【発明の詳細な説明】
脱脂質化しかつ精製したD25ポリサッカリド化合物の標品
およびこれを含有する注射可能組成物
本発明はD25から誘導された新規化合物に関するものである。また本発明は
この新規化合物の製法に関するものである。
また本発明は特に水溶液の形の前記化合物の標品(preparation)に関するもの
である。
また本発明は特に感染症、炎症および腫瘍病巣の像形成、診断および治療に使
用される前記化合物を含有する組成物に関するものである。これらの組成物は特
に静脈経由で投与される注射可能組成物である。
最後に本発明は、前記化合物と、標識試薬と、安定化佐薬とから成る共凍結乾
燥物を含むキットに関するものであり、このキットは水溶液を成し、この水溶液
が標識化要素との単なる混合によって本発明による組成物を成し、この組成物中
において脱脂質化精製されたD25誘導体が検出可能要素によって標識されるよ
うに成された診断用キットに関するものである。
D25と呼ばれる生成物はバクテリア膜プロテオグリカンから抽出されたポリ
サッカリド化合物である。このポリサッカリド化合物は最初に特願第84/13
844号および第86/06765号に記載された。
このD25ポリサッカリド化合物は、好ましくは、Collection Nationale del
'Institut Pasteur に#145−I−IPで登録された莢膜で被覆された野生
型の非病原性菌種クレブシエラ・ニウモニエ(Klebsiella pneumoniae)biotype A
から分離される。
この分子は最初、フランス特願第84/13844号および第86/0676
5号に記載のようにその免疫刺激性に関して研究された。
フランス特願第89/03034号において、化合物D25はマクロファージ
に対する親和性を有し、また炎症および腫瘍病巣を認識して結合しマクロファー
ジをその近傍において動員するベクトル試剤と記載されている。
フランス特願第89/03034号は、適当な放射性トレーサ、特に99mTcに
よって標識付けした後に吸入によるシンチグラフィー像形成するためのエアロゾ
ル組成物の中にD25を使用する方法を記載している。D25分子は脂質部分を
含み、この脂質部分は分子を自発的に肺障壁を横断させる本質的要素であると記
載されている。
これらの先行特許出願において、D25は一方において10単糖の単量体ユニ
ットの反復から成る線形ポリサッカリド分子鎖と、他方において2つの短いペプ
チド分子鎖が結合した単一のさらに複雑な結合配列を含むと記載されている。線
形ポリサッカリド分子鎖の反復単量体ユニットは、下記の割合のピランおよびフ
ランの形のガラクトースのみ含有すると記載されている:
3 β Gal p、 3 α Gal p, 2 βGal f、 および2
α Gal f。線形ポリサッカリド分子鎖の末端に単一の結合構造が固着さ
れる。この結合構造はグルコース、ガラクトース、グルコースアミン、ヘプトー
スおよびマンノデオキシオクツロソン酸残基を含む。2つの短いペプチド分子鎖
がこの構造に結合されている。
これらの特願に記載のように、実際にD25の製造工程は、単一結合構造の一
端位置に配置された2つのグルコースアミン上に、それぞれN−グルコシド連鎖
によって、D25の質量の約1.5%を代表する2つのβ−ヒドロキシミリスチ
ン酸がグラフト重合された生成物を生じる。D25の質量の約0.5%を代表す
るC16(パルミチン)脂肪酸のトレースがエステル化形態または遊離形態でこれ
らのβ−ヒドロキシミリスチン酸に組合わされている。
分子に対して両親媒性を与えて、リポソームの存在を必要とせずまた他の薬剤
形態の使用を必要とせず肺胞界面活性成分と融着する事により分子をエアロゾル
経路を通して肺障壁を横断させるのは、これらの脂肪酸の存在である。C16遊離
脂肪酸は脂肪親和性佐薬として作用する。また分子上に疎水性極が存在する事は
単球およびマクロファージの膜との相互作用において本質的役割を果たしD25
をレセプタにアクセスさせこれらの細胞に対して結合させる。
エアロゾル経路はミリメートルサイズの病理学的病巣を表示するが、このエア
ロゾル経路の欠点は、直接に放射性エアロゾル(フェイシャル・バルク)の服用
によって、または嚥下後の消化系中にあるいは肺粘膜−繊毛間隙中に放射性エア
ロゾルが不可避的に存在する事によって汚染された二、三の解剖学的区域の検査
が不可能になる事である。吸入技術と組合わされたこのようなエアロゾル経路の
欠点は「全身」像形成を不可能とする。
さらに放射性エアロゾルの服用を診断の目的で大規模に使用する事は、患者そ
のものの皮膚汚染に伴なう誤陽性反応のリスクを避けるために注意しなければな
らないので問題である。
このような理由から、注射可能な形態の開発がその後研究されていた。
しかしD25分子の一端の強い親油性の結果、この分子が水性媒質中において
受ける疎水性相互作用により、150KDより大きな見掛け分子量を有するミセ
ル(または「ポリマー」)が形成される。このような「ポリマー」形態は34K
D単量体形態を有するD25溶液中において平衡し、30重量%に達する。エア
ロゾル経路においては、これらのミセル凝集体が肺界面活性成分の中に解離し、
次にこの自由形態で肺障壁を横断する。系統的分布は、マクロファージを動員す
る炎症、感染または腫瘍病理病巣の十分な像形成を可能とする。他方、静脈経路
においては、これらのミセルが肝臓および脾臓の網膜−内皮細胞系によって非常
に急速に取り上げられて、その中に結合される。
従ってフランス特許第90/02957号は、ミセル形態の存在を低減させる
ようなD25の変更を提案する。この特許第90/02975号において提案さ
れた変更は、分子の親油性を低減させ従ってミセルの形成を低減させるように、
ターゲット細胞の特異認識に関与しないエステル化(C16)脂肪酸を選択的に除
去するにある。
またフランス特願FR第90/2075号に記載のD25誘導体は約2%の「
ポリマー」残基を含むので、注射用組成物はリンパ経路によってのみ注射する事
ができる。
正常な神経節(ganglion)および炎症または腫瘍増殖中に増大した神経節中のマ
クロファージ集団の存在の結果として、実際にこの細胞型のターゲット剤として
脱脂D25をリンパ経路で使用して検出感度を極大値にする事となった。脱脂D
25は皮下注射またはリンパ管内注射され、リンパ流によって搬送され、次に病
理的神経節の中に集中されて可視化される。リンパ系統中の残留ポリマーは問題
がない。神経節のろ過効果が「ポリマー」を第1神経節の中に保留して、モノマ
ー形態のみが他の神経節リレーまで進行して次に全身循環の中に入るからである
。
このようなリンパ経路を通してのD25の使用は、従来使用されていたコロイ
ド剤またはナノ粒状剤などの巨大分子化合物が第1病理神経節を閉塞してリンパ
系統全体へのアクセスを不可能とするような欠点を除去する。
さらに2つの特許第89/03094号および第90/02957号に記載の
ように、有効成分の99mTcなどの放射性トレーサによる標識が塩化物(SnCl2)ま
たはフッ化物(SnF2)の形の第1スズイオン(Sn2+)によって使用時点で得られ
る事になった。D25の標識条件とこの条件の安定性の欠損がD25の静脈注射
を制限する他の理由である。D25はSnF2より強力な99mTcアクセプターである
が、余分量のSnF2と組合わされたスズコロイドの形成が標識されたスズ
コロイドの存在の原因となる。しかしこれはエアロゾルの場合には問題でない。
肺がコロイドのフィルタとして作用し、コロイドは系統的循環の中に到達しない
からである。他方、前述のように、静脈注射の場合、コロイドは直接に血液流の
中に入り、直ちに肝臓および脾臓によって捕捉され、その中に非常に長時間留ま
る。
さらに、標識の安定性の欠損の結果、テクニチウムと血清タンパク質との交換
、または甲状腺による遊離テクニチウムの集中が生じる。これは、生成物の均一
な全身拡散が得られると同時に肝臓および甲状腺のような器官中の受動的固定を
避ける必要のある「全身像形成の目的」と完全に相容れない。
本発明の目的は、マクロファージの標的化によって特に感染症、炎症および腫
瘍の病巣を像形成し、診断し、治療するために静脈注射する事のできる組成物を
提供するにある。さらに詳しくは本発明の目的は、化合物の生分布を改良すると
共にミセル形態の血液/脾臓吸収を防止し、また特に99mTcによるその安定な生
体中標識を可能とする新規なD25化合物製剤を得るにある。
そのため、本発明の目的は、「単量体」形態のみを保持するように特許FR第
90/02957号に記載の部分的脱脂質化D25の「ポリマー」形態を分離す
るのみならず、「単量体」形態がミセルの自発的形成を避けるように安定される
と共にこの化合物D25の標的特性を保持するように成された製剤を得るためD
25分子とその環境を変成するにある。
従って本発明の主題は、Klebsiella pneumoniaebiotype Aから誘導された膜プ
ロテオグリカンからの抽出によって得ることができる約34KDの分子量を有す
る脱脂質化精製D25ポリサッカリド化合物の標品において、前記標品が前記化
合物のミセル形態を含有しないように前記ポリサッカリド化合物を脱脂質化し精
製されている事を特徴とする標品である。
本発明の他の実施態様によれば、本発明の主題は、Klebsiella pneumoniae
biotype Aから誘導された膜プロテオグリカンからの抽出によって得られる約3
4KDの分子量を有する脱脂質化精製D25ポリサッカリド化合物の標品におい
て、前記標品が遊離形態または化合物と結合した形態のパルミチン脂肪酸および
ペプチドを含有しないように前記化合物が脱脂質化され精製される事を特徴とす
る製剤に関するものである。
本明細書において用語「標品」とは、前記化合物の水溶液、特に無発熱性の注
射液またはこの水溶液の凍結乾燥物を意味するものとする。
また本発明は、脱脂質化または精製によって化学的に変成され、特にマクロフ
ァージに対する特異的結合に関する生成物の特性を破壊しないように、D25の
疎水性を完全に除去する事なくこの疎水性を低減させる事によりD25の水溶液
中の「重合」を防止する事のできる新規D25誘導体を提供するにある。
本発明の他の主題は、Klebsiella pneumoniae biotype A から誘導された莢
膜プロテオグリカンからの抽出によって得られる約34KDの分子量を有する脱
脂質化精製D25ポリサッカリド化合物において、下記の式(I)によって表わ
されるもの、である。
この式において、[PS]はポリサッカリド(多糖類)分子鎖を示す。
ポリサッカリド分子鎖の配列の分析の結果、[PS]配列は下記のように約3
0回繰り返される(1→3)連鎖によって連結された2つの規則的に交代するジ
サッカリド配列から成り、
−[→3)αDGalp(1→3)βDGalf(1−]→,
−[→3)αDGalp(1→3)βDGalp(1−]→
この配列の末端に3グルコース残基、1ガラクトース残基、2ヘプトース残基お
よび1マンノデオキシオクツロソン酸残基とから成る単一の結合構造を有する線
形ポリサッカリド分子鎖として特定する事ができた。この単一結合構造が式(I)
に示される2つの末端グルコースアミンに結合され、その上にそれぞれβ−ヒド
ロキシミリスチン酸がN−グルコシド結合されている。
この単一結合構造の仮説式は下記である。
これらのアミド結合によって末端ジグルコースアミンに結合された2つのβ−
ヒドロキシミリスチン脂肪酸がマクロファージ標的特性を与えるために必要かつ
十分であり、またこの点に関して2つの組合わされたペプチドとパルミチン脂肪
酸の不存在は必要でないと思われる。
さらにエステル化C16脂肪酸およびペプチドの定量的除去は、先行技術の脱
脂D25形態中に残存する補体の活性化のための非常に低い容量を完全に除去す
る事を可能とする。これらの望ましくない残存免疫刺激性は、補体系統の深刻な
欠乏を示す患者にとって不都合である。
最後に、化合物D25に組合わされたペプチドの除去は末端ピロリン酸基をデ
マスキングさせ、この基は、先行技術のD25と比較して本発明による化合物に
ついて見られるテクニチウム標識の安定性に対して責任を有する。このピロリン
酸基の選択的除去により、この基が細胞レセプタの特異認識に関与しないが、化
合物の標識付けに際して99mTcの高親和性結合に対して責任を有する事が示され
た。
脱脂質後においても、本発明の化合物は2つのβ−ヒドロキシミリスチン脂肪
酸を保持している。従って、本発明の化合物は両親媒性を保持し、これが潜在的
に溶液中のミセル形成を誘発する。しかし、これらのミセルの形成はイオン環境
に依存し、また低濃度の塩の添加により水溶液中のミセルの形成に決定的に対抗
できると思われる。
従って本発明による化合物の製剤は生理学的に受容される塩を、水溶液の形で
低いイオン強度を示すような低モル濃度で含有する。
NaCl以外の塩を使用する事ができるが、NaClが完全に適当であると思
われる。NaClは、テクニチウム標識操作に際して、等滲透性を生じまた発生
器からのテクニチウムを溶離するために服用前に使用される塩と同一の塩だから
である。
NaClのモル濃度はかなり広い。0.15M(等滲透性)においてミセル形
成がなお見られないからである。
特定の実施態様において、本発明による水溶液は1mM乃至0.15Mの濃度
のNaCl塩を含有する。
この脱脂D25誘導体の製法は先行技術に記載されているように、下記の段階
を特徴とする。
(a)グラム陰性バクテリア菌株のバクテリア溶解物(ライセート)から粗製
膜プロテオグリカンを抽出する。
(b)段階(a)からの粗製膜プロテオグリカンをアルカリ加水分解によって
可溶化し、水溶液中の可溶性プロテオグリカンを回収する。
(c)ポリサッカリド化合物を分離し、必要なら、分離された分画中に存在す
るタンパク質を除去する。
(d)適当有機溶剤を使用して、前記ポリサッカリド化合物と組合わされた遊
離脂肪酸を抽出する。
使用できるグラム陰性菌種のうち、Klebsiella pneumoniae,Serratia marces
cens およびEscherichia coliが、特に前述のような
Collection Nationale de cultures de Microorganismes(CNCM)に#145−I
−IPで登録されているKlebsiella pnerumoniaeが、挙げられる。
先行技術に記載の方法の特定の実施態様においては、下記の段階が実行される
。
(a)グラム陰性バクテリア菌株から粗製膜プロテオグリカンを抽出する。こ
の粗製プロテオグリカンを、バクテリア溶解物の遠心分離後に得られた上澄み液
の中に捕集する。
(b)段階(a)からの粗製膜プロテオグリカンを特にアルカリヒドロキシに
よるアルカリ加水分解によって可溶化し、好ましくは0.3乃至1M、好ましく
は0.5乃至0.75Mのモル濃度の水酸化ナトリウムを使用し、90℃以下、
好ましくは50乃至60℃、例えば56℃の温度で、好ましくは攪拌しながら処
理を少なくとも1時間続ける。
(c)冷却後に、懸濁液を酸、例えば塩化水素酸によって中和し、必要なら溶
液中に存在するタンパク質の酵素加水分解を特にプロテイナーゼによって実施す
る。
(d)次にD25ポリサッカリド化合物をアルコール析出によって精製して、
例えば遠心分離により捕集する。
(e)適当な有機溶剤、例えばクロロフォルムまたはクロロフォルムとメタノ
ールとの混合物を使用して遊離脂肪酸を抽出し、例えばD25ポリサッカリド化
合物の析出物を有機溶剤の中に攪拌しながら分散させ、次に溶剤を除去し、最後
に析出物を同一溶剤によって洗浄する。
(f)析出物を水中に取り上げ、本発明による脱脂質化されたD25の溶液を
遠心分離によって澄明化し、次に上澄み液を捕集し、最後に、
(g)さらにアルカリ性加水分解を実施し、次に冷却後に酸、例えば塩化水素
酸によって懸濁液を中和し、デオキシコール酸ナトリウムを溶液に対して0.5
%を越えない割合で添加し、次にポリサッカリド化合物を析出し、析出物を水中
に取り上げ、得られた脱脂D25化合物を分画化または超ろ過によって分離する
。
本発明による化合物は、特願FR第90/02957号に記載の前記方法によ
って得られた脱脂質化D25ポリサッカリド化合物を下記の特定条件で精製する
事によって得られた。最後のアルカリ加水分解後に得られた溶液のミセル分画を
防止または低減させるための前記段階(g)のデオキシコール酸塩処理の代わり
に、第2アルカリ加水分解後に得られた溶液のHPLCクロマトグラフィー段階
を特定の穏和な塩条件でまた適当なクロマトグラフィーサポートを使用して実施
した。このクロマトグラフィー操作は、一方では、ミセルまたは凝集体の形成に
対応する100KD以上の見掛け比重を有する分画を排除する事ができるが、他
方では約34KDの理論比重で本発明によるポリサッカリド化合物を溶離できる
ように、クロマトグラフィーサポートとの疎水性相互作用を防止する事ができる
。
ポリマーを排除するための他の理論的アプローチ、例えば超遠心分離、二価カ
チオン塩による塩析、または超ろ過法が開発されたが、特異条件で使用されるク
ロマトグラフィーのみが、C16脂肪酸またはペプチドがもはや組合わされてい
ない本発明による脱脂精製誘導体を含むD25溶液を安定な「単量体」形態で得
る事を可能とした。
またこの方法は他の利点を有する。まず、HPLCクロマトグラフィーは工業
規模への移行が容易である。また人体に静脈注射される物質の製造における問題
点の1つは最終生成物中の内毒素による汚染物を分離するにある。ところでD2
5はLPS富化グラム陰性菌から来る。これそのものが解毒されたLPSアナロ
グであって、試剤(酵素)および製造工程環境(建物、施設など)がこの型の汚
染物を導入する可能性がある。この点に関して、本発明による方法において特に
プロセスの最後に実施されるクロマトグラフィーは「ポリマー」形態を除去する
と共にこのような汚染物を除去する事ができる。
本発明による低イオン強度化合物の他の利点はクロマトグラフィーサポートと
の相互作用を防止するにある。塩濃度の増大はクロマトグラフィーサポートとの
相互作用を生じ、このような相互作用が生成物の溶離を妨害する。
20mMのNaClを含有する本発明による製剤は下記の二、三の理由から特
に望ましい。
−まず、このような塩濃度がクロマトグラフィー段階において最大の溶解力を
得させ、従って工業用途において、最大サイズのサンプルの処理を可能とする。
−次に、この濃度が、本発明による化合物の工業生産と対応の放射性薬剤の次
の製造段階に対応して、最終製品中の正確な最終NaCl濃度を直接に得る事を
可能とする。
本発明の他の新規アスペクトによれば、容易に標識づけされる注射用製品が、
本発明による化合物と、標識試薬と、安定化佐薬との単一の共凍結乾燥物の形と
する事ができる。この共凍結乾燥物が水溶液を成し、使用直前にこの水溶液を実
際の標識要素と混合して、検出可能要素によって標識された前記化合物の水溶液
を成す事ができる。凍結乾燥化された形の製品は溶液中よりも安定である。共凍
結乾燥の開発は本発明の重要な新規なアスペクトである。
SnF2は、ペルテクニタートイオンを低減させるその能力によって99mTc分子
を標識付けるための公知の標識試剤である。中性媒質中のその安定性の故に、こ
れは本発明による化合物と相容性である。しかし、SnCl2はそうでなく、こ
れは酸性媒質の中においてのみ安定であるが、本発明の化合物は酸性媒質中にお
いては不安定である。従ってSnF2は99mTc化合物の標識のために選定されるが
、コロイドの形成を防止または制限するための制限的条件のもとに使用される。
安定剤としてのアスコルビン酸の存在は、同時的に交換可能のテクニチウム量
を低減させる事により、酸性状態+5の99mTcと本発明による化合物の弱アクセ
プター部位との間の錯体の安定性を増大する。D25の弱アクセプター部位はポ
リサッカリド上に露出されたヒドロキシ基などの感応基である。
本発明の他の特徴によれば、本発明によるキットは、そのまま標識される製品
を製造するための単一ボトルキットである。これは先行技術の2ボトルキットに
対して多くの利点を有する。
−簡単な標識手順の故に使い勝手がよい、
−エラーリスクが少ないので安全性の増大、
−静脈経路による像形成のための標識品質の改良。
実際に、静脈注射の目的は、遊離99mTcによる甲状腺または胃などのターゲッ
ト器官の不必要な照射と、特に肝臓による標識スズコロイドの吸収による不都合
な結合とを避けて、「全身」像形成を達成するにある。
しかし、余分量のスズは自発的にコロイドを形成し、このコロイドが肝臓と結
合する。従って、正確に標識に必要な量のSnF2を使用すべきである。不幸に
してこれは放射性薬剤の安定性と両立せず、また絶対量のスズが使用されるのみ
ならず標識に際して瞬間的に濃縮するという事実と両立しない。従って、標識品
質が非常に劣化し、遊離テクニチウムが甲状腺の中に結合され、アルブミンと組
合わされたその分画によってバックグランドノイズを導入しシンチグラフィーの
特異性とコントラストを低下させるにいたる下限が存在する。これらのパラメー
タを満足させるために2つのボトルを使用すれば、2溶液を混合する際に正確に
必要な量以上のスズ濃度を使用する事となり、また標識に際しての操作手順数が
増加し、空気と接触するSn2+の酸化のリスクがあり、これがコロイドの形成を
助長する。
従って単一ボトルでの使用はこれらのすべてのリスクを最小限になし、また使
用されるSnF2量を正確に最小限に低減させる事ができる。従って標識操作全
部が溶液の転送なしで、同一ボトルの中で、空気の不存在において実施される。
さらに実験の示すように、共凍結乾燥物としての最終製品の安定性が著しく増
大され、永い使用期限を有する事ができる。
生体標識の安定性の増大はピロリン酸基のデマスキングと関連がある。本発明
による化合物のこの生体標識安定性はさらにアスコルビン酸を使用する配合によ
って改善される。アスコルビン酸は酸性状態+5に成された99mTcと本発明によ
る化合物の弱アクセプター部位(ピロリン酸基、およびその他のアクセプター基
)との間の錯体の安定性を増大する。
従って本発明の主題は、本発明による部分的に脱脂質化されたD25化合物を
含む事を特徴とする像形成、診断または治療用組成物にある。
本発明の好ましい実施態様において、この組成物はマクロファージの標的化に
よって炎症および腫瘍、感染性病巣の像形成、診断または治療のために使用され
る。
本発明による組成物は静脈注射する事ができ、また特に皮下または胸膜経由で
リンパ経路により、またはエアロゾル経路で服用する事ができる。
本発明による組成物が生体内または生体外診断および像形成に使用される場合
、本発明によるポリサッカリド化合物は、放射性、常磁性または蛍光要素などの
検出要素をもって標識される。
また前記ポリサッカリド化合物は間接的に検出可能とする事ができる。すなわ
ち、この化合物は、前記のようにそれ自体検出可能の要素によって標識された物
質を介して検出され、この物質がポリサッカリド化合物を特異的に認識しまた結
合する事ができる。本発明による前記の生成ポリサッカリド化合物を特異的に認
識し結合する物質については前記化合物に対して生産された抗体とする事ができ
る
従って本発明による生体内または生体外診断または像形成キットは本発明によ
る脱脂質化精製D25ポリサッカリド化合物とこの化合物の標識手段とを含み、
あるいは本発明による脱脂精製D25ポリサッカリド化合物と、この化合物を認
識する物質と、この物質の標識手段とを含む。
本発明による脱脂質化精製D25誘導体の1つの用途は、この試剤を放射性同
位元素に結合した場合にシンチグラフィー像形成またはパーオペラチブ検出であ
る。実際に放射性核種は手動案内プローブによって可視化されまたはパーオペラ
チブ計数によって検出される。後者の場合は計数による診断であって像形成では
ない。本発明による適当な放射性元素として、シンチグラフィーによって検出さ
れる放射性核種、例えばテクニチウム99mTc、または非制限的に123および111イ
ンジュウムを挙げる事ができる。本発明による脱脂精製D25誘導体は、ガドリ
ニウムなどの常磁性試剤と結合して、磁気共鳴像形成(MRI)のコントラストプ
ロダクトを成す事ができる。
さらに詳しくは、本発明による脱脂質化精製D25を含む注射組成物は、マク
ロファージの標的化によりリンパ経路の感染性、炎症および腫瘍病巣の像形成、
診断および治療に特に適している。
本発明による化合物のリンパシンチグラフィーは、縦隔神経節(mediastinal g
anglion)の像形成に関するものである。
マクロファージの標的化による本発明の化合物の診断用途は特に下記の炎症性
疾患に関するものである。すなわち、原始的肺腺維症、塵肺症、結合中の肺腺維
症、ザルコイドージス、薬剤関連肺疾患、アレルギー性肺疾患、肺シストーシス
、喘息、炎症性リウマチ性関節炎、深部感染性病巣、全身疾患、移植および挿入
(バイオ物質)。
また本発明の化合物の診断応用は腫瘍病理、例えばリクルート・マクロファー
ジの標的化による転移の早期発見、および細胞上に表現された本発明の化合物の
特異レセプタ、例えばガラクトースレセプタMAC−2の標的化によるメラノー
マ転移(metastases)の早期特異発見である。この特異レセプタの表現は重態因子
に関連する。
実際にメラノーマ細胞上に表現された新規な特異レセプタが確認され、これら
のレセプタは結合(ポリガラクトース分子鎖)中の分子の他の部位を含み、本発
明の化合物と細胞膜との相互作用に必要な疎水性極そのものが残存している。こ
のような癌腫学における特異表示にとって重要なこのような用途はそれまで開示
されていなかった。
特異的にメラノーマ転移を標的とする競合生成物は存在しないので、本発明に
よる化合物はメラノーマの標的化に特に有効である。他の像形成技術(NMR、
X線スキャノグラフィー)は解剖学的ではあるが非特異性の情報を与え、その現
在の感度はこの癌の急激な予後を変更できるほどに早期に発見するには不十分で
ある。
従って本発明の主題は、特にメラノーマおよび同一レセプタを表現する他の腫
瘍、特に結腸癌の像形成診断のための化合物である。
最後に、本発明の化合物は、マクロファージを標的化する特性を有するので、
明かに治療目的として、標的放射線治療のためのベクトル反応剤、細胞傷害物質
のベクトル反応剤、または免疫試剤、および/または免疫変調試剤または抗炎症
試剤のベクトル反応剤として使用する事ができる。
最後に本発明による脱脂質化精製D25は、その抗内毒素ショック特性の故に
、薬剤として直接に使用する事もできる。
本発明による化合物の標的化特性と関連して、他の治療用途も可能である。二
、三の用途において本発明の化合物は放射性元素で標識付けられる。これは例え
ば、標識化合物と結合する腫瘍病理病巣の適当エミッターによる局所的放射線治
療の場合である。従来は、静脈経路(この型の治療において唯一の可能な経路)
によるD25の過剰な肝臓結合がこの用途を可能としなかった。
また本発明の主題は、本発明による脱脂質化精製D25化合物の誘導体、およ
び前記と同様の用途におけるその利用である。これらの誘導体は酸化誘導体であ
って、本発明によるD25の酸化誘導体は、線形ポリサッカリド化合物のガラク
トフラノース(Gal f)残基がラビノースに転化された化合物、およびアミ
ド、エステルまたはその他の型の誘導体、並びにその塩と第4アンモニウム誘導
体を含む。アミド、エステルまたはその他の型の誘導体、並びにその塩と第4ア
ンモニウム誘導体はD25の半合成誘導体であって、特願第86/06765号
および第87/056690号に記載されている。また線形ポリサッカリド化合
物のガラクトフラノース(Gal f)残基がラビノースに転化された化合物が
特願第87/05690号に記載されている。
本発明のその他の利点および特徴は下記の記述例からさらに明かとなろう。下
記において、本発明の化合物の薬理学的特性を完全に除去しまた放射性同位元素
、特にTcに対する親和性を増大して静脈注射と両立するように本発明により補
足的精製と化学的変成とを受けた部分的脱脂質化D25化合物を「J001」と
呼ぶ。付図において、
第1図は人体の白血球に対するJ001 FITCの結合結果を示す図、
第2図はBALマクロファージおよび相異なる23人の被検者(平均値)から
の血液単球に対するビオチン化J001の種々用量における結合結果を示す図、
第3図はBALマクロファージおよび健康なボランティアー(平均値)の白血
球に対する結合によるビオチン化J001の細胞分布を示す図、また
第4図乃至第6図は相異なるメラノーマ細胞系に対するビオチン化J001の
結合を示す図である。例 1:有効成分J001の製法
1)清澄化バクテリア溶解物の製造
発酵槽の中で液体媒質中で標準条件により培養する事によってKlebsiella pne
umoniaeの生物量を得る。唯一の特異条件は、生物学的構造を保持するため、指
数段階の末期に急激に4℃まで冷却する事によって成長を阻止するにある。
低温で連続遠心分離により生物量を培養媒質から分離し、次に遠心分離によっ
て洗浄する。細胞コンセントレートをフリーザ中に貯蔵して処理を待つ。
反応器中でコンセントレートを解氷し、MgCl2(10mM)とNaCl(
15mM)とを含む4℃のpH7.0のtris−HCl緩衝液(10mM)の
中に懸濁させて、懸濁液リットルあたり乾燥細胞50gに等しい最終濃度を得る
。工業バッチの製造は、操作あたり乾燥細胞1乃至3kg当量を使用する。次に
懸濁液リットルあたり、5mgのDNaseを加える。
次に微生物細胞を、APV-Manton Gaulin型の工業用磨砕器中を連続通過させる
事によって破壊する。このようにして得られたバクテリア溶解物に対して4℃で
Sharples分離器上で15,000×gで第1連続清澄化処理を実施し、未破壊細胞と破
壊残留物とを除去する。遠心分離ペレットを除去し、上澄み液を捕集する。これ
が清澄化溶解物を成す。
2)膜分画の分離
酢酸によってpH4.2±0.2まで酸性化された清澄バクテリア溶解物を4
℃で30分間放置する。Sharples分離器上で15,000×gで連続遠心分離を実施し
て不純物の沈澱物を除去する。膜分画を含む乳白色の上澄み液をNaOHによっ
て中和し、10,000ダルトンのカットオフを有する膜上で超ろ過により蒸留水に対
する等体積まで透析した。抵抗が1000Ωcm-1に達した時、出発乾燥細胞当
量kgあたり6リットルまで体積を濃縮した。
ビューレット反応テスト後に、蒸留水によって希釈する事によりタンパク質タ
イターを10mg/mlに調整する。このようにして得られたKlepsiella pneum
oniae膜懸濁液を次に有効成分J001の抽出と精製のために使用する。
3)注射モノマー形態を得るための有効成分J001の製法
a)第1アルカリ加水分解
この段階は細胞膜を可溶化して粗製D25を分離し、大部分のエステル化脂肪
酸を加水分解するにある。
前記のようにして得られた膜懸濁液に対して濃縮水酸化ナトリウムをゆっくり
攪拌しながら、0.5Mのモルに達するまで加える。次に溶液を56℃にもたら
し、攪拌しながらこの温度に1時間保持する。常温まで急速冷却した後に、溶液
を塩化水素酸によって中和する。
b)酵素加水分解
この段階はタンパク質不純物を除去し、第1アルカリ加水分解後に残留するペ
プチドグリカン残留物を消化するにある。
中和された溶液に対して10mMのtris緩衝液とEDTA qs 1mM
とを添加する。pHを7.5に調整する。次に400mg/lのプロテイナーゼ
Kと100mg/lのリゾチームとの存在において酵素消化を2時間、37℃で
実施する。
c)アルコール析出による粗製D25の分離
−20℃に予冷された2体積のエタノールによる析出によって粗製J001を
分離する。析出物を+4℃で30分間放置した後に、Sharples装置上で遠心分離
により捕集する。
d)脱脂質
この段階は、さきに第1アルカリ加水分解によって脱エステル化された脂肪酸
を粗製D25から抽出するにある。
直ちに、アルコールペレットを常温で、ホモジナイザー(Turrax型)を
使用して、出発乾燥細胞1kgあたり1リットルの割合のクロロフォルム:メタ
ノール(3:1)混合物中に分散させる。(前記のすべての体積は生物量の乾燥
細胞1kgあたりで示される)。
析出物を#3焼結ロート上に捕集し、そこで同様のクロロフォルム:メタノー
ル(3:1)混合物500mlを潅注し、次に窒素流で乾燥する。乾燥残留物を
1500mlの蒸留水の中に分散させ、一夜4℃で攪拌し続ける。
脱脂されたD25の吸収溶液を60分間、30,000×gの遠心分離によって清澄
化し、10,000ダルトンのカットオフを有する膜上で5000Ωcm-1まで透析する。
その体積を蒸留水によって1500mlに調整する。
e)第2アルカリ加水分解
これは、この段階においていくつかの目的を有する。(1)脱脂質化されたD2
5の生成液中に残存するC16脂肪酸を定量的に脱エステル化する。(2)会合
しているペプチドを除去する。(3)脱脂質後に形成されたミセル形態を除去す
る。(4)処理中に、特に酵素消化中に導入された内毒素汚染物を破壊する。お
よび(5)残留ポリマーのレベルを最大限低下させる。
濃縮水酸化ナトリウムを前記の透析物に対して0.5Mの最終モル度を得るよ
うに添加する。この溶液を56℃に成し、この温度に1時間、攪拌しながら保持
する。常温まで急速冷却後に、溶液を塩化水素酸によって中和する。
f)分子ふるいクロマトグラフィー
このクロマトグラフィーは、ミセルの形成を防止するように分子相互作用を低
減させる条件のもとに、適当多孔度のクロマトグラフィーサポート上で実施され
、この精製段階はJ001の製造に際して形成された残留ポリマー形態全部を排
除ピークにおいて除去する事ができる。
第2アルカリ加水分解後に中和された溶液を、10,000ダルトンのカットオフを
有する膜上で透析する事により20mMのNaClと平衡させる。イオン平衡に
達した時、20−30mg/mlの最終J001濃度を有するまで体積が濃縮さ
れる。この溶液がクロマトグラフィーカラムに加えられるサンプルを成す。
クロマトグラフィー条件は下記である。すなわち、60cmの高さまでSep
hacryl S300で充填され、無菌の非発熱条件で20mMのNaClと
平衡させた直径20cmの工業用パイレックスカラム。加えられたサンプルはゲ
ル体積の3乃至5%に対応する。溶離は、20mM NaClの中で、206n
mのUVによる連続検出と屈折率とによって実施された。自動パイロットシステ
ムにより、脱脂質化D25の単量体形態を排除ポリマーピークの溶離直後に捕集
した。このクロマトグラフィー段階の収率はJ001の単量体形態で90%の区
域にある。
この段階において使用されたサポート(Sephacryl S300)はそ
の分離特性のみの故に選択されたのではない。このサポートは、内毒素の破壊と
BSEリスクとに関して有効とされる高濃度アルカリ処理によって脱汚染される
という利点をも持つ。この点は、良好な製造現場環境の観点から重要である。
g)有効成分J001の無菌化と貯蔵
クロマトグラフィー中に捕集された分画は、事後のミセル形成を防止するため
に20mMのNaClの中に貯蔵される。同様の理由から、この分画は分子凝集
を促進する可能性のある中間親液化段階を受けない。
0.22μm膜を通してのろ過による無菌処理と品質検査のためのサンプル除
去後に、溶液をフリーザの中に貯蔵する。
このようにして冷凍された無菌の非発熱性溶液は、下記において「J001C
」と呼ばれる放射性同位元素でそのまま標識される水溶液を形成する事のできる
すべての成分を含有する共凍結乾燥物の製造に使用される有効成分J001の溶
液
である。例2:J001Cの製造
1)J001Cの製剤についての戦略(注射可能な経路)
1.1)J001Cの基本的な組成物
−J001 1.0mg(有効成分)
−SnF2 0.080mg(標識試薬)
−NaCl 1.0mg(J001Yモノマー安定剤)
−アスコルビン酸 0.50mg(99mTcでの標識安定剤)
配合成分の変量限度:
−J001 0.100〜2.0mg
−SnF2 0.040〜0.1mg
−NaCl 0.50〜2.0mg
−アスコルビン酸 0.20〜0.80mg
0.040mg未満の量のSnF2では放射性薬品の安定性は保証されないの
で、標識の為には0.040mgが限界閾である。
アスコルビン酸の量が0.80mgより多いと、99mTcとアスコルビン酸と
の結合が観察される。
1.1.1)SnF2標識試薬
市販のジェネレータから得られるテクネチウムは、過テクネチウム酸ナトリウ
ムに相当する安定な化学的な状態にある。テクネチウムは、J001受容体部位
と複合体を形成させる為に、使用時に還元しなければならない。LIN,M.,S.(1975
)‐99mTcによる蛋白質の標識‐Radiopharm.Int.Symp.1974(Subramanian,R
hodes,Cooper及びSaad編、pp.36-48に従って、二価の錫を用いて過テクネチウ
ム酸塩アニオンを還元する方法を採用した。この段階では、二つの重要な点を頭
に入れておかなければならない。
それは、J001の安定条件と相容れる錫塩の選択、及び放射性元素で標識さ
れた錫のコロイドの形成を最小限とする限界条件である。SnCl2はTcO- 4
の還元に最も一般的に用いられる化合物であるが、残念なことに、水酸化物の形
成を防ぐ為にpH<3.5の塩酸媒質中で安定化しなければならない。これは、
J001の安定性とは全く相容れないことである。弱酸性の媒質中では、マクロ
ファージ受容体との特異的な結合に関係するJ001の親脂質油性の極が加水分
解する。SnF2は中性のpHで安定であるという利点を有しているので、これ
を選んだ。
限界条件は、標識の質の物理的、及び生物学的測定により設定される。以下の
方法を、対照方法、及び研究方法として用いた:紙を用いた薄層放射線クロマト
グラフィーと放射線HPLCによる放射化学的純度の測定。この純度は、標識後
少なくとも6時間は97%より高くなければならない。コロイド含有率をコント
ロールする為の拡散排除HPLCクロマトグラフィー。粒径分布を分析する為の
レーザー粒度測定、及び多角レーザー拡散。肝脾臓結合のパーセンテージ(限界
閾)、及び身体に於ける生成物の分布を測定する為の、ラット、及びウサギに於
ける生分布のin vivoの研究。
系統的な研究から演繹される変量の限界から、J001の量とはかかわりなく
、TcO- 4の定量的還元を確実に行うことのできるSnF2の最低限の量は、標
識を行う際、1ボトルにつきSnF2約20μgであることが分かる。
J001が1mg存在している場合、6時間の間、放射化学的濃度を97%よ
り高く安定に保つ為には、SnF2を少なくとも40μg添加すべきであり、ま
たJ001Cの安定性を2〜3年間保つ為には、SnF2を60μg添加すべき
である。
従って、SnF2の変量限界は、最低40μg〜最大100μgである。J0
01Y1mgに対するSnF2の最適量は80μgである。
1.1.2)NaCl
分子間反応、及びミセルの形成を減少させて、分子状態にあるJ001を確実
に安定化させる為に、NaClを製剤中に導入した。グリシンや燐酸塩バッファ
ーのような他の成分についても研究を行った。グリシンはJ001のミセルの形
成を低減させるのに効果的ではあるが、脳、及び副腎中での非特異的な結合によ
る99mTcでのアスコルビン酸の標識付けをもたらす。燐酸塩バッファーは、in
vivoでは使用できない。骨幹端、及び骨幹レベルの、骨中での99mTcとJ00
1との非特異的な結合をもたらすからである。
ミセル化を防ぐ為に、濃度20mMのNaClをJ001の精製の最終段階に
既に導入している(すなわち、NaCl1.16mg/ml)。
標識付けは、NaClを0.9%含む生理食塩水中で行う。J001C1ボト
ルに対して最適なNaClの量は1mgである。
1.1.3)アスコルビン酸
J001Yのin vitroでの標識を安定化させ、またin vivoでJ001の弱受
容体部位と血液蛋白質との間の99mTcの交換を制限する為に、様々な還元剤、
特にゲンチシン酸、及びアスコルビン酸について研究した。標識した生成物を注
射した後、30分後にラットとウサギの血清をHPLC放射線クロマトグラフィ
ーにかけたところ、アスコルビン酸だけが99mTcの交換を約50%減少させる
ことができることが分かった。しかしながら、過剰アスコルビン酸の99mTcに
よる標識付け、及び脳や副腎中での非特異的な結合を防ぐ為に、アスコルビン酸
の投与量は、0.80mg以下にとどめなければならない。J001C1ボトル
に対するアスコルビン酸の最低量は約0.20mgであり、それ以下では、「in
vivo」での標識の安定性が低下する。
この量は、ヒトでの実験では通常740MBq(20mCi)であるが、実験
の目的により調節することができる。標準的な操作法によれば、この調節は日常
的な操作であり、全ての核医学センターで実験を行う際になされていることであ
る(99mTcの半減期=6時間)。
1.3)J001C製剤を評価する為に行った研究例
J001Cの製剤の開発を有効にする為に様々な研究を行った。用いた技法に
より、in vitro及びin vivoでの99mTcによる標識の安定性、コロイド、もしく
は凝集体の配合、及び健康な身体中での生成物の分布が評価可能となる。
a)標識付けの1時間後、及び6時間後に於ける、紙を用いた放射線クロマト
グラフィーによる放射化学的純度の測定
ワットマン紙を用い、メタノール/水(体積比80/20)液で放射線クロマ
トグラフィーにより測定した場合、選んだ製剤の放射化学的純度は常に97%を
越えている。
b)放射化学的純度、99mTcと結合していないか、もしくは結合しているア
スコルビン酸の存在をコントロールする為の、製剤の賦形剤の機能をもつTSK
2000カラムを用いた排除拡散HPLC放射線クロマトグラフィー
得られたクロマトグラムから、燐酸グリシンの存在下では、遊離99mTcが8
.9%存在している場合、99mTcがアスコルビン酸(54.8%)に転移する
為に、J001に対応するピーク(36.3%)についての放射化学的濃度が極
めて不十分であることが明確に分かる。
c)J001Cをアスコルビン酸と共に、もしくはアスコルビン酸なしに静脈
注射した後30分後のラットの血清の、TSK2000カラムを用いた排除拡散
HPLC放射線クロマトグラフィー
標識した生成物をアスコルビン酸と共に、もしくはアスコルビン酸なしに静脈
注射した後30分後に抜き取ったラットの血清の放射線クロマトグラムにより、99m
Tcによる標識付けの「in vivo」での安定化に対するアスコルビン酸の有利
な役割を証明することができた。アスコルビン酸の存在下では、遊離した、もし
くは血清蛋白質と交換可能な99mTcの分画がかなり減少する。
d)ラットに於ける生分布の研究
健康な動物における生分布を、体重が250gの雄のウィスターラット(1バ
ッチにつき3匹)を用いて研究する。標識した生成物をアスコルビン酸と共に、
もしくはアスコルビン酸なしに静脈注射した後30分後に、測定を行う。標的器
官:コロイドの結合に関しては肝臓、及び脾臓、in vivoで解離した遊離99mTc
の分画を検出する為に胃、及び甲状腺、並びにマクロファージを標的化するのに
生物学的利用性のある分画を評価する為の血液。
得られた結果の例を、下記の表1に示す。
全ての場合に於いて、肝臓、及び甲状腺に於ける結合は顕著ではなく、感知可
能な量の遊離99mTcが存在していないことを示している。
アスコルビン酸の添加は、肝臓−脾臓での結合を減少させ、また全血液中の生
物学的利用性のある分画を増加させるのに、非常に有利な効果がある。
2)J001Cの工業的な製造方法
この例は、基本的な製剤の工業的なバッチの製造を示すものである(示した値
はJ001Cのボトル1000本についてのものである)。
作業場の環境の質は、良好な製造業務に従って、無菌で無発熱性の凍結乾燥製
品の製造に適していなければならない。
作業中に二価の錫が酸化するのを防ぐ為に、特に、作業場を不活性ガスでフラ
ッシングしたり、溶液を予めガス抜きするなどの、あらゆる適当な予防手段をと
らなければならない。第一段階
:溶解
注射可能な製剤用の水(ppi)1000mlを、5リッターのパイレックス
製の反応器に導入し、その後、媒質のガス抜きを行う為に、ろ過して殺菌した窒
素ガスを、撹拌を一定に行いながら吹き込む。
バブリングと撹拌を行いながら、NaClを420mg、その後アスコルビン
酸を500mg、最後にSnF2を80mg、順に溶解させた。
数分間バブリングを続けた後、ガス導入孔を液面上に持っていき、バブリング
の代わりにフラッシングさせる。J001は両親媒性を有しているので、バブリ
ングしながらJ001を導入すると、その後の操作の妨げとなるような大量の泡
が生じる。
J001を2mg/mlと20mMのNaClを含むJ001の溶液500m
lを、予め真空下でガス抜きして導入する。窒素でフラッシングしながら、静か
に撹拌を続けて均質化する。第二段階
:無菌ろ過
上で得られた溶液を、直ぐに窒素下で0.22μmの膜でろ過して殺菌する。
フィルターが完全であるかどうか、ろ過後にチェックしなければならない。第三段階
:(無菌遮断しての)ボトルへの小分け
予め殺菌した15mlのガラス製のボトルを、ステンレススチール製の凍結乾
燥用の板に並べる。液体窒素をこの板に導入して瞬時に凍結させ、不活性な環境
を作る。ボトルは、溶液を入れる前に、窒素、もしくは好ましくはアルゴンを注
入してパージする。その後溶液を2ml、それぞれのボトルに入れ、溝付きの栓
でボトルにふたをする。その後直ぐに、予め冷却した凍結乾燥器のタンクに板ご
と移す。第四段階
:凍結乾燥
この方法の重要なポイントは、成分、とりわけアスコルビン酸の性質の故に、
特に凍結乾燥段階に関係している。液体窒素中で急激に凍結させれば製品の安定
性は保証されるが、これでは結晶化の状態を適切にチェックすることができず、
また製品の凍結乾燥が十分にできない。
特定の最適化を行わなければならなかったが、これは、真空下におく前の段階
を観察することの重要性を示すものである。その理由は、−45℃付近の一定の
温度で2時間ボトルを保持すると確実に結晶形が平衡化し、アスコルビン酸の存
在下で間違いなく凍結乾燥がなされるからである。
その後、混合物の共融点を考慮しながら、通常の条件下で凍結乾燥を行う。
凍結乾燥が終了した後、凍結乾燥器室を開ける前に、凍結乾燥器室中で真空下
でボトルに栓をする。その後、ボトルを集めて光の入らない場所に保存する。例3:マクロファージ標的化特性
J001は単核細胞と、またその親脂質性端を介してマクロファージと選択的
に結合する能力を有している。実際、分子のこの部分を選択的に除去すると、結
合能力が全で失われる結果となる。
J001がヒトの血液の白血球とin vitroで結合する能力を、J001の蛍光
誘導体、及び特定の抗体を用いて、細胞蛍光光度法により広く研究した。その結
果を図1に示す。
5μg/ml未満の濃度で、J001はヒトの単核細胞と特異的に結合する。
マクロファージへの成熟に伴い、またホルボールエステル、もしくはガンマイン
ターフェロンにより誘発される活性化に伴い、J001の結合が増す。結合の特
異性は、無標識J001との競合テストにより確認された。チオグリコレートを
注射した後に得られるマウスの炎症性マクロファージのJ001との結合能力は
、もともとのマクロファージよりも大きい。37℃に於いては、結合したJ00
1は、その受容体を経て、極めて急速に細胞中に内在化する。
J001受容体としての膜抗原の単核細胞に対する役割を、血清不在下でビオ
チン化したJ001を用いて調べた。これらの受容体の特性付けを行う為に、単
核細胞の膜抗原に対して特異的な様々な単一クローン抗体との結合と比較して検
討した。
HLA抗体のクラスIもしくはクラスII、FRc抗体ガンマIII(C16
)
、CD11a抗体、CD11c抗体、又はCD11CD/18インテグリンの抗
β鎖抗体と共に細胞を予めインキュベートしても、ビオチン化したJ001の結
合には、いかなる特異的な抑制も生じない。一方、細胞をCD−14抗体、もし
くはCD11b抗体(それぞれ53%、及び41%)と共に予めインキュベート
すると、全てのCD11b、もしくはCD14単一クローン抗体がJ001の結
合を抑制することができないことから、はっきりとエピトープに限定されて、顕
著な抑制が観察される。CD11b抗体とCD14抗体とを組み合わせることに
より、抑制が70%増大する。結果を、下記の表2に示す。この表は、ビオチン
化したJ001とヒトの血液の単核細胞との特異的な結合の、単一クローン抗体
による抑制を示すものである。
表2中、「△MFI」は「バックグラウンドノイズ」を補正した平均蛍光強度
の大きさに相当する。
J001と単核細胞との特異的な結合は、この結合がCD11a抗体、CD1
1c抗体、及びCD18抗体により抑制されないので、接着性分子族に共
通のCD11/CD18β鎖、もしくはLFA−1のα鎖を介しては生じないこ
とが結果から明らかに分かる。しかしながら、CR3(CD11b)のα鎖、及
びCD14分子は、J001の単核細胞への結合に関与する。
これらの結果を確認する為に臨床的な研究を行い、J001と、気管支肺房洗
浄により得られる細胞や様々な肺の炎症性疾患の患者の血液から得られる細胞と
の結合を評価できるようになった。
ヒトの白血球との結合を、過剰の(10倍)の無標識J001の存在下で、三
種類の異なる濃度のビオチン化したJ001を用いて、直接細胞蛍光光度法によ
り研究した。
結果から、結合は濃度に依存し、また過剰の無標識J001の存在下で完全に
抑制されることが分かる。それは、余り分化していない単核細胞より、気管支肺
房洗浄により得られる細胞で著しい。
マクロファージ単核細胞との結合は、その他のタイプの細胞で見られるよりず
っと大きい。結果を図2、及び図3に示す。例4
メラノーマ細胞標的化特性
1)細胞および培養条件
8細胞系(lines)ないしクローンのヒトメラノーマを使用した。3細胞株(c
ell lines)を、前記のように(JacubovichおよびDore,1979年)、3人の患者
の転移リンパ神経節(metastated lymphatic ganglion)から分離した(1、2
および3)。2および3は腫瘍を発生させる能力がきわめて高く、一方1はヌー
ドマウスに対してこの能力がきわめて低い(Berthier-Vergneら、1985年)。ク
ローン4、5、6、7および8は、すべて3細胞株から得られたものである。細
胞株8は、転移の可能性が低く、一方他の5クローンは、免疫抑制新生ラットに
対して転移の可能性が高い(BaillyおよびDore、1991年)。これらの細胞は、1
0%ウシ胎児血清含有マッコイ修飾培地(SIGMA,St.Queutin Fallavier,フ
ランス)で培養し、トリプシンPBS−EDTA(1/5000)緩衝液で放出
させた。
2)文献
− Jacubovich R.およびDore J.F−悪性メラノーマ細胞株の培地中の腫瘍関連
抗原−1979年−Cancer Immunol.Immunother.7、59-64。
− Berthier-Vergnes O,PortoukalianおよびDore J.F−異なった腫瘍形成性の
ヒトメラノーマ細胞株での細胞表面グリコプロテインの発現−1985−Int.J
.Cencer.
− Bailly M.およびDore J.F−免疫抑制新生ラットでのヒト腫瘍自然転移。ヒ
トメラノーマ転移性クローンおよび変異体の多選択−1991−Int.J.Cancer
.49、750-757。
3)ビオチン化J001のメラノーマ細胞への結合。細胞系の起源
ラボラトリー・オブ・イミュノロジー アンド・エクスペリメン
タル・キャンサロロジー、Dr.Dore,INSERM.試 薬
Immunobiol.vol 186,p183-198(1992)(Z.Hmama et al)記載の方
法に従ってビオチン化したJ001。
非ビオチン化J001 バッチ p242。
操作条件は、上記文献 Z,Hmama et al記載のものである。ΔIMF結果
(クリアIMF、すなわちバックグランドノイズを消去)全結合
非ビオチン化J001の過剰の存在下でのビオチン化J001の結合
。特異結合
全結合−特異結合
結果は、図4および5の表および図6に示してある。
表(図4および5)に示し、またグラフ(図6)に要約した結果は、供試ヒト
メラノーマ細胞株に特定的に結合し、しかも投与量に比例してそうであること、
を明らかにして示すものである。細胞株8は転移能力が低いのであるが、それは
インビトロでずっと低活性でJ001と結合するということが見られるのは興味
深いことである。例5:
免疫刺激特性の除去
D25の免疫刺激特性は、シンチグラム診断薬にとって望ましいものではない
。常法によれば、このタイプの分子については、観察される免疫刺激活性はレセ
プターとの結合に対して連続的であり、また、一般にこの結合と不可分である。
J001分子の最適化の新規性は、これを特定的にいえば、D25の薬学上の
特性が完全に除かれ、しかも同時に目的細胞への結合能が無変化である、という
事実にある。このことは、免疫刺激特性に対して責を負うエステル化脂肪酸およ
び高濃度では補体の活性化につながることのある重合体状の形態の除去、厳密な
制御の下に行なうことによる製造法において、特に事実である。
重要な安定性の免疫薬学的検討を、J001をK.ニウモニエ由来の膜から単
離した種々のフラクションと比較することによって、行なった。
膜プロテオグリカン(MPG)はD25(部分的に脱脂質化したもの)の抽出
の際の出発物質となるものであるところ、その特性を現実のD25のそれについ
て、次いでJ001のそれについて、特に検討した。
標的細胞レセプターとの結合に責を負う親油性末端の選択的水解のあとに得ら
れたJ001のポリサッカリド鎖(GC−APG)が、この検討においてネガテ
ィブ対照として働いた。すなわち、それが除去されると、結合および細胞活性化
能力が完全に失なわれる。
D25について高濃度の際に観察された補体活性化特性は、100kDaより
大きい集体の重合体状形体の残分が存在することに因る。それを選択的クロマト
グラフィーによるJ001の精製の工程において除去すると、これらの特性が完
全に除かれる。
免疫刺激特性は、それ自身、分子の親油性末端の組成に厳密に依存しており、
特にエステル化脂肪酸の存在に依存している。J001の最適化製造条件では、
脂肪酸を定量的に除去し、同時に、アミド結合によって付着しかつ標的細胞レセ
プターの認識に厳密に必要な2C14β−OH脂肪酸ならびに99mTcによる安
定な標識化を生じさせるホスフェート、就中ピロホスフェート基を必須的に残存
させることが実現される。
D25中に保存されている膜プロテオグリカンの特徴的特性のうち、下記のも
のを選択すべきである。
− Bリンパ球のポリクローナル活性化、
− Tリンパ球の活性化の不存在、
− マクロファージのきわめて強い活性化。これは、マクロファージの酸化性
代謝の増加およびサイトカインたとえばIL−1、TNF−α、IFN−α、I
L−6その他の放出、を映すものである。これらのサイトカインは、マクロファ
ージの活性化に特徴的な標識であり、またD25の親炎症性および免疫刺激特性
を反映するものである。
J001標品中のエステル化脂肪酸を厳密な制御下に除去すると、免疫刺激特
性のすべてを全体的に除去することができる。これは、アミド結合を介して末端
ジグルコサミンに結合しているβ−OH−C14酸のみが誘導できないものであ
る。
これらの諸条件の下で得られたJ001の新規性は、J001がその活性のす
べてが失われるにもかゝわらず、マクロファージ結合能のすべてを保有している
ということである。これは、バクテリア由来の分子のこの種のものに一般的なこ
とではない。
1)培地中の粘着ヒト単球によるサイトカインの分泌の測定
粘着ヒト単球を、供試産物の存在下に24時間培養する。上清中のサイカイン
の濃度を、次いでELISA法で測定する。
供試産物は、下記の通りである。
(−)標準培地 バックグランドノイズ
(−)GC−APG(J001Yの多糖鎖)ネガティブ対照
(−)J001Y
(−)D25
(−)PGM−p(D25およびJ001への出発物質)
(−)Sm−ReLPS−ポジティブ対照(S.ティフィムリウムからのLPS
、シグマ)
これらの結果は、PGM−KpおよびD25と比較したときの、ヒト単球の活
性化によるサイトカインの誘導についてのJ001の活性の喪失を示すものであ
る。
2)BALB/cマウスの脾細胞のポリクローナル活性化の測定
脾細胞を、供試産物の存在下に106C/mlで培養する。細胞増殖を、72
時間培養の最後の24時間にわたって[3H]TdRの取り込みを計測すること
によって測定した。イムノグロブリンの分泌は、6日間の培養後に、ELISA
によって測定する。供試産物のすべてを、100μg/mlの最終濃度で試験す
る。結果
これらの結果は、マウスBリンパ球のポリクローナル活性化に関してPGM
−Kp(出発物質)およびD25と比較したときのJ001の活性の喪失を確認
するものである。例6
放射性薬剤J001Cの像形成への応用
1)炎症性病状の実験モデルについての像形成
1.1)ニュージーランドラビットおよびカニクイザル(Cynomolgus monkeys)
の免疫学的関節炎のモデルについてJ001のシンチグラフへの可能性の検討こ
の実験的病状のモデルは、Cosden et al「卵白アルブミンによる慢性関節炎の発
生」−Ann.Rheum.Dis.1971,30、307-315、により、フロイント・コンプリー
ト・アジュバントの存在下に、卵白アルブミンを動物(s.c.経路でこの抗原に
対して予め感作したもの)に関節内注射することによって、誘導する。これによ
って、局所化した慢性関節炎が得られる。その際、見るべき関連オデマ(odema
)はなく、また炎症が慢性となると、すなわち誘導後2〜3週間して、多くのマ
クロファージを含む免疫適応性細胞が補充される。
このモデルは、膝関節上で健康域とよく区別された病巣を得る可能性を提供す
るものである。なお、ここで、健康域は反側方に位置して各動物に対して対照領
域を成しており、またこの対照領域によってシンチグラフ化の正確な測定がもた
らされる。
シンチグラフは、3週〜6週令の3〜4kgの2匹の雄ラビットおよび4kg
および6kgの2匹の雄ザルについて、関節炎誘導に続いて行なった。2mCi
(37MBq)の99mTTc-J001C(0.050〜0.200mgのJ00
1に相当)の静脈内注射後3時間してから、ナトリウムペントバルビタールで麻
酔した動物を腹側からの投射によるシンチグラフ検査に付した。シーメンス・オ
ービター75ガンマカメラに高解像平行コリメータを取りつけたもので、128
×128ピクセルのマトリックス中に2分間の像を記録する。シンチグラフデー
タの処理、ならびに目的領域に対しての標準手法によるシンチグラフ比Rの定量
化、をシーメンス・ミクロデルタ・コンピュータ・システムによって実施する。
サルについて得られた像は、病状のある右膝関節(シンチグラフ比2.2)上
に、リンパ液排出腫脹(lymphatic drainage ganglion)のポジテイブ像形成と
共に、きわめて強い結合病巣を示している。健康な反側方の膝関節は、見るべき
関節活性を示さない。
J001Cの静脈注射から3時間後、および右膝関節に対する関節炎誘導から
1ケ月後に、関節の病変に高度のシンチグラフコントラストが見られ(R=2.
2)、また鼠径部の排出腫脹にきわめて顕著な結合が見られる。
同様な結果が、関節炎罹患ラビットの場合に、J001の370〜2590M
Bq/mg(10〜70mCi/mg)の比活性で標識したJ001の標品につ
いて、すなわち動物当り200〜290μgのJ001の投与量につき、74M
Bq(2mCi)の注射に対して、得られる。
J001Cの静脈内注射から3時間後および右膝関節に対する関節炎の誘導か
ら1ケ月後に、関節の病変に高度のシンチグラフコントラスト(R=2.8)が
見られる。
2)メラノーマ像形成
2.1)ヌードマウスに接木したヒトメラノーマの実験モデル
ヌードマウスにその左鼠径部にヒトメラノーマ細胞株TW12(Dr.J.F.Dore-
Centre Leon Bernard-Lyon)を5×105細胞を皮下注射して3週間後に、その
動物には6−8mm径の腫瘍が発生する。この段階で、眼窩後腔にJ001Cを
静脈注射してこれをシンチグラフに付す。注射してから3時間後に、高解像度像
形成により、腫瘍域にJ001Cが有意に結合することが、きわめてはっきりし
たシンチグラフコントラスト(R=1.6)をもって示される。
2.2)メラノーマの臨床例の説明
患者:FOR…TH(obs No.401)、男性、36才。
(1)右後背方の小節形の胸郭メラノーマ。ブレスラウ(Breslow)インデック
ス=2.1およびグレード=IV(Clark)。
(2)処置:外科的切除、その後ムフォラン(Muphoran)治療(2回)。
(3)再発(Recidivation):右腋窩再発の診断。
(4)注射可能経路経由のJ001Cによるシンチグラフィー手順
(i)74MBq(2mCi)の99mTCで標識したJ001C 0.100m
gを注射、
(ii)注射の1時間後に腹側(FA)および背側(FP)から投射による、2分
間利得(acquisition)。128×128ピクセルマトリックス装着の高解像度
平行コリメーター付きガンマカメラ使用。結果
アデノパシーに対応する右腋窩くぼみでの過結合。1時間での結合インデック
ス=1.7および2時間での結合インデックス=2.5。10.12.91に行
なった腫脹治療は、(3.5×2.5×1.5cm)の転移腫脹をはっきりと示
す。例7:
J001の抗LPS特性
J001がD25の結合特性を保存し、またマクロファージとレセプター上に
おいて(LPS(CD11b−CD14)のそれと一部共通)免疫活性なしで結
合するという事実は、内毒素ショックに対する保護においての抗LPS治療特性
の可能性を追及するのに与って力があった。
インビトロで得られた結果の見地から、共通レセプターのレベルでの単純な競
合は、見出された活性のすべてを説明するものではないようである。もしそれが
LPSのマクロファージへの結合を完全に阻止しないのであれば、J001は、
LPSの活性の特徴的標識であるTNFαの産生を永く阻止することの反映であ
る「後結合信号(postbinding signaling)」効果を有するように見える。LPSに関しての拮抗特性
1.ヒト単球
血清不在下の単離された単核細胞培養液について、J001は5種の異なる供
試LPSにより誘導されるTNF産生を阻害する。
2.マウス脾臓リンパ球
J001は、LPSにより誘導される成長の阻害を誘導する。この効果は、J
001を細胞培養液にLPSを添加してから24時間までの間に添加することに
よって観察される。同様の効果が観察されるとしても、抗IgM抗体については
表われ方はより全身的ではない。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1996年1月25日
【補正内容】
請求の範囲
1. 分子量が約34KDで、クレブシエラ・ニウモニエ由来の膜プロテオグ
リカンからの抽出によって得ることができる、脱脂質化しかつ精製したD25ポ
リサッカリド化合物の標品であって、このポリサッカリド化合物が脱脂質化およ
び精製されて、該標品がミセル型の該化合物を含んでいないことを特徴とする、
脱脂質化しかつ精製したD25ポリサッカリド化合物の標品。
2. 請求項1による、脱脂質化しかつ精製したD25ポリサッカリド化合物
であって、この化合物が脱脂質化および精製されて、該標品が、パルミチン脂肪
酸および遊離形または該化合物と会合したペプチドを含んでいないことを特徴と
する、脂肪質化しかつ精製したD25ポリサッカリド化合物。
3. 請求項1または2による標品であって、それが、生理学的に受入れ可能
な塩を低モル濃度で含んでいて、その水溶液においてイオン強度が低いものであ
ること、を特徴とする、標品。
4. 請求項1または2による標品であって、それが、1mM〜0.15Mの
濃度でNaCl塩を含有すること、を特徴とする、標品。
5. 請求項1または2による標品であって、それが、約20mMの濃度でN
aCl塩を含有すること、を特徴とする、標品。
6. 請求項1〜5の1項による、分子量が約34KDで、クレブシエラ・ニ
ウモニエ由来の膜プロテオグリカンの抽出によって得ることができる、脱脂質化
しかつ精製したD25ポリサッカリド化合物が下式で示すことができることを特
徴とする、脱脂質化しかつ精製したD25ポリサッカリド化合物。
ここで、[PS]はポリサッカリド鎖を表わす。
7. 請求項6による、分子量が約34KDで、クレブシエラ・ニウモニエ由
来の膜プロテオグリカンから抽出することができるD25ポリサッカリド化合物
であって、線状ポリサッカリド鎖[PS]が、下記の(1→3)結合で結合する
2種の交番反覆二糖類配列からなっていることを特徴とする、D25ポリサッカ
リド化合物。
−[→3)αDGalp(1→3)βDGalf(1−]→,
−[→3)αDGalp(1→3)βDGalp(1−]→
たゞし、その末端には3グルコース残基、1ガラクトース残基、2ヘプトース
残基および1マンノデオキシオクツロソン酸残基があり、この単一結合構造は式
(I)中に示される2つの末端グルコサミンに付着していて、その各々にN−グ
リコシドアミド結合を介してβ−ヒドロキシミリスチン酸が付着している。
8. 像形成、診断または治療のための組成物であって、それが先行請求項の
1項による脱脂質化しかつ精製した化合物の標品を含有することを特徴とする、
組成物。
9. マクロファージを標的とすることを介して、感染性、炎症性および腫瘍
性の病巣の像形成および診断をするための、請求項8による組成物。
10. メラノーマおよび同一レセプターを表現する化の腫瘍、特に結腸ガン
、の像形成および診断をするための、請求項8による組成物。
11. 請求項6〜10の1項による組成物であって、それが静脈注射可能な
ものであることを特徴とする、組成物。
12. 請求項8〜10の1項による組成物であって、それがリンパ径路で、
特に皮下的にまたは胸内的に、注射可能であることを特徴とする、組成物。
13. 請求項8〜10の1項による組成物であって、それがエアゾル径路で
投与可能であることを特徴とする、組成物。
14. 請求項8〜13の1項による診断または像形成組成物であって、ポリ
サッカリド化合物が検知可能な要素たとえば放射性、常磁性、または蛍光性要素
によって標識されていることを特徴とする、診断または像形成組成物。
15. 請求項13および14のいずれかによる組成物であって、放射性要素
がシンチグラフィーで検知可能な放射核種であることを特徴とする、組成物。
16. 請求項15による組成物であって、放射核種が99mテクネチウム、123
ヨウ素または111インジウムであることを特徴とする、組成物。
17. 請求項1〜7の1項による化合物の薬品としての使用。
18. 内毒素ショックに対する保護での薬品としての、請求項17による化
合物の使用。
19. 標的放射治療用の媒介剤としての治療目的への、細胞毒物質の媒介へ
の、あるいは免疫原性もしくは抗炎症性物質の媒介への、請求項1〜7の1項に
よる化合物の使用。
20. 請求項1〜7の1項による水溶液中の化合物の標識用であって、該化
合物の共凍結乾燥物、標識用試薬および安定性賦形剤を含有してなる、単一ボト
ルキット。
21. テクネチウムによる標識用の請求項19によるキットであって、それ
が標識用試薬としてフッ化スズ(SnF2)を、安定性賦形剤としてアスコルビ
ン酸を含有するものであること、を特徴する、キット。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 51/00 9637−4B C12P 19/04
51/06 0276−2J G01N 33/53 S
C12P 19/04 9454−4C A61K 49/02 A
G01N 33/53
//(C12P 19/04
C12R 1:22)
(72)発明者 ノルミエ,ジェラール
フランス国ビルフランシュ−ド−ロラゲ、
ルート、ド、トゥールーズ、15
(72)発明者 ル、パープ,アラン
フランス国ランジェ、リニエール、ド、ト
ゥーレンス、ラ、セルマンティエール
(番地なし)