JPH0967396A - 血液凝固阻害活性を持つタンパク質、その製造方法および血液凝固阻害剤 - Google Patents
血液凝固阻害活性を持つタンパク質、その製造方法および血液凝固阻害剤Info
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- JPH0967396A JPH0967396A JP8056920A JP5692096A JPH0967396A JP H0967396 A JPH0967396 A JP H0967396A JP 8056920 A JP8056920 A JP 8056920A JP 5692096 A JP5692096 A JP 5692096A JP H0967396 A JPH0967396 A JP H0967396A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 血液凝固カスケード因子に特異的にかつ効率
的に阻害する副作用の少ない血液凝固阻害物質、その製
造方法および血液凝固阻害剤を提供する。 【解決手段】 吸血性昆虫の唾液腺により単離された血
液凝固阻害活性を持つタンパク質A。N末端から36個
のアミノ酸が配列番号1で示されるアミノ酸配列を有す
る血液凝固阻害活性を持つタンパク質A。配列番号1で
示されるアミノ酸配列をコードするcDNAを組込んだ
バキュロウィルスを感染させたカイコ又はカイコ培養細
胞を飼育または培養し、その飼育体または培養物から血
液凝固活性を有するタンパク質Aを採取または回収する
ことを特徴とするタンパク質Aの製造方法。前記タンパ
ク質Aを有効成分として含有する血液凝固阻害剤。
的に阻害する副作用の少ない血液凝固阻害物質、その製
造方法および血液凝固阻害剤を提供する。 【解決手段】 吸血性昆虫の唾液腺により単離された血
液凝固阻害活性を持つタンパク質A。N末端から36個
のアミノ酸が配列番号1で示されるアミノ酸配列を有す
る血液凝固阻害活性を持つタンパク質A。配列番号1で
示されるアミノ酸配列をコードするcDNAを組込んだ
バキュロウィルスを感染させたカイコ又はカイコ培養細
胞を飼育または培養し、その飼育体または培養物から血
液凝固活性を有するタンパク質Aを採取または回収する
ことを特徴とするタンパク質Aの製造方法。前記タンパ
ク質Aを有効成分として含有する血液凝固阻害剤。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血液凝固阻害活性
を持つタンパク質、その製造方法および血液凝固阻害剤
に関する。
を持つタンパク質、その製造方法および血液凝固阻害剤
に関する。
【0002】
【従来の技術】日本人の4人に1人が老人となる超高齢
社会は既に目前に迫り我が国は高齢化社会へと進展して
いる。人口の老齢化につれて、老人病領域での疾患が増
えつつある。血液が血管を塞ぐことにより生ずる心筋硬
塞、狭心症等の心臓疾患ならびに脳血栓等の血栓症に起
因する死亡の増加が目立っている。血栓が原因で起こる
これらの疾患を予防したり治療するためには、血栓形成
が抑制でき、血管内で一旦形成した血栓を溶解する性能
を持ち、かつ副作用が無い血液凝固阻害剤の製造ならび
に開発に強い関心が寄せられている。
社会は既に目前に迫り我が国は高齢化社会へと進展して
いる。人口の老齢化につれて、老人病領域での疾患が増
えつつある。血液が血管を塞ぐことにより生ずる心筋硬
塞、狭心症等の心臓疾患ならびに脳血栓等の血栓症に起
因する死亡の増加が目立っている。血栓が原因で起こる
これらの疾患を予防したり治療するためには、血栓形成
が抑制でき、血管内で一旦形成した血栓を溶解する性能
を持ち、かつ副作用が無い血液凝固阻害剤の製造ならび
に開発に強い関心が寄せられている。
【0003】哺乳動物等の血液を摂食するサシガメ類
は、その唾液腺から血液凝固阻害物質を分泌しながら吸
血する。唾液腺に含まれる血液凝固阻害物質は、宿主の
血液を凝固させないで吸血するのに都合の良い性質を持
っている。
は、その唾液腺から血液凝固阻害物質を分泌しながら吸
血する。唾液腺に含まれる血液凝固阻害物質は、宿主の
血液を凝固させないで吸血するのに都合の良い性質を持
っている。
【0004】生体組織が傷を受け血管が損傷して出血す
ると、血液中の血小板が活性化してやがて血液は凝固
し、血栓を形成する。血液凝固系のバランスがくずれて
血栓ができ易くなっている病気が血栓症であり、血液凝
固を積極的に遅延させる血液凝固阻害剤は、血栓症等の
疾患の治療、予防に大変重要である。血液凝固阻害剤と
しては、動物の小腸から抽出されるヘパリンの他に、ク
エン酸ソーダあるいは4−ヒドロキシクマリン等が知ら
れている。これらの血液凝固阻害剤は血栓の発生の予防
あるいは進展の防止、さらには形成した血栓の溶解、除
去用等の臨床分野で利用されている。こうした従来の血
液凝固阻害剤で血液凝固を阻止させる上の問題点は、凝
固カスケード系での阻害の特異性が一般的には低い点に
ある。このような特異性の低い血液凝固阻害剤を用いて
血液凝固を阻害させる場合には多量の血液凝固阻害剤が
必要となり、これに伴い、例えば出血の危険、血小板の
減少、不耐性等の間接的な悪い副作用が起こる危険性が
あった。
ると、血液中の血小板が活性化してやがて血液は凝固
し、血栓を形成する。血液凝固系のバランスがくずれて
血栓ができ易くなっている病気が血栓症であり、血液凝
固を積極的に遅延させる血液凝固阻害剤は、血栓症等の
疾患の治療、予防に大変重要である。血液凝固阻害剤と
しては、動物の小腸から抽出されるヘパリンの他に、ク
エン酸ソーダあるいは4−ヒドロキシクマリン等が知ら
れている。これらの血液凝固阻害剤は血栓の発生の予防
あるいは進展の防止、さらには形成した血栓の溶解、除
去用等の臨床分野で利用されている。こうした従来の血
液凝固阻害剤で血液凝固を阻止させる上の問題点は、凝
固カスケード系での阻害の特異性が一般的には低い点に
ある。このような特異性の低い血液凝固阻害剤を用いて
血液凝固を阻害させる場合には多量の血液凝固阻害剤が
必要となり、これに伴い、例えば出血の危険、血小板の
減少、不耐性等の間接的な悪い副作用が起こる危険性が
あった。
【0005】また、血液凝固阻害剤の他の例としては、
ヒト血液由来のATIII、大豆由来のクニッツ血栓凝固
抑制剤、ヒル(Hirudo medicinali
s)から単離され、トロンビンと選択的に作用しかつ強
力なインヒビターであるヒルジン、血栓溶解剤のウロキ
ナーゼ、TPAなどが挙げられる。これらの血液凝固阻
害物質を用いる場合にあっても、副作用を伴うとか、血
液凝固カスケード因子に特異的には作用しない等の問題
点があった。
ヒト血液由来のATIII、大豆由来のクニッツ血栓凝固
抑制剤、ヒル(Hirudo medicinali
s)から単離され、トロンビンと選択的に作用しかつ強
力なインヒビターであるヒルジン、血栓溶解剤のウロキ
ナーゼ、TPAなどが挙げられる。これらの血液凝固阻
害物質を用いる場合にあっても、副作用を伴うとか、血
液凝固カスケード因子に特異的には作用しない等の問題
点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、血液凝固カ
スケード因子に特異的にかつ効率的に阻害する副作用の
少ない血液凝固阻害物質、その製造方法および血液凝固
阻害剤を提供することをその課題とする。
スケード因子に特異的にかつ効率的に阻害する副作用の
少ない血液凝固阻害物質、その製造方法および血液凝固
阻害剤を提供することをその課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ね、吸血性昆虫の血液凝固阻
害因子が動物の血液の凝固を阻害することに着目した。
そこで、本発明者らは、その血液凝固阻害因子の阻害活
性の基質特性を解析し、当該因子の分子量、アミノ酸組
成、アミノ酸配列の構造を解明するとともに、その血液
凝固阻害因子のmRNAの抽出とcDNAクローニング
を進めて、cDNAの塩基配列を解析し、バキュロウイ
ルス系で吸血性昆虫の唾液腺に含まれる血液凝固阻害因
子の機能を発現させて、優れた機能を持つ生理活性タン
パク質を得ることに成功した。すなわち、本発明によれ
ば、吸血性昆虫の唾液腺により単離された血液凝固阻害
活性を持つタンパク質Aが提供される。また本発明によ
れば、N末端から36個のアミノ酸が配列番号1で示さ
れるアミノ酸配列を有する血液凝固阻害活性を持つタン
パク質Aが提供される。さらに本発明によれば、配列番
号1で示されるアミノ酸配列をコードするcDNAを組
込んだバキュロウィルスを感染させたカイコ又はカイコ
培養細胞を飼育または培養し、その飼育体または培養物
から血液凝固活性を有するタンパク質Aを採取または回
収することを特徴とするタンパク質Aの製造方法が提供
される。さらにまた、本発明によれば、前記タンパク質
Aを有効成分として含有する血液凝固阻害剤が提供され
る。
を解決すべく鋭意研究を重ね、吸血性昆虫の血液凝固阻
害因子が動物の血液の凝固を阻害することに着目した。
そこで、本発明者らは、その血液凝固阻害因子の阻害活
性の基質特性を解析し、当該因子の分子量、アミノ酸組
成、アミノ酸配列の構造を解明するとともに、その血液
凝固阻害因子のmRNAの抽出とcDNAクローニング
を進めて、cDNAの塩基配列を解析し、バキュロウイ
ルス系で吸血性昆虫の唾液腺に含まれる血液凝固阻害因
子の機能を発現させて、優れた機能を持つ生理活性タン
パク質を得ることに成功した。すなわち、本発明によれ
ば、吸血性昆虫の唾液腺により単離された血液凝固阻害
活性を持つタンパク質Aが提供される。また本発明によ
れば、N末端から36個のアミノ酸が配列番号1で示さ
れるアミノ酸配列を有する血液凝固阻害活性を持つタン
パク質Aが提供される。さらに本発明によれば、配列番
号1で示されるアミノ酸配列をコードするcDNAを組
込んだバキュロウィルスを感染させたカイコ又はカイコ
培養細胞を飼育または培養し、その飼育体または培養物
から血液凝固活性を有するタンパク質Aを採取または回
収することを特徴とするタンパク質Aの製造方法が提供
される。さらにまた、本発明によれば、前記タンパク質
Aを有効成分として含有する血液凝固阻害剤が提供され
る。
【0008】本発明の血液凝固阻害活性を持つ生理活性
タンパク質Aは、吸血性昆虫の唾液線由来の血液凝固阻
害活性を示し、血液凝固カスケード系の血液凝固因子、
例えば、第8因子、第9因子、第8因子・第9因子・リ
ン脂質複合体等を阻害し、さらにそのリン脂質複合体の
形成を阻害し、血液の凝固を効果的に防止する。
タンパク質Aは、吸血性昆虫の唾液線由来の血液凝固阻
害活性を示し、血液凝固カスケード系の血液凝固因子、
例えば、第8因子、第9因子、第8因子・第9因子・リ
ン脂質複合体等を阻害し、さらにそのリン脂質複合体の
形成を阻害し、血液の凝固を効果的に防止する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において、血液凝固阻害因
子を含む唾液腺内容物を抽出することができる吸血性昆
虫としては、オオサシガメ、ブラジルサシガメ、アカモ
ンサシガメ等のサシガメ類が例示できる。これらの吸血
性昆虫の中で、オオサシガメは、形が大きく、多量の唾
液腺内容物を取り出すのに適している。オオサシガメ
は、成長期間が約2.5ヶ月と他のサシガメよりも比較
的短く、実験室飼育が容易である。サシガメ飼育用の吸
血宿主としては、哺乳類一般が利用でき、ラット、モル
モット、イヌ、ウサギ等が例示できる。
子を含む唾液腺内容物を抽出することができる吸血性昆
虫としては、オオサシガメ、ブラジルサシガメ、アカモ
ンサシガメ等のサシガメ類が例示できる。これらの吸血
性昆虫の中で、オオサシガメは、形が大きく、多量の唾
液腺内容物を取り出すのに適している。オオサシガメ
は、成長期間が約2.5ヶ月と他のサシガメよりも比較
的短く、実験室飼育が容易である。サシガメ飼育用の吸
血宿主としては、哺乳類一般が利用でき、ラット、モル
モット、イヌ、ウサギ等が例示できる。
【0010】サシガメ類の唾液腺に含まれる血液凝固阻
害因子を単離するには、解剖して唾液腺を取り出し、唾
液腺の摩砕液から先ず粗血液凝固阻害因子を抽出する必
要がある。そのためにはウサギ等の吸血宿主に寄生さ
せ、唾液腺のできるだけ大きい時期、即ち成虫まで飼育
して用いることが望ましい。さらにサシガメを1週間以
上絶食させておくことにより唾液腺より凝血阻害因子を
多量に単離することができる。雄雌の区別なくサシガメ
成虫の唾液腺は抽出材料になる。摘出した唾液腺は生理
食塩水で再度注意深くリンスした後、氷冷下で貯蔵す
る。これを−80℃の超低温フリーザーあるいは液体窒
素中に入れておくと長期に保存することができる。
害因子を単離するには、解剖して唾液腺を取り出し、唾
液腺の摩砕液から先ず粗血液凝固阻害因子を抽出する必
要がある。そのためにはウサギ等の吸血宿主に寄生さ
せ、唾液腺のできるだけ大きい時期、即ち成虫まで飼育
して用いることが望ましい。さらにサシガメを1週間以
上絶食させておくことにより唾液腺より凝血阻害因子を
多量に単離することができる。雄雌の区別なくサシガメ
成虫の唾液腺は抽出材料になる。摘出した唾液腺は生理
食塩水で再度注意深くリンスした後、氷冷下で貯蔵す
る。これを−80℃の超低温フリーザーあるいは液体窒
素中に入れておくと長期に保存することができる。
【0011】唾液腺は、0〜4℃の生理食塩水(0.9
% NaCl)を加えて、エッペンドルフチューブ内に
てガラス棒で押し潰すようにして摩砕する。摩砕液を4
℃、7,000rpmの回転速度で10分間遠心分離し
て得られる上清を採取する。収率を上げるためには、沈
殿部分に生理食塩水を加え同様にして抽出を合計3回以
上繰り返し、上清を一括して集める。得られた唾液腺粗
抽出液は場合により70℃で10分間熱処理することに
よって、本発明における目的以外のタンパク質を沈殿さ
せて除去することができ、かつ、目的の凝血阻害因子を
効率的に単離することができる。熱処理温度を70℃以
上にすると唾液腺に含まれる坑凝血因子の活性が低下す
るので熱処理温度が70℃をあまり越えないように留意
する必要がある。熱処理後の上清部分を併合し、さらに
食塩水を添加して唾液腺抽出液(SG Extrac
t)を得、該抽出液を100μlづつ分注し、−80℃
以下に凍結保存し、次の実験に用いる。
% NaCl)を加えて、エッペンドルフチューブ内に
てガラス棒で押し潰すようにして摩砕する。摩砕液を4
℃、7,000rpmの回転速度で10分間遠心分離し
て得られる上清を採取する。収率を上げるためには、沈
殿部分に生理食塩水を加え同様にして抽出を合計3回以
上繰り返し、上清を一括して集める。得られた唾液腺粗
抽出液は場合により70℃で10分間熱処理することに
よって、本発明における目的以外のタンパク質を沈殿さ
せて除去することができ、かつ、目的の凝血阻害因子を
効率的に単離することができる。熱処理温度を70℃以
上にすると唾液腺に含まれる坑凝血因子の活性が低下す
るので熱処理温度が70℃をあまり越えないように留意
する必要がある。熱処理後の上清部分を併合し、さらに
食塩水を添加して唾液腺抽出液(SG Extrac
t)を得、該抽出液を100μlづつ分注し、−80℃
以下に凍結保存し、次の実験に用いる。
【0012】本発明によれば、タンパク質Aをコードす
るcDNAを組込んだ慣用のバキュロウィルス(学術
名:カイコ核多角体病ウィルス)を感染させたカイコ
(学術名:Bombyx mori)又はカイコ培養細
胞を飼育または培養し、その飼育体または培養物からタ
ンパク質Aを採取または回収することにより、工業的に
タンパク質Aを生産することができる。タンパク質Aを
コードするcDNAは、配列番号2の塩基配列を有す
る。このcDNAは、常法に従って、吸血性昆虫の唾液
腺から抽出したRNAをpolyA(+)RNAとし、
更にcDNAとなし、λgt11に組み込んでライブラ
リーを作製した後、タンパク質Aに対するポリクローナ
ル抗体を用いてスクリーニングし、タンパク質AcDN
Aのクローン化を行うことにより得ることができる。
るcDNAを組込んだ慣用のバキュロウィルス(学術
名:カイコ核多角体病ウィルス)を感染させたカイコ
(学術名:Bombyx mori)又はカイコ培養細
胞を飼育または培養し、その飼育体または培養物からタ
ンパク質Aを採取または回収することにより、工業的に
タンパク質Aを生産することができる。タンパク質Aを
コードするcDNAは、配列番号2の塩基配列を有す
る。このcDNAは、常法に従って、吸血性昆虫の唾液
腺から抽出したRNAをpolyA(+)RNAとし、
更にcDNAとなし、λgt11に組み込んでライブラ
リーを作製した後、タンパク質Aに対するポリクローナ
ル抗体を用いてスクリーニングし、タンパク質AcDN
Aのクローン化を行うことにより得ることができる。
【0013】
【実施例】次に本発明を実施例を挙げて具体的に説明す
るが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
るが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0014】実施例1 オオサシガメの唾液腺の単離 オオサシガメ(Rhodnius prolixus)
はウサギを宿主として吸血させた。オオサシガメは成虫
を雌雄を区別せずに対象にし、25℃長日(日長16時
間)環境下で飼育した。オオサシガメは体長約2cm、
体幅6〜7mmの吸血性昆虫である。ウサギ等の吸血宿
主から十分吸血した直後のオオサシガメの体重は、平均
0.7〜1.0gに達する。できるだけ唾液腺内容物が
多く取れるように吸血後1週間以上絶食させた後唾液腺
を採取した。接着テープでオオサシガメをぺトリ皿に固
定して、氷冷した0.9%の生理食塩水で覆い、立体顕
微鏡下に解剖した。詳細には、前胸と中胸間を切断し、
体内の唾液腺(長さ2mm、幅0.6mm)を取り出し
た。生理食塩水で唾液腺表面の体液を流し落とした後、
唾液腺内容物の活性が低下しないようにするために液体
窒素中に浸漬し実験するまでの間保存した。
はウサギを宿主として吸血させた。オオサシガメは成虫
を雌雄を区別せずに対象にし、25℃長日(日長16時
間)環境下で飼育した。オオサシガメは体長約2cm、
体幅6〜7mmの吸血性昆虫である。ウサギ等の吸血宿
主から十分吸血した直後のオオサシガメの体重は、平均
0.7〜1.0gに達する。できるだけ唾液腺内容物が
多く取れるように吸血後1週間以上絶食させた後唾液腺
を採取した。接着テープでオオサシガメをぺトリ皿に固
定して、氷冷した0.9%の生理食塩水で覆い、立体顕
微鏡下に解剖した。詳細には、前胸と中胸間を切断し、
体内の唾液腺(長さ2mm、幅0.6mm)を取り出し
た。生理食塩水で唾液腺表面の体液を流し落とした後、
唾液腺内容物の活性が低下しないようにするために液体
窒素中に浸漬し実験するまでの間保存した。
【0015】実施例2 オオサシガメ唾液腺からの活性物質の抽出 実施例1で述べたようにして液体窒素に保存した唾液腺
から次の方法で生理活性物質を抽出した。500匹のオ
オサシガメ成虫から摘出した唾液腺の重量は湿潤状態で
約0.2gであった。解剖的に取り出した500匹のオ
オサシガメの唾液腺に5℃の生理食塩水(0.9%Na
Cl)を300μl加え、エッペンドルフチューブ内に
おいてガラス棒で唾液腺を潰すようにして摩砕した。遠
心分離中の試料温度は4℃、回転数は7、000rp
m、遠心分離時間は10分とした。遠心分離後、約50
0μ1の上清を採取した。遠心管底に付着した沈殿に3
00μlの生理的食塩水を加えて上記の抽出操作を計3
回繰り返した。各遠心処理で得られた上清部分を合一し
て、これに生理食塩水を加えて合計量が1500μlに
なるように調整し、これを唾液腺抽出液(以下、単にS
GEとも言う)として、下記以降の実施例で使用した。
から次の方法で生理活性物質を抽出した。500匹のオ
オサシガメ成虫から摘出した唾液腺の重量は湿潤状態で
約0.2gであった。解剖的に取り出した500匹のオ
オサシガメの唾液腺に5℃の生理食塩水(0.9%Na
Cl)を300μl加え、エッペンドルフチューブ内に
おいてガラス棒で唾液腺を潰すようにして摩砕した。遠
心分離中の試料温度は4℃、回転数は7、000rp
m、遠心分離時間は10分とした。遠心分離後、約50
0μ1の上清を採取した。遠心管底に付着した沈殿に3
00μlの生理的食塩水を加えて上記の抽出操作を計3
回繰り返した。各遠心処理で得られた上清部分を合一し
て、これに生理食塩水を加えて合計量が1500μlに
なるように調整し、これを唾液腺抽出液(以下、単にS
GEとも言う)として、下記以降の実施例で使用した。
【0016】実施例3 血液凝固阻害活性の測定(クエン酸血漿) 唾液腺抽出液(SGE)の血液凝固活性は、次のように
して25℃で評価した。生理食塩水に塩化カルシウムが
50mMになるように加えた液10μlを内径1cmの
パイレックス製のガラス試験管に入れ、SGEを一定量
(0.2〜10μl)加えた。これに採血したクエン酸
血漿を200μl加えてよく混ぜてから試験管を25℃
インキュベーター内に直立させ、10秒毎に一回静かに
試験管を傾けて血液が凝固するのを目測して、凝固する
までに要した時間(凝固時間)を観察した。対照区とし
ては、SGEを含まない生理食塩水を用いた。クエン酸
血液またはクエン酸血漿は、プラスチック注射器でウサ
ギから採血し、これに直ちに3.8%クエン酸ソーダを
1/10量加えて撹拌して調製し(クエン酸血液)、更
に500rpm、15分遠心分離した上清(クエン酸血
漿)を取り、氷冷下に保存するか凍結保存して用いた。
得られた凝固実験の結果を表1に示す。
して25℃で評価した。生理食塩水に塩化カルシウムが
50mMになるように加えた液10μlを内径1cmの
パイレックス製のガラス試験管に入れ、SGEを一定量
(0.2〜10μl)加えた。これに採血したクエン酸
血漿を200μl加えてよく混ぜてから試験管を25℃
インキュベーター内に直立させ、10秒毎に一回静かに
試験管を傾けて血液が凝固するのを目測して、凝固する
までに要した時間(凝固時間)を観察した。対照区とし
ては、SGEを含まない生理食塩水を用いた。クエン酸
血液またはクエン酸血漿は、プラスチック注射器でウサ
ギから採血し、これに直ちに3.8%クエン酸ソーダを
1/10量加えて撹拌して調製し(クエン酸血液)、更
に500rpm、15分遠心分離した上清(クエン酸血
漿)を取り、氷冷下に保存するか凍結保存して用いた。
得られた凝固実験の結果を表1に示す。
【0017】
【表1】 唾液腺抽出液(SGE),μl 血液凝固時間(分) 0 4.7 0.2 12 0.4 23 0.6 25 0.8 29 1 35 2 40 4 ∞(凝血せず) 10 ∞( 〃 )
【0018】実施例4 抗凝血因子の確認 クエン酸血液凝固アッセイ系に所定量のSGE(0.2
μlから10μl)を含むように調製して、実施例3に
おけると同様にして、25℃でクエン酸血液の凝固時間
を観察した。SGEを全く含まず生理食塩水だけを含ん
だ対照区はわずか4.7分で血液が凝固したのに対し、
SGEを加えた系ではSGE量が多くなると血液の凝固
時間が長くなり、血液の凝固が阻害され、実施例3にお
けるとほぼ同様の結果が得られることが確認された。4
μl以上のSGEを加えると凝固が完全に阻害された。
この凝固阻害は24時間以上も継統した。SGE3μl
は、オオサシガメ1匹の唾液腺内容物にあたり、およそ
この量が200μlの血液の凝固を阻止する計算にな
る。これは実施例3で述べたクエン酸血漿に関してもほ
ぼ同様であった。
μlから10μl)を含むように調製して、実施例3に
おけると同様にして、25℃でクエン酸血液の凝固時間
を観察した。SGEを全く含まず生理食塩水だけを含ん
だ対照区はわずか4.7分で血液が凝固したのに対し、
SGEを加えた系ではSGE量が多くなると血液の凝固
時間が長くなり、血液の凝固が阻害され、実施例3にお
けるとほぼ同様の結果が得られることが確認された。4
μl以上のSGEを加えると凝固が完全に阻害された。
この凝固阻害は24時間以上も継統した。SGE3μl
は、オオサシガメ1匹の唾液腺内容物にあたり、およそ
この量が200μlの血液の凝固を阻止する計算にな
る。これは実施例3で述べたクエン酸血漿に関してもほ
ぼ同様であった。
【0019】実施例5 第8因子・第9因子・リン脂質複合体阻害活性の測定 活性化された第9因子(IXa)1nM溶液20μlに
SGE(SGE内容物を全く含まない実験区から種々の
希釈度のSGEを加えた実験区まで)を加え、更に第1
0因子(2μM、20μl)、リン脂質(13μg/m
l、20μl)、塩化カルシウム(50mM、20μ
l)を加えよく撹拌する。次に活性化された第8因子
(VIIIa)溶液(25units/ml)を5μl加
え、37℃で10分間反応させ、生成するXaの活性を
スウェーデン AB Kabi社製の合成基質S−22
22を用いて、遊離されるP−ニトロアニリン量を40
5nmの吸光度を定量することにより測定した。その結
果は、SGEを加えないときとの比較により、図1に示
す。図1において、縦軸は阻害率%を示し、横軸はSG
E添加量を示す。この場合の添加量は、阻害率100%
を与えるSGE量(一匹のオオサシガメより取出したS
GE量 3μl)を1とする相対量で示した。一匹のオ
オサシガメより取り出したSGE量の1/9で60%以
上、1/3で90%以上、また一匹分のSGE全量で1
00%阻害した。この阻害はSGE量に依存しており、
SGEは第8因子・第9因子・リン脂質複合体阻害活性
をもつことが確認された。
SGE(SGE内容物を全く含まない実験区から種々の
希釈度のSGEを加えた実験区まで)を加え、更に第1
0因子(2μM、20μl)、リン脂質(13μg/m
l、20μl)、塩化カルシウム(50mM、20μ
l)を加えよく撹拌する。次に活性化された第8因子
(VIIIa)溶液(25units/ml)を5μl加
え、37℃で10分間反応させ、生成するXaの活性を
スウェーデン AB Kabi社製の合成基質S−22
22を用いて、遊離されるP−ニトロアニリン量を40
5nmの吸光度を定量することにより測定した。その結
果は、SGEを加えないときとの比較により、図1に示
す。図1において、縦軸は阻害率%を示し、横軸はSG
E添加量を示す。この場合の添加量は、阻害率100%
を与えるSGE量(一匹のオオサシガメより取出したS
GE量 3μl)を1とする相対量で示した。一匹のオ
オサシガメより取り出したSGE量の1/9で60%以
上、1/3で90%以上、また一匹分のSGE全量で1
00%阻害した。この阻害はSGE量に依存しており、
SGEは第8因子・第9因子・リン脂質複合体阻害活性
をもつことが確認された。
【0020】実施例6 血液凝固阻害活性物質の分離 唾液腺抽出液をクロマトグラフィーにより分画した。ま
ず東ソ製のTSK G2000SW カラム(30cm
×0.5mmφ)を用い、LKB社製の高速液体クロマ
トグラフィー(HPLC)で分画した。Bufferに
は0.01MTris‐HCl(pH8.0)−0.1
5M NaCl系を用い、溶出速度を0.5ml/mに
設定した。分画は1 mlずつ行った。このゲル濾過実
験で得られた各フラクションは、変性条件下でポリアク
リルアミドゲル電気泳動(以下SDS‐PAGE)でバ
ンドの確認を行うとともに、凝固時間を測定し、血液凝
固阻害活性を示す分画を探索したところ、フラクション
7(以下F7)が強い血液凝固阻害活性を示すことが確
認された。
ず東ソ製のTSK G2000SW カラム(30cm
×0.5mmφ)を用い、LKB社製の高速液体クロマ
トグラフィー(HPLC)で分画した。Bufferに
は0.01MTris‐HCl(pH8.0)−0.1
5M NaCl系を用い、溶出速度を0.5ml/mに
設定した。分画は1 mlずつ行った。このゲル濾過実
験で得られた各フラクションは、変性条件下でポリアク
リルアミドゲル電気泳動(以下SDS‐PAGE)でバ
ンドの確認を行うとともに、凝固時間を測定し、血液凝
固阻害活性を示す分画を探索したところ、フラクション
7(以下F7)が強い血液凝固阻害活性を示すことが確
認された。
【0021】実施例7 陰イオン交換クロマトグラフィーによる血液凝固阻害物
質の精製 ゲル濾過の分画のうち活性のあったF7をプールし、透
析後、MonoQカラムに添加し、バッファー(0.0
1M Tris−HCl pH8.0)にて洗浄した。
溶出は食塩の濃度勾配により行った。各分画の凝固時間
を測定した。広い範囲(F15−18)に抗血液凝固活
性物質が存在することが判明した。SDS‐PAGEに
よりモニターしながら分画F15−18をそれぞれ再度
MonoQカラムによってより緩やかな食塩濃度勾配で
溶出を繰り返し、活性を持つ分画(以下、タンパク質A
と称する)を得た。この分画は電気泳動(SDS−PA
GE)で単一なバンドとなっており、精製度が高く単一
な成分にまで精製されていることが確認された。分子量
マーカーのバンドの位置と比較することで、タンパク質
Aの分子量は約20kDaと推定された。
質の精製 ゲル濾過の分画のうち活性のあったF7をプールし、透
析後、MonoQカラムに添加し、バッファー(0.0
1M Tris−HCl pH8.0)にて洗浄した。
溶出は食塩の濃度勾配により行った。各分画の凝固時間
を測定した。広い範囲(F15−18)に抗血液凝固活
性物質が存在することが判明した。SDS‐PAGEに
よりモニターしながら分画F15−18をそれぞれ再度
MonoQカラムによってより緩やかな食塩濃度勾配で
溶出を繰り返し、活性を持つ分画(以下、タンパク質A
と称する)を得た。この分画は電気泳動(SDS−PA
GE)で単一なバンドとなっており、精製度が高く単一
な成分にまで精製されていることが確認された。分子量
マーカーのバンドの位置と比較することで、タンパク質
Aの分子量は約20kDaと推定された。
【0022】実施例8 逆相クロマトグラフィーによる精製 次にCosmosil 5C4カラム(Nacalai)
を用いた、日立製作所製の逆相クロマトグラフィーで、
0.1%トリフルオロ酢酸中でアセトニトリルの濃度勾
配(0−l00%)によりタンパク質Aを溶出した。こ
の分画は単一ピークとなっており、精製度の高いもので
あることが明かであった。
を用いた、日立製作所製の逆相クロマトグラフィーで、
0.1%トリフルオロ酢酸中でアセトニトリルの濃度勾
配(0−l00%)によりタンパク質Aを溶出した。こ
の分画は単一ピークとなっており、精製度の高いもので
あることが明かであった。
【0023】実施例9 実施例8で精製されたタンパク質Aを用いて第8因子・
第9因子・リン脂質複合体阻害活性を実施例5における
と同様に測定したところ、強い阻害活性が認められた。
その結果を図2に示した。
第9因子・リン脂質複合体阻害活性を実施例5における
と同様に測定したところ、強い阻害活性が認められた。
その結果を図2に示した。
【0024】実施例10 等電点測定 実施例8で精製されたタンパク質Aについて、アンフォ
ライン(pH3〜l0)を用いて等電点電気泳動を行
い、ゲル断片のpHを測定することにより等電点(p
I)を決定した。タンパク質Aの等電点は6.0〜6.
2であった。
ライン(pH3〜l0)を用いて等電点電気泳動を行
い、ゲル断片のpHを測定することにより等電点(p
I)を決定した。タンパク質Aの等電点は6.0〜6.
2であった。
【0025】実施例ll N末端のアミノ酸配列の決定 精製されたタンパク質AのN末端のアミノ酸配列の分析
を行った。すなわち、陰イオン交換クロマトグラフィー
により精製されたタンパク質Aについて逆相クロマトグ
ラフィーにより更に精製して得られたピークについて、
ペプチドシーケンサー(Shimadzu、PSQ−
1)によりアミノ酸配列の分析を行った。得られた結果
を、配列番号1に示す。なお配列中のXaaは確定に至
らなかったアミノ酸である。
を行った。すなわち、陰イオン交換クロマトグラフィー
により精製されたタンパク質Aについて逆相クロマトグ
ラフィーにより更に精製して得られたピークについて、
ペプチドシーケンサー(Shimadzu、PSQ−
1)によりアミノ酸配列の分析を行った。得られた結果
を、配列番号1に示す。なお配列中のXaaは確定に至
らなかったアミノ酸である。
【0026】実施例12 分子量の測定 実施例8で精製されたタンパク質AをSDS−PAGE
により分離し、分子量マーカータンパク質バンドの泳動
位置から分子量測定を行ない20kDaと推定した。ま
た、正確な分子量を決定するためマススペクトロメータ
ー(質量分析計:Finnigan MAT、TSQ7
00)により分析した結果、タンパク質Aの分子量は1
9920と決定できた。
により分離し、分子量マーカータンパク質バンドの泳動
位置から分子量測定を行ない20kDaと推定した。ま
た、正確な分子量を決定するためマススペクトロメータ
ー(質量分析計:Finnigan MAT、TSQ7
00)により分析した結果、タンパク質Aの分子量は1
9920と決定できた。
【0027】実施例13 タンパク質AのcDNAのクロニーング オオサシガメの唾腺からRNAを抽出し、poly A
(+)RNAとし、次いでそのcDNAを合成しλgt
llに組み込んでライブラリーを作製した。大腸菌に感
染させてできたプラークに対し、タンパク質Aに対する
ポリクローナル抗体を用いてスクリーニングし、タンパ
ク質AcDNAのクローン化を行った。得られたタンパ
ク質AのcDNAの塩基配列を決定し、配列表の配列番
号2に示す。この塩基配列から考えられるアミノ酸配列
の三文字記号を下に示した。下線部が配列番号1で示し
たN末端のアミノ酸配列と一致し、タンパク質AのcD
NAであることが確認された。そのcDNA構造から得
られたアミノ酸配列よりアミノ酸組成を表示したものが
表2である。全アミノ酸数は179のぺプチドであるこ
とが確認された。また分子量を計算したところ、マスス
ペクトロメーターによる測定結果と一致した。
(+)RNAとし、次いでそのcDNAを合成しλgt
llに組み込んでライブラリーを作製した。大腸菌に感
染させてできたプラークに対し、タンパク質Aに対する
ポリクローナル抗体を用いてスクリーニングし、タンパ
ク質AcDNAのクローン化を行った。得られたタンパ
ク質AのcDNAの塩基配列を決定し、配列表の配列番
号2に示す。この塩基配列から考えられるアミノ酸配列
の三文字記号を下に示した。下線部が配列番号1で示し
たN末端のアミノ酸配列と一致し、タンパク質AのcD
NAであることが確認された。そのcDNA構造から得
られたアミノ酸配列よりアミノ酸組成を表示したものが
表2である。全アミノ酸数は179のぺプチドであるこ
とが確認された。また分子量を計算したところ、マスス
ペクトロメーターによる測定結果と一致した。
【0028】
【表2】
【0029】実施例14 実施例13の方法で調製したcDNAをバキュロウイル
スに組み込んで組換えウィルスを得た。このものをカイ
コ培養細胞BmN4に感染させて形質転換細胞となし、
このものをグレース培地で培養してタンパク質Aを発現
させ、細胞培養物中にタンパク質Aが蓄積されているこ
とを確認した。即ち、組換えウイルスに感染した細胞培
養物抽出液を抗タンパク質A血清によりウエスターン
ブロット分析したところ、タンパク質Aに相当するバン
ドが確認された。さらに、前記組換えウイルスをカイコ
に感染させ、感染カイコを飼育してその体液を取り、タ
ンパク質Aの存在を上記と同様の方法により確認した。
培養細胞抽出液及びカイコ体液からそれぞれHPLCを
用いてタンパク質Aを精製した。この精製タンパク質A
に第8因子・第9因子・リン脂質複合体形成阻害活性が
認められた。
スに組み込んで組換えウィルスを得た。このものをカイ
コ培養細胞BmN4に感染させて形質転換細胞となし、
このものをグレース培地で培養してタンパク質Aを発現
させ、細胞培養物中にタンパク質Aが蓄積されているこ
とを確認した。即ち、組換えウイルスに感染した細胞培
養物抽出液を抗タンパク質A血清によりウエスターン
ブロット分析したところ、タンパク質Aに相当するバン
ドが確認された。さらに、前記組換えウイルスをカイコ
に感染させ、感染カイコを飼育してその体液を取り、タ
ンパク質Aの存在を上記と同様の方法により確認した。
培養細胞抽出液及びカイコ体液からそれぞれHPLCを
用いてタンパク質Aを精製した。この精製タンパク質A
に第8因子・第9因子・リン脂質複合体形成阻害活性が
認められた。
【0030】
【発明の効果】本発明による血液凝固阻害物質タンパク
質Aは、血液凝固カスケード系の第8因子、第9因子、
第8因子・第9因子・リン脂質複合体、第8因子・第9
因子・リン脂質複合体の形成に対して特異的に阻害する
機能を持つ血液凝固阻害剤であるため、副作用の少ない
効率的な血液凝固阻害作用を持つ新しい抗血栓剤として
有望である 本発明の血液凝固阻害性タンパク質Aは、バキュロウイ
ルスベクターを介して遺伝子工学的な手法で多量に製造
できる。生体組織が有する血液凝固阻害因子を分離して
得ている従来の血液凝固阻害剤系薬剤に比べて容易に製
造でき、工業的価値が高い。
質Aは、血液凝固カスケード系の第8因子、第9因子、
第8因子・第9因子・リン脂質複合体、第8因子・第9
因子・リン脂質複合体の形成に対して特異的に阻害する
機能を持つ血液凝固阻害剤であるため、副作用の少ない
効率的な血液凝固阻害作用を持つ新しい抗血栓剤として
有望である 本発明の血液凝固阻害性タンパク質Aは、バキュロウイ
ルスベクターを介して遺伝子工学的な手法で多量に製造
できる。生体組織が有する血液凝固阻害因子を分離して
得ている従来の血液凝固阻害剤系薬剤に比べて容易に製
造でき、工業的価値が高い。
【0031】
【0032】配列番号:1 配列の長さ:36 配列の型:アミノ酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド フラグメント型:N末端フラグメント 起源:オオカシガメ(Rhondnius proli
xus)唾液腺 配列の特徴: 配列: Asp Xaa Ser Thr Asn Ile Ser Pro Lys Gln Gly Leu Asp Lys Ala Lys 1 5 10 15 Tyr Phe Ser Gly Lys Trp Tyr Val Thr His Phe Leu Asp Lys Xaa Xaa 20 25 30 Xaa Val Thr Asp 35
xus)唾液腺 配列の特徴: 配列: Asp Xaa Ser Thr Asn Ile Ser Pro Lys Gln Gly Leu Asp Lys Ala Lys 1 5 10 15 Tyr Phe Ser Gly Lys Trp Tyr Val Thr His Phe Leu Asp Lys Xaa Xaa 20 25 30 Xaa Val Thr Asp 35
【0033】配列番号:2 配列の長さ:916 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to m−RNA) 起源 生物名:オオサシガメ Rhodnius proli
xus 組織の種類:成虫唾液腺 配列: T CTC GTC AAT ATG GAA CTG TAC ACA GCG TTG TTG GCC GTG ACC AT 45 Met Glu Leu Tyr Thr Ala Leu Leu Ala Val Thr Ile T CTC TGT CTA ACT TCA ACA ATG GGA GTC AGT GGA GAC TGT AGT AC 90 Leu Cys Leu Thr Ser Thr Met Gly Val Ser Gly Asp Cys Ser Thr 1 A AAT ATA AGT CCT AAA CAA GGA TTA GAT AAA GCA AAG TAT TTC AG 135 Asn Ile Ser Pro Lys Gln Gly Leu Asp Lys Ala Lys Tyr Phe Ser 5 10 15 C GGT AAA TGG TAT GTG ACT CAT TTT CTA GAC AAG GAT CCT CAG GT 180 Gly Lys Trp Thr Val Thr His Phe Leu Asp Lys Asp Pro Gln Val 20 25 30 T ACA GAT CAA TAC TGC TCT AGT TTT ACA CCA AGA GAA TCT GAT GG 225 Thr Asp Gln Tyr Cys Ser Ser Phe Thr Pro Arg Glu Ser Asp Gly 35 40 45 T ACA GTA AAA GAG GCA TTG TAT CAC TAC AAC GCA AAT AAA AAA AC 270 Thr Val Lys Glu Ala Leu Tyr His Tyr Asn Ala Asn Lys Lys Thr 50 55 60 A TCT TTT TAC AAT ATA GGT GAA GGT AAA TTG GAA TCG TCT GGT TT 315 Ser Phe Tyr Asn Ile Gly Glu Gly Lys Leu Gln Ser Ser Gly Leu 65 70 75 A CAG TAC ACT GCA AAA TAT AAA ACT GTT GAT AAA AAA AAA GCT GT 360 Gln Tyr Thr Ala Lys Tyr Lys Thr Val Asp Lys Lys Lys Ala Val 80 85 90 G TTA AAA GAA GCA GAT GAG AAA AAC TCA TAT ACA CTT ACC GTT TT 405 Leu Lys Glu Ala Asp Glu Lys Asn Ser Tyr Thr Leu Thr Val Leu 95 100 105 G GAA GCT GAC GAT TCG TCC GCT CTG GTC CAC ATA TGT TTG CGG GA 450 Glu Ala Asp Asp Ser Ser Ala Leu Val His Ile Cys Leu Arg Glu 110 115 120 A GGA TCA AAA GAT CTT GGA GAT CTC TAC ACT GTT TTA ACT CAC CA 495 Gly Ser Lys Asp Leu Gly Asp Leu Tyr Thr Val Leu Thr His Gln 125 130 135 A AAA GAT GCG GAA CCC AGT GCA AAA GTT AAA AGC GCC GTG ACT CA 540 Lys Asp Ala Glu Pro Ser Ala Lys Val Lys Ser Ala Val Thr Gln 140 145 150 G GCT GGT TTA CAG TTA AGT CAG TTC GTT GGC ACC AAA GAT CTT GG 585 Ala Gly Leu Gln Leu Ser Gln Phe Val Gly Thr Lys Asp Leu Gly 155 160 165 G TGC CAG TAC GAT GAT CAA TTC ACT TCT TTG TAG CAA AAA TAA CG 630 Cys Gln Tyr Asp Asp Gln Phe Thr Ser Leu 170 175 179 CGT ACA GAA TGA TTT TCA ATG GAA CTT AAA ACC CTA ATA AAA TAA 675 TTG CAA ATT GGT GGA GGT TTT CAT GTA TAA ATA AAC TCA TTA AAA 720 ATC AAT ATC AGA TTT ATT AAA CGT TAG CAA GGA TGT AAT AAG GAA 765 AGA AAC AGT TGA TAT TCA CCT GGA AAG TCA GAA AGT AAT CTG TTA 810 AAA ATA TTA AAT AAA TGT GTG TTC ACC ATT TTA AAA AAA AAA AAA 855 AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA 900 AAA AAA AAA AAA AAAA 916
xus 組織の種類:成虫唾液腺 配列: T CTC GTC AAT ATG GAA CTG TAC ACA GCG TTG TTG GCC GTG ACC AT 45 Met Glu Leu Tyr Thr Ala Leu Leu Ala Val Thr Ile T CTC TGT CTA ACT TCA ACA ATG GGA GTC AGT GGA GAC TGT AGT AC 90 Leu Cys Leu Thr Ser Thr Met Gly Val Ser Gly Asp Cys Ser Thr 1 A AAT ATA AGT CCT AAA CAA GGA TTA GAT AAA GCA AAG TAT TTC AG 135 Asn Ile Ser Pro Lys Gln Gly Leu Asp Lys Ala Lys Tyr Phe Ser 5 10 15 C GGT AAA TGG TAT GTG ACT CAT TTT CTA GAC AAG GAT CCT CAG GT 180 Gly Lys Trp Thr Val Thr His Phe Leu Asp Lys Asp Pro Gln Val 20 25 30 T ACA GAT CAA TAC TGC TCT AGT TTT ACA CCA AGA GAA TCT GAT GG 225 Thr Asp Gln Tyr Cys Ser Ser Phe Thr Pro Arg Glu Ser Asp Gly 35 40 45 T ACA GTA AAA GAG GCA TTG TAT CAC TAC AAC GCA AAT AAA AAA AC 270 Thr Val Lys Glu Ala Leu Tyr His Tyr Asn Ala Asn Lys Lys Thr 50 55 60 A TCT TTT TAC AAT ATA GGT GAA GGT AAA TTG GAA TCG TCT GGT TT 315 Ser Phe Tyr Asn Ile Gly Glu Gly Lys Leu Gln Ser Ser Gly Leu 65 70 75 A CAG TAC ACT GCA AAA TAT AAA ACT GTT GAT AAA AAA AAA GCT GT 360 Gln Tyr Thr Ala Lys Tyr Lys Thr Val Asp Lys Lys Lys Ala Val 80 85 90 G TTA AAA GAA GCA GAT GAG AAA AAC TCA TAT ACA CTT ACC GTT TT 405 Leu Lys Glu Ala Asp Glu Lys Asn Ser Tyr Thr Leu Thr Val Leu 95 100 105 G GAA GCT GAC GAT TCG TCC GCT CTG GTC CAC ATA TGT TTG CGG GA 450 Glu Ala Asp Asp Ser Ser Ala Leu Val His Ile Cys Leu Arg Glu 110 115 120 A GGA TCA AAA GAT CTT GGA GAT CTC TAC ACT GTT TTA ACT CAC CA 495 Gly Ser Lys Asp Leu Gly Asp Leu Tyr Thr Val Leu Thr His Gln 125 130 135 A AAA GAT GCG GAA CCC AGT GCA AAA GTT AAA AGC GCC GTG ACT CA 540 Lys Asp Ala Glu Pro Ser Ala Lys Val Lys Ser Ala Val Thr Gln 140 145 150 G GCT GGT TTA CAG TTA AGT CAG TTC GTT GGC ACC AAA GAT CTT GG 585 Ala Gly Leu Gln Leu Ser Gln Phe Val Gly Thr Lys Asp Leu Gly 155 160 165 G TGC CAG TAC GAT GAT CAA TTC ACT TCT TTG TAG CAA AAA TAA CG 630 Cys Gln Tyr Asp Asp Gln Phe Thr Ser Leu 170 175 179 CGT ACA GAA TGA TTT TCA ATG GAA CTT AAA ACC CTA ATA AAA TAA 675 TTG CAA ATT GGT GGA GGT TTT CAT GTA TAA ATA AAC TCA TTA AAA 720 ATC AAT ATC AGA TTT ATT AAA CGT TAG CAA GGA TGT AAT AAG GAA 765 AGA AAC AGT TGA TAT TCA CCT GGA AAG TCA GAA AGT AAT CTG TTA 810 AAA ATA TTA AAT AAA TGT GTG TTC ACC ATT TTA AAA AAA AAA AAA 855 AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA 900 AAA AAA AAA AAA AAAA 916
【図1】SGE添加量と第8因子・第9因子・リン脂質
複合体阻害率%との関係を示すグラフである。
複合体阻害率%との関係を示すグラフである。
【図2】精製タンパク質A量と第8因子・第9因子・リ
ン脂質複合体阻害率%との関係を示すグラフである。
ン脂質複合体阻害率%との関係を示すグラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】 吸血性昆虫の唾液腺により単離された血
液凝固阻害活性を持つタンパク質A。 - 【請求項2】 N末端から36個のアミノ酸が配列番号
1で示されるアミノ酸配列を有する血液凝固阻害活性を
持つタンパク質A。 - 【請求項3】 配列番号1で示されるアミノ酸配列をコ
ードするcDNAを組込んだバキュロウィルスを感染さ
せたカイコ又はカイコ培養細胞を飼育または培養し、そ
の飼育体または培養物から血液凝固活性を有するタンパ
ク質Aを採取または回収することを特徴とするタンパク
質Aの製造方法。 - 【請求項4】 請求項1又は2のタンパク質Aを有効成
分として含有する血液凝固阻害剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8056920A JPH0967396A (ja) | 1995-06-19 | 1996-02-20 | 血液凝固阻害活性を持つタンパク質、その製造方法および血液凝固阻害剤 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17554595 | 1995-06-19 | ||
JP7-175545 | 1995-06-19 | ||
JP8056920A JPH0967396A (ja) | 1995-06-19 | 1996-02-20 | 血液凝固阻害活性を持つタンパク質、その製造方法および血液凝固阻害剤 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0967396A true JPH0967396A (ja) | 1997-03-11 |
Family
ID=26397925
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8056920A Pending JPH0967396A (ja) | 1995-06-19 | 1996-02-20 | 血液凝固阻害活性を持つタンパク質、その製造方法および血液凝固阻害剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0967396A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9226489B2 (en) | 2011-03-18 | 2016-01-05 | Ecolab Usa Inc. | Heat system for killing pests |
-
1996
- 1996-02-20 JP JP8056920A patent/JPH0967396A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9226489B2 (en) | 2011-03-18 | 2016-01-05 | Ecolab Usa Inc. | Heat system for killing pests |
US10070639B2 (en) | 2011-03-18 | 2018-09-11 | Ecolab Usa Inc. | Heat system for killing pests |
US11013226B2 (en) | 2011-03-18 | 2021-05-25 | Ecolab Usa Inc. | Heat system for killing pests |
US11737445B2 (en) | 2011-03-18 | 2023-08-29 | Ecolab Usa Inc. | Heat system for killing pests |
US12063921B2 (en) | 2011-03-18 | 2024-08-20 | Ecolab Usa Inc. | Heat system for killing pests |
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