JPH0972402A - 熱間転造歯車並びに熱間転造歯車の製造方法及び製造装置 - Google Patents

熱間転造歯車並びに熱間転造歯車の製造方法及び製造装置

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JPH0972402A
JPH0972402A JP22552595A JP22552595A JPH0972402A JP H0972402 A JPH0972402 A JP H0972402A JP 22552595 A JP22552595 A JP 22552595A JP 22552595 A JP22552595 A JP 22552595A JP H0972402 A JPH0972402 A JP H0972402A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】熱間転造歯車において耐摩耗性及び衝撃強度の
両特性を満足させる。 【解決手段】粗材を熱間転造して歯部81及び歯元部8
2を創成して得られた熱間転造歯車であって、歯部81
はマルテンサイト主体の組織よりなり、歯元部82の表
層部82aは微細パーライト主体の組織よりなることを
特徴とする。歯元部82の表層部82aが微細パーライ
ト主体の組織よりなり、この組織により靱性が向上して
いるるので、衝撃強度を向上させるために焼戻し処理等
により硬度を低下させる必要がなく、マルテンサイト主
体の組織よりなる歯部81において、焼戻し処理等によ
る硬度低下に伴って耐摩耗性が低下することがない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱間転造歯車、並びに熱
間転造歯車の製造方法及び製造装置に関する。本発明に
係る熱間転造歯車は、例えば車両における歯部を備えた
フライホィール、駆動系の歯車に適用できる。
【0002】
【従来の技術】歯車は、円盤状の素材をホブ切削、シェ
ービング仕上を経て製造するのが一般的である。しかし
この方法では、歯車の外径や歯幅が大きくなると、生産
能率が悪化し、コストアップの要因となる。そこで産業
界では、歯車の歯部を熱間転造で創成する技術が開発さ
れている。熱間転造により歯車を製造するには、粗材を
高周波加熱などにより加熱し、加熱された粗材の外周部
にその両側からローラダイスを押し込みつつ回転させ
て、粗材の外周部に所定の歯部を創成する。このように
熱間転造により製造された歯車は、歯部の硬度及び耐摩
耗性を確保するため、熱間転造後、別工程で焼入れ焼戻
し処理、高周波誘導加熱焼入れ焼戻し処理や、あるいは
窒化処理等の表面硬化処理等を施すことが一般的であ
る。
【0003】例えば、中・炭素量の材料よりなる粗材を
熱間転造して得られた歯車は、(1)炉による全体焼入
れ焼戻し、(2)高周波誘導加熱による部分焼入れ焼戻
し、(3)炉による全体焼入れ焼戻し後、高周波誘導加
熱による部分焼入れ焼戻し又は窒化等の表面硬化処理等
の処理がなされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の焼
入れ焼戻し処理後の歯車の金属組織は、図8の(A)に
模式的に示すように、歯車の歯部及び歯元部が焼戻しマ
ルテンサイト(M’)の組織よりなり、歯車の中心側の
深部がフェライト(F)とパーライト(P)との混合組
織(F+P、粗材の元の組織)よりなるものや、図8の
(B)に模式的に示すように、歯車の中心側の深部も歯
部及び歯元部と同様に焼き戻しマルテンサイト(M’)
の組織よりなるものとなる。
【0005】このように歯部及び歯元部が焼戻しマルテ
ンサイト(M’)の組織よりなる歯車においては、硬度
と耐摩耗性及び衝撃強度との関係を図9に示すように、
硬度が向上するにつれて耐摩耗性も向上するが衝撃強度
は逆に低下する。このため、靱性を高めて歯車として必
要とされる衝撃強度を確保するために、適当な焼戻し処
理を施して硬度を低下させることが一般的であるが、こ
のような処理により耐摩耗性も同時に低下してしまう。
【0006】したがって、熱間転造後に焼入れ焼戻し処
理を施して得られた従来の熱間転造歯車においては、耐
摩耗性及び衝撃強度の両特性を十分に満足させることが
困難であった。また、従来の熱間転造装置は、焼入れ処
理するための冷却制御機構を有していない。このため、
熱間転造後に処理材を焼入れ装置に移送し、別途再加熱
して焼入れする必要がある。このように熱間転造後、別
工程として焼入れ処理する方法では、再加熱により歯車
の精度が低下したり、エネルギー効率が低下したりする
といった問題がある。なお、再加熱焼入れにより精度が
低下するのは、再加熱焼入れにより、加熱時のγ変態及
び焼入れ時のマルテンサイト変態が起こるのでこれら組
織変化に伴う体積変化とその不均一さが生じること、及
び熱間転造後の残留応力が再加熱により解放されること
に因る。
【0007】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、(1)本発明の第1の課題は熱間転造歯車におい
て耐摩耗性及び衝撃強度の両特性を満足させることにあ
り、また(2)本発明の第2の課題は精度及びエネルギ
ー効率を低下させることなく熱間転造歯車を製造するこ
とにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記第1の課題を解決す
る本発明の熱間転造歯車は、粗材を熱間転造して歯部及
び歯元部を創成して得られた熱間転造歯車であって、上
記歯部はマルテンサイト主体の組織よりなり、上記歯元
部の表層部は微細パーライト主体の組織よりなることを
特徴とする。
【0009】本発明の熱間転造歯車は、歯元部の表層部
が微細パーライト主体の組織よりなり、この組織により
靱性が向上しているので、衝撃強度を向上させるため
に、焼戻し処理等により硬度を低下させる必要がなく、
マルテンサイト主体の組織よりなる歯部において、焼戻
し処理等による硬度低下に伴って耐摩耗性が低下するこ
とがない。したがって、耐摩耗性及び耐衝撃性の両特性
を満足させることができる。
【0010】上記第1の課題及び上記第2の課題を解決
する本発明の熱間転造歯車の製造方法は、鋼材よりなる
粗材を加熱する加熱工程と、加熱された該粗材の冷却過
程中に熱間転造を行い該粗材に歯部及び歯元部を創成す
る熱間転造工程とを順に実施し、上記冷却過程における
冷却速度は、上記歯部がパーライト変態を起こさずにマ
ルテンサイト変態を起こし、かつ、上記歯元部の表層部
がパーライト変態を起こす範囲内に設定することを特徴
とする。
【0011】加熱された粗材の冷却過程中に熱間転造す
る場合、加工度の大きい部位と小さい部位とでは、CC
T線図におけるパーライトノーズが異なる。すなわち、
加工度の大きい部位と加工度の小さい部位とでパーライ
ト変態領域を比較すると、加工度の大きい部位における
パーライト変態領域は加工度の小さい部位におけるそれ
より短時間側へずれる。このため、加熱された粗材の冷
却過程における冷却速度を、歯部がパーライト変態を起
こさずにマルテンサイト変態を起こし、かつ、歯元部の
表層部がパーライト変態を起こす範囲内に設定すること
により、歯部がマルテンサイト主体の組織よりなり、該
歯部より加工度の大きい歯元部が微細パーライト主体の
組織よりなる熱間転造歯車を得ることができる。また、
本発明方法によれば、熱間転造後に、別途焼入れ焼き戻
し処理する必要がないので、再加熱による精度低下やエ
ネルギーロスがない。
【0012】上記第2の課題を解決する本発明の熱間転
造歯車の製造装置は、粗材を加熱する加熱手段と、加熱
された該粗材に歯部及び歯元部を熱間転造により創成す
る転造手段と、上記粗材を冷却する冷却手段とを有して
いることを特徴とする。本発明の製造装置では、加熱手
段により粗材を加熱した後、加熱された該粗材の冷却過
程中に転造手段により熱間転造し、そして冷却手段によ
り、熱間転造中や熱間転造後の粗材を強制冷却して、焼
入れ硬化させることができる。このため、焼入れ焼戻し
処理するために、熱間転造後に別工程で再加熱する必要
がないので、再加熱による精度低下やエネルギーロスが
ない。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。 (本発明の熱間転造歯車に係る実施の形態)本実施形態
の熱間転造歯車は、その金属組織形態を図1の模式断面
図に部分的に示すように、粗材を熱間転造して歯部81
及び歯元部82を創成して得られた熱間転造歯車であっ
て、歯部81はマルテンサイト(M)主体の組織よりな
り、歯元部82の表層部82aは微細パーライト
(P’)主体の組織よりなり、歯車の中心側の深部83
はフェライト(F)とパーライト(P)との混合組織
(F+P、粗材の元の組織)よりなる。なお、微細パー
ライト(P’)主体の組織よりなる歯元部82の表層部
82aと、フェライト(F)とパーライト(P)との混
合組織(F+P、粗材の元の組織)よりなる歯車の中心
側の深部83との間の部分82bは、マルテンサイト
(M)主体の組織が歯部81におけるマルテンサイト
(M)主体の組織と連続的に形成されている。
【0014】上記歯元部82の表層部82aの厚さは、
特に限定されるものではないが、0.5〜5mm程度と
することができる。上記粗材の材質も特に限定されるも
のでなく、例えば炭素量0.3%以上の鋼材(溶製材、
歯車形成部付近が少なくとも0.3%C以上の粗材)、
焼結材、球状黒鉛鋳鉄等の鋳鉄、鋳鋼とすることができ
る。
【0015】また上記歯部81、及び歯元部82の表層
部82aにおける硬度も特に限定されるものではなく、
例えば歯部81の硬度はビッカース硬さで550〜85
0Hv程度とすることができ、歯元部82の表層部82
aの硬度は同じくビッカース硬さで250〜550Hv
程度とすることができる。本実施形態の熱間転造歯車で
は、歯元部82の表層部82aが微細パーライト
(P’)主体の組織よりなり、この組織により靱性が向
上しているので、衝撃強度を向上させるために、焼戻し
処理等により硬度を低下させる必要がない。このため、
マルテンサイト(M)主体の組織よりなる歯部81にお
いて、焼戻し処理等による硬度低下に伴って耐摩耗性が
低下することがない。したがって、マルテンサイト
(M)主体の組織よりなる歯部81においては、要求さ
れる耐摩耗性に応じた硬度を確保することができ、微細
パーライト(P’)主体の組織よりなる歯元部82の表
層部82aにおいては、微細パーライト(P’)主体の
組織により要求される耐衝撃性に応じた靱性を確保する
ことができる。したがって、本実施形態に係る熱間転造
歯車は、耐摩耗性及び耐衝撃性の両特性を満足させるこ
とが可能となる。
【0016】本実施例形態の熱間転造歯車は、以下に示
す本発明の熱間転造歯車の製造方法に係る実施形態に準
ずる製造方法により製造することができる。 (本発明の熱間転造歯車の製造方法に係る実施の形態)
本実施例形態に係る熱間転造歯車の製造方法では、鋼材
よりなる粗材を加熱する加熱工程と、加熱された該粗材
の冷却過程中に熱間転造を行い該粗材に歯部及び歯元部
を創成する熱間転造工程とを順に実施する。
【0017】上記鋼材の種類は特に限定されるものでは
ないが、例えば炭素量0.3%以上の鋼材(溶製材)と
することができる。上記加熱工程における加熱手段は特
に限定されるものではないが、後述する本発明の熱間転
造歯車の製造装置の実施形態で示すように、例えば高周
波誘導加熱装置等の高周波誘導電流による加熱手段を採
用することができる。この加熱工程では、粗材の少なく
とも外周部、すなわち熱間転造により歯部及び歯元部が
創成される転造部位が少なくともオーステナイト化領域
となるように加熱される。
【0018】上記熱間転造工程における転造手段は特に
限定されるものではないが、後述する本発明の熱間転造
歯車の製造装置の実施形態で示すように、例えば円盤状
をなる粗材の半径方向において該粗材を挟装するように
配置された対をなす第1ローラダイス及び第2ローラダ
イスを、それぞれ粗材に対して同期的に押込可能及び離
間可能に備えたローラ押込装置を採用することができ
る。このローラ押込装置を用いる場合、第1及び第2ロ
ーラダイスを歯部創成方向に同位相で回転させると共
に、加熱された熱間状態の粗材の外周部に対して所定の
押込量で同期的に押し込むことにより、粗材の外周部に
歯部及び歯元部を創成することができる。
【0019】上記熱間転造工程は、粗材の転造部位とし
ての外周部がオーステナイト・フェライト相の領域であ
る時に転造する形態、外周部が安定オーステナイトの領
域である時に転造する形態、外周部が過冷または準安定
オーステナイトの領域である時に転造する形態、外周部
がパーライト変態中において転造を終了する形態のいず
れでも良い。
【0020】本実施形態に係る製造方法では、上記加熱
工程で加熱された粗材の冷却過程における冷却速度を、
上記歯部がパーライト変態を起こさずにマルテンサイト
変態を起こし、かつ、上記歯元部の表層部がパーライト
変態を起こす範囲内に設定する。加熱された粗材の冷却
過程中に熱間転造する場合、加工度の大きい部位と小さ
い部位とでは、CCT線図におけるパーライトノーズが
異なる。すなわち、加工度の大きい部位と加工度の小さ
い部位とでパーライト変態領域を比較すると、加工度の
大きい部位におけるパーライト変態領域は加工度の小さ
い部位におけるそれより短時間側へずれる。このため、
加熱された粗材の冷却過程、すなわち熱間転造中や熱間
転造後の冷却過程における冷却速度を、歯部がパーライ
ト変態を起こさずにマルテンサイト変態を起こし、か
つ、歯元部の表層部がパーライト変態を起こす範囲内に
設定することにより、歯部がマルテンサイト主体の組織
よりなり、該歯部より加工度の大きい歯元部が微細パー
ライト主体の組織よりなる熱間転造歯車を得ることがで
きる。このため、焼入れ焼戻し処理するために、熱間転
造後に別工程で再加熱する必要がないので、再加熱によ
る精度低下やエネルギーロスがない。
【0021】冷却条件についてさらに詳しく説明する。
CCT線図で示されるパーライト変態領域は、粗材の組
成等によりずれるので、一義的に冷却条件を決定するこ
とができないが、例えば転造中の平均歯車温度が100
0〜600℃での冷却速度を25℃/秒以上とし、次い
で600〜400℃での冷却速度を10℃/秒以上とし
た場合、歯部がパーライト変態を起こさずにマルテンサ
イト変態を起こし、かつ、歯元部の表層部がパーライト
変態を起こす範囲内の冷却速度とすることができ、これ
により、歯部がマルテンサイト主体の組織よりなり、該
歯部より加工度の大きい歯元部が微細パーライト主体の
組織よりなる熱間転造歯車を得ることができる。
【0022】また、高炭素鋼などの焼入れ性の悪い材料
においては、200〜150℃の温度範囲において1℃
/分以下の冷却速度で徐冷することによって、歯部のマ
ルテンサイトの熱応力を解放し、焼割れや置き割れを防
ぐことができる。上記冷却過程における冷却手段は特に
限定されないが、後述する本発明の熱間転造歯車の製造
装置の実施形態で示すように、例えば水、エアー、ミス
ト等を噴射する噴射ノズル装置等を用いて熱間転造中や
熱間転造後に粗材を冷却することができる。また熱間転
造中は、例えば、ローラダイス等の転造工具を介して潤
滑剤を兼ねた冷媒を供給することによる流体冷却や、ロ
ーラダイス等の転造工具を歯部及び歯元部が創成された
粗材にそのまま接触させておくことによる固体冷却を利
用して粗材を冷却することもできる。また、熱間転造後
は、例えば粗材を100〜300rpmで回転させなが
ら、上記噴射ノズルの他に、水冷ジャケット、冷し金や
別途冷却手段により冷却された冷却用ダイスを粗材に接
触させたり、冷却剤を充填した冷却槽内に粗材を入れる
たりすることにより冷却することもできる。
【0023】さらに、熱間転造中及び熱間転造後の粗材
の温度を温度センサにより検出し、この検出信号に応じ
て上記したような冷却手段の冷却度合や冷却手段の組み
合わせを制御することにより、冷却速度を任意に変更可
能とすることができる。また、熱間転造中及び熱間転造
後のローラダイス等の転造工具の温度を温度センサによ
り検出し、転造工具の温度を所定の値に制御可能とする
こともできる。
【0024】(本発明の熱間転造歯車の製造装置に係る
実施の形態)本実施形態に係る熱間転造歯車の製造装置
は、粗材を加熱する加熱手段と、加熱された該粗材に歯
部及び歯元部を熱間転造により創成する転造手段と、上
記粗材を冷却する冷却手段とを有している。上記加熱手
段としては特に限定されないが、例えば高周波誘導加熱
装置等の高周波誘導電流による加熱手段を採用すること
ができる。
【0025】上記転造手段は特に限定されないが、例え
ば円盤状の粗材の半径方向において該粗材を挟装するよ
うに配置された対をなす第1ローラダイス及び第2ロー
ラダイスを、それぞれ粗材に対して同期的に押込可能及
び離間可能に備えたローラ押込装置を採用することがで
きる。このローラ押込装置を用いる場合、第1及び第2
ローラダイスを歯部創成方向に同位相で回転させると共
に、加熱された熱間状態の粗材の外周部に対して所定の
押込量で同期的に押し込むことにより、粗材の外周部に
歯部及び歯元部を創成することができる。
【0026】上記冷却手段は特に限定されないが、例え
ば水、エアー、ミスト等を噴射する噴射ノズル装置等を
採用することができる。熱間転造中に粗材を冷却しうる
冷却手段としては、例えば、熱間転造中に円盤状の粗材
を保持する粗材保持部の保持軸の外周に配設された環状
の枠体と、この枠体の粗材側の端面に、円盤状の粗材の
転造部位としての外周部と軸方向に所定距離を隔てて対
向するように周方向に略等間隔で配設された複数のノズ
ルヘッドとを有する噴射ノズル装置を採用することがで
きる。この噴射ノズル装置は、噴射ノズル装置の各ノズ
ルヘッド及び粗材間の一定距離を維持しつつ、上記粗材
を保持する粗材保持部と連動して軸方向に移動可能とな
るように、シフト用シリンダ等の移動手段を備えている
ことが好ましい。また、熱間転造後に粗材を冷却しうる
冷却手段としては、例えば、熱間転造後に粗材保持部と
ともに軸方向に冷却位置まで粗材を移動させ、冷却位置
にある粗材を冷却する冷却手段であって、冷却位置にあ
る粗材の転造部位としての外周部に創成された歯部及び
歯元部の外周面に半径方向外方に所定距離隔てて対向す
るように、周方向に配設された複数のノズルヘッドを備
えた噴射ノズル装置を採用することができる。さらに噴
射ノズル装置におけるノズルヘッドは、複数の噴射口を
有し、水、エアー、及びミスト等が独立に制御して噴射
可能とされていることが好ましい。
【0027】さらに、本実施形態に係る製造装置におい
て、熱間転造中及び熱間転造後の粗材の温度を検出可能
な温度センサを配設し、この検出信号に応じて冷却手段
の冷却度合や冷却手段の組み合わせを制御することによ
り、冷却速度を任意に変更可能とすることができる。ま
た、熱間転造中及び熱間転造後のローラダイス等の転造
工具の温度を検出可能な温度センサを配設し、転造工具
の温度を所定の値に制御可能とすることもできる。この
ような温度センサとしては、放射温度計等を採用するこ
とができる。
【0028】本実施形態に係る製造装置では、加熱手段
により粗材を加熱した後、加熱された該粗材の冷却過程
中に転造手段により熱間転造し、そして冷却手段によ
り、熱間転造中や熱間転造後の粗材を強制冷却して、焼
入れ硬化させることができる。このため、焼入れ焼戻し
処理するために、熱間転造後に別工程で再加熱する必要
がないので、再加熱による精度低下やエネルギーロスが
ない。
【0029】
【実施例】以下、実施例によりさらに具体的に説明す
る。 (実施例に係る装置の構造)まず使用する装置を図2、
図3を参照して説明する。図2は装置全体の平面図であ
る。図3は要部の正面図である。
【0030】図2において、粗材(以下、ブランクとい
う)を保持するブランク保持部1は、互いに対向する太
径の第1保持軸11aを備えた第1ブランク保持部11
と、太径の第2保持軸12aを備えた第2ブランク保持
部12とで構成されている。ブランク回転手段として機
能する第1モータ21が駆動すると、第1ブランク保持
部11はこれの周方向(図3における矢印E1方向)に
回転される。更に第1ブランク保持部11を移動するた
めのブランク搬送用の第2モータ22が装備されてい
る。第2モータ22が回転すると、ボール螺子軸24が
これの周方向に回転し、第1ブランク保持部11ひいて
はブランク7が矢印Y1、Y2方向に搬送される。
【0031】更に図2においてブランク回転手段として
機能する第3モータ23が駆動すると、伝達トルク可変
クラッチ26(例えばパウダークラッチ)を介して第2
ブランク保持部12はこれの周方向つまり第1ブランク
保持部11の回転方向と同じ方向に回転される。また第
2ブランク保持部12搬送用の油圧シリンダ29が駆動
すると、第2ブランク保持部12はボールスプライン2
6fにより第1ブランク保持部11に向けて矢印Y3方
向に移動され、第2ブランク保持部12と第1ブランク
11とでブランク7を挟持して圧着できる。
【0032】第1ブランク保持部11の先方には、ブラ
ンク7を誘導加熱するためのリング状をなす加熱手段と
して機能する高周波加熱コイル28が配置されている。
高周波加熱コイル28によるブランク7の加熱状況は、
放射温度計である温度センサ28cにより検出される。
ローラ押込装置3は、ブランク7の半径方向においてブ
ランク7を挟装する様に配置された対をなす第1ローラ
押込装置31と第2ローラ押込装置41とで構成されて
いる。第1ローラ押込装置31は、熱間加工用の転造工
具として機能する第1ローラダイス32と、第1ローラ
ダイス32の中心軸孔に固定された第1連結軸33を介
して第1ローラダイスローラダイス32を回転可能に保
持する第1ハウジング34とを備えている。更に第1ロ
ーラ押込装置31は、第4モータ24、第1ボール螺子
軸35とを備えている。
【0033】図2において、同様に第2ローラ押込装置
41は、熱間加工用の転造工具として機能する第2ロー
ラダイス42と、第2ローラダイス42の中心軸孔に固
定された第2連結軸43を介して第2ローラダイス42
を回転可能に保持する第2ハウジング44とを備えてい
る。更に第2ローラ押込装置41は、第5モータ25、
第2ボール螺子軸45とを備えている。
【0034】第1ハウジング34は、ブランク7に対し
て矢印X1方向に押込可能および矢印X2方向に離間可
能とされている。第2ハウジング44は、ブランク7に
対して矢印X1方向に押込可能および矢印X2方向に離
間可能とされている。図2から理解できる様に第1ハウ
ジング34は平面『コ』の字形状をなしており、互いに
対向する2個の厚肉の第1対向壁部34a、34bと、
第1対向壁部34a、34b同士をつなぐ厚肉の第1連
設壁部34cとを備えている。第2ハウジング44も同
様に平面『コ』の字形状をなしており、互いに対向する
2個の厚肉の第2対向壁部44a、44bと、第2対向
壁部44a、44b同士をつなぐ厚肉の第2連設壁部4
4cとを備えている。
【0035】図3から理解できる様に第1ハウジング3
4及び第2ハウジング44はそれぞれ、これらを支持す
る基台3aの案内部3bにそって矢印X1、X2方向に
移動可能に配置されている。さて図2において第4モー
タ24が駆動すると、その駆動力は第1減速機24iで
減速されて第1ボール螺子軸35に伝達され、第1ボー
ル螺子軸35がこれの周方向に回転し、これにより第1
ハウジング34が矢印X1方向に搬送され、ひいては第
1ハウジング34に保持されている第1ローラダイス3
2が同方向に搬送され、ブランク7に押し込まれる。
【0036】またこの第4モータ24が逆動すると、第
1ボール螺子軸35がこれの周方向に逆回転し、これに
より第1ハウジング34が矢印X2方向に搬送され、第
1ローラダイス32が同方向に搬送され、ブランク7か
ら離間する。従って第4モータ24、第1ボール螺子軸
35は、第1ローラダイス32をブランク7に押し込む
押込駆動手段として機能する。
【0037】同様に図2において第5モータ25が駆動
すると、その駆動力は第2減速機25iで減速されて第
2ボール螺子軸45に伝達され、第2ボール螺子軸45
がこれの周方向に回転し、これにより第2ハウジング4
4が矢印X1方向に搬送され、第2ローラダイス42が
同方向に搬送され、ブランク7に押し込まれる。この第
5モータ25が逆動すると、第2ボール螺子軸45がこ
れの周方向に逆回転し、これにより第2ハウジング44
が矢印X2方向に搬送され、第2ローラダイス42が同
方向に搬送され、ブランク7から離間する。従って第5
モータ25、第2ボール螺子軸45は、第2ローラダイ
ス42をブランク7に押し込む押込駆動手段として機能
する。
【0038】第1ハウジング34に作用する負荷荷重は
第1ロードセル36で検知され、第1ハウジング34の
移動量は第1リニヤスケール37で検知される。第2ハ
ウジング44に作用する負荷荷重は第2ロードセル46
で検知され、第2ハウジング44の移動量は第2リニヤ
スケール47で検知される。各検知信号は制御系に入力
される。
【0039】前記した第4モータ24及び第5モータ2
5はそれぞれサーボモータであり、制御系からの押込同
期指令信号や離間同期指令信号により制御され、第1ボ
ール螺子軸35及び第2ボール螺子軸45を同期して作
動させる。これにより第1ローラダイス32と第2ロー
ラダイス42とを同期させて矢印X1方向に同期させて
押し込んだり、矢印X2方向に同期させて離間させ得
る。
【0040】また図2において制御系からの駆動指令信
号によりサーボモータであるダイス回転用モータ5が駆
動すると、減速用の歯車50、歯車51を介して第1減
速機52が作動し、更に回転軸52e、第1等速ユニバ
ーサルジョイント53を介して第1連結軸33、第1ロ
ーラダイス32が共に回転し、転造が行われる。更に第
1ダイス回転用モータ5の駆動力は、位相合せ機構55
x、第2減速機55、回転軸55e、第2等速ユニバー
サルジョイント56を介して第2連結軸43、第2ロー
ラダイス42に伝達され、これらが回転し、転造が行わ
れる。位相合せ機構55xは、第1ローラダイス32の
加工歯の周方向の位相と第2ローラダイス42の加工歯
の周方向の位相とを対応させるものであり、第1ローラ
ダイス32と第2ローラダイス42とのダイス位相差を
解消させる機能をもつ。例えば、この位相合せ機構55
xは、放射方向にのびる多数個の係合歯が周方向に列設
された一対の盤体55yと、一対の盤体55yを連結す
る連結手段とで構成でき、盤体55yの周方向における
係合歯の噛み合い位置を調整することにより、ダイス位
相差を調整できる。
【0041】次に図4を参照してブランク保持部1の保
持機構について説明を加える。即ち、図4に示す様に第
1ブランク保持部11は、先端に向かうにつれて外径が
小さくなる第1円錐面11cを備えた剛性の高い第1保
持軸11aと、第1保持軸11aの挿通孔11dに摺動
可能に挿通された作動軸14と、作動軸14の先端の鍔
部14cに係合して第1保持軸11aの先端に配置され
たスリーブ状の締め体15と、半径方向外方つまり矢印
C1方向に変位可能な係合爪として機能するコレット1
6と、第1保持軸11aの先端面に図略のボルトで保持
されたリング状の押圧体17とを備えている。
【0042】図4において作動軸14が矢印D1方向に
作動すると、締め体15が同方向に変位し、これにより
締め体15の円錐面15hがコレット16の円錐面16
tを強圧し、コレット16が矢印C1方向に変位し、こ
れによりコレット16がブランク7の中央孔の内壁面7
1を矢印C1方向に付勢し、以て第1ブランク保持部1
1にブランク7が保持される。
【0043】第2ブランク保持部12は、軸先端に形成
された圧入孔18と、軸先端に図略のボルトで保持され
たリング状の押圧体19とを備えている。圧入孔18に
は、若干のテーパをもつ案内壁面18kが形成されてい
る。そして、ブランク7を保持するために、第1ブラン
ク保持部11と第2ブランク保持部12とが軸長方向に
おいて相対的に接近すると、図4に示す様に第2ブラン
ク保持部12の第2保持軸12aの圧入孔18が締め体
15に圧入される。すると、締め体15の半径方向にお
ける変位が拘束される。よってコレット16がブランク
7を拘束する力が高剛性化し、第1ブランク保持部11
と第2ブランク保持部12とでブランク7が強固に保持
される。従って第1ブランク保持部11及び第2ブラン
ク保持部12で保持されたブランク7は、押込方向つま
り矢印X1、X2方向において実質的に浮動できず、固
定式とも呼ばれる非浮動式とされている。
【0044】さらに、本実施例の製造装置は、図2に示
すように、熱間転造中及び熱間転造後にブランク7を冷
却しうる第1冷却手段としての第1噴射ノズル装置61
と、熱間転造後にブランク7を冷却しうる第2冷却手段
としての第2噴射ノズル装置91とを有している。第1
噴射ノズル装置61は、図5にも示すように、第2ブラ
ンク保持部12の保持軸12aの外周に配設された環状
の枠体62と、この枠体62のブランク7側の端面62
aに、円盤状のブランク7の転造部位としての外周部と
軸方向に所定距離を隔てて対向するように周方向に等間
隔で配設された4個のノズルヘッド63とを有してい
る。この第1噴射ノズル装置61は、各ノズルヘッド6
1及びブランク7間の一定距離を維持しつつ、上記第1
ブランク保持部11と連動して軸方向に移動可能となる
ように、シフト用シリンダ64を備えている。
【0045】また、第2噴射ノズル装置91は、図5に
も示すように、熱間転造後に第2ブランク保持部12と
ともに軸方向に冷却位置までブランク7を移動させ、冷
却位置にあるブランク7(図2に斜線で示すブランク
7)を冷却する冷却手段であって、冷却位置にあるブラ
ンク7の外周に配設された環状の枠体92と、この枠体
92の内周面92aに、冷却位置にあるブランク7の転
造部位としての外周部に創成された歯部及び歯元部の外
周面に半径方向外方に所定距離隔てて対向するように、
周方向に等間隔で配設された4個のノズルヘッド93と
を有している。
【0046】そして、上記第1噴射ノズル装置61の各
ノズルヘッド63、及び上記第2噴射ノズル装置91の
各ノズルヘッド93は、図6に示すように、図示しない
エアー供給手段から供給されるエアーが噴射されるエア
ー噴射口63a(93a)と、図示しない冷却水供給手
段から供給される冷却水が噴射される水噴射口63b
(93b)とを有している。これらのエアー供給手段及
び冷却水供給手段は、制御系によりそれぞれ独立に制御
される。
【0047】さらに本実施例の製造装置は、図2に示す
ように、熱間転造中及び熱間転造後のブランク7の温度
を検出可能な第1温度センサ94と、第1ローラダイス
32の温度を検出可能な第2温度センサ95と、第2ロ
ーラダイス42の温度を検出可能な第3温度センサ96
とを有している。各温度センサ94、95、96はそれ
ぞれ放射温度計よりなり、その検出信号は制御系に入力
される。
【0048】さらに図2から理解できる様に、転造加工
を終えた第1ローラダイス32に対面する様に、液状の
潤滑剤を噴射する第1噴射装置76が装備され、転造加
工を終えた第2ローラダイス42に対面する様に、黒鉛
粉末が含まれた液状の潤滑剤を噴射する第2噴射装置7
7が装備されている。つまり転造位置から90°離れた
位置に第1噴射装置76及び第2噴射装置77はそれぞ
れ装備されている。つまり転造位置から90°離れた位
置に第1噴射装置76及び第2噴射装置77はそれぞれ
装備されており、潤滑剤の塗布タイミングの均一化、塗
布時間の均一化が図られ、更に第1ローラダイス32へ
の潤滑剤塗布量と第2ローラダイス42への潤滑剤塗布
量との均一化が図られている。
【0049】(実施例に係る転造方法)鋼材(S55
C)よりなるブランク7を準備し、第1ブランク保持部
11にブランク7を保持する。次に第2モータ22を駆
動して、ブランク7を矢印Y1方向に搬送して高周波加
熱コイル28内に配置すると共に、第1モータ21を駆
動させてブランク7をその周方向(図3の矢印E1方
向)に回転させる。そしてブランク7を回転させなが
ら、ブランク7の外周部を高周波加熱コイル28で誘導
加熱する。誘導加熱する領域は、ブランク7の外周面か
ら歯丈の約1.3倍程度の深さとする。加熱時間は数秒
〜30秒間程度である。
【0050】ブランク7が所定温度域(900°以上、
本実施例では1100℃)に加熱されたら、加熱終了か
ら転造開始までの時間(図7のAB間)は5秒以内(本
実施例では2〜3秒)とする。ブランク7の内部への伝
熱を抑制してブランクの中央域の温度上昇を軽減し、ブ
ランク7における温度分布を良好にするためである。加
熱が終了したら、第2モータ22によりボール螺子軸2
4を作動させブランク7を更に矢印Y1方向に搬送し、
ブランク7を加工位置R1に配置する。そして油圧シリ
ンダ29の作動により第2ブランク保持部12を矢印Y
3方向に移動させて第2ブランク保持部12と第1ブラ
ンク保持部11との双方により、図4に示す形態でブラ
ンク7を挟持して圧着する。圧着力は、第2ブランク保
持部12を押圧する油圧シリンダ29により数tonf
に確保される。また、このときシフト用シリンダ64を
作動させ、第1噴射ノズル装置61を矢印Y3方向に移
動させる。
【0051】この状態では第3モータ23の駆動力でブ
ランク7はこれの周方向に回転される。このとき第1モ
ータ21の駆動はオフとする。よってブランク7は第3
モータ23のみで回転される。なおブランク7の目標回
転数NB は次の様に設定される。即ち、ローラダイス3
2、42の回転数をNR とし、ローラダイス32、42
の歯数をZRHとし、ブランク7で形成される転造歯車の
歯数をZB とすると、NB =NR ×〔ZB /(ZB +Z
RH)〕となる。
【0052】また第1ローラダイス32及び第2ローラ
ダイス42を等速で同期回転させておく。そして、制御
系による押込同期指令信号により、第4モータ24及び
第5モータ25を駆動させ、第1ローラダイス32を矢
印X1方向に移動してブランク7の外周部に押し込むと
共に、第2ローラダイス42を矢印X1方向に移動して
ブランク7の外周部に互いに同期させて押し込む(押込
速度6mm/sec)。これによりブランク7の外周部
には歯部の盛り上がりとサイジングが生じ、適数個の歯
部81及び歯元部82が熱間転造で創成される。なお、
本実施例では、熱間転造開始温度(図7のB点における
温度):900℃、熱間転造終了温度(図7のC点にお
ける温度):600℃、転造時間(図7のBC間):約
8秒とした。
【0053】その後、制御系からの信号により第4モー
タ24及び第5モータ25の駆動をオフとして、第1ロ
ーラダイス32及び第2ローラダイス42の押込を停止
し、第1ローラダイス32及び第2ローラダイス42に
よるサイジング工程に入る。このサイジング工程では、
制御系からの信号により第1噴射ノズル装置61の各ノ
ズルヘッド63の水噴射口63bから冷却水をブランク
7に噴射する。またサイジング工程中は、ブランク7、
並びに第1ローラダイス32及び第2ローラダイス42
は等速で回転させておく。なお、本実施例では、サイジ
ング開始温度(図7のC点における温度):600℃、
サイジング終了温度(図7のD点における温度):40
0℃、サイジング時間(図7のCD間):7〜8秒とし
た。
【0054】その後、制御系からの離間同期指令信号に
より第1ローラダイス32及び第2ローラダイス42を
矢印X2方向に同期させて移動させてブランク7から離
脱させる。なお、上記熱間転造中及びサイジング中は、
第1噴射装置76及び第2噴射装置77を作動させ、液
状の潤滑剤をそれぞれ第1ローラダイス32及び第2ロ
ーラダイス42に噴射する。
【0055】この様にして熱間転造及びサイジングが終
了したら、第2モータ22によりブランク7を更に矢印
Y1方向に搬送させ、ブランク7を冷却位置(図2に斜
線で示すブランク7の位置)に配置する。このとき第2
モータ22の作動と同期させてシフト用シリンダ64を
作動させ、第1噴射ノズル装置61を第1ブランク保持
部11と連動して矢印Y1方向に移動させる。この状態
で、制御系からの信号により第2噴射ノズル装置91の
各ノズルヘッド93の水噴射口93bからも冷却水をブ
ランク7に噴射する。この間、ブランク7は等速で回転
させておき、また第1噴射ノズル装置61の各ノズルヘ
ッド63の水噴射口63bからも冷却水をブランク7に
噴射させておく。なお、本実施例では、冷却位置におけ
る水冷却開始温度(図7のD点における温度):400
℃、冷却位置における水冷却終了温度(図7のE点にお
ける温度):100℃、冷却位置における水冷却時間
(図7のDE間):30秒とした。
【0056】その後、制御系からの信号により第1噴射
ノズル装置61及び第2噴射ノズル装置91の水噴射口
63b及び93bからの水噴射を停止するとともに、エ
アー噴射口63a及び93aからエアーをブランク7に
噴射してエアー冷却し、ブランク7を室温まで冷却す
る。本実施例では、熱間転造中(図7のBC間)に、第
1ローラダイス32及び第2ローラダイス42による固
体冷却、第1ローラダイス及び第2ローラダイス42を
介する潤滑剤による流体冷却、並びにブランク7の自己
冷却によりブランク7が冷却される。また、サイジング
工程(図7のCD間)中に、第1ローラダイス32及び
第2ローラダイス42による固体冷却、第1ローラダイ
ス及び第2ローラダイス42を介する潤滑剤による流体
冷却、ブランク7の自己冷却、並びに第1噴射ノズル装
置61からの水噴射によりブランク7が冷却される。さ
らに、熱間転造及びサイジング終了後の冷却位置におけ
る水冷却(図7のDE間)に、第1噴射ノズル装置61
及び第2噴射ノズル装置91からの水噴射によりブラン
ク7が冷却される。さらに、上記水冷却後、第1噴射ノ
ズル装置61及び第2噴射ノズル装置91からのエアー
噴射によりブランク7が冷却される。このような冷却手
段の組合せにより、加熱されたブランク7の冷却過程に
おける冷却速度を、1000〜600℃では約40℃/
秒とし、次いで600〜400℃では約25℃/秒と
し、図7にも示すように、加工度の小さい歯部81がパ
ーライト変態を起こさずにマルテンサイト変態を起こ
し、かつ、加工度の大きい歯元部82の表層部82aが
パーライト変態を起こすような冷却条件とした。これに
より、歯部81がマルテンサイト(M)主体の組織より
なり、歯元部82の表層部82aが微細パーライト
(P’)主体の組織よりなる熱間転造歯車を製造するこ
とができた。
【0057】なお、上記歯部81のマトリックスである
マルテンサイトの硬度はビッカース硬さでHv780で
あり、歯元部82の表層部82aのマトリックスである
パーライトの硬さはHv380であった。本実施例に係
る製造装置では、熱間転造及びサイジング中にブランク
7の温度を第1温度センサ94により、第1ローラダイ
ス32及び第2ローラダイス42の温度を第2温度セン
サ95及び第3温度センサ96によりそれぞれ検出可能
であり、また冷却位置におけるブランク7の冷却中にブ
ランク7の温度を第1温度センサ94により検出可能で
ある。そして、これら各温度センサ94〜96の検出信
号に基づいて、第1噴射ノズル装置61の水噴射及びエ
アー噴射、並びに第2噴射ノズル装置91の水噴射及び
エアー噴射をそれぞれ独立して制御することができる。
したがって、ブランク7の組成等に応じて、冷却過程に
おける冷却速度を任意に制御することが可能となる。
【0058】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の熱間転造歯
車は、歯部がマルテンサイト主体の組織よりなるため耐
摩耗性が向上している。また、歯元部の表層部が微細パ
ーライト主体の組織よりなり靱性が向上しているので、
衝撃強度を向上させるために、焼戻し処理等により硬度
を低下させる必要がない。よって、耐摩耗性及び耐衝撃
性の両特性を満足させることができる。
【0059】また、本発明の熱間転造歯車の製造方法に
よれば、歯部がマルテンサイト主体の組織よりなり、該
歯部より加工度の大きい歯元部が微細パーライト主体の
組織よりなり、耐摩耗性及び耐衝撃性の両特性を満足す
る熱間転造歯車を得ることができる。また、熱間転造後
に、別途焼入れ焼き戻し処理する必要がないので、再加
熱による精度低下やエネルギーロスがなく、歯車精度の
向上やコスト低減に有利である。
【0060】さらに、本発明の熱間転造歯車の製造装置
は、熱間転造中や熱間転造後の粗材を冷却手段により強
制冷却して焼入れ硬化させることができるため、焼入れ
焼戻し処理するために、熱間転造後に別工程で再加熱す
る必要がないので、再加熱による精度低下やエネルギー
ロスがなく、歯車精度の向上やコスト低減に有利であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱間転造歯車の金属組織を模式的に示す部分断
面図である。
【図2】装置全体を概略して示す平面図である。
【図3】装置の要部の正面図である。
【図4】ブランク保持部の内部構造を示す断面図であ
る。
【図5】第1ノズル噴射装置及び第2噴射ノズル装置を
示す正面図である。
【図6】第1及び第2ノズル噴射装置のノズルヘッドを
示し、(a)は平面図、(b)は部分断面図である。
【図7】製造方法における温度履歴を示す図である。
【図8】従来の熱間転造歯車の金属組織を模式的に示す
部分断面図である。
【図9】硬度と耐摩耗性及び衝撃強度との関係を示す線
図である。
【符号の説明】
図中、1はブランク保持部、11は第1ブランク保持
部、11aは第1保持軸、12は第1ブランク保持部、
12aは第1保持軸、3はローラ押込装置、31は第1
ローラ押込装置、32は第1ローラダイス、36は第1
ハウジング、41は第2ローラ押込装置、42は第2ロ
ーラダイス、46は第2ハウジング、7はブランク、6
1は第1噴射ノズル装置、91は第2ノズル噴射装置、
81は歯部、82は歯元部、82aは表層部を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 出 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 田中 利秋 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 澤村 政敏 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 坂東 勝次 愛知県豊明市新田町大割21番地の1 豊明 工業株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】粗材を熱間転造して歯部及び歯元部を創成
    して得られた熱間転造歯車であって、 上記歯部はマルテンサイト主体の組織よりなり、上記歯
    元部の表層部は微細パーライト主体の組織よりなること
    を特徴とする熱間転造歯車。
  2. 【請求項2】鋼材よりなる粗材を加熱する加熱工程と、
    加熱された該粗材の冷却過程中に熱間転造を行い該粗材
    に歯部及び歯元部を創成する熱間転造工程とを順に実施
    し、 上記冷却過程における冷却速度は、上記歯部がパーライ
    ト変態を起こさずにマルテンサイト変態を起こし、か
    つ、上記歯元部の表層部がパーライト変態を起こす範囲
    内に設定することを特徴とする熱間転造歯車の製造方
    法。
  3. 【請求項3】粗材を加熱する加熱手段と、加熱された該
    粗材に歯部及び歯元部を熱間転造により創成する転造手
    段と、上記粗材を冷却する冷却手段とを有していること
    を特徴とする熱間転造歯車の製造装置。
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