JPH0959836A - フリクションディスク - Google Patents

フリクションディスク

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JPH0959836A
JPH0959836A JP7790996A JP7790996A JPH0959836A JP H0959836 A JPH0959836 A JP H0959836A JP 7790996 A JP7790996 A JP 7790996A JP 7790996 A JP7790996 A JP 7790996A JP H0959836 A JPH0959836 A JP H0959836A
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JP
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friction
ceramics
yarn
thermal conductivity
crystal grains
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JP7790996A
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English (en)
Inventor
Kazunori Takenouchi
一憲 竹之内
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Kyocera Corp
Original Assignee
Kyocera Corp
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Publication date
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  • Yarns And Mechanical Finishing Of Yarns Or Ropes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】セラミックス製フリクションディスクの特徴で
ある作業安定性、寸法精度、耐久性、低ランニングコス
トを維持したまま、スノー発生量を減らし、撚数を多く
して、高品質で高加撚力を実現する。 【解決手段】フリクションディスク10を熱伝導率が2
9W/m・K以上のセラミックスで形成し、糸状との接
触面12における結晶粒子のエッジを丸くする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、延伸しながら走行
する合繊繊維フィラメント・マイクロフィラメント糸に
仮撚を付与する摩擦仮撚装置におけるフリクションディ
スクに関するものであり、特に高品質の加工糸を得るこ
とができ、かつ作業時の安定性、寸法精度、耐久性、ラ
ンニングコストに優れた摩擦仮撚装置用フリクションデ
ィスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】3軸外接型摩擦仮撚装置の構造は、図3
に示すように複数のフリクションディスク10を備えた
3本の回転軸20を、各フリクションディスク10が互
いに部分的に重なるように配置したものである。そし
て、糸条30を各フリクションディスク10に接するよ
うに螺旋状に備え、各フリクションディスク10を回転
させながら糸条30を矢印方向に走行させると、この糸
条30に仮撚を施すことができるようになっている。
【0003】このフリクションディスク方式は、ピン方
式やニップベルト方式等の仮撚方式と比較して糸張力を
均一にできる作用が優れており、かつ加工速度を高速化
できることから、広く使用されている。そのため、フリ
クションディスク10の材質、形状、組合せ等について
さまざまな提案がなされている。
【0004】例えば、特開昭49−13457号公報で
は樹脂製フリクションディスクが、特開昭49−699
52号公報では糸との接触面に溝を形成したセラミック
ス製フリクションディスクが、特開昭52−15652
号公報ではクロムのコーティング又はメッキを施したフ
リクションディスクがそれぞれ紹介されている。
【0005】ここで、上記各材質ごとに特性評価を行っ
たところ、表1に示すようにフリクションディスク10
の材質によって糸品質、耐久性、コストが異なってい
る。即ち、樹脂製のものは糸品質は良好であるが、装置
稼働初期のディスクの温度上昇に伴う摩擦条件の変化に
より張力変動を起こし、織機等の次工程の品質に悪影響
を及ぼしたり、あるいは使用雰囲気や油剤により半年で
外径が0.2mmも膨潤する為に、耐久性が低く、また
張力モニター常備による装置のコスト上昇が問題とな
る。
【0006】一方、クロムをコーティングしたものは、
糸の撚数、強度等の糸品質が不十分であり、コストが高
いという問題がある。
【0007】また、セラミックス製フリクションディス
クは、作業安定性、寸法精度、耐久性、ランニングコス
トに優れるが、毛羽やスノーを発生させやすく、糸品質
に課題を残している。
【0008】
【表1】
【0009】そこでセラミックス製フリクションディス
クの表面粗さや結晶粒子径を種々制御して加撚力を向上
させ、スノー(繊維摩耗粉、油剤)を低減させる方法が
提案されている。例えば、特公昭53−10185号公
報にはアルミナセラミックスの結晶粒子径10〜40μ
m、表面粗さ1〜3sとして結晶粒子と単糸フィラメン
トが噛み合うようにして高加撚力を実現する方法が提案
されている。特開昭51−92335号公報ではアルミ
ナセラミックスの平均結晶粒子径30μm以上、表面粗
さ3s以上として仮撚と同時に擦過傷を形成する方法が
提案されている。特開昭52−18948号公報ではセ
ラミックス、金属で表面粗さ4〜12sとして高加撚力
を得る方法が提案されている。特開昭52−63461
号公報ではセラミックス結晶粒子径2〜30μm、表面
粗さ1〜6sとして加撚力の向上及びスノー低減する方
法が提案されている。
【0010】また、特開昭52−132146号公報で
は純度89%以上のアルミナセラミックスで表面粗さR
z=2〜3.5μm、Rmax=3〜4.5μmとして
加撚力の向上及びスノー低減する方法が提案されてい
る。特開昭53−111148号公報ではセラミックス
またはセラミックスコーティングにおいて結晶粒子径2
〜30μm、表面粗さ1〜3sとして加撚力の向上及び
スノーを低減する方法が提案されている。特開昭55−
76127号公報では純度97%以上のアルミナセラミ
ックスで平均結晶粒子径3〜10μm、表面粗さRz=
1.6〜2.7、ディスク厚み=6〜6.2、繊維接触
面のR=3.2〜3.4、繊維接触面とディスク側面と
のつなぎr=0.4〜0.6として加撚力の向上をする
方法が提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】前述のように多数の提
案がなされているが、セラミックス製フリクションディ
スクにおいてはマイクロフィラメント加工用として、糸
品質が十分なものは得られていなかった。
【0012】これは、フリクションディスク10をセラ
ミックスで形成する場合、セラミック原料を所定形状に
成形し、焼成した後、表面をダイヤモンド砥石等で研
削、研摩することによって寸法精度を高めるとともに所
定の表面粗さとすることから、表面の結晶粒子は鋭いエ
ッジを有しており、糸条30を削ってスノーを発生させ
ることを避けられないためであった。
【0013】また、フリクションディスク10の表面は
糸条30が高速で通過するため、摩擦熱により発熱し高
温となる。その結果、糸条30の表面が変質してスノー
が発生しやすくなったり、あるいはこのスノーがフリク
ションディスク10の表面に付着して仮撚できなくなる
グレージング現象が発生するなどの問題があった。
【0014】これらの現象により、機械の動作が不安定
となり、頻繁に清掃しなければならないことから稼働率
が低下するという不都合があった。
【0015】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、フリク
ションディスクを熱伝導率が29W/m・K以上のセラ
ミックスで形成するとともに、糸状との接触面における
結晶粒子のエッジを丸くしたことを特徴とするものであ
る。
【0016】即ち、本発明のフリクションディスクは、
セラミックスの表面を研削、研摩した後、再焼成等の熱
処理、化学的エッチング、物理的エッチング等を施して
結晶粒子のエッジを丸くすることにより、糸条にダメー
ジを与えることなくスノー発生を防止するようにしたも
のである。
【0017】また、フリクションディスクを成すセラミ
ックスとして、熱伝導率29W/m・K以上のものが必
要であることを見出した。即ち、フリクションディスク
の糸条との接触部には摩擦熱が生じるが、セラミックス
の熱伝導率が29W/m・K未満であると、この摩擦熱
が放熱されにくく高温になってしまうため、糸条をわず
かに溶融させてフリクションディスクとの間にすべりを
生じ、所定の撚数が得られなくなるのである。
【0018】そして、本発明では、上記熱伝導率の高い
セラミックスとして、炭化珪素質セラミックス、窒化ア
ルミニウム質セラミックス、又はAl2 3 含有量9
9.5%以上のアルミナセラミックスのいずれかを用い
たことを特徴とする。
【0019】さらに、本発明では、上記フリクションデ
ィスクにポリエステル75d/48f糸を速度100m
/分、張力20g、接触角45°で走行させた時の摩擦
係数が0.28以上であることを特徴とするものであ
る。
【0020】即ち、糸条の撚数を高めるためにはフリク
ションディスクとの摩擦係数が重要であり、これを上記
範囲内とすることにより、優れた仮撚特性を得られるの
である。
【0021】また、本発明ではセラミックス製の基体の
表面に熱伝導率が29W/m・K以上の高熱伝導層を備
えてフリクションディスクを構成したことを特徴とす
る。即ち、フリクションディスクの表面に高熱伝導層を
備えることによって、糸条との接触による摩擦熱を放熱
しやすくし、高温になることを防止できるようにした。
【0022】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を説明す
る。
【0023】図1、2(A)に示すようにフリクション
ディスク10は、セラミックスからなる円盤状体であ
り、中央に回転軸への取付のための貫通孔11を有し、
糸条30との接触面12は曲面状となっている。
【0024】このフリクションディスク10を3軸外接
型摩擦仮撚装置に使用する場合は、図3に示すように回
転軸20に取付け、各フリクションディスク10が部分
的に重なるように配置し、糸条30を各フリクションデ
ィスク10に接するように螺旋状に備え、各フリクショ
ンディスク10を回転させながら、糸条30を矢印方向
に走行させると、この糸条30に仮撚を施すことができ
る。
【0025】このとき、糸条30はフリクションディス
ク10の接触面12によって撚りを施されるため、この
接触面12の状態が重要である。
【0026】そして、本発明ではこの接触面12におい
て結晶粒子のエッジを丸くすることによって、スノー発
生を防止し、かつ結晶粒子を小さくして多くの撚りを付
与させるようにした。
【0027】ここで、結晶粒子のエッジが丸いとは、表
面の顕微鏡写真等によって結晶粒子を観察した時に、各
結晶が鋭いエッジを有しておらず丸い形状であることを
意味する。そして、結晶粒子のエッジを丸くするために
は、再焼成、化学的・物理的エッチング等を行えば良
い。例えば、再焼成を行う場合は、所定の製造方法によ
って得られたセラミックス製のフリクションディスク1
0に研削、研摩加工を施した後で、焼成温度と同程度か
それ以上の温度で再度焼成すれば良い。このように再焼
成することによって、結晶エッジが加熱軟化されて鋭い
エッジのない丸い形状となる。また、化学的・物理的エ
ッチングを行えば結晶粒子のエッジ部がエッチングで除
去されて丸みを帯びた形状となる。
【0028】また、本発明では、フリクションディスク
10を成すセラミックスとして、熱伝導率が29W/m
・K以上の熱伝導性の高いセラミックスを用いたことを
特徴とする。そのため、糸条30の摺動により接触面1
2に生じた摩擦熱を良好に放熱し、接触面12が高温と
なることを防止できることから、糸条30の溶融に伴う
すべりの発生を防止し、仮撚特性を向上できるのであ
る。
【0029】なお、上記熱伝導率が29W/m・K以上
のセラミックスとしては、高純度アルミナセラミック
ス、炭化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラ
ミックス等を用いる。
【0030】高純度アルミナセラミックスとしては、A
2 3 含有量が99.5重量%以上、好ましくは9
9.7重量%以上であり、残部がSiO2 等からなるも
のである。このように、アルミナセラミックスにおける
Al2 3 含有量を高くすることにより、熱伝導率を向
上できるとともに硬度、強度を大きくできることから、
フリクションディスク自体の耐久性を向上できる。そし
て、Al2 3 含有量を99.5重量%以上とすること
により、熱伝導率を29W/m・K以上とすることがで
き、上述したように仮撚特性を向上できる。
【0031】また、Al2 3 含有量が99.5重量%
以上、好ましくは99.7重量%以上のアルミナセラミ
ックスは、結晶粒子を丸くするために再焼成を行った場
合でも結晶の異常成長を抑制しやすいため、上述した最
大結晶粒径20μm以下となるような焼結体を容易に得
ることができる。
【0032】また、炭化珪素質セラミックスとは、Si
Cを主成分とし、B,CまたはAl2 3 ,Y2 3
の焼結助剤を含有するものであり、60〜70W/m・
Kの熱伝導率を有している。
【0033】さらに、窒化アルミニウム質セラミックス
とは、AlNを主成分とし、焼結助剤としてCaO,S
rO,BaO等の周期律表第2a族元素酸化物や、Y2
3、Er2 3 、Yb2 3 等の周期律表第3a族元
素酸化物を0.5〜20重量%の割合で添加したもので
あり、焼成過程でこれらの焼結助剤成分を0.001〜
1重量%程度にまで揮散させることによって、熱伝導率
を170W/m・K以上まで高めたものである。
【0034】また、本発明のフリクションディスク10
において、接触面12の最大粒子径は20μm以下とす
ることが好ましい。これは、粒子径が20μmを超える
ような粗大粒子が存在すると、この粗大粒子部分で糸条
30が滑って摩擦力が弱まり、撚りを付与しにくくなる
ためである。これに対し最大結晶粒子径が20μm以下
であれば、全体の結晶粒子径が小さく、均一である為
に、糸に対する撚掛け性にも優れた結果を示す。ちなみ
に、平均粒子径は2〜7μmの範囲内が好ましい。
【0035】さらに、結晶粒子の最大アスペクト比は3
以下であることが好ましい。ここで、アスペクト比とは
粒子の短径に対する長径の比のことであり、最大アスペ
クト比を3以下としたのは、アスペクト比が3を超える
ような柱状粒子が存在すると、この柱状粒子部分で糸状
30との摩擦力が弱まり、撚りを付与しにくくなるため
である。つまり、結晶粒子のアスペクト比が小さく、球
形状に近い多角形形状であると、平均的に糸に接触する
結晶粒子のR形状が大きくなる結果、スノー発生量は小
さくなる。
【0036】なお、上記最大結晶粒子径と最大アスペク
ト比は、いずれも表面の顕微鏡写真を元にして測定する
ことができる。また、最大結晶粒子径と最大アスペクト
比を上記範囲内とするためには、セラミック原料の組成
や粒径あるいは本焼成や再焼成の条件等を調整すれば良
い。
【0037】また、上記フリクションディスク10の接
触面12の表面粗さ(Ra)は0.1〜1.5μmの範
囲が好ましい。これは、表面粗さ(Ra)が1.5μm
を越えると糸条30との摩擦係数が小さくなり過ぎて仮
撚特性が悪くなるためである。また、表面粗さ(Ra)
を小さくすると摩擦係数が大きくなって仮撚特性が向上
するが、0.1μm未満になると急激に摩擦係数が増加
することから、糸条30が接触面12でスリップして加
熱され、仮撚を施せなくなってしまうためである。さら
に、接触面の表面粗さ(Ra)は、0.6〜0.9μm
の範囲内とすることが好ましい。
【0038】次に本発明の他の実施形態を説明する。
【0039】図2(B)に示すように、セラミックス製
の基体10aの少なくとも糸条30が接触する表面に高
熱伝導層10bを備えてフリクションディスク10を形
成することもできる。このようにすれば、糸条30との
接触面12の熱伝導性が高いため、糸条30が高速で摺
動しても発生した摩擦熱を良好に放熱し、フリクション
ディスク10が局部的に高温となることを防止できるの
である。
【0040】即ち、フリクションディスク10と糸条3
0とは共に高速で移動し、かつ両者の接触点が小さいの
で、フリクションディスク10の極表層の熱伝導形態が
重要である。一般に、結晶体の熱伝導について以下の式
が提案されている。
【0041】λ=1/4(ρ・v・l・c) λ:熱伝導率 ρ:密度 v:熱弾性波の平均伝播
速度 l:フォノンの平均自由工程で、熱弾性波が相互干渉を
受けて最初の強さの1/eに減少するまでの距離 c:固体の比熱 熱伝導率の大きい材料では、熱弾性波の平均伝播速度v
及びフォノンの自由工程で熱弾性波が相互干渉を受けて
最初の強さの1/eに減少するまでの距離lが大きくな
るために、糸接触点つまり加熱源から熱がフリクション
ディスク10の極表層を大きい速度で伝播され、雰囲気
空気に放熱することで接触面12の温度上昇が抑制され
るのである。
【0042】したがって、フリクションディスク10の
場合、表面に高熱伝導層10bが存在していれば十分な
熱伝導性と放熱性があり、接触面12の温度上昇を防止
することができるのである。
【0043】なお、上記基体10aを成すセラミックス
としては、上述した炭化珪素質セラミックス、窒化アル
ミニウム質セラミックス、高純度アルミナセラミックス
に限らず、低純度アルミナセラミックスやジルコニアセ
ラミックス等を用いることもできる。
【0044】また、高熱伝導層10bは、29W/m・
K以上の熱伝導率を有するAlN,TiN等の窒化物、
SiC,B4 C等の炭化物、TiB2 ,ZrB2 ,Hf
2等のホウ化物、あるいはAl2 3 ,DLC(ダイ
ヤモンドライクカーボン、合成疑似ダイヤモンド、アモ
ルファスカーボン、i−カーボン等とも呼ばれる),ダ
イヤモンド等を用いる。
【0045】これらの高熱伝導層10bは、基体10a
上にCVD法やPVD法等の薄膜形成手段で形成するこ
とができ、特に熱CVDでは成膜面に垂直に柱状結晶が
成長する傾向を利用して成膜により半球状の凹凸を形成
できる。
【0046】あるいは、基体10aをアルミナセラミッ
クスで形成しておいて、窒素ガス中で熱処理したり、あ
るいはNイオンをドープする等の方法よって表面に窒化
アルミニウムからなる高熱伝導層10bを形成すること
もできる。
【0047】いずれの場合も、高熱伝導層10bの厚み
は0.1μm以上とすることが好ましく、また接触面1
2における表面粗さや結晶の粒径、形状等の好ましい範
囲は前述の実施形態と同様である。
【0048】
【実施例】実験例1 ここで、図1、2に示すフリクションディスク10をア
ルミナセラミックスにより作製した。表2に示すよう
に、Al2 3 含有量の異なる原料粉末に成形に必要な
バインダー成分を加えて、造粒した後に円盤状に成形
し、結晶粒成長を抑えて緻密体が得られるように比較的
低温の焼成を行った。次に研削加工にて所定の寸法形状
とし、バレル加工にて表面を仕上げた後、再焼成して接
触面12の結晶粒子を丸くした。
【0049】各々のAl2 3 含有量の異なるアルミナ
セラミックスについて、特性と結晶の形状や粒径のばら
つきを比較したところ、表2に示す通りであった。この
結果より、Al2 3 含有量を多くすることによって熱
伝導率を高くでき、放熱性を向上できることがわかる。
また、同時にビッカース硬度、曲げ強度も高くできるこ
とから、フリクションディスク自体の耐久性も向上でき
る。
【0050】また、結晶粒子の形状と粒径のばらつきに
ついて見てみると、Al2 3 含有量99.5重量%の
ものでは、アスペクト比が3に近い柱状の結晶が多く見
られるが、Al2 3 含有量を高くするほど結晶粒子の
形状が球状に近い多角形状でアスペクト比も小さくな
り、粒径のばらつきも小さくなることがわかる。これ
は、再焼成時にAl2 3 含有量の低いものほど異常粒
成長が生じやすいためである。
【0051】
【表2】
【0052】そして、これらのフリクションディスク1
0を摩擦仮撚装置に実装して仮撚試験を行ったところ、
Al2 3 含有量が高いほど撚数が大きく、スノー発生
量が少なくなった。
【0053】つまり、Al2 3 含有量が高いほど熱伝
導率が高くなるため、フリクションディスク10の糸条
30との接触面12での温度上昇が抑えられ、低スノ
ー、高糸品質、高加撚力を実現できるのである。
【0054】また、Al2 3 含有量が高いほど、結晶
粒子のアスペクト比が小さく球状に近い多角形状である
ことから、平均的に糸条30に接触する結晶粒子の曲率
半径が大きくなる結果スノー発生量は小さくなり、また
結晶粒子径が小さく均一であるために、糸条30に対す
る撚掛け性にも優れた結果を示すことになるのである。
【0055】したがって、Al2 3 含有量を99.5
重量%以上、好ましくは99.7重量%以上とすること
によって、結晶粒子が小さく、結晶粒子のエッジが丸
く、結晶粒子が球形状に近い多角形状で、熱伝導率が2
9W/m・K以上と大きいセラミックス製フリクション
ディスクを得ることができ、優れた高糸品質、高加撚力
を得ることができる。
【0056】なお上記アルミナセラミックスの熱伝導率
をさらに向上させるために、気孔率を小さくしたり、ア
ルミナセラミックスの粒界層に高熱伝導率材料を用いる
等の工夫を行うこともできる。
【0057】実験例2 次に、窒化アルミニウム質セラミックスでフリクション
ディスク10を作製した。主成分であるAlNに焼結助
剤としてEr2 3 を添加し、得られた原料粉末を円盤
形状に成形し、焼成した。焼結体を研削加工、バレル加
工にて表面を仕上げた後、再焼成した。
【0058】このようにして得られた窒化アルミニウム
質セラミックスは、熱伝導率170W/m・Kで、結晶
粒子が丸く、最大結晶粒径は20μmで、最大アスペク
ト比は3であった。
【0059】この窒化アルミニウム質セラミックス製の
フリクションディスク10について、上記と同様に実機
評価したところ、極めて熱伝導率が高く放熱性に優れる
ことから、スノー量、仮撚特性の点でさらに優れた結果
を示した。
【0060】実験例3 図1、2(A)に示すフリクションディスク10を作製
した。セラミック原料として、99.5%以上のAl2
3 、焼結助剤であるMgO,SiO2 、及び不可避不
純物からなる混合原料を粉砕し、粒径3μm未満、好ま
しくは1μm未満の微粉原料を得た。この原料粉末に、
成形に必要なバインダー成分を加えて、造粒した後に円
盤状に成形し、結晶粒成長を抑えて緻密体が得られるよ
うに比較的低温の焼成を行った。次に研削加工にて所定
の寸法形状とし、バレル加工にて表面を仕上げた後、再
焼成して接触面12の結晶粒子を丸くした。
【0061】上記方法により得られた本発明実施例のフ
リクションディスク10の接触面12を400倍に拡大
した結晶顕微鏡写真及び結晶粒子の模式図を図4に示す
ように、最大結晶粒子径は20μm以下、平均結晶粒子
径10μm以下で最大アスペクト比は2〜3と、結晶粒
子は丸く小さなものであった。
【0062】一方、比較例として、上記と同様の製造方
法で原料粉末の粒径を3μmと大きくし、また焼成温度
や再焼成温度を共に高温とすることによって、最大結晶
粒子径が40〜60μmと大きく、結晶粒子のエッジが
丸いフリクションディスク10を作製した(比較例
1)。この接触面12を400倍に拡大した結晶顕微鏡
写真及び模式図を図5に示すように、結晶粒子は丸く大
きいものであった。
【0063】また、他の比較例として、上記と同様の製
造方法で原料粉末の粒径が1〜3μmで、研削・バレル
加工後の再焼成を行わず、接触面12がバレル仕上げ面
のままであるフリクションディスク10を作製した(比
較例2)。この接触面12を400倍に拡大した結晶顕
微鏡写真の模式図を図6に示すように、最大結晶粒子径
20〜15μm程度で、最大アスペクト比2〜3と細長
い結晶粒子形状をしており、結晶粒子はエッジが鋭く小
さいものであった。
【0064】さらに他の比較例としてクロムをコーティ
ングしたもの、樹脂からなるものを用意し、それぞれ実
機に搭載して使用試験を行った。糸条30としてポリエ
ステル150d/48fで延伸比1.6のもの、ポリエ
ステル75d/36fで延伸比1.68のものを用い
た。
【0065】それぞれ、糸条30に対する撚数、強度、
伸度、スノー発生量等を測定し、それぞれの数値を○〜
×で評価した結果を表3に示す。
【0066】材質をセラミックスとした3種類について
糸品質を比較すると、再焼成を行わない比較例2ではス
ノー発生量が多いのに対し、再焼成によって結晶を丸く
した本発明実施例及び比較例1はスノー発生量が少なく
なっている。即ち、糸接触面の結晶粒子に存在する鋭い
エッジが刃先として働き、軟質の糸材を削ってスノーを
生じることから、スノー発生量を低減させるには結晶粒
子のエッジを丸くすればよいことがわかる。
【0067】一方、撚数の点からは、結晶粒子径の大き
い比較例1ではスリップ現象が生じて撚数が少なくなる
のに対し、結晶粒子径を小さくした本発明実施例及び比
較例2では充分な撚数を得られることがわかる。
【0068】したがって、本発明実施例では、スノー発
生量、強度、伸度、撚数の糸品質の総合特性において優
れており、クロムコーティングを行った従来品と比較し
ても優れた特性を有していることがわかる。
【0069】
【表3】
【0070】次に、上記実験結果を用いて、3種類のセ
ラミックス製フリクションディスクにおける、スノー発
生量と撚数との関係をまとめたところ、図7に示す通り
であった。
【0071】このグラフから明らかなように、比較例2
は結晶粒子が小さく鋭いため撚数は大きいがスノー発生
量が多く、また比較例1は結晶粒子が大きく丸いためス
ノー発生量は少ないものの撚数が小さかった。これらに
対し、本発明実施例は結晶粒子が小さく丸いためスノー
発生量を少なく撚数を大きくすることができ、比較例
1、2よりも優れていることがわかる。このように、セ
ラミックスの結晶粒子を小さく丸い形状とすることによ
り、高撚数、低スノーとなり、さらに高純度のアルミナ
セラミックスとすることにより特性が向上している。
【0072】なお、上記実験例では再焼成を行って、結
晶粒子のエッジを丸くしたが、その他に化学的エッチン
グ、物理的エッチング等の方法でエッジを丸くしたもの
でも同様であった。また、フリクションディスクをなす
セラミックスの材質としては上記のアルミナセラミック
スに限らず、さまざまなセラミックを用いることができ
る。
【0073】実験例4 次にフリクションディスク10の摩擦力を測定した。
【0074】即ち、図8に示すように、回転力Vのフリ
クションディスク10に角度αで交差する糸状30に対
する撚掛け力、送り力はそれぞれ 撚掛け力=μ・V・cosα 送り力 =μ・V・sinα で表され(日本繊維機械学会第37回年次大会研究発表
論文集〔A−19〕より)、いずれもフリクションディ
スク10と糸状30との摩擦係数μで決定されることに
なる。つまり、摩擦係数μが大きいほど、撚掛け力、送
り力を大きくできるのである。
【0075】そこで、上記実験例1に示した本発明実施
例及び比較例1、2の3種類のセラミックス製フリクシ
ョンディスク、及びクロムコーティングしたフリクショ
ンディスク(比較例3)を用いて摩擦係数を測定した。
【0076】摩擦係数の測定装置は図9に示すように、
糸状30を張力調整機41を通してフリクションディス
ク10と接触角θで接触させ、巻取り機42で巻き取る
ようにしたものであり、フリクションディスク10前後
の入力側張力Tinと出力側張力Tout から、アモントン
の法則式 μ={ln(Tout /Tin)}/θ によって求めた。糸状30としてポリエステル75d/
48f(太さ75デニール、48フィラメント)を用
い、速度100m/min、入力側張力Tin20g、接
触角θを45°として摩擦係数を測定した結果を表4に
示す。
【0077】この結果より、比較例1と比較例3(クロ
ムコーティング)では、結晶粒径が大きいために糸状3
0がスリップしやすく摩擦係数が0.26と低いため、
仮撚時の撚掛け力、送り力が小さくなる。これらに対
し、本発明実施例及び比較例2は最大結晶粒径が20μ
m以下と結晶粒子径が小さいために摩擦係数が0.30
以上と大きく、仮撚時の撚掛け力、送り力を高められる
ことがわかる。
【0078】ただし、比較例2では上述したように結晶
エッジが鋭いことから糸品質を劣化させやすかったが、
本発明実施例では糸品質の劣化は無かった。
【0079】なお、本実施例の製品を繰り返して製造し
たところ、摩擦係数は0.28〜0.32の値となり、
この範囲の製品は実機評価の結果が安定して良かった。
そこで摩擦係数の下限値を0.28とした。
【0080】また、以上の実験例においては再焼成によ
って結晶粒子を丸くしたが、その他化学的エッチング、
物理的エッチング等の方法によって結晶粒子を丸くして
も同様の結果であった。
【0081】
【表4】
【0082】実験例5 図2(B)に示す高熱伝導層10bを備えたフリクショ
ンディスク10を作製した。
【0083】基体10aはアルミナセラミックスにより
形成し、その表面を研削しバレル研磨した後、その表面
にSiC,Al2 3 ,TiN,TiC,TiO2 ,S
iO2 の薄膜を形成し、前述の実験例と同様にして糸条
30との摩擦係数を測定した。また、ボールオンディス
ク試験機を用いて、各種薄膜を備えたディスクを回転さ
せながら、ナイロン樹脂からなるボールを押し当てた時
のボールの摩耗量を測定した。
【0084】その結果は表5に示す通りである。表5に
おいて、熱伝導率が低いほど摩擦係数が低いことからフ
リクションディスクとして用いた場合に撚掛け力が小さ
くなることがわかる。これは、フリクションディスク1
0の接触面12の熱伝導率が低いと摩擦熱が逃げにくく
局部的に高温となって、糸条30を溶融させてしまうた
めである。そして、前述した0.28以上の摩擦係数を
得るためには、SiC,Al2 3 ,TiN等の29W
/m・K以上の熱伝導率を有する薄膜を用いる必要があ
る。
【0085】また、表5における薄膜の熱伝導率と樹脂
ボールの摩耗量の関係から、熱伝導率が高いほど樹脂ボ
ール側の摩耗量が少なくなる傾向があり、特に29W/
m・K以上の熱伝導率を有する薄膜を形成したものであ
れば極めて摩耗量を少なくできることがわかった。した
がって、29W/m・K以上の熱伝導率を有する薄膜を
備えたフリクションディスクを用いれば、樹脂製の糸状
を摩耗させにくいことがわかる。
【0086】
【表5】
【0087】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、フリクシ
ョンディスクを熱伝導率が29W/m・K以上のセラミ
ックスで形成し、糸状との接触面における結晶粒子のエ
ッジを丸くしたことによって、セラミックス製フリクシ
ョンディスクの特徴である作業安定性、寸法精度、耐久
性、低ランニングコストを維持したまま、スノー発生量
を減らし、撚数を多くできることから、高品質で高加撚
力を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフリクションディスクを示す斜視図で
ある。
【図2】図1中のX−X線断面図である。
【図3】フリクションディスクを用いた摩擦型仮撚機を
示す側面図である。
【図4】本発明のフリクションディスクにおける接触面
の結晶粒子を示す図である。
【図5】比較例のフリクションディスクにおける接触面
の結晶粒子を示す図である。
【図6】比較例のフリクションディスクにおける接触面
の結晶粒子を示す図である。
【図7】各種フリクションディスクを用いた場合のスノ
ー発生量と撚数との関係を示す図である。
【図8】フリクションディスクにおける撚掛け力と送り
力の生じるメカニズムを示す図である。
【図9】摩擦係数の測定装置を示す概略図である。
【符号の説明】
10:フリクションディスク 10a:基体 10b:高熱伝導層 11:貫通孔 12:接触面 20:回転軸 30:糸条

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱伝導率が29W/m・K以上のセラミッ
    クスからなり、糸条との接触面における結晶粒子のエッ
    ジを丸くしたことを特徴とするフリクションディスク。
  2. 【請求項2】上記セラミックスが炭化珪素質セラミック
    ス、窒化アルミニウム質セラミックス、またはAl2
    3 含有量99.5%以上のアルミナセラミックスのいず
    れかであることを特徴とする請求項1記載のフリクショ
    ンディスク。
  3. 【請求項3】ポリエステル75d/48f糸を速度10
    0m/分、張力20g、接触角45°で走行させた時の
    摩擦係数が0.28以上であることを特徴とする請求項
    1記載のフリクションディスク。
  4. 【請求項4】セラミックスからなる基体の表面に熱伝導
    率が29W/m・K以上の高熱伝導層を備えたことを特
    徴とするフリクションディスク。
JP7790996A 1995-06-08 1996-03-29 フリクションディスク Pending JPH0959836A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019052405A (ja) * 2017-09-19 2019-04-04 京セラ株式会社 仮撚機用ディスク

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019052405A (ja) * 2017-09-19 2019-04-04 京セラ株式会社 仮撚機用ディスク

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