JPH0954463A - 電子写真式製版印刷版の作成方法 - Google Patents

電子写真式製版印刷版の作成方法

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JPH0954463A
JPH0954463A JP22453095A JP22453095A JPH0954463A JP H0954463 A JPH0954463 A JP H0954463A JP 22453095 A JP22453095 A JP 22453095A JP 22453095 A JP22453095 A JP 22453095A JP H0954463 A JPH0954463 A JP H0954463A
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JP
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group
resin
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toner image
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JP22453095A
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English (en)
Inventor
Eiichi Kato
栄一 加藤
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Publication of JPH0954463A publication Critical patent/JPH0954463A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 剥離性表面を有する電子写真感光体11上に電
子写真プロセスによりトナー画像3 を形成し、ガラス転
移点の異なる2種以上の樹脂を同一粒子内に含有する樹
脂粒子(AW)を用いて電着塗布された感光体11側の第1転
写層12(T1)及びガラス転移点10〜35℃又は軟化点30〜50
℃の樹脂を含有する粒子(A2L)を用いて電着塗布された
一次レセプター20側の第2転写層12(T2)を介してトナー
画像3 を一次レセプター20上へ転写し、一次レセプター
20上のトナー画像3 を転写層12ごと印刷時に平版印刷可
能な親水性表面となる被転写材30に転写し、被転写材30
上の転写層12を化学反応処理により除去して印刷版を作
成する。 【解決手段】 転写層の転写性や不感脂化処理性が向上
し、且つ高精細、高画質の画像を有する印刷版が得ら
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子写真感光体と転
写層を利用した平版印刷版の作成方法に関し、更に詳細
には、転写層の転写性に優れた、製版画質及び印刷画質
が良好な電子写真式製版印刷版の作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】平版印刷版、特に、原稿入力、補正、編
集、割付から頁組まで一貫してコンピューター操作さ
れ、高速通信網や衛生通信により即時遠隔地の末端プロ
ッターに出力できる電子編集システムにおいて、末端プ
ロッターの出力から直接平版印刷版を作成する直接型印
刷版を提供し得る高い光感度を有する感光体として電子
写真感光体が用いられる。電子写真感光体を用いて平版
印刷版を作成する方法として、電子写真プロセスでトナ
ー画像形成後、非画像部を不感脂化処理液で不感脂化
(親水化)して印刷版として用いる方法、トナー画像形
成後、非画像部の光導電層を除去して印刷版とする方法
が知られている。
【0003】しかしながら、感光層を親水化処理し電子
写真感光体そのものの表面を改質して親水性非画像部を
形成する方法あるいは感光層を溶出除去して親水性支持
体表面を露出させる方法では、感光体、特に光導電層に
用いられる光導電性化合物や結着樹脂などに種々の制約
があり、得られる印刷版の画質や耐刷性の点で多くの問
題点があった。
【0004】従来のこのような問題を解決するものとし
て、電子写真感光体の表面に化学反応処理により除去さ
れ得る熱可塑性樹脂からなる転写層を設け、該転写層上
に通常の電子写真プロセスを用いてトナー画像を形成
し、該トナー画像を転写層と共に平版印刷版としての親
水性表面を形成する被転写材に転写した後、転写層を除
去してトナー画像を被転写材上に残すことにより平版印
刷版とする方法が国際公開WO93/16418号に記
載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この転写層を用いた印
刷版の作成方法は、感光体表面を改質して親水性非画像
部を形成するのではなく、感光体とは別の転写層上にト
ナー画像を形成し、親水性表面を有する他の支持体上に
トナー画像を転写層ごと転写させた後、転写層を化学反
応処理により除去するものであるため、従前の光導電層
に要求される種々の制約をうけることなく良好な画質の
印刷版を得ることができる。
【0006】しかしながら、この方法では、転写層を熱
圧転写する時の転写性が必ずしも充分でなく、細かな画
像部での欠落がみられたり、感光体表面上にトナー画像
や転写層の残存が認められた。特に、良好な転写を行う
ためには、被転写材に制約があり、例えば、紙支持体か
らなる平滑性の比較的粗い被転写材の場合には、転写層
の密着性が低下し、結果として転写が充分ではないこと
が判った。また、この方法では、転写層を形成した感光
体上に、通常の電子写真プロセスによりトナー画像を形
成するため、転写層は転写性や印刷版とするための溶出
性の他に電子写真特性(Ep特性)も満足する必要があ
った。
【0007】1つの転写層に、転写性、溶出性及びEp
特性の全てを満足させることは容易なことではなく、用
いられる樹脂の重合成分や分子量といった重合体の一次
構造に種々の制約が生じる。特に、Ep特性の良否は、
樹脂の帯電性、暗減衰特性(DQR)による影響が大き
く、転写層の膜厚が5μmを越えると更にその影響は顕
著になる。その結果、複写画像の濃度低下、細線・文字
の欠落等の画像再現性に不都合を生じ易い。他方、転写
層を薄層化すると、転写性が悪化する傾向にあるため、
Ep特性と転写性の両方を満足させるのは非常に困難で
あった。
【0008】本発明は、このような転写層を用いた平版
印刷版の作成方法において、優れた転写性を達成できる
とともに、転写層のEp特性の良否を勘案することなく
良好な画像を得ることのできる平版印刷版の作成方法を
提供することを目的とするものである。また、被転写材
の種類によらず、完全に転写層及びトナー画像部を転写
することのできる、転写層を用いた平版印刷版の作成方
法を提供することを目的とする。更に、転写層を薄層化
してもなお良好な転写性を有する、転写層を用いた平版
印刷版の作成方法を提供することを目的とする。更に、
転写ラチチュードを拡大し、不感脂化処理の条件を緩和
することができる、転写層を用いた平版印刷版の作成方
法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、剥
離性表面を有する電子写真感光体上に電子写真プロセス
によりトナー画像を形成した後、下記(i)〜(iii)の
うちのいずれか1つの方法によりトナー画像を一次レセ
プター上へ転写し、一次レセプター上のトナー画像を転
写層ごと印刷時に平版印刷可能な親水性表面となる被転
写材に転写し、次いで転写された被転写材の転写層を化
学反応処理により除去することを特徴とする電子写真式
製版印刷版の作成方法により達成されることが見出され
た。 (i)トナー画像を形成した電子写真感光体上の全面に
第1転写層(T1)及び第2転写層(T2)を形成した後、
一次レセプター上に転写層ごとトナー画像を転写する。 (ii)一次レセプター上に第2転写層(T2)及び第1転
写層(T1)を形成し、その上に電子写真感光体上のトナ
ー画像を転写する。 (iii)トナー画像を形成した電子写真感光体上の全面に
第1転写層(T1)を及び一次レセプター上に第2転写層
(T2)を各々形成した後、トナー画像を第1転写層(T
1)ごと一次レセプター上の第2転写層(T2)の上に転写
する。(ここで、上記第1転写層(T1)及び第2転写層
(T2)は化学反応処理で除去可能な熱可塑性樹脂を主と
して含有する粒子を電着塗布法により成膜して成り、且
つ感光体側と接する第1転写層(T1)にガラス転移点2
0〜100℃又は軟化点38〜120℃の樹脂(AH)
及びガラス転移点45℃以下又は軟化点60℃以下のの
樹脂(AL)であって樹脂(AH)のガラス転移点又は
軟化点が樹脂(AL)のそれよりも2℃以上高い少なく
とも二種の樹脂を同一粒子内に含有してなる熱可塑性樹
脂粒子(AW)を主として含有する粒子を用い、一次レ
セプター側と接する第2転写層(T2)にガラス転移点1
0〜35℃又は軟化点30〜50℃の樹脂(A2)を主と
して含有する樹脂粒子(A2L) を用いる。)
【0010】本発明の電子写真式製版印刷版の作成方法
は、図1の概略図に示す通り、少なくとも支持体1及び
感光層2からなる電子写真感光体11上に、通常の電子
写真プロセスでトナー画像3を形成し、このトナー画像
3を上記(i)〜(iii)のいずれかの方法により転写層
12(12T1及び12T2)を介在させて一次レセプタ
ー20上に転写し、更に、オフセット印刷版に供される
支持体と同様の支持体である被転写材30に熱転写によ
りトナー画像3を転写層12ごと転写し印刷原版とす
る。この被転写材に転写された転写層12を化学反応処
理で除去することによって平版印刷版とするものであ
る。
【0011】本発明は転写層形成後、一旦一次レセプタ
ー(中間媒体)上に転写し、更に最終被転写材に転写さ
せることを第一の特徴とする。中間媒体を経由するた
め、中間媒体の弾性体としての働き(クッション効果)
により、転写層及びトナー画像の転写性が向上する。即
ち、転写層自身の厚みによるクッション効果を一次レセ
プターが受けもつことで転写性が向上する。
【0012】更に、本発明の転写層はトナー画像の上に
前記(i)〜(iii)のいずれかの工程を経て電着塗布法
により、感光体側と接する第1転写層(T1)及び一次レ
セプター側と接する第2転写層(T2)の積層構造で設
け、しかも各転写層の形成に上記の通りのガラス転移点
又は軟化点の調節された特定の樹脂粒子を用いることを
第二の特徴とする。公知の平版印刷版を作成する際に用
いられた転写層は電子写真プロセスによりトナー画像を
形成する前に感光体上に設けられるため、転写層は電子
写真特性(帯電性、暗中電荷保持率、光感度等)を劣化
させずに良好な複写画像を形成することが必要であっ
た。本発明によれば、転写層は転写性と溶出性を満足さ
せるよう設計すればよく、用いる樹脂の電気絶縁性を無
視することができる。この結果、転写性のラチチュード
拡大(転写圧や転写温度の軽減、転写速度の向上)と不
感脂化処理条件の緩和を達成することができる。更に、
感光体表面と第1転写層(T1)との界面の接着力を小さ
くし、且つ一次レセプター表面と第2転写層(T2)との
密着力あるいは第1転写層(T1)と第2転写層(T2)と
の密着力を大きくすることによる相乗効果により、転写
層の転写性が飛躍的に向上し、転写条件(温度・圧力)
の軽減及び転写スピードの向上が可能となる。
【0013】これらの結果、印刷用支持体(被転写材)
あるいは画像形成用トナーが種々異なっても、高精細・
高画質の画像を欠落・太り・曲がりなどを生じることな
く、高速度でも完全に転写する条件を見いだすことがで
き、且つ転写条件の軽減により電子写真感光体への加熱
・加圧が軽減されることで、電子写真特性の劣化が抑制
され感光体の繰り返し耐久性が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明に供せられる電子写真感光
体について説明する。電子写真感光体としては、従来公
知のいずれのものでも用いることができる。重要なこと
は、感光体上に形成されたトナー画像を後に転写層とと
もに容易に剥離できるように、感光体の表面が、トナー
画像形成時に剥離性を有することである。特に本発明で
は、トナー画像形成時の感光体の表面のJIS Z0237-1980
の「粘着テープ・粘着シート試験方法」による粘着力が
50g・f以下であることが好ましい。このように粘着
力を調整することにより、感光体上に形成されたトナー
画像を場合により転写層と一括して一次レセプター上に
容易に且つ完全に転写することができる。
【0015】上記JIS Z 0237-1980 「粘着テープ・粘着
シート試験方法」による粘着力の測定は、8.3.1 の18
0度引きはがし法に従い、以下の修正を加えて行う。 「試験板」としてトナー画像が形成されるべき電子写
真感光体を用いる。 「試験片」として6mm巾のJIS C 2338-1984 に従って
製造された粘着テープを用いる。 定速緊張形引張試験機を用い、120mm/分の速さで
引きはがす。 即ち、上記試験板に、上記試験片の粘着面を下側にし
て、試験片の上からローラを約300mm/分の速さで一
往復させて圧着する。圧着後20〜40分の間に、定速
緊張形引張試験機を用い、約25mmはがした後、120
mm/分の速さで引きはがす。20mmはがれるごとに力を
読み取り、計4回読み取る。試験は3枚の試験片につい
て行い、3枚の試験片から測定した12個の平均値を求
め、これを10mm巾当たりに比例換算する。
【0016】一次レセプターや被転写材の粘着力も、こ
れらを試験板として用いることにより同様にして測定す
ることができる。電子写真感光体表面の粘着力は、より
好ましくは30g・f以下、特に好ましくは10g・f
以下である。
【0017】剥離性表面を有する感光体を得るには、具
体的には、予め剥離性表面を有する感光体を用いる方法
(第一の方法)、トナー画像を形成する前に通常汎用さ
れる電子写真感光体の表面にフッ素原子及び/又はケイ
素原子を少なくとも含有する化合物(S)を適用するこ
とで感光体表面に剥離性を付与する方法(第二の方
法)、及び化合物(S)を含有する液体現像剤を用いて
感光体上にトナー画像を形成することで感光体への剥離
性付与とトナー画像の形成とを同時に行う方法(第三の
方法)が挙げられる。特に、第二及び第三の方法を適用
することにより、電子写真感光体自体の表面剥離性を勘
案する必要がなくなり、通常の電子写真感光体を用いる
ことができる。
【0018】第一の方法に用いることができる剥離性表
面を有する感光体の例としては、アモルファスシリコン
の表面を剥離性に改質した光導電体を用いたものが挙げ
られる。アモルファスシリコンを主として含有する電子
写真感光体の表面を剥離性に改質する方法としては、フ
ッ素原子及び/又はケイ素原子を含有するカップリング
剤(シランカップリング剤、チタンカップリング剤等)
等でアモルファスシリコン層表面を処理する方法があ
り、特開昭55−89844号、特開平4−23131
8号、特開昭60−170860号、同59−1022
44号、同60−17750号等に記載されている。ま
た、他の方法としては、後述する化合物(S)、特にフ
ッ素原子及び/又はケイ素原子を置換基として含有する
成分をブロックで含有する化合物(例えばポリエーテ
ル、カルボン酸、アミノ基、カルビノール等変性のポリ
ジアルキルシリコン類等)を吸着固定する方法が挙げら
れる。
【0019】また、剥離性表面を有する感光体の他の例
としては、電子写真感光体がその表面近傍ににケイ素原
子及びフッ素原子の少なくとも一方を含有する(ケイ素
原子及び/又はフッ素原子含有)重合体成分を含有する
重合体を含むものが挙げられる。ここで、電子写真感光
体の表面近傍とは、感光体の最上層を意味し、光導電層
の上に設けられるコーバーコート層及び最上の光導電層
を包含する。即ち、光導電層を有する感光体の最上層と
してオーバーコート層を設け、このオーバーコート層に
上記重合体を含有させ剥離性を付与したもの、又は光導
電層(単一光導電層及び積層光導電層のいずれでもよ
い)の最上層に上記重合体を含有させ、その表面を剥離
性が発現する状態に改質させたもの等が挙げられる。こ
のような感光体はその表面が良好な剥離性を有するた
め、トナー画像と転写層とを一括して一次レセプター上
に容易且つ完全に転写することができる。
【0020】オーバーコート層又は最上の光導電層に剥
離性を付与するには、その層の結着樹脂として、ケイ素
原子及び/又はフッ素原子を含有する重合体を用いれば
よい。あるいはケイ素原子及び/又はフッ素原子含有の
重合体成分から成る重合体セグメントを含むブロック共
重合体(表面偏在型共重合体)を他の結着樹脂とともに
少量用いることも好ましい。また、かかるケイ素原子及
び/又はフッ素原子含有の樹脂は粒子の形で用いること
もできる。なかでも、オ−バ−コ−ト層を設ける場合に
は、光導電層とオーバーコート層の密着性を充分に保持
できることから、表面偏在型共重合体を他の結着樹脂と
併用することが好ましい。上記表面偏在型共重合体は、
通常オーバーコート層全組成物100重量部中0.1〜
20重量部の割合で使用することができる。
【0021】そのようなオーバーコート層としては、具
体的には、乾式トナーを用いたPPC感光体において、
感光体の繰り返し使用に対する感光体表面の耐久性を保
持する1つの手段として公知となっている、感光体上に
表面層を設けて保護するために用いられる保護層が挙げ
られる。例えばシリコーン系ブロック共重合体を利用し
た保護層に関する技術として、特開昭61−95358
号、同55−83049号、同62−87971号、同
61−189559号、同62−75461号、同61
−139556号、同62−139557号、同62−
208055号等に記載のものが挙げられる。また、フ
ッ素系ブロック共重合体を利用した保護層として、特開
昭61−116362号、同61−117563号、同
61−270768号、同62−14657号等に記載
のものが挙げられる。更には、フッ素原子含有重合体成
分を含有する樹脂を粒子の形で併用する保護層として、
特開昭63−249152号及び同63−221355
号に記載のものが挙げられる。
【0022】また、最上層の光導電層の表面を剥離性が
発現した状態に改質する方法は、光導電体と結着樹脂と
を少なくとも用いた、いわゆる分散型の感光体を用いる
場合に有効に適用される。光導電層の最上層を構成する
層に、ケイ素原子及び/又はフッ素原子含有の重合体成
分を含有する重合体セグメントをブロックで含有するブ
ロック共重合体の樹脂、及びケイ素原子及び/又はフッ
素原子含有の重合体成分を含有する樹脂粒子の少なくと
もいずれか一方を共存させることにより、これらの材料
が表面に濃縮・移行して偏在するため、剥離性表面に改
質することができる。この共重合体及び樹脂粒子として
は特開平5−197169号に記載されているものを挙
げることができる。
【0023】更に表面偏在をより強固にするために、オ
ーバーコート層や光導電層の結着樹脂として、ケイ素原
子及び/又はフッ素原子含有の重合体セグメントと、熱
及び/又は光硬化性基含有成分を含有する重合体セグメ
ントとを少なくとも1種ずつブロックで結合して成るブ
ロック共重合体を用いることができる。かかる熱及び/
又は光硬化性基含有成分を含有する重合体セグメントと
しては、特開平5−197169号に記載されているも
のを挙げることができる。あるいは、光及び/又は熱硬
化性樹脂を、フッ素原子及び/又はケイ素原子含有樹脂
とともに併用してもよい。
【0024】感光体表面を改質するのに有効な本発明の
ケイ素原子及び/又はフッ素原子を含有する重合体成分
を含有する重合体は、樹脂{以下樹脂(P)と称する}
又は樹脂粒子{以下樹脂粒子(PL)と称する}の形で
用いられる。
【0025】重合体がランダム共重合体である場合に
は、ケイ素原子及び/又はフッ素原子を含有する重合体
成分は、全重合体成分中60重量%以上であることが好
ましく、より好ましくは80重量%以上である。より好
ましくは、ケイ素原子及び/又はフッ素原子を含有する
重合体成分を50重量%以上含有する重合体セグメント
(α)とケイ素及び/又はフッ素原子含有重合体成分を
0〜20重量%含有する重合体セグメント(β)がブロ
ックで結合して成るブロック共重合体である。更に好ま
しくは、ブロック共重合体中の上記セグメント(β)中
に光及び/又は熱硬化性官能基を含有する重合体成分を
少なくとも1種含有するブロック共重合体である。これ
らのブロック共重合体において、セグメント(β)中に
は、フッ素原子及び/又はケイ素原子含有の重合体成分
を全く含有しないものが好ましい。
【0026】重合体セグメント(α)及び(β)を含有
するブロック共重合体(表面偏在型共重合体)を用いる
と、ランダム共重合体に比べ表面の剥離性自身が向上
し、更には剥離性が保持される。即ち、フッ素原子及び
/又はケイ素原子含有のブロック共重合体を少量共存さ
せて塗膜を形成すると、塗布後の乾燥工程終了までの間
に、これらは容易に膜の表面部に移行・濃縮され、膜表
面が剥離性を発現できる状態に改質される。
【0027】前述の様に、樹脂(P)において、フッ素
原子及び/又はケイ素原子含有の重合体セグメント
(α)がブロック化されている場合には、他方のフッ素
原子及び/又はケイ素原子含有の重合体成分を含んでい
ても少ない重合体セグメント(β)が膜形成の結着樹脂
との相溶性が良好なことから、これと充分な相互作用を
行ない、トナー画像又は転写層が形成される場合におい
ても、これらの樹脂はトナー画像や転写層への移行が抑
制もしくは解消されて、トナー画像及び転写層と電子写
真感光体との界面を明確に形成維持することができる
(即ち、アンカー効果)。ブロック共重合体のセグメン
ト(β)中に硬化性基を含有する重合体を用いて成膜時
に重合体間を架橋することで、更に感光体との界面を明
確に維持する効果が発揮される。
【0028】重合体は、前記の如く、樹脂粒子(PL)
として用いられてもよい。好ましい樹脂粒子(PL)
は、非水溶媒中に分散される樹脂粒子である。かかる樹
脂粒子としては、フッ素原子及び/又はケイ素原子含有
の重合体成分を含有する、非水溶媒に不溶な重合体セグ
メント(α)と、フッ素原子及び/又はケイ素原子含有
の重合体成分を含有しても20%以下である、非水溶媒
に可溶性の重合体セグメント(β)とを結合して成るも
のが好ましい。樹脂粒子(PL)の場合には、不溶化し
ている重合体セグメント(α)の作用により、表面への
移行・濃縮が行われ、更に、粒子に結合した非水溶媒に
可溶性の重合体セグメント(β)が、前記樹脂の場合と
同様に、結着樹脂と相互作用してアンカー効果の作用を
行なう。更には硬化性基を重合体中又は結着樹脂中に含
有することで、トナー画像への移行が解消される。
【0029】樹脂(P)及び樹脂粒子(PL)におい
て、いわゆる表面偏在型共重合体である場合、ケイ素原
子及び/又はフッ素原子含有の重合体成分を含有するセ
グメント(α)において、該重合体成分は、セグメント
(α)全体の総量の内、少なくとも50重量%を含み、
好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%
以上である。また、セグメント(β)においては、フッ
素原子及び/又はケイ素原子含有の重合体成分はセグメ
ント(β)全体総量の内20重量%以下であり、好まし
くは0重量%である。セグメント(α)とセグメント
(β)の割合は、1〜95対5〜99(重量比)で、好
ましくは、5〜90対10〜95(重量比)である。樹
脂(P)及び樹脂粒子(PL)ともに、この範囲内にお
いて、光導電層最上層部表面への良好な濃縮効果及びア
ンカー効果が得られる。
【0030】樹脂(P)の重量平均分子量は、好ましく
は5×103〜1×106、より好ましくは1×104
5×105である。樹脂(P)におけるセグメント
(α)部の重量平均分子量は、1×103以上である事
が好ましい。樹脂粒子(PL)は、その平均粒径が好ま
しくは0.001〜1μm、より好ましくは0.05〜
0.5μmである。
【0031】樹脂(P)における、いわゆる表面偏在型
共重合体として好ましい態様は、フッ素原子及び/又は
ケイ素原子含有の重合体成分がブロックで構成されてい
るものが挙げられる。ここでブロックで構成するとは、
フッ素原子及び/又はケイ素原子を50重量%以上含有
する重合体セグメント(α)を重合体中に有しているこ
とをいい、例えば下記に示すようなA−B型ブロック、
A−B−A型ブロック、B−A−B型ブロック、グラフ
ト型ブロック、スター型ブロック等が挙げられる。
【0032】
【化1】
【0033】このような表面偏在型共重合体、その製造
方法及びこれらを用いた剥離性表面を有する感光体につ
いては、特開平5−197169号、同6−28966
3号等に具体的に記載されている。
【0034】次に、剥離性表面を有する感光体を得る第
二の方法である、トナー画像形成前に、通常の電子写真
感光体の表面上に剥離性化合物(S)を適用して感光体
表面を剥離性にする方法について説明する。
【0035】本発明では、感光体の表面に化合物(S)
を適用することにより感光体表面に所望の剥離性を付与
することができる。電子写真感光体の表面に化合物
(S)を適用するとは、化合物(S)を電子写真感光体
表面に供給して、感光体表面に化合物(S)が吸着また
は付着した状態を形成することをいう。
【0036】化合物(S)を電子写真感光体表面に適用
するには、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。こ
の電子写真感光体への剥離性付与は、電子写真プロセス
を行う装置内で行うことが好ましい。電子写真感光体の
表面に化合物(S)を適用する手段を本発明に用いられ
る装置に適宜組み込める態様にして用いることができ
る。
【0037】化合物(S)の感光体表面への適用量は特
に規定されるものではなく、感光体の電子写真特性への
悪影響が実用上問題とならなければよい。通常塗膜膜厚
で1μm以下で充分であり、本発明の剥離性の発現は
「Weakboundary Layer」(Bikerman "The Science of Ad
hesive Joints" Academic Press(1961年刊) により定
義)の状態で充分である。本発明においては、化合物
(S)が電子写真感光体上に吸着又は付着して表面に剥
離性を付与し、好ましくは感光体表面の粘着力が50g
・f以下となればよい。
【0038】本発明の製版印刷版作成方法において、常
にこの工程を繰り返す必要はなく、用いる感光体及び化
合物(S)適用による剥離性を保持できる能力及びその
手段の組み合わせに従って、適宜行えばよい。また、予
め表面剥離性の電子写真感光体を繰り返し使用した場合
に、感光体表面の剥離性が低下した時に化合物(S)を
適用してもよい。これにより、感光体表面の剥離性を簡
便に保持することができる。
【0039】剥離性化合物(S)としては、フッ素原子
及び/又はケイ素原子を少なくとも含有する化合物が挙
げられ、電子写真感光体表面の剥離性を改善するもので
あれば、その構造は特に限定されるものではなく、低分
子化合物、オリゴマー、ポリマーのいずれでもよい。オ
リゴマー又はポリマーの場合、フッ素原子及び/又はケ
イ素原子を含有する置換基は、重合体の主鎖に組み込ま
れていてもよく、あるいは重合体の側鎖の置換基として
存在していてもよい。好ましくは、オリゴマー又はポリ
マーにおいて、該置換基を含有する繰り返し単位をブロ
ックで含有するものが挙げられ、これらは電子写真感光
体表面への吸着性及び剥離性を特に有効に発現する。
【0040】これらのフッ素原子及び/又はケイ素原子
を含有する置換基は、具体的には、前記の樹脂(P)に
関連して述べたものと同様であり、特開平5−1971
69号に記載されるものである。
【0041】本発明で用いられるフッ素原子及び/又は
ケイ素原子含有の化合物(S)としては、具体的には、
吉田時行等編「新版・界面活性剤ハンドブック」工学図
書(株)刊(1987年)、刈米孝夫監修「最新・界面活性
剤応用技術」(株)シーエムシー(1990年)、伊藤邦雄
編「シリコーン・ハンドブック」日刊工業新聞社刊(19
90年)、刈米孝夫監修「特殊機能界面活性剤」(株)C.
M.C.(1986年)、A. M.Schwartz et al「Surface Active
Agents and Detergents vol.II 」等に記載のフッ素系
及び/又はケイ素系有機化合物が挙げられる。更には、
石川延男「フッ素化合物の合成と機能」(株)C.M.C.(1
987年)、平野二郎等編「含フッ素有機化合物−その合
成と応用−」(株)技術情報協会(1991年)、石川満夫
監修「有機ケイ素戦略資料」第3章(株)サイエンスフ
ォーラム(1991年)等の文献に記載の合成方法を利用し
て、化合物(S)を合成することができる。
【0042】化合物(S)がいわゆるブロック共重合体
である場合には、フッ素原子及び/又はケイ素原子含有
の重合体成分がブロックで構成されていればよい。ここ
でブロックで構成するとは、フッ素原子及び/又はケイ
素原子を有する成分を70重量%以上含有する重合体セ
グメントを重合体中に有していることをいい、例えば前
記樹脂(P)で述べたと同様なA−B型ブロック、A−
B−A型ブロック、B−A−B型ブロック、グラフト型
ブロックあるいはスター型ブロック等が挙げられる。化
合物(S)の具体的な化合物例及び使用態様について
は、特開平7−5727号に詳細に記載されている。
【0043】更に、本発明においては、剥離性表面を有
する感光体を得る第三の方法として、トナー画像形成用
の液体現像剤中に剥離性化合物(S)を含有させること
で感光体への剥離性の付与とトナー画像の形成とを同時
に行う方法を挙げることができる。具体的には、液体現
像剤1.0リットル中に少なくとも0.01g溶解する
フッ素原子及び/又はケイ素原子を含有する化合物
(S)を少なくとも1種含有する液体現像剤が用いられ
る。上記液体現像剤中に含有される化合物(S)は、画
像形成用トナー粒子が電気泳動して感光体表面に電着さ
れる前に、感光体に吸着又は付着するため、結果的にト
ナー画像形成前に剥離性を有する感光体とすることがで
きる。
【0044】本発明に供せられる電子写真感光体の構成
及び材料は、従来公知のいずれでも用いることができ、
限定されるものではない。例えば、R. M. Schaffert, "
Electrophotography" Focal Press London(1980)、S.
W. Ing, M. D. Tabak, W. E. Haas, "Electrophotograp
hy Fourth International Conference" SPSE(1983)、篠
原功、土田英俊、草川英昭編「記録材料と感光性樹脂」
(株)学会出版センター刊(1979年)、小門宏、化学と
工業、39(3), 161 (1986年)、総合技術資料集「最近の
光導電材料と感光体の開発・実用化」日本科学情報
(株)出版部(1986年)、電子写真学会編「電子写真技
術の基礎と応用」コロナ社(株)(1986年)、電子写真学
会編「電子写真用有機感光体の現状シンポジウム」予稿
集(1985年)等の成書、総説に記載の各種感光体が挙げ
られる。即ち、光導電性化合物自身から成る単独層、又
は、光導電性化合物を結着樹脂中に分散した光導電層が
挙げられ、分散された光導電層は単一層型でもよいし積
層型でもよい。
【0045】また本発明において用いられる光導電性化
合物は無機化合物あるいは有機化合物のいずれでもよ
い。本発明の光導電性化合物として用いられる無機化合
物としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、硫化亜鉛、
硫化カドミウム、セレン、セレン−テルル、無定形シリ
コン、硫化鉛等従来公知の無機光導電性化合物が挙げら
れ、これらは、結着樹脂とともに光導電層を形成しても
よいし、また、蒸着又はスパッタリング等により単独で
光導電層を形成してもよい。酸化亜鉛、酸化チタン等の
無機光導電性化合物を用いる場合は、無機光導電性化合
物100重量部に対して結着樹脂を10〜100重量
部、好ましくは15〜40重量部なる割合で使用する。
【0046】一方、有機化合物を用いた光導電層として
は、従来公知のいずれでもよく、具体的には、有機光導
電性化合物、増感染料、結合樹脂を主体とする光導電
層、第二は、電荷発生剤、電荷輸送剤、結合樹脂を主体
とする光導電層及び電荷発生剤と電荷輸送剤とをそれぞ
れ別の層に含有した二層構成の光導電層が挙げられる。
本発明の電子写真感光体は上記の光導電層のいずれの形
態をとっていてもよい。第二の例の場合には、有機光導
電性化合物が電荷輸送剤としての機能をはたす。
【0047】本発明に用いられる有機光導電性化合物は
特に限定されるものではなく、公知の化合物を用いるこ
とができる。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジア
ゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアル
カン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フ
ェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アズ
レニウム塩誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、N,N
−ビカルバジル誘導体、オキサゾール誘導体、スチリル
アントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン
誘導体、ベンジジン誘導体、スチルベン誘導体、ポリビ
ニルカルバゾール及びその誘導体、ポリビニルピレン、
ポリビニルアントラセン、ポリ−2−ビニル−4−
(4′−ジメチルアミノフェニル)−5−フェニル−オ
キサゾール、ポリ−3−ビニル−Nエチルカルバゾール
等のビニル重合体、ポリアセナフチレン、ポリインデ
ン、アセナフチレンとスチレンの共重合体等の重合体、
トリフェニルメタンポリマー、ピレン−ホルムアルデヒ
ド樹脂、ブロムピレン−ホルムアルデヒド樹脂、エチル
カルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂等の縮合樹脂等が
挙げられる。有機光導電性化合物は場合により2種類以
上併用することが可能である。
【0048】光導電層に含有される増感色素としては、
電子写真感光体に使用される従来公知の増感色素が使用
可能である。これらは、「電子写真」12、9(1973)、
「有機合成化学」24(11)、1010(1966)等に記載されてい
る。例えば、米国特許3,141,770号、同4,2
83,475号、特開昭48−25658号、特開昭6
2−71965号等に記載のピリリウム系染料、Applie
d Optics Supplement 50 (1969)、特開昭50−39
548号等に記載のトリアリールメタン系染料、米国特
許3,597,196号等に記載のシアニン系染料、特
開昭60−163047号、同59−164588号、
同60−252517号等に記載のスチリル系染料等が
有利に使用される。
【0049】光導電層に含有される電荷発生剤として
は、電子写真感光体において従来公知の有機及び無機の
各種の電荷発生剤が使用できる。例えば、セレン、セレ
ン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、及び以下に示
す有機顔料を使用することができ、これらをプリンター
の光源の波長域に合った分光感度を有する電荷発生剤と
して任意に選択する。
【0050】有機顔料として、例えば、モノアゾ、ビス
アゾ、トリスアゾ顔料等のアゾ顔料、無金属あるいは金
属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、ペリレン系
顔料、インジゴ、チオインジゴ誘導体、キナクリンドン
系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系
顔料、スクアリウム塩系顔料、アズレニウム塩系顔料等
が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用して用い
ることもできる。
【0051】また、電荷輸送剤と併用して用いる光導電
層においては、組み合わせて用いる電荷発生剤の種類と
の適合性の良好なものが選ばれるが、具体的には、前記
した有機光導電性化合物として知られる化合物群が挙げ
られる。
【0052】有機光導電性化合物と結合樹脂の混合比
は、有機光導電性化合物と結合樹脂との相溶性によって
有機光導電性化合物の含有率の上限が決まり、これを上
回る量を添加すると有機光導電性化合物の結晶化が起こ
り好ましくない。有機光導電性化合物の含有量が少ない
ほど電子写真感度は低下するので、有機光導電性化合物
の結晶化が起こらない範囲で、できるだけ多くの有機光
導電性化合物を含有させるのが好ましい。有機光導電性
化合物の含有率としては、結合樹脂100重量部に対
し、有機光導電性化合物5〜120重量部、好ましくは
10〜100重量部である。
【0053】本発明の感光体に用いることのできる結着
樹脂(以下結着樹脂(B)と称することもある)は、従
来公知の電子写真感光体に用いられる樹脂のいずれでも
よく、重量平均分子量は好ましくは5×103〜1×1
6、より好ましくは2×104〜5×105のものであ
る。また、結着樹脂のガラス転移点は好ましくは−40
℃〜200℃、より好ましくは−10℃〜140℃であ
る。例えば、柴田隆治・石渡次郎、高分子、第17巻、第
278頁(1968年)宮本晴視、武井秀彦、イメージング、1
973(No.8)、中村孝一編「記録材料用バインダーの実際
技術」第10章、C.H.C.出版(1985年)電子写真学会編、
「電子写真用有機感光体の現状シンポジウム」予稿集
(1985年)小門宏編、「最近の光導電材料と感光体の開
発・実用化」日本科学情報(株)(1986年)電子写真学会
編「電子写真技術の基礎と応用」第5章コロナ社(株)
(1988年)、D. Tatt, S. C. Heidecker, Tappi,49(No.1
0), 439(1966)、E. S. Baltazzi, R. G. Blanclotte et
al,Phot. Sci. Eng. 16(No.5), 354(1972)、グエン・
チャン・ケー、清水勇、井上英一、電子写真学会誌18(N
o.2), 22(1980)等の成書・総説に記載の化合物等が挙げ
られる。
【0054】具体的には、オレフィン重合体及び共重合
体、塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、ア
ルカン酸ビニル重合体及び共重合体、アルカン酸アリル
重合体及び共重合体、スチレン及びその誘導体の重合体
及び共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、イソプ
レン−スチレン共重合体、ブタジエン−不飽和カルボン
酸エステル共重合体、アクリロニトリル共重合体、メタ
クリロニトリル共重合体、アルキルビニルエーテル共重
合体、アクリル酸エステル重合体及び共重合体、メタク
リル酸エステル重合体及び共重合体、スチレン−アクリ
ル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステ
ル共重合体、イタコン酸ジエステル重合体及び共重合
体、無水マレイン酸共重合体、アクリルアミド共重合
体、メタクリルアミド共重合体、水酸基変性シリコン樹
脂、ポリカーボネート樹脂、ケトン樹脂、ポリエステル
樹脂、シリコン樹脂、アミド樹脂、水酸基及びカルボキ
シル基変性ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビ
ニルアセタール樹脂、環化ゴム−メタクリル酸エステル
共重合体、環化ゴム−アクリル酸エステル共重合体、窒
素原子を含有しない複素環を含有する共重合体(複素環
として例えば、フラン環、テトラヒドロフラン環、チオ
フェン環、ジオキサン環、ジオキソフラン環、ラクトン
環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、1,3−ジ
オキセタン環等)、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0055】特に、光導電体の結着樹脂(B)として、
カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基等の酸性基を含
有する比較的低分子量(103〜104程度)の樹脂を併
用することで、静電特性を良化することができる。例え
ば、特開昭64−70761号、特開平2−67563
号、同3−181948号、同3−249659号に記
載の樹脂が挙げられる。また、特定の中〜高分子量の樹
脂を用いることで、環境が著しく変動した場合でも安定
した性能を維持することができる。例えば、特開平3−
29954号、同3−77954号、同3−92861
号及び同3−53257号に記載の酸性基をグラフト型
共重合体のグラフト部の末端に結合する樹脂又は酸性基
をグラフト型共重合体のグラフト部に含有する樹脂、特
開平3−206464号及び同3−223762号記載
の酸性基を含有するAブロックと酸性基を含有しないB
ブロックとからなるABブロック型共重合体をグラフト
部に含有するグラフト型共重合体を挙げることができ
る。これらの樹脂を用いることで、光導電体を均一に分
散させ、平滑性良好な光導電層を形成することができ、
また環境の変化や半導体レーザー光を用いたスキャニン
グ露光方式を用いた場合においても、優れた静電特性を
維持することができる。
【0056】光導電層の厚さは1〜100μm、特に1
0〜50μmが好適である。また、電荷発生層と電荷輸
送層の積層型感光体の電荷発生層として光導電層を使用
する場合は電荷発生層の厚さは0.01〜5μm、特に
0.05〜2μmが好適である。
【0057】本発明では、可視光の露光又は半導体レー
ザー光の露光等光源の種類によって必要に応じて各種の
色素を分光増感剤として併用することができる。例え
ば、前記した電子写真感光体に関する総説・文献、「電
子写真」12、9 (1973)、「有機合成化学」24(11)、1010
(1966)、宮本晴視、武井秀彦;イメージング1973(No.8)
第12頁、C. J. Young等:RCA Review 15, 469頁(1954
年)、清田航平等:電気通信学会論文誌、J63-C(No.
2)、97頁(1980年)、原崎勇次等、工業化学雑誌、66
78及び188頁(1963年)、谷忠昭、日本写真学会誌35, 2
08頁(1972年)、「Research Discloseure」1982年、21
6, 117〜118頁、F. M. Hamer「The Cyanine Dyes and R
elated Compounds」等の総説引例のカーボニウム系色
素、ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、
キサンテン系色素、フタレイン系色素、ポリメチン色素
(例えば、オキソノール色素、メロシアニン色素、シア
ニン色素、ロダシアニン色素、スチリル色素等)、フタ
ロシアニン色素(金属を含有してもよい)等が挙げられ
る。
【0058】更には、必要に応じて、従来知られている
種々の電子写真感光体用添加剤を用いることができる。
これらの添加剤としては、電子写真感度を改良するため
の化学増感剤、皮膜性を改良するための各種の可塑剤、
界面活性剤等が含まれる。
【0059】化学増感剤としては、例えばハロゲン、ベ
ンゾキノン、クロラニル、フルオラニル、ブロマニル、
ジニトロベンゼン、アントラキノン、2,5−ジクロロ
ベンゾキノン、ニトロフェノール、無水テトラクロロフ
タル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、N−ヒドロキ
シマレインイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、2,
3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、ジニト
ロフルオレノン、トリニトロフルオレノン、テトラシア
ノエチレン、ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸等の電
子吸引性化合物、小門宏等「最近の光導電材料と感光体
の開発・実用化」第4章〜第6章:日本科学情報(株)
出版部(1986年)の総説引例のポリアリールアルカン化
合物、ヒンダートフェノール化合物、p−フェニレンジ
アミン化合物等が挙げられる。また、特開昭58−65
439号、同58−102239号、同58−1294
39号、同62−71965号等に記載の化合物等も挙
げることができる。
【0060】可塑剤としては、例えばジメチルフタレー
ト、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフ
ェニルフタレート、トリフェニルフォスフェート、ジイ
ソブチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセ
バケート、ラウリン酸ブチル、メチルフタリールグリコ
レート、ジメチルグリコールフタレート等を光導電層の
可撓性を向上するために添加できる。これらの可塑剤は
光導電層の静電特性を劣化させない範囲で含有させるこ
とが好ましい。これら各種添加剤の添加量は、特に限定
的ではないが、通常光導電体100重量部に対して0.
001〜2.0重量部である。
【0061】電子写真感光体は、従来公知の支持体上に
設けることができる。一般的に電子写真感光層の支持体
は導電性であることが好ましく、導電性支持体として
は、従来と全く同様、例えば金属、紙、プラスチックシ
ート等の基体に低抵抗性物質を含浸させるなどして導電
処理したもの、基体の裏面(感光層を設ける面と反対
面)に導電性を付与し、更にはカール防止を図る等の目
的で少なくとも1層以上をコートしたもの、前記支持体
の表面に耐水性接着層を設けたもの、前記支持体の表面
層に必要に応じて少なくとも1層以上のプレコート層を
設けたもの、アルミニウム等を蒸着した基体導電化プラ
スチックを紙にラミネートしたもの等が使用できる。具
体的には、導電性基体あるいは導電化材料の例として、
坂本幸男、電子写真、14(No.1),2〜11頁(1975年
刊)、森賀弘之「入門特殊紙の化学」高分子刊行会(19
75年刊)、M. F. Hoover,J. Macromol. Sci. Chem. A-
4(6)、1327〜1417頁(1970年刊)等に記載されているも
のが用いられる。
【0062】次に、電子写真感光体上にトナー画像を形
成する方法について説明する。前述のように表面が剥離
性を有する電子写真感光体上に、通常の電子写真プロセ
スによりトナー画像を形成する。即ち、帯電−露光−現
像−定着の各プロセスを従来公知の方法(例えば、前記
した「電子写真技術の基礎と応用」、「Electrophotogr
aphy」等の成書に記載の方法)によって行う。また、表
面の剥離性が不充分な場合には、かかる通常の電子写真
プロセスに入る前に感光体表面に化合物(S)を適用す
ることにより充分な剥離性を有する感光体とすることが
できる。
【0063】本発明に供される現像剤は液体現像剤が好
ましく、従来公知の静電写真用液体現像剤を用いること
ができる。例えば、前述の「電子写真技術の基礎と応
用」497〜505頁、中村孝一監修「トナー材料の開発・実
用化」第3章(日本科学情報社刊、1985年)、町田元
「記録用材料と感光性樹脂」107〜127頁(1983年刊)、
(株)学会出版センター、電子写真学会「イメージング
No. 2〜5 電子写真の現像・定着・帯電・転写」等に詳
細に記載されている。
【0064】具体的な液体現像剤の基本構成としては、
電気絶縁性有機溶媒{例えばイソパラフィン系脂肪族炭
化水素:アンソパーH、アイソパーG(エッソ社製)シ
ェルゾール70、シェルゾール71(シェル社製)、IP−
ソルベント1620(出光石油化学製)等}を分散媒とし
て、着色剤である無機又は有機の顔料あるいは染料とア
ルキッド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチ
レンブタジエン樹脂、ロジン等の分散安定性、定着性、
荷電性を付与するための樹脂とを分散し、且つ、荷電特
性の強化あるいは画像特性の改良等のために所望により
種々の添加剤を加えてなる。
【0065】上記着色剤としては、公知の染料・顔料が
任意に選択されるが、例えば、ベンジジン系、アゾ系、
アゾメチン系、キサンテン系、アントラキノン系、フタ
ロシアニン系(含金属を含む)、チタンホワイト、ニグ
ロシン、アニリンブラック、カーボンブラック等であ
る。また、他の添加剤として、例えば原崎勇次「電子写
真」第16巻、第2号、44頁に具体的に記載されているも
のが用いられる。例えば、ジ−2−エチルヘキシルスル
ホコハク酸金属塩、ナフテン酸金属塩、高級脂肪酸金属
塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルリン
酸金属塩、レシチン、ポリ(ビニルピロリドン)、半マ
レイン酸アミド成分を含む共重合体、クマロンインデン
樹脂、高級アルコール類、ポリエーテル類、ポリシロキ
サン、ワックス類等が挙げられる。
【0066】液体現像剤の主要な各組成分の量は通常下
記の通りである。樹脂(及び所望により用いられる着色
剤)を主成分として成るトナー粒子は、担体液体100
0重量部に対して0.5重量部〜50重量部が好まし
い。0.5重量部未満であると画像濃度が不足し、50
重量部を超えると非画像部へのカブリを生じ易い。前記
の分散安定用の担体液体可溶性樹脂も必要に応じて使用
され、担体液体1000重量部に対して0.5重量部〜
100重量部程度加えることができる。荷電調節剤は担
体液体1000重量部に対して0.001重量部〜1.
0重量部が好ましい。更に所望により各種添加剤を加え
ても良く、それら添加物の総量は、液体剤の電気抵抗に
よってその上限が規制される。即ち、トナー粒子を除去
した状態の液体現像剤の電気抵抗が109Ωcmより低く
なると良質の連続階調像が得られ難くなるので、各添加
物の各添加量はこの限度内でコントロールされる。
【0067】液体現像剤の製造方法の具体例としては、
着色剤及び樹脂をサンドミル、ボールミル、ジェットミ
ル、アトライター等の分散機を用いて機械的に分散して
着色粒子を製造する方法が、例えば、特公昭35−55
11号、同35−13424号、同50−40017
号、同49−98634号、同58−129438号、
特開昭61−180248号等に記載されている。
【0068】他の着色粒子の製造方法としては、例えば
分散樹脂粒子を微小粒径で単分散性の良好なものとして
得る非水系分散重合方法を用いて製造し、これを着色す
る方法が挙げられる。着色の方法の1つとして、特開昭
57−48738号等に記載されている如く、分散樹脂
を好ましい染料で染色する方法がある。また、特開昭5
3−54029号に開示されている如く、分散樹脂と染
料を化学的に結合させる方法、特公昭44−22955
号等に記載されている如く、重合造粒法で製造する際
に、予め色素を含有した単量体を用い、色素含有の共重
合体とする方法等がある。
【0069】また、前記の如く剥離性化合物(S)を上
記のように構成された液体現像剤に1リットル当たり
0.01g〜10gの範囲で加えて感光体表面の剥離性
を調節してもよい。
【0070】デジタル情報に基づいて露光するレーザー
光によるスキャニング露光方式及び液体現像剤を用いる
現像方式の組合せが、高精細な画像を形成できることか
ら有効なプロセスである。その一例を以下に示す。ま
ず、感光材料をフラットベット上にレジスターピン方式
による位置決めを行った後背面よりエアーサクションに
より吸引して固定する。次いで、例えば「電子写真技術
の基礎と応用」(電子写真学会編、コロナ社、昭和63年
6月15日発行)212頁以降に記載の帯電デバイスにより感
光材料を帯電する。コロトロン又はスコトロン方式が一
般的である。この時感光材料の帯電電位検出手段からの
情報に基づき、常に所定の範囲の表面電位となるようフ
ィードバックをかけ、帯電条件をコントロールすること
も好ましい。その後例えば同じく上記引用資料の254頁
以降に記載の方式を用いてレーザー光源による走査露光
を行う。
【0071】次いで液体現像剤を用いてトナー画像を行
う。フラットベット上で帯電、露光した感光材料は、そ
こからはずして同上引用資料の275頁以降に示された湿
式現像法を用いることができる。この時の露光モード
は、トナー画像現像モードに対応して行われ、例えば反
転現像の場合はネガ画像、即ち画像部にレーザー光を照
射し、感光材料を帯電した時の電荷極性と同じ電荷極性
を持つトナーを用い、現像バイアス電圧を印加して露光
部にトナーが電着するようにする。原理の詳細は同上引
用資料の157頁以降に説明がある。現像後に余剰の現像
液を除くために、同資料283頁に示されるようなスクイ
ーズを行った後乾燥する。スクイーズ前に現像剤の担体
液体のみでリンスをすることも好ましい。
【0072】次に、剥離性表面を有する感光体上に設け
られたトナー画像を転写層を介して一次レセプター上に
接触転写する。転写層の形成は、図1に示すように、
(i)感光体のトナー画像上に全面にわたって第1転写
層(T1)及び第2転写層(T2)の順で設ける、(ii)一
次レセプター上に第2転写層(T2)及び第1転写層(T
1)の順で設ける、(iii)トナー画像上に全面にわたって
第1転写層(T1)及び一次レセプター上に第2転写層
(T2)を設ける、のいずれかの方法によって行われる。
【0073】まず、本発明に用いられる転写層について
詳しく説明する。本発明の転写層は、電子写真感光体か
ら一次レセプターを経て印刷版の支持体となる被転写材
へトナー画像を転写するとともに、印刷版とするため
に、化学反応処理により除去される機能を有する層であ
る。従って、本発明の転写層は、感光体上に形成された
トナー画像を効率よく且つ画像劣化を生じることなく一
次レセプター上に転写し、次の転写プロセスでは被転写
材の種類によらず容易に被転写材に転写する熱可塑性を
有していること、及び印刷版とするために化学反応処理
により容易に除去されることが望ましい。本発明の転写
層は通常無色透明であるが、必要により、着色していて
もあるいは不透明でもよい。
【0074】また、本発明の転写層は、180℃以下の
温度及び/又は30kgf/cm2以下の圧力、より好ましく
は160℃以下の温度及び/又は20kgf/cm2以下の圧
力という条件で転写されることが好ましい。上記値以下
であれば、転写層を感光体表面から剥離・転写するため
に転写装置の熱容量及び圧力を維持するために装置を大
型化する必要も殆どなく、適度な転写スピードで充分に
転写を行うことができ、実用上問題がない。下限値は特
に限定されないが、通常室温以上の温度又は100gf/c
m2以上の圧力の転写条件で剥離可能となることが好まし
い。
【0075】本発明では、第1転写層(T1)及び第2転
写層(T2)を電着塗布法にり形成する際に用いられる各
樹脂粒子が以下の通りであることを特徴とする。
【0076】感光体側と接する第1転写層(T1)を形成
するために用いられる樹脂粒子(AW)は、ガラス転移
点又は軟化点の2℃以上異なる少なくとも二種の樹脂
(AH)(ガラス転移点20〜100℃又は軟化点38〜
120℃)及び樹脂(AL)(ガラス転移点45℃以下又
は軟化点60℃以下)を同一粒子内に含有する。ガラス
転移点又は軟化点が上記範囲に属する樹脂(AH)及び
樹脂(AL)を任意に選択して本発明に供することがで
きる。樹脂(AH)と樹脂(AL)とは、ガラス転移点
又は軟化点で2℃以上、好ましくは5℃以上、更に好ま
しくは10℃以上の差のある樹脂の組み合わせである。
ここで、樹脂(AH)又は樹脂(AL)が2種以上含有
される場合におけるガラス転移点又は軟化点の差は、樹
脂(AH)中の最もガラス転移点又は軟化点の低いもの
と、樹脂(AL)中の最もガラス転移点又は軟化点の高
いものとの差をいうものである。
【0077】樹脂(AH)と樹脂(AL)は、樹脂(A
H)/樹脂(AL)が5〜90/95〜10(重量比)
の割合で樹脂粒子(AW)に含有されることにより穏和
な転写条件(温度・圧力)での高速転写が可能となる。
より好ましい使用割合は、樹脂(AH)/樹脂(AL)
が10〜70/90〜30(重量比)である。
【0078】樹脂粒子(AW)中に含有される少なくと
も二種の樹脂(AH)及び樹脂(AL)は、樹脂粒子
(AW)内で任意に混在する状態又は樹脂(AH)が主
たる部分と樹脂(AL)が主たる部分とに分離した層構
造を形成する状態(即ちコア/シェル構造の粒子)のい
ずれでもよく、コア/シェル構造の場合には、コアとな
る部分が樹脂(AH)であっても樹脂(AL)であって
もよい。
【0079】一方、一次レセプター側と接する第2転写
層(T2)に用いられる樹脂(A2)は、好ましくはガラス
転移点10〜35℃又は軟化点30〜50℃、より好ま
しくはガラス転移点15〜35℃又は軟化点30〜45
℃の樹脂である。
【0080】また、第1転写層(T1)又は第2転写層
(T2)に用いられる樹脂(AH)、樹脂(AL)及び樹
脂(A2)の重量平均分子量は、それぞれ好ましくは1×
103〜5×105 、より好ましくは3×103 〜4×
104 の範囲である。
【0081】化学反応処理で除去可能な樹脂は、化学反
応処理により溶解及び/又は膨潤して除去される樹脂、
並びに化学反応処理により親水化されその結果溶解及び
/又は膨潤して除去される樹脂を包含する。ここで、こ
の熱可塑性で化学反応処理で除去可能な樹脂を一括して
樹脂(A)と称する(前記樹脂(AH)、樹脂(AL)
及び樹脂(A2)が含まれる)。
【0082】化学反応処理により除去される樹脂(A)
の1つの代表例は、アルカリ性処理液で除去し得る樹脂
であり、特に有用な樹脂は重合体成分に親水性基を含有
する樹脂である。また、他の代表例としては、親水性基
を保護基で保護した形で含有しており、化学反応により
親水性基を発現させ得る樹脂が挙げられる。官能基を親
水性基に変換し得る化学反応は、従来公知の加水分解反
応、加水素分解反応、加酸素分解反応、β−脱離反応、
求核置換反応等を利用した処理液による親水化反応、又
は化学的活性光線の照射を受けて分解反応することによ
る親水化反応のいずれでもよい。
【0083】特に、転写層用熱可塑性樹脂(A)が、下
記の特定の親水性基を含有する重合体成分(a)及び化
学反応で特定の親水性基を生成する官能基を含有する重
合体成分(b)のうちの少なくともいずれか一方の重合
体成分を含有する重合体であることが好ましい。
【0084】重合体成分(a):−CO2H基、−CH
O基、−SO3H基、−SO2H基、−P(=O)(OH)
1基{R1は−OH基、炭化水素基又は−OR2基(R2
は炭化水素基を表わす)を表わす}、フェノール性OH
基、酸環状無水物含有基、−CONHCOR3基(R3
炭化水素基を表わす)及び−CONHSO23基のうち
の少なくとも1つの基を含有する重合体成分。 重合体成分(b):化学反応で−CO2H基、−CHO
基、−SO3H基、−SO2H基、−P(=O)(OH)R
1基{R1は−OH基、炭化水素基又は−OR2基(R2
炭化水素基を表わす)を表わす}及び−OH基のうちの
少なくとも1つの基を生成する官能基を少なくとも1種
含有する重合体成分。
【0085】ここで、−P(=O)(OH)R1は、下記
で表わされる基を示す。
【0086】
【化2】
【0087】上記のR1、R2及びR3で示される炭化水
素基は、具体的には置換されていてもよい炭素数1〜1
8の脂肪族基(例えばメチル基、エチル基、プロピル
基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ド
デシル基、オクタデシル基、2−クロロエチル基、2−
メトキシエチル基、3−エトキシプロピル基、アリル
基、クロトニル基、ブテニル基、シクロヘキシル基、ベ
ンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、、
メチルベンジル基、クロロベンジル基、フロロベンジル
基、メトキシベンジル基等)又は置換されていてもよい
アリール基(フェニル基、トリル基、エチルフェニル
基、プロピル−メチル−フェニル基、ジクロロフェニル
基、メトキシフェニル基、シアノフェニル基、アセトア
ミドフェニル基、アセチルフェニル基、ブトキシフェニ
ル基等)等である。
【0088】また、環状酸無水物含有基とは、少なくと
も1つの環状酸無水物を含有する基であり、含有される
環状酸無水物としては、脂肪族ジカルボン酸無水物、芳
香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。脂肪族ジカルボ
ン酸無水物の例としては、コハク酸無水物、グルタコン
酸無水物環、マレイン酸無水物環、シクロぺンタン−
1,2−ジカルボン酸無水物環、シクロヘキサン−1,
2−ジカルボン酸無水物環、シクロヘキセン−1,2−
ジカルボン酸無水物環、2,3−ビシクロ〔2.2.
2〕オクタンジカルボン酸無水物環等が挙げられ、これ
らの環は、例えば塩素原子、臭素原子等のハロゲン原
子、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基等のア
ルキル基等が置換されていてもよい。芳香族ジカルボン
酸無水物の例としては、フタル酸無水物環、ナフタレン
ジカルボン酸無水物環、ピリジンジカルボン酸無水物
環、チオフェンジカルボン酸無水物環等が挙げられ、こ
れらの環は、例えば塩素原子、臭素原子等のハロゲン原
子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のア
ルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アル
コキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エ
トキシカルボニル基等)等が置換されていてもよい。
【0089】重合体成分(a)及び(b)の存在量が少
なすぎると、転写層の化学反応処理による除去が難しく
なり、印刷版として印刷すると非画像部の地汚れとなっ
てしまう。他方、多すぎる場合には、樹脂(A)の他の
共重合成分をいかに調整しても樹脂(A)のガラス転移
点又は軟化点が高くなってしまい、結果として転写層の
転写性の悪化を生じる。
【0090】従って、樹脂(A)における重合成分
(a)及び重合成分(b)の含有量は以下の通りが好ま
しい。特定の親水性基を含有する重合体成分(a)のみ
を樹脂(A)に含有する場合には、樹脂(A)の全重合
体成分中好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5
〜40重量%である。また、化学反応処理で親水性基を
生成する官能基を含有する重合体成分(b)のみを含有
する場合には、樹脂(A)の全重合体成分中好ましくは
3〜100重量%、より好ましくは5〜70重量%であ
る。更には、重合体成分(a)及び重合体成分(b)を
含有する場合には、樹脂(A)の全重合体成分中、重合
体成分(a)は好ましくは0.5〜30重量%、より好
ましくは1〜25重量%であり、重合体成分(b)は好
ましくは3〜99.5重量%、より好ましくは5〜50
重量%である。
【0091】次に、樹脂(A)中に含有され得る各重合
体成分について詳述する。重合体成分(a)は、前記し
た様な特定の親水性基を含有する共重合成分であればよ
く、特に限定されるものではない。親水性基は塩の形を
とってもよい。親水性基含有の共重合成分の具体例は、
かかる親水性基を含有するビニル系化合物であればいず
れでもよく、例えば、高分子学会編「高分子データ・ハ
ンドブック〔基礎編〕」培風館(1986年刊)等に記載さ
れている。具体的には、アクリル酸、α及び/又はβ置
換アクリル酸(例えばα−アセトキシ体、α−アセトキ
シメチル体、α−(2−アミノ)エチル体、α−クロロ
体、α−ブロモ体、α−フロロ体、α−トリブチルシリ
ル体、α−シアノ体、β−クロロ体、β−ブロモ体、α
−クロロ−β−メトキシ体、α,β−ジクロロ体等)、
メタクリル酸、イタコン酸、イタコン酸半エステル類、
イタコン酸半アミド類、クロトン酸、2−アルケニルカ
ルボン酸類(例えば2−ペンテン酸、2−メチル−2−
ヘキセン酸、2−オクテン酸、4−メチル−2−ヘキセ
ン酸、4−エチル−2−オクテン酸等)、マレイン酸、
マレイン酸半エステル類、マレイン酸半アミド類、ビニ
ルベンゼンカルボン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、ビ
ニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、ジカルボン酸類の
ビニル基又はアリル基の半エステル誘導体及びこれらの
カルボン又はスルホン酸のエステル誘導体、アミド誘導
体の置換基中に親水性基を含有する化合物等が挙げられ
る。
【0092】以下に上記親水性基含有の共重合成分
(a)を例示する。ここで、R4は−H又は−CH3を示
し、R5は−H、−CH3又は−CH2COOCH3を示
し、R6は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R7は炭素
数1〜6のアルキル基、ベンジル基又はフェニル基を示
し、eは1又は2の整数を示し、fは1〜3の整数を示
し、gは2〜11の整数を示し、hは1〜11の整数を
示し、iは2〜4の整数を示し、jは2〜10の整数を
示す。
【0093】
【化3】
【0094】
【化4】
【0095】
【化5】
【0096】
【化6】
【0097】
【化7】
【0098】
【化8】
【0099】
【化9】
【0100】次に、重合体成分(b)について説明す
る。重合体成分(b)は、化学反応により少なくとも1
個の親水性基を生成する官能基を少なくとも1種含有す
る重合体成分である。化学反応により1つの官能基から
生成する上記親水性基は1個でも2個以上でもよい。
【0101】まず、化学反応により少なくとも1つのカ
ルボキシル基を生成する官能基について説明する。本発
明の1つの好ましい態様によれば、カルボキシル基生成
官能基としては、例えば、下記一般式(I)で示される
官能基が挙げられる。 一般式(I) −COO−L1 一般式(I)において、L1は下記の基を表わす。
【0102】
【化10】
【0103】ここで、R11及びR12は互いに同じでも異
なっていてもよく、水素原子又は炭化水素基を表わし、
Xは芳香族基を表わし、Zは水素原子、ハロゲン原子、
トリハロメチル基、アルキル基、−CN基、−NO
2基、−SO21基(Z1は炭化水素基を示す)、−CO
OZ2基(Z2は炭化水素基を示す)、−OZ3基(Z3
炭化水素基を示す)又は−COZ4基(Z4は炭化水素基
を示す)を表わし、n、mはそれぞれ0、1又は2を表
わす。但し、n及びmが共に0の場合、Zは水素原子を
表わさない。
【0104】A1及びA2は同じでも異なっていてもよ
く、Hammetの置換基定数σ値が正の値を示す電子吸引性
基を表わす。R13は水素原子又は炭化水素基を表わす。
14、R15及びR16並びにR20及びR21は、互いに同じ
でも異なっていてもよく、各々炭化水素基又は−OZ5
基(Z5は炭化水素基を示す)を表わす。Y1は酸素原子
又はイオウ原子を表わし、R17、R18及びR19は同じで
も異なっていてもよく、各々水素原子、炭化水素基又は
−OZ7基(Z7は炭化水素基を示す)を表わし、pは3
又は4の整数を表わす。Y2 は環状イミド基を形成する
有機残基を表わす。
【0105】以下更に詳しく説明する。R11、R12は互
いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは水素原子
又は置換されてもよい炭素数1〜12の直鎖状又は分枝
状アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル
基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメ
チル基、トリフルオロメチル基、ブチル基、ヘキシル
基、オクチル基、デシル基、ヒドロキシエチル基、3−
クロロプロピル基等)を表わし、Xは好ましくは置換さ
れてもよい、フェニル基又はナフチル基(例えばフェニ
ル基、メチルフェニル基、クロロフェニル基、ジメチル
フェニル基、クロロメチルフェニル基、ナフチル基等)
を表わし、Zは好ましくは水素原子、ハロゲン原子(例
えば塩素原子、フッ素原子等)、トリハロメチル基(例
えばトリクロロメチル基、トリフルオロメチル基等)、
炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状又は分枝状ア
ルキル基(例えばメチル基、クロロメチル基、ジクロロ
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル
基、テトラフルオロエチル基、オクチル基、シアノエチ
ル基、クロロエチル基等)、−CN基、−NO2基、−
SO21基{Z1は脂肪族基(例えば炭素数1〜12の
置換されてもよいアルキル基、具体的にはメチル基、エ
チル基、プロピル基、ブチル基、クロロエチル基、ペン
チル基、オクチル基等、炭素数7〜12の置換されても
よいアラルキル基、具体的にはベンジル基、フェネチル
基、クロロベンジル基、メトキシベンジル基、クロロフ
ェネチル基、メチルフェネチル基等)又は芳香族基(例
えば置換基を含有してもよいフェニル基又はナフチル
基、具体的にはフェニル基、クロロフェニル基、ジクロ
ロフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル
基、アセチルフェニル基、アセトアミドフェニル基、メ
トキシカルボニルフェニル基、ナフチル基等)を表わ
す}、−COOZ2基(Z2は上記Z1と同義である)、
−OZ3基(Z3は上記Z1と同義である)又は−COZ4
基(Z4は上記Z1と同義である)を表わす。n、mは各
々0、1又は2を表わす。但し、n及びmが共に0の場
合、Zは水素原子を表わさない。
【0106】R14、R15、R16及びR20、R21は互いに
同じでも異なっていてもよく、好ましくは、炭素数1〜
18の置換されてもよい脂肪族基{脂肪族基はアルキル
基、アルケニル基、アラルキル基又は脂環式基を示し、
置換基としては例えばハロゲン原子、−CN基、−OZ
6基(Z6はアルキル基、アラルキル基、脂環式基、アリ
ール基を示す)等が挙げられる}、炭素数6〜18の置
換されてもよい芳香族基(例えばフェニル基、トリル
基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、アセトア
ミドフェニル基、ナフチル基等)又は−OZ5基(Z5
置換されてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換さ
れてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換されて
もよい炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数5〜18
の置換されてもよい脂環式基、炭素数6〜18の置換さ
れてもよいアリール基を示す)を表わす。
【0107】A1、A2は互いに同じでも異なっていても
よく、各々少なくとも一方が電子吸引基であり、A1
2のHammetのσp 値の和が0.45以上であればよ
い。ここで言う電子吸引基の例としては、例えばアシル
基、アロイル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル
基、フェノキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、
アロイルスルホニル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン
原子、ハロゲン化アルキル基、カルバモイル基等が挙げ
られる。
【0108】Hammetのσp 値は、通常置換基の電子吸引
・供与の度合いを見積もる指標として用いられており、
+側に大きいほど強い電子吸引基として扱われる。各置
換基に対する具体的な数値については、稲本直樹著「ハ
メット則―構造と反応性」丸善(1984年刊)等に記載さ
れている。また、この系におけるHammetのσp 値は加成
性が成り立つと考えられ、A1、A2の両方が電子吸引基
である必要はない。従って、一方、例えばA1が電子吸
引基である場合、他方のA2の置換基は、A1、A2のσp
値の和が0.45以上になるものであればいずれでもよ
く、特に制限されるところはない。
【0109】R13は好ましくは炭素数1〜8の置換され
ていてもよい炭化水素基を表わし、例えば、メチル基、
エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシ
ル基、オクチル基、アリル基、ベンジル基、フェネチル
基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、
2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、2−
クロロエチル基等が挙げられる。Y1は酸素原子又はイ
オウ原子を表わす。
【0110】R17、R18及びR19は互いに同じでも異な
っていてもよく、好ましくは水素原子、置換されてもよ
い炭素数1〜18の直鎖状又は分枝状アルキル基(例え
ばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシ
ル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシ
ル基、クロロエチル基、メトキシエチル基、メトキシプ
ロピル基等)、置換されてもよい脂環式基(例えばシク
ロペンチル基、シクロヘキシル基等)、置換されてもよ
い炭素数7〜12のアラルキル基(例えばベンジル基、
フエネチル基、クロロベンジル基、メトキシベンジル基
等)、置換されてもよい芳香族基(例えばフェニル基、
ナフチル基、クロロフェニル基、トリル基、メトキシフ
ェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ジクロロフ
ェニル基等)又は−OZ7基(Z7は炭化水素基を表わ
し、具体的には上記R17、R18、R 19の炭化水素基と同
一の置換基類を示す)を表わす。pは3又は4の整数を
表わす。
【0111】Y2は、環状イミド基を形成する有機残基
を表わす。好ましくは、一般式(A)又は一般式(B)
で示される有機残基を表わす。
【0112】
【化11】
【0113】式(A)中、R22及びR23は各々同じでも
異なっていてもよく、各々水素原子、ハロゲン原子(例
えば塩素原子、臭素原子等)、炭素数1〜18の置換さ
れてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プ
ロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル
基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2
−クロロエチル基、2−メトキシエチル基、2−シアノ
エチル基、3−クロロプロピル基、2−(メタンスルホ
ニル)エチル基、2−(エトキシオキシ)エチル基
等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基
(例えばベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロ
ピル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、メト
キシベンジル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基
等)、炭素数3〜18の置換されてもよいアルケニル基
(例えばアリル基、3−メチル−2−プロペニル基、2
−ヘキセニル基、4−プロピル−2−ペンテニル基、1
2−オクタデセニル基等)、−SZ8基{Z8は前記R22
又はR23のアルキル基、アラルキル基、アルケニル基と
同一の内容を表わす置換基、又は置換されてもよいアリ
ール基(例えばフェニル基、トリル基、クロロフェニル
基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシ
フェニル基、エトキシカルボニルフェニル基等)を表わ
す}又は−NHZ9基(Z9は前記Z8と同一の内容を表
わす)を表わす。また、R22とR23で環を形成する残基
を表わしてもよい{例えば5又は6員環の単環(例えば
シクロベンチル環、シクロヘキシル環)又は5又は6員
環のビシクロ環(例えばビシクロヘプタン環、ビシクロ
ヘプタン環、ビシクロオクタン環、ビシクロオクテン環
等)、更にはこれらの環は置換されていてもよく、置換
基としてはR22、R23で前記した内容と同一のものを含
む}。qは2又は3の整数を表わす。
【0114】
【化12】
【0115】式(B)中、R24、R25は同一でも異なっ
てもよく、前記R22、R23と同一の内容を表わす。更に
は、R24とR25は連続して芳香族環を形成する有機残基
を表わしてもよい(例えばベンゼン環、ナフタレン環
等)。
【0116】更に、本発明の好ましい他の1つの態様と
して、下記一般式(II)で示されるオキサゾロン環を挙
げることができる。
【0117】
【化13】
【0118】一般式(II)において、R26、R27は互い
に同じでも異なっていてもよく、各々水素原子若しくは
炭化水素基を表わすか、又はR26とR27とが一緒に環を
形成する。好ましくは、R26、R27は互いに同じでも異
なってもよく、各々水素原子、置換されていてもよい炭
素数1〜12の直鎖状又は分枝状アルキル基(例えばメ
チル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル
基、2−クロロエチル基、2−メトキシエチル基、2−
メトキシカルボニルエチル基、3−ヒドロキシプロピル
基等)、置換されていてもよい炭素数7〜12のアラル
キル基(例えばベンジル基、4−クロロベンジル基、4
−アセトアミドベンジル基、フェネチル基、4−メトキ
シベンジル基等)、置換されていてもよい炭素数2〜1
2のアルケニル基(例えばビニル基、アリル基、イソプ
ロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等)、置換され
ていてもよい5〜7員環の脂環式基(例えばシクロペン
チル基、シクロヘキシル基、クロロシクロヘキシル基
等)、置換されてもよい芳香族基(例えばフェニル基、
クロロフェニル基、メトキシフェニル基、アセトアミド
フェニル基、メチルフェニル基、ジクロロフェニル基、
ニトロフェニル基、ナフチル基、ブチルフェニル基、ジ
メチルフェニル基等)を表わすか、又はR26とR27とが
一緒に環(例えばテトラメチレン基、ペンタメチレン
基、ヘキサメチレン基等)を形成してもよい。
【0119】また、化学反応により少なくとも1つのス
ルホ基を生成する官能基としては、例えば下記一般式
(III)又は(IV)で表される官能基が挙げられる。 一般式(III) −SO2−O−L2 一般式(IV) −SO2−S−L2 式(III)又は(IV)中、L2は、下記の基を表わす。
【0120】
【化14】
【0121】ここで、R11、R12、X、Z、n、m、Y
2、R20及びR21はそれぞれ前記と同一の内容を表わ
す。R26′、R27′はそれぞれ水素原子又は炭化水素基
(R26の炭化水素基と同一内容)を表わす。
【0122】更に、化学反応により少なくとも1つのス
ルフィン酸基を生成する官能基としては、例えば下記一
般式(V)で表される官能基が挙げられる。
【0123】
【化15】
【0124】式(V)中、A1、A2及びR13は、それぞ
れ前記と同一の内容を表わす。
【0125】また、化学反応により−P(=O)(OH)
1基を生成する官能基としては、例えば下記一般式(V
Ia)又は(VIb)で表される官能基が挙げられる。
【0126】
【化16】
【0127】式(VIa)又は(VIb)中、L3、L4は同
じでも異なってもよく、それぞれ前記L1と同一の内容
を表わす。R1は前記と同一の内容を表わす。
【0128】更に、化学反応により−OH基を生成する
官能基としては、例えば下記一般式(VII)で表される官
能基が挙げられる。 一般式(VII) −O−L5 式(VII)中、L5は、下記の基を表わす。
【0129】
【化17】
【0130】ここで、R28は炭化水素基を表わし、具体
的にはR11と同一の内容を表わす。R14〜R19、Y1
びpはそれぞれ前記と同一の内容を表わす。
【0131】更に、化学反応により−OH基を生成する
官能基の他の好ましい態様によれば、ヒドロキシル基生
成官能基は、互いに立体的に近い位置にある少なくとも
2つのヒドロキシル基を1つの保護基で同時に保護した
形で有する官能基である。互いに立体的に近い位置にあ
る少なくとも2つのヒドロキシル基を1つの保護した形
で有する官能基の例としては例えば下記一般式(VIII)、
(IX)及び(X)で表される官能基を挙げることができ
る。
【0132】
【化18】
【0133】式(VIII)〜(X)中、R29及びR30は、互
いに同じでも異なっていてもよく、各々水素原子、炭化
水素基又は−OZ10基(Z10は炭化水素基を示す)を表
わし、Uはヘテロ原子を介してもよい炭素―炭素結合を
表わす(但し、酸素原子間の原子数は5個以内であ
る)。
【0134】上記官能基について更に詳しく説明する
と、R29、R30は、互いに同じでも異なっていてもよ
く、好ましくは水素原子、炭素数1〜12の置換されて
もよいアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロ
ピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−メトキシエチル
基、オクチル基等)、炭素数7〜9の置換されてもよい
アラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基、メチ
ルベンジル基、メトキシベンジル基、クロロベンジル基
等)、炭素数5〜7の脂環式基(例えば、シクロペンチ
ル基、シクロヘキシル基等)又は置換されてもよいアリ
ール基(例えばフェニル基、クロロフェニル基、メトキ
シフェニル基、メチルフェニル基、シアノフェニル基
等)又は−OZ10基(Z10はR29、R30における炭化水
素基と同義である)を表わす。Uは、ヘテロ原子を介し
てもよい炭素―炭素結合を表わし、且つ酸素原子間の原
子数は5個以内である。
【0135】以下に前記した一般式(I)〜(X)で表
される各官能基の具体例(b−1)〜(b−67)を例
示する。但し、本発明の内容は、これらに限定されるも
のではない。なお、下記具体例において、各記号は下記
に示す通りである。
【0136】
【化19】
【0137】
【化20】
【0138】
【化21】
【0139】
【化22】
【0140】
【化23】
【0141】
【化24】
【0142】本発明において用いることのできる、化学
反応により−CO2H基、−CHO基、−SO3H基、−
SO2H基、−P(=O)(OH)R1基及び−OH基のう
ちの少なくとも1つの親水性基を生成する官能基を含有
する重合体成分(b)は、特に限定されるものではな
い。好ましくは前記した重合体成分(a)の親水性基が
保護された重合体成分を例として挙げることができる。
【0143】本発明に用いることのできる前記した様な
−CO2H基、−CHO基、−SO3H基、−SO2
基、−P(=O)(OH)R1基及び/又は−OH基を化
学反応で発現する官能基は、これらの親水性基を保護し
た官能基であり、これら保護基の該親水性基への化学結
合による導入の方法は、従来公知の方法によって、容易
に行うことができる。例えば、J. F. W. McOmie「Prote
ctive groups in Organic Chemistry」(Plenum Press.1
973年刊)、T. W. Greene「Protective groups in Orga
nic Synthesis」(Wiley-Interscience 1981年刊)、日
本化学会編「新実験化学講座、第14巻、有機化合物の合
成と反応」(丸善(株)1978年刊)、岩倉義男・栗田恵
輔著「反応性高分子」(講談社)等に記載された各単位
反応が用いられる。
【0144】これらの官能基を樹脂(A)中に導入する
方法としては、−CO2H基、−CHO基、−SO3
基、−PO32基、−SO2H基、−OH基等から選ば
れた少なくとも1種の親水性基を含有する重合体を、反
応によって各々の親水性基を保護した官能基に変換す
る、いわゆる高分子反応による方法、又は前記した一般
式(I)〜(X)で示される官能基を1種又はそれ以上
含有する1種又はそれ以上の単量体を合成した後、これ
と共重合し得る他の任意の単量体との重合反応により重
合体とする方法により得られる。
【0145】重合体中に、本発明に必要な官能基を任意
に調整し得る、あるいは、不純物(高分子反応の場合、
用いる触媒あるいは副生物等)を混入しない等の理由か
ら、後者の方法(予め所望の単量体を得、その後重合反
応を行なう方法)により製造することが好ましい。例え
ばカルボキシル基を生成する官能基を導入する場合、具
体的には重合性二重結合を含むカルボン酸類又はその酸
ハライド類を、例えば前記した公知文献等に記載された
方法に従って、そのカルボキシル基を一般式(I)で示
される官能基に変換した後、重合反応を行ない製造する
方法で行なうことができる。
【0146】また、化学反応によりカルボキシル基を生
成する官能基として前記一般式(II)で示されるオキサ
ゾロン環を含有する樹脂は、該オキサゾロン環を含有す
る1種又はそれ以上の単量体の、又は該単量体及びこれ
と共重合し得る他の単量体の重合反応により重合体とす
る方法により得ることができる。このオキサゾロン環を
含有する単量体は、重合性不飽和結合を含有するN−ア
シロイル−α−アミノ酸類の脱水閉環反応により製造す
ることができる。具体的には、岩倉義男・栗田恵輔著
「反応性高分子」第3章(講談社刊)の総説引例の文献
記載の方法によって製造することができる。
【0147】樹脂(A)は、上記特定の重合体成分
(a)及び/又は重合体成分(b)とともに、所望の熱
可塑性を保持するために、他の重合体成分を含有するこ
とが好ましい。他の重合体成分としては、その重合体成
分からなるホモ重合体のガラス転移点が130℃以下で
あるものが好ましい。具体的には、例えば下記一般式
(U)で示される繰り返し単位の成分が挙げられる。
【0148】
【化25】
【0149】式(U)において、Vは−COO−、−O
CO−、−O−、−CO−、−C64−、−(CH2)n
COO−又は−(CH2)nOCO−を表わす。但し、n
は1〜4の整数を表わす。R60は炭素数1〜22の炭化
水素基を表わす。b1及びb2は同じでも異なっていても
よく、各々水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原
子、シアノ基、トリフロロメチル基、炭素数1〜7の炭
化水素基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブ
チル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジ
ル基等)又は−COOZ11基(Z11は炭化水素基を表わ
し、具体的には上記炭素数1〜7の炭化水素基の具体的
内容と同じものが挙げられる)を表わす。
【0150】R60は好ましくは、炭素数1〜18の置換
されていてもよいアルキル基(例えば、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル
基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル
基、、トリデシル基、テトラデシル基、2−クロロエチ
ル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−
ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、2−エト
キシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基等)、炭素数
2〜18の置換されてもよいアルケニル基(例えば、ビ
ニル基、アリル基、イソプロぺニル基、ブテニル基、ヘ
キセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等)、炭素数
7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベ
ンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、2−ナフ
チルエチル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル
基、メチルベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されて
もよいシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、
シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)又は炭素数6
〜12の置換されてもよいアリール基(例えば、フェニ
ル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル
基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フロロ
フェニル基、メチルクロロフェニル基、ジフロロフェニ
ル基、ブロモフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロ
フェニル基、メチルカルボニルフェニル基、メトキシカ
ルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、
メタンスルホニルフェニル基、シアノフェニル基等)等
が挙げられる。式(U)で示される重合体成分は1種又
は2種以上用いられるが、その含有量は樹脂(A)中3
0〜97重量%であることが好ましい。
【0151】樹脂(A)は、上記特定の重合体成分及び
一般式(U)で示される重合体成分とともに、これらと
共重合可能な他の重合体成分を更に含有していてもよ
い。このような他の重合体成分としては、例えば一般式
(U)で説明した以外の置換基を含有するメタクリル酸
エステル類、アクリル酸エステル類、クロトン酸エステ
ル類に加え、α−オレフィン類、カルボン酸ビニル又は
アリル酸エステル類(例えばカルボン酸として、酢酸、
プロピオン酸、酪酸、吉草酸、安息香酸、ナフタレンカ
ルボン酸等)、アクリロニトリル、メタクリロニトリ
ル、ビニルエーテル類、イタコン酸エステル類(例えば
ジメチルエステル、ジエチルエステル等)、アクリルア
ミド類、メタクリルアミド類、スチレン類(例えばスチ
レン、ビニルトルエン、クロロスチレン、N,N−ジメ
チルアミノメチルスチレン、メトキシカルボニルスチレ
ン、メタンスルホニルオキシスチレン、ビニルナフタレ
ン等)、ビニルスルホン含有化合物、ビニルケトン含有
化合物、複素環ビニル類(例えばビニルピロリドン、ビ
ニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルチオフェ
ン、ビニルイミダゾリン、ビニルピラゾール、ビニルジ
オキサン、ビニルキノリン、ビニルテトラゾール、ビニ
ルオキサジン等)、フッ素原子及び/又はケイ素原子を
含有する置換基を含む重合体成分等が挙げられるが、こ
れらに限定されるものではない。これら他の共重合成分
は、樹脂(A)の転写性を疎外しない範囲内で任意に用
いることができるが、具体的には樹脂(A)中の30重
量%を越えないことが好ましい。
【0152】また、転写層には樹脂(A)とともに、必
要に応じて他の樹脂を1種以上併用してもよい。但し、
転写層の溶出除去の性能を低下させないために、転写層
形成の全樹脂100重量部中上記重合体成分(a)及び
/又は(b)の存在割合が3重量部以上であることが好
ましい。
【0153】併用され得る他の樹脂の例としては、例え
ば塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル酸エ
ステル重合体及び共重合体、メタクリル酸エステル重合
体及び共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合
体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、イタコ
ン酸ジエステル重合体及び共重合体、無水マレイン酸共
重合体、アクリルアミド共重合体、メタクリルアミド共
重合体、水酸基変性シリコン樹脂、ポリカーボネート樹
脂、ケトン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ア
ミド樹脂、水酸基及びカルボキシル基変性ポリエステル
樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、環
化ゴム−メタクリル酸エステル共重合体、環化ゴム−ア
クリル酸エステル共重合体、複素環を含有する共重合体
(複素環として例えば、フラン環、テトラヒドロフラン
環、チオフェン環、ジオキサン環、ジオキソフラン環、
ラクトン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、
1,3−ジオキセタン環等)、セルローズ系樹脂、脂肪
酸変性セルローズ系樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ
る。
【0154】具体的には、例えば、日刊工業新聞社刊
「プラスチック材料講座シリーズ」第1巻〜18巻(1981
年)、近畿化学協会ビニル部会編「ポリ塩化ビニル」日
刊工業新聞社刊(1988年)、大森英三「機能性アクリル
樹脂」(株)テクノシステム刊(1985年)、滝山栄一郎
「ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業社刊(1988
年)、湯木和男編「飽和ポリエステル樹脂ハンドブッ
ク」日刊工業新聞社刊(1989年)、高分子学会編「高分
子データハンドブック〈応用編〉」第1章焙風館(1986
年)、原崎勇次編「最新・バインダー技術便覧」第2章
(株)総合技術センター(1985年)、奥田平編「高分子
加工 別冊・8第20巻増刊号“粘着”」高分子刊行会
(1976年刊)、福沢敬司「粘着技術」高分子刊行会(19
87年刊)、西口守「接着便覧第14版」(株)高分子刊行
会(1985年)、日本接着協会編「接着ハンドブック第2
版」日刊工業新聞社(1980年)等に記載の各種樹脂類が
挙げられる。
【0155】更に転写層には、接着性、成膜性、膜強度
等種々の物理的特性を向上させるために、他の添加剤を
用いてもよい。例えば、接着性調整のためにロジン、石
油樹脂、シリコーンオイル等、感光体へのぬれ性の改良
や溶融粘度を低下させる可塑剤及び軟化剤としてポリブ
テン、DOP、DBP、低分子スチレン樹脂、低分子ポ
リエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、
パラフインワックス等、また酸化防止剤として高分子ヒ
ンダード多価フェノール、トリアジン誘導体等を加える
ことができる。詳しくは「ホットメルト接着の実際」
(深田寛著、高分子刊行会、1983年発行)29〜107頁に
記載がある。
【0156】転写層の膜厚は全体として好ましくは0.
1〜10μm、より好ましくは0.5〜5μmの範囲で
ある。膜厚が0.1μm以上であれば転写が充分良好に
行われ、また厚すぎても本発明の効果には特に悪影響を
与えないが、樹脂の消費量の節約の観点から、10μm
以下が好ましい。また、転写層における第1転写層(T
1)と第2転写層(T2)との膜厚比は10〜80/90〜
20、好ましくは20〜70/80〜30である。この
範囲内において本発明の良好な転写性向上効果が得られ
る。
【0157】本発明では、電着塗布法により、即ち以上
述べたような熱可塑性樹脂を、特定のガラス転移点又は
軟化点を有する樹脂(AH)及び樹脂(AL)を同一粒
子内に含有する樹脂粒子(AW)又は樹脂(A2)を主と
して含有する樹脂粒子(A2L)の状態で、前記(i)〜
(iii)の態様に応じて感光体又は一次レセプター上に電
着又は静電的に付着(単に電着ということもある)さ
せ、例えば加熱等により均一な薄膜を形成して第1転写
層(T1)又は第2転写層(T2)とする。従って、樹脂粒
子(AW)又は樹脂粒子(A2L)は、正電荷あるいは負
電荷のいずれかの荷電を有していることが必要であり、
その検電性は組み合せる電子写真感光体又は一次レセプ
ターの帯電性によって任意に決定される。
【0158】各樹脂粒子は、前記した物性を満たす範囲
のものであって、その平均粒径は、通常0.01μm〜
1.0μmの範囲であり、好ましくは0.05μm〜
0.8μm、より好ましくは0.1μm〜0.5μmの
範囲である。粒子は非水系に分散された樹脂粒子(湿
式)あるいは常温で固体であり加熱により液体となる電
気絶縁性有機物中に分散された樹脂粒子(疑似湿式)の
いずれの状態でもよく、これにより転写層の膜厚を均一
に且つ薄く調整することができる。
【0159】樹脂粒子は、従来公知の機械的粉砕方法又
は重合造粒方法によって製造することができる。これら
の製造方法は湿式電着あるいは疑似湿式電着のいずれの
粒子にも用いることができる。
【0160】例えば、分散ポリマーを併用して、更に湿
式分散機(例えば、ボールミル、ペイントシェーカー、
ケディミル、ダイノミル等)で分散する方法、樹脂粒子
成分となる材料と、分散補助ポリマー(又は被覆ポリマ
ー)を予め混練して混練物とした後粉砕し、次に分散ポ
リマーを共存させて分散する方法等が挙げられる。具体
的には、塗料又は静電写真用現像剤の製造方法を利用す
ることができ、例えば植木憲二監訳「塗料の流動と顔料
分散」共立出版(1971年)、ソロモン「塗料の科学」、
「Paint and Surface Coating Theory and Practic
e」、原崎勇次「コーティング工学」朝倉書店(1971
年)、原崎勇次「コーティングの基礎科学」(1977年)
等の成書に記載されている。
【0161】また、重合造粒法としてシード重合法を用
いて容易に製造することができる。具体的には、前記し
た「超微粒子ポリマーの最新技術」第2章、「最近の電
子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」第3
章、K. E. J. Barrett「Dispersion Polymerization in
Organic Media」John Wiley(1975年)等の成書に記載
されている。
【0162】前述のガラス転移点の異なる少なくとも2
種の樹脂を同一粒子内に含有する樹脂粒子(AW)を得
る場合には、例えばシード重合法を用いて容易に製造す
ることができる。具体的には上記した従来公知の非水系
分散重合方法でまず樹脂(AH)又は樹脂(AL)から
なる微粒子を合成し、次にこの微粒子をシードとして更
に上記と同様にしてシード粒子とガラス転移点の異なる
樹脂(AL)又は樹脂(AH)に相当する単量体類をフ
ィードして重合させる方法により製造することができ
る。
【0163】非水溶媒系分散樹脂粒子の製造に用いられ
る非水溶媒としては、沸点200℃以下の有機溶媒であ
ればいずれでもよく、単独であるいは2種以上を混合し
て用いることができる。かかる有機溶媒の具体例は、メ
タノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、フ
ッ化アルコール、ベンジルアルコール等のアルコール
類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノ
ン、ジエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、
テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸
メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル
等のカルボン酸エステル類、ヘキサン、オクタン、デカ
ン、ドデカン、トリデカン、シクロヘキサン、シクロオ
クタン等の炭素数6〜14の脂肪族炭化水素類、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭
化水素類、メチレンクロリド、ジクロロエタン、テトラ
クロロエタン、クロロホルム、メチルクロロホルム、ジ
クロロプロパン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化
水素類等が挙げられる。ただし、以上述べた化合物例に
限定されるものではない。これらの非水溶媒系で分散樹
脂粒子を分散重合法で合成することにより、樹脂粒子の
平均粒子径は容易に1μm以下となり、しかも粒子径の
分布が非常に狭く且つ単分散の粒子とすることができ
る。
【0164】これらの非水系分散樹脂粒子は、湿式静電
写真現像方法又は電界の印圧場で電気泳動させて電着さ
れる方法を行なうことから、電着時に用いられる分散媒
としては、電気抵抗108Ω・cm以上、且つ誘電率3.
5以下の非水溶媒系に調節されることが好ましい。これ
により、転写層の膜厚を均一な厚みで且つ薄膜で容易に
調整することができる。具体的には、直鎖状もしくは分
枝状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素又は芳香族炭化
水素、及びこれらのハロゲン置換体を用いることができ
る。例えばオクタン、イソオクタン、デカン、イソデカ
ン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シク
ロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーE、
アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパ
ー;エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェル
ゾール71(シェルゾール;シェルオイル社の商品
名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムス
コ;アメリカン・ミネラル・スピリッツ社の商品名)等
を単独あるいは混合して用いることができる。従って、
重合造粒時に用いる溶媒として、初めから上記絶縁性有
機溶媒を用いることが好ましいが、これら溶媒以外の溶
媒で造粒した後、分散媒の置換をして調節することもで
きる。
【0165】また、非水系ラテックスの他の合成方法と
しては、上記した電気抵抗108Ωcm以上且つ誘電率
3.5以下の非水溶媒に可溶性となる重合体成分と、こ
の溶媒に不溶性となる重合体成分とで構成されるブロッ
ク共重合体を、該溶媒に湿式分散することで微小樹脂粒
子として供することもできる。即ち、可溶性の重合体成
分と不溶性の重合体成分とからなるブロック共重合体
を、予め該ブロック共重合体を溶解する有機溶媒中で、
前記したブロックポリマーの合成法を用いて重合体とし
た後、電着用非水溶媒に分散させる方法である。
【0166】分散媒中の分散粒子を電気泳動で電着させ
るためには、樹脂粒子は正荷電又は負荷電の検電性粒子
である。樹脂粒子に検電性を付与することは湿式静電写
真用現像剤の技術を適宜利用することで達成できる。具
体的には、前記の「最近の電子写真現像システムとトナ
ー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編
「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、
1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(19
77年)等に記載の検電材料及び他の添加剤を用いること
で行なわれる。例えば、英国特許893,429号、同
934,038号、米国特許1,122,397号、同
3,900,412号、同4,606,989号、特開
昭60−179751号、同60−185963号、特
開平2−13965号等に記載されている。
【0167】電着に供せられる非水系ラテックスの構成
としては、通常少なくとも電気絶縁性分散媒1リットル
中に、熱可塑性樹脂を主として含有する粒子が0.1〜
30g、分散安定用樹脂は0.01〜50g、必要に応
じて加える荷電制御剤は、0.0001〜10gの範囲
である。
【0168】更に、粒子の分散安定性、荷電安定性の保
持等のために、他の添加剤を添加してもよく、例えば、
ロジン、石油樹脂、高級アルコール類、ポリエーテル
類、シリコーンオイル類、パラフィンワックス類、トリ
アジン誘導体等が挙げられる。しかし、これらに限定さ
れるものではない。これらの添加剤の総量は、電着用ラ
テックスの電気抵抗によってその上限が規制される。即
ち、電気抵抗が108Ωcmより低くなると熱可塑性樹脂
粒子の付着量が充分に得られ難くなるので、各添加剤の
添加量はこの限度内でコントロールされることが好まし
い。
【0169】このようにして微粒子化し荷電を付与して
電気絶縁性液体中に分散した熱可塑性樹脂粒子は電子写
真湿式現像剤と同様の挙動を示す。よって例えば前掲の
「電子写真技術の基礎と応用」275〜285頁に示される現
像デバイス、例えばスリット現像電極装置を用いて被電
着体(即ちトナー画像形成後の感光体、第1転写層(T
1)を設けた感光体、一次レセプター又は第2転写層(T
2)を設けた一次レセプター)表面に電気泳動させること
ができる。即ち、熱可塑性樹脂(A)を主として含有す
る粒子が、被電着体と対向して設置された対向電極の間
に供給され、外部電源より印加された電位勾配に従って
電気泳動して被電着体に付着又は電着されて成膜され
る。
【0170】一般的には粒子の荷電が正極性の場合には
被電着体と現像デバイスの現像電極との間に、被電着体
側が負電位になるように外部電源から電圧を印加し、粒
子を静電気的に被電着体表面へ電着させる。また被電着
体が感光体の場合には通常の電子写真プロセスにおける
湿式トナー現像によって電着させることもできる。即ち
前提の「電子写真技術の基礎と応用」46〜79頁に示され
るように、感光体を均一帯電させた後露光を行わず、又
は不要領域のみに露光を行ういわゆる焼き落としをし、
次いで通常の湿式トナー現像をする。
【0171】他方、加熱により液化する媒体中に分散し
た樹脂粒子を用いる場合に供される好ましい媒体は、常
温で固体であり、加熱温度30〜80℃、好ましくは4
0〜70℃で液体となる電気絶縁性の有機化合物であ
り、これに好適な化合物としては、凝固点30〜80℃
のパラフィン類、ロウ類、凝固点20〜80℃の低分子
量のポリプロピレン、凝固点20〜50℃の牛脂、凝固
点30〜80℃の硬化油等が挙げられ、これらを単独又
は組み合わせて用いることができる。その他必要な特性
は、上記湿式現像法に供される電着樹脂粒子分散物の場
合と同様である。
【0172】更に、この疑似湿式法に供される樹脂粒子
は、供される媒体の液化する温度では軟化しない高ガラ
ス転移点又は高軟化点の樹脂成分が粒子の外殻を構成す
る、いわゆるコア−シェル型粒子(コア部が低Tgの樹
脂、シェル部が高Tgの樹脂)とすることで、分散され
た樹脂粒子が加熱で融着することなく、安定に分散され
た状態を維持することが可能となる。
【0173】被電着体上の熱可塑性樹脂粒子の付着量は
外部バイアスの印加電圧、被電着体の帯電電位及び電着
時間などにより任意に調節できる。電着後公知のゴムロ
ーラー、ギャップローラ、リバースローラなどによるス
クイズで現像液を拭い去る。またコロナクイズやエアー
スクイズなどの方法も公知である。更に冷風もしくは温
風、あるいは赤外線ランプなどにより乾燥し、好ましく
は熱可塑性樹脂粒子を皮膜化させて転写層とする。更に
は、被電着体の表面を予め加熱しておき、加熱下に電着
する方法であってもよい。
【0174】本発明においては、上記のようにして感光
体上にトナー画像を形成した後転写層を形成するか又は
一次レセプター上に転写層を形成し、転写層を介してト
ナー画像を感光体表面から一次レセプターへ転写する。
【0175】一次レセプターは、感光体表面に形成され
たトナー画像を転写層を介して加熱及び/又は圧力条件
下での接触転写法により受け取り、更に被転写材(印刷
用支持体)へと加熱及び/又は圧力条件下に剥離転写さ
せるものである。従って、一次レセプターの表面の剥離
性は、感光体表面のそれよりも低いこと及び被転写材に
剥離転写する剥離性を保つことが重要である。即ち、一
次レセプター表面の粘着力は感光体表面の粘着力より大
きいこと、好ましくは80g・f以上、より好ましくは
100g・f以上大きいことが望ましい。また、一次レ
セプター表面の粘着力は300g・f以下であることが
好ましく、特に120〜200g・fの範囲であること
が好ましい。このように粘着力を調整することにより、
感光体から一次レセプターへの転写、更には一次レセプ
ターから被転写材への転写層ごとのトナー画像の一括転
写が容易に達成できる。更に加えるなら、一次レセプタ
ー表面と被転写材表面の粘着力においても、少なくとも
前者は後者より小さいことが望ましい。
【0176】この熱転写には公知の方法及び装置を用い
ることができる。例えば、トナー画像を有する感光体を
一次レセプターと密着させ、加熱下にローラー間を通す
ことによりトナー画像は転写層を介して一次レセプター
上に転写される。
【0177】熱転写時の転写層の表面温度は好ましくは
35〜150℃、より好ましくは40〜120℃であ
る。転写層を所望の温度に加熱するためには、非接触の
加熱手段、例えば赤外線ラインヒーター又はフラッシュ
ヒーター等を用いることが好ましい。ローラーのニップ
圧力は好ましくは0.2〜20kgf/cm2、より好ましく
は0.5〜15kgf/cm2である。ローラー加圧手段とし
てはローラー軸の両端にスプリングもしくは圧縮空気を
用いるエアーシリンダーを使うことができる。搬送スピ
ードは好ましくは0.1〜300mm/秒、より好ましく
は1〜250mm/秒である。搬送スピードは電子写真プ
ロセスと熱転写工程とで異なっていてもよい。
【0178】以上の条件を満たす一次レセプターであれ
ば、用いられる材料はいずれでもよい。本発明におい
て、感光体から一次レセプターへのトナー画像の転写に
用いられる方式としては、例えばドラム方式や、繰り返
し使用可能な無端ベルト方式を挙げることができる。ド
ラム方式において、ドラム上に設けられるべき一次レセ
プターの材料としては上記条件を満たす材料であればい
ずれでもよいが、好ましくは弾性体層又は弾性体層と補
強層支持体を含む積層構造体であり、且つ積層構造体の
表面が上記物性を満足していればよい。これら積層体は
ドラムに直接設けるかあるいは交換できるように取り外
し式にしておいてもよい。
【0179】弾性体としては、従来公知の天然樹脂類・
合成樹脂類が挙げられる。これらは単独もしくは2種以
上併用して単一層又は複数層として用いることができ
る。例えば、A. D. Roberts「Natural Rubber Science
and Technology」Oxford Science Publications(1988年
刊)、W. Hofmann「Rubber Technology Handbook」、Ha
nser Publishers(1989年刊)、プラスチック材料構座、
全18巻、日刊工業新聞社等に記載の種々の樹脂が用いら
れる。具体的には、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジ
エンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、環化ゴ
ム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブ
チルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、シリコ
ーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、天然ゴム、イソプ
レンゴム、ウレタンゴム等が挙げられるが、これらに限
定されるものでなく、転写層との剥離性、耐久性等を勘
案して任意に選択することができる。弾性体層の厚さは
0.01〜10mmが好ましい。
【0180】上記弾性体層の補強層としては、布、ガラ
ス繊維、樹脂含浸特殊紙、アルミニウム、ステンレスな
どが用いられる。弾性体層と補強層の間にはスポンジ状
ゴム層があってもよい。無端ベルト方式においても一次
レセプターの部材は公知のものを用いることができ、例
えば、米国特許3,893,761号、同4,684,
238号、同4,690,539号等に記載されたもの
が挙げられる。ベルト式一次レセプターのベルト担体の
層中に、例えば特表平4−503265号等に記載の如
く加熱媒体となる一層を設ける方法も用いられる。一次
レセプター表面の粘着力は、前記剥離性感光体に関して
述べた方法、例えば化合物(S)を適用する方法によっ
て容易に調整することができる。一次レセプターの表面
の平均粗さは0.01mm以下が好ましい。
【0181】次いで、本発明では、一次レセプター上の
トナー画像を転写層ごと最終被転写材に熱転写する。
【0182】本発明に用いる被転写材は平版印刷に適し
た親水性表面を提供するものであればよく、従来オフセ
ット印刷版に供される支持体をそのまま用いることがで
きる。具体的には、プラスチックシート、耐刷性を施し
た紙、アルミニウム板、亜鉛板、銅−アルミニウム板、
銅−ステンレス板、クロム−銅板等のバイメタル板、ク
ロム−銅−アルミニウム板、クロム−鉛−鉄板、クロム
−銅−ステンレス板等のトライメタル板等の親水性表面
を有する基板が用いられる。その厚さは0.1〜3mm、
特に0.1〜1mmが好ましい。
【0183】アルミニウムの表面を有する支持体の場合
には、砂目立て処理、ケイ酸ナトリウム、フッ化ジルコ
ニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、又
は陽極酸化処理等の表面処理がなされていることが好ま
しい。また、米国特許2,714,066号に記載され
ている如く、砂目立てしたのちにケイ酸ナトリウム水溶
液に浸漬処理されたアルミニウム板、特公昭47−51
25号に記載されているように、アルミニウム板を陽極
酸化処理したのち、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸
漬処理したものも好適に使用される。
【0184】上記陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロ
ム酸、硫酸、ほう酸等の無機酸、もしくはシュウ酸、ス
ルファミン酸等の有機酸又はこれらの塩の水溶液又は非
水溶液の単独又は二種以上を組み合わせた電解液中でア
ルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施さ
れる。また、米国特許3,658,662号に記載され
ているようなシリケート電着も有効である。西独特許公
開1,621,478号に記載のポリビニルスルホン酸
による処理も適当である。これらの親水化処理は、支持
体の表面を親水性とするために施される他に、その上に
転写されるトナー画像との密着性向上のために施される
ものである。また、支持体とトナー画像を形成した転写
層との間の接着性を調節するために、支持体表面に表面
層を設けてもよい。プラスチックシート又は紙を支持体
とする場合には、当然のことながら、トナー画像部以外
が親水性でなければならないことから、親水性を有する
表面層を設けたものが供される。具体的には、公知の直
描型平版印刷用原版又はかかる原版の画像受理層と同様
の層を有する被転写材を用いることができる。
【0185】一次レセプターから被転写材への熱転写に
おいても、公知の方法及び装置を用いることができる。
転写時の好ましい加熱温度の範囲、一次レセプターと被
転写材間のニップ圧力の範囲及び搬送スピードの範囲は
上記の感光体と一次レセプターの熱転写条件の範囲と同
様である。また、一次レセプターへのトナー画像の転写
と被転写材への転写層の転写とは同一条件でも異なる条
件でもよい。
【0186】被転写材への熱転写挙動は、次のように推
定される。即ち、例えば予熱手段によりある程度軟化し
た転写層が例えば加熱ローラーにより更に加熱されるこ
とにより粘着性が増し被転写材に密着する。次いで、例
えば剥離用の冷却ローラー下を通過した後では温度が下
がり、流動性や粘着性が低減して被膜のままトナーごと
一次レセプター表面から剥離する。従って、このような
状態が具現するように条件を設定すべきである。
【0187】冷却ローラーの材質は、例えばアルミニウ
ム、銅等の熱良伝導体金属にシリコーンゴム被覆を施
し、ローラー内部又は被転写材に接しない外周部に冷却
手段を付与して放熱することが望ましい。冷却手段はク
ーリングファン、冷媒循環又は電子冷却素子などを用
い、温度コントローラーと組み合わせて所定の温度範囲
に保つことが好ましい。感光体から一次レセプターへの
トナー画像の転写と、一次レセプターから被転写材への
トナー画像の転写層ごとの転写は、一画面内同時であっ
てもよいし、あるいは一次レセプターに一画面全ての転
写が終わった後、被転写材に転写してもよい。
【0188】本発明の印刷版の作成方法において、トナ
ー画像及び転写層を転写する条件設定は、使用している
感光体(感光層及び支持体)、転写層、一次レセプター
表面の物性、更に被転写材の物性により最適化すること
は当然である。特に熱転写工程における温度条件は転写
層のガラス転移点、軟化温度、流動性、粘着性、皮膜
性、膜厚などの要因を加味して決定することが重要であ
る。
【0189】本発明では、以上のようにして得られたト
ナー画像及び転写層を有する被転写材(印刷原版)を化
学反応処理して、転写層を除去することでオフセット用
印刷版を作成することができる。転写層を除去するため
には、処理液による反応の他に化学的光学活線による脱
保護反応を用いてもよく、また併用してもよい。
【0190】処理液は、所定のpHに調整された水溶性
溶液を用いる。pHの調整は、公知のpH調整剤を用い
ることができる。適用されるpH域は酸性〜中性〜アル
カリ性のいずれでもよいが、処理液の防錆性又は転写層
の溶出除去性を勘案すると、pH8以上のアルカリ性領
域で用いることが好ましい。アルカリ性処理液とする化
合物としては、従来公知の無機化合物又は有機化合物の
いずれでもよく、例えば、炭酸塩、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、
有機アミン化合物等を単独又は混合して用いることがで
きる。
【0191】更には、親水性反応を迅速化するために併
用できる化合物として、パーソン(Pearson)の求核定数
n〔R. G. Pearson & H. Sobel, J. Amer. Chem. Soc.,
90,319(1968) 〕が5.5以上の値を有する置換基を含
有し、且つ蒸留水100重量部中に1重量部以上溶解す
る求核性化合物が挙げられる。具体的な化合物として
は、例えばヒドラジン、ヒドロキシルアミン、亜硫酸塩
(アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩
等)、チオ硫酸塩等が挙げられ、また、分子内にヒドロ
キシル基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ア
ミノ基から選ばれた少なくとも1つの極性基を含有する
メルカプト化合物、ヒドラジド化合物、スルフィン酸化
合物、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物等が挙
げられる。
【0192】例えばメルカプト化合物として、2−メル
カプトエタノール、2−メルカプトエチルアミン、N−
メチル−2−メルカプトエチルアミン、N−(2−ヒド
ロキシエチル)−2−メルカプトエチルアミン、チオグ
リコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、メルカプ
トベンゼンカルボン酸、2−メルカプトエンスルホン
酸、2−メルカプトエチルホスホン酸、メルカプトベン
ゼンスルホン酸、2−メルカプトプロピオニルアミノ酢
酸、2−メルカプト−1−アミノ酢酸、1−メルカプト
プロピオニルアミノ酢酸、1,2−ジメルカプトプロピ
オニルアミノ酢酸、2,3−ジヒドロキシロピルメルカ
プタン、2−メチル−2−メルカプト−1−アミノ酢酸
等を、スルフィン酸化合物として、2−ヒドロキシエチ
ルスルフィン酸、3−ヒドロキシプロパンスルフィン
酸、4−ヒドロキシブタンスルフィン酸、カルボキシベ
ンゼンスルフィン酸、ジカルボキシベンゼンスルフィン
酸等を、ヒドラジド化合物として、2−ヒドラジノエタ
ノールスルホン酸、4−ヒドラジノブタンスルホン酸、
ヒドラジノベンゼンスルホン酸、ヒドラジノベンゼンス
ルホン酸、ヒドラジノ安息香酸、ヒドラジノベンゼンカ
ルボン酸等を、第1級又は第2級アミン化合物として、
例えばN−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−
ジ(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジ(2−
ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、トリ(2−ヒド
ロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2,3−ジヒ
ドロキシプロピル)アミン、N,N−ジ(2,3−ジヒ
ドロキシプロピル)アミン、2−アミノプロピオン酸、
アミノ安息香酸、アミノピリジン、アミノベンゼンジカ
ルボン酸、2−ヒドロキシエチルモルホリン、2−カル
ボキシエチルモルホリン、3−カルボキシピペラジン等
を挙げることができる。
【0193】これら処理液中の求核性化合物の存在量は
好ましくは0.05〜10モル/リットル、より好まし
くは0.1〜5モル/リットルである。また、処理液の
pHは8以上が好ましい。
【0194】処理液は、上記した求核性化合物及びpH
調整剤以外に、他の化合物を含有してもよい。例えば、
水に可溶性の有機溶媒を、水100重量部中に1〜50
重量部含有してもよい。このような水に可溶性の有機溶
媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタ
ノール、プロパノール、プロパギルアルコール、ベンジ
ルアルコール、フェネチルアルコール等)、ケトン類
(アセトン、メチルエチルテトン、シクロヘキサノン、
アセトフェノン等)、エーテル類(ジオキサン、トリオ
キサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメ
チルエ−テル、プロピレングリコールジエチルエ−テ
ル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレ
ングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロピラン
等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ピロリドン、
N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等)、エ
ステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸エチル、スル
ホラン、テトラメチル尿素等)等が挙げられる。これら
は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0195】また、界面活性剤を水100重量部中に
0.1〜20重量部含有してもよい。界面活性剤として
は、従来公知のアニオン性、カチオン性又はノニオン性
の各界面活性剤が挙げられる。例えば、堀口博「新界面
活性剤」(1975年刊)三共出版(株)、小田良平、寺村
一広「界面活性剤の合成とその応用」(1980年刊)槇書
店等に記載される化合物を用いることができる。更に、
処理液の保存時の防腐性、防黴性向上の為に、従来公知
の防腐性化合物、防黴性化合物を併用してもよい。処理
の条件としては、温度は15〜60℃、浸漬時間は10
秒〜5分間が好ましい。更に処理時に、超音波下に行う
又は機械的な摺動(ブラシ等でこする等)等の物理的操
作を併用してもよい。
【0196】他方、化学的活性光線の照射により脱保護
反応する場合に用いられる光線としては、可視光線、紫
外線、遠紫外線、電子線、X線、γ線、α線等いずれで
もよいが、好ましくは紫外線、より好ましくは波長31
0nm〜波長500nmの範囲の光線である。一般には高圧
又は超高圧の水銀ランプ等が用いられる。光照射処理は
通常5cm〜50cmの距離から10秒〜10分間の照射で
充分に行うことができる。この様にして光照射した後、
上記の様な水溶性溶液中に浸漬することで容易に転写層
が除去される。
【0197】以下に本発明の電子写真式製版印刷版の作
成方法を添付図面をもって詳細に説明する。図2及び図
3は、本発明の方法を実施するのに適した電子写真式製
版印刷原版作成装置の概略図であり、一次レセプターと
して図2はドラム方式を、図3は無端ベルト方式を用い
たものである。
【0198】前述のように、表面が剥離性を有する電子
写真感光体を用いる場合には、そのまま感光体上に電子
写真プロセスによりトナー画像の形成を行う。また、感
光体表面の剥離性が不十分な場合には、電子写真プロセ
スに入る前に化合物(S)を適用する装置を設けること
により、感光体表面に剥離性を付与することができる。
即ち、前記した如き適用方法を具体化した化合物(S)
適用装置10により、感光体11表面に化合物(S)を
供給する。化合物(S)適用装置10は、固定又は可動
式のいずれでもよい。また、化合物(S)を液体現像剤
中に含有させて電子写真プロセスと同時に表面剥離性を
付与してもよい。
【0199】前述の如く、本発明における現像は湿式現
像剤を用いることが好ましく、これにより高解像力の画
像が得られる。以下、湿式現像剤を用いた態様を説明す
る。
【0200】まず、感光体11をコロナ帯電装置18
で、例えばプラスに一様帯電した後、露光装置(例えば
半導体レーザー)19で画像情報に基づき画像露光する
と、露光部の電位が低減され、未露光部との間に電位コ
ントラストが得られる。プラスの静電荷を有する樹脂粒
子が電気絶縁性分散媒中に分散している液体現像剤を含
む液体現像ユニット14Tを液体現像ユニットセット1
4から感光体表面に接近させギャップを1mmにして固定
する。
【0201】感光体11は液体現像ユニットセットに具
備されたプレバス手段によりプレバスされ、次いで図に
は示されていないバイアス電源及び電気結線により感光
体11と現像電極の間に現像バイアス電圧を印加しなが
ら液体現像剤を感光体表面に供給する。この時のバイア
ス電圧は現像電極側を正に、感光体側を負になるように
接続し、印加電圧は未露光部の表面電位よりもやや低く
する。印加電圧が低すぎると充分なトナー画像濃度が得
られない。
【0202】その後液体現像ユニットセット14に内蔵
してあるリンス手段により感光体表面に付着した現像液
を洗い落とし、続いてスクイズ手段により感光体表面に
付着したリンス液を除いてから、吸排気ユニット15下
を通過させることにより乾燥させる。この間一次レセプ
ター20は感光体11表面より離して置く。プレバス及
びリンス液には通常の液体現像剤のキャリヤーが好まし
く用いられる。
【0203】次に、方法(i)及び方法(iii)の場合に
は、トナー画像を形成した感光体11上に第1転写層
(T1)が電着塗布法により形成される。
【0204】第1転写層(T1)用の樹脂粒子の分散液を
入れた電着ユニット14L1 を感光体に接近させ、電着
ユニットの現像電極との距離が1mmとなるように固定す
る。このギャップ間に樹脂粒子分散液を供給し、外部か
ら電圧を印加しながら回転させ、トナー画像を形成した
感光体表面の全面に樹脂粒子が電着するようにする。方
法(i)の場合には、更に続けて第2転写層(T2)用の
樹脂粒子の分散液を入れた電着ユニット14L2 を用い
て上記と同様にして第2転写層(T2)を設ける。この
際、分散液の分散溶媒の排気は、電子写真感光体の電子
写真プロセス用に設けた吸排気ユニット15を利用する
ことができる。
【0205】感光体上に形成するための第1転写層(T
1)用及び第2転写層(T2)用の電着ユニットは、それぞ
れ図2に示すように現像ユニットセット14内に併設さ
れていてもよいし(14L1、14L2)、図2に点線で
示すように転写層形成装置13として別に設置してもよ
い。また、方法(ii)及び方法(iii)の場合に、一次レ
セプター上に転写層を設ける場合においても、上記した
と同様の電着塗布法に従い、図2に点線で示す転写層形
成装置21により第2転写層(T2)及び第1転写層(T
1)、又は第2転写層(T2)を形成することができる。
【0206】次いで、感光体11上のトナー画像を一次
レセプター20へ転写させる。必要に応じて感光体を熱
転写のための加熱手段16により所定の加熱をし、更に
一次レセプター20も加熱手段16を用いて所定の加熱
を行い、感光体表面上のトナー画像を転写層を介して一
次レセプター20に圧接して熱転写する。
【0207】次いで、一次レセプター20の転写層上に
完全に転写されたトナー画像を、更に転写層とともに被
転写材30に圧接して熱転写を行う。必要に応じて一次
レセプター20の加熱手段16により所定の加熱をし、
且つ被転写材30を転写用バックアップローラー31に
より所定の加熱をし、一次レセプター20上のトナー画
像を被転写材30に圧接した後、剥離用バックローラー
32で冷却して被転写材30上に転写層ごとトナー画像
を転写し、一連の工程を終了する。 また、感光体11
の表面に剥離性を付与する必要のある場合は、化合物
(S)を適用装置10で適用した状態で装置を停止する
ことにより、次の装置稼働時にすぐ電子写真プロセスか
らスタートすることができる。
【0208】
【実施例】以下に実施例を示し更に詳しく本発明の内容
を説明するが、これによって本発明が限定を受けるもの
ではない。
【0209】〔第1転写層用樹脂粒子(AW)の合成
例〕 樹脂粒子(AW)の合成例1:(AW−1) 下記構造の分散安定用樹脂(Q−1)18g及びアイソパ
ーH 560gの混合溶液を窒素気流下攪拌しながら温度55
℃に加温した。これに、メチルメタクリレート40g、メ
チルアクリレート48g、アクリル酸12g、3−メルカプ
トプロピオン酸メチル 1.3g及び2, 2′−アゾビス(イ
ソバレロニトリル)(略称A.I.V.N.)0.8gの混合溶液を1
時間で滴下した。そのまま1時間攪拌後、A.I.V.N. 0.8
gを加え2時間反応した。更に、2, 2′−アゾビス(イ
ソブチロニトリル)(略称A.I.B.N.) 0.5gを加え、温度
を80℃に設定し、3時間反応した。冷却後、200メッシ
ュのナイロン布を通し得られた白色分散物は重合率97%
で平均粒径0.17μmの単分散性のラテックスであった。
粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製)で測定
した(以下同様)。上記白色分散物の一部を遠心分離機
(回転数1×104r.p.m.、回転時間1時間)にかけ、沈
降した樹脂粒子分を補集、乾燥し、樹脂粒子分の重量平
均分子量(Mw)(G.P.C.によるポリスチレン換算値。以
下同様)とガラス転移点(Tg)を測定した。Mwは1
×104、Tgは25℃であった。これを樹脂粒子(AR−
1)とする。
【0210】
【化26】
【0211】この樹脂粒子分散物(即ちシード粒子)及
び分散安定用樹脂(Q−1)10gの混合溶液を窒素気流
下攪拌しながら温度60℃に加温した。これに、ベンジル
メタクリレート85g、アクリル酸15g、3−メルカプト
プロピオン酸メチル2.0g、A.I.V.N. 0.8g及びアイソ
パーH 200gの混合物を2時間で滴下し、そのまま更に
2時間反応した。次に、開始剤を0.8g加え、温度70℃
にして2時間反応し、更に開始剤を0.6g加え3時間反
応した。冷却後、200メッシュナイロン布を通し、得ら
れた白色分散物の重合率は98%で平均粒径0.24μmの単
分散性良好なラテックスであった。
【0212】比較用樹脂粒子の合成:(AR−2) 分散安定用樹脂(Q−1)16g及びアイソパーH 550g
の混合溶液を窒素気流下攪拌しながら温度50℃に加温し
た。これに、ベンジルメタクリレート85g、アクリル酸
15g、3−メルカプトプロピオン酸メチル 2.0g及び2,
2′−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリ
ル)(略称A.C.P.P.)1.2gの混合溶液を1時間で滴下し
た。そのまま1時間攪拌後、A.C.P.P. 0.8gを加え2時
間反応した。更に、A.I.B.N. 0.5gを加え、温度を80℃
に設定し、3時間反応した。冷却後、200メッシュのナ
イロン布を通し得られた白色分散物は重合率97%で平均
粒径0.17μmの単分散性のラテックスであった。 上記
白色分散物の一部を遠心分離機(回転数1×104r.p.
m.、回転時間1時間)にかけ、沈降した樹脂粒子分を補
集、乾燥した。Mwは9×103、Tgは60℃であった。
【0213】次に、得られた樹脂粒子(AW−1)が、
単独の粒子として形成されたか否かを走査型電子顕微鏡
(SEM)を用いて粒子の状態を観察することで調べ
た。PETフィルム上に樹脂粒子(AW−1)が分散し
た状態になる様に調製して作製したフィルムを、温度50
℃及び80℃に5分間加熱処理した後、各サンプルをJS
L−T330型Scanning Microscope(JEOL社製)を
用いて、2万倍で観察した。温度50℃のサンプルは粒子
状態が観察されたが、温度80℃では観察されなかった。
即ち、粒子が加熱により融解していた。
【0214】同様にして、本発明の粒子を構成する二種
の樹脂(共重合体)の各々からなる樹脂粒子(AR−
1)、樹脂粒子(AR−2)及びこの二種の樹脂粒子を
1/1重量比で混合した分散樹脂粒子について調べた。
樹脂粒子(AR−1)から成るサンプルは、加熱しない
サンプルは粒子状態であったが、温度50℃で粒子状態が
観察されず、樹脂粒子(AR−2)のサンプルは温度80
℃で粒子が見えなくなった。更に、混合粒子からなるサ
ンプルについて、加熱しないサンプルと温度50℃のサン
プルを調べた所、未加熱サンプルと比べると、温度50℃
のものは粒子が見えなくなっている所が確認された。
【0215】以上の様に、粒子の熱挙動を目視観察した
結果、上記の様にして製造した本発明の樹脂粒子は、二
種類の樹脂粒子の混合されたものでなく、一種の粒子中
に二種の樹脂が含有されており、この場合には、高Tg
の樹脂が外層に低Tgの樹脂が内層に各々分配したコア
−シェル粒子であることが確認された。
【0216】樹脂粒子(AW)の合成例2〜11:(AW
−2)〜(AW−11) 上記樹脂粒子(AW)の合成例1において、下記表−A
に記載の各単量体を用いた他は上記合成例1と同様に操
作して本発明の粒子(AW−2)〜(AW−11)を製造
した。得られた各ラテックス粒子の重合率は95〜99%で
あり、平均粒径は0.20〜0.30μmの範囲で各々単分散性
は良好であった。
【0217】
【表1】
【0218】
【表2】
【0219】
【表3】
【0220】〔第2転写層用樹脂粒子(A2L)の合成
例〕 樹脂粒子(A2L)の合成例1:(A2L−1) 下記分散安定用樹脂(Q−2)12g、酢酸ビニル50g、
酪酸ビニル40g、ビニル酢酸10g及びアイソパーH 384
gの混合溶液を、窒素気流下撹拌しながら温度70℃に加
温した。A.I.V.N. 0.8gを加え、3時間反応した。開始
剤を添加して20分後に白濁を生じ、反応温度は88℃まで
上昇した。更に該開始剤0.5gを加え2時間反応した
後、温度を100℃に上げ2時間攪拌し未反応の酢酸ビニ
ルを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通
し、得られた白色分散物は重合率90%で平均粒径0.25μ
mの単分散性良好なラテックスであった。上記白色分散
物の一部を遠心分離機(回転数1×104r.p.m.、回転時
間1時間)にかけ、沈降した樹脂粒子分を補集、乾燥し
た。該樹脂粒子分のMwは8×104、Tgは23℃であっ
た。
【0221】
【化27】
【0222】樹脂粒子(A2L)の合成例2:(A2L−
2) 下記構造の分散安定用樹脂(Q−3)20g及びアイソパ
ーG 382gの混合溶液を窒素気流下撹拌しながら温度60
℃に加温した。これに、メチルメタクリレート45g、エ
チルアクリレート55g、3−メルカプトプロピオン酸メ
チル1.2g及びA.I.V.N. 1.0gの混合溶液を滴下時間1
時間で滴下し、そのまま更に1時間反応した。更にA.I.
V.N. 0.8gを加え2時間反応し、次にA.I.B.N. 0.8gを
加えて温度80℃に加温し2時間、更にA.I.B.N. 0.5gを
加えて2時間反応を行った。次に、温度100℃に加温
し、減圧度10〜20mmHg下に未反応単量体を留去した後、
冷却し、200メッシュのナイロン布を通し、得られた白
色分散物は、重合率98%、平均粒径0.17μmの単分散性
良好なラテックスであった。樹脂粒子分のMwは1.8×1
04、Tgは18℃であった。
【0223】
【化28】
【0224】樹脂粒子(A2L)の合成例3〜9:(A2L
−3)〜(A2L−9) 樹脂粒子(A2L)の合成例2において、メチルメタクリ
レート、エチルアクリレートの代わりに下記表−Bの各
単量体を用いた他は上記合成例2と同様にして各樹脂粒
子(A2L)の合成を行った。各々の白色分散物は、重合
率90〜99%で、平均粒径0.13〜0.20μmの単分散性良好
なラテックスであった。各樹脂粒子分のTgは10〜25℃
の範囲であった。
【0225】
【表4】
【0226】実施例1 X型無金属フタロシアニン(大日本インキ(株)製)2
g、下記結着樹脂(P−1)14.4g、下記結着樹脂(P
−2)3.6g、下記化合物(A)0.15g及びテトラヒド
ロフラン80gの混合物を、500mlのガラス容器にガラス
ビーズと共に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製作
所製)で60分間分散した後、ガラスビーズを濾別して感
光層分散液とした。
【0227】
【化29】
【0228】次いでこの分散液を脱脂処理を施した0.2m
m厚のアルミニウム版の上にワイヤーバーで塗布し、指
触乾燥した後、110℃循環式オーブンで20秒間加熱し
た。得られた感光層の膜厚は8μmであった。
【0229】・剥離性表面層の形成 下記構造のシリコン樹脂10g、下記構造の架橋剤1g、
下記構造の架橋抑制剤0.2g及び架橋用触媒として白金
0.1gをn−ヘキサン100g中に含有する塗布物をワイヤ
ーラウンドロッドを用いて塗布し、指触乾燥後、更に12
0℃で10分間加熱して膜厚1.5μmの表面層を形成した。
得られた表面の粘着力は1g・f以下であった。
【0230】
【化30】
【0231】以上の様にして得られた表面剥離性を有す
る感光体を、図2に示す装置に電子写真感光体11とし
て装着し、一次レセプター20としてオフセット印刷用
ブランケット9600−A(粘着力80g・f/10mm幅、全体
厚み1.6mm、明治ゴム製)を装着した。ここで、転写層
形成装置13及び21を別に設けず、液体現像ユニット
セット14内に電着ユニット14L1及び14L2を併設
した。
【0232】次に電子写真プロセスを行った。感光体1
1を暗所にてコロナ帯電装置18の下を通過させ、+45
0Vにコロナ帯電をしたのち、あらかじめ原稿からカラ
ースキャナーにより読み取り、色分解し、システム特有
の幾つかの色再現に関わる補正を加えた後、デジタル画
像データーとしてシステム内のハードディスクに記憶さ
せてあった情報をもとに、露光装置19として半導体レ
ーザー描画装置を用いて788nmの光で感光体上露光量が2
5erg/cm2になるように露光した。続いて液体現像剤とし
て電子写真式製版印刷原版用のELP−TX(富士写真
フイルム(株)製)を液体現像ユニット14Tに供給
し、液体現像ユニット側に+350Vのバイアス電圧を印
加し、未露光部にトナーが電着するようにした反転現像
を行ない、ついでアイソパーH単独浴中でリンスをして
非画像部の汚れを除いた。
【0233】次いで、このトナー画像を形成した感光体
上に、第1転写層(T1)及び第2転写層(T2)を形成し
た。即ち、感光体表面温度を60℃とし、かつ感光体ドラ
ムの周速度を100 mm/秒で回転させ感光体表面にスリッ
ト電着装置を用いて下記内容の樹脂粒子分散液(T1L−
1)を供給しながら、感光体側を接地し、スリット電着
装置の電極側に+100Vの電圧を印加して樹脂粒子を電
着・定着した。この時の第1転写層の膜厚は1.0μmで
あった。 ・樹脂粒子分散液(T1L−1) 樹脂粒子(AW−1) 20g(固形分量として) 正荷電調節剤(CD−1) 0.08g オクタデシルビニルエーテル/N-ヘキサデシル マレイン酸半アミド(1/1モル比)共重合体 荷電調整補助剤(AD−1) 0.1g ドデシルメタクリレート/メタクリル酸(94/6重量比)共重合体 をアイソパーGで全量で1.0リットルになる様に調整。
【0234】続けて、上記第1転写層(T1)形成と同様
にして、下記内容の樹脂粒子分散液(T2L−1)を用い
て第2転写層(T2)を電着・定着した。この時の第2転
写層(T2)の膜厚は0.5 μmであった。 ・樹脂粒子分散液(T2L−1) 樹脂粒子(A2L−1) 20g(固形分量として) 正荷電調節剤(CD−1) 0.05g 荷電調整補助剤(AD−1) 0.1g をアイソパーGで全量1.0リットルになる様に調整。
【0235】次に、表面温度60℃としたままの感光体1
1ドラムと、表面温度80℃とした一次レセプター20ド
ラムを接触させ、ニップ圧4kgf/cm2 、ドラム周速100m
m/秒の条件で加熱と加圧を行ったところ、トナー画像
は転写層ごと一次レセプター上にすべて転写した。
【0236】続けて、表面温度80℃のまま一次レセプタ
ー20ドラムと、120℃に設定された転写用バックアッ
プローラー31及び25℃に設定された剥離用バックアッ
プローラー32の間に、被転写材30としてFuji PS
プレートFPD(富士写真フイルム(株)製)に用いら
れるアルミニウム支持体を導き、ニップ圧を4kgf/cm2
ドラム周速を100mm/秒として加熱と加圧を行ったとこ
ろ、トナー画像は転写層と共にアルミニウム支持体上に
すべて転写し、高画質の鮮明な画像が得られた。
【0237】次に、アルミニウム支持体に転写層を転写
した印刷原版を不感脂化処理(即ち転写層除去)して印
刷版を作成し、その印刷性能を調べた。即ち、上記の原
版を下記不感脂化処理液(E−1)の中に35℃で1分間
浸漬して版面をゆるく毛ブラシでこすりながら転写層を
除去し、充分水洗した後ガム引きし、オフセット用印刷
版を作成した。この様にして得た印刷版を200倍の光学
顕微鏡を用いて目視観察したところ、非画像部には転写
層の残存は認められず、且つ画像部の細線・細文字等の
高解像度域の欠落は認められなかった。 ・不感脂化処理液(E−1) PS版処理剤(DP−4、富士写真フィルム(株)製)
を蒸留水で50倍に希釈した溶液(pH12.5)。
【0238】この印刷版を浸し水としてPS版用浸し水
(SG−23、東京インキ(株)製)を蒸留水で130倍に
希釈した水溶液(pH7.0)を用い、印刷機としてオリバ
ー94型((株)桜井製作所製)を用い、印刷紙として中
性紙を使用して、各種オフセット印刷用色インキで印刷
した。その結果、色インキの種類にかかわらず、いずれ
の場合も地汚れの発生しない鮮明な画像の印刷物が6万
枚以上得られた。更に、本発明の印刷版による印刷を行
った後、通常の操作のまま、次に通常のPS版を用いて
印刷したところ、何の問題も生じなかった。即ち、印刷
機をPS版等の他のオフセット印刷版と容易に共用でき
ることが確認された。
【0239】以上の様に、本発明によって供されるオフ
セット印刷版は、半導体レーザー光スキャニング露光方
式によって得られる画像再現性が極めて良好で且つそれ
が印刷物に良好に再現されること、色インキ適性が良
く、インキ選択性がほとんどみられず、フルカラー印刷
が高耐刷性で得られること、印刷機を他のオフセット印
刷版と容易に共用できること等、極めて優れた性能を示
すことが確認された。
【0240】比較例1 転写層(T1)及び(T2)を設けることなく転写する方法
でトナー画像をアルミニウム支持体上に転写形成して本
発明と比較した。得られたアルミニウム支持体上の画像
にはトナー画像の欠落あるいは画像濃度にムラのある所
が見られた。更に細線・細文字等の部分を20倍のルー
ペで目視観察した所細かな画像の欠落が認められた。ま
た、感光体の表面を観察した所トナー画像の残存が認め
られた。
【0241】比較例2 トナー画像形成後の転写層として転写層(T1)のみを設
けて、実施例1と同様に転写したところ、アルミニウム
支持体上へのトナー画像及び転写層の転写は不充分であ
り、感光体表面上に残存が認められた。そこで、転写層
(T1)の膜厚を1.5μm(実施例1の転写層全体の厚み
と同等)に調整して調べたが、やはり完全に転写するこ
とはなかった。
【0242】比較例3 実施例1において、樹脂粒子分散液(T1L−1)とし
て、樹脂粒子(AW−1)20g(固形分量として)の代
わりに樹脂粒子(AR−1)10g(固形分量として)及
び樹脂粒子(AR−1)10g(固形分量として)を用い
た他は同様に調整した樹脂粒子分散液を用いて膜厚1.0
μmとなる様に転写層(T1)を形成し、更にこの上に実
施例1と同様の転写層(T2)を形成した転写層を用い
た。実施例1の転写条件では、被転写材上のトナー画像
及び転写層は完全には転写されなかった。そこで、この
転写層で完全転写する条件を調べたところ、一次レセプ
ターへの転写条件が、感光体表面温度100℃及び一次
レセプター表面温度120℃、且つ被転写材への転写条
件が一次レセプター表面温度120℃であった(他は実
施例1の転写条件と同じ)。しかしながら、得られたト
ナー画像を200倍の光学顕微鏡で目視観察したとこ
ろ、細線・細文字に変形の歪みが生じていた。従って、
完全転写は可能となったが、画像の変形を生じ、忠実画
像の転写には不充分であった。
【0243】比較例4 一次レセプターを介さないでPSプレートへ直接転写す
る方法、即ち、感光体11ドラムと一次レセプター20
の間にPSプレートを介在させて、実施例1と同様の転
写条件で直接感光体上のトナー画像を転写層と共にPS
プレート上に転写させた。得られたアルミニウム支持体
上の画像を目視で観察したところ、細かな画像部での欠
落が認められ、感光体表面上にはトナー画像及び転写層
の残存が認められた。
【0244】上記のことから、本発明に従いトナー画像
を形成した感光体上に転写層を設けてトナー画像を転写
層ごと一次レセプターを介して被転写材上に転写する方
法は、感光体上から被転写材上にトナー画像を転写する
方法として非常に優れていることが判る。
【0245】実施例2 図2に示される装置に、電子写真感光体としてアモルフ
ァスシリコン感光体(京セラ(株)製)を装着した。こ
の感光体表面の粘着力は230g・fであった。この感光体
への剥離性付与は、装置内で化合物(S)を溶解した溶
液に浸漬させる(浸漬方法)ことで行なった。即ち、下
記化合物(S−1)1.5gをアイソパーG1リットル中
に溶解した溶液を入れた浴に、上記感光体を周速10mm/
秒の回転速度で回転して7秒間触れる様にして処理し、
エアースクイズで乾燥した。この様にして得られた感光
体表面の粘着力を測定した所、2g・fと低下し、良好
な剥離性を示した。
【0246】
【化31】
【0247】次いで、電子写真プロセスにより感光体上
にトナー画像の形成を行った。感光体11を+700Vに
コロナ帯電をした後、実施例1と同様のデジタル画像デ
ータの情報をもとに半導体レーザーを用いて780nmの光
で表面露光量が25erg/cm2になるように露光した。露光
部の残留電位は+120Vであった。
【0248】一方、下記の方法で液体現像剤(LD−
1)を調製した。 ・トナー粒子の合成 メチルメタクリレート30g、メチルアクリレート70g、
下記の分散ポリマー20g及びアイソパーH 680gの混合
溶液を窒素気流下に攪拌しながら温度65℃に加温した。
これに、A.I.V.N. 1.2gを加え2時間反応し、更にA.I.
V.N. 0.5gを加えて2時間反応し、更にA.I.V.N. 0.5g
を加えて2時間反応した。次に、反応温度を90℃に上げ
て、30mmHgの減圧下に1時間攪拌し未反応単量体を除去
した。室温に冷却後、200メッシュのナイロン布を通し
て濾過し、白色分散物を得た。得られた分散物の単量体
の反応率は95重量%で樹脂粒子の平均粒径は0.22μmで
且つ単分散性良好なものであった。粒径はCAPA−5
00を使用して測定した。
【0249】
【化32】
【0250】・着色粒子の製造 テトラデシルメタクリレート/メタクリル酸(95/5重
量比)共重合体10g、ニグロシン10g及びアイソパーG
30gをガラスビーズと共にペイントシェーカー(東京精
機(株)製)に入れ、4時間分散してニグロシンの微小
な分散物を得た。
【0251】・液体現像剤の製造 上記トナー粒子の樹脂分散物45g、上記ニグロシン分散
物25g、ヘキサデセン/半マレイン酸オクタデシルアミ
ド共重合体 0.2g及び分岐オクタデシルアルコール(FO
C-1800、日産化学(株)製)15gをアイソパーG1リッ
トルに希釈することにより静電写真用液体現像剤(LD
−1)を作製した。
【0252】上記の方法で製造した液体現像剤(LD−
1)を用いて現像電極を有する現像装置の電極に+300
Vのバイアス電圧を印加し、露光部にトナーが電着する
ようにした現像を行ない、ついでアイソパーH単独浴中
でリンスをして非画像部の汚れを除いた。
【0253】次に、このトナー画像の上に、下記樹脂粒
子分散液(T1L−2)を液体現像ユニットセット14内
の電着ユニット14L1 に供給し、温度50℃に設定され
ている感光体表面上に電着法で第1転写層(T1)を形成
した。但し、現像電極に+80Vの電圧を印加して膜厚0.
5μmの膜を形成した。 ・樹脂粒子分散液(T1L−2) 樹脂粒子(AW−2) 20g(固形分量として) 正荷電調節剤(CD−1) 0.08g 分枝テトラデシルアルコール 10g (FOC-1400 日産化学(株)製) をアイソパーGで全量1.0リットルになる様に調整。
【0254】他方、一次レセプターとして、中空ローラ
ー上に、まず、ゴム硬度75度及び厚さ4mmの天然ゴムシ
ート(コクゴ社(株)製)を固定し、この上にメトキシ
メチル変性ナイロン樹脂(ダイアミドMX−100 ダイセ
ル化学工業(株)製)からなる2μmの樹脂層を設け、
更にこの上に下記の樹脂(a)10g、下記の樹脂(b)
0.05g、無水フタル酸0.2g、o−クロロフェノール0.02
g及びテトラヒドフラン70gからなる溶液を塗布し、12
0℃で2時間加熱して膜硬化を行い3μmの樹脂層を形
成したものを用いた。表面粘着力は150g・fであった。
【0255】
【化33】
【0256】この一次レセプターの表面温度75℃とし、
下記内容の樹脂粒子分散液(T2L−2)を用いて、ドラ
ム周速100mm/秒で回転させながら現像電極に+110Vの
電圧を印加して電着法で、一次レセプター上に膜厚1.0
μmの第2転写層(T2)を形成した。 ・樹脂粒子分散液(T2L−2) 樹脂粒子(A2L−2) 20g(固形分量として) 正荷電調節剤(CD−1) 0.09g 分枝テトラデシルアルコール 10g (FOC-1400 日産化学(株)製) をアイソパーGで全量1.0リットルになる様に調整。
【0257】次に、温度50℃に設定されているトナー画
像上に第1転写層(T1)を形成した感光体ドラムと温度
75℃に設定されている第2転写層(T2)を形成した一次
レセプターとを接触させ、ニップ圧4kgf/cm2、ドラム周
速100mm/秒の条件下でトナー画像を転写層と共に一次
レセプター上にすべて転写した。
【0258】続けて、一次レセプタードラムと、100℃
に設定された転写用バックアップローラー31及び温度
制御をしない剥離用バックアップローラー32の間に、
被転写材30としてFPD用アルミニウム支持体を導
き、ニップ圧5kgf/cm2、ドラム周速100mm/秒として加
熱と加圧を行ったところ、トナー画像はアルミニウム支
持体上にすべて転写し、高画質の鮮明な画像が得られ
た。
【0259】このようにして得られた印刷原版をRICOH
FUSER モデル592(リコー(株)製)を用いて加熱してト
ナー部を充分に定着した後、200倍の光学顕微鏡を用い
て目視観察したところ、非画像部に汚染は認められず、
且つ画像部の細線・細文字等の高解像度域の欠落は認め
られなかった。
【0260】この印刷原版を下記内容の不感脂化処理液
(E−2)中に35℃で20秒間浸漬し、且つその間ゆるく
こすりながら転写層を除去し、充分水洗した後、ガム引
きし、オフセット用印刷版を作成した。 ・不感脂化処理液(E−2) イソプロピルアルコール 20g N,N−ジメチルエタノールアミン 15g を蒸留水で希釈し、水酸化ナトリウムでpH12.0に調整して全量を1リットル にしたもの。
【0261】この様にして得た印刷版を、200倍の光学
顕微鏡を用いて非画像部の転写層の有無及びトナー画像
部の欠落の有無を目視観察した。不感脂化処理性は良好
で、転写層は完全に除去され、地汚れは見られなかっ
た。且つ画像部の細文字、細線及び網点連続階調の中間
部の高精細な画像部においても、トナー画像の欠落は認
められず、画像部レジスト性は良好であった。この版を
浸し水としてPS版用浸し水(SG−23、東京インキ
(株)製)を蒸留水で130倍に希釈した水溶液(pH7.
0)を用い、印刷機としてオリバー94型((株)桜井製作所
製)を用い、印刷紙として中性紙を使用して、各種オフ
セット印刷用色インキで印刷した。その結果、色インキ
の種類にかかわらず、いずれの場合も地汚れの発生しな
い鮮明な画像の印刷物が6万枚以上得られた。
【0262】以上のように、トナー画像形成用に用いる
液体現像剤の種類によっては、トナー画像部と被転写材
との充分な密着性を保持させ、印刷時のトナー画像強度
を維持するために、転写層ごと転写した後に密着性向上
手段を組み合わせてもよい。密着性向上手段として、フ
ラッシュ定着による方法、ヒートロール定着による方法
においても同様の効果が得られた。
【0263】比較例5 実施例2において、トナー画像上に本発明の第1転写層
(T1)を設けることなく、トナー画像を第2転写層(T
2)を設けた一次レセプターに転写する方法でトナー画像
をアルミニウム支持体上に形成した。得られた画像に
は、トナー画像の欠落、あるいは画像濃度にムラのある
所が見られた。更に細線、細文字等の部分を20倍のルー
ペで目視観察したところ細かな画像の欠落が認められ
た。また、感光体の表面を観察した所、トナー画像の残
存が認められた。このことは、感光体を繰り返し使用す
る方法においては、残存トナーの除去のために、感光体
表面のクリーニングが必要となり、そのための装置の設
定あるいはクリーニングによる感光体表面の損傷等が問
題となってくる。
【0264】実施例3 実施例2において、感光体表面に電子写真プロセスを行
う同一装置内で化合物(S)を付着又は吸着させて、感
光体表面に剥離性を付与する方法として、上記浸漬法に
代えて以下の方法を行った。
【0265】(1) 実施例2における化合物(S)適用部
分110において、感光体11に剥離性付与のため下記
のカルボキシル変性シリコンオイル(TSF 4770、東芝シ
リコン(株)製)化合物(S−2)のオイルを入れた浴
に接したシリコンゴム層を表面に有するメタリングロー
ルを感光体に接触させ周速15mm/秒の回転スピードで、
両ドラムを20秒間回転させた。この処理により感光体表
面の粘着力は5g・fとなった。
【0266】
【化34】
【0267】また、シリコンオイル浴に浸されたメタリ
ングロールと感光体の間にスチレン−ブタジエンゴム層
を表面に有するトランスファーロールを介して処理して
も、上記と同様の結果が得られた。更には、上記メタリ
ングロール/トランスファーロールを用いる方法におい
て、図4に示す様にメタリングロールとトランスファー
ロールの間に化合物(S−2)を供給する方法でも、同
様に良好な結果が得られた。
【0268】(2) ジメチルシリコンオイル(KF-96L-2.
0、信越シリコーン(株)製)化合物(S−3)2gを
均一に含浸させたAW処理フェルト(厚み15mm×巾20mm
のウール材質)を感光体に押圧200gで圧接し、感光体
を周速20mm/秒の回転速度で30秒間回転した。処理後の
感光体表面の粘着力は5g・fとなった。
【0269】(3) 加熱手段を内蔵したゴムローラーに、
フッ素系界面活性剤(サーフロン S-141、旭硝子(株)
製)化合物(S−4)を含浸させた布を巻きつけたロー
ラーを、表面温度60℃に加熱した後感光体と接触させ、
両ドラムを周速20mm/秒の回転速度で30秒間回転した。
感光体表面の粘着力は12g・fになった。
【0270】(4) 金属芯ローラーにシリコンゴムを巻い
たシリゴムローラー((株)金陽社製)を感光体表面にニ
ップ圧500g・f/cm2で当接し、周速15mm/秒の回転速
度で10間回転した。これにより感光体表面の粘着力は
5g・fに低下した。
【0271】これらの方法(1)〜(4)によって得られた感
光体を用い、実施例2と同様にしてトナー画像の形成、
転写層の形成、一次レセプターへの転写、被転写材への
転写、印刷版の作成及び印刷を行った。いずれも実施例
2と同様の良好な結果を示した。
【0272】実施例4 実施例1で用いたのと同様の感光体を装着し、また、一
次レセプターとして、実施例1で用いたブランケット96
00−Aのロール表面上に、イソプレンゴム100gに対し
て下記樹脂(c)7g及びアセチルアセトンZr塩0.00
2gの混合物を用いて塗膜し、140℃で2時間加熱して
硬化膜(膜厚10μm)を形成したものを用いた(表面の粘
着力は120g・fであった)。
【0273】
【化35】
【0274】まず、一次レセプター上に、転写層形成装
置21により、以下の様にして転写層を形成した。即
ち、一次レセプターの表面温度を80℃に調節し、且つド
ラム周速100mm/秒で回転させながら電着法により下記
内容の樹脂粒子分散液(T2L−3)を用いてバイアス電
圧+100Vを印加して一次レセプター上に樹脂粒子(A2
L−3)を電着・定着し、膜厚1.0μmの第2転写層(T
2)を形成した。 ・樹脂粒子分散液(T2L−3) 樹脂粒子(A2L−3) 20g(固形分量として) 正荷電調節剤(CD−1) 0.09g をアイソパーGで全量1リットルになる様に調節した。
【0275】続けて、下記内容の樹脂粒子分散液(T1L
−3)を用いてバイアス電圧+110Vを印加して樹脂粒
子(AW−4)を電着・定着し、膜厚1.0μmの第1転
写層(T1)を形成した。 ・樹脂粒子分散液(T1L−3) 樹脂粒子(AW−4) 20g(固形分量として) 正荷電用調節剤(CD−1) 0.08g をアイソパーGで全量1リットルになる様に調節した。
【0276】次に、実施例1と同様にして感光体上にト
ナー画像を形成し、表面温度を60℃とした後、上記転写
層を形成した温度を90℃に設定した一次レセプターとニ
ップ圧3.5kgf/cm2で圧接し、ドラム周速100mm/秒の速
度でトナー画像を一次レセプターの転写層上に転写し
た。続けて、温度90℃に設定された転写用バックアップ
ローラー及び温度制御をしない剥離用バックアップロー
ラーの間に、被転写材としてストレートマスター(三菱
製紙(株)製)を導き、ニップ圧4kgf/cm2、ドラム周
速100mm/秒として加熱と加圧を行ったところ、トナー
画像は転写層ごと一括してストレートマスター上に転写
された。即ち、トナー画像と転写層は剥離時に強制的に
い冷却することなく被転写材上に転写した。
【0277】この様にして得られたストレートマスター
上に形成された複写画像(平版印刷原版)を200倍の光
学顕微鏡を用いて目視観察した。非画像部のトナーの地
汚れは認められず、またトナー画像及び転写層は感光体
に転写残りすることなくストレートマスター上にすべて
転写した。また、画像部は細線や細文字の欠落のない鮮
明な画像が得られた。
【0278】また、この様にして得られた印刷原版をフ
ラッシュ定着方法でトナー部を充分に定着した後、不感
脂化処理(即ち転写層除去)して印刷版とし、その印刷
性能を調べた。即ち、上記の原版を、温度35℃の下記不
感脂化処理液(E−3)中に20秒間浸漬して版面をゆる
く毛ブラシでこすりながら転写層を除去し、充分水洗し
た後、ガム引きし、オフセット用印刷版を作成した。 ・不感脂化処理液(E−3) 前記DP−4を蒸留水で60倍に希釈して1リットルと
し、これにモノエタノールアミン 3gを加えた溶液
(pH12.3)。
【0279】この様にして得た印刷版を200倍の光学顕
微鏡を用いて目視観察したところ、非画像部には転写層
の残存は認められず、且つ前記した画像部の細線・細文
字、網点等の高解像度域・高精細画像部の欠落は認めら
れなかった。この印刷版を用いて実施例1と同様にして
印刷を行ったところ、製版後と同等の極めて優れた画像
を有する印刷物を2千枚以上得ることができた。
【0280】比較例6 実施例4において、感光体のトナー画像形成後に転写層
(T1)を設けない他は実施例4と同様にして(一次レセ
プター上には転写層(T2)を設ける)転写を行ったとこ
ろ、ストレートマスター上のトナー画像部は著しい欠落
を生じてしまい、感光体上及び一次レセプター上にトナ
ー画像の著しい残存が認められた。
【0281】実施例5 X型無金属フタロシアニン(大日本インキ(株)製)1
g、下記結着樹脂(P−3)8g、下記化合物(B)0.
15g及びテトラヒドロフラン80gの混合物を、500mlの
ガラス容器にガラスビーズと共に入れ、ペイントシェー
カー(東洋精機製作所製)で60分間分散し、更にこれに
下記樹脂(PP−1)2.0g、無水フタル酸0.03g及び
アセチルアセトンジルコニウム塩0.01gを加えて2分間
分散した後ガラスビーズを濾別して感光層分散液とし
た。
【0282】
【化36】
【0283】次いでこの分散液を脱脂処理を施した0.2m
m厚のアルミニウム版の上にワイヤーバーで塗布し、指
触乾燥した後、110℃循環式オーブンで20秒間加熱し
た。更に140℃で1時間加熱した。得られた感光層の膜
厚は8μmであった。この感光体の粘着力は2g・fで
あった。他方、上記感光層において、樹脂(PP−1)
2.0gを除き、結着樹脂(P−3)10gを用いた他は全
く同様にして作成した感光層から成る感光体表面の粘着
力は420g・fであった。実施例1と同様に転写層を付
与して転写させたところ、全く剥離性を示さなかった。
【0284】上記感光体を実施例1で用いた感光体の代
わりに用いた他は実施例1と同様にして製版・印刷版の
作成及び印刷を行った。その結果、実施例1と全く同様
に非画像部の地汚れの発生がなく、画像部の細線・細文
字の欠落の認められない良好な印刷物が6万枚以上得ら
れた。
【0285】実施例6〜15 実施例1において、第1転写層用樹脂粒子分散液(T1L
−1)中の樹脂粒子(AW−1)及び第2転写層用樹脂
粒子分散液(T2L−1)中の樹脂粒子(A2L−1)の代
わりに、表−Cに示す各樹脂粒子を用いた他は実施例1
と同様にして印刷原版を作成した。
【0286】
【表5】
【0287】この様にして得たFPDプレート上に形成
された各複写画像を200倍の光学顕微鏡を用いて目視観
察した。非画像部のトナーの地汚れは認められず、プレ
ート上のトナー画像は感光体上に転写残りすることなく
全て転写しており、実施例1と同様に細線・細文字等の
高解像度域の欠落・乱れ及び網点中間調部の高精細画像
域の網点の欠落・乱れは見られず、複写画像として極め
て良好なものであった。
【0288】次に上記の各原版を下記内容の不感脂化処
理液(E−4)中に35℃で25秒間浸漬して版面をゆるく
毛ブラシでこすりながら転写層を除去し、充分水洗した
後、ガム引きし、平版用印刷版を作成した。 ・不感脂化処理液(E−4) モノエタノールアミン 50g ベンジルアルコール 10g を蒸留水で希釈し、水酸化ナトリウムでpH12.5に調整した全量1リットルの 水溶液。
【0289】この様にして得た各印刷版を実施例1と同
様にして平版印刷したところ、色インキの種類にかかわ
らず、いずれの場合も地汚れの発生しない鮮明な画像の
印刷物が5万枚以上得られた。
【0290】実施例16 有機光導電性物質として、4,4′−ビス(ジエチルア
ミノ)−2,2′−ジメチルトリフェニルメタン5g、
下記結着樹脂(P−4)4g、下記樹脂(PP−2)0.
6g、下記色素(D−1)40mg、化学増感剤として前記
アニリド化合物(A)0.2gを、メチレンクロライド30m
lとエチレンクロライド30mlとの混合物に溶解し感光層
分散液とした。
【0291】
【化37】
【0292】この感光層分散液をワイヤーラウンドロッ
ドを用いて導電性透明支持体(厚さ100μmのポリエチ
レンテレフタレート支持体上に、酸化インジウムの蒸着
膜を有する。表面抵抗103Ω)上に塗布して約4μmの
感光層を有する感光体を得た。感光体表面の粘着力は2
g・fであった。この感光体を、実施例1で用いた感光
体の代わりに用いた他は実施例1と同様に操作して印刷
版を形成し印刷を行った。得られた印刷物上の画像は、
実施例1と同様に、地カブリのない鮮明なもので、耐刷
性も良好であった。
【0293】実施例17 下記構造のビスアゾ顔料5g、テトラヒドロフラン95g
及びポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績(株)
製)5gの混合物をボールミル中で充分に粉砕した。次
いで、この混合物を取り出し、攪拌下、テトラヒドロフ
ラン520gを加えた。この分散物をワイヤーラウンド
ロッドを用いて実施例16で用いたのと同じ導電性透明支
持体上に塗布して約0.7μmの電荷発生層を形成した。
【0294】
【化38】
【0295】次に、下記ヒドラゾン化合物20g、ポリカ
ーボネート樹脂(レキサン121、GE社製)20g及びテ
トラヒドロフラン160gの混合溶液をワイヤラウンドロ
ッドを用いて上記電荷発生層の上に塗布し、60℃で30秒
間乾燥し更に温度100℃で20秒間加熱して約18μmの電
荷輸送層を形成し、二層から成る感光層を有する電子写
真感光体を得た。
【0296】
【化39】
【0297】更に、この感光層の上に剥離性を付与する
ための表面層を形成するために、下記樹脂(PP−3)
13g、無水フタル酸0.2g、o−クロロフェノール0.002
g及びトルエン100gの混合溶液を、ワイヤーラウンド
ロッドを用いて膜厚1μmになる様に塗布し、指触乾燥
後、更に140℃で1時間加熱した。得られた感光体の表
面の粘着力は1g・fであった。
【0298】
【化40】
【0299】この感光材料を、暗所で表面電位−500V
に帯電させた後、He−Neレーザーを用いて633nmの
光で、版面での露光量が30erg/cm2になるように露光し
た。以降実施例1と同様に操作して印刷版を作成し、オ
フセット印刷を行った。得られた結果は実施例1と同様
に良好であった。
【0300】実施例18 光導電性酸化亜鉛100g、下記結着樹脂(P−5)25
g、下記樹脂(PP−4)3g、無水マレイン酸0.15
g、下記色素(D−2)0.01g及びトルエン180gの混
合物をホモジナイザー(日本精機(株)製)に入れ、回
転数9×103r.p.m.で10分間分散した。
【0301】
【化41】
【0302】次いでこの分散液を導電性処理及び耐溶剤
処理を施した0.2mm厚の紙版マスター用原紙の上に塗布
量20g/m2となる様にワイヤーバーで塗布し、110℃で1
5秒間加熱した。この様にして得られた感光体表面の粘
着力を測定したところ、2g・fであった。
【0303】この感光体を表面電位−600Vになるよう
に帯電後、半導体レーザー描画装置を用いて830nmの光
で露光した後、現像部のバイアス電圧を−100Vに設定
して液体現像剤(ELP−Tトナー、富士写真フイルム
(株)製)を用いて現像し、次にアイソパーGのリンス
浴を通してリンスを行い、ヒートロールで画像を定着し
た。
【0304】次に、この感光体上に、下記樹脂粒子分散
液(T1L−4)を用い、感光体を−180Vに帯電して樹
脂粒子を電着し、膜厚1.5μmの第1転写層(T1)を形
成した。 ・樹脂粒子分散液(T1L−4) 樹脂粒子(AW−6) 20 g(固形分量として) 荷電調節剤(CD−1) 0.06g 分枝テトラデシルアルコール 15 g (FOC-1400 日産化学(株)製) を全量1リットルになるようにアイソパーGで調整。
【0305】他方、上記第1転写層(T1)を形成させる
と同時に、表面粘着力が120g・fに調整された膜厚100
μmシリコーンゴムで被覆した中空ローラーの内部に赤
外線ランプヒーターを組み込んだ一次レセプターをその
表面温度70℃に調節してこの上に、下記樹脂粒子分散液
(T2L−4)を用い、現像電極に−100Vの電圧を印加
して電着法により樹脂粒子(A2L)を電着し、膜厚1.0
μmの第2転写層(T2)を形成した。 ・樹脂粒子分散液(T2L−4) 樹脂粒子(A2L−7) 20g(固形分量として) 荷電調節剤(CD−2) 0.06g 1-オクタデセン/N-ドデシルマレインイミド/N-ドデシル マレイン酸半アミド(50/25/25モル比)共重合体 荷電調整補助剤(AD−1) 1 g を全量1リットルになる様にアイソパーGで調整。
【0306】感光体の表面温度を50℃として、上記温度
70℃となった第2転写層(T2)を設けた一次レセプター
をニップ圧力3.5kgf/cm2にて圧接し、ドラム周速100mm
/秒で回転し、トナー画像を第1転写層(T1)とともに
一次レセプター上に転写した。続けて、表面温度70℃と
したまま一次レセプターと、100℃に設定された転写用
バックアップローラー及び20℃に設定された剥離用バッ
クアップローラーの間に、被転写材としてアルパール
(日本製箔(株)製)をドラム周速100mm/秒で通過さ
せ、アルパール上にトナー画像を転写層とともに完全転
写させた。このとき、アルパール上に転写した転写画像
の状態を目視評価した所、転写前の感光体上の複写画像
と殆ど変わりなく、画像の劣化は認められなかった。ま
た、転写後の感光体及び一次レセプターの表面上には、
転写層の残存は全く認められず、転写性は極めて良好で
あった。
【0307】比較として、上記感光体において樹脂(P
P−4)3gを用いない他は全く同様にして電子写真感
光体を作成したところ、表面の粘着力は400g・f以上
であった。上記と同様に転写層を形成し転写させたとこ
ろ、感光体表面と転写層との界面での剥離性を全く示さ
なかった。
【0308】次に、アルパール上に転写層を転写した原
版を下記内容の不感脂化処理液(E−5)に温度25℃に
て30秒間ゆるくブラッシングしながら浸漬し、転写層を
除去し、充分水洗して、印刷版とした。 ・不感脂化処理液(E−5) メルカプトエタンスルホン酸 10g ネオソープ(松本油脂(株)製) 5g N,N−ジメチルアセトアミド 10g を蒸留水で希釈し、全量を1リットルにした後、水酸化ナトリウムでpH12.0 に調整したもの。
【0309】この印刷版を浸し水としてPS版用浸し水
(SG−23、東京インキ(株)製)を蒸留水で130倍に
希釈した水溶液(pH 7.0)を用い、印刷機としてオリバ
ー94型((株)桜井製作所製)を用い、印刷紙として中
性紙を使用して、各種オフセット印刷用色インキで印刷
した。その結果、色インキの種類にかかわらず、いずれ
の場合も地汚れの発生しない鮮明な画像の印刷物が1万
枚以上得られた。
【0310】実施例19〜24 実施例2において、化合物(S−1)1.5g/リットル
の代わりに下記表−Dの各化合物(S)を用いた他は実
施例2と全く同様にして印刷版を作成し、印刷を行っ
た。得られた結果は実施例2と全く同等であった。即
ち、これらの化合物(S)を用いることで感光体表面の
剥離性が有効に発現した。
【0311】
【表6】
【0312】
【表7】
【0313】実施例25 図2に示される装置に、電子写真感光体としてアモルフ
ァスシリコン感光体(京セラ(株)製)を装着した。こ
の感光体表面の粘着力は230g・fであった。次いで、
電子写真プロセスにより、感光体上にトナー画像の形成
を行った。感光体11を+700Vにコロナ帯電をした
後、実施例1と同様のデジタル画像データの情報をもと
に半導体レーザーを用いて780nmの光で表面露光量が25e
rg/cm2になるように露光した。露光部の残留電位は+12
0Vであった。次に、実施例2で用いた液体現像剤(L
D−1)のトナー粒子及び着色粒子を用いて以下の様に
して液体現像剤(LD−2)を作製した。 ・液体現像剤(LD−2) トナー粒子の樹脂分散物 45g ニグロシンの着色分散物 25g ヘキサデセン/半マレイン酸オクダデシルアミド共重合体 0.21g 化合物(S−1) 0.8g をアイソパーGで1リットルに希釈した。
【0314】上記の方法で作製した液体現像剤(LD−
2)を用いて現像電極を有する現像装置の電極に+300
Vのバイアス電圧を印加し、露光部にトナーが電着する
ようにした現像を行い、次いでアイソパーH単独浴中で
リンスをして非画像部の汚れを除いた。以下の操作は実
施例2と同様に操作して得られた印刷版の性能は、実施
例2と同等のものであった。
【0315】比較例7 実施例25において、液体現像剤(LD−2)に化合物
(S−1)を含有させずに現像したところ、転写層を設
けた後のトナー画像の転写は全くなされなかった。
【0316】実施例26〜32 実施例1〜18で作成したトナー画像を転写した被転写
材(印刷原版)を用いて、不感脂化処理を下記の様に操
作してオフセット印刷版を作成した。即ち、下記表−E
の求核性化合物0.2モル、有機溶媒100g及びニューコー
ルB4SN(日本乳化剤(株)製)2gに蒸留水を加え
1リットルとした後、処理液のpHを12.5に調整した。
各被転写材をこの処理液中に温度30℃で20秒間浸漬し、
ゆるくこすりながら不感脂化処理を行った。得られた印
刷版を実施例1と同様の印刷条件で印刷したところ、い
ずれも実施例1の場合と同等の良好な性能を示した。
【0317】
【表8】
【0318】
【発明の効果】本発明によれば、転写層の転写性が向上
し、高精細、高画質の画像を有する印刷物を与える印刷
版を得ることができる。更に、転写条件や不感脂化条件
を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を説明するための概略図である。
【図2】一次レセプターとしてドラム方式を採用した、
本発明の方法を実施するために好適な装置例を示す図で
ある。
【図3】一次レセプターとして無端ベルト方式を採用し
た、本発明の方法を実施するために好適な装置例を示す
図である。
【図4】化合物(S)の適用部分を示す図である。
【符号の説明】 10 化合物(S)適用装置 11 感光体 13 転写層形成装置 14 液体現像ユニットセット 14T 液体現像ユニット 14L1 電着ユニット 14L2 電着ユニット 15 吸排気ユニット 15a 吸気部 15b 排気部 16 加熱手段 17 温度調節手段 18 コロナ帯電装置 19 露光装置 20 一次レセプター 21 転写層形成装置 30 被転写材 31 転写用バックアップローラー 32 剥離用バックアップローラー 110 化合物(S)適用部分 111 トランスファーロール 112 メータリングロール 113 化合物(S)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 剥離性表面を有する電子写真感光体上に
    電子写真プロセスによりトナー画像を形成した後、下記
    (i)〜(iii)のうちのいずれか1つの方法によりトナ
    ー画像を一次レセプター上へ転写し、一次レセプター上
    のトナー画像を転写層ごと印刷時に平版印刷可能な親水
    性表面となる被転写材に転写し、次いで転写された被転
    写材の転写層を化学反応処理により除去することを特徴
    とする電子写真式製版印刷版の作成方法。 (i)トナー画像を形成した電子写真感光体上の全面に
    第1転写層(T1)及び第2転写層(T2)を形成した後、
    一次レセプター上に転写層ごとトナー画像を転写する。 (ii)一次レセプター上に第2転写層(T2)及び第1転
    写層(T1)を形成し、その上に電子写真感光体上のトナ
    ー画像を転写する。 (iii)トナー画像を形成した電子写真感光体上の全面に
    第1転写層(T1)を及び一次レセプター上に第2転写層
    (T2)を各々形成した後、トナー画像を第1転写層(T
    1)ごと一次レセプター上の第2転写層(T2)の上に転写
    する。(ここで、上記第1転写層(T1)及び第2転写層
    (T2)は化学反応処理で除去可能な熱可塑性樹脂を主と
    して含有する粒子を電着塗布法により成膜して成り、且
    つ感光体側と接する第1転写層(T1)にガラス転移点2
    0〜100℃又は軟化点38〜120℃の樹脂(AH)
    及びガラス転移点45℃以下又は軟化点60℃以下のの
    樹脂(AL)であって樹脂(AH)のガラス転移点又は
    軟化点が樹脂(AL)のそれよりも2℃以上高い少なく
    とも二種の樹脂を同一粒子内に含有してなる熱可塑性樹
    脂粒子(AW)を主として含有する粒子を用い、一次レ
    セプター側と接する第2転写層(T2)にガラス転移点1
    0〜35℃又は軟化点30〜50℃の樹脂(A2)を主と
    して含有する樹脂粒子(A2L) を用いる。)
  2. 【請求項2】 熱可塑性樹脂粒子(AW)及び(A2L)
    が、それぞれ下記の重合体成分(a)及び重合体成分
    (b)のうちの少なくともいずれか一方を含有すること
    を特徴とする請求項1記載の電子写真式製版印刷版の作
    成方法。 重合体成分(a):−CO2H基、−CHO基、−SO3
    H基、−SO2H基、−P(=O)(OH)R1{R1は−
    OH基、炭化水素基又は−OR2(R2は炭化水素基を表
    わす)基を表わす}基、フェノール性OH基、酸環状無
    水物含有基、−CONHCOR3(R3は炭化水素基を表
    わす)基及び−CONHSO23基のうちの少なくとも
    1つの基を含有する重合体成分。 重合体成分(b):化学反応で−CO2H基、−CHO
    基、−SO3H基、−SO2H基、−P(=O)(OH)R
    1{R1は−OH基、炭化水素基又は−OR2(R2は炭化
    水素基を表わす)基を表わす}基及び−OH基のうちの
    少なくとも1つの基を生成する官能基を少なくとも1種
    含有する重合体成分。
  3. 【請求項3】 樹脂粒子(AW)及び(A2L) を電着塗
    布法で形成する際の樹脂粒子が、各々比誘電率3.5以
    下の電気絶縁性液体中に分散されて供給されることを特
    徴とする請求項1又は2記載の電子写真式製版印刷版の
    作成方法。
  4. 【請求項4】 電子写真感光体の表面が、少なくともト
    ナー画像形成時には、JIS Z0237-1980の「粘着テープ・
    粘着シート試験方法」による粘着力が、50gram・forc
    e(g・f)以下であり、且つ一次レセプターの表面の粘
    着力が感光体表面の粘着力より大きいことを特徴とする
    請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真式製版印刷版
    の作成方法。
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