【0013】本発明に用いられるイリドイド化合物は、
前記のように脳神経細胞を賦活し、その分化を促進する
こと、そして脳神経細胞障害に対する予防作用、治療作
用を有し、脳神経細胞障害の予防薬、治療薬として有用
である。その根拠は後に述べる試験例によって明らかに
されるが、以下にその概要を述べる。神経細胞賦活因子
として代表的な神経成長因子(NGF)は、ラット副腎
髄質褐色細胞腫由来の樹立細胞であるPC12h細胞を
刺激して神経細胞様に分化せしめ、神経突起を伸長させ
る作用を有する。本発明のイリドイド化合物も、NGF
と同様にPC12h細胞に対して神経細胞様に分化せし
め、神経突起を伸長させる作用を有する。
【0014】また、神経刺激によるPC12h細胞の細
胞内遊離カルシウムの濃度変化に対するイリドイド化合
物の影響を測定したところ、アセチルコリンレセプター
のアゴニストであるカルバコールに対する反応性は、イ
リドイド化合物前処理細胞の方が無処理細胞よりも有意
に増大し、イリドイド化合物によるアセチルコリンレセ
プターの増加およびその結果としてのカルシウムチャン
ネルの活性化が示された。
【0015】さらに、獲得試行後に脳外傷を起こさせた
マウスについて、イリドイド処理マウスと無処理マウス
の挙動における相違を各種パラメータについて測定し
た。その結果イリドイド処理マウスでは顕著な回復が認
められた。以上の試験データは、本発明で用いるイリド
イド化合物が脳神経細胞を賦活し、脳神経細胞分化促進
作用を有し、さらに外傷による脳神経細胞障害に対し改
善作用を有することを明瞭に示している。
【0016】また、イリドイド化合物は、ベータアミロ
イド蛋白質の活性部分を抜き出したモデルペプチドであ
るβ25−35が惹き起こす、海馬神経細胞への細胞毒
性を濃度依存的に軽減することが明らかとなった。ベー
タアミロイド蛋白質は、アルツハイマー病脳に沈着する
アミロイドを構成する蛋白質であり、アルツハイマー病
の原因の一つであると考えられている(医学のあゆみ、
Vol.174, p.614-618,1995)。このことから、イリドイ
ド化合物がベータアミロイド蛋白質の毒性に起因する脳
神経細胞の障害に対しても保護作用を持つことが明らか
となった。
【0017】本発明で用いるイリドイド化合物はそのま
ま、あるいは慣用の製剤担体と共に動物および人に投与
することができる。投与形態としては特に限定がなく、
必要に応じて適宜選択して使用され、錠剤、カプセル
剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤等
の非経口剤があげられる。経口剤として所期の効果を発
揮するためには、患者の年齢、体重、疾患の程度により
異なるが、通常成人でイリドイド化合物の重量として1
日20〜600mgを数回に分けて服用するのが適当と
思われる。
【0018】本発明において錠剤、カプセル剤、顆粒
剤、細粒剤、散剤としての経口剤は、例えばデンプン、
乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロー
ス、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って
製造される。これらの製剤中のイリドイド化合物の配合
量は特に限定されるものではなく適宜選択される。この
種の製剤には適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、
界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、
香料等を使用することができる。それぞれの具体例は以
下に示す如くである。
【0019】〔結合剤〕デンプン、デキストリン、アラ
ビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、
メチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセル
ロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニ
ルピロリドン、マクロゴール。
【0020】〔崩壊剤〕デンプン、ヒドロキシプロピル
スターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カ
ルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチ
ルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース。
【0021】〔界面活性剤〕ラウリル硫酸ナトリウム、
大豆レシチン、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレ
ンソルビタン。
【0022】〔滑沢剤〕タルク、ロウ類、水素添加植物
油、蔗糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、
ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、
ポリエチレングリコール。
【0023】〔流動性促進剤〕軽質無水ケイ酸、乾燥水
酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ
酸マグネシウム、また、イリドイド化合物は、懸濁液、
エマルション剤、シロップ剤、エリキシル剤としても投
与することができ、これらの各種剤形には、矯味矯臭
剤、着色剤を含有させてもよい。
【0024】非経口剤として所期の効果を発揮するに
は、患者の年齢、体重、疾患の程度により異なるが、通
常成人でイリドイド化合物の重量として1日1〜60m
gまでの静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当と
思われる。この非経口投与剤は常法に従って製造され、
希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブトウ
糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイ
ズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール等を用い
ることができる。さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐
剤、安定剤を加えてもよい。また、この非経口剤は安定
性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾
燥技術により水分を除き、使用直前に凍結乾燥物から液
剤を再調製することもできる。さらに必要に応じて適
宜、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤等を加えても
よい。これらの製剤中のイリドイド化合物の配合量は特
に限定されるものではなく適宜選択される。その他の非
経口剤として、外用液剤、軟膏等の塗布剤、直腸内投与
のための坐剤等が挙げられ、常法に従って製造される。
【0025】本発明の脳神経細胞障害に対する治療薬
は、脳神経細胞障害であれば特に限定されることなく適
用されるが、特に外傷性脳神経細胞障害、代謝性の要因
による脳神経細胞障害、脳虚血性脳神経細胞障害、パー
キンソン病またはダウン症による脳神経細胞障害などに
対して有効である。また、これらの疾患の予防薬として
も使用することができる。
【0026】
【実施例】以下、実施例および試験例により本発明をさ
らに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によ
りなんら限定されるものではない。
【0027】実施例1 1.コーンスターチ 66 g 2.結晶セルロース 20 g 3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 3.0g 4.軽質無水ケイ酸 0.5g 5.滑沢剤 0.5g 6.ゲニポサイド水解物 10 g 計 100 g 上記の処方に従って1〜6の成分を均一に混合し、打錠
機にて圧縮成型して1錠200mgの錠剤を得た。この
錠剤1錠にはゲニポサイド水解物20mgが含有されて
おり、成人1日1〜30錠を数回に分けて服用する。
【0028】試験例1 PC12h細胞は1975年に、ラット副腎髄質褐色細
胞腫から母株が分離され、その後、畠中寛らによってク
ローン化された樹立細胞で、神経成長因子(NGF)の
刺激により神経細胞様に分化して、神経突起を伸ばす特
徴がある。この細胞を、ポリリジンあるいはコラーゲン
で細胞接着面をコーティングしたプラスチック製の培養
フラスコあるいはシャーレの中で静置培養した。培地は
ダルベッコー変法MEM(DMEM)培地に5〜10%
(v/v)馬血清と5〜10%(v/v)牛胎児血清を
含み、37℃、5〜10%CO2 混有空気(水蒸気飽
和)中でpH7.2〜7.4に保った。
【0029】イリドイド化合物またはその水解物は、
0.1%ジメチルスルフォキシドもしくは蒸留水に溶解
し、高圧滅菌後の試験培地(DMEM培地:Ham’s
F−12=1:1)に直接添加した。35mmシャー
レに細胞を約2万個ずつ分注し、翌日細胞が容器に付着
してから試験培地(2ml/シャーレ)に交換して、4
日ないし8日間培地交換しないで培養し、毎日光学顕微
鏡により形態観察をした。また一部についてはオリンパ
ス社製のXL500高速画像解析システムを使って神経
突起成長度を毎日測定した。またメリディアン社製の細
胞解析装置を使い、試験培地処理細胞のカルバコール
(アセチルコリンレセプターのアゴニスト)刺激、ある
いは塩化カリウム40mM添加直後の細胞内遊離カルシ
ウム濃度の変化をモニターした。
【0030】1.細胞形態および神経突起の成長に及ぼ
す作用 イリドイド化合物またはその水解物の溶液を最終濃度
0.1、1または10μg/mlとなるよう試験第1日
目に培地に加えて培養した。対照には培地に0.1%ジ
メチルスルフォキシドを加えた。神経突起の成長(細胞
の顕微鏡像を画像処理し、細胞当たりの突起の長さ(マ
イクロメーター/細胞)の平均値とその標準誤差で表し
た)を測定した結果を、対照の測定結果とともに表1〜
4に示す。アウクビンの0.1、1μg/mlでは対照
との明らかな差は見られなかったが、他の物質について
は添加濃度に応じて明らかな成長が見られた。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】2.神経刺激による細胞内遊離カルシウム
の濃度変化 ゲニポサイド水解物(最終濃度10μg/ml)の溶液
を培地に添加し、3日間培養後、細胞にカルシウム感受
性蛍光色素フルオ3を取り込ませてから、培養シャーレ
に灌流装置を取り付け、カルバコール(最終濃度0.1
mM)添加直後、あるいは高塩化カリウム溶剤(最終濃
度40mM)添加直後の個々の細胞の中のカルシウム濃
度の変化をメリディアン社製の細胞解析装置を用いてモ
ニターした。対照の培地には0.1%ジメチルスルフォ
キシドを加え3日間培養後、活性物質群と同様にカルシ
ウム濃度変化を測定した。
【0036】その結果、カルバコールに対する反応性は
各細胞で対照よりもゲニポサイド水解物前処理の方が大
きく、それらのカルシウム濃度変化(カルバコール添加
前の蛍光強度に対する添加後の蛍光強度の増加比)を各
群間で統計処理すると表5に示すように、ゲニポサイド
水解物処理群で有意な増加が見られた。このことは細胞
を前処理することにより、アセチルコリンレセプターが
増加し、その結果カルシウムチャンネルが活性化されて
いることを示す。
【0037】
【表5】
【0038】また、高カリウム(40mM、塩化カリウ
ム)液による細胞膜脱分極によって誘導されるカルシウ
ムの取り込みは、各細胞で対照よりもゲニポサイド処理
の方が一般に大きく、それらのカルシウム濃度変化(K
C1添加前の蛍光強度に対する添加後の蛍光強度の増加
比)を各群で統計処理すると、ゲニポサイド水解物前処
理群で、有意な増加が見られた(表6)。このことは細
胞をゲニポサイド水解物で前処理することによりカルシ
ウムチャンネルそのものの感受性も増大していることを
示す。
【0039】
【表6】
【0040】これらの結果より、アセチルコリンに対す
る反応性の面からも、PC12h細胞はイリドイド化合
物またはその水解物で処理することにより分化が促進さ
れ、神経機能が賦活されていることが判る。
【0041】試験例2 動物を3分間一定面積のオープンフィールド内を自由に
探索させて、水飲み室のある場所を潜在的に記憶させた
(獲得試行)後、断水して24時間後に同じフィールド
内に放して、探索行動を開始するまでの時間(スターテ
ィング)、その一角に設けた水飲み室に入るまでの時間
(エンタリング)、室に入ってから水を飲むまでの時間
(ファインディング)、及び行動を開始してから水を飲
むまでの時間(ドリンキング)などの行動パラメータが
短縮されることをテストした。
【0042】マウス(4週齢、雄)の3群(各群7〜1
0匹)のうち、2群に21gの鉛球をぶつけることによ
って、脳外傷を起こさせた。その後、獲得試行を行って
から絶水し、24時間後に試験法により行動パラメータ
ーを測定した。打撲群2群の内の1群には打撲処理前7
日間、1日1回、4mg/kgのゲニポシド水解物を腹
腔内に投与した。その結果、スターティング、エンタリ
ング、ファインディング、ドリンキングのいずれについ
ても、ゲニポシド水解物を投与した方が、投与していな
い群に比べて短縮されていた。特にファインディング、
ドリンキングで顕著な効果が見られた(表7)。
【0043】
【表7】
【0044】試験例3 ゲニピン(和光純薬工業(株)製)を用いて神経突起の
成長を観察した。試験例1と同様の方法で、ゲニピンの
添加濃度は、0.025、0.2、2.5、5μg/m
lで実施した。陽性対照としてNGF0.1μg/ml
添加したものを用いた。ゲニピンを添加すると対照に比
べて細胞の神経突起の成長が大きく、ゲニピンの添加濃
度の高いものほど顕著であり、ゲニポシドのアグリコン
部分に相当するゲニピン自体にも神経突起の成長促進作
用のあることが示された(表8)。
【0045】
【表8】
【0046】試験例4 ラットの海馬神経細胞を培養し、その生存維持に対する
ベータアミロイド蛋白質のモデルペプチド(アミロイド
蛋白質の25から35位の11個のアミノ酸残基より成
り、同蛋白質の毒性の本体とみなされている。これをβ
25−35と称する。)の神経毒性と、それに対するゲ
ニピンの防御効果を試験した。ラットの胎児齢18日の
脳から海馬の神経細胞を集め、炭酸ガス培養器(37
℃)を用い、24穴のプラスティック培養プレートにダ
ルベッコ変法イーグル培地を入れて数日培養した。その
間一部の細胞群に合成β25−35、及びゲニピンを単
独、あるいは同時添加して、培養終了後その培地を集
め、培地中に細胞から漏れ出してくる乳酸脱水素酵素活
性の上昇を通常の方法により測定して、細胞毒性発現の
指標とした。
【0047】その結果、対照群(無添加)と比較して、
ゲニピン(10μg/ml)のみの添加群は有意の差を
示さなかったが、β25−35添加群(40μg/m
l)は対照群と比較して著しい細胞毒性を示した。β2
5−35とゲニピン(β25−35の40μg/ml及
びゲニピンの5μg/ml又はβ25−35の40μg
/ml及びゲニピンの10μg/ml)を同時添加する
と、β25−35の毒性はゲニピンの用量に依存して低
下した(表9)。以上の結果から、ゲニピンがベータア
ミロイド蛋白質の活性部分であるβ25−35の海馬神
経細胞に対する毒性を軽減させることが明らかになっ
た。
【0048】
【表9】
【0049】
【発明の効果】イリドイド化合物は脳神経細胞賦活作用
を示し、外傷、代謝性の要因、脳虚血、ベータアミロイ
ド蛋白質、パーキンソン病およびダウン症による脳神経
細胞障害に対する治療および予防に極めて有用な物質で
ある。本発明によりイリドイド化合物を有効成分とする
脳神経細胞障害に対する治療薬が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07H 17/04 C07H 17/04 (72)発明者 高寺 恒雄 石川県金沢市大桑町サ乙2−151 (72)発明者 佐倉 直樹 石川県金沢市西大桑町17−30 (72)発明者 橋本 忠 石川県金沢市窪1−109

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イリドイド化合物および/またはその薬
    理学的に許容される塩を有効成分とする脳神経細胞障害
    に対する治療薬。
  2. 【請求項2】 脳神経細胞障害が外傷性脳神経細胞障害
    である請求項1記載の治療薬。
  3. 【請求項3】 脳神経細胞障害が代謝性の要因による脳
    神経細胞障害である請求項1記載の治療薬。
  4. 【請求項4】 脳神経細胞障害が脳虚血性脳神経細胞障
    害である請求項1記載の治療薬。
  5. 【請求項5】 脳神経細胞障害がベータアミロイド蛋白
    質に起因する脳神経細胞障害である請求項1記載の治療
    薬。
  6. 【請求項6】 脳神経細胞障害がパーキンソン病または
    ダウン症による脳神経細胞障害である請求項1記載の治
    療薬。
  7. 【請求項7】 イリドイド化合物が、ゲニポサイド、ガ
    ルデノサイド、カタルポール、ゲニピン、アウクビン、
    およびそれらの水解物からなる群より選ばれる1種以上
    である請求項1〜6いずれか記載の治療薬。
JP8212105A 1995-07-24 1996-07-22 脳神経細胞障害に対する治療薬 Pending JPH0995445A (ja)

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